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特許異議申立

2025-700323

手指消毒剤用エアゾール製品

審判番号
2025-700323
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-027457
登録番号
7598629
請求日
2025年03月19日
審決日
2025年10月14日
公報発行日
2025年11月28日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社大阪製薬
  • 【権利者代理人】辻本 希世士
  • 【権利者代理人】丸山 英之
  • 【異議申立人】杉山 恵子
審判長/審判官
  • 審判長 冨永 保
  • 審判官 小石 真弓
  • 審判官 宮田 透
分類
P1651.121-Y (A01N) / P1651.537-Y (A01N)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7598629号発明「手指消毒剤用エアゾール製品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7598629号の請求項1~2に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7598629号(以下「本件特許」という。)の請求項1~2に係る特許についての出願は、令和3年2月24日にされた出願であって、令和6年12月4日にその特許権の設定登録がされ、同年同月12日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1~2に係る特許に対し、令和7年3月19日に、特許異議申立人 杉山 恵子(以下「申立人」という。)より特許異議の申立てがされ、同年4月18日に手続補正書(方式)が提出されたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~2に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~2に記載された以下の事項により特定されるとおりのものである(以下、請求項の番号順に、「本件発明1」などといい、これらをまとめて「本件発明」ということがある。)。 「【請求項1】 内側表面がポリアミドイミド又はフェノール系エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂により被覆された被覆層を有する金属性の外装容器と、 前記外装容器に収容され、炭素数1~3の低級アルコール、第四級アンモニウム塩化物塩、リン酸及びリン酸三ナトリウムを含有し、25℃におけpHが3.0~5.0である手指消毒剤と、 前記外装容器の内部に前記手指消毒剤とともに充填されている不燃性圧縮気体として窒素ガスを備えることを特徴とする手指消毒剤用エアゾール製品。 【請求項2】 第四級アンモニウム塩化物塩が、塩化ベンザルコニウム又は塩化ベンゼトニウムの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の手指消毒剤用エアゾール製品。」 ここで、請求項1の「25℃におけpHが3.0~5.0である」との記載に誤記があることが明らかなところ、本件明細書の【0029】の記載からみて、「25℃におけるpHが3.0~5.0である」が正しい記載であると認められるので、以下では、上記正しい記載がされているものとみなす(下線は合議体が付した。)。 第3 特許異議の申立理由の概要 申立人は、証拠方法として、下記2に示す甲第1号証~甲第12号証(以下、甲号証の番号順に、「甲1」などという。)を提出し、下記1に示す特許異議の申立ての理由(以下「申立理由」という。)により請求項1~2に係る特許を取り消すべきである旨主張する。 1 申立理由 (1)申立理由1(進歩性) 本件発明1~2は、甲1~12に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1~2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 なお、特許異議申立書22頁28行~23頁25行の記載からみて、申立理由1は甲1又は甲2を主引用例とするものであると認める。 (2)申立理由2(サポート要件) 本件の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に適合するものでないから、本件の請求項1~2に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 具体的な理由の概要は次の(ア)~(オ)のとおりである(特許異議申立書、24~26頁)。 (ア)リン酸及びリン酸三ナトリウムを含有する構成の顕著な効果が本件の出願時の明細書に記載されていない。 (イ)窒素ガスを含有する構成による顕著な効果が本件の出願時の明細書に記載されていない。 (ウ)本件明細書の実施例にはpHの記載がなく、pHによる効果の裏付けがない。 (エ)2種以上の樹脂により被覆された被覆層を有する金属製の外装容器を用いた実施例が記載されていない。 (オ)2種以上の第四級アンモニウム塩化物塩を用いた実施例が記載されていない。 (3)申立理由3(明確性) 本件の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に適合するものでないから、本件の請求項1~2に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 具体的な理由の概要は次のとおりである(特許異議申立書、26頁)。 本件の請求項1の記載「ポリアミドイミド又はフェノール系エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂」は、2種以上の樹脂が選ばれる場合、ポリアミドイミドから2種以上、又はフェノール系エポキシ樹脂から2種以上、が選ばれることを意味し、ポリアミドイミド及びフェノール系エポキシ樹脂を併用するものは包含されないのか、ポリアミドイミド及びフェノール系エポキシ樹脂を併用するものも包含されるのか、明確ではない。 