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特許異議申立

2023-700877

抗ウィルス部材

審判番号
2023-700877
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-176732
登録番号
7229216
請求日
2023年08月28日
審決日
2024年02月20日
公報発行日
2024年03月29日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】イビデン株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人WisePlus
  • 【異議申立人】土田 裕介
  • 【異議申立人代理人】長谷川 芳樹
  • 【異議申立人代理人】黒木 義樹
  • 【異議申立人代理人】須藤 康洋
  • 【異議申立人代理人】三上 敬史
  • 【異議申立人代理人】杉浦 崇仁
審判長/審判官
  • 審判長 木村 敏康
  • 審判官 宮崎 大輔
  • 審判官 野田 定文
分類
P1651.121-Y (A01N) / P1651.537-Y (A01N)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7229216号発明「抗ウィルス部材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7229216号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7229216号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成30年11月16日に出願した特願2018-215709号の一部を令和2年10月21日に新たに特願2020-176732号として特許出願としたものであって、令和5年2月16日に特許権が設定登録され、同年同月27日にその特許掲載公報が発行され、その後、その請求項1~7(全請求項)に係る特許に対して、同年8月28日に特許異議申立人 土田 裕介から、特許異議の申立てがされたものである。 特許異議の申立て以後の手続の経緯は次のとおりである。 令和5年11月 6日付け 取消理由通知 令和6年 1月 9日 意見書(特許権者) 第2 本件発明 本件特許の請求項1~7に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」という。)。 「【請求項1】 基材表面に抗ウィルス成分として銅化合物を含み、前記銅化合物は、X線光電子分光分析法により、925~955eVの範囲にあるCu(I)とCu(II)に相当する結合エネルギーを5分間測定することでCu(I)とCu(II)との共存が確認されるとともに、脂肪酸で被覆された一価の銅化合物粒子を含まないバインダ硬化物が固着形成されてなり、前記バインダ硬化物を含む基材表面のJIS Z 8741に準拠した光沢度が、45%以上、100%未満であることを特徴とする抗ウィルス部材。 【請求項2】 前記抗ウィルス成分は、TiO2を含まない請求項1に記載の抗ウィルス部材。 【請求項3】 前記銅化合物は、光触媒物質の表面に担持された一価の銅化合物と二価の銅化合物の混合物を含まない請求項1又は2に記載の抗ウィルス部材。 【請求項4】 前記バインダ硬化物は、膜状に基材表面に固着されてなるか、島状に分散して基材表面に固着されてなるか、もしくは、基材表面に前記バインダ硬化物が形成された領域と前記バインダ硬化物が形成されていない領域とが混在して設けられてなる請求項1~3のいずれか1項に記載の抗ウィルス部材。 【請求項5】 前記バインダ硬化物は、有機バインダ、無機バインダ、及び、有機・無機ハイブリッドバインダからなる群から選択される少なくとも1種以上のバインダ硬化物を含む請求項1~4のいずれか1項に記載の抗ウィルス部材。 【請求項6】 前記有機バインダは、熱硬化性樹脂及び電磁波硬化型樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である請求項5に記載の抗ウィルス部材。 【請求項7】 前記無機バインダは、シリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾル、ジルコニアゾル、及び、ケイ酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種である請求項5に記載の抗ウィルス部材。」 第3 取消理由通知の概要 令和5年11月6日付けの取消理由通知で通知された取消理由は、次の理由1からなるものである。 〔理由1〕本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 ・本件特許明細書の実施例の記載からみて、光沢度が45~90%である場合以外をも含む本件発明1~7は、発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものとはいえない。 