特許異議申立
2023-701205
飲料の香味改善方法
- 審判番号
- 2023-701205
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-187431
- 登録番号
- 7274847
- 請求日
- 2023年11月15日
- 審決日
- 2024年07月18日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】アサヒビール株式会社
- 【権利者代理人】田中 伸一郎
- 【権利者代理人】▲吉▼田 和彦
- 【権利者代理人】須田 洋之
- 【権利者代理人】山崎 一夫
- 【権利者代理人】服部 博信
- 【権利者代理人】松田 七重
- 【異議申立人】副島 朋子
- 審判長/審判官
- 審判長 植前 充司
- 審判官 天野 宏樹
- 審判官 松本 陶子
- 分類
- P1652.113-YAA(C12G) / P1652.121-YAA(C12G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項特許法113条2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第7項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7274847号発明「飲料の香味改善方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7274847号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔7、9~12〕、8について訂正することを認める。
特許第7274847号の請求項7、9~12に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7274847号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、
平成30年10月 2日を出願日とする出願であって、
令和 5年 5月 9日にその特許権の設定登録(請求項の数12)がされ、
令和 5年 5月17日に特許掲載公報が発行され、
その後、その特許に対し、
令和 5年11月15日に特許異議申立人 副島 朋子(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項7及び9~12)がされ、
令和 6年 1月12日付けで取消理由が通知され、
令和 6年 3月18日に特許権者 アサヒビール株式会社(以下、「特許権者」という。)より訂正の請求がされるとともに意見書の提出がされ、
令和 6年 3月28日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、
令和 6年 4月25日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。
第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和 6年 3月18日にされた訂正請求における訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項7に記載された「0.001ppm以上のメチルチモールを含有し、果実由来成分を含むアルコール飲料(ただし、タイム抽出物を含有する飲料及び生姜を含有する飲料を除く。)。」を、「0.005~0.5ppmのメチルチモールを含有し、果実由来成分を含むアルコール飲料(ただし、タイム抽出物を含有する飲料及び生姜を含有する飲料を除く。)。」に訂正する。
請求項7の記載を直接又は間接的に引用する請求項9~12も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項8に記載された「前記メチルチモールの添加量が、0.001ppm~10ppmである、請求項7に記載の飲料。」を、「0.001ppm以上のメチルチモールを含有し、果実由来成分を含み、前記メチルチモールの添加量が、0.001ppm~10ppmである、アルコール飲料(ただし、タイム抽出物を含有する飲料及び生姜を含有する飲料を除く。)。」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項9に記載された「蒸留酒を含む、請求項7又は請求項8に記載の飲料。」を、「蒸留酒を含む、請求項7に記載の飲料。」に訂正する。
請求項9を引用して特定する請求項10~12についても同様である。
(4)一群の請求項について
訂正前の請求項8~12は、請求項7を直接又は間接的に引用して特定するものであるから、訂正前の請求項7~12は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
なお、訂正後の請求項8については、訂正が認められる場合には、別の訂正単位とする求めがある。
2 訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1の訂正について
訂正事項1による請求項7についての訂正は、メチルチモールの量を「0.00lppm以上」から「0.005~0.5ppm」に限定しているものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂正事項1による請求項7についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
請求項7を直接又は間接的に引用する請求項9~12についても同様である。
(2)訂正事項2の訂正について
訂正事項2は、訂正前の請求項7の記載を引用する訂正前の請求項8の記載を、請求項7の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
