特許異議申立
2023-700959
シリカ被覆粒子及びその製造方法
- 審判番号
- 2023-700959
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-514882
- 登録番号
- 7238975
- 請求日
- 2023年09月13日
- 審決日
- 2024年05月10日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】信越化学工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人英明国際特許事務所
- 【異議申立人】村上 太郎
- 審判長/審判官
- 審判長 河本 充雄
- 審判官 原 賢一
- 審判官 後藤 政博
- 分類
- P1652.113-YAA(C01G) / P1652.121-YAA(C01G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条特許法113条2号特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7238975号発明「シリカ被覆粒子及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7238975号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3、5〕、〔4、6~8〕について訂正することを認める。
特許第7238975号の請求項1、2、5に係る特許を維持する。
特許第7238975号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7238975号の請求項1~6に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)4月6日(優先権主張 平成31年4月15日)を国際出願日とするものであり、令和5年3月6日にその特許権の設定登録がされ、同年同月14日に特許掲載公報が発行され、その後、同年9月13日に、その請求項1~3、5に係る特許を対象として特許異議申立人村上太郎(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、同年11月10日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である令和6年1月12日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求があり、これに対し、異議申立人からは意見書の提出がなされなかったものである。
第2 訂正の適否
1 訂正事項
上記令和6年1月12日にされた訂正の請求(以下、その訂正を「本件訂正」という。)は、本件特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求めるものであって、その具体的な訂正事項は次のとおりである(下線は当審が付与した。他の下線についても、同様である。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「固体粒子」とあるのを、「無機粒子である固体粒子」に訂正する。
(請求項1を引用する請求項2、5についても同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「シリカ被覆粒子」とあるのを、「シリカ被覆粒子(但し、一次粒子径が5~500nmかつ二次粒子径が0.5~10μmであるものを除く。)」に訂正する。
(請求項1を引用する請求項2、5についても同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「(A)固体粒子が、有機粒子である請求項1又は2記載のシリカ被覆粒子。」とあるのを、「(A)有機粒子である固体粒子の表面が(B)シリカで被覆され、この(B)シリカの表面の水酸基の一部又は全部が、(C)オルガノアルコキシシラン、その加水分解物及びオルガノシラザンから選ばれる1種以上と反応したシリカ被覆粒子であって、(A)固体粒子100質量部に対して、(B)シリカが0.5~100質量部であるシリカ被覆粒子。」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1~4のいずれか1項に」とあるのを、「請求項1又は2に」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「下記(i)~(iv)の工程を含む請求項1~5のいずれか1項に記載のシリカ被覆粒子を製造する製造方法。」とあるのを、「下記(i)~(iv)の工程を含む、
(A)固体粒子の表面が(B)シリカで被覆され、この(B)シリカの表面の水酸基の一部又は全部が、(C)オルガノアルコキシシラン、その加水分解物及びオルガノシラザンから選ばれる1種以上と反応したシリカ被覆粒子であって、(A)固体粒子100質量部に対して、(B)シリカが0.5~100質量部であるシリカ被覆粒子を製造する製造方法。」に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項5に「(C)成分のオルガノアルコキシシランが、R1Si(OR2)3で表されるオルガノトリアルコキシシラン、R32Si(OR4)2で表されるジオルガノジアルコキシシラン及び(CH3)3SiOR5で表されるトリメチルアルコキシシラン(式中、R1,R3は炭素数1~20の1価有機基、R2、R4、R5は非置換の炭素数1~6の1価炭化水素基である。)から選ばれる基であり、オルガノシラザンが(CH3)3SiNHSi(CH3)3で表されるヘキサメチルジシラザンである請求項1~4のいずれか1項に記載のシリカ被覆粒子。」とあるのを、「(C)成分のオルガノアルコキシシランが、R1Si(OR2)3で表されるオルガノトリアルコキシシラン、R32Si(OR4)2で表されるジオルガノジアルコキシシラン及び(CH3)3SiOR5で表されるトリメチルアルコキシシラン(式中、R1,R3は炭素数1~20の1価有機基、R2、R4、R5は非置換の炭素数1~6の1価炭化水素基である。)から選ばれる基であり、オルガノシラザンが(CH3)3SiNHSi(CH3)3で表されるヘキサメチルジシラザンである請求項4に記載のシリカ被覆粒子。」に訂正して、請求項7とする。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項6に「下記(i)~(iv)の工程を含む請求項1~5のいずれか1項に記載のシリカ被覆粒子を製造する製造方法。
(i)(A)固体粒子、(E)アルカリ性物質、(F)カチオン性界面活性剤及びカチオン性水溶性高分子化合物から選ばれる1種以上、及び(G)水を含む液を調製する工程、
(ii)工程(i)で得られた液に、(D)テトラアルコキシシシランを添加し、テトラアルコキシシシランを加水分解・縮合させることにより、固体粒子(A)の表面をシリカ(B)で被覆し、シリカ被覆粒子の分散液を得る工程、
(iii)工程(ii)で得られたシリカ被覆粒子の分散液に、(E)アルカリ性物質を追加添加、及び必要に応じて(F)カチオン性界面活性剤及びカチオン性水溶性高分子化合物から選ばれる1種以上を追加添加し、追加添加した分散液を得る工程、
