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特許異議申立

2023-701077

豆乳飲料およびその製造方法

審判番号
2023-701077
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-027286
登録番号
7256215
請求日
2023年10月10日
審決日
2024年02月05日
公報発行日
2024年03月29日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社 伊藤園
  • 【権利者代理人】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
  • 【異議申立人】山田 友則
審判長/審判官
  • 審判長 井上 猛
  • 審判官 池渕 立
  • 審判官 土屋 知久
分類
P1651.121-Y (A23L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7256215号発明「豆乳飲料およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7256215号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7256215号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願(以下、「本願」という。)は、令和 3年 2月24日の出願であって、令和 5年 4月 3日に特許権の設定登録がされ、同年同月11日に特許掲載公報が発行され、その後、同年10月10日に、請求項1~4(全請求項)に係る特許に対し、特許異議申立人である山田友則(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の特許請求の範囲の請求項1~4に係る発明(以下、「本件特許発明1~4」という。また、これらを総称して「本件特許発明」という。)は、本願の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 粉末脱脂大豆を0.8質量%~3.0質量%含有し、脂質が0g/100g以上1.5g/100g以下、糖質が0.5g/100g以上2.5g/100g以下、カロリーが10kcal/100g以上40kcal/100g以下、たんぱく質が2.5g/100g以上5.0g/100g以下、イソフラボンが15.0mg/100g以上50mg/100g以下、pHが7.0~8.4であることを特徴とする、均質化された全固形分4.0%以上7.0%以下の豆乳飲料。 【請求項2】 さらに寒天を0.01質量%~0.10質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の豆乳飲料。 【請求項3】 豆乳を大豆固形分3.0%~5.0%に調整する工程と、 該調整した豆乳に対して0.8質量%~3.0質量%の粉末脱脂大豆を添加して混合液を作製する工程と、 該混合液を均質化処理する工程と、 pHを7.0~8.4に調整する工程を含むことを特徴とする全固形分4.0%以上7.0%以下の豆乳飲料の製造方法。 【請求項4】 さらに寒天を、前記豆乳飲料に対して0.01質量%~0.10質量%を添加する工程を含むことを特徴とする請求項3に記載の豆乳飲料の製造方法。」 第3 申立理由の概要 申立人は、証拠方法として、いずれも本願の出願日前に公知となった、下記甲第1~4、6号証、及び本願の出願日後に公知となった甲第5号証を提出して、以下の申立理由1~2により、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 1 申立理由1(進歩性) 本件特許発明1~4は、甲第1号証に記載された発明と、甲第2号証に記載された事項に基いて、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本件特許発明1~4に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 2 申立理由2(進歩性) 本件特許発明1、3は、甲第2号証に記載された発明と、甲第1号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本件特許発明1、3に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 [証拠方法] 甲第1号証:国際公開第2020/208734号 甲第2号証:国際公開第2011/052793号 甲第3号証:内閣府食品安全委員会、大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A、平成18年5月16日更新 甲第4号証:特開2012-16348号公報 甲第5号証:特開2021-132580号公報 甲第6号証:農林水産省、豆乳類の日本農林規格、制定昭和56年11月16日、最終確認平成24年7月17日 (以下、甲第1号証~甲第6号証をそれぞれ「甲1」~「甲6」という。) 第4 当審の判断 上記申立理由1~2は、以下に示す理由により、いずれも採用できない。 1 甲号証の記載及び記載された発明 (1)甲1の記載及び甲1に記載された発明 ア 甲1には、「植物性タンパク質含有液状組成物及びその製造方法」(発明の名称)に関して、次の記載がある(なお、下線は当審が付与したものであり、「…」は記載の省略を表す。以下同様。)。 (1ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 以下の(a)~(e)の要件を満たす、豆類由来のタンパク質と脂質を含有する植物性タンパク質含有液状組成物: (a)該液状組成物中のタンパク質の含有量が6~17質量%であること; (b)タンパク質と脂質の含有比が質量比で10:0.7~10:5.5であること; (c)ブリックス値が10%以上であること; (d)該液状組成物中の食物繊維の含有量が3質量%以下であること;及び (e)B型粘度計で測定される粘度が以下の(e1)~(e3)の少なくとも何れか一つを満たすこと。 (e1)20℃における粘度が4600mPa・s以下 (e2)5℃における粘度が5000mPa・s以下 (e3)50℃における粘度が3400mPa・s以下 … 【請求項6】 pHが5.5~7.5である、請求項1~5のいずれか1項に記載の植物性タンパク質含有液状組成物。」 (1イ)「技術分野 [0001] 本発明は、植物性タンパク質を高濃度で含有する植物性タンパク質含有液状組成物、該液状組成物を含む飲食品、及び、該液状組成物の製造方法に関する。 背景技術 [0002] 近年、美容・健康意識の高まりにより、単なるダイエットにとどまらず、適度に筋肉がつき、健康的で引き締まった体を作るために、タンパク質を効率的に摂取できる飲食品が求められている。タンパク質は、肉、魚、卵などの動物性タンパク質と、豆類や穀類などの植物性タンパク質に分類される。動物性タンパク質は、アミノ酸スコアや体内での利用効率が高いものの、肉などの動物性タンパク源は飽和脂肪酸やコレステロールの含有量が高く、過剰摂取により生活習慣病や肥満の引き金となることもある。一方、植物性タンパク質は、動物性タンパク質に比べて脂質やカロリーが少ないため、動物性タンパク質を控え、その減らした分を植物性タンパク質で補うことが提唱されていることから、植物性タンパク源の代表格である大豆や、醤油、味噌、豆腐、豆乳などの大豆加工食品が注目されている。