そして、訂正事項2による請求項8についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(3)訂正事項3の訂正について
訂正事項3による請求項9についての訂正は、訂正前の請求項7又は8の記載を引用する訂正前の請求項9の記載を、請求項7の記載を引用するものとし、引用する請求項の数を減少させるための訂正であるものであって、特特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂訂正事項3による請求項9についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
請求項9を引用して特定する請求項10~12についても同様である。
3 訂正についてのまとめ
以上のとおり、訂正事項1~3による請求項7~12についての訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
なお、訂正前の請求項7~12は一群の請求項に該当するものであり、訂正事項1~3による請求項7~12についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
そして、特許異議の申立ては、訂正前の請求項7、9~12に対してされているから、これらの請求項の訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
なお、訂正前の請求項8に対しては特許異議の申立てはされていないものの、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する事項を目的とする訂正であるから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔7、9~12〕、8について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項〔7、9~12〕、8について訂正することを認めるので、本件特許の請求項7、9~12に係る発明(以下、「本件特許発明7」等という。)は、令和 6年 3月18日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項7、9~12に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項7】
0.005~0.5ppmのメチルチモールを含有し、果実由来成分を含むアルコール飲料(ただし、タイム抽出物を含有する飲料及び生姜を含有する飲料を除く。)。」
「【請求項9】
蒸留酒を含む、請求項7に記載の飲料。
【請求項10】
前記蒸留酒が、スピリッツを含む、請求項9に記載の飲料。
【請求項11】
前記蒸留酒が、ウォッカを含む、請求項9に記載の飲料。
【請求項12】
前記蒸留酒が、ジン、レモンライムスピリッツ、シークァーサースピリッツ又はグレープフルーツスピリッツを含む、請求項9に記載の飲料。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和 5年11月15日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証に基づく進歩性)
本件特許発明7及び9ないし12は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項7及び9ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 証拠方法
甲第1号証:国際公開第2006/009252号
甲第2号証:Young Shin Hong, Ym Shik Lee, Kyong Su Kim,“Comparison of volatile flavor compounds of yuzu, kumquat, lemon and lime”, Korean Journal of Food Preservation, 24(3), 394-405(2017)
なお、証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」等という。
第5 取消理由の概要
当審が令和 6年 1月12日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。
取消理由(甲1に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明7及び9~12は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲1に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項7及び9~12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
取消理由のうちの進歩性は、申立理由1と同旨である。
第6 取消理由についての当審の判断
以下に述べるように、当審が令和 6年 1月12日付けで特許権者に通知した取消理由における取消理由は、いずれも理由がないものと判断される。
・取消理由(甲1に基づく新規性・進歩性)について
1 甲1に記載された事項等
(1)甲1に記載された事項
甲1には、「アルコール浸漬物またはそれを用いた食品もしくは飲料およびその製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。
・「[0006] 本発明者らは、新規なRTDの開発に向けて鋭意検討した結果、生の果実を丸ごと凍結したまま微粉砕し、そしてアルコールに浸漬することにより得られた原料酒が、驚くべきことに、果実の香味をそのまま有するものであり、かつ種々の有効成分を含有し、保存安定性に優れたものであることを発見し、本発明を完成した。本発明は、果実の香味をそのまま有し、従来以上に香味のよいアルコール浸漬物および飲料を提供するものである。」
