特許異議申立
2023-701107
リチウムイオン蓄電池
- 審判番号
- 2023-701107
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-014043
- 登録番号
- 7259100
- 請求日
- 2023年10月17日
- 審決日
- 2024年01月17日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社半導体エネルギー研究所
- 【異議申立人】小菅 公義
- 審判長/審判官
- 審判長 土居 仁士
- 審判官 衣鳩 文彦
- 審判官 寺谷 大亮
- 分類
- P1651.121-Y (H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7259100号発明「リチウムイオン蓄電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7259100号の請求項1、2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7259100号の請求項1、2の特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成27年2月26日に出願された特願2015-37119号の一部を令和元年8月8日に新たな特許出願とした特願2019-146133号の一部を令和2年11月10日に新たな特許出願とした特願2020-187180号の一部を令和4年2月1日に新たな特許出願としたものであって、令和5年4月7日にその特許権の設定登録がされ、令和5年4月17日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和5年10月17日に特許異議申立人 小菅 公義(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和5年11月29日に手続補正書(方式)が提出された。
第2 本件発明
特許第7259100号の請求項1、2の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、当審において、請求項1を1A~1Gに、請求項2を2A~2Gにそれぞれ分説し、以下、それぞれ「特定事項1A」~「特定事項1G」、「特定事項2A」~「特定事項2G」として参照する。
【請求項1】
1A 構造物と、前記構造物を包む外装体と、を有し、
1B 前記構造物は、第1の積層体と、第2の積層体と、を有し、
1C 前記第1の積層体は、第1の集電体と、前記第1の集電体の一方の面に設けられた第1の電極活物質と、を有し、
前記第1の電極活物質は、リチウム及びコバルトを含む複合酸化物を有し、
1D 前記第2の積層体は、第2の集電体と、前記第2の集電体の一方の面に設けられた第2の電極活物質と、を有し、
1E 前記第1の集電体の他方の面は、前記第2の集電体の他方の面と少なくとも一部が接し、
1F 前記第1の積層体と前記第2の積層体とは、互いに摺動することができ、
1G 可撓性を有する、リチウムイオン蓄電池。
【請求項2】
2A 構造物と、前記構造物を包む外装体と、を有し、
2B 前記構造物は、第1の積層体と、第2の積層体と、を有し、
2C 前記第1の積層体は、第1の集電体と、前記第1の集電体の一方の面に設けられた第1の電極活物質と、を有し、
前記第1の電極活物質は、リチウム及びコバルトを含む複合酸化物を有し、
2D 前記第2の積層体は、第2の集電体と、前記第2の集電体の一方の面に設けられた第2の電極活物質と、を有し、
前記第2の電極活物質は、リチウム及びコバルトを含む複合酸化物を有し、
2E 前記第1の集電体の他方の面は、前記第2の集電体の他方の面と少なくとも一部が接し、
2F 前記第1の積層体と前記第2の積層体とは、互いに摺動することができ、
2G 可撓性を有する、リチウムイオン蓄電池。」
第3 申立理由の概要
申立人は、以下の甲第1号証~甲第5号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲5」という。)を提出し、以下の申立理由1~3により、請求項1及び2に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。
申立理由1:請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項1及び2に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
申立理由2:請求項1及び2に係る発明は、甲第2号証及び甲第1号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1及び2に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
申立理由3:請求項1に係る発明は、甲第2号証及び甲第5号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
証拠方法
甲第1号証 特表2015-531981号公報
甲第2号証 特開2002-63938号公報
甲第3号証 特開2010-232565号公報
甲第4号証 特開2010-282898号公報
甲第5号証 特開2012-243646号公報
第4 甲第1号証について
本件特許についての出願は、特願2015-37119号の分割出願である特願2019-146133号の分割出願である特願2020-187180号の分割出願であり、それぞれの分割出願は適法になされているから、本件特許についての出願は、もとの特許出願の時である、平成27年2月26日にしたものとみなされる。
そして、証拠として提出された甲1の公表日は、平成27年11月5日であり、本件特許についての出願の出願前に公開されたものではないから、甲1を主たる証拠とする進歩性の申立理由(前記申立理由1)、及び甲2に甲1を組み合わせる進歩性の申立理由(前記申立理由2)の証拠としては、採用することができない。
第5 甲号証の記載
1 甲2
(1)甲2には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審にて付したものである。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は二次電池に関し、詳しくはポリマー電解質を用いたフレキシブルな二次電池に関する。」
「【0010】すなわち、この電池は、電池に外部応力が加わった場合においても、シート電極と金属箔との間で滑りが生じることにより電池が湾曲変形することが可能とされ、良好な可撓性を有した電池とされる。」
「【0023】図1及び図2に本発明を適用したシート状リチウムイオン二次電池を示す。シート状リチウムイオン二次電池1は、正極2と、正極2に当接して積層されたポリマー電解質層3と、ポリマー電解質層3に当接して積層された負極4と、負極4に摺接した状態で配された金属箔5とからなる電池素子6が外装体7で封止されてなるものである。また、正極2の外周縁部には正極端子8が配され、金属箔の外周縁部9には、負極端子が配されている。
