特許異議申立
2023-700961
マスク
- 審判番号
- 2023-700961
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-568504
- 登録番号
- 7241544
- 請求日
- 2023年09月13日
- 審決日
- 2024年01月17日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ユニ・チャーム株式会社
- 【権利者代理人】青木 篤
- 【権利者代理人】三橋 真二
- 【権利者代理人】小野田 浩之
- 【権利者代理人】奥野 剛規
- 【権利者代理人】藤本 健治
- 【異議申立人】合同会社 SAS
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 直欣
- 審判官 稲葉 大紀
- 審判官 久保 克彦
- 分類
- P1651.121-Y (A41D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7241544号発明「マスク」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7241544号の請求項1~8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7241544号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)2月9日(優先権主張平成29年2月14日)を国際出願日とする出願であって、令和5年3月9日にその特許権の設定登録がされ、令和5年3月17日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1~8に係る特許に対し、令和5年9月13日に特許異議申立人合同会社SAS(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~8に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
着用者の口及び鼻を覆うマスク本体部を備えたマスクであって、
前記マスク本体部は、
内側シートと、外側シートと、前記内側シートと前記外側シートとの間に位置し、エレクトレット化された不織布で形成されたフィルタシートと、を含み、
前記フィルタシートは、
1μm以上、5μm未満の繊維径を有する第1の繊維と、
5μm以上、15μm未満の繊維径を有する第2の繊維と、を含み、
前記フィルタシートにおける前記第1の繊維の本数の割合は、前記第2の繊維の本数の割合よりも多く、
前記フィルタシートにおける前記第1の繊維及び前記第2の繊維の本数の割合は、前記フィルタシートの99~100%であり、
前記フィルタシートの繊維密度は、0.066~0.070g/cm3であり、
前記フィルタシートの平均繊維径は、3.34~4.12μmであり、
前記平均繊維径は前記第1の繊維の繊維径の範囲内である、
マスク。
【請求項2】
着用者の口及び鼻を覆うマスク本体部を備えたマスクであって、
前記マスク本体部は、
内側シートと、外側シートと、前記内側シートと前記外側シートとの間に位置し、エレクトレット化された不織布で形成されたフィルタシートと、を含み、
前記フィルタシートは、
1μm以上、5μm未満の繊維径を有する第1の繊維と、
5μm以上、15μm未満の繊維径を有する第2の繊維と、を含み、
前記フィルタシートにおける前記第1の繊維の本数の割合は、前記第2の繊維の本数の割合よりも多く、
前記フィルタシートにおける前記第1の繊維及び前記第2の繊維の本数の割合は、前記フィルタシートの99~100%であり、
前記フィルタシートの繊維密度は、0.066~0.070g/cm3であり、
前記第1の繊維の繊維径分布は、繊維径が1μm以上かつ2μm未満の範囲で、前記第1の繊維の本数の第1のピークを有し、
前記第2の繊維の繊維径分布は、繊維径が6μm以上かつ7μm未満の範囲で前記第2の繊維の本数の第2のピークを有し、
前記フィルタシートにおける前記第1のピークの前記第1の繊維の本数は、前記第2のピークの前記第2の繊維の本数よりも多く、
前記第1のピークと前記第2のピークとの間に極小値を有する、
マスク。
【請求項3】
着用者の口及び鼻を覆うマスク本体部を備えたマスクであって、
前記マスク本体部は、
内側シートと、外側シートと、前記内側シートと前記外側シートとの間に位置し、エレクトレット化された不織布で形成されたフィルタシートと、を含み、
前記フィルタシートは、
1μm以上、5μm未満の繊維径を有する第1の繊維と、
5μm以上、15μm未満の繊維径を有する第2の繊維と、を含み、
前記フィルタシートにおける前記第1の繊維の本数の割合は、前記第2の繊維の本数の割合よりも多く、
