特許異議申立
2024-700482
発泡性アルコール飲料
- 審判番号
- 2024-700482
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-203197
- 登録番号
- 7385433
- 請求日
- 2024年05月22日
- 審決日
- 2024年09月30日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】アサヒビール株式会社
- 【権利者代理人】▲吉▼田 和彦
- 【権利者代理人】須田 洋之
- 【権利者代理人】山崎 一夫
- 【権利者代理人】服部 博信
- 【権利者代理人】松田 七重
- 【異議申立人】田中 眞喜子
- 審判長/審判官
- 審判長 加藤 友也
- 審判官 天野 宏樹
- 審判官 柴田 昌弘
- 分類
- P1651.113-Y (C12G) / P1651.121-Y (C12G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7385433号発明「発泡性アルコール飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7385433号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7385433号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和元年11月8日の出願であって、令和5年11月14日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年同月22日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対して、令和6年5月22日に特許異議申立人田中眞喜子(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~5)がされ、同年6月17日付けで通知書が申立人に通知され、同年同月28日に証拠説明書を補正する手続補正書(方式)が提出されたものである。
第2 本件発明について
本件特許の請求項1~5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明5」という。まとめて、「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
なお、以下において、隅付き括弧は「[ ]」と表記した。
「[請求項1]
50~450ppmのコハク酸及び2~11ppbのβ-ダマセノンと、ビール酵母発酵液とを含有する、3.0°EBC以下の色度を有する発泡性アルコール飲料。
[請求項2]
ビール様発泡性飲料である、請求項1に記載の発泡性アルコール飲料。
[請求項3]
ビール酵母発酵液が、3.0mg/100ml以下のアミノ態窒素の濃度を有する、請求項1又は2に記載の発泡性アルコール飲料。
[請求項4]
ホップ又はホップ加工品を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の発泡性アルコール飲料。
[請求項5]
(a)炭素源を含有し、3.0mg/100ml以下のアミノ態窒素の濃度を有する発酵前液を準備する工程;
(b)ビール酵母を用いて発酵前液をアルコール発酵させてビール酵母発酵液を得る工程;及び、
(c)ビール酵母発酵液にβ-ダマセノンを、又は、β-ダマセノンとコハク酸とを添加する工程
を含む、50~450ppmのコハク酸及び2~11ppbのβ-ダマセノンと、ビール酵母発酵液とを含有する、発泡性アルコール飲料の製造方法。」
第3 特許異議申立理由の概要
申立人は、証拠方法として下記2.に示す甲第1号証~甲第7号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲7」のようにいう。)を提出し、概略、以下の特許異議申立理由を主張している。なお、特許異議申立理由の番号は当審が仮に付与した。
1.特許異議申立理由
(1)理由1-1(甲1に基づく新規性欠如)
本件発明1、2、4は、本件特許の出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)理由1-2(甲7に基づく新規性欠如)
本件発明1~3は、本件特許の出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲7に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(3)理由2-1(甲1に基づく進歩性欠如)
本件発明1~5は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(4)理由2-2(甲7に基づく進歩性欠如)
