特許異議申立
2025-700452
給湯システム及び給湯方法
- 審判番号
- 2025-700452
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-163662
- 登録番号
- 7572930
- 請求日
- 2025年04月23日
- 審決日
- 2025年06月25日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
- 【異議申立人】角田 朗
- 審判長/審判官
- 審判長 大山 健
- 審判官 竹下 和志
- 審判官 柳幸 憲子
- 分類
- P1652.121-Y (F24H) / P1652.536-Y (F24H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条、特許法第2条第3項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7572930号発明「給湯システム及び給湯方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7572930号の請求項3、7、9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の概要
特許第7572930号(以下、「本件特許」という。)の請求項1-10に係る特許についての出願は、令和3年10月4日に特許出願され、令和6年10月16日にその特許権の設定登録がされ、令和6年10月24日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和7年4月23日に特許異議申立人 角田 朗(以下、「特許異議申立人」という。)により、本件特許の請求項3、7、9に係る発明について、特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項3、7、9に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明3」、「本件特許発明7」、「本件特許発明9」という。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項3、7、9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
・「【請求項3】
湯中への空気の取り込みにより湯中にウルトラファインバブルを生成させるとともに、生成したウルトラファインバブルを吐出する吐出口を備えるウルトラファインバブル生成機構と、前記吐出口に取り付けられ、前記ウルトラファインバブルを含む湯との接触により、給湯対象設備での湯中にマイクロバブルを生成する多孔質体と、を備えるマイクロバブル生成機構と、
前記給湯対象設備に3L/分以上10L/分以下の流量で給湯するポンプと、を備える
ことを特徴とする給湯システム。」
・「【請求項7】
湯中への空気の取り込みにより湯中にウルトラファインバブルを生成させるとともに、生成したウルトラファインバブルを吐出する吐出口を備えるウルトラファインバブル生成機構と、前記吐出口に取り付けられ、前記ウルトラファインバブルを含む湯との接触により、給湯対象設備での湯中にマイクロバブルを生成する多孔質体と、を備えるマイクロバブル生成機構を備え、
前記多孔質体は、金属メッシュフィルタである
ことを特徴とする給湯システム。」
・「【請求項9】
湯中への空気の取り込みにより湯中にウルトラファインバブルを生成させるウルトラファインバブル生成ステップと、
生成したウルトラファインバブルを含む湯と多孔質体との接触により、給湯対象設備での湯中にマイクロバブルを生成するマイクロバブル生成ステップとを含み、
前記多孔質体は、金属メッシュフィルタである
ことを特徴とする給湯方法。」
第3 特許異議申立ての概要
特許異議申立人は、証拠方法として、甲第1号証-甲第7号証(以下、それぞれ「甲1」-「甲7」という。)を提出し、概略、次の取消理由(以下、特許異議申立人が主張する理由を、それぞれ「取消理由1」、「取消理由2」という。)を主張している。
<甲号証一覧>
甲1:特開2012-106189号公報
甲2:特開2020-40021号公報
甲3:特許第6717991号公報
甲4:特開2003-265938号公報
甲5:特開2009-5828号公報
甲6:特開2019-132529号公報
甲7:消費生活用製品安全法施行令、経済産業省、令和3年8月1日
1 取消理由1(特許法第29条第2項)
本件特許発明3は、甲1に記載された発明と、甲2-甲7の記載事項とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明7は、甲1に記載された発明と、甲2-甲5の記載事項とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明9は、甲1に記載された発明と、甲2-甲5の記載事項とに基いて、当業者が発明をすることができたものである。
したがって、本件特許発明3、7、9は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。
2 取消理由2(特許法第36条第4項第1号)
本件特許の発明の詳細な説明の記載は、本件特許発明3、7、9について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものでなく、本件特許発明3、7、9に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものである。
第4 甲号証
1 甲1について
(1)甲1の記載事項及び図示事項
甲1には、「バブル含有液生成装置」に関して、以下の記載がある(下線は、当審において付した。以下同様。)。
ア「【0001】