2 証拠方法 甲1:特開平6-327750号公報 甲2:特開2016-14082号公報 甲3:特開2016-166134号公報 甲4:特開2021-4200号公報 甲5:特開平7-187264号公報 甲6:特開平8-198734号公報 甲7:特開平7-136237号公報 甲8:特開平6-279268号公報 甲9:特開2006-131597号公報 甲10:特開2012-21035号公報 甲11:特開2008-155525号公報 甲12:特開2002-309241号公報 第4 当審合議体の判断 当審合議体は、本件請求項1~2についての特許は、上記第3の1に示した申立理由によっては、取り消すことができないと判断する。その理由は以下のとおりである。 なお、以下の下線は、原文に付されていたものに加えて、当審合議体で追加した。また、「・・・」は記載の省略を表す。 1 申立理由1(進歩性)について (1)引用文献の記載事項 ア 甲1の記載事項 甲1には、以下の事項が記載されている。 (甲1a) 「【請求項1】 カチオン系殺菌消毒剤0.01~3重量%、低級アルコール30~85重量%および残部水からなる原液と、臨界温度が0~50℃の噴射剤とからなる殺菌消毒用エアゾール組成物。 ・・・ 【請求項3】 噴射剤が炭酸ガスおよび/または亜酸化チッ素ガスである請求項1または2記載の殺菌消毒用エアゾール組成物。」 (甲1b) 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は殺菌消毒用エアゾール組成物に関する。さらに詳しくは、殺菌消毒性にすぐれることはもちろんのこと、揮発性、使用感や、泡沫状に吐出されたときの安定性などにもすぐれ、使用量の調節および携帯が容易であり、とくに医療従事者の手指の殺菌消毒などに好適に使用しうる殺菌消毒用エアゾール組成物に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、とくに医療従事者の手指の殺菌消毒は、たとえば塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ヨウ素、次亜塩素酸ナトリウム、フェノール、クレゾール、グルコン酸クロルヘキシジンなどの消毒剤やこれらの濃縮物を必要に応じて希釈した溶液中に、手指を浸漬することによって行なわれている。 【0003】前記消毒剤の溶液に手指を浸漬したばあいには、確かにその殺菌消毒効果は大きいものの、該消毒剤の溶液の調製が煩雑なうえ、携帯することができず、設置場所を固定しなければならないので不便である。また前記消毒剤の溶液が乾燥しにくいものであるので、浸漬後に手指を拭かなければならず、その作業が煩雑であるとともに、拭きとり用のガーゼやタオルなどを繰り返し使用していると、殺菌消毒した手指が逆に汚染されてしまうおそれがある。さらに、同じ消毒剤の溶液を多人数で使用したり、使用回数が増加すると消毒剤の殺菌消毒効果が低下したり、汚染が生じるなどの問題がある。 ・・・ 【0005】前記消毒剤の溶液に浸漬するほかにも、医療従事者の手指の殺菌消毒は、消毒剤と高濃度の低級アルコールとを配合した薬液を手指に塗布し、乾燥するまで擦り合わせるなどして行なわれているが、かかる薬液は通常ボトルなどに封入されているため、たとえば使用後の蓋の閉め忘れなどによって薬液が汚染されたり、低級アルコールの揮発による殺菌消毒効果の低下が生じたりする。さらに、前記薬液は低粘度であるので、蓋の開閉時などにボトルからこぼれやすく、また手指で擦り合わせるときにたれが生じるなどの問題がある。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】そこで本発明者らは、前記従来技術に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の殺菌消毒剤および多量の低級アルコールを含有した原液と特定の噴射剤とからなるエアゾール組成物が、殺菌消毒性にすぐれるのはもちろんのこと、揮発性、使用感や、泡沫状に吐出されたときの安定性などにすぐれ、使用量の調節および携帯が容易であることを見出し、本発明を完成するにいたった。」 (甲1c) 「【0009】前記カチオン系殺菌消毒剤としては、たとえば塩化ベンゼトニウム、たとえば塩化ベンザルコニウムなどの一般式(I): 【0010】 【化1】 [図:0001429029000001.jpg] 【0011】(式中、R1 、R2 、R3 およびR4 のうちの1または2個は炭素数8~18の長鎖アルキル基、残りは炭素数1~3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ポリオキシエチレン基またはベンジル基、Xはハロゲン原子を示す)で表わされる4級アンモニウム塩などがあげられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができるが、これらのなかでは、殺菌消毒力が大きいという点から塩化ベンゼトニウムおよび塩化ベンザルコニウムが好ましい。 ・・・ 【0014】前記低級アルコールとしては、たとえばエタノール、変性エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノールなどの炭素数2~4のアルコールがあげられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができるが、これらのなかでは、汎用性の面からエタノール、変性エタノールおよびイソプロパノールが好ましい。 【0015】前記低級アルコールの含有量は、原液の30~85重量%となるように調整する。かかる低級アルコールの含有量が30重量%未満であるばあいには、低級アルコールが有する殺菌消毒力が充分に発揮されなくなり、また85重量%をこえるばあいには、低級アルコールが有する消泡力によってえられる殺菌消毒用エアゾール組成物が泡沫状の噴射形態を呈しにくくなる。なお、かかる低級アルコールが有する殺菌消毒効果を考慮すると、該低級アルコールの含有量は、原液の40~80重量%となるように調整することが好ましい。」 (甲1d) 「【0024】本発明の殺菌消毒用エアゾール組成物に用いられる噴射剤は、臨界温度が0~50℃のものである。