前記フィルタシートにおける前記第1の繊維及び前記第2の繊維の本数の割合は、前記フィルタシートの99~100%であり、
前記フィルタシートの繊維密度は、0.066~0.070g/cm3であり、
第1の繊維と第2の繊維とは同一の材料で形成される、
マスク。
【請求項4】
着用者の口及び鼻を覆うマスク本体部を備えたマスクであって、
前記マスク本体部は、
内側シートと、外側シートと、前記内側シートと前記外側シートとの間に位置し、エレクトレット化された不織布で形成されたフィルタシートと、を含み、
前記フィルタシートは、
1μm以上、5μm未満の繊維径を有する第1の繊維と、
5μm以上、15μm未満の繊維径を有する第2の繊維と、を含み、
前記フィルタシートにおける前記第1の繊維の本数の割合は、前記第2の繊維の本数の割合よりも多く、
前記フィルタシートにおける前記第1の繊維及び前記第2の繊維の本数の割合は、前記フィルタシートの99~100%であり、
前記フィルタシートの繊維密度は、0.066~0.070g/cm3であり、
前記フィルタシートの坪量は、7.3~10.5g/m2であり、
前記フィルタシートの厚さは、0.110~0.150mmである、
マスク。
【請求項5】
前記フィルタシートにおける前記第1の繊維と前記第2の繊維との本数の比が、73:27~81:18である、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項6】
前記フィルタシートは、メルトブローン不織布で形成されている、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項7】
前記フィルタシートは、前記マスクの厚さ方向に二層以上積層されている、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項8】
前記フィルタシートは、単位坪量(g/m2)当たり、629.3C以上の電荷量を有する、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のマスク。」
第3 申立理由の概要
申立人は、証拠として、以下の甲第1号証及び甲第2号証(以下「甲1」等という。)を提出し、以下の理由1を申立てている。
1 申立理由1(進歩性)
本件発明1~8は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、本件発明1~8に係る特許は、特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
2 証拠方法
甲1:特表2009-545390号公報
甲2:特表2009-545682号公報
第4 各甲号証の記載
1 甲1に記載された事項、発明
甲1には、次の事項が記載されている(以下、下線は、理解の便宜のため、当審が付した。)。
「【請求項1】
少なくとも1本の境界線を介してマスクの残りの部分に接合された少なくとも1つの剛性の濾過パネルを備える折り畳み式の個人用マスクであって、前記パネルは、帯電し、混ざり合い、かつ連続した単一成分の同じポリマー組成のポリマー繊維を含む多孔質、単一成分、単一層の不織布ウェブを含み、前記不織布ウェブは、ウェブが200mgよりも大きいガーレー剛度を示し、かつ該マスクが0.19kPa(20mmH2O)よりも小さい圧力低下を示すだけの充分な坪量又は繊維間結合を有する、マスク。
【請求項2】
前記不織布ウェブが、混ざり合い、連続した単一成分のポリマー極細繊維と、より大きい径の繊維とのバイモーダル質量分率/繊維径混合物を含む、請求項1に記載のマスク。」
「【0001】
本発明は、着用者による空気中の汚染物質の吸入を防止する目的で着用される折り畳み式マスクに関する。」
「【0015】
「バイモーダル質量分率/繊維径混合物」とは、繊維径(μm)に対する質量分率を示したヒストグラムにおいて少なくとも2つのピークを示す繊維の集合を意味する。バイモーダル質量分率/繊維径混合物は、2つ以上のピークを有しうる。例えばこの混合物は、トリモーダル又はこれよりも多いピークを有する質量分率/繊維径混合物でありうる。
【0016】
「バイモーダル繊維数/繊維径混合物」とは、繊維径(μm)に対する繊維数(頻度)を示したヒストグラムにおいて、ピークに対応する各繊維径の差が、より小径の繊維の径の少なくとも50%であるような少なくとも2つのピークを示す繊維の集合を意味する。バイモーダル繊維数/繊維径混合物は、2つ以上のピークを有しうる。例えばこの混合物は、トリモーダル又はこれよりも多いピークを有する繊維数/繊維径混合物でありうる。」
「【0022】
「「折り畳み式マスク」とは、保管用に平らに折り畳むことができ、着用者による着用時には着用者の少なくとも鼻及び口を覆って1つ以上の空気中の汚染物質を除去する形状に展開することが可能な装置を意味する。」