よって、本件特許の請求項1~7に係る発明に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定に該当し取り消されるべきものである。 第4 当審の判断 1.取消理由通知で示した取消理由(理由1(サポート要件))について (1)判断の前提 特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである〔平成17年(行ケ)10042号判決参照。〕。 (2)本件発明の課題 本件特許明細書【0007】には、「本発明は・・・高額な合成設備を必要とせず、簡便に施工済の据え付け品等に対しても現場施工により、信頼性の高い抗ウィルス性等の抗微生物性能を発揮する抗微生物部材を提供することを目的とする。」と記載されている。 ここで、本件発明1~7は「抗ウィルス部材」に関する発明であるから、その課題は、抗微生物性能の中でも「抗ウィルス性」の発揮にあることは明らかである。 してみると、本件発明1~7の課題は、「高額な合成設備を必要とせず、簡便に施工済の据え付け品等に対しても現場施工により、信頼性の高い抗ウィルス性を発揮する抗ウィルス部材を提供すること」であると認められる。 (3)本件特許明細書に記載の実施例との関係について 本件発明では、抗ウィルス部材において「基材表面に抗ウィルス成分として銅化合物を含み、前記銅化合物は、X線光電子分光分析法により、925~955eVの範囲にあるCu(I)とCu(II)に相当する結合エネルギーを5分間測定することでCu(I)とCu(II)との共存が確認されるとともに、脂肪酸で被覆された一価の銅化合物粒子を含まないバインダ硬化物が固着形成されてな」ること、及び「バインダ硬化物を含む基材表面のJIS Z 8741に準拠した光沢度が、45%以上、100%未満であること」が特定されている。 そして、本件特許明細書の【0011】及び【0012】において、バインダ硬化物を含む基材表面のJIS Z 8741に準拠した光沢度が45%以上100%未満であることと、抗ウィルス活性を含む抗微生物活性が向上することとの技術的関係が説明され、また、同【0127】において、バインダ硬化物においてCu(I)とCu(II)との共存が確認されることで、抗微生物活性が向上することが記載され、その上で、同【0148】【表1】の「 [図:0001407851000001.jpg] 」との記載にある実施例、比較例、及び試験例の評価結果(【0130】~【0149】)において、光沢度が45~90%の場合(実施例1~5)に、そうでない場合と比較して、抗ウィルス活性値に優れることや、バインダ硬化物においてCu(I)とCu(II)との共存が確認される場合(実施例1~3)に、そうでない場合と比較して、抗ウィルス活性値に優れることが示されている。 また、上記評価結果から、光沢度に応じて抗ウィルス活性値が変化していることが読み取れるから、光沢度が90%を超え100%未満の範囲においては、光沢度が80%又は90%である場合(実施例3及び4)と、光沢度が100%である場合(試験例1)との間の抗ウィルス活性値を取ると当業者は認識できる。 したがって、バインダ硬化物を含む基材表面のJIS Z 8741に準拠した光沢度が45%以上100%未満であること、及びバインダ硬化物においてCu(I)とCu(II)との共存が確認されることを特定した本件発明1~7は、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 (4)まとめ したがって、本件発明は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていないものに該当せず、上記〔理由1〕に理由はない。 2.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について (1)申立理由1(進歩性) ア 特許異議申立人が主張する理由の概要 特許異議申立書で特許異議申立人が主張する申立理由1のうち、甲第1号証を主引例とする理由の要旨は、本件発明1~7は、甲第1号証に記載された発明及び出願時の技術常識(甲第3号証)から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~7は特許法第29条第2項の規定に違反しており、本件特許は同法第113条第2号の規定に該当し取り消されるべきものである。 また、特許異議申立書で特許異議申立人が主張する申立理由1のうち、甲第2号証を主引例とする理由の要旨は、本件発明1~5及び7は、甲第2号証に記載された発明及び出願時の技術常識(甲第3号証)から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~5及び7は特許法第29条第2項の規定に違反しており、本件特許は同法第113条第2号の規定に該当し取り消されるべきものである。 そして、証拠として、次の甲第1~3号証を提示している。 甲第1号証:特開平10-34815号公報 甲第2号証:特開2007-327006号公報 甲第3号証:特表2008-534708号公報 イ 甲第1~3号証の記載事項 甲第1号証には、以下の記載がある(下線及び枠線は、当審合議体による。