審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2023-700936

二次電池電極用バインダー及びその用途

審判番号
2023-700936
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-551140外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
7234934
請求日
2023年09月08日
審決日
2023年12月06日
公報発行日
2024年01月26日
結論
維持
当事者
審判長/審判官
分類
P1652.121-Y (H01M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7234934号発明「二次電池電極用バインダー及びその用途」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論
特許第7234934号の請求項1、2、4ないし9に係る特許を維持する。

理由

目次 ▾ 19項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

特許第7234934号の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)10月23日(優先権主張2017年(平成29年)10月24日 日本国)を国際出願日とする出願であって、令和5年2月28日にその特許権の設定登録がされ、令和5年3月8日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1、2、4ないし9に係る特許に対し、令和5年9月8日に特許異議申立人安藤宏(以下「特許異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。

第2 本件発明

特許第7234934号の請求項1ないし9の特許に係る発明(以下「本件発明1」ないし「本件発明9」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
架橋重合体又はその塩を含有する二次電池電極用バインダーであって、
前記架橋重合体又はその塩は、pH8における水膨潤度が5.0以上、100以下である、二次電池電極用バインダー。
【請求項2】
続きを表示(全19行)
前記架橋重合体又はその塩は、pH4における水膨潤度が2.0以上である、請求項1に記載の二次電池電極用バインダー。
【請求項3】
前記架橋重合体は、その全構造単位に対し、エチレン性不飽和カルボン酸単量体に由来する構造単位を50質量%以上、100質量%以下含む請求項1又は2に記載の二次電池電極用バインダー。
【請求項4】
前記架橋重合体は、架橋性単量体により架橋されたものである請求項1~3のいずれか1項に記載の二次電池電極用バインダー。
【請求項5】
前記架橋重合体は、中和度80~100モル%に中和された後、水媒体中で測定した粒子径が、体積基準メジアン径で0.1μm以上、10μm以下である請求項1~4のいずれか1項に記載の二次電池電極用バインダー。
【請求項6】
前記架橋重合体は、中和度80~100モル%に中和された後、水媒体中で測定した体積平均粒子径を個数平均粒子径で除した値である粒子径分布が、1.5以下である請求項1~5のいずれか1項に記載の二次電池電極用バインダー。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のバインダー、活物質及び水を含む二次電池電極合剤層用組成物。
【請求項8】
負極活物質として炭素系材料またはケイ素系材料を含む請求項7に記載の二次電池電極合剤層用組成物。
【請求項9】
集電体表面に、請求項7又は8に記載の非水電解質二次電池電極合剤層用組成物から形成される合剤層を備えた二次電池電極。」

第3 申立理由の概要

特許異議申立人が申し立てた申立ての理由は、以下のとおりである。

1 申立理由1(甲1発明を主発明とする進歩性について)

本件特許の請求項1、2、4、5、7ないし9に係る各特許発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきである。

また、本件特許の請求項6に係る特許発明は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証、甲第3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきである。

2 申立理由2(甲4発明を主発明とする進歩性について)

本件特許の請求項1、4、5、7ないし9に係る特許発明は、甲第4号証に記載された発明及び甲第5号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

また、本件特許の請求項2に係る特許発明は、甲第4号証に記載された発明、及び甲第5号証、甲第1号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

さらに、本件特許の請求項6に係る特許発明は、甲第4号証に記載された発明、及び甲第5号証、甲第3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

3 申立理由3(甲6発明を主発明とする進歩性について)

本件特許の請求項1、4、5、7ないし9に係る特許発明は、甲第6号証に記載された発明及び甲第7号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

また、本件特許の請求項2に係る特許発明は、甲第6号証に記載された発明、及び甲第7号証、甲第1号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

さらに、本件特許の請求項6に係る特許発明は、甲第6号証に記載された発明、及び甲第7号証、甲第3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

甲第1号証:国際公開第2016/084364号
甲第2号証:特開2017-91789号公報
甲第3号証:永井 康彦、外1名、「ミクロンサイズ単分散微粒子の工業化とその応用」、日本接着学会誌、Vol.49、No.5(2013)、【157】~【163】
甲第4号証:国際公開第2017/130940号
甲第5号証:国際公開第2015/190367号
甲第6号証:特開2015-18776号公報
甲第7号証:国際公開第2014/185072号

第4 甲号証の記載及び甲号証に記載された発明

1 甲第1号証

(1)甲第1号証には、「非水系二次電池用バインダー」について、以下の各記載がある(下線は当審で付与した。以下同様。)。

「[0017] 以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の非水系二次電池用バインダーは、特に限定されず、電極における集電体上に配置される電極合材層の調製や、当該電極合材層の更に上(すなわち電極基材の上)やセパレータ基材の上に配置される非水系二次電池用機能層の調製に用いられるが、好適には、非水系二次電池用機能層の調製に用いられる。そして、本発明の非水系二次電池機能層用組成物は、本発明の非水系二次電池用機能層を調製する際の材料として用いられる。また、本発明の非水系二次電池用機能層は、本発明の非水系二次電池機能層用組成物を用いて調製され、例えばセパレータや電極の一部を構成する。そして、本発明の非水系二次電池は、少なくとも本発明の非水系二次電池用機能層を備えるものである。
[0018](非水系二次電池用バインダー)
本発明の非水系二次電池用バインダーは、粒子状重合体が分散媒としての水中に分散した組成物であり、当該粒子状重合体のpH5における水系媒体に対する膨潤度が2倍未満であり、且つpH8における水系媒体に対する膨潤度が2倍以上7倍以下であることを特徴とする。
なお、上述のように、本発明の非水系二次電池用バインダーは、機能層および電極合材層の何れにも用いることができるが、以下、主として非水系二次電池用バインダーを機能層に用いた場合を例に挙げて説明する。
[0019] ここで、本発明の非水系二次電池用バインダーは、pH5の水系媒体に対する膨潤度が2倍未満であり、且つpH8の水系媒体に対する膨潤度が2倍以上7倍以下である粒子状重合体を含んでいるので、結着性および保存安定性に優れ、また当該バインダーを用いて調製されるスラリー組成物の過度な粘度上昇を抑制することができる。」
「[0042](非水系二次電池機能層用組成物)
非水系二次電池機能層用組成物は、少なくとも、非水系二次電池用バインダーおよび非導電性粒子を含み、任意にその他の成分を含有する、水を分散媒としたスラリー組成物である。
そして、本発明の非水系二次電池機能層用組成物は、上述した粒子状重合体を含んでなるため、過度な粘度上昇が抑制されており、基材上への塗布が容易である上に、当該機能層用組成物を用いて形成される機能層は、基材との密着性に優れる。
なお、非水系二次電池機能層用組成物に含まれる粒子状重合体および非導電性粒子の割合の合計は、非水系二次電池機能層用組成物の質量を100質量%とした場合、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、通常90質量%以下である。」
「[0049](非水系二次電池用機能層)
非水系二次電池用機能層は、上述した非水系二次電池機能層用組成物を用い、適切な基材上に形成される。具体的には機能層は、機能層用組成物を基材上で乾燥することにより得ることができる。即ち本発明の機能層は、上記機能層用組成物の乾燥物よりなり、通常、上記粒子状重合体と、上記非導電性粒子とを含有し、任意に、上記その他の成分とを含有する。なお、上述した粒子状重合体が架橋性の単量体単位を含む場合には、粒子状重合体は、機能層用組成物の乾燥時、または、乾燥後に任意に実施される熱処理時に架橋されていてもよい(即ち機能層は、上述した粒子状重合体の架橋物を含んでいてもよい)。なお、機能層中に含まれている各成分の好適な存在比は、機能層用組成物中の各成分の好適な存在比と同じである。
そして本発明の機能層用組成物を用いて得られる機能層は、基材との密着性に優れる。具体的には、機能層が基材との密着性に優れているため、機能層の基材上への形成後の巻き取りの際や、二次電池製造時に裁断および湾曲させる際に生じる粉落ちが十分に抑制可能となる。その上、電解液中での機能層の強度が高まり、二次電池の高温サイクル特性が向上する。ここで、機能層は基材の片面に設けてもよいし、基材の両面に設けてもよい。
また、機能層は、基材から剥離し、自立膜の状態でそのままセパレータとして使用することもできる。
なお、非水系二次電池用機能層に含まれる粒子状重合体および非導電性粒子の割合の合計は、非水系二次電池用機能層の質量を100質量%とした場合、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、通常100質量%以下である。」
「[0061] 以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
また、複数種類の単量体を共重合して製造される重合体において、ある単量体を重合して形成される構造単位の前記重合体における割合は、別に断らない限り、通常は、その重合体の重合に用いる全単量体に占める当該ある単量体の比率(仕込み比)と一致する。
実施例および比較例において、粒子状重合体のpH5およびpH8それぞれにおける水系媒体に対する膨潤度、機能層用組成物の粘度変化、バインダーの保存安定性、電解液浸漬前および浸漬後それぞれにおける機能層のセパレータ基材との密着性、セパレータの水分量、並びにリチウムイオン二次電池の高温サイクル特性は、下記の方法で測定および評価した。
[0062]<粒子状重合体の水系媒体に対する膨潤度(pH5)>
粒子状重合体の水分散液を、テフロン(登録商標)シャーレに流し込み、25℃で5日間乾燥させて1cm×1cmのバインダーフィルム(厚さ500μm)を作製し、重量M0を測定した。その後、得られたフィルムをpH5の塩化水素水溶液(塩酸)に60℃、72時間浸漬した。浸漬後のフィルムの表面の塩化水素水溶液をふき取り重量M1を測定した。そして、下記式に従って、pH5における水系媒体に対する膨潤度を算出した。
pH5における水系媒体に対する膨潤度=M1/M0
<粒子状重合体の水系媒体に対する膨潤度(pH8)>
粒子状重合体の水分散液を、テフロン(登録商標)シャーレに流し込み、25℃で5日間乾燥させて1cm×1cmのバインダーフィルム(厚さ500μm)を作製し、重量M0を測定した。その後、得られたフィルムをpH8の水酸化ナトリウム水溶液に60℃、72時間浸漬した。浸漬後のフィルムの表面の水酸化ナトリウム水溶液をふき取り重量M2を測定した。そして、下記式に従って、pH8における水系媒体に対する膨潤度を算出した。
pH8における水系媒体に対する膨潤度=M2/M0
(後略)」
「[0063](実施例1)
<非水系二次電池用バインダー(粒子状重合体の水分散液)の調製>
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、脂肪族共役ジエン単量体として1,3-ブタジエン46部、酸基含有単量体としてアクリル酸20部、芳香族ビニル単量体としてスチレン34部、連鎖移動剤としてt-ドデシルメルカプタン2.0部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5部、イオン交換水150部および重合開始剤として過硫酸カリウム1部を入れ、十分に攪拌した後、55℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、次いでアンモニア水を添加しpH5に調整し、非水系二次電池用バインダー(粒子状重合体の水分散液)を得た。この非水系二次電池用バインダーを用いて、バインダーの保存安定性を評価した。結果を表1に示す。
(後略)」
「[0067](実施例2、3)
非水系二次電池用バインダー(粒子状重合体の水分散液)の調製時に、連鎖移動剤としてのt-ドデシルメルカプタンの使用量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、バインダー、機能層用組成物、機能層、機能層を備えるセパレータ、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
[0068](実施例4、5)
非水系二次電池用バインダー(粒子状重合体の水分散液)の調製時に、酸基含有単量体としてのアクリル酸および脂肪族共役ジエン単量体としての1,3-ブタジエンの使用量を変更した以外はそれぞれ実施例2、実施例1と同様にして、バインダー、機能層用組成物、機能層、機能層を備えるセパレータ、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。」
「[0076][表1]
[図:0001405849000001.jpg]
」