このように、本発明に用いられる噴射剤は、特定の範囲内の臨界温度を有するものであり、前記原液と混合することによって、一般に発泡剤として配合される界面活性剤を用いないばあいであっても、良好な泡沫状の吐出形態を呈する殺菌消毒用エアゾール組成物をうることができ、しかも該界面活性剤を多量に配合したときのようなべたつきや皮膚への刺激が緩和されるなどといったすぐれた性質が発現される。 【0025】前記臨界温度が0~50℃の噴射剤としては、たとえば炭酸ガス、亜酸化チッ素ガスなどがあげられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。 ・・・ 【0028】前記エアゾール用耐圧容器にはとくに限定がなく、通常用いられる瓶、缶、樹脂製の容器などの耐圧性の容器を適用することができる。」 (甲1e) 「【0032】実施例1 以下に示す成分を常温で均一に混合して原液を調製した。 【0033】 成分 配合量(重量%) 塩化ベンベトニウム 1.5 99%イソプロパノール 50 グリセリン 3 精製水 全量が100となる量 えられた原液60gをエアゾール用耐圧容器(満注量:100ml)に充填し、エアゾール用バルブを取り付けた。こののち、噴射剤として炭酸ガス1.3gを35℃で内圧が5.5~6.5kg/cm2 ・gとなるように加圧充填して殺菌消毒用エアゾール組成物が充填された殺菌消毒用エアゾール製品をえた。 【0034】えられた殺菌消毒用エアゾール製品を用い、殺菌消毒用エアゾール組成物の特性として揮発性、泡沫安定性および使用感を以下の方法にしたがって調べた。その結果を表1に示す。 【0035】(イ)揮発性 泡沫状に吐出された殺菌消毒用エアゾール組成物を手掌で充分に擦り合わせたのち、完全に揮発してしまうまでの時間を測定し、以下の評価基準に基づいて評価した。 【0036】(評価基準) A:10秒以下 B:11~20秒 C:21秒以上 (ロ)泡沫安定性 殺菌消毒用エアゾール製品を約2秒間吐出し、泡沫状に吐出された殺菌消毒用エアゾール組成物の状態を目視にて観察して調べ、以下の評価基準に基づいて評価した。 【0037】(評価基準) A:安定して均一に吐出させることができ、吐出された殺菌消毒用エアゾール組成物が安定した泡沫状である。 B:吐出状態がやや安定せず、吐出された殺菌消毒用エアゾール組成物の起泡状態がややわるく、流れ落ちやすい。 C:吐出状態が不安定であり、殺菌消毒用エアゾール組成物が泡沫状に吐出されず、完全な液状に吐出される。 【0038】(ハ)使用感 無作為に抽出した男女50名に、手指に殺菌消毒用エアゾール組成物を吐出させ、擦り合わせて殺菌消毒してもらい、使用感を以下の評価基準に基づいて評価した。 【0039】(評価基準) ○:適量を吐出させることができ、たれが生じす非常に使いやすく、べたつきや刺激などの不快感がない。 △:たれが生じて少し使いにくく、若干のべたつきまたは刺激がある。 ×:たれがひどくて非常に使いにくく、べたつきおよび刺激がいちじるしい。 【0040】なお、表1中のA~Eの評価基準は以下のとおりである。 (評価基準) A:○が40名以上である。 B:○が30~39名である。 C:○が20~29名である。 D:○が10~19名である。 E:○が9名以下である。 ・・・ 【0051】比較例3 実施例1において、炭酸ガス1.3gのかわりにチッ素ガス0.3gを用い、実施例1と同様の内圧となるようにして殺菌消毒用エアゾール組成物が充填された殺菌消毒用エアゾール製品をえた。 【0052】えられた殺菌消毒用エアゾール製品を用い、殺菌消毒用エアゾール組成物の特性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表1に示す。 ・・・ 【0055】 【表1】 [図:0001429029000002.jpg] 【0056】表1に示された結果から、実施例1~5でえられた殺菌消毒用エアゾール組成物は、揮発性および泡沫安定性にすぐれるとともに、たれが生じずに非常に使いやすく、べたつきや刺激がない使用感にすぐれたものであることがわかる。」 (甲1f) 「【手続補正書】 【提出日】平成5年6月22日 【手続補正1】 【補正対象書類名】明細書 【補正対象項目名】0033 【補正方法】変更 【補正内容】 【0033】 成分 配合量(重量%) 塩化ベンゼトニウム 1.5 99%イソプロパノール 50 グリセリン 3 精製水 全量が100となる量 えられた原液60gをエアゾール用耐圧容器(満注量:100ml)に充填し、エアゾール用バルブを取り付けた。こののち、噴射剤として炭酸ガス1.3gを35℃で内圧が5.5~6.5kg/cm2 ・Gとなるように加圧充填して殺菌消毒用エアゾール組成物が充填された殺菌消毒用エアゾール製品をえた。 ・・・ 【手続補正4】 【補正対象書類名】明細書 【補正対象項目名】0055 【補正方法】変更 【補正内容】 【0055】 【表1】 [図:0001429029000003.jpg] 」(下線は原文のまま。) イ 甲2の記載事項 甲2には、以下の事項が記載されている。 (甲2a) 「【請求項1】 (A)エタノール14.8質量%~37質量%、 (B)カチオン性殺菌剤、 (C-1)シクロデキストリン0.2質量%~3質量%、及び (D)ノニオン性界面活性剤0.01質量%~0.2質量%、を含有し、 前記(A)エタノールの含有量(質量%)と、前記(C-1)シクロデキストリンの含有量(質量%)との質量比(A/C-1)が9~100であり、 前記(A)エタノールの含有量(質量%)と、前記(D)ノニオン性界面活性剤の含有量(質量%)との質量比(A/D)が100~1,700であり、 フォーマー容器に充填してなり泡状に吐出されることを特徴とする洗い流さないタイプの殺菌清浄剤組成物。 ・・・ 【請求項3】 (B)カチオン性殺菌剤が塩化ベンザルコニウムであり、 (D)ノニオン性界面活性剤がポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である請求項1から2のいずれかに記載の洗い流さないタイプの殺菌清浄剤組成物。」 (甲2b) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、殺菌清浄剤組成物に関する。 【背景技術】 【0002】 従来の殺菌清浄剤としては、洗い流すものが主流であり、外出先やリビングなどの水がなく洗い流すことができないところでの使用は困難であった。