「【0067】
バイモーダルな剛性濾過ウェブが用いられる場合、極細繊維は例えばその径の範囲が約0.1~約10μm、約0.1~約5μm、又は約0.1~約1μmであるとよい。より大径の繊維は例えばその径の範囲が約10~約70μm、約10~約50μm、又は約15~約50μmであるとよい。繊維径(μm)に対する質量分率のヒストグラムは例えば、極細繊維のピークが約0.1~約10μm、約0.5~約8μm又は約1~約5μmであり、かつ大径繊維のピークが10μmよりも大きく、約10~約50μm、約10~約40μm又は約12~約30μmであるとよい。開示されるバイモーダルウェブは、更に、繊維径(μm)に対する繊維数(頻度)を示したヒストグラムにおいて、ピークに対応する各繊維径の差が、より小径の繊維の径の少なくとも50%、少なくとも100%、又は少なくとも200%であるような少なくとも2個のピークを示すバイモーダル繊維数/繊維径混合物を有していてもよい。極細繊維は、例えばウェブの繊維表面積の少なくとも20%、少なくとも40%、又は少なくとも60%を与えてもよい。一部が結晶質であり一部が非晶質である配向したメルトスパン繊維からなるウェブが用いられる場合、繊維は例えば、光学顕微鏡で測定した径の範囲が、約5~約70μm、約10~約50μm、又は約10~約30μmであるとよい。一般に径が大きいメルトスパン繊維ほど完成したウェブは剛性が高くなる。」
「【0090】
(実施例3)
・・・TOTAL 3960ポリプロピレンから4つの単一成分、単一層のメルトブローウェブを形成した。ポリマーを長さ/直径比が20/1で圧縮比が3/1のDAVIS STANDARD製50.8mm(2インチ)一軸押出機(型番20)に供給した。オリフィスがドリルで穿孔された幅25.4cm(10インチ)のメルトブローダイの元々の0.3mm(0.012インチ)径のオリフィスを9個毎に0.6mm(0.025インチ)径にまでドリルで拡げて改造することによって、大径孔に対する小径孔の数の比を9:1とし、かつ小径孔の径に対する大径孔の径の比を60:40として、このダイに10cc/revのZENITHメルトポンプを用いてポリマー流を計量しながら供給した。・・・。押出機からのポリマーの流出速度を開始時の0.36kg/cm/時(2.0ポンド/インチ/時)から適宜変化させ、DCDを29.21cm(11.50インチ)~41.725cm(16.25インチ)にまで変化させ、空気圧を適宜調節して、下記表3Aに示されるような坪量及びEFDを有するウェブを作製した。アンガジバンド(Angadjivand)等による上記507号に教示される方法にしたがって、蒸留水を用いたハイドロチャージングによってウェブを帯電させてから乾燥した。・・・」
上記の記載事項を総合し、特に請求項2について着目すると、甲1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「少なくとも1本の境界線を介してマスクの残りの部分に接合された少なくとも1つの剛性の濾過パネルを備え、着用時には着用者の少なくとも鼻及び口を覆うことが可能な、折り畳み式の個人用マスクであって、
前記パネルは、帯電し、混ざり合い、かつ連続した単一成分の同じポリマー組成のポリマー繊維を含む多孔質、単一成分、単一層の不織布ウェブを含み、前記不織布ウェブは、ウェブが200mgよりも大きいガーレー剛度を示し、かつ該マスクが0.19kPa(20mmH2O)よりも小さい圧力低下を示すだけの充分な坪量又は繊維間結合を有する、マスクであって、
前記不織布ウェブが、混ざり合い、連続した単一成分のポリマー極細繊維と、より大きい径の繊維との以下のバイモーダル質量分率/繊維径混合物を含む、マスク。
・バイモーダル質量分率/繊維径混合物:繊維径(μm)に対する質量分率を示したヒストグラムにおいて少なくとも2つのピークを示す繊維の集合。」
2 甲2に記載された事項
「【請求項1】
同一ポリマー組成物からなる連続マイクロファイバーとより大きなサイズの繊維とが混ざり合う、メルトブローされた二峰性の繊維カウント/繊維サイズの混合物を含有する、多孔質モノコンポーネント不織布ウェブであって、その中には、より大きなサイズの繊維の少なくとも5倍多いマイクロファイバーが存在しており、並びに繊維の質量分率対繊維サイズのヒストグラムが、10μmを超える、より大きなサイズの繊維のモードを呈する、不織布ウェブ。」
「【請求項9】
前記マイクロファイバーは、約0.1~約10μmのサイズを有し、及び前記より大きなサイズの繊維が、約10~約70μmのサイズを有する、請求項1に記載の不織布ウェブ。」
「【0001】
本発明は、メルトブローされたウェブ及びメルトブローを行う設備に関する。」
「【0004】