(2)上記記載から、甲第1号証には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

ア 段落[0017]によれば、甲第1号証には「電極における集電体上に配置される電極合材層の調製や、当該電極合材層の更に上」「やセパレータ基材の上に配置される非水系二次電池用機能層の調製に用いられる」「非水系二次電池用バインダー」が記載されている。

イ 段落[0063]、[0067]及び[0068]によれば、実施例3、5の非水系二次電池用バインダーは「攪拌機付き5MPa耐圧容器に、脂肪族共役ジエン単量体として1,3-ブタジエン」「、酸基含有単量体としてアクリル酸」「、芳香族ビニル単量体としてスチレン」「、連鎖移動剤としてt-ドデシルメルカプタン」「、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム」「、イオン交換水」「および重合開始剤として過硫酸カリウム」「を入れ、十分に攪拌した後、55℃に加温して重合を開始し」、「重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、次いでアンモニア水を添加しpH5に調整し」て「得た」「粒子状重合体の水分散液」である。

ウ 段落[0076]の表1によれば、実施例3、5の非水系二次電池用バインダーにおいて、粒子状重合体の「pH8」における「水系媒体に対する膨潤度」は、「6.5」又は「6.2」である。

そして、段落[0061]、[0062]によれば、実施例における「粒子状重合体の」「pH8」「における水系媒体に対する膨潤度」は、「粒子状重合体の水分散液を、テフロン」「シャーレに流し込み、25℃で5日間乾燥させて1cm×1cmのバインダーフィルム(厚さ500μm)を作製し、重量M0を測定し」、「その後、得られたフィルムをpH8の水酸化ナトリウム水溶液に60℃、72時間浸漬し」、「浸漬後のフィルムの表面の水酸化ナトリウム水溶液をふき取り重量M2を測定し」、「pH8における水系媒体に対する膨潤度=M2/M0」「に従って」「算出」される。

(3)上記(2)から、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

(甲1発明)

「電極における集電体上に配置される電極合材層の調製や、当該電極合材層の更に上やセパレータ基材の上に配置される非水系二次電池用機能層の調製に用いられる非水系二次電池用バインダーであって、
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、脂肪族共役ジエン単量体として1,3-ブタジエン、酸基含有単量体としてアクリル酸、芳香族ビニル単量体としてスチレン、連鎖移動剤としてt-ドデシルメルカプタン、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、イオン交換水および重合開始剤として過硫酸カリウムを入れ、十分に攪拌した後、55℃に加温して重合を開始し、重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、次いでアンモニア水を添加しpH5に調整して得た粒子状重合体の水分散液であり、
粒子状重合体のpH8における水系媒体に対する膨潤度は、6.5又は6.2であり、
粒子状重合体のpH8における水系媒体に対する膨潤度は、粒子状重合体の水分散液を、テフロンシャーレに流し込み、25℃で5日間乾燥させて1cm×1cmのバインダーフィルム(厚さ500μm)を作製し、重量M0を測定し、その後、得られたフィルムをpH8の水酸化ナトリウム水溶液に60℃、72時間浸漬し、浸漬後のフィルムの表面の水酸化ナトリウム水溶液をふき取り重量M2を測定し、pH8における水系媒体に対する膨潤度=M2/M0に従って算出される、
非水系二次電池用バインダー。」

2 甲第2号証

(1)甲第2号証には、以下の各記載がある。

「【0018】
本発明において、二次電池は正極および負極、その間にセパレータを挟んで電解塩を含んだ電解液が封入された構成となる。
【0019】
正極は、例えば集電体としての金属電極基板と、金属電極基板上に正極活物質、導電助剤、および電解質と良好なイオンの授受を行い、かつ、導電助剤と正極活物質を金属基板に固定するためのバインダー等により構成されている。金属電極基板には、例えばアルミニウムが用いられるが、これに限るものではなく、ニッケル、ステンレス、金、白金、チタン等であってもよい。
【0020】
同様に負極は、例えば集電体としての金属電極基板と、金属電極基板上に負極活物質、および電解質と良好なイオンの授受を行い、かつ、導電助剤と負極活物質を金属基板に固定するためのバインダー等より構成されている。金属電極基板には、例えば銅が用いられるが、これに限るものではなく、ニッケル、ステンレス、金、白金、チタン等であってもよい。」
「【0030】
(C)多官能(メタ)アクリレートモノマーは、架橋剤として働く。(C)多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては2官能~5官能(メタ)アクリレートが挙げられる。(後略)」
「【0032】
3官能(メタ)アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(中略)が挙げられる。(後略)」
「【0088】
[バインダーの実施合成例5]
攪拌機付き反応容器に、アクリル酸ブチル74重量部、ポリエチレングリコールモノメタアクリレート(日油製:ブレンマーPE-90)6重量部、アクリル酸3重量部、メタアクリル酸10重量部、トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学製:A-TMPT)7重量部、乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウム溶液(花王製:エマール2F-30)の固形分として2重量部、イオン交換水150重量部および重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.1重量部を入れ、ホモジナイザーを用いて十分乳化させたのち、窒素雰囲気下で60℃に加温し5時間重合し、その後冷却した。冷却後、28%アンモニア水溶液を用いて、重合液をpH8.1に調整し、バインダーE(重合転化率99%以上)(固形分濃度41wt%)を得た。得られた重合体の平均粒子径は0.199μmであった。」

(2)上記記載から、甲第2号証には、次の技術事項が記載されているものと認められる。

ア 段落【0018】~【0020】によれば、「二次電池は正極および負極」「が封入され」、「正極は」「導電助剤と正極活物質を金属基板に固定するためのバインダー等により構成され」、「負極は」「導電助剤と負極活物質を金属基板に固定するためのバインダー等より構成され」るから、甲第2号証には、二次電池の電極において導電助剤と活物質を金属基板に固定するためのバインダーが記載されている。

イ 段落【0088】によれば、実施合成例5のバインダーは、「攪拌機付き反応容器に、アクリル酸ブチル」「、ポリエチレングリコールモノメタアクリレート」「、アクリル酸」「、メタアクリル酸」「、トリメチロールプロパントリアクリレート」「、乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウム溶液」「、イオン交換水」「および重合開始剤として過硫酸アンモニウム」「を入れ、ホモジナイザーを用いて十分乳化させたのち、窒素雰囲気下で60℃に加温し5時間重合し、その後冷却し」、「冷却後、28%アンモニア水溶液を用いて、重合液をpH8.1に調整し」、「得た」ものである。

