特許異議申立
2024-700727
化粧動作支援システム
- 審判番号
- 2024-700727
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-148087
- 登録番号
- 7426362
- 請求日
- 2024年08月01日
- 審決日
- 2025年10月31日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】花王株式会社
- 【権利者代理人】右田 俊介
- 【異議申立人】御代川 友美
- 審判長/審判官
- 審判長 川俣 洋史
- 審判官 門 良成
- 審判官 濱本 禎広
- 分類
- P1651.113-YAA(G09B) / P1651.121-YAA(G09B) / P1651.536-YAA(G09B) / P1651.537-YAA(G09B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第36条、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7426362号発明「化粧動作支援システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7426362号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。
特許第7426362号の請求項1~10に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7426362号(以下「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、令和3年9月10日の出願であって、令和6年1月24日にその特許権の設定登録がされ、同年2月1日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和6年8月1日に、特許異議申立人 御代川 友美(以下「申立人」という。)による請求項1~10に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年 8月 1日 :申立人による特許異議の申立て
同年11月22日付け:取消理由通知書
令和7年 1月22日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 2月19日 :訂正拒絶理由通知書
同年 3月17日 :特許権者による意見書及び手続補正書の提出
同年 4月 4日 :取消理由通知書(決定の予告)
同年 6月 4日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 7月18日付け:通知書(訂正請求があった旨の通知)
同年 8月25日 :申立人による意見書の提出
なお、令和7年1月22日にされた訂正の請求は、令和7年6月4日に新たな訂正の請求がされたことにより、取り下げられたものとみなす(特許法120条の5第7項)。
第2 本件訂正請求による訂正の適否
1 訂正請求の趣旨
令和7年6月4日にされた訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)の請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正することを求めるというものである。
本件訂正請求で請求された訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
2 訂正の内容
(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「被験者の化粧動作中の手の速度を測定し、測定された前記速度が、予め定められた目標速度範囲に入っているか否かを判定し、」と記載されているのを、
「被験者がローション、乳液、クリーム、又は美容液の化粧料を塗布する化粧動作において、
前記被験者が所定量の前記化粧料を手にのせ、当該手を顔の皮膚に接触させながら複数回動かすことで前記顔に前記化粧料を塗布する前記被験者の手の速度を測定し、測定された前記速度が、予め定められた目標速度に入っているか否かを判定し、」に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2~10も同様に訂正する。
3 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項追加の有無、独立特許要件、及び訂正の単位について
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1に係る訂正は、「化粧動作中」の「動作」について、「被験者がローション、乳液、クリーム、又は美容液の化粧料を塗布する化粧動作において、 前記被験者が所定量の前記化粧料を手にのせ、当該手を顔の皮膚に接触させながら複数回動かすことで前記顔に前記化粧料を塗布する」(スペースは改行を表す。)と限定するものである。
そうすると、前記訂正事項1は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
前記アに記載したとおり、前記訂正事項1は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許第120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合するものである。
ウ 本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