【0024】正極2は、目的とする電池の種類に応じて、金属酸化物、金属硫化物又は特定の高分子等からなる正極活物質を含有する正極活物質層10が正極集電体11上に形成されてなるものである。」
「【0027】また、特に、正極活物質としては、高電圧及び高体積密度が得られ、サイクル特性に優れる点から、リチウムコバルト酸化物やリチウムニッケル酸化物を用いることが好ましい。このようなリチウム複合酸化物は、リチウムの炭素塩、硝酸塩、酸化物あるいは水酸化物と、コバルト、マンガンあるいはニッケルなどの炭酸塩、硝酸塩、酸化物あるいは水酸化物とを所望の組成に応じて粉砕混合し、酸素雰囲気下において600~1000℃の温度範囲で焼成することにより調整することができる。」
「【0034】負極4は、負極活物質を含有する負極合剤と上述したポリマー電解質とが、負極集電体に担持されてなるものである。負極合剤は、負極活物質と結着剤を有機溶媒に分散させたものである。
【0035】負極活物質は、作製する電池の種類により異なり、特に限定されるものではない。例えば、リチウムイオン二次電池を作製する場合は、負極活物質としては、リチウムをドープ、脱ドープできる難黒鉛化炭素系材料や黒鉛系材料の炭素材料を使用することができる。具体的には、熱分解炭素類、ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス等のコークス類、黒鉛類、ガラス状炭素類、フェノール樹脂、フラン樹脂等を適当な温度で焼成し炭素化した有機高分子化合物焼成体、炭素繊維、活性炭等の炭素材料を使用することができる。このほか、リチウムをドープ、脱ドープできる材料としては、ポリアセチレン、ポリピロール等の高分子やSnO2等の酸化物を使用することもできる。このような材料から負極を形成する際しては、ポリフッ化ビニリデン等の公知の結着剤を使用することができる。」
「【0038】金属箔5は、上述した負極4と摺接した状態に配され、負極4の集電補助体として機能する。すなわち、金属箔5は、シート状負極4と、電気的な接触が保たれており、金属箔5と端子9は、スポット溶接等で接合されている。本構造によって、炭素繊維集電体からの電気的に安定した端子の取り出しが可能となる。金属箔5としては、例えば銅、ニッケル、あるいはこれらの合金を好ましく用いることができる。」
「【0041】そして、このシート状リチウムイオン二次電池1では、負極4と金属箔5とは、物理的に接触しているが固着されていないため、負極4と金属箔5との間に良好な滑り性があり、湾曲変形が可能とされており、外部応力にも十分対応可能な構成とされている。すなわち、このシート状リチウムイオン二次電池1は、電池に外部応力が加わった場合においても、図3に示すように負極4と金属箔5との間で滑りが生じることにより電池が湾曲変形することが可能とされており、良好な可撓性を有した電池とされている。これにより、このシート状リチウムイオン二次電池1は、電池自体のフレキシビリティが著しく向上し、電池の湾曲変形による局所的な応力集中や歪みを生じることがない。したがって、このシート状リチウムイオン二次電池1では、電極自体が局部的に折り曲がって破損したり、あるいは電極活物質層が集電体から剥離する等の現象が発生せず、これに起因した電池性能の劣化を抑制することができる。」
「【0048】以上のように構成されたシート状リチウムイオン二次電池1は、例えば次のようにして作製することができる。
【0049】まず、正極集電体の一主面に正極活物質層10を形成することにより、正極2を作製する。具体的には、正極活物質と結着剤とを含有する正極合剤を、正極集電体11となる例えばアルミニウム箔等の金属箔の一主面に、均一に塗布、乾燥することにより正極集電体11の一主面に正極活物質層10を形成する。その後、ロールプレス機で圧縮成型してシート状の正極2とする。ここで、正極合剤の結着剤としては、公知の結着剤を用いることができる。また、正極合剤には、公知の添加剤等を添加しても良い。また、正極活物質層10は、キャスト塗布、焼結等の手法を用いて形成することもできる。
【0050】次に、負極集電体となる炭素繊維シートに負極活物質を含有する負極合剤を担持させることにより負極4を形成する。具体的には、負極活物質と結着剤とを含有する負極合剤を、負極集電体となる炭素繊維シートの一主面に均一に塗布し、乾燥後、ロールプレス機で圧縮成型することにより負極4を作製する。ここで、負極合剤の結着剤としては、公知の結着剤を用いることができる。また、負極合剤には、公知の添加剤等を添加しても良い。」
「【0052】次に、正極4の正極活物質層10上に、ポリマー電解質層3を形成する。例えばポリマー電解質層3として、ゲル状電解質を作製する際には、まず、非水溶媒に電解質塩を溶解させて可塑剤を作製する。そして、この可塑剤にマトリクスポリマーを添加し、良く攪拌してマトリクスポリマーを溶解させてゾル状の電解質溶液を得る。そして、この電解質溶液を負極の一方の負極活物質層上に所定量塗布する。続いて、室温にて冷却することによりマトリクスポリマーがゲル化して、負極活物質層上にゲル電解質からなるポリマー電解質層3が形成される。」
「【0054】次に、正極2上に形成したポリマー電解質層3と負極4とを対向させて正極2と負極4とを積層し、熱圧着する。すなわち、ポリマー電解質層3を正極2と負極4とで挟み込むようにして正極2と負極4とを積層して熱圧着する。さらに、負極4側に金属箔5を積層することにより、電池素子6を作製することができる。」
「【図1】
[図:0001406752000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001406752000002.jpg]
」
「【図3】
[図:0001406752000003.jpg]
」
(2)甲2発明
以上より、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「正極2と、正極2に当接して積層されたポリマー電解質層3と、ポリマー電解質層3に当接して積層された負極4と、負極4に摺接した状態で配された金属箔5とからなる電池素子6が外装体7で封止されてなるものであって、(【0023】)
正極2は、正極活物質を含有する正極活物質層10が正極集電体11上に形成されてなり、(【0024】)
正極活物質は、リチウムコバルト酸化物を用い、(【0027】)
負極4は、負極活物質を含有する負極合剤とポリマー電解質とが、負極集電体に担持されてなり、(【0034】)
負極活物質は、難黒鉛化炭素系材料や黒鉛系材料の炭素材料を使用し、(【0035】)
金属箔5は、負極4と摺接した状態に配され、負極4の集電補助体として機能し、(【0038】)
正極集電体の一主面に正極活物質層10を形成することにより、正極2を作製し、(【0049】)
負極活物質と結着剤とを含有する負極合剤を、負極集電体の一主面に均一に塗布し、負極4を作製し、(【0050】)
正極4の正極活物質層10上に、ポリマー電解質層3を形成し、(【0052】)