ウ 段落【0030】、【0032】によれば、「トリメチロールプロパントリアクリレート」は「架橋剤として働く」ものであり、上記イの実施合成例5で得られるバインダーは、「トリメチロールプロパントリアクリレート」「を入れ」「重合し」たものであるから、架橋された重合体を含むバインダーとしたものである。

(3)上記(2)から、甲第2号証には、以下の技術(以下「甲2記載技術」という。)が記載されているといえる。

「二次電池の電極において導電助剤と活物質を金属基板に固定するためのバインダーを、
攪拌機付き反応容器に、アクリル酸ブチル、ポリエチレングリコールモノメタアクリレート、アクリル酸、メタアクリル酸、トリメチロールプロパントリアクリレート、乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウム溶液、イオン交換水および重合開始剤として過硫酸アンモニウムを入れ、ホモジナイザーを用いて十分乳化させたのち、窒素雰囲気下で60℃に加温し5時間重合し、その後冷却し、冷却後、28%アンモニア水溶液を用いて、重合液をpH8.1に調整し、
架橋された重合体を含むバインダーとする」技術。

3 甲第3号証

甲第3号証の第【157】頁左欄第2~16行には、「重合体微粒子」について、「ミクロンサイズで単分散な微粒子は,電子材料,分離用カラム,重合トナー,粒子径用基準粒子,診断薬をはじめとした用途展開がなされて」いることが記載されている。

以上のことから、甲第3号証には、以下の技術(以下「甲3記載技術」という。)が記載されているといえる。

「ミクロンサイズで単分散な重合体微粒子を電子材料等の用途で利用する」技術。

4 甲第4号証

(1)甲第4号証には、「非水電解質二次電池電極用バインダー」について、以下の各記載がある。

「[0013] 本発明の非水電解質二次電池電極用バインダーは、架橋重合体又はその塩を含有するものであり、活物質及び水と混合することにより電極合剤層組成物とすることができる。上記の組成物は、集電体への塗工が可能なスラリー状態であってもよいし、湿粉状態として調製し、集電体表面へのプレス加工に対応できるようにしてもよい。銅箔又はアルミニウム箔等の集電体表面に上記組成物から形成される合剤層を形成することにより、本発明の非水電解質二次電池電極が得られる。
以下に、本発明の非水電解質二次電池電極用バインダー及び該バインダーに用いられる架橋重合体の製造方法、並びに、該バインダーを用いて得られる非水電解質二次電池電極合剤層用組成物及び非水電解質二次電池電極の各々について詳細に説明する。」
「[0073](製造例1:架橋重合体塩R-1の製造)
重合には、攪拌翼、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応器を用いた。
反応器内にアセトニトリル877部、イオン交換水3.5部、アクリル酸(以下「AA」という)75部、ベンジルアクリレート25部及びペンタエリスリトールトリアリルエーテル(ダイソー社製、商品名「ネオアリルP-30」)0.5部を仕込んだ。
反応器内を十分に窒素置換した後、加温して内温を55℃まで昇温した。内温が55℃で安定したことを確認した後、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、商品名「V-65」)0.0625部を添加したところ、反応液に白濁が認められたため、この点を重合開始点とした。外温(水バス温度)を調整して内温を55℃に維持しながら重合反応を継続し、重合開始点から6時間経過した時点でV-65を0.1部添加し、内温を65℃迄昇温した。内温を65℃で維持し、反応開始点から12時間経過した時点で反応液の冷却を開始し、内温が25℃まで低下した後、水酸化リチウム・一水和物(以下、「LiOH・H2O」ともいう)の粉末39.38部を内温が50℃を超えないようにゆっくりと添加した。LiOH・H2O粉末の添加後、12時間撹拌を継続して、架橋重合体塩R-1(Li塩、中和度90mol%)の粒子が媒体に分散したスラリー状の重合反応液を得た。
得られた重合反応液を遠心分離して重合体粒子を沈降させた後、上澄みを除去した。その後、重合反応液と同重量のアセトニトリルに沈降物を再分散させた後、遠心分離により
重合体粒子を沈降させて上澄みを除去する操作を2回繰り返した。沈降物を回収し、減圧条件下、80℃で3時間乾燥処理を行い、揮発分を除去することにより、架橋重合体塩R-1の粉末を得た。架橋重合体塩R-1は吸湿性を有するため、水蒸気バリア性を有する容器に密封保管した。なお、架橋重合体塩R-1の粉末をIR測定し、カルボン酸のC=O基由来のピークとカルボン酸LiのC=O由来のピークの強度比より中和度を求めたところ、仕込みからの計算値に等しく90mol%であった。」
「[0078](製造例14:架橋重合体R-14の製造)
中和剤LiOH・H2Oを添加しないこと以外は、製造例1と同様の操作により粉末状の架橋重合体R-14(未中和)を得た。架橋重合体R-14は、水蒸気バリア性を有する容器に密封保管した。」
「[0085][表1]
[図:0001405849000002.jpg]
」
「[0086][表2]
[図:0001405849000003.jpg]
」

(2)上記記載から、甲第4号証には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

ア 段落[0013]によれば、甲第4号証には「架橋重合体又はその塩を含有」し、「活物質及び水と混合することにより電極合剤層組成物とする」「非水電解質二次電池電極用バインダー」が記載されている。

イ 段落[0073]によれば、製造例1の架橋重合体塩は「反応器内にアセトニトリル」「、イオン交換水」「、アクリル酸」「、ベンジルアクリレート」「及びペンタエリスリトールトリアリルエーテル」「を仕込」み、「反応器内を十分に窒素置換した後、加温して内温を55℃まで昇温し」、「内温が55℃で安定したことを確認した後、重合開始剤として2,2’-アゾビス」「(」「V-65」「)」「を添加し」、「外温(水バス温度)を調整して内温を55℃に維持しながら重合反応を継続し、重合開始点から6時間経過した時点でV-65を」「添加し、内温を65℃迄昇温し」、「内温を65℃で維持し、反応開始点から12時間経過した時点で反応液の冷却を開始し、内温が25℃まで低下した後、水酸化リチウム・一水和物(」「LiOH・H2O」「)の粉末」「を内温が50℃を超えないようにゆっくりと添加し」、「LiOH・H2O粉末の添加後、12時間撹拌を継続して」「得た」、「中和度90mol%」の「Li塩」である。

ウ 段落[0078]によれば、製造例14の架橋重合体は「中和剤LiOH・H2Oを添加しないこと以外は」、上記イと同様の操作により「得た」ものである。

エ 上記イ、ウによれば、甲第4号証には、架橋重合体又はその塩として、反応器内にアセトニトリル、イオン交換水、アクリル酸、ベンジルアクリレート及びペンタエリスリトールトリアリルエーテルを仕込み、反応器内を十分に窒素置換した後、加温して内温を55℃まで昇温し、内温が55℃で安定したことを確認した後、重合開始剤として2,2’-アゾビス(V-65)を添加し、外温(水バス温度)を調整して内温を55℃に維持しながら重合反応を継続し、重合開始点から6時間経過した時点でV-65を添加し、内温を65℃迄昇温し、内温を65℃で維持し、反応開始点から12時間経過した時点で反応液の冷却を開始し、内温が25℃まで低下した後、水酸化リチウム・一水和物(LiOH・H2O)の粉末を内温が50℃を超えないようにゆっくりと添加し、LiOH・H2O粉末の添加後、12時間撹拌を継続して得た、中和度90mol%のLi塩である架橋重合体塩、又は中和剤LiOH・H2Oを添加しないこと以外は上記架橋重合体塩と同様の操作により得た架橋重合体が記載されている。

(3)上記(2)から、甲第4号証には、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。

(甲4発明)

「架橋重合体又はその塩を含有し、活物質及び水と混合することにより電極合剤層組成物とする非水電解質二次電池電極用バインダーであって、
架橋重合体又はその塩は、反応器内にアセトニトリル、イオン交換水、アクリル酸、ベンジルアクリレート及びペンタエリスリトールトリアリルエーテルを仕込み、反応器内を十分に窒素置換した後、加温して内温を55℃まで昇温し、内温が55℃で安定したことを確認した後、重合開始剤として2,2’-アゾビス(V-65)を添加し、外温(水バス温度)を調整して内温を55℃に維持しながら重合反応を継続し、重合開始点から6時間経過した時点でV-65を添加し、内温を65℃迄昇温し、内温を65℃で維持し、反応開始点から12時間経過した時点で反応液の冷却を開始し、内温が25℃まで低下した後、水酸化リチウム・一水和物(LiOH・H2O)の粉末を内温が50℃を超えないようにゆっくりと添加し、LiOH・H2O粉末の添加後、12時間撹拌を継続して得た、中和度90mol%のLi塩である架橋重合体塩、又は中和剤LiOH・H2Oを添加しないこと以外は上記架橋重合体塩と同様の操作により得た架橋重合体である、
非水電解質二次電池電極用バインダー。」

