特許異議申立
2023-701015
遊技機
- 審判番号
- 2023-701015
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-129907
- 登録番号
- 7248627
- 請求日
- 2023年09月22日
- 審決日
- 2024年05月28日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社三共
- 【権利者代理人】重信 和男
- 【権利者代理人】石川 好文
- 【権利者代理人】林 修身
- 【権利者代理人】大久保 岳彦
- 【異議申立人】日本電動式遊技機特許 株式会社
- 【異議申立人代理人】弁理士法人武和国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 長井 真一
- 審判官 渋谷 知子
- 審判官 眞壁 隆一
- 分類
- P1651.537-Y (A63F) / P1651.55 -Y (A63F) / P1651.14 -Y (A63F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第2条第1項、特許法第29条第1項、特許法第1条、特許法第36条第6項第1号、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7248627号発明「遊技機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7248627号の請求項1、2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7248627号の請求項1、2に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和2年7月31日に出願した特願2020-129907号であって、令和4年11月2日付けの拒絶理由通知に対し同年12月12日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、令和5年3月20日にその特許権の設定登録がされ、同年同月29日に特許公報が発行された。
その後、その特許に対し、令和5年9月22日に特許異議申立人日本電動式遊技機特許株式会社(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされた。
第2 特許異議の申立てについて
1 本件特許発明
本件特許の請求項1、2に係る発明(以下、「本件特許発明1、2」という。)は、特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(なお、符号A等は分説のため当審において付した。また、下線は、令和4年12月12日提出の手続補正書による補正箇所を示すために当審において付した。)。
「【請求項1】
A 可変表示を行い、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 前記有利状態に制御するか否かを決定可能な決定手段と、
C 表示手段と、
D 演出実行手段と、
を備え、
E 前記演出実行手段は、特定キャラクタを示す特定キャラクタ表示を表示する特別演出と、該特別演出とは異なる演出であって第1特定演出と第2特定演出とを含む特定演出と、を実行可能であり、
F 前記特別演出は、
F1 前記特定キャラクタが眼を閉じている第1シーンと、
F2 前記特定キャラクタが眼を開く第2シーンと、
で構成され、
F3 前記第1シーンでは、前記特定キャラクタ表示を構成する表示色の種類数が第1数となる態様で前記特定キャラクタ表示が表示され、
F4 前記第2シーンでは、前記特定キャラクタ表示を構成する表示色の種類数が前記第1数よりも多い第2数となる態様で前記特定キャラクタ表示が表示され、
G 前記演出実行手段は、
G1 前記有利状態に制御することが前記決定手段によって決定された可変表示であるときと、前記有利状態に制御しないことが前記決定手段によって決定された可変表示であるときのいずれであっても、前記特別演出を実行可能であり、
G2 前記第1特定演出が実行されるときに第1態様で前記特別演出を実行可能であり、
G3 前記第2特定演出が実行されるときに第2態様で前記特別演出を実行可能である、
H ことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
A 可変表示を行い、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 前記有利状態に制御するか否かを決定可能な決定手段と、
C 表示手段と、
D 演出実行手段と、
を備え、
E 前記演出実行手段は、特定キャラクタを示す特定キャラクタ表示を表示する特別演出と、該特別演出とは異なる演出であって第1特定演出と第2特定演出とを含む特定演出と、を実行可能であり、
F 前記特別演出は、
F1 前記特定キャラクタが眼を閉じている第1シーンと、
F2 前記特定キャラクタが眼を開く第2シーンと、
で構成され、
F3’前記第1シーンでは、前記特定キャラクタ表示を構成する主要表示色が第1表示色となる態様で前記特定キャラクタ表示が表示され、
F4’前記第2シーンでは、前記特定キャラクタ表示を構成する主要表示色が前記第1表示色とは異なる第2表示色となる態様で前記特定キャラクタ表示が表示され、
G 前記演出実行手段は、
G1 前記有利状態に制御することが前記決定手段によって決定された可変表示であるときと、前記有利状態に制御しないことが前記決定手段によって決定された可変表示であるときのいずれであっても、前記特別演出を実行可能であり、
G2 前記第1特定演出が実行されるときに第1態様で前記特別演出を実行可能であり、
G3 前記第2特定演出が実行されるときに第2態様で前記特別演出を実行可能である、
H ことを特徴とする遊技機。」
2 特許異議申立ての理由の概要
申立人は、令和5年9月22日に提出された特許異議申立書(以下「異議申立書」という。)において、証拠方法として甲第1号証~甲第5号証を提出し、本件特許に対し次の理由を申し立てている。
(1)理由1(発明該当性要件)