・「[0013] 本発明の製造方法によれば、得られる酒類に果実・野菜の自然な香味を充分に生かすことができるので、本発明においては、芳香が良く、甘み、酸味、苦み等呈味バランスが特に好まれている果実をとりわけ好適に用いることができる。このような観点からは、本発明には、香気のよい柑橘類(特に、レモン、グレープフルーツ(ホワイト種、ルビー種)、ライム、オレンジ類(ネーブルオレンジ、バレンシアオレンジ)、タンゴ一ル、なつみかん、甘夏、はっさく、ひゅうがなつ、シイクワシャー、すだち、ゆず、かぼす、オロブランコ)を用いることが好ましい。」
・「[0026] 工程(a)に供する果実・野菜は、凍結機に投入可能であれば大きさは特に制限されないが、なるべく短時間で凍結するためには小さくカットしたほうが適切な場合があり、なるべく傷めず、また空気に曝さずに凍結するためにはあまり切り分けないほうが適切な場合がある。果実・野菜は、果皮および種子を含んだ丸ごとを用いることもでき、また非可食部、有効な成分を含まない部分および/または好ましくない成分を含む部分を除去して用いることもできる。このような部分の除去は、工程(a)の後に行うこともできる。例えば、柑橘類果実を用いる場合は、果皮をつけたままの丸ごとの果実を、2~16程度に分割して、また約lcm角程度に細断してから、工程(a)に供することができる。また、核果類果実を用いる場合は、果皮および種子を含む丸ごとの果実を、そのまま工程(a)に供することができる。」
・「[0031] 工程(c)で用いるアルコールとしては、原料アルコール、蒸留酒、混成酒を好適に用いることができる。蒸留酒としては、焼酎(米、芋、麦、とうもろこし、そば、黒糖、糖蜜、なつめやし、粗留アルコール等、いずれを原料とするものでもよい。甲類、乙類いずれでもよい。)、ウオッカ、スピリッツが好ましく、それ以外にも、ウィスキー、ブランデー、ジン、ラム、テキーラ等を用いることができる。
[0032] 工程(c)における浸漬比、抽出時間は、材料の種類、微粉砕物の粒径、抽出したい成分の種類・量、求める抽出効率等に応じて適宜定めることができる。浸漬比は、一般的には、アルコール1Lに対し、凍結微粉砕物約lg~約500g、好ましくは約5g~約300g、より好ましくは約10g~約200gである。抽出時間は、一般的には、約半日~数ケ月であるが、柑橘類果実の場合は好ましくは約1日~約3日であり、うめ等の核果類果実の場合は数ケ月としてもよい。」
・「[0038] 本発明のアルコール浸漬物を原料酒として使用し(例えば、40%アルコールである場合、約1%~約25% (容積/容積)使用することができる)、香料無添加である低アルコール飲料は、本発明の好ましい態様の1つである。香料が無添加であり、果汁が5%(容積/容積)以下、好ましくは3%以下、より好ましくは1. 5%以下または含まれておらず、かつ充分においしい低アルコール飲料もまた、本発明の好ましい態様の1つである。さらに香料を添加することにより、香りの強い低アルコール飲料に仕上げることができる。」
・「実施例1
[0041] <レモン凍結粉砕浸漬酒の製造>
生のレモン果実を後述する凍結粉砕機に投入できるように4つ切りに分割し-196℃の液体窒素を用いて凍結した。これを凍結粉砕機(リンレックスミル;(株)リキッドガス製)に投入し、凍結したまま微粉砕することにより、粒径約30μmの白いさらさらした粉末状の凍結微粉砕物を得た。なお、粒径の測定は、凍結粉砕物を約20倍量の水で希釈し、レーザ回折式粒度分布測定装置(SALD-3100;(株)島津製作所)で粒度分布を測定することにより行った。次に、凍結微粉砕物を40%原料用アルコールに2日間浸潰した(100g/L)。得られた浸漬液を珪藻土を用いてろ過して固形分を除き、アルコール40%のレモン凍結粉砕浸漬酒を得た。
実施例 2
[0042] <グレープフルーツ凍結粉砕浸漬酒の製造>
生のグレープフルーツ果実を凍結粉砕機に投入できるように8つ切りに分割し、-196℃の液体窒素を用いて凍結した。これを凍結粉砕機(実施例1参照)に投入し、凍結したまま微粉砕することにより、粒径約50μmの白いさらさらした粉末状の凍結微粉砕物を得た。なお粒径の測定は、実施例1と同様に行った。次に、凍結微粉砕物を40%原料用アルコールに2日間浸漬し(100g/L)。得られた浸漬液を珪藻土を用いてろ過して固形分を除き、アルコール40%のグレープフルーツ凍結粉砕浸漬酒を得た。
実施例 3
[0043] <低アルコール飲料の製造>
実施例1および実施例2で得られた凍結粉砕浸漬酒を原料酒として、下表の配合でRTDを製造した。
[表1]
[図:0001415298000001.jpg]
」
・「請求の範囲
・・・(略)・・・
[6] 原料果実および/または野菜の一種以上の凍結微粉砕物の15%~100%アルコール抽出成分を含む、アルコール浸漬物または食品もしくは飲料。
[7] 原料果実および/または野菜が、レモンおよびグレープフルーツを含む柑橘類果実、うめおよび桃を含む核果類果実、ぶどうを含む漿果類果実ならびにバナナから選択される一種以上である、請求項6に記載のアルコール浸漬物または食品もしくは飲料。
・・・(略)・・・
[10] 請求項6~9のいずれか1項に記載された、低アルコール飲料。」
(2)甲1に記載された発明
甲1に記載された事項を、特に[0013]、実施例1~3並びに請求項6、7及び10に関して整理すると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
<甲1発明>
「生のゆず果実を分割し凍結し、凍結したまま微粉砕することにより、粉末状の凍結微粉砕物を得、40%原料用アルコールに2日間浸漬し(100g/L)、得られた浸漬液をろ過して固形分を除き、アルコール40%のゆず凍結粉砕浸漬酒を得、これを原料酒として、原料酒25ml、原料用アルコール8.7ml、糖類9.8g、酸味料0.8g、炭酸水約210mlの配合で製造した低アルコール飲料。」
2 本件特許発明7について
(1)対比
本件特許発明7と甲1発明を対比する。