本件発明1~5は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲7に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2.証拠方法
甲1:特開平10-117760号公報
甲2:LAURENCE GIJS,FABIENNE CHEVANCE,VESNA JERKOVIC,SONIA COLLIN,"How Low pH Can Intensify β-Damascenone and Dimethyl Trisulfide Production through Beer Aging",Journal of Agricultural and Food Chemistry,American Chemical Society,2002.9.25,vol.50,No.20,p.5612-5616
甲3:Sem M. G. Vandecan,Niels Daems, Nina Schouppe,Daan Saison,Freddy R. Delvaux,"Formation of Flavor,Color,and Reducing Power during the Production Process of Dark Specialty Malts",Journal of the American Society of Brewing Chemists,Taylor & Francis,2011,vol.69,No.3,p.150-157
甲4:特開2019-37241号公報
甲5:特許第5583878号公報
甲6:特開2001-211872号公報
甲7:国際公開第2007/139181号
なお、証拠の表示は当審による。
第4 当審の判断
当審は、申立人が申し立てたいずれの特許異議申立理由によっても、本件発明1~5についての特許を取り消すことはできないと判断する。理由は以下のとおりである。
1.理由1-1(甲1に基づく新規性欠如)及び理由2-1(甲1に基づく進歩性欠如)について
(1)甲1に記載された事項
甲1には以下の事項が記載されている。
(1-1)「[0002]
[従来の技術]発泡酒は、わが国の酒税法上、麦芽を原料の一部として用いた酒類に属し、麦芽以外の原料の種類及びその使用量、使用するビール酵母の種類、発酵条件に応じて、清酒風味、果実風味、あるいはワイン風味といった風味の異なる発泡酒を製造することが可能である。
[0003]麦芽を使用する酒類で、日本の酒税法上、ビールは麦芽、米、とうもろこし等のデンプン質、ホップ及び水を原料とするものであり、水を除く麦芽の使用量が67重量%以上と規定されている。・・・
[0004]ビールも発泡酒も麦芽の活性酵素を用い、デンプン質を糖化させ、糖化液を発酵させてアルコール、炭酸ガスに分解して得るアルコール飲料である点においては変わりがない。したがって、発泡酒の作り方もビールと基本的に大きくかわるものでなく、ビールの製造装置を使用して作ることが可能である。このような発泡酒の製造方法において、仕込等を同一条件で製造したとしても、麦芽の使用量に応じてその味及び香(以下、「香味」という)に変化を生ずる。たとえば、ビールと同一条件の製造方法を用いた場合、副原料の使用量に比べて麦芽の使用量を多くすれば、ほぼビールと同様のものが得られる。
[0005]一方、麦芽の使用量を減らして行き、麦芽以外の副原料の使用量に対して麦芽の使用量を少なくした場合には、本発明者の研究結果によると、ビールと同一条件で製造したとしても、通常のビールと異なる香味のものが得られることがわかった。すなわち、麦芽の使用量を減らしていくと、味覚的には、酸味の増加が目立ってくる。
[0006]本発明者の研究によると、麦芽の使用量を変化させた数種類の麦汁をつくり、発酵試験を行ったところ、主発酵終了時の有機酸生成量は、発酵条件が同一であっても、麦芽使用量を少なくするにつれて有機酸生成量が増加することが明らかとなった(図1参照)。
[0007]そこで、本発明者は、発酵過程において必要な物質である、麦汁中の遊離アミノ態窒素含量と麦芽の使用量との関連性について調査、研究を行うため、麦汁に添加量を変化させて試験を行ったところ、図1に示す試験結果を得た。このことから、アミノ酸添加量の増加に伴ってリンゴ酸やコハク酸等の有機酸の生成量が減少することが明らかになった。この事実は、麦汁中の遊離アミノ態窒素の生成量に応じて有機酸の生成量も変化し、得られる発泡酒の香味を調整可能にすることを示すものである。また、酢酸エステル等のエステル類及びイソ活性アミルアルコール等の高級アルコールについては逆に減少する傾向にあった。」
(1-2)「[図面の簡単な説明]
[図1]麦芽使用率とリンゴ酸、コハク酸生成量の関係を示す図である。」
