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特許異議申立

2025-700498

油ちょう食品用ミックス及びそれを用いた油ちょう食品の製造方法並びに油ちょう食品の食感改良方法

審判番号
2025-700498
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-567576
登録番号
7578617
請求日
2025年05月07日
審決日
2026年05月29日
公報発行日
2026年09月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社日清製粉ウェルナ
  • 【権利者代理人】弁理士法人翔和国際特許事務所
  • 【権利者】日清製粉プレミックス株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人翔和国際特許事務所
  • 【異議申立人】ナガセヴィータ 株式会社
  • 【異議申立人代理人】弁理士法人WisePlus
審判長/審判官
  • 審判長 天野 宏樹
  • 審判官 宮久保 博幸
  • 審判官 壷内 信吾
分類
P1651.113-YAA(A21D) / P1651.121-YAA(A21D) / P1651.536-YAA(A21D) / P1651.537-YAA(A21D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第29条、特許法第113条第4号、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第2条第3項第1号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7578617号発明「油ちょう食品用ミックス及びそれを用いた油ちょう食品の製造方法並びに油ちょう食品の食感改良方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7578617号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の明細書及び請求項〔1~5〕、6について訂正することを認める。 特許第7578617号の請求項1、2、4~6に係る特許を維持する。 特許第7578617号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7578617号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)12月23日(優先権主張 令和1年12月25日)を国際出願日とする出願であって、令和6年10月28日にその特許権の設定登録(請求項の数6)がされ、同年11月6日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和7年5月7日に特許異議申立人 ナガセヴィータ株式会社(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年7月1日に特許異議申立書に対する手続補正書(方式)が提出され、同年7月30日付けで取消理由が通知され、同年10月2日に特許権者 株式会社日清製粉ウェルナから訂正請求がされるとともに意見書が提出され、同年同月27日に訂正請求書に対する手続補正書(方式)が提出されたものである。 なお、当審から特許異議申立人に対して、訂正請求について特許法第120条の5第5項の規定に基づき相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許異議申立人からは応答がなかった。 第2 本件訂正について 1 訂正の内容 令和7年10月2日に提出され、同年同月27日に提出された手続補正書(方式)により補正された訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」という。)による訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維を0.5~15質量%含有し、該高Tg水溶性食物繊維がイソマルトデキストリンである、油ちょう食品用ミックス。」と記載されているのを、「ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維を0.5~15質量%含有し、該高Tg水溶性食物繊維がイソマルトデキストリンであり、更に、ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維を含有し、該低Tg水溶性食物繊維と前記高Tg水溶性食物繊維との合計含有量が20質量%以下である、油ちょう食品用ミックス。」に訂正する。請求項1の記載を引用する請求項2、4及び5も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3の何れか1項に記載の油ちょう食品用ミックス。」と記載されているのを、「請求項1又は2に記載の油ちょう食品用ミックス。」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項5に「請求項1~4の何れか1項に記載の油ちょう食品用ミックスを用いた」と記載されているのを、「請求項1、2及び4の何れか1項に記載の油ちょう食品用ミックスを用いた」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項6に「油ちょう食品に、ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維を0.5~15質量%含有させ、該高Tg水溶性食物繊維がイソマルトデキストリンである、油ちょう食品の食感改良方法。」と記載されているのを、「油ちょう食品に、ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維を0.5~15質量%と、ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維とを含有させ、前記高Tg水溶性食物繊維がイソマルトデキストリンであり、前記低Tg水溶性食物繊維と前記高Tg水溶性食物繊維との合計含有量が20質量%以下である、油ちょう食品の食感改良方法。」に訂正する。 (6)訂正事項6 願書に添付した明細書の【0030】に「なお、実施例1及び9は参考例である。」と記載されているのを、「なお、実施例1、2及び4~13は参考例である。」に訂正する。 (7)一群の請求項について 本件訂正後の請求項1~5に対応する訂正前の請求項1~5について、請求項2~5は請求項1を直接または間接的に引用するものであって、訂正事項1の訂正によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。よって、訂正前の請求項1~5に対応する訂正後の請求項1~5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 2 訂正の目的、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1による請求項1についての訂正は、【0019】及び【0021】等の記載に基づき油ちょう食品用ミックスが「更に、ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維を含有し、該低Tg水溶性食物繊維と前記高Tg水溶性食物繊維との合計含有量が20質量%以下である」ことを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2、4及び5についても同様である。 (2)訂正事項2について 訂正事項2による請求項3についての訂正は、請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項2による請求項3についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項4が請求項1~3の何れか1項を引用する記載であるところ、訂正事項2で請求項3が削除されて請求項3を引用できなくなったことに伴い、引用する請求項から請求項3を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項3による請求項4についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 請求項4の記載を引用して特定する請求項5についても同様である。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、訂正前の請求項5が請求項1~4の何れか1項を引用する記載であるところ、訂正事項2で請求項3が削除されて請求項3を引用できなくなったことに伴い、引用する請求項から請求項3を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項4による請求項5についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)訂正事項5について 訂正事項5による請求項6についての訂正は、【0019】及び【0021】等の記載に基づき油ちょう食品に「ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維とを含有させ」、かつ、「前記低Tg水溶性食物繊維と前記高Tg水溶性食物繊維との合計含有量が20質量%以下である」ことを特定し、また当該記載を挿入した文がつながるように、直前の「該高Tg水溶性食物繊維がイソマルトデキストリンである、」との記載を「該高Tg水溶性食物繊維がイソマルトデキストリンであり、」と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項5による請求項6についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (6)訂正事項6について 訂正事項6による明細書の【0030】の訂正は、上記訂正事項1及び5に係る訂正に伴って、訂正前の明細書に記載されていた実施例2、4~8及び10~13が訂正後の特許請求の範囲に含まれなくなることを受け、特許請求の範囲と明細書の発明の詳細な説明との記載の整合を図るため、明細書の【0030】において「「なお、実施例1、2及び4~13は参考例である。」と訂正するものであるから、訂正事項6は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、訂正事項6による明細書の【0030】についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 独立特許要件について 本件においては、訂正前の全ての請求項1~6に対して特許異議の申立てがされているので、上記訂正事項に係る訂正については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 4 本件訂正についてのまとめ 以上のとおりであるから、訂正事項1~5に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 また、訂正事項6に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の明細書及び請求項〔1~5〕、6について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1~6に係る発明(以下、これらの発明を順に「本件特許発明1」、「本件特許発明2」などといい、総称して「本件特許発明」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維を0.5~15質量%含有し、該高Tg水溶性食物繊維がイソマルトデキストリンであり、 更に、ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維を含有し、該低Tg水溶性食物繊維と前記高Tg水溶性食物繊維との合計含有量が20質量%以下である、油ちょう食品用ミックス。 【請求項2】 更に、糖類を含有し、該糖類と前記高Tg水溶性食物繊維との含有質量比が、前者:後者として、1:0.01~1:2である、請求項1に記載の油ちょう食品用ミックス。 【請求項3】(削除) 【請求項4】 前記油ちょう食品が、ドーナツ又はアメリカンドッグである、請求項1又は2に記載の油ちょう食品用ミックス。 【請求項5】 請求項1、2及び4の何れか1項に記載の油ちょう食品用ミックスを用いた、油ちょう食品の製造方法。 【請求項6】 油ちょう食品に、ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維を0.5~15質量%と、ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維とを含有させ、 前記高Tg水溶性食物繊維がイソマルトデキストリンであり、 前記低Tg水溶性食物繊維と前記高Tg水溶性食物繊維との合計含有量が20質量%以下である、油ちょう食品の食感改良方法。」 第4 特許異議申立理由の要旨及び証拠方法 令和7年5月7日に特許異議申立人が提出し、同年7月1日に提出した手続補正書により補正された特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した特許異議申立ての理由の要旨及び証拠方法は次のとおりである。 1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1、5及び6は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、本件特許発明1、2及び4~6は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2及び4~6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 申立理由2(甲第2号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1、2、5及び6は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、本件特許発明1、2及び4~6は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2及び4~6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 3 申立理由3(甲第3号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1、5及び6は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、本件特許発明1、2及び4~6は、甲第3号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2及び4~6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 4 申立理由4(甲第4号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1、2及び4~6は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第4号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2及び4~6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 5 申立理由5(甲第7号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1、5及び6は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第7号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、本件特許発明1、2、5及び6は、甲第7号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2、5及び6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 6 申立理由6(甲第10号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1及び4~6に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第10号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び4~6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 7 申立理由7(サポート要件) 本件特許の請求項1~6に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 申立理由7の具体的理由はおおむね次のとおりである。 