以下同じ。)。 摘記1a: 「【請求項1】 比重が1.0~1.6の熱硬化型塗料に抗菌、防カビ剤を添加して、最表層に塗装、焼き付け硬化させた塗装金属板において、抗菌、防カビ剤を樹脂担体表面に担持させて、担持後の平均粒径を0.9μm以下、比重を1.5以下にしたことを特徴とする抗菌、防カビ性に優れた塗装金属板。 ・・・ 【請求項4】 抗菌、防カビ剤が銀、錫、銅および亜鉛の1種または2種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の抗菌、防カビ性に優れた塗装金属板。」 摘記1b: 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、カビや雑菌の発生し易い用途に使用するのに好適な抗菌、防カビ性に優れた塗装鋼板に関する。 【0002】 【従来技術】浴室、厨房室などのような湿気の多い部屋の内装材や電気洗濯機のような水を取り扱う機器の外板に塗装金属板を使用すると、カビや雑菌が容易に発生することは従来より知られているが、近年では、建物の気密化に伴い、屋内の換気不良から、病院や食品工場の内装材に塗装金属板を使用した場合にもカビや雑菌が発生することが問題になっている。 【0003】そこで、このような用途に使用する塗装金属板には、抗菌、防カビ剤を塗膜に添加したものを使用している。この塗装金属板は塗料に抗菌、防カビ剤を添加して、それを最表層に塗装した後、焼き付け硬化させたものであるが、抗菌、防カビ剤としては、銀、錫、銅および亜鉛のような重金属の粉末が使用されていた。しかし、このような抗菌、防カビ剤は重いので、塗料に添加しても、塗膜が焼き付け硬化されるまでに沈降してしまう。このため、塗膜表面からは露出せず、抗菌、防カビ作用を発揮しない。 ・・・ 【0007】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、光沢や加工性を低下させることなく優れた抗菌、防カビ性を発揮する塗装金属板を提供するものである。」 摘記1c: 「【0018】 【実施例】 実施例1 溶融亜鉛めっき鋼板(板厚0.6mm、片面付着量60g/m2)に塗布型クロメ-ト処理を施して、クロメ-ト皮膜(皮膜量40mg/m2)を形成した後、ポリエステル系樹脂の下塗り塗料を乾燥塗膜厚で5μmになるように塗装して、焼き付け乾燥し、その後表1に示す組成のエナメルタイプのポリエステル系樹脂の上塗り塗料を乾燥塗膜厚で15μmになるように塗装して、焼き付け乾燥した。なお、上塗り塗料の抗菌、防カビ剤添加前の比重は1.21である。 【0019】なお、実施例の抗菌、防カビ剤は、アクリルニトリルと酸性基含有単量体とを表1の割合で乳化重合して得られた共重合体の球状微粒子をpH2~4、濃度1~500m.mol/lの硝酸銀溶液、硫酸銅溶液、塩化亜鉛溶液(液温50~98℃)のいずれか1種に30~120分浸漬して、イオン交換により金属を担持させたものである。また、従来例の抗菌、防カビ剤は市販のものを使用した。 【0020】 【表1】 [図:0001407851000002.jpg] ・・・ 【0021】その後、以上のようにして製造した塗装鋼板に次の試験を実施した。表2にこの試験結果を示す。 ・・・ (4)光沢測定 JIS Z 8741の鏡面反射率測定装置を用いて、入射角60度、反射角60度で鏡面反射率を測定した。 【0025】 【表2】 [図:0001407851000003.jpg] 」 甲第2号証には、以下の記載がある。 摘記2a: 「【請求項1】 ポリビニルアルコールと、 Cu2+、Fe3+、Al3+、およびCr3+からなる群から選択される少なくとも一種の金属イオンの、塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、炭酸塩、蟻酸塩、および酢酸塩からなる群から選択される少なくとも一種である金属塩と、 溶媒としての水と を含んでなり、前記金属塩が、前記ポリビニルアルコールの単位構造の総モル量に対して、1/700~1/15のモル比となる量で含有されてなる、コーティング組成物。」 摘記2b: 「【0002】 背景技術 一般に、水洗トイレの便器内部や洗面器内部、浴室の洗い場における床や壁、台所のシンク内部のような、一時的に水が流れる環境には、各環境に特有の汚れが発生する。そのような汚れの例としては、水垢汚れ、便器における大便付着、黒ずみ、および黄ばみ、浴室における皮脂汚れおよび石鹸カス、ならびに台所のシンクにおける黒ずみおよび油汚れ等が挙げられる。これらの一時的に水が流れる環境特有の汚れの付着を防止ないし洗浄するために、ポリマーを塗布する技術が知られている。 ・・・ 【0008】 本発明者らは、今般、溶媒としての水に、ポリビニルアルコールと、Cu2+、Fe3+、Al3+、およびCr3+からなる群から選択される少なくとも一種の金属イオンのある種の金属塩とを所定のモル比で添加してなるコーティング組成物が、一液型でありながら、優れた液安定性を有し、なおかつ常温で徐溶性被膜を形成できるとの知見を得た。 