5 甲第5号証

(1)甲第5号証には、以下の各記載がある。

「[0013] 本発明の非水電解質二次電池用電極は、銅又はアルミニウム等の集電体表面に活物質、架橋型吸水性樹脂微粒子、バインダー及び水を含むスラリーから形成される合剤層を備えてなるものである。該スラリーは、その他の成分として導電剤、有機溶剤等を含むものであってもよい。
以下に、合剤層の構成成分及びその形成方法等について詳細に説明する。」
「[0015]<架橋型吸水性樹脂微粒子>
架橋型吸水性樹脂微粒子は、合剤層を多孔化するための気孔形成剤として作用するものである。
(後略)」
「[0039] 以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。尚、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。尚、以下において「部」及び「%」は、特に断らない限り質量部及び質量%を意味する。
以下の例において、架橋型吸水性樹脂微粒子についての評価は、以下の方法により実施した。
[0040](1)固形分
測定サンプル約1gを秤量(a)し、次いで、無風乾燥機150℃、60分間乾燥後の残分を測定(b)し、以下の式より算出した。測定には秤量ビンを使用した。その他の操作については、JIS K 0067-1992(化学製品の減量及び残分試験方法)に準拠した。
続きを表示(全21行)
固形分(%)=(b/a)×100
[0041](2)吸水量
吸水量は以下の方法によって測定した。測定装置を図1に示す。
測定装置は図1における<1>~<3>から構成される。
<1> 空気抜きするための枝管が付いたビュレット1、ピンチコック2、シリコンチューブ3およびポリテトラフルオロエチレンチューブ4から成る。
<2> ロート5の上に底面に多数の穴が空いた支柱円筒8、さらにその上に装置用濾紙10が設置されている。
<3> 重合体微粒子の試料6は2枚の試料固定用濾紙7に挟まれ、試料固定用濾紙は粘着テープ9によって固定される。なお、使用する濾紙は全てADVANTEC No.2 内径55mmである。
<1>と<2>とはシリコンチューブ3によって繋がれる。
また、ロート5および支柱円筒8は、ビュレット1に対する高さが固定されており、ビュレット枝管の内部に設置されたポリテトラフルオロエチレンチューブ4の下端と支柱円筒8の底面とが同じ高さになる様に設定されている(図1中の点線)。
[0042] 測定方法について以下に説明する。
<1>にあるピンチコック2を外し、ビュレット1の上部からシリコンチューブ3を通してイオン交換水を入れ、ビュレット1から装置用濾紙10までイオン交換水12で満たされた状態とする。次いで、ピンチコック2を閉じ、ビュレット枝管にゴム栓で接続されたポリテトラフルオロエチレンチューブ4から空気を除去する。こうして、ビュレット1から装置用濾紙10までイオン交換水12が連続的に供給される状態とする。
次に、装置用濾紙10からにじみ出た余分なイオン交換水12を除去した後、ビュレット1の目盛りの読み(a)を記録する。
測定試料の乾燥粉末0.1~0.2gを秤量し、<3>にある様に、試料固定用濾紙7の中央部に均一に置く。もう1枚の濾紙でサンプルを挟み、粘着テープ9で2枚の濾紙を留め、サンプルを固定する。サンプルが固定された濾紙を<2>に示される装置用濾紙10上に載置する。
次に、装置用濾紙10上に蓋11を載置した時点から、30分間経過した後のビュレット1の目盛りの読み(b)を記録する。
測定試料の吸水量と2枚の試料固定用濾紙7の吸水量の合計(c)は(a-b)で求められる。同様の操作により、重合体微粒子試料を含まない、2枚の濾紙7のみの吸水量を測定する(d)。
上記操作を行い、吸水量を以下の式より計算した。なお、計算に使用する固形分は、(1)の方法により測定した値を使用した。
吸水量(mL/g)=(c-d)/{測定サンプル重量(g)×(固形分%÷100)}」
「[0048](製造例1:架橋型吸水性樹脂微粒子PA-1の製造)
重合には、攪拌翼およびバッフルからなる撹拌機構を有し、さらに温度計、還流冷却器、窒素導入管を備えた反応器を用いた。
反応器内に分散安定剤としてUM-1を1.5部、及びソルビタントリオレエート(花王社製、商品名「レオドールAO-10V」)2.0部、更に重合溶媒としてn-ヘプタン395部を仕込み、撹拌により分散安定剤が完全に溶解した油相を調整した。油相は15℃に調整した。
一方、別の容器にてAA100.0部、アロニックスM-243(東亞合成社製、ポリエチレングリコールジアクリレート、平均分子量425)13.0部(単官能単量体に対して2.2mol%に相当)、およびイオン交換水94.9部を仕込み、攪拌、均一溶解させた。さらに混合液の温度を40℃以下に保つように冷却しながら、25%アンモニア水70.8部をゆっくり加えて中和し単量体混合液を得た(水は合計148部)。
所定の撹拌速度で油相を撹拌しながら、単量体混合液を反応器内に仕込み、単量体混合液が油相に分散した分散液を調整した。反応器内温を15℃に保持し、反応器内を窒素置換した後、ハイドロサルファイトナトリウム0.07部をイオン交換水2.3部に溶解した液を反応器内に添加し、さらにその3分後、パークミルH80(日本油脂社製、クメンハイドロパーオキサイドの80%溶液)0.03部をn-ヘプタン5.0部で希釈した溶液を反応器に添加したところ、直ちに重合熱による内温の上昇が確認された。ピーク温度到達後、内温を25℃まで冷却した後、ハイドロサルファイトナトリウム0.05部をイオン交換水1.7部に溶解した液を反応器内に添加し、さらにその3分後、パーブチルH69(日本油脂社製、t-ブチルハイドロパーオキサイドの69%溶液)0.015部をイオン交換水1.5部で希釈した溶液を反応器に添加したところ、残留モノマーの重合により徐々に内温が上昇した。ピーク温度到達後、20℃まで冷却して架橋型吸水性樹脂微粒子PA-1(粒子内に水を含む)の油中分散液を得た。その後、反応器を加温して水とn-ヘプタンを共沸環流させて、脱水率95%となるまで水分離器より水を抜き出した後、反応器内のスラリーをろ過、さらにn-ヘプタンでリンスした後、加熱によりn-ヘプタンを除去して、架橋型吸水性樹脂微粒子PA-1の粉末を得た。
得られた架橋型吸水性樹脂微粒子PA-1についての分析結果を表1に示す。」
「[0058][表1]
[図:0001405849000004.jpg]
」

(2)上記記載から、甲第5号証には、次の技術事項が記載されているものと認められる。

ア 段落[0015]によれば、甲第5号証には、「合剤層を多孔化するための気孔形成剤として作用する」「架橋型吸水性樹脂微粒子」が記載されている。

イ 段落[0013]によれば、「非水電解質二次電池用電極」の「合剤層」は「活物質、架橋型吸水性樹脂微粒子、バインダー及び水を含むスラリーから形成される」ことが記載されている。

ウ 段落[0048]によれば、製造例1の架橋型吸収性樹脂微粒子PA-1は、「反応器内に分散安定剤としてUM-1」「、及びソルビタントリオレエート」「、更に重合溶媒としてn-ヘプタン」「を仕込み、撹拌により分散安定剤が完全に溶解した油相を調整し」、「油相は15℃に調整し」、「別の容器にてAA」「、アロニックスM-243」「、およびイオン交換水」「を仕込み、攪拌、均一溶解させ」、「さらに混合液の温度を40℃以下に保つように冷却しながら、25%アンモニア水」「をゆっくり加えて中和し単量体混合液を得」、「所定の撹拌速度で油相を撹拌しながら、単量体混合液を反応器内に仕込み、単量体混合液が油相に分散した分散液を調整し」、「反応器内温を15℃に保持し、反応器内を窒素置換した後、ハイドロサルファイトナトリウム」「をイオン交換水」「に溶解した液を反応器内に添加し、さらにその3分後、パークミルH80」「をn-ヘプタン」「で希釈した溶液を反応器に添加したところ、直ちに重合熱による内温の上昇が確認され」、「ピーク温度到達後、内温を25℃まで冷却した後、ハイドロサルファイトナトリウム」「をイオン交換水」「に溶解した液を反応器内に添加し、さらにその3分後、パーブチルH69」「をイオン交換水」「で希釈した溶液を反応器に添加したところ、残留モノマーの重合により徐々に内温が上昇し」、「ピーク温度到達後、20℃まで冷却して」「油中分散液を得」、「反応器を加温して水とn-ヘプタンを共沸環流させて、脱水率95%となるまで水分離器より水を抜き出した後、反応器内のスラリーをろ過、さらにn-ヘプタンでリンスした後、加熱によりn-ヘプタンを除去して」「得た」ものである。

