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特許異議申立

2026-700466

フローティングベスト

審判番号
2026-700466
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-093957
登録番号
7776386
請求日
2026年05月25日
審決日
2026年07月31日
公報発行日
2026年08月28日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社シマノ
  • 【権利者代理人】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
  • 【異議申立人】中山 育子
審判長/審判官
  • 審判長 高野 洋
  • 審判官 玉木 宏治
  • 審判官 寺谷 大亮
分類
P1651.121-Y (A41D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

結論

結 論 特許第7776386号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7776386号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、令和4年6月9日の出願であって、令和7年11月17日にその特許権の設定登録がされ、同年11月26日に特許掲載公報が発行された。 その後、その全請求項(請求項1~4)に係る特許に対し、特許異議申立人 中山 育子(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。 特許異議の申立てからの手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 令和 8年 5月25日 特許異議申立書 6月16日 代理人受任届 6月23日付け 手続補正指令書(方式)(申立人宛て) 7月14日 手続補正書(方式)(申立人) 手続補正書(方式)(申立人) 以下では、令和8年7月14日の手続補正書(方式)により補正された特許異議申立書を「申立書」という。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明4」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、その請求項に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。 以下に本件特許の特許請求の範囲の請求項1~4を示す。なお、後の参照の便宜のために、本件発明1については、以下に示すように、記号A~Fを付して分説し、「発明特定事項A」のようにして参照する。 【請求項1】 A 後身頃と、前身頃と、前記前身頃および前記後身頃を連結する連結部と、を有するベスト本体と、 B 前記後身頃及び前記前身頃の間隔を調節する調節機構と、 C を備え、 D 前記調節機構は、少なくとも一部が前記連結部に内包される紐体と、前記連結部内を通過する前記紐体の部分の長さを調節操作する操作部と、を有し、 E 前記連結部は、前記紐体が通過する部分を避けて設けられる貫通孔、を有する、 F フローティングベスト。 【請求項2】 前記操作部は、前記紐体を巻き取ることで、前記連結部内を通過する前記紐体の部分の長さを調節操作する、 請求項1に記載のフローティングベスト。 【請求項3】 前記操作部は、前記連結部外への前記紐体の排出、または、前記連結部内への前記紐体の侵入を許可することによって、前記連結部内を通過する前記紐体の部分の長さを調節操作する、 請求項1に記載のフローティングベスト。 【請求項4】 前記操作部は、前記前身頃または前記連結部の前身頃側に、配置される、 請求項1から3のいずれか1項に記載のフローティングベスト。 第3 証拠方法及び申立理由 申立人が提出した証拠方法を以下の1に示す。 申立人が主張する申立理由を以下の2に示す。 1 証拠方法 申立人は、申立書に添付して甲第1号証~甲第9号証の2を提出した(以下では、甲第1号証を「甲1」のように略す。他の甲号証についても同様。)。 甲第6号証の1及び2は、令和8年7月14日の手続補正書(方式)によって補正された。 甲1 特許第6674819号公報 甲2 特許第6674820号公報 甲3 特許第5931532号公報 甲4 特許第5649669号公報 甲5の1 「‘97ダイワ釣用品総合カタログ」の表紙、平成9年1月31日 甲5の2 「‘97ダイワ釣用品総合カタログ」の裏表紙、平成9年1月31日 甲5の3 「TDプリント・フローティングベスト TF-3102」、‘97ダイワ釣用品総合カタログ、第158頁、平成9年1月31日 甲6の1 TDプリント・フローティングベスト TF-3102を撮影対象とする写真、撮影日:2025年12月24日、(備考)右前身頃を開いた状態で、製品情報表示タグを含めた全体を上方から撮影した写真 甲6の2 TDプリント・フローティングベスト TF-3102を撮影対象とする、撮影日:2025年12月24日、(備考)甲6の1の製品情報表示タグとベンチレーションホール部分を拡大した写真 甲6の3 TDプリント・フローティングベスト TF-3102を撮影対象とする写真、撮影日:2026年5月11日、(備考)甲6の1及び甲6の2のフローティングベストの後身頃内側に付された製品情報表示タグの写真 甲7の1 中国実用新案第215663934号明細書 甲7の2 甲7の1の翻訳文 甲8 特開2002-58405号公報 甲9の1 韓国意匠登録第30-0762447号公報 甲9の2 甲9の1の翻訳文 2 申立理由 申立理由の概要は、以下のとおりである。 (1)申立理由1 本件発明は、当業者が甲1に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号) (2)申立理由2 本件発明は、当業者が甲2に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号) (3)申立理由3 本件発明は、当業者が甲3に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号) (4)申立理由4 本件発明は、当業者が甲4に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号) 第4 当審の判断 1 申立理由1について (1)甲1の記載 甲1には、以下の記載がある。 ア「【0011】 以下、本発明に係るウエアサイズ調整機構の実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。 図1は、本発明のウエアサイズ調整機構が設けられる衣服の一例としてのフローティングベストを示す。図示のように、フローティングベスト1を構成する本体1Aは、例えば、ナイロン、ポリエステル等の素材によって縫製されており、左右の前身頃2A,2Bと後身頃3を備え、これらは、左右のショルダー部5a,5b及び左右のウエスト部(連結部)6a,6bを介して一体化されている。そして、左右のショルダー部5a,5bと左右のウエスト部6a,6bとの間は、装着者の腕を通す開口7a,7bが形成されるとともに、左右の前身頃2A,2Bの前面側中央には、両前身頃を連結するファスナ8が縫着されている。また、各前身頃2A,2Bの表面には、ファスナ等によって開閉される複数のポケット9が縫着されている。そして、上記したように構成される本体1A内には、適所に浮力材(図示せず)が組み込まれている。 【0012】 また、図2に拡大して示されるように、前身頃2A,2Bと後身頃3とを連結するウエスト部(連結部)6a,6b又はその周辺には、前身頃2A,2Bと後身頃3との間隔を調整可能な本発明の第1の実施形態に係るウエアサイズ調整機構10が配設されている。なお、以下では、左前身頃2Aと後身頃3とを左脇下で連結する左ウエスト部6aに配設されるウエアサイズ調整機構10について説明するが、右ウエスト部6bに配設されるウエアサイズ調整機構10も同一構成を成す。この部分に配設されるウエアサイズ調整機構10を操作することで前身頃2Aと後身頃3との間隔調整が行なえるようになっている。なお、以下の説明では、左前身頃を、単に前身頃2Aと称し、左ウエスト部を、単に連結部6aと称する。 【0013】 以下、ウエアサイズ調整機構10の構成について説明する。 図3に示されるように、ウエアサイズ調整機構10は、衣服素材としての例えば連結部6aに止着(縫着)される巻き取り器12と、巻き取り器12に巻き取られる例えば金属ワイヤにより形成される長尺部材14と、巻き取り器12の一方側(後身頃3側)で巻き取り器12から所定の距離を隔てて衣服素材としての後身頃3(場合により連結部6aであってもよい)に止着(縫着)される第1の保持部16と、巻き取り器12の他方側(前身頃2A側)で巻き取り器12から所定の距離を隔てて衣服素材としての前身頃2A(場合により連結部6aであってもよい)に止着(縫着)される第2の保持部18とを備える。」 イ「【0019】 また、このような長尺部材14を巻き取る巻き取り器12は、第1の掛け回し領域24に位置する長尺部材14と第2の掛け回し領域26に位置する長尺部材14とを同時に巻き取るようになっている。具体的に、本実施形態において、巻き取り器12は、その操作部を操作することにより、1本のループ状に延びる長尺部材14の両端側を同時に巻き取ることができる巻き取りロック位置と、ロック状態を解除して長尺部材14の両端側を同時に繰り出すことができる解放位置との間で切り換え操作することができる。」 (2)甲1発明 前記(1)の記載事項によれば、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。なお、後の参照の便宜のため、甲1発明を以下のように分説し、「構成1a」のようにして参照する。 <甲1発明> 1a フローティングベスト1であって、(【0011】) 1b フローティングベスト1を構成する本体1Aは、左右の前身頃2A,2Bと後身頃3を備え、これらは、左右のウエスト部(連結部)6a,6bを介して一体化されており、(【0011】) 1c 前身頃2A,2Bと後身頃3とを連結するウエスト部(連結部)6a,6bには、前身頃2A,2Bと後身頃3との間隔を調整可能なウエアサイズ調整機構10が配設されており、(【0012】) 1d ウエアサイズ調整機構10は、連結部6aに止着(縫着)される巻き取り器12と、巻き取り器12に巻き取られる長尺部材14と、後身頃3(場合により連結部6aであってもよい)に止着(縫着)される第1の保持部16と、前身頃2A(場合により連結部6aであってもよい)に止着(縫着)される第2の保持部18とを備え、(【0013】) 1e 長尺部材14を巻き取る巻き取り器12は、その操作部を操作することにより、1本のループ状に延びる長尺部材14の両端側を同時に巻き取ること及び同時に繰り出すことができる、(【0019】) 1f フローティングベスト1。