甲1発明は、「生のゆず果実」を用いた「低アルコール飲料」であるから、本件特許発明7における「果実由来成分を含むアルコール飲料」との特定事項を満たす。
甲1発明は、「タイム抽出物を含有する飲料及び生姜を含有する飲料」に該当しないことから、本件特許発明7における「タイム抽出物を含有する飲料及び生姜を含有する飲料を除く」との特定事項を満たす。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「果実由来成分を含むアルコール飲料(ただし、タイム抽出物を含有する飲料及び生姜を含有する飲料を除く。)。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1>
本件特許発明7においては、「0.005~0.5ppmのメチルチモールを含有し」と特定されているのに対して、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。
(2)判断
相違点1について検討する。
甲1には、メチルチモールの含有量については何ら記載されていないものの、甲2によると、ゆず全果1kgあたり0.21mgのメチルチモールが含まれていることから、これに従い、甲1発明に含まれるメチルチモール量を算出すると、0.021mg×(25ml/1000ml)=0.000525mgとなり、その濃度は0.000525mg×(1000/250)=0.0021ppmとなる。したがって、相違点1は実質的な相違点である。
また、甲1及び他の証拠をみても、メチルチモールの含有量を0.005~0.5ppmに変更する動機付けとなる記載はない。
そして、本件特許発明7は、「メチルチモールを含有していることによって、雑味を強調することなく、果実由来の豊かな風味を付与することができる。具体的には、メチルチモールによって、新鮮さ、トップ香のボリューム、果汁感(ジューシー感)を増やすことができる」(【0008】)こと、「メチルチモールの含有量は、特に限定されるものでは無いが、含有量が多い程、果実由来の風味をより豊かにすることができる。また、含有量が少ない程、雑味の強調を防ぐことができる。このような観点から、メチルチモールの含有量は、・・・0.005~0.5ppmであることが最も好ましい。」(【0009】)という、甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、当業者が予測できる範囲を超える顕著な効果を奏するものである。
してみれば、甲1発明において、メチルチモールの含有量を調整して相違点1に係る本件特許発明7の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととは言えない。
なお、異議申立人は、特許異議申立書及び意見書において、
「甲第1号証の【0032】には、アルコールと果実微粉砕物との浸漬比について、以下のように記載されている。
「浸漬比は、一般的には、アルコール1Lに対し、凍結微粉砕物約1g~約500g、好ましくは約5g~約300g、より好ましくは約10g~約200gである。」
すなわち、実施例ではアルコール1Lに凍結微粉砕物100gを浸漬しているが、段落【0032】の記載によれば、凍結微粉砕物の使用量は500g、300g、200gであってもよいとされている。実施例1~3において、レモン又はグレープフルーツに代えてゆずを使用し、その凍結微粉砕物の使用量を500g、300g、200gとした場合のゆずRTDのメチルチモール含量は、それぞれ、100g使用した場合の5倍、3倍、2倍であるから、以下のように計算される。
・500g使用:0.0021×5=0.0105(ppm)
・300g使用:0.0021×3=0.0063(ppm)
・200g使用:0.0021×2=0.0042(ppm)
以上より、甲第1号証には、
「0.0021~0.0105ppmのメチルチモールを含有し、ゆず由来成分を含むアルコール飲料(ただし、タイム抽出物を含有する飲料及び生姜を含有する飲料を除く。)」が実質的に開示されているか、強く示唆されている。」
と主張している。しかしながら、甲1発明において、凍結微粉砕物の使用量を100gから200~500g(2~5倍)へ変更する動機付けがないから、甲1発明において、メチルチモールの含有量を変更して相違点1に係る本件特許発明7の発明特定事項とすることが開示または示唆されているとは認められない。したがって、上記主張は採用できない。
以上のことから、本件特許発明7は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 本件特許発明9~12について
本件特許発明9~12は、請求項7を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明7の発明特定事項を全て有するものであるであるから、本件特許発明7と同様に、甲1発明であるとはいえないし、また、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
4 取消理由についてのむすび
以上のとおりであるから、本件特許発明7、9~12は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項7、9~12に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取消理由の理由では取り消すことはできない。
第7 結語
以上のとおり、本件特許の請求項7、9~12に係る特許は、当審が通知した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由のいずれによっても取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項7、9~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701205