特許異議申立
2023-700948
ビールテイスト飲料、ビールテイスト飲料の製造方法、及びビールテイスト飲料の香味を改善する方法
- 審判番号
- 2023-700948
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-093131
- 登録番号
- 7237443
- 請求日
- 2023年09月12日
- 審決日
- 2023年12月04日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】サッポロビール株式会社
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】清水 義憲
- 【権利者代理人】坂西 俊明
- 【権利者代理人】江守 英太
- 【異議申立人】山内 慶子
- 審判長/審判官
- 審判長 加藤 友也
- 審判官 中村 和正
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.113-Y (C12G) / P1651.121-Y (C12G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7237443号発明「ビールテイスト飲料、ビールテイスト飲料の製造方法、及びビールテイスト飲料の香味を改善する方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7237443号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7237443号(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成29年5月9日を出願日とする特許出願であって、令和5年3月3日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年同月13日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年9月12日に特許異議申立人 山内 慶子(以下、「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立て(対象となる請求項:請求項1ないし5)がされ、同年10月11日に特許異議申立人より補正書と上申書が提出されたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、これらの発明を順に「本件特許発明1」、「本件特許発明2」などという場合がある。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
原料として麦芽及び糖類を含み、原料中の麦芽の比率が50質量%以上67質量%未満であり、糖質含有量が0.59g/100ml以下であり、タンパク質含有量が0.25g/100ml以上0.60g/100ml以下である、ビールテイスト飲料。
【請求項2】
原料中の糖類の比率が30質量%以上50質量%未満である、請求項1に記載のビールテイスト飲料。
【請求項3】
酢酸イソアミル濃度が4.0ppm以下である、請求項1又は2に記載のビールテイスト飲料。
【請求項4】
麦芽を含む原料を用い、
原料中の麦芽の比率が50質量%以上67質量%未満であり、
糖質原料としてショ糖を用い、
ビールテイスト飲料の糖質含有量が0.59g/100ml以下、タンパク質含有量が0.25g/100ml以上0.60g/100ml以下となるように調整することを含む、ビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項5】
糖質原料としてショ糖を用い、ビールテイスト飲料の糖質含有量が0.59g/100ml以下、タンパク質含有量が0.25g/100ml以上0.60g/100ml以下となるように調整することを含む、原料中の麦芽の比率が50質量%以上67質量%未満であるビールテイスト飲料の香味を改善する方法。」
第3 特許異議申立理由の概要
特許異議申立人が申し立てた請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第2号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
3 申立理由3(甲第2号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
4 証拠方法
・甲第1号証:米国特許第3717471号明細書
・甲第2号証:国際公開第2017/038437号
・甲第3号証:日本食品分析センターHP「よくある質問」、「栄養成分表示関連」、「炭水化物や糖質は計算とありますが、どのようにして求めるのですか。また、食物繊維との関係はどうなりますか。加えて、表示上の注意点がありますか?」、[online]、https://www.jfrl.or.jp/question
・甲第4号証:英独和ビール用語辞典、吉田重厚著、財団法人日本醸造協会、平成16年2月15日発行、第164頁
・甲第5号証:特開昭56-117789号公報