(【0011】) (3)周知技術 以下の甲5の3、甲6の1及び甲6の2、並びに、甲9の1に示されるように、フローティングベストや救命胴衣の脇(側面)に通気孔(貫通孔)を設けることは、本件特許の出願前における周知技術である。 ア 甲5の3、甲6の1及び甲6の2の記載 (ア)甲5の3の記載 [図:0001438325000001.jpg] (「脇」に「ベンチレーションホール」を設けることが記載。) (イ)甲6の1の記載 [図:0001438325000002.jpg] (枠囲いは当審で付与した。当該枠囲いの箇所に通気孔が看取される。) (ウ)甲6の2の記載 [図:0001438325000003.jpg] (枠囲いは当審で付与した。当該枠囲いの箇所に通気孔が看取される。) イ 甲9の1の記載 (ア)斜視図 [図:0001438325000004.jpg] (イ)左側面図 [図:0001438325000005.jpg] (ウ)右側面図 [図:0001438325000006.jpg] (前記(ア)~(ウ)によれば、救命胴衣の脇(側面)の下部に通気孔が看取される。) (4)本件発明1と甲1発明との対比 ア 発明特定事項A、Cについて 発明特定事項Aは「後身頃と、前身頃と、前記前身頃および前記後身頃を連結する連結部と、を有するベスト本体と、」というものであり、発明特定事項Cは「を備え、」というものである。 (ア)甲1発明の「本体1A」(構成1b)、「左右の前身頃2A,2B」(構成1b)、「後身頃3」(構成1b)はそれぞれ、本件発明1の「ベスト本体」、「前身頃」、「後身頃」に相当する。 (イ)甲1発明において、「左右のウエスト部(連結部)6a,6b」は、「左右の前身頃2A,2B」と「後身頃3」を「一体化」(構成1b)させるから、甲1発明の「左右のウエスト部(連結部)6a,6b」は、「左右の前身頃2A,2B」と「後身頃3」を連結するものといえる。 したがって、甲1発明の「左右の前身頃2A,2B」と「後身頃3」を「一体化」させる「左右のウエスト部(連結部)6a,6b」は、本件発明1の「前記前身頃および前記後身頃を連結する連結部」に相当する。 (ウ)前記(ア)及び(イ)によれば、本件発明1と甲1発明とは「後身頃と、前身頃と、前記前身頃および前記後身頃を連結する連結部と、を有するベスト本体と、」「を備え」る点で一致する。 イ 発明特定事項B、Cについて 発明特定事項Bは「前記後身頃及び前記前身頃の間隔を調節する調節機構と、」というものであり、発明特定事項Cは「を備え、」というものである。 甲1発明の「前身頃2A,2Bと後身頃3との間隔を調整可能なウエアサイズ調整機構10」(構成1c)は、本件発明1の「前記後身頃及び前記前身頃の間隔を調節する調節機構」に相当する。 したがって、本件発明1と甲1発明とは「前記後身頃及び前記前身頃の間隔を調節する調節機構と、」「を備え」る点で一致する。 ウ 発明特定事項Dについて 発明特定事項Dは「前記調節機構は、少なくとも一部が前記連結部に内包される紐体と、前記連結部内を通過する前記紐体の部分の長さを調節操作する操作部と、を有し、」というものである。 (ア)甲1発明の「長尺部材14」(構成1d)は、本件発明1の「紐体」と、「長さが調節操作される部材」という点で一致する。 しかしながら、本件発明1と甲1発明とは、本件発明1は、「長さが調節操作される部材」が「紐体」であるのに対し、甲1発明の「長尺部材14」はそのように特定されていない点で相違する。 また、本件発明1と甲1発明とは、本件発明1の「紐体」は「少なくとも一部が前記連結部に内包される」のに対し、甲1発明の「長尺部材」はそのような特定がされていない点で相違する。 (イ)甲1発明の「長尺部材14を巻き取る巻き取り器12」(構成1e)は、「その操作部を操作することにより、1本のループ状に延びる長尺部材14の両端側を同時に巻き取ること及び同時に繰り出すことができる」(構成1e)、すなわち、長尺部材14の長さを調節操作できるものであるから、本件発明1の「操作部」と、「長さが調節操作される部材の長さを調節操作する」点で一致する。 しかしながら、本件発明1と甲1発明とは、本件発明1の「操作部」が「前記連結部内を通過する前記紐体の部分の長さを調節操作する」のに対し、甲1発明の「巻き取り器12」は、単に「長尺部材14の長さを調節操作する」ものである点で相違する。 (ウ)甲1発明の「ウエアサイズ調整機構10」は、前記(ア)の「長尺部材14」と前記(イ)の「巻き取り器12」を有するものである(構成1d)。 (エ)前記(ア)~(ウ)によれば、本件発明1と甲1発明とは「前記調節機構は、長さが調節操作される部材と、前記長さが調節操作される部材の長さを調節操作する操作部と、を有」する点で一致する。 しかしながら、本件発明1と甲1発明とは、本件発明1では、「長さが調節される部材」が「紐体」であり、当該「紐体」の「少なくとも一部が前記連結部に内包される」のに対し、甲1発明の「長尺部材」はそのような特定がされていない点で相違する。 また、本件発明1の「操作部」は「前記連結部内を通過する前記紐体の部分の長さを調節操作する」のに対し、甲1発明の「巻き取り器12」は、単に「長尺部材14の長さを調節操作する」ものである点で相違する。 エ 発明特定事項Eについて 発明特定事項Eは「前記連結部は、前記紐体が通過する部分を避けて設けられる貫通孔、を有する、」というものである。 本件発明1と甲1発明とは、本件発明1の「連結部」が「前記紐体が通過する部分を避けて設けられる貫通孔、を有する」ものであるのに対し、甲1発明は、「左右のウエスト部(連結部)6a,6b」が「貫通孔」を有しておらず、ひいては「前記紐体が通過する部分を避けて設けられる貫通孔」を有していない点で相違する。 