特許異議申立
2023-700890
異物検出装置、異物除去装置および異物検出方法
- 審判番号
- 2023-700890
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-062831
- 登録番号
- 7230873
- 請求日
- 2023年08月31日
- 審決日
- 2024年06月24日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】JFEスチール株式会社
- 【権利者代理人】伊東 秀明
- 【権利者代理人】蜂谷 浩久
- 【異議申立人】御代川 友美
- 審判長/審判官
- 審判長 畑中 高行
- 審判官 樫本 剛
- 審判官 高橋 宣博
- 分類
- P1651.113-ZDA(G06T) / P1651.121-ZDA(G06T) / P1651.537-ZDA(G06T)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項1号特許法113条1項4号特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第4号、特許法第113条第4項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7230873号発明「異物検出装置、異物除去装置および異物検出方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7230873号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3、8〕、4、5について訂正することを認める。
特許第7230873号の請求項1、3、4、5、8に係る特許を取り消す。
特許第7230873号の請求項6、7、9に係る特許を維持する。
特許第7230873号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7230873号(以下「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、令和2年3月31日に出願され、令和5年2月20日にその特許権の設定登録がされ、令和5年3月1日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和5年8月31日に特許異議申立人御代川友美により本件特許の請求項1~9に対して特許異議の申立てがされた。
さらにその後の経緯は次のとおりである。
令和5年10月13日付け 取消理由通知書
同年11月30日 訂正請求書、意見書の提出(特許権者)
令和6年 2月 5日 意見書の提出(特許異議申立人)
令和6年 3月11日付け 取消理由通知(決定の予告)
なお、上記取消理由通知(決定の予告)に対して、特許権者から訂正請求書、意見書は提出されなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 請求の趣旨、訂正の内容
(1)請求の趣旨
令和5年11月30日に特許権者により行われた、願書に添付した特許請求の範囲の訂正(以下「本件訂正」という。)の請求の趣旨は、特許第7230873号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5及び8について訂正することを求める、というものである。
(2)訂正の内容
本件訂正の内容(以下「訂正事項」という。)は次のとおりである。なお、下線部は訂正箇所である。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「 鉄系スクラップを含む対象物が撮像された対象物画像を取得する対象物画像取得部と、
前記対象物画像に基づいて前記対象物から前記鉄系スクラップと前記鉄系スクラップ以外の異物とを判別する画像判別部と、
を備え、
前記画像判別部は、種別判定部を含み、
前記種別判定部は、
前記対象物画像を複数の画像要素に分割し、
前記画像要素毎に前記鉄系スクラップと前記異物のいずれであるかを判定し、
判定された結果を、前記対象物画像の前記複数の画像要素と同じ個数で且つ同じ配列を有する複数の行列要素からなる判定行列として出力する、
異物検出装置。」
と記載されているのを、
「 鉄系スクラップを含む対象物が撮像された対象物画像を取得する対象物画像取得部と、
前記対象物画像に基づいて前記対象物から前記鉄系スクラップと前記鉄系スクラップ以外の異物とを判別する画像判別部と、
を備え、
前記画像判別部は、種別判定部を含み、
前記種別判定部は、
前記対象物画像を複数の画像要素に分割し、
前記画像要素毎に前記鉄系スクラップと前記異物のいずれであるかを判定し、
判定された結果を、前記対象物画像の前記複数の画像要素と同じ個数で且つ同じ配列を有する複数の行列要素からなる判定行列として出力し、
前記種別判定部は、多層ニューラルネットワークにより構成され、
前記多層ニューラルネットワークのパラメータは、鉄系スクラップに異物が混在する教師画像と、前記教師画像に対応し且つ前記教師画像内の前記異物が存在する位置に所定の標識によるラベル付けがなされた教師ラベルと、を含む複数の教師データに基づいて機械学習されることで得られる、
異物検出装置。」
に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項3及び8も、同様に訂正する。)
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「請求項1または2に記載の異物検出装置と」
と記載されているのを、
「請求項1に記載の異物検出装置と」
に訂正する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項8に、
「請求項2に記載の異物検出装置。」
と記載されているのを、
「請求項1に記載の異物検出装置。」
に訂正する。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4に、
「 鉄系スクラップを含む対象物が撮像された対象物画像を取得する対象物画像取得ステップと、
前記対象物画像に基づいて前記対象物から前記鉄系スクラップと前記鉄系スクラップ以外の異物とを判別する判別ステップと、
を備え、
前記判別ステップは種別判定ステップを含み、
前記種別判定ステップは、
前記対象物画像を複数の画像要素に分割し、
前記画像要素毎に前記鉄系スクラップと前記異物のいずれであるかを判定し、
判定された結果を、前記対象物画像の前記複数の画像要素と同じ個数で且つ同じ配列を有する複数の行列要素からなる判定行列として出力する、
異物検出方法。」
と記載されているのを、
「 鉄系スクラップを含む対象物が撮像された対象物画像を取得する対象物画像取得ステップと、
前記対象物画像に基づいて前記対象物から前記鉄系スクラップと前記鉄系スクラップ以外の異物とを判別する判別ステップと、
を備え、
前記判別ステップは種別判定ステップを含み、
前記種別判定ステップは、前記鉄系スクラップに前記異物が混在する教師画像と、前記教師画像に対応し且つ前記教師画像内の前記異物が存在する位置に所定の標識によるラベル付けがなされた教師ラベルと、を含む複数の教師データに基づいてパラメータが機械学習される多層ニューラルネットワークにより、
前記対象物画像を複数の画像要素に分割し、
前記画像要素毎に前記鉄系スクラップと前記異物のいずれであるかを判定し、
判定された結果を、前記対象物画像の前記複数の画像要素と同じ個数で且つ同じ配列を有する複数の行列要素からなる判定行列として出力する、
異物検出方法。」
に訂正する。
カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項5に、
「 鉄系スクラップを含む対象物が撮像された対象物画像を取得する対象物画像取得ステップと、
前記対象物画像を複数の画像要素に分割し、
前記画像要素毎に前記鉄系スクラップと前記前記鉄系スクラップ以外の異物のいずれであるかを判定し、
判定された結果を、前記対象物画像の前記複数の画像要素と同じ個数で且つ同じ配列を有する複数の行列要素からなる判定行列として出力する、
種別判定ステップと、
前記種別判定ステップにより出力された前記判定行列に基づいて、実空間における前記異物の位置を特定する異物位置特定ステップと、
前記異物位置特定ステップにより特定された前記異物の位置に基づいて、前記対象物から前記異物を除去する異物除去ステップと、
を備える異物除去方法。」
と記載されているのを、
「 鉄系スクラップを含む対象物が撮像された対象物画像を取得する対象物画像取得ステップと、
前記鉄系スクラップに異物が混在する教師画像と、前記教師画像に対応し且つ前記教師画像内の前記異物が存在する位置に所定の標識によるラベル付けがなされた教師ラベルと、を含む複数の教師データに基づいてパラメータが機械学習される多層ニューラルネットワークにより、
前記対象物画像を複数の画像要素に分割し、
前記画像要素毎に前記鉄系スクラップと前記前記鉄系スクラップ以外の前記異物のいずれであるかを判定し、
判定された結果を、前記対象物画像の前記複数の画像要素と同じ個数で且つ同じ配列を有する複数の行列要素からなる判定行列として出力する、
種別判定ステップと、
前記種別判定ステップにより出力された前記判定行列に基づいて、実空間における前記異物の位置を特定する異物位置特定ステップと、
前記異物位置特定ステップにより特定された前記異物の位置に基づいて、前記対象物から前記異物を除去する異物除去ステップと、
を備える異物除去方法。」
に訂正する。
2 一群の請求項について
訂正前の請求項2~3、8は、それぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用し、請求項1の訂正に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~3、8に対応する訂正後の請求項1~3、8は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