・甲第6号証:醸造物の成分(ビール編)、財団法人日本醸造協会、平成11年12月10日発行、第196頁ないし第201頁、第210頁ないし第213頁
・甲第7号証:食品表示基準 別添 栄養成分等の分析方法等、消費者庁(消食表第139号)、平成27年3月30日
・甲第7号証の1:「食品表示基準について」、消費者庁次長、消食表第139号、平成27年3月30日
・甲第7号証の2:「別添 栄養成分等の分析方法等」、目次及び第1頁ないし第3頁
・甲第7号証の3:「別添一覧」
・甲第7号証の4:消費者庁HPにおける、「食品表示法等(法令及び一元化情報」の頁
上記証拠のうち、甲第7号証の1ないし甲第7号証の4は、令和5年10月11日に提出された上申書に添付して提出されたものである。
証拠の記載については、おおむね特許異議申立書及び令和5年10月11日に提出された上申書の記載にしたがった。
第4 当審の判断
以下のとおり、当審は、いずれの特許異議申立理由も、その理由がないものと判断する。
1 申立理由1(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性)について
(1) 甲第1号証の記載事項等
ア 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、「PREPARATION OF A LOW CARBOHYDRATE BEER」に関し、次の記載がある。なお、甲第1号証は外国語文献のため、以下、訳文のみを摘記する。
「グルコース(デキストロース)は実質的に完全に発酵可能であり、容易に入手可能であるため、好ましい糖である。必要な発酵性を有する他の単糖類または二糖類、例えばスクロースを、他の糖類とともに、または他の糖類と混合して使用することも可能である。」(第4欄第2行ないし第7行)
「実際には、所定のタンパク質含有量のビールを製造するために必要な麦芽エキスの量が決定される。ビールのタンパク質は約0.15~0.4重量%で、一般的には約0.25~0.3重量%が好ましい。」(第4欄第8行ないし第11行)
「実施例1の麦芽を大規模なビール製造に使用した。麦芽は、約80%が2mmのふるい目を有する10号米国ふるいシリーズスクリーン上に残るように粉砕された。
最初の麦芽3400ポンドを85バレルの水と5ポンドのタンパク質分解酵素(Mashase、ファイザー社製)と混合し、攪拌しながら38℃に1時間維持した。その後、マッシュを麦汁ろ過槽に入れ、15分間静置した。その後、麦汁ろ過を開始した。麦汁は10分間循環させた後、澱粉変換のために麦汁を約65℃に保つように加熱したケトルに集めた。ろ過中、麦汁には2900ポンドのグルコースと1ポンドの糖化酵素(HT-1000、Miles Laboratories社製)が加えられた。ロイター内の液面は約30分で穀物床まで下がり、その後38℃の醸造用水を加え、合計約140バレルの麦汁がケトル内に溜まるまで回収した。追加の醸造用水を直接ケトルに流し、165バレルにした。
麦汁を1時間30分煮沸し、その間に36ポンドのホップを加えた。そのうち12ポンドを煮沸30分後、24ポンドを煮沸1時間25分後に加えた。麦汁は約12℃まで冷却された。麦汁は8.9プラトーの冷却エキスと0.47%のタンパク質含量を有していた。
2回目の麦芽3400ポンドを1回目と同じ方法で糖化した。糖化後、最初の50バレルのエキスを回収した。2700ポンドのグルコースと0.75ポンドの糖化酵素(HT・1000) を麦汁に加え、澱粉変換のために約65℃に保った。
総麦汁量が約160バレルになるように水を加え、最初の麦汁と同様に煮沸とホップ添加を行った。第2麦汁の冷却エキスは7.4プラトーで、タンパク質含量は0.31%であった。最初の麦汁と2番目の麦汁を合わせて、総容量は300バレルになった。この麦汁のタンパク質含有率は0.40%、冷却エキスは8.15プラトーであった。この麦汁に5ポンドの糖化酵素(Brewers Fermex, Wallerstein Company社製)を添加し、麦汁にビール酵母を1バレル当たり1ポンドの割合で投入した。麦汁は9~11℃で9日間発酵させ、その後2日間放置した。その後、一部をろ過し、分析用に瓶詰めした。ビールの分析結果を表3に示す。」(第6欄第9行ないし第56行)
「表3
リアルエキス、% 1.12
アルコール、% 3.49
色度、°Lov. 2.7
pH 4.00
タンパク質、% 0.21
還元糖、%マルトース 0.39
デキストリン、% 0.05
R.D.F.、% 85.2
泡、シグマ 81
灰分、% 0.10
炭水化物/タンパク質比 3.6/1
カロリー/12オンス 102.6
炭水化物カロリー/オンス 0.96」(第6欄「Table3」)
「表6(Run 2)
麦汁:
色度、煮沸後、゜Lov 2.1
pH 5.35
タンパク質、% 0.53
ビール:
リアルエキス、% 1.58
アルコール、% 3.33
R.D.F、% 81.1
pH 3.80
タンパク質、% 0.31
泡、シグマ 130
色度、゜Lov 1.6
還元糖、%マルトース 0.55
デキストリン、% 0.50
炭水化物/タンパク質比 3.8/1
カロリー/12オンス 106
