特許異議申立
2023-700461
偽造判定方法、プログラム、記録媒体および偽造判定装置
- 審判番号
- 2023-700461
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-099164
- 登録番号
- 7168194
- 請求日
- 2023年05月01日
- 審決日
- 2024年05月31日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】NECソリューションイノベータ株式会社
- 【権利者代理人】辻丸 光一郎
- 【権利者代理人】松縄 正登
- 【権利者代理人】伊佐治 創
- 【権利者代理人】安 修央
- 【異議申立人】渡辺 陽子
- 審判長/審判官
- 審判長 千葉 輝久
- 審判官 渡辺 努
- 審判官 片岡 利延
- 分類
- P1651.113-YAA(G06T) / P1651.121-YAA(G06T) / P1651.1 -YAA(G06T) / P1651.536-YAA(G06T) / P1651.537-YAA(G06T) / P1651.851-YAA(G06T) / P1651.853-YAA(G06T) / P1651.857-YAA(G06T)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第126条第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第126条第6項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7168194号発明「偽造判定方法、プログラム、記録媒体および偽造判定装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7168194号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕、10について訂正することを認める。
特許第7168194号の請求項1、3、4、6~10に係る特許を維持する。
特許第7168194号の請求項2、5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7168194号の請求項1~10に係る特許についての出願は、平成30年5月23日の出願であって、令和4年10月31日付けでその特許権の設定登録(特許掲載公報発行日 令和4年11月9日)がされた。
これに対して、令和5年5月1日に特許異議申立人渡辺陽子より請求項1~10に対して特許異議の申立てがなされた。
その後の手続の経緯は以下のとおりである。
令和5年 9月12日付け 取消理由通知
同年10月27日 意見書提出及び訂正請求(特許権者)
同年12月19日 意見書提出(特許異議申立人)
令和6年 2月 9日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年 3月29日 意見書提出及び訂正請求(特許権者)
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和6年3月29日の訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、「特許第7168194号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正することを求める。」というものであり、その訂正の内容は、以下の訂正事項のとおりである。
なお、下線は訂正箇所である。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記偽造特徴情報は、真正身分証における写真領域と異なる特徴情報であり、前記真正身分証の規定の写真枠からのずれ、偽写真の貼り付けによる変化、前記写真領域における割印の有無、前記割印の形状、前記写真領域におけるエンボスの有無、および前記エンボスの形状からなる群から選択された少なくとも一つの情報である」
と記載されているのを、
「前記偽造特徴情報は、真正身分証における写真領域と異なる特徴情報であり、前記真正身分証の規定の写真枠からのずれ、偽写真の貼り付けによる変化、前記写真領域における割印の有無、および前記割印の形状からなる群から選択された少なくとも一つの情報であり、
前記偽写真の貼り付けによる変化の情報が、偽写真の貼り付けによる二重の端部の発生、写真の重なりによる段差の発生、および写真の重なりによる影の変化の発生からなる群から選択された少なくとも一つの情報である」
に訂正する。(請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項4および6から9も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、
「前記判定部は、前記被判定身分証の写真領域について、前記二重の端部の発生、前記段差の発生、および前記影の変化の発生からなる群から選択された少なくとも一つの発生を確認し、少なくとも一つが発生した場合、前記偽造特徴情報を含むと判定する、請求項2記載の偽造判定方法。」
と記載されているのを、
「画像取得工程と、写真領域抽出工程と、判定工程とを有し、
前記画像取得工程は、
写真を含む被判定身分証の画像を取得し、
前記写真領域抽出工程は、
前記被判定身分証の画像から、前記被判定身分証における写真領域を抽出し、
前記判定工程は、
前記被判定身分証の前記写真領域において、偽写真の貼り付けを示す偽造特徴情報が含まれるかを判定し、前記偽造特徴情報が含まれる場合に、前記被判定身分証が偽造の身分証であると判定し、
前記偽造特徴情報は、真正身分証における写真領域と異なる特徴情報であり、前記真正身分証の規定の写真枠からのずれ、偽写真の貼り付けによる変化、前記写真領域における割印の有無、前記割印の形状、前記写真領域におけるエンボスの有無、および前記エンボスの形状からなる群から選択された少なくとも一つの情報であり、
前記偽写真の貼り付けによる変化の情報が、偽写真の貼り付けによる二重の端部の発生、写真の重なりによる段差の発生、および写真の重なりによる影の変化の発生からなる群から選択された少なくとも一つの情報であり、
前記判定工程は、前記被判定身分証の写真領域について、前記二重の端部の発生、前記段差の発生、および前記影の変化の発生からなる群から選択された少なくとも一つの発生を確認し、少なくとも一つが発生した場合、前記偽造特徴情報を含むと判定する、ことを特徴とする、偽造判定方法。」
に訂正する。(請求項3の記載を直接的または間接的に引用する請求項4および6から9も同様に訂正する。)
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、
「請求項1から3のいずれか一項に」
と記載されているのを、
「請求項1または3のいずれか一項に」
に訂正する。(請求項4の記載を直接的または間接的に引用する請求項6から9も同様に訂正する。)
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に、
「請求項1から5のいずれか一項に」
と記載されているのを、
「請求項1、3および4のいずれか一項に」
に訂正する。(請求項6の記載を直接的または間接的に引用する請求項7から9も同様に訂正する。)
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に、
「請求項1から6のいずれか一項に」
と記載されているのを、
「請求項1、3、4および6のいずれか一項に」
に訂正する。(請求項7の記載を直接的または間接的に引用する請求項8から9も同様に訂正する。)
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に、
「請求項1から7のいずれか一項に」
と記載されているのを、
「請求項1、3、4、6および7のいずれか一項に」
に訂正する。(請求項8の記載を引用する請求項9も同様に訂正する。)
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項10に、
「前記偽造特徴情報は、真正身分証における写真領域と異なる特徴情報であり、前記真正身分証の規定の写真枠からのずれ、偽写真の貼り付けによる変化、前記写真領域における割印の有無、前記割印の形状、前記写真領域におけるエンボスの有無、および前記エンボスの形状からなる群から選択された少なくとも一つの情報である」
と記載されているのを、
「前記偽造特徴情報は、真正身分証における写真領域と異なる特徴情報であり、前記真正身分証の規定の写真枠からのずれ、偽写真の貼り付けによる変化、前記写真領域における割印の有無、および前記割印の形状からなる群から選択された少なくとも一つの情報であり、
前記偽写真の貼り付けによる変化の情報が、偽写真の貼り付けによる二重の端部の発生、写真の重なりによる段差の発生、および写真の重なりによる影の変化の発生からなる群から選択された少なくとも一つの情報である」
に訂正する。
2 訂正の適否についての判断
(1)一群の請求項1~9について
ア 一群の請求項
訂正前の請求項2~9は、訂正前の請求項1を直接もしくは間接に引用しており、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~9に対応する訂正後の請求項1~9は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
イ 訂正事項1について
(ア)訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「偽造特徴情報」について「前記真正身分証の規定の写真枠からのずれ、偽写真の貼り付けによる変化、前記写真領域における割印の有無、前記割印の形状、前記写真領域におけるエンボスの有無、および前記エンボスの形状からなる群から選択された少なくとも一つの情報」を「前記真正身分証の規定の写真枠からのずれ、偽写真の貼り付けによる変化、前記写真領域における割印の有無および前記割印の形状からなる群から選択された少なくとも一つの情報」にすることにより、択一的記載の要素の削除をするものであり、また、「偽写真の貼り付けによる変化の情報」が、「偽写真の貼り付けによる二重の端部の発生、写真の重なりによる段差の発生、および写真の重なりによる影の変化の発生からなる群から選択された少なくとも一つの情報である」ことに限定したものである。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
明細書の【0025】には、以下の記載がある。
なお、下線は、強調のために当審で付したものである。
【0025】
判定部13は、前記写真領域において、偽写真の貼り付けを示す偽造特徴情報が含まれるかを判定する。前記偽造特徴情報は、真正身分証における写真領域と異なる特徴情報であり、例えば、前記真正身分証の規定の写真枠からのずれ、偽写真の貼り付けによる変化、前記写真領域における割印の有無、前記割印の形状、前記写真領域におけるエンボスの有無、および前記エンボスの形状があげられる。前記偽写真の貼り付けによる変化の情報は、例えば、偽写真の貼り付けによる同一方向における二重の端部の発生、角部における二重の端部の発生、写真の重なりによる段差の発生、および写真の重なりによる影の変化の発生の情報があげられる。前記影の変化は、具体的には、例えば、前記偽写真の浮きによる影の変化、および写真の厚みが増すことによる影の変化があげられる。
以上の記載より、願書に添付した明細書には、
「前記偽造特徴情報は、真正身分証における写真領域と異なる特徴情報であり、前記真正身分証の規定の写真枠からのずれ、偽写真の貼り付けによる変化、前記写真領域における割印の有無、および前記割印の形状からなる群から選択された少なくとも一つの情報であり、
前記偽写真の貼り付けによる変化の情報が、偽写真の貼り付けによる二重の端部の発生、写真の重なりによる段差の発生、および写真の重なりによる影の変化の発生からなる群から選択された少なくとも一つの情報である」が記載されているものである。
したがって、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)から明らかなように、訂正事項1に係る訂正は、発明特定事項を限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 訂正事項2について
(ア)訂正の目的
訂正事項2は、請求項を削除する訂正であるから、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、請求項を削除する訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
エ 訂正事項3について
(ア)訂正の目的
訂正前の請求項3は、請求項2を引用し、訂正前の請求項2は、請求項1を引用する発明であった。
訂正事項3により、他の請求項の記載を引用する請求項3の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとし、
「偽造特徴情報」について「前記真正身分証の規定の写真枠からのずれ、偽写真の貼り付けによる変化、前記写真領域における割印の有無、前記割印の形状、前記写真領域におけるエンボスの有無、および前記エンボスの形状からなる群から選択された少なくとも一つの情報」を「前記真正身分証の規定の写真枠からのずれ、偽写真の貼り付けによる変化、前記写真領域における割印の有無および前記割印の形状からなる群から選択された少なくとも一つの情報」にすることにより、択一的記載の要素の削除を行い、
「前記判定部」の前に「判定部」がないため、明瞭でない記載であったのを、「判定工程」を指すことが明らかであることから「前記判定工程」と訂正するものである。
したがって、訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、同条同項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」、同条同項ただし書第4号に掲げる「請求項間の引用関係の解消」を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記イ(イ)での検討と同様に、明細書の【0025】の記載より、当該訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)から明らかなように、訂正事項3に係る訂正は、発明特定事項を限定し、明瞭でない記載の釈明をし、請求項間の引用関係の解消をするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
オ 訂正事項4について
(ア)訂正の目的
多数項を引用している請求項4の引用請求項を一部削除する(「請求項1から3」から「請求項1または3」とする)訂正である訂正事項4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、引用請求項を一部削減する訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
カ 訂正事項5について
(ア)訂正の目的
訂正事項5は、請求項を削除する訂正であるから、訂正事項5に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項5は、請求項を削除する訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
キ 訂正事項6~8について
上記オ(ア)と同様に、多数項を引用している請求項6~8の引用請求項を一部削除する訂正である訂正事項6~8に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
上記オ(イ)と同様に、訂正事項6~8は、引用請求項を一部削減する訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(2)請求項10について
ア 訂正事項9について
(ア)訂正の目的
訂正事項9は、訂正前の請求項10の「偽造特徴情報」について「前記真正身分証の規定の写真枠からのずれ、偽写真の貼り付けによる変化、前記写真領域における割印の有無、前記割印の形状、前記写真領域におけるエンボスの有無、および前記エンボスの形からなる群から選択された少なくとも一つの情報」を「前記真正身分証の規定の写真枠からのずれ、偽写真の貼り付けによる変化、前記写真領域における割印の有無および前記割印の形状からなる群から選択された少なくとも一つの情報」にすることにより、択一的記載の要素の削除をするものであり、また、「偽写真の貼り付けによる変化の情報」が、「偽写真の貼り付けによる二重の端部の発生、写真の重なりによる段差の発生、および写真の重なりによる影の変化の発生からなる群から選択された少なくとも一つの情報である」ことに限定したものである。
したがって、訂正事項9に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記(1)イ(イ)での検討と同様に、明細書の【0025】の記載より、当該訂正事項9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)から明らかなように、訂正事項9に係る訂正は、発明特定事項を限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(3)訂正に関する特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、令和5年12月19日に提出した意見書において、訂正前の「判定部」は、「前記被判定身分証の前記写真領域において、偽写真の貼り付けを示す偽造特徴情報が含まれるかを判定し、前記偽造特徴情報が含まれる場合に、前記被判定身分証が偽造の身分証であると判定する」(請求項10)、物の構成であるのに対し、訂正後の「判定工程」は「前記被判定身分証の前記写真領域において、偽写真の貼り付けを示す偽造特徴情報が含まれるかを判定し、前記偽造特徴情報が含まれる場合に、前記被判定身分証が偽造の身分証であると判定」する(請求項1)、処理・作業・行為の手順であり、両者が種類の異なる概念であること、物の概念を処理・作業・行為の手順の概念に拡張することに該当するので、「判定部」を「判定工程」に訂正しようとする訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正に相当する旨の主張をしている。(令和5年12月19日に提出した意見書9、10頁「(3-3)訂正要件違反について」)
しかし、請求項3は請求項10を引用する発明ではなく、また、訂正前の「前記判定部」との記載から、当該記載よりも後の記載である請求項10の「判定部」を指すと考えることはできない。
そして、請求項3は、偽造判定方法に関する発明であって、当該記載の前に「判定工程」との記載はあるものの「判定部」との記載はないことから、「前記判定部」との記載により、発明が明瞭でないものとなっている。