イソマルトデキストリンを、そのガラス転移点により特定しようとする場合には、ガラス転移点の測定時の水分量を規定することが必要である。しかし、本件明細書にはガラス転移点の測定時の水分量は規定されておらず、実施例で用いられたものの測定時の水分量も記載されていないため、どのようなイソマルトデキストリンを用いた結果、油ちょう後、一定時間経過後の食感及び/又は外観を向上できたかが定かではない。また、上記したことを踏まえると、本件特許発明1におけるイソマルトデキストリンには、任意の水分量においてガラス転移点が180℃以上である、非常に広範なイソマルトデキストリンが包含されていると解し得ることとなるが、実施例においてすら、イソマルトデキストリンのガラス転移点が、油ちょう後、一定時間経過後の食感及び/又は外観を向上できたことと因果関係を有するか不明であるため、まして本件特許発明1における広範なイソマルトデキストリンについて、本件明細書の【0007】に記載された課題を解決できると認識することはできない。本件特許発明2~6も同様である。 8 申立理由8(実施可能要件) 本件特許の請求項1~6に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 申立理由8の具体的理由はおおむね次のとおりである。 本件明細書ではガラス転移点の測定時のサンプルの水分量は記載されていない。本件特許発明1におけるイソマルトデキストリンには、任意の水分量においてガラス転移点が180℃以上である、非常に広範なイソマルトデキストリンが包含されていると解し得る。このような広範なイソマルトデキストリンの中から、油ちょう食品の食感を改良できるイソマルトデキストリンを同定するためには、当業者にとって過度の試行錯誤が必要となる。本件特許発明2~6も同様である。 9 申立理由9(明確性要件) 本件特許の請求項1~6に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 申立理由9の具体的理由はおおむね次のとおりである。 本件特許発明1では、イソマルトデキストリンのガラス転移点を180℃以上と規定しているが、測定条件は特定されていない。本件明細書では、ガラス転移点(Tg)は示差走査熱量計(DSC)を用いて測定できることや、ガラス転移点の好ましい範囲が記載されているものの(【0010】)、ガラス転移点の測定時のサンプルの水分量は記載されていない。その結果、本件特許発明1で特定されたイソマルトデキストリンの範囲が不明確となっている。本件特許発明2~6も同様である。 10 特許異議申立人の提出した証拠方法 甲第1号証:販促資料「ザクザク感が長持ちするバッター液」、株式会社林原、2019年12月18日(配付開始日:2019年12月19日) 甲第2号証:販促資料「サクサク感が長持ちするパン粉」、株式会社林原、2018年1月18日(配付開始日:2018年2月22日) 甲第3号証:販促資料「から揚げ用バッターミックス」、株式会社林原、2016年6月2日(配付開始日:2016年7月20日) 甲第4号証:国際公開第2014/133060号 甲第5号証:国際公開第2008/136331号 甲第6号証:特開2018-201371号公報 甲第7号証:渡邊光、「水溶性食物繊維の新たな選択肢,イソマルトデキストリン」、月刊フードケミカル、2016年1月号、Vol.32、No.1、6-10頁 甲第8号証:特開2018-161103号公報 甲第9号証:Jakia Sultana Jothi et al.、「Effect of water sorption on the glass transition temperature and texture of deep-fried models」、Journal of Food Engineering、vol. 237 (2018)、p.1-8 甲第10号証:特開2018-24619号公報 甲第11号証:熊谷仁、「食品の物性と水」、日本食品科学工学会誌、2015年12月、第62巻第12号、593-603頁 甲第12号証:川井清司、「食品の物性制御における水の役割」、日本食品科学工学会誌、2019年7月、第66巻第7号、263-270頁 甲第13号証:特開平9-299041号公報 甲第14号証:株式会社林原、「製品紹介 澱粉から生まれた多機能糖質「トレハ(R)」」(当審注:「(R)」は○の中にRの上付き。)、応用糖質科学、2019年8月20日、第9巻第3号、203頁 なお、証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。 第5 取消理由の要旨 請求項1~6に係る特許に対して、当審が令和7年7月30日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。 ●取消理由(甲4に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1及び5に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲4に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、本件特許の請求項1、2及び4~6に係る発明は、甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2及び4~6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 第6 取消理由及び申立理由4についての当審の判断 取消理由と申立理由4とは、主たる証拠が共通するから、以下にまとめて判断を示す。 以下に示すとおり、当審は、令和7年7月30日付けで特許権者に通知した取消理由通知の理由及び特許異議申立人が申し立てた申立理由4では、本件特許発明1、2及び4~6に係る特許を取り消すことはできないものと判断する。 1 甲4に記載された事項等 (1)甲4に記載された事項 甲4には、「抗生活習慣病用剤及びそれを含んでなる経口組成物」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、記載事項の摘記に際し、半角の記号、数字等を全角に改めた部分がある。下線は当審で付したものである。 ・「[0020] 本発明において、抗生活習慣病用剤の有効成分として用いられる分岐α-グルカンは、本出願人が先に国際公開第WO2008/136331号パンフレットにおいて開示した分岐α-グルカンであり、斯かる分岐α-グルカンは以下の(A)乃至(D)の特徴を有している。 (A)グルコースを構成糖とし、 (B)α-1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンの一端に位置する非還元末端グルコース残基にα-1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有し、 (C)グルコース重合度が6乃至430であって、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn)が20以下で、 (D)本文記載の高速液体クロマトグラフ法(酵素-HPLC法)により求めた水溶性食物繊維含量が20質量%以上である。」 ・「[0025] 本分岐α-グルカンは上記(A)乃至(D)によって特徴づけられる分岐α-グルカンであるが、分岐α-グルカンを構成するグルコースの結合様式という観点からみれば、本分岐α-グルカンは、メチル化分析において下記(1)乃至(4)の特徴を示す分岐α-グルカンである。 (1)2,3,6-トリメチル-1,4,5-トリアセチルグルシトールと2,3,4-トリメチル-1,5,6-トリアセチルグルシトールの比が1:0.6乃至1:4の範囲にある; (2)2,3,6-トリメチル-1,4,5-トリアセチルグルシトールと2,3,4-トリメチル-1,5,6-トリアセチルグルシトールとの合計が部分メチル化グルシトールアセテートの60%以上を占める; (3)2,4,6-トリメチル-1,3,5-トリアセチルグルシトールが部分メチル化グルシトールアセテートの0.5%以上10%以下である;および、 (4)2,4-ジメチル-1,3,5,6-テトラアセチルグルシトールが部分メチル化グルシトールアセテートの0.5%以上である。」 ・「[0033] 本分岐α-グルカンを製造するα-グルコシル転移酵素としては、例えば、本出願人が先に国際公開第WO2008/136331号パンフレットにおいて開示したα-グルコシル転移酵素を挙げることができる。前記α-グルコシル転移酵素は、マルトース及び/又はグルコース重合度が3以上のα-1,4グルカンに作用し、実質的に加水分解することなくα-グルコシル転移を触媒することにより、本分岐α-グルカンを生成する。前記α-グルコシル転移酵素は、加水分解活性が弱い点、低濃度から高濃度まで基質溶液の濃度に依存せず効率の良い転移活性を有する点、及び、α-1,3のみならずα-1,3,6結合をも生成する点に特徴のある酵素である。α-グルコシル転移作用を有する酵素としては、α-グルコシダーゼ(EC.3.2.1.20)などが挙げられる。酵素の添加量および酵素の反応時間、反応条件については、水溶性食物繊維含量、分子量分布、α-1,4結合以外の結合の割合を調節する目的等で、当業者が適宜決定できる。 [0034] 本分岐α-グルカンの製造に用いられるα-グルコシル転移酵素は、その給源によって制限されず、市販のものを用いても、微生物等から単離したものを用いてもよく、給源となる微生物は、天然由来の微生物に加えて、α-グルコシル転移酵素生産能を有する組換え微生物であってもよい。好ましい給源としては、国際公開第WO2008/136331号パンフレットに記載された、土壌より単離した微生物バチルス・サーキュランス PP710(FERM BP-10771)(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6所在の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに、2007年2月1日付けで、受託番号FERM BP-10771として寄託)や、アルスロバクター・グロビホルミス PP349(FERM BP-10770)(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6所在の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに、2007年2月1日付けで、受託番号FERM BP -10770として寄託)などが挙げられる。 [0035] 前記バチルス・サーキュランス PP710(FERM BP-10771)由来のα-グルコシル転移酵素や、アルスロバクター・グロビホルミス PP349(FERM BP-10770)由来のα-グルコシル転移酵素の反応メカニズムは、国際公開第WO2008/136331号パンフレット記載の通りであるが、下記に説明すると、前記α-グルコシル転移酵素は、 (1)基質としてマルトース及び/又はグルコース重合度が3以上のα-1,4グルカンに作用し、非還元末端グルコース残基を他のα-1,4グルカンの非還元末端グルコース残基に主としてα-1,4またはα-1,6グルコシル転移することにより、非還元末端グルコース残基の4位または6位水酸基にグルコースがα-結合したα-1,4グルカン(グルコース重合度が1増加したα-グルカン)と、グルコース重合度が1減じたα-1,4グルカンを生成する。 (2)(1)で生じたグルコース重合度が1減じたα-1,4グルカンに作用し、(1)で生じたグルコース重合度が1増加したα-グルカンに対して、(1)と同様に分子間α-1,4又はα-1,6グルコシル転移することにより、(1)で生成したグルコース重合度が1増加したα-グルカンの非還元末端グルコース残基の4又は6位水酸基にグルコースをさらに転移し、鎖長を伸長する。 (3)上記(1)及び(2)の反応を繰り返すことにより、マルトース及び/又はグルコース重合度3以上のα-1,4グルカンからα-1,4及びα-1,6結合を有するグルカンを生成する。 (4)また前記α-グルコシル転移酵素はさらに、頻度は低いながらもα-1,3グルコシル転移やグルカンの内部にあるα-1,6結合したグルコース残基に対するα-1,4又はα-1,3グルコシル転移を触媒することにより、α-1,3結合、α-1,4,6結合、及びα-1,3,6結合をも有するグルカンを生成する。 (5)上記(1)乃至(4)の反応が繰り返される結果として、グルコースが主としてα-1,4結合及びα-1,6結合で結合し、僅かながらα-1,3結合、α-1,4,6結合、及びα-1,3,6結合を有する本分岐α-グルカンを生成する。」 ・「[0041] 本発明の抗生活習慣病用剤に含有される本分岐α-グルカンの量には特に制限はないが、本分岐α-グルカンを1乃至100質量%、好ましくは、5乃至100質量%、より好ましくは10乃至100質量%の範囲で含有していれば良い。斯かる本発明の抗生活習慣病用剤は、含まれる本分岐α-グルカンを、水溶性食物繊維含量として、ヒト成人(体重60kg)一日当たり、通常、0.5g乃至100gの範囲で摂取できる量で摂取乃至は投与するのが好ましい。また、本発明の抗生活習慣病用剤は、本分岐α-グルカンに加えて、必要に応じて、水、食塩水、生理食塩水、蛋白質、ペプチド、ポリフェノール、ミネラル、抗菌物質、酵素、難消化性の多糖類、甘味料(例えば、砂糖、麦芽糖、ブドウ糖、異性化糖、トレハロース、蜂蜜、メープルシュガー、ソルビトール、マルチトール等)、高甘味度甘味料(例えば、ネオテーム、アスパルテーム、ステビア抽出物、酵素処理ステビア、スクラロース、アセスルファムK、サッカリン、ソーマチン、グリチルリチン等)、着色料、着香料、糊料、安定化剤、賦形剤、増量剤、pH調整剤などから選ばれる1種または2種以上の成分を、0.01乃至50質量%、好ましくは、0.1乃至40質量%の割合で適宜配合して利用することもできる。」 ・「[0047] 本発明の経口組成物は、粉末状、粒状、顆粒状、液状、ペースト状、クリーム状、タブレット状、カプセル状、カプレット状、ソフトカプセル状、錠剤状、棒状、板状、ブロック状、丸薬状、固形状、ゲル状、ゼリー状、グミ状、ウエハース状、ビスケット状、飴状、チュアブル状、シロップ状、スティック状などの適宜の形態とすることができ、医薬品や医薬部外品だけでなく、特定保健用食品、栄養補助食品、又は健康食品などの生活習慣病を予防又は改善することを目的に摂取される飲食品に配合することができる。配合される飲食品の具体例としては、炭酸飲料、乳飲料、ゼリー飲料、スポーツドリンク、酢飲料、豆乳飲料、鉄含有飲料、乳酸菌飲料、緑茶、紅茶、ココア、コーヒーなどの飲料、米飯、粥、パン、麺類、スープ、味噌汁、ヨーグルトなどの食品、ソフトキャンディー、ハードキャンディ、グミ、ゼリー、クッキー、ソフトクッキー、せんべい、あられ、おこし、求肥、餅類、わらび餅、まんじゅう、ういろう、餡類、羊羹、水羊羹、錦玉、ゼリー、ペクチンゼリー、カステラ、ビスケット、クラッカー、パイ、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、ワッフル、スポンジケーキ、ホットケーキ、マフィン、ドーナツ、チョコレート、ガナッシュ、シリアルバー、チューインガム、キャラメル、ヌガー、フラワーペースト、ピーナッツペースト、フルーツペースト、ジャム、マーマレードなどの菓子、アイスクリーム、シャーベット、ジェラートなどの氷菓、更には、醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、もろみ、ひしお、フリカケ、マヨネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つゆ、麺つゆ、ソース、トマトソース、ケチャップ、焼き肉のタレ、焼き鳥のタレ、から揚げ粉、天ぷら粉、カレールウ、シチューの素、スープの素、ダシの素、複合調味料、みりん、新みりん、テーブルシュガー、コーヒーシュガーなどの各種調味料や調理加工品があげられる。また、生活習慣病を予防又は改善(治療)するための液剤、シロップ剤、経管栄養剤、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、舌下剤、顆粒剤、散剤、粉剤、乳剤、噴霧剤などの形態にある薬剤に配合することもできる。また、本発明の経口組成物は、ヒト以外の動物が摂取するペットフードや飼料に配合することもできる。」 ・「[0051] 本発明の抗生活習慣病用剤又は経口組成物を配合するに好適な高脂肪食品の具体例としては、牛肉、豚肉、馬肉、羊肉、鶏肉、魚卵(タラコ、数の子、ブリ、イクラ)、魚油(イワシ油、ニシン油、マグロ油、カツオ油、サンマ油、メンハーデン油など)、肝油、魚油、魚粕、骨油、牛脂、豚脂、馬脂、シア脂、魚油エキス、畜肉・魚肉加工品(ハム、ソーセージ、ウインナー、ベーコン、フライドチキン、ミートボールなど)、家禽卵(鶏卵、鶉卵など)、牛乳、乳製品(ヨーグルトなどの発酵乳製品を含む)、アボカド油、あまに油、オリーブ油、カカオ脂、からし油、きり油、こめ油、サフラワー油、大豆油、とうもろこし油、菜種油、パーム油、パーム核油、ひまし油、ナッツ類油(ぶどう種子油、ホホバ油、綿実油、やし油、落花生油、カポック油、ごま油、けし油、ひまわり油など)、油脂高含有パン・ケーキ・菓子(プリン、チョコレート、クッキー、クラッカー、ドーナッツ、フライドポテトなど)、ハンバーグ、ハンバーガー、バター、マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング、アイスクリーム、油脂粉乳、中華料理、ラーメン、即席麺(即席ラーメンなど)、スープ、天ぷら、フライ、油揚げなどを例示できる。」 ・「[0059]1.酵素の調製 1-1.調製例1 本分岐α-グルカンを製造するために用いる、α-グルコシル転移酵素の調製例を説明する。バチルス・サーキュランス PP710(FERM BP-10771)を、国際公開第WO2008/136331号パンフレット記載の方法でファーメンターで約24時間培養した。培養後、遠心分離し、培養液上清を回収し、80%飽和となるように硫安を添加し、4℃で24時間放置することにより塩析した。塩析物を遠心分離して回収し、これを20mM酢酸緩衝液(pH6.0)に溶解後、同緩衝液に対して透析し、膜濃縮し、濃縮粗酵素液1を調製した。本濃縮粗酵素液1のα-グルコシル転移酵素活性は200単位/mlであった。また、本濃縮粗酵素液1には約25単位/mlのアミラーゼ活性も認められた。 [0060]1-2.調製例2 本分岐α-グルカンを製造するために用いる、上記以外のα-グルコシル転移酵素の調製例を説明する。アルスロバクター・グロビホルミス PP349(FERM BP-10770)を、国際公開第WO2008/136331号パンフレットに記載の方法でファーメンターで約24時間培養した。培養後、遠心分離し、培養液上清を回収し、80質量%飽和となるように硫安を添加し、4℃で24時間放置することにより塩析した。塩析物を遠心分離して回収し、これに20mM酢酸緩衝液(pH6.0)に溶解後、同緩衝液に対して透析し、膜濃縮し、濃縮粗酵素液2を調製した。本濃縮粗酵素液2のα-グルコシル転移酵素活性は50単位/mlであった。 [0061]2.本分岐α-グルカンの製造 2-1.製造例1 前記調製例1で調製した濃縮粗酵素液1を用いた本分岐α-グルカンの製造方法例について説明する。まず、30.0質量%トウモロコシ澱粉液化液(DE3.5)に、最終濃度1mMとなるように塩化カルシウムを加えた後、50℃に冷却し、これに濃縮粗酵素液1を、α-グルコシル転移酵素活性として基質固形物1グラム当たり11.3単位加え、更に、50℃、pH6.0で48時間作用させた。その反応液を80℃で60分間保った後、冷却し、濾過し、得られる濾液を常法に従って、活性炭で脱色し、H型およびOH型イオン樹脂により脱塩・精製し、更に濃縮し、噴霧乾燥して、分岐α-グルカン1の粉末を得た。得られた分岐α-グルカン1は、前述したα-グルコシル転移酵素の反応メカニズムにより、α-1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンの一端に位置する非還元末端グルコース残基にα-1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有する。」 ・「実施例 35 [0222]<高脂肪食品(から揚げ)> 製造例1に示す方法で得た分岐α-グルカン1粉末を用いて、本発明の高脂肪食品であるから揚げを製造した。市販のから揚げ粉に対して、重量比で分岐α-グルカン1を3%、5%、10%を添加し、混合した。これらを鶏もも肉(脂肪酸約5質量%含有)100gあたり10gまぶして、170℃の熱した油(脂肪酸100質量%)で常法によりから揚げを得た。分岐α-グルカン1を3%、5%、10%を添加したから揚げ粉を用いて得られたから揚げを、それぞれから揚げA、B、Cとした。また、分岐α-グルカン1を添加しない市販のから揚げ粉を用いて対照のからあげを得た。 [0223] から揚げA、B、Cは、分岐α-グルカン1を配合しない対照のから揚げと比較して、食感がカリッとしていた。よって、本分岐α-グルカンには、から揚げ等のフライ食品に対する食感改良効果(クリスピー感の向上効果)があることが明らかとなった。なお、製造例2に示す方法で得た分岐α-グルカン2を添加したから揚げ粉を用いて得たから揚げも、同様に、食感がカリッとしたから揚げであった。 [0224] 本品は、から揚げ中に含まれる脂肪酸含量に対し、本分岐α-グルカンを水溶性食物繊維換算で2質量%以上含有するので、これを摂取しても脂肪肝などの生活習慣病が惹起される可能性の低い優れた高脂肪食品である。さらに本品は本分岐α-グルカンを含有するので、摂取することで便通改善効果があり、少ない食事量であっても高い満腹感を得ることができるので、摂食抑制(食事量と摂取カロリーの低減)につながり、この点からも脂肪肝などの生活習慣病が惹起される可能性の低い優れた高脂肪食品であるといえる。また、本分岐α-グルカンは味、香り、色等に悪い影響を及ぼさないだけでなく、から揚げの食感(クリスピー感)も向上させるため、本品はから揚げ本来の風味やうま味を保持し、食感が改良された、摂取しやすい高脂肪食品である。」 ・「実施例 36 [0225]<高脂肪食品(天ぷら)> 製造例1に示す方法で得た分岐α-グルカン1粉末を用いて、本発明の高脂肪食品である天ぷらを製造した。市販の天ぷら粉に対して、重量比で分岐α-グルカン1を5%、10%、15%を添加し、得られた粉を具材にまぶして、170℃の熱した油(脂肪酸100質量%)で常法により天ぷらを得た。分岐α-グルカン1を5%、10%、15%を添加した天ぷら粉を用いて得られた天ぷらを、それぞれ天ぷらA、B、Cとした。また、分岐α-グルカン1を添加しない市販の天ぷら粉を用いて対照の天ぷらを得た。 [0226] 天ぷらA、B、Cの製造において、分岐α-グルカン1を配合しない対照の天ぷらと比較して、食感もカリッとしていたことから、本分岐α-グルカンには、天ぷらの食感改良効果(クリスピー感の向上効果)があることが明らかとなった。 [0227] 本品は、本分岐α-グルカンを含有するので、これを摂取しても脂肪肝などの生活習慣病が惹起される可能性の低い優れた高脂肪食品である。さらに本品は本分岐α-グルカンを含有するので、摂取することで便通改善効果があり、少ない食事量であっても高い満腹感を得ることができるので、摂食抑制(食事量と摂取カロリーの低減)につながり、この点からも脂肪肝などの生活習慣病が惹起される可能性の低い優れた高脂肪食品であるといえる。また、本分岐α-グルカンは味、香り、色等に悪い影響を及ぼさないだけでなく、天ぷらの食感(クリスピー感)も向上させるため、本品は天ぷら本来の風味やうま味を保持し、食感が改良された、摂取しやすい高脂肪食品である。」 ・「[請求項1] 下記(A)乃至(D)の特徴を有する分岐α-グルカンを含有する、抗生活習慣病用剤; (A)グルコースを構成糖とし、 (B)α-1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンの一端に位置する非還元末端グルコース残基にα-1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有し、 (C)グルコース重合度が6乃至430であって、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn)が20以下で、 (D)本文記載の高速液体クロマトグラフ法(酵素-HPLC法)により求めた水溶性食物繊維含量が20質量%以上である。 [請求項2] 前記分岐α-グルカンがメチル化分析において下記(1)乃至(4)の特徴を有する、請求項1記載の抗生活習慣病用剤; (1) 2,3,6-トリメチル-1,4,5-トリアセチルグルシトールと2,3,4-トリメチル-1,5,6-トリアセチルグルシトールの比が1:0.6乃至1:4の範囲にあり、 (2) 2,3,6-トリメチル-1,4,5-トリアセチルグルシトールと2,3,4-トリメチル-1,5,6-トリアセチルグルシトールとの合計が部分メチル化グルシトールアセテートの60%以上を占め、 (3)2,4,6-トリメチル-1,3,5-トリアセチルグルシトールが部分メチル化グルシトールアセテートの0.5%以上10%以下であり、 (4)2,4-ジメチル-1,3,5,6-テトラアセチルグルシトールが部分メチル化グルシトールアセテートの0.5%以上である。」 (2)甲4に記載された発明 甲4に記載された事項を、特に実施例36に関して整理すると、甲4には次の発明(以下、順に「甲4物発明」、「甲4製法発明」、「甲4方法発明」という。)が記載されていると認める。なお、「製造例1に示す方法」については、上記(1)の[0061]及び[0059]に記載された方法である(以下において注釈は省略する。)。 <甲4物発明> 「市販の天ぷら粉に対して、製造例1に示す方法で得た分岐α-グルカンを重量比で5%、10%又は15%添加し、得られた粉。」 <甲4製法発明> 「甲4物発明の粉を具材にまぶして、170℃の熱した油で常法により天ぷらを製造する工程を有する、食感が改良された天ぷらを製造する方法。」 <甲4方法発明> 「甲4物発明の粉を具材にまぶして、170℃の熱した油で常法により天ぷらを製造する工程を有する、天ぷらの食感を改良する方法。」 2 本件特許発明1について (1)本件特許発明1と甲4物発明との対比 本件特許発明1と甲4物発明とを対比する。 甲4物発明の「粉」は、市販の天ぷら粉に対して分岐α-グルカンを添加したものであり、天ぷら粉と同様に使用できるものであるから、本件特許発明1の「油ちょう食品用ミックス」に相当する。 そうすると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。 <一致点1-4> 「油ちょう食品用ミックス。」 <相違点1-4-1> 本件特許発明1は「ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維を」「含有し、該高Tg水溶性食物繊維がイソマルトデキストリンであり」と特定するのに対し、甲4物発明はそのようには特定されない点。 <相違点1-4-2> 本件特許発明1は「高Tg水溶性食物繊維を0.5~15質量%含有」と特定するのに対し、甲4物発明はそのようには特定されない点。 <相違点1-4-3> 本件特許発明1は「更に、ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維を含有し、該低Tg水溶性食物繊維と前記高Tg水溶性食物繊維との合計含有量が20質量%以下である」ことを特定するのに対し、甲4物発明はそのようには特定されない点。 (2)判断 事案に鑑み、相違点1-4-3について検討する。 甲4には、甲4物発明の「粉」において、高Tg水溶性食物繊維と「ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維」とを併用することについては何ら記載されておらず、それらの合計含有量を「20質量%以下」とすることも記載されていないから、相違点1-4-3は実質的な相違点である。 また、他の証拠の記載を参照しても甲4物発明において、高Tg水溶性食物繊維と低Tg水溶性食物繊維とを「合計含有量が20質量%以下」の範囲で併用する動機となる記載はないから、甲4物発明において、相違点1-4-3に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は相違点1-4-3に係る発明特定事項により「油ちょう食品の食感(サクミ)、保形性、外観等の諸性能が一層高いレベルで向上し得る」(【0019】)という、甲4物発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 (3)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は特許異議申立書において相違点1-4-3に相当する事項(本件訂正前の請求項3)に対しては新規性欠如及び進歩性欠如の申立てを行っていない。 よって、上記(2)における相違点1-4-3についての判断は覆らない。 (4)本件特許発明1についてのまとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲4物発明であるとはいえないし、本件特許発明1は甲4物発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 3 本件特許発明2及び4について 本件特許発明2及び4はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲4物発明であるとはいえないし、甲4物発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 4 本件特許発明5について (1)本件特許発明5と甲4製法発明との対比 本件特許発明5と甲4製法発明とを対比する。 甲4製法発明における「粉を具材にまぶして、170℃の熱した油で常法により天ぷらを製造する工程を有する、食感が改良された天ぷらを製造する方法」は、本件特許発明5における「油ちょう食品用ミックスを用いた、油ちょう食品の製造方法」に相当する。 また、上記2(1)における検討を踏まえると甲4製法発明における「甲4物発明の粉」と本件特許発明5における「請求項1、2及び4の何れか1項に記載の油ちょう食品用ミックス」とは、上記2(1)に記載した一致点1-4で一致し、少なくとも上記相違点1-4-1~1-4-3で相違する。 そうすると、両者は、「油ちょう食品用ミックスを用いた、油ちょう食品の製造方法。」の点で一致し、少なくとも相違点1-4-1~1-4-3で相違する。 (2)判断 事案に鑑み、相違点1-4-3について検討する。 相違点1-4-3については、上記2(2)のとおりである。 (3)本件特許発明5についてのまとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明5は、甲4製法発明であるとはいえないし、本件特許発明5は甲4製法発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 5 本件特許発明6について (1)本件特許発明6と甲4方法発明との対比 本件特許発明6と甲4方法発明とを対比する。 甲4方法発明における「天ぷらの食感を改良する方法。」は、本件特許発明6における「油ちょう食品の食感改良方法」に相当する。 そうすると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。 <一致点6-4> 「油ちょう食品の食感改良方法。」 <相違点6-4-1> 本件特許発明6は「油ちょう食品に、ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維を」「含有させ、前記高Tg水溶性食物繊維がイソマルトデキストリンであり」と特定するのに対し、甲4方法発明は「甲4物発明の粉を具材にまぶして、」と特定する点。 <相違点6-4-2> 本件特許発明6は「油ちょう食品に」「高Tg水溶性食物繊維を0.5~15質量%」含有させ、と特定するのに対し、甲4方法発明は「甲4物発明の粉を具材にまぶして、」と特定する点。 <相違点6-4-3> 本件特許発明6は「油ちょう食品に」「ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維とを含有」させ、かつ、「前記低Tg水溶性食物繊維と前記高Tg水溶性食物繊維との合計含有量が20質量%以下である」と特定するのに対し、甲4方法発明は「甲4物発明の粉を具材にまぶして、」と特定する点。 (2)判断 事案に鑑み、相違点6-4-3について検討する。 甲4方法発明における「甲4物発明の粉」については、上記2(2)に記載したとおり、高Tg水溶性食物繊維と「ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維」とを併用することも、それらの合計含有量を「20質量%以下」とすることも記載されていないものであるから、本件特許発明6における「油ちょう食品」と甲4方法発明における「甲4物発明の粉を具材にまぶし」たものとの対比においても、それらは実質的な相違点となる。 よって、相違点6-4-3は実質的な相違点である。 