しかしながら、これらは、大量に摂取することが困難である、タンパク質の含有量が少ない、即食性が低いなどの理由で、植物性タンパク質を効率的に摂取できる飲食品として満足できるものではなかった。 [0003] 上記飲食品のうち、豆乳は容易に植物性タンパク質を摂取できるものの、脂質の含有量が高く、脂質に由来する豆臭や独特の風味が強い。また、100gあたりのタンパク質の含有量が3~4g程度と高いものではない。さらに、豆乳を美味しく飲みやすい飲料とするために、酸度の高い果汁や酸味料を配合すると、酸によるタンパク質の凝集・固化が生じるという問題があり、殊にタンパク質の含有量が高いとその傾向が顕著である。」 (1ウ)「発明が解決しようとする課題 [0006] 従って、本発明の課題は、植物性タンパク質を高濃度で含有しても、ゲル化や酸による凝集・固化が起こらず、舌触り、喉ごし、及び風味が良好である植物性タンパク含有液状組成物を提供することにある。」 (1エ)「[0011]1.植物性タンパク質含有液状組成物: 本発明の植物性タンパク質含有液状組成物(以下、本明細書中、単に「本発明の液状組成物」と称する場合がある)は、豆類由来のタンパク質を高濃度で含有する植物性の高タンパク質素材である。本発明の液状組成物は、タンパク質と脂質との含有比、ブリックス値、及び食物繊維含有量が所定範囲内であると共に、B型粘度計で測定される所定温度での粘度が所定範囲内であることを特徴とする。 [0012](豆類) 「豆類」としては、マメ科植物に属する食用の豆類であれば特に限定はされないが、大豆(黄大豆、青大豆、黒大豆)、小豆、ささげ、りょくとう、いんげん豆、べにばないんげん(白花豆、紫花豆)、えんどう豆(青えんどう、赤えんどう、白えんどう)、ひよこ豆、レンズ豆、落花生、そら豆等が挙げられる。また、これらの豆類から搾油して脱脂したものや、これらの豆類に焙煎、乾燥、脱皮、粉砕、発酵などの加工を施したものであってもよい。特に、大豆、脱脂大豆、えんどう豆、ひよこ豆、小豆、りょくとう、落花生、脱脂落花生が好ましい。上記の豆類は1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また2種以上の豆類を混合して用いる場合は、大豆を豆類全量に対して5質量%以上含有することが好ましい。 [0013](豆類の乳汁) 一般に、「豆乳」とは、大豆を水に浸漬して膨潤させた後、磨砕して懸濁液(呉)を得、これを遠心分離等によって固液分離し、不溶性残さ(おから)を除去することによって得られる乳状液をいう。本発明における「豆類の乳汁」とは、豆類を原料とした乳状液であればどのようなものでもよいが、この「豆乳」の製法に準じて調製してもよく、本発明の液状組成物の原料となるものである。上記の「豆類の乳汁」としては、具体的には、1)豆類を水に浸漬して膨潤させた後にすり潰し、水を加えて煮つめ、濾過して不溶性残さ(おから)を除去したもの、2)豆類を蒸煮した後に磨砕、濾過して不溶性残さ(おから)を除去したもの、3)大豆を原料とする市販の豆乳(いわゆる無調整豆乳)などが挙げられる。 [0014](タンパク質の含有量) 本発明の液状組成物は、比較的高濃度のタンパク質を含有する。具体的に、本発明の液状組成物中のタンパク質の含有量の下限は、該液状組成物全量に対し、通常6質量%以上、好ましくは7質量%以上、より好ましくは8質量%以上である。タンパク質の含有量が前記下限値より低いと、効率良くタンパク質を摂取することができない場合がある。一方、本発明の液状組成物中のタンパク質の含有量の上限は、該液状組成物全量に対し、通常17質量%以下、好ましくは16質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。タンパク質の含有量が前記上限値より高いと、脂質量や糖質量や粘度をコントロールしても、特に冷蔵下ではゲル化が進み、流動性がなくなる場合がある。 [0015] なお、液状組成物中のタンパク質の含有量は、例えば豆類の乳汁の濃縮処理、原料となる豆類の配合量の調整等の手法により調整することができる。 … [0017](脂質の含有量) 本発明の液状組成物の脂質含有量は、後述のタンパク質と脂質との含有比を充足する限り、制限されるものではないが、その下限としては、該液状組成物全量に対し、例えば0.5質量%以上、中でも1質量%以上、更には2質量%以上であることが好ましい。脂質の含有量が前記下限値より低いと、タンパク質の苦味や収斂味が目立ち、飲食品として摂取しづらくなるほか、舌触りのざらつきが目立つようになる場合がある。一方、本発明の液状組成物の脂質含有量の上限としては、該液状組成物全量に対し、例えば8質量%以下、中でも6質量%以下、更には5質量%以下であることが好ましい。脂質の含有量が前記上限値より高いと、特に低温での粘度が高くなりやすく、流動性が失われるほか、栄養面でも高カロリーとなってしまう場合がある。 [0018] なお、液状組成物中の脂質の含有量は、例えば豆類の乳汁の濃縮処理、原料となる豆類の脱脂、豆類由来の脂質成分の添加等の手法により調整することができる。 … [0020](タンパク質と脂質との含有比) 本発明の液状組成物は、タンパク質と脂質との含有比が所定範囲内であることを特徴の一つとする。具体的に、本発明の液状組成物中のタンパク質と脂質との含有比は、タンパク質:脂質の質量比として、通常10:0.7以上、好ましくは10:0.9以上、より好ましくは10:1以上であり、また、通常10:5.5以下、好ましくは10:5以下、より好ましくは10:4以下である。タンパク質と脂質との含有比が上記範囲内でないと、流動性、舌触り、のど越しが悪くなる場合がある。 … [0025](ブリックス値) 本発明の液状組成物は、ブリックス値が所定値以上であることを特徴の一つとする。本発明において「ブリックス」(Brix)値とは、溶液中に含まれる可溶性固形分(例えば、糖、タンパク質、ペプチド等)の総濃度を表す指標であり、20℃で測定された当該溶液の屈折率を、ICUMSA(ICUMSA(国際砂糖分析法統一委員会)の換算表を使用して、ショ糖溶液の質量/質量%に換算した値である。単位は「°Bx」、「%」又は「度」で表示される。本発明の液状組成物のブリックス値は、通常10%以上、好ましくは12%以上、より好ましくは14%以上である。ブリックス値が前記下限値より低いと、ザラつきが目立つようになり、舌触りが悪くなり、風味や味質が悪化する場合がある。一方、本発明の液状組成物のブリックス値の上限は、制限されるものではないが、例えば30%以下、中でも27%以下であることが好ましい。ブリックス値が前記上限値より高いと、のど越しが悪くなる場合がある。」 (1オ)「[0045](pH) 本発明の液状組成物のpHの下限は、特に制限されないが、通常は5.0より高いことが好ましく、5.5以上がより好ましく、6.0以上がさらに好ましい。低pHにすると、舌触りのザラつきや流動性低下などが生じ、飲食時の官能品質低下が問題となる場合がある。一方、本発明の液状組成物のpHの上限は、特に制限されないが、7.5以下が好ましく、7.0以下がより好ましい。液状組成物のpHが前記上限値を超えると、呈味や舌触りが悪くなる場合がある。 [0046] なお、液状組成物のpHは、例えば果汁や各種有機酸などの酸を用いる等の手法により調整することができる。 … [0048]2.植物性タンパク質含有液状組成物を含む飲食品: 上述の本発明の液状組成物は、そのままでも飲用することができるが、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜、副原料や食品衛生法上許容されうる添加物等を混合して飲食品の形態で提供することができる。