正極2上に形成したポリマー電解質層3と負極4とを対向させて正極2と負極4とを積層し、熱圧着し、さらに、負極4側に金属箔5を積層することにより、電池素子6を作製することができ、(【0054】)
負極4と金属箔5との間で滑りが生じることにより電池が湾曲変形することが可能とされ、良好な可撓性を有した電池とされている、(【0041】)
シート状リチウムイオン二次電池1(【0023】)」
2 甲5
(1)甲5には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
充放電可能な電極体と、前記電極体に電気的に接続され且つ前記電極体に対しその外部との電力を授受する電極部材とを備えた複数の単位電池を、
隣接する前記単位電池の間でそれぞれが備える前記電極部材のうちの対応するもの同士を接触させることにより、並列乃至直列に電気的に接続して複数個積層する二次電池の接続構造であって、
隣接する一組の前記単位電池の間を電気的に接続する前記電極部材の一組のうちの少なくとも一方は、他方の前記電極部材に対して接触する表面に、通電可能な複数の突起部を備え、
前記一方及び前記他方の電極部材の間は、前記突起部が前記他方の電極部材の表面に沿って摺動可能に配設されている二次電池の接続構造。」
「【0027】
本実施形態の接続構造は複数の電極体(単位電池を形成していても良い)を電気的に接続する構造である。電極体は外部との電力の授受を行うタブ端子や外装ケースなどの電極部材をもつ。この電極部材を介して複数の電極体の間を電気的に接続する。電極体の形態としては特に限定しないが、積層しやすいように扁平型を採用することが望ましい。例えば、帯状の電極体を巻回した後、押し潰すことにより扁平形状にしたり、複数枚の電極を積層して扁平形状にしたりできる。」
「【0029】
電極部材としての外装ケースは導電性の材料から構成され、内部に電極体やその他の構成要素(電解質、セパレータなど)を収納する部材である。外装ケースを正負極の電極部材とする場合には正極の電極部材と負極の電極部材との間を絶縁することが必要である。」
「【0048】
本発明の二次電池の接続構造について実施例に基づき以下詳細に説明を行う。実施例では二次電池を複数組み合わせた組電池に基づき説明を行う。
(実施例1)
本実施例の組電池は、図1に示すように、複数(本実施例では4つ)の電極体1を積層し、それぞれの正極タブ端子11及び負極タブ端子12を直列に接続したものである。積層した電極体1は最外部に設けた拘束部材2により積層方向に拘束力が加わるように拘束される。正負極タブ端子11,12は板状部材から形成される。タブ端子11及び12が形成される部位としては電極体1の積層方向の一方に交互に偏って形成されており、電極体1を積層することにより正極タブ端子11と負極タブ端子12とが接するようにできる。なお、電極体の他の部位からタブ端子を形成したとしても、タブ端子を折り曲げるなどして正負極のタブ端子の間が接触するように形成すれば充分である。
【0049】
正極タブ端子11はアルミニウム製、負極タブ端子12は銅製である。負極タブ端子12には、図2(a)に示すように、正極タブ端子11に接する面にプレス加工により突起部121(バネ状部材)が形成されている。正極タブ端子11に接続されない負極タブ端子15には突起部は形成されていない。」
「【0054】
このように、絶縁部材31~35によりタブ端子11及び12を拘束することにより、突起部121には押圧に伴い外力が加わって弾性変形が進行して方向Aに向けて倒れ込んでいく。そうすると、その先端1211は方向Bに向けて正極タブ端子11の表面に摺動しながら移動していく。絶縁部材31,34からの押圧が小さくなると、突起部121に加わる外力も小さくなって突起部121は方向Aと反対方向(起き上がり方向)に戻っていく。」
「【図1】
[図:0001406752000004.jpg]
」
「【図2】
[図:0001406752000005.jpg]
」
(2)甲5記載事項
以上より、甲5には、次の事項(以下「甲5記載事項」という。)が記載されている。
「複数の電極体1を積層し、それぞれの正極タブ端子11及び負極タブ端子12を直列に接続し、(【0048】)
負極タブ端子12には突起部121が形成され、(【0049】)
突起部121の先端1211は方向Bに向けて正極タブ端子11の表面に摺動しながら移動していく(【0054】)
組電池(【0048】)」
第6 当審の判断
1 申立理由1及び2について
前記第4のとおり、甲1は、申立理由1及び2の証拠として採用できないから、申立理由1及び2は、理由がない。
2 申立理由3について
(1)本件発明1と甲2発明とを対比する。
ア 特定事項1A
甲2発明の「電池素子6」は、「正極2」、「ポリマー電解質層3」、「負極4」及び「金属箔5」からなるから、構造物ということができる。
また、「外装体7」は、「電池素子6」を封止するから、電池素子6を包むものである。
よって、甲2発明の「電池素子6」、「外装体7」は、それぞれ本件発明1の「構造物」、「外装体」に相当し、本件発明1と甲2発明とは、「構造物と、前記構造物を包む外装体と、を有」する点で一致する。
イ 特定事項1B
以下ウ及びエより、本件発明1と甲2発明とは、「前記構造物は、第1の積層体と、第2の積層体と、を有」する点で一致する。
ウ 特定事項1C
甲2発明の「正極2」は、「正極活物質を含有する正極活物質層10が正極集電体11上に形成され」たものであるから積層体をなしており、「第1の積層体」と称することができ、また、「正極集電体」、「正極活物質」は、それぞれ「第1の集電体」、「第1の電極活物質」と称することができる。
そして、「正極2」は、「正極集電体の一主面に正極活物質層10を形成することにより」作製されるものであり、「正極活物質」として用いられる「リチウムコバルト酸化物」は、「リチウム及びコバルトを含む複合酸化物」である。
そうすると、本件発明1と甲2発明とは、「前記第1の積層体は、第1の集電体と、前記第1の集電体の一方の面に設けられた第1の電極活物質と、を有し、前記第1の電極活物質は、リチウム及びコバルトを含む複合酸化物を有」する点で一致する。
エ 特定事項1D
甲2発明の「負極4」は、「負極活物質を含有する負極合剤とポリマー電解質とが、負極集電体に担持されてなる」ものであり、「負極活物質と結着剤とを含有する負極合剤を、負極集電体の一主面に均一に塗布し」て作製されるものであるから、積層体をなしており、「第2の積層体」と称することができ、また、「負極集電体」、「負極活物質」は、それぞれ「第2の集電体」、「第2の電極活物質」と称することができる。
そうすると、本件発明1と甲2発明とは、「前記第2の積層体は、第2の集電体と、前記第2の集電体の一方の面に設けられた第2の電極活物質と、を有」する点で一致する。
オ 特定事項1G
甲2発明は、「シート状リチウムイオン二次電池1」であり「良好な可撓性を有した電池」であるから、本件発明2と甲2発明とは、「可撓性を有する、リチウムイオン蓄電池」である点で一致する。
以上より、本件発明1と甲2発明とは、
「構造物と、前記構造物を包む外装体と、を有し、
前記構造物は、第1の積層体と、第2の積層体と、を有し、