そして、訂正事項1~4は、一群の請求項〔1~3、8〕についてされたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
3 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、独立特許要件について
(1)訂正事項1~4について
ア 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1~4は、本件訂正前の請求項1を請求項2の内容で限定するとともに、当該請求項2を削除し、これらに伴い、本件訂正前にこれらの請求項の記載を引用していた請求項3及び8について、その引用先を請求項1(本件訂正前の請求項2に対応)の記載とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正(特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するもの)であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない(特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する)ものである。
(2)訂正事項5、6について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項5、6は、それぞれ訂正前の請求項4、5に係る発明における「種別判定ステップ」を実行する主体について「前記鉄系スクラップに前記異物が混在する教師画像と、前記教師画像に対応し且つ前記教師画像内の前記異物が存在する位置に所定の標識によるラベル付けがなされた教師ラベルと、を含む複数の教師データに基づいてパラメータが機械学習される多層ニューラルネットワークにより」とする限定を加えるものであるから、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
多層ニューラルネットワークにより種別判定ステップが実行されることは、明細書の【0026】の「種別判定部4は、多数のパーセプトロンからなる多層ニューラルネットワークにより構成されている。」との記載、及び、「種別判定部4」が行う処理が「種別判定ステップ」であると当然に理解できることから明らかなことである。
そして、当該多層ニューラルネットワークが「前記鉄系スクラップに前記異物が混在する教師画像と、前記教師画像に対応し且つ前記教師画像内の前記異物が存在する位置に所定の標識によるラベル付けがなされた教師ラベルと、を含む複数の教師データに基づいてパラメータが機械学習される」ものであることは、本件訂正前の請求項2の「前記多層ニューラルネットワークのパラメータは、鉄系スクラップに異物が混在する教師画像と、前記教師画像に対応し且つ前記教師画像内の前記異物が存在する位置に所定の標識によるラベル付けがなされた教師ラベルと、を含む複数の教師データに基づいて機械学習されることで得られる」との記載から明らかである。
したがって、訂正事項5、6は、いずれも願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正(特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するもの)である。
なお、特許異議申立人は、令和6年2月5日付け意見書において、
「 しかし、特許権者が請求項4に係る訂正事項の根拠とする請求項2は「異物検出装置」に係る請求項であり、請求項4の「異物検出方法」とはカテゴリーが異なる。また、段落「0016]、[0027]、[0057]も「種別判定部」という「異物検出装置」の構成に関する説明であり、請求項4の異物検出方法に係る「種別判定ステップ」の説明ではない。さらに図14も『鉄系スクラップと異物とを含む対象物から異物を除去して、鉄系スクラップを電気炉に装入する動作を示すフローチャートである』([0021])と記載されており、請求項4に係る「種別判定ステップ」について説明する図ではない。
とすると、本訂正請求における請求項4に係る訂正事項は、カテゴリーの異なる請求項の記載を根拠になされており、さらにこれまたカテゴリーの異なる明細書中の装置の構成に関する記載を方法にすり替えて解釈したものに基づきなされたものであるから、請求項4に係る訂正事項は実質上特許請求の範囲の変更に該当するものと思料する。」(12頁11~21行)及び
「 特許権者は請求項5に係る訂正事項を、上記した請求項4に係る訂正事項とまったく同様に説明している。よって詳細な内容は請求項4に係る訂正事項と同じなので、ここでは省略するが、結論として、上記した請求項4に係る訂正事項と同様に、本訂正請求における請求項5に係る訂正事項は、カテゴリーの異なる請求項の記載を根拠になされており、さらにこれまたカテゴリーの異なる明細書中の装置の構成に関する記載を方法にすり替えて解釈したものに基づきなされたものであるから、請求項5に係る訂正事項は実質上特許請求の範囲の変更に該当するものと思料する。」(13頁13~19行)
と主張しているが、上記のとおり、訂正事項5、6により訂正される事項は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項から明らかなことである。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
訂正事項5、6は、それぞれ訂正前の請求項4及び5に係る発明における種別判定ステップについて限定を加えるものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、いずれも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
4 訂正の適否についてのまとめ
以上のとおり、訂正事項1~6に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
したがって、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3、8〕、4、5について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~5、8に係る発明、及び願書に添付した特許請求の範囲の請求項6、7、9に係る発明(以下「本件訂正発明1」~「本件訂正発明5」、「本件訂正発明8」、及び「本件発明6」、「本件発明7」、「本件発明9」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
なお、訂正請求書及び訂正特許請求の範囲における請求項5の「前記前記鉄系スクラップ以外」との記載は「前記鉄系スクラップ以外」の誤記と認めた。
本件訂正発明1、4、5には(A)~(I)の符号を付した。以下、それぞれ「構成A」~「構成I」という。
〔本件訂正発明1〕【請求項1】
(A) 鉄系スクラップを含む対象物が撮像された対象物画像を取得する対象物画像取得部と、
(B) 前記対象物画像に基づいて前記対象物から前記鉄系スクラップと前記鉄系スクラップ以外の異物とを判別する画像判別部と、
を備え、
(B1) 前記画像判別部は、種別判定部を含み、
前記種別判定部は、
(B11) 前記対象物画像を複数の画像要素に分割し、
(B12) 前記画像要素毎に前記鉄系スクラップと前記異物のいずれであるかを判定し、
(B13) 判定された結果を、前記対象物画像の前記複数の画像要素と同じ個数で且つ同じ配列を有する複数の行列要素からなる判定行列として出力し、
(B14) 前記種別判定部は、多層ニューラルネットワークにより構成され、
(B141) 前記多層ニューラルネットワークのパラメータは、鉄系スクラップに異物が混在する教師画像と、前記教師画像に対応し且つ前記教師画像内の前記異物が存在する位置に所定の標識によるラベル付けがなされた教師ラベルと、を含む複数の教師データに基づいて機械学習されることで得られる、
(C) 異物検出装置。
〔本件訂正発明2〕【請求項2】(削除)
〔本件訂正発明3〕【請求項3】
請求項1に記載の異物検出装置と、
前記種別判定部に より出力された前記判定行列に基づいて 、実空間における前記異物の位置を特定する異物位置特定部と、
前記異物位置特定部により特定された前記異物の位置に基づいて、前記対象物から前記異物を除去する異物除去部と 、
を備える異物除去装置。
〔本件訂正発明4〕【請求項4】
(D) 鉄系スクラップを含む対象物が撮像された対象物画像を取得する対象物画像取得ステップと、
(E) 前記対象物画像に基づいて前記対象物から前記鉄系スクラップと前記鉄系スクラップ以外の異物とを判別する判別ステップと、
を備え、
(E1) 前記判別ステップは種別判定ステップを含み、
前記種別判定ステップは、(E11)前記鉄系スクラップに前記異物が混在する教師画像と、前記教師画像に対応し且つ前記教師画像内の前記異物が存在する位置に所定の標識によるラベル付けがなされた教師ラベルと、を含む複数の教師データに基づいてパラメータが機械学習される多層ニューラルネットワークにより、
(E12) 前記対象物画像を複数の画像要素に分割し、
(E13) 前記画像要素毎に前記鉄系スクラップと前記異物のいずれであるかを判定し、
(E14) 判定された結果を、前記対象物画像の前記複数の画像要素と同じ個数で且つ同じ配列を有する複数の行列要素からなる判定行列として出力する、
(F) 異物検出方法。
〔本件訂正発明5〕【請求項5】
(D) 鉄系スクラップを含む対象物が撮像された対象物画像を取得する対象物画像取得ステップと、
(E11) 前記鉄系スクラップに異物が混在する教師画像と、前記教師画像に対応し且つ前記教師画像内の前記異物が存在する位置に所定の標識によるラベル付けがなされた教師ラベルと、を含む複数の教師データに基づいてパラメータが機械学習される多層ニューラルネットワークにより、
(E12) 前記対象物画像を複数の画像要素に分割し、
(E13) 前記画像要素毎に前記鉄系スクラップと前記鉄系スクラップ以外の前記異物のいずれであるかを判定し、
(E14) 判定された結果を、前記対象物画像の前記複数の画像要素と同じ個数で且つ同じ配列を有する複数の行列要素からなる判定行列として出力する、