よって、本発明の液状組成物の飲食品における態様には、当該組成物が飲食品そのものである場合と、飲食品を製造する際の原料あるいは中間製品である場合とが含まれる。飲食品は、液状の飲食品に限定はされず、ゲル化剤(ゼラチン、寒天、ペクチン、ジェランガム、アルギン酸ナトリウム等)を添加して、ゲル状飲食品とすることもできる。 [0049] 飲食品の種類としては、特に限定はされず、豆乳飲料、果実又は野菜入り飲料、ゼリー飲料、炭酸飲料、スポーツドリンク等の飲料類;ゼリー、ババロワ、ムース、プリン等の菓子類;ヨーグルトやチーズ等の乳製品;アイスクリーム、ジェラート、スムージー等の冷菓・氷菓;ホイップクリーム等のクリーム類;介護食、離乳食等の各種流動食;スープ、ホワイトソース、パスタソース、鍋つゆ、マヨネーズ、ドレッシング、ポン酢醤油等の調味料が挙げられる。…」 (1カ)「[0055](濃縮処理) 液状組成物中のタンパク質の含有量、脂質の含有量、タンパク質と脂質との含有比、食物繊維の含有量等を調整する際には、原料として用いる豆類の乳汁の成分組成にもよるが、豆類の乳汁を濃縮することが好ましい場合がある。濃縮を行う場合、濃縮の方法は特に限定されない。例としては、減圧濃縮、加熱濃縮、凍結濃縮、膜濃縮が挙げられるが、減圧濃縮が好ましい。 [0056](酵素処理・均質化処理) 前述のように、本発明の液状組成物の製造時に、酵素処理及び/又は均質化処理を行い、液状組成物のD50及び/又は液状組成物中のタンパク質の平均分子量を調整することが好ましい場合もある。酵素処理及び/又は均質化処理を行い、液状組成物のD50及び/又は液状組成物中のタンパク質の平均分子量を前記上限値以下に抑えることで、舌触りなどの品質を向上させることが可能となる。酵素処理及び均質化処理はいずれか一方を行ってよく、両方を行ってもよい。酵素処理及び均質化処理の両方を行う場合は、酵素処理の後に均質化処理を行うことが好ましい。 … [0062] 一方、均質化処理は、例えば、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高速ホモジナイザー、マスコロイダー、媒体撹拌ミル等を用いて行うことができるが、高圧ホモジナイザーを用いるのが好ましい。高圧ホモジナイザーを用いる場合は、機種、液量、温度、液性(粘度、流動性等)により圧力は適宜調整すればよいが、例えば50MPa前後が適当である。均質化処理により、本発明の液状組成物の液性を良好に保つことができる。また、本発明の液状組成物を酸性飲料などの原材料として用いる場合でも、その配合上で添加される酸材の影響による凝集、沈殿、ざらつきなどの舌触りの悪化を防ぐことができる。さらに上記酵素処理と併用すれば、酵素処理による苦味・異味などの呈味増加を抑制することもできる。」 (1キ)「(実施例1~9、比較例1~5) [0070](1)試験品の調製 下記表1に示す大豆由来のタンパク質と脂質を含む原料1~4を用い、下記表2に示す実施例1~9及び比較例1~5の各液状組成物を調製し、飲用適性を評価した。原料1~4の食物繊維の含有量は、プロスキー法により測定した値である。 [0071] [表1] [図:0001407862000001.jpg] [0072] 原料1、2は、表2に示す濃縮倍率となるように50℃で減圧濃縮を行ってから使用した。原料1、2、3、4及び水を表2に示す配合率(%)で混合することによって、タンパク質の含有量及びタンパク質と脂質との含有比(質量比)の異なる実施例1~9及び比較例1~5の各液状組成物を調製した。タンパク質と脂質との含有比は、一般的な豆乳飲料と同程度の10:8から10:0.03まで段階的に調整した。 [0073] また、実施例3の液状組成物は、後述の試験例3と同様、原料の混合後に酵素処理及び均質化処理を行った。酵素処理は、プロテアーゼM(天野エンザイム株式会社製)を、液状組成物に対して0.1w/v%添加し、40℃で1時間反応させることにより行った。また、均質化処理は、酵素処理の後、高圧ホモジナイザー(IRO SOAVI社製「Panda PLUS 2000型」)を用いて50MPaの圧力で2回パスさせることにより行った。 [0074] [表2] [図:0001407862000002.jpg] 」 (1ク)「[0079](3)試験結果 上記の各試験結果を下記表3に示す。またpH及びBrixも合わせて示す。 [0080] [表3] [図:0001407862000003.jpg] 」 イ 甲1に記載された発明 (ア)甲1に記載された発明が解決しようとする課題は、上記(1ウ)の段落[0006]によれば、「植物性タンパク質を高濃度で含有しても、ゲル化や酸による凝集・固化が起こらず、舌触り、喉ごし、及び風味が良好である植物性タンパク含有液状組成物を提供すること」であると認められる(以下、「課題1」という。)。 (イ)上記課題1は、上記(1ア)の請求項1に記載の植物性タンパク質含有液状組成物の発明によって解決し得るものであるところ、上記(1キ)、(1ク)の実施例1~9は当該発明の実施例に相当するものであり、これら実施例のうち、特に実施例8の液状組成物に注目すると、実施例8は、[表1]及び[0072]の記載によれば、以下の原料2、3及び水を次の配合割合で配合したものであるから、 ・原料2:低脂肪豆乳「美味投入(不二製油社製)」を1.7倍に減圧濃縮したものを98%配合 ・原料3:粉末状大豆タンパク「フジプロF(不二製油社製)」を1%配合 ・水:1%配合 請求項1の記載に倣うと、甲1には次の液状組成物の発明が記載されているものと認められる。(以下「甲1発明」という。)。 「低脂肪豆乳「美味投入(不二製油社製)」を1.7倍に減圧濃縮したものを98%、粉末状大豆タンパク「フジプロF(不二製油社製)」を1%、水を1%配合した、大豆由来のタンパク質と脂質を含有する植物性タンパク質含有液状組成物であって、 (a)該液状組成物中のタンパク質の含有量が10g/100gであり、 (b)タンパク質と脂質の含有比が質量比で10:1であり、 (c)ブリックス値が18.4%であり、 (d)該液状組成物中の食物繊維の含有量が0.4g/100gであり、 (e)B型粘度計で測定される粘度が以下のとおりであり、 (e1)20℃における粘度が220mPa・s (e2)5℃における粘度が340mPa・s (e3)50℃における粘度が200mPa・s (f)pHが6.28である、 植物性タンパク質含有液状組成物。」 また、実施例8の液状組成物の製造方法に注目すると、甲1には次の液状組成物の製造方法の発明が記載されているものと認められる。(以下「甲1方法発明」という。)。 「低脂肪豆乳「美味投入(不二製油社製)」を1.7倍に減圧濃縮する工程と、 前記減圧濃縮した低脂肪豆乳「美味投入(不二製油社製)」を98%、粉末状大豆タンパク「フジプロF(不二製油社製)」を1%、水を1%混合する工程と、 を含む、大豆由来のタンパク質と脂質を含有する植物性タンパク質含有液状組成物の製造方法であって、 (a)該液状組成物中のタンパク質の含有量が10g/100gであり、 (b)タンパク質と脂質の含有比が質量比で10:1であり、 (c)ブリックス値が18.4%であり、 (d)該液状組成物中の食物繊維の含有量が0.4g/100gであり、 (e)B型粘度計で測定される粘度が以下のとおりであり、 (e1)20℃における粘度が220mPa・s (e2)5℃における粘度が340mPa・s (e3)50℃における粘度が200mPa・s (f)pHが6.28である、 植物性タンパク質含有液状組成物の製造方法。」 (2)甲2の記載、及び甲2に記載された発明 ア 甲2には、「豆乳の製造方法及び豆腐の製造方法」(発明の名称)に関して、次の記載がある。 (2ア)「つぎに第2の発明の背景技術を説明すると、昨今、食品の機能性に対する消費者の関心が高まり、大豆の持つさまざまな健康機能性についても広く知られるようになってきた。大豆の主な機能性成分としては、大豆タンパク、イソフラボン、レシチン、サポニン、大豆油などがあるが、そのうち大豆油はリノール酸やリノレン酸等の多価不飽和脂肪酸を含み、またコレステロールを含まないため、動物油と比較して対照的に健康に良い油として評価が定着している。 また、豆乳や豆腐はダイエット食品というイメージもあるが、それでもこれを多く食べると、それなりに摂取カロリーも増えることになる。 … したがって、豆乳や豆腐で大豆タンパクを多く摂取しようとすると、当然のことながら脂質も多く摂ることになり、結果的に多くのエネルギー(いわゆるカロリー)を摂取してしまう。 最近は、さまざまな食品分野でカロリーオフの商品が開発され、それが人気を博しており、豆乳や豆腐の分野でも、消費者の摂取カロリー低減志向に対応した商品の開発が求められるようになってきた。 一般的に、カロリーを低減した食品を開発するためには、エネルギーの素となる炭水化物、タンパク質、脂質のいずれかの成分を低減する必要がある。 … 一方、豆乳の場合においても、豆乳を高速遠心分離機または超遠心分離機にかけてタンパク質、脂肪などの成分を分画する方法は以前より行われていた(特許文献11、12及び非特許文献3)。例えば、特許文献11は、タンパク質を分画、測定する手段として遠心分離法を用いており、特許文献12は、豆乳中のオイルボディーを分離する手段として遠心分離法を用いている。 ただ非特許文献3にあるように、豆乳においては、乳化状態が非常に安定であるため、脂肪(クリーム層)を分離するには強い遠心条件が必要である。そのため特許文献11及び12は、そのような知見に基づき豆乳を強い遠心条件で遠心分離機にかけて、分離目的の必要成分を分離している。このように、豆乳においても牛乳と同様に遠心分離法で脂肪を分離できることはわかっているが、牛乳と比較して豆乳の乳化状態が安定であるために、脂肪を分離するための分離効率が悪いということが、豆乳、豆腐業界における脂肪低減商品を開発する際の課題となっていた。第2の発明の目的は、脂肪を分離するための分離効率を向上させて、脂肪を低減した豆乳を効率よく製造できるようにした豆乳の製造方法を提供することにある。」(第4頁下から6行~第7頁4行) (2イ)「また本発明者らは第2の発明(請求項3乃至5)として、脂肪を低減した豆乳を効率よく製造できる方法を鋭意検討した結果、大豆を加水後に磨砕又は破砕して得た生呉、それを加熱処理した煮呉、さらには大豆粉末を水に溶解した生粉末豆乳、それを加熱した加熱粉末豆乳のような、おから成分等の不溶成分を除去する前の大豆原料液を高速遠心分離機にかけることにより、脂肪を浮上成分として楽に分離でき、しかも従来の方法であるおから成分等不溶成分除去後の豆乳を遠心分離機にかける場合より脂肪の分離効率が格段に良くなることを見出し、第2の発明を完成するに至った。 … 第2の発明(請求項3乃至5)の豆乳の製造方法は、簡単な遠心分離工程を経るだけで、脂肪を効率よく分離して、脂肪を低減した豆乳を効率的に得ることができるという効果が達成される。」(第10頁17行~第11頁下から8行) (2ウ)「第2の発明の実施例 以下、第2の発明について実施例3及び4を挙げて具体的に説明するが、第2の発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 実施例3 豆腐工場の製造現場において、常法に基づき連続的に製造しているラインから、生呉、煮呉およびおから分離後の豆乳を採取し、試験に供した。 当製造ラインでは、カナダ産大豆を用いて、一晩水に浸漬後に加水しながらグラインダーで磨砕し、連続加熱釜において加熱、スクリュープレス装置でおからを分離して豆乳を製造した。 連続的に流れている工程中より、グラインダー磨砕直後の「生呉」、連続加熱釜において加熱直後の「煮呉」、スクリュープレス装置でおからを分離した直後の「豆乳」をそれぞれ採取したものである。 それぞれの原料液を、ラボにおいて高速遠心分離機(日立工機(株)18PR-52)用遠心チューブに分注し、8000rpm(チューブ中心の遠心加速度約6000×g)、30分間の遠心分離を行った。 それぞれの原料液の温度は40℃、遠心分離機の温度条件も40℃とした。 遠心分離操作によってそれぞれの原料液は、脂肪(クリーム)層、豆乳層、沈殿層の3層に分離する。これよりチューブ上層のクリーム層を取り除き、沈殿層以外の豆乳層を採取した。遠心分離機にかける前の豆乳を対照として、それぞれの原料液からの脂肪を分離した豆乳との成分比較を行った。 成分分析は、各豆乳の固形分、脂質、タンパク質、灰分の含量を常法に基づき分析し、豆乳の固形分量から脂質、タンパク質、灰分の含量を差し引いた残りを炭水化物含量として表した。すなわち、固形分は、105℃、24時間乾燥後の重量を測定し、乾燥固形分として示した。 脂質含量は、ヘキサン-イソプロパノール法により脂質を抽出し測定した。 タンパク質含量は、ケルダール分析装置(フォス・ジャパン(株)製ケルテックシステム)により測定し、窒素換算係数5.71を用いて算出した。 また灰分含量は、マッフル炉(Carbolite Furnaces社製)を用いて灰化し測定した。 その分析結果を、表7に示した。 [図:0001407862000004.jpg] 表7に示すように、脂質含量に関しては固形分量に対する割合も記載した。 生呉、煮呉、豆乳を原料液にした場合の、各脂肪分離豆乳の脂質含量を固形分量に対する割合(%)で比較すれば、それぞれ8%、5%、11%(対照豆乳は29%)となり、豆乳を原料液にした場合より、生呉、煮呉を原料液にした場合の方が、格段に脂肪の分離効率が向上することがわかった。」(第23頁9行~第24頁下から1行) (2エ)「実施例4 市販の国産大豆粉末を原料にして、以下の試験を実施した。 まず大豆粉末重量の5倍量の水を加え、ホモジナイザーを用いて分散溶解して「生粉末豆乳」とした。この生粉末豆乳を、平底の丸型フラスコに入れ、沸騰水浴中で蒸気を吹込みながら加温し、95℃に達した時点で蒸気吹込みを止め、さらに2分間沸騰水浴中で加熱した。こうして得た豆乳を「加熱粉末豆乳」とした。 この加熱粉末豆乳を、ろ布を装着した遠心脱水機((株)コクサン製H-112)にかけて不溶成分(おから成分)を除去し、豆乳を得て「ろ過豆乳」とした。 それぞれの豆乳を原料液として、実施例1と同様に高速遠心分離機にかけた。 遠心分離の条件は、実施例1と同様に、40℃、8000rpm、30分間とした。 遠心分離後、上層のクリーム層を取り除き、沈殿層以外の豆乳層を分離採取した。 遠心分離機にかける前のろ過豆乳を対照として、それぞれの原料液からの脂肪分離豆乳との成分比較を行った。 成分分析は、実施例3と同様に実施した。 その分析結果を、表8に示した。 [図:0001407862000005.jpg] 」(第25頁) イ 甲2に記載された発明 (ア)甲2に記載された発明が解決しようとする課題の一つは、上記(2ア)によれば、「脂肪を分離するための分離効率を向上させて、脂肪を低減した豆乳を効率よく製造できるようにした豆乳の製造方法を提供すること」(以下、「課題2」という。)であると認められる。 (イ)上記課題2は、上記(2イ)に記載の第2の発明によって解決し得るものであるところ、上記(2ウ)、(2エ)の実施例3~4は第2の発明の実施例に相当するものであり、これら実施例3~4のうち、特に実施例3の製造方法によって製造された、表7の大豆原料液が「豆乳」である脂肪分離豆乳に注目すると、甲2には次の脂肪分離豆乳の発明が記載されているものと認められる。