前記訂正事項1について、本件特許の特許請求の範囲、明細書又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)には、【0011】に「化粧動作とは、皮膚に塗布する皮膚外用剤、化粧料、シート状のスキンケア化粧料を皮膚に貼付する動作であり、一般的にスキンケアと言われる動作であり、被験者の手に皮膚に塗布する剤をのせて、皮膚に直接塗布する動作、シート状のスキンケア化粧料を手に持って貼付する動作、皮膚に塗布する剤をコットンなどにのせて、被験者は当該コットンを手に持って塗布する動作などが含まれる。皮膚に塗布する皮膚外用剤、化粧料、シート状のスキンケア化粧料としては、例えば、ローション、乳液、クリーム、美容液、マッサージ、パック、リップクリーム、アイケアシート、口元シート、パックマスク、シート状ローション、シート状メイク落とし等のスキンケア化粧料;石鹸、クレンジングなどの洗浄料;ファンデーション、化粧下地、液状ファンデーション、油性ファンデーション、パウダーファンデーション、コンシーラー、コントロールカラー、アイシャドウ、頬紅、口紅、リップグロス、リップライナー、ボディのデコルテ用等のメイクアップ化粧料;日やけ止め乳液、日やけ止めジェル、日焼け止めクリームなどの紫外線防御化粧料が挙げられ、特にこれらに限定されるものではない。本実施形態では、乳液を被験者が手にのせて、顔の皮膚に塗布する場合の手の動きを撮影することとする。」との記載、【0017】に「3)被験者が所定の化粧剤(本実施形態では、乳液)を所定量(何れの被験者も同一の量)塗布する化粧動作を日常の夜の化粧動作で行い、その化粧動作をモーションキャプチャーにより計測を行った(図3参照)」との記載、【0019】に「50msec毎の空間移動距離から手の速度の時系列データを算出した。また、カチューシャの赤外線反射マーカ50と右手中指の赤外線反射マーカ50との相対的な空間座標変化により、所定の化粧剤を取り出す行為のデータは除外し、所定の化粧剤を顔面に塗布する際の動作データのみを手の速度の測定対象とした。」との記載、【0027】に「別の例として、顔座標ごとに手の通過頻度(顔座標ごとに手が存在した時間)を算出し、通過した頻度が高い座標は濃い色で、通過した頻度が低い座標は薄い色で表示する。このようにすることで、被験者は化粧剤の塗布むらを視覚的に把握することができる。」との記載があることから、前記訂正事項1は、本件特許明細書等に記載された範囲内のものであり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができることについて
本件においては、訂正前の全ての請求項1~10について、特許異議の申立てがされているので、前記訂正事項1において、請求項1、及び請求項1を引用する請求項2~10について、特許請求の範囲の減縮が行われていても、訂正の適否の要件として、訂正後の請求項1~10に係る発明について、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項の独立特許要件は課されない。
(2)一群の請求項について
訂正前の請求項1~10について、請求項2~10はそれぞれ請求項1を直接的または間接的に引用するものであって、上記訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~10に対応する訂正後の請求項1~10は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
4 小括
上記のとおり、訂正事項1は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。
第3 本件特許
前記第2で検討したとおり、訂正前の請求項1~10に係る訂正を認めることができるから、請求項1~10に係る特許についての発明は本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1~10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(以下、それぞれ「本件訂正発明1」~「本件訂正発明10」といい、総称して「本件訂正発明」という。)。
「【請求項1】
被験者がローション、乳液、クリーム、又は美容液の化粧料を塗布する化粧動作において、
前記被験者が所定量の前記化粧料を手にのせ、当該手を顔の皮膚に接触させながら複数回動かすことで前記顔に前記化粧料を塗布する前記被験者の手の速度を測定し、測定された前記速度が、予め定められた目標速度に入っているか否かを判定し、
前記目標速度範囲は、前記化粧動作による自律神経の活動量の変化量と相関する速度範囲と、皮膚弾力性と相関する速度範囲との少なくとも1つを含むことを特徴とする化粧動作支援システム。
【請求項2】
前記自律神経の活動量の変化量と相関する速度範囲は、副交感神経の活動量の変化量と正の相関を有する第一速度範囲と、交感神経の活動量の変化量と正の相関を有する第二速度範囲との少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の化粧動作支援システム。
【請求項3】
前記目標速度範囲は、前記自律神経の活動量の変化量と相関する速度範囲である前記第一速度範囲および前記第二速度範囲と、前記皮膚弾力性と相関する速度範囲と、を含み、
前記第一速度範囲は、前記皮膚弾力性と相関する速度範囲である第三速度範囲よりも低い速度範囲であり、前記第二速度範囲は、前記第三速度範囲よりも高い速度範囲である請求項2に記載の化粧動作支援システム。
【請求項4】
前記第三速度範囲の少なくとも一部は、10cm/sec以上22cm/sec未満である請求項3に記載の化粧動作支援システム。
【請求項5】
前記第一速度範囲の少なくとも一部は1cm/sec以上7cm/sec未満であり、
前記第二速度範囲の少なくとも一部は25cm/sec以上43cm/sec未満である請求項2から4のいずれか一項に記載の化粧動作支援システム。
【請求項6】
前記自律神経の活動量の変化量と相関する速度範囲は、前記交感神経の活動量の変化量と負の相関を有する第四速度範囲を含み、
前記第四速度範囲は、0cm/sec以上1cm/sec未満であることを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の化粧動作支援システム。