【0009】 したがって、本発明は、一液型でありながら、優れた液安定性を有し、なおかつ常温で徐溶性被膜を形成することができるコーティング組成物およびそれを用いた被膜の製造方法を提供することを目的としている。」 摘記2c: 「【0015】 本発明のコーティング組成物が徐溶性を発現する機構は定かではないが、以下に説明するような被膜の特異な構造に起因するものではないかと考えられる。なお、以下の説明はあくまで仮説であり、本発明は何らこれに限定されるものではない。すなわち、金属塩を含まないポリビニルアルコール水溶液では、ポリビニルアルコール分子が積み重なった被膜が形成する。このような被膜では、表面に接した水が速やかに基材との界面まで浸透するため、水が流れ去ると被膜も全部流れて消失してしまう。一方、本発明のコーティング組成物を常温乾燥して得た被膜内には、液中の金属種由来のポリビニルアルコール包接金属水酸化物クラスターが形成されており、この金属水酸化物クラスターをバインディングするようにポリビニルアルコールが存在するものと考えられる。この場合に被膜表面に水が接触すると、ポリビニルアルコールが溶解あるいは膨潤して水分が浸透するが、膜中に金属水酸化物クラスターが存在するために、膜厚方向の水の浸透速度が抑制されるのではないかと推察される。したがって、水が流れ去っても被膜表面近傍の水分が浸透した部分の膜のみが流されるため一度に被膜全体が消失することはないのではないかと推察される。そして、水と接するたびにこのような現象が繰り返される結果、被膜が徐々に溶解されるものと考えられる。 ・・・ 【0017】 本発明に使用可能な金属塩は、Cu2+、Fe3+、Al3+、およびCr3+からなる群から選択される少なくとも一種の金属イオンの、塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、炭酸塩、蟻酸塩、および酢酸塩からなる群から選択される少なくとも一種である金属塩である。これらの金属塩は、水溶液のpHを大きくすると溶解度積が1×10-16よりも小さい難溶性の水酸化物を析出する性質を有しており、このような金属塩の水溶液をポリビニルアルコールが溶解している水溶液に添加すると水酸化物クラスターを形成して徐溶性の発現に寄与すると考えられる。・・・」 摘記2d: 「【0031】 本発明のコーティング組成物により形成された徐溶性被膜によれば、徐溶性機能に伴わせて、芳香性、抗菌性、抗カビ性、防臭性、消臭性、防汚性、光沢付与性などの付随機能を発現させることができる。したがって、本発明の徐溶性被膜は、トイレ、浴室、台所、洗面所、冬場の窓部などの水と一時的に接する部位において付着汚れの防止する用途において好ましく用いることができる。各付随機能に応じた好ましい用途の具体例としては、以下のものが挙げられる。 ・・・ 抗菌・抗カビ性/防臭性:上記の徐溶効果によって、水がかかるたびに清浄な表面が形成されるため、微生物の付着を抑制できる。また金属塩として抗微生物性を有する銅塩を用いたり、任意成分として抗菌・抗カビ剤を添加することにより、被膜表層部が溶解するたびに抗菌・抗カビ剤が徐放されるため、水と接する部位に発生しやすい菌・カビの微生物の繁殖を抑制することができる。また微生物繁殖が原因で発生する腐敗臭を防臭することもできる。このような用途としては、小便器、大便器のボウル面、洗面化粧台の洗面器のボウル面、キッチンのシンク、浴室内各部などに適用できる。 ・・・」 摘記2e: 「【実施例】 【0032】 ・・・ 【0035】 【表1】 [図:0001407851000004.jpg] ・・・ 【0040】 (3)評価 上記のようにして得られた各種コーティング液および試験片についての評価を以下の通り行った。得られた評価結果は表5~8に示される。 ・・・ 【0053】 評価7:抗菌効果 例2、7、28、33、および35の試験片を図2に示される条件で20℃のイオン交換水に10分間浸漬することにより溶解試験を行った後に、JIS Z 2801に準拠して大腸菌(ISO3972)を用いて抗菌性能を評価した。 抗菌活性値R=Log10(Cs/Cb) (式中、Csは24時間培養後の液剤コート面の大腸菌数であり、Cbは24時間培養後の未コートガラス面の大腸菌数である。) 【0054】 そして、下式で算出される溶解試験後の試験片被膜面の抗菌活性値Rが2以上であるものを「G」(良好)と、2未満であるものを「NG」(良好ではない)と評価した。 【0055】 その結果、表5および6に示される通り、例2および7の試験片では、溶解試験の前後で被膜表面の抗菌性に大きな変化はなく、良好な抗菌性が認められた。・・・ 【0056】 評価8:水垢付着抑制効果 JIS Z 8741に準拠して測定した60°光沢値が92のタイルを基材として、未コートのタイル表面と、例2および7のコーティング液をフローコートして25℃で60分間乾燥して得た被膜表面とに、水垢付着を促進させるために、硬度297.5のミネラルウォーター(エビアン(登録商標)を噴霧した。5回噴霧して25℃で60分間乾燥を1サイクルとする工程を10サイクル繰り返して、噴霧前と10サイクル後の表面の60°光沢をJIS Z 8741に従い測定した。