本件特許発明1、2は、その発明の本質が人為的な取り決めに向けられており自然法則を利用したものと言えず、また、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されているとも言えないから、「自然法則を利用した技術的思想の創作」ではなく、特許法第2条第1項に規定する「発明」に該当しない。
よって、本件特許は、特許法第29条第1項柱書の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、同法第114条第2項の規定により取り消されるべきである。
(2)理由2(サポート要件)
本件特許発明1、2の構成G2、G3によれば、「演出実行手段」は、「第1特定演出が実行されるとき」と「第2特定演出が実行されるとき」とで、「第1態様」と「第2態様」という異なる態様で「特別演出」を実行可能とされているが、明細書等を参酌しても、「第1態様」と「第2態様」が具体的に何に相当するのか不明であるから、本件特許発明1、2の構成G2、G3は、本件特許の明細書等に実質的に記載されていない。
よって、本件特許発明1、2は、発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第4号の規定に該当し、同法第114条第2項の規定により取り消されるべきである。
(3)理由3(新規事項の追加)
本件特許発明1、2の構成G2、G3は、令和4年12月12日付け手続補正書による補正で追加されたものであるところ、上記(2)にも記載のように、出願当初明細書等に記載のない事項であるから、本件特許発明1、2は、特許法第17条の2第3項の規定に違反してなされたものであって、同法第113条第1号の規定に該当し、同法第114条第2項の規定により取り消されるべきである。
<証拠方法>
甲第1号証:特許第7248627号(本件特許公報)
甲第2号証:特許・実用新案審査基準第III部第1章
甲第3号証:特許・実用新案審査ハンドブックの附属書Bの第1章
甲第4号証:令和4年12月12日付けの意見書
甲第5号証:特開2022-26433号公報(本件特許出願の
公開公報)
第3 当審における取消理由について
1 取消理由通知の概要
当審において令和6年1月16日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
・理由1(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
・理由2(新規事項)
令和4年12月12日付け手続補正書でした補正(以下「本件補正」という。)は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、本件特許は、同法第113条第1号に該当し、取り消すべきものである。
記
(1)サポート要件について
特許権者は、令和4年12月12日の意見書において、本件特許発明1、2の「特別演出」、「第1特定演出」、「第2特定演出」が、上記記載事項ア~クのうちのいずれに対応するものであるかについて、その対応関係を具体的に示してはいない。
そして、本件特許発明1、2の「特別演出」は、構成Eによると、「特定キャラクタを示す特定キャラクタ表示を表示する」ものであるから、本件明細書等に記載された「第1予言表示」及び「第2予言表示」のうち、「特定キャラクタである「ムム」」を示す「特定キャラクタ表示064SG111」による演出が対応するといえる。
そうすると、構成Eで「特別演出とは異なる演出」とされている「第1特定演出」、「第2特定演出」には、それぞれ、本件明細書等に記載された「第1予言演出」の「「ジャムが覚醒するわ!」なる文字表示064SG131A」、「第2予言演出」の「「リムが見えるわ!」なる文字表示064SG131B」による演出が対応すると解される。
一方、本件特許発明1、2の構成G2、G3によると、「特別演出」に「第1態様」、「第2態様」があることになるが、上記記載事項ア~ク、あるいはそれ以外の本件明細書等に「特定キャラクタである「ムム」」を示す「特定キャラクタ表示064SG111」に複数の態様があることについては、記載も示唆もされていない。
してみれば、本件特許発明1、2の構成G2、G3は、本件明細書等に実質的に記載されているものではない。
よって、本件特許発明1、2は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
(2)新規事項について
上記(1)において検討したことと同様の理由により、本件特許発明1、2の構成G2、G3は、当初明細書等にも記載も示唆もされていないものと認められる。
したがって、本件特許発明1、2の構成G2、G3の記載、及び、【0007】における同様の記載は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、本件補正は、新規事項を追加する補正である。
よって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでない。
2 特許権者の意見について
上記1の取消理由に対し、特許権者は令和6年3月21日に意見書を提出し、概ね下記のような反論を行った。
(1)サポート要件について
「本件特許発明1、2の・・・「特定キャラクタを示す特定キャラクタ表示を表示する特別演出」は、本件特許の願書に最初に添付した明細書(以下、「本件当初明細書」という。)等に記載された「ムム」が表示される「予言演出」が対応し、「該特別演出とは異なる演出」である「特定演出」は、本件当初明細書等に記載された「SPリーチのリーチ演出」に対応し、「特定演出」に含まれる「第1特定演出」は、「SPリーチのリーチ演出」のうちの「SPリーチA、SPリーチB」が対応し、「特定演出」に含まれる「第2特定演出」は、本件当初明細書等に記載された「SPリーチのリーチ演出」のうちの「SPリーチC」が対応し、「第1態様」の「特別演出」は、本件当初明細書等に記載された「予言演出」のうち「ムム」の表示に加え、「ジャムが覚醒するわ!」の文字が表示され、かつ「ジャムが覚醒するわ!」なるセリフ音がスピーカ8L、8Rから出力される態様の「第1予言演出」が対応し、「第2態様」の「特別演出」は、本件当初明細書等に記載された「予言演出」のうち「ムム」の表示に加え、「リムが見えるわ!」の文字が表示され、かつ「リムが見えるわ!」なるセリフ音がスピーカ8L、8Rから出力される態様の「第2予言演出」が対応するものである。
・・・