本発明は、マイクロバブル、マイクロナノバブル、ナノバブル等の微細バブルを含む液体を生成するバブル含有液生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、微細バブルを含む液体を物体表面の洗浄等の処理に利用することが考えられている。これは、微細バブルと液との界面の電位が洗浄効果や酸化作用を促し、また、物体表面に付着した微細バブルが破裂するときのエネルギーが物体表面から汚れの剥離に寄与する等、微細バブルの働きに着目し、その微細バブルを含む液体を物体表面の洗浄等の処理に利用しようというものである。なお、この微細バブルは、そのサイズが小さくなるに従ってマイクロバブル、マイクロナノバブル、ナノバブルと呼ばれる。」
イ「【0021】
本発明の実施の一形態に係るバブル含有液生成装置は、図1に示すように構成される。図1において、このバブル含有液生成装置は、貯液槽11、第1ガス供給部13、ポンプ14、加圧槽15、第2ガス供給部17、ノズルユニット19及び多孔質体ユニット20を有している。液体W、例えば、純水を貯留する貯液槽11と加圧槽15とが送通管12にて連結され、この送通管12にポンプ14が設けられている。そして、貯液槽11からの液体Wが通る送通管12の貯液槽11とポンプ14との間に、第1ガス供給部13からの気体(例えば、窒素ガスまたは酸素ガス)が開閉弁21を介して供給されるようになっている。
【0022】
第1ガス供給部13からの気体が送通管12内の液体Wに混ざってできる気体含有液(気体含有液生成機構)がポンプ14により送通管12を通って加圧槽15に圧送され、その気体含有液が加圧槽15に一時的に溜められる。加圧槽15では、貯留される気体含有液が加圧され、気体含有液内の気体が溶解して、液中の気体濃度が上昇し、常圧における飽和溶解濃度以上の気体溶存液が生成される(気体溶存液生成機構)。なお、加圧槽15内の圧力は、圧力調整器22によって調整することができる。
【0023】
加圧槽15から延びる送通管16aが多孔質体ユニット20に結合されている。そして、多孔質体ユニット20から延びる送通管16bがノズルユニット19に結合されている。多孔質体ユニット20には、加圧槽15から送通管16aを通して加圧状態の気体溶存液が供給されるとともに、第2ガス供給部17から気体送通管18を通して気体(例えば、窒素ガスまたは酸素ガスであって、第1ガス供給部13から供給されるガスとは種類が同じでも異なるものであってもよい)が加圧供給される。多孔質体ユニット20は、供給される加圧状態の気体溶存液中に第2ガス供給部17からの気体の微細バブルを発生させるもの(第1バブル発生機構)で、図2に示すような構造となっている。
【0024】
図2において、この多孔質体ユニット20は、シラス多孔質ガラス(SPG)の膜を筒状に成型した多孔質体210を有しており、外筒体200内において多孔質体210の両端部が支持部材201、202によって支持されている。加圧槽15から延びる送通管16a(図1参照)が外筒体200の一方側端部の液体導入口211に結合され、送通管16aを通して供給される加圧状態の気体溶存液が外筒体200内に設けられた多孔質体210の筒内を通過するようになっている。外筒体200に形成された気体導入部203に第2ガス供給部17から延びる気体送通管18が結合されており、第2ガス供給部17から気体送通管18を通して供給される気体が気体導入部203を介して外筒体200内に導入される。外筒体200内に導入される気体は、多孔質体210の形成された多数の細孔を通ってその内部に進入し、多孔質体210の筒内を通過する気体溶存液中にその細孔のサイズに応じたサイズの微細バブルが生成される。外筒体200の他方側端部の液体排出口212には送通管16bが結合され、前述したように多孔質体210を通過するバブル含有の気体溶存液が液体排出口212から排出され、更に、送通管16bを通ってノズルユニット19に供給される(図1参照)。」
ウ「【0026】
上述したような構造のバブル含有液生成装置では、送通管12を通る液体Wに第1ガス供給部13からの気体が混ざってできる気体含有液が加圧槽15にて加圧されて常圧における飽和溶解濃度以上の極めて溶存気体濃度の高い気体溶存液が生成される。そして、その加圧状態の気体溶存液が多孔質体ユニット20を通過する際に、第2ガス供給部17からの気体により、気体溶存液中に多孔質体210の細孔のサイズに応じた微細バブルが発生し、多孔質体ユニット20から微細バブルを含有するとともに極めて高い溶存気体濃度の気体溶存液(バブル含有気体溶存液)が排出される。」
エ「【0029】
本発明の実施の一形態では、多孔質体ユニット20から排出されて送通管16bを通ってノズルユニット19に供給されるバブル含有気体溶存液は、ノズルユニット19から噴出する。このノズルユニット19から噴出する際に、バブル含有気体溶存液は大気中に圧力開放され、その圧力開放によって、気体溶存液中に微細バブルが発生する。このため、ノズルユニット19から噴出する液体には、多孔質体ユニット20にて発生した微細バブルに加えてノズルユニット19から噴出する際の圧力開放によって発生した微細バブルが含まれることになり、極めて多くの微細バブルが含まれることになる。」
オ「【0032】
また、微細バブルを含む気体溶存液を圧力開放して更なる微細バブルを発生させる機構(第2バブル発生機構)は、ノズルユニット19に限られるものではなく、多孔質体ユニット20(第1バブル発生機構)から延びる送通管16bに設けられたオリフィス体等、他の構造のものであってもよい。」
カ「【図1】
[図:0001424632000001.jpg]
」
キ「【図2】
[図:0001424632000002.jpg]
」
(2)上記(1)から認められること
(甲1発明1について)
ア 記載事項イ及び記載事項ウから、甲1には、バブル含有液生成装置において、加圧槽15から送通管16aを通して供給された加圧状態の気体溶存液が多孔質体ユニット20を通過する際に、第2ガス供給部17からの気体が加圧供給されることにより、気体溶存液中に多孔質体210の細孔のサイズに応じた微細バブルが発生し、バブル含有気体溶存液が送通管16bに排出され、バブル含有気体溶存液をノズルユニット19に供給することが開示されているといえる。
そうすると、バブル含有液生成装置は、加圧状態の気体溶存液への第2ガス供給部17からの気体の加圧供給により、気体溶存液中に多孔質体210の細孔のサイズに応じた微細バブルを発生させるとともに、バブル含有気体溶存液をノズルユニット19に供給する送通管16bに結合される多孔質体ユニット20を備えるものといえる。