光沢値85以上を維持しているものを「G」(良好)、光沢値が85未満に低下したものを「NG」(良好ではない)と評価した。 【0057】 その結果、表5に示される通り、例2および7のコーティング液を塗布した表面は共に60°光沢値が85以上を維持しており、表面は清浄であり、良好な水垢付着抑制効果が認められた。未コートの表面には白色のスポット状の汚れが付着し、60°光沢値は85未満となった。 ・・・ 【0060】 【表5】 [図:0001407851000005.jpg] 」 甲第3号証には、以下の記載がある。 摘記3a: 「【請求項1】 抗菌性(antimicrobal)かつ抗真菌性かつ抗ウイルス性のポリマー材料を製造するためのポリマーマスターバッチであって、 熱可塑性樹脂のスラリー、イオン性酸化銅の水不溶性粒子から本質的になる抗菌性(antimicrobal)かつ抗真菌性かつ抗ウイルス性薬剤、ポリマーワックス、並びに、イオン性酸化銅の電荷を占めるための薬剤を含む、ポリマーマスターバッチ。」 摘記3b: 「【0099】 Cu+のイオン型とCu++のイオン型との間の区別は明確である。さらに、出願人により実施された実験において、CuO粉末(Cu+を放出する)は大腸菌又は黄色ブドウ球菌に対する抗菌性の薬剤として有効ではなかった一方で、驚くべきことにCu2O(Cu++を放出する)は有効であり、かつ驚くべきことにCu2O及びCuOの組み合わせが、Cu2O自体より有効であった。・・・」 ウ 甲第1~2号証に記載された発明 (ア)甲1発明 甲第1号証の摘記1aには「比重が1.0~1.6の熱硬化型塗料に抗菌、防カビ剤を添加して、最表層に塗装、焼き付け硬化させた塗装金属板において、抗菌、防カビ剤を樹脂担体表面に担持させて、担持後の平均粒径を0.9μm以下、比重を1.5以下にしたことを特徴とする抗菌、防カビ性に優れた塗装金属板」が記載されており、摘記1cには、その具体例として、金属板がクロメート皮膜を形成した溶融亜鉛めっき鋼板であり、熱硬化型塗料が比重1.21のエナメルタイプのポリエステル系樹脂であり、抗菌、防カビ剤がCuであり、樹脂担体がアクリロニトリルと酸性基含有単量体との共重合体である球状微粒子であり、担持後の平均粒径が0.2μm、比重が1.4であり、JIS Z 8741の鏡面反射率測定装置を用いて、入射角60度、反射角60度で測定した鏡面反射率が86.9である例(実施例4)が記載されている。 よって、甲第1号証には、 「クロメート皮膜を形成した溶融亜鉛めっき鋼板に、比重1.21のエナメルタイプのポリエステル系樹脂である熱硬化型塗料に、アクリロニトリルと酸性基含有単量体との共重合体である球状微粒子に抗菌、防カビ剤としてCuを担持させ、担持後の平均粒径を0.2μm、比重を1.4にしたものを添加して、最表層に塗装、焼き付け硬化させた、JIS Z 8741の鏡面反射率測定装置を用いて、入射角60度、反射角60度で測定した鏡面反射率が86.9である、抗菌、防カビ性に優れた塗装金属板。」 の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 (イ)甲2発明 甲第2号証の摘記2eには、ポリビニルアルコールと酢酸銅(II)を含むコーティング液を、評価8の水垢付着抑制効果(JIS Z 8741に準拠して測定した60°光沢値が92のタイルを基材として、コーティング液をフローコートして25℃で60分間乾燥して得た被膜表面に、水垢付着を促進させるために硬度297.5のミネラルウォーターを5回噴霧し25℃で60分間乾燥する工程を10サイクル繰り返した後、JIS Z 8741に従い60°光沢を測定した場合に、光沢値85以上を維持していれば「G」と評価。)で評価したとき、「G」と評価される例(例2及び7)が記載されている。 よって、甲第2号証には、 「ポリビニルアルコールと酢酸銅(II)を含むコーティング液を、JIS Z 8741に準拠して測定した60°光沢値が92のタイルである基材にフローコートして25℃で60分間乾燥して被膜とした物であって、水垢付着を促進させるために硬度297.5のミネラルウォーターを5回噴霧し25℃で60分間乾燥する工程を10サイクル繰り返した後、JIS Z 8741に従い60°光沢を測定した場合に、光沢値85以上を維持している物。」 の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。 エ 本件発明1と甲1発明との対比・判断 本件発明1と、甲1発明とを対比する。 甲1発明の「クロメート皮膜を形成した溶融亜鉛めっき鋼板」及び「Cu」は、それぞれ本件発明1の「基材」及び「銅化合物」に相当する。 甲1発明の「熱硬化型塗料」を「焼き付け硬化させた」ものは、本件発明1の「バインダ硬化物」に相当し、また、「脂肪酸で被覆された一価の銅化合物粒子」に相当するものを含んでいない。 甲1発明において「JIS Z 8741の鏡面反射率測定装置を用いて、入射角60度、反射角60度で測定した鏡面反射率が86.9である」ことは、本件発明1において「バインダ硬化物を含む基材表面のJIS Z 8741に準拠した光沢度が、45%以上、100%未満である」ことに相当する。 