そして、本件当初明細書の段落0445、0446には、スピーカから出力されるセリフ音と、そのセリフ音に対応する文字表示と、の態様が異なる「第1予言演出」(「第1態様の前記特別演出」)と「第2予言演出」(「第2態様の前記特別演出」)を実行することが記載され、段落0347、0350、0356には、「SPリーチ演出A、SPリーチ演出B」(「第1特定演出」)が実行されるときに、「第1予言演出(演出パターンYPA-1)」(「第1態様」の「前記特別演出」)を実行可能であり、「SPリーチ演出C」(「第2特定演出」)が実行されるときに、「第2予言演出(演出パターンYPB-2)」(「第2態様」の「前記特別演出」)を実行可能であることが記載されており、本件特許発明1、2の「前記第1特定演出が実行されるときに第1態様で前記特別演出を実行可能であり、前記第2特定演出が実行されるときに第2態様で前記特別演出を実行可能である、」(構成G2、G3)に対応する構成が記載されている。
したがって、本件特許発明1、2の「前記第1特定演出が実行されるときに第1態様で前記特別演出を実行可能であり、前記第2特定演出が実行されるときに第2態様で前記特別演出を実行可能である、」(構成G2、G3)は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものではなく、本件特許発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものである。」
(2)新規事項について
「「・・・(サポート要件)について」で説明したように、本件特許発明1、2の「前記第1特定演出が実行されるときに第1態様で前記特別演出を実行可能であり、前記第2特定演出が実行されるときに第2態様で前記特別演出を実行可能である、」(構成G2、G3)及び段落0007における同様の記載は、段落0445、0446、0347、0350、0356等に記載されており、これらの記載から導き出せる事項である。
したがって、令和4年12月12日付け手続補正書でした補正・・・は、本件当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。」
第4 当審の判断
1 サポート要件について
特許異議申立の理由1~3のうち、当審において取消理由を通知した、サポート要件(取消理由の理由1、特許異議申立の理由2)について検討する。
上記取消理由は、本件特許発明1、2の構成G2、G3の「第1特定演出」、「第2特定演出」、「第1態様」及び「第2態様」の「特別演出」と、本件明細書等に記載のものとの対応関係が不明であるから、本件特許発明1、2は、本件明細書等に実質的に記載されているものではない、というものである。
(1)本件明細書等の記載事項
本件特許の願書に添付された明細書又は図面(以下「本件明細書等」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審において付した。以下同様。)
「【0015】
形態1-5の遊技機は、形態1-1~形態1-4のいずれかに記載の遊技機であって、
遊技者にとって有利な有利状態(例えば、大当り遊技状態)に制御可能であり、
前記演出実行手段は、前記有利状態に制御されるか否かを報知する特定演出を実行可能であり(例えば、演出制御用CPU120が「SPリーチ演出A~C」を実行可能な部分)、・・・。」
「【0031】
(SG2020-067)
形態4-1の遊技機は、形態1-1~形態1-8、形態2-1~形態2-7、形態3-1~形態3-5のいずれかに記載の遊技機であって、
遊技が可能な遊技機(例えば、パチンコ遊技機1)であって、
表示手段(例えば、画像表示装置5、演出制御用CPU120)と、
演出実行手段(例えば、演出制御用CPU120が各種演出を実行可能な部分)と、
を備え、
前記演出実行手段は、特定キャラクタを示す特定キャラクタ表示を表示する特別演出を実行可能であり(例えば、演出制御用CPU120が、「ムム」を示す特定キャラクタ表示064SG111を表示する「予言演出」を実行可能な部分)、
前記特別演出は、
前記特定キャラクタが眼を閉じている第1シーン(例えば、第1シーン A~C)と、
前記特定キャラクタが眼を開く第2シーンと、
で構成され、
前記第1シーンでは、前記特定キャラクタ表示を構成する表示色の種類 数が第1数となる態様で前記特定キャラクタ表示が表示され、
前記第2シーンでは、前記特定キャラクタ表示を構成する表示色の種類 数が前記第1数よりも多い第2数となる態様で前記特定キャラクタ表示が 表示される(例えば、第1シーンA~Cでは、特定キャラクタ表示064 SG111を構成する表示色の種類数が、「紫色」の1色となる態様で特 定キャラクタ表示064SG111が表示されるのに対し、第2シーンで は、特定キャラクタ表示064SG111を構成する表示色の種類数が、 第1シーンより多い「白色」と「金色」の2色となる態様で特定キャラク タ表示064SG111が表示される部分。図11-31参照)、
ことを特徴としている。
この特徴によれば、第1シーンから第2シーンへの変化に伴い、キャラクタの開眼とともに表示色が変化するため、開眼を際立たせることができる。」
「【0274】
また、「予言演出」は、SPリーチの変動パターンの可変表示にて実行可能な演出であり、該可変表示中に第1事象の発生(バトル対決中での「ジャム」の覚醒)や第2事象の発生(バトル対決中での「リム」の強調表示)が発生することや、可変表示結果が大当りとなる場合の大当り遊技状態での「ファンファーレ演出」中において第2事象の発生(バトル対決中での「ジャム」の覚醒)を予め報知(予言)する演出であり、SPリーチのリーチ演出前に前述した「ジャム」や「リム」、敵キャラクタX1や敵キャラクタX2とは異なる特定キャラクタである「ムム」が第1事象の発生を予言する「第1予言演出」と、前述した「ジャム」や「リム」、敵キャラクタX1や敵キャラクタX2とは異なる特定キャラクタである「ムム」が第2事象の発生を予言する「第2予言演出」と、を含んでいる。
【0275】
より具体的には、図11-11(B)に示すように、「第1予言演出」は、リーチ前の「第1タイミング」またはリーチ後の「第2タイミング」にてバトル対決中に「ジャム」が覚醒することを予言する第1予言表示(「ムム」の表示と「ジャムが覚醒するわ」の表示)を行った後に、バトル対決中の「ジャム」の覚醒を告知する告知表示(「ムム」の表示と「来るわ」の表示)を行い、更にSPリーチのリーチ演出結果報知前のタイミングにて第1事象(「ジャム」の覚醒)が発生することを報知する事象表示(「ジャム覚醒」の表示)を行う演出である。