【請求項7】
前記被験者の化粧動作中の手を撮影した動画像データを取得し、
前記取得した動画像データの手の所定部位の動きを解析することにより、前記被験者の化粧動作中の手の速度を測定することを特徴とする請求項1から6何れか一項に記載の化粧動作支援システム。
【請求項8】
前記測定された前記被験者の化粧動作中の手の速度に応じて、態様の異なる音声を出力することを特徴とする請求項1から7何れか一項に記載の化粧動作支援システム。
【請求項9】
前記測定された前記被験者の化粧動作中の手の速度が前記予め定められた目標速度範囲に入っていると判定されたときと判定されなかったときとで、態様の異なる音声を出力することを特徴とする請求項1から8何れか一項に記載の化粧動作支援システム。
【請求項10】
前記動画像データは、前記被験者の化粧動作中の顔を含み、
前記取得した動画像データを解析することにより、前記被験者の化粧動作中の手の位置をさらに測定し、
前記測定された前記被験者の化粧動作中の手が通過した位置を前記被験者の顔画像に表示し、かつ当該被験者の手の速度に応じて異なる表示態様で前記位置を表示することを特徴とする請求項7に記載の化粧動作支援システム。」
第4 令和7年4月4日付けの取消理由通知(決定の予告)の概要
取消理由1.(サポート要件)本件特許の請求項1~10に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、その特許は取り消すべきものである。
第5 取消理由についての当審の判断
1 サポート要件について
(1)本件訂正発明が解決しようとする課題は、本件特許明細書等【0005】、【0007】、【0021】~【0023】の記載から、皮膚弾力性、リラックスした状態、及び心身の活動的、活発な状態のうちの一つを求めるための適切な化粧動作を判定することであって、当該課題を解決するための手段は、本件特許明細書等【0011】、【0017】~【0026】の記載から、被験者が所定量の前記化粧料を手にのせ、当該手を顔の皮膚に接触させながら複数回動かすことで前記顔に前記化粧料を塗布する前記被験者の手の速度を測定し、測定された前記速度が、化粧動作による自律神経の活動量の変化量と相関する速度範囲と、皮膚弾力性と相関する速度範囲との少なくとも1つを含む目標速度範囲に入っているか否かを判定することであると認められる。
(2)そして、前記訂正事項1により、本件訂正発明が解決しようとする課題を解決するための手段が反映された。
そうすると、本件訂正発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものではないとはいえない。
また、本件訂正発明1を引用する本件訂正発明2~10についても同様に発明の詳細な説明に記載されたものでないとはいえない。
したがって、本件訂正発明1~10は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていないとはいえないから、前記取消理由(サポート要件)により、本件特許請求の範囲の請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立人の主張について
(1)令和7年8月25日に提出された意見書において、申立人は以下のとおり主張する。
ア 「(b)化粧料の量、手を動かす方向、押圧力及び塗布時間について
・・・化粧料の量、手を動かす方向、押圧力及び塗布時間に応じて、化粧動作による自律神経の活動量の変化量、皮膚弾力性への影響度合いが異なることは技術常識であることから、本件特許明細書に記載された内容を、本件特許発明1のような、化粧料の量、手を動かす方向、押圧力、塗布時間に関してあらゆる量、方向、押圧力及び塗布時間、特に事前の試験により計測が行われていない量、方向、押圧力及び塗布時間まで拡張ないし一般化できるとはいえない。」
イ 「(c)化粧料の剤特性について
・・・化粧料の剤特性に応じて、化粧動作による自律神経の活動量の変化量、皮膚弾力性への影響度合いが異なることは技術常識であることから、本件特許明細書に記載された内容を、本件特許発明1のように、ローション、クリーム又は美容液まで拡張ないし一般化できるとはいえない。」
ウ 「(d)「手の速度」と、「前記化粧動作による自律神経の活動量の変化量と相関する速度範囲」及び「皮膚弾力性と相関する速度範囲」との関係について
・・・「前記化粧動作による自律神経の活動量の変化量と相関する速度範囲」及び「皮膚弾力性と相関する速度範囲」が、発明の詳細な説明の段落【0021】~【0023】に記載された範囲以外の範囲である場合、「化粧動作が適切な化粧動作であるかを把握することを可能とする」という本件特許発明1の目的を達成することができない。」
エ 「(e)測定された速度が目標速度範囲に入っている期間の長さについて
・・・測定された速度が目標速度範囲に入っていたとしても、その期間が極めて短い場合、化粧動作が自律神経又は皮膚弾力性に影響を及ぼさないことは明らかであり、「化粧動作が適切な化粧動作であるかを把握することを可能とする」という本件特許発明1の目的を達成することができない。」
オ 「(f)被検者への情報の通知について
・・・請求項1には、処理として「測定された前記速度が、予め定められた日標速度に入っているか否かを判定」する処理しか規定されておらず、被検者に情報を通知する処理が全く規定されていないため、「被験者に化粧動作中の手の動き(速度)が適切であるかを把握させて、被験者が化粧動作中の手の速度を目標速度で動作できるよう支援する」という本件特許発明1の目的を達成することができない。」
カ 「(g)目標速度範囲が、化粧動作による自律神経の活動量の変化量と相関しない速度範囲、又は、皮膚弾力性と相関しない速度範囲を含み得ることについて
・・・本件特許発明1には、「前記目標速度範囲は、前記化粧動作による自律神経の活動量の変化量と相関する速度範囲と、皮膚弾力性と相関する速度範囲との少なくとも1つを含む」と規定されており、目標速度範囲は、化粧動作による自律神経の活動量の変化量と相関しない速度範囲、又は、皮膚弾力性と相関しない速度範囲を含み得るため、「化粧動作が適切な化粧動作であるかを把握することを可能とする」という本件特許発明1の目的を達成することができない。」