エ 段落[0048]に「架橋型吸水性樹脂微粒子PA-1についての分析結果を表1に示す」と記載され、[0058]の表1を参照すると、架橋型吸水性樹脂微粒子PA-1の吸水量は「20」「ml/g」である。

そうすると、甲第5号証には、以下の技術(以下「甲5記載技術」という。)が記載されているといえる。

「非水電解質二次電池用電極の合剤層は活物質、架橋型吸水性樹脂微粒子、バインダー及び水を含むスラリーから形成され、
合剤層を多孔化するための気孔形成剤として作用する架橋型吸水性樹脂微粒子であって、
反応器内に分散安定剤としてUM-1、及びソルビタントリオレエート、更に重合溶媒としてn-ヘプタンを仕込み、撹拌により分散安定剤が完全に溶解した油相を調整し、油相は15℃に調整し、別の容器にてAA、アロニックスM-243、およびイオン交換水を仕込み、攪拌、均一溶解させ、さらに混合液の温度を40℃以下に保つように冷却しながら、25%アンモニア水をゆっくり加えて中和し単量体混合液を得、所定の撹拌速度で油相を撹拌しながら、単量体混合液を反応器内に仕込み、単量体混合液が油相に分散した分散液を調整し、反応器内温を15℃に保持し、反応器内を窒素置換した後、ハイドロサルファイトナトリウムをイオン交換水に溶解した液を反応器内に添加し、さらにその3分後、パークミルH80をn-ヘプタンで希釈した溶液を反応器に添加したところ、直ちに重合熱による内温の上昇が確認され、ピーク温度到達後、内温を25℃まで冷却した後、ハイドロサルファイトナトリウムをイオン交換水に溶解した液を反応器内に添加し、さらにその3分後、パーブチルH69をイオン交換水で希釈した溶液を反応器に添加したところ、残留モノマーの重合により徐々に内温が上昇し、ピーク温度到達後、20℃まで冷却して油中分散液を得、反応器を加温して水とn-ヘプタンを共沸環流させて、脱水率95%となるまで水分離器より水を抜き出した後、反応器内のスラリーをろ過、さらにn-ヘプタンでリンスした後、加熱によりn-ヘプタンを除去して得たものであり、
吸水量は20ml/gである、架橋型吸水性樹脂微粒子。」

6 甲第6号証

(1)甲第6号証には、「二次電池用水系電極バインダー」について、以下の各記載がある。

「【0009】
本発明者らは、電極の分散性と結着性と可とう性の両方が要求される電極組成物用バインダー、特には一液系でも使用可能な電極組成物用バインダーについて種々検討を行った。そして、電極用組成物バインダーが水溶性高分子を含み、水溶性高分子の有する構造単位の全量100質量%に対して、(a)エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体由来の構造単位を50~80質量%、(b)エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位20~50質量%であって、25℃、pH7、不揮発分2質量%水溶液の粘度が100mPa・s以上であることを特徴とする水溶性高分子を含む電極バインダーを用いると、分散・粘度調整機能を有すると共に、結着性が良好で電極組成物を高固形分化できることを見出した。
【0010】
本発明の水溶性高分子は、上記の構成をとることにより、電極組成物とした際の粘度調整がし易くなり、スラリーの安定性を増すことが可能となる。さらに、本発明の水溶性高分子は、(c)多官能性不飽和単量体由来の構造単位を含むことが好ましい。ポリマーの架橋を行うことでスラリー化した際に結着性が向上しチクソ性を付与することができる。また、このような水溶性高分子をシード粒子を用いた乳化重合で作製することで、分子量の比較的高い高分子を容易に作製することができ、塩を用いて水溶化することで、安価、簡便に製造できることを見出し、本発明に到達したものである。
【0011】
すなわち、本発明は、水溶性高分子を含有する二次電池用水系電極バインダーであって、上記水溶性高分子は、水溶性高分子の有する構造単位の全量100質量%に対して、(a)エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体由来の構造単位を50~80質量%、(b)エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位20~50質量%を含む水溶性高分子であって、25℃、pH7、不揮発分2質量%水溶液の粘度が100mPa・s~20,000mPa・sである二次電池用水系電極バインダーである。」
「【0015】
エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等の炭素数3~10のエチレン性不飽和モノカルボン酸塩単量体;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸等の炭素数4~10のエチレン性不飽和ジカルボン酸塩単量体等が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸等の炭素数3~6の不飽和モノカルボン酸の塩が好ましい。
エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体を50質量%以上含有することで、上記水溶性高分子を電極バインダーとして電極を作成した際に電解液に対して膨潤するのを抑制することができ、耐電解液性を充分なものとすることができる。耐電解液試験における体積膨潤率は、好ましくは200%以下であり、より好ましくは150%以下である。なお、体積膨潤率は、通常は100%以上である。」
「【0021】
本発明の水溶性高分子は、構造単位(a)及び構造単位(b)を必須として含む限り、(c)多官能基含有単量体由来の構造単位を含んでいてもよい。多官能基含有単量体由来の構造単位は、多官能基含有不飽和単量体(c)の少なくとも一つの炭素-炭素二重結合が単結合になった構造を表している。多官能基含有不飽和単量体(c)としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基などの重合性の二重結合をその分子中に2個以上有する単量体であれば良く、例えば、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート等の多官能アリル系単量体;1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数n=4,9,14等)、トリメチロールプロパントリアクリレート等の多官能アクリレートが挙げられる。これらの中でも、水溶性高分子のゲル化が起こりにくい点から、ジアリルフタレートや1,6-ヘキサンジオールジアクリレートのような2官能単量体が好ましい。これらの多官能基含有単量体としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0022】
本発明の水溶性高分子に(c)多官能基単量体由来の構造単位を含む場合、その含有割合は0.01~5質量%以下が好ましい。5質量%以上用いる場合、該水溶性高分子はゲル化し易くなる恐れがある。ゲル化すると、分散性やスラリーの粘性が悪く、バインダーとして使用し難い。また、含有割合として0.1~3質量%がより好ましい。含有割合が0.01質量%以下である場合は、架橋により結着性を増す効果が不十分となる。
水溶性高分子に構造単位(c)を含む場合、構造単位(a)及び構造単位(b)と共に混合した単量体の混合溶液にして、共に重合系に加えることで水溶性高分子に組み込むことができる。」
「【0048】
本発明は更に、本発明の二次電池用水系電極バインダー、電極活物質、及び、水を必須成分として含む二次電池用水系電極組成物(以下、「電極組成物」とも称する)でもある。本発明の二次電池用水系電極組成物は、これらの必須成分をそれぞれ1種含むものであってもよく、2種以上含んでいてもよい。
本発明の電極組成物は、二次電池用水系正極組成物(以下、「正極組成物」とも称する)であってもよく、二次電池用水系負極組成物(以下、「負極組成物」とも称する)であってもよい。」
「【0071】
<水溶性高分子の耐電解液性>
テフロン(登録商標)板の上に厚さ3mmの型枠を作製し、水溶性高分子を型枠内に流し込み乾燥することで、20mm角の試験片を作製した。得られた試験片を電解液(EC/EMC=3/7)に一日浸漬して、膜の縦及び横の長さを測定した。尚、膨潤率は、縦横の増減率を基に体積換算した値を示し、膨潤率100%の場合変化なく膨潤していないことを示している。例えば、電解液に浸漬することで縦横それぞれ22mmとなった場合、膨潤率は133%となる。上記ECとはエチレンカーボネートを表し、EMCはエチルメチルカーボネートを表している。」

(2)上記記載から、甲第6号証には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

ア 段落【0011】によれば、甲第6号証には、「水溶性高分子を含有する二次電池用水系電極バインダーであって、上記水溶性高分子は、水溶性高分子の有する構造単位の全量100質量%に対して、(a)エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体由来の構造単位を50~80質量%、(b)エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位20~50質量%を含」み、「25℃、pH7、不揮発分2質量%水溶液の粘度が100mPa・s~20,000mPa・sである」ことが記載されている。

イ 段落【0010】によれば、「水溶性高分子は、」「電極組成物とした際の粘度調整がし易くなり、スラリーの安定性を増す」ものであり、「さらに、」「水溶性高分子は、(c)多官能性不飽和単量体由来の構造単位を含」み、「ポリマーの架橋を行うことでスラリー化した際に結着性が向上しチクソ性を付与する」ものである。

ウ 段落【0015】によれば、「エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体を50質量%以上含有することで」、「耐電解液性を充分なものとすることができ」、「耐電解液試験における体積膨潤率は」「200%以下」である。

エ 段落【0071】に「試験片を電解液(EC/EMC=3/7)に一日浸漬して、膜の縦及び横の長さを測定した。尚、膨潤率は、縦横の増減率を基に体積換算した値を示し」、と記載されている。ここで、「縦横の増減率を基に体積換算した値」である「膨潤率」は上記ウの「耐電解液試験における体積膨張率」のことと認められ、「EC」は「エチレンカーボネート」であり、「EMC」は「エチルメチルカーボネート」であるから、上記ウの「耐電解液試験における体積膨張率」は、電解液(エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=3/7)に対する体積膨潤率である。