甲1発明の「抗菌、防カビ剤」及び「抗菌、防カビ性に優れた塗装金属板」は、本件特許明細書の【0009】の「抗微生物部材」における「抗微生物」が「抗ウィルス」、「抗菌」及び「抗カビ」を含む概念であるとの記載からみて、本件発明1の「抗ウィルス成分」及び「抗ウィルス部材」と、「抗微生物成分」及び「抗微生物部材」であるという点で共通する。 してみると、本件発明1と甲1発明は、 「基材表面に抗微生物成分として銅化合物を含み、脂肪酸で被覆された一価の銅化合物粒子を含まないバインダ硬化物が固着形成されてなり、前記バインダ硬化物を含む基材表面のJIS Z 8741に準拠した光沢度が、45%以上、100%未満である、抗微生物部材。」 であるという点において一致し、次の点において相違する。 相違点1:本件発明1では、銅化合物は「抗ウィルス成分」であり、部材が「抗ウィルス部材」であるのに対して、甲1発明では、銅化合物は「抗菌、防カビ剤」であり、部材が「抗菌、防カビ性に優れた塗装金属板」である点。 相違点2:本件発明1では、銅化合物は「X線光電子分光分析法により、925~955eVの範囲にあるCu(I)とCu(II)に相当する結合エネルギーを5分間測定することでCu(I)とCu(II)との共存が確認される」のに対して、甲1発明では、銅化合物の共存が不明である点。 上記相違点1について検討すると、甲第1号証は「抗菌、防カビ性に優れた塗装金属板」の発明について記載されたものであり(摘記1aの【請求項1】及び摘記1bの【0001】)、発明の課題においても、抗菌、防カビ性について記載されていて(摘記1bの【0002】~【0007】)、抗ウィルス性についての言及はなく、実施例においても、抗ウィルス性は評価されていない(摘記1c)。そして、抗菌性を示す部材が、必ず抗ウィルス性を示すといえる技術常識の存在は、甲第1~3号証の全ての記載を精査しても見当たらない。 してみると、甲第1号証には、甲1発明の「抗菌、防カビ性に優れた塗装金属板」を、「抗ウィルス部材」として用いることに関して記載も示唆もされておらず、甲第1~3号証に記載された技術事項をどのように組み合わせても、上記相違点1に係る構成を導き出すこと当業者にとって容易になし得たとはいえない。 さらに、上記相違点2について検討するに、本件発明1は、抗ウィルス性の観点から、銅化合物を「X線光電子分光分析法により、925~955eVの範囲にあるCu(I)とCu(II)に相当する結合エネルギーを5分間測定することでCu(I)とCu(II)との共存が確認される」ものに特定しているものであるところ、抗ウィルス性について考慮していない甲第1~3号証に記載された技術事項をどのように組み合わせても、上記相違点2に係る構成を導き出すことが当業者にとって容易になし得たとはいえない。 次に、本件発明1の効果について検討する。 本件特許明細書には、バインダ硬化物を含む基材表面のJIS Z 8741に準拠した光沢度が45%以上100%未満であることにより、抗ウィルス性が向上すること(【0011】及び【0012】)、及び、バインダ硬化物でCu(I)とCu(II)との共存が確認されることで、抗微生物活性が向上すること(【0127】)が記載され、実施例(【0130】~【0149】)においては、光沢度が45~90%の場合(実施例1~5)に、そうでない場合と比較して、抗ウィルス活性値に優れることや、バインダ硬化物においてCu(I)とCu(II)との共存が確認される場合(実施例1~3)に、そうでない場合と比較して、抗ウィルス活性値に優れることが示されている。 してみると、本件特許明細書の記載から、抗ウィルス部材において、バインダ硬化物でCu(I)とCu(II)との共存が確認されること、及び、バインダ硬化物を含む基材表面のJIS Z 8741に準拠した光沢度が45%以上100%未満であることにより、抗ウィルス性に優れるという効果を奏することが把握される。 一方、甲第1号証には、抗ウィルス部材は記載されておらず、抗ウィルス性の用途について何も記載されていない。 また、「バインダ硬化物においてCu(I)とCu(II)との共存が確認されること」の効果に関して、甲第3号証には、「抗菌性(antimicrobal)かつ抗真菌性かつ抗ウイルス性のポリマー材料を製造するためのポリマーマスターバッチ」において、「CuO粉末(Cu+を放出する)は大腸菌又は黄色ブドウ球菌に対する抗菌性の薬剤として有効ではなかった一方で、驚くべきことにCu2O(Cu++を放出する)は有効であり、かつ驚くべきことにCu2O及びCuOの組み合わせが、Cu2O自体より有効であった」と記載されているから(摘記3a及び3b)、甲第3号証から、Cu2O及びCuOの組み合わせ(本件発明の「Cu(I)とCu(II)との共存」に相当する。)が「大腸菌又は黄色ブドウ球菌に対する抗菌性」について優れていることは理解できるものの、Cu(I)とCu(II)との共存が、(抗菌性ではなく)抗ウィルス性に優れることは理解できない。 さらに、「バインダ硬化物を含む基材表面のJIS Z 8741に準拠した光沢度が45%以上100%未満であること」の効果に関して、光沢度が抗ウィルス性を左右することは、甲第1~3号証を含め、特許異議申立書で提示されたいずれの証拠にも記載されていない。 