炭水化物カロリー/オンス 1.39」(第8欄「Table6」)
「表7
麦汁:
色度、煮沸後、゜Lov 3.7
pH 5.10
タンパク質、% 0.57
エキス、゜プラトー 8.37
ビール:
リアルエキス、% 1.62
アルコール、% 3.24
R.D.F.% 80.7
pH 4.18
タンパク質、% 0.38
泡、シグマ 102
色度、°Lov 2.9
炭水化物/タンパク質比 3.0/1
カロリー/12オンス 104
炭水化物カロリー/オンス 1.36」(第8欄「Table7」)
イ 甲第1号証に記載された発明
上記アの記載、特に実施例2及び表3の記載を中心に整理すると、甲第1号証には、次の発明が記載されているものと認める。
「原料として麦芽6800ポンドとグルコース5600ポンドを含み、リアルエキス1.12wt%、アルコール3.49wt%、タンパク質0.21wt%、還元糖0.39wt%、デキストリン0.05wt%、炭水化物/タンパク質が3.6/1である、ビール。」(以下、「甲1発明」という。)
「原料として麦芽6800ポンドとグルコース5600ポンドを含み、リアルエキス1.12wt%、アルコール3.49wt%、タンパク質0.21wt%、還元糖0.39wt%、デキストリン0.05wt%、炭水化物/タンパク質が3.6/1である、ビールの製造方法。」(以下、「甲1製法発明」という。)
(2) 対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「グルコース」、「ビール」はそれぞれ、本件特許発明1の「糖類」、「ビールテイスト飲料」に相当する。
また、甲1発明の麦芽比率は、麦芽6800ポンド/(麦芽6800ポンド+グルコース5600ポンド)=54.8質量%と概算されるから、本件特許発明1の「原料中の麦芽比率が50質量%以上67質量%未満」との特定事項を満たす。
してみると、両者は、
「原料として麦芽及び糖類を含み、原料中の麦芽の比率が50質量%以上67質量%未満である、ビールテイスト飲料。」
で一致し、次の点で相違する。
(相違点1-1)
ビールテイスト飲料における糖質含有量について、本件特許発明1は「0.59g/100ml以下」と特定されるのに対し、甲1発明では不明である点。
(相違点1-2)
ビールテイスト飲料のタンパク質含有量に関し、本件特許発明1は「0.25g/100ml以上0.60g/100ml以下」と特定されるのに対し、甲1発明は「0.21wt%」である点。
事案に鑑み、相違点1-2について検討する。
甲第1号証には、「実際には、所定のタンパク質含有量のビールを製造するために必要な麦芽エキスの量が決定される。ビールのタンパク質は約0.15~0.4重量%で、一般的には約0.25~0.3重量%が好ましい。」(第4欄第8行ないし第11行)との記載があるものの、当該記載を根拠に甲1発明のタンパク質含有量を増大させると、甲1発明であるビールの組成における他の成分の割合も変わるため、甲第1号証の上記記載を直ちに採用することができない。
また、仮に、甲1発明においてタンパク質含有量を増大させ、相違点1-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすことができたとしても、本件特許発明1は、その発明特定事項を満たすことにより、「低糖質でありながら、良好な酸味と濃醇さを有し、かつエグ味と硫化物臭が低減され、全体として香味が改善されたビールテイスト飲料を提供する」(【0006】)との、いずれの証拠の記載からも予期できない格別の効果を奏するものである。
よって、甲1発明において、タンパク質含有量を増大させ、相違点1-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
してみると、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3はいずれも、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
そして、上記アのとおり、本件特許発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである本件特許発明2及び3もまた、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件特許発明4について
本件特許発明4と甲1製法発明とを対比すると、上記アの場合と同様の相当関係がとれ、両者は、
「麦芽を含む原料を用い、
原料中の麦芽の比率が50質量%以上67質量%未満であり、
糖質原料を用いた、
ビールテイスト飲料の製造方法。」
で一致し、次の点で相違する。
(相違点1-3)
ビールテイスト飲料における糖質含有量について、本件特許発明1は「0.59g/100ml以下」となるように調整するものであるのに対し、甲1製法発明では不明である点。
(相違点1-4)
ビールテイスト飲料のタンパク質含有量に関し、本件特許発明1は「0.25g/100ml以上0.60g/100ml以下」となるように調整するものであるのに対し、甲1製法発明は「0.21wt%」である点。
事案に鑑み、相違点1-4について検討する。