(E1) 種別判定ステップと、
(G) 前記種別判定ステップにより出力された前記判定行列に基づいて、実空間における前記異物の位置を特定する異物位置特定ステップと、
(H) 前記異物位置特定ステップにより特定された前記異物の位置に基づいて、前記対象物から前記異物を除去する異物除去ステップと、
(I) を備える異物除去方法。
〔本件発明6〕【請求項6】
鉄系スクラップを含む対象物から前記鉄系スクラップと前記鉄系スクラップ以外の異物とを判別する異物検出方法に用いる種別判定部のための教師データ作成方法であって、
前記鉄系スクラップのみが撮像された鉄系スクラップ画像を取得する鉄系スクラップ画像取得ステップと、
鉄系スクラップを背景として異物を撮像することにより異物含有画像を取得する異物含有画像取得ステップと、
前記異物含有画像から前記鉄系スクラップを背景にした前記異物の画像部分を切り出す画像切り出しステップと、
切り出され且つ前記鉄系スクラップを背景にした前記異物の画像部分を前記鉄系スクラップ画像に貼り付けることにより教師画像を作成する教師画像作成ステップと、
前記教師画像に対応し且つ前記教師画像内の前記異物が存在する位置に所定の標識によるラベル付けがなされた教師ラベルを作成する教師ラベル作成ステップと、
を含む教師データ作成方法。
〔本件発明7〕【請求項7】
鉄系スクラップを含む対象物から前記鉄系スクラップと前記鉄系スクラップ以外の異物とを判別する異物検出方法に用いる種別判定部の生成方法であって、
請求項6に記載の教師データ作成方法を用いて、複数の教師データを作成する教師データ作成ステップと、
前記教師データ作成ステップにより作成された前記複数の教師データを用いて、前記種別判定部を構成する多層ニューラルネットワークのパラメータを機械学習させる種別判定機能学習ステップと、
を含む種別判定部の生成方法。
〔本件訂正発明8〕【請求項8】
前記画像判別部は、
前記複数の教師データを作成する教師データ作成部と、
前記教師データ作成部により作成された前記複数の教師データを用いて、前記種別判定部を構成する前記多層ニューラルネットワークのパラメータを機械学習させる種別判定機能学習部と 、
を含む請求項1に記載の異物検出装置。
〔本件発明9〕【請求項9】
鉄系スクラップを含む対象物から前記鉄系スクラップと前記鉄系スクラップ以外の異物とを判別する異物検出装置に用いる種別判定部のための教師データ作成部であって、
前記鉄系スクラップのみが撮像された鉄系スクラップ画像を取得する鉄系スクラップ画像取得部と、
鉄系スクラップを背景として前記異物を撮像することにより前記異物が含まれる異物含有画像を取得する異物含有画像取得部と、
前記異物含有画像から 前記鉄系スクラップを背景にした前記異物の画像部分を切り出す画像切り出し部と、
前記画像切り出し部により切り出され且つ鉄系スクラップを背景にした前記異物の画像部分を前記鉄系スクラップ画像に貼り付けることにより教師画像を作成する教師画像作成部と、
前記教師画像に対応し且つ前記教師画像内の前記異物が存在する位置に所定の標識によるラベル付けがなされた教師ラベルを作成する教師ラベル作成部と 、
を含む 、教師データ作成部。
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
令和5年10月13日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
1 進歩性について
本件発明1、4は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、4に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号の規定により取り消すべきものである。
また、本件発明3、5は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3、5に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号の規定により取り消すべきものである。
2 サポート要件について
本件発明1~5、8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第1項第4号の規定により取り消すべきものである。
第5 特許異議申立人により提出された甲号証
特許異議申立人によって特許異議申立書とともに提出された甲第1号証~甲第5号証は、次のとおりである。
甲第1号証:韓国登録特許第10-1981031号公報
甲第2号証:本件特許の出願に対する令和4年10月26日付け
拒絶理由通知書
甲第3号証:特開2019-164156号公報
甲第4号証:特開平7-280747号公報
甲第5号証:特開2020-38666号公報
第6 特許法第36条第6項第1号についての当審の判断
本件発明が解決しようとする課題は、発明の詳細な説明の【発明が解決しようとする課題】の記載によれば、機械学習モデルを生成するために必要な一定量の教師画像と教師ラベルを、異物を含む鉄系スクラップの画像から異物を判別することができる程度の数量だけ準備することが困難であり(【0010】)、鉄系スクラップと異物の形状、大きさ、姿勢はほぼランダムであるため、あらゆる混在パターンを想定した画像を準備することは困難であり(【0011】)、
形状、大きさ、姿勢にランダム性の強い鉄系スクラップと異物とが混在した教師画像から異物を見つけ出し、教師ラベルを作成する作業を、人手で行うには多大の時間と労力を要するものであり(【0012】)、そもそも、鉄系スクラップから取り除かれた異物を撮影することはあっても、異物が混在している状態の鉄系スクラップを撮影することは少ないため、教師画像を確保すること自体、難しいことが多く(【0013】)、このため、異物が混在する鉄系スクラップから精度よく異物を検出して取り除くことが困難である(【0013】)というものであると認められる。
これに対し、本件訂正発明1は、機械学習モデルを生成するために必要な一定量の教師画像と教師ラベルを、異物を含む鉄系スクラップの画像から異物を判別することができる程度の数量だけ準備するための処理について何ら特定されておらず、上記本件発明が解決しようとする課題を解決できるとは認められないから、本件訂正発明1と発明の詳細な説明に発明として記載されたものとが、実質的に対応しているとはいえない。
なお、特許権者は、令和5年11月30日付け意見書において、
「ウ 発明の詳細な説明の[発明が解決しようとする課題]の欄には、段落0010~0013において教師画像及び教師ラベルの確保が困難であるという事例を記載した上で、段落0013に「従来は、異物が混在する鉄系スクラップから精度よく異物を検出して取り除くことが困難であった」という課題が提起され、段落0014において「この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、異物が混在する鉄系スクラップから精度よく異物を検出することができる異物検出装置を提供することを目的とする」、「この発明は、異物が混在する鉄系スクラップから精度よく異物を検出することができる異物検出方法を提供することも目的としている」と記載している。
エ 訂正後の本件発明1では、種別判定部により判定される結果が、対象物画像の複数の画像要素と同じ個数で且つ同じ配列を有する複数の行列要素からなる判定行列として出力されることから、判定行列のそれぞれの行列要素に基づいて、鉄系スクラップに混在している異物を検出することができ(段落0026)、異物であると判定された画像要素の集合体を異物と認識することができ(段落0046)、さらに、判定行列において異物に対応する行列要素を確認して、異物であると判定された画像要素の集合体を異物と認識することにより、対象物画像上における異物の全体位置を特定することができ(段落0053)、判定行列に基づいて鉄系スクラップに混在する異物の実空間での位置を特定することができる(段落0058)。すなわち、段落0014に記載されるように、異物が混在する鉄系スクラップから精度よく異物を検出し得ることが当業者にとって理解可能である。
オ 以上の通り、訂正後の本件発明1によれば、本件発明の課題が解決可能で、本件明細書に記載されていると認められるべきもので、サポート要件を充足する。本件発明2~5、8についても同様である。」(8頁8行~9頁3行)
と主張している。
しかしながら、上記【0013】の「従来は、異物が混在する鉄系スクラップから精度よく異物を検出して取り除くことが困難であった」は、文全体では「このため、従来は、異物が混在する鉄系スクラップから精度よく異物を検出して取り除くことが困難であった。」とされている。
そして、当該文は、「このため」との記載から、それ以前の
「【0010】
しかしながら、特許文献1の方法により大量の教師データを作成し、画像セグメンテーションを用いて、異物を含む鉄系スクラップが撮像された画像から異物の位置を特定しようとしても、第1機械学習モデルを生成するために必要な一定量の教師画像と教師ラベルを、異物を含む鉄系スクラップの画像から異物を判別することができる程度の数量だけ準備することが困難であるという問題がある。
【0011】
その理由は、鉄系スクラップに混在する異物は、多くは鉄系スクラップ業者が取り除く作業を行うため、異物が混在した鉄系スクラップを撮影した画像は少ないからである。さらに、鉄系スクラップと異物の形状、大きさ、姿勢はほぼランダムであるため、あらゆる混在パターンを想定した画像を準備することは困難である。
【0012】
また、異物が混在した鉄系スクラップの画像を大量に入手できたとしても、異物と鉄系スクラップは似ていることが多いため、熟練した作業員でないと判別が難しく、多数の熟練した作業員を確保することは難しい。たとえ、熟練した作業員を多数集められたとしても、形状、大きさ、姿勢にランダム性の強い鉄系スクラップと異物とが混在した教師画像から異物を見つけ出し、教師ラベルを作成する作業を、人手で行うには多大の時間と労力を要する。
【0013】
そもそも、鉄系スクラップから取り除かれた異物を撮影することはあっても、異物が混在している状態の鉄系スクラップを撮影することは少ないため、教師画像を確保すること自体、難しいことが多い。」