キ 「(h)化粧動作の判定について
・・・「被験者がローション、乳液、クリーム、又は美容液の化粧料を塗布する化粧動作」を実施しているか否かを判定しなければ、「化粧動作が適切な化粧動作であるかを把握することを可能とする」という本件特許発明1の目的を達成することができない。」
ク 「(i)手の速度の測定方法について
・・・上記の測定方法と異なる測定方法で測定された手の速度が、上記の測定方法で測定された手の速度と相関する自律神経の活動量の変化量、又は、皮膚弾力性と相関する保証はない。そのため、本件特許明細書に記載された内容を、本件特許発明1のように、手の速度の測定方法を規定しないものにまで拡張ないし一般化できるとはいえない。」
ケ 「(j)化粧動作について
・・・普段行っている日常の夜の化粧動作と、慌ただしい朝の身支度における化粧動作と、落ち着かない外出先における化粧動作とで、化粧動作に要する時間、丁寧さ等が異なることは技術常識であることから、本件特許明細書に記載された内容を、本件特許発明1のような、化粧動作の状況に関してあらゆる状況まで拡張ないし一般化できるとはいえない。」
(2)申立人の主張についての検討
ア 前記主張ア、イについて
(ア)前記1(1)のとおり、本件訂正発明が解決しようとする課題は、皮膚弾力性、リラックスした状態、及び心身の活動的、活発な状態のうちの一つを求めるための適切な化粧動作を判定することであって、当該課題を解決すための手段は、被験者が所定量の前記化粧料を手にのせ、当該手を顔の皮膚に接触させながら複数回動かすことで前記顔に前記化粧料を塗布する前記被験者の手の速度を測定し、測定された前記速度が、化粧動作による自律神経の活動量の変化量と相関する速度範囲と、皮膚弾力性と相関する速度範囲との少なくとも1つを含む目標速度範囲に入っているか否かを判定することであると認められる。
(イ)当該課題を解決するための手段は、化粧料を塗布する前記被験者の手の速度に着目したものであって、手の速度以外の要因によって自律神経の活動量の変化量や皮膚弾力性に影響があるとしても、当該手の速度のみによって適切な化粧動作を判定するものであるから、本件訂正発明に、化粧料の量、手を動かす方向、押圧力及び塗布時間、化粧料の剤特性等を特定する必要はないといえる。
したがって、申立人の主張は採用できない。
イ 前記主張ウについて
前記課題を解決するための手段は、化粧料を塗布する前記被験者の手の速度を測定し、測定された前記速度が、目標速度範囲に入っているか否かを判定するものであるから、本件訂正発明の測定される速度が、発明の詳細な説明の段落【0021】~【0023】に記載された範囲であるとの特定をする必要はないといえる。
したがって、申立人の主張は採用できない。
ウ 前記主張エについて
本件訂正発明は、「測定された前記速度が、予め定められた目標速度に入っているか否かを判定」していることから、測定された速度が、予め定めた所定時間、目標速度範囲に入っているか否かを判定していることは明らかであって、本件訂正発明に、測定された速度が目標速度範囲に入っている期間の長さが規定されていなくとも、前記課題を解決するための手段が反映されているといえる。
したがって、申立人の主張は採用できない。
エ 前記主張オについて
本件訂正発明には、被検者に情報を通知する処理が規定されていなくとも、前記課題を解決するための手段が反映されているといえる。
したがって、申立人の主張は採用できない。
オ 前記主張カについて
本件訂正発明に、目標速度範囲が化粧動作による自律神経の活動量の変化量と相関しない速度範囲、又は、皮膚弾力性と相関しない速度範囲を含み得るとしても、測定された手の速度が、化粧動作による自律神経の活動量の変化量と相関する速度範囲、又は、皮膚弾力性と相関する速度範囲に入っている場合は、皮膚弾力性、リラックスした状態、及び心身の活動的、活発な状態のうちの一つを求めるための適切な化粧動作を判定することができるのであるから、前記課題を解決するための手段が反映されているといえる。
したがって、申立人の主張は採用できない。
カ 前記主張キについて
本件訂正発明は、「被験者がローション、乳液、クリーム、又は美容液の化粧料を塗布する化粧動作」を実施しているか否かを判定するか否かにかかわらず、手の速度を測定するものであるから、本件訂正発明に、「被験者がローション、乳液、クリーム、又は美容液の化粧料を塗布する化粧動作」を実施しているか否かを判定することを特定する必要はないといえる。
したがって、申立人の主張は採用できない。
キ 前記主張クについて
本件訂正発明には、手の速度の測定方法を規定しないとしても、「被験者がローション、乳液、クリーム、又は美容液の化粧料を塗布する化粧動作において、 前記被験者が所定量の前記化粧料を手にのせ、当該手を顔の皮膚に接触させながら複数回動かすことで前記顔に前記化粧料を塗布する前記被験者の手の速度を測定」することが規定されているから、前記課題を解決するための手段が反映されているといえる。
したがって、申立人の主張は採用できない。
ク 前記主張ケについて
本件訂正発明には、化粧動作の状況を特定しないとしても、「被験者がローション、乳液、クリーム、又は美容液の化粧料を塗布する化粧動作において、 前記被験者が所定量の前記化粧料を手にのせ、当該手を顔の皮膚に接触させながら複数回動かすことで前記顔に前記化粧料を塗布する前記被験者の手の速度を測定」することが規定されているから、前記課題を解決するための手段が反映されているといえる。
したがって、申立人の主張は採用できない。
3 小括
以上のとおり、本件訂正発明1~10は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たさないとはいえないから、取消理由により、本件特許請求の範囲の請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。
