特許異議申立
2024-700686
耐塩素堅牢性布帛及びその製造方法
- 審判番号
- 2024-700686
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-064945
- 登録番号
- 7418942
- 請求日
- 2024年07月22日
- 審決日
- 2024年12月05日
- 公報発行日
- 2025年01月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ユニチカトレーディング株式会社
- 【権利者代理人】田中 順也
- 【異議申立人】村上 兄
- 審判長/審判官
- 審判長 田口 傑
- 審判官 八木 誠
- 審判官 木原 裕二
- 分類
- P1651.121-Y (A41D)
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7418942号発明「耐塩素堅牢性布帛及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7418942号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7418942号の請求項1~5に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成29年3月29日にした出願であって、令和6年1月12日に特許権の設定登録がされ、同年1月22日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1~5に係る特許に対し、同年7月22日に、特許異議申立人村上兄(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明5」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
ポリエステル繊維及びセルロース繊維を含有し、
前記ポリエステル繊維が、ピリドンアゾ系分散染料及びアントラキノン系分散染料よりなる群から選択される少なくとも1種の分散染料で染色され、
前記セルロース繊維が、アントラキノンカルバゾール系スレン染料、アントラキノンオキサゾール系スレン染料、及びアントラキノンチアゾール系スレン染料よりなる群から選択される少なくとも1種のスレン染料で染色され、且つ
濃度5質量%且つpH14の次亜塩素酸ナトリウム濃度水溶液を0.2ml滴下し、25℃で24時間放置後の変色が、変退色用グレースケール(JIS L 0804:2004)で3級以上になる、耐塩素堅牢性布帛。
【請求項2】
前記セルロース繊維が架橋されている、請求項1に記載の耐塩素堅牢性布帛。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の耐塩素堅牢性布帛を含む、ユニフォーム素材。
【請求項4】
塩素漂白を行う作業者用のユニフォーム素材である、請求項3に記載のユニフォーム素材。
【請求項5】
ポリエステル繊維及びセルロース繊維を含有する布帛に対して、
ピリドンアゾ系分散染料及びアントラキノン系分散染料よりなる群から選択される少なくとも1種の分散染料によるポリエステル繊維の染色、並びに
アントラキノンカルバゾール系スレン染料、アントラキノンオキサゾール系スレン染料、及びアントラキノンチアゾール系スレン染料よりなる群から選択される少なくとも1種のスレン染料によるセルロース繊維の染色を行い、
濃度5質量%且つpH14の次亜塩素酸ナトリウム濃度水溶液を0.2ml滴下し、25℃で24時間放置後の変色が、変退色用グレースケール(JIS L 0804:2004)で3級以上になる耐塩素堅牢性布帛を製造する、
耐塩素堅牢性布帛の製造方法。」
第3 申立理由の概要
申立人は、以下の甲第1号証~甲第10号証(以下、それぞれ、「甲1」~「甲10」ともいう。)を提出して、以下の申立理由により請求項1~5に係る特許を取り消すべきである旨主張する。
1 証拠方法
甲1:特開2009-243002号公報
甲2:特開2016-169342号公報
甲3:「Disperse Red 86」、[online]、2012年3月6日、World dye variety、<URL:https://www.worlddyevariety.com/disperse-dyes/disperse-red-86.html>
甲4:「Disperse Red 60」、[online]、2012年2月28日、World dye variety、<URL:https://www.worlddyevariety.com/disperse-dyes/disperse-red-60.html>