また、上記2(2)における検討を踏まえると相違点6-4-3は、甲4方法発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明6についてのまとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明6は、甲4方法発明であるとはいえないし、本件特許発明6は甲4方法発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 6 小括 以上まとめると、本件特許発明1、2及び4~6は、いずれも特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものでもない。 よって、本件特許の請求項1、2及び4~6に係る特許は、いずれも特許法第29条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当しないから、取消理由及び申立理由4によっては取り消すことはできない。 第7 取消理由として採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由について 取消理由として採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由は次のとおりである。 ・申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性) ・申立理由2(甲2に基づく新規性・進歩性) ・申立理由3(甲3に基づく新規性・進歩性) ・申立理由5(甲7に基づく新規性・進歩性) ・申立理由6(甲10に基づく進歩性) ・申立理由7(サポート要件) ・申立理由8(実施可能要件) ・申立理由9(明確性要件) なお、申立理由7~9のうちの請求項3に対する理由は本件訂正によりその対象がなくなった。 以下、順に検討する。 1 申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)について (1)甲1に記載された事項等 ア 甲1に記載された事項 甲1は、「ザクザク感が長持ちするバッター液」(1/2頁1行)という内容の資料であり、おおむね次の事項が記載されている。なお、記載事項の摘記に際し、半角の数字を全角に改めた部分がある。下線は当審で付したものである。 ・「使用量目安:バッター液の5~10% ● 水溶性食物繊維ファイバリクサ (主成分 イソマルトデキストリン)を配合した バッター液です。 ● フライ食品のザクザク感が長持ちします。 ● ファイバリクサを配合しても風味や色をジャマしません。」(1/2頁2~6行) ・「 [図:0001439196000001.jpg] 」(1/2頁中段左欄の表) ・「 [図:0001439196000002.jpg] 」(1/2頁中段右欄) ・「 [図:0001439196000003.jpg] 」(1/2頁下段) イ 甲1に記載された発明 甲1に記載された事項を、特に提案品(1)(当審注:「(1)」は○の中に1。)のバッター液とそれを「フライ食品の製造工程」に記載された「2.バッターリング」の工程で用いるハムカツの製造方法に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1物発明」、「甲1製法発明」、「甲1方法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1物発明> 「ファイバリクサ、水、グアガム、キサンタンガム、バッター用澱粉、湿熱処理澱粉を含むバッター液であって、ファイバリクサを15、水を185、グアガムを0.24、キサンタンガムを0.06、バッター用澱粉を97、湿熱処理澱粉を3の配合量で含む、ハムを油調してハムカツを調製するために用いるバッター液。」 <甲1製法発明> 「ハムに1.打ち粉付け、2.甲1物発明のバッター液を用いるバッターリング、3.パン粉付け、4.急速冷凍、及び、5.油調の工程を加えることにより、ハムカツを製造する方法。」 <甲1方法発明> 「甲1製法発明によりハムカツを製造することを含む、ハムカツのクリスピー感を長持ちさせる方法。」 (2)本件特許発明1について ア 本件特許発明1と甲1物発明との対比 本件特許発明1と甲1物発明とを対比する。 甲1物発明における「ファイバリクサ」は、本件明細書【0014】、【0031】より、本件特許発明1における「ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維」及び「該高Tg水溶性食物繊維がイソマルトデキストリンであり」に相当する。 また、甲1物発明における「ファイバリクサ」の「配合量」は、5.0(=15/(15+185+0.24+0.06+97+3)×100)質量%と算出できるから、本件特許発明1における「0.5~15質量%含有し」に相当する。 さらに、甲1物発明における「ハムを油調してハムカツを調製するために用いる」は本件特許発明1における「油ちょう食品用」に相当し、甲1物発明における「バッター液」は、本件特許発明1における「ミックス」と、油ちょう食品用の材料であるという限りにおいて一致する。 そうすると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。 <一致点1-1> 「ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維を0.5~15質量%含有し、該高Tg水溶性食物繊維がイソマルトデキストリンである、油ちょう食品用の材料。」 <相違点1-1-1> 本件特許発明1は「更に、ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維を含有し、該低Tg水溶性食物繊維と前記高Tg水溶性食物繊維との合計含有量が20質量%以下である」と特定するのに対し、甲1物発明においてはそのようには特定されない点。 <相違点1-1-2> 本件特許発明1は「ミックス」と特定するのに対し、甲1物発明は「バッター液」である点。 イ 判断 相違点1-1-1について検討する。 甲1には、甲1物発明の「バッター液」において、ファイバリクサと「ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維」とを併用することについては何ら記載されておらず、それらの合計含有量を「20質量%以下」とすることも記載されていないから、相違点1-1-1は実質的な相違点である。 また、他の証拠の記載を参照しても、甲1物発明において、ファイバリクサと「ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維」とを「合計含有量が20質量%以下」の範囲で併用する動機となる記載はないから、甲1物発明において、相違点1-1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は相違点1-1-1に係る発明特定事項により「油ちょう食品の食感(サクミ)、保形性、外観等の諸性能が一層高いレベルで向上し得る」(【0019】)という、甲1物発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は特許異議申立書において相違点1-1-1に相当する事項(本件訂正前の請求項3)に対しては新規性欠如及び進歩性欠如の申立てを行っていない。 よって、上記イにおける相違点1-1-1についての判断は覆らない。 エ 本件特許発明1についてのまとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1物発明であるとはいえないし、本件特許発明1は甲1物発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明2及び4について 本件特許発明2及び4はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由により、甲1物発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明5について ア 本件特許発明5と甲1製法発明との対比 本件特許発明5と甲1製法発明とを対比する。 甲1製法発明における、「5.油調の工程を加えることにより、ハムカツを製造する方法」は、本件特許発明5における「油ちょう食品の製造方法」に相当する。 また、上記(2)アにおける検討を踏まえると甲1製法発明における「バッター液を用いるバッターリング」は、本件特許発明5における「油ちょう食品用ミックスを用いた」と、油ちょう食品用の材料を用いたという限りにおいて一致し、甲1製法発明における「甲1物発明のバッター液」と、本件特許発明5における「請求項1、2及び4の何れか1項に記載の油ちょう食品用ミックス」とは、上記(2)アに記載した一致点1-1で一致し、少なくとも上記相違点1-1-1~1-1-2で相違する。 そうすると、両者は、「ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維を含有し、該高Tg水溶性食物繊維がイソマルトデキストリンである、油ちょう食品用の材料を用いた、油ちょう食品の製造方法。」の点で一致し、少なくとも相違点1-1-1~1-1-2で相違する。 イ 判断 相違点1-1-1について検討する。 相違点1-1-1については、上記(2)イのとおりである。 ウ 本件特許発明5についてのまとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明5は、甲1製法発明であるとはいえないし、本件特許発明5は甲1製法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)本件特許発明6について ア 本件特許発明6と甲1方法発明との対比 本件特許発明6と甲1方法発明とを対比する。 甲1方法発明における「ハムカツ」は、「甲1製法発明により」製造されるものであるところ、「甲1製法発明」が「5.油調の工程」を含むから、本件特許発明6における「油ちょう食品」に相当する。 また、甲1方法発明における「クリスピー感を長持ちさせる方法」は、本件特許発明6における「食感改良方法」に相当する。 そうすると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。 <一致点6-1> 「油ちょう食品の食感改良方法。」 <相違点6-1-1> 本件特許発明6は「油ちょう食品に、ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維を」「含有させ、前記高Tg水溶性食物繊維がイソマルトデキストリンであり」と特定するのに対し、甲1方法発明は「甲1製法発明によりハムカツを製造する」と特定する点。 <相違点6-1-2> 本件特許発明6は「油ちょう食品に」「高Tg水溶性食物繊維を0.5~15質量%」含有させ、と特定するのに対し、甲1方法発明は「甲1製法発明によりハムカツを製造する」と特定する点。 <相違点6-1-3> 本件特許発明6は「油ちょう食品に」「ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維とを含有させ」、かつ、「前記低Tg水溶性食物繊維と前記高Tg水溶性食物繊維との合計含有量が20質量%以下である」と特定するのに対し、甲1方法発明は「甲1製法発明によりハムカツを製造する」と特定する点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点6-1-3について検討する。 甲1方法発明における「甲1製法発明によりハムカツを製造する」工程は、上記(4)アにおける検討を踏まえると「甲1物発明のバッター液」を用いる工程であり、該「甲1物発明のバッター液」については、上記(2)イに記載したとおり、高Tg水溶性食物繊維と「ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維」とを併用することも、それらの合計含有量を「20質量%以下」とすることも記載されていないものであるから、本件特許発明6における「油ちょう食品」と甲1方法発明における「甲1製法発明により」製造されるハムカツとの対比においても、それらは実質的な相違点となる。 よって、相違点6-1-3は実質的な相違点である。 また、上記(2)イにおける検討を踏まえると相違点6-1-3は、甲1方法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 ウ 本件特許発明6についてのまとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明6は、甲1方法発明であるとはいえないし、本件特許発明6は甲1方法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (6)申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)についてのまとめ 以上をまとめると、本件特許発明1、5及び6は、いずれも特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、本件特許発明1、2及び4~6は、いずれも特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。したがって、本件特許の請求項1、2及び4~6に係る特許は、いずれも特許法第29条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当しないので、申立理由1によっては取り消すことはできない。 2 申立理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)について (1)甲2に記載された事項等 ア 甲2に記載された事項 甲2は、「サクサク感が長持ちするパン粉」(1/2頁1行)という内容の資料であり、おおむね次の事項が記載されている。なお、記載事項の摘記に際し、半角の記号、数字等を全角に改めた部分がある。下線は当審で付したものである。 ・「使用料目安:対粉4~8% ● 水溶性食物繊維ファイバリクサ (主成分 イソマルトデキストリン)を配合したパン粉です。 ● フライ食品のサクサク感が長持ちします。」(1/2頁3~6行) ・「 [図:0001439196000004.jpg] 」(1/2頁中段左欄の表) ・「 [図:0001439196000005.jpg] 」(1/2頁中段右欄のフロー図) ・「 [図:0001439196000006.jpg] 」(1/2頁下段) イ 甲2に記載された発明 甲2に記載された事項を、特に配合(1)(当審注:「(1)」は○の中に1。)の配合物を用いて得られたパン粉とそれを用いるポテトコロッケの製造方法に関して整理すると、甲2には次の発明(以下、「甲2物発明」、「甲2製法発明」、「甲2方法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲2物発明> 「「作り方」に記載されたミキシングの手順で、強力粉、パン酵母、製パン改良剤、食塩、グラニュー糖、ファイバリクサ、脱脂粉乳、ショートニング、水を含む配合物を調製し、該配合物は、強力粉を100、パン酵母を3、製パン改良剤を0.1、食塩を2、グラニュー糖を6、ファイバリクサを4、脱脂粉乳を2、ショートニングを5、水を64の配合量で含み、該配合物から、さらに「作り方」に記載された手順で調製されたパン粉であってポテトコロッケに付け、油調するために用いるパン粉。」 <甲2製法発明> 「ポテトコロッケに甲2物発明のパン粉を付け、油調する工程を含む、ポテトコロッケの製造方法。」 <甲2方法発明> 「ポテトコロッケに甲2物発明のパン粉を付け、油調する工程を含む、ポテトコロッケのサクサク感を長持ちさせる方法。」 (2)本件特許発明1について ア 本件特許発明1と甲2物発明との対比 本件特許発明1と甲2物発明とを対比する。 甲2物発明における「ファイバリクサ」は、本件明細書【0014】、【0031】より、本件特許発明1における「ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維」及び「該高Tg水溶性食物繊維がイソマルトデキストリンであり」に相当する。 また、甲2物発明における「ポテトコロッケに付け、油調するために用いる」は本件特許発明1における「油ちょう食品用」に相当し、甲2物発明における「パン粉」は、本件特許発明1における「ミックス」と、油ちょう食品用の材料であるという限りにおいて一致する。 そうすると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。 <一致点1-2> 「ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維を含有し、該高Tg水溶性食物繊維がイソマルトデキストリンである、油ちょう食品用の材料。」 <相違点1-2-1> 本件特許発明1は「高Tg水溶性食物繊維を0.5~15質量%含有し」と特定するのに対し、甲2物発明においては、(焼成工程を経て得られた)「パン粉」中の「ファイバリクサ」の含有割合が配合(1)(当審注:「(1)」は○の中に1。)と同様とはいえず明らかではない点。 <相違点1-2-2> 本件特許発明1は「更に、ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維を含有し、該低Tg水溶性食物繊維と前記高Tg水溶性食物繊維との合計含有量が20質量%以下である」と特定するのに対し、甲2物発明においてはそのようには特定されない点。 <相違点1-2-3> 本件特許発明1は「ミックス」と特定するのに対し、甲2物発明は「パン粉」である点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点1-2-2について検討する。 甲2には、甲2物発明の「パン粉」において、ファイバリクサと「ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維」とを併用することについては何ら記載されておらず、それらの合計含有量を「20質量%以下」とすることも記載されていないから、相違点1-2-2は実質的な相違点である。 また、他の証拠の記載を参照しても、甲2物発明において、ファイバリクサと「ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維」とを「合計含有量が20質量%以下」の範囲で併用する動機となる記載はないから、甲2物発明において、相違点1-2-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は相違点1-2-2に係る発明特定事項により「油ちょう食品の食感(サクミ)、保形性、外観等の諸性能が一層高いレベルで向上し得る」(【0019】)という、甲2物発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は特許異議申立書において相違点1-2-2に相当する事項(本件訂正前の請求項3)に対しては新規性欠如及び進歩性欠如の申立てを行っていない。 よって、上記イにおける相違点1-2-2についての判断は覆らない。 エ 本件特許発明1についてのまとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2物発明であるとはいえないし、本件特許発明1は甲2物発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明2及び4について 本件特許発明2及び4はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由により、本件特許発明2は甲2物発明であるとはいえないし、本件特許発明2及び4はいずれも甲2物発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明5について ア 本件特許発明5と甲2製法発明との対比 本件特許発明5と甲2製法発明とを対比する。 甲2製法発明における「油調する工程を含む、ポテトコロッケの製造方法」は、本件特許発明5における「油ちょう食品の製造方法」に相当する。 また、上記(2)アにおける検討を踏まえると甲2製法発明における「ポテトコロッケに」「パン粉を付け」は、本件特許発明5における「油ちょう食品用ミックスを用いた」と、油ちょう食品用の材料を用いたという限りにおいて一致し、甲2製法発明における「甲2物発明のパン粉」と、本件特許発明5における「請求項1、2及び4の何れか1項に記載の油ちょう食品用ミックス」とは、上記(2)アに記載した一致点1-2で一致し、少なくとも上記相違点1-2-1~1-2-3で相違する。 そうすると、両者は、「ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維を含有し、該高Tg水溶性食物繊維がイソマルトデキストリンである、油ちょう食品用の材料を用いた、油ちょう食品の製造方法。」の点で一致し、少なくとも相違点1-2-1~1-2-3で相違する。 イ 判断 事案に鑑み、相違点1-2-2について検討する。 相違点1-2-2については、上記(2)イのとおりである。 ウ 本件特許発明5についてのまとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明5は、甲2製法発明であるとはいえないし、本件特許発明5は甲2製法発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)本件特許発明6について ア 本件特許発明6と甲2方法発明との対比 本件特許発明6と甲2方法発明とを対比する。 甲2方法発明における「ポテトコロッケ」は、「油調する工程を含む」方法で得られることから、本件特許発明6における「油ちょう食品」に相当する。 また、甲2方法発明における「サクサク感を長持ちさせる方法」は、本件特許発明6における「食感改良方法」に相当する。 そうすると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。 <一致点6-2> 「油ちょう食品の食感改良方法。」 <相違点6-2-1> 本件特許発明6は「油ちょう食品に、ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維を」「含有させ、前記高Tg水溶性食物繊維がイソマルトデキストリンであり」と特定するのに対し、甲2方法発明は「ポテトコロッケに甲2物発明のパン粉を付け、」と特定する点。 <相違点6-2-2> 本件特許発明6は「油ちょう食品に」「高Tg水溶性食物繊維を0.5~15質量%」含有させ、と特定するのに対し、甲2方法発明は「ポテトコロッケに甲2物発明のパン粉を付け、」と特定する点。 <相違点6-2-3> 本件特許発明6は「油ちょう食品に」「ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維とを含有させ」、かつ、「前記低Tg水溶性食物繊維と前記高Tg水溶性食物繊維との合計含有量が20質量%以下である」と特定するのに対し、甲2方法発明は「ポテトコロッケに甲2物発明のパン粉を付け、」と特定する点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点6-2-3について検討する。 甲2方法発明における「甲2物発明のパン粉」は、上記(2)イに記載したとおり、高Tg水溶性食物繊維と「ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維」とを併用することも、それらの合計含有量を「20質量%以下」とすることも記載されていないものであるから、本件特許発明6における「油ちょう食品」と甲2方法発明における「甲2物発明のパン粉を付け」た「ポテトコロッケ」との対比においても、それらは実質的な相違点となる。 よって、相違点6-2-3は実質的な相違点である。 また、上記(2)イにおける検討を踏まえると相違点6-2-3は、甲2方法発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 ウ 本件特許発明6についてのまとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明6は、甲2方法発明であるとはいえないし、本件特許発明6は甲2方法発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (6)申立理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)についてのまとめ 以上をまとめると、本件特許発明1、2、5及び6は、いずれも特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、本件特許発明1、2及び4~6は、いずれも特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。したがって、本件特許の請求項1、2及び4~6に係る特許は、いずれも特許法第29条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当しないので、申立理由2によっては取り消すことはできない。 3 申立理由3(甲3に基づく新規性・進歩性)について (1)甲3に記載された事項等 ア 甲3に記載された事項 甲3は、「から揚げ用バッターミックス」(1頁1行)という内容の資料であり、おおむね次の事項が記載されている。なお、記載事項の摘記に際し、半角の数字を全角に改めた部分がある。下線は当審で付したものである。「・・・」は省略を示す。 ・「使用料目安:バッターミックスの5~20% ● 水溶性食物繊維ファイバリクサ(主成分 イソマルトデキストリン)を配合したから揚げ用バッターミックスです。 ● 香ばしい風味とカリッとした食感の衣です。」(1頁3~6行) ・「 [図:0001439196000007.jpg] 」(1頁中段の表) ・「 [図:0001439196000008.jpg] 」(1頁下段のフロー図) イ 甲3に記載された発明 甲3に記載された事項を、特に配合のバッターミックスとそれを用いて得られたから揚げに関して整理すると、甲3には次の発明(以下、「甲3物発明」、「甲3製法発明」、「甲3方法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲3物発明> 「片栗粉 30g、薄力粉 30g、ファイバリクサ 20g、トレハ 5g、チキンパウダー 5g、チキンブイヨン粉末 5g、醤油粉末 4g、乾燥卵白 3g、食塩 2g、ガーリックパウダー 2g、ベーキングパウダー 1.5g、ホワイトペッパー 1g、ブラックペッパー 0.5gの配合量で含む、から揚げ用バッターミックス。」 <甲3製法発明> 「甲3物発明のバッターミックスに水を加えて溶かし、これに鶏肉を入れてよくもみこみ衣をたっぷりつけ、170~180℃に熱した油で3分間揚げる工程を含む、から揚げを製造する方法。」 <甲3方法発明> 「甲3製法発明によりから揚げを製造することを含む、から揚げに香ばしい風味とカリッとした食感の衣を付与する方法。」 (2)本件特許発明1について ア 本件特許発明1と甲3物発明との対比 本件特許発明1と甲3物発明とを対比する。 甲3物発明における「ファイバリクサ」は、本件明細書【0014】、【0031】より、本件特許発明1における「ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維」及び「該高Tg水溶性食物繊維がイソマルトデキストリンであり」に相当する。 また、甲3物発明における「から揚げ」は、「170~180℃に熱した油で3分間揚げ」(1頁下段のフロー図)て製造されるものであるから、本件特許発明1における「油ちょう食品」に相当し、甲3物発明における「バッターミックス」は本件特許発明1における「ミックス」に相当する。 そうすると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。 <一致点1-3> 「ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維を含有し、該高Tg水溶性食物繊維がイソマルトデキストリンである、油ちょう食品用ミックス。」 <相違点1-3-1> 本件特許発明1は「更に、ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維を含有し、該低Tg水溶性食物繊維と前記高Tg水溶性食物繊維との合計含有量が20質量%以下である」と特定するのに対し、甲3物発明においてはそのようには特定されない点。 <相違点1-3-2> 本件特許発明1は「ガラス転移点180℃以上の高Tg水溶性食物繊維を0.5~15質量%含有」と特定するのに対し、甲3物発明は、高Tg水溶性食物繊維である「ファイバリクサ」の「配合量」は、18(=20/(30+30+20+5+5+5+4+3+2+2+1.5+1+0.5)×100)質量%と算出される点。 イ 判断 相違点1-3-1について検討する。 甲3には、甲3物発明の「バッターミックス」において、ファイバリクサと「ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維」とを併用することについては何ら記載されておらず、それらの合計含有量を「20質量%以下」とすることも記載されていないから、相違点1-3-1は実質的な相違点である。 また、他の証拠の記載を参照しても、甲3物発明において、ファイバリクサと「ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維」とを「合計含有量が20質量%以下」の範囲で併用する動機となる記載はないから、甲3物発明において、相違点1-3-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は相違点1-3-1に係る発明特定事項により「油ちょう食品の食感(サクミ)、保形性、外観等の諸性能が一層高いレベルで向上し得る」(【0019】)という、甲3物発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は特許異議申立書において相違点1-3-1に相当する事項(本件訂正前の請求項3)に対しては新規性欠如及び進歩性欠如の申立てを行っていない。 よって、上記イにおける相違点1-3-1についての判断は覆らない。 エ 本件特許発明1についてのまとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲3物発明であるとはいえないし、本件特許発明1は甲3物発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明2及び4について 本件特許発明2及び4はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由により、甲3物発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明5について ア 本件特許発明5と甲3製法発明との対比 本件特許発明5と甲3製法発明とを対比する。 甲3製法発明における「170~180℃に熱した油で3分間揚げる工程を含む、から揚げを製造する方法」は、本件特許発明5における「油ちょう食品の製造方法」に相当する。 また、上記(2)アにおける検討を踏まえると甲3製法発明における「甲3物発明のバッターミックス」と、本件特許発明5における「請求項1、2及び4の何れか1項に記載の油ちょう食品用ミックス」とは、上記(2)アに記載した一致点1-3で一致し、少なくとも上記相違点1-3-1~1-3-2で相違する。 そうすると、両者は、「ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維を含有し、該高Tg水溶性食物繊維がイソマルトデキストリンである、油ちょう食品用ミックスを用いた、油ちょう食品の製造方法。」の点で一致し、少なくとも相違点1-3-1~1-3-2で相違する。 イ 判断 相違点1-3-1について検討する。 相違点1-3-1については、上記(2)イのとおりである。 ウ 本件特許発明5についてのまとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明5は、甲3製法発明であるとはいえないし、本件特許発明5は甲3製法発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)本件特許発明6について ア 本件特許発明6と甲3方法発明との対比 本件特許発明6と甲3方法発明とを対比する。 甲3方法発明における「から揚げ」は、「甲3製法発明により」製造されるものであるところ、「甲3製法発明」が「170~180℃に熱した油で3分間揚げる工程」を含むから、本件特許発明6における「油ちょう食品」に相当する。 また、甲3方法発明における「カリッとした食感の衣を付与する方法」は、本件特許発明6における「食感改良方法」に相当する。 そうすると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。 <一致点6-3> 「油ちょう食品の食感改良方法。」 <相違点6-3-1> 本件特許発明6は「油ちょう食品に、ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維を」「含有させ、前記高Tg水溶性食物繊維がイソマルトデキストリンであり」と特定するのに対し、甲3方法発明は「甲3製法発明によりから揚げを製造する」と特定する点。 <相違点6-3-2> 本件特許発明6は「油ちょう食品に」「高Tg水溶性食物繊維を0.5~15質量%」含有させ、と特定するのに対し、甲3方法発明は「甲3製法発明によりから揚げを製造する」と特定する点。 <相違点6-3-3> 本件特許発明6は「油ちょう食品に」「ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維とを含有させ」、かつ、「前記低Tg水溶性食物繊維と前記高Tg水溶性食物繊維との合計含有量が20質量%以下である」と特定するのに対し、甲3方法発明は「甲3製法発明によりから揚げを製造する」と特定する点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点6-3-3について検討する。 