第6 令和7年4月4日付けの取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった異議申立ての理由の概要
1 申立理由1-1(甲第1号証を主引用例とする新規性)
本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法29条1項3号に該当するから、請求項1に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 申立理由1-2(甲第2号証を主引用例とする新規性)
本件特許の請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であって、特許法29条1項3号に該当するから、請求項1に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 申立理由1-3(甲第3号証を主引用例とする新規性)
本件特許の請求項1に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であって、特許法29条1項3号に該当するから、請求項1に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
4 申立理由2-1(甲第1号証を主引用例とする進歩性)
本件特許の請求項1~10に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証、及び甲第4~11号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~10に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
5 申立理由2-2(甲第2号証を主引用例とする進歩性)
本件特許の請求項1~7、10に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証、及び甲第4~11号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~10に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
6 申立理由2-3(甲第3号証を主引用例とする進歩性)
本件特許の請求項1~6、8、9に係る発明は、甲第3号証、及び甲第4~11号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~10に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
7 申立理由3(明確性要件)
本件特許発明1~10は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、本件請求項1~10に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。
8 申立理由4(サポート要件)
本件特許発明4~6は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、本件請求項1~10に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。
9 申立理由5(実施可能要件)
本件特許発明1~10は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。
第7 令和7年4月4日付けの取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった異議申立ての理由について
1 各甲号証
(1)甲第1号証
本願の出願前に発行された国際公開第2021/131852号(以下「甲1」という。)には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「ユーザーPが、乳液、クリーム、又は美容液の化粧料を塗布する化粧動作において([0013])、
ユーザーPが、センサ機能、通信機能等を備える化粧料の塗布が可能なデバイス10を用いて、実際にエリア41に化粧料の塗布を施すことにより、塗布範囲、塗布方向、塗布圧力、塗布速度、塗布量等を測定して得られる情報を塗布動作として扱い、塗布動作を、予め定められた塗布条件と照合または対比し、塗布動作が塗布条件を満たすか否かを判定する([0040]、[0041])、
化粧支援装置。」
(2)甲第2号証
本願の出願前に発行された国際公開第2020/084842号(以下「甲2」という。)には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。
「メーク動画に写る人物の化粧動作中の手の座標・速度と、顔の座標・速度とを取得し([0023])、
メーク動画に写る人物の化粧動作を定量化し([0026])、
メークテクニックを学びたいユーザの化粧動作とメーキャップアーティスト等のメークの上手な人物の化粧動作とを定量化して比較する([0046])、
情報処理システム。」
(3)甲第3号証
本願の出願前に発行された中国特許出願公開第112801859号明細書(以下「甲3」という。)には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されている。
「ユーザのメイクアッププロセスを監視するための監視ユニットであって、
所定時間内にユーザの第1の手の動きデータを収集し、前記第1の手の動きデータを動き認識モデルに入力して、前記ユーザの第1の手の姿勢を取得するステップと、前記第一のハンドジェスチャーと前記標準ハンドジェスチャーを比較して類似度を取得し、最も高い類似度を有する対応する標準ハンドジェスチャーとそのメイクアップサブステップを選択し、前記メイクアップサブステップを前記ユーザーの現在のメイクアップ操作であると決定し、前記メイクアップサブステップの後続の標準ハンドジェスチャーを決定し、前記ユーザーの第二の手の動きデータを収集するステップと、第2の手の動きデータを動き認識モデルに入力し、前記ユーザの第2の手の姿勢を取得するステップと、前記第2の手の姿勢が前記後続の標準手の姿勢と一致するか否かを判定するステップ、を含む監視ユニット、