よって、本件発明1の上記効果は、当業者が予測可能なものでない。 以上のことから、本件発明1は、上記相違点1及び2に係る構成を具備することにより、つまり、抗ウィルス部材において、バインダ硬化物でCu(I)とCu(II)との共存が確認されること、及び、バインダ硬化物を含む基材表面のJIS Z 8741に準拠した光沢度が45%以上100%未満であることにより、抗ウィルス性に優れるという効果を奏するという、当業者が予測できない顕著な効果を奏するに至ったものといえるから、「抗ウィルス部材」とすることが技術的に無意味な構成の付加にすぎないとはいえない。 したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~3号証に記載の技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 オ 本件発明1と甲2発明との対比・判断 本件発明1と、甲2発明とを対比する。 甲2発明の「JIS Z 8741に準拠して測定した60°光沢値が92のタイルである基材」及び「酢酸銅(II)」は、それぞれ本件発明1の「基材」及び「銅化合物」に相当する。 甲2発明の「ポリビニルアルコール」「を含むコーティング液を」「フローコートして25℃で60分間乾燥して」形成された「被膜」は、本件発明1の「バインダ硬化物」に相当し、また、「脂肪酸で被覆された一価の銅化合物粒子」に相当するものを含んでいない。 甲2発明において「水垢付着を促進させるために硬度297.5のミネラルウォーターを5回噴霧し25℃で60分間乾燥する工程を10サイクル繰り返した後、JIS Z 8741に従い60°光沢を測定した場合に、光沢値85以上を維持している」ことは、元の基材の光沢値が92であることも考慮すれば、JIS Z 8741に従い60°光沢を測定した場合の光沢値が85~92の範囲内であると理解できるから、本件発明1において「バインダ硬化物を含む基材表面のJIS Z 8741に準拠した光沢度が、45%以上、100%未満である」ことに相当する。 甲2発明の「物」は、本件発明1の「抗ウィルス部材」と、「部材」であるという点で共通する。 してみると、本件発明1と甲2発明は、 「基材表面に銅化合物を含み、脂肪酸で被覆された一価の銅化合物粒子を含まないバインダ硬化物が固着形成されてなり、前記バインダ硬化物を含む基材表面のJIS Z 8741に準拠した光沢度が、45%以上、100%未満である、部材。」 であるという点において一致し、次の点において相違する。 相違点3:本件発明1では、銅化合物は「抗ウィルス成分」であり、部材が「抗ウィルス部材」であるのに対して、甲2発明では、銅化合物は「抗ウィルス成分」でなく、部材が「抗ウィルス部材」でない点。 相違点4:本件発明1では、銅化合物は「X線光電子分光分析法により、925~955eVの範囲にあるCu(I)とCu(II)に相当する結合エネルギーを5分間測定することでCu(I)とCu(II)との共存が確認される」のに対して、甲2発明では、銅化合物は酢酸銅(II)である点。 上記相違点3について検討すると、甲第2号証はコーティング組成物により徐放性被膜を形成する発明について記載されたものであり(摘記1bの【0009】、摘記2c及び摘記2d)、様々な機能及び用途が記載されている中に「抗菌・抗カビ性」も挙げられているものの(摘記2d)、抗ウィルス性については何も記載されていないし、実施例においても、抗ウィルス性は評価されていない(摘記2e)。 してみると、甲第2号証には、甲2発明の物を、「抗ウィルス部材」として用いることに関して記載も示唆もされておらず、この点が当業者にとって容易になし得たとはいえない。 さらに、上記相違点4について検討するに、抗ウィルス性について考慮していない甲第1~3号証に記載された技術事項をどのように組み合わせても、上記相違点4に係る構成を導き出すことが当業者にとって容易になし得たとはいえない。 そして、本件発明1は、上記相違点3及び4に係る構成を具備することにより、つまり、抗ウィルス部材において、バインダ硬化物でCu(I)とCu(II)との共存が確認されること、及び、バインダ硬化物を含む基材表面のJIS Z 8741に準拠した光沢度が45%以上100%未満であることにより、抗ウィルス性に優れるという効果を奏するという、当業者が予測できない顕著な効果を奏するに至ったものといえるから、「抗ウィルス部材」とすることが技術的に無意味な構成の付加にすぎないとはいえないという点について、上記エで説示したとおりである。 したがって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明並びに甲第1及び3号証に記載の技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 カ 本件発明2~7について 本件発明2~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であって、それをさらに限定したものであり、本件発明1の進歩性が甲第1号証に記載された発明及び甲第2~3号証に記載の技術的事項によって否定できないことから、本件発明2~7についても進歩性を否定することはできない。 