甲5:「TERASIL Yellow W-6GS」テクニカルシート、2007年、Huntsman社
甲6:「Vat Blue 6」、[online]、2012年8月20日、World dye variety、<URL:https://www.worlddyevariety.com/vat-dyes/vat-blue-6.html>
甲7:「Vat Orange 11」、[online]、2012年8月13日、World dye variety、<URL:https://www.worlddyevariety.com/vat-dyes/vat-orange-11.html>
甲8:「Vat Red 10」、[online]、2012年8月14日、World dye variety、<URL:https://www.worlddyevariety.com/vat-dyes/vat-red-10.html>
甲9:「Vat Blue 30」、[online]、2012年8月21日、World dye variety、<URL:https://www.worlddyevariety.com/vat-dyes/vat-red-30.html>
甲10:特開2010-144279号公報
2 申立理由
本件発明1~5は、甲1に記載された発明及び甲2~10に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項1~5に係る特許は、同法第29条第2項に違反するから、取り消されるべきものである。
第4 当審の判断
1 甲号証の記載事項等
(1)甲1について
ア 記載事項
甲1には、以下の事項が記載されている(下線は当審が付与。以下同様。)。
「【請求項1】
ポリエステル繊維とセルロース繊維とを含む織編物を予備リラックスし、次いで連続精練した後、分散染料を用いてバッチ染色し、ヒートセット後、さらにスレン染料を用いて連続染色することを特徴とするポリエステル/セルロース混用織編物の染色方法。」
「【0007】
本発明者らは、上記従来法では織編物に対し優れた風合い、光沢感を付与できない原因を検討したところ、分散染料によるポリエステル繊維の染色を連続式で実施していることが原因であろうとの考えの下、これを連続式ではなくバッチ式で行ったところ、織編物の風合い、光沢感などを従来法と比べ格段に向上できることを見出し、さらに、セルロース繊維の染色につき反応染料ではなくスレン染料を用い、加えて分散染料による上記のバッチ染色をこのスレン染料による染色の前に配置すれば、製造コストの低減と共に織編物への高い堅牢性の付与が可能となることも見出し、本発明をなすに至った。」
「【0022】
連続精練の後は、分散染料を用いて織編物をバッチ染色する。この染色は、基本的にポリエステル繊維を染色するためのものである。分散染料は、一般に種類によらず一定の堅牢性を具備するものであるが、特に分子量の大きいものはより堅牢性に優れていることから、本発明ではこのような染料を用いるのが好ましい。」
「【0030】
また、スレン染料は、他のセルロース繊維用染料に比べ一般に堅牢性に優れている。本発明では、特にアントラキノン系のスレン染料を使用するのが好ましく、これにより、織編物の堅牢性をより高めることができる。」
「【0034】
4.織編物の堅牢性
塩素堅牢度、汗耐光堅牢度、耐光堅牢度及び洗濯による耐変退色性を測定することで、織編物の堅牢性を評価した。すなわち、塩素堅牢度としてはJIS L0884法(有効塩素濃度100ppm)に準じ、汗耐光堅牢度としてはJIS L0888法に準じ、耐光堅牢度としてはJIS L0842法に準じて測定した。そして、洗濯による耐変退色性については、洗濯100回(JIS L0217、103法)後の織編物の色相変化を、5級(優)~1級(劣)の5段階で目視評価した。
【0035】
(実施例1)
極限粘度0.61の共重合ポリエチレンテレフタレートを用いて溶融紡糸、延伸し、55dtex24fのポリエステル糸条となした後、これと、平均繊維長36mmの綿繊維から構成される、太さ0.5g/mの粗糸とを、市販の精紡機へ同時に供給し、撚数14.8回/2.54cmの太さ30番手(英式綿番手)の長短複合糸を得た。
【0036】
そして、経糸として上記ポリエステル糸条を、緯糸として上記複合糸を用いて、経糸密度110本/2.54cm、緯糸密度73本/2.54cmたる2/2綾組織の生機を製織した。
【0037】
次に、U型ソフサー(ニッセン(株)製、連続リラクサー)を用いて、95℃の温度下で上記生機を総滞留時間15分間予備リラックスし、続いて、通常条件で糊抜き、連続精練、シルケット加工した。