そうすると、「前記判定部」は、当該記載よりも前に記載されている「判定工程」を指すと考え、発明を明瞭にするために訂正したと考えるのが自然である。
したがって、特許異議申立人の主張を採用することはできない。
(4)まとめ
以上のとおり、訂正前の請求項〔1~9〕に対応する訂正後の請求項〔1~9〕は、特許法第120条の5第4項に規定される「一群の請求項」である。
また、本件訂正請求の訂正事項1~10は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、同条同項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」、同条同項ただし書第4号に掲げる「請求項間の引用関係の解消」を目的とするものであって、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
したがって、特許請求の範囲の請求項の記載を、訂正事項1~10のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正することを認める。
第3 訂正後の請求項1~10に係る発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~10に係る発明(以下、「本件発明1」などという。)は、その特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
なお、記号A~Eは、説明のために当審で付したものである。
【請求項1】(本件発明1)
A 画像取得工程と、写真領域抽出工程と、判定工程とを有し、
B 前記画像取得工程は、
写真を含む被判定身分証の画像を取得し、
C 前記写真領域抽出工程は、
前記被判定身分証の画像から、前記被判定身分証における写真領域を抽出し、
D 前記判定工程は、
D1 前記被判定身分証の前記写真領域において、偽写真の貼り付けを示す偽造特徴情報が含まれるかを判定し、
D2 前記偽造特徴情報が含まれる場合に、前記被判定身分証が偽造の身分証であると判定し、
D3 前記偽造特徴情報は、真正身分証における写真領域と異なる特徴情報であり、前記真正身分証の規定の写真枠からのずれ、偽写真の貼り付けによる変化、前記写真領域における割印の有無、および前記割印の形状からなる群から選択された少なくとも一つの情報であり、
D4 前記偽写真の貼り付けによる変化の情報が、偽写真の貼り付けによる二重の端部の発生、写真の重なりによる段差の発生、および写真の重なりによる影の変化の発生からなる群から選択された少なくとも一つの情報であることを特徴とする
E 偽造判定方法。
【請求項2】(削除)
【請求項3】(本件発明3)
画像取得工程と、写真領域抽出工程と、判定工程とを有し、
前記画像取得工程は、
写真を含む被判定身分証の画像を取得し、
前記写真領域抽出工程は、
前記被判定身分証の画像から、前記被判定身分証における写真領域を抽出し、
前記判定工程は、
前記被判定身分証の前記写真領域において、偽写真の貼り付けを示す偽造特徴情報が含まれるかを判定し、前記偽造特徴情報が含まれる場合に、前記被判定身分証が偽造の身分証であると判定し、
前記偽造特徴情報は、真正身分証における写真領域と異なる特徴情報であり、前記真正身分証の規定の写真枠からのずれ、偽写真の貼り付けによる変化、前記写真領域における割印の有無、および前記割印の形状からなる群から選択された少なくとも一つの情報であり、
前記偽写真の貼り付けによる変化の情報が、偽写真の貼り付けによる二重の端部の発生、写真の重なりによる段差の発生、および写真の重なりによる影の変化の発生からなる群から選択された少なくとも一つの情報であり、
前記判定工程は、前記被判定身分証の写真領域について、前記二重の端部の発生、前記段差の発生、および前記影の変化の発生からなる群から選択された少なくとも一つの発生を確認し、少なくとも一つが発生した場合、前記偽造特徴情報を含むと判定する、ことを特徴とする、偽造判定方法。
【請求項4】(本件発明4)
前記判定工程において、前記写真領域における写真端部の外側の影が、一重貼りの写真端部の外側の影よりも幅広の影が確認された場合、および、前記写真領域における写真端部において、印刷の写真では発生しない影が発生していると確認された場合、影の変化の発生であるとして、前記偽造特徴情報を含むと判定する、請求項1または3のいずれか一項に記載の偽造判定方法。
【請求項5】(削除)
【請求項6】(本件発明6)
さらに、種別判定工程を有し、
前記種別判定工程において、前記被判定身分証の画像において、身分証の種類に紐づけられた前記身分証の識別情報を検出し、前記識別情報が検出された場合に、前記被判定身分証が、前記検出された識別情報が紐づけられた身分証の種類に該当すると判定する、請求項1、3、および4のいずれか一項に記載の偽造判定方法。
【請求項7】(本件発明7)
さらに、偽造特徴情報取得工程を有し、
前記偽造特徴情報取得工程において、前記真正身分証の画像と、偽造された身分証の画像とを比較することにより、前記偽造特徴情報を取得する、請求項1、3、4および6のいずれか一項に記載の偽造判定方法。
【請求項8】(本件発明8)
請求項1、3、4、6および7のいずれか一項に記載の偽造判定方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項9】(本件発明9)
請求項8記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項10】(本件発明10)
画像取得部と、写真領域抽出部と、判定部とを有し、
前記画像取得部は、
写真を含む被判定身分証の画像を取得し、
前記写真領域抽出部は、
前記被判定身分証の画像から、前記被判定身分証における写真領域を抽出し、
前記判定部は、
前記被判定身分証の前記写真領域において、偽写真の貼り付けを示す偽造特徴情報が含まれるかを判定し、前記偽造特徴情報が含まれる場合に、前記被判定身分証が偽造の身分証であると判定し、
前記偽造特徴情報は、真正身分証における写真領域と異なる特徴情報であり、前記真正身分証の規定の写真枠からのずれ、偽写真の貼り付けによる変化、前記写真領域における割印の有無、および前記割印の形状からなる群から選択された少なくとも一つの情報であり、
前記偽写真の貼り付けによる変化の情報が、偽写真の貼り付けによる二重の端部の発生、写真の重なりによる段差の発生、および写真の重なりによる影の変化の発生からなる群から選択された少なくとも一つの情報であることを特徴とする偽造判定装置。
第4 各甲号証について
1 甲第1号証(特開2002-56439号公報)
(1)甲第1号証に記載された事項
甲第1号証には、以下の記載がある。なお、下線は、当審にて付した。
【0007】本発明は、前記従来技術が持っていた課題を解決し、運転免許証のようなカード状の媒体を三次元的に精度良く読み取り、正確な真贋判定をすることができるカードリーダとこれを用いた身分証明書確認システムを提供するものである。
【0028】管理装置40側の係員は、CRT44に表示された運転免許証1等の画像の内容を確認する。この時、顧客の動作や運転免許証1の画像等が不自然であると係員が判断すると、係員はイヤホンマイク47やCRT16を用いて、顧客に運転免許証1をカードリーダ18の挿入口18aへ挿入するように案内する。顧客が運転免許証1を挿入口18aへ挿入することにより、カードリーダ18による運転免許証1の読み取りが行われる。
【0029】図3は、図1中のカードリーダ18による運転免許証1の読み取り動作の説明図である。まず、図示しない左側の挿入口18aから、搬送部18bによって右側に搬送されてきた運転免許証1に対して、照明部18cから斜めに出力された可視光が照射される。即ち、照明部18cの光は、運転免許証1の垂直軸に対してθ1の角度で照射される。一方、運転免許証1の表面で反射された光を受光するカメラ18dの光軸は、垂直軸に対してθ2の角度に設定されている。角度θ1,θ2は、大きさが同じで方向が反対となっており、正反射系を構成している。これにより、運転免許証1の表面の画像が可視光で撮影され、表面の画像が明確に読み取られる。
【0030】次に、照明部18cの照射光が非可視光に切り替えられると共に、運転免許証1は搬送部18bによって図の右から左へ搬送される。このとき、図3に示すように、偽造された運転免許証1のように読み取り面に凸部1aが有ると、この凸部1aによる影1cが発生する。照明部18cから照射される光は非可視光であるので、カメラ18dでは平面上の画像は識別されず、影1cのみが鮮明に読み取られる。なお、真正な運転免許証は凸部がないので、凸部による影が発生しない。
【0031】可視光と非可視光で撮影されて読み取られた2つの画像は、管理装置40側へ送信されてCRT44に表示される。管理装置40側の係員は、CRT44に表示された運転免許証1の画像の内容を確認する。真正な運転免許証であると判定すると、今度はその運転免許証の顔写真と顧客確認用のビデオカメラ14で撮影された顧客の顔等を対照し、本人であるか否かの確認を行って契約の可否を審査する。審査の結果、問題がなければ契約が成立し、係員は管理装置40を制御して受付装置10のカードリーダ・発行部18のカード発行部18gからカードを発行すると共に、通帳リーダ・印字・発行部19から、通帳の発行等を行う。
【0033】(1) 非可視光によって、カード状の身分証明書の凹凸を確実に読み取ることが可能になり、顔写真部や氏名・生年月日部等を張り付けて変造した身分証明書を容易に識別することができる。
【0042】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、第1の発明によれば、可視光と非可視光を照射でき、かつ該非可視光を斜め方向に照射する照明手段と、読み取り対象のカードの表面で反射した光によって画像情報を読み取る読取手段を有している。これにより、表面の画像と共に、表面の凹凸を検出することが可能になり、運転免許証等のカードの真贋判定を確実に行うことができる。
(2)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、運転免許証のようなカード状の媒体を三次元的に精度良く読み取り、正確な真贋判定をすることができるカードリーダを用いた身分証明書確認システム(【0007】)において、【発明の実施の形態】(【0016】~【0041】)に記載された方法により、運転免許証のようなカード状の媒体の真贋判定を行うことが記載されていることから、甲第1号証には、運転免許証のようなカード状の媒体の真贋判定を行う方法が記載されているといえる。
そうすると、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
なお、記号1a~1hは分説するために当審にて付した。以下、「構成1a」~「構成1h」という。また、各構成の末尾の括弧内は、上記(1)で摘出した関連する記載である。
(甲1発明)
1a 運転免許証のようなカード状の媒体を三次元的に精度良く読み取り、正確な真贋判定をすることができるカードリーダを用いて身分証明書の確認をするものであって、(【0007】)
1b 顧客が運転免許証1を挿入口18aへ挿入することにより、カードリーダ18による運転免許証1の読み取りが行われ、(【0028】)
1c 左側の挿入口18aから、搬送部18bによって右側に搬送されてきた運転免許証1に対して、照明部18cから斜めに出力された可視光が照射されることにより、運転免許証1の表面の画像が可視光で撮影され、表面の画像が明確に読み取られ、(【0029】)
1d 次に、照明部18cの照射光が非可視光に切り替えられると共に、運転免許証1は搬送部18bによって右から左へ搬送され、このとき、偽造された運転免許証1のように読み取り面に凸部1aが有ると、この凸部1aによる影1cが発生し、照明部18cから照射される光は非可視光であるので、カメラ18dでは平面上の画像は識別されず、影1cのみが鮮明に読み取られ、真正な運転免許証は凸部がないので、凸部による影が発生せず、(【0030】)
1e 可視光と非可視光で撮影されて読み取られた2つの画像は、管理装置40側へ送信されてCRT44に表示され、管理装置40側の係員は、CRT44に表示された運転免許証1の画像の内容を確認し、(【0031】)
1f 非可視光によって、カード状の身分証明書の凹凸を確実に読み取ることが可能になり、顔写真部や氏名・生年月日部等を張り付けて変造した身分証明書を容易に識別することができ、(【0033】)
1g 表面の画像と共に、表面の凹凸を検出することが可能になり、運転免許証等のカードの真贋判定を確実に行うことができる(【0042】)
1h 運転免許証のようなカード状の媒体の真贋判定を行う方法。
2 甲第2号証(特開平11-39468号公報)
(1)甲第2号証に記載された事項
甲第2号証には、以下の記載がある。なお、下線は、当審にて付した。
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は証明書識別装置および証明書識別システムに係り、例えば無人契約端末の運用の際に、本人確認用の証明書の偽造を検出し、不正取引を防止する証明書識別装置および証明書識別システムに関する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従来技術では、顧客の持参した証明書が偽造されたものである場合、それを見破ることが困難であった。代表的な偽造法としては、貼り合わせやカラープリントがある。前者は、免許証の顔写真を偽造者のものに貼り替えたり、保険証の住所や氏名等をワープロで作成して貼り替えるというものであり、後者は、免許証や保険証を貼り替えること等によって改ざんした後、実物大コピーするというものである。
【0013】以下に本実施の形態の動作を説明する。まず、顧客が、無人契約端末1の透過光源ユニット3の下に、持参した証明書12をセットする。証明書12は、透明板11上に、表側がその透明板11に接するように載置される。無人契約端末1の操作画面等の操作により、持参証明書12がセットされたことを制御手段5が認識すると、イメージスキャナ4によってその証明書12のイメージを取得する。この時、イメージスキャナ4のセンサ10は図1の左右方向に動作させ、これに合わせて透過光源ユニット3の透過光源14を同期をとって移動させることにより、読取を実行するセンサ10に一定の透過光源を与える。なお、イメージスキャナ3の光源13も同期をとって移動させる。
【0014】センサ10は、透過光源14から発して証明書12を透過した光線により、イメージを取得する。取得されたイメージは、図2に示した顧客側の制御手段5と係員側の制御手段9との間で、ファイル転送等を行うことによって転送される。転送されたイメージは、図3に示すように、係員側端末6の表示手段7に証明書イメージ15として表示される。係員は、表示された証明書の種別(免許証や保険証等)、種類(免許証サイズ、免許証発行場所、保険区分等)により、サンプルを選択する。
【0015】例えば、証明書12として免許証が用いられた場合、図4に示すようなサンプル選択画面で、免許証の住所から対象の都道府県を、入力するかあるいはプルダウンメニューを利用することによって指定する。係員側端末6は、事前に、都道府県毎に発行された有効期限内の免許証の全種類について、透過光源ユニット3およびイメージスキャナ4を利用し、サンプルイメージとして取得しておき、制御手段9またはこれと接続した記憶媒体に格納しておく。この格納されたサンプルイメージのうち、図4の(a)で指定された都道府県の有効期限内の免許証の全種類のサンプルイメージを、図4の(b)のように表示する。
【0016】係員は、図4の(b)の画面のように表示されたイメージのなかから、転送された証明書イメージと同じタイプのものを、サイズその他によって判断して選択する。図3に示すように、係員側端末6は、選択されたサンプルイメージ16を、転送された証明書イメージ15と並べて表示する。係員は、証明書イメージ15とサンプルイメージ16を比較することにより、証明書の真贋判別を行う。
【0018】このように、透過光源を用いた証明書イメージ15とサンプルイメージ16とを同時に表示して比較することとしたため、
○1(当審注:原文では、○の中に1、以下同様。)証明書の本物と偽造されたものとでは材質(紙材料や紙厚等)が異なることから、その透過率も異なり、係員側端末6の表示手段7に表示される明るさの違いとして明確に現れる。
【0019】○2本物の証明書であれば透かしが浮き出た状態で表示される。
○3本物の証明書が貼り合わせでできている場合、偽造されたものはその貼り合わせを忠実に再現しにくいことから、貼り合わせ部分まで印刷や文字等が解読可能に表示されてしまうが、本物の証明書は、その貼り合わせ部分の印刷や文字等が解読不能な状態で表示される。
【0020】○4本物の証明書が二重印刷してある場合、その本物には解読できない部分があるはずだが、カラーコピー等による偽造では、全ての印刷文言等を解読できてしまう。
○5貼り合わせで偽造された証明書は、貼り合わせの重なり部分および裏紙を付けた箇所の透過率が悪くなり、その部分に影ができる。
(2)甲第2号証に記載された発明
甲第2号証には、無人契約端末の運用の際に、本人確認用の証明書の偽造を検出し、不正取引を防止する証明書識別装置および証明書識別システム(【0001】)において、【発明の実施の形態】(【0007】~【0023】)に記載された方法により、証明書の偽造を検出することが記載されていることから、甲第2号証には、証明書の偽造を検出する方法が記載されているといえる。
そうすると、甲第2号証には、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。
なお、記号2a~2kは分説するために当審にて付した。以下、「構成2a」~「構成2k」という。また、各構成の末尾の括弧内は、上記(1)で摘出した関連する記載である。
(甲2発明)
2a 無人契約端末の運用の際に、本人確認用の証明書である免許証の偽造を検出し、不正取引を防止するものであって、(【0001】、【0015】)
2b 顧客が、無人契約端末1の透過光源ユニット3の下に、持参した証明書12をセットし、持参証明書12がセットされたことを制御手段5が認識すると、センサ10は、透過光源ユニット3の透過光源14から発して証明書12を透過した光線により、イメージを取得し、(【0013】、【0014】)
2c 取得されたイメージは転送され、係員側端末6の表示手段7に証明書イメージ15として表示され、(【0014】)
2d 係員は、転送された証明書イメージと同じタイプのものを、サイズその他によって判断して選択し、係員側端末6は、選択されたサンプルイメージ16を、転送された証明書イメージ15と並べて表示し、係員は、証明書イメージ15とサンプルイメージ16を比較することにより、証明書の真贋判別を行うものであり、(【0016】)
2e 透過光源を用いた証明書イメージ15とサンプルイメージ16とを同時に表示して比較することとしたため、(【0018】)
2f 証明書の本物と偽造されたものとでは材質(紙材料や紙厚等)が異なることから、その透過率も異なり、係員側端末6の表示手段7に表示される明るさの違いとして明確に現れ、(【0018】)
2g 本物の証明書であれば透かしが浮き出た状態で表示され、(【0019】)