成型されたレスピレーター又はひだを付けられたファーネス・フィルターのような形作られた濾過物品はときどき、マルチコンポーネント(例えば、バイコンポーネント)繊維から作成された不織布ウェブを使用して製造される。」
「【0007】
発明者らが今や見出したモノコンポーネント不織布ウェブは、単一の押出機及び単一のメルトブロー・ダイを使用して製造されてもよく、三次元形状に成型ないしは別の方法で形成されて、成型後の非常に良好な剛性と、その成型された又は形作られた状態で非常に良好な濾過能力とを有する、高性能の形作られた濾過物品を提供する。本発明は、一態様において、同一ポリマー組成物からなる連続マイクロファイバーとより大きなサイズの繊維とが混ざり合う、メルトブローされた二峰性の質量分率/繊維サイズの混合物を含有し、その中には、より大きなサイズの繊維の少なくとも5倍多いマイクロファイバーが存在しており、並びに繊維の質量分率対繊維サイズのヒストグラムが、10μmを超える、より大きなサイズの繊維のモードを呈する、多孔質モノコンポーネント不織布ウェブを提供する。」
「【0015】
用語「モノコンポーネント」は、繊維又は繊維の集合体に関して用いられるとき、それらの断面を横切って本質的に同一の組成物を有する繊維を意味しており;モノコンポーネントは、ブレンド(すなわちポリマーアロイ)又は添加物含有材料を包含し、均一組成の連続相が、断面を横切って及び繊維の長さにわたって延びる。」
「【実施例】
【0059】
(実施例1)
・・・4枚のモノコンポーネント単層メルトブローンウェブが、・・・トータル(TOTAL:商標)3960の350メルトフローレート・ポリプロピレンから形成された。・・・。押出機は、20/1の長さ/直径の比と、3/1の圧縮比とを有した。ゼニス(Zenith)の10cc/回転の溶融物ポンプが、ポリマーの流れを25.4cm(10in)幅のドリル加工されたオリフィスのメルトブロー・ダイに向けて計量したが、ダイの元の0.3mm(0.012in)オリフィスは、21番目のオリフィス毎に0.6mm(0.025in)への拡大ドリル加工により修正され、これによって、より小さい寸法対より大きい寸法の穴数比20:1と、より大きい穴寸法対より小さい穴寸法の比2:1とをもたらしたものであった。オリフィス線は、10穴/cm(25穴/in)の穴間隔を有した。加熱空気が、繊維をダイ先端で細径化した。その空気ナイフは、0.25mm(0.010in)の正のセットバック及び0.76mm(0.30in)の空気隙間を使用していた。ゼロから中程度の真空が、ウェブ形成点において、中位のメッシュのコレクタースクリーンを通して引かれた。押出機からのポリマーの出口速度が、0.18kg/cm/hr(1.0lbs/in/hr)~0.71kg/cm/hr(4.0lbs/in/hr)に変化され、DCD(ダイからコレクターまでの距離)が、30.5cm(12.0in)~63.5cm(25.0in)に変化され、空気圧が、下表1Aに示されるような坪量及びEFDを有するウェブを供するのに必要なように調節された。ウェブは、米国特許第5,496,507号(アンガジバンド(Angadjivand)ら、‘507)にて教示される技法により蒸留水でハイドロチャージされて、乾燥できるようにされた。下表1Aに記されているのは、13.8cm/secの面速度における、それぞれのウェブに対する試験番号、坪量、EFD、ウェブ厚さ、初期圧力低下、初期NaCl透過、及び品質係数QFである。
【0060】
【表1】
[図:0001406732000001.jpg]
表1A」
「【0064】
(実施例2)
実施例1の一般方法を用いて、100%トータル(TOTAL)3960ポリプロピレンから、ウェブが作成され、次に、1)コロナチャージ、又は2)コロナチャージ及び蒸留水でハイドロチャージされた。・・・」
「【0084】
(実施例6)
実施例2の方法を用いて、エクソン・モービル社(Exxon Mobil Corporation)から入手可能なエクソン(EXXON:商標)PP3746Gの1475メルトフローレート・ポリプロピレンから、ウェブが作成され、次に、1)コロナチャージ、又は2)コロナチャージ及び蒸留水でハイドロチャージされた。・・・」
「【0088】
・・・図9及び図10は、実施例6の試験番号6-8Fの平ウェブ及び試験番号6-8Mの成型マトリックスについての、繊維カウント(頻度)対繊維サイズのヒストグラムである。」
「【図9】
[図:0001406732000002.jpg]
」
「【0102】
(実施例10)