相違点1-4は、実質的に相違点1-2と同旨であり、上記アの場合と同様に判断される。
よって、甲1製法発明において、タンパク質含有量を増大させるように調整し、相違点1-4に係る本件特許発明4の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
してみると、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明4は、甲1製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件特許発明5について
本件特許発明5は、「ビールテイスト飲料の香味を改善する方法」の発明であるところ、甲第1号証の全ての記載を見ても、「ビールテイスト飲料の香味を改善する方法」に対応する発明を認定することができない。
よって、本件特許発明5は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3) 申立理由1についてのまとめ
上記(2)のとおりであるから、申立理由1の理由によって、本件特許発明1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由2及び3(甲第2号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
(1) 甲第2号証の記載事項等
ア 甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、「ビール様発泡性飲料の製造方法」に関し、次の記載がある。
「[0001] 本発明は、発酵原料に対する麦使用比率が高いにもかかわらず、低糖質なビール様発泡性飲料に関する。」
「[0007] 本発明は、発酵原料に対する麦使用比率が高いにもかかわらず、過度な希釈を要することなく、低糖質なビール様発泡性飲料を製造する方法を提供することを目的とする。」
「[0008] 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、仕込工程において、発酵原料を、グルコアミラーゼ、又は、グルコアミラーゼ及びプルナラーゼにより糖化すること、及び固形原料と原料水(張湯)の質量比を一定の割合以上とすることにより、発酵原料に対する麦使用比率が高い場合であっても、低糖質のビール様発泡性飲料を製造できることを見出し、本発明を完成させた。」
「[0064][実施例4]
原料として麦芽、水4000mL、グルコアミラーゼ(アマノエンザイム社、「グルクザイムNLP」)15g、及びプルラナーゼ(アマノエンザイム社、「アマノ3」)15gを混合した。グルコアミラーゼの添加量は、麦芽1gあたり63Uであり、プルラナーゼの添加量は、麦芽1gあたり45.0Uであった。得られた混合物を62℃で240分間、その後76℃で5分間加熱処理する仕込みダイアグラムで仕込を行い、マイシェ液を得た。得られたマイシェ液を濾過した後、ホップ1g、硫酸アンモニウム0.3w/v%、酵母エキス0.1w/v%、及びショ糖を添加して30分間煮沸し、麦汁を得た。得られた麦汁を発酵させて濾過し、ビール様発泡性飲料を得た。各飲料において、使用した麦芽とショ糖の使用量、及び麦芽使用比率(麦芽とショ糖の合計使用量に対する麦芽の使用量の比率)を表4に示す。
[0065] 得られた各ビール様発泡性飲料の糖質とプロリンの含有量を測定した。測定結果を表4に示す。」
「[0070][表4]
[図:0001405850000001.jpg]
」
イ 甲第2号証に記載された発明
上記アの記載、特に実施例4のサンプル4に関して整理すると、甲第2号証には次の発明が記載されているものと認める。
「原料として麦芽250g、ショ糖250gを含み、麦芽使用比率50%、糖質0.3g/100ml、プロリン7.2mg/100mlであるビール様発泡性飲料。」(以下、「甲2発明」という。)
「原料として麦芽250g、ショ糖250gを含み、麦芽使用比率50%、糖質0.3g/100ml、プロリン7.2mg/100mlであるビール様発泡性飲料の製造方法。」(以下、「甲2製法発明」という。)
(2) 対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「ショ糖」、「ビール様発泡性飲料」はそれぞれ、本件特許発明1の「糖類」、「ビールテイスト飲料」に相当する。
また、甲2発明の麦芽比率は50%、糖質は0.3g/100mlであるから、本件特許発明1の「原料中の麦芽比率が50質量%以上67質量%未満」、「糖質含有量が0.59g/100ml以下」との特定事項を満たす。
してみると、両者は、
「原料として麦芽及び糖類を含み、原料中の麦芽の比率が50質量%以上67質量%未満であり、糖質含有量が0.59g/100ml以下である、ビールテイスト飲料。」
で一致し、次の点で相違する。
(相違点2-1)
ビールテイスト飲料のタンパク質含有量に関し、本件特許発明1は「0.25g/100ml以上0.60g/100ml以下」と特定されるのに対し、甲2発明は不明である点。
上記相違点2-1について検討する。
相違点2-1は、実質的な相違点である。
よって、本件特許発明1は、甲2発明ではない。