2h 本物の証明書が貼り合わせでできている場合、偽造されたものはその貼り合わせを忠実に再現しにくいことから、貼り合わせ部分まで印刷や文字等が解読可能に表示されてしまうが、本物の証明書は、その貼り合わせ部分の印刷や文字等が解読不能な状態で表示され、(【0019】)
2i 本物の証明書が二重印刷してある場合、その本物には解読できない部分があるはずだが、カラーコピー等による偽造では、全ての印刷文言等を解読でき、(【0020】)
2j 貼り合わせで偽造された証明書は、貼り合わせの重なり部分および裏紙を付けた箇所の透過率が悪くなり、その部分に影ができることにより、(【0020】)
2k 証明書の偽造を検出する方法。
3 甲第3号証(特開2006-15534号公報)
(1)甲第3号証に記載された事項
甲第3号証には、以下の記載がある。なお、下線は、当審にて付した。
【0001】
本発明は、身分照会や証明用に使用される運転免許証、キャッシュカード等の金融取引カード、および会員カードなど媒体に記録された情報を読み取ってカード真贋判定するための画像読取システムに関する。
【0032】
ここで、図3に示すように、媒体2はシート状のカードサイズに形成された紙製または合成樹脂製などであり、媒体表面の情報記録領域には会員番号、発行日、会員氏名および住所など個人情報が記録された文字記録部2aが設けられ、会員本人の顔写真を特殊インクで印刷した顔写真部2bが設けられている。さらに、その媒体2の基材には照射した光が透過すると任意の形状が、本実施形態では透かし模様2cが浮かび上がるような材料が用いられ、そうした透かし模様2cがこの場合数行にわたって等間隔で形成されている。また、媒体2の材質は、個人情報の文字記録部2aを認識するために透過光斑の少ないものが好ましい。顔写真部2bは本人確認用に設けてあり、たとえば特殊波長光で赤外光が透過する特殊インクで印刷された画像となっていて、やはり透過光斑によってSN劣化が生じるのを回避できるようにすることが好ましい。
【0033】
そうした媒体2に対して、上記第1の光源13は通常画像照明用(以下、単に通常照明という)として媒体2の表面側から文字記録部2aや顔写真部2bを照射するようになっており、本例では白色LED(発光ダイオード)が用いられている。また、上記第2の光源14は媒体2の裏面側から特殊画像照明用として顔写真部2bと透かし模様2cに対して赤外光または紫外光を照射(以下、透かし用照明という)するようになっている。
【0036】
また、本装置1は画像情報取得部20を備えることができる。この画像情報取得部20は、制御装置18に接続されたサンプリング部として機能し、ラインセンサ15による走査で媒体2の文字記録部2aから読み取った通常画像と、顔写真部2bおよび透かし模様2cから読み取った特殊画像とが交互に連続する1つの画像情報として取り込まれるようになっている。
【0039】
また、上位装置30はシェーディング補正部32を有し、画像分割処理部31で分割してファイル化などされた通常画像と特殊画像の画像データごとにシェーディング(Shading)補正テーブルを参照して画像の階調補正(コントラスト調整)を行うことができる。さらに、上位装置20は媒体真正判定部33を備えている。この媒体真正判定部33においては、シェーディング補正部32で階調補正された通常画像と特殊画像、つまり文字記録部2aの通常画像と顔写真部2bおよび透かし模様2cの特殊画像とに基づいて、会員カードなどの媒体2が真正か偽造かの判定を行うようになっている。そうした媒体真正判定部24の判定結果はモニタ画面などに表示可能となっており、上位装置30を備えた管理センターなどにおいてオペレータはその画面表示内容をチェックできる。
【0047】
すなわち、第2の光源14から照射される透かし用照明は赤外光であるので、顔写真部2bの顔写真画像が消失したように確認できれば、媒体真正判定部33はその媒体2が真正カードであると判断する。このとき、顔写真部2bでは顔写真像が消失するために、透かし模様2cが埋め込まれた画像を得るので、透かし模様2cの認識が容易である。それに対して、たとえば透かし模様2cは存在するけれども顔写真部2bにコピーした写真などが貼付されている偽造された会員カードの場合、透かし模様2cから得た画像では顔写真像が消失しない。すなわち、その貼付されたコピー写真に透かし模様2cが埋もれるために、透かし模様2cが存在しているか否かの認識が困難となる。そのことから、媒体真正判定部33は当媒体2が偽造であることを容易に判定することができる。また、顔写真部2b以外の文字認識部2aでも透かし模様2cの画像を得ることができる。そのようにして透かし模様2cの有無をチェックし、透かし模様2cを確認できた場合、媒体真正判定部33は当該カードを真正カードと判定することができる。なお、文字記録部2aは赤外光が透過する特殊インキで印刷されていないから、透かし模様2cを浮き出させるのに最も効果的な照明を使用することができる。
【0053】
また、媒体2にエンボス加工のように凹凸で浮き出し模様が形成されている場合、第1および第2の光源13,14のいずれか一方の照明手段による照射に角度をもたせ、その浮き出し模様に斜めから照射するようにする。それによって浮き出し模様に影を形成させ、その影を走査することによって強調された浮き出し模様の画像を取得でき、判定時などにおいて識別や認識がし易くなるようにした実施形態も可能である。
【0054】
また、媒体例として会員カード以外にも、たとえば図8に示す運転免許証においても、通常照明では撮像できない媒体特徴や印刷特徴を抽出することで、どのような媒体でも本発明の思想を応用できる。また、白色光や赤外光など特定波長の光を透過させてそれを検出する例が示されたが、特定波長を吸収する媒体や特殊インクもまた撮像可能である。また、媒体に形成された地紋などのように、通常照明では撮像が困難な波長模様などをその波長に適合する抽出用照明を使用して強調表示させることもできる。また、媒体の表面側が特殊インクで印刷され、裏面側が通常インクで印刷されているような場合でも、1つのイメージスキャナつまり本例のラインセンサでもって同時に撮像でき、裏面側からの透過光による画像を取得できる。
(2)甲第3号証に記載された発明
甲第3号証には、カード真贋判定するための画像読取システム(【0001】)において、【発明を実施するための最良の形態】(【0030】~【0057】)に記載された方法により、真正か偽造かの判定を行う(【0039】、【0046】)ことが記載されていることから、甲第3号証には、真正か偽造かの判定を行う方法が記載されているといえる。
そうすると、甲第3号証には、以下の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されている。
なお、記号3a~3iは分説するために当審にて付した。以下、「構成3a」~「構成3i」という。また、各構成の末尾の括弧内は、上記(1)で摘出した関連する記載である。
(甲3発明)
3a 身分照会や証明用に使用される運転免許証、キャッシュカード等の金融取引カード、および会員カードなど媒体に記録された情報を読み取ってカード真贋判定するものであって、(【0001】)
3b 媒体表面の情報記録領域には個人情報が記録された文字記録部2aが設けられ、会員本人の顔写真を特殊インクで印刷した顔写真部2bが設けられ、媒体2の基材には照射した光が透過すると透かし模様2cが浮かび上がるような材料が用いられ、そうした透かし模様2cがこの場合数行にわたって等間隔で形成され、顔写真部2bは本人確認用に設けてあり、たとえば特殊波長光で赤外光が透過する特殊インクで印刷された画像となっており、(【0032】)
3c 媒体2に対して、第1の光源13は通常画像照明用(通常照明)として媒体2の表面側から文字記録部2aや顔写真部2bを照射するようになっており、第2の光源14は媒体2の裏面側から特殊画像照明用として顔写真部2bと透かし模様2cに対して赤外光を照射(透かし用照明)するようになっており、(【0033】)
3d 画像情報取得部20は、ラインセンサ15による走査で媒体2の文字記録部2aから読み取った通常画像と、顔写真部2bおよび透かし模様2cから読み取った特殊画像とが取り込まれるようになっており、(【0036】)
3e 媒体真正判定部33においては、文字記録部2aの通常画像と顔写真部2bおよび透かし模様2cの特殊画像とに基づいて、会員カードなどの媒体2が真正か偽造かの判定を行うようになっており、媒体真正判定部24の判定結果はモニタ画面などに表示可能となっており、オペレータはその画面表示内容をチェックでき、(【0039】)
3f 第2の光源14から照射される透かし用照明は赤外光であるので、顔写真部2bの顔写真画像が消失したように確認できれば、媒体真正判定部33はその媒体2が真正カードであると判断し、このとき、顔写真部2bでは顔写真像が消失するために、透かし模様2cが埋め込まれた画像を得るので、透かし模様2cの認識が容易であるが、透かし模様2cは存在するけれども顔写真部2bにコピーした写真などが貼付されている偽造された会員カードの場合、透かし模様2cから得た画像では顔写真像が消失せず、貼付されたコピー写真に透かし模様2cが埋もれるために、透かし模様2cが存在しているか否かの認識が困難となるから、媒体真正判定部33は当媒体2が偽造であることを容易に判定することができ、顔写真部2b以外の文字認識部2aでも透かし模様2cの画像を得ることができ、そのようにして透かし模様2cの有無をチェックし、透かし模様2cを確認できた場合、媒体真正判定部33は当該カードを真正カードと判定することができ、(【0047】)
3g 媒体2にエンボス加工のように凹凸で浮き出し模様が形成されている場合、第1および第2の光源13,14のいずれか一方の照明手段による照射に角度をもたせ、その浮き出し模様に斜めから照射するようにして浮き出し模様に影を形成させ、その影を走査することによって強調された浮き出し模様の画像を取得でき、判定時などにおいて識別や認識がし易くなるようにすることも可能であり、(【0053】)
3h 媒体例として会員カード以外にも、運転免許証においても、通常照明では撮像できない媒体特徴や印刷特徴を抽出することで、どのような媒体でも応用できる(【0054】)
3i 真正か偽造かの判定を行う方法。
4 甲第4号証(特開平11-31209号公報)
(1)甲第4号証に記載された事項
甲第4号証には、以下の記載がある。なお、下線は、当審にて付した。
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、カードおよびカード認証システムに関し、詳しくは、個人を識別するための写真、サイン文字、実印影などのその個人を識別する可視情報を表面に有するICカードから映像情報(イメージデータ)として可視情報を読取り、この情報によりICカードの認証を行うICカード認証システムにおいて、カードの偽造等の不正使用を防止するとともに認証におけるセキュリティの向上を図り、かつ、取引の安全性を確保することができるようなICカード認証システムに関する。
【0007】
【実施例】図1は、この発明を適用したICカード認証システムにおけるICカードの一実施例の説明図、図2は、図1のICカードを使用するICカード認証システムの一実施例を示すブロック図、図3は、図1のICカードを使用するICカード認証システムの他の実施例を示すブロック図である。図1(a)の平面図および右側面図において、1は、ICカードであって、その表面には写真8が印刷(あるいは貼付)されている。写真8は、本人の顔写真であるが、これは、カードを使用する個人を識別する可視情報であればよく、個人を識別するためのサイン文字、実印影などであってもよい。なお、1aは、磁気ストライブ、1bは、内蔵されたIC、1cは、使用者名等の文字である。
【0008】写真8は、ICカード1の目視確認領域8aに印刷され、その表面には、2つの眉部分それぞれに対応して2つの突起部8b,8cが設けられている。この突起部8b,8cは、100μm~400μm程度のものである。眉部分に設けてあるのは、映像のうち空間周波数が高い部分に設けることにより、外部から観察したときに凹凸があることを分かり難くするとともに採取映像データがその影響を受けにくいからである。先の突起部8b,8cは、100μm~400μm程度の凹部であってもよく、それは、眉8b、8cの範囲に対応してほぼ同じ大きさで設けられていてもよい。このときのICカード1の厚さは、従来のものとして0.76mm(760μm)程度か、それ以下のものとする。
【0009】このような突起部8b,8cを感圧検出器10の二次元感圧素子10aにより、写真8の領域に押し付け、これを押圧することでその位置をデータとして読み取る。押付機構は図示せず。二次元感圧素子10aは、写真8の大きさのエリアより少し大きい検出エリアを有していて、後述するデジタルカメラ11による映像としてのビットマップイメージデータに対応する画素単位で凹凸を検出するセンサである。これは、圧力に応じた電圧レベルの信号をシリアルに発生する。したがって、写真8に接触したときには、突起部8b,8cの位置に高いレベルの電圧信号を発生し、それを、例えば、図1の写真8の右上の角を基準にした突起部8b,8cの位置に対応するビットパターンデータとして発生する。感圧検出器10は、感圧素子10aと、その内部に設けられたセンス信号駆動読出回路10bと、二値化回路10c、そしてメモリ10dとを有していて、データ処理装置12のMPU13からの制御信号に応じて動作して写真8の右上の角を基準にした突起部8b,8cの位置データを発生してメモリ10dに記憶する。なお、二値化回路10cで二値化されたときの各ビットデータの1ビットは、ビットマップイメージデータの1画素に対応するので、これにより突起部8b,8cの位置データになる。具体的には、このデータは、突起部8b,8cの範囲で“1”となり、それ以外のところが“0”となる、基準位置のところは“1”になっているようなビットパターンとして生成される。これが、ここでの位置データであり、以下では、これを位置パターンデータという。
【0010】ICカード1は、図2の左側にブロックとして示すように、その内部に、システムコントロールロジックとCPUとからなるプロセッサ2と、CPUが実行するシステムプログラム等を記憶するROM3、作業領域であるRAM4、各種アプリケーションプログラムとそのデータ記憶領域であるEEPROM5、そしてI/Oポート6とを有し、これらがバス7で相互に接続されている。ROM3には、システムプログラム3aと、比較データ生成プログラム3b、照合処理プログラム3c、受信処理プログラム3d、レスポンスプログラム3e等が設けられている。また、EEPROM5には、写真照合のための比較基準となる比較基準となる識別映像データ5a、そして比較基準となる識別位置データ5b等が記憶されている。
【0011】9は、ICカードリーダ・ライタであって、前記した感圧検出器10のほかに、さらに、ICカード1に貼付された写真8を映像情報として読取る読取装置である、デジタルカメラ11とデータ処理装置12等を有している。データ処理装置12には、MPU13とメモリ14、そしてICカード通信インタフェースとしてICカードインタフェース15、プリンタ16とが設けられ、これらと感圧検出器10、デジタルカメラ11とが相互にバス17にて接続されている。
【0013】ICカード1において、そのEEPROM5には識別映像データ5aと識別位置データ5bとが記憶されている。識別映像データ5aは、写真8をデジタルカメラ11により採取した映像情報のデジタルデータに対して所定のデータ変換パラメータを作用させてスクランブル変換した得られた比較基準データである。識別位置データ5bは、映像データ(ビットマップイメージデータ)を基準として位置パターンデータにおける“1”が存在する位置を映像データ上の位置として示すデータである。これは、映像データ(ビットマップイメージデータ)を基準位置(右上角)からカウントして突起部8b,8cの位置に対応するビットパターンがある位置、前記の場合には“1”が存在する位置をカウント値として表すことで得られる。あるいは、これは、ビットマップイメージと位置パターンデータとからビットマップイメージのどこの座標位置に突起部8b,8cの開始点が存在し、その終了点が存在するかを示す座標位置データであってもよい。
【0016】ここで、比較データ生成プログラム3bは、識別映像データ5aと識別位置データ5bとに対応するデータをそれぞれ算出あるいは生成するプログラムであって、ICカードリーダ・ライタ10から受信された映像データをスクランブル変換して識別映像情報を生成してRAM4に記憶し、さらに映像データ(ビットマップイメージデータ)と突起部8b,8cの位置を示すビットパターンデータとから識別位置情報を生成してRAM4に記憶するプログラムである。照合処理プログラム3cは、比較データ生成プログラム3bをコールしてRAM4に記憶された識別映像情報を識別映像データ5a(比較基準データ)と比較してこれらの一致検出をし、さらにRAM4に記憶された識別位置情報を識別位置データ5bと比較してこれらの一致検出をし、これら両者が一致したときに、その検出結果をレスポンスプログラム3eを介してICカードリーダ・ライタ9に送信する処理をするプログラムである。
【0017】さて、ICカード1は、ICカードインタフェース17を介してICカードリーダ・ライタ9から映像データと位置パターンデータとを電文として受信する。そしてそれをRAM4に記憶する。次に、プロセッサ2が比較データ生成プログラム3bを実行してEEPROM5から識別映像情報と識別位置情報とを生成して再びRAM4に記憶する。そして、照合処理プログラム3cをコールする。そこで、プロセッサ2が照合処理プログラム3cを実行してRAM4に記憶された識別映像情報と識別映像データ5aとの一致、そして、識別位置情報と識別位置データ5bとの一致をそれぞれ検出をして、その結果、例えば、一致するものとしてOKの電文をICカードリーダ・ライタ9に送出する。不一致のときにはNGの電文応答をする。なお、一致検出の順序は、識別位置情報と識別位置データ5bとの一致検出が先であってもよく、ICカードは、いずれか1つが一致しないときは、不一致の応答をすることになる。
(2)甲第4号証に記載された発明
甲第4号証には、個人を識別するための写真などのその個人を識別する可視情報を表面に有するICカードから映像情報として可視情報を読取り、この情報によりICカードの認証を行うICカード認証システム(【0001】)において、【発明の実施の形態】(【0006】~【0024】)に記載された方法により、ICカードの認証を行うことが記載されていることから、甲第4号証には、ICカードの認証を行う方法が記載されているといえる。
そうすると、甲第4号証には、以下の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されている。
なお、記号4a~4kは分説するために当審にて付した。以下、「構成4a」~「構成4k」という。また、各構成の末尾の括弧内は、上記(1)で摘出した関連する記載である。
(甲4発明)
4a 個人を識別するための写真などのその個人を識別する可視情報を表面に有するICカードから映像情報(イメージデータ)として可視情報を読取り、この情報によりICカードの認証を行うものであって、(【0001】)