(iv)工程(iii)で得られた追加添加した分散液に、(C)オルガノアルコキシシラン、その加水分解物及びオルガノシラザンから選ばれる1種以上を添加し、(B)シリカの表面の水酸基の一部又は全部を、(C)オルガノアルコキシシラン、その加水分解物及びオルガノシラザンから選ばれる1種以上と反応させる工程」とあるのを、「(A)固体粒子が、無機粒子である請求項6に記載の製造方法。」に訂正して、請求項8とする。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正事項1による訂正は、「固体粒子」を無機粒子に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると共に、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
イ 訂正事項1による訂正は、本件明細書の【0010】の「(A)固体粒子は、本発明のシリカ被覆粒子の核となる粒子であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。固体粒子としては、無機粒子、有機粒子のいずれでもよく、また、その幾何学的態様が、球状、多面体状、紡錘状、針状、板状等いずれの形状でもよく、また、無孔質、多孔質のいずれでもよい。」との記載等に基づくものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正である。
(2)訂正事項2について
ア 訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項1の「シリカ被覆粒子」の範囲から、「一次粒子径が5~500nmかつ二次粒子径が0.5~10μmであるもの」を除くことにより、「シリカ被覆粒子」の範囲を限定するものである。
そうすると、上記訂正事項2による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
イ 上記訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項1の「シリカ被覆粒子」の範囲から、令和5年11月10日付け取消理由通知書で通知された特許法第29条第1項第3号所定の規定違反(新規性欠如)の理由で引用された甲第1号証(国際公開第00/42112号)の請求の範囲5等に記載される事項との重なりを除外するものであり、本件明細書等に開示された技術的事項に新たな技術的事項を付加したものとはいえないことから、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。
そうすると、上記訂正事項2による訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
(3)訂正事項3について
訂正事項3による訂正は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4について
ア 訂正事項4による訂正は、訂正前の請求項4が、請求項1又は2を引用していたところ、請求項1のみを引用するものとし、引用請求項数を減少させるものであると共に、請求項1を引用する訂正前の請求項4の引用関係を解消し、独立形式へ改めるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 上記アで述べたように、訂正事項4による訂正は、訂正前の請求項4が、請求項1又は2を引用していたところ、請求項1のみを引用するものであると共に、請求項1を引用する訂正前の請求項4の引用関係を解消し、独立形式へ改めるものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であると共に、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項5について
ア 訂正事項5による訂正は、訂正前の請求項5が、請求項1~4のいずれか1項を引用していたところ、請求項1又は2を引用するものとし、引用請求項数を減少させるものであるから、少なくとも、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 上記アで述べたように、訂正事項5による訂正は、訂正前の請求項5が、請求項1~4のいずれか1項を引用していたところ、請求項1又は2を引用するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であると共に、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)訂正事項6について
ア 訂正事項6による訂正は、訂正前の請求項6が、請求項1~5のいずれか1項を引用していたところ、請求項1のみを引用するものとし、引用請求項数を減少させるものであると共に、請求項1を引用する訂正前の請求項6の引用関係を解消し、独立形式へ改めるものであるから、少なくとも、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 上記アで述べたように、訂正事項6による訂正は、訂正前の請求項6が、請求項1~5のいずれか1項を引用していたところ、請求項1のみを引用するものであると共に、請求項1を引用する訂正前の請求項6の引用関係を解消し、独立形式へ改めるものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であると共に、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(7)訂正事項7について
ア 訂正事項7による訂正は、訂正前の請求項5が、請求項1~4のいずれか1項を引用していたところ、請求項4のみを引用するものとし、引用請求項数を減少させるものであると共に、新たに、請求項7とするものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 上記アで述べたように、訂正事項7による訂正は、実質的には、訂正前の請求項5が、請求項1~4のいずれか1項を引用していたところ、請求項4のみを引用するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であると共に、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(8)訂正事項8について
ア 訂正後の請求項8は、「(A)固体粒子が、無機粒子である請求項6に記載の製造方法。」とされるものであるところ、「請求項6に記載の製造方法。」とは、上記(6)アによれば、「請求項1を引用する訂正前の請求項6」である。また、「(A)固体粒子が、無機粒子である」とは、訂正前の請求項3の内容である。
そうすると、訂正事項8による訂正は、訂正前の請求項6が、請求項1~5のいずれか1項を引用していたところ、請求項1を引用する請求項3をさらに引用する訂正前の請求項6を、請求項6を引用請求項として書き換えて新たに請求項8とするものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 上記アで述べたように、訂正事項8による訂正は、実質的には、訂正前の請求項6が、請求項1~5のいずれか1項を引用していたところ、請求項1を引用する請求項3をさらに引用する訂正前の請求項6を、新たに請求項8とするものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であると共に、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 独立特許要件について