イ 記載事項エ及び図示事項カから、バブル含有液生成装置が備えるノズルユニット19は、送通管16bに取り付けられているものといえる。
そして、ノズルユニット19から噴出するバブル含有気体溶存液は、大気中に圧力開放されることによって、気体溶存液中に微細バブルが発生するものといえる。
(甲1発明2について)
ウ 上記ア、イの認定事項から、加圧状態の気体溶存液への第2ガス供給部17からの気体の加圧供給により、気体溶存液中に多孔質体210の細孔のサイズに応じた微細バブルを発生させ、多孔質体ユニット20からバブル含有気体溶存液を排出するステップを含む方法が開示されているものといえる。
また、当該方法は、バブル含有気体溶存液をノズルユニット19から噴出して大気中に圧力開放することによって、気体溶存液中に微細バブルを発生させるステップを含むものといえる。
そして、上記記載事項アから、微細バブルを含む液体を生成する方法は、これらのステップを含むことが理解できる。
(3)甲1発明1及び甲1発明2
上記(1)及び(2)から、甲1には、次の発明(以下、それぞれ「甲1発明1」及び「甲1発明2」という。)が記載されている。
ア 甲1発明1
「 加圧状態の気体溶存液への第2ガス供給部17からの気体の加圧供給により、気体溶存液中に多孔質体210の細孔のサイズに応じた微細バブルを発生させるとともに、バブル含有気体溶存液をノズルユニット19に供給する送通管16bに結合される多孔質体ユニット20と、
送通管16bに取り付けられ、バブル含有気体溶存液を、大気中に圧力開放することによって、気体溶存液中に微細バブルを発生させるノズルユニット19と、
ポンプ14と、を備える
バブル含有液生成装置。」
イ 甲1発明2
「 加圧状態の気体溶存液への第2ガス供給部17からの気体の加圧供給により、気体溶存液中に多孔質体210の細孔のサイズに応じた微細バブルを発生させ、多孔質体ユニット20からバブル含有気体溶存液を排出するステップと、
バブル含有気体溶存液をノズルユニット19から噴出して大気中に圧力開放することによって、気体溶存液中に微細バブルを発生させるステップと、を含む
微細バブルを含む液体を生成する方法。」
2 甲2について
甲2には、「ファインバブルの製造装置及びファインバブルの製造方法」に関して、以下の記載事項がある。
(1)「【0001】
本発明は、ファインバブルの製造装置及びファインバブルの製造方法に関する。」
(2)「【0013】
《ファインバブル製造装置》
本発明のファインバブル製造装置は、連続気孔を有する多孔質体、多孔質体に液体を供給して連続気孔に流通させる液体供給部、及び連続気孔を流通した液体を排出させる液体排出部を含む。
【0014】
例えば、図1に示すように、本発明の装置(100)では、液体供給部(1)から液体が供給され、その液体が多孔質体(10)の連続気孔を流通し、多孔質体(10)から得られたファインバブルを含む液体が液体排出部(2)から排出させる。
【0015】
本発明者らは、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)のような多孔質体に液体を通過させると、その液中にファインバブルが発生することを発見した。これは、多孔質フィルター基材のような多孔質体に、液体が通過するとベンチュリ効果によって圧力が低下し、その液体に溶存しているガスがファインバブルとして発生するためであると考えられる。すなわち、通常の流路から多孔質体の細孔に液体が侵入すると、ベルヌーイの定理により、動圧と静圧との合計が一定に保たれるため、動圧が非常に大きくなり、静圧が非常に小さくなる。静圧が低くなることによって、液体中に溶存しているガスがファインバブルとして発生する。そして、ファインバブルは、一度形成されると消失しにくいために、液体が孔を通過して、通常の流路に戻っても、ファインバブルが残留するものと考えられる。」
(3)「【0019】
また多孔質体の孔径を変化させること等によって、様々な径のファインバブルを発生させることが可能である。ファインバブルの平均粒径は、例えば100μm以下、50μm以下、30μm以下、10μm以下、5μm以下、3μm以下、1μm以下、500nm以下、300nm以下、又は100nm以下であってもよく、10nm以上、50nm以上、100nm以上、300nm以上、又は500nm以上であってもよい。したがって、本発明の装置で得られるファインバブルは、平均粒径が1μm以下のウルトラファインバブルであってもよい。ウルトラファインバブルの平均粒径は、ナノ粒子解析システムNanoSight(Malvern社)を用いて測定することができ、ファインバブルの平均粒径は、マイクロトラック PartAn SI(マイクロトラック・ベル株式会社)を用いて測定することができる。」
(4)「【0022】
多孔質体の材質についても特に限定されないが、例えば、多孔質金属、多孔質セラミック、多孔質樹脂等を挙げることができる。この中でも特に、好ましい連続気孔を有する多孔質体、特に不規則形状の連続気孔を有する多孔質体を容易に入手できる観点から、セラミック製の多孔質体を好ましく用いることができる。例えば、セラミック材料としては、特にコージェライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)、アルミナ、シリカ、ジルコニア、炭化ケイ素を挙げることができる。」
3 甲3について
甲3には、「シャワーヘッド、及びミスト発生ユニット」に関して、以下の記載事項がある。
(1)「【0001】
本発明は、液体に空気(気泡)を混入して気泡混入液体とし、又は液体から気泡を混入したミスト状の液滴にして、気泡混入液体又はミスト状の液滴を噴射するシャワーヘッドに関する。」
(2)「【0034】
シャワーヘッドXは、液体に空気(気泡)を混入して気泡混入液体を発生し、又は液体から気泡を混入したミスト状の液滴にして、気泡液混入液体又はミスト状(霧状)の液滴を噴射する。
液体は、水又は湯である(以下、同様)。気泡混入液体は、水又は湯に空気を混入した気泡混入水又は気泡混入湯であって、マイクロバブル又はウルトラファインバブルを混入した水又は湯である(以下、同様)。」
4 甲4について
甲4には、「微細気泡発生装置および微細気泡発生システム」に関して、以下の記載事項がある。