4b ICカードの表面には写真8(本人の顔写真)が貼付され、(【0007
】)
4c 写真8の表面には、2つの眉部分それぞれに対応して2つの突起部8b,8cが設けられ、(【0008】)
4d 二次元感圧素子10aは、写真8の大きさのエリアより少し大きい検出エリアを有していて、デジタルカメラ11による映像としてのビットマップイメージデータに対応する画素単位で凹凸を検出するセンサであり、写真8の領域に押し付け、突起部8b,8cを押圧することでその位置をデータとして読み取り、突起部8b,8cの位置データをメモリ10dに記憶し、(【0009】)
4e ICカード1は、その内部に、作業領域であるRAM4、各種アプリケーションプログラムとそのデータ記憶領域であるEEPROM5等を有し、EEPROM5には、写真照合のための比較基準となる識別映像データ5a、そして比較基準となる識別位置データ5b等が記憶され、(【0010】)
4f ICカードリーダ・ライタ9は、感圧検出器10のほかに、さらに、ICカード1に貼付された写真8を映像情報として読取る読取装置である、デジタルカメラ11等を有し、(【0011】)
4g ICカード1において、そのEEPROM5には識別映像データ5aと識別位置データ5bとが記憶され、識別映像データ5aは、写真8をデジタルカメラ11により採取した映像情報のデジタルデータに対して得られた比較基準データであり、識別位置データ5bは、突起部8b,8cの位置に対応するビットパターンがある位置であり、(【0013】)
4h 比較データ生成プログラム3bは、識別映像データ5aと識別位置データ5bとに対応するデータをそれぞれ算出あるいは生成するプログラムであって、映像データから識別映像情報を生成し、さらに映像データ(ビットマップイメージデータ)と突起部8b,8cの位置を示すビットパターンデータとから識別位置情報を生成してRAM4に記憶するプログラムであり、(【0016】)
4i 照合処理プログラム3cは、RAM4に記憶された識別映像情報を識別映像データ5a(比較基準データ)と比較してこれらの一致検出をし、さらにRAM4に記憶された識別位置情報を識別位置データ5bと比較してこれらの一致検出をするプログラムであり、(【0016】)
4j 識別映像情報と識別映像データ5aとの一致、そして、識別位置情報と識別位置データ5bとの一致をそれぞれ検出して、いずれか1つが一致しないときは、不一致とする、(【0017】)
4k ICカードの認証を行う方法。
5 甲第5号証(特開2011-34535号公報)
甲第5号証には、以下の記載がある。なお、下線は、当審にて付した。
【0001】
本発明は、例えば金融機関および通信会社の窓口などで契約の際に申請者から提出される運転免許証、健康保険証などの本人確認書類を真贋判定する本人確認書類真贋判定装置に関する。
【0026】
書類フォーマット13aには、スキャナ3から得られた画像のうち、切り出し領域の情報(画像全体の左上角の位置座標をX座標0,Y座標0)とした場合の免許証2の枠や写真が貼られている部分やその中で人が写っていない青色の背景領域(単色の塗りつぶし領域)の各切り出しエリアを指定する指定情報)が設定されている。
【0037】
以下、図4のフローチャートを参照してこの本人確認書類真贋判定装置1の動作を説明する。この本人確認書類真贋判定装置1では、スキャナ3により免許証2がスキャニングされて(図4のステップS101)、その画像がコンピュータ10に入力されると、CPU16は、その画像をメモリ13に一旦記憶する。
【0038】
次に、CPU16は、メモリ13から書類フォーマット13aと画像を読み出し、書類フォーマット13aから写真領域を検出し、画像から写真領域を切り出す(ステップS102)。
【0039】
続いて、CPU16は、切り出した写真領域から、書類フォーマット13a上に設定されている切り出し領域(単色の塗りつぶし領域)である、左上の青色の背景部分の画像を切り出す(ステップS103)。
【0040】
CPU16は、切り出した青色の背景部分の画像をフーリエ変換することで、周波数成分を求め、その値と予めメモリ13に設定されていた真贋判定情報13bと比較することで、モアレ縞の有無を検出する(ステップS104)。例えば周波数成分の値が所定の閾値(真贋判定情報13b)を超えた場合に、CPU16は、モアレ縞の存在を検出する。
【0041】
CPU16は、モアレ縞の存在を検出すると(ステップS105のYes)、免許証2が偽造書類であるものと報知する(ステップS106)。またCPU16は、周波数成分の値が所定の閾値(真贋判定情報13b)以下の場合に、モアレ縞が検出されなかったものとし(ステップS105のNo)、免許証2が偽造書類でないもの(本物)と報知する(ステップS107)。
6 甲第6号証(特公平7-121626号公報)
甲第6号証には、以下の記載がある。なお、下線は、当審にて付した。
【請求項1】顔写真情報、属性情報、レイアウト情報、偽造防止情報を画像処理手段に取り込んで画像処理し、カード基材上に編集した画像情報を出力するIDカード発行システムにおいて、前記画像処理手段において偽造防止情報を顔写真情報と合成し、画像情報出力時に、偽造防止情報を顔写真領域、あるいは顔写真領域とカード基材の境界領域の少なくとも一部にイメージパターンとして描画し、画像出力と偽造防止加工を同時に行うようにしたことを特徴とするIDカードの偽造防止加工処理方法。
【請求項6】偽造防止情報が、顔写真領域とカード基材の境界領域の少なくとも一部に描画される割印である請求項1記載のIDカードの偽造防止加工処理方法。
偽造防止情報としては、例えば、顔写真の背景に万線30を入れる(第3図(a))、顔写真全体に波線31を入れる(第3図(b))、顔写真にロゴマーク32を入れる(第3図(c))、顔写真のエッジに切手のようにギザギザ部33を設ける(第3図(d))、顔写真とカード基材との境界領域に枠状にイメージパターン34を入れる(第3図(e))、顔写真に割り印35を入れる(第3図(f))など複雑なイメージパターンを顔写真情報に重ねたり、顔写真情報の境界に偽造防止情報を付加する。(2頁右欄)
〔発明の効果〕
以上のように本発明によれば、画像処理によりいろいろなイメージパターンを顔写真情報と合成することができるため、複雑なパターンをカードの顔写真上に出力プリントすることにより、偽造防止を図ることができ、また画像編集時に同時に偽造防止加工処理ができるため、偽造防止加工のための時間的、コスト的なロスを軽減することができ、本発明で使用するような画像編集処理装置およびプリンタによってしか偽造防止加工ができないのでカードとしてのセキュリティを向上させることができる。(3頁右欄)
7 甲第7号証(特開平5-201181号公報)
甲第7号証には、以下の記載がある。なお、下線は、当審にて付した。
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、身分証明書、受験票、パスポート等の身分証明書であって、身分証明書に貼着された写真と証明書を持参する者とを照合する必要がある身分証明書に関するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】そこで、身分証明書と顔写真との一体化を図るために、図7に記載されている従来の身分証明書71のように、基材72上に顔写真74がのり73を介して貼着されており、基材72及び顔写真74に跨がるように刻印75(割印)の押印が行われている。しかし、顔写真74を貼り換えた後に、押印された刻印の跡76を偽造することが容易であり、また、顔写真74の画像が形成された表面のみを貼り換えることで、押印された刻印の跡76を克明に再現でき、目視により顔写真74が貼り換えられたものであるか否か判断することが非常に困難であった。
8 甲第8号証(特開平9-277761号公報)
甲第8号証には、以下の記載がある。なお、下線は、当審にて付した。
【請求項3】 識別パターンが、文字、図形、印章等のパターンである、請求項1又は2記載の個人識別媒体。
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は身分証明手段となり得る運転免許証、パスポート、社員証等のいわゆるIDカードに代表される個人識別媒体について、特に偽造や変造を困難にするセキュリティ性の高い個人識別媒体に関する。
【0006】本発明の個人識別媒体で用いる得る識別パターンとは、個人識別媒体の真偽を、特にそれが有する顔写真画像の真偽により識別するためのパターンである。この識別パターンとしては、例えば、文字、印章、或いは波線等の図形等と各種パターンで良い。また、顔写真画像内の識別パターンは単数、或いは複数どちらでもよい。複数の場合は、単一のパターンを、或いは異なるパターンが複数でも良い。また、識別パターンを氏名や社員番号等による文字とすれば、偽造や変造するにしても、顔画像にいちいち対応した識別パターンとする必要があり、よりセキュリティ性を高めることができる。識別パターンの大きさ、色、また識別パターン以外の部分との濃度差、色差等は任意であるが、識別パターンが極度に目立ち過ぎず且つ肉眼で見える程度の大きさや濃度差、色差とすれば、顔写真画像の顔面による本人確認に影響せずに識別パターンを用いることができる。また、識別パターンをカラー複写機等の複写機の解像度では対応できない微細な大きさ、微細な形状からなる識別パターンとすれば、複写機で識別パターンを再現できず、複写機を悪用した偽造、変造を防止することができる。また、識別パターンを、バーコード等の機械読取可能なパターンとすることで、個人識別媒体の真偽を機械的に判定することもできる。
【0010】次に、図2の様な、識別パターンとして「イロハ」なる小さな文字を、千鳥格子状に、おおよそ顔面部分を除いた部分に多数有する、顔写真画像を形成する方法について、図3により説明する。図3(a)は元になる顔写真画像、図3(b)は識別パターンからなる画像(以下、識別パターン画像)、図3(c)はグラデーションマスク画像、図3(d)は、識別パターン画像とグラデーションマスク画像を掛け合わせた画像を示す。先ず、図3(a)の元になる顔写真画像は、従来の通常の顔写真画像であり、カメラ等により撮影した人物の顔の正面画像である。図3(b)の識別パターン画像は、一つの識別パターン「イロハ」を一定の規則(ここでは千鳥格子)で多数配置して得られる画像である。図3(c)のグラデーションマスク画像は、顔形状に類似させて、天地方向に長い楕円形状で中心部から周辺部になるにつれて濃度が徐徐に薄くなるグラデーションを持たせた画像である。図面は濃度を便宜上、数段階で表してあるが、もちろん、実際の濃度ステップ、開始濃度、終了濃度は任意である。そして、図3(b)の識別パターン画像と、図3(c)のグラデーションマスク画像とから、図3(d)の様に識別パターンが顔面部分に相当する中央部は無く周囲に有る画像を作製する。そして、図3(a)の画像と図3(d)の画像とを掛け合わせることで、図2のような識別パターンを有する画像が得られる。
【0016】
【発明の効果】本発明の個人識別媒体およびその製造方法によれば、顔写真画像内に該画像と一体となった文字や図形等の識別パターンが組み込まれている為に、単に顔写真画像と識別パターンとを別々にプリントした場合と、識別パターンを構成する画素の出来具合が異なるので、偽造や変造防止が難しく、セキュリティ性に優れる。また、識別パターンがバーコード等の機械読取可能なパターンの場合は、識別パターンの有無を機械判定して、機械による真偽の識別ができる。また、顔面部分から周辺部分になるにつれて濃度が変化するグラデーションマスク画像を併用することで、顔写真画像と、識別パターン画像とから、顔写真画像の顔面部分を識別パターンが無いか又は薄くした識別パターンを有する顔写真画像をプリント用画像として作製し、この画像から顔写真画像を個人識別媒体に形成するので、顔面部分に識別パターンが重なって顔面が見にくくならない様に識別パターンを顔写真画像に加えることができる。
9 甲第9号証(特開2001-266206号公報)
(1)甲第9号証に記載された事項
甲第9号証には、以下の記載がある。なお、下線は、当審にて付した。
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はカード類、主として自動二輪車も含めた自動車運転免許証の真贋判定装置に関する。
【0013】また、引き込みローラ3・3及び補助ローラ4・4に続く搬路には可視光LED及びその受光素子から成る可視光センサー6及び赤外線LED及びその受光素子からなる赤外線センサー7が備えられ、続いて透過型の可視光センサー8が備えられている。
【0014】さらには紫外線LED及びその受光素子から成る紫外線センサー9が設けられ、大型の運転免許証が挿入された場合、それを検知するサイズセンサー10と奥端まで運転免許証が到達し、計測終了されたことを検出するエンドセンサー11が設けられている。
【0017】本実施の形態に係る運転免許証を対象としたカード類の真贋判定装置は上記のように構成されている。ここで、挿入口2に運転免許証を挿入して、スタートセンサー5・5を横切ってメカニズムのスイッチがON状態となると、紫外線センサー9と貼り付けを検出するLED14以外のLEDが点灯し、引き込みローラ3・3に設けられたスリットで挿入距離を計測し、共にラインセンサー12によって運転免許証に記載された生年月日を読み取る。また、運転免許証の紋様を可視光センサー6、赤外線センサー7及び透過型の可視光センサー8によって読み取る。
【0018】運転免許証がローディングされてエンドセンサー11を横切ると計測終了となり、前記したLEDは消灯し、今度は紫外線センサー9が点灯して運転免許証の引き抜き時に引き込みローラ3・3のスリットで引き抜き距離を計測するとともに紫外線の反射率を計測する。同時に貼り付けを検出するLED14を点灯させて貼り付けの有無をラインセンサー12によって読み取ることとなる。
【0019】本実施の形態における可視光センサー6と赤外線センサー7は運転免許証の写真部分と対応する配置となっており、波長による反射率の相違を利用して真贋を判定する。即ち、赤外線センサー7における赤外線の反射率は写真上と写真のない部分での変化はないが、可視光センサー6・8における反射率、透過率は写真の有無によって大きく異なり、運転免許証の引き抜き時に作用する紫外線センサー9における紫外線は真正の運転免許証とコピー等の偽造したものとの紙質による反射率が大きく異なるので、この三つの条件をクリアしたものが真正の運転免許証と認定される。
【0020】また、真正の運転免許証の生年月日の欄に紙片等を貼着したものは運転免許証の横側からLED14によって光を照射して、貼着された紙片等の分表面より突起して反射率が高くなることを検出して行う。貼着された紙片等の端面は予想できないので反射検出はラインセンサー12によって行う。即ち、ラインセンサー12は挿入時には生年月日の数値を読み取り、引き抜き時に貼着された紙片等の検出を行うこととなる。
【0021】各センサーで受光されたアナログ値はマルチプレクサを経由して多重化されてA/Dコンバータによって変換されCPUに取り込まれ真贋の判定が行われる。また、ラインセンサー12のアナログ値は高速A/Dコンバータによって変換されてCPUに取り込まれ数値を認識させて基準年齢に達しているか否かの算定が行われる。
(2)甲第9号証に記載された発明
甲第9号証には、自動車運転免許証の真贋判定装置(【0001】)において、【発明の実施の形態】(【0009】~【0023】)に記載された方法により、自動車運転免許証の真贋判定を行うことが記載されていることから、甲第9号証には、自動車運転免許証の真贋判定を行う方法が記載されているといえる。
そうすると、甲第9号証には、以下の発明(以下、「甲9発明」という。)が記載されている。
なお、記号9a~9gは分説するために当審にて付した。以下、「構成9a」~「構成9g」という。また、各構成の末尾の括弧内は、上記(1)で摘出した関連する記載である。
(甲9発明)
9a 可視光LED及びその受光素子から成る可視光センサー6、赤外線LED及びその受光素子からなる赤外線センサー7、透過型の可視光センサー8、紫外線LED及びその受光素子から成る紫外線センサー9、が設けられ、(【0013】、【0014】)
9b ラインセンサー12によって運転免許証に記載された生年月日を読み取り、運転免許証の紋様を可視光センサー6、赤外線センサー7及び透過型の可視光センサー8によって読み取り、(【0017】)
9c 紫外線センサー9が点灯して紫外線の反射率を計測し、貼り付けを検出するLED14を点灯させて貼り付けの有無をラインセンサー12によって読み取り、(【0018】)
9d 可視光センサー6と赤外線センサー7は運転免許証の写真部分と対応する配置となっており、波長による反射率の相違を利用して真贋を判定し、即ち、赤外線センサー7における赤外線の反射率は写真上と写真のない部分での変化はないが、可視光センサー6における反射率、透過型の可視光センサー8における透過率は写真の有無によって大きく異なり、紫外線センサー9における紫外線は真正の運転免許証とコピー等の偽造したものとの紙質による反射率が大きく異なり、(【0019】)
9e 真正の運転免許証の生年月日の欄に紙片等を貼着したものは運転免許証の横側からLED14によって光を照射して、貼着された紙片等の分表面より突起して反射率が高くなることを検出して行い、貼着された紙片等の端面は予想できないので反射検出はラインセンサー12によって行い、ラインセンサー12は挿入時には生年月日の数値を読み取り、引き抜き時に貼着された紙片等の検出を行い、(【0020】)
9f 各センサーで受光されたアナログ値で、真贋の判定が行われ、ラインセンサー12のアナログ値は数値を認識させて基準年齢に達しているか否かの算定が行われる(【0021】)
9g 自動車運転免許証の真贋判定を行う方法。
10 甲第10号証(特開2007-280367号公報)
甲第10号証には、以下の記載がある。なお、下線は、当審にて付した。
【0003】
この種の顔照合装置では、従来より、写真を用いた「なりすまし」への対策が課題とされてきた。なりすましとは、本人の顔写真等を用いて別人が認証を受けようとする行為である。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、装置の大型化や利便性の低下を招くことなく、写真によるなりすましを可及的に防止可能な技術を提供することにある。
【0010】
本発明に係る顔照合装置は、撮像手段、顔照合手段、なりすまし検査手段を備える。顔照合時には、撮像手段が被写体を撮影し、顔照合手段が撮像手段で撮影された画像を用いて顔照合を行う。ただし、本発明では、前記画像による顔照合の前、もしくは並行して、さらにもしくは後に、なりすまし検査手段が、前記画像(検査対象画像)が写真を撮影することにより得られた「なりすまし画像」であるか検査する処理(なりすまし検査処理)を実行する。
【0023】
顔照合機能が起動すると、撮像部10が撮影を実行し、顔照合に用いるための画像が取り込まれる(ステップS10)。入力された画像は、画像記憶部11に格納されるとともに、表示部15に表示される。ユーザは、表示部15の表示を見ることで照合用の画像を確認することができる。
【0025】