前記第1の積層体は、第1の集電体と、前記第1の集電体の一方の面に設けられた第1の電極活物質と、を有し、
前記第1の電極活物質は、リチウム及びコバルトを含む複合酸化物を有し、
前記第2の積層体は、第2の集電体と、前記第2の集電体の一方の面に設けられた第2の電極活物質と、を有し、
可撓性を有する、リチウムイオン蓄電池」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1:本件発明1は、「前記第1の集電体の他方の面は、前記第2の集電体の他方の面と少なくとも一部が接」することが特定されているのに対して、甲2発明は、当該事項が特定されていない点
相違点2:本件発明1は、「前記第1の積層体と前記第2の積層体とは、互いに摺動することができ」ることが特定されているのに対して、甲2発明は、当該事項が特定されてない点
(2)相違点についての判断
相違点1について
甲2発明において、電池素子6の「負極4」は、「ポリマー電解質層3に当接して積層され」、金属箔5が「摺接した状態で」配されるものであるから、負極4の負極集電体の一主面はポリマー電解質層3に対向し、負極集電体の他主面は金属箔5に対向する。そうすると、正極2の正極集電体の面を負極4の負極集電体の面と接するように配置することは、電池素子6の構造的にできないものである。
また、甲2発明において、正極2の正極集電体の面を負極4の負極集電体の面と接するように配置することは、電池素子の正極及び負極を接続することになるから、電池としての原理上、このような配置は想定できないものである。
そうすると、甲5記載事項によらず、甲2発明において相違点1に係る構成とすることは阻害要因があるものであり、その他の証拠をみても、相違点1に係る本件発明1の構成は、当業者が容易になし得たものとはいえない。
よって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
<申立人の主張について>
申立人は、本件発明1と甲2発明との相違点について、「甲第2号証では負極4と金属箔5とが摺接して良好な滑り性を有し、湾曲変形が可能とされていることを念頭に置き、甲第5号証では二次電池の集電体に対応する電極部材11、12が摺動可能に配設されている旨の知見を得て、負極4の負極集電体と正極2の正極集電体とを摺動可能に配設することは、容易に想到できる事項である」旨主張する。(特許異議申立書30~31頁)
しかしながら、上記のとおり、甲2発明は、正極2の正極集電体10と負極4の負極集電体とを接するように配置することは、構造的にできないものであるから、甲2発明に甲5記載事項を適用する動機付けはなく、負極4の負極集電体と正極2の正極集電体とを摺動可能に配設することは、当業者が容易に想到できる事項とはいえない。
よって、申立人の主張は採用できない。
(3)申立理由3のまとめ
以上のとおり、本件発明1は、甲2発明及び甲5記載事項に基づいて、当業者が容易になし得たものではない。
よって、申立理由3は、理由がない。
3 まとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。
4 申立理由1及び申立理由2についての職権による予備的な検討
甲1は、前記第4のとおり、本件特許についての出願前に公開された文献でないところ、甲1は、国際出願に基づく公表公報であり、当該国際出願は、本件特許についての出願前である平成26年3月20日に国際公開第2014/042454号として国際公開されていると認められることから、職権により、甲1について、国際公開第2014/042454号(以下「甲1W」という。)と読み替えて、予備的に以下検討する。
(1)甲1W
ア 甲1Wには、次の事項が記載されている。なお、甲1Wは外国語で記載されているところ、予備的な検討であることに鑑み、以下、甲1を訳文として、訳文のみ摘記する。なお、下線は当審にて付したものである。
「【0006】
前記課題を解決するために本発明は、電極積層構造体及び固定部材を含む可撓性二次電池であって、前記電極積層構造体は、第1金属集電体を含む第1電極層と、第2金属集電体を含む第2電極層と、前記第1電極層及び前記第2電極層の間の分離膜と、前記第1電極層の第1端部の前記第1金属集電体の端部、及び前記第2電極層の第1端部の前記第2金属集電体の端部からそれぞれ延長された連結タブと、を含み、前記固定部材は、前記電極積層構造体の第1端部の前記第1金属集電体及び前記第2金属集電体の端部を固定し、前記第1電極層及び第2電極層の第1端部の反対側の前記第1電極層及び第2電極層の第2端部が移動可能な可撓性二次電池を提供する。
【0007】
前記電極積層構造体の外部面の保護層をさらに含んでもよい。」
「【0034】
図1Aないし図1Cは、本発明による可撓性二次電池(flexible secondary battery)の実施形態の電極積層構造体を示した断面図である。図1Aないし図1Cを参照すれば、本発明による可撓性二次電池の実施形態は、第1電極層10,100、第2電極層11,101、及び第1電極層10,100と、第2電極層11,101との間に形成された分離膜12が積層された電極積層構造体を含んでもよい。
【0035】
本実施形態による可撓性二次電池の電極積層構造体は、多数の第1電極層10,100、第2電極層11,101及び分離膜12が積層された構造を含んでもよい。第1電極層10,100の第1金属集電体10の端部、及び第2電極層11,101の第2金属集電体11の端部には、それぞれ突出した連結タブ10a,11aが形成されてもよい。それぞれの連結タブ11a,10aの延長部14,15は、外部のリードタブと連結される。
【0036】
本発明の実施形態による可撓性二次電池の電極積層構造体の連結タブ10a,11aが形成された第1金属集電体10及び第2金属集電体11の一端部には、電極集電体の第1金属集電体10、第2金属集電体11及び分離膜12をそれぞれ固定させる固定部材13が形成されてもよい。固定部材13は、電極積層構造体の第1金属集電体10及び第2金属集電体11の連結タブ10a,11aが形成された一端部Aに形成され、電極積層構造体の反対側の第2端部には、固定部材を形成しない。別途の固定部材が形成されていない、電極積層構造体の反対側の第2端部は、固定部材13が形成された電極積層構造体の第1端部に比べ、相対的な位置変化が大きくなる。
【0037】
図1Bに図示されているように、固定部材13が、電極積層構造体の第1端部Aにのみ形成されることにより、固定部材13が形成されていない領域Bは、反復的に曲がり運動が可能である。すなわち、前記固定部材13は、電極積層構造体の第1端部Aにおいて、所定の位置に、電極積層構造の層を固定させて維持する。固定部材13が、第2端部に配置されていないために、固定部材13は、電極積層構造体の反対側の第2端部を露出させる。電極積層構造体が、図1Bの本来の位置から曲がれば、電極積層構造体の層の反対側の第2端部は、固定部材13によって、制限されたり固定されたりしていないために、互いに移動可能である。
【0038】