上記訂正事項4、6及び8による訂正は、訂正後の請求項4、6~8に関するものであるところ、これらの訂正は、少なくとも「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。そして、これらの請求項は、特許異議の申立ての対象となっていない請求項であるから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する(特許出願の際独立して特許を受けることができるものである)必要がある。
そこで、検討するに、訂正後の請求項4は、上記2(4)アで述べたように、請求項1を引用する訂正前の請求項4に対応するものであり、特にシリカ被覆粒子において、固体粒子が「有機粒子である」ことを特定する訂正後の請求項4に係る発明が特許を受けることができないとする理由や証拠は見当たらない。請求項4を引用し、請求項4に記載される構成をすべて具備する訂正後の請求項7に係る発明についても、同様である。
また、訂正後の請求項6は、上記2(6)アで述べたように、請求項1を引用する訂正前の請求項6に対応するものであり、特に、シリカ被覆粒子を製造する製造方法における「(i)(A)固体粒子、(E)アルカリ性物質、(F)カチオン性界面活性剤及びカチオン性水溶性高分子化合物から選ばれる1種以上、及び(G)水を含む液を調製する工程」を特定する訂正後の請求項6に係る発明が特許を受けることができないとする理由や証拠は見当たらない。請求項6を引用し、請求項6に記載される構成をすべて具備する訂正後の請求項8に係る発明についても、同様である。
そうすると、訂正後の請求項4、6~8に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであり、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
4 別の訂正単位とする求めについて
本件訂正請求においては、本件訂正が認められる場合には、訂正後の請求項1~3及び5と、訂正後の請求項4及び7並びに請求項6及び8とは、別の訂正単位とすることが求められているのでこれを認める。
4 訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において読み替えて準用する同法第126条第5項から第7項までの規定に適合するものである。
よって、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3、5〕、〔4、6~8〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認容し得るものであるから、本件特許異議申立ての対象となる本件訂正後の請求項1~3、5に係る発明(以下、各請求項に係る発明及び特許を項番に対応させて「本件発明1」、「本件特許1」などといい、併せて「本件発明」、「本件特許」ということがある。)は、次のとおり特定されるものである。
「【請求項1】
(A)無機粒子である固体粒子の表面が(B)シリカで被覆され、この(B)シリカの表面の水酸基の一部又は全部が、(C)オルガノアルコキシシラン、その加水分解物及びオルガノシラザンから選ばれる1種以上と反応したシリカ被覆粒子であって、(A)固体粒子100質量部に対して、(B)シリカが0.5~100質量部であるシリカ被覆粒子(但し、一次粒子径が5~500nmかつ二次粒子径が0.5~10μmであるものを除く。)。
【請求項2】
(B)シリカが、(D)テトラアルコキシシランの加水分解・縮合物である請求項1記載のシリカ被覆粒子。
【請求項3】
(削除)
【請求項5】
(C)成分のオルガノアルコキシシランが、R1Si(OR2)3で表されるオルガノトリアルコキシシラン、R32Si(OR4)2で表されるジオルガノジアルコキシシラン及び(CH3)3SiOR5で表されるトリメチルアルコキシシラン(式中、R1,R3は炭素数1~20の1価有機基、R2、R4、R5は非置換の炭素数1~6の1価炭化水素基である。)から選ばれる基であり、オルガノシラザンが(CH3)3SiNHSi(CH3)3で表されるヘキサメチルジシラザンである請求項1又は2に記載のシリカ被覆粒子。」
第4 令和5年11月10日付けで通知した取消理由及び異議申立人による特許異議の申立理由の概要
1 令和5年11月10日付けで通知した取消理由の概要
(1)特許法第29条第1項第3号所定の規定違反(新規性欠如)(取消理由1)
本件訂正前の請求項1~3、5に係る発明は、下記甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)(取消理由2)
本件訂正前の請求項1~3、5に係る発明は、下記甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
甲第1号証:国際公開第00/42112号
(以下、甲第1号証を、「甲1」という。)
2 異議申立人による特許異議の申立理由の概要
(1)特許法第29条第1項第3号所定の規定違反(新規性欠如)(申立理由1)
本件訂正前の請求項1~3、5に係る発明は、上記1の甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)(申立理由2)
本件訂正前の請求項1~3、5に係る発明は、上記1の甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
なお、令和5年11月10日付けで通知した取消理由1及び2と、異議申立人による特許異議の申立理由1及び2とは、申立理由1及び2が、取消理由1及び2と、甲1の異なる箇所の記載も甲1発明の認定の基礎としているところがあるものの、同旨であるから、以下の第5で、まとめて検討する。
第5 当審の判断
1 甲1に記載された事項
(1)「請求の範囲
1.シリカ被覆金属酸化物粒子をさらに疎水性付与剤にて表面処理してなる表面疎水化シリカ被覆金属酸化物粒子を含有することを特徴とする化粧料。
2.シリカ膜厚が0.1~100nmであることを特徴とする請求項1に記載の表面疎水化シリカ被覆金属酸化物粒子を含有する化粧料。
3.疎水性付与剤が、シリコーン油類、有機アルコキシシラン類及び、高級脂肪酸塩類からなる群から選ばれる1種又は2種以上の疎水性付与剤であることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧料。」(79頁1~11行)
(2)「近年、紫外線遮蔽用化粧料において高い紫外線遮蔽能に加え良好な使用感や高い透明感が要求されるようになってきている。従って、紫外線遮蔽材として使用される金属酸化物粒子に対しても、化粧料配合時に良好な使用感や透明感を与えるように、従来よりも一次粒径が小さくかつ分散性が優れたものが望まれてるようになっている。本発明者らの発明に基づく前記シリカ被覆金属酸化物粒子は、光触媒活性の抑制、使用感といった優れた特性を有してはいるが、化粧料配合時の透明性を高めるために、さらなる微粒子化と分散性の向上が望まれていた。