次に、顔検出部12が、画像から人の顔を検出し、顔の位置や大きさ等を特定する(ステップS11)。
【0027】
次に、なりすまし検査部13が、撮影によって得られた画像が「なりすまし画像」であるか検査する(ステップS12)。本実施形態では、なりすまし検査部13の検査結果として、「なりすまし画像である」又は「なりすまし画像でない」のいずれかの判断結果が得られる。なお、なりすまし検査の具体的な処理については後述する。
【0028】
なりすまし検査部13において、なりすまし画像であると判断された場合には(ステップS13;YES)、その画像を用いての顔照合は行わずただちに処理を終了する。これにより、写真を用いたなりすましを防ぐことができる。
【0029】
一方、なりすまし画像でないと判断された場合には(ステップS13;NO)、その画像による顔照合を開始する。
【0030】
顔照合部14は、まず顔検出部12によって検出された顔から複数の特徴点を検出する(ステップS14)。特徴点とは、特徴量の抽出基準となる点のことであり、顔の中のどの点を特徴点として選ぶかは予め決められている。例えば、眼の中心、鼻の頂点、口の端点など、複数箇所が特徴点として選ばれる。
【0032】
続いて、顔照合部14は、検出された特徴点をもとに特徴量を抽出する(ステップS15)。特徴量の種類はどのようなものを採用してもよい。例えば、特徴点近傍の濃淡値やその周期性・方向性、特徴点の位置関係などを特徴量として採用できる。特徴量の個数についても、期待する照合精度に応じて任意に設定できる。一般的には、数十~数百の特徴量が抽出される。このようにして照合画像から抽出された特徴量の組は、顔特徴量ベクトルとよばれる。顔特徴量ベクトルは顔の特徴を数値化したものといえる。人によって顔の特徴が相違するのと同様、人によって顔特徴量ベクトルの傾向(向き、大きさ)が相違する。
【0033】
顔照合部14は、画像から得られた顔特徴量ベクトルを、顔定義情報記憶部16に登録されている登録者の顔定義情報と比較することによって、顔照合を行い、その判定結果を出力する(ステップS16)。なお、顔定義情報記憶部16には、予め、一人又は複数の登録者の顔定義情報が登録されている。顔定義情報は、登録者の顔(つまり、登録者の顔から抽出される顔特徴量ベクトルの傾向)を定義するものといえる。
【0035】
<なりすまし検査処理>
次に、ステップS12のなりすまし検査処理について詳しく説明する。
【0036】
本実施形態の顔照合装置は、本人認証が必要な書類(免許証、パスポート、学生証、会員証、キャッシュカード、クレジットカードなど)に付されている顔写真(証明写真)を利用したなりすましを未然に防止することを主な目的とする。そこで本発明者らは、この種の書類及びそれを撮影した画像を子細に観察することで、次のような特徴を見いだした。
【0037】
・証明写真の背景は無地または地模様であることが多い。そのような写真を撮影して得られる画像においては、背景部分の色や模様がほぼ均一となる。
【0038】
・証明写真は、顔を囲む複数の辺(通常は四辺)でトリミングされている。よって画像においては写真の縁辺が直線分として現れる。また、書類に印字された図形(罫線やマークなど)や文字が、画像中に一緒に写っていることもある。
【0041】
本実施形態の顔照合装置では、画像処理によって上記特徴を評価することでなりすましの検査を行う。具体的な評価手法として次の5つの手法を例示する。なお、以下の説明では、検査対象画像として図3のような画像2を想定する。図3は免許証を撮影して得られた画像の例である。
【0042】
(1)色の均一性を評価する手法
まず画像中の顔以外の部分(証明写真の背景に対応する部分)に検査領域21が設定される。検査領域21の位置・大きさ・範囲などは、ステップS11で求められた顔領域20との相対的関係に基づき決定すればよい。そして、検査領域21内の色の均一性を評価する。色の均一性に対応する特徴量としては、例えば、検査領域21内の全画素の色もしくは濃度の値域、分散、標準偏差などがある。色の均一性が高いほど画像2がなりすまし画像である可能性が高いといえる。
【0044】
(2)模様の均一性を評価する手法
手法(1)と同様に検査領域21を設定し、検査領域21内の模様の均一性を評価する。例えば、周波数空間における低周波領域へのパワー集中を評価することで、検査領域21に均一な(規則正しい)模様が含まれているかどうか調べることができる。模様の均一性が高いほど画像2がなりすまし画像である可能性が高いといえる。
【0046】
(3)図形の有無を評価する手法
図3に示すように、画像中の顔以外の部分に検査領域22を設定する。検査領域22の位置・大きさ・範囲については、ステップS11で求められた顔領域20との相対的関係に基づき決定すればよい。そして、検査領域22内に図形が存在するかどうかを評価する。写真の縁辺や罫線などの幾何学図形はハフ変換などで検知可能である。形状が既知の図形に関してはテンプレートマッチングにより検知することもできる。図形の数、大きさ、形状、鮮明さなどを評価することも好ましい。検査領域22内に図形が存在する場合には、画像2がなりすまし画像である可能性が高いといえる。
【0047】
(4)文字の有無を評価する手法
手法(3)と同様に検査領域22を設定し、検査領域22内に文字が存在するかどうかを評価する。テンプレートマッチングなどの文字検出手法を利用してもよいし、公知の文字認識手法を利用してもよい。文字の数、大きさ、内容、鮮明さなどを評価することも好ましい。検査領域22に文字が存在する場合には、画像2がなりすまし画像である可能性が高いといえる。
【0048】
(5)ボケ量を評価する手法
図3に示すように、画像中の顔の部分に検査領域23を設定する。検査領域23の位置・大きさ・範囲についても、ステップS11で求められた顔領域20との相対的関係に基づき決定すればよい。そして、検査領域23のボケ量を評価する。例えば、検査領域23の周波数成分の低域への偏りをボケ量として評価すればよい。ボケ量が大きいほど、画像2がなりすまし画像である可能性が高いといえる。具体的には、検査領域23の周波数分布(パワースペクトル)から所定域の低周波成分と高周波成分とを求め、「低周波成分÷高周波成分」の値が所定のしきい値より大きければ「なりすまし画像」と判定すればよい。あるいは、低周波成分用のしきい値LThと高周波成分用のしきい値HThとをそれぞれ設定しておき、低周波成分の値がしきい値LThよりも大きく、且つ、高周波成分の値がしきい値HThよりも小さい場合に、周波数成分が低域に偏っているとみなし、「なりすまし画像」と判定するようにしてもよい。
11 甲第11号証(特開2004-174889号公報)
甲第11号証には、以下の記載がある。なお、下線は、当審にて付した。
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、顔写真を複写して顔写真入りのIDカードを作製するIDカード作製技術に関する。
【0016】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、用紙上の顔写真の貼付位置を確実に検出することが可能で、位置ずれのない高品質のIDカードを作成できる複写型のIDカード作成装置、IDカード作成方法、及び複写型IDカードを提案することを目的とする。
【0028】
続いて、申請書1はCCDカメラ15の位置に搬送されて停止する。そして、申請書1に貼り付けられている顔写真2がCCDカメラ15によって撮像されて読み取られる。このとき、CCDカメラ15による撮像画角は顔写真2に対する撮像画角より大きく設定されていて、顔写真2にある程度の曲がりや位置ずれがあっても、顔写真2と共に顔写真2の周辺に位置する申請書1の一部も撮像されるように構成されている。なお、顔写真2は複数の照明灯17によって照明され、薄手の顔写真2に凹凸が生じていても照明ムラがないようにしている。
【0031】
顔写真2は申請書1に貼り付けられているので、顔写真2の部分の厚みは周辺の申請書1のみの部分の厚みより厚い。従って、顔写真2の部分の方がその周辺より赤外線透過光量が少なくなるので、赤外線透過光量の差によって顔写真2の周縁部、即ち写真エッジを検知することができる。このようにして赤外CCDカメラ18により撮像された画像データはCPUからなる写真位置検出部19にてデジタル変換された後、所定の画像処理がなされて写真エッジが検出され、顔写真2が所定の位置に正確に貼り付けられているときの理想の写真エッジであって、予め記憶されている写真エッジと照合されて、その顔写真2の傾きや位置ずれが検出される。
【0036】
システム制御部21では赤外CCDカメラ18により検出された写真エッジに基づいて、CCDカメラ15にて撮像された画像の中から顔写真2の部分が切り出される。そして、赤外CCDカメラ18により得た顔写真2の傾きや位置ずれのデータに基づいて、顔写真2が傾きや位置ずれのない状態になるように顔写真画像データが修正され、修正された顔写真画像データが個人データ1aや登録番号1bのデータと共にIDカードプリンタ31に出力され、IDカードが作成される。
第5 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
令和6年2月9日付け取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)新規性欠如
請求項5、7~9に係る発明は、甲第4号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項5、7~9に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(2)進歩性欠如
請求項6~9に係る発明は、甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項6~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
2 検討
(1)新規性欠如について
請求項5に係る特許は、上記第2の1(5)のとおり、訂正により削除された。
よって、請求項5に係る特許に対しての新規性欠如に係る取消理由は、対象が存在しないものになった。
また、請求項7~9に係る特許に対しての新規性欠如に係る取消理由は、請求項5を直接又は間接に引用する請求項7~9に対しての取消理由である。
よって、請求項5が訂正により削除された以上、新規性欠如に係る取消理由によって請求項7~9に係る特許を取り消すことはできない。
(2)進歩性欠如について
請求項6~9に係る特許に対しての進歩性欠如に係る取消理由は、請求項5を直接又は間接に引用する請求項6~9に対しての取消理由である。
よって、請求項5が訂正により削除された以上、進歩性欠如に係る取消理由によって請求項6~9に係る特許を取り消すことはできない。
第6 取消理由通知(決定の予告)において、採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知(決定の予告)において、採用しなかった特許異議申立理由の概要
取消理由通知(決定の予告)において、採用しなかった特許異議申立理由の概要は次のとおりである。
(1-1)甲第1号証を主引例とした新規性欠如
請求項1~4、7~9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~4、7~9に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。(以下、「理由1-1」という。)
(1-2)甲第1号証を主引例とした進歩性欠如
請求項1~10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。(以下、「理由1-2」という。)
(2-1)甲第2号証を主引例とした新規性欠如
請求項1~4、6~9に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~4、6~9に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。(以下、「理由2-1」という。)
(2-2)甲第2号証を主引例とした進歩性欠如
請求項1~10に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。(以下、「理由2-2」という。)
(3-1)甲第3号証を主引例とした新規性欠如
請求項1、5、7~10に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、5、7~10に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。(以下、「理由3-1」という。)
(3-2)甲第3号証を主引例とした進歩性欠如
請求項1~10に係る発明は、甲第3号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。(以下、「理由3-2」という。)
(4-1)甲第4号証を主引例とした新規性欠如
請求項1、10に係る発明は、甲第4号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、10に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。(以下、「理由4-1」という。)
(4-2)甲第4号証を主引例とした進歩性欠如
請求項1~5、10に係る発明は、甲第4号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5、10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。(以下、「理由4-2」という。)
(5-1)甲第9号証を主引例とした新規性欠如
請求項1~4、7~10に係る発明は、甲第9号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~4、7~10に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。(以下、「理由5-1」という。)
(5-2)甲第9号証を主引例とした進歩性欠如
請求項1~10に係る発明は、甲第9号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。(以下、「理由5-2」という。)
(6)発明該当性違反
請求項1~9に係る特許は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。(以下、「理由6」という。)
(7)明確性違反
請求項1~10に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当しその特許は取り消されるべきである。(以下、「理由7」という。)
(8)サポート要件違反
請求項1~10に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当しその特許は取り消されるべきである。(以下、「理由8」という。)
(9)実施可能要件違反
請求項1~10に係る特許は、明細書の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当しその特許は取り消されるべきである。(以下、「理由9」という。)
2 取消理由通知(決定の予告)において、採用しなかった特許異議申立理由についての検討
(1)理由1-1、1-2について
ア 本件発明1について
(ア)甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
a 構成A、Bについて
構成1cより、甲1発明は、運転免許証1の表面の画像が可視光で撮影され、表面の画像が明確に読み取られるものであるから、構成Aの「画像取得工程」、構成Bの「前記画像取得工程は、写真を含む被判定身分証の画像を取得」する構成に相当する構成を有するものである。
b 構成A、Cについて
本件発明1は、「写真領域抽出工程」「を有し、」「前記写真領域抽出工程は、 前記被判定身分証の画像から、前記被判定身分証における写真領域を抽出」するのに対し、甲1発明は、写真領域抽出工程を有するものではない点で相違する。
c 構成A、D~D4について
構成1d、1f、1gより、甲1発明は、運転免許証の表面の凹凸を検出すると、顔写真部や氏名・生年月日部等を張り付けて変造した身分証明書を識別し、運転免許証等のカードの真贋判定を確実に行うものである。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、「判定工程」「を有し、」「前記判定工程は、」「前記被判定身分証」「において、」「偽造特徴情報が含まれるかを判定し、前記偽造特徴情報が含まれる場合に、前記被判定身分証が偽造の身分証であると判定」する点で共通する。
しかし、判定する領域に関して、本件発明1は、「前記被判定身分証の前記写真領域」であるのに対し、甲1発明は、顔写真部だけでなく、氏名・生年月日部等も判定するものであるから、判定する領域は、被判定身分証全体であって写真領域に限定された領域ではない点で相違する。
また、本件発明1の偽造特徴情報は、「偽写真の貼り付けを示す」情報であって、「真正身分証における写真領域と異なる特徴情報であり、前記真正身分証の規定の写真枠からのずれ、偽写真の貼り付けによる変化、前記写真領域における割印の有無、および前記割印の形状からなる群から選択された少なくとも一つの情報であり、前記偽写真の貼り付けによる変化の情報が、偽写真の貼り付けによる二重の端部の発生、写真の重なりによる段差の発生、および写真の重なりによる影の変化の発生からなる群から選択された少なくとも一つの情報である」のに対し、甲1発明の偽造特徴情報は、「運転免許証の表面の凹凸」である点で相違する。
d 構成Eについて
甲1発明は、「運転免許証のようなカード状の媒体の真贋判定を行う方法」であるから、本件発明1の「偽造判定方法」に相当する。
e 一致点・相違点
上記a~dより、本件発明1と甲1発明との一致点・相違点は次の通りである。
(一致点)
A’画像取得工程と、判定工程とを有し、
B 前記画像取得工程は、
写真を含む被判定身分証の画像を取得し、
D 前記判定工程は、
D1’前記被判定身分証において、偽造特徴情報が含まれるかを判定し、
D2 前記偽造特徴情報が含まれる場合に、前記被判定身分証が偽造の身分証であると判定する
E 偽造判定方法。
(相違点)
(相違点1)
本件発明1は、「写真領域抽出工程」「を有し、」「前記写真領域抽出工程は、 前記被判定身分証の画像から、前記被判定身分証における写真領域を抽出」するのに対し、甲1発明は、写真領域抽出工程を有するものではない点。
(相違点2)
判定する領域に関して、本件発明1は、「前記被判定身分証の前記写真領域」であるのに対し、甲1発明は、運転免許証全体であって写真領域に限定された領域ではない点。
(相違点3)