【0276】
また、「第2予言演出」は、リーチ前の「第1タイミング」またはリーチ後の「第2タイミング」にてバトル対決中に「リム」が強調表示されることを予言する第2予言表示(「ムム」の表示と「リムが見えるわ」の表示)を行った後に、バトル対決中の「リム」の強調表示を告知する告知表示(「ムム」の表示と「来るわ」の表示)を行い、更にSPリーチのリーチ演出結果報知前のタイミングまたは可変表示が終了して大当り遊技が開始される「ファンファーレ演出」にて第2事象(「リム」の強調表示)が発生することを報知する事象表示(「リム」の強調表示)を行う演出である。」
「【0347】
ステップ064SGS286では、変動パターンがSPリーチAまたはSPリーチBの変動パターンである場合、図11-20(A)に示すように、予言演出パターン決定テーブルAを選択するとともに、1~100の値を取り得る予言演出パターン決定用乱数値を抽出し、該抽出した予言演出パターン決定用乱数値と予言演出パターン決定テーブルAに設定された判定値をリーチ演出、大当り種別、可変表示結果等に応じて比較することにより「予言演出」の演出パターンを決定し、変動パターンがSPリーチCの変動パターンである場合、図11-20(B)に示すように、予言演出パターン決定テーブルBを選択するとともに、1~100の値を取り得る予言演出パターン決定用乱数値を抽出し、該抽出した予言演出パターン決定用乱数値と予言演出パターン決定テーブルBに設定された判定値をSPリーチ演出種別、大当り種別、可変表示結果等に応じて比較することにより「予言演出」の演出パターンを決定する。」
「【0350】
ここで、図11-20(D)に示すように、「予言演出」の演出パターンYPA-1は、前述した「第1予言演出」として、バトル対決中に「ジャム」が覚醒する旨の予言表示(「ムム」の表示と「ジャムが覚醒するわ」の表示)を行った後に、バトル対決中の「ジャム」の覚醒を報知する告知表示(「ムム」の表示と「来るわ」の表示)を行うことによって可変表示結果が報知される前に大当りを示唆する演出パターンである。また、「予言演出」における演出パターンYPA-1は、可変表示結果が大当りであり大当り種別が大当りA~大当りCのいずれかであること、または可変表示結果がはずれであることを条件として、実行するリーチ演出がSPリーチ演出A1、SPリーチ演出A2、SPリーチ演出B1、SPリーチ演出B2のいずれかである場合に決定され得る演出パターンである。」
「【0356】
「予言演出」における演出パターンYPB-2は、前述した「第2予言演出」として、「リム」が強調表示される旨の予言表示(「ムム」の表示と「リムが見えるわ」の表示)を行った後に、「ファンファーレ演出」中に「リム」の強調表示を報知する告知表示(「ムム」の表示と「来るわ」の表示)を行うことによって大当り種別が大当りAまたは大当りB(確変大当り)であることを示唆する演出パターンである。また、「予言演出」における演出パターンYPB-2は、可変表示結果が大当りであり大当り種別が大当りAと大当りBのいずれかであることを条件として、実行するリーチ演出がSPリーチ演出C1とSPリーチ演出C2のいずれかである場合に決定され得る演出パターンである。」
「【0445】
詳しくは、図11-27(F1)に示すように、第1予言演出の実行が決定されていた場合は、特定キャラクタである「ムム」が眼を開いて開眼する特定キャラクタ表示064SG111が表示され、また、「ムム」が発する「ジャムが覚醒するわ!」なるセリフ音がスピーカ8L、8Rから出力されるとともに、該セリフ音に対応する「ジャムが覚醒するわ!」なる文字表示064SG131Aが表示される。つまり、第1事象である「ジャム」の覚醒を予言する第1予言表示として、特定キャラクタ表示064SG111と文字表示064SG131Aとが表示される。
【0446】
一方、図11-27(F2)に示すように、第2予言演出の実行が決定されていた場合は、特定キャラクタである「ムム」が眼を開いて開眼する特定キャラクタ表示064SG111が表示され、また、「ムム」が発する「リムが見えるわ!」なるセリフ音がスピーカ8L、8Rから出力されるとともに、該セリフ音に対応する「リムが見えるわ!」なる文字表示064SG131Bが表示される。つまり、第2事象である「リム」の強調表示を予言する第2予言表示として、特定キャラクタ表示064SG111と文字表示064SG131Bとが表示される。」
「【図11-20】
[図:0001411344000001.jpg]
」
以上の記載より、本件明細書等には、次の事項が記載されていると認められる。(以下「本件明細書等記載事項」という。)
「演出実行手段」が、「SPリーチ演出A~C」の「特定演出」を実行可能(【0015】)であるとともに、「ムム」を示す特定キャラクタ表示を表示する「予言演出」の「特別演出」を実行可能(【0031】)であり、
「予言演出」は、SPリーチの変動パターンの可変表示にて実行可能な演出であり、「第1予言演出」と「第2予言演出」とを含み(【0274】)、
「予言演出」の「第1予言演出」としての演出パターンYPA-1は、「ムム」の表示と「ジャムが覚醒するわ」の表示を行い、実行するリーチ演出がSPリーチ演出A1、SPリーチ演出A2、SPリーチ演出B1、SPリーチ演出B2のいずれかである場合に決定され得る演出パターンであり(【0350】)、
「予言演出」における「第2予言演出」としての演出パターンYPB-2は、「ムム」の表示と「リムが見えるわ」の表示を行い、実行するリーチ演出がSPリーチ演出C1とSPリーチ演出C2のいずれかである場合に決定され得る演出パターンである(【0356】)、
遊技機。
(2)本件特許発明1、2の構成G2、G3についての検討
上記(1)の本件明細書等記載事項によれば、本件特許発明1、2の構成E、G2、G3における、
「特別演出」は、「ムム」を示す特定キャラクタ表示を表示する「予言演出」に、
「該特別演出とは異なる演出」である「特定演出」は、「SPリーチ演出A~C」に、
「特定演出」が含む「第1特定演出」は、「SPリーチ演出A1、SPリーチ演出A2、SPリーチ演出B1、SPリーチ演出B2のいずれか」に、
「特定演出」が含む「第2特定演出」は、「SPリーチ演出C1とSPリーチ演出C2のいずれか」に、
「特別演出」の「第1態様」は、「ムム」の表示と「ジャムが覚醒するわ」の表示を行う「第1予言演出」に、