オ 発明特定事項Fについて 発明特定事項Fは「フローティングベスト。」というものである。 甲1発明の「フローティングベスト1」(構成1f)は、本件発明1の「フローティングベスト」に相当する。 したがって、本件発明1と甲1発明とは「フローティングベスト」である点で一致する。 カ 一致点及び相違点 前記ア~オによれば、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「後身頃と、前身頃と、前記前身頃および前記後身頃を連結する連結部と、を有するベスト本体と、 前記後身頃及び前記前身頃の間隔を調節する調節機構と、 を備え、 前記調節機構は、長さが調節操作される部材と、前記長さが調節操作される部材の長さを調節操作する操作部と、を有する、 フローティングベスト。」 <相違点1-1> 本件発明1では、「長さが調節される部材」が「紐体」であり、当該「紐体」の「少なくとも一部が前記連結部に内包される」のに対し、甲1発明の「長尺部材」はそのような特定がされていない点 <相違点1-2> 本件発明1の「操作部」は「前記連結部内を通過する前記紐体の部分の長さを調節操作する」のに対し、甲1発明の「巻き取り器12」は、単に「長尺部材14の長さを調節操作する」ものである点 <相違点1-3> 本件発明1の「連結部」は、「前記紐体が通過する部分を避けて設けられる貫通孔、を有する」のに対し、甲1発明は、そのような構成を有しない点 (5)本件発明1と甲1発明との相違点についての判断 相違点1-1及び1-3についてまとめて検討する。 甲1発明は、「長さが調節される部材」が「紐体」であるとの特定はなく、また、「長さが調節される部材」の少なくとも一部が連結部に内包されるものでもない。 また、前記(3)に記載した周知技術を示す各証拠のいずれにも、紐体が内包される連結部に貫通孔を設けることは示されておらず、ひいては、連結部に内包される「長さを調節する部材が通過する部分を避け」るように貫通孔を設けることも示されていない。 したがって、甲1発明に、前記(3)の周知技術を適用したとしても、「長さが調節される部材」を「紐体」として構成し、さらに、その少なくとも一部が「連結部」に内包されるように構成し、そのうえで、「連結部」に、「紐体として構成した「長さが調節される部材」が通過する部分を避け」るように貫通孔を設けるように構成することを、当業者が容易に想到するものではない。 (6)本件発明1についての小括 前記(5)のとおりであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (7)本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、さらに別の発明特定事項を有するものであるから、本件発明2~4と甲1発明とを対比すると、少なくとも相違点1-3について相違する。 そうすると、本件発明1と同様に、本件発明2~4は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (8)申立理由1についての小括 前記(1)~(7)によれば、本件発明は、いずれも、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立理由1には、理由がない。 2 申立理由2について (1)甲2の記載 甲2には、以下の記載がある。 ア「【0014】 以下、本発明に係るウエアサイズ調整機構の実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。 図1は、本発明のウエアサイズ調整機構が設けられる衣服の一例としてのフローティングベストを示す。図示のように、フローティングベスト1を構成する本体1Aは、例えば、ナイロン、ポリエステル等の素材によって縫製されており、左右の前身頃2A,2Bと後身頃3を備え、これらは、左右のショルダー部5a,5b及び左右のウエスト部(連結部)6a,6bを介して一体化されている。そして、左右のショルダー部5a,5bと左右のウエスト部6a,6bとの間は、装着者の腕を通す開口7a,7bが形成されるとともに、左右の前身頃2A,2Bの前面側中央には、両前身頃を連結するファスナ8が縫着されている。また、各前身頃2A,2Bの表面には、ファスナ等によって開閉される複数のポケット9が縫着されている。そして、上記したように構成される本体1A内には、適所に浮力材(図示せず)が組み込まれている。 【0015】 また、図2に拡大して示されるように、前身頃2A,2Bと後身頃3とを連結するウエスト部(連結部)6a,6b又はその周辺には、前身頃2A,2Bと後身頃3との間隔を調整可能な本発明の第1の実施形態に係るウエアサイズ調整機構10が配設されている。なお、以下では、左前身頃2Aと後身頃3とを左脇下で連結する左ウエスト部6aに配設されるウエアサイズ調整機構10について説明するが、右ウエスト部6bに配設されるウエアサイズ調整機構10も同一構成を成す。この部分に配設されるウエアサイズ調整機構10を操作することで前身頃2Aと後身頃3との間隔調整が行なえるようになっている。なお、以下の説明では、左前身頃を、単に前身頃2Aと称し、左ウエスト部を、単に連結部6aと称する。 【0016】 以下、ウエアサイズ調整機構10の構成について説明する。 