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、供給される液体中に空気(気体)を溶解させ、浴槽などの貯溜槽内に放出させることにより微細気泡を発生させる装置およびシステムに関する。」
(2)「【0008】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
実施の形態1
図1は本発明に係る微細気泡発生装置およびシステムの構成説明図である。微細気泡発生装置100は貯溜槽1から汲み上げた液体に空気を供給すると共に加圧状態で空気を水中に溶解させ、貯溜槽1に戻す際、常圧に減圧する。このとき、水中に溶解していた空気は微細な気泡となって発生浮上する。貯溜槽1からの液体の循環経路に循環ポンプ10を配設し、ポンプ10の下流側にコンプレッサー20、その下流側に気体溶解装置30を設置し、液体の吐出口40を貯溜槽1に連結して、液体の循環を実行している。
【0009】貯溜槽1より循環ポンプ10により配管5を介して液体(水)を汲み上げる。ここで、貯溜槽1は浴槽・水槽・廃水槽・油水分離槽・生簀・湖沼などの液体の貯溜体をいう。この実施の形態例では貯溜槽として浴槽を用いた場合を示している。汲み上げられた浴槽の水はコンプレッサー20から圧送される空気と混合され加圧状態で気体溶解装置30に流入する。コンプレッサー20には逆止弁25を配設している。
【0010】気体溶解装置30は空気混合水を圧力約0.3MPaに加圧している。そして、空気混合水は気体溶解装置30を通過途上、気体(空気)が水中に溶解する。空気を溶解した加圧水は、浴槽1に連絡する吐出ノズル40から浴槽1内に還元される。吐出ノズル40の吐出圧は気体溶解装置30の圧力とほぼ同じ約0.3MPaとなっている。浴槽1に吐出された空気溶解水は常圧に減圧され、過飽和状態となった気体(空気)は微細気泡となって水中に発生し、上昇する。」
5 甲5について
甲5には、「微細気泡発生装置」に関して、以下の記載事項がある。
(1)「【0001】
本発明は、空気を溶解している加圧水を浴槽に供給し、溶解空気から得られる微細気泡を浴槽内で発生させる装置に関する。」
(2)「【0032】
上述したように、共通タンク水路18内の水は、ポンプ74、共通ポンプ22が水を送り込む圧力によって第1タンク112へ送られる。したがって、噴射ノズル115から第1タンク112内に勢いよく水が噴射される。このとき、第1空気導入路126の上流端が空気切換弁30によって閉じられているので、第1タンク112は第1浴槽水路132を除いて密閉されている。また、第1タンク112内の水は、第1浴槽水路132及び第1減圧ノズル136を介して浴槽90内に放出されるが、上述したように第1減圧ノズル136の通水抵抗は高い。したがって、第1タンク112から第1浴槽水路132及び第1減圧ノズル136を介して浴槽90内に放出される水量(すなわち、第1タンク112から流出する水量)よりも、噴射ノズル115から第1タンク112内に噴射される水量の方が多くなる。したがって、第1タンク112内の圧力が上昇して高圧となる。高圧下にある第1タンク112内に噴射ノズル115から水が噴射されると、噴射された水が第1タンク112の内壁や、第1タンク112内に貯まっている水の水面等に衝突するときに、水の中に空気が溶解する。したがって、第1タンク112内で空気溶解加圧水が生成される。第1タンク112内で生成された空気溶解加圧水は、第1浴槽水路132と第1減圧ノズル136を介して浴槽90内に放出される。浴槽90内に放出された空気溶解加圧水は、第1減圧ノズル136を通過した瞬間に急激に減圧される。すると、水に溶解していた空気が、直径20μm程度の微細気泡となる。すなわち、浴槽90内に多量の微細気泡が発生し、水が白濁する。このように、第1タンク112で給水ステップW1が実行されることで、浴槽90内に微細気泡が発生する。」
6 甲6について
甲6には、「貯湯式給湯装置」に関して、以下の記載事項がある。
(1)「【0001】
本発明は、貯湯式給湯装置に関する。」
(2)「【0053】
制御装置36は、第一回収運転が継続した時間と、第一回収運転のときの浴水流量とに基づいて、第一回収運転の後の一部排水動作における浴水排出量を調整してもよい。これにより、浴水排出量の過不足をより確実に防止できる。例えば、第一回収運転のときの浴水流量(例えば3L/min)と、第一回収運転が継続した時間(例えば30分間)との積は、第一回収運転において浴槽30内に溜まる低温の浴水の量(例えば、90L)に相当すると考えることができる。この場合、制御装置36は、上記の積として算出された90Lを目安に浴水排出量を調整することにより、浴水排出量の過不足をより確実に防止できる。
【0054】
例えば、自動排水栓81から排出される浴水の流量を10L/minとした場合、浴水排出量を90Lとするには、制御装置36は、一部排水動作の継続時間が9分間となるように制御すればよい。
【0055】
なお、回収運転と一部排水動作とを交互に繰り返し実施する場合には、制御装置36は、上記と同様にして、2回目以降の一部排水動作における浴水排出量を制御してもよい。
【0056】
また、制御装置36は、浴水排出量が所定の上限排水量以下になるように調整してもよい。例えば、制御装置36は、一部排水動作の前の浴槽30内の浴水の総量の1/2を上限排水量とし、浴水排出量が当該上限排水量以下になるように調整してもよい。例えば、制御装置36は、設定湯張り量(例えば180L)の1/2を、第一回収運転の後の一部排水動作の上限排水量(例えば90L)とし、当該一部排水動作の浴水排出量が当該上限排水量以下になるように調整してもよい。上記のようにすることで、より簡単な処理によって浴水排出量の過不足を防止することが可能となる。
【0057】