(1-3)「[図1]
[図:0001416495000001.jpg]
」
(2)甲1に記載された発明
甲1の[0002]~[0007](摘記1-1)には、発泡酒の従来技術に関し、「発泡酒は、わが国の酒税法上、麦芽を原料の一部として用いた酒類に属し、麦芽以外の原料の種類及びその使用量、使用するビール酵母の種類、発酵条件に応じて、清酒風味、果実風味、あるいはワイン風味といった風味の異なる発泡酒を製造することが可能である。」こと、「麦芽の使用量を減らして行き、麦芽以外の副原料の使用量に対して麦芽の使用量を少なくした場合には、本発明者の研究結果によると、ビールと同一条件で製造したとしても、通常のビールと異なる香味のものが得られることがわかった。すなわち、麦芽の使用量を減らしていくと、味覚的には、酸味の増加が目立ってくる」こと、及び「発酵試験を行ったところ、主発酵終了時の有機酸生成量は、発酵条件が同一であっても、麦芽使用量を少なくするにつれて有機酸生成量が増加することが明らかとなった(図1参照)」ことが記載され、図1(摘記1-3)を参照すると、「麦芽使用率」が「低」い図の右寄りにおいて、コハク酸含量(mg/L)が180~220程度であったことが読み取れる。
そうすると、甲1には、発酵試験の説明及び図1に基づいて以下の発明が記載されている。
「麦芽及び麦芽以外の副原料を含み、麦芽以外の副原料の使用量に対して麦芽の使用量を少なくした原料を、ビール酵母を用いてビールと同一条件で発酵させて得られた、コハク酸含量が180~220mg/L程度である、発泡酒。」(以下、「甲1発明」という。)
「麦芽及び麦芽以外の副原料を含み、麦芽以外の副原料の使用量に対して麦芽の使用量を少なくした原料を、ビール酵母を用いてビールと同一条件で発酵させる工程を有する、コハク酸含量が180~220mg/L程度である、発泡酒の製造方法。」(以下、「甲1製法発明」という。)
(3)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「麦芽及び麦芽以外の副原料を含み、麦芽以外の副原料の使用量に対して麦芽の使用量を少なくした原料を、ビール酵母を用いてビールと同一条件で発酵させて得られた」ものは、本件発明1における「ビール酵母発酵液」に相当し、甲1発明における「発泡酒」は、本件発明1における「発泡性アルコール飲料」に相当する。また、甲1発明における「コハク酸含量が180~220mg/L程度」は、本件発明1における「50~450ppmのコハク酸」を満たしている。
そうすると、両者は、
「50~450ppmのコハク酸と、ビール酵母発酵液とを含有する、発泡性アルコール飲料。」
の点で一致し、
相違点甲1-1:本件発明1は「2~11ppbのβ-ダマセノン」を含むと特定するのに対し、甲1発明はそのように特定されていない点
相違点甲1-2:本件発明1は「3.0°EBC以下の色度を有する」と特定するのに対し、甲1発明はそのように特定されていない点
で相違する。
そこで、相違点甲1-1について検討する。
イ 相違点甲1-1について
甲1には、図1に示された発酵試験で得られた発泡酒におけるβ-ダマセノンの含有量は記載されていない。また、当該発酵試験に関して、甲1の[0006]~[0007](摘記1-1)等を参照しても、発酵試験における具体的な原料及び発酵条件は記載されておらず、[0005](摘記1-1)には「通常のビールと異なる香味のもの」が得られることがわかったと記載されているから、甲1発明におけるβ-ダマセノンの含有量が甲2等に記載された公知のビールにおけるβ-ダマセノンの含有量と同じである蓋然性が高いともいえない。よって、相違点甲1-1は実質的な相違点である。
また、甲3(155頁右欄24~25行)には、β-ダマセノンがスイートアップル、ハチミツ様の香気に関連付けられることが記載され、甲4([0038]~[0039]等)には、β-ダマセノンが飲料にフルーティーアロマを与えビール風飲料を形成するフレーバーシステム中の一化合物として記載され、甲5([0066]、[表4]等)には、β-ダマセノンが非発酵ベース液にフローラル、爽快感を有するビールらしさを付与する成分であることが記載されているが、「通常のビールと異なる香味のもの」であり「酸味の増加が目立ってくる」と記載されている甲1発明に対して、甲3~甲5に記載されたβ-ダマセノンを相違点甲1-1に係る特定の量添加することは当業者が動機付けられることとはいえないし、仮に甲1発明に甲3~甲5に記載されたβ-ダマノセンを添加することに思い至ったとしても、本件発明の効果(麦芽使用率が低い又は麦芽を使用しない、色度が薄い発泡性醸造酒、特にビール酵母発酵液(ビールやビール様発泡性飲料を含む)、もしくは当該発泡性醸造酒を一部含んだアルコール飲料において、嗜好性を損なわずにコクがありながらビールらしさも有するように改善できる。)は、甲1及び甲3~甲5並びに他の証拠から当業者が予測し得ない顕著なものである。