「特別演出」の「第2態様」は、「ムム」の表示と「リムが見えるわ」の表示を行う「第2予言演出」に、
それぞれ対応させることができる。
そして、上記の本件明細書等記載事項をふまえると、
「第1特定演出(SPリーチ演出A1、SPリーチ演出A2、SPリーチ演出B1、SPリーチ演出B2のいずれか)」である場合に、「特別演出(予言演出)の第1態様(第1予言演出)」は決定され得る演出であり、
「第2特定演出(SPリーチ演出C1とSPリーチ演出C2のいずれか)」である場合に、「特別演出(予言演出)の第2態様(第2予言演出)」は決定され得る演出であることが、把握できる。
よって、本件明細書等には、本件特許発明1、2における、
(構成G2)前記第1特定演出(SPリーチ演出A1~B2のいずれか)が実行されるときに第1態様(第1予言演出)で前記特別演出を実行可能であり、
(構成G3)前記第2特定演出(SPリーチ演出C1~C2のいずれか)が実行されるときに第2態様(第2予言演出)で前記特別演出を実行可能である
ことに対応する事項が、記載されていると認められる。
したがって、本件特許発明1、2は、発明の詳細な説明に記載されたものであるから、特許法第36条第6項第1号に規定するサポート要件を満たす。
2 新規事項の追加について
次に、特許異議申立の理由1~3のうち、同じく当審において取消理由を通知した、新規事項の追加(取消理由の理由2、特許異議申立の理由3)について検討する。
本件特許の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)には、上記「1(1)」に摘記した事項と同一の事項が記載されている。
すると、本件補正で追加された本件特許発明1、2の構成G2、G3は、上記「1(2)」で検討したことと同様に、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるといえるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
3 発明該当性要件について
最後に、当審における取消理由通知において採用されなかった、発明該当性要件(特許異議申立の理由1)について、以下検討する。
(1)自然法則の利用、技術的思想の創作
特許法第29条第1項柱書(以下「29条1項柱書」と略す。)は「産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。」と定め、その前提となる「発明」については同法第2条第1項が「この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」と定めている。
したがって、(i)産業上利用できる発明ではない場合、(ii)自然法則を利用した発明でない場合、(iii)技術的思想の創作でない場合、(iv)技術的思想の創作のうち高度なものでない場合、のいずれかに該当するときは、29条1項柱書にいう「発明」ではないことになる。
そして、申立人は、上記「第2 2(1)」のとおり、「本件特許発明1、2は、その発明の本質が人為的な取り決めに向けられており自然法則を利用したものと言えず、また、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されているとも言えないから、「自然法則を利用した技術的思想の創作」ではな」いとして、29条1項柱書にいう「発明」ではない旨申し立てているから、以下、本件特許発明1,2が「(ii)自然法則を利用した発明でない場合」及び「(iii)技術的思想の創作となる発明でない場合」に該当するかについて検討する。
ここで、「請求項に記載された特許を受けようとする発明が、特許法第2条第1項に規定する「発明」といえるか否かは、それが、特許請求の範囲の記載や願書に添付した明細書の記載及び図面に開示された、「特許を受けようとする発明」が前提とする技術的課題、その課題を解決するための技術的手段の構成及びその構成から導かれる効果等の技術的意義に照らし、全体として「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するか否かによって判断すべきものである。」(知財高裁令和2年6月18日判決、令和元年(行ケ)第10110号参照。)
そして、「ゲームのルール自体は自然法則を利用したものといえないものの、同発明は、ゲームのルールを遊技機という機器に搭載し、そこにおいて生じる一定の技術的課題を解決しようとしたものであり、それが全体として一定の技術的意義を有するのであれば、同発明は自然法則を利用した発明であり、かつ技術的思想の創作となる発明であると解することができる。」(知財高裁平成21年6月16日判決、平成20年(行ケ)第10279号参照。)
以上の見地に立って、本件特許発明1、2が解決しようとする技術的課題とその技術的意義の観点から、本件特許発明1、2の発明該当性について検討する。
ア 本件特許発明1、2の技術的課題について
本件特許発明1、2が解決しようとする技術的課題について、本件特許の明細書に以下のとおり記載されている。
「【背景技術】
【0002】
パチンコ遊技機やスロットマシンなどの遊技機において、キャラクタを示すキャラクタ表示が表示される演出を実行可能なものがあった。
【0003】
この種の遊技機において、例えば、可変表示においてキャラクタが表示されたキャラクタ図柄が仮停止表示される否かを煽る煽り演出が実行可能とされ、煽り演出において、キャラクタ図柄が仮停止表示される前はキャラクタの眼が閉じており、仮停止表示されたときに開眼するもの等があった(例えば、特許文献1参照)。
・・・
【特許文献1】特開2017-38986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の遊技機にあっては、キャラクタ図柄が仮停止表示されたときにキャラクタが開眼するだけであったため、キャラクタの開眼表示に関して遊技の興趣を向上させる余地があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、キャラクタの開眼表示に関して遊技の興趣を向上させることができる遊技機を提供することを目的とする。」