を有する、美容メイクアップ誘導機能付きメイクアップミラーシステム(請求項1、7)。」
2 申立理由1-1(甲1を主引用例とする新規性)について
(1)本件訂正発明1について
ア 対比
本件訂正発明1と甲1発明は、次の一致点で一致し、相違点において相違する。
[一致点]
「被験者が乳液、クリーム、又は美容液の化粧料を塗布する化粧動作において、
前記被験者が顔に前記化粧料を塗布する前記被験者の手の速度を測定する化粧動作支援システム。」
[相違点1]
本件訂正発明1の「測定された前記速度」が、「前記被験者が所定量の前記化粧料を手にのせ、当該手を顔の皮膚に接触させながら複数回動かすことで前記顔に前記化粧料を塗布する前記被験者の手の速度」であるのに対し、甲1発明は、ユーザーPが、センサ機能、通信機能等を備える化粧料の塗布が可能なデバイス10を用いた塗布速度である点。
[相違点2]
本件訂正発明1が、「測定された前記速度が、予め定められた目標速度に入っているか否かを判定し、 前記目標速度範囲は、前記化粧動作による自律神経の活動量の変化量と相関する速度範囲と、皮膚弾力性と相関する速度範囲との少なくとも1つを含む」ものであるのに対し、甲1発明は、塗布動作を、予め定められた塗布条件と照合または対比し、塗布動作が塗布条件を満たすか否かを判定する点。
イ 判断
前記アのとおり、本件訂正発明1と甲1発明との間には、実質的な相違点がある。
よって、本件訂正発明1は、甲1発明ではない。
ウ 申立人の主張について
(1)令和7年8月25日に提出された意見書において、申立人は以下のとおり主張する。
ア 「上記6の通り、甲第1号証には、ユーザーが塗布デバイスを持って化粧料を塗布することが記載されている。後述する甲第2号証にユーザが手を用いて化粧料を塗布することが記載されているように、ユーザーが化粧料を塗布する際に、自身の手を使用して塗布することは従来から当然になされていることであり、出願時の技術常識であったことが明らかである。したがって、甲第1号証において、ユーザーが手を用いて化粧料を塗布することは、上記の技術常識を参酌することにより当業者が導き出せる事項である。
従って、甲第1号証には、「被験者がローション、乳液、クリーム、又は美容液の化粧料を塗布する化粧動作において、前記被験者が所定量の前記化粧料を手にのせ、当該手を顔の皮膚に接触させながら複数回動かすことで前記顔に前記化粧料を塗布する前記被験者の手の速度を測定し、測定された前記速度が、予め定められた目標速度に入っているか否かを判定し」(構成要件1A)、が実質的に記載されている。」
イ 「上記15の通り、甲第1号証には、塗布条件に塗布速度が含まれることが記載されている。後述する甲第4号証~甲第6号証、甲第9号証~甲第10号証に、手の速度と自律神経の活動量の変化量とが相関する点が記載され(特に甲第6号証に、化粧動作における手の速度と自律神経の活動量の変化量とが相関する点が記載され)、後述する甲第7号証~甲第8号証、甲第11号証に、手の速度と皮膚弾力性とが相関する点が記載されているように、出願時に周知の化粧動作における手の速度分布に、化粧動作による自律神経の活動量の変化量に創刊する速度範囲や皮膚弾力性に相関する速度範囲が含まれることは、出願時の技術常識であったことが明らかである。したがって、甲第1号証における塗布速度に関する塗布条件に上記の速度範囲が含まれていることは、上記の技術常識を参酌することにより当業者が導き出せる事項である。
従って、甲第1号証には、「前記目標速度範囲は、前記化粧動作による自律神経の活動量の変化量と相関する速度範囲と、皮膚弾力性と相関する速度範囲との少なくとも1つを含む」(構成要件1B)、が実質的に記載されている。」
エ 申立人の主張についての検討
(ア)前記主張アについて
ユーザーが化粧料を塗布する際に、自身の手を使用して塗布することは従来から当然になされていることであり、出願時の技術常識であったことが明らかであるとしても、甲1発明の「センサ機能、通信機能等を備える化粧料の塗布が可能なデバイス10を用いて、実際にエリア41に化粧料の塗布を施すこと」が、実質的に、「自身の手を使用して化粧料を塗布すること」に相当するものであるとはいえない。
よって、申立人の主張は採用できない。
(イ)前記主張イについて
手の速度分布に、化粧動作による自律神経の活動量の変化量に創刊する速度範囲や皮膚弾力性に相関する速度範囲が含まれることが、出願時の技術常識であったとしても、甲1発明は、塗布動作を、予め定められた塗布条件と照合または対比し、塗布動作が塗布条件を満たすか否かを判定するものにとどまり、「予め定められた塗布条件」として、塗布速度を採用し、かつ、当該条件に、「化粧動作による自律神経の活動量の変化量と相関する速度範囲と、皮膚弾力性と相関する速度範囲との少なくとも1つ」が含まれるとは認められない。
よって、申立人の主張は採用できない。
オ 小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、特許法29条1項の規定により、特許を受けることができないものということはできない。
3 申立理由1-2(甲2を主引用例とする新規性)について
(1)本件訂正発明1について
ア 対比
本件訂正発明1と甲2発明は、次の一致点で一致し、少なくとも以下の相違点において相違する。
[一致点]
「記被験者が顔に前記化粧料を塗布する前記被験者の手の速度を測定する化粧動作支援システム。」
[相違点3]
本件訂正発明1の「測定された前記速度」が、「前記被験者が所定量の前記化粧料を手にのせ、当該手を顔の皮膚に接触させながら複数回動かすことで前記顔に前記化粧料を塗布する前記被験者の手の速度」であるのに対し、甲2発明は、メーク動画に写る人物の化粧動作中の手の速度である点。
[相違点4]