しかし、一次粒径の小さな金属酸化物紛は、溶媒に懸濁するとダマが発生するため、高分散させることが容易でなく、シリカ被覆に際し超音波を用いたり、攪拌を長時間行なうなど通常よりも余分な工程が必要なため、経済上問題であった。
本発明の第1の目的は、油性基材中での金属酸化物粒子の分散が良好であり、化粧時の使用感に優れ、紫外線遮蔽能が高く、光毒性の低く、保存安定性に優れた、化粧料を提供することであり、また特定の特性を有し、形状追随性の高い、緻密で実用的なシリカ被膜に被覆され、さらに表面が疎水化された金属酸化物粒子及びその経済的な製造法を提供することである。」(3頁15行~4頁6行)
(3)「シリカ膜の親水性は、1150~1250cm-1と1000~1100cm-1の赤外吸収スぺクトルの吸収ピーク強度の比I(I=I1/I2:式中I1は1150~1250cm-1の範囲内にある最大吸収ピーク強度、I2は1000~1100cm-1の範囲内にある最大吸収ピーク強度を表す。)で示される。すなわちI1はSiOHの変角振動の吸収であり、I2はSi-O-Siの伸縮振動の吸収であり、I1/I2値が大きいほど親水性は高いことになる。本発明における「適度な親水性」とは、この値が0.2以上である場合をいう。」(15頁10~18行)
(4)「まず、本発明の第1の側面において、化粧料は、疎水性付与剤で表面処理してなる表面疎水化被覆金属酸化物粒子を含む。この表面疎水化被覆金属酸化物粒子としては、表面が疎水化されていれば有効である。本発明者は、シリカ膜で金属酸化物粒子を被覆し、さらに表面疎水化してなる表面疎水化シリカ被覆金属酸化物粒子を配合することにより、所望の特性を有する化粧料が得られることを見出した。
しかし、好適には、1150~1250cm-1と1000~1100cm-1の赤外吸収スぺクトルの吸収ピーク強度の比I(I=I1/I2:式中I1は1150~1250cm-1の吸収ピーク強度、I2は1000~1100cm-1の吸収ピーク強度を表す。)が0.2以上であり、かつ屈折率が1.435以上であるシリカ膜に被覆された金属酸化物粒子を用い、この金属酸化物粒子をさらに疎水性付与剤で表面処理して表面疎水化シリカ被覆金属酸化物粒子を得る。」(16頁4~18行)
(5)「 (珪酸)
本発明において、シリカ被膜形成用組成物に用いられる珪酸とは、例えば化学大辞典(共立出版(株)昭和44年3月15日発行、第七刷)の『珪酸』の項に示される、オルト珪酸及びその重合体である、メタ珪酸、メソ珪酸、メソ三珪酸、メソ四珪酸等を示す。この「珪酸」は、有機基あるいはハロゲン基を含んでいないことに留意されるべきものである。
珪酸を含む組成物は、例えばテ卜ラアルコキシシラン(Si(OR)4、式中Rは炭化水素基、具体的にはテトラメ卜キシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テ卜ラn-ブトキシシラン等)に水、アルカリ、有機溶媒を添加、撹拌し、加水分解反応を進めることにより得られる。この方法は取扱いあるいは操作が容易で実用的であり好ましい。中でもテ卜ラエトキシシランは好ましい材料である。」(18頁6~19行)
(6)「(アルカリ)
シリカ被膜形成用組成物に用いられるアルカリは特に限定されないが、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ類、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機アルカリ塩類、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、アニリン、コリン、テ卜ラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、グアニジン等の有機アルカリ類、蟻酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、蟻酸モノメチルアミン、酢酸ジメチルアミン、乳酸ピリジン、グアニジノ酢酸、酢酸アニリン等の有機酸アルカリ塩を用いることができる。これらの中でも、アンモニア、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、蟻酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムが特に好ましい。アルカリはこれらの群から1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
・・・
アルカリ金属を主成分として含まないアルカリを用いることにより、アルカリ金属含有量の少ないシリカ被覆金属酸化物粒子を作成できる。中でも、成膜速度、残留物除去のしやすさから、アンモニア、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムが特に好ましい。」(19頁下から2行~21頁1行)
(7)「(疎水性付与剤)
本発明に用いられる疎水性付与剤は、特に限定されないが、例えば、ロウ、高級脂肪酸トリグリセライド、高級脂肪酸、高級脂肪酸多価金属塩、高級脂肪族硫酸化物の多価金属塩等の高級脂肪酸、高級アルコールまたはそれらの誘導体、パーフロロ化または部分フッ素化した高級脂肪酸及び高級アルコール等の有機フッ素化合物、シリコーン油類、有機アルコキシシラン類、有機クロロシラン類、及びシラザン類等の有機硅素化合物が使用できる。高級脂肪酸多価金属塩、シリコーン油、シランカップリング剤、アルコキシシラン類が好ましく用いられるが、特に実用的な効果の面からアルコキシシラン類、シランカップリング剤が好ましく用いられる。
・・・
本発明に用いられるシラザン類としては、特に制限はないが、へキサメチルジシラザン、N,N’-ビス(卜リメチルシリル)ウレア、N-卜リメチルシリルアセ卜アミド、ジメチルトリメチルシリルアミン、ジエチルトリメチルシリルアミン及び卜リメチルシリルイミダゾールが挙げられる。
本発明に用いられる有機アルコキシシラン類としては、特に制限はないが、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(β-メ卜キシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)卜リメ卜キシシラン、β-(3,4-エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシジルオキシプロピル卜リメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジエ卜キシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニルー7ーアミノプロピルトリメ卜キシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びγ-クロロプロピル卜リメトキシシランなどのシランカップリング剤及びメチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、ジメチルビニルエ卜キシシラン、フェニル卜リメトキシシラン、フェニル卜リエトキシシラン、ジフェニルジメトシシシラン及びジフェニルジエトキシシランが挙げられる。また、パーフルオロ化あるいは部分フルオロ化されたアルキル基を有するアルコキシシランも用いることが出来る。