図3に示されるように、ウエアサイズ調整機構10は、衣服素材としての例えば連結部6aに止着(縫着)される巻き取り器12と、巻き取り器12に巻き取られる例えば金属ワイヤにより形成される長尺部材14と、巻き取り器12の一方側(後身頃3側)で巻き取り器12から所定の距離を隔てて衣服素材としての後身頃3(場合により連結部6aであってもよい)に止着(縫着)される第1の保持部16と、巻き取り器12の他方側(前身頃2A側)で巻き取り器12から所定の距離を隔てて衣服素材としての前身頃2A(場合により連結部6aであってもよい)に止着(縫着)される第2の保持部18とを備える。」 イ「【0022】 また、このような長尺部材14を巻き取る巻き取り器12は、第1の掛け回し領域24に位置する長尺部材14と第2の掛け回し領域26に位置する長尺部材14とを同時に巻き取るようになっている。具体的に、本実施形態において、巻き取り器12は、その操作部を操作することにより、1本のループ状に延びる長尺部材14の両端側を同時に巻き取ることができる巻き取りロック位置と、ロック状態を解除して長尺部材14の両端側を同時に繰り出すことができる解放位置との間で切り換え操作することができる。」 (2)甲2発明 前記(1)の記載事項によれば、甲2には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。 <甲2発明> フローティングベスト1であって、(【0014】) フローティングベスト1を構成する本体1Aは、左右の前身頃2A,2Bと後身頃3を備え、これらは、左右のウエスト部(連結部)6a,6bを介して一体化されており、(【0014】) 前身頃2A,2Bと後身頃3とを連結するウエスト部(連結部)6a,6bには、前身頃2A,2Bと後身頃3との間隔を調整可能なウエアサイズ調整機構10が配設されており、(【0015】) ウエアサイズ調整機構10は、連結部6aに止着(縫着)される巻き取り器12と、巻き取り器12に巻き取られる長尺部材14と、後身頃3(場合により連結部6aであってもよい)に止着(縫着)される第1の保持部16と、前身頃2A(場合により連結部6aであってもよい)に止着(縫着)される第2の保持部18とを備え、(【0016】) 長尺部材14を巻き取る巻き取り器12は、その操作部を操作することにより、1本のループ状に延びる長尺部材14の両端側を同時に巻き取ること及び同時に繰り出すことができる(【0022】) フローティングベスト1。 (3)本件発明と甲2発明との対比及び相違点についての判断 甲2発明は、甲1発明と同様の構成を有するものであるから、本件発明と甲2発明との対比及び相違点についての判断も甲1発明と同様であり、前記1(4)~1(7)に記載したとおりである。 したがって、本件発明は、いずれも、甲2発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立理由2には、理由がない。 3 申立理由3について (1)甲3の記載 甲3には、以下の記載がある。なお、下線は、強調のために当審において付与した。(以下、同様。) 「【0012】 本実施形態のフローティングベスト1を構成する本体1Aは、例えば、ナイロン、ポリエステル等の素材によって縫製されており、左右の前身頃2A,2Bと後身頃3を備え、これらは、左右のショルダー部5a,5b、及び左右のウエスト部(連結部)6a,6bを介して一体化されている。そして、前記左右のショルダー部5a,5bと、左右のウエスト部6a,6bとの間は、装着者の腕を通す開口7a,7bが形成されるとともに、左右の前身頃2A,2Bの前面側中央には、両前身頃を連結するファスナ8が縫着されている。また、各前身頃2A,2Bの表面には、ファスナ等によって開閉される複数のポケット9が縫着されている。そして、上記したように構成される本体1A内には、適所に浮力材(図示せず)が組み込まれている。 【0013】 前記前身頃と後身頃を連結するウエスト部(連結部)には、前身頃と後身頃の間隔を調整可能な調整部材10が配設されている。この場合、本実施形態の調整部材は、左前身頃2Aと後身頃3を左脇下で連結する左ウエスト部6aに配設されており、この部分に配設される調整部材を操作することで前身頃と後身頃の間隔調整が行えるようになっている。なお、以下の説明では、左前身頃を、単に前身頃2Aと称し、左ウエスト部を、単に連結部6aと称する。 【0014】 以下、調整部材の構成について説明する。 調整部材10は、前身頃側及び後身頃側に止着され、それぞれ上下方向に所定間隔をおいて対向するように配設される複数のフック部材12,13と、前身頃側のフック部材12と後身頃側のフック部材13に交差して掛けられる調整紐15と、両フック部材の上方側(引き上げ操作側)に配置され、各フック部材に掛けられる調整紐15の締め付け状態を調整可能な緊締部材18と、を有している。 【0015】 前記各フック部材12,13は全て同一に構成されており、本実施形態では、それぞれ調整紐15が巻回されて回転可能なローラ20aを保持する保持体20と、この保持体20を、前身頃及び後身頃を構成する部材に止着(縫着)する舌片21とを備えている。また、本実施形態では、図3に示すように、前身頃2A側に上下方向に所定の間隔を有して2個のフック部材12が配設され、後身頃3側に上下方向に所定の間隔を有して2個のフック部材13が配設され、これらは、対向するようにして、前記舌片21が、それぞれ前身頃の所定位置、及び後身頃の所定位置に縫着されることで固定されている。なお、図3では、複数のフック部材12,13及びこれに掛けられる調整紐15が示されているが、これらは、布部材を重ねて縫着した連結部6a内に配設されており、外部から視認できないようになっている。」 (2)甲3発明 前記(1)の記載事項によれば、甲3には、以下の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されている。なお、後の参照の便宜のため、甲3発明を以下のように分説し、「構成3a」のようにして参照する。 <甲3発明> 3a フローティングベスト1であって、(【0012】) 3b フローティングベスト1を構成する本体1Aは、左右の前身頃2A,2Bと後身頃3を備え、これらは、左右のウエスト部(連結部)6a,6bを介して一体化されており、(【0012】) 3c 前記前身頃と後身頃を連結するウエスト部(連結部)には、前身頃と後身頃の間隔を調整可能な調整部材10が配設されており、(【0013】) 3d 調整部材10は、前身頃側のフック部材12と後身頃側のフック部材13に交差して掛けられる調整紐15と、各フック部材に掛けられる調整紐15の締め付け状態を調整可能な緊締部材18と、を有しており、(【0014】) 3e 複数のフック部材12,13及びこれに掛けられる調整紐15は、布部材を重ねて縫着した連結部6a内に配設されており、外部から視認できないようになっている、(【0015】) 3f フローティングベスト1。(【0012】) (3)本件発明1と甲3発明との対比 本件発明1と甲3発明とを対比する。 ア 発明特定事項A、Cについて 発明特定事項Aは「後身頃と、前身頃と、前記前身頃および前記後身頃を連結する連結部と、を有するベスト本体と、」というものであり、発明特定事項Cは「を備え、」というものである。 (ア)甲3発明の「本体1A」(構成3b)、「左右の前身頃2A,2B」(構成3b)、「後身頃3」(構成3b)はそれぞれ、本件発明1の「ベスト本体」、「前身頃」、「後身頃」に相当する。 (イ)甲3発明において、「左右のウエスト部(連結部)6a,6b」は、「左右の前身頃2A,2B」と「後身頃3」を「一体化」(構成3b)させるから、甲3発明の「左右のウエスト部(連結部)6a,6b」は、「左右の前身頃2A,2B」と「後身頃3」を連結するものといえる。 したがって、甲3発明の「左右の前身頃2A,2B」と「後身頃3」を「一体化」させる「左右のウエスト部(連結部)6a,6b」は、本件発明1の「前記前身頃および前記後身頃を連結する連結部」に相当する。 (ウ)前記(ア)及び(イ)によれば、本件発明1と甲3発明とは「後身頃と、前身頃と、前記前身頃および前記後身頃を連結する連結部と、を有するベスト本体と、」「を備え」る点で一致する。 イ 発明特定事項B、Cについて 発明特定事項Bは「前記後身頃及び前記前身頃の間隔を調節する調節機構と、」というものであり、発明特定事項Cは「を備え、」というものである。 甲3発明の「前身頃と後身頃の間隔を調整可能な調整部材10」(構成3c)は、本件発明1の「前記後身頃及び前記前身頃の間隔を調節する調節機構」に相当する。 したがって、本件発明1と甲3発明とは「前記後身頃及び前記前身頃の間隔を調節する調節機構と、」「を備え」る点で一致する。 ウ 発明特定事項Dについて 発明特定事項Dは「前記調節機構は、少なくとも一部が前記連結部に内包される紐体と、前記連結部内を通過する前記紐体の部分の長さを調節操作する操作部と、を有し、」というものである。 (ア)甲3発明の「調整紐15」(構成3d)は、本件発明1の「紐体」に相当する。 甲3発明の「調整紐15」は、「布部材を重ねて縫着した連結部6a内に配設されており、外部から視認できないようになっている」(構成3e)から、「少なくとも一部が連結部に内包される」といえる。 したがって、甲3発明の「布部材を重ねて縫着した連結部6a内に配設されており、外部から視認できないようになっている」「調整紐15」は、本件発明1の「少なくとも一部が前記連結部に内包される紐体」に相当する。 (イ)甲3発明の「各フック部材に掛けられる調整紐15の締め付け状態を調整可能な緊締部材18」(構成3d)は、本件発明1の「前記連結部内を通過する前記紐体の部分の長さを調節操作する操作部」に相当する。 (ウ)甲3発明の「調整部材10」は、前記(ア)の「調整紐15」と前記(イ)の「緊締部材18」を有するものである(構成3d)。 (エ)前記(ア)~(ウ)によれば、本件発明1と甲3発明とは「前記調節機構は、少なくとも一部が前記連結部に内包される紐体と、前記連結部内を通過する前記紐体の部分の長さを調節操作する操作部と、を有」する点で一致する。 エ 発明特定事項Eについて 発明特定事項Eは「前記連結部は、前記紐体が通過する部分を避けて設けられる貫通孔、を有する、」というものである。 本件発明1と甲3発明とは、本件発明1の「連結部」が「前記紐体が通過する部分を避けて設けられる貫通孔、を有する」ものであるのに対し、甲3発明は、「左右のウエスト部(連結部)6a,6b」が「貫通孔」を有しておらず、ひいては「前記紐体が通過する部分を避けて設けられる貫通孔」を有していない点で相違する。 オ 発明特定事項Fについて 発明特定事項Fは「フローティングベスト。」というものである。 甲3発明の「フローティングベスト1」(構成3a、3f)は、本件発明1の「フローティングベスト」に相当する。 したがって、本件発明1と甲3発明とは「フローティングベスト」である点で一致する。 カ 一致点及び相違点 前記ア~オによれば、本件発明1と甲3発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「後身頃と、前身頃と、前記前身頃および前記後身頃を連結する連結部と、を有するベスト本体と、 前記後身頃及び前記前身頃の間隔を調節する調節機構と、 を備え、 前記調節機構は、少なくとも一部が前記連結部に内包される紐体と、前記連結部内を通過する前記紐体の部分の長さを調節操作する操作部と、を有する、 フローティングベスト。」 <相違点3-1> 本件発明1の「連結部」は、「前記紐体が通過する部分を避けて設けられる貫通孔、を有する」のに対し、甲3発明は、そのような構成を有していない点 (4)本件発明1と甲3発明との相違点についての判断 前記1(3)に記載した周知技術を示す各証拠のいずれにも、紐体が内包される連結部に貫通孔を設けることは示されておらず、ひいては、連結部に内包される「紐体が通過する部分を避け」るように貫通孔を設けることも示されていない。 また、甲3発明の「ウエスト部(連結部)6a,6b」内には、「調整紐15」が配設されていることから、当該調整紐15が通過する部分を避けるように貫通孔を設けるのであれば、当該調整紐15が配設されるウエスト部(連結部)6a,6bを避けて貫通孔を設けることが合理的である。 そうすると、甲3発明において、前記周知技術を適用して調整紐15が配設容された連結部にあえて貫通孔を形成し、さらに当該貫通孔を「紐体が通過する部分を避け」るように設けることに動機づけを見いだすことはできない。 したがって、甲3発明に、前記周知技術を適用したとしても、フローティングベストの連結部に、当該連結部に内包される「紐体が通過する部分を避け」るように貫通孔を設けることまで、当業者が容易に想到するものではない。 (5)本件発明1についての小括 前記(4)のとおりであるから、本件発明1は、甲3発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、さらに別の発明特定事項を有するものであるから、本件発明2~4と甲3発明とを対比すると、少なくとも相違点3-1について相違する。 そうすると、本件発明1と同様に、本件発明2~4は、甲3発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (7)申立理由3についての小括 前記(1)~(6)によれば、本件発明は、いずれも、甲3発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立理由3には、理由がない。 4 申立理由4について (1)甲4の記載 甲4には、以下の記載がある。 ア「【0036】 図13及び図14において、衣服としてのベスト720は、両側部にそれぞれ巻き取り体726が受けられる。巻き取り体726には、締め付け紐722が両側部を矩形ループ状に設けられ、締め付け紐722の両端がそれぞれの巻き取り体726によって巻き取られ、ベスト720の両側部を締め付け可能である。これにより、ベストの両側部のサイズを着用者のサイズに応じて調整できる。」 イ 図14 [図:0001438325000007.jpg] (2)甲4発明 前記(1)の記載事項によれば、甲4には、以下の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されている。なお、後の参照の便宜のため、甲4発明を以下のように分説し、「構成4a」のようにして参照する。 <甲4発明> 4a 衣服としてのベスト720であって、(【0036】) 4b 巻き取り体726が受けられ、(【0036】) 4c 巻き取り体726には、締め付け紐722が両側部を矩形ループ状に設けられ、締め付け紐722の両端がそれぞれの巻き取り体726によって巻き取られ、ベスト720の両側部を締め付け可能であり、これにより、ベストの両側部のサイズを着用者のサイズに応じて調整できる(【0036】) 4d ベスト720。(【0036】) (3)本件発明1と甲4発明との対比 ア 発明特定事項A、Cについて 発明特定事項Aは「後身頃と、前身頃と、前記前身頃および前記後身頃を連結する連結部と、を有するベスト本体と、」というものであり、発明特定事項Cは「を備え、」というものである。 甲4発明の、ベスト720(構成4a、4d)が「ベスト本体」を有することは明らかである。 しかしながら、甲4発明において、「ベスト720」が、「後身頃と、前身頃と、前記前身頃および前記後身頃を連結する連結部」とを有することは特定されていない。 したがって、本件発明1と甲4発明とは、「ベスト本体」を備える点で一致し、本件発明1の「ベスト本体」が「後身頃と、前身頃と、前記前身頃および前記後身頃を連結する連結部と、を有する」のに対し、甲4発明は、そのような特定がされていない点で相違する。 イ 発明特定事項B、Cについて 発明特定事項Bは「前記後身頃及び前記前身頃の間隔を調節する調節機構と、」というものであり、発明特定事項Cは「を備え、」というものである。 甲4発明の「巻き取り体726」(構成4b、4c)及び「締め付け紐722」(構成4c)は、一体となって、「ベストの両側部のサイズを着用者のサイズに応じて調整できる」(構成4c)ものであるから、甲4発明の「巻き取り体726」及び「締め付け紐722」は、一体となって「調節機構」を構成するものといえる。 したがって、本件発明1と甲4発明とは、「調節機構」を有する点で一致する。 しかしながら、本件発明1と甲4発明とは、本件発明1の「調節機構」が「前記後身頃及び前記前身頃の間隔を調節する」のに対し、甲4発明は、そのような特定がされていない点で相違する。 ウ 発明特定事項Dについて 発明特定事項Dは「前記調節機構は、少なくとも一部が前記連結部に内包される紐体と、前記連結部内を通過する前記紐体の部分の長さを調節操作する操作部と、を有し、」というものである。 