本件訂正発明1が、「測定された前記速度が、予め定められた目標速度に入っているか否かを判定し、 前記目標速度範囲は、前記化粧動作による自律神経の活動量の変化量と相関する速度範囲と、皮膚弾力性と相関する速度範囲との少なくとも1つを含む」ものであるのに対し、甲2発明は、メークテクニックを学びたいユーザの化粧動作とメーキャップアーティスト等のメークの上手な人物の化粧動作とを定量化して比較する点。
イ 判断
前記アのとおり、本件訂正発明1と甲2発明との間には、実質的な相違点がある。
よって、本件訂正発明1は、甲2発明ではない。
ウ 小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、特許法29条1項の規定により、特許を受けることができないものということはできない。
3 申立理由1-3(甲3を主引用例とする新規性)について
(1)本件訂正発明1について
ア 対比
本件訂正発明1と甲3発明は、次の一致点で一致し、少なくとも以下の相違点において相違する。
[一致点]
「前記被験者が顔に前記化粧料を塗布する前記被験者の手を測定する化粧動作支援システム。」
[相違点5]
本件訂正発明1の「測定」の対象が、「前記被験者が所定量の前記化粧料を手にのせ、当該手を顔の皮膚に接触させながら複数回動かすことで前記顔に前記化粧料を塗布する前記被験者の手の速度」であるのに対し、甲3発明は、ユーザの手の動きである点。
[相違点6]
本件訂正発明1が、「測定された前記速度が、予め定められた目標速度に入っているか否かを判定し、 前記目標速度範囲は、前記化粧動作による自律神経の活動量の変化量と相関する速度範囲と、皮膚弾力性と相関する速度範囲との少なくとも1つを含む」ものであるのに対し、甲3発明は、手の姿勢が標準の姿勢と一致するか否かを判定する点。
イ 判断
前記アのとおり、本件訂正発明1と甲3発明との間には、実質的な相違点がある。
よって、本件訂正発明1は、甲3発明ではない。
ウ 小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、特許法29条1項の規定により、特許を受けることができないものということはできない。
4 申立理由2-1(甲1を主引用例とする進歩性)について
(1)本件訂正発明1について
ア 相違点についての判断
(ア)相違点1について
甲2発明は、メーク動画に写る人物の化粧動作中の手の速度を取得するものであるが、甲1発明は、センサ機能を有するデバイス10を用いて塗布速度を測定することが前提となる発明であるところ、当該デバイス10を使用せずに手の速度を測定する動機付けがないばかりか、デバイス10を使用しないことは、阻害要因があるといえる。
(イ)相違点2について
化粧動作における手の速度分布に、化粧動作による自律神経の活動量の変化量に相関する速度範囲や皮膚弾力性に相関する速度範囲が含まれることが、出願時の技術常識であるとしても、塗布動作を、予め定められた塗布条件と照合または対比し、塗布動作が塗布条件を満たすか否かを判定する甲1発明において、塗布速度に対応する塗布条件を設定した上で、さらに、当該塗布条件として、「化粧動作による自律神経の活動量の変化量と相関する速度範囲」の観点と、「皮膚弾力性と相関する速度範囲」の観点をもって、目標値を設定する動機付けがないといえる。
イ 小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲1発明、甲2発明、甲第4~11号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできないから、本件訂正発明1は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないものということはできない。
(2)本件訂正発明2~10について
本件訂正発明2~10は、本件訂正発明1の発明特定事項にさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、前記(1)と同様の理由により、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないものということはできない。
5 申立理由2-2(甲2を主引用例とする進歩性)について
(1)本件訂正発明1について
ア 相違点についての判断
事案に鑑み相違点4について検討する。
甲2発明は、メーク動画に写る人物の化粧動作を定量化し、メークテクニックを学びたいユーザの化粧動作とメーキャップアーティスト等のメークの上手な人物の化粧動作とを定量化して比較するものであるところ、手の速度を定量化せずに目標値と比較した上で、さらに、「化粧動作による自律神経の活動量の変化量と相関する速度範囲」の観点と、「皮膚弾力性と相関する速度範囲」の観点をもって、目標値を設定する動機付けがないといえる。
イ 小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲2発明、甲第4~11号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできないから、本件訂正発明1は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないものということはできない。
(2)本件訂正発明2~7、10について
本件訂正発明2~7、10は、本件訂正発明1の発明特定事項にさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、前記(1)と同様の理由により、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないものということはできない。
5 申立理由2-3(甲3を主引用例とする進歩性)について
(1)本件訂正発明1について
ア 相違点についての判断
事案に鑑み相違点6について検討する。