本件発明1の偽造特徴情報は、「偽写真の貼り付けを示す」情報であって、「真正身分証における写真領域と異なる特徴情報であり、前記真正身分証の規定の写真枠からのずれ、偽写真の貼り付けによる変化、前記写真領域における割印の有無、および前記割印の形状からなる群から選択された少なくとも一つの情報であり、前記偽写真の貼り付けによる変化の情報が、偽写真の貼り付けによる二重の端部の発生、写真の重なりによる段差の発生、および写真の重なりによる影の変化の発生からなる群から選択された少なくとも一つの情報である」のに対し、甲1発明の偽造特徴情報は、「運転免許証の表面の凹凸」である点。
(イ)検討
a 新規性について
本件発明1と甲1発明とは上記(ア)eのように相違点1~3を有するものであるから、本件発明1は甲1発明ではない。
b 進歩性について
上記相違点1、2についてまとめて検討する。
特許異議申立人は、特許異議申立書において、「写真以外の画像も含む画像から写真領域を抽出する文献として、甲3、甲5参照。」(特許異議申立書40頁)と主張している。
そして、甲3発明は、構成3fより、赤外光を照射して、顔写真部2bの顔写真画像が消失したように確認できれば、その媒体2が真正カードであると判断するものであって、顔写真部2bがどの部分であるかを認識することが前提であるから、写真領域を抽出する構成を含むものであるし、甲第5号証には、写真領域を切り出す構成(【0038】)を含むものである。
従って、写真以外の画像も含む画像から写真領域を抽出する構成自体は周知技術であるといえる。
しかし、本件発明1の【背景技術】及び【発明が解決しようとする課題】として、本件明細書には、以下のような記載がある。
「【0002】
写真付きの身分証について、写真の上に本人ではない写真を貼り付ける偽造が問題となっている。本人ではない写真を貼り付けている身分証は、人による判定であれば、偽造との判定ができる場合もあるが、無人の場合、身分証が偽造か否かは、判定し難い。」
「【0005】
そこで、本発明は、より簡便に、身分証における写真の貼付による偽造を判定する新たなシステムの提供を目的とする。」
すなわち、本件発明1は、写真付きの身分証について、本人ではない写真を貼り付けている身分証は、身分証が偽造か否かは、判定し難いため、身分証における写真の貼付による偽造を判定する新たなシステムの提供を目的とする発明であって、当該目的を達成するために、写真領域を抽出し、写真領域に対して判定を行う構成としているものである。
それに対し、甲1発明は、構成1fより、カード状の身分証明書の凹凸を確実に読み取ることが可能になり、顔写真部や氏名・生年月日部等を張り付けて変造した身分証明書を容易に識別することができるようにした発明であって、顔写真部や氏名・生年月日部等の張り付けによる凹凸も検知するための発明であるから、写真領域に限定されず、氏名・生年月日部等を含む被判定身分証全体の領域について判定することが必須の構成である。
そうすると、写真以外の画像も含む画像から写真領域を抽出する構成は周知技術であるとしても、氏名・生年月日部等の張り付けによる凹凸も検知するための発明である甲1発明において、写真領域を抽出し、写真領域のみに対して判定を行う本件発明1のような構成とすることは、当業者が容易に想到できるとはいえない。
したがって、相違点3について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者であっても甲1発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明3、4、6~9について
本件発明3、4、6~9は、本件発明1を直接又は間接に引用する発明であるから、甲1発明との相違点は、少なくとも、上記ア(ア)eに掲げた相違点1~3を含むものである。
また、上記ア(イ)bで検討したように、当業者であっても甲1発明及び周知技術に基づき、相違点1、2に係る構成が容易に想到できるとはいえない。
したがって、本件発明3、4、7~9は甲1発明ではなく、本件発明3、4、6~9は、当業者であっても甲1発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明10について
本件発明10は、本件発明1の方法発明を装置発明とした発明であって、本件発明10と甲1発明との相違点は、上記ア(ア)eに掲げた相違点1~3と同様である。
よって、上記ア(イ)bで検討したように、当業者であっても甲1発明及び周知技術に基づき、相違点1、2に係る構成が容易に想到できるとはいえない。
したがって、本件発明10は、当業者であっても甲1発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものではない。
エ 請求項2、5について
請求項2、5に係る特許は、訂正により削除されたので、対象となる請求項が存在しないものとなった。
(2)理由2-1、2-2について
ア 本件発明1について
(ア)甲2発明との対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
a 構成A、Bについて
構成2a、2bより、甲2発明は、透過光源ユニット3の透過光源14から発して証明書である免許証を透過した光線により、イメージを取得するものであって、免許証は写真を含むものであるから、構成Aの「画像取得工程」、構成Bの「前記画像取得工程は、写真を含む被判定身分証の画像を取得」する構成に相当する構成を有するものである。
b 構成A、Cについて
本件発明1は、「写真領域抽出工程」「を有し、」「前記写真領域抽出工程は、 前記被判定身分証の画像から、前記被判定身分証における写真領域を抽出」するのに対し、甲2発明は、写真領域抽出工程を有するものではない点で相違する。
c 構成A、D~D4について
構成2b、2g~2kより、甲2発明は、証明書12を透過した光線により、イメージを取得した際に(構成2b)、本物と偽造されたものとの明るさの違い(構成2f)、本物は透かしが浮き出ること(構成2g)、本物が貼り合わせでできている場合、貼り合わせ部分の印刷や文字が解読可能か否か(構成2h)、本物が二重印刷してある場合、解読できない部分があるか否か(構成2i)、偽造されたものが貼り合わせの場合、その部分に影ができること(構成2j)により、証明書の偽造を検出する(構成2k)ものである。
そうすると、本件発明1と甲2発明とは、「判定工程」「を有し、」「前記判定工程は、」「前記被判定身分証」「において、」「偽造特徴情報が含まれるかを判定し、前記偽造特徴情報が含まれる場合に、前記被判定身分証が偽造の身分証であると判定」する点で共通する。
しかし、判定する領域に関して、本件発明1は、「前記被判定身分証の前記写真領域」であるのに対し、甲2発明は、被判定身分証全体であって写真領域に限定された領域ではない点で相違する。
また、本件発明1の偽造特徴情報は、「偽写真の貼り付けを示す」情報であって、「真正身分証における写真領域と異なる特徴情報であり、前記真正身分証の規定の写真枠からのずれ、偽写真の貼り付けによる変化、前記写真領域における割印の有無、および前記割印の形状からなる群から選択された少なくとも一つの情報であり、前記偽写真の貼り付けによる変化の情報が、偽写真の貼り付けによる二重の端部の発生、写真の重なりによる段差の発生、および写真の重なりによる影の変化の発生からなる群から選択された少なくとも一つの情報である」のに対し、甲2発明の偽造特徴情報は、本物と偽造されたものとの明るさの違い、本物は透かしが浮き出ること、本物が貼り合わせでできている場合、貼り合わせ部分の印刷や文字が解読可能か否か、本物が二重印刷してある場合、解読できない部分があるか否か、偽造されたものが貼り合わせの場合、その部分に影ができることである点で相違する。
d 構成Eについて
甲2発明は、「証明書の偽造を検出する方法」であるから、本件発明1の「偽造判定方法」に相当する。
e 一致点・相違点
上記a~dより、本件発明1と甲2発明との一致点・相違点は次の通りである。
(一致点)
A’画像取得工程と、判定工程とを有し、
B 前記画像取得工程は、
写真を含む被判定身分証の画像を取得し、
D 前記判定工程は、
D1’前記被判定身分証において、偽造特徴情報が含まれるかを判定し、
D2 前記偽造特徴情報が含まれる場合に、前記被判定身分証が偽造の身分証であると判定する
E 偽造判定方法。
(相違点)
(相違点1)
本件発明1は、「写真領域抽出工程」「を有し、」「前記写真領域抽出工程は、 前記被判定身分証の画像から、前記被判定身分証における写真領域を抽出」するのに対し、甲2発明は、写真領域抽出工程を有するものではない点。
(相違点2)
判定する領域に関して、本件発明1は、「前記被判定身分証の前記写真領域」であるのに対し、甲2発明は、被判定身分証全体であって写真領域に限定された領域ではない点。
(相違点3)
本件発明1の偽造特徴情報は、「偽写真の貼り付けを示す」情報であって、「真正身分証における写真領域と異なる特徴情報であり、前記真正身分証の規定の写真枠からのずれ、偽写真の貼り付けによる変化、前記写真領域における割印の有無、および前記割印の形状からなる群から選択された少なくとも一つの情報であり、前記偽写真の貼り付けによる変化の情報が、偽写真の貼り付けによる二重の端部の発生、写真の重なりによる段差の発生、および写真の重なりによる影の変化の発生からなる群から選択された少なくとも一つの情報である」のに対し、甲2発明の偽造特徴情報は、本物と偽造されたものとの明るさの違い、本物は透かしが浮き出ること、本物が貼り合わせでできている場合、貼り合わせ部分の印刷や文字が解読可能か否か、本物が二重印刷してある場合、解読できない部分があるか否か、偽造されたものが貼り合わせの場合、その部分に影ができることである点。
(イ)検討
a 新規性について
本件発明1と甲2発明とは上記(ア)eのように相違点1~3を有するものであるから、本件発明1は甲2発明ではない。
b 進歩性について
上記相違点1、2についてまとめて検討する。
特許異議申立人は、特許異議申立書において、「取得画像から写真領域を抽出することは甲3、5のように従来周知であり、当該相違点は当業者が適宜採用しうることにすぎない。」(特許異議申立書54頁)と主張をしている。
そして、上記(1)ア(イ)bで検討したように、画像から写真領域を抽出する構成自体は周知技術であるといえる。
しかし、本件発明1は、写真付きの身分証について、本人ではない写真を貼り付けている身分証は、身分証が偽造か否かは、判定し難いため、身分証における写真の貼付による偽造を判定する新たなシステムの提供を目的とする発明であって、当該目的を達成するために、写真領域を抽出し、写真領域に対して判定を行う構成としているものである。
それに対し、甲第2号証の【0003】には、顔写真や住所や氏名等を貼り替えることにより偽造された証明書を見破ることが困難であったことが記載され、甲2発明は、そのような課題を解決するために、透過光源を用いた証明書イメージ15とサンプルイメージ16とを同時に表示して比較する発明(構成2e)であって、写真領域に限定されず、住所や氏名等を含む証明書全体についての偽造を検知するための発明であるから、証明書の全ての領域について判定することが必須の構成である。
そうすると、写真以外の画像も含む画像から写真領域を抽出する構成は周知技術であるとしても、住所や氏名等の貼り替えも検知するための発明である甲2発明において、写真領域を抽出し、写真領域のみに対して判定を行う本件発明1のような構成とすることは、当業者が容易に想到できるとはいえない。
したがって、相違点3について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者であっても甲2発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明3、4、6~9について
本件発明3、4、6~9は、本件発明1を直接又は間接に引用する発明であるから、甲2発明との相違点は、少なくとも、上記ア(ア)eに掲げた相違点1~3を含むものである。
また、上記ア(イ)bで検討したように、当業者であっても甲2発明及び周知技術に基づき、相違点1、2に係る構成が容易に想到できるとはいえない。
したがって、本件発明3、4、6~9は甲2発明ではなく、本件発明3、4、6~9は、当業者であっても甲2発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明10について
本件発明10は、本件発明1の方法発明を装置発明とした発明であって、本件発明10と甲2発明との相違点は、上記ア(ア)eに掲げた相違点1~3と同様である。
よって、上記ア(イ)bで検討したように、当業者であっても甲2発明及び周知技術に基づき、相違点1、2に係る構成が容易に想到できるとはいえない。
したがって、本件発明10は、当業者であっても甲2発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものではない。
エ 請求項2、5について
請求項2、5に係る特許は、訂正により削除されたので、対象となる請求項が存在しないものとなった。
(3)理由3-1、3-2について
ア 本件発明1について
(ア)甲3発明との対比
本件発明1と甲3発明とを対比する。
a 構成A、Bについて
構成3a、3dより、甲3発明の画像情報取得部20は、運転免許証、金融取引カード、会員カードなどの媒体に記録された情報を読み取ってカードの真贋判定をするために、通常画像と、顔写真部2b等から読み取った特殊画像とを取り込むものであるから、顔写真部2bを含む運転免許証、金融取引カード、会員カードなどの媒体の画像を取得するものといえ、構成Aの「画像取得工程」、構成Bの「前記画像取得工程は、写真を含む被判定身分証の画像を取得」する構成に相当する。
b 構成A、Cについて
構成3fより、甲3発明は、赤外光を照射して、顔写真部2bの顔写真画像が消失したように確認できれば、その媒体2が真正カードであると判断するものである。
ここで、赤外光により、顔写真部2bの顔写真画像が消失したように確認するためには、顔写真部2bがどの部分であるかを認識することが前提であるから、甲3発明においても、構成Aの「写真領域抽出工程」、構成Cの「前記写真領域抽出工程は、前記被判定身分証の画像から、前記被判定身分証における写真領域を抽出」する構成に相当する構成を有しているといえる。
c 構成A、D、D1~D4について
構成3e、3fより、甲3発明の媒体真正判定部33は、赤外光照射により、会員カードの顔写真部2bの顔写真画像が消失したように確認できれば、真正カードと判断するが、会員カードの顔写真部2bにコピーした写真が貼付されている場合、顔写真像が消失せず、貼付されたコピー写真に透かし模様2cが埋もれるために、当媒体2が偽造であることが判定できる構成である。
ここで、顔写真像が消失するか否かの情報は、コピーした写真の貼付すなわち偽写真の貼り付けを示す情報であり、偽写真の貼り付けにより変化する情報であるから、本件発明1と甲3発明とは、「判定工程」「を有し、」「前記判定工程は、前記被判定身分証の前記写真領域において、偽写真の貼り付けを示す偽造特徴情報が含まれるかを判定し、前記偽造特徴情報が含まれる場合に、前記被判定身分証が偽造の身分証であると判定し、前記偽造特徴情報は、真正身分証における写真領域と異なる特徴情報であり、」「偽写真の貼り付けによる変化」「の情報」である点で共通する。
しかし、偽造特徴情報に関して、本件発明1は、「前記真正身分証の規定の写真枠からのずれ、偽写真の貼り付けによる変化、前記写真領域における割印の有無、および前記割印の形状からなる群から選択された少なくとも一つの情報」であるのに対し、甲3発明は、「偽写真の貼り付けによる変化」「の情報」のみである点で相違する。
また、偽写真の貼り付けによる変化の情報に関して、本件発明1は、「前記偽写真の貼り付けによる変化の情報が、偽写真の貼り付けによる二重の端部の発生、写真の重なりによる段差の発生、および写真の重なりによる影の変化の発生からなる群から選択された少なくとも一つの情報」であるのに対し、甲3発明は、顔写真像が消失するか否かの情報である点で相違する。
d 構成Eについて
構成3iより、甲3発明の「真正か偽造かの判定を行う方法」は、構成Eの「偽造判定方法」に相当する。
e 一致点・相違点
上記a~dより、本件発明1と甲3発明との一致点・相違点は次のとおりである。
(一致点)
A 画像取得工程と、写真領域抽出工程と、判定工程とを有し、
B 前記画像取得工程は、
写真を含む被判定身分証の画像を取得し、
C 前記写真領域抽出工程は、
前記被判定身分証の画像から、前記被判定身分証における写真領域を抽出し、
D 前記判定工程は、
D1 前記被判定身分証の前記写真領域において、偽写真の貼り付けを示す偽造特徴情報が含まれるかを判定し、
D2 前記偽造特徴情報が含まれる場合に、前記被判定身分証が偽造の身分証であると判定し、
D3’前記偽造特徴情報は、偽写真の貼り付けによる変化の情報である
E 偽造判定方法。
(相違点)
(相違点1)
偽造特徴情報に関して、本件発明1は、「前記真正身分証の規定の写真枠からのずれ、偽写真の貼り付けによる変化、前記写真領域における割印の有無、および前記割印の形状からなる群から選択された少なくとも一つの情報」であるのに対し、甲3発明は、「偽写真の貼り付けによる変化」「の情報」のみである点。
(相違点2)
偽写真の貼り付けによる変化の情報に関して、本件発明1は、「前記偽写真の貼り付けによる変化の情報が、偽写真の貼り付けによる二重の端部の発生、写真の重なりによる段差の発生、および写真の重なりによる影の変化の発生からなる群から選択された少なくとも一つの情報」であるのに対し、甲3発明は、顔写真像が消失するか否かの情報である点。
(イ)検討
a 新規性について
本件発明1と甲3発明とは上記(ア)eのように相違点1、2を有するものであるから、本件発明1は甲3発明ではない。
b 進歩性について
(a)相違点1について
本件発明1は、「前記真正身分証の規定の写真枠からのずれ、偽写真の貼り付けによる変化、前記写真領域における割印の有無、および前記割印の形状からなる群から選択された少なくとも一つの情報」であるので、いずれか一つの情報であれば良く、甲3発明は、「偽写真の貼り付けによる変化」「の情報」のみであることから、相違点1については、実質的な相違点ではない。
(b)相違点2について
相違点2に係る構成である構成D4は、訂正前の請求項2に係る発明で限定された構成である。
訂正前の請求項2に係る発明に関して、特許異議申立人は、特許異議申立書において、「他方で、甲3には、偽写真の貼り付けによる変化の情報が、貼り合わせによる二重の端部、段差、影の変化であることが記載されていないが、これらの変化の情報は、甲1、2、9に記載されているように従来周知であり、甲3の浮き出し模様に替えて当該周知技術を用いることは当業者であれば適宜採用しうる設計的事項である。
よって、本件第2発明は、甲3及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到しえた発明である。
なお、貼り合わせによる二重の端部、段差、影の変化を検出する技術(具体的手段)も、下記の甲9~11のように古くから知られた技術である。」(特許異議申立書65頁)と主張している。
そして、甲1発明は、構成1fより、カード状の身分証明書の凹凸を確実に読み取ることが可能な構成であり、甲2発明は、構成2jより、貼り合わせの部分に影ができる構成であり、甲9発明は、構成9eより、貼着された紙片等の検出を行う構成であり、甲第10号証には、証明写真においては写真の縁辺が直線分として現れること(【0038】)が開示され、甲第11号証には、顔写真のエッジを検知すること(【0031】)が開示されている。