という起因事項を受けた一連の文脈中に関連付けられているものである。
そうすると、本件発明が解決しようとする課題は、機械学習モデルを生成するために必要な一定量の教師画像と教師ラベルを、異物を含む鉄系スクラップの画像から異物を判別することができる程度の数量だけ準備することが困難であるため、従来は、異物が混在する鉄系スクラップから精度よく異物を検出して取り除くことが困難であった、というものであって、特許権者の上記主張のとおりには解することができない。
したがって、本件訂正発明1は発明の詳細な説明に記載したものではない。
また、本件訂正発明3~5、8も、上記課題を解決できるものとはいえないから、本件訂正発明3~5、8と発明の詳細な説明に発明として記載されたものとが、実質的に対応しているとはいえない。
よって、本件訂正発明3~5、8も、発明の詳細な説明に記載したものではない。
第7 甲号証に記載された発明・技術、及びその他の取消理由通知についての当審の判断
1 甲第1号証について
(1)記載事項
甲第1号証には次の記載がある。
なお、各記載事項の末尾に仮訳を付すとともに、強調する箇所に下線を付した。
「
[図:0001416458000001.jpg]
」
(仮訳:請求項14
鉄鋼製品の重さを測定する計量装置;
前記鉄鋼製品の体積を測定するLiDARセンサ;
前記鉄鋼製品のイメージを撮影するカメラ;
前記イメージの分析結果を表示するディスプレイ;
1つ以上のプロセッサ;
前記プロセッサによって行われるコンピュータプログラムをロードするメモリ;及び
前記コンピュータプログラムを格納するストレージを含むものの、
前記コンピュータプログラムは、
グリッド(grid)を用いて前記イメージを複数の片に分割するインストラクション;
前記複数の片のそれぞれを人工ニューラルネットワークを用いて分析するインストラクション;
前記人工ニューラルネットワークから前記複数の片のそれぞれを複数の分類基準で分類した結果を得るインストラクション;
全体片の数に対する前記分類した結果の精度が既に設定された値以上である片の数の比率が既に設定された比率未満の場合、前記片の数を調節するインストラクション;及び
前記重さ及び前記体積を用いて、前記分類した結果の精度を検証するインストラクションを含む、
鉄スクラップ装置。)
「
[図:0001416458000002.jpg]
」
(仮訳:請求項15
第14項において、
前記精度を検証するインストラクションの次に、
前記イメージ、前記グリッド及び前記分類した結果を前記ディスプレイに表示するインストラクションをさらに含む、
鉄スクラップ装置。)
「
[図:0001416458000003.jpg]
[図:0001416458000004.jpg]
」
(仮訳:[0086]
本発明による一実施例による人工ニューラルネットワークの構築のために、十分な学習イメージが必要である。一例として、鉄鋼製品の鉄スクラップのためには、鉄鋼製品のイメージで各鉄スクラップの分類によって区分される各イメージ領域を人工ニューラルネットワークに入力して人工ニューラルネットワークを学習させる必要がある。
[0087]
ただし図3に示されたとおり、鉄鋼製品のイメージの全ての部分が人工ニューラルネットワークの学習に適したものではない。鉄鋼製品のイメージは、特定鉄スクラップに分類され難いdustなどの異物や外郭線を区分し難い影部分を含んでいる。
[0088]
従って、鉄鋼製品からのイメージから各鉄スクラップの分類によって区分可能な各イメージ領域を分離した後、分離された各イメージに各鉄スクラップの分類結果に対するラベルを付けて人工ニューラルネットワークに入力することが好ましい。この時、人工ニューラルネットワークの学習に使用されるイメージは、ロスレスイメージフォーマットであることが好ましい。
[0089]
グーグルのディープラーニングエンジンが数字を区分するのに必要な学習用イメージは、数字1つあたり約5000枚と知られている。従って、本発明の一実施例による映像分析のための人工知能学習時には、各鉄スクラップの分類別に最低3000枚、好ましくは約5000枚の写真を投入して指導学習を行うことが好ましい。
[0090]
人工ニューラルネットワークの学習過程は、車両に載置された鉄鋼製品を撮影したイメージにおいて、各鉄スクラップの分類によって区分される各イメージ領域を人工ニューラルネットワークを用いて分析する段階、入力されたイメージが人工ニューラルネットワークを経て決定される最終出力ノードの分類値と、入力されたイメージのラベルに付いている実際の分類値を比較して誤差(デルタ)を求める段階、及びデルタを逆伝搬させて人工ニューラルネットワークの加重値を変更する段階を含み得る。
[0091]
ディープラーニング技法、例えば、CNN技法を用いて鉄スクラップの分類に対する人工ニューラルネットワークが十分に学習されれば、人工知能を用いた鉄スクラップの分類作業を行うことができる。)
「
[図:0001416458000005.jpg]
」
(仮訳:[0097]
図4に示されたとおり、本発明の一実施例による鉄スクラップ方法は、分析対象イメージ全体を人工ニューラルネットワークに入力せずに、各片領域に該当する複数の片のそれぞれを人工ニューラルネットワークに入力して分析する。例えば、鉄鋼製品のイメージをグリッドを用いて100個の片に分割した後、各片を人工ニューラルネットワークに入力して各片に対する鉄スクラップの分類を行う。
[0098]
人工ニューラルネットワークの入力層に片が入力されれば、人工ニューラルネットワークの隠れ層による演算過程を経て、人工ニューラルネットワークの出力層から当該片が各鉄スクラップの分類に該当する確率が一定範囲の数字として出力される。人工ニューラルネットワークの出力層の各ノードに出力される値は0から1の間の値であってもよい。または使用者の設定に応じて任意の範囲の数字として出力層の範囲を定めることができる。例えば、人工ニューラルネットワークの出力層の各ノードに出力される値を0から100の間の値(パーセント値)に定めることができる。
[0099]
人工ニューラルネットワークの出力層の各ノードに出力される値を0から100パーセントの間の値に定めた場合を例として挙げれば、鉄鋼製品のイメージのいずれか1つの片を人工ニューラルネットワークに入力した結果、出力層で「重量A」を示すノードの値が5%であり、「重量B」を示すノードの値が10%であり、「軽量A」を示すノードの値が10%であり、「軽量B」を示すノードの値が65%であり、dustを示すノードの値は10%であると仮定すれば、当該片の鉄スクラップの分類結果は、最も大きな値を有する「軽量B」と判断できる。このような方法で、鉄鋼製品イメージをグリッドを用いて分割したそれぞれの片に対して鉄スクラップの分類を行う。)
「
[図:0001416458000006.jpg]
」
(仮訳:[0102]
先に説明したとおり、各片の鉄スクラップの分類結果は、人工ニューラルネットワークの出力層で最も高い値を有するノードにより決定される。ただし最も大きな値を有するノードの値が既に設定された値以下の場合には、当該片に対する鉄スクラップの分類が不可能であるという判定を下すことができる。
[0103]
鉄スクラップの分類結果は、各片内に文字で表すことができる。例えば、「重量A」に分類された片を含む片内に「重量A」という文字を表示し、「重量B」に分類された片を含む片内に「重量B」という文字を表示する方式で鉄スクラップの分類結果を表示できる。
[0104]
または、鉄スクラップの分類結果を各片の色で表すことができる。例えば、「重量A」に分類された片を緑色で表し、「重量B」に分類された片を黄色で表し、「軽量B」に分類された片をオレンジ色で表し、「軽量L」に分類された片を灰色で表し、dustに分類された片を赤色で表すことができる。)
(2)甲1発明
上記(1)の記載事項から、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
なお、甲1発明には(a)~(p)の符号を付した。以下、それぞれ「構成a」~「構成p」という。
また、各構成の末尾括弧内に、対応する記載箇所を付した。
〔甲1発明〕
(a)鉄鋼製品のイメージを撮影するカメラ;
(b)前記イメージの分析結果を表示するディスプレイ;
(c)1つ以上のプロセッサ;
(d)前記プロセッサによって行われるコンピュータプログラムをロードするメモリ;及び
(e)前記コンピュータプログラムを格納するストレージを含み、
(f)前記コンピュータプログラムは、
(f1)グリッドを用いて前記イメージを複数の片に分割するインストラクション;
(f2)前記複数の片のそれぞれを人工ニューラルネットワークを用いて分析するインストラクション;
(f3)前記人工ニューラルネットワークから前記複数の片のそれぞれを複数の分類基準で分類した結果を得るインストラクションを含む、
(g)鉄スクラップ装置であって、(請求項14)
(h)前記イメージ、前記グリッド及び前記分類した結果を前記ディスプレイに表示するインストラクションをさらに含むものであり、(請求項15)
(i)分析対象イメージ全体を人工ニューラルネットワークに入力せずに、各片領域に該当する複数の片のそれぞれを人工ニューラルネットワークに入力して分析するものであって、鉄鋼製品のイメージをグリッドを用いて複数の片に分割した後、各片を人工ニューラルネットワークに入力して各片に対する鉄スクラップの分類を行うものであり、([0097])
(j)鉄鋼製品のイメージは、特定鉄スクラップに分類され難いdustなどの異物や外郭線を区分し難い影部分を含んでおり、([0087])
(k)人工ニューラルネットワークの入力層に片が入力されれば、人工ニューラルネットワークの隠れ層による演算過程を経て、人工ニューラルネットワークの出力層から当該片が各鉄スクラップの分類に該当する確率が一定範囲の数字として出力されるものであり、([0098])
(l)出力層には、例えば、「重量A」を示すノード、「重量B」を示すノード、「軽量A」を示すノード、「軽量B」を示すノード、dustを示すノードがあり、([0099])
(m)各片の鉄スクラップの分類結果は、人工ニューラルネットワークの出力層で最も高い値を有するノードにより決定されるものであり、([0102])