また、甲2発明において、タンパク質含有量を直ちに導くことができる記載がない。
さらに、全ての証拠の記載を見ても、甲2発明におけるタンパク質含有量を導くことができない。
したがって、甲2発明において、相違点2-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
この点について、特許異議申立人は、甲第6号証の記載を参照しつつ、副原料を使用するビールの全窒素含量が450~600mg/lであり、さらに、甲7の食品中のタンパク質含有量の換算係数を用いると、甲2発明のタンパク質含有量は約0.28~0.38g/100mlと算出される旨主張する(特許異議申立書第28頁)。
しかしながら、この計算は、甲2発明の組成を無視したものであって採用することができない。
甲2発明の原料は、実質、麦芽及びショ糖のみ(麦芽比率50%)からなるものであって、タンパク質の由来となる原料は麦芽のみである。
そして、甲第6号証において、全麦芽ビールの全窒素含量が700~900mg/lである旨記載されていることに照らせば、麦芽比率50%である甲2発明における全窒素含量は350~450mg/lと考えるのが妥当であって、当該数値を根拠に甲第7号証の換算係数を乗じると、甲2発明のタンパク質含量は約0.22~0.28g/100ml程度と算出される。
してみると、甲2発明のビール用発泡性飲料におけるタンパク質含有量は、「0.25g/100ml以上0.60g/100ml以下」、すなわち、相違点2-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものであると直ちにいうことはできないし、また、甲第2号証及び他の全ての証拠の記載をあわせてみても、甲2発明において、タンパク質含有量を相違点2-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとする動機付けもない。
そして、本件特許発明1は、その発明特定事項を満たすことにより、「低糖質でありながら、良好な酸味と濃醇さを有し、かつエグ味と硫化物臭が低減され、全体として香味が改善されたビールテイスト飲料を提供する」(【0006】)との、いずれの証拠の記載からも予期できない格別の効果を奏するものである。
よって、特許異議申立人の当該主張は、採用することができない。
イ 本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3はいずれも、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
そして、上記アのとおり、本件特許発明1は、甲2発明ではなく、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである本件特許発明2及び3もまた、甲2発明ではなく、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 本件特許発明4について
本件特許発明4と甲2製法発明とを対比すると、上記アの場合と同様の相当関係がとれ、両者は、
「麦芽を含む原料を用い、
原料中の麦芽の比率が50質量%以上67質量%未満であり、
糖質原料としてショ糖を用い、
ビールテイスト飲料の糖質含有量が0.59g/100ml以下となるように調整することを含む、ビールテイスト飲料の製造方法。」
で一致し、次の点で相違する。
(相違点2-2)
ビールテイスト飲料のタンパク質含有量に関し、本件特許発明4は「0.25g/100ml以上0.60g/100ml以下」となるように調整するものであるのに対し、甲2製法発明は不明である点。
上記相違点2-2について検討する。
相違点2-2は実質的な相違点である。
よって、本件特許発明4は、甲2製法発明ではない。
そして、相違点2-2は、実質的に相違点2-1と同旨であり、上記アの場合と同様に判断される。
したがって、甲2製法発明において、タンパク質含有量を増大させるように調整し、相違点2-2に係る本件特許発明4の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、本件特許発明4は、甲2製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件特許発明5について
本件特許発明5は、「ビールテイスト飲料の香味を改善する方法」の発明であるところ、甲第2号証の全ての記載を見ても、「ビールテイスト飲料の香味を改善する方法」に対応する発明を認定することができない。
よって、本件特許発明5は、甲第2号証の記載された発明ではなく、また、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3) 申立理由2及び3についてのまとめ
上記(2)のとおりであるから、申立理由2及び3の理由によって、本件特許発明1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
第5 結語
以上のとおりであるから、特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700948