(アルコキシシランによる処理)
特に、下式で表されるアルキルアルコキシシランが、好ましく用いられる。
式;R1(R2)nSiX3-n
(式中R1は炭素数1~4のアルキル基またはフェニル基、R2は水素基または炭素数1~4のアルキル基またはフェニル基、Xは炭素数1~4のアルコキシル基、nは0~2の整数である。)
本発明において、アルコキシシラン類による表面処理は、液相法、乾式法のいずれでも可能であるが、液相法が以下の点から好ましく用いられる。即ち、シリカ被膜形成組成物に金属酸化物粒子を接触させて、シリカ被覆を行った後、粉体を分離することなく、疎水性付与剤を添加して、必要があれば、アルカリ、水、溶媒を添加し、連続的に疎水性付与剤でシリカ被覆金属酸化物の表面処理を行うことができる。この方法は、中間の分離精製工程は省略でき、工業的に有利な製造法である。」(30頁9行~32頁19行)
(8)「(シリカ被覆金属酸化物粒子及びゾルの特性)
・・・
本発明で用いられる表面疎水化シリカ被覆金属酸化物粒子は、一次粒子径が5~500nm、好ましくは5~120nmであり、かつ、二次粒子径が0.5~10μmである。本発明のシリカ被覆金属酸化物ゾルのシリカ被覆金属酸化物粒子は、一次粒子径が1~100nm、より好ましくは5~20nmである。これらの範囲を外れると、良好な使用感と高い紫外線遮蔽能を合わせ持つ化粧料が得られない場合がある。なお、本発明でいう一次粒子、二次粒子は、久保輝一郎他編『粉体』p56~66,1979年発行、により定義されているものである。」(34頁4~24行)
(9)「実施例
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。但し、本発明はこれにより限定されるものではない。
(製造例1a) シリカ被覆チタニア粒子の製造
30L反応器に脱イオン水7.07kg、エタノール(純正化学製)25.43kg及び25質量%アンモニア水1.143kg(大盛化工製)を混合し、その中にチタニア粒子(昭和タイタニウム製チタニアF-4;一次粒子径30nm)1.765kgを分散させ、懸濁液1を調製した。次に、テトラエトキシシラン(ナカライテスク製)1.53kg及びエタノール659gを混合し、溶液1を調製した。攪拌翼で撹拌している懸濁液1に、溶液1を9時間かけて一定速度で加えた後、12時間熟成した。シリカ被膜形成及び熟成は25℃にて行った。
その後固形分を遠心濾過にて分離し、50℃で12時間真空乾燥して、シリカ被膜チタニア粒子を得た。
(製造例1b) 表面疎水化シリカ被覆チタニア粒子の製造
製造例1aと同様にシリカ成膜、熟成までの操作を行った。シリカ被覆チタニア粒子を反応液中に存在させたままで、25質量%アンモニア水430gを添加し、撹拌して懸濁液2とした。次に、ジメチルジエ卜キシシラン(東芝シリコーン製、TSL8122)330g及びエタノール330gを混合し、溶液2を調製した。撹拌している懸濁液2に溶液2を9時間かけて一定速度で加えた後、12時間熟成した。表面被覆及び熟成は45℃にて行った。
その後固形分を遠心濾過にて分離し、50℃で12時間真空乾燥して、表面疎水化シリカ被膜チタニア粒子を得た。
(製造例2a) シリカ被覆酸化亜鉛粒子の製造
50L反応器に脱イオン水20.19kg、エタノール(純正化学製)19.8kg及び25質量%アンモニア水204mL(大盛化工製)を混合し、その中に酸化亜鉛粒子(住友大阪セメン卜製MZ0350;一次粒子径37nm)1.914kgを分散させ、懸濁液3を調製した。次に、テトラエトキシシラン(ナカライテスク製)740gとエタノール488gを混合し、溶液3を調製した。
攪拌翼で撹拌している懸濁液3に、溶液3を9時間かけて一定速度で加えた後、12時間熟成した。シリカ成膜及び熟成は45℃にて行った。その後、固形分を遠心濾過にて分離し、50℃で12時間真空乾燥して、シリカ被膜酸化亜鉛粒子を得た。
(製造例2b) 表面疎水化シリカ被覆酸化亜鉛粒子の製造
製造例2aと同様にシリカ成膜、熟成までの操作を行った。シリカ被覆酸化亜鉛粒子を反応液中に存在させたままで、25質量%アンモニア水136mL及び脱イオン水200mLを添加し、撹拌して懸濁液4とした。次に、ジメチルジエトキシシラン(東芝シリコーン製、8122)400g及びエタノール400gを混合し、溶液4を調製した。攪拌翼で撹拌している懸濁液4に溶液4を12時間かけて一定速度で加えた後、12時間熟成した。表面被覆及び熟成は45℃にて行った。
その後固形分を遠心濾過にて分離し、50℃で12時間真空乾燥して、表面疎水化シリカ被膜酸化亜鉛粒子を得た。
(製造例3a~5a) シリカ被覆金属酸化物粒子の製造
製造例1のチタニアの代わりに酸化セリウム粒子、酸化ジルコニウム粒子、ベンガラ粒子をそれぞれ用い、他の製造条件は同様にしてシリカ被膜酸化セリウム粒子、シリカ被膜酸化ジルコニウム粒子、シリカ被膜ベンガラ粒子を得た。
(製造例3b~5b) 表面疎水化シリカ被覆金属酸化物粒子の製造
製造例1bのチタニアの代わりに酸化セリウム粒子、酸化ジルコニウム粒子、ベンガラ粒子をそれぞれ用い、他の製造条件は同様にしてシリカ被膜酸化セリウム粒子、シリカ被膜酸化ジルコニウム粒子、シリカ被膜ベンガラ粒子を得た。
・・・
また、製造例1b~5bで得られた表面疎水化シリカ被覆チタニア粒子についても一次粒子径、二次粒子、シリカ膜厚、テ卜ラリン自動酸化法による光触媒活性度及び撥水性を測定した。結果を表1に示す。
[図:0001413332000001.jpg]
」(41頁12行~44頁)
2 甲1に記載された発明
(1)甲1-1発明
甲1の上記2(9)には、(製造例1b)により、一次粒径が30nm、二次粒径が1.8μmである(表1)表面疎水化シリカ被膜チタニア粒子を得たことが記載されているところ、表面疎水化前のシリカ被覆チタニア粒子は、「製造例1aと同様にシリカ成膜、熟成までの操作を行った。」とされているから、(製造例1a)の内容を加味すると、(製造例1b)で製造された、表面疎水化シリカ被膜チタニア粒子として、以下の発明(以下、甲1-1発明という。)が記載されているといえる。
「30L反応器に脱イオン水7.07kg、エタノール25.43kg及び25質量%アンモニア水1.143kgを混合し、その中にチタニア粒子1.765kgを分散させ、懸濁液1を調製し、次に、テトラエトキシシラン1.53kg及びエタノール659gを混合し、溶液1を調製し、攪拌翼で撹拌している懸濁液1に、溶液1を9時間かけて一定速度で加えた後、12時間熟成し、シリカ被膜形成及び熟成は25℃にて行って得たシリカ被覆チタニア粒子を反応液中に存在させたままで、25質量%アンモニア水430gを添加し、撹拌して懸濁液2とし、次に、ジメチルジエ卜キシシラン330g及びエタノール330gを混合し、溶液2を調製し、撹拌している懸濁液2に溶液2を9時間かけて一定速度で加えた後、12時間熟成し、表面被覆及び熟成は45℃にて行い、その後固形分を遠心濾過にて分離し、50℃で12時間真空乾燥して得た、一次粒径が30nm、二次粒径が1.8μmである表面疎水化シリカ被膜チタニア粒子。」
(2)甲1-2発明