そうすると、本件特許発明1、2は、「遊技機」において「眼が閉じて」いた「キャラクタ図柄」が「開眼する」「キャラクタ表示が表示される演出を実行可能」である(【0002】、【0003】)という背景技術を前提として、「キャラクタの開眼表示に関して遊技の興趣を向上させる余地があった」(【0005】)ことから、「キャラクタの開眼表示に関して遊技の興趣を向上させることができる遊技機を提供する」(【0006】)という技術的課題を解決しようとするものであるといえる。
イ 本件特許発明1、2の技術的意義について
本件特許発明1、2の技術的意義について、本件特許の明細書において、以下の事項が記載されている。
「【0031】
(SG2020-067)
形態4-1の遊技機は、形態1-1~形態1-8、形態2-1~形態2-7、形態3-1~形態3-5のいずれかに記載の遊技機であって、
遊技が可能な遊技機(例えば、パチンコ遊技機1)であって、
表示手段(例えば、画像表示装置5、演出制御用CPU120)と、
演出実行手段(例えば、演出制御用CPU120が各種演出を実行可能な部分)と、
を備え、
前記演出実行手段は、特定キャラクタを示す特定キャラクタ表示を表示する特別演出を実行可能であり(例えば、演出制御用CPU120が、「ムム」を示す特定キャラクタ表示064SG111を表示する「予言演出」を実行可能な部分)、
前記特別演出は、
前記特定キャラクタが眼を閉じている第1シーン(例えば、第1シーン A~C)と、
前記特定キャラクタが眼を開く第2シーンと、
で構成され、
前記第1シーンでは、前記特定キャラクタ表示を構成する表示色の種類 数が第1数となる態様で前記特定キャラクタ表示が表示され、
前記第2シーンでは、前記特定キャラクタ表示を構成する表示色の種類 数が前記第1数よりも多い第2数となる態様で前記特定キャラクタ表示が 表示される(例えば、第1シーンA~Cでは、特定キャラクタ表示064 SG111を構成する表示色の種類数が、「紫」の1色となる態様で特定 キャラクタ表示064SG111が表示されるのに対し、第2シーンでは 、特定キャラクタ表示064SG111を構成する表示色の種類数が、第 1シーンより多い「白」と「金」の2色となる態様で特定キャラクタ表示 064SG111が表示される部分。図11-31参照)、
ことを特徴としている。
この特徴によれば、第1シーンから第2シーンへの変化に伴い、キャラクタの開眼とともに表示色が変化するため、開眼を際立たせることができる。」
「【0388】
また、図11-20(C)に示すように、第2予言演出が実行されて大当りAまたは大当りBの大当り遊技状態に制御される(大当り遊技終了後に遊技状態が確変状態に制御される)割合の方が、第1予言演出が実行されて大当りAまたは大当りBの大当り遊技状態に制御される割合の方が高く設定されている、つまり、第2予言演出が実行される場合は第1予言演出が実行される場合よりも確変期待度が高く設定されていることにより、可変表示中に第1予言演出と第2予言演出とのどちらの予言演出が実行されるかに対して遊技者を注目させることができる。
【0389】
特に、本特徴部064SGにおいては、図11-20(D)に示すように、SPリーチ演出A1、SPリーチ演出B1よりも大当り期待度が高いSPリーチ演出C1やSPリーチ演出C2を実行する可変表示、または、可変表示結果が大当り且つ大当り種別が大当りAまたは大当りBとなる可変表示後のファンファーレ演出、すなわち、「リム」が登場することで大当り期待度または確変期待度が高いことが示唆される演出を対象として第2予言演出が実行されることで、第2予言演出が実行されることに対して遊技者をより一層注目させることが可能となっており、遊技の興趣を向上することができる。」
「【0393】
更には、前述したように、予言演出が非実行である場合、第1予言演出が実行される場合、第2予言演出が実行される場合のそれぞれにおいて、可変表示結果が大当りとなる割合(大当り期待度)や大当り遊技終了後に遊技状態が確変状態に制御される割合(確変期待度)も異なっているので、予言演出が実行されるか否かに加えて、第1予言演出と第2予言演出のどちらが実行されるかに対しても遊技者を注目させることが可能となっている。」
「【0477】
このように、「予言演出」の予言表示は、特定キャラクタである「ムム」が眼を閉じている第1シーンA~Cと、特定キャラクタである「ムム」が眼を開く第2シーンと、を有し、第1シーンA~Cでは、特定キャラクタ表示064SG111を構成する表示色の種類数が第1数(1色)となる態様で特定キャラクタ表示064SG111が表示され、第2シーンでは、特定キャラクタ表示064SG111を構成する表示色の種類数が第1数(1色)よりも多い第2数(2色)となる態様で特定キャラクタ表示064SG111が表示されるため、第1シーンA~Cから第2シーンへの変化に伴い、特定キャラクタの開眼とともに表示色が変化するため、開眼を際立たせることができる。」
以上によれば、本件特許発明1は、構成F3、F4の「前記第1シーンでは、前記特定キャラクタ表示を構成する表示色の種類数が第1数となる態様で前記特定キャラクタ表示が表示され、前記第2シーンでは、前記特定キャラクタ表示を構成する表示色の種類数が前記第1数よりも多い第2数となる態様で前記特定キャラクタ表示が表示され」るという構成を採用することにより、また、本件特許発明2は、構成F3’、F4’の「前記第1シーンでは、前記特定キャラクタ表示を構成する主要表示色が第1表示色となる態様で前記特定キャラクタ表示が表示され、前記第2シーンでは、前記特定キャラクタ表示を構成する主要表示色が前記第1表示色とは異なる第2表示色となる態様で前記特定キャラクタ表示が表示され」るという構成を採用することにより、いずれも、「第1シーンから第2シーンへの変化に伴い、キャラクタの開眼とともに表示色が変化するため、開眼を際立たせることができる」(【0031】、【0477】)との効果が得られるという技術的意義を有するといえる。
さらに、本件特許発明1、2は、構成E、G2、G3の「前記演出実行手段は、特定キャラクタを示す特定キャラクタ表示を表示する特別演出と、該特別演出とは異なる演出であって第1特定演出と第2特定演出とを含む特定演出と、を実行可能であり、」「前記第1特定演出が実行されるときに第1態様で前記特別演出を実行可能であり、前記第2特定演出が実行されるときに第2態様で前記特別演出を実行可能である」という構成を採用することにより、「SPリーチ演出A1、SPリーチ演出B1よりも大当り期待度が高いSPリーチ演出C1やSPリーチ演出C2を実行する可変表示」、「すなわち、「リム」が登場することで大当り期待度または確変期待度が高いことが示唆される演出を対象として第2予言演出が実行されることで、第2予言演出が実行されることに対して遊技者をより一層注目させることが可能となっており、遊技の興趣を向上することができ」(【0389】)、「予言演出が実行されるか否かに加えて、第1予言演出と第2予言演出のどちらが実行されるかに対しても遊技者を注目させることが可能とな」る(【0388】、【0393】)という効果も得られるという技術的意義も有するものである。