フロースイッチ47は、浴水循環流路内の浴水の流れの有無を検出する流れ検出手段に相当する。フロースイッチ47が流れを検出可能な流量には下限がある。ここでは、フロースイッチ47が流れを検出可能な下限流量が3L/minであると仮定する。この場合、下限流量である3L/minよりも浴水流量が低くなるような回転速度で浴水ポンプ29が運転されていると、浴水が正常に循環しているかどうかをフロースイッチ47によって確認することができないため、好ましくない。以上の観点から、制御装置36は、回収運転での浴水ポンプ29の回転速度が、フロースイッチ47が流れを検出可能な下限の回転速度、すなわち浴水流量が上記下限流量となるような回転速度に等しくなるように制御することが望ましい。これにより、フロースイッチ47による浴水循環の確認を確実に可能としつつ、風呂用熱交換器20による熱交換能力をさらに向上可能となる。」
7 甲7について
甲7は、「消費生活用製品安全法施行令」であり、「別表第二(第二条、第七条関係)」について、以下の記載事項がある。
「三 浴槽用温水循環器(主として家庭において使用することを目的として設計したものに限るものとし、水の吸入口と噴出口とが構造上一体となつているものであつて専ら加熱のために水を循環させるもの及び循環させることができる水の最大の流量が十リットル毎分未満のものを除く。)」
第5 当審の判断
1 取消理由1(特許法第29条第2項)について
(1)本件特許発明3について
甲1発明1における「加圧状態の気体溶存液への第2ガス供給部17からの気体の加圧供給により、気体溶存液中に多孔質体210の細孔のサイズに応じた微細バブルを発生させるとともに、バブル含有気体溶存液をノズルユニット19に供給する送通管16bに結合される多孔質体ユニット20と、送通管16bに取り付けられ、バブル含有気体溶存液を、大気中に圧力開放することによって、気体溶存液中に微細バブルを発生させるノズルユニット19」は、その機能、構造又は技術的意義からみて、
本件特許発明3における「湯中への空気の取り込みにより湯中にウルトラファインバブルを生成させるとともに、生成したウルトラファインバブルを吐出する吐出口を備えるウルトラファインバブル生成機構と、前記吐出口に取り付けられ、前記ウルトラファインバブルを含む湯との接触により、給湯対象設備での湯中にマイクロバブルを生成する多孔質体と、を備えるマイクロバブル生成機構」と
「バブル生成機構」である限りにおいて一致する。
また、甲1発明1の「ポンプ14」は、本件特許発明3の「ポンプ」に相当する。
また、甲1発明1における「バブル含有液生成装置」は、本件特許発明3における「給湯システム」と「システム」である限りにおいて一致する。
そうすると、本件特許発明3と、甲1発明1とは、次の一致点で一致し、次の相違点で相違する。
[一致点1]
「バブル生成機構と、
ポンプと、を備える
システム。」
[相違点1]
「バブル生成機構」が、本件特許発明3では、「湯中への空気の取り込みにより湯中にウルトラファインバブルを生成させるとともに、生成したウルトラファインバブルを吐出する吐出口を備えるウルトラファインバブル生成機構と、前記吐出口に取り付けられ、前記ウルトラファインバブルを含む湯との接触により、給湯対象設備での湯中にマイクロバブルを生成する多孔質体と、を備えるマイクロバブル生成機構」であるのに対して、甲1発明1では、「加圧状態の気体溶存液への第2ガス供給部17からの気体の加圧供給により、気体溶存液中に多孔質体210の細孔のサイズに応じた微細バブルを発生させるとともに、バブル含有気体溶存液をノズルユニット19に供給する送通管16bに結合される多孔質体ユニット20と、送通管16bに取り付けられ、バブル含有気体溶存液を、大気中に圧力開放することによって、気体溶存液中に微細バブルを発生させるノズルユニット19」である点。
[相違点2]
本件特許発明3では、「ポンプ」が「給湯対象設備に3L/分以上10L/分以下の流量で給湯する」ものであるのに対して、甲1発明1では、「ポンプ14」がこのようなものか不明な点。
[相違点3]
「システム」が、本件特許発明3では、「給湯システム」であるのに対して、甲1発明1では、「バブル含有液生成装置」である点。
上記相違点1について検討する。
上記第4の2の甲2の記載事項を参酌すると、甲2には、連続気孔を有する多孔質体、多孔質体に液体を供給して連続気孔に流通させる液体供給部、及び連続気孔を流通した液体を排出させる液体排出部を含むファインバブル製造装置が記載され、また、上記多孔質体に、液体が通過するとベンチュリ効果によって圧力が低下し、その液体に溶存しているガスがファインバブルとして発生することが記載されているといえる。
しかしながら、甲2には、液体に溶存しているガスの泡径や、発生するファインバブルの泡径については何ら限定されていない。また、甲2には、液体が湯であること、及び、ファインバブル製造装置の用途が給湯対象設備であること、について記載も示唆も認められない。
したがって、甲2には、「ウルトラファインバブル生成機構」の「吐出口に取り付けられ、前記ウルトラファインバブルを含む湯との接触により、給湯対象設備での湯中にマイクロバブルを生成する多孔質体」が記載されているということはできない。
また、甲3-甲7のいずれにも、「ウルトラファインバブル生成機構」の「吐出口に取り付けられ、前記ウルトラファインバブルを含む湯との接触により、給湯対象設備での湯中にマイクロバブルを生成する多孔質体」が記載されているということはできない。
さらに、甲1において、多孔質体210の細孔のサイズに応じた微細バブルがウルトラファインバブルであることも、バブル含有気体溶存液を大気中に圧力開放することによって発生した気体溶存液中の微細バブルがマイクロバブルであることも、記載も示唆もされていないから、甲1発明1に、「ウルトラファインバブル生成機構」の「吐出口に取り付けられ、前記ウルトラファインバブルを含む湯との接触により、給湯対象設備での湯中にマイクロバブルを生成する多孔質体」を設ける動機付けも見当たらない。
そうすると、甲2-甲7の記載事項を踏まえても、甲1発明1の「多孔質体ユニット20」及び「ノズルユニット19」を、相違点1に係る本件特許発明3の「ウルトラファインバブル生成機構」の「吐出口に取り付けられ、前記ウルトラファインバブルを含む湯との接触により、給湯対象設備での湯中にマイクロバブルを生成する多孔質体」を備えるものとすることが、当業者にとって容易であったということはできない。