甲1の上記2(9)には、(製造例2b)により、一次粒径が37nm、二次粒径が2.4μmである(表1)表面疎水化シリカ被膜酸化亜鉛粒子を得たことが記載されているところ、表面疎水化前のシリカ被覆酸化亜鉛粒子は、「製造例2aと同様にシリカ成膜、熟成までの操作を行った。」とされているから、(製造例2a)の内容を加味すると、(製造例2b)で製造された、表面疎水化シリカ被膜酸化亜鉛粒子として、以下の発明(以下、甲1-2発明という。)が記載されているといえる。
「50L反応器に脱イオン水20.19kg、エタノール19.8kg及び25質量%アンモニア水204mLを混合し、その中に酸化亜鉛粒子1.914kgを分散させ、懸濁液3を調製し、次に、テトラエトキシシラン740gとエタノール488gを混合し、溶液3を調製し、攪拌翼で撹拌している懸濁液3に、溶液3を9時間かけて一定速度で加えた後、12時間熟成し、シリカ成膜及び熟成は45℃にて行って得たシリカ被覆酸化亜鉛粒子を反応液中に存在させたままで、25質量%アンモニア水136mL及び脱イオン水200mLを添加し、撹拌して懸濁液4とし、次に、ジメチルジエトキシシラン400g及びエタノール400gを混合し、溶液4を調製し、攪拌翼で撹拌している懸濁液4に溶液4を12時間かけて一定速度で加えた後、12時間熟成し、表面被覆及び熟成は45℃にて行い、その後固形分を遠心濾過にて分離し、50℃で12時間真空乾燥して得た、一次粒径が37nm、二次粒径が2.4μmである表面疎水化シリカ被膜酸化亜鉛粒子。」
3 甲1-1発明を主引用発明とした新規性、進歩性について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1-1発明を対比する。
(ア)甲1-1発明の「チタニア粒子」、「ジメチルジエ卜キシシラン」、「一次粒径」及び「二次粒径」は、それぞれ、本件発明1の「(A)無機粒子である固体粒子」、「(C)オルガノアルコキシシラン」、「一次粒子径」及び「二次粒子径」に相当する。
(イ)甲1-1発明の「シリカ被膜チタニア粒子」は、「チタニア粒子」に、「シリカ被覆」を行ったものであるから、本件発明1の「表面が(B)シリカで被覆され」た「(A)無機粒子である固体粒子」に相当する。
また、甲1の上記2(9)に記載される(製造例1b)としての「表面疎水化シリカ被膜チタニア粒子」の製造の中における「シリカ被覆チタニア粒子」は、「製造例1aと同様にシリカ成膜、熟成までの操作を行った。」とされているところ、同(9)の(製造例1a)の「その中にチタニア粒子・・・1.765kgを分散させ、懸濁液1を調製した。テトラエトキシシラン(ナカライテスク製)1.53kg及びエタノール659gを混合し、溶液1を調製した。攪拌翼で撹拌している懸濁液1に、溶液1を9時間かけて一定速度で加えた後、12時間熟成した。シリカ被膜形成及び 熟成は25℃にて行った。
その後固形分を遠心濾過にて分離し、50℃で12時間真空乾燥して、シリカ被膜チタニア粒子を得た。」との記載によれば、最終的に得られた固形分として、例えば、テトラエトキシシランがチタニア粒子の被膜とならずに析出したシリカ粒子など、シリカ被膜チタニア粒子以外のものの言及はないから、甲1-1発明における「シリカ被覆チタニア粒子」において、反応液に添加したテトラエトキシシランのほぼ全量がチタニア粒子のシリカ被膜となっているといえる。
そして、甲1-1発明において、シリカ被覆チタニア粒子を得る際には、チタニア粒子1.765kgに対し、テトラエトキシシランを1.53kg用いているから、テトラエトキシシラン(分子量208.33)から得られる、チタニア粒子の被膜であるシリカ(SiO2:モル質量60.08)の質量は、0.441kg((1.53/208.33)×60.08)であり、チタニア粒子を100重量部とすると、25.0重量部((0.441/1.765)×100)となる。
そうすると、甲1-1発明における「チタニア粒子1.765kgを分散させ、懸濁液1を調製し、次に、テトラエトキシシラン1.53kg及びエタノール659gを混合し、溶液1を調製し、攪拌翼で撹拌している懸濁液1に、溶液1を9時間かけて一定速度で加えた後、12時間熟成し、シリカ被膜形成」した「表面疎水化シリカ被膜チタニア粒子」は、本件発明1の「(A)無機粒子である固体粒子の表面が(B)シリカで被覆され」「(A)固体粒子100質量部に対して、(B)シリカが0.5~100質量部であるシリカ被覆粒子」に相当する。
(ウ)甲1の上記2(4)の「好適には、1150~1250cm-1と1000~1100cm-1の赤外吸収スぺクトルの吸収ピーク強度の比I(I=I1/I2:式中I1は1150~1250cm-1の吸収ピーク強度、I2は1000~1100cm-1の吸収ピーク強度を表す。)が0.2以上であり、かつ屈折率が1.435以上であるシリカ膜に被覆された金属酸化物粒子を用い、この金属酸化物粒子をさらに疎水性付与剤で表面処理して表面疎水化シリカ被覆金属酸化物粒子を得る。」との記載によれば、甲1-1発明における「シリカ被覆チタニア粒子」(表面疎水化される前のもの)は、1150~1250cm-1の範囲内にある吸収ピーク強度I1を有しているところ、同(3)の「すなわちI1はSiOHの変角振動の吸収であり、I2はSi-O-Siの伸縮振動の吸収であり、I1/I2値が大きいほど親水性は高いことになる。」との記載によれば、この吸収ピーク強度I1は、SiOHの存在を意味しているといえるから、甲1-1発明における「シリカ被覆チタニア粒子」は、その表面にSiOH、すなわち、水酸基を有しているといえる。
そして、甲1-1発明において、シリカ被覆チタニア粒子を得る際に、水、エタノール、アンモニア及びテトラエトキシシランを含む反応液中でテトラエトキシシランからシリカが形成されている反応(脱水縮合反応)が生じていることを考慮すると、甲1-1発明の表面疎水化の段階で、水、エタノール及びアンモニア、さらに、テトラエトキシシランと同じ反応基であるエ卜キシ基を有するジメチルジエ卜キシシランを含む反応液中で、シリカが形成される場合と同様の脱水反応(ジメチルジエ卜キシシランとシリカ被覆チタニア粒子のシリカ表面の水酸基との間の脱水反応)が起こっていると考えることが合理的である。
そうすると、甲1-1発明の「シリカ被覆チタニア粒子を反応液中に存在させたままで、25質量%アンモニア水430gを添加し、撹拌して懸濁液2とし、次に、ジメチルジエ卜キシシラン330g及びエタノール330gを混合し、溶液2を調製し、撹拌している懸濁液2に溶液2を9時間かけて一定速度で加えた後、12時間熟成し、表面被覆及び熟成は45℃にて行い、その後固形分を遠心濾過にて分離し、50℃で12時間真空乾燥して得た」、「表面疎水化シリカ被膜チタニア粒子」は、本件発明1の「(B)シリカの表面の水酸基の一部又は全部が、(C)オルガノアルコキシシラン、その加水分解物及びオルガノシラザンから選ばれる1種以上と反応したシリカ被覆粒子」に相当する。
(エ)上記(ア)~(ウ)によれば、本件発明1と甲1-1発明は、「(A)無機粒子である固体粒子の表面が(B)シリカで被覆され、この(B)シリカの表面の水酸基の一部又は全部が、(C)オルガノアルコキシシラン、その加水分解物及びオルガノシラザンから選ばれる1種以上と反応したシリカ被覆粒子であって、(A)固体粒子100質量部に対して、(B)シリカが0.5~100質量部であるシリカ被覆粒子。」で一致し、以下の点で相違しているといえる。