本発明の例示された実施形態において、B領域は、図1Bに図示されている本来の位置から、図1Aに図示されている第1曲がり位置、あるいは図1Cに図示されている第2曲がり位置に曲がることができる。さらには、固定部材13が、第1金属集電体10、第2金属集電体11及び分離膜12を互いに固定させることにより、分離膜12両側の第1電極層10,100及び第2電極層11,101は、可逆的な電気化学的反応を可能にする整列を維持することができる。そして、該電極積層構造体が、反復的に曲がり運動を行う場合、該電極積層構造体を構成する各層の相対的位置を維持させ、反復的な曲がり運動後にも、充放電などの電気化学的反応が可能である。」
「【0042】
第1電極層10,100は、正極フィルムまたは負極フィルムのうちいずれか一つである。第1電極層10,100が正極フィルムである場合、第2電極層11,101は、負極フィルムである。第1電極層10,100が負極フィルムである場合、第2電極層11,101は、正極フィルムである。
【0043】
第1電極層は、第1金属集電体10を含み、第1活物質層100は、第1金属集電体10の表面に位置する。第1電極層は、一つ、またはそれ以上の第1金属集電体10、及び一つ、またはそれ以上の第1活物質層100を含んでもよい。一実施形態において、第1電極層は、2つの第1金属活物質層100間に形成された1つの第1金属集電体10を含んでもよい。
【0044】
第2電極層は、第2金属集電体11を含み、第2活物質層101は、第2金属集電体11の表面に位置する。第2電極層は、一つ、またはそれ以上の第2金属集電体10、及び一つ、またはそれ以上の第2活物質層101を含んでもよい。一実施形態において、第2電極層は、2つの第2金属活物質層101間に形成された1つの第2金属集電体11を含んでもよい。
【0045】
もし第1電極層10,100が正極フィルムである場合、第1金属集電体10は、正極集電体であり、第1活物質層100は、正極活物質層である。そして、第2電極層11,101が負極フィルムである場合、第2金属集電体11は、負極集電体であり、第2活物質層101は、負極活物質層である。
【0046】
正極集電体は、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン、銅、銀、またはそれらから選択された物質の組み合わせを含んでもよい。正極活物質層は、正極活物質、バインダ及び/または導電材を含んでもよい。
【0047】
正極活物質層の正極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出(例えば、アロイ化(alloy)及びデアロイ化(dealloy)、あるいは挿入(intercalate)及び離脱(deintercalate))することができる物質を含んでもよい。一実施形態において、例えば、正極活物質は、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、ニッケルコバルト酸リチウム、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、マンガン酸リチウム及びリン酸鉄リチウムのようなリチウム遷移金属酸化物;硫化ニッケル;硫化銅;硫酸塩;酸化鉄;及び酸化バナジウム;から選択された少なくとも1つの物質を含んでもよい。」
「【0051】
負極活物質層は、リチウムとの合金化、またはリチウムの可逆的な吸蔵及び放出が可能な物質から形成されてもよい。一実施形態において、例えば、該負極活物質は、金属、炭素系材料、金属酸化物及びリチウム金属チッ化物から選択された少なくとも1つの物質を含んでもよい。
【0052】
負極活物質層の金属は、リチウム、ケイ素、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、ヒ素、アンチモン、ビスマス、銀、金、亜鉛、カドミウム、水銀、銅、鉄、ニッケル、コバルト及びインジウムから選択された少なくとも1つの物質を含んでもよい。負極活物質の炭素系材料は、黒鉛、黒鉛炭素ファイバ、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、ポリアセン、ピッチ系炭素ファイバ及び難黒鉛化性炭素(hardcarbon)から選択された少なくとも1つの物質を含んでもよい。負極活物質の金属酸化物は、リチウムチタン酸化物、酸化チタン、酸化モリブデン、酸化ニオブ、酸化鉄、酸化タングステン、酸化スズ、非晶質スズ複合酸化物、シリコンモノオキサイド、酸化コバルト及び酸化ニッケルから選択された少なくとも一つを含んでもよい。」
「【0057】
図2A及び図2Bを参照すれば、第1電極層10,100、第2電極層11,101、及び第1電極層10,100と、第2電極層11,101との間に形成された分離膜12を含む電極積層構造体の上下部を含む外部面には、保護層16a,16bが位置することができる。
【0058】
保護層16a,16bは、内部の電極積層構造体の反りまたは曲がりに大きい影響を与えないように、ある程度の柔軟性及び剛性を有した物質を含んでもよい。そして、保護層16a,16bは、電極積層構造体の外部からの物理的な衝撃及び/または化学的な影響から、内部の電極積層構造体を保護することができる。」
「【0061】
保護層16a,16bの厚みは、15μmないし1mmほどに形成することができ、保護層16a,16bの引っ張り弾性率(tensile modulus of elasticity)は、0.5GPaないし300GPa(gigapascals)でもある。保護層16a,16bは、高分子フィルム、ラミネートされた高分子フィルム層を含むフィルム、金属ホイル、炭素を含む複合材フィルムを含んでもよい。」
「【図1A】
[図:0001406752000006.jpg]
」
「【図1B】
[図:0001406752000007.jpg]
」
「【図1C】
[図:0001406752000008.jpg]
」
「【図2A】
[図:0001406752000009.jpg]
」
イ 図から見てとれる事項
【0035】の「本実施形態による可撓性二次電池の電極積層構造体は、多数の第1電極層10,100、第2電極層11,101及び分離膜12が積層された構造を含んでもよい。」との記載を踏まえれば、図1A~C、図2Aより、電極積層構造体は、図1Bの右側から見て、「第2電極層、分離膜、第1電極層、分離膜、第2電極層、分離膜、第1電極層、分離膜、第2電極層からなる積層構造」を見てとることができる。
また、【0057】の「電極積層構造体の上下部を含む外部面には、保護層16a,16bが位置することができる。」との記載、【0044】の「第2電極層は、第2金属集電体11を含み、第2活物質層101は、第2金属集電体11の表面に位置する。」との記載を踏まえて図2Aをみると、電極積層構造体の外部面を形成する第2電極層は、第2金属集電体11の一方の表面に第2活物質層101が設けられ、保護層側である他方の表面に第2活物質層が設けられていないことが見てとれる。
ウ 甲1W発明