よって、甲1発明において甲3~甲5に記載された技術的事項を組み合わせることにより相違点甲1-1に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。
ウ 申立人の主張について
申立人は特許異議申立書第21~22頁において、甲2のp.5614に記載された表2及びその説明箇所を引用し、「β-ダマセノンの濃度が3ppbのビールも存在し、更に熟成(市場での経時変化を想定)で9ppb程度まで増えることも知られているのであるから、2~11ppb程度のβ-ダマセノンを含有することは通常のビールの範疇」であると主張している。
また、申立人は特許異議申立書第23~25頁において、甲3~甲5を引用し、「飲料に対してスイートアップルやハチミツ様のフレーバー、フルーティーアロマなどを付与する目的や、麦芽使用率の低い発泡酒である甲1発明に「ビールらしさ」を付与する目的で、β-ダマセノンの含有量を2~11ppb程度の範囲内に調整することは、当業者が適宜なし得たことである。」と主張している。
しかし、上記イに記載したとおり、申立人の主張はいずれも採用することができない。
エ 本件発明1についてのまとめ
以上のことから、相違点甲1-2について検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(4)本件発明2~4について
本件発明2~4は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、本件発明2及び4は、いずれも本件発明1と同様の理由により甲1発明ではない。また、本件発明2~4は、いずれも本件発明1と同様の理由により甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件発明5について
ア 本件発明5と甲1製法発明との対比
本件発明5と甲1製法発明とを対比すると、甲1製法発明における「麦芽及び麦芽以外の副原料を含み、麦芽以外の副原料の使用量に対して麦芽の使用量を少なくした原料」、「ビール酵母を用いてビールと同一条件で発酵させる工程」及び「発泡酒の製造方法。」は、本件発明1における「発酵前液」、「ビール酵母を用いて発酵前液をアルコール発酵させてビール酵母発酵液を得る工程」及び「ビール酵母発酵液とを含有する、発泡性アルコール飲料の製造方法。」に相当する。また、甲1製法発明における「コハク酸含量が180~220mg/L程度」は、本件発明5における「50~450ppmのコハク酸」を満たしている。
そうすると、両者は、
「(a)発酵前液を準備する工程;
(b)ビール酵母を用いて発酵前液をアルコール発酵させてビール酵母発酵液を得る工程;
を含む、50~450ppmのコハク酸と、ビール酵母発酵液とを含有する、発泡性アルコール飲料の製造方法。」
の点で一致し、
相違点甲1-3:本件発明5は「炭素源を含有し、3.0mg/100ml以下のアミノ態窒素の濃度を有する」発酵前液と特定するのに対し、甲1製法発明はそのように特定されていない点
相違点甲1-4:本件発明5は「ビール酵母発酵液にβ-ダマセノンを、又は、β-ダマセノンとコハク酸とを添加する工程」を含むと特定するのに対し、甲1製法発明はそのように特定されていない点
相違点甲1-5:本件発明5は「2~11ppbのβ-ダマセノン」を含むと特定するのに対し、甲1製法発明はそのように特定されていない点
で相違する。
そこで、事案に鑑み、相違点甲1-5について検討する。
イ 相違点甲1-5について
相違点甲1-5は、実質的に相違点甲1-1と同じ内容の相違点であるから、相違点甲1-1と同様のことがいえる。
ウ 本件発明5についてのまとめ
以上のことから、相違点甲1-3及び相違点甲1-4について検討するまでもなく、本件発明5は甲1製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)理由1-1(甲1に基づく新規性欠如)及び理由2-1(甲1に基づく進歩性欠如)についてのまとめ
以上まとめると、本件発明1、2、4は、いずれも甲1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、本件発明1~5は、いずれも甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
よって、理由1-1(甲1に基づく新規性欠如)及び理由2-1(甲1に基づく進歩性欠如)により本件発明1~5についての特許を取り消すことはできない。
2.理由1-2(甲7に基づく新規性欠如)及び理由2-2(甲7に基づく進歩性欠如)について
(1)甲7に記載された事項