従って、貼り合わせによる二重の端部、段差、影の変化を検出し、偽造であるか否かを判定する技術は周知技術であるといえる。
しかし、顔写真を赤外光が透過する特殊インクで印刷した画像(構成3b)とすることが前提である甲3発明において、媒体2が偽造であることを判定するために、媒体2の裏面側から顔写真部2bに対して赤外光を照射(透かし用照明)することにより(構成3c)、真正カードであれば、顔写真部2bの顔写真画像が消失したように確認でき、顔写真部2bにコピーした写真などが貼付されている偽造された会員カードの場合、貼付されたコピー写真に透かし模様2cが埋もれるために、透かし模様2cが存在しているか否かの認識が困難となる(構成3f)という構成である。
そうすると、顔写真を赤外光が透過する特殊インクで印刷した画像とすることが前提である甲3発明においては、媒体2の裏面側から顔写真部2bに対して赤外光を照射(透かし用照明)することにより、偽造であるか否かを判定するために、構成3fを採用するものであって、それに加えて、更に、貼り合わせによる二重の端部、段差、影の変化を検出する構成を採用する必要は無く、貼り合わせによる二重の端部、段差、影の変化を検出し、偽造であるか否かを判定する技術は周知技術であるとしても、甲3発明において、当該周知技術を適用することは、当業者が容易に想到できるとはいえない。
したがって、本件発明1は、当業者であっても甲3発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものではない。
なお、特許異議申立人は、「甲3の浮き出し模様に替えて当該周知技術を用いること」と主張しているように、「浮き出し模様」に着目しているものであるが、「浮き出し模様」は、構成3gの「媒体2にエンボス加工のように凹凸で浮き出し模様が形成されている場合」の記載から見て、媒体2に形成される模様であって、顔写真のみの領域に限定されるものではない。
本件発明1と当該浮き出し模様に着目した甲3発明とを対比した場合には、上記(ア)eに掲げた相違点に加えて、判定する領域が写真領域に限定されるものではない点についても相違点となる。
そして、当該相違点については、上記(1)ア(イ)b及び(2)ア(イ)bで検討したように、当業者が容易に想到できるとはいえない。
イ 本件発明3、4、6~9について
本件発明3、4、6~9は、本件発明1を直接又は間接に引用する発明であるから、甲3発明との相違点は、少なくとも、上記ア(ア)eの相違点1、2を含むものである。
また、上記ア(イ)bで検討したように、当業者であっても甲3発明及び周知技術に基づき、相違点2に係る構成が容易に想到できるとはいえない。
したがって、本件発明7~9は甲3発明ではなく、本件発明3、4、6~9は、当業者であっても甲3発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明10について
本件発明10は、本件発明1の方法発明を装置発明とした発明であって、本件発明10と甲3発明との相違点は、上記ア(ア)eに掲げた相違点1、2と同様である。
また、上記ア(イ)bで検討したように、当業者であっても甲3発明及び周知技術に基づき、相違点2に係る構成が容易に想到できるとはいえない。
したがって、本件発明10は甲3発明ではなく、当業者であっても甲3発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものではない。
エ 請求項2、5について
請求項2、5に係る特許は、訂正により削除されたので、対象となる請求項が存在しないものとなった。
(4)理由4-1、4-2について
ア 本件発明1について
(ア)甲4発明との対比
本件発明1と甲4発明とを対比する。
a 構成A、Bについて
構成4b、4fより、甲4発明のデジタルカメラ11は、ICカード1に貼付された写真8(本人の顔写真)を映像情報として読取る読取装置であるから、構成Aの「画像取得工程」、構成Bの「前記画像取得工程は、写真を含む被判定身分証の画像を取得」する構成に相当する。
b 構成A、Cについて
構成4b、4fより、甲4発明のデジタルカメラ11は、ICカード1に貼付された写真8(本人の顔写真)を映像情報として読取る読取装置であり、構成4dより、甲4発明の二次元感圧素子10aは、写真8の大きさのエリアより少し大きい検出エリアを有していて、デジタルカメラ11による映像としてのビットマップイメージデータに対応する画素単位で凹凸を検出するセンサである。
すなわち、甲4発明のデジタルカメラ11と二次元感圧素子10aは、写真8を読み取る、もしくは、写真8の大きさのエリアより少し大きいエリアを検出エリアとするものであるから、いずれも、写真領域を抽出しているものといえる。
したがって、甲4発明においても、構成Aの「写真領域抽出工程」、構成Cの「前記写真領域抽出工程は、前記被判定身分証の画像から、前記被判定身分証における写真領域を抽出」する構成に相当する構成を有しているといえる。
c 構成A、D、D1~D4について
構成4e、4g~4jより、甲4発明の照合処理プログラム3cは、EEPROM5に記憶されている識別映像データ5a(写真照合のための比較基準)と映像データから生成された識別映像情報とを比較し、EEPROM5に記憶されている識別位置データ5b(突起部8b,8cの位置に対応する比較基準)と、映像データ(ビットマップイメージデータ)と突起部8b,8cの位置を示すビットパターンデータとから生成された識別位置情報とを比較して、識別映像情報と識別映像データ5aとの一致、識別位置情報と識別位置データ5bとの一致をそれぞれ検出して、いずれか1つが一致しない場合は、不一致とする構成である。
ここで、一致しない場合とは、ICカードの写真8において、本人でない写真が貼付されると、映像情報や突起部の位置が異なり、偽のICカードであると判定されることである。
また、甲4発明における識別映像データ5a(写真照合のための比較基準)と識別映像情報とを比較して、識別映像情報と識別映像データ5aとが一致しないことや、識別位置データ5b(突起部8b,8cの位置に対応する比較基準)と識別位置情報とを比較して、識別位置情報と識別位置データ5bとが一致しないことは、いずれも、本人でない写真が貼付されることによる変化を示すことといえる。
したがって、本件発明1と甲4発明とは、「判定工程」「を有し、」「前記判定工程は、前記被判定身分証の前記写真領域において、偽写真の貼り付けを示す偽造特徴情報が含まれるかを判定し、前記偽造特徴情報が含まれる場合に、前記被判定身分証が偽造の身分証であると判定し、前記偽造特徴情報は、真正身分証における写真領域と異なる特徴情報であり、」「偽写真の貼り付けによる変化」「の情報」である点で共通する。
しかし、偽造特徴情報に関して、本件発明1は、「前記真正身分証の規定の写真枠からのずれ、偽写真の貼り付けによる変化、前記写真領域における割印の有無、および前記割印の形状からなる群から選択された少なくとも一つの情報」であるのに対し、甲4発明は、「偽写真の貼り付けによる変化」「の情報」のみである点で相違する。
また、偽写真の貼り付けによる変化の情報に関して、本件発明1は、「前記偽写真の貼り付けによる変化の情報が、偽写真の貼り付けによる二重の端部の発生、写真の重なりによる段差の発生、および写真の重なりによる影の変化の発生からなる群から選択された少なくとも一つの情報」であるのに対し、甲4発明は、識別映像データ5a(写真照合のための比較基準)と識別映像情報とを比較した情報、識別位置データ5b(突起部8b,8cの位置に対応する比較基準)と識別位置情報とを比較した情報である点で相違する。
d 構成Eについて
構成4kより、甲4発明は「ICカードの認証を行う方法」である。そして、ICカードの認証を行うことにより、偽のICカードであると判定するものであるから、甲4発明の「ICカードの認証を行う方法」は、構成Eの「偽造判定方法」に相当する。
e 一致点・相違点
上記a~dより、本件発明1と甲4発明との一致点・相違点は次のとおりである。
(一致点)
A 画像取得工程と、写真領域抽出工程と、判定工程とを有し、
B 前記画像取得工程は、
写真を含む被判定身分証の画像を取得し、
C 前記写真領域抽出工程は、
前記被判定身分証の画像から、前記被判定身分証における写真領域を抽出し、
D 前記判定工程は、
D1 前記被判定身分証の前記写真領域において、偽写真の貼り付けを示す偽造特徴情報が含まれるかを判定し、
D2 前記偽造特徴情報が含まれる場合に、前記被判定身分証が偽造の身分証であると判定し、
D3’前記偽造特徴情報は、偽写真の貼り付けによる変化の情報である
E 偽造判定方法。
(相違点)
(相違点1)
偽造特徴情報に関して、本件発明1は、「前記真正身分証の規定の写真枠からのずれ、偽写真の貼り付けによる変化、前記写真領域における割印の有無、および前記割印の形状からなる群から選択された少なくとも一つの情報」であるのに対し、甲4発明は、「偽写真の貼り付けによる変化」「の情報」のみである点。
(相違点2)
偽写真の貼り付けによる変化の情報に関して、本件発明1は、「前記偽写真の貼り付けによる変化の情報が、偽写真の貼り付けによる二重の端部の発生、写真の重なりによる段差の発生、および写真の重なりによる影の変化の発生からなる群から選択された少なくとも一つの情報」であるのに対し、甲4発明は、識別映像データ5a(写真照合のための比較基準)と識別映像情報とを比較した情報、識別位置データ5b(突起部8b,8cの位置に対応する比較基準)と識別位置情報とを比較した情報である点。
(イ)検討
a 新規性について
本件発明1と甲4発明とは上記(ア)eのように相違点1、2を有するものであるから、本件発明1は甲4発明ではない。
b 進歩性について
(a)相違点1について
本件発明1は、「前記真正身分証の規定の写真枠からのずれ、偽写真の貼り付けによる変化、前記写真領域における割印の有無、および前記割印の形状からなる群から選択された少なくとも一つの情報」であるので、いずれか一つの情報であれば良く、甲4発明は、「偽写真の貼り付けによる変化」「の情報」のみであることから、相違点1については、実質的な相違点ではない。
(b)相違点2について
相違点2に係る構成である構成D4は、訂正前の請求項2に係る発明で限定された構成である。
訂正前の請求項2に係る発明に関して、特許異議申立人は、特許異議申立書において、「他方で、甲4には、偽写真の貼り付けによる変化の情報が、貼り合わせによる二重の端部、段差、影の変化であることが記載されていないが、これらの変化の情報は、甲1、2、9に記載されているように従来周知であり、甲4の突起部8b、8cに替えて当該周知技術を用いることは当業者であれば適宜採用しうる設計的事項である。
よって、本件第2発明は、甲4及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到しえた発明である。
なお、貼り合わせによる二重の端部、段差、影の変化を検出する技術も、甲9~11のように古くから知られた技術である。」(特許異議申立書79頁)と主張している。
そして、上記(3)ア(イ)bで検討したように、貼り合わせによる二重の端部、段差、影の変化を検出し、偽造であるか否かを判定する技術は周知技術であるといえる。
しかし、映像データから生成された識別映像情報(構成4h)と、二次元感圧素子10aにより得られた突起部8b,8cの位置データである識別位置情報(構成4b、4h)とを、識別映像データ5a(比較基準データ)と識別位置データ5bと比較してICカードの認証を行う甲4発明においては、突起部を設けることにより認証を行う構成としているものであって、それに加えて、更に、貼り合わせによる二重の端部、段差、影の変化を検出する構成を採用する必要は無く、貼り合わせによる二重の端部、段差、影の変化を検出し、偽造であるか否かを判定する技術は周知技術であるとしても、甲4発明において、当該周知技術を適用することは、当業者が容易に想到できるとはいえない。
したがって、本件発明1は、当業者であっても甲4発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明3、4について
本件発明3、4は、本件発明1を直接又は間接に引用する発明であるから、甲4発明との相違点は、少なくとも、上記ア(ア)eに掲げた相違点1、2を含むものである。
そして、上記ア(イ)bで検討したように、当業者であっても甲4発明及び周知技術に基づき、相違点2に係る構成が容易に想到できるとはいえない。
したがって、本件発明3、4は、当業者であっても甲4発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明10について
本件発明10は、本件発明1の方法発明を装置発明とした発明であって、本件発明10と甲4発明との相違点は、上記ア(ア)eに掲げた相違点1、2と同様である。
また、上記ア(イ)bで検討したように、当業者であっても甲4発明及び周知技術に基づき、相違点2に係る構成が容易に想到できるとはいえない。
したがって、本件発明10は、甲4発明ではなく、当業者であっても甲4発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものではない。
エ 請求項2、5について
請求項2、5に係る特許は、訂正により削除されたので、対象となる請求項が存在しないものとなった。
(5)理由5-1、5-2について
ア 本件発明1について
(ア)甲9発明との対比
本件発明1と甲9発明とを対比する。
a 構成A、Bについて
構成9bより、甲9発明の可視光センサー6、赤外線センサー7及び透過型の可視光センサー8は、運転免許証の紋様を読み取るものである。
そして、構成9dより、可視光センサー6と赤外線センサー7は運転免許証の写真部分と対応する配置となっていることから、運転免許証には写真が含まれるといえる。
そうすると、甲9発明は、可視光センサー6、赤外線センサー7及び透過型の可視光センサー8を用いて、写真を含む運転免許証の画像を取得するものであるといえる。
以上より、甲9発明の可視光センサー6、赤外線センサー7及び透過型の可視光センサー8は、構成Aの「画像取得工程」、構成Bの「前記画像取得工程は、写真を含む被判定身分証の画像を取得」する構成に相当する。
b 構成A、Cについて
上記aで先述したように、可視光センサー6と赤外線センサー7は運転免許証の写真部分と対応する配置となっていることから、写真部分がどの部分であるかを認識することが前提であるから、甲9発明においても、構成Aの「写真領域抽出工程」、構成Cの「前記写真領域抽出工程は、前記被判定身分証の画像から、前記被判定身分証における写真領域を抽出」する構成に相当する構成を有しているといえる。
c 構成A、D、D1~D4について
構成9dより、可視光センサー6と赤外線センサー7は運転免許証の写真部分と対応する配置となっており、反射率の相違を利用して真贋を判定し、赤外線センサー7における赤外線の反射率は写真上と写真のない部分での変化はないが、可視光センサー6における反射率、透過型の可視光センサー8における透過率は写真の有無によって大きく異なるものである。
以上より、甲9発明は、可視光センサー6、赤外線センサー7及び透過型の可視光センサー8を用いて写真の有無を認識し、真贋を判定するものである。
ここで、写真の有無により真贋を判定することから、写真の有無は、偽造特徴情報といえる。
そうすると、本件発明1と甲9発明とは、「判定工程」「を有し、」「前記判定工程は、前記被判定身分証の前記写真領域において、」「偽造特徴情報が含まれるかを判定し、前記偽造特徴情報が含まれる場合に、前記被判定身分証が偽造の身分証であると判定し、前記偽造特徴情報は、真正身分証における写真領域と異なる特徴情報」である点で共通する。
しかし、偽造特徴情報に関して、本件発明1は、「偽写真の貼り付けを示す」情報であり、「前記真正身分証の規定の写真枠からのずれ、偽写真の貼り付けによる変化、前記写真領域における割印の有無、および前記割印の形状からなる群から選択された少なくとも一つの情報」であるのに対し、甲9発明は、写真の有無である点で相違する。
また、本件発明1は、「前記偽写真の貼り付けによる変化の情報が、偽写真の貼り付けによる二重の端部の発生、写真の重なりによる段差の発生、および写真の重なりによる影の変化の発生からなる群から選択された少なくとも一つの情報」であるのに対し、甲9発明は、偽写真の貼り付けによる変化の情報ではない点で相違する。
d 構成Eについて
構成9gより、甲9発明の「自動車運転免許証の真贋判定を行う方法」は、構成Eの「偽造判定方法」に相当する。
e 一致点・相違点
上記a~dより、本件発明1と甲9発明との一致点・相違点は次のとおりである。
(一致点)
A 画像取得工程と、写真領域抽出工程と、判定工程とを有し、
B 前記画像取得工程は、
写真を含む被判定身分証の画像を取得し、
C 前記写真領域抽出工程は、
前記被判定身分証の画像から、前記被判定身分証における写真領域を抽出し、
D 前記判定工程は、
D1’前記被判定身分証の前記写真領域において、偽造特徴情報が含まれるかを判定し、
D2 前記偽造特徴情報が含まれる場合に、前記被判定身分証が偽造の身分証であると判定し、
D3’前記偽造特徴情報は、真正身分証における写真領域と異なる特徴情報である
E 偽造判定方法。
(相違点)
(相違点1)
偽造特徴情報に関して、本件発明1は、「偽写真の貼り付けを示す」情報であり、「前記真正身分証の規定の写真枠からのずれ、偽写真の貼り付けによる変化、前記写真領域における割印の有無、および前記割印の形状からなる群から選択された少なくとも一つの情報」であるのに対し、甲9発明は、写真の有無である点。
(相違点2)
本件発明1は、「前記偽写真の貼り付けによる変化の情報が、偽写真の貼り付けによる二重の端部の発生、写真の重なりによる段差の発生、および写真の重なりによる影の変化の発生からなる群から選択された少なくとも一つの情報」であるのに対し、甲9発明は、偽写真の貼り付けによる変化の情報ではない点で相違する。
(イ)検討
a 新規性について
本件発明1と甲9発明とは上記(ア)eのように相違点1、2を有するものであるから、本件発明1は甲9発明ではない。
b 進歩性について
相違点1について検討する。
特許異議申立人は、特許異議申立書において、「甲9には、運転免許証の紋様(「画像」に相当)を可視光センサー6、赤外線センサー7及び透過型の可視光センサー8によって読み取り、反射型及び透過型の可視光センサー8によって写真有無による反射率及び透過率を検出することが記載されており(段落17、19)、当該写真貼り付けによる透過率の相違は本件第1発明における「偽写真の貼り付けによる変化」に相当する。」(特許異議申立書87頁)と主張している。
ここで、反射型及び透過型の可視光センサー8によって検出できるのは、写真の有無であって、偽写真の貼り付けを検出できるものであると認めることはできない。
そして、甲第9号証の【0002】~【0004】には、以下のような記載がある。
【0002】
【発明の背景】近時、自動販売機によって本来は未成年者に対する販売が規制されているアルコール飲料、煙草をはじめ成人向の録画済ビデオテープ、雑誌等が自由に購入できる状態となっている。