以上によれば、甲1Wには、次の発明(以下「甲1W発明」という。)が記載されていると認められる。また、【0043】の「第1活物質層100」及び「第1金属活物質層100」は同じ参照符号が付されていることから、同じものを示していると認め、「第1活物質層100」と認定した。また、【0044】の「第2活物質層101」及び「第2金属活物質層101」も同様に、「第2活物質層101」と認定した。
「電極積層構造体及び固定部材を含む可撓性二次電池であって、(【0006】)
電極積層構造体の外部面の保護層をさらに含み、(【0007】)
電極積層構造体は、多数の第1電極層10,100、第2電極層11,101及び分離膜12が積層された構造を含み、第2電極層、分離膜、第1電極層、分離膜、第2電極層、分離膜、第1電極層、分離膜、第2電極層からなる積層構造であり、(【0035】、前記イ)
第1電極層10,100が正極フィルムである場合、第2電極層11,101は、負極フィルムであり、(【0042】)
第1電極層は、第1金属集電体10を含み、第1活物質層100は、第1金属集電体10の表面に位置し、第1電極層は、2つの第1活物質層100間に形成された1つの第1金属集電体10を含み、(【0043】)
第2電極層は、第2金属集電体11を含み、第2活物質層101は、第2金属集電体11の表面に位置し、第2電極層は、2つの第2活物質層101間に形成された1つの第2金属集電体11を含み、(【0044】)
電極積層構造体の外部面を形成する第2電極層は、第2金属集電体11の一方の表面に第2活物質層101が設けられ、保護層側である他方の表面に第2活物質層が設けられてなく、(前記イ)
第1電極層10,100が正極フィルムである場合、第1金属集電体10は、正極集電体であり、第1活物質層100は、正極活物質層であり、第2電極層11,101が負極フィルムである場合、第2金属集電体11は、負極集電体であり、第2活物質層101は、負極活物質層であり、(【0045】)
正極活物質層の正極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出することができる物質を含み、コバルト酸リチウムを含み、(【0047】)
負極活物質層は、リチウムとの合金化、またはリチウムの可逆的な吸蔵及び放出が可能な物質から形成され、負極活物質は、金属、炭素系材料、金属酸化物及びリチウム金属チッ化物から選択された少なくとも1つの物質を含み、【0051】)
前記固定部材は、前記電極積層構造体の第1端部の前記第1金属集電体及び前記第2金属集電体の端部を固定し、前記第1電極層及び第2電極層の第1端部の反対側の前記第1電極層及び第2電極層の第2端部が移動可能な可撓性二次電池(【0006】)」
(2)申立理由1について
ア 本件発明1との対比
本件発明1と甲1W発明とを対比する。
(ア)特定事項1A
甲1W発明の「電極積層構造体」、「保護層」は、それぞれ本件発明1の「構造物」、「外装体」に相当する。
(イ)特定事項1B
以下(ウ)及び(エ)より、本件発明1と甲1W発明とは、「前記構造物は、第1の積層体と、第2の積層体と、を有」する点で一致する。
(ウ)特定事項1C
甲1W発明の「第1電極層」の「第1活物質層100」は、「第1金属集電体10の表面に位置」するから、第1電極層は、第1金属集電体と第1活物質層との積層体をなしており、「第1の積層体」と称することは任意である。
また、「第1金属集電体10」及び「第1活物質層100」の「正極活物質」は、それぞれ「第1の集電体」及び「第1の電極活物質」と称することができ、さらに、甲1W発明の「コバルト酸リチウム」は、コバルト及びリチウムを含む酸化物であるから、本件発明1の「リチウム及びコバルトを含む複合酸化物」に相当する。
そして、甲1W発明の第1電極層は、「第1金属集電体10の表面に位置し、第1電極層は、2つの第1活物質層100間に形成された1つの第1金属集電体10を含」むから、第1活物質層100は第1金属集電体10の両方の面に設けられている。
そうすると、本件発明1と甲1W発明とは、「第1の積層体は、第1の集電体と、前記第1の集電体の面に設けられた第1の電極活物質と、を有し、前記第1の電極活物質は、リチウム及びコバルトを含む複合酸化物を有」する点で一致する。
(エ)特定事項1D
甲1W発明の第2電極層の第2活物質層101は、第2金属集電体11の表面に位置するから、第2電極層は、第2金属集電体と第2活物質層との積層体をなしており、「第2の積層体」と称することは任意である。
そして、外部面を形成する第2電極層では、第2金属集電体11の一方の表面に第2活物質層101が設けられている。
また、「第2金属集電体11」及び「第2活物質層101」の「負極活物質」は、それぞれ「第2の集電体」及び「第2の電極活物質」と称することができる。
そうすると、本件発明1と甲1W発明とは、「第2の積層体は、第2の集電体と、前記第2の集電体の一方の面に設けられた第2の電極活物質と、を有」する点で一致する。
(オ)特定事項1G
甲1W発明は、「正極活物質層の正極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出することができる物質を含」むものであり、「負極活物質層は、リチウムとの合金化、またはリチウムの可逆的な吸蔵及び放出が可能な物質から形成され」る「可撓性二次電池」であるから、本件発明1と甲1W発明とは、「可撓性を有する、リチウムイオン蓄電池」である点で一致する。
以上より、本件発明1と甲1W発明とは、
「構造物と、前記構造物を包む外装体と、を有し、
前記構造物は、第1の積層体と、第2の積層体と、を有し、
前記第1の積層体は、第1の集電体と、前記第1の集電体の面に設けられた第1の電極活物質と、を有し、
前記第1の電極活物質は、リチウム及びコバルトを含む複合酸化物を有し、
前記第2の積層体は、第2の集電体と、前記第2の集電体の一方の面に設けられた第2の電極活物質と、を有し、
可撓性を有する、リチウムイオン蓄電池」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1:本件発明1は、第1の電極活物質が第1の集電体の「一方の」面に設けられているのに対して、甲1W発明は、両方の面に設けられている点
相違点2:本件発明1は、「前記第1の集電体の他方の面は、前記第2の集電体の他方の面と少なくとも一部が接」することが特定されているのに対して、甲1W発明は、当該事項が特定されていない点
相違点3:本件発明1は、「前記第1の積層体と前記第2の積層体とは、互いに摺動することができ」ることが特定されているのに対して、甲1W発明は、当該事項が特定されてない点
イ 相違点についての判断
相違点1について
甲1W発明は、第1電極層において、第1金属集電体10の両方の面に第1活物質層100が形成されるものであり、提出されたいずれの証拠をみても、第1金属集電体10の一方の面に第1活物質層100を形成することの動機付けは見当たらない。
よって、相違点1は、当業者が容易になし得たものとはいえない。
相違点2について
甲1W発明において、第2金属集電体11の一方の表面に第2活物質層101が設けられた第2電極層は、外部面を形成する第2電極層であり、外部面は第2金属集電体の他方の表面である。