甲7には以下の事項が記載されている。
(7-1)「請求の範囲
[1] 色度がEBC単位で1.5以下の発酵前液を調製する発酵前工程と、
前記発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行う発酵工程と、
前記アルコール発酵を経た発酵後液から、色度がEBC単位で1.0以下の発泡性アルコール飲料を得る発酵後工程と、
を含む
ことを特徴とする発泡性アルコール飲料製造方法。
・・・
[7] 請求の範囲第1項乃至第6項のいずれかに記載の方法によって製造され、色度がEBC単位で1.0以下である
ことを特徴とする発泡性アルコール飲料。」
(7-2)「発明が解決しようとする課題
[0005] しかしながら、上記従来の色度低減方法においては、吸着剤によって、色素のみならず、その製造過程でいったん付与された香味成分も除去されてしまうため、色度の低減に伴って発泡性アルコール飲料の醸造酒に特有の香味が損なわれてしまうという問題を避けることができなかった。
[0006] そして、このように脱色によって香味が損なわれた発泡性アルコール飲料にハーブ類を添加して所望の色付けをする場合には、当該ハーブ類に由来する味(例えば、酸味や渋味)が醸造酒に特有の香味を上回ることにより、香味のバランスが損なわれることがあった。なお、脱色を施さない高色度の発泡性アルコール飲料にハーブ類によって色付けする場合には、所望の色彩を得るために大量のハーブ類を添加した結果、やはり香味のバランスが損なわれることがある。
[0007] 本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであって、低色度で、且つ、その製造過程で付与される香味を維持した発泡性アルコール飲料及びその製造方法を提供することをその目的の一つとする。
課題を解決するための手段
・・・
[0009] 本発明によれば、低色度で、且つ、その製造過程で付与される香味を維持した発泡性アルコール飲料の製造方法を提供することができる。すなわち、本発明によれば、発酵工程以降において吸着剤等を用いた特別な脱色処理を行う必要がないため、色度がEBC単位で1.0以下でありながら、醸造酒に特有の香味を有する発泡性アルコール飲料を製造することができる。」
(7-3)「[0051][実施例1]
実施例1においては、主な炭素源及び窒素源として、トウモロコシ由来の液糖(コーンシラップS75、日本コーンスターチ社製)と、発芽させていないエンドウから抽出したタンパク質の酵素分解物(エンドウ蛋白PP-CS、パーハイムフーズ社製)と、をそれぞれ準備した。
[0052] また、エンドウを20℃の水に10時間浸し、さらに12℃で3日間発芽させた後、室温から84℃に昇温させ、3時間焙燥することにより、発芽エンドウを得た。そして、この発芽エンドウを、粉砕装置(モルトミル、ジャーティンアセソン&カンパニー社製)を用いて粉砕することにより粉砕発芽エンドウを準備した。
[0053] そして、容量3.9Lの仕込タンクに、80℃の湯1Lと、600gの液糖と、46gのエンドウタンパク分解物と、3.9gの粉砕発芽エンドウと、を添加し、さらに80℃の湯を追加することにより、エキス濃度が12%の原料液を3.9L調製した。この原料液中の粉砕発芽エンドウの濃度は1g/Lであった。
[0054] そして、仕込タンクに備えられたヒーターによって、この80℃の原料液を加熱して煮沸させた。原料液の煮沸が開始した後、10分が経過した時点でヒーターによる加熱を停止した。煮沸後の原料液に水を加えて、エキス濃度が11.4%の発酵前液(以下、「本発酵前液」という)を調製した。この本発酵前液を10℃に冷却した後、その2.5Lを発酵タンクに移送した。
[0055] そして、この発酵タンク内で、本発酵前液にビール酵母を3×107個/mLの濃度となるように添加することにより、前発酵を開始した。この前発酵を14℃で5日間行った後、発酵液の上澄みを回収して、当該上澄みの2.0Lを貯酒タンクに移送した。そして、この貯酒タンク内で、発酵液をマイナス1℃に冷却し、さらに3週間維持することで、貯酒を行った。さらに、貯酒を終えた発酵後液を、珪藻土を用いてろ過することにより、当該発酵後液中の酵母を除去し、発泡性アルコール飲料(以下、「本飲料A」という)を得た。」
(7-4)「[0058] 図2には、本発酵前液、本飲料A、対照発酵前液、対照飲料A、当該対照飲料Aに0.6g/Lの活性炭による脱色処理を施した対照飲料(以下、「対照飲料B」という)、及び当該対照飲料Aに1.2g/Lの活性炭による脱色処理を施した対照飲料(以下、「対照飲料C」という)のそれぞれについて、色度(EBC単位)、遊離アミノ態窒素(Free Amino acid Nitrogen:FAN)濃度(mg/L)、総タンパク質濃度(mg/L)、苦味価(BU単位)を分析した結果を示す。