(n)鉄スクラップの分類結果は、各片内に文字で表すことや、各片の色で表すことができ、([0103]、[0104])
(o)人工ニューラルネットワークの学習は、鉄鋼製品からのイメージから各鉄スクラップの分類によって区分可能な各イメージ領域を分離した後、分離された各イメージに各鉄スクラップの分類結果に対するラベルを付けて人工ニューラルネットワークに入力し、入力されたイメージが人工ニューラルネットワークを経て決定される最終出力ノードの分類値と、入力されたイメージのラベルに付いている実際の分類値を比較して誤差(デルタ)を求め、デルタを逆伝搬させて人工ニューラルネットワークの加重値を変更することにより行われ、([0086]、[0088]、[0090])
(p)ディープラーニング技法、例えば、CNN技法を用いて鉄スクラップの分類に対する人工ニューラルネットワークが十分に学習されれば、人工知能を用いた鉄スクラップの分類作業を行うことができる([0091])
(g)鉄スクラップ装置。
2 甲第3号証について
(1)記載事項
上記甲第3号証には次の記載がある。なお、強調する箇所に下線を付した。
「【0051】
(2-6-2-2)教師データ取得部
教師データ取得部52bは、学習部52cが使用する教師データを取得する。透過画像記憶部51aには、異物Cを含む商品Gの透過画像のデータである異物有り画像データ、及び、異物Cを含まない商品Gの透過画像のデータである異物無し画像データが予め記憶されている。異物有り画像データ及び異物無し画像データの少なくとも一部は、重なり領域Rを有する商品Gの透過画像のデータである。教師データ取得部52bは、透過画像記憶部51aに記憶されている異物有り画像データ及び異物無し画像データを取得する。なお、教師データ取得部52bは、少なくとも異物有り画像データを取得すればよく、その場合、異物無し画像データを取得しなくてもよい。以下では、教師データ取得部52bは、異物有り画像データ及び異物無し画像データの両方を取得するとする。教師データ取得部52bが取得する異物有り画像データ及び異物無し画像データの数は、多ければ多いほどよい。例えば、教師データ取得部52bは、透過画像記憶部51aに予め記憶されている異物有り画像データ及び異物無し画像データをそれぞれ数百枚又は数千枚取得する。
【0052】
教師データ取得部52bは、商品Gの透過画像において、複数の物品Aが互いに重なり合っている領域(重なり領域RO)に関するデータである重なり領域データをさらに取得する。重なり領域データとは、商品Gの透過画像において、重なり領域ROの位置及び寸法に関するデータである。図8は、異物Cを含む商品Gの透過画像の一例を示す図である。図8では、1つの重なり領域ROと、当該重なり領域ROを含む最小の矩形領域である重なり矩形RPが示されている。この場合、重なり領域データは、例えば、重なり矩形RPの左上の画素の座標、及び、重なり矩形RPの右下の画素の座標からなる。なお、重なり領域データのフォーマットは、特に限定されない。例えば、重なり領域データは、重なり領域ROを含む最小の円領域の中心及び半径からなってもよく、重なり領域ROの形状に近い多角形の各頂点の座標の集合であってもよく、手動で任意に指定された領域の座標の集合であってもよい。
【0053】
教師データ取得部52bは、異物Cを含む商品Gの透過画像において、異物Cが存在する領域に関するデータである異物領域データをさらに取得する。異物領域データとは、異物Cを含む商品Gの透過画像において、異物Cに相当する画素を有する領域の位置及び寸法に関するデータである。図8では、異物Cに相当する画素を有する領域を含む最小の矩形領域である異物領域RCが示されている。この場合、異物領域データは、異物領域RCの左上の画素の座標、及び、異物領域RCの右下の画素の座標からなる。なお、異物領域データのフォーマットは、特に限定されない。例えば、異物領域データは、異物Cに相当する画素を有する領域を含む最小の円領域の中心及び半径からなってもよく、異物Cに相当する画素を有する領域の形状に近い多角形の各頂点の座標の集合であってもよく、手動で任意に指定された領域の座標の集合であってもよい。
【0054】
商品Gの透過画像、及び、各透過画像の重なり領域データ及び異物領域データは、モニタ40のタッチパネル機能等を介して入力されるか、通信ポートを介して外部記憶装置から入力される。重なり領域ROが存在しない場合の重なり領域データ、及び、異物無し画像データの異物領域データには、値が存在しないことを示すNULL値等が設定される。教師データ取得部52bは、商品Gの透過画像のデータと、当該透過画像の重なり領域データ及び異物領域データとを関連付けて、教師データとして教師データ記憶部51bに記憶させる。後述するように、教師データ取得部52bが取得する教師データは、いわゆる、教師有り学習で用いられるラベル付き訓練データである。この場合、ラベルは、重なり領域データ及び異物領域データであり、予め入力する必要があるデータである。
【0055】
(2-6-2-3)学習部
学習部52cは、教師データ記憶部51bに記憶されている教師データを用いる機械学習によって、複数の物品Aが重なり合っている状態の商品Gに関する特徴を取得する。学習部52cが実行する機械学習は、いわゆる、ラベル付き訓練データを用いる教師有り学習である。教師有り学習は、多数のラベル付き訓練データを解析して、ラベルに関する特徴を学習する方法である。教師有り学習では、種種のニューラルネットワークモデルが利用可能である。
【0056】
学習部52cは、商品Gの透過画像のデータと、当該透過画像の重なり領域データ及び異物領域データとが関連付けられた多数の教師データを解析する。これにより、学習部52cは、教師データに含まれる異物有り画像データ及び異物無し画像データの特徴量を取得する。学習部52cが取得する特徴量は、複数の物品Aが重なり合っている状態の商品Gに関する特徴に関するデータである。特徴量のフォーマットは、手動で予め設計されている。学習部52cは、商品Gの異物混入検査を行う前に教師データを解析して特徴量を取得して、取得した特徴量を特徴量記憶部51cに記憶させる。
【0057】
(2-6-2-4)検査部
検査部52dは、学習部52cが取得した特徴量を用いて、商品Gを検査する。具体的には、検査部52dは、特徴量記憶部51cに記憶されている特徴量を用いて、異物混入検査の対象となる未検査の商品Gの透過画像のデータを、異物有り画像データと異物無し画像データとに分類する。
【0058】
検査部52dは、商品Gの検査結果に基づいて、商品Gに関する良品/不良品の判定を行う。検査部52dは、未検査の商品Gの透過画像のデータが異物無し画像データであり、商品Gに異物Cが含まれていないと判断した場合に、商品Gを良品と判定する。一方、検査部52dは、未検査の商品Gの透過画像のデータが異物有り画像データであり、商品Gに異物Cが含まれていると判断した場合に、商品Gを不良品と判定する。
【0059】
検査部52dは、商品Gの良品/不良品を判定すると、商品Gが良品/不良品のいずれかであるのかに関する信号を出力する。検査部52dによって出力された信号は、振り分け機構70に送られる。振り分け機構70は、検査部52dによる判定結果に基づき、良品である商品Gを後段コンベア80へ送り、不良品である商品Gを不良品排出方向90,91に振り分ける。」
(2)甲3技術
上記(1)の記載事項から、甲第3号証には、次の技術(以下、「甲3技術」という。)が記載されている。
〔甲3技術〕
異物を含む商品の透過画像のデータ、及び異物を含む商品の透過画像において異物が存在する領域に関するデータである異物領域データを取得し、
取得する教師データをラベル付き訓練データとしてニューラルネットワークモデルの教師有り学習に用い、
異物混入検査の対象となる未検査の商品の透過画像のデータを、異物有り画像データと異物無し画像データとに分類する
技術。
3 甲第4号証について
(1)記載事項
上記甲第4号証には次の記載がある。なお、強調する箇所に下線を付した。
「【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は次の通りである。
1)破砕後の鉄スクラップ群を連続的に搬送するための搬送手段と;
2)搬送中の鉄スクラップ群のカラー画像を撮像するための撮像手段と;
3)該撮像手段からのカラー画像と撮像時刻を受信し、該カラー画像の輝度(I)信号から該画像中の個々のスクラップを個体認識するとともに各スクラップの総面積Stすなわち総画素数を求め;該カラー画像の色相角度(H)信号と彩度(S)信号から各画素が銅であるか否かを判別するとともに各スクラップ中の銅面積すなわち銅と判別された画素数を求め;各スクラップの銅面積SCuと総面積Stの比R=SCu/Stから銅含有スクラップであるか否かを識別し;該画像中の全ての銅含有スクラップの該画像中の位置(X,Y)情報と該画像撮像時刻を出力するための識別処理手段と;
4)該搬送手段に連結されて銅含有スクラップと鉄スクラップを分離する機構を有する分離手段と;
5)該識別処理手段からの該画像中の全ての銅含有スクラップの該画像中の位置(X,Y)情報と該画像撮像時刻を受信し;該位置(X,Y)情報と該画像撮像時刻から個々の銅含有スクラップが該分離手段まで搬送される時間遅れを計算し、銅含有スクラップが該分離手段に到達したときに該分離手段を駆動させるための分離装置制御手段;とから構成されることを特徴とする銅含有スクラップの識別分離装置を用いる。」
(2)甲4技術
上記(1)の記載事項から、甲第4号証には、次の技術(以下、「甲4技術」という。)が記載されている。
〔甲4技術〕
搬送中の鉄スクラップ群の画像を撮像し、銅含有スクラップであるか否かを識別し、該画像中の全ての銅含有スクラップの該画像中の位置(X,Y)情報と該画像撮像時刻から個々の銅含有スクラップが該分離手段まで搬送される時間遅れを計算し、銅含有スクラップが該分離手段に到達したときに該分離手段を駆動させる技術。
4 甲第5号証について
(1)記載事項
上記甲第5号証には次の記載がある。なお、強調する箇所に下線を付した。
「【背景技術】
【0002】