<相違点1>
シリカ被覆粒子が、本件発明1では、「一次粒子径が5~500nmかつ二次粒子径が0.5~10μmであるものを除く」とされるものであるのに対し、甲1-1発明では、一次粒径が30nm、二次粒径が1.8μmとされるものである点。
イ 相違点1に対する判断
(ア)甲1-1発明における表面疎水化シリカ被膜チタニア粒子は、一次粒径が30nm、二次粒径が1.8μmであり、本件発明1で、除くとされている「一次粒子径が5~500nmかつ二次粒子径が0.5~10μmであるもの」に該当するから、上記相違点1は、実質的なものである。
そうすると、本件発明1は、甲1-1発明ではない。
(イ)次に、上記相違点1に係る本件発明1の構成を当業者が容易に想到し得るか否か、すなわち、甲1-1発明の一次粒径が30nm、二次粒径が1.8μmである表面疎水化シリカ被膜チタニア粒子において、一次粒径を5~500nmの範囲外かつ二次粒径を0.5~10μmの範囲外とすることが、当業者にとって容易に想到し得るか否かについて以下、検討する。
まず、甲1-1発明では、上記1(9)にあるように、チタニア粒子、シリカ被膜の原料となるテトラエトキシラン、表面疎水化のための原料となるジメチルジエトキシランの特定の配合量、特定の反応の条件の設定により、特定の一次粒径及び二次粒径の粒子が製造されるといえるから、これらの製造における諸条件を再度設定し直して、甲1-1発明の表面疎水化シリカ被膜チタニア粒子と異なる一次粒径及び二次粒径を有するものを得ようとする動機付けがあるとはいえない。
また、上記1(2)によれば、甲1-1発明は、「油性基材中での金属酸化物粒子の分散が良好であり、化粧時の使用感に優れ、紫外線遮蔽能が高く、光毒性の低く、保存安定性に優れた、化粧料を提供すること」を発明の課題としているところ、甲1-1発明において、表面疎水化シリカ被膜チタニア粒子の一次粒径を30nm、二次粒径を1.8μmとする技術的な意義は、上記1(8)の「本発明で用いられる表面疎水化シリカ被覆金属酸化物粒子は、一次粒子径が5~500nm、好ましくは5~120nmであり、かつ、二次粒子径が0.5~10μmである。本発明のシリカ被覆金属酸化物ゾルのシリカ被覆金属酸化物粒子は、一次粒子径が1~100nm、より好ましくは5~20nmである。これらの範囲を外れると、良好な使用感と高い紫外線遮蔽能を合わせ持つ化粧料が得られない場合がある。」との記載によれば、良好な使用感と高い紫外線遮蔽能を合わせ持つ化粧料を得ることにある。
そうすると、甲1-1発明において、表面疎水化シリカ被覆チタニア粒子の一次粒径を、5~500nmの範囲以外、かつ、二次粒径を0.5~10μmの範囲外とした場合には、良好な使用感と高い紫外線遮蔽能を合わせ持つ化粧料を得ることができなくなり、甲1-1発明における上記の課題を解決できないものとなる。
したがって、甲1-1発明において、表面疎水化シリカ被覆チタニア粒子の一次粒径を5~500nmの範囲外、かつ、二次粒径を0.5~10μmの範囲外にすることには阻害要因がある。
以上によれば、甲1-1発明において、上記相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものではない。
ウ 小括
上記イで述べたとおり、上記相違点1は、実質的な相違点であるし、甲1-1発明において、上記相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではないから、本件発明1は、甲1-1発明ではないし、甲1-1発明に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。
(2)本件発明2、5について
本件発明2、5は、本件発明1を直接又は間接的に引用し、少なくとも本件発明1の構成をすべて具備するものであるから、本件発明1と同様に、甲1-1発明ではないし、甲1-1発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
4 甲1-2発明を主引用発明とした新規性、進歩性について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1-2発明を対比する。
(ア)甲1-2発明の「酸化亜鉛粒子」、「ジメチルジエ卜キシシラン」、「一次粒径」及び「二次粒径」は、それぞれ、本件発明1の「(A)無機粒子である固体粒子」、「(C)オルガノアルコキシシラン」、「一次粒子径」及び「二次粒子径」に相当する。
(イ)甲1-2発明の「シリカ被覆酸化亜鉛粒子」は、「酸化亜鉛粒子」に、「シリカ被覆」を行ったものであるから、本件発明1の「表面が(B)シリカで被覆され」た「(A)無機粒子である固体粒子」に相当する。
また、甲1-2発明における「シリカ被覆酸化亜鉛粒子」において、反応液に添加したテトラエトキシシランのほぼ全量が酸化亜鉛粒子のシリカ被膜となっているといえることは、上記3(1)ア(イ)で述べたとおりである。
そして、甲1-2発明において、シリカ被覆酸化亜鉛粒子を得る際には、酸化亜鉛粒子1.914kgに対し、テトラエトキシシランを740g(0.74kg)用いているから、テトラエトキシシラン(分子量208.33)から得られる酸化亜鉛粒子の被膜であるシリカ(SiO2:モル質量60.08)の質量は、0.213kg((0.74/208.33)×60.08)であり、酸化亜鉛粒子を100重量部とすると、11.1重量部((0.213/1.914)×100)となる。
そうすると、甲1-2発明における「酸化亜鉛粒子1.914kgを分散させ、懸濁液3を調製し、次に、テトラエトキシシラン740gとエタノール488gを混合し、溶液3を調製し、攪拌翼で撹拌している懸濁液3に、溶液3を9時間かけて一定速度で加えた後、12時間熟成し、シリカ成膜」を行った「表面疎水化シリカ被覆酸化亜鉛粒子」は、本件発明1の「(A)無機粒子である固体粒子の表面が(B)シリカで被覆され」「(A)固体粒子100質量部に対して、(B)シリカが0.5~100質量部であるシリカ被覆粒子」に相当する。
(ウ)甲1-2発明の表面疎水化シリカ被膜酸化亜鉛粒子が、本件発明1のシリカ被覆粒子と同様に、シリカ被膜酸化亜鉛粒子(表面疎水化される前のもの)の表面の水酸基にジメチルジエ卜キシシランが反応したものであることは、上記3(1)イ(ウ)で述べたとおりである。
そうすると、甲1-2発明の「シリカ被覆酸化亜鉛粒子を反応液中に存在させたままで、25質量%アンモニア水136mL及び脱イオン水200mLを添加し、撹拌して懸濁液4とし、次に、ジメチルジエトキシシラン400g及びエタノール400gを混合し、溶液4を調製し、攪拌翼で撹拌している懸濁液4に溶液4を12時間かけて一定速度で加えた後、12時間熟成し、表面被覆及び熟成は45℃にて行い、その後固形分を遠心濾過にて分離し、50℃で12時間真空乾燥して得た」、「表面疎水化シリカ被膜酸化亜鉛粒子」は、本件発明1の「(B)シリカの表面の水酸基の一部又は全部が、(C)オルガノアルコキシシラン、その加水分解物及びオルガノシラザンから選ばれる1種以上と反応したシリカ被覆粒子」に相当する。