ウ 本件特許発明1、2の発明該当性について
上記ア、イで検討したとおり、本件特許発明1、2は、「パチンコ遊技機やスロットマシンなどの遊技機」(【0002】)において、「キャラクタの開眼表示に関して遊技の興趣を向上させる」(【0006】)という技術的課題を解決しようとする、「可変表示を行い、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機」(構成A)という機器に関する発明であり、「有利状態に制御するか否かを決定可能な決定手段と、表示手段と、演出実行手段」(構成B、C、D)という技術的手段を備え、それら技術的手段の具体的な構成として、キャラクタを表現する表示色の種類数に着目した構成F3、F4(本件特許発明1)あるいは構成F3’、F4’(本件特許発明2)を採用する(例えば、実施例として、第1シーンA~Cでは、特定キャラクタ表示064SG111を構成する表示色の種類数が、「紫色」の1色となる態様で特定キャラクタ表示064SG111が表示されるのに対し、第2シーンでは、特定キャラクタ表示064SG111を構成する表示色の種類数が、第1シーンより多い「白色」と「金色」の2色となる態様で特定キャラクタ表示064SG111が表示される(【0477】))ことで、「第1シーンから第2シーンへの変化に伴い、キャラクタの開眼とともに表示色が変化するため、開眼を際立たせる」という効果を奏し、かつ、構成E、G2、G3をさらに具備する(例えば、実施例として、SPリーチAまたはSPリーチBの変動パターンである場合、図11-20(A)に示すように、予言演出パターン決定テーブルAを選択するとともに、1~100の値を取り得る予言演出パターン決定用乱数値を抽出し、該抽出した予言演出パターン決定用乱数値と予言演出パターン決定テーブルAに設定された判定値をリーチ演出、大当り種別、可変表示結果等に応じて比較することにより「予言演出」の演出パターンを決定し、変動パターンがSPリーチCの変動パターンである場合、図11-20(B)に示すように、予言演出パターン決定テーブルBを選択するとともに、1~100の値を取り得る予言演出パターン決定用乱数値を抽出し、該抽出した予言演出パターン決定用乱数値と予言演出パターン決定テーブルBに設定された判定値をSPリーチ演出種別、大当り種別、可変表示結果等に応じて比較することにより「予言演出」の演出パターンを決定する(【0347】))ことで、「予言演出が実行されるか否かに加えて、第1予言演出と第2予言演出のどちらが実行されるかに対しても遊技者を注目させることが可能とな」るという効果も得られる、という、一定の技術的意義を有するものであるから、「自然法則を利用した技術的思想の創作」であり、「発明」に該当すると認められる。
したがって、本件特許発明1、2は特許法第2条第1項でいう「発明」に該当し、本件特許は同法第29条第1項柱書に違反してなされたものとはいえない。
(2)申立人の主張
ア 自然法則を利用したものであるか否かについて
申立人は、異議申立書の「(ウ-1)自然法則を利用したものであるか否かについて(自然法則利用要件)」において、本件特許発明1に対して、次の主張をする。
「・・・そして、上述したように、技術的課題、その課題を解決するための技術的手段の構成及びその構成から導かれる効果等を総合して検討すれば、本件特許の請求項1に係る発明の課題解決手段は、演出の内容そのものにあるといえるから、技術的意義があるとはいえず、その発明の本質は、遊技機における演出内容を専ら人為的な取決めそのものに向けられたものである。
そしてまた、本件特許の請求項1に係る発明は、その解決しようとする技術的課題との関係において、遊技機における決定手段、表示手段及び演出実行手段という技術的手段を備えているものの、これらの手段は何ら技術的工夫が加えられたものではなく、上述した課題を解決するための前提となる単なる(周知技術)に過ぎない。したがって、本件特許の請求項1に係る発明は、全体として「自然法則を利用した」技術的思想の創作には該当しないものというべきである。
よって、本件特許の請求項1に係る発明は、発明の本質が専ら人為的な取決めそのものに向けられているものであり、自然界の現象や秩序について成立している科学的法則を利用するものと言えないから、全体として「自然法則を利用した」技術的思想の創作には該当しない。」
そして、申立人は、異議申立書の「(ウ-3)本件特許の請求項2に係る発明について」において、「本件特許の請求項2に係る発明も、上記本件特許の請求項1に係る発明と同様に、自然法則を利用した技術的思想の創作ではなく、「発明」に該当しないことは明らかである。」とする。
申立人の上記主張は、「遊技機における決定手段、表示手段及び演出実行手段という技術的手段」(本件特許発明1、2の構成A~D、G、G1)は、その解決しようとする技術的課題との関係において、課題を解決するための前提となる単なる周知技術に過ぎないから、本件特許発明1、2の課題解決手段は、構成E~F2、F3~F4(F3’~F4’)、G2~G3で特定される、演出の内容そのものにあるといえ、技術的意義があるとはいえず、その発明の本質が人為的な取決めそのものに向けられたものである、と主張するものと解される。
しかしながら、「特許法第2条第1項が「「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」と定め、同法第29条第1項柱書において、「産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。」とした上で、「次に掲げる発明」として、第1~3号に公知発明等を挙げている。このような特許法の規定の仕方からすると、特許法は、特許を受けようとする発明が自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものであり、かつ産業上利用することができるものであるかをまず検討した上で、これらの要件を満たす発明であっても公知発明等に当たる場合には特許を受けることができないものと定めていると解すべきである。