【0038】
シルケット加工後、これをウエット状態まま液流染色機に投入し、分散染料(ダイスター(株)製「ダイアニックス ネイビー ブルーBG-SE(商品名)」3%owf、酢酸(48%)0.2cc/L及び均染剤(日華化学(株)製「ニッカサンソルトSN130-E(商品名)」0.5g/Lなる処方の染色液で、130℃の温度下で30分間バッチ染色した。
【0039】
染色後、これを通常条件で還元洗浄し、乾燥後、190℃の温度下で40秒間ヒートセットした。
【0040】
次に、スレン染料(三井化学(株)製「ミケスレン ブルー BC(商品名)」を20g/L使用して、通常条件で連続染色し、その後、乾燥、ファイナルセットして目的のポリエステル/セルロース混用織編物を得た。」
「【0045】
以上で得られた織編物の物性評価を下記表1に示す。
【0046】
【表1】
[図:0001418257000001.jpg]
」
イ 甲1発明1
上記アを総合すると、甲1には、実施例1として、次の発明(以下「甲1発明1」という。)が記載されていると認められる。
「ポリエステル繊維とセルロース繊維とを含み、
ポリエステル繊維は、分散染料で染色され、
セルロース繊維は、スレン染料で染色され、
塩素堅牢度としてはJIS L0884法(有効塩素濃度100ppm)に準じて測定した、色相変化が4級である、織編物。」
ウ 甲1発明2
また、上記アを総合すると、甲1には、製造方法として、次の発明(以下「甲1発明2」という。)が記載されていると認められる。
「ポリエステル繊維とセルロース繊維とを含む織編物において、
ポリエステル繊維を分散染料で染色し、
セルロース繊維をスレン染料で染色し、
塩素堅牢度としてはJIS L0884法(有効塩素濃度100ppm)に準じて測定した、色相変化が4級になる織編物を製造する、
織編物の製造方法。」
(2)甲2について
甲2には、以下の事項が記載されている。
「【発明を実施するための形態】
【0018】
<インクジェット用インクセット>
本発明の一実施形態のインクジェット用インクセット(以下、単にインクセットともいう)は、イエローインクと、マゼンタインクと、シアンインクとを含む。イエローインクは、分散染料としてC.I.Disperse Yellow 65(以下、単にDY65ともいう)を含む。マゼンタインクは、分散染料としてC.I.Disperse Red 362(以下、単にDR362ともいう)を含む。シアンインクは、分散染料としてC.I.Disperse Blue 60(以下、単にDB60ともいう)を含む。本実施形態のインクセットは、少なくともこれら特定の分散染料を含むイエローインク、マゼンタインクおよびシアンインクを含み、これらインクを適宜組み合わせて用いることにより、色域の広いインクジェットプリント物を形成することができる。また、得られるインクジェットプリント物は、優れた堅牢性を示す。なお、インクセットは、ブラックインク、グレーインク等の各種特定色インクを含んでもよい。また、インクセットは、たとえば薄い色を再現するために、淡インク(フォトインク)を含んでもよい。
【0019】
イエローインクは、分散染料としてDY65を含んでいればよく、他の分散染料を含んでいてもよい。このような他の分散染料としては、C.I.Disperse Yellow 54、64、114、149、163、231、232、235等が例示される。
【0020】
マゼンタインクは、分散染料としてDR362を含んでいればよく、他の分散染料を含んでいてもよい。このような他の分散染料としては、C.I.Disperse Red 86(以下、単にDR86ともいう)、60、92、127、152、154、167、167:1、177、191、343等が例示される。これらの中でも、インクセットは、得られるインクジェットプリント物の堅牢性(特に耐光堅牢度や、塩素処理水に対する堅牢度)がさらに向上する観点から、マゼンタインクの分散染料としてDR86がさらに含まれることが好ましい。」
「【0059】
(実施例1)
以下の表2に示されるインクの組み合わせからなるインクセットを用いて、以下のインクジェット条件にてJISの高精細カラーデジタル標準画像(JIS X 9204:2004 S6 カラーチャート)を印刷した。その後、印刷後の布帛に対し、175℃で10分間の湿熱処理を行った。その後、布帛を適宜洗浄、乾燥し実施例1のインクジェットプリント物を作製した。
【0060】
【表2】
[図:0001418257000002.jpg]
*括弧内はそれぞれのインク中の分散染料の種類および配合割合を示している。」
「【0070】