米国特許第6,319,865 B1号(ミカミ(Mikami))の比較例3の方法を用い、25.4cm(10in)幅のドリル加工されたオリフィスのダイをその先端により大きい及びより小さい寸法のオリフィスの列が設けられるように修正してから使用して、ウェブが調製された。より大きいオリフィスは0.6mmの直径(Da)を有し、より小さいオリフィスは0.4mmの直径(Db)を有して、オリフィス直径の比R(Da/Db)が1.5であり、対のより大きいオリフィスのそれぞれの間に5つのより小さいオリフィスが有り、及びオリフィスの間隔は、11.8オリフィス/cm(30オリフィス/in)であった。50mm直径のスクリューと10cc溶融物ポンプとを有する一軸スクリュー押出器を使用して、100%トータル(TOTAL)3868ポリプロピレンをダイに供給した。・・・」
「【0109】
図13は、200gsmウェブについての、質量分率対繊維サイズ(μm)のヒストグラムである。ウェブは、4、10、17、及び22μmにモードを呈した。局所的な、モードではないピークも、8及び13μmに現れていた。図13に示すように、ウェブは、10μmを超える、より大きいサイズの繊維のモードを有した。図14は、同じ200gsmウェブについての、繊維カウント(頻度)対繊維サイズ(μm)のヒストグラムである。」
「【図14】
[図:0001406732000003.jpg]
」
第5 当審の判断
1 本件発明3について
事案に鑑み本件発明3から判断する。
(1)対比
本件発明3と引用発明とをその機能、構造又は技術的意義を考慮し対比する。
引用発明の「連続した単一成分のポリマー極細繊維と、より大きい径の繊維」と、本件発明3の「1μm以上、5μm未満の繊維径を有する第1の繊維と、5μm以上、15μm未満の繊維径を有する第2の繊維」は、「小さい繊維径を有する第1の繊維と、大きい繊維径を有する第2の繊維」である限りにおいて一致する。
引用発明の「帯電し、混ざり合い、かつ連続した単一成分の同じポリマー組成のポリマー繊維を含む多孔質、単一成分、単一層の不織布ウェブを含」む「剛性の濾過パネル」は、本件発明3の「エレクトレット化された不織布で形成されたフィルタシート」に相当する。
引用発明の「帯電し、混ざり合い、かつ連続した単一成分の同じポリマー組成のポリマー繊維を含む多孔質、単一成分、単一層の不織布ウェブを含」む「剛性の濾過パネルを備え、着用時には着用者の少なくとも鼻及び口を覆うことが可能な、折り畳み式の個人用マスク」と、本件発明3の「着用者の口及び鼻を覆うマスク本体部を備えたマスクであって、前記マスク本体部は、内側シートと、外側シートと、前記内側シートと前記外側シートとの間に位置し、エレクトレット化された不織布で形成されたフィルタシートと、を含」むものは、「着用者の口及び鼻を覆う本体を備えたマスクであって、前記本体は、エレクトレット化された不織布で形成されたフィルタシートを含」むものである限りにおいて一致する。
引用発明の「前記パネルは、帯電し、混ざり合い、かつ連続した単一成分の同じポリマー組成のポリマー繊維を含む多孔質、単一成分、単一層の不織布ウェブを含」むことは、本件発明3の「第1の繊維と第2の繊維とは同一の材料で形成される」ことに相当する。
以上から、本件発明3と引用発明は、以下の点で一致し、相違する。
[一致点1]
「着用者の口及び鼻を覆う本体を備えたマスクであって、
前記本体は、
エレクトレット化された不織布で形成されたフィルタシートと、を含み、
前記フィルタシートは、
小さい繊維径を有する第1の繊維と、
大きい繊維径を有する第2の繊維と、を含み、
第1の繊維と第2の繊維とは同一の材料で形成される、
マスク。」
[相違点1]
着用者の口及び鼻を覆う本体を備えたマスクであって、前記本体は、エレクトレット化された不織布で形成されたフィルタシートを含むものであることについて、本件発明3では、「着用者の口及び鼻を覆うマスク本体部を備えたマスクであって、前記マスク本体部は、内側シートと、外側シートと、前記内側シートと前記外側シートとの間に位置し、エレクトレット化された不織布で形成されたフィルタシートと、を含」むものであるのに対し、引用発明では、「帯電し、混ざり合い、かつ連続した単一成分の同じポリマー組成のポリマー繊維を含む多孔質、単一成分、単一層の不織布ウェブを含」む「剛性の濾過パネルを備え、着用時には着用者の少なくとも鼻及び口を覆うことが可能な、折り畳み式の個人用マスク」である点。
[相違点2]
「小さい繊維径を有する第1の繊維と、大きい繊維径を有する第2の繊維」について、本件発明3では、「1μm以上、5μm未満の繊維径を有する第1の繊維と、5μm以上、15μm未満の繊維径を有する第2の繊維」であり、「前記フィルタシートにおける前記第1の繊維の本数の割合は、前記第2の繊維の本数の割合よりも多く、
前記フィルタシートにおける前記第1の繊維及び前記第2の繊維の本数の割合は、前記フィルタシートの99~100%であり、
前記フィルタシートの繊維密度は、0.066~0.070g/cm3であ」るのに対し、引用発明では、「連続した単一成分のポリマー極細繊維と、より大きい径の繊維」である点。
(2)判断
ア 事案に鑑み相違点2について検討する。