・・・
[0067] 図4には、本飲料A、対照飲料A、対照飲料B、及び対照飲料Cのそれぞれについて、熟練したパネリスト4人により官能検査を行った結果を示す。図4に示すように、本飲料Aは良好なエステル香を有し、適度な酸味とすっきりしたスムーズな味わいがあり、のどごしも良好であって、その総合評価は優良であった。この本飲料Aのエステル香は、図3に示す各香味成分に基づく醸造酒特有の香味成分と、さらに原料の一部として用いた発芽エンドウ由来の香味と、によるものと考えられる。また、本飲料Aのすっきりしたスムーズな味わいや良好なのどごしは、図2や図3に示す各成分を豊富に含むことに加え、発芽エンドウに特有の香味やバランスのよい苦味が付与されたことによるものと考えられる。」
(7-5)「[図2]
[図:0001416495000002.jpg]
[図3]
[図:0001416495000003.jpg]
[図4]
[図:0001416495000004.jpg]
」
(2)甲7に記載された発明
甲7の請求の範囲の請求項1及び7(摘記7-1)には、「色度がEBC単位で1.5以下の発酵前液を調製する発酵前工程と、前記発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行う発酵工程と、前記アルコール発酵を経た発酵後液から、色度がEBC単位で1.0以下の発泡性アルコール飲料を得る発酵後工程と、を含むことを特徴とする発泡性アルコール飲料製造方法。」及び「請求の範囲第1項乃至第6項のいずれかに記載の方法によって製造され、色度がEBC単位で1.0以下であることを特徴とする発泡性アルコール飲料。」が記載されており、[0051]~[0055](摘記7-3)には、実施例1として、「主な炭素源及び窒素源として、トウモロコシ由来の液糖(コーンシラップS75、日本コーンスターチ社製)と、発芽させていないエンドウから抽出したタンパク質の酵素分解物(エンドウ蛋白PP-CS、パーハイムフーズ社製)と、をそれぞれ準備」し、これとは別に「発芽エンドウを、粉砕装置(モルトミル、ジャーティンアセソン&カンパニー社製)を用いて粉砕することにより粉砕発芽エンドウを準備」し、「容量3.9Lの仕込タンクに、80℃の湯1Lと、600gの液糖と、46gのエンドウタンパク分解物と、3.9gの粉砕発芽エンドウと、を添加し、さらに80℃の湯を追加することにより、エキス濃度が12%の原料液を3.9L調製」し、「原料液を加熱して煮沸させ」、「煮沸後の原料液に水を加えて、エキス濃度が11.4%の発酵前液(以下、「本発酵前液」という)を調製」し、「この本発酵前液を10℃に冷却した後、その2.5Lを発酵タンクに移送」し、「この発酵タンク内で、本発酵前液にビール酵母を3×107個/mLの濃度となるように添加することにより、前発酵を開始した。この前発酵を14℃で5日間行った後、発酵液の上澄みを回収して、当該上澄みの2.0Lを貯酒タンクに移送した。そして、この貯酒タンク内で、発酵液をマイナス1℃に冷却し、さらに3週間維持することで、貯酒を行った。さらに、貯酒を終えた発酵後液を、珪藻土を用いてろ過することにより、当該発酵後液中の酵母を除去し、発泡性アルコール飲料(以下、「本飲料A」という)を得た。」ことが記載されている。
また、甲7の[0058](摘記7-4)及び図2(摘記7-5)には、実施例1の「本発酵前液」及び「本飲料A」の色度がそれぞれEBC単位で0.6及び0.4であったことが記載されている。
そうすると、甲7には、実施例に基づいて以下の発明が記載されている。
「容量3.9Lの仕込タンクに、80℃の湯1Lと、600gのトウモロコシ由来の液糖(コーンシラップS75、日本コーンスターチ社製)と、46gの発芽させていないエンドウから抽出したタンパク質の酵素分解物(エンドウ蛋白PP-CS、パーハイムフーズ社製)と、3.9gの粉砕発芽エンドウと、を添加し、さらに80℃の湯を追加することにより、エキス濃度が12%の原料液を3.9L調製し、原料液を加熱して煮沸させ、煮沸後の原料液に水を加えて、エキス濃度が11.4%、色度がEBC単位で0.6の発酵前液(「本発酵前液」)を調製し、この本発酵前液を10℃に冷却した後、その2.5Lを発酵タンクに移送し、この発酵タンク内で、本発酵前液にビール酵母を3×107個/mLの濃度となるように添加することにより、前発酵を開始し、この前発酵を14℃で5日間行った後、発酵液の上澄みを回収して、当該上澄みの2.0Lを貯酒タンクに移送し、この貯酒タンク内で、発酵液をマイナス1℃に冷却し、さらに3週間維持することで、貯酒を行い、さらに、貯酒を終えた発酵後液を、珪藻土を用いてろ過することにより、当該発酵後液中の酵母を除去して製造された、色度がEBC単位で0.4の発泡性アルコール飲料。」(以下、「甲7発明」という。)