オ 段落【0048】によれば、二次電池用水系電極バインダーは、「二次電池用水系電極バインダー、電極活物質、及び、水を必須成分として含む二次電池用水系電極組成物」に用いられる。

(3)上記(2)から、甲第6号証には、次の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されていると認められる。

(甲6発明)

「水溶性高分子を含有する二次電池用水系電極バインダーであって、上記水溶性高分子は、水溶性高分子の有する構造単位の全量100質量%に対して、(a)エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体由来の構造単位を50~80質量%、(b)エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位20~50質量%を含み、25℃、pH7、不揮発分2質量%水溶液の粘度が100mPa・s~20,000mPa・sであり、
水溶性高分子は、電極組成物とした際の粘度調整がし易くなり、スラリーの安定性を増すものであり、さらに、(c)多官能性不飽和単量体由来の構造単位を含み、ポリマーの架橋を行うことでスラリー化した際に結着性が向上しチクソ性を付与するものであり、
エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体を50質量%以上含有することで、耐電解液性を充分なものとすることができ、電解液(エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=3/7)に対する体積膨潤率は200%以下であり、
二次電池用水系電極バインダー、電極活物質、及び、水を必須成分として含む二次電池用水系電極組成物に用いられる、
二次電池用水系電極バインダー。」

7 甲第7号証

(1)甲第7号証には、以下の各記載がある。

「[0023]<結着材>
結着材は、本発明のリチウムイオン二次電池正極用結着材組成物を含むリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を用いて集電体上に正極合材層を形成することにより製造した正極において、正極合材層に含まれる成分が正極合材層から脱離しないように保持しうる成分である。一般的に、正極合材層における結着材は、電解液に浸漬された際に、電解液を吸収して膨潤しながらも正極活物質同士、正極活物質と導電材、或いは、導電材同士を結着させ、正極活物質等が集電体から脱落するのを防ぐ。」
「[0039] 結着材として好適に用いられるアクリル重合体における、α,β-不飽和ニトリル単量体単位の含有割合は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは14質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、特に好ましくは17質量%以下である。α,β-不飽和ニトリル単量体単位の含有割合を5質量%以上とすることにより、重合体としての機械的強度を向上させて、正極活物質と集電体または正極活物質同士の密着性を高めることができる。そして、その結果、リチウムイオン二次電池正極用結着材組成物を用いて調製したリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を用いて製造したリチウムイオン二次電池のサイクル特性などの電気的特性を確保することができる。また、含有割合を30質量%以下とすることにより、結着材の電解液に対する膨潤度を適度な大きさとして、リチウムイオン二次電池正極用結着材組成物を用いて調製したリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を用いて製造したリチウムイオン二次電池のサイクル特性などの電気的特性を確保することができる。
[0040] ここで、結着材として好適に用いられるアクリル重合体は、上記した単量体単位に加えて、架橋性単量体単位を含んでいてもよい。
架橋性単量体としては、例えば、エポキシ基を含有する単量体、炭素-炭素二重結合およびエポキシ基を含有する単量体、ハロゲン原子およびエポキシ基を含有する単量体、N-メチロールアミド基を含有する単量体、オキセタニル基を含有する単量体、オキサゾリン基を含有する単量体、2以上のオレフィン性二重結合を持つ多官能性単量体などが挙げられる。
アクリル重合体における架橋性単量体単位の含有割合は、好ましくは0質量%超であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。」
「[0042] ここで、上述したアクリル重合体などの結着材として使用し得る重合体は、電解液膨潤度が1倍以上5倍以下であることが好ましく、4倍以下であることがより好ましく、3倍以下であることが更に好ましく、2倍以下であることが特に好ましい。電解液膨潤度が1倍以上であれば、リチウムイオン二次電池正極用結着材組成物を含むリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を用いて調製したリチウムイオン二次電池用正極をリチウムイオン二次電池に使用した際に重合体が電解液に溶解するのを抑制し、正極のピール強度や、リチウムイオン二次電池のサイクル特性が低下するのを抑制することができる。また、電解液膨潤度が5倍以下であれば、結着材の電解液に対する膨潤度を適度な大きさとして、リチウムイオン二次電池正極用結着材組成物を含むリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を用いて製造したリチウムイオン二次電池のサイクル特性などの電気的特性を確保することができる。ここで、膨潤度は、重合体の調製条件(例えば、使用する単量体、重合条件など)を変更することにより適宜調整することができる。
なお、本発明において、「電解液膨潤度」は、本明細書の実施例に記載の測定方法を用いて測定することができる。」
「[0083](前略)
<電解液膨潤度>
結着材のN-メチルピロリドン(NMP)溶液(濃度8質量%)を、乾燥後の厚みが100μmになるようにテフロンシャーレに流しこみ、乾燥して重合体フィルムを作成した。得られた重合体フィルムから直径16mmの円形試料を打ち抜き、重量を測定した(重量を「A」とする)。次に、非水電解液(組成:濃度1.0MのLiPF6溶液(溶媒は、エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=3/7(重量比)の混合溶媒にフルオロエチレンカーボネート5質量%を添加した混合物であり、添加剤としてビニレンカーボネート2体積%を添加))を準備した。そして、かかる非水電解液20gに、打ち抜いた円形試料を60℃で72時間浸漬させた。その後、膨潤した円形試料を取り出し、表面の非水電解液を軽く拭き取ってから重量を測定した(重量を「B」とする)。これらの測定した値より電解液膨潤度(=B/A)を求めた。値が大きい程、電解液中で膨潤し易く、変形量が大きいことを示す。
(後略)」

(2)上記記載から、甲第7号証には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

ア 段落[0023]によれば、甲第7号証には「正極合材層に含まれる成分が正極合材層から脱離しないように保持しうる成分である」「結着剤」が記載されている。

イ 段落[0083]によれば、「電解液膨潤度」は、「エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=3/7(重量比)」を「溶媒」とする「非水電解液」に対する膨潤度である。

ウ 段落[0040]によれば、「結着剤として」「用いられるアクリル重合体は、」「架橋性単量体単位を含」む。

エ 段落[0042]によれば、「結着剤として使用し得る」「アクリル重合体」の「電解液膨潤度が1倍以上5倍以下」であれば、「正極のピール強度や、リチウムイオン二次電池のサイクル特性が低下するのを抑制」し、「リチウムイオン二次電池のサイクル特性などの電気的特性を確保する」ことができる旨記載され、また「膨潤度は、重合体の調製条件(例えば、使用する単量体、重合条件など)を変更することにより適宜調整することができる」と記載されている。

そうすると、甲第7号証には、結着剤として使用し得るアクリル重合体の電解液膨潤度を1倍以上5倍以下に調整することで、正極のピール強度や、リチウムイオン二次電池のサイクル特性が低下するのを抑制し、リチウムイオン二次電池のサイクル特性などの電気的特性を確保することが記載されているといえる。

(3)上記(2)から、甲第7号証には、以下の技術(以下「甲7記載技術」という。)が記載されているといえる。

「正極合材層に含まれる成分が正極合材層から脱離しないように保持しうる成分である結着剤において、
エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=3/7(重量比)を溶媒とする非水電解液に対する膨潤度を電解液膨潤度とし、
結着剤として用いられるアクリル重合体は、架橋性単量体単位を含み、
結着剤として使用し得るアクリル重合体の電解液膨潤度を1倍以上5倍以下に調整することで、正極のピール強度や、リチウムイオン二次電池のサイクル特性が低下するのを抑制し、リチウムイオン二次電池のサイクル特性などの電気的特性を確保する」技術。

第5 当審の判断

1 申立理由1(甲1発明を主発明とする進歩性)について

(1)本件発明1について

ア 甲1発明との対比

本件発明1と甲1発明とを対比する。

(ア)甲1発明の「非水系二次電池用バインダー」は、「電極における集電体上に配置される電極合材層の調製」「に用いられる」ところ、本件明細書の段落【0013】に「本発明の二次電池電極用バインダーは・・・電極合材層組成物とすることができる」と記載されているから、本件発明1の「二次電池電極用バインダー」に相当する。

(イ)甲1発明の「非水系二次電池用バインダー」は「粒子状重合体の水分散液」であるから、本件発明1とは「重合体」「を含有する二次電池電極用バインダー」である点で一致する。

しかしながら、甲1発明の「粒子状重合体」は、「攪拌機付き5MPa耐圧容器に、脂肪族共役ジエン単量体として1,3-ブタジエン、酸基含有単量体としてアクリル酸、芳香族ビニル単量体としてスチレン、連鎖移動剤としてt-ドデシルメルカプタン、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、イオン交換水および重合開始剤として過硫酸カリウムを入れ、十分に攪拌した後、55℃に加温して重合を開始し、重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、次いでアンモニア水を添加しpH5に調整して得た」重合体であるものの、架橋されることは特定されていない。