甲3方法発明における「甲3製法発明によりから揚げを製造する」工程は、上記(4)アにおける検討を踏まえると「甲3物発明のバッターミックス」を用いる工程であり、該「甲3物発明のバッターミックス」については、上記(2)イに記載したとおり、高Tg水溶性食物繊維と「ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維」とを併用することも、それらの合計含有量を「20質量%以下」とすることも記載されていないものであるから、本件特許発明6における「油ちょう食品」と甲3方法発明における「甲3製法発明により」製造されるから揚げとの対比においても、それらは実質的な相違点となる。 よって、相違点6-3-3は実質的な相違点である。 また、上記(2)イにおける検討を踏まえると相違点6-3-3は、甲3方法発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 ウ 本件特許発明6についてのまとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明6は、甲3方法発明であるとはいえないし、本件特許発明6は甲3方法発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (6)申立理由3(甲3に基づく新規性・進歩性)についてのまとめ 以上をまとめると、本件特許発明1、5及び6は、いずれも特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、本件特許発明1、2及び4~6は、いずれも特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。したがって、本件特許の請求項1、2及び4~6に係る特許は、いずれも特許法第29条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当しないので、申立理由3によっては取り消すことはできない。 4 申立理由5(甲7に基づく新規性・進歩性)について (1)甲7に記載された事項等 ア 甲7に記載された事項 甲7は、「水溶性食物繊維の新たな選択肢,イソマルトデキストリン」というタイトルの技術論文であり、おおむね次の事項が記載されている。なお、記載事項の摘記に際し、半角の数字を全角に改めた部分がある。下線は当審で付したものである。 ・「イソマルトデキストリンは世界で唯一,当社が製造しており(商品名:ファイバリクサTM),一般的な酵素水飴の製造方法と同様の工程に噴霧乾燥工程を組み合わせることによって製造される。」(6頁右欄8~12行) ・「5.イソマルトデキストリンの食品への利用 イソマルトデキストリンの食品への配合目的としては,主に食物繊維の補給が挙げられる。イソマルトデキストリンは固形分当たり80%以上の食物繊維を含有するため,国が定める食品表示基準を満たす量を食品に配合することにより,食物繊維の栄養強調表示が可能となる。具体的にはイソマルトデキストリンを食品100gあたり固形分として3.8g以上,飲料の場合は100mLあたり固形分として1.9g以上配合することにより,「食物繊維入」など食物繊維を含む旨の表示が可能となる。」(9頁右欄23行~10頁左欄8行) ・「 [図:0001439196000009.jpg] 」(10頁左欄) イ 甲7に記載された発明 甲7に記載された事項を、特に表1の唐揚げ、天ぷらの使用例に関して整理すると、甲7には次の発明(以下、「甲7物発明」、「甲7製法発明」、「甲7方法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲7物発明> 「唐揚げ又は天ぷらに4~8%の配合量で配合させるイソマルトデキストリン。」 <甲7製法発明> 「唐揚げ又は天ぷらにイソマルトデキストリンを4~8%の配合量で配合する工程を含む、唐揚げ又は天ぷらの製造方法。」 <甲7方法発明> 「唐揚げ又は天ぷらにイソマルトデキストリンを4~8%の配合量で配合する工程を含む、唐揚げ又は天ぷらへの食物繊維の補給方法。」 (2)本件特許発明1について ア 本件特許発明1と甲7物発明との対比 本件特許発明1と甲7物発明とを対比する。 甲7物発明における「イソマルトデキストリン」は、甲7の刊行時においてファイバリクサTMという商品名にて世界で唯一製造されているものであるところ(6頁右欄8~12行)、該「ファイバリクサ」は、本件明細書【0014】、【0031】にその成分及びTgが記載されていることから、本件特許発明1における「ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維」及び「該高Tg水溶性食物繊維がイソマルトデキストリンであり」に相当する。 また、甲7物発明における「唐揚げ又は天ぷら」は、油調して製造されるものであるから、本件特許発明1における「油ちょう食品」に相当し、甲7物発明における「イソマルトデキストリン」は、本件特許発明1における「ミックス」と、油ちょう食品用の材料であるという限りにおいて一致する。 そうすると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。 <一致点1-7> 「ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維を含有し、該高Tg水溶性食物繊維がイソマルトデキストリンである、油ちょう食品用の材料。」 <相違点1-7-1> 本件特許発明1は「更に、ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維を含有し、該低Tg水溶性食物繊維と前記高Tg水溶性食物繊維との合計含有量が20質量%以下である」と特定するのに対し、甲1物発明においてはそのようには特定されない点。 <相違点1-7-2> 本件特許発明1は「ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維」を「油ちょう食品用ミックス」を基準として「0.5~15質量%含有」すると特定するのに対し、甲7物発明はイソマルトデキストリンが「唐揚げ又は天ぷら」を基準として「4~8%の配合量で配合させる」と特定する点。 <相違点1-7-3> 本件特許発明1は「油ちょう食品用ミックス」と特定するのに対し、甲7物発明は「イソマルトデキストリン」である点。 イ 判断 相違点1-7-1について検討する。 甲7には、甲7物発明の「イソマルトデキストリン」と「ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維」とを併用することについては何ら記載されておらず、油ちょう食品用材料におけるそれらの合計含有量を「20質量%以下」とすることも記載されていないから、相違点1-7-1は実質的な相違点である。 また、他の証拠の記載を参照しても、甲7物発明において、「イソマルトデキストリン」と「ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維」とを油ちょう食品用材料において「合計含有量が20質量%以下」の範囲で併用する動機となる記載はないから、甲7物発明において、相違点1-7-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は相違点1-7-1に係る発明特定事項により「油ちょう食品の食感(サクミ)、保形性、外観等の諸性能が一層高いレベルで向上し得る」(【0019】)という、甲7物発明並びに甲7及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は特許異議申立書において相違点1-7-1に相当する事項(本件訂正前の請求項3)に対しては新規性欠如及び進歩性欠如の申立てを行っていない。 よって、上記イにおける相違点1-7-1についての判断は覆らない。 エ 本件特許発明1についてのまとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲7物発明であるとはいえないし、本件特許発明1は甲7物発明並びに甲7及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明2について 本件特許発明2は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由により、甲7物発明並びに甲7及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明5について ア 本件特許発明5と甲7製法発明との対比 本件特許発明5と甲7製法発明とを対比する。 甲7製法発明における「唐揚げ又は天ぷら」は、油調して製造されるものであるから、甲7製法発明における「唐揚げ又は天ぷらの製造方法」は本件特許発明5における「油ちょう食品の製造方法」に相当する。 また、上記(2)アにおける検討を踏まえると甲7製法発明における「イソマルトデキストリンを4~8%の配合量で配合する工程を含む」は、本件特許発明5における「油ちょう食品用ミックスを用いた」と、油ちょう食品用の材料を用いたという限りにおいて一致し、甲7製法発明における「イソマルトデキストリン」と、本件特許発明5における「請求項1、2及び4の何れか1項に記載の油ちょう食品用ミックス」とは、上記(2)アに記載した一致点1-7で一致し、少なくとも上記相違点1-7-1~1-7-3で相違する。 そうすると、両者は、「ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維を含有し、該高Tg水溶性食物繊維がイソマルトデキストリンである、油ちょう食品用の材料を用いた、油ちょう食品の製造方法。」の点で一致し、少なくとも相違点1-7-1~1-7-3で相違する。 イ 判断 相違点1-7-1について検討する。 相違点1-7-1については、上記(2)イのとおりである。 ウ 本件特許発明5についてのまとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明5は、甲7製法発明であるとはいえないし、本件特許発明5は甲7製法発明並びに甲7及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)本件特許発明6について ア 本件特許発明6と甲7方法発明との対比 本件特許発明6と甲7方法発明とを対比する。 甲7方法発明における「唐揚げ又は天ぷら」は、油調して製造されるものであるから、本件特許発明6における「油ちょう食品」に相当する。 また、上記(2)アにおける検討を踏まえると甲7方法発明における「唐揚げ又は天ぷらにイソマルトデキストリンを4~8%の配合量で配合する工程を含む」は、本件特許発明6の「油ちょう食品に、ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維を0.5~15質量%」「を含有させ、 前記高Tg水溶性食物繊維がイソマルトデキストリンであ」るに相当する。 さらに、甲7方法発明における「唐揚げ又は天ぷらへの食物繊維の補給方法」は、本件特許発明6における「油ちょう食品の食感改良方法」と、油ちょう食品に関する「方法」という限りにおいて一致する。 そうすると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。 <一致点6-7> 「油ちょう食品に、ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維を0.5~15質量%含有させ、前記高Tg水溶性食物繊維がイソマルトデキストリンである、油ちょう食品に関する方法。」 <相違点6-7-1> 本件特許発明6は「油ちょう食品に」「ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維とを含有させ」、かつ、「前記低Tg水溶性食物繊維と前記高Tg水溶性食物繊維との合計含有量が20質量%以下である」と特定するのに対し、甲7方法発明はそのようには特定されない点。 <相違点6-7-2> 本件特許発明6は「油ちょう食品の食感改良方法」と特定するのに対し、甲7方法発明は「唐揚げ又は天ぷらへの食物繊維の補給方法」である点。 イ 判断 相違点6-7-1について検討する。 甲7方法発明における「イソマルトデキストリンを」「配合する工程」において、該「イソマルトデキストリン」については、上記(2)イに記載したとおり、イソマルトデキストリンと「ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維」とを併用することも、それらの合計含有量を「20質量%以下」とすることも記載されていないものであるから、本件特許発明6における「油ちょう食品」と甲7方法発明における「イソマルトデキストリン」が「配合」される唐揚げ又は天ぷらとの対比においても、それらは実質的な相違点となる。 よって、相違点6-7-1は実質的な相違点である。 また、上記(2)イにおける検討を踏まえると相違点6-7-1は、甲7方法発明並びに甲7及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 ウ 本件特許発明6についてのまとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明6は、甲7方法発明であるとはいえないし、本件特許発明6は甲7方法発明並びに甲7及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (6)申立理由5(甲7に基づく新規性・進歩性)についてのまとめ 以上をまとめると、本件特許発明1、5及び6は、いずれも特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、本件特許発明1、2、5及び6は、いずれも特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。したがって、本件特許の請求項1、2、5及び6に係る特許は、いずれも特許法第29条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当しないので、申立理由5によっては取り消すことはできない。 5 申立理由6(甲10に基づく進歩性)について (1)甲10に記載された事項等 ア 甲10に記載された事項 甲10には、「持久力向上剤」について、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。「・・・」は省略を示す。 ・「【請求項1】 下記(A)乃至(C)の特徴を有する分岐α-グルカン混合物を有効成分として含有する持久力向上剤: (A)グルコースを構成糖とし、 (B)α-1,4結合を介して連結したグルコース重合度3 以上の直鎖状グルカンの一端に位置する非還元末端グルコース残基にα-1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有し、 (C)イソマルトデキストラナーゼ消化により、イソマルトースを生成する。 ・・・ 【請求項6】 請求項1乃至5のいずれかに記載の持久力向上剤を含有する、持久力向上用の食品組成物又は飲料組成物。」 ・「【0011】 本発明の持久力向上剤は、摂取することにより持久力を向上させることができるので、持久力を必要とする運動を行う際のパフォーマンスを向上させることができるとともに、有効成分である分岐α-グルカン混合物が、ほぼ無味無臭であるので、これを飲食物等に十分量を配合しても、飲食物本来の風味を即なくことがなく、呈味や後味に優れた持久力向上用の飲食物を得ることができるという利点が得られる。」 ・「【0034】 本分岐α-グルカン混合物は、上記(A)乃至(C)の特徴を有する限り、如何なる方法で製造されたものであっても良い。例えば、α-1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンの非還元末端グルコース残基にα-1,6結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を導入する作用を有する酵素を澱粉質に作用させて得られる分岐α-グルカン混合物は、本発明の実施において好適に利用することができ、より好適な一例としては、国際公開第WO2008/136331号パンフレットにおいて開示されているα-グルコシル転移酵素を澱粉質に作用させて得られる分岐α-グルカン混合物が挙げられる。 ・・・ 【0035】 本分岐α-グルカン混合物は、以上に述べたとおりのものであるが、本出願人である株式会社林原からイソマルトデキストリン(登録商標『ファイバリクサ』)として販売されている分岐α-グルカン混合物が、本発明を実施する上で、最適な分岐α-グルカン混合物として用いることができる。」 ・「【0037】 本発明の持久力向上剤は、持久力向上剤の作用効果を発揮する量摂取すればよく、摂取量に特段の制限はないが、例えば、有効成分である本分岐α-グルカン混合物の摂取量が、通常、成人(体重60kg)1回当たり、0.5乃至100gの範囲、好ましくは5乃至90gの範囲、より好ましくは10乃至80gの範囲、さらに好ましくは20乃至50gの範囲となるように、本発明の持久力向上剤を、そのまま、或いは、水、お茶、コーヒーなどの飲料に溶解して摂取するか、食品又は飲料に添加して摂取すればよい。 【0038】 本発明の持久力向上剤は、粉末状、粒状、顆粒状、液状、ペースト状、クリーム状、タブレット状、カプセル状、カプレット状、ソフトカプセル状、錠剤状、棒状、板状、ブロック状、丸薬状、固形状、ゲル状、ゼリー状、グミ状、ウエハース状、ビスケット状、飴状、チュアブル状、シロップ状、スティック状などの適宜の形態とすることができる。また、本発明の持久力向上剤は、特定保健用食品、機能性表示食品、栄養補助食品、又は健康食品などの生活習慣病を予防又は改善することを目的に摂取される飲食品に配合することができる。さらに、本発明の持久力向上剤は、通常の飲食品に配合することも随意である。配合される飲食品の具体例としては、炭酸飲料、乳飲料、ゼリー飲料、スポーツドリンク、酢飲料、豆乳飲料、鉄含有飲料、乳酸菌飲料、緑茶、紅茶、ココア、コーヒーなどの飲料、米飯、粥、パン、麺類、スープ、味噌汁、ヨーグルトなどの食品、ソフトキャンディー、ハードキャンディ、グミ、ゼリー、クッキー、ソフトクッキー、せんべい、あられ、おこし、求肥、餅類、わらび餅、まんじゅう、ういろう、餡類、羊羹、水羊羹、錦玉、ゼリー、ペクチンゼリー、カステラ、ビスケット、クラッカー、パイ、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、ワッフル、スポンジケーキ、ホットケーキ、マフィン、ドーナツ、チョコレート、ガナッシュ、シリアルバー、チューインガム、キャラメル、ヌガー、フラワーペースト、ピーナッツペースト、フルーツペースト、ジャム、マーマレードなどの菓子、アイスクリーム、シャーベット、ジェラートなどの氷菓、更には、醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、もろみ、ひしお、フリカケ、マヨネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つゆ、麺つゆ、ソース、トマトソース、ケチャップ、焼き肉のタレ、焼き鳥のタレ、から揚げ粉、天ぷら粉、カレールウ、シチューの素、スープの素、ダシの素、複合調味料、みりん、新みりん、テーブルシュガー、コーヒーシュガーなどの各種調味料や調理加工品があげられる。さらに、本発明の持久力向上剤は、ヒト以外の動物が摂取するペットフードや飼料、餌料に配合することもできる。」 イ 甲10に記載された発明 甲10に記載された事項を、特に請求項6、【0011】及び【0038】に関して整理すると、甲10には次の発明(以下、「甲10物発明」、「甲10製法発明」、「甲10方法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲10物発明> 「下記(A)乃至(C)の特徴を有する分岐α-グルカン混合物を有効成分として含有する持久力向上剤を含有する、持久力向上用の食品組成物又は飲料組成物用素材であって、ドーナツ用素材、から揚げ粉又は天ぷら粉である、素材。: (A)グルコースを構成糖とし、 (B)α-1,4結合を介して連結したグルコース重合度3 以上の直鎖状グルカンの一端に位置する非還元末端グルコース残基にα-1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有し、 (C)イソマルトデキストラナーゼ消化により、イソマルトースを生成する。」 <甲10製法発明> 「甲10物発明の素材を用いた飲食品の製造方法であって、前記飲食品がドーナツ、から揚げ又は天ぷらである、飲食品の製造方法。」 <甲10方法発明> 「甲10物発明の素材を用いて飲食品を製造する工程を有する、飲食物本来の風味を損なうことがなく、呈味や後味に優れた持久力向上作用が付与された飲食物を提供する方法であって、飲食品がドーナツ、から揚げ又は天ぷらである、方法。」 (2)本件特許発明1について ア 本件特許発明1と甲10物発明との対比 本件特許発明1と甲10物発明とを対比する。 甲10物発明における「分岐α-グルカン混合物」は、甲10の【0035】に「本分岐α-グルカン混合物は、以上に述べたとおりのものであるが、本出願人である株式会社林原からイソマルトデキストリン(登録商標『ファイバリクサ』)として販売されている分岐α-グルカン混合物が、本発明を実施する上で、最適な分岐α-グルカン混合物として用いることができる。」と記載されているところ、該「ファイバリクサ」は、本件明細書【0014】、【0031】にその成分及びTgが記載されていることから、本件特許発明1における「ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維」及び「該高Tg水溶性食物繊維がイソマルトデキストリンであり」に相当する。 また、甲10物発明における「持久力向上用の食品組成物又は飲料組成物用素材であって、ドーナツ用素材、から揚げ粉又は天ぷら粉である、素材」は、油調に用いられるものであるから、本件特許発明1における「油ちょう食品用ミックス」に相当する。 そうすると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。 <一致点1-10> 「ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維を含有し、該高Tg水溶性食物繊維がイソマルトデキストリンである、油ちょう食品用ミックス。」 <相違点1-10-1> 本件特許発明1は「更に、ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維を含有し、該低Tg水溶性食物繊維と前記高Tg水溶性食物繊維との合計含有量が20質量%以下である」と特定するのに対し、甲10物発明はそのようには特定されない点。 <相違点1-10-2> 本件特許発明1は「ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維を0.5~15質量%含有」と特定するのに対し、甲10物発明はそのようには特定されない点。 イ 判断 相違点1-10-1について検討する。 甲10には、甲10物発明の「持久力向上用の食品組成物又は飲料組成物用素材」において、分岐α-グルカン混合物と「ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維」とを併用することについては何ら記載されておらず、それらの合計含有量を「20質量%以下」とすることも記載されていないから、相違点1-10-1は実質的な相違点である。 また、他の証拠の記載を参照しても、甲10物発明において、分岐α-グルカン混合物と「ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維」とを「合計含有量が20質量%以下」の範囲で併用する動機となる記載はないから、甲10物発明において、相違点1-10-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は相違点1-10-1に係る発明特定事項により「油ちょう食品の食感(サクミ)、保形性、外観等の諸性能が一層高いレベルで向上し得る」(【0019】)という、甲10物発明並びに甲10及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は特許異議申立書において相違点1-10-1に相当する事項(本件訂正前の請求項3)に対しては進歩性欠如の申立てを行っていない。 よって、上記イにおける相違点1-10-1についての判断は覆らない。 エ 本件特許発明1についてのまとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲10物発明並びに甲10及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明4について 本件特許発明4は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由により、甲10物発明並びに甲10及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明5について ア 本件特許発明5と甲10製法発明との対比 本件特許発明5と甲10製法発明を対比する。 甲10製法発明における「前記飲食品がドーナツ、から揚げ又は天ぷらである、飲食品」は、本件特許発明5における「油ちょう食品」に相当する。 また、上記(2)アにおける検討を踏まえると甲10製法発明における「甲10物発明の素材」と本件特許発明5における「請求項1、2及び4の何れか1項に記載の油ちょう食品用ミックス」とは、上記(2)アに記載した一致点1-10で一致し、少なくとも上記相違点1-10-1~1-10-2で相違する。 そうすると、両者は、「ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維を含有し、該高Tg水溶性食物繊維がイソマルトデキストリンである、油ちょう食品用ミックスを用いた、油ちょう食品の製造方法。」の点で一致し、少なくとも相違点1-10-1~1-10-2で相違する。 イ 判断 相違点1-10-1について検討する。 相違点1-10-1については、上記(2)イのとおりである。 ウ 本件特許発明5についてのまとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明5は甲10製法発明並びに甲10及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)本件特許発明6について ア 本件特許発明6と甲10方法発明との対比 本件特許発明6と甲10方法発明とを対比する。 甲10方法発明における「飲食品がドーナツ、から揚げ又は天ぷらである」は、本件特許発明6における「油ちょう食品」に相当する。 また、甲10方法発明における「飲食物本来の風味を損なうことがなく、呈味や後味に優れた持久力向上作用が付与された飲食物を提供する方法」は、本件特許発明6における「食感改良方法」に対し、食品に関する「方法」という限りにおいて一致する。 さらに、上記(4)アにおける検討を踏まえると甲10方法発明における「甲10物発明の素材を用いて飲食品を製造する工程を含む」と本件特許発明6とは、食品に「ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維を0.5~15質量%」「を含有させ、 前記高Tg水溶性食物繊維がイソマルトデキストリンであ」る限りにおいて一致する。 そうすると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。 <一致点6-10> 「油ちょう食品に、ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維を含有させ、前記高Tg水溶性食物繊維がイソマルトデキストリンである、油ちょう食品に関する方法。」 <相違点6-10-1> 本件特許発明6は「油ちょう食品に」「ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維とを含有させ」、かつ、「前記低Tg水溶性食物繊維と前記高Tg水溶性食物繊維との合計含有量が20質量%以下である」と特定するのに対し、甲10方法発明はそのようには特定されない点。 <相違点6-10-2> 本件特許発明6は「油ちょう食品に、ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維を0.5~15質量%」「含有させ」と特定するのに対し、甲10方法発明はそのようには特定されない点。 <相違点6-10-3> 本件特許発明6は「油ちょう食品の食感改良方法」と特定するのに対し、甲10方法発明は「飲食物本来の風味を損なうことがなく、呈味や後味に優れた持久力向上作用が付与された飲食物を提供する方法」である点。 イ 判断 相違点6-10-1について検討する。 甲10方法発明における「甲10物発明の素材を用いて飲食品を製造する工程」において用いられる「甲10物発明の素材」については、上記(2)イに記載したとおり、高Tg水溶性食物繊維と「ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維」とを併用することも、それらの合計含有量を「20質量%以下」とすることも記載されていないものであるから、本件特許発明6における「油ちょう食品」と甲10方法発明における「甲10物発明の素材を用いて」製造される「飲食品」との対比においても、それらは実質的な相違点となる。 よって、相違点6-10-1は実質的な相違点である。 また、上記(2)イにおける検討を踏まえると相違点6-10-1は、甲10方法発明並びに甲10及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 ウ 本件特許発明6についてのまとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明6は甲10方法発明並びに甲10及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (6)申立理由6(甲10に基づく進歩性)についてのまとめ 以上をまとめると、本件特許発明1及び4~6は、いずれも特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。したがって、本件特許の請求項1及び4~6に係る特許は、いずれも特許法第29条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当しないので、申立理由6によっては取り消すことはできない。 6 申立理由7(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)特許請求の範囲の記載 本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。 (3)本件特許発明の課題について 本件明細書の【0002】~【0007】等の記載からみて、本件特許発明1、2及び4~6の課題は「サクサクした食感が長時間維持され得る油ちょう食品を提供可能な技術を提供すること」にあるものと認められる。 (4)サポート要件の判断 本件特許発明の課題の解決手段に関し、本件明細書の【0009】及び【0013】には「本発明では、Tgが180℃以上という比較的高温の水溶性食物繊維(高Tg水溶性食物繊維)をミックスの必須成分とすることで、該ミックスを用いて製造された油ちょう食品(揚げ物の場合は衣の部分)をラバー状態に転移し難いものとし、サクサクした食感が長時間維持され得るものとした。」との記載及び高Tg物質についてのより詳細な説明の記載があり、【0012】には「本発明のミックスにおける高Tg水溶性食物繊維の含有量は油ちょう食品のサクミと外観とを高度に両立させる観点から、該ミックスの全質量に対して0.5~15質量%であり、好ましくは1~10質量%、より好ましくは3~10質量%である。」との記載があり、【0029】には「本発明には、油ちょう食品に、ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維を0.5~15質量%、好ましくは1~10質量%、より好ましくは3~10質量%含有させる、油ちょう食品の食感改良方法が包含される。本発明の油ちょう食品の食感改良方法については、特に断らない限り、前述した本発明のミックス及びその製造方法に関する説明が適宜適用される。本発明の油ちょう食品の食感改良方法によれば、油ちょう食品のサクミの経時耐性が向上され、サクサクした食感が長時間維持され得る。油ちょう食品がドーナツ等の揚げ菓子ないしベーカリー食品の場合、該油ちょう食品は、典型的には、高Tg水溶性食物繊維を含む生地を油ちょうして製造されるものであり、高Tg水溶性食物繊維は、該油ちょう食品の全体に含有される。一方、油ちょう食品がアメリカンドッグ等の揚げ物の場合、該油ちょう食品は、典型的には、具材と該具材の表面を被覆する衣であり、高Tg水溶性食物繊維は、該衣に含有される。」との記載がある。また、【0030】~【0037】には比較例及び実施例のドーナツ用ミックスについて、成分含有量及び評価結果が記載されており、表1~2には、Tg185℃の難消化性デキストリン又はTg197℃のイソマルトデキストリンを1~15質量%含むものが実施例とされ、製造後ドーナツを、雰囲気温度25℃、湿度50%の環境下で15時間保管した後の食感が5点満点で3.2以上である評価結果が示されている。