そのため、外出先など洗い流せない状況でも使用でき、手に取りやすいなどの使用性に優れる剤型として泡状の殺菌洗浄剤組成物が提案されている(例えば、特許文献1~4参照)。しかし、前記泡状の殺菌洗浄剤組成物は、消泡が早く、手に取るとすぐに液体になって手から垂れやすく、また、エタノール臭が強いという問題があった。 【0003】 したがって、手に取った時の泡の保形性、泡ダレのなさ、及びエタノール臭のなさが良好であり、使用後の泡残りのなさ、乾きやすさ、及び殺菌力に優れる泡で使用する洗い流さないタイプの殺菌清浄剤組成物の提供が望まれている。」 (甲2c) 「【0009】 (殺菌清浄剤組成物) 本発明の殺菌清浄剤組成物は、(A)エタノール、(B)カチオン性殺菌剤、(C-1)シクロデキストリン又は(C-2)高度分岐環状デキストリン、及び(D)ノニオン性界面活性剤を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。 【0010】 <(A)エタノール> 前記(A)成分のエタノールは、泡の保形性、泡ダレのなさ、泡残りのなさ、及び乾きやすさを向上させるために含有されている。 ・・・ 【0014】 <(B)カチオン性殺菌剤> 前記(B)成分のカチオン性殺菌剤は、泡の保形性、泡残りのなさ、殺菌力を向上させるために含有されている。 【0015】 前記(B)成分のカチオン性殺菌剤としては、下記一般式(B1)で表される化合物、下記一般式(B2)で表される化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、泡残りのなさ、及び殺菌力の点から、前記一般式(B1)で表される化合物が好ましい。 【0016】 【化1】 [図:0001429029000004.jpg] 【化2】 [図:0001429029000005.jpg] (前記一般式(B1)及び(B2)中、R1及びR2はそれぞれ、炭素数8~18のアルキル基、アルケニル基又はエーテル結合を有する炭化水素基を示し、X及びYはそれぞれ、ハロゲン原子、アミノ酸又は脂肪酸を示す。) 【0017】 前記一般式(B1)で表される化合物としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、泡残りのなさ、及び殺菌力の点から、塩化ベンザルコニウムが好ましい。 前記一般式(B2)で表される化合物としては、塩化セチルピリジニウムなどが挙げられる。 【0018】 前記(B)成分のカチオン性殺菌剤の含有量としては、泡残りのなさ、及び殺菌力の点から、殺菌清浄剤組成物全量に対して、0.01質量%~1質量%が好ましく、0.01質量%~0.5質量%がより好ましい。前記含有量が、0.01質量%未満であると、殺菌力が不十分となることがあり、1質量%を超えると、殺菌力が過剰となったり、手をこすり合わせた後に泡残りのなさが不十分となることがある。」 (甲2d) 「【0045】 -pH- 前記殺菌清浄剤組成物のpHとしては、皮膚マイルド性、及び防腐力の点から、25℃で4~7が好ましく、4~6がより好ましい。前記pHが、4未満であると、皮膚マイルド性が不十分となることがあり、7を超えると、防腐力が不十分となることがある。 前記pHとしては、例えば、pHメーター(HM-30R、東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて、測定することができる。 前記pHの調整としては、pH調整剤を用いて行うことができる。前記pH調整剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、クエン酸及びクエン酸ナトリウムの併用が好ましい。 ・・・ 【0047】 -フォーマー容器- 前記殺菌清浄剤組成物としては、フォーマー容器に充填してなり泡状に吐出される、洗い流さないタイプのものなどが挙げられる。泡状であることから、ゲル状やスプレー状のものよりも泡ダレがしにくく、水のないところで簡単に殺菌・洗浄することができる。また、洗い流さないタイプの殺菌清浄剤組成物と、これを収容し泡状に吐出させるフォーマー容器とを備える殺菌清浄剤製品とすることもできる。 【0048】 前記フォーマー容器としては、例えば、ノンガス型の泡吐出容器、噴射剤と耐圧容器とを使用したエアゾール容器などが挙げられる。これらの中でも、ノンガス型の泡吐出容器が好ましい。前記ノンガス型の泡吐出容器としては、前記殺菌清浄剤組成物を空気と混合して発泡状態で吐出できるものであれば特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ボトル胴部を手で加圧することによって泡を吐出できるスクイズフォーマー容器、ノズル部を押し下げることによって泡を吐出できるポンプフォーマー容器などが挙げられる。 【0049】 前記ノンガス型の泡吐出容器としては、例えば、大和製罐株式会社製、株式会社吉野工業所製などを使用することができ、例えば、特開平7-315463号公報、特開平8-230961号公報、及び特開2005-193972号公報に記載されたフォーマー容器などを使用することができる。 【0050】 前記ノンガス型の泡吐出容器としては、泡形成部材を有し、具体的には、ナイロン、ポリエステル、ポリオレフィン等の材質のプラスチック材料である泡を形成するための多孔質膜体を有し、前記殺菌清浄剤組成物が前記多孔質膜体を通過することにより泡が形成されるものなどが好適に用いられる。 ・・・ 【0052】 -使用方法- 前記使用方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1日数回、適量1~15gを泡状にして手にとり、殺菌清浄対象、例えば、手、全身等にいきわたらせる方法などが挙げられる。 【0053】 本発明の殺菌清浄剤組成物は、手に取った時の泡の保形性、泡ダレのなさ、及びエタノール臭のなさが良好であり、使用後の泡残りのなさ、乾きやすさ、及び殺菌力を向上させることができるので、例えば、手(手の平、手の指、及び手の甲)用の殺菌清浄剤組成物として好適である。・・・」 (甲2e) 「【0055】 (実施例1~54及び比較例1~32) 表3~表14に示す組成に従い、実施例1~54、及び比較例1~32の殺菌清浄剤組成物を常法により調製した。 