してみると、重合体が、本件発明1は「架橋」重合体であるのに対し、甲1発明は、架橋されたものであることは特定されていない点で相違する。

(ウ)甲1発明の「pH8における水系媒体に対する膨潤度」は、「粒子状重合体の水分散液を、テフロンシャーレに流し込み、25℃で5日間乾燥させて1cm×1cmのバインダーフィルム(厚さ500μm)を作製し、重量M0を測定し、その後、得られたフィルムをpH8の水酸化ナトリウム水溶液に60℃、72時間浸漬し、浸漬後のフィルムの表面の水酸化ナトリウム水溶液をふき取り重量M2を測定し、pH8における水系媒体に対する膨潤度=M2/M0に従って算出される」ところ、本件明細書の段落【0037】、【0038】に「水膨潤度は架橋重合体又はその塩の乾燥時の重量「(WA)g」、及び当該架橋重合体又はその塩を水で飽和膨潤させた際に吸収される水の量「(WB)g」とから、以下の式(1)に基づいて算出される。(水膨潤度)={(WA)+(WB)}/(WA) (1)」、「pH8における水膨潤度は、pH8の水中における架橋重合体又はその塩の膨潤度を測定することにより得ることができる。上記pH8の水としては・・・必要に応じて適当な・・・アルカリ・・・を用いてpHの値を調整してもよい」と記載されている。

そうすると、甲1発明の「pH8における水系媒体に対する膨潤度」は、本件発明1の「pH8における水膨潤度」に相当する。

(エ)上記(イ)、(ウ)の対比を考慮すると、甲1発明の「粒子状重合体のPH8における水系媒体に対する膨潤度は、6.5又は6.2であ」ることは、本件発明1の重合体の「pH8における水膨潤度が5.0以上、100以下である」ことに含まれる。

しかしながら、重合体が、本件発明1は「架橋」重合体であるのに対し、甲1発明は、架橋されたものであることは特定されていない点で相違する。

(オ)したがって、上記(ア)ないし(エ)によれば、甲1発明と本件発明1とは、

「重合体を含有する二次電池電極用バインダーであって、
前記重合体は、pH8における水膨潤度が5.0以上、100以下である、二次電池電極用バインダー。」

である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)

重合体が、本件発明1は「架橋」重合体であるのに対し、甲1発明は、架橋されたものであることは特定されていない点。

イ 甲1発明との相違点の判断

甲第1号証には「本発明の非水系二次電池用バインダーは、pH5の水系媒体に対する膨潤度が2倍未満であり、且つpH8の水系媒体に対する膨潤度が2倍以上7倍以下である粒子状重合体を含んでいるので、結着性および保存安定性に優れ、また当該バインダーを用いて調製されるスラリー組成物の過度な粘度上昇を抑制することができる」(段落[0019])と記載され、甲1発明は「pH8における水系媒体に対する膨潤度」として所定の値を有する「粒子状重合体」を用いることにより過度な粘度上昇を抑制するものであるところ、甲1発明の「粒子状重合体」と甲2記載技術における「架橋された重合体」とは材料等の製造条件が異なり、甲2記載技術における「架橋された重合体」のpH8における水膨潤度は特定されないから、甲1発明において、pH8における水系媒体に対する膨潤度が特定されない甲2記載技術の「架橋された重合体」を採用する動機はない。また、甲1発明の「粒子状重合体」として甲2記載技術における「架橋された重合体」を採用し得たとしても、架橋された重合体のpH8における水膨潤度が「5.0以上、100以下」に含まれるとまではいえない。

また、甲第1号証には「本発明の非水系二次電池用バインダーは・・・pH8における水系媒体に対する膨潤度が2倍以上7倍以下である」(段落[0018])と記載され、甲1発明の「粒子状重合体のpH8における水系媒体に対する膨潤度」は「6.5又は6.2」であり上記範囲に含まれるところ、通常、重合体を架橋するとその水膨潤度は変化すると考えられ(本件明細書の段落【0040】にも「架橋重合体の架橋度を低くすることによっても、通常その水膨潤度は高くなる」と記載されている。)、甲1発明において粒子状重合体を架橋すると上記範囲外となる虞れがあるから、甲1発明において粒子状重合体を架橋することを容易に想到し得たとはいえない。

したがって、相違点1に係る構成は、甲1発明及び甲2記載技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。

ウ 小括

したがって、本件発明1は甲1発明、甲第2号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2、4ないし9について

本件発明2、4ないし9は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加え、本件発明1を限定するものである。

そして、本件発明2、4ないし9のそれぞれと甲1発明とを対比すると、上記(1)アで述べたとおり、少なくとも両者は相違点1を有し、相違点1に係る構成は、上記(1)イで述べたとおり、甲1発明及び甲2記載技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。

また、甲第3号証には、架橋された重合体及びその水膨潤度について記載されていないから、相違点1に係る構成は、甲1発明、甲2記載技術及び甲3記載技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものでもない。

したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2、4、5、7ないし9は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

本件発明6は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証、甲第3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)特許異議申立書における具体的理由について

特許異議申立人は、特許異議申立書において、「甲第1号証には、粒子状重合体が架橋性の単量体単位により架橋されていても良いと記載されており、しかも、甲第2号証に記載された架橋重合体は、酸基含有単量体の含有量が甲1発明と同じであり、重合体として類似した特性を有していると想定されることを勘案すれば、甲1発明において粒子状重合体として甲第2号証に記載された架橋重合体を採用することは、当業者が容易になし得たことである」(第32頁第7~12行)と主張する。

しかしながら、甲第1号証に「非水系二次電池機能層用組成物は、少なくとも、非水系二次電池用バインダーおよび非導電性粒子を含み、任意にその他の成分を含有する、水を分散媒としたスラリー組成物である」(段落[0042])、「粒子状重合体が架橋性の単量体単位を含む場合には、粒子状重合体は、機能層用組成物の乾燥時、または、乾燥後に任意に実施される熱処理時に架橋されていてもよい(即ち機能層は、上述した粒子状重合体の架橋物を含んでいてもよい)」(段落[0049])との記載があるものの、当該記載は、非水系二次電池用バインダーの粒子状重合体が架橋性の単量体を含む場合があることを示すとしても、非水系二次電池用バインダーの製造において粒子状重合体が架橋されることを示すものではない。

そして、上記(1)イで述べたとおり、甲1発明において、「粒子状重合体」に代えて、甲2記載技術の「架橋された重合体」を採用することを容易に想到し得たとはいえない。

以上のとおりであるから、特許異議申立人の上記主張は採用することができない。

(4)申立理由1についてのまとめ

したがって、本件発明1、2、4、5、7ないし9は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでなく、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。

本件発明6は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証、甲第3号証に記載された事項に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでなく、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。

2 申立理由2(甲4発明を主発明とする進歩性)について

(1)本件発明1について

ア 甲4発明との対比

本件発明1と甲4発明とを対比する。

(ア)甲4発明の「架橋重合体又はその塩を含有」する「非水電解質二次電池電極用バインダー」は、「活物質及び水と混合することにより電極合剤層組成物とする」ものであり、二次電池の電極用であることは明らかであるから、本件発明1の「架橋重合体又はその塩を含有する二次電池電極用バインダー」に相当する。

(イ)二次電池電極用バインダーが含有する架橋重合体又はその塩が、本件発明1は「pH8における水膨潤度が5.0以上、100以下である」のに対し、甲4発明はその旨特定されていない点で相違する。

(ウ)したがって、上記(ア)ないし(イ)によれば、甲4発明と本件発明1とは、

「架橋重合体又はその塩を含有する二次電池電極用バインダー。」

である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点2)

二次電池電極用バインダーが含有する架橋重合体又はその塩が、本件発明1は「pH8における水膨潤度が5.0以上、100以下である」のに対し、甲4発明はその旨特定されていない点。

イ 甲4発明との相違点の判断

甲5記載技術の「架橋型吸水性樹脂微粒子」は、「合剤層を多孔化するための気孔形成剤として作用」し、架橋型吸水性樹脂微粒子と「活物質」、「バインダー及び水を含むスラリーから」「非水電解質二次電池用電極の合剤層」が「形成され」るから、甲4発明の「非水電解質二次電池電極用バインダー」における「架橋重合体又はその塩」とは作用効果が異なる。そうすると、甲4発明の「非水電解質二次電池電極用バインダー」における「架橋重合体又はその塩」に代えて、甲5記載技術の「架橋型吸水性樹脂微粒子」を採用する動機はない。

したがって、相違点2に係る構成は、甲4発明及び甲5記載技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。

ウ 小括

したがって、本件発明1は甲4発明、及び甲第5号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2、4ないし9について

本件発明2、4ないし9の発明特定事項は、上記1(2)で説明したとおりである。

そして、本件発明2、4ないし9のそれぞれと甲4発明とを対比すると、上記(1)アで述べたとおり、少なくとも両者は相違点2を有し、相違点2に係る構成は、上記(1)イで述べたとおり、甲4発明及び甲5記載技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。