イ 引用発明の「極細繊維」と「より大きい径の繊維」の各繊維径について、甲1には「バイモーダルな剛性濾過ウェブが用いられる場合、極細繊維は例えばその径の範囲が約0.1~約10μm、約0.1~約5μm、又は約0.1~約1μmであるとよい。より大径の繊維は例えばその径の範囲が約10~約70μm、約10~約50μm、又は約15~約50μmであるとよい。」(「0067」)と記載されているが、極細繊維として「1μm以上、5μm未満」及びより大径の繊維として「5μm以上、15μm未満」の組み合わせを採用することの記載はないし、そのうえ当該大小の繊維径の関係を前提にしつつ、大小の本数の割合、大小の繊維の全体に対する割合を99~100%とすること、さらには繊維密度を0.066~0.070g/cm3とすることについての記載や示唆がないことも明らかである。
そうすると、引用発明において、相違点2に係る本件発明3の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、本件発明3の「前記フィルタシートにおける前記第1の繊維及び前記第2の繊維の本数の割合は、前記フィルタシートの99~100%であり」について、甲2のウェブ試料6-8F(図9)は1~5μmの繊維径を有する第1の繊維と5~15μmの繊維径を有する第2の繊維の本数の割合は、少なくとも剛性濾過ウェブの95%程度であるように見えるから、同様の方法で製造された甲1の実施例3の剛性濾過ウェブにおいても同程度である蓋然性が高い。また、繊維径の精度を向上させることは設計的事項であるから、甲2の実施例10で製造された濾過ウェブのヒストグラム(図14)から見て取れるように前記割合を99%以上とすることは、設計的事項である(申立書72ページ14行~73ページ3行)と主張する。
しかしながら、甲1の実施例3と、甲2の実施例6(図9)及び甲2の実施例10(図14)は、不織布の製造条件(オリフィスの穴径比、穴数比、押出機からのポリマーの出口速度等)が異なっているから、甲1の実施例3の不織布ウェブの第1の繊維と第2の繊維の本数の割合が、甲2の図9及び図14と同様になるのかは不明である。
さらに、甲1は折り畳みマスクに関するものであり、甲2は成形されたレスピレーター又はひだを付けられたファーネス・フィルターのような形作られた濾過物品に関するものであり両者は技術分野が異なり、且つ上述したように不織布ウェブの製造条件も異なるものであるから、甲1に記載された引用発明に甲2に記載された事項を適用する動機付けはない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
(3)小括
以上から、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明3は、甲1発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 本件発明1について
(1)対比、判断
本件発明1と引用発明とを対比すると、両者は少なくとも上記1(1)で示した相違点1及び2において相違する。
そうすると、相違点2についての判断は、上記1(2)で示したとおりである。
(2)小括
上記のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 本件発明2について
(1)対比、判断
本件発明2と引用発明とを対比すると、両者は少なくとも上記1(1)で示した相違点1及び2において相違する。
そうすると、相違点2についての判断は、上記1(2)で示したとおりである。
(2)小括
上記のとおりであるから、本件発明2は、甲1発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
4 本件発明4について
(1)対比、判断
本件発明4と引用発明とを対比すると、両者は少なくとも上記1(1)で示した相違点1及び2において相違する。
そうすると、相違点2についての判断は、上記1(2)で示したとおりである。
(2)小括
上記のとおりであるから、本件発明4は、甲1発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
5 本件発明5~8について
本件発明5~8は、本件発明1、2、3又は4の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記1~4で検討したのと同じ理由により、本件発明5~8は、甲1発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、特許異議の申立の理由及び証拠によっては、請求項1~8に係る特許を取り消すことができない。
また、他に請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700961