「容量3.9Lの仕込タンクに、80℃の湯1Lと、600gのトウモロコシ由来の液糖(コーンシラップS75、日本コーンスターチ社製)と、46gの発芽させていないエンドウから抽出したタンパク質の酵素分解物(エンドウ蛋白PP-CS、パーハイムフーズ社製)と、3.9gの粉砕発芽エンドウと、を添加し、さらに80℃の湯を追加することにより、エキス濃度が12%の原料液を3.9L調製し、原料液を加熱して煮沸させ、煮沸後の原料液に水を加えて、エキス濃度が11.4%、色度がEBC単位で0.6の発酵前液(「本発酵前液」)を調製し、この本発酵前液を10℃に冷却した後、その2.5Lを発酵タンクに移送し、この発酵タンク内で、本発酵前液にビール酵母を3×107個/mLの濃度となるように添加することにより、前発酵を開始し、この前発酵を14℃で5日間行った後、発酵液の上澄みを回収して、当該上澄みの2.0Lを貯酒タンクに移送し、この貯酒タンク内で、発酵液をマイナス1℃に冷却し、さらに3週間維持することで、貯酒を行い、さらに、貯酒を終えた発酵後液を、珪藻土を用いてろ過することにより、当該発酵後液中の酵母を除去し、色度がEBC単位で0.4の発泡性アルコール飲料を製造する方法。」(以下、「甲7製法発明」という。)
(3)本件発明1について
ア 本件発明1と甲7発明との対比
本件発明1と甲7発明とを対比すると、甲7発明における「発酵タンク内で、本発酵前液にビール酵母を3×107個/mLの濃度となるように添加することにより、前発酵を開始し、この前発酵を14℃で5日間行った後、発酵液の上澄みを回収して、当該上澄みの2.0Lを貯酒タンクに移送し、この貯酒タンク内で、発酵液をマイナス1℃に冷却し、さらに3週間維持することで、貯酒を行い、さらに、貯酒を終えた発酵後液」は、本件発明1における「ビール酵母発酵液」に相当し、甲7発明における「発泡性アルコール飲料。」は、本件発明1における「発泡性アルコール飲料。」に相当する。また、甲7発明における「色度がEBC単位で0.4の発泡性アルコール飲料」は、本件発明1における「3.0°EBC以下の色度を有する発泡性アルコール飲料」を満たしている。
そうすると、両者は、
「ビール酵母発酵液を含有する、3.0°EBC以下の色度を有する発泡性アルコール飲料。」
の点で一致し、
相違点甲7-1:本件発明1は「50~450ppmのコハク酸」を含むと特定するのに対し、甲7発明はそのように特定されていない点
相違点甲7-2:本件発明1は「2~11ppbのβ-ダマセノン」を含むと特定するのに対し、甲7発明はそのように特定されていない点
で相違する。
そこで、事案に鑑み、相違点甲7-2について検討する。
イ 相違点甲7-2について
甲7には、甲7発明の発泡性アルコール飲料におけるβ-ダマセノンの含有量は記載されていない。また、甲7発明は、液糖に加え、発芽させていないエンドウから抽出したタンパク質の酵素分解物と、粉砕発芽エンドウを発酵原料として製造されたものであり、[0067](摘記7-4)には「図2や図3に示す各成分を豊富に含むことに加え、発芽エンドウに特有の香味やバランスのよい苦味が付与された」ものであることが記載されているから、甲7発明におけるβ-ダマセノンの含有量が甲2等に記載された公知のビールにおけるβ-ダマセノンの含有量と同じである蓋然性が高いともいえない。よって、相違点甲7-2は実質的な相違点である。
また、甲3~甲5に記載された事項は、上記1.(3)イのとおりであるから、「発芽エンドウに特有の香味やバランスのよい苦味が付与された」甲7発明に対して、甲3~甲5に記載されたβ-ダマセノンを相違点甲7-2に係る特定の量添加することは当業者が動機付けられることとはいえないし、仮に甲7発明に甲3~甲5に記載されたβ-ダマノセンを添加することに思い至ったとしても、本件発明の効果は、甲7及び甲3~甲5並びに他の証拠から当業者が予測し得ない顕著なものである。
よって、甲7発明において甲3~甲5に記載された技術的事項を組み合わせることにより相違点甲7-2に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。
ウ 申立人の主張について
申立人は特許異議申立書の第34ページにおいて、上記1.(3)ウに引用した甲1に基づく進歩性欠如の主張と同様の理由から、相違点甲7-2は実質的な相違点ではないか、当業者が適宜なし得たことである旨、主張している。
しかし、甲7発明の発酵原料及び発酵条件は、甲2の表2に記載されたpH4.2のビールの原料及び製造条件とは異なるから、甲7発明におけるβ-ダマセノンの含有量が甲2の表2に記載された含有量と同じである蓋然性が高いとまではいえない。