具体的には、(B)カチオン性殺菌剤;(C)(C-1)シクロデキストリン又は(C-2)高度分岐環状デキストリン;(D)ノニオン性界面活性剤;精製水を加えてよく撹拌した。その後、(A)エタノール;(D)ノニオン性界面活性剤;共通成分であるDL-ピロリドンカルボン酸ナトリウム液、クエン酸三水和物、及びクエン酸ナトリウム二水和物を加え、よく撹拌し、実施例1~54及び比較例1~32の殺菌清浄剤組成物を調製した。前記pHは、pHメーター(HM-30R、東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて測定した。 【0056】 次に、容器1:フォーマー容器(株式会社吉野工業所製(特開2005-193972号公報の実施例2で使用したフォーマー容器と同じ)、気体と液体との容積比(気体/液体):13/1、吐出量:1g(1プッシュ)、泡形成部材:上200メッシュ/下305メッシュの多孔質膜体の対のもの(2枚))に、調製した実施例1~54、並びに比較例1~13、比較例15~29、31、及び32の各殺菌清浄剤組成物を充填し、フォーマー容器入りの殺菌清浄剤組成物を作製した。一方、容器2:ポンプディスペンサー付き容器(吐出量1mL(1プッシュ)、ノズル口径(内径)3.5mm、キャニオン社製)に、調製した比較例14、及び比較例30の殺菌清浄剤組成物を充填し、ポンプディスペンサー付き容器入りの殺菌清浄剤組成物を作製した。 ・・・ 【0064】 <殺菌力> 植物物語化粧石けん(ライオン株式会社製)で手を洗浄した後、デスクワークを3時間した、一方の手の指3本を標準寒天培地(日本製薬株式会社製)にプレーティングして使用前の菌を採取した。その後、他方の手に各殺菌清浄剤組成物を各容器から手に1g(1プッシュ)吐出させ、前記殺菌清浄剤組成物が乾くまで手指にすり込んだ後、同様の標準寒天培地(日本製薬株式会社製)に指3本をプレーティングし、前記殺菌清浄剤組成物を使用した後の菌を採取した(ストリークプレート法)。前記殺菌清浄剤組成物を使用した前後の指の菌をプレーティングした前記標準寒天培地を、37℃で24時間培養した後コロニー数を測定した。以下の式に従って、各殺菌清浄剤組成物の使用前コロニー数A0、使用後コロニー数A1から減菌率を算出した。減菌率70%以上であると、殺菌力があるとし、95%以上で特に殺菌力があるとし、70%未満であると、殺菌力がないとした。 減菌率(%)={1-(A1/A0)}×100 【0065】 下記表1及び表2に、実施例及び比較例の組成を示す。 【表1】 [図:0001429029000006.jpg] *1:( )内は、エチレンオキサイドの平均付加モル数を示す。 【表2】 [図:0001429029000007.jpg] *1:( )内は、エチレンオキサイドの平均付加モル数を示す。 【0066】 【表3】 [図:0001429029000008.jpg] 」 ウ 甲3の記載事項 甲3には、以下の事項が記載されている。 (甲3a) 「【請求項1】 エタノールと、 酸と、 下記式(1)で表わされる増粘化合物を含有する粘稠消毒剤であって、前記増粘化合物の含有割合が0.1重量%~20重量%であることを特徴とする粘稠消毒剤。・・・ 【請求項2】 前記酸が、有機酸又は無機酸であり、25℃におけるpHが2.5~5.0であることを特徴とする請求項1に記載の粘稠消毒剤。」 (甲3b) 「【0001】 本発明は、菌だけでなく、ウイルス、特にノロウイルス、ポリオウィルス、アデノウィルスなどのエンベロープを有さないノンエンベロープウイルスに対しても不活化、増殖の抑制、消滅などの効力を発揮する無色澄明の粘性を有する消毒剤に関する。 【背景技術】 【0002】 従来、菌だけでなく、ノロウイルス、ポリオウィルス、アデノウィルスなどのエンベロープを有さないノンエンベロープウイルスに対しても増殖の抑制などの効力を有する消毒剤として、アルコールと酸性物質を有効成分として有する製剤が知られるようになっている。 【0003】 例えば、特許文献1には、一般的な消毒用エタノールでは効果のないノンエンベロープウイルスに対して高い有効性を有する消毒剤として、少なくともエタノール又はイソプロピルアルコールのアルコール、乳酸、クエン酸、亜鉛含有化合物をそれぞれ所定量で含有する消毒剤が開示されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 【特許文献1】特開2008-255101号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、市場では、手に付着させた場合に掌からこぼれ落ちにくい、噴霧したときに必要以上に飛び散って壁に付着しない、また、噴霧したときにアルコールなどを吸引しないといった要望があるため、とろみのある、すなわち、水やエタノールなどと比較して粘性の高い消毒剤を所望されることがあるところ、特許文献1の明細書段落0026には各種増粘剤について記載されているものの、実施例には増粘剤を含有した具体例が存在しない。 【0006】 実際に種々増粘剤を用いて、エタノール及び酸を含有する消毒剤について粘度を向上させることを試みたところ、増粘剤がエタノールに溶解せず白濁し沈殿するものであり、増粘剤入りの消毒剤や化粧品を手に擦り込んだ際に生じ得る糊状の剥離物であるヨレが生じたり、べたついたりなど使用感が悪く、全体的に製品化にはほど遠い性状であった。 【0007】 そこで、本発明では、エタノール及び酸を含有する消毒剤について、増粘剤を添加しても白濁沈殿することなく均一に溶解し、さらに増粘剤入りの消毒剤や化粧品を手に擦り込んだ際に生じ得る糊状の剥離物であるヨレが生じたり、べたついたりすることのない使用感が良好な消毒剤を提供することを目的とする。」 (甲3c) 「【0017】 本発明における酸は、菌の生育を阻み、死滅させるとともに、エタノールと併存することによりノロウイルス、ポリオウィルス、アデノウィルスなどのエンベロープを有さないノンエンベロープウイルスに対しても不活化、増殖の抑制などの効力を有する有効成分である。 【0018】 酸としては、クエン酸、乳酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、プロピオン酸などの有機酸、リン酸、硫酸などの無機酸が好ましい。これらの酸は単独して使用することができるが、二種以上組み合わせて使用することもできる。