また、本件特許の明細書の段落【0045】には「本開示の給湯システム1及び本開示の給湯方法によれば、MB生成機構10を介してMB50を給湯対象設備40の湯Wに生成できる。MB生成機構10は、UFB生成機構5により生成したUFB51を用いてMB50を生成させるため、湯Wへの空気取り込み量はMB50よりも小さなUFB51に対応する量である。従って、取り込まれる空気量を少なくでき、MB50の生成に起因する水温変動を抑制できる。」との記載があり、段落【0046】には「MB50を含む湯Wは白濁しているため、白濁した湯Wを見た使用者にMB50の存在を印象付けることができる。また、給湯対象設備40が浴槽である場合、MB50を含む湯W(即ち湯)は保温効果を有し、使用者に対し、保温効果を与えることができる。更には、湯Wに浸かる使用者が肌触りの良さを感じることができる。」との記載がある。
上記記載から、本件特許発明3は、湯Wへの空気取り込み量をウルトラファインバブル(UFB51)に対応する量とすることで給湯対象設備の湯の水温変動を抑制できるとともに、マイクロバブルを含む白濁した湯によって、使用者にマイクロバブルの存在を印象付け、保温効果を与え、湯に浸かる使用者に肌触りの良さを感じさせることができる、という効果を奏するものと理解できる。
そして、甲1発明1及び甲2-甲7の記載事項を総合しても、このような効果が、当業者の予測の範囲であったということはできない。
そうすると、本件特許発明3は、相違点2、3について検討するまでもなく、甲1発明1と、甲2-甲7の記載事項とに基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(2)本件特許発明7について
上記(1)で判断した甲1発明1と、本件特許発明3との対比を踏まえて、甲1発明1と、本件特許発明7とを対比する。
甲1発明1の「加圧状態の気体溶存液への第2ガス供給部17からの気体の加圧供給により、気体溶存液中に多孔質体210の細孔のサイズに応じた微細バブルを発生させるとともに、バブル含有気体溶存液をノズルユニット19に供給する送通管16bに結合される多孔質体ユニット20と、送通管16bに取り付けられ、バブル含有気体溶存液を、大気中に圧力開放することによって、気体溶存液中に微細バブルを発生させるノズルユニット19」は、本件特許発明7の「湯中への空気の取り込みにより湯中にウルトラファインバブルを生成させるとともに、生成したウルトラファインバブルを吐出する吐出口を備えるウルトラファインバブル生成機構と、前記吐出口に取り付けられ、前記ウルトラファインバブルを含む湯との接触により、給湯対象設備での湯中にマイクロバブルを生成する多孔質体と、を備えるマイクロバブル生成機構」と、「バブル生成機構」である限りにおいて一致する。
また、甲1発明1における「バブル含有液生成装置」は、本件特許発明7における「給湯システム」と「システム」である限りにおいて一致する。
そうすると、本件特許発明7と、甲1発明1とは、次の一致点で一致し、次の相違点で相違する。
[一致点2]
「バブル生成機構を備えるシステム。」
[相違点4]
「バブル生成機構」が、本件特許発明7では、「湯中への空気の取り込みにより湯中にウルトラファインバブルを生成させるとともに、生成したウルトラファインバブルを吐出する吐出口を備えるウルトラファインバブル生成機構と、前記吐出口に取り付けられ、前記ウルトラファインバブルを含む湯との接触により、給湯対象設備での湯中にマイクロバブルを生成する多孔質体と、を備えるマイクロバブル生成機構」であるのに対して、甲1発明1では、「加圧状態の気体溶存液への第2ガス供給部17からの気体の加圧供給により、気体溶存液中に多孔質体210の細孔のサイズに応じた微細バブルを発生させるとともに、バブル含有気体溶存液をノズルユニット19に供給する送通管16bに結合される多孔質体ユニット20と、送通管16bに取り付けられ、バブル含有気体溶存液を、大気中に圧力開放することによって、気体溶存液中に微細バブルを発生させるノズルユニット19」である点。
[相違点5]
本件特許発明7では、「多孔質体は、金属メッシュフィルタ」であるのに対して、甲1発明1では、そのような構成がない点。
[相違点6]
「システム」が、本件特許発明7では、「給湯システム」であるのに対して、甲1発明1では、「バブル含有液生成装置」である点。
上記相違点4について検討する。
上記(1)で検討した相違点1と同様の理由で、甲2-甲5の記載事項を踏まえても、甲1発明1の「多孔質体ユニット20」及び「ノズルユニット19」を、相違点4に係る本件特許発明7の「ウルトラファインバブル生成機構」の「吐出口に取り付けられ、前記ウルトラファインバブルを含む湯との接触により、給湯対象設備での湯中にマイクロバブルを生成する多孔質体」を備えるものとすることが、当業者にとって容易であったものということはできない。
また、湯Wへの空気取り込み量をウルトラファインバブル(UFB51)に対応する量とすることで給湯対象設備の湯の水温変動を抑制できるとともに、マイクロバブルを含む白濁した湯によって、使用者にマイクロバブルの存在を印象付け、保温効果を与え、湯に浸かる使用者に肌触りの良さを感じさせることができる、という本件特許発明7が奏する効果は、甲1発明1及び甲2-甲5の記載事項を総合しても、当業者の予測の範囲であったということはできない。
そうすると、本件特許発明7は、相違点5、6について検討するまでもなく、甲1発明1と、甲2-甲5の記載事項とに基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(3)本件特許発明9について
上記(1)、(2)で判断した甲1発明1と、本件特許発明3及び本件特許発明7との対比を踏まえて、甲1発明2と、本件特許発明9とを対比する。
甲1発明2の「加圧状態の気体溶存液への第2ガス供給部17からの気体の加圧供給により、気体溶存液中に多孔質体210の細孔のサイズに応じた微細バブルを発生させ、多孔質体ユニット20からバブル含有気体溶存液を排出するステップと、バブル含有気体溶存液をノズルユニット19から噴出して大気中に圧力開放することによって、気体溶存液中に微細バブルを発生させるステップと、を含む」ことは、本件特許発明9の「湯中への空気の取り込みにより湯中にウルトラファインバブルを生成させるウルトラファインバブル生成ステップと、生成したウルトラファインバブルを含む湯と多孔質体との接触により、給湯対象設備での湯中にマイクロバブルを生成するマイクロバブル生成ステップとを含み」と、「バブル生成ステップを含む」限りにおいて一致する。