甲3発明は、手の姿勢が標準の姿勢と一致するか否かを判定するものであるところ、手の速度を目標値と比較した上で、さらに、「化粧動作による自律神経の活動量の変化量と相関する速度範囲」の観点と、「皮膚弾力性と相関する速度範囲」の観点をもって、目標値を設定する動機付けがないといえる。
イ 小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲3発明、甲第4~11号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできないから、本件訂正発明1は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないものということはできない。
(2)本件訂正発明2~6、8、9について
本件訂正発明2~6、8、9は、本件訂正発明1の発明特定事項にさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、前記(1)と同様の理由により、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないものということはできない。
6 申立理由3(明確性要件)について
(1)本件訂正発明1~10について
ア 前記第5の1(1)のとおり、本件訂正発明が解決しようとする課題は、皮膚弾力性、リラックスした状態、及び心身の活動的、活発な状態のうちの一つを求めるための適切な化粧動作を判定することであって、当該課題を解決すための手段は、被験者が所定量の前記化粧料を手にのせ、当該手を顔の皮膚に接触させながら複数回動かすことで前記顔に前記化粧料を塗布する前記被験者の手の速度を測定し、測定された前記速度が、化粧動作による自律神経の活動量の変化量と相関する速度範囲と、皮膚弾力性と相関する速度範囲との少なくとも1つを含む目標速度範囲に入っているか否かを判定することであると認められる。
イ そして、前記第5の2(2)ア(イ)のとおり、当該課題を解決するための手段は、化粧料を塗布する前記被験者の手の速度に着目したものであって、手の速度以外の要因によって自律神経の活動量の変化量や皮膚弾力性に影響があるとしても、当該手の速度のみによって適切な化粧動作を判定するものであるから、本件訂正発明に、化粧料の量、手を動かす方向、押圧力及び塗布時間、化粧料の剤特性等を特定する必要はないといえるし、化粧料の量、手を動かす方向、押圧力及び塗布時間、化粧料の剤特性、その他の特定がないとしても、技術的意味は明確であるといえる。
(2)本件訂正発明4~10について
「第三速度範囲」の上限及び下限が特定されていないとしても、「皮膚弾力性と相関する速度範囲である」ことが特定されており、かつ、「少なくとも一部は、10cm/sec以上22cm/sec未満である」ことが特定されているので、速度範囲の条件としては明確に把握できるといえる。
(3)本件訂正発明5~10について
「第一速度範囲」、「第二速度範囲」の上限及び下限が特定されていないとしても、「自律神経の活動量の変化量と相関する速度範囲である」ことが特定されており、かつ、「前記第一速度範囲の少なくとも一部は1cm/sec以上7cm/sec未満であり、 前記第二速度範囲の少なくとも一部は25cm/sec以上43cm/sec未満である」ことが特定されているので、速度範囲の条件としては明確に把握できるといえる。
(4)小括
以上のとおり、本件訂正発明1~10は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たさないとはいえないから、本件特許請求の範囲の請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。
7 申立理由4(サポート要件)について
(1)本件訂正発明4~6について
前記第5の2(2)ア(イ)のとおり、当該課題を解決するための手段は、化粧料を塗布する前記被験者の手の速度に着目したものであって、手の速度以外の要因によって自律神経の活動量の変化量や皮膚弾力性に影響があるとしても、当該手の速度のみによって適切な化粧動作を判定するものであるから、本件訂正発明に、化粧料の量、手を動かす方向、押圧力及び塗布時間、化粧料の剤特性、具体的な目標速度範囲を特定する必要はないといえる。
(2)小括
以上のとおり、本件訂正発明4~6は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たさないとはいえないから、本件特許請求の範囲の請求項4~6に係る特許を取り消すことはできない。
8 申立理由5(実施可能要件)について
(1)本件訂正発明1~10について
本件特許明細書等の【0017】~【0018】等の記載によると、速度成分の速度範囲と、試験項目との相関係数を示すグラフを作成することができるため、本件訂正発明1の「前記化粧動作による自律神経の活動量の変化量と相関する速度範囲」を決定することができるといえる。
また、「日常の夜の化粧動作」は、【0017】の試験内容において条件を特定しておらず、【0018】から、手の速度を計測しさえすればよいと理解できるから、「日常の夜の化粧動作」がどのような特徴を有するものであるのかを特定する必要はないといえる。
(2)小括
以上のとおり、本件訂正発明1~10は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たさないとはいえないから、本件特許請求の範囲の請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。
第8 むすび
以上のとおり、本件訂正請求は認められるから、特許第7426362号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正後の請求項[1-10]について訂正することを認める。
そして、請求項1~10に係る発明の特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に請求項1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700727