そうすると、特許法第29条第1項柱書該当性の判断に当たっては、特許法第29条第1項及び第2項のように、2つの発明を対比することにより特許要件の有無を判断する場合とは異なり、特許請求の範囲によって特定された発明全体が自然法則を利用した技術的思想の創作に当たるかどうかを全体的に検討すべきであって、公知発明等に該当する部分を除外した残りの構成だけを取り出して判断すべきではない。」(知財高裁平成21年6月16日判決、平成20年(行ケ)第10279号参照。)
してみれば、本件特許発明1,2から、周知技術に過ぎないとする部分(構成A~D、G、G1)を除外した上で、残る構成E~F2、F3~F4(F3’~F4’)、G2~G3で特定される課題解決手段が「演出の内容そのもの」であるとして技術的意義を有しないと評価する、上記申立人の主張は失当である。
そして、本件特許発明1、2は、上記(1)ア~ウにおいて検討したように、その解決する技術的課題、技術的意義を考慮すれば、全体として「自然法則を利用した技術的思想の創作」であり、人為的な取決めではなく、「発明」に該当する。
したがって、申立人の上記主張は採用することができない。
イ コンピュータソフトウェア関連発明に係る観点からの申立人の主張について
申立人は、異議申立書の「(ウ-2)コンピュータソフトウェア関連発明に係る観点からの検討」において、本件特許発明1に対して、次の主張をする。
「本件特許の請求項1に係る発明は、ハードウェア資源として、遊技機の表示手段、演出実行手段等を備えている。そして、演出実行手段は、様々な演出を実行可能であり、それらの演出がソフトウェアの情報処理に相当する。
しかし、各演出について、演出の組合せ、表示色の色数、表示態様が異なる等の記載はあるものの、演出実行手段により所定の演出を実行するという使用目的に応じた技術的関係について、具体的手段、具体的手順は記載されていない。そのため、本件特許の請求項1に係る発明は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することによって使用目的に応じた特有の情報処理装置を構築するものではない(特許・実用新案審査ハンドブック附属書B第1章コンピュータソフトウェア関連発明〔事例2-6〕〔事例2-10〕参照)。
したがって、本件特許の請求項1に係る発明は、ソフトウェアとハードウェア資源が協働することによって、課題解決に向けた特有の情報処理装置又はその動作方法が構築されているといえる事項が記載されているとは言えないから、本件特許の請求項1に係る発明は、その観点から見ても、「自然法則を利用した技術的思想の創作」とは言えないので、発明に該当しない。」
そして、申立人は、異議申立書の「(ウ-3)本件特許の請求項2に係る発明について」において、「上記(ウ-2) で検討した請求項1 と同様に請求項2についても、発明に該当しないことは明らかである。」とする。
しかしながら、上記(1)ア~ウでの検討を踏まえると、本件特許発明1、2は、コンピュータソフトウェア関連発明の観点、すなわち、特許・実用新案審査ハンドブック「付属書B」「「特許・実用新案審査基準」の特定技術分野への適用例」「第1章 コンピュータソフトウエア関連発明」に照らすまでもなく、自然法則を利用した発明であり、かつ技術的思想の創作となる発明である。
よって、申立人の上記主張は採用することができない。
ウ 産業上の利用可能性
申立人は、異議申立書の「(ウ-4)特許法第1条(法目的)との関係について」において、本件特許発明1、2に対して、次の主張をする。
「本件特許の請求項1と請求項2に係る発明は、発明の本質において、人為的な取決めに向けられている。一方で、上記特許法第1条に鑑みれば、発明該当性を柔軟に解釈する方が発明を奨励し、もって、アミューズメント産業の発達に寄与する可能性もあるから、厳格に発明該当性を判断せず、本件発明成立性を柔軟に解釈しようとする考え方もかつてはあった。
しかしながら、いわゆる演出内容を主要部とする発明について、・・・昨今の表示手段の大型化に伴う表示内容による演出に関する発明は技術的思想を伴っていない発明も増加している。
遊技機の表示画面に著作物を表示した発明は自然法則を利用したものといえず、仮にそのような発明を特許として認めれば、排他的独占権である特許権が多数乱立するという事態が生じてしまう。そうすると革新的な良い技術よりも単なるアイデアが数の点では優先してしまい、業界の健全な発展には寄与しない。
また、上記に関連して業界内で次のような指摘もなされている。
「狭い業界内で高コストを招く『分捕り合戦』に躍起になって、特許の優劣を競ったところで、業界の発展や規模拡大に恩恵をもたらす源泉はない。そればかりか、市場規模の縮小の中、開発コストをも上昇する一因ともなれば、本業の足かせになりかねない。
特許の取り組みは、業界の厳しい現実と将来を見据え、業界全体を挙げて効率的に推進すべきである。そして特許庁に対しては、特許法の理念のもと適切な審査、審判を求めるものである。」
よって、特許法第1条の法目的に鑑みても、本件特許の請求項1と請求項2に係る発明を維持すれば、アミューズメント産業の健全な発展を阻害することは明らかであるから、本件特許の請求項1と請求項2に係る発明の発明該当性要件を厳格に判断すべきである。」
そこで、申立人の上記主張について検討する。
特許法第1条は、「発明を奨励し、もって産業の発達に寄与する」との同法の目的、ひいては特許制度の目的を示したものであるところ、この特許法の目的に照らしても、本件特許発明1、2は、上記「3(1)ア~ウ」において検討したとおり、一定の技術的意義を有しており、同法第2条第1項の「自然法則を利用した技術的思想の創作」といえるものである。
そして、遊技機の表示画面に著作物を表示する演出をしようとする第三者は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」としての本件特許発明1、2の全ての構成を充足しなければ、その実施が妨げられるものではない。
そうすると、本件特許発明1、2を維持したからといって、アミューズメント産業の健全な発展を阻害することが明らかとまではいえない。
よって、申立人の上記主張は採用することができない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701015