ディープ・コンボリューション・ニューラル・ネットワーク(Deep Convolution Neural Networks;DeepCNNs)は、ディープラーニング分野で起きた驚くべき発展の核心である。CNNsは、文字の認識問題を解くために90年代にすでに使われたが、現在のように広く使われるようになったのは最近の研究結果のおかげである。このようなディープCNNは2012年ImageNetイメージ分類コンテストで他の競争相手に勝って優勝を収めた。そして、コンボリューションニューラルネットワークは機械学習分野で非常に有用なツールとなった。
【0003】
一方、イメージセグメンテーション(Image segmentation)は、入力としてイメージ(トレーニングイメージまたはテストイメージ)を受けて、出力としてラベル(label)イメージを作り出す方法である。最近、ディープラーニング(Deep learning)技術が脚光を浴び、セグメンテーションもディープラーニングを多く利用する傾向にある。
【0004】
一方、自律走行状況で利用される障害物を検出するためにCNNを学習する場合、学習装置は自律走行状況で遭遇する様々な物体を学習しなければならず、そのために学習用イメージは自律走行状況で向き合うことになる様々な物体が存在するイメージである必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実際の走行状況では、道路上に様々な物体が存在し得るが、このようなデータを収集することは容易ではない。つまり、道路上に頻繁に現れない特異な物体に対する学習イメージは、一般走行映像データでは容易には入手できないだろう。例えば、人や自転車、車両等に対しては、一般走行映像データから容易に得られるイメージであるため、このような物体が含まれる学習イメージでは検出性能を高めるための学習をし得るが、虎やワニ等に対しては、一般走行映像データから容易に入手できず、これにより特異な物体への検出性能を高めるための学習は容易でないという問題点が存在する。
【0006】
本発明は、前述した問題点を解決することを目的とする。
【0007】
本発明は、自律走行の際の実際の道路走行状況において、頻繁に接することのない物体を検出し得る性能を高めるために利用される学習用イメージセットを確保することを他の目的とする。
【0008】
また、本発明は、学習用データセットを用いてCNNのパラメータを学習することにより、実際の道路走行状況で頻繁に接することのない物体に対しても正確度高く検出し得るようにする学習方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、自律走行状況で少なくとも一つの障害物検出のための少なくとも一つの学習用データセットを生成する方法は、(a)コンピューティング装置が、(i)道路走行状況を示す少なくとも一つの第1原本イメージ及び(ii)前記第1原本イメージに対応する少なくとも一つの第1セグメンテーション原本正解(ground truth)イメージを獲得する段階;(b)前記コンピューティング装置が、(i)少なくとも一つの特定の物体に対するイメージを含む少なくとも一つの第2原本イメージ及び(ii)前記特定の物体に対するセグメンテーション情報を含み、前記第2原本イメージに対応する少なくとも一つの第2セグメンテーション原本正解イメージを獲得する段階;(c)前記コンピューティング装置が、(i)前記第2原本イメージから前記特定の物体に対応する部分を切り取って生成された少なくとも一つの第3原本イメージ及び(ii)前記第2セグメンテーション原本正解イメージから前記特定の物体が位置する部分に対応する各ピクセルを切り取って生成された少なくとも一つの第3セグメンテーション原本正解イメージを獲得する段階;及び(d)前記コンピューティング装置が、(i)前記第3原本イメージを前記第1原本イメージに合成して、少なくとも一つの学習用第4原本イメージを生成し、(ii)前記第3原本イメージが前記第1原本イメージに合成された少なくとも一つの特定位置に対応するように、前記第3セグメンテーション原本正解イメージを前記第1セグメンテーション原本正解イメージに合成して少なくとも一つの学習用第4セグメンテーション原本正解イメージを生成することにより、前記学習用第4原本イメージとそれに対応する前記学習用第4セグメンテーション原本正解イメージを含む前記学習用データセットを生成する段階;を含む。」
(2)甲5技術
上記(1)の記載事項から、甲第5号証には、次の技術(以下、「甲5技術」という。)が記載されている。
〔甲5技術〕
自律走行状況で、少なくとも一つの障害物検出のための少なくとも一つの学習用データセットを生成する方法において、
学習用データセットを用いてCNNのパラメータを学習することにより、実際の道路走行状況で頻繁に接することのない物体に対しても正確度高く検出し得るようにする学習方法を提供することを目的として、
道路走行状況を示す少なくとも一つの第1原本イメージ及び前記第1原本イメージに対応する少なくとも一つの第1セグメンテーション原本正解(ground truth)イメージを獲得し、
少なくとも一つの特定の物体に対するイメージを含む少なくとも一つの第2原本イメージ及び前記特定の物体に対するセグメンテーション情報を含み、前記第2原本イメージに対応する少なくとも一つの第2セグメンテーション原本正解イメージを獲得し、
前記第2原本イメージから前記特定の物体に対応する部分を切り取って生成された少なくとも一つの第3原本イメージ及び前記第2セグメンテーション原本正解イメージから前記特定の物体が位置する部分に対応する各ピクセルを切り取って生成された少なくとも一つの第3セグメンテーション原本正解イメージを獲得し、
前記第3原本イメージを前記第1原本イメージに合成して、少なくとも一つの学習用第4原本イメージを生成し、
前記第3原本イメージが前記第1原本イメージに合成された少なくとも一つの特定位置に対応するように、前記第3セグメンテーション原本正解イメージを前記第1セグメンテーション原本正解イメージに合成して少なくとも一つの学習用第4セグメンテーション原本正解イメージを生成することにより、前記学習用第4原本イメージとそれに対応する前記学習用第4セグメンテーション原本正解イメージを含む前記学習用データセットを生成する
技術。
5 特許法第29条第2項についての当審の判断
(1)本件訂正発明1について
ア 対比
本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)構成Aについて
構成aの「鉄鋼製品のイメージ」は、鉄スクラップの分類が行われるものである(構成i)から、構成Aの「鉄系スクラップを含む対象物が撮像された対象物画像」に相当する。
そして、構成aの「鉄鋼製品のイメージを撮影するカメラ」は、構成Aの「鉄系スクラップを含む対象物が撮像された対象物画像を取得する対象物画像取得部」に相当する。
(イ)構成B、B1、B11、B12、B14、B141について
甲1発明の装置は、鉄鋼製品のイメージ(前記対象物画像)をグリッドを用いて複数の片に分割した後、各片を人工ニューラルネットワークに入力して各片に対する鉄スクラップの分類を行うもの(構成i)であり、前記分類結果は、人工ニューラルネットワークの出力層で最も高い値を有するノードにより決定されるもの(構成k)であり、前記出力層には、例えば、「重量A」を示すノード、「重量B」を示すノード、「軽量A」を示すノード、「軽量B」を示すノード、dustを示すノードがある(構成l)。
ここで、上記「重量A」、「重量B」、「軽量A」、「軽量B」は構成Bの「鉄系スクラップ」に相当し、上記「dust」は構成Bの「前記鉄系スクラップ以外の異物」に相当する。
そうすると、甲1発明の装置は、構成Bの「前記対象物画像に基づいて前記対象物から前記鉄系スクラップと前記鉄系スクラップ以外の異物とを判別する画像判別部」に相当する構成、及び「前記対象物画像を複数の画像要素に分割し」(構成B11)、「前記画像要素毎に前記鉄系スクラップと前記異物のいずれであるかを判定」する(構成B12)、前記画像判別部に含まれる「種別判定部」(構成B1)に相当する構成を備えるものといえる。
また、甲1発明の上記各片に対する鉄スクラップの分類は、人工ニューラルネットワークに入力して行われるもの(構成i)であり、CNN等ディープラーニング技法が用いられる(構成p)から、構成B14の「前記種別判定部は、多層ニューラルネットワークにより構成され」に相当する構成を備えている。
甲1発明の人工ニューラルネットワークは、分析対象イメージ全体を入力せずに、各片領域に該当する複数の片のそれぞれを入力して分析するものであり(構成i)、当該人工ニューラルネットワークの学習は、鉄鋼製品からのイメージから各鉄スクラップの分類によって区分可能な各イメージ領域を分離した後、分離された各イメージに各鉄スクラップの分類結果に対するラベルを付けて人工ニューラルネットワークに入力し、入力されたイメージが人工ニューラルネットワークを経て決定される最終出力ノードの分類値と、入力されたイメージのラベルに付いている実際の分類値を比較して誤差(デルタ)を求め、デルタを逆伝搬させて人工ニューラルネットワークの加重値を変更することにより行われる(構成o)。
そうすると、本件訂正発明1と甲1発明は、「前記多層ニューラルネットワークのパラメータは、教師画像と、前記教師画像に対応して所定の標識によるラベル付けがなされた教師ラベルと、を含む複数の教師データに基づいて機械学習されることで得られる」ものである点で共通する。
しかしながら、教師画像が、本件訂正発明1では「鉄系スクラップに異物が混在する」画像であるのに対し、甲1発明では鉄鋼製品からのイメージから各鉄スクラップの分類(「重量A」、「重量B」、「軽量A」、「軽量B」、「dust」等)によって区分可能な各イメージ領域の画像である点で、両者は相違する。
また、教師ラベルのラベル付けが、本件訂正発明1では、前記教師画像内の前記異物が存在する位置になされるのに対し、甲1発明では各鉄スクラップの分類結果が分離された各イメージになされる点で、両者は相違する。
(ウ)構成B13について
甲1発明の装置は、前記分類した結果を前記ディスプレイに表示するもの(構成h)であり、当該表示は、各片(画像要素)内に文字で表すことや、各片(画像要素)の色で表すことによりに行われる(構成n)から、出力される文字や色の個数は片(画像要素)の個数と同じである。