(以下「甲2発明」という。なお、特許異議申立書の第20頁のイでは、甲2に記載された発明の認定を、実施例4、3、1についての記載を恣意的に組み合わせることによって行っているが、そのような恣意的に組み合わせに基づく発明の認定は甲2に記載された発明として適切とはいえないため、本決定では、上記イにおいて最も多数の引用がなされている実施例3で大豆原料液が「豆乳」であるものを甲2発明の認定の基礎とした。)。 「カナダ産大豆を一晩水に浸漬後、加水しながらグラインダーで磨砕して生呉とし、前記生呉を連続加熱釜で加熱して煮呉とし、前記煮呉からスクリュープレス装置でおからを分離して豆乳とし、前記豆乳を原料液として高速遠心分離機によって40℃、8000rpm、30分間の遠心分離を行って、上層の脂肪(クリーム)層を取り除き、沈殿層以外の豆乳層を採取した、次の成分を含有する脂肪分離豆乳。 固形分 10.0g/100g 脂質 1.1g/100g タンパク質 5.4g/100g 炭水化物 2.9g/100g 灰分 0.6g/100g」 また、上記実施例3~4のうち、特に実施例4の製造方法によって製造された表8の「生粉末豆乳」を大豆原料液とする脂肪分離豆乳の製造方法に注目すると、甲2には次の脂肪分離豆乳の製造方法の発明が記載されているものと認められる。(以下「甲2方法発明」という。なお、特許異議申立書の第27頁のイでは、甲2に記載された発明の認定を、実施例4のうち「生粉末豆乳」を大豆原料液としたものに基づいて行っていることに倣って、本決定においても、実施例4で大豆原料液が「生粉末豆乳」であるものを甲2方法発明の認定の基礎とした。)。 「国産大豆粉末に5倍量の水を加え、ホモジナイザーを用いて分散溶解して生粉末豆乳とする工程と、 前記生粉末豆乳を高速遠心分離機によって40℃、8000rpm、30分間の遠心分離を行う工程と、 分離したそれぞれの上層の脂肪(クリーム)層を取り除き、沈殿層以外の豆乳層を採取する工程によって、 固形分が13.3g/100g、脂質2.0g/100g、タンパク質5.2g/100g、炭水化物5.3g/100g、灰分0.8g/100gとする、 脂肪分離豆乳の製造方法。」 (3)甲3の記載 ア 甲3には、「大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A」に関して、次の記載がある。 (3ア)「問6 :大豆イソフラボンは、どのような食品にどのくらい含まれていますか。 大豆イソフラボンは、大豆を原料とする食品のほとんどに含まれていますが、原料大豆の種類や食品の製造方法などによってその含有量は異なります。 [図:0001407862000006.jpg] 」 (4)甲4の記載 ア 甲4には、「減脂豆乳及び大豆乳化組成物、並びにそれらの製造法」(発明の名称)に関して、次の記載がある。 (4ア)「【0082】 <減脂大豆蛋白素材の風味比較> 実施例5で得られた本発明の減脂豆乳、ヘキサン脱脂された脱脂大豆から調製された比較例2の減脂豆乳、実施例8で得られた本発明の分離大豆蛋白(SPI)、分析例2の市販のSPI「GPF Meat SPI 6500」、ヘキサンで脱脂された脱脂大豆から製造される従来市販品のSPI「フジプロF」(不二製油(株)製)について、それぞれの風味を比較し、相対評価を行った。評価結果を以下に示した。」 (5)甲5の記載 ア 甲5には、「餅菓子」(発明の名称)に関して、次の記載がある。 (5ア)「【実施例】 【0040】 検討1.餅菓子の調製 (実施例1) 餅粉(群馬製粉株式会社製「糯粉 No.10」)100部及び水82部を混合し、耳たぶくらいの固さになるように、ケンミキサー(愛工舎製作所製「KENMIX KMM770」)と付属の備品であるビーターで練り合わせた。餅粉及び水を練り合わせた生地を分割し、蒸し器に並べ、40分間蒸した。蒸した生地が熱いうちに、上白糖35部、及び低脂肪豆乳「美味投入」(不二製油株式会社製、固形分9.7%、蛋白質含量5.3%、炭水化物含量3.3%、脂質含量5.0%(固形分中)、P/C比160%)37部を添加し、ケンミキサー(愛工舎製作所製「KENMIX KMM770」)と付属の備品であるビーターを使用し、捏ね上げた。捏ね上げた生地を、直径3cmの球状に成形し、実施例1の餅菓子を得た。」 (6)甲6の記載 ア 甲6には、「豆乳類の日本農林規格」に関して、次の記載がある。 (6ア)「 [図:0001407862000007.jpg] 」(第1頁~第2頁上部) 2 申立理由1(甲1を主引例とする進歩性)について (1)本件特許発明1について ア 本件特許発明1と甲1発明との対比 (ア)甲1発明の「粉末状大豆タンパク「フジプロF(不二製油社製)」」は、甲4の(4ア)の記載によれば、脱脂された脱脂大豆から製造された粉末状大豆であるから、甲1発明の「粉末状大豆タンパク「フジプロF(不二製油社製)」を1%」「配合した」ことは、本件特許発明1の「粉末脱脂大豆を0.8質量%~3.0質量%含有し」たことに相当する。 (イ)甲1発明の「植物性タンパク質含有液状組成物」は、「低脂肪豆乳「美味投入(不二製油社製)」を1.7倍に減圧濃縮したものを98%含有していることから、ほぼ豆乳からなるものであり、当該液状組成物は上記(1オ)の[0048]によればそのまま飲用することができるものでもあるから、本件特許発明1の「豆乳飲料」に相当する。 (ウ)甲1発明の「該液状組成物中のタンパク質の含有量が10g/100gであり」かつ「タンパク質と脂質の含有比が質量比で10:1であ」ることは、液状組成物中の脂質の含有量が1g/100gであることを意味するから、本件特許発明1の「脂質が0g/100g以上1.5g/100g以下」であることに相当する。 (エ)以上の検討によれば、本件特許発明1と甲1発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。 (一致点) 「粉末脱脂大豆を0.8質量%~3.0質量%含有し、脂質が0g/100g以上1.5g/100g以下の豆乳飲料。」の点。 (相違点1-1) 糖質の含有量は、本件特許発明1では「0.5g/100g以上2.5g/100g以下」であるのに対し、甲1発明では不明である点。 (相違点1-2) カロリーは、本件特許発明1では「10kcal/100g以上40kcal/100g以下」であるのに対し、甲1発明では不明である点。 (相違点1-3) たんぱく質の含有量は、本件特許発明1では「2.5g/100g以上5.0g/100g以下」であるのに対し、甲1発明では「10g/100g」である点。 (相違点1-4) イソフラボンの含有量は、本件特許発明1では「15.0mg/100g以上50mg/100g以下」であるのに対し、甲1発明では不明である点。 (相違点1-5) pHは、本件特許発明1では「7.0~8.4」であるのに対し、甲1発明では「6.28」である点。 (相違点1-6) 本件特許発明1の豆乳飲料は「均質化」されているのに対して、甲1発明の液状組成物は「均質化」されているか不明である点。 (相違点1-7) 本件特許発明1では「全固形分4.0%以上7.0%以下」であるのに対し、甲1発明では「ブリックス値が18.4%」である点。 イ 相違点についての検討 案件に鑑み、上記相違点1-3について検討する。 (ア)甲1には、液状組成物に含有されるタンパク質の含有量について、下限が「通常6質量%以上」であり、タンパク質の含有量が上記下限よりも低いと、効率よくタンパク質を摂取することができない場合があると記載されていることから([0014])、甲1の液状組成物におけるタンパク質の含有量として6質量%未満とすることについて否定的に記載されている。 (イ)また、甲1が解決しようとする課題は、上記1(1)イ(ア)で検討したように、「植物性タンパク質を高濃度で含有しても、ゲル化や酸による凝集・固化が起こらず、舌触り、喉ごし、及び風味が良好である植物性タンパク含有液状組成物を提供すること」であることから、甲1発明の液状組成物は、植物性タンパク質を高濃度で含有するものであることが前提となっている。 (ウ)さらに、甲1の[0003]には、従来の豆乳について「100gあたりのタンパク質の含有量が3~4g程度と高いものではない」と記載されていることから、タンパク質の含有量として3~4g/100gは少量であり望ましいものではないとされており、甲1の[表2]の実施例1~9においてタンパク質の含有量はいずれも8g/100g以上となっている。 (エ)上記(ア)~(ウ)の検討によれば、甲1の液状組成物において、タンパク質の含有量が下限値である6質量%よりも低いものとすることには、阻害要因が存在しているといえるから、甲1発明において、タンパク質の含有量を「10g/100g」に代えて、上記下限値である「6質量%」よりも低い「2.5g/100g以上5.0g/100g以下」とすることが当業者にとって容易になし得たことであるということはできない。 (オ)なお、申立人は、特許異議申立書の第19頁の「c.相違点α3について」において、上記相違点1-3について、 ・[0020]の記載から、タンパク質の含有量=脂質の含有量×(10/5.5~10/0.7)の関係があり、 ・[0017]の記載から、脂質の含有量は0.5質量%以上であるから、 ・タンパク質の含有量=(0.5以上)×(10/5.5~10/0.7) =0.5×(1.82~14.28)g/100g以上 =0.91~7.1g/100g以上 と計算することができる。 ・したがって、タンパク質をその下限値0.91g/100g以上である「2.5~5.0g/100g」とすることは当業者が容易に想到し得たことであり、また、そのことによる顕著な効果を見出すことはできない。 と主張しているので、この主張について以下検討する。 (カ)上記主張は、脂質の含有量として[0017]に記載された下限値0.5質量%に基づいて、[0020]に記載されたタンパク質と脂質の含有比を用いて、タンパク質の含有量の最小値0.91g/100gを算出しているが、この主張は、以下に示すとおり、甲1に記載された技術思想を適切に解釈するものとはいえない。 すなわち、上記(ア)~(エ)で検討したように、甲1では、液状組成物に含有されるタンパク質を高濃度で含有させることが前提となっており、当該高濃度のタンパク質に対して、[0020]に記載されているように、タンパク質:脂質の質量比として、通常10:0.7以上、通常10:5.5以下の脂質を含有させることによって、流動性、舌触り、のど越しが悪くならないようにしているものである。つまり、甲1では、高濃度のタンパク質の含有を前提として、当該タンパク質の含有量に対する好ましい脂質の含有量を規定するものであって、上記主張のように脂質の含有量を前提としてタンパク質の濃度を規定するものではない。 この点については、甲1の上記(1ア)の請求項1においても、甲1の液状組成物に含有されるタンパク質と脂質の含有量について、「(a)該液状組成物中のタンパク質の含有量が6~17質量%であること」及び「(b)タンパク質と脂質の含有比が質量比で10:0.7~10:5.5であること」と特定していることから理解されるように、タンパク質の含有量10に対して脂質の含有量が0.7~5.5であることを特定しているのであり、これと逆に、脂質の含有量に基づいてタンパク質の含有量を特定しているわけではない。 したがって、申立人の上記主張は、甲1に記載された技術思想を適切に解釈するものではないから採用できない。また、甲2の記載を参照してもこの判断は変わらない。 (キ)以上の検討によれば、甲1発明において、甲2の記載事項を参照したとしても、相違点1-3に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることが、当業者にとって容易になし得たことであるとはいえない。 したがって、相違点1-1~1-2、1-4~1-7について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明と甲2の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)本件特許発明2について 本件特許発明2は、本件特許発明1を引用することによって本件特許発明1の全ての特定事項を備えているものであり、本件特許発明2と甲1発明を対比すると、少なくとも上記相違点1-1~1-7と同様の点で相違するから、上記(1)と同様の理由によって、本件特許発明2は甲1発明と甲2の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明3について ア 本件特許発明3と甲1方法発明との対比 (ア)甲1方法発明の「低脂肪豆乳「美味投入(不二製油社製)」」は、本件特許発明3の「豆乳」に相当する。 (イ)上記(ア)の検討を踏まえると、甲1方法発明の「低脂肪豆乳「美味投入(不二製油社製)」を1.7倍に減圧濃縮する工程」と本件特許発明3の「豆乳を大豆固形分3.0%~5.0%に調整する工程」は、豆乳を調整する工程である限りにおいて一致する。 (ウ)甲1方法発明の「粉末状大豆タンパク「フジプロF(不二製油社製)」」は、甲4の(4ア)の記載によれば、脱脂された脱脂大豆から製造された粉末状大豆であるから、本件特許発明3の「粉末脱脂大豆」に相当する。 (エ)上記(ア)~(ウ)の検討を踏まえると、甲1方法発明の「前記減圧濃縮した低脂肪豆乳「美味投入(不二製油社製)」を98%、粉末状大豆タンパク「フジプロF(不二製油社製)」を1%、水を1%混合する工程」は、本件特許発明3の「調整した豆乳に対して0.8質量%~3.0質量%の粉末脱脂大豆を添加して混合液を作製する工程」に相当する。 (オ)甲1の上記(1オ)の[0046]によれば、甲1の液状組成物のpHは、例えば果汁や各種有機酸などの酸を用いる等の手法により調整されるものであることを踏まえると、甲1方法発明の「pHが6.28である」ことは、「pHが6.28である」ように調整する工程が存在することを示唆するものであるから、本件特許発明3の「pHを7.0~8.4に調整する工程」とは、pHを調整する工程である限りにおいて一致する。 (カ)甲1方法発明の「植物性タンパク質含有液状組成物」は、「減圧濃縮した低脂肪豆乳「美味投入(不二製油社製)」すなわち豆乳を98%含有しており、当該液状組成物は上記(1オ)の[0048]によればそのまま飲用することができるものであるから、本件特許発明3の「豆乳飲料」に相当する。 (キ)以上の検討によれば、本件特許発明3と甲1方法発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。 (一致点) 「豆乳を調整する工程と、 該調整した豆乳に対して0.8質量%~3.0質量%の粉末脱脂大豆を添加して混合液を作製する工程と、 pHを調整する工程を含む豆乳飲料の製造方法。」の点。 (相違点2-1) 豆乳を調整する工程が、本件特許発明3では、「大豆固形分3.0%~5.0%に調整する工程」であるのに対して、甲1方法発明では、「1.7倍に減圧濃縮する工程」である点。 (相違点2-2) 本件特許発明3は「該混合液を均質化処理する工程」を含むのに対して、甲1方法発明はそのような工程を含むことが特定されていない点。 (相違点2-3) pHを調整する工程が、本件特許発明3では「7.0~8.4に調整する工程」であるのに対して、甲1方法発明では「6.28」に調整する工程である点。 (相違点2-4) 製造された豆乳飲料が、本件特許発明1では「全固形分4.0%以上7.0%以下」であるのに対し、甲1方法発明では「ブリックス値が18.4%」である点。 イ 相違点についての検討 案件に鑑み、相違点2-1について検討する。 (ア)甲5の段落【0040】には低脂肪豆乳「美味投入」(不二製油株式会社製)の含有成分について、「固形分9.7%、蛋白質含量5.3%、炭水化物含量3.3%、脂質含量5.0%(固形分中)」であることが記載されており、上記固形分とは本件特許発明3の「大豆固形分」に相当するものであるから、甲1方法発明の「1.7倍に減圧濃縮」した「低脂肪豆乳「美味投入(不二製油社製)」」に含まれる「大豆固形分」の含有量は、9.7×1.7=16.49%であるものと推定される。 したがって、相違点2-1は実質的な相違点である。 (イ)そして、上記(1)イ(ア)~(エ)で検討したように、甲1では、液状組成物に含有されるタンパク質を高濃度で含有させることを前提としており、また、甲1の上記(1エ)の[0015]には、豆類の乳汁の濃縮処理は液状組成物中のタンパク質の含有量を調整するために行われるものであることを踏まえると、甲1実施例8において豆乳を減圧濃縮しているのはタンパク質の含有量を調整(増加)するためであると認められるところ、減圧濃縮によりタンパク質含有量を5.3×1.7=9.01%に高濃度化している「低脂肪豆乳「美味投入」」を逆に希釈して、「大豆固形分3.0~5.0%」に調整する動機が見いだせない。仮に、「低脂肪豆乳「美味投入」」を減圧濃縮する代わりに希釈すると、タンパク質含有量が低減してしまい、液状組成物にタンパク質を高濃度で含有させるという甲1の技術思想に反するため、「低脂肪豆乳「美味投入」」を減圧濃縮することに代えて希釈することには阻害要因が存在する。 (ウ)そうすると、甲1方法発明における「豆乳を調整する工程」として、「1.7倍に減圧濃縮する工程」に代えて「大豆固形分3.0%~5.0%に調整する工程」とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。また、甲2と、豆乳飲料の大豆固形成分が4%以上であるとの甲6の記載を参照してもこの判断は変わらない。 (エ)したがって、相違点2-2~2-4について検討するまでもなく、本件特許発明3は甲1方法発明と甲2の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明4について 本件特許発明4は、本件特許発明3を引用することによって本件特許発明3の全ての特定事項を備えているものであるから、本件特許発明4と甲1方法発明を対比すると、少なくとも上記相違点2-1~2-4と同様の点で相違するから、上記(3)と同様の理由によって、本件特許発明4は甲1方法発明と甲2の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 3 申立理由2(甲2を主引例とする進歩性)について (1)本件特許発明1について ア 本件特許発明1と甲2発明との対比 (ア)甲2発明の「脂肪分離豆乳」は、甲2の上記(2ア)によると、従来ダイエット食品のイメージのある豆乳からタンパク質を摂取しようとすると脂質の摂取も多くなり、多くのカロリーを摂取してしまうとの問題に対して、脂肪を低減した豆乳としたものであって、低カロリーのダイエット食品として飲用に供し得ることは明らかであるから、本件特許発明1の「豆乳飲料」に相当する。 (イ)甲2発明の「脂質 1.1g/100g」であることは、本件特許発明1の「脂質が0g/100g以上1.5g/100g以下」であることに相当する。 (ウ)以上の検討によれば、本件特許発明1と甲2発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。 (一致点) 「脂質が0g/100g以上1.5g/100g以下の豆乳飲料。」の点。 (相違点3-1) 本件特許発明1は「粉末脱脂大豆を0.8質量%~3.0質量%含有」するものであるのに対して、甲2発明は粉末脱脂大豆を含有するものではない点。 (相違点3-2) 糖質が、本件特許発明1は「0.5g/100g以上2.5g/100g以下」であるのに対して、甲2発明は不明である点。 (相違点3-3) カロリーが、本件特許発明1は「10kcal/100g以上40kcal/100g以下」であるのに対して、甲2発明は不明である点。 (相違点3-4) たんぱく質が、本件特許発明1は「2.5g/100g以上5.0g/100g以下」であるのに対して、甲2発明は「5.4g/100g」である点。 (相違点3-5) イソフラボンが、本件特許発明1は「15.0mg/100g以上50mg/100g以下」であるのに対して、甲2発明は不明である点。 (相違点3-6) pHが、本件特許発明1は「7.0~8.4」であるのに対して、甲2発明は不明である点。 (相違点3-7) 本件特許発明1は「均質化されている」のに対して、甲2発明は均質化されているか不明な点。 (相違点3-8) 全固形分が、本件特許発明1は「4.0%以上7.0%以下」であるのに対して、甲2発明は「10.0g/100g」である点。 イ 相違点についての検討 案件に鑑み、相違点3-1について検討する。 (ア)甲2には、脱脂した豆乳について次の記載がある。 「しかし、例えば牛乳のような天然の産物においては、もともとそこに含まれる成分中、脂肪分を分離・低減してカロリーを低減する方法は実際に行われており、もちろん、脱脂粉乳や分離乳タンパク等を活用して脂肪を低減した乳製品の製造も行われてはいるが、そのようにして得られた乳製品は、一般的に製造された牛乳とは品質的にかけ離れた乳製品となっている現実があった。 豆乳においても、大豆に水のみを加えて抽出して製造する豆乳の場合には、天然に近い産物であり、大豆に本来含まれている脂肪分がそのまま残るという結果になっていた。 その豆乳からカロリーを低減させようとすれば、牛乳と同様の手法で脂肪を低減させる方法が最も実用的である。また牛乳と同様に、脱脂大豆や分離大豆タンパクを活用する方法も考えられるが、いずれにしても得られる豆乳は、品質上の格差が大きいため世の中に普及していないのが実情であった。」(第5頁下から9行~第6頁3行) (イ)上記(ア)の記載によれば、脱脂粉乳を使用して製造された脂肪を低減した乳製品が一般的に製造された牛乳と品質的にかけ離れているのと同様に、脱脂大豆を使用して製造された脂肪を低減した豆乳は品質上の格差が大きいため世の中に普及していないこと、つまり、脱脂大豆の使用についてはその品質上の問題から否定的であることが説明されている。甲2では、脂肪を低減した豆乳を効率よく製造するために、脱脂大豆を使用するのではなく、おから成分等の不溶成分を除去する前の大豆原料液を高速遠心分離機にかけるようにしている。したがって、甲2には、甲2発明に脱脂大豆を含有することについての動機となる記載を見出すことができない。 (ウ)なお、申立人は、特許異議申立書の第22頁の「a.相違点β1について」において、上記相違点3-1と同内容の相違点β1について、「豆乳からカロリーを低減させようとすれば、牛乳と同様の手法で脂肪を低減させる方法が最も実用できである」との記載(甲2の第5頁18行~第6頁1行)から、甲2に記載された発明において、大豆粉末に代えて粉末脱脂大豆を用いる動機付けがあると主張しているが、脱脂大豆の使用について否定的な記載がなされていることは上記(イ)で述べたとおりであるから、上記主張を採用できない。 (エ)また、仮に、申立人の主張するとおりに、大豆粉末に代えて粉末脱脂大豆を用いる動機付けがあるとしても、甲2発明では、大豆粉末ではなく、カナダ産大豆を原料として脂肪分離豆乳を製造しているから、そもそも、甲2発明において、大豆粉末に代えて粉末脱脂大豆を用いることはできない。 さらに、仮に、甲2発明において、原料であるカナダ産大豆に代えて粉末脱脂大豆を採用する動機があるとしても、粉末脱脂大豆から製造された豆乳に対しておから分離を行い、高速遠心分離することになり、最終的に得られる脂肪分離豆乳中に原料である粉末脱脂大豆がそのままの形態で含有されるものにはならない。 (オ)したがって、甲2発明において、大豆粉末に代えて粉末脱脂大豆を用いる動機付けがあるということはできず、仮に、そのような動機付けがあったとしても、粉末脱脂大豆を0.8質量%~3.0質量%含有するものとすること、すわなち、相違点3-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。また、甲1の記載を参照してもこの判断は変わらない。 (カ)以上の検討によれば、甲2発明において、甲1の記載事項を参照したとしても、相違点3-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えたものとすることが、当業者にとって容易になし得たことであるとはいえない。 したがって、相違点3-2~3-8について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲2発明と甲1の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)本件特許発明3について ア 本件特許発明3と甲2方法発明との対比 (ア)本願の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の段落【0033】によれば、本件特許発明3における「豆乳」とは、「大豆から熱水等によりたんぱく質その他の成分を溶出させ、繊維質を除去して得られた乳状の飲料」であるか「市販の無調整豆乳」を意味するものであり、同【0034】によれば、「豆乳を大豆固形分3.0%~5.0%に調整」するとは、「例えば、水を加えることにより固形分の調整を行うこと」を意味するものである。 (イ)一方、甲2方法発明の「脂肪分離豆乳」は、大豆粉末を水に分散溶解したものから遠心分離された沈殿層及び脂肪層を除去して得られた、タンパク質等を含む液状の物質であって、上記(1)ア(ア)で検討したとおり、低カロリーのダイエット食品として飲用に供し得るものであるところ、上記(ア)で確認した「豆乳」の定義を満たすものであるから、本件特許発明3の「豆乳」に相当するとともに、本件特許発明3の「豆乳飲料」にも相当する。 (ウ)また、甲2方法発明の「国産大豆粉末に5倍量の水を加え、ホモジナイザーを用いて分散溶解して生粉末豆乳とする工程と、前記生粉末豆乳を高速遠心分離機によって40℃、8000rpm、30分間の遠心分離を行う工程と、分離したそれぞれの上層の脂肪(クリーム)層を取り除き、沈殿層以外の豆乳層を採取する工程」は、当該工程によって「脂肪分離豆乳」の「固形分が13.3g/100g」に調整される工程であるといえるから、本件特許発明3の「豆乳を大豆固形分3.0%~5.0%に調整する工程」とは、豆乳を特定の大豆固形分の濃度に調整する工程である限りにおいて一致する。 (エ)以上の検討によれば、本件特許発明3と甲2方法発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。 (一致点) 「豆乳を特定濃度の大豆固形分に調整する工程、 を含む豆乳飲料の製造方法。 (相違点4-1) 豆乳を調整する工程における大豆固形分の特定濃度が、本件特許発明3では「3.0%~5.0%」であるのに対して、甲2方法発明では「13.3g/100g」である点。 (相違点4-2) 本件特許発明3は「該調整した豆乳に対して0.8質量%~3.0質量%の粉末脱脂大豆を添加して混合液を作製する工程」を含むのに対して、甲2方法発明はそのような工程を含まない点。 (相違点4-3) 本件特許発明3は「混合液を均質化処理する工程」を含むのに対して、甲2方法発明はそのような工程を含まない点。 (相違点4-4) 本件特許発明3は「pHを7.0~8.4に調整する工程」を含むのに対して、甲2方法発明はそのような工程を含まない点。 (相違点4-5) 全固形分は、本件特許発明3では「4.0%以上7.0%以下」であるのに対して、甲2方法発明では「13.3g/100g」である点。 イ 相違点についての検討 案件に鑑み、相違点4-2について検討する。 (ア)上記(1)イの(ア)~(イ)に記載した理由と同様に、甲2には、脱脂大豆の使用についてはその品質上の問題から否定的であることが説明されているから、甲2には、甲2方法発明に脱脂大豆を添加して混合液を作製する工程を追加することについての動機となる記載を見出すことができない。 (イ)なお、申立人は、特許異議申立書の第28頁の「b.相違点δ2について」において、上記相違点4-2と同内容の相違点δ2について、「豆乳からカロリーを低減させようとすれば、牛乳と同様の手法で脂肪を低減させる方法が最も実用できである」との記載(甲2の第5頁18行~第6頁1行)から、甲2に記載の大豆粉末に代えて粉末脱脂大豆を用いる動機付けがあると主張しているが、脱脂大豆の使用について否定的な記載がなされていることは上記(ア)で述べたとおりであるから、上記主張を採用できない。 (ウ)また、仮に、申立人の主張するとおりに、大豆粉末に代えて粉末脱脂大豆を用いる動機付けがあるとしても、甲2方法発明において、国産大豆粉末に代えて粉末脱脂大豆を用いた場合には、粉末脱脂大豆に水を加えて分散溶解し、高速遠心分離を行って、分離した脂肪層と沈殿層を取り除くと、最終的に得られる脂肪分離豆乳中に原料である粉末脱脂大豆がそのままの形態で含有されるものにはならない。 (エ)したがって、甲2方法発明において、大豆粉末に代えて粉末脱脂大豆を用いる動機付けがあるということはできず、仮に、そのような動機付けがあったとしても、「調整した豆乳に対して0.8質量%~3.0質量%の粉末脱脂大豆を添加して混合液を作製する工程」を含むものとすること、すわなち、相違点4-2に係る本件特許発明3の発明特定事項を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。また、甲1の記載を参照してもこの判断は変わらない。 (オ)以上の検討によれば、甲2方法発明において、甲1の記載事項を参照したとしても、相違点4-2に係る本件特許発明3の発明特定事項を備えたものとすることが、当業者にとって容易になし得たことであるとはいえない。 したがって、相違点4-1、4-3~4-5について検討するまでもなく、本件特許発明3は甲2方法発明と甲1の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第5 結び 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~請求項4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~請求項4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701077

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