また、甲第1号証及び甲第3号証には、架橋された重合体及びその水膨潤度について記載されていないから、相違点2に係る構成は、甲4発明、甲5記載技術、及び甲第1号証並びに甲第3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものでもない。

したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明4、5、7ないし9は、甲第4号証に記載された発明及び甲第5号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

本件発明2は、甲第4号証に記載された発明、及び甲第5号証、甲第1号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

本件発明6は、甲第4号証に記載された発明、及び甲第5号証、甲第3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)特許異議申立書における具体的理由について

特許異議申立人は、特許異議申立書において、「当業者であれば、甲第4号証に記載された架橋重合体(製造例1:架橋重合体塩R-1の製造)について、甲第5号証に記載された架橋重合体(製造例1:架橋型吸水性樹脂微粒子PA-1)と同程度の水膨潤度を有するであろうことは容易に推定することができ、甲4発明において、その水膨潤度を実験により測定し、架橋重合体の水膨潤度を、5.0以上、100以下であると特定することに格別の困難さはない」(第38頁第13~18行)と主張する。

しかしながら、甲4発明の「架橋重合体又はその塩」(架橋重合体R-14又は架橋重合体塩R-1)と甲5記載技術における「架橋型吸水性樹脂微粒子」(架橋型吸水性樹脂微粒子PA-1)とは材料等の製造条件が異なり、また甲5記載技術における架橋型吸水性樹脂微粒子の「pH8における水膨潤度」は特定されていない。そうすると、甲4発明及び甲5記載技術に基づいて、甲4発明の「前記架橋重合体又はその塩」の「pH8における水膨潤度」が「5.0以上、100以下である」と推定することはできない。

そして、上記(1)イで述べたとおり、相違点2に係る構成は、甲4発明及び甲5記載技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。

以上のとおりであるから、特許異議申立人の上記主張は採用することができない。

(4)申立理由2についてのまとめ

したがって、本件発明1、4、5、7ないし9は、甲第4号証に記載された発明及び甲第5号証に記載された事項に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでなく、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。

本件発明2は、甲第4号証に記載された発明、及び甲第5号証、甲第1号証に記載された事項に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでなく、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。

本件発明6は、甲第4号証に記載された発明、及び甲第5号証、甲第3号証に記載された事項に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでなく、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。

3 申立理由3(甲6発明を主発明とする進歩性)について

(1)本件発明1について

ア 甲6発明との対比

本件発明1と甲6発明とを対比する。

(ア)甲6発明の「水溶性高分子」は、「(a)エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体由来の構造単位」及び「(b)エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位」を含み、「さらに、(c)多官能性不飽和単量体由来の構造単位を含み、ポリマーの架橋を行うことでスラリー化した際に結着性が向上しチクソ性を付与するもの」であるから、本件発明1の「架橋重合体又はその塩」に相当する。

(イ)上記(ア)の対比を考慮すると、甲6発明の「水溶性高分子を含有する二次電池用水系電極バインダー」は、「二次電池用水系電極バインダー、電極活物質、及び、水を必須成分として含む二次電池用水系電極組成物に用いられ」るものであるから、本件発明1の「架橋重合体又はその塩を含有する二次電池電極用バインダー」に相当する。

(ウ)二次電池電極用バインダーが含有する架橋重合体又はその塩が、本件発明1は「pH8における水膨潤度が5.0以上、100以下である」のに対し、甲6発明はその旨特定されていない点で相違する。

(エ)したがって、上記(ア)ないし(ウ)によれば、甲6発明と本件発明1とは、

「架橋重合体又はその塩を含有する二次電池電極用バインダー。」

である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点3)

二次電池電極用バインダーが含有する架橋重合体又はその塩が、本件発明1は「pH8における水膨潤度が5.0以上、100以下である」のに対し、甲6発明はその旨特定されていない点。

イ 甲6発明との相違点の判断

甲6発明は「電解液(エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=3/7)に対する体積膨潤率」を特定し、甲7記載技術は「エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=3/7(重量比)を溶媒とする非水電解液に対する膨潤度」を特定するが、いずれも「pH8における水膨潤度」について特定したものではなく、また「pH8における水膨潤度」を調整することを示唆するものでもない。

そうすると、甲6発明及び甲7記載技術に基づいて、甲6発明における「水溶性高分子」の「pH8における水膨潤度」に着目し、これを調整する動機はなく、甲6発明における「水溶性高分子」の「pH8における水膨潤度が5.0以上、100以下である」ようにすることは、当業者が容易に想到し得たこととは言えない。

したがって、相違点3に係る構成は、甲6発明及び甲7記載技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。

ウ 小括

したがって、本件発明1は甲6発明及び甲第7号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2、4ないし9について

本件発明2、4ないし9の発明特定事項は、上記1(2)で説明したとおりである。

そして、本件発明2、4ないし9のそれぞれと甲6発明とを対比すると、上記(1)アで述べたとおり、少なくとも両者は相違点3を有し、相違点3に係る構成は、上記(1)イで述べたとおり、甲6発明及び甲7記載技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。

また、甲第1号証及び甲第3号証には、架橋された重合体及びその水膨潤度について記載されていないから、相違点3に係る構成は、甲6発明、甲7記載技術、及び甲第1号証並びに甲第3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものでもない。

したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明4、5、7ないし9は、甲第6号証に記載された発明及び甲第7号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

本件発明2は、甲第6号証に記載された発明、及び甲第7号証、甲第1号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

本件発明6は、甲第6号証に記載された発明、及び甲第7号証、甲第3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)特許異議申立書における具体的理由について

特許異議申立人は、特許異議申立書において、「甲6発明において、容易な粘度調整、スラリーの安定化の向上、結着性の向上、チクソ性の付与、安価、簡便な製造といった課題解決に関連するピール強度、リチウムイオン二次電池のサイクル特性などの電気的特性を向上させるために、慣用技術手段で、その水膨潤度を実験により測定し、課題解決のために好ましい架橋重合体の水膨潤度を選択することは、一定の課題を解決するための数値範囲の最適化又は好適化であり、実験の結果に基づき、「pH8における水膨潤度が5.0以上、100以下である」と特定することに格別の困難さはない」(第44頁第5~12行)と主張する。

しかしながら、上記(1)イで述べたとおり、甲6発明及び甲7記載技術に基づいて、甲6発明における「水溶性高分子」の「pH8における水膨潤度」に着目し、これを調整する動機はなく、甲6発明における「水溶性高分子」の「pH8における水膨潤度が5.0以上、100以下である」ようにすることは、当業者が容易に想到し得たこととは言えない。

以上のとおりであるから、特許異議申立人の上記主張は採用することができない。

(4)申立理由3についてのまとめ

したがって、本件発明1、4、5、7ないし9は、甲第6号証に記載された発明及び甲第7号証に記載された事項に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでなく、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。

本件発明2は、甲第6号証に記載された発明、及び甲第7号証、甲第1号証に記載された事項に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでなく、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。

本件発明6は、甲第6号証に記載された発明、及び甲第7号証、甲第3号証に記載された事項に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでなく、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。

第6 むすび

したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、2、4ないし9に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に請求項1、2、4ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2023-700936

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決129件(安藤 宏、東亞合成株式会社)
  • 2022-700280異議申立 / 2023-02-08 / 訂正認容非水電解質二次電池電極用バインダー
    同じ当事者: 安藤 宏、東亞合成株式会社
  • 2022-700095異議申立 / 2022-11-14 / 訂正認容非水電解質二次電池電極用バインダー
    同じ当事者: 安藤 宏、東亞合成株式会社
  • 2026-700392異議申立 / 2026-08-14 / 維持情報処理装置及び情報処理方法
    同じ当事者: 安藤 宏
  • 2025-700975異議申立 / 2026-05-01 / 訂正認容電磁鋼板及び接着積層コア製造方法
    同じ当事者: 東亞合成株式会社
  • 2025-700870異議申立 / 2026-03-30 / 訂正認容ナノセルロース及びその分散液並びにその製造方法
    同じ当事者: 東亞合成株式会社
同じ論点・分野の審決(審決分類)1,628件(121・H01M)
  • 2026-700447異議申立 / 2026-08-26 / 維持窒素含有多孔質炭素及びその製造方法、並びに燃料電池用電極触媒
    共通の審決分類: 121・H01M
  • 2025-701066異議申立 / 2026-07-16 / 維持二次電池バインダー、スラリー、電極、二次電池の製造方法、及び二次電池
    共通の審決分類: 121・H01M
  • 2026-700397異議申立 / 2026-07-16 / 維持非水電解質電池用リード線、絶縁膜及び非水電解質電池
    共通の審決分類: 121・H01M
  • 2026-700436異議申立 / 2026-07-08 / 維持ラミネート型電池、電池モジュール、およびラミネート型電池の製造方法
    共通の審決分類: 121・H01M
  • 2026-700195異議申立 / 2026-06-29 / 維持電気化学セル、電気化学セル装置、モジュールおよびモジュール収容装置
    共通の審決分類: 121・H01M

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存