甲4発明の「巻き取り体726」及び「締め付け紐722」は、本件発明1の「操作部」及び「紐体」に相当する。 前記(1)イのとおり、甲4の図14には、「締め付け紐722」が点線で示されているが、甲4の記載全体をみても、この点線が、締め付け紐722がベスト本体に内包されることを意味すると理解できる説明はないから、「締め付け紐722」が点線で示されていることをもって、「締め付け紐722」がベスト本体に内包されているとまではいえない。 したがって、本件発明1と甲4発明とは、「調節機構」が「紐体」と「紐体の長さを調節操作する操作部と、を有」する点で一致する。 しかしながら、本件発明1と甲4発明とは、本件発明1は、「紐体」が「少なくとも一部が前記連結部に内包される」のに対し、甲4発明の「紐体」は、少なくとも一部がベスト720に内包されているとはいえず、ひいては、「紐体」の少なくとも一部が前記連結部に内包されるとはいえない点で相違する。これに付随して、本件発明1と甲4発明とは、本件発明1は、「操作部」が調節操作する紐体が「前記連結部内を通過する前記紐体」であるのに対し、甲4発明は、「巻き取り体726」が調節操作する「巻き取り紐722」がそのような特定がされていない点で相違する。 エ 発明特定事項Eについて 発明特定事項Eは「前記連結部は、前記紐体が通過する部分を避けて設けられる貫通孔、を有する、」というものである。 甲4発明は、「貫通孔」を有しておらず、ひいては「前記紐体が通過する部分を避けて設けられる貫通孔」を有するものではない点で本件発明1と相違する。 オ 発明特定事項Fについて 発明特定事項Fは「フローティングベスト。」というものである。 甲4発明の「ベスト720」(構成4a、4d)は、本件発明1と「ベスト」である点で一致する。 しかしながら、本件発明1は「フローティングベスト」であるのに対し、甲4発明は、単なる「ベスト」である点で相違する。 カ 一致点及び相違点 前記ア~オによれば、本件発明1と甲4発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「ベスト本体と、 調節機構と、 を備え、 前記調節機構は、紐体と、前記紐体の長さを調節操作する操作部と、を有する、 ベスト。」 <相違点4-1> 本件発明1の「ベスト本体」が「後身頃と、前身頃と、前記前身頃および前記後身頃を連結する連結部と、を有する」のに対し、甲4発明は、そのような特定がされていない点 <相違点4-2> 本件発明1の「調節機構」は「前記後身頃及び前記前身頃の間隔を調節する」のに対し、甲4発明は、そのような特定がされていない点 <相違点4-3> 本件発明1は、「紐体」が「少なくとも一部が前記連結部に内包される」のに対し、甲4発明の「紐体」は、少なくとも一部がベスト本体に内包されているとはいえず、ひいては、「紐体」の少なくとも一部が前記連結部に内包されるとはいえない点 これに付随して、本件発明1は、「操作部」が調節操作する紐体が「前記連結部内を通過する前記紐体」であるのに対し、甲4発明は、「巻き取り体726」が調節操作する「巻き取り紐722」がそのような特定がされていない点 <相違点4-4> 本件発明1の「連結部」は、「前記紐体が通過する部分を避けて設けられる貫通孔、を有する」のに対し、甲4発明は、そのような構成を有していない点 <相違点4-5> 本件発明1は、「フローティングベスト」であるのに対し、甲4発明は、単なる「ベスト」である点 (4)本件発明1と甲4発明との相違点についての判断 相違点4-1、4-3及び4-4についてまとめて検討する。 甲4発明は、「前身頃および後身頃を連結する連結部」を有するものではない。 また、前記1(3)に記載した周知技術を示す各証拠のいずれにも、調整機構を構成する紐体が内包される「連結部」に貫通孔を設けることは示されておらず、ひいては、連結部に内包される「紐体が通過する部分を避け」るように貫通孔を設けることも示されていない。 したがって、甲4発明に、前記周知技術を適用したとしても、ベストに「連結部」を設け、さらに、締め付け紐722の少なくとも一部が「連結部」に内包されるように構成し、そのうえで、「連結部」に、「締め付け紐722が通過する部分を避け」るように貫通孔を設けるように構成することを、当業者が容易に想到するものではない。 (5)本件発明1についての小括 前記(4)のとおりであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、さらに別の発明特定事項を有するものであるから、本件発明2~4と甲4発明とを対比すると、少なくとも相違点4-1、4-3及び4-4について相違する。 そうすると、本件発明1と同様に、本件発明2~4は、甲4発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (7)申立理由4についての小括 前記(1)~(6)によれば、本件発明は、いずれも、甲4発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立理由4には、理由がない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、申立書に記載された申立理由及び証拠によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。 そして、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2026-700466

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