(エ)上記(ア)~(ウ)によれば、本件発明1と甲1-2発明は、「(A)無機粒子である固体粒子の表面が(B)シリカで被覆され、この(B)シリカの表面の水酸基の一部又は全部が、(C)オルガノアルコキシシラン、その加水分解物及びオルガノシラザンから選ばれる1種以上と反応したシリカ被覆粒子であって、(A)固体粒子100質量部に対して、(B)シリカが0.5~100質量部であるシリカ被覆粒子。」で一致し、以下の点で相違しているといえる。
<相違点2>
シリカ被覆粒子が、本件発明1では、「一次粒子径が5~500nmかつ二次粒子径が0.5~10μmであるものを除く」とされるものであるのに対し、甲1-2発明では、一次粒径が37nm、二次粒径が2.4μmとされるものである点。
イ 相違点2に対する判断
(ア)甲1-2発明における表面疎水化シリカ被膜酸化亜鉛粒子は、一次粒径が37nm、二次粒径が2.4μmであり、本件発明1で、除外されている「一次粒子径が5~500nmかつ二次粒子径が0.5~10μmであるもの」に該当するから、上記相違点2は、実質的なものである。
そうすると、本件発明1は、甲1-2発明ではない。
(イ)甲1-2発明では、酸化亜鉛粒子、シリカ被膜の原料となるテトラエトキシラン、表面疎水化のための原料となるジメチルジエトキシランの特定の配合量、特定の反応の条件の設定により、特定の一次粒径及び二次粒径の粒子が製造されるといえることは、甲1-1発明と同じであるし、また、甲1-2発明において、表面疎水化シリカ被膜酸化亜鉛粒子の一次粒径を37nm、二次粒径を2.4μmとする技術的な意義も、甲1-1発明と同じであるから、上記3(1)イで述べたのと同様に、甲1-2発明には、表面疎水化シリカ被覆酸化亜鉛粒子の一次粒径を5~500nmの範囲外、かつ、二次粒径を0.5~10μmの範囲外とする動機付けはないし、甲1-2発明において、表面疎水化シリカ被覆酸化亜鉛粒子の一次粒径を5~500nmの範囲外、かつ、二次粒径を0.5~10μmの範囲外とすることには、阻害要因があるから、甲1-2発明において、上記相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものではない。
ウ 小括
上記イで述べたとおり、上記相違点2は、実質的な相違点であるし、甲1-2発明において、上記相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではないから、本件発明1は、甲1-2発明ではないし、甲1-2発明に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。
(2)本件発明2、5について
本件発明2、5は、本件発明1を直接又は間接的に引用し、少なくとも本件発明1の構成をすべて具備するものであるから、本件発明1と同様に、甲1-2発明ではないし、甲1-2発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
5 申立理由1、2における、甲1-1発明及び甲1-2発明以外の甲1に記載された発明を主引用発明とした新規性、進歩性について
本特許異議申立書では、上記1(9)に記載された(製造例1a)及び(製造例1b)に基づく甲1-1発明、(製造例2a)及び(製造例2b)に基づく甲1-2発明に加えて、(製造例3a~5a)及び(製造例3b~5b)に基づく発明を主引用発明とする場合の新規性欠如及び進歩性欠如も主張されている(特に、37頁8行~44頁16行)。
甲1-1発明として認定した(製造例1b)で製造された表面疎水化シリカ被覆チタニア粒子、甲1-2発明として認定した(製造例2b)で製造された表面疎水化シリカ被覆酸化亜鉛粒子が、本件発明1の「シリカ被覆粒子」に対応していたのと同様に、(製造例3b~5b)で製造された表面疎水化シリカ被覆金属酸化物粒子が、本件発明1の「シリカ被覆粒子」に対応しているところ、同(9)の記載によれば、(製造例3a~5a)は、「シリカ被覆金属酸化物粒子の製造」として、「製造例1のチタニアの代わりに酸化セリウム粒子、酸化ジルコニウム粒子、ベンガラ粒子をそれぞれ用い、他の製造条件は同様にしてシリカ被膜酸化セリウム粒子、シリカ被膜酸化ジルコニウム粒子、シリカ被膜ベンガラ粒子を得た。」とされるものであり、(製造例3b~5b)は、「表面疎水化シリカ被覆金属酸化物粒子の製造」として、「製造例1bのチタニアの代わりに酸化セリウム粒子、酸化ジルコニウム粒子、ベンガラ粒子をそれぞれ用い、他の製造条件は同様にしてシリカ被膜酸化セリウム粒子、シリカ被膜酸化ジルコニウム粒子、シリカ被膜ベンガラ粒子を得た。」とされるものである。
そして、これらの記載と、(製造例3b~5b)が引用する製造例1bの「製造例1aと同様にシリカ成膜、熟成までの操作を行った。」との記載によれば、(製造例3b~5b)で製造される「表面疎水化シリカ被覆金属酸化物粒子」は、(製造例3a~5a)で製造される「シリカ被覆金属酸化物粒子」(表面疎水化がなされていない)の製造における、シリカ成膜、熟成までの操作と同様の操作が行われ、その後、表面疎水化が行われたものであるといえる。
そして、同(9)の表1によれば、(製造例3b~5b)で製造される「表面疎水化シリカ被覆金属酸化物粒子」の一次粒径及び二次粒径は、それぞれ、製造例3bで95nm及び3.6μm、製造例4bで80nm及び2.9μm、製造例5bで90nm及び4.6μmである。
そうすると、(製造例3a)及び(製造例3b)に基づく発明として、甲1-1発明において、チタニア粒子が、酸化セリウム粒子である一次粒径が95nm、二次粒径が3.6μmである表面疎水化シリカ被膜酸化セリウム粒子の発明、(製造例4a)及び(製造例4b)に基づく発明として、甲1-1発明において、チタニア粒子が、酸化ジルコニウム粒子である一次粒径が80nm、二次粒径が2.9μmである表面疎水化シリカ被膜酸化ジルコニウム粒子の発明、(製造例5a)及び(製造例5b)に基づく発明として、甲1-1発明において、チタニア粒子が、ベンガラ粒子である一次粒径が90nm、二次粒径が4.6μmである表面疎水化シリカ被膜ベンガラ粒子の発明が認定できるといえる。
そして、これらの発明と本件発明1を対比しても、相違点は、上記3(1)アの相違点1と同様のものとなり、その相違点1についての判断も、同イで述べたとおりである。
以上によれば、(製造例3a~5a)及び(製造例3b~5b)に基づく発明を主引用発明とした場合であっても、本件発明1は、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。
また、本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2、5も、本件発明1と同様に、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
第6 むすび
上記第5で検討したとおり、本件特許1、2、5は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるということはできず、同法第113条第2号に該当するものではないから、上記取消理由1、2及び申立理由1、2では、本件特許1、2、5を取り消すことはできない。
また、他に本件特許1、2、5を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件特許3は、本件訂正により削除され、本件特許3に対する特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700959