<塩素堅牢度>
塩素堅牢度は、JIS L 0884(B法)に準じて評価した(1級~5級)。塩素堅牢度は、5級が最も優れている。結果を表5に示す。また、以下の判定基準にしたがって、得られた評価結果から塩素堅牢度を総合評価した。結果を表6に示す。
(判定基準)
◎:6色すべて5級であった。
○:少なくとも1色が4級であり、他は4級または5級であった。
△:少なくとも1色が3級であり、他は3級~5級のいずれかであった。
×:少なくとも1色が1級または2級であった。
【0071】
【表5】
[図:0001418257000003.jpg]
【0072】
【表6】
[図:0001418257000004.jpg]
【0073】
表6に示されるように、DY65を含むイエローインクと、DR362を含むマゼンタインクと、DB60を含むシアンインクとを含むインクセットを用いて作製された実施例1~3のインクジェットプリント物は、比較例1である従来のインクセットを用いて作製されたプリント物と比べて、各色における発色性が同等以上であり、広範囲の色域を表現できることがわかった。また、実施例1~3のインクジェットプリント物は、比較例1のプリント物と比較して、各種堅牢性も優れていた。特に、マゼンタインクの分散染料としてDR362とDR86とを併用したインクセットを用いて作製された実施例2および実施例3のインクジェットプリント物は、耐光堅牢度、塩素堅牢度がより優れていた。中でも実施例3のインクジェットプリント物は、特に耐光堅牢度、塩素堅牢度が優れており、かつ、発色性もより一層優れていた。」
2 対比・判断
(1)本件発明1について
ア 対比
(ア)本件発明1と甲1発明1とを対比すると、後者の「ポリエステル繊維」は、前者の「ポリエステル繊維」に相当し、以下同様に、「セルロース繊維」は「セルロース繊維」に、「含」むことは「含有」することに、「分散染料」は「分散染料」に、「染色され」ることは「染色され」ることに、「スレン染料」は「スレン染料」に、それぞれ相当する。
後者の「織編物」は、所定の塩素堅牢度を有するから、前者の「耐塩素堅牢性布帛」に相当する。
(イ)上記(ア)を踏まえると、後者の「ポリエステル繊維とセルロース繊維とを含」むことは、前者の「ポリエステル繊維及びセルロース繊維を含有」することに相当し、後者の「ポリエステル繊維は、分散染料で染色され」ることは、前者の「前記ポリエステル繊維が、ピリドンアゾ系分散染料及びアントラキノン系分散染料よりなる群から選択される少なくとも1種の分散染料で染色され」ることと、ポリエステル繊維は、分散染料で染色されるという点で共通し、後者の「セルロース繊維は、スレン染料で染色され」ることは、前者の「前記セルロース繊維が、アントラキノンカルバゾール系スレン染料、アントラキノンオキサゾール系スレン染料、及びアントラキノンチアゾール系スレン染料よりなる群から選択される少なくとも1種のスレン染料で染色され」ることと、セルロース繊維は、スレン染料で染色されるという点で共通する。
そうすると、本件発明1と甲1発明1との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「ポリエステル繊維及びセルロース繊維を含有し、
ポリエステル繊維は、分散染料で染色され、
セルロース繊維は、スレン染料で染色される、耐塩素堅牢性布帛。」
<相違点1>
分散染料について、本件発明1では、「ピリドンアゾ系分散染料及びアントラキノン系分散染料よりなる群から選択される少なくとも1種」であるのに対し、甲1発明1では、そのような特定はない点。
<相違点2>
スレン染料について、本件発明1では、「アントラキノンカルバゾール系スレン染料、アントラキノンオキサゾール系スレン染料、及びアントラキノンチアゾール系スレン染料よりなる群から選択される少なくとも1種」であるのに対し、甲1発明1では、そのような特定はない点。
<相違点3>
本件発明1では、「濃度5質量%且つpH14の次亜塩素酸ナトリウム濃度水溶液を0.2ml滴下し、25℃で24時間放置後の変色が、変退色用グレースケール(JIS L 0804:2004)で3級以上になる」のに対し、甲1発明1では、塩素堅牢度としてはJIS L0884法(有効塩素濃度100ppm)に準じて測定した、色相変化が4級である点。
イ 相違点についての判断
事案に鑑み、まず相違点3について検討する。