さらに、【0038】~【0043】には比較例及び実施例のアメリカンドッグ用ミックスについて、成分含有量及び評価結果が記載されており、表3には、Tg185℃の難消化性デキストリン又はTg197℃のイソマルトデキストリンを1~15質量%含むものが実施例とされ、製造後アメリカンドッグを一旦冷凍し、その冷凍アメリカンドッグを自然解凍した後、更に170~180℃に熱した大豆白絞油で4分間再油ちょうし、再油ちょう後のアメリカンドッグを、雰囲気温度25℃、湿度50%の環境下で5時間保管した後の衣の食感が5点満点で3.4以上である評価結果が示されている。 他方、水溶性食物繊維を含まないもの、Tgが185℃又は197℃の高Tg水溶性食物繊維を含まないもの(比較例1~5、10、11)、高Tg水溶性食物繊維を0.3質量%しか含まないもの(比較例6、8)又は20質量%も含むもの(比較例7、9)は比較例とされ、食感が2.8以下である評価結果も示されている。 そうすると、油ちょう食品がドーナツのように油ちょう食品用ミックスを用いた生地を油ちょうして製造されるものにおいては、【0012】又は【0029】に記載されるように油ちょう食品用ミックス又は油ちょう食品の全体にガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維を0.5~15質量%含有させれば、本件特許発明の課題を解決できると認識できる。また、油ちょう食品がアメリカンドッグのように具材と該具材の表面を被覆する、油ちょう食品用ミックスを用いた衣を油ちょうして製造されるものにおいては、該衣にガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維を0.5~15質量%含有させれば、本件特許発明の課題を解決できると認識できる。 そして、本件特許発明1、2及び4~6は、当該発明の課題を解決できると認識できる油ちょう食品用ミックス又は油ちょう食品の構成をさらに限定したものであるから、本件特許発明1、2及び4~6は、本件特許の発明の詳細な説明に記載された発明であって、本件特許の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1、2及び4~6に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するといえる。 (5)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、上記第4 7のとおり、本件特許発明1におけるイソマルトデキストリンは、ガラス転移点の測定時の水分量が規定されていないため、任意の水分量においてガラス転移点が180℃以上である、非常に広範なイソマルトデキストリンが包含されていると解し得ることとなるが、実施例の記載からは広範なイソマルトデキストリンを含有する本件特許発明1のすべてが、本件の課題を解決できると認識することはできないと主張している。 しかし、本件特許発明のイソマルトデキストリンのガラス転移点は、本件明細書の【0010】に「測定対象(例えば食物繊維)の試料として、非結晶状態のものを用いる。なお、本測定の前に、試料を一度昇温させた後に降温させることで、熱履歴を消去する。試料が結晶状態のものである場合は、結晶状態の試料を一度昇温して融解させた後、急冷したものを試料として用いる。」と記載されていることから、測定方法は明確であり、また、「油ちょう食品用」のミックスであることに鑑みればイソマルトデキストリンの水分量は自ずと限定されると認められるから、本件特許発明1におけるイソマルトデキストリンに、任意の水分量においてTgが180℃以上のものが包含されているとはいえず、当業者は【0010】に記載された方法で測定したときのTgが180℃以上のイソマルトデキストリンを用いれば、実施例と同様に発明の課題を解決できると認識することができる。 よって、特許異議申立人の主張は採用できない。本件特許発明2及び4~6についても同様である。 (6)申立理由7(サポート要件)についてのまとめ 以上をまとめると、本件特許の請求項1、2及び4~6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。したがって、本件特許の請求項1、2及び4~6に係る特許は、特許法第113条第4号に該当しないので、申立理由7によっては取り消すことはできない。 7 申立理由8(実施可能要件)について (1)実施可能要件の判断基準 物の発明における実施とは、物の生産、使用等の行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、物の発明について、実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、その物を生産し、かつ、その物を使用できる程度の記載があれば、実施可能要件を満たすということができる。 また、物を生産する方法の発明における実施とは、その物を生産する方法の使用をする行為のほか、その方法により生産した物の使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第3号)、例えば、明細書等にその物を生産する方法を使用することができること及びその方法により生産した物の使用等をすることができることの具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産する方法を使用することができ、かつその方法により生産した物の使用等をすることができるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。 さらに、方法の発明における実施とは、その方法の使用をする行為をいうから(特許法第2条第3項第2号)、方法の発明について、例えば、明細書等に当業者がその方法を使用することができる程度の記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその方法を使用することができるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。 (2)実施可能要件の判断 ガラス転移点(Tg)測定について、本件明細書の【0010】に「Tgは、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定することができる。」、「測定対象(例えば食物繊維)の試料として、非結晶状態のものを用いる。なお、本測定の前に、試料を一度昇温させた後に降温させることで、試料の熱履歴を消去する。試料が結晶状態のものである場合は、結晶状態の試料を一度昇温して融解させた後、急冷したものを試料として用いる。」、さらに、具体的な測定条件として「試料(6mg)を耐圧パンに封入し、DSC(DSC6100;SII)にセットした。基準物質にはアルミナを用いた。測定は20~230℃の温度範囲を昇温速度5℃/min.で行った。一定温度まで昇温測定(1stスキャン)後、20℃まで冷却し、再び昇温測定(2ndスキャン)した。得られた結果はDSC付属のソフトウェア(Thermal Analysis Software TA7000(日立ハイテクサイエンス))によって解析した。」との記載がある。 当業者は、上記【0010】の記載及び上記6(4)に記載した本件明細書の記載事項に基づいて、水溶性食物繊維のTgを測定することができ、公知の水溶性食物繊維から【0014】及び【0020】等に記載されたイソマルトデキストリン等のTgが180℃以上の高Tg水溶性食物繊維、及び、Tgが125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維を選択でき、油ちょう食品用ミックス又は油ちょう食品に、該高Tg水溶性食物繊維を0.5~15質量%含有させ、かつ、前記低Tg水溶性食物繊維と前記高Tg水溶性食物繊維との合計含有量が20質量%以下となる油ちょう食品用ミックス又は油ちょう食品を製造することができると理解し、得られた油ちょう食品は、サクサクした食感が長時間維持され得るものであり、また、得られた油ちょう食品用ミックスは、サクサクした食感が長時間維持され得る油ちょう食品を製造することができるものとして使用できると理解する。 そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件特許発明1、2及び4に関し、その物を生産し、かつ、その物を使用することができる程度に具体的に記載されており、本件発明5に関し、その物を生産する方法を使用することができること、及び、その方法により生産した物の使用等をすることができる程度に具体的に記載されており、また、本件発明6に関し、その方法を使用することができる程度に具体的に記載されているものといえる。 よって、本件発明1、2及び4~6に関して、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を満たす。 (3)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、上記第4 8のとおり、本件特許発明1におけるイソマルトデキストリンは、ガラス転移点の測定時の水分量が規定されていないため、任意の水分量においてガラス転移点が180℃以上である、非常に広範なイソマルトデキストリンが包含されていると解し得ることとなるが、このような広範なイソマルトデキストリンの中から、油ちょう食品の食感を改良できるイソマルトデキストリンを同定するためには、当業者にとって過度の試行錯誤が必要となる旨主張している。 しかし、上記6(5)に記載したとおり、本件特許発明1におけるイソマルトデキストリンに、任意の水分量においてTgが180℃以上のものが包含されているとはいえない。また、当業者は【0010】に記載された方法によりイソマルトデキストリンのTgを測定することができるから、本件特許発明1の食品用ミックスを製造するに際して過度の試行錯誤を要するとはいえない。また、上記6(4)に記載したことを踏まえると、本件特許発明に相当する食品用ミックスは油ちょう食品の食感を改良できるミックスとして使用することができると理解することができる。 よって、特許異議申立人の主張は採用できない。本件特許発明2及び4~6についても同様である。 (4)申立理由8(実施可能要件)についてのまとめ 以上をまとめると、本件特許の請求項1、2及び4~6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。したがって、本件特許の請求項1、2及び4~6に係る特許は、特許法第113条第4号に該当しないので、申立理由8によっては取り消すことはできない。 8 申立理由9(明確性要件) (1)明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 (2)特許請求の範囲の記載 本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。 (3)明確性要件の判断 本件特許の請求項1における「油ちょう食品」は、本件明細書の【0002】に「油ちょう食品は、油ちょう対象物を油ちょう、すなわち、水の沸点より高温の油で加熱調理することで得られる食品であり、例えば、ドーナツ等の揚げ菓子、天ぷら等の揚げ物がある。」と定義されており、明確である。 また、本件特許の請求項1における「ミックス」は、本件明細書の【0025】に「本発明のミックスは、高Tg水溶性食物繊維をはじめとする前述の成分を混合することによって得られる。本発明のミックスの常温常圧下での形態は、粉末状、顆粒状などの粉体である。」と定義されており、明確であり、「食品用ミックス」も本件明細書の【0026】及び【0027】に記載されているように、本件特許の出願時において明確である。 さらに、本件特許の請求項1における「ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維」、「イソマルトデキストリン」及び「ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維」については、ガラス転移点(Tg)の測定条件について、本件明細書の【0010】に、「Tgは、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定することができる。」、「測定対象(例えば食物繊維)の試料として、非結晶状態のものを用いる。なお、本測定の前に、試料を一度昇温させた後に降温させることで、試料の熱履歴を消去する。試料が結晶状態のものである場合は、結晶状態の試料を一度昇温して融解させた後、急冷したものを試料として用いる。」、そして、具体的な測定条件として「試料(6mg)を耐圧パンに封入し、DSC(DSC6100;SII)にセットした。基準物質にはアルミナを用いた。測定は20~230℃の温度範囲を昇温速度5℃/min.で行った。一定温度まで昇温測定(1stスキャン)後、20℃まで冷却し、再び昇温測定(2ndスキャン)した。得られた結果はDSC付属のソフトウェア(Thermal Analysis Software TA7000(日立ハイテクサイエンス))によって解析した。」と記載されており、該測定条件は明確であり、「イソマルトデキストリン」も公知の物質であるから、請求項1における「ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維」、「イソマルトデキストリン」及び「ガラス転移点が125℃以上180℃未満の低Tg水溶性食物繊維」の記載は、【0010】の記載及び出願時における技術常識を参酌することにより明確といえる。 また、該「ガラス転移点が180℃以上の高Tg水溶性食物繊維」の含有割合を示す「0.5~15質量%」と、「該低Tg水溶性食物繊維と前記高Tg水溶性食物繊維との合計含有量」を示す「20質量%以下」と、の各数値範囲も明確である。 請求項1の記載を直接又は間接的に引用し、さらに限定して特定する請求項2、4、5の記載もそれ自体明確であり、請求項1と同様の特定事項を含む請求項6の記載もそれ自体明確であり、明細書及び図面の記載とも整合する。 そうすると、本件特許の請求項1、2及び4~6の記載は、それ自体明確であるか、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮して明確であり、願書に添付した明細書及び図面の記載とも整合する。 以上から、本件特許発明1、2及び4~6に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書及び図面の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 (4)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、上記第4 9のとおり、本件特許発明1におけるイソマルトデキストリンは、ガラス転移点の測定条件は特定されていないし、本件明細書においても、ガラス転移点(Tg)は示差走査熱量計(DSC)を用いて測定できることや、ガラス転移点の好ましい範囲が記載されているものの、ガラス転移点の測定時のサンプルの水分量は記載されていないから、本件特許発明1で特定されたイソマルトデキストリンの範囲が不明確である旨主張する。 しかし、上記6(5)に記載したとおり、【0010】に記載されたイソマルトデキストリンのTgの測定条件は明確であり、本件特許発明1におけるイソマルトデキストリンのTgは【0010】の記載を参酌すれば明確であるから、本件特許発明1におけるイソマルトデキストリンの範囲は明確である。 よって、特許異議申立人の主張は採用できない。本件特許発明2及び4~6についても同様である。 (5)申立理由9(明確性要件)についてのまとめ 以上をまとめると、本件特許の請求項1、2及び4~6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。したがって、本件特許の請求項1、2及び4~6に係る特許は、特許法第113条第4号に該当しないので、申立理由9によっては取り消すことはできない。 第8 結語 以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由、及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、本件特許の請求項1、2及び4~6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1、2及び4~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項3は訂正により削除され、これにより本件特許の請求項3に係る特許に対する特許異議の申立ては対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700498

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