そして、外部面には保護層が位置するから、第2金属集電体の他方の表面に、第1金属集電体を設けることは、電極積層構造体の構造的にできないものである。
また、甲1W発明の電極積層構造体は、第2電極層、分離膜、第1電極層、分離膜、第2電極層、分離膜、第1電極層、分離膜、第2電極層からなる積層構造であるから、第1電極層と第2電極層との間には分離膜があり、第1電極層の第1金属集電体10と第2電極層の第2金属集電体との間には、分離膜12が位置する。
さらに、第1電極層の第1金属集電体10は2つの第1活物質層100間に形成され、電極積層構造体の外部面を形成する第2電極層以外の第2電極層の第2金属集電体11は2つの第2活物質層101間に形成されるから、第1金属集電体10及び第2金属集電体11は、いずれも、その一方及び他方の面に活物質層が形成されるものである。
そして、当該構成により、「分離膜12両側の第1電極層10,100及び第2電極層11,101は、可逆的な電気化学的反応を可能にする」(【0038】)から、第1電極層、及び電極積層構造体の外部面を形成する第2電極層以外の第2電極層において、第1金属集電体の面を第2金属集電体の面と接するように配置することは、電極積層構造体の構造的にできないものである。
以上より、甲1W発明において、相違点2に係る構成とすることは、阻害要因があるものであり、提出されたいずれの証拠をみても、相違点2に係る本件発明1の構成は、当業者が容易になし得たものとはいえない。
よって、相違点3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1W発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
<申立人の主張について>
申立人は、相違点2に関連して、特許異議申立書22~23頁において、甲3(【0034】、【0045】)、甲4(【0034】、【0044】)、甲5(【0011】、【0027】、【0029】、【0048】、【0054】)より、「集電体同士が接することは従来周知であるから、従来周知の技術事項を甲1発明に適用することは、適宜なし得ることにすぎない。」旨主張する。
しかしながら、上記のとおり、甲1W発明において、第1電極層の第1金属集電体の面と第2電極層の第2金属集電体の面とを接するように配置することは、電極積層構造体の構造的にできないものであるから、甲1W発明に甲3~甲5の周知の技術事項を適用する動機付けがあるとはいえない。
よって、申立人の主張は採用できない。
ウ 本件発明2との対比
本件発明2の特定事項2A~2C及び2E~2Gは、本件発明1の特定事項1A~1C及び1E~1Gと同じであるから、本件発明2と甲1W発明との対比は、前記ア(エ)を除いて、前記ア(ア)~(ウ)及び(オ)と同様に対比できる。
(エ’)特定事項2D
甲1W発明の第2電極層の第2活物質層101は、第2金属集電体11の表面に位置するから、第2電極層は、第2金属集電体と第2活物質層との積層体をなしており、「第2の積層体」と称することは任意である。
そして、外部面を形成する第2電極層では、第2金属集電体11の一方の面に第2活物質層101が設けられている。
また、「第2金属集電体11」及び「第2活物質層101」の「負極活物質」は、それぞれ「第2の集電体」及び「第2の電極活物質」と称することができる。
そうすると、本件発明2と甲1W発明とは、「第2の積層体は、第2の集電体と、前記第2の集電体の一方の面に設けられた第2の電極活物質と、を有」する点で一致する。
なお、第2の電極活物質について、甲1W発明は、「リチウムとの合金化、またはリチウムの可逆的な吸蔵及び放出が可能な物質から形成され、負極活物質は、金属、炭素系材料、金属酸化物及びリチウム金属チッ化物から選択された少なくとも1つの物質を含」むものであり、「リチウム及びコバルトを含む複合酸化物」であることは特定されていない。
そして、前記ア(ア)~(ウ)及び(オ)、及び上記(エ’)より、本件発明2と甲1W発明とは、
「構造物と、前記構造物を包む外装体と、を有し、
前記構造物は、第1の積層体と、第2の積層体と、を有し、
前記第1の積層体は、第1の集電体と、前記第1の集電体の面に設けられた第1の電極活物質と、を有し、
前記第1の電極活物質は、リチウム及びコバルトを含む複合酸化物を有し、
前記第2の積層体は、第2の集電体と、前記第2の集電体の一方の面に設けられた第2の電極活物質と、を有し、
可撓性を有する、リチウムイオン蓄電池」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1’:本件発明2は、第1の電極活物質が第1の集電体の「一方の」面に設けられているのに対して、甲1W発明は、両方の面に設けられている点
相違点2’:本件発明2は、「前記第1の集電体の他方の面は、前記第2の集電体の他方の面と少なくとも一部が接」することが特定されているのに対して、甲1W発明は、当該事項が特定されていない点
相違点3’:本件発明2は、「前記第1の積層体と前記第2の積層体とは、互いに摺動することができ」ることが特定されているのに対して、甲1W発明は、当該事項が特定されてない点
相違点4’:「第2の電極活物質」について、本件発明2は、「リチウム及びコバルトを含む複合酸化物を有」することを特定しているのに対して、甲1W発明は、「リチウムとの合金化、またはリチウムの可逆的な吸蔵及び放出が可能な物質から形成され、負極活物質は、金属、炭素系材料、金属酸化物及びリチウム金属チッ化物から選択された少なくとも1つの物質を含」むものである点
エ 相違点についての判断
相違点1’及び2’は、前記イで判断した本件発明1と甲1W発明との相違点である相違点1及び2と同じであるから、同様の理由により、相違点1’及び2’は、当業者が容易になし得たものとはいえない。
よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1W発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)申立理由2について
ア 本件発明1との対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。なお、特許異議申立書における申立人の主張(特許異議申立書23~27頁「2.異議理由2」)を踏まえ、前記第6の2(1)での対比とは異なる対比を行った。
(ア)特定事項1A
甲2発明の「電池素子6」は、「正極2」、「ポリマー電解質層3」、「負極4」及び「金属箔5」からなるから、構造物ということができる。
また、「外装体7」は、「電池素子6」を封止するから、電池素子6を包むものである。
よって、甲2発明の「電池素子6」、「外装体7」は、それぞれ本件発明1の「構造物」、「外装体」に相当し、本件発明1と甲2発明とは、「構造物と、前記構造物を包む外装体と、を有」する点で一致する。
(イ)特定事項1B
以下(ウ)及び(エ)より、本件発明1と甲2発明とは、「前記構造物は、第1の層と、第2の積層体と、を有」する点で一致する。
(ウ)特定事項1C