【0003】かかる商品を取り扱う自動販売機には現在年齢を確認し、購入状態にセットアップするため、自動運転免許証を挿入させて年齢を算出する運転免許証の識別装置が附設されるようになってきている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記した運転免許証の識別装置はコピー機やプリンタを使用した偽造免許証に対しても対応が十分とはいえず、特に真正の運転免許証の生年月日の欄にコピー機による数字を小さく切って貼着したタイプの偽造免許証を識別できる装置は存在していない。
すなわち、甲9発明は、年齢確認を行う自動販売機において、生年月日を偽造した偽造運転免許証を識別するための発明であり、構成9eのような貼着された紙片等の検出を行うラインセンサー12は、生年月日の偽造を識別するための構成であって、顔写真については、その有無を認識できる程度の構成であれば良く、顔写真が偽写真であるか否かを認識することを想定した発明ではない。
そうすると、甲9発明は、写真の認識として、写真の有無が認識できる構成であれば良く、偽造特徴情報として、「偽写真の貼り付けを示す」情報とすることが周知技術であるとしても、甲9発明における偽造特徴情報として、「偽写真の貼り付けを示す」情報とすることは、当業者が容易に想到できるとはいえない。
したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者であっても甲9発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明3、4、6~9について
本件発明3、4、6~9は、本件発明1を直接又は間接に引用する発明であるから、甲9発明との相違点は、少なくとも、上記ア(ア)eに掲げた相違点1、2を含むものである。
また、上記ア(イ)bで検討したように、当業者であっても甲9発明及び周知技術に基づき、相違点1に係る構成が容易に想到できるとはいえない。
したがって、本件発明3、4、7~9は甲9発明ではなく、本件発明3、4、6~9は、当業者であっても甲9発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明10について
本件発明10は、本件発明1の方法発明を装置発明とした発明であって、本件発明10と甲9発明との相違点は、上記ア(ア)eに掲げた相違点1、2と同様である。
また、上記ア(イ)bで検討したように、当業者であっても甲9発明及び周知技術に基づき、相違点1に係る構成が容易に想到できるとはいえない。
したがって、本件発明10は甲9発明ではなく、当業者であっても甲9発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものではない。
エ 請求項2、5について
請求項2、5に係る特許は、訂正により削除されたので、対象となる請求項が存在しないものとなった。
(6)理由6(発明該当性違反)について
a 特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、特許異議申立書において、明確性違反に関して以下の主張をしている。(以下、「主張6」という。)
「写真領域抽出及び偽造判定を人が行う態様を包含しており、当該態様は「人間の精神活動」に該当するから、本件第1発明は特許法第29条第1項柱書に違反している。」(特許異議申立書92頁)
b 主張6に対する検討
特許異議申立人は、写真領域抽出及び偽造判定が人間の精神活動に該当する旨の主張をしているが、明細書に記載された発明の目的や発明の詳細な説明に照らすと、本件発明1は、精神活動それ自体に向けられたものとはいい難く、全体としてみると、むしろ、偽造判定装置やシステムにおけるコンピュータにより写真領域抽出及び偽造判定を実行する方法であると理解することができる。
そして、本件発明1は、写真領域抽出工程として、「前記被判定身分証の画像から、前記被判定身分証における写真領域を抽出」するものであって、判定工程として、「前記被判定身分証の前記写真領域において、偽写真の貼り付けを示す偽造特徴情報が含まれるかを判定し、前記偽造特徴情報が含まれる場合に、前記被判定身分証が偽造の身分証であると判定」するものであって、身分証から抽出された写真領域における偽写真の貼り付けによる変化(偽造特徴情報)に着目して、偽造の身分証であるか否かを判定する構成であり、自然法則を利用した技術思想の創作に当たるといえるので、発明に該当するものである。
本件発明3、4、6~9についても同様である。
従って、発明該当性違反に関する特許異議申立人の主張6を採用することはできない。
(7)理由7(明確性違反)について
a 特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、特許異議申立書において、明確性違反に関して以下の6つの主張をしている。
(a)「写真領域抽出工程」、「判定工程」について
「本件第1発明は・・・判定をコンピュータが行うのか人が行うのか不明瞭である。本件第2~9発明についても同様である。」(特許異議申立書93頁)(以下、「主張7-1」という。)
(b)「偽造特徴情報が含まれているか判定し」について
「本件第1発明は・・・「偽造特徴情報が含まれているか判定」するための具体的な課題解決手段が不明確である。
・・・
よって、本件第1発明は、出願時の技術常識を考慮すると発明特定事項が不足していることが明らかであり・・・、発明の範囲が不明確である。
本件第2~10発明についても同様である。」(特許異議申立書93~94頁)(以下、「主張7-2」という。)
(c)「規定の写真枠からのずれ」について
「本件第1発明は、「写真領域において、偽写真の貼り付けを示す偽造特徴情報が含まれるかを判定し」、及び「前記偽造特徴情報は、真正身分証における写真領域と異なる特徴情報であり、前記真正身分証の規定の写真枠からのずれである」と記載しているが、前者は「写真領域」の偽造特徴情報であるのに対し、後者は写真領域外の枠との間を意味しており、両者は矛盾する。
本件第2~10発明についても同様である。」(特許異議申立書94頁)(以下、「主張7-3」という。)
(d)「前記判定部」について
「本件第3発明は「前記判定部」と記載しているが、「判定部」は前記されておらず、不明確である。
本件第4~9発明についても同様である。」(特許異議申立書94頁)(以下、「主張7-4」という。)
(e)「二重貼り」について
「本件第4発明は、「一重貼りの写真端部の外側の影よりも幅広の影が確認された場合、および、前記写真領域における写真端部において、印刷の写真では発生しない影が発生していると確認された場合」と特定している。
当該発明特定事項における「一重貼りの写真端部の外側の影よりも幅広の影が確認された場合」は二重貼りの場合を意味し、「前記写真領域における写真 端部において、印刷の写真では発生しない影が発生していると確認された場合」は一重貼りの場合を意味し、両方を満たす場合は存在しないと考えられ、両者は矛盾する。
よって、本件第4発明は不明確である。本件第5~9発明についても同様である。」(特許異議申立書94頁)(以下、「主張7-5」という。)
(f)「偽造特徴情報」、「真正特徴情報」について
「本件第5発明は、「偽造特徴情報」、「真正特徴情報」と規定しているが、両者の関係が不明確である。
本件第6~9発明についても同様である。」(特許異議申立書94~95頁)(以下、「主張7-6」という。)
b 主張7-1~7-6に対する検討
(a)主張7-1について
明細書に記載された発明の目的や発明の詳細な説明に照らすと、偽造判定装置やシステムにおけるコンピュータにより写真領域抽出及び偽造判定を実行する方法であると理解することができ、発明として明確なものである。
(b)主張7-2について
特許異議申立人が主張するように、本件発明1は、「偽造特徴情報が含まれているかを判定」するための具体的な課題解決手段は特定されていないものであるが、「偽造特徴情報が含まれているかを判定」するとの記載自体は明確であり、特許異議申立人の主張を採用することはできない。
(c)主張7-3について
本件発明において、偽写真が貼り付けられている被判定身分証を用いた場合には、偽写真が貼り付けられている写真領域で偽写真の写真枠が検出され、当該写真枠が真の写真である場合の写真枠とずれている場合には、偽造であると判断するものである。
そうすると、「(偽写真が貼り付けられている)写真領域において、偽写真の貼り付けを示す偽造特徴情報が含まれるかを判定し」、及び「前記偽造特徴情報は、真正身分証における写真領域と異なる特徴情報であり、前記真正身分証の規定の写真枠からのずれである」との記載は明確であり、特許異議申立人の主張を採用することはできない。
(d)主張7-4について
訂正により、「前記判定部」が「前記判定工程」に訂正されたので、記載が明確になった。
(e)主張7-5について
請求項4の「前記写真領域における写真端部の外側の影が、一重貼りの写真端部の外側の影よりも幅広の影が確認された場合」(以下、「Aの場合」という。)および「前記写真領域における写真端部において、印刷の写真では発生しない影が発生していると確認された場合」(以下、「Bの場合」という。)とは、Aの場合とBの場合の両方が同時に起こる場合を想定したものでなく、Aの場合とBの場合は、いずれも、「影の変化の発生である」とすることを意味することは明らかであるから、当該記載は明確であり、特許異議申立人の主張を採用することはできない。
(f)主張7-6について
請求項5に係る特許は、訂正により削除されたので、主張7-6は、対象となる請求項が存在しないものとなった。
従って、明確性違反に関する特許異議申立人の主張を採用することはできない。
(8)理由8(サポート要件違反)について
a 特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、特許異議申立書において、サポート要件違反に関して以下の主張をしている。(以下、「主張8」という。)
「本件第1発明の課題は、「より簡便に、身分証における写真の貼付による偽造を判定する新たなシステムの提供」である(本件特許明細書の段落5)。
本件第1発明は、「前記判定工程は、前記被判定身分証の前記写真領域において、偽写真の貼り付けを示す偽造特徴情報が含まれるかを判定し、前記偽造特徴情報が含まれる場合に、前記被判定身分証が偽造の身分証であると判定し、前記偽造特徴情報は、真正身分証における写真領域と異なる特徴情報であり、前記真正身分証の規定の写真枠からのずれ、偽写真の貼り付けによる変化、前記写真領域における割印の有無、前記割印の形状、前記写真領域におけるエンボスの有無、および前記エンボスの形状からなる群から選択された少なくとも一つの情報である」と記載しているが、発明の詳細な説明には、「前記偽造特徴情報は、例えば、前述のように、偽造判定装置10の記憶装置108等の記憶装置に記憶されてもよいし、外部サーバに蓄積されてもよく、後者の場合、偽造判定装置10は、例えば、前記外部サーバから前記偽造特徴情報を取得してもよい。」、「偽造判定装置10において、前記真正身分証の画像と、前記偽造された身分証の画像とを比較することにより、取得してもよい」(段落27、28)としか記載されておらず、発明の詳細な説明に記載された発明を超えて特許を請求している。
本件第2~10発明についても同様である。」(特許異議申立書95頁)
b 主張8に対する検討
明細書の【0025】には、「判定部13は、前記写真領域において、偽写真の貼り付けを示す偽造特徴情報が含まれるかを判定する。前記偽造特徴情報は、真正身分証における写真領域と異なる特徴情報であり、例えば、前記真正身分証の規定の写真枠からのずれ、偽写真の貼り付けによる変化、前記写真領域における割印の有無、前記割印の形状、前記写真領域におけるエンボスの有無、および前記エンボスの形状があげられる。前記偽写真の貼り付けによる変化の情報は、例えば、偽写真の貼り付けによる同一方向における二重の端部の発生、角部における二重の端部の発生、写真の重なりによる段差の発生、および写真の重なりによる影の変化の発生の情報があげられる。前記影の変化は、具体的には、例えば、前記偽写真の浮きによる影の変化、および写真の厚みが増すことによる影の変化があげられる。」と記載されていることから、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明である。
従って、サポート要件違反に関する特許異議申立人の主張を採用することはできない。
(9)理由9(実施可能要件違反)について
a 特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、特許異議申立書において、実施可能要件違反に関して以下の主張をしている。(以下、「主張9」という。)
「本件第1発明は、「前記判定工程は、前記被判定身分証の前記写真領域において、偽写真の貼り付けを示す偽造特徴情報が含まれるかを判定し、前記偽造特徴情報が含まれる場合に、前記被判定身分証が偽造の身分証であると判定し、前記偽造特徴情報は、真正身分証における写真領域と異なる特徴情報であり、前記真正身分証の規定の写真枠からのずれ、偽写真の貼り付けによる変化、前記写真領域における割印の有無、前記割印の形状、前記写真領域におけるエンボスの有無、および前記エンボスの形状からなる群から選択された少なくとも一つの情報である」と数多くの「偽造特徴情報」を記載しているが、当該工程を実施するための具体的手段が発明の詳細な説明に記載されていない。
発明の詳細な説明には、「前記偽造特徴情報を用いた前記判定について、図3を用いて、具体的に説明する。・・・図3(A)は、前記偽写真の貼り付けにより、前記写真領域の角部における二重の端部が発生している場合を示し、偽写真の貼り付けにより、前記貼り付けられた写真の下に、前記真正身分証の写真が見えていることを示す。図3(B)は、偽写真の貼り付けによる段差が発生している場合を示し、偽写真の貼り付けにより、前記貼り付けられた写真において、前記真正身分証の写真の影響による段差が生じていることを示す。図3(C)は、偽写真の貼り付けによる同一方向における二重の端部が発生している場合を示し、偽写真の貼り付けにより、前記貼り付けられた写真の下に、前記真正身分証の写真が見えていることを示す。図3(D)は、写真の重なりによる浮きが発生している場合を示し、偽写真の貼り付けにより、写真端部の外側の影が、一重貼りの写真端部の外側の影よりも幅広の影となっていることを示す。図3(E)は、写真の重なりにより、写真の厚みが増すことによる影の変化が発生している場合を示し、偽写真の貼り付けにより、写真端部の外側の影が、一重貼りの写真端部の外側の影よりも幅広の影となっていることを示す。」と記載するのみで(段落33)、「前記貼り付けられた写真の下に、前記真正身分証の写真が見えていること」(図3(A))、「前記真正身分証の写真の影響による段差が生じていること」(図3(B))、「前記貼り付けられた写真の下に、前記真正身分証の写真が見えていること」(図3(C))、「写真端部の外側の影が、一重貼りの写真端部の外側の影よりも幅広の影となっていること」(図3(D))、「偽写真の貼り付けにより、写真端部の外側の影が、一重貼りの写真端部の外側の影よりも幅広の影となっていること」(図3(E))をどのような手段で検出・比較・判定するのか、当業者が実施できる程度に記載されているといえない。
よって、本件第1発明及び発明の詳細な説明は、実施可能要件を満足していない。
本件第2~10及び発明の詳細な説明についても同様である。」(特許異議申立書95~97頁)
b 主張9に対する検討
確かに、【0033】及び【図3】には、具体的な手法が記載されていないものの、これらの判定は、いずれも従来から知られている手法であって、発明の詳細な説明に具体的な記載が無くとも、当業者であれば従来から知られている手法を用いることにより発明を実施することは可能となるものである。
従って、実施可能要件違反に関する特許異議申立人の主張を採用することはできない。
第7 令和5年12月19日付け意見書における特許異議申立人の主張について
1 特許異議申立人の主張
令和5年12月19日付け意見書において特許異議申立人は、以下のような主張をしている。
(1)訂正要件違反(意見書9~10頁。以下、「主張A」という。)
(2)甲3に基づく新規性及び進歩性欠如(意見書10~17頁。以下、「主張B」という。)
(3)甲4に基づく新規性及び進歩性欠如(意見書18~24頁。以下、「主張C」という。)
(4)甲1に基づく新規性及び進歩性欠如(意見書25~29頁。以下、「主張D」という。)
(5)甲2に基づく新規性及び進歩性欠如(意見書30~32頁。以下、「主張E」という。)
(6)明確性違反(意見書33~34頁。以下、「主張F」という。)
2 主張についての検討
(1)主張Aについて
主張Aについては、上記第2の2(3)で検討したとおりである。
(2)主張B~Eについて
主張B~Eの新規性及び進歩性欠如に係る主張は、令和5年10月27日に訂正された発明に対しての主張であって、本件発明1、3、4、6~10については、上記第6のとおり甲1発明~甲4発明に基づく新規性及び進歩性欠如についての主張を認めることはできない。
(3)主張Fについて
主張Fについて、特許異議申立人は主として以下の2つを主張するものである。
ア 訂正発明1と訂正発明5との手順の関係
「訂正発明1における偽造判定と訂正発明5における偽造判定との関係が不明確である。」(意見書33頁。以下、「主張F-1」という。)
イ 訂正発明1と訂正発明7との手順の関係
「訂正発明1における偽造判定と訂正発明7における偽造判定との関係が不明確である。」(意見書34頁。以下、「主張F-2」という。)
請求項5に係る特許は、上記第2の1(5)のとおり、訂正により削除されたので、主張F-1については、対象が存在しないものになった。
主張F-2について、請求項1に係る発明は「前記被判定身分証の前記写真領域において、偽写真の貼り付けを示す偽造特徴情報が含まれるかを判定」する構成であり、請求項7に係る発明は「さらに、偽造特徴情報取得工程を有し、前記偽造特徴情報取得工程において、前記真正身分証の画像と、偽造された身分証の画像とを比較することにより、前記偽造特徴情報を取得する」構成で限定した発明である。
すなわち、請求項1を引用する請求項7に係る発明は、偽造特徴情報が含まれるかを判定する際に、真正身分証の画像と、偽造された身分証の画像とを比較することにより、偽造特徴情報を取得する構成であって、発明は明確である。
3 まとめ
従って、令和5年12月19日付け意見書における特許異議申立人の主張は、いずれも採用することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、請求項1、3、4、6~10に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に請求項1、3、4、6~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
更に、請求項2、5に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項2、5に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700461