したがって、本件発明2~7は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~3号証に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 同様に、本件発明2~5及び7は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であって、それをさらに限定したものであり、本件発明1の進歩性が甲第2号証に記載された発明並びに甲第1及び3号証に記載の技術的事項によって否定できないことから、本件発明2~5及び7についても進歩性を否定することはできない。 したがって、本件発明2~5及び7は、甲第2号証に記載された発明並びに甲第1及び3号証に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 キ まとめ よって、本件発明1~7についての申立理由1には理由がない。 ク 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、特許異議申立書の第25~26頁及び第28~30頁において、銅イオンは抗ウィルス性も有するため、抗ウィルス成分でもある旨を述べ、銅化合物が「抗ウィルス成分」である点、及び、部材が「抗ウィルス部材」である点を、本件発明1と甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明との相違点とせず、一致点である旨主張している。 しかし、銅イオンが一般に抗ウィルス性を有しているとしても、抗菌性部材や抗カビ性部材と抗ウィルス性部材は用途として異なり区別されるから、相違点となる。 そして、この点(相違点1及び3)が、当業者にとって容易になし得たことであったとはいえないことについては、上記エ及びオで説示したとおりである。 よって、特許異議申立人の主張は採用できない。 (2)申立理由2(サポート要件) ア 特許異議申立人が主張する理由の概要 特許異議申立書で特許異議申立人が主張する申立理由2の要旨は、本件発明1~7が解決しようとする課題は、抗ウィルス性等の抗微生物性能を発揮する抗微生物部材を提供することであると認定できるところ、本件明細書全体及び出願当時の技術常識を参酌しても本件発明1~7に含まれる発明の態様全体に渡りそのような課題が解決できるとは理解できないから、本件特許は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、同法第113条第4号の規定に該当し取り消されるべきものである、というものである。そして、証拠として、次の甲第4~7号証を提示している。 甲第4号証:佐野塗料株式会社のインターネットサイト 甲第5号証:「色材,28」、第298~308頁 甲第6号証:株式会社島津製作所のインターネットサイト 甲第7号証:岩崎電気株式会社のインターネットサイト イ 判断 サポート要件の判断の前提及び本件発明の課題は、上記第4の1(1)及び(2)で示したとおりである。 そして、本件特許明細書【0011】、【0012】及び【0127】の記載並びに本願特許明細書の実施例の記載からみて、バインダ硬化物を含む基材表面のJIS Z 8741に準拠した光沢度が45%以上100%未満であり、かつバインダ硬化物においてCu(I)とCu(II)との共存が確認されることを特定した本件発明が、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められる点について、上記第4の1(3)で説示したとおりである。 なお、バインダ硬化物を含む基材表面の光沢度が、基材の材質及び表面状態等や、固着するバインダ硬化物の基材表面における割合や形態等に影響されるとしても、それらは、そもそも本件発明の発明特定事項とはされていないものである。 すなわち、本件発明1は、専ら、抗ウィルス成分としてCu(I)とCu(II)が共存することで、上記「高額な合成設備を必要とせず、簡便に施工済の据え付け品等に対しても現場施工により、信頼性の高い抗ウィルス性を発揮する抗ウィルス部材を提供すること」という課題の解決に至ったものであって、バインダ硬化物の割合や形態を工夫するなどして、当該課題を解決するに至ったものではないから、バインダ硬化物の割合や形態などを特定するか否かは、本件発明1が上記課題を解決できると認識できる範囲にあるかのサポート要件の適否に関係がない。 よって、本件発明についての申立理由2には理由がない。 第5 まとめ 以上のとおり、請求項1~7に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。さらに、ほかに請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700877

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