また、甲1発明2の「微細バブルを含む液体を生成する方法」は、本件特許発明9の「給湯方法」と、「方法」である限りにおいて一致する。
そうすると、本件特許発明9と、甲1発明2とは、次の一致点で一致し、次の相違点で相違する。
[一致点3]
「バブル生成ステップを含む方法。」
[相違点7]
「バブル生成ステップ」が、本件特許発明9では、「湯中への空気の取り込みにより湯中にウルトラファインバブルを生成させるウルトラファインバブル生成ステップと、生成したウルトラファインバブルを含む湯と多孔質体との接触により、給湯対象設備での湯中にマイクロバブルを生成するマイクロバブル生成ステップ」であるのに対して、甲1発明2では、「加圧状態の気体溶存液への第2ガス供給部17からの気体の加圧供給により、気体溶存液中に多孔質体210の細孔のサイズに応じた微細バブルを発生させ、多孔質体ユニット20からバブル含有気体溶存液を排出するステップと、バブル含有気体溶存液をノズルユニット19から噴出して大気中に圧力開放することによって、気体溶存液中に微細バブルを発生させるステップ」である点。
[相違点8]
本件特許発明9では、「多孔質体は、金属メッシュフィルタ」であるのに対して、甲1発明2では、そのような構成がない点。
[相違点9]
「方法」が、本件特許発明9では、「給湯方法」であるのに対して、甲1発明2では、「微細バブルを含む液体を生成する方法」である点。
上記相違点7について検討する。
上記(1)、(2)で検討した相違点1、相違点4と同様の理由で、甲2-甲5の記載事項を踏まえても、甲1発明2の「加圧状態の気体溶存液への第2ガス供給部17からの気体の加圧供給により、気体溶存液中に多孔質体210の細孔のサイズに応じた微細バブルを発生させ、多孔質体ユニット20からバブル含有気体溶存液を排出するステップ」と「バブル含有気体溶存液をノズルユニット19から噴出して大気中に圧力開放することによって、気体溶存液中に微細バブルを発生させるステップ」とを、相違点7に係る本件特許発明9の、「湯中への空気の取り込みにより湯中にウルトラファインバブルを生成させるウルトラファインバブル生成ステップ」と「生成したウルトラファインバブルを含む湯と多孔質体との接触により、給湯対象設備での湯中にマイクロバブルを生成するマイクロバブル生成ステップ」に変更することが、当業者にとって容易であったものということはできない。
また、湯Wへの空気取り込み量をウルトラファインバブル(UFB51)に対応する量とすることで給湯対象設備の湯の水温変動を抑制できるとともに、マイクロバブルを含む白濁した湯によって、使用者にマイクロバブルの存在を印象付け、保温効果を与え、湯に浸かる使用者に肌触りの良さを感じさせることができる、という本件特許発明9が奏する効果は、甲1発明2及び甲2-甲5の記載事項を総合しても、当業者の予測の範囲であったということはできない。
そうすると、本件特許発明9は、甲1発明2と、甲2-甲5の記載事項とに基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明3は、甲1発明1と、甲2-甲7の記載事項とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、本件特許発明7は、甲1発明1と、甲2-甲5の記載事項とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、本件特許発明9は、甲1発明2と、甲2-甲5の記載事項とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
2 取消理由2(特許法第36第4項第1号)について
(1)特許法第36条の第4項第1号の実施可能要件について
特許法第36条第4項第1号は、特許による技術の独占が発明の詳細な説明をもって当該技術を公開したことへの代償として付与されるという仕組みを踏まえ、発明の詳細な説明の記載につき、実施可能要件を定めるものである。このような同号の趣旨に鑑みると、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、特許を受けようとする発明の実施をすることができる程度の記載があることを要するものと解される。
また、物の発明における発明の実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、特許法第36条第4項第1号の「その実施をすることができる」とは、その物を作ることができ、かつ、その物を使用できることであり、物の発明については、明細書にその物を生産する方法及び使用する方法についての具体的な記載が必要であるが、そのような記載がなくても、明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき、当業者がその物を作ることができ、かつ、その物を使用できるのであれば、上記の実施可能要件を満たすということができる。
また、方法の発明について実施可能要件を充足するためには、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法の使用をすることができる程度の記載があることを要するといえる。
以下、この規範に沿って検討する。
(2)本件特許の願書に添付された明細書及び図面の記載
本件特許の願書に添付された明細書及び図面には、以下の記載事項及び図示事項がある。
・「【0010】
MB生成機構10は、UFB生成機構5(ウルトラファインバブル生成機構)と、多孔質体6とを備える。UFB生成機構5は、湯W中への空気Aの取り込みにより湯W中にUFB51を生成させる。UFB生成機構5は、更に、生成したUFB51を吐出する吐出口5aを備える。流路24を通じてUFB生成機構5に供給された湯Wは、空気Aを取り込むことでUFB51を生成させ、吐出口5aから給湯対象設備40の湯W中にUFB51を吐出する。吐出は、流路24を通じて供給された水にUFB51が含まれる状態で行われる。UFB生成機構5の具体的な構成は、UFB51を生成可能な機構であれば特に制限されない。
【0011】