甲2発明の「金属箔5」は、「負極4の集電補助体として機能」する「層」であるから、本件発明1の「第1の積層体」とは、「第1の層」である点で一致する。
また、「集電補助体」は、本件発明1の「第1の集電体」に対応する。
よって、本件発明1と甲2発明とは、「前記第1の層は、第1の集電体と、を有」する点で一致する。
(エ)特定事項1D
甲2発明の「負極4」は、「負極活物質を含有する負極合剤とポリマー電解質とが、負極集電体に担持されてなる」ものであり、「負極活物質と結着剤とを含有する負極合剤を、負極集電体の一主面に均一に塗布し」て作製されるものであるから、積層体をなしており、「第2の積層体」と称することができ、また、「負極集電体」、「負極活物質」は、それぞれ「第2の集電体」、「第2の電極活物質」と称することができる。
そうすると、本件発明1と甲2発明とは、「前記第2の積層体は、第2の集電体と、前記第2の集電体の一方の面に設けられた第2の電極活物質と、を有」する点で一致する。
(オ)特定事項1E
甲2発明の「負極4」は、「負極活物質と結着剤とを含有する負極合剤を、負極集電体の一主面に均一に塗布し」て作成されるものである。
そして、「金属箔5」は、「負極4」と「摺接」するから、金属箔5と負極4とは、負極合剤を塗布した一主面とは異なる主面で接しているものであり、本件発明1と甲2発明とは、「前記第1の集電体の他方の面は、前記第2の集電体の他方の面と少なくとも一部が接」する点で一致する。
(カ)特定事項1F
甲2発明において、「金属箔5は、負極4と摺接した状態に配され」るから、本件発明1と甲2発明とは、「前記第1の層と前記第2の積層体とは、互いに摺動することができ」る点で一致する。
(キ)特定事項1G
甲2発明は、「シート状リチウムイオン二次電池1」であり「良好な可撓性を有した電池」であるから、本件発明2と甲2発明とは、「可撓性を有する、リチウムイオン蓄電池」である点で一致する。
以上より、本件発明1と甲2発明とは、
「構造物と、前記構造物を包む外装体と、を有し、
前記構造物は、第1の層と、第2の積層体と、を有し、
前記第1の層は、第1の集電体と、を有し、
前記第2の積層体は、第2の集電体と、前記第2の集電体の一方の面に設けられた第2の電極活物質と、を有し、
前記第1の集電体の他方の面は、前記第2の集電体の他方の面と少なくとも一部が接し、
前記第1の層と前記第2の積層体とは、互いに摺動することができ、
可撓性を有する、リチウムイオン蓄電池」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1:「第1の層」について、本件発明1は、「第1の積層体」であり、「第1の集電体と、前記第1の集電体の一方の面に設けられた第1の電極活物質と、を有し、前記第1の電極活物質は、リチウム及びコバルトを含む複合酸化物を有」するのに対して、甲2発明は、「負極4の集電補助体として機能」する金属箔である点
イ 相違点についての判断
相違点1について
甲2発明において、「金属箔」は一つの層であり、金属箔を積層体とすることは、提出された証拠には、記載されていない。また、積層体とする動機付けも存在しない。
さらに、「金属箔5」は、「負極4の集電補助体として機能」するものである。
そして、リチウムイオン蓄電池において、リチウム及びコバルトを含む複合酸化物を有する電極活物質を設けた集電体は、正極として機能することは、文献を挙げるまでもなく技術常識であり、「負極4の集電補助体として機能」する「金属箔5」に「リチウム及びコバルトを含む複合酸化物を有」する「第1の電極活物質」を集電体の「一方の面に設け」る動機付けは存在しない。
したがって、甲1W発明によらず、相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たものとはいえない。
よって、本件発明1は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
<申立人の主張について>
申立人は、相違点1に関連して、特許異議申立書26~27頁において、「甲第1号証の第1金属集電体10、第1活物質層100は可撓性二次電池に用いられるものであり、甲第2号証と技術分野を一にし、共に金属集電体同士が摺動する技術である。甲第2号証に接した当業者が、甲第2号証と同様に金属集電体同士が摺動する特徴を有する可撓性二次電池が記載された甲第1号証を甲第2号証と組み合わせ、甲第2号証の「金属箔5」に甲第1号証の「リチウム及びコバルトを含む複合酸化物を有する第1活物質層」を付加して積層体を構成することは、容易に想到し得る事項である」旨主張する。
しかしながら、上記のとおり、リチウム及びコバルトを含む複合酸化物を有する電極活物質を設けた集電体は、正極として機能するものあり、「負極4の集電補助体として機能」する「金属箔5」に「リチウム及びコバルトを含む複合酸化物を有」する「第1の電極活物質」を集電体に「一方の面に設け」る動機付けは存在しない。
よって、申立人の主張は採用できない。
ウ 本件発明2との対比
本件発明2の特定事項2A~2C及び2E~2Gは、本件発明1の特定事項1A~1C及び1E~1Gと同じであるから、本件発明2と甲2発明との対比は、前記アの(エ)を除いて、前記ア(ア)~(ウ)及び(オ)~(キ)と同様に対比できる。
(エ’)特定事項2D
本件発明2と甲2発明とは、「前記第2の積層体は、第2の集電体と、前記第2の集電体の一方の面に設けられた第2の電極活物質と、を有」する点で一致する。
そして、前記ア(ア)~(ウ)及び(オ)~(キ)、及び上記(エ’)より、本件発明2と甲2発明とは、
「構造物と、前記構造物を包む外装体と、を有し、
前記構造物は、第1の層と、第2の積層体と、を有し、
前記第1の層は、第1の集電体と、を有し、
前記第2の積層体は、第2の集電体と、前記第2の集電体の一方の面に設けられた第2の電極活物質と、を有し、
前記第1の集電体の他方の面は、前記第2の集電体の他方の面と少なくとも一部が接し、
前記第1の層と前記第2の積層体とは、互いに摺動することができ、
可撓性を有する、リチウムイオン蓄電池」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1’:「第1の層」について、本件発明2は、「第1の積層体」であり、「第1の集電体と、前記第1の集電体の一方の面に設けられた第1の電極活物質と、を有し、前記第1の電極活物質は、リチウム及びコバルトを含む複合酸化物を有」するのに対して、甲2発明は、「負極4の集電補助体として機能」する金属箔である点
相違点2’:「第2の電極活物質」について、本件発明2は、「リチウム及びコバルトを含む複合酸化物を有」することを特定しているのに対して、甲2発明は、「難黒鉛化炭素系材料や黒鉛系材料の炭素材料」である点
エ 相違点についての判断
相違点1’は、前記イで判断した本件発明1と甲2発明との相違点である相違点1と同じであるから、同様の理由により、相違点1’は、当業者が容易になし得たものとはいえない。
よって、相違点2’について検討するまでもなく、本件発明2は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701107