また、甲7発明の解決しようとする課題は、甲7の[0007]及び[0009](摘記7-2)等の記載を参酌すると、「低色度で、且つ、その製造過程で付与される香味を維持した発泡性アルコール飲料」すなわち「醸造酒に特有の香味を有する」発泡性アルコール飲料を提供することを課題とする発明であるから、甲7発明に対し、その香味を変化させることになる甲3~甲5に記載された「スイートアップルやハチミツ様のフレーバー、フルーティーアロマなどを付与」したり、「ビールらしさを付与」したりする技術的事項を組み合わせることは、当業者が動機付けられることではない。
よって、申立人の主張はいずれも採用することができない。
エ 本件発明1についてのまとめ
以上のことから、相違点甲7-1について検討するまでもなく、本件発明1は甲7発明ではなく、甲7発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(4)本件発明2~4について
本件発明2~4は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、本件発明2及び3は、いずれも本件発明1と同様の理由により甲7発明ではない。また、本件発明2~4は、いずれも本件発明1と同様の理由により甲7発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件発明5について
ア 本件発明5と甲7製法発明との対比
本件発明5と甲7製法発明とを対比すると、甲7製法発明における「エキス濃度が11.4%、色度がEBC単位で0.6の発酵前液(「本発酵前液」)を調製し、」、「本発酵前液を10℃に冷却した後、その2.5Lを発酵タンクに移送し、この発酵タンク内で、本発酵前液にビール酵母を3×107個/mLの濃度となるように添加することにより、前発酵を開始し、この前発酵を14℃で5日間行った後、発酵液の上澄みを回収して、当該上澄みの2.0Lを貯酒タンクに移送し、この貯酒タンク内で、発酵液をマイナス1℃に冷却し、さらに3週間維持することで、貯酒を行い、さらに、貯酒を終えた発酵後液」を得る工程及び「貯酒を終えた発酵後液を、珪藻土を用いてろ過することにより、当該発酵後液中の酵母を除去し、色度がEBC単位で0.4の発泡性アルコール飲料を製造する方法。」は、本件発明1における「発酵前液を準備する工程;」、「ビール酵母を用いて発酵前液をアルコール発酵させてビール酵母発酵液を得る工程」及び「ビール酵母発酵液とを含有する、発泡性アルコール飲料の製造方法。」に相当する。
そうすると、両者は、
「(a)発酵前液を準備する工程;
(b)ビール酵母を用いて発酵前液をアルコール発酵させてビール酵母発酵液を得る工程;
を含む、ビール酵母発酵液を含有する、発泡性アルコール飲料の製造方法。」
の点で一致し、
相違点甲7-3:本件発明5は「炭素源を含有し、3.0mg/100ml以下のアミノ態窒素の濃度を有する」発酵前液と特定するのに対し、甲7製法発明はそのように特定されていない点
相違点甲7-4:本件発明5は「ビール酵母発酵液にβ-ダマセノンを、又は、β-ダマセノンとコハク酸とを添加する工程」を含むと特定するのに対し、甲7製法発明はそのように特定されていない点
相違点甲7-5:本件発明5は「50~450ppmのコハク酸」を含むと特定するのに対し、甲7製法発明はそのように特定されていない点
相違点甲7-6:本件発明5は「2~11ppbのβ-ダマセノン」を含むと特定するのに対し、甲7製法発明はそのように特定されていない点
で相違する。
そこで、事案に鑑み、相違点甲7-6について検討する。
イ 相違点甲7-6について
相違点甲7-6は、実質的に相違点甲7-2と同じ内容の相違点であるから、相違点甲7-2と同様のことがいえる。
ウ 本件発明5についてのまとめ
以上のことから、相違点甲7-3~相違点甲7-5について検討するまでもなく、本件発明5は甲7製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)理由1-2(甲7に基づく新規性欠如)及び理由2-2(甲7に基づく進歩性欠如)についてのまとめ
以上まとめると、本件発明1~3は、いずれも甲7に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、本件発明1~5は、いずれも甲7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
よって、理由1-2(甲7に基づく新規性欠如)及び理由2-2(甲7に基づく進歩性欠如)により本件発明1~5についての特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおり、本件発明1~5についての特許は、上記のいずれの特許異議申立理由によっても取り消すことはできない。
また、他に、これらの特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700482