多孔質体6は、UFB51を含む湯Wとの接触により、給湯対象設備40での湯W中にMB50を生成する。多孔質体6は、吐出口5aに取り付けられ、吐出口5aから吐出されたUFB51は、吹出圧によって多孔質体6と接触する。多孔質体6との接触により、UFB51からMB50が生成し、MB50が湯W中に生成する。
【0012】
図3は、MB50の生成機構を説明する図である。紙面奥側は吐出口5a(図2)の側、手前側は、給湯対象設備40(図1)としての浴槽内に存在する使用者(不図示)の側である。多孔質体6は、例えば金属メッシュフィルタである。金属メッシュフィルタは高い強度を有するため、耐久性を向上できる。中でも、例えばステンレス鋼等の耐腐食性を有する金属を使用することで、給湯対象設備40の例えば洗浄時に使用する薬剤(洗剤)への耐腐食性を向上でき、この点でも耐久性を向上できる。
【0013】
多孔質体6は、湯Wを通す孔61と、孔61を区画する線材62とを備える。線材62は例えば格子状に編み込まれ、交差する線材62同士によって区画された領域に、孔61が形成する。孔61の大きさは特に制限されないが、最も長い部分の長さとして例えば1μm以上1mm以下にできる。
【0014】
吐出口5aから噴き出された湯Wは、UFB51とともに多孔質体6に接触する。そして、湯Wは、孔61を通り、使用者の側に至る。湯Wが孔61を通るとき、湯W中のUFB51は線材62に接触する。これにより、UFB51は、線材62との接触に起因して挙動が変化し、複数のUFB51が合体する。この結果、UFB51(例えば1μm未満の気泡)よりも大きな径のMB50(例えば1μm以上100μm未満の気泡)が生成する。生成したMB50は、湯Wとともに、使用者の側に放出される。」
・「【0023】
ポンプ2は、給湯対象設備40に例えば3L/分以上、好ましくは5L/分以上、上限として例えば10L/分以下、好ましくは7L/分以下の流量で給湯するものである。この流量での給湯により、給湯対象設備40での湯W中にMB50(図2)を生成できる。」
・「【図2】
[図:0001424632000003.jpg]
」
(3)判断
段落【0010】、【0011】の記載から、MB生成機構10は、UFB生成機構5(ウルトラファインバブル生成機構)と、多孔質体6とを備え、多孔質体6は、UFB51を含む湯Wとの接触により、給湯対象設備40での湯W中にMB50を生成することが理解できる。
段落【0012】の記載から、多孔質体6は、ステンレス鋼等の耐腐食性を有する金属を使用した金属メッシュフィルタとして形成されるものであり、段落【0013】の記載から、上記金属メッシュフィルタは、格子状に編み込まれ、交差する線材62同士によって区画された領域によって孔61が形成されるものであり、孔61の大きさについても、最も長い部分の長さを1μm以上1mm以下の範囲とすることが理解できる。
また、段落【0011】、【0014】の記載から、上記のように形成された多孔質体6が、UFB生成機構5の吐出口5aに取り付けられ、吐出口5aから吐出されたUFB51が、多孔質体6と接触することで、湯W中の複数のUFB51が合体して、UFB51よりも大きな径のMB50が生成されることが理解できる。
また、段落【0023】の記載から、ポンプ2は、給湯対象設備40に3L/分以上10L/分以下の流量で給湯することにより、給湯対象設備40での湯W中にMB50を生成できることが理解できる。
そして、上記の記載に接した当業者であれば、UFB生成機構5(ウルトラファインバブル生成機構)の吐出口5aに多孔質体6又は金属メッシュフィルタを取り付け、UFB51を含む湯Wと接触させ、複数のUFB51を合体させることにより、給湯対象設備での湯W中にMB50を生成する給湯システムを生産することができ、かつ、使用できるというべきである。
また、上記の記載に接した当業者であれば、過度の試行錯誤を要することなく、UFB51を生成し、生成したUFB51を含む湯Wと多孔質体6又は金属メッシュフィルタとを接触させ、複数のUFB51を合体させることにより、給湯対象設備で湯W中にMB50を生成するステップを含む給湯方法の使用をすることができるというべきである。
したがって、発明の詳細な説明には、本件特許の請求項3及び7に記載された「給湯システム」を生産する方法及び使用する方法についての具体的な記載があるといえる。
また、発明の詳細な説明には、本件特許の請求項9には、「給湯方法」を、過度の試行錯誤を要することなく、使用をすることができる程度の記載があるといえる。
(4)特許異議申立人の主張
特許異議申立人は特許異議申立書において、「・・・本件特許の請求項には、多孔質体の孔径に関する記載がない。むしろ、孔径を指定しないのであれば、多孔質体に接触した際に泡は分断されると考えたほうが自然である。本件特許は多孔質体の孔径について特定されておらずウルトラファインバブルからマイクロバブルを生成することについて十分な記載がされていないから、発明の属する技術分野における当業者が請求項に記載された発明を実施できる程度に明細書等が明確かつ十分に記載されていない。」と主張する。
しかしながら、本件特許の請求項3、7、9に、多孔質体の孔径に関する記載がないことが、本件特許の請求項3及び7に記載された「給湯システム」を生産すること及び使用することを妨げるものとはいえず、本件特許の請求項9の「給湯方法」を、過度の試行錯誤を要することなく、使用をすることができることを妨げるものとはいえない。また、本件特許の明細書の段落【0013】には、多孔質体6の孔61の大きさについての記載があるから、請求項に記載された多孔質体を備える給湯システム又は給湯方法が、生産及び使用できないということはできない。
以上から、特許異議申立人の主張は採用できない。
(5)小括
以上のとおりであるから、本件特許の請求項3、7、9に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。
第6 むすび
したがって、特許異議申立書に記載した申立理由及び証拠によっては、本件特許発明3、7、9を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明3、7、9を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2025-700452