そうすると、本件訂正発明1と甲1発明は、判定された結果を、前記対象物画像の前記複数の画像要素と同じ個数のものとして出力する構成を備える点で共通する。
しかしながら、前記複数の画像要素と同じ個数のものが、本件訂正発明では「前記対象物画像の前記複数の画像要素と同じ配列を有する複数の行列要素からなる判定行列」であるのに対し、甲1発明では当該構成が特定されていない点で、両者は相違する。
(エ)構成Cについて
上記(ア)、(イ)のとおり、甲1発明の装置は、「鉄系スクラップを含む対象物が撮像された対象物画像を取得する対象物画像取得部」(構成A)、「前記対象物画像に基づいて前記対象物から前記鉄系スクラップと前記鉄系スクラップ以外の異物とを判別する画像判別部」(構成B)に相当する構成を備えるものであり、構成Cの「異物検出装置」といえるものである。
(オ)一致点及び相違点
上記(ア)~(エ)から、本件訂正発明1と甲1発明との間の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
〔一致点〕
(A) 鉄系スクラップを含む対象物が撮像された対象物画像を取得する対象物画像取得部と、
(B) 前記対象物画像に基づいて前記対象物から前記鉄系スクラップと前記鉄系スクラップ以外の異物とを判別する画像判別部と、
を備え、
(B1) 前記画像判別部は、種別判定部を含み、
前記種別判定部は、
(B11) 前記対象物画像を複数の画像要素に分割し、
(B12) 前記画像要素毎に前記鉄系スクラップと前記異物のいずれであるかを判定し、
(B13’) 判定された結果を、前記対象物画像の前記複数の画像要素と同じ個数のものとして出力し、
(B14) 前記種別判定部は、多層ニューラルネットワークにより構成され、
(B141’) 前記多層ニューラルネットワークのパラメータは、教師画像と、前記教師画像に対応して所定の標識によるラベル付けがなされた教師ラベルと、を含む複数の教師データに基づいて機械学習されることで得られる、
(C) 異物検出装置。
〔相違点1〕
前記複数の画像要素と同じ個数のものが、本件訂正発明1では「前記対象物画像の前記複数の画像要素と同じ配列を有する複数の行列要素からなる判定行列」であるのに対し、甲1発明では当該構成が特定されていない点。
〔相違点2〕
教師画像が、本件訂正発明1では「鉄系スクラップに異物が混在する」画像であるのに対し、甲1発明では鉄鋼製品からのイメージから各鉄スクラップの分類によって区分可能な各イメージ領域の画像である点、及び、教師ラベルのラベル付けが、本件訂正発明1では、前記教師画像内の前記異物が存在する位置になされるのに対し、甲1発明では各鉄スクラップの分類結果が分離された各イメージになされる点。
イ 判断
上記相違点について検討する。
(ア)相違点1について
甲1発明は、前記イメージ、前記グリッド及び前記分類(判定)した結果を前記ディスプレイに表示するもの(構成h)であり、グリッドにより分割された(構成i)2次元配列の各片(画像要素)に対応して色などで表されるものであるから、当該2次元配列された色などを表示するための情報の構造として、2次元に配列された片(画像要素)と同じ配列を有する複数の行列要素からなる行列構造を採ること、(すなわち、上記相違点1に係る本件訂正発明1の構成を採ること)は、当業者が適宜なし得ることにすぎない。
(イ)相違点2について
甲1発明の人工ニューラルネットワーク(多層ニューラルネットワーク)は、分析対象イメージ全体を入力せずに、各片領域に該当する複数の片のそれぞれを入力して分析し(構成i)、前記人工ニューラルネットワークから前記複数の片のそれぞれを複数の分類基準(「重量A」、「重量B」、「軽量A」、「軽量B」、「dust」等)で分類した結果を得るもの(構成f3)であり、教師画像が、鉄鋼製品からのイメージから各鉄スクラップの分類によって区分可能な各イメージ領域の画像とされている。
当該構成において、教師画像を、分析対象イメージ全体(鉄系スクラップに異物が混在する画像)とすることや、教師ラベルを前記教師画像に対応し且つ前記教師画像内の前記異物が存在する位置に所定の標識によるラベル付けがなされたものとすることは、片領域毎に人工ニューラルネットワークで分類した結果を得るものとされている甲1発明において、およそ想起され得ることではない。
なお、特許異議申立人は、令和6年2月5日付け意見書において、本件訂正発明1に対応する本件訂正前の請求項2と甲1発明との対比について、次のとおり主張している。
「 甲1発明におけるニューラルネットワーク学習過程について、一例として図3に示す鉄スクラップのイメージ(画像)から『各鉄スクラップの分類によって区分可能な各イメージ領域を分離した後、分離された各イメージに各鉄スクラップの分類結果に対するラベルを付けて人工ニューラルネットワークに入力する』([0088])と記載されていることから、この分離したイメージ(画像)一つ一つがラベル付けされた教師データであることが容易に理解できる。即ち、この一連の工程は複数の教師データを作成する教師データの作成工程であると解せられる。また、この分離したイメージ(画像)のうち鉄スクラップに混在した不純物(ダストなどの鉄以外の異物で、本件特許発明でいう「異物」に相当する。)が含まれているものを教師画像とし、「不純物」のラベルを付けて鉄系スクラップに異物が混在する教師データとすることは容易に想到できるものである。
なお、図3自体には、鉄以外の異物は見当たらないかもしれないが、分離された各イメージに鉄以外の異物がある場合は、異物に対応したラベルを付けてニューラルネットワークに学習させていることは、図8などから明らかである。
例えば図8は、学習済のニューラルネットワークを用いて、ある鉄鋼製品(鉄スクラップ)のイメージを分析した判定結果である。図8にて、各片の色(グリッドのパターン)は、当該片で最も高い出力値を有する鉄スクラップの分類を示し、各片内に記載された数字は、当該片の最も高い出力値を示す(甲1発明[0132];片=画像要素)。図8の例では、分類の種類として、鉄スクラップA、鉄スクラップB、鉄スクラップC、未分類の4種類があり、うち未分類とは、dustなどに分類されて鉄スクラップに分類できない不純物(本件特許発明でいう「異物」に相当)も含むものである。図8の100個(10*10)の画像要素のうち、例えば上から4行目、左から1列目の画像要素の分析結果は「前記4種類のうち不純物を含む未分類である確率が最も高く、その確率は0.50である」と読み取れる。このような結果を出力させるためのニューラルネットワークの学習過程において、教師データの画像に対して、鉄スクラップAや鉄スクラップBと同様に、鉄スクラップ以外の異物に対応した画像要素に「不純物」であるとのラベルを付けて学習することは、当業者であれば容易に想到しうるものである。
以上のとおり、甲1号証から、多層ニューラルネットワークのパラメータとして、鉄系スクラップに異物が混在する教師画像と、教師画像に対応し且つ教師画像内の異物が存在する位置に所定の標識によるラベル付けがなされた教師ラベルとを含む複数の教師データに基づいてマシンラーニング(機械学習)されることは容易に想到されるものである。」(5頁2行~31行)
しかしながら、上記主張は、教師ラベルが「教師画像内の異物が存在する位置に所定の標識によるラベル付けがなされた」ものであることについて、容易想到であることの根拠が示されていないから、採用することができない。
また、甲第3号証には、異物混入検査の対象となる未検査の商品の透過画像のデータを、異物有り画像データと異物無し画像データとに分類するために、異物を含む商品の透過画像のデータ、及び異物を含む商品の透過画像において異物が存在する領域に関するデータである異物領域データを取得し、取得する教師データをラベル付き訓練データとしてニューラルネットワークモデルの教師有り学習に用いる技術(甲3技術)が記載されている。
しかしながら、上記のとおり甲1発明の人工ニューラルネットワーク(多層ニューラルネットワーク)は、分析対象イメージ全体を入力せずに、各片領域に該当する複数の片のそれぞれを入力して分析し(構成i)、前記人工ニューラルネットワークから前記複数の片のそれぞれを複数の分類基準で分類した結果(「重量A」、「重量B」、「軽量A」、「軽量B」、「dust」等)を得るもの(構成f3)であり、各片領域の内部において異物が存在する領域など想定されていないから、甲1発明に甲3技術を適用しようとする動機付けは存在しない。
以上から、相違点2に係る本件訂正発明1の構成は、当業者であっても甲1発明等に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
(ウ)小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、当業者であっても容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件訂正発明3について
本件訂正発明3は、本件訂正発明1の構成を備えるものであるから、上記(1)と同様の理由により、当業者であっても容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件訂正発明4及び5について
本件訂正発明4及び5は、構成B141に対応する構成E11を備えるものであるから、本件訂正発明4及び5は、上記(1)と同様の理由により、当業者であっても容易に発明をすることができたものとはいえない。
第8 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許法第29条第1項第3号(新規性)について
特許異議申立人は、特許異議申立書の16頁7行~24頁27行において、本件特許の請求項1、2及び4に係る発明は、甲第1号証に記載の発明と実質的に同一であるから特許法第29条第1項第3号(新規性)の規定により特許を受けることができないと主張している。
しかしながら、本件特許の請求項2(訂正前)に対応する本件訂正発明1は、上記第7の1(1)アのとおり、甲1発明との間に相違点を有する(実質的に同一ではない)。