甲1発明1の「JIS L0884法(有効塩素濃度100ppm)」は、定義(例えば、<URL:https://kikakurui.com/l/L0884-1996-01.html)からD法と認められ、pH7.5±0.05の次亜塩素酸ナトリウムの希薄溶液で60分の試験であり、濃度5質量%且つpH14の次亜塩素酸ナトリウム濃度水溶液で24時間の本件発明1の試験とは、塩素堅牢度の試験として、塩素の濃度がとても低く、溶液につけている時間もとても短いことから、甲1発明1の「JISL0884法(有効塩素濃度100ppm)」で4級であっても、本件発明1の試験では、3級以上であるとは直ちには認められない。
したがって、相違点3は実質的な相違点である。
そして、申立人が提出した証拠のうち、甲1以外に塩素堅牢度について言及がある証拠は甲2以外にはないところ、甲2には、上記1(2)に示すような記載がある。
甲2の表2(【0060】)には、実施例1~3と比較例1が示されており、実施例1~3のマゼンダインクに含まれるDR362(例えば、<URL:https://www.worlddyevariety.com/disperse-dyes/disperse-red-362.html>の「Molecular Structure: Centchroman class」(和訳「分子構造:セントクロマン部類」)との記載等参照。)は、分散染料ではあるが、ピリドンアゾ系分散染料でもアントラキノン系分散染料でもない。
また、実施例1~3のイエローインクであるDY65(例えば、<URL:https://www.worlddyevariety.com/disperse-dyes/disperse-yellow-65.html>参照。)はアントラキノン系分散染料であり、比較例1のイエローインクであるDY114(例えば、<URL:https://www.worlddyevariety.com/disperse-dyes/disperse-yellow-114.html>参照。)は、本件の明細書の【0032】と同じ分子式であるから、ピリドンアゾ系分散染料であり、実施例2、3のマゼンダインクに含まれ、比較例1のマゼンダインクであるDR86(甲3参照)はアントラキノン系分散染料であり、実施例1~3と比較例1のシアンインクであるDB60(例えば、<URL:https://www.worlddyevariety.com/disperse-dyes/disperse-blue-60.html>参照。)はアントラキノン系分散染料であるから、比較例1とマゼンダインクを含まない実施例2、3は、相違点1に係る本件発明1の構成を満たすものである。
甲2の表5(【0071】)を参照すると、比較例1とマゼンダインクを含まない実施例2、3のうち、最も塩素堅牢度が高いのが5級であるが、甲2での塩素堅牢度はJIS L0884(B法)に基づくものであり(【0070】)、これは甲1発明1の塩素堅牢度の試験とは、塩素の濃度が低く(1/5)、他は同じであることを勘案すると、甲2での塩素堅牢度が5級であっても、本件発明1の試験では、3級以上であるとは直ちには認められない。
そして、甲1、2のJIS L 0884による塩素堅牢度の試験の結果やそれに関する記載では、JIS L 0884による塩素堅牢度の試験よりもかなり条件が厳しい本件発明1の試験で3級以上とすることを示唆しているとは認められない。
したがって、甲1発明1に、甲2に記載された事項や甲3~10に記載された事項を適用しても、相違点3に係る本件発明1の構成とならないのは明らかである。
以上によれば、相違点1及び2を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明1及び甲2~10に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件発明2~4について
本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、更なる限定を付加するものであるから、上記(1)イで説示したのと同様の理由により、甲1発明1及び甲2~10に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明5について
本件発明5と甲1発明2とを対比すると、両者には、相違点3と実質的に同じである相違点があるものと認められる。
そうすると、本件発明5は、上記(1)イで説示したのと同様の理由により、甲1発明2及び甲2~10に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第5 むすび
以上によれば、特許異議の申立理由及び証拠によっては、請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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