また、本件特許の請求項4(訂正前)に係る発明は、本件訂正により、本件訂正発明1の構成B141に対応する構成E11が追加されており(本件訂正発明4)、甲1発明との間に相違点を有する(実質的に同一ではない)。
なお、本件訂正発明2は削除され存在しない。
以上から、本件訂正発明1及び4は新規性を有するものであり、特許異議申立人の上記主張は採用することができない。
2 特許法第29条第2項(進歩性)について
特許異議申立人は、特許異議申立書の31頁28行~37頁27行、38頁31行~40頁2行において、本件発明6、7及び9について進歩性を有するものではないとの主張を行っているので、以下検討する。
(1)本件発明9について
本件発明9と甲1発明とを対比する。
甲1発明の装置は、鉄鋼製品のイメージ(前記対象物画像)をグリッドを用いて複数の片に分割した後、各片を人工ニューラルネットワークに入力して各片に対する鉄スクラップの分類を行うもの(構成i)であり、前記分類結果は、人工ニューラルネットワークの出力層で最も高い値を有するノードにより決定されるもの(構成k)であり、前記出力層には、例えば、「重量A」を示すノード、「重量B」を示すノード、「軽量A」を示すノード、「軽量B」を示すノード、dustを示すノードがある(構成l)。
ここで、上記「重量A」、「重量B」、「軽量A」、「軽量B」は構成Bの「鉄系スクラップ」に相当し、上記「dust」は構成Bの「前記鉄系スクラップ以外の異物」に相当する。
そうすると、甲1発明の装置は、「鉄系スクラップを含む対象物から前記鉄系スクラップと前記鉄系スクラップ以外の異物とを判別する異物検出装置に用いる種別判定部のための教師データ作成部」に相当する構成を備えるものといえ、本件発明9と甲1発明は、「鉄系スクラップを含む対象物から前記鉄系スクラップと前記鉄系スクラップ以外の異物とを判別する異物検出装置に用いる種別判定部のための教師データ作成部」を含む点で共通する。
しかしながら、前記教師データ作成部が、本件発明9では
「 前記鉄系スクラップのみが撮像された鉄系スクラップ画像を取得する鉄系スクラップ画像取得部と、
鉄系スクラップを背景として前記異物を撮像することにより前記異物が含まれる異物含有画像を取得する異物含有画像取得部と、
前記異物含有画像から 前記鉄系スクラップを背景にした前記異物の画像部分を切り出す画像切り出し部と、
前記画像切り出し部により切り出され且つ鉄系スクラップを背景にした前記異物の画像部分を前記鉄系スクラップ画像に貼り付けることにより教師画像を作成する教師画像作成部と、
前記教師画像に対応し且つ前記教師画像内の前記異物が存在する位置に所定の標識によるラベル付けがなされた教師ラベルを作成する教師ラベル作成部と 、
を含む」
ものであるのに対し、甲1発明では当該構成を含むものではない点で、両者は相違する。
上記相違点について検討する。
甲第5号証には、特定の物体に対するイメージを含む第2原本イメージから前記特定の物体に対応する部分を切り取って生成された第3原本イメージを、道路走行状況を示す第1原本イメージに合成して、学習用第4原本イメージを生成し、前記学習用第4原本イメージとそれに対応する前記学習用第4セグメンテーション原本正解イメージを含む前記学習用データセットを生成する技術(甲5技術)が記載されている。
しかしながら、上記のとおり甲1発明の人工ニューラルネットワーク(多層ニューラルネットワーク)は、分析対象イメージ全体を入力せずに、各片領域に該当する複数の片のそれぞれを入力して分析し(構成i)、前記人工ニューラルネットワークから前記複数の片のそれぞれを複数の分類基準で分類した結果(「重量A」、「重量B」、「軽量A」、「軽量B」、「dust」等)を得るもの(構成f3)であり、各片領域内の一部特定箇所に異物(特定の物体)が存在することなど想定されていないから、甲1発明に甲5技術を適用しようとする動機付けは存在しない。
以上から、上記相違点に係る本件発明9の構成は、当業者であっても甲1発明及び甲5技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件発明6について
本件発明6は、本件発明9と同様の構成を備えているから、上記(1)と同様の理由により、当業者であっても容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明7について
本件発明7は、本件発明6の構成を備えているから、上記(2)と同様の理由により、当業者であっても容易に発明をすることができたものとはいえない。
3 特許法第36条第6項第2号(明確性)について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、
「 本件特許の請求項9は、「教師データ作成部」という一見「物」の請求項に見えるが、「部」が何を指しているか不明であるから、「教師データ作成部」がどのような物なのか当業者は理解できない。どうやら本件特許の特許権者は異物検出装置の内部構成の一つとして「教師データ作成部」を位置付けているようであるが(図1)、そもそも「部」というものがどんな「物」を意味しているが理解できないので、例え異物検出装置の内部を構成していたとしても、どの範囲の「物」であるのか、当業者といえども理解できない。
(8-2)結論
以上のことから、本件特許の請求項9に記載の発明は、ある具体的な物や方法が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるように記載されているとは言えない。よって、請求項9に記載の発明は特許法第36条第6項第2項(明確性)の要件を満たしていない。従って、本件特許は特許法第113条第4項に基づき取り消されるべきものである。」(44頁15~26行)
と主張している。
しかしながら、本件発明9である教師データ作成部は、「異物検出装置に用いる種別判定部のための教師データ作成部」とされており、少なくとも装置におけるモジュール等として理解できるものであるから、物の発明として明確なものである。
第9 令和6年2月5日付け意見書における特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、令和6年2月5日付け意見書において、
「(5)本訂正請求により新たに生じた取消理由
本訂正請求により、訂正後の請求項4及び請求項5は特許法第36条第6項第2号に規定する要件(明確性要件)を満たさなくなったと思料するので、以下に説明する。
(5-1)請求項4
請求項4に係る訂正事項による訂正後の請求項4において、種別判定ステップについて要約すると次のように記載されている。即ち、「多層ニューラルネットワークにより対象物画像を複数の画像要素に分割し、・・・・スクラップと異物のいずれであるか判定し、判定された結果を・・・判定行列として出力する」となり、「多層ニューラルネットワーク」により何をするのか明確でなく、発明が特定できないものと思料する。
少なくとも「多層ニューラルネットワーク」の次に記載されている「対象物画像を複数の画像要素に分割」することが多層ニューラルネットワークによってされるものと読めるが、画像要素に分割するのは多層ニューラルネットワークに入力するための教師データに関することであるから、何を意味しているのか当業者といえども理解できない。
従って、本件訂正請求による訂正後の請求項4は、特許法第36条第6項第2項(明確性)に規定する要件を満たしていないので、特許法第113条第4号の規定により取り消されるべきものと思料する。
(5-2)請求項5
さらに、これも上記の請求項4に係る訂正事項と同様、請求項5に係る訂正事項による訂正後の請求項5において、種別判定ステップにおいて「多層ニューラルネットワーク」により何をするのか明確でなく、発明が特定できない。少なくとも「多層ニューラルネットワークにより」の次に記載されている「対象物画像を複数の画像要素に分割」することが多層ニューラルネットワークによってされるものと読めるが、画像要素に分割するのは多層ニューラルネットワークに入力するための教師データに関することであるから、何を意味しているのか当業者といえども理解できないと思料する。
従って、本件訂正請求による訂正後の請求項5も、特許法第36条第6項第2項(明確性)に規定する要件を満たしていないので、特許法第113条第4号の規定により取り消されるべきものと思料する。」(13頁22行~14頁17行)
と主張している。
しかしながら、本件訂正後の請求項4の記載からは「画像要素に分割するのは多層ニューラルネットワークに入力するための教師データに関すること」とは特定されないから、「画像要素に分割するのは多層ニューラルネットワークに入力するための教師データに関することであるから、何を意味しているのか当業者といえども理解できない」との主張は根拠を欠くものである。
そして、本件訂正発明4は、本件訂正後の請求項4の記載どおり(例えば【0028】の「種別判定部4は、機械学習された多数のパーセプトロンからなる多層ニューラルネットワークにより構成され、図3に示されるように、対象物画像GAを複数の画像要素Eに分割した後、画像要素E毎に鉄系スクラップSと異物Fのいずれであるかを判定し、図4に示されるような、判定結果を表す判定行列LAを出力する。」のように)理解できるから、明確なものである。
また、多層ニューラルネットワークについて本件訂正発明4と同様の構成を備える本件訂正発明5についても、上記と同様に明確なものである。
以上から、特許異議申立人の上記主張は採用することができない。
第10 むすび
上記第6のとおり、本件訂正発明1、3、4、5、8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第1項第4号の規定により取り消すべきものである。
上記第8の2、3のとおり、本件発明6、7、9に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に本件発明6、7、9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
上記第2のとおり、本件特許の請求項2に係る発明は、訂正により削除された。これにより、本件特許の請求項2に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700890