また、必要に応じてその酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などを併用することができる。」 (甲3d) 「【0025】 <実施例1> 容量が200mlのグリフィンビーカーに、エタノールを55.0g、リン酸を1.0g、リン酸三ナトリウム塩を0.5g、グリセリンを2.0g、ヒドロキシエチルセルロース(ダイセルファインケム株式会社製、商品名:HECダイセルSE900)を1.0g、精製水を32.5g加え、均一な無色澄明な溶液になるまで攪拌し、合計92.0gの消毒剤を得た。 ・・・ 【0039】 これらの実施例1~9、比較例1~5の組成を表1にまとめて示す。 【0040】 【表1】 [図:0001429029000009.jpg] ・・・ 【0043】 pHについて、pH7(中性リン酸塩)標準液(pH 6.86 at 25℃)をゼロ点とし、pH4(フタル酸塩)標準液(pH 4.01 at 25℃)またはpH9(ホウ酸塩)標準液(pH 9.18 at 25℃)で校正したpH測定器(株式会社堀場製作所製、商品名F-52)を用いて、25℃に補正した値として測定した。これらの結果を表1に併せて示す。」 エ 甲4の記載事項 甲4には、以下の事項が記載されている。 (甲4a) 「【請求項1】 (A)界面活性剤と(B)両親媒性エステルとを含有し、前記(A)成分の含有量が0.025~2重量%であり、pHが3~8である、皮膚洗浄料組成物。」 (甲4b) 「【0006】 ポンプフォーマータイプの皮膚洗浄料組成物は、界面活性剤の配合量が比較的少なく、その点で、固形状や半固形状の皮膚洗浄料組成物に比べて皮膚への刺激は低減されている傾向にあると考えられる。一方で、ポンプフォーマータイプの皮膚洗浄料組成物は、泡の状態で吐出されることが大前提となっているため、気泡力を発揮させるために必要な最低限の界面活性剤を配合することがその構成上不可避となっている。 【0007】 近年、肌に優しい洗顔への意識はますます高まってきている。また、従来の皮膚洗浄料組成物であっても、依然として、皮膚刺激を感じやすく敏感になっている肌に十分対処できる処方の皮膚洗浄料組成物は無い。従って、これまで以上に肌への刺激が少ない皮膚洗浄料組成物が求められる。 【0008】 本発明者は、肌への刺激をより軽減させるため、界面活性剤の配合量を、従前の皮膚洗浄料組成物に含まれる配合量よりも大幅に低減させた。しかしながら、そのように大幅に少量の界面活性剤しか含まれない皮膚洗浄料組成物では、肌への刺激低減と引き換えに洗浄力が得られないという問題に直面した。 【0009】 そこで本発明は、皮膚刺激性が低減されながらも優れた洗浄力を有る皮膚洗浄料組成物を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明者は鋭意検討の結果、皮膚洗浄料組成物において、少量の界面活性剤に両親媒性エステルを共存させ、且つpHを3~8に調整することによって、皮膚刺激性が低減されながらも優れた洗浄力を発揮できることを見出した。本発明は、この知見に基づいてさらに検討を重ねることにより完成したものである。 ・・・ 【0013】 1.皮膚洗浄料組成物 本発明の皮膚洗浄料組成物は、(A)界面活性剤(以下、(A)成分と表記することがある)を所定量と(B)両親媒性エステル(以下、(B)成分と表記することがある)とを含有し、所定のpHに調整されていることを特徴とする。以下、本発明の皮膚洗浄料組成物について詳述する。 ・・・ 【0061】 他の成分 本発明の皮膚洗浄剤組成物には、前記成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、製剤化等に必要とされる他の基剤や添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤については、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、水、炭素数1~5の低級アルコール(エタノール、イソプロパノール等)、・・・pH調整剤(リン酸、塩酸、ギ酸、酢酸、クエン酸、グリコール酸、グルクロン酸、クロロ酢酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸、マロン酸、リンゴ酸、乳酸、安息香酸、リン酸カリウム、リン酸二カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸アンモニウム、三リン酸五ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム(クエン酸三ナトリウム)、クエン酸カルシウム、グリコール酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、スルホコハク酸三ナトリウム、フマル酸ナトリウム、酒石酸カリウム、酒石酸二ナトリウム、ピロリン酸四カリウム、ピロリン酸二ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられ、好ましくはクエン酸、水酸化カリウムが挙げられる。)、・・・等の添加剤が挙げられる。これらの基材や添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの基材や添加剤の含有量は、製剤形態等に応じて適宜設定することができる。 ・・・ 【0063】 pH 本発明の皮膚洗浄剤組成物のpHは、皮膚刺激低減性及び洗浄力を得る観点から、3~8に調整されている。本発明の皮膚洗浄剤組成物の好ましいpHとしては、(A)成分の種類等によって異なりうるが、例えば、(A)成分としてカルボン酸型アミノ酸系アニオン性界面活性剤及び/又はスルホン酸型アミノ酸系アニオン性界面活性剤が用いられる場合は、保湿不足によるつっぱり感抑制の観点、又は保湿不足によるつっぱり感抑制及び洗浄力の観点から好ましくは3~6、より好ましくは3~5が挙げられ、保湿不足によるつっぱり感抑制の観点からさらに好ましくは3~4が挙げられ、保湿不足によるつっぱり感抑制及び洗浄力の観点からさらに好ましくは5~6が挙げられ;(A)成分として非イオン性界面活性剤が用いられる場合は、洗浄力及び皮膚刺激低減性の観点から好ましくは5~8、より好ましくは5~6が挙げられる。なお、本発明において、pHとは、25℃におけるpHをいう。 ・・・ 【0065】 容器 本発明の皮膚洗浄剤組成物を収容する容器については、特に制限されず、形態や用途等に応じて適宜選択すればよいが、例えば、噴霧式容器、注下又は滴下式容器(特に洗浄瓶)、ポンプ式容器、チューブ式容器、包装袋、箱状容器等が挙げられる。特に、本発明の皮膚洗浄剤組成物が液状である場合、容器としては、噴霧式容器、注下又は滴下式容器(特に洗浄瓶)、ポンプ式容器が好ましい。なお、本発明におけるポンプ式容器は、皮膚洗浄剤組成物を液体状態で吐出する容器であり、噴霧式容器は、内容物をミスト状態で吐出するものであり、いずれも、皮膚洗浄剤組成物を泡状態で吐出するポンプフォーマー容器とは異なる。また、本発明の皮膚洗浄剤組成物がシート基材に含浸させられた形態である場合は、容器としては、包装袋、箱状容器が挙げられる。 【0066】 本発明においては、これらの容器の中でも、肌への塗布の手軽さ及び塗布時における手等による物理摩擦を回避する観点から、特に好ましくは噴霧式容器が挙げられる。噴霧式容器としては、非エアゾール式スプレー容器であるポンプ式スプレー容器、及び、エアゾール式スプレー容器が挙げられる。・・・」(【0013】冒頭の「1.皮膚洗浄料組成物」、【0061】冒頭の「他の成分」、【0063】冒頭の「pH」、【0065】冒頭の「容器」の下線は、原文のまま。) オ 甲5の記載事項 甲5には、以下の事項が記載されている。 (甲5a) 「【請求項1】 有機溶媒を1重量%以上含有したpHが1.5~4.5の水溶液からなる高金属腐食性原液と噴射剤とを、樹脂膜によって内面がラミネート保護された金属容器内に充填したことを特徴とするエヤゾール製品。 【請求項2】 樹脂膜がポリアミドまたはポリエステルからなるものである請求項1記載のエヤゾール製品。」 (甲5b) 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明はエヤゾール製品に関する。さらに詳しくは、酸性が強い内容物によってエヤゾール用容器が腐食されることが防止されたエヤゾール製品に関する。 ・・・ 【0020】本発明に用いられる水溶液のpHは、1.5~4.5、好ましくは2~4であり、かかるpHがあまりにも小さいばあいには、たとえ前記ラミネート保護された金属容器を用いたとしても、エヤゾール製品として製造することが不可能であるとともに、商品価値がなくなり、またあまりにも大きいばあいには、とくにラミネート保護された金属容器を用いる必要がない。 【0021】前記水溶液のpHは、たとえばクエン酸、リンゴ酸、酢酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸などの有機酸、リン酸、塩酸などの無機酸や、これらの緩衝液などのpH調整剤などを用いることにより、容易に調整することができるが、これらのなかでは、クエン酸を用いることが好ましい。 ・・・ 【0025】金属容器内に充填される噴射剤としては、たとえばブタン、プロパンなどからなる液化石油ガス、ジメチルエーテル、炭酸ガス、チッ素ガスなどがあげられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができるが、本発明はかかる例示のみに限定されるものではない。」 (甲5c) 「【0033】実施例1~26および比較例1~17 表1~4に示される成分、適量のクエン酸(実施例1~11および15~26ならびに比較例4~14)または乳酸(実施例12~14および比較例15~17)および残部精製水から原液を調製したのち、この原液を金属容器1(厚さ0.4mmのアルミニウム板に表1~3に示される樹脂から形成された樹脂膜1a(厚さ100μm)がラミネートされたもの(実施例1~26ならびに比較例1および6)または厚さ0.4mmのアルミニウムの容器内に表3~4に示される樹脂の溶液を吹付けたのち、形成された塗膜を焼付けたもの(乾燥膜厚100μm)(比較例2~5および7~17)、満注量100ml)内に充填したのち、噴射剤として液化石油ガスを35℃で内圧が4kg/cm2 ・Gとなるように充填し(原液と噴射剤との重量比(原液/噴射剤)95/5)、ボタン3を有するバルブ2を取付けて図1に示されるエヤゾール製品をえた。 【0034】えられたエヤゾール製品について、耐金属腐食性を以下の方法にしたがって調べた。その結果を原液のpHとあわせて表1~4に示す。 【0035】(耐金属腐食性)エヤゾール製品を25℃で1カ月間放置したのち、金属容器の内面状態を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。 【0036】(評価基準) ○:原液および噴射剤を充填する前とまったく変わらない。 △:部分的に腐食されている。 ×:腐食がいちじるしい。 【0037】なお、表1~4の略号は以下のとおりである。 NMP:N-メチル-2-ピロリドン BA:ベンジルアルコール XG:キサンタンガム(1%溶液) BS-20:ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル(日光ケミカルズ(株)製) TO-30:トリステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(日光ケミカルズ(株)製) CA-2450:塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(日光ケミカルズ(株)製) HCO-40:ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油(日光ケミカルズ(株)製) 黒401:黒色401号(3%溶液、水溶性酸性染料) 紫401:紫色401号(1%溶液、水溶性酸性染料) 橙205:橙色205号(1%溶液、水溶性酸性染料) NY12:ナイロン-12 NY6:ナイロン-6 PET:ポリエチレンテレフタレート PAI:ポリアミドイミド系樹脂 EU:エポキシユリア系樹脂 ・・・ 【0040】 【表3】 [図:0001429029000010.jpg] 【0041】 【表4】 [図:0001429029000011.jpg] 【0042】表1~4に示された結果から、実施例1~26でえられたエヤゾール製品は、比較例1~17でえられたエヤゾール製品とは異なり、1カ月間経過したのちであっても、金属容器の内面がまったく腐食されないものであることがわかる。」 (甲5d) 「【手続補正書】 【提出日】平成6年1月10日 【手続補正1】 【補正対象書類名】明細書 【補正対象項目名】0040 【補正方法】変更 【補正の内容】 【0040】 【表3】 [図:0001429029000012.jpg] 」(表3中の下線は原文のまま。) カ 甲6の記載事項 甲6には、以下の事項が記載されている。 (甲6a) 「【請求項1】 外筒缶と、その中に収納されたインナーバッグと、マウンテンカップを有するエアゾール吐出用のバルブとを備えた二重構造エアゾール容器の当該インナーバッグに、酸性染料を含有するpH2.0~4.0の酸性半永久染毛剤が充填された酸性半永久染毛剤含有エアゾール製品であって、インナーバッグがブロー成形法により形成された樹脂製バッグであり、バルブのマウンテンカップが酸性半永久染毛剤に直接接触しないように設けられていることを特徴とする酸性半永久染毛剤含有エアゾール製品。」 (甲6b) 「【0005】・・・エアゾール容器としては、噴射剤と酸性半永久染毛剤とを混合して収容する一重の耐圧容器、あるいは、耐圧外筒缶とその中に収納された内側容器(内筒容器、インナーバッグ等)との二重構造エアゾール容器からなり、酸性半永久染毛剤は内側容器に収容し、噴射剤は内側容器内又は内側容器と耐圧外筒缶との間に収容するようにしたものを使用することが考えられる。ここで、酸性半永久染毛剤の特性(高い酸性度、浸透促進剤の存在)を考慮すると後者の二重構造エアゾール容器を使用することが好ましく、例えば、図11又は図12に示すような公知の二重構造エアゾール容器の使用が考えられる。 【0006】図11の二重構造エアゾール容器は、アルミニウム製の耐圧外筒缶1にアルミニウム製の内側容器2が収納され、それらがバルブ3のアルミニウム製のマウンテンカップ4の周縁部4aとガスケット5を介してかしめることにより接合された構造を有している。ここで、内側容器2としては、必要に応じて内面が樹脂でスプレーコートされているものが使用される。 ・・・ 【0009】即ち、図11の容器を使用する場合、内面が樹脂でスプレーコートされていない無地のアルミニウム製の内側容器2(則ち、アルミニウム缶)に酸性半永久染毛剤を入れると、缶に腐食が生ずるという問題がある。また、内側容器として内面がスプレーコートされたアルミニウム缶を使用した場合においても、本来的にスプレー法ではピンホールフリーのコート層を形成することが困難であり、また、通常の内面コート用樹脂(ポリアミドイミド系樹脂、エポキシフェノール系樹脂、オルガノゾル(ミコフレックス)系樹脂等)は、長期間保存時に酸性半永久染毛剤に含まれる酸と浸透促進剤との相互作用により変性を受けるので、内面コート層にブリスターが発生したりコート層の剥離が発生したりするため、内側容器に腐食が発生するという問題がある。」 (甲6c) 「【0039】染毛剤組成物のpHを2.0~4.0に調整するためには酸を使用する。これにより酸性染料の毛髪内への浸透性を高め染色性を向上させることができる。酸としては、毛髪自体がイオン交換能を持つことから、弱酸が好ましい。弱酸の具体例としては、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、レブリン酸、酪酸、吉草酸、シュウ酸、マレイン酸、マンデル酸、リン酸等をあげることができる。 【0040】これらの酸は、さらにそのカリウム塩、ナトリウム塩等と組み合わせて系に緩衝能をもたせることが好ましい。緩衝能の強さとしては、酸濃度が0.02g当量/リットル以上とすることが好ましい。酸濃度が少な過ぎると十分な染色性を得ることができない。 【0041】本発明が使用する酸性半永久染毛剤には、上述のような酸性染料や浸透促進剤の溶解性を高めるために、公知の低級アルコール、低級ポリオール等を含有させることができる。このような低級アルコールや低級ポリオールの具体例としては、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、n-ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等をあげることができる。 ・・・ 【0043】一方、本発明においては、製品から酸性半永久染毛剤を吐出させるため、外筒缶1とインナーバッグ6との間に噴射剤を封入してもよく、また、酸性半永久染毛剤と噴射剤とを同時にインナーバッグ6内に封入する、所謂ウォールバッグ式としてもよい。前者の場合、噴射剤として、液化石油ガス等の液化ガスや、窒素ガス、炭酸ガス、亜酸化窒素ガスなどの圧縮ガスを使用することができる。中でも、窒素ガスが耐圧外筒缶1に対して悪影響を及ぼさないので好ましく使用することができる。また、ウォールバッグ式の場合には、噴射剤として、液化石油ガス、ジメチルエーテル等の液化ガスを使用することができる。 ・・・ 【0045】本発明で使用する外筒缶1としては、従来の二重構造エアゾール容器の外筒缶と同様のものを使用することができる。中でも、エポキシポリイミド系、オルガノゾル(ミコフレックス系)、エポキシフェノール系、エポキシポリアミド系、ポリアミドイミド系の樹脂で内面コートされた金属缶、好ましくはエポキシポリイミド系で内面コートされた金属缶、さらに好ましくはエポキシポリイミド系で内面コートされたアルミニウム缶を使用することができる。」 (甲6d) 「【図11】 [図:0001429029000013.jpg] 」 キ 甲7の記載事項 甲7には、以下の事項が記載されている。 (甲7a) 「【請求項1】 外部からの動力の供給を要する従来の手用消毒薬噴霧器のポンプ装置や超音波装置などによる噴霧機構の代りに、予め消毒薬と圧縮ガスが充填されたエアゾール容器を用い、容器に内蔵された圧縮ガスの噴霧力によって人間の手が挿入される消毒空間に消毒薬を噴霧することを特徴とする手用消毒薬噴霧器。 ・・・ 【請求項3】 消毒液が可燃性であり、エアゾール容器の噴射剤が不燃性の圧縮ガスである請求項1または2に記載の手用消毒薬噴霧器。」 (甲7b) 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、人間の手を簡便に消毒する手用消毒薬噴霧器に関する。」 (甲7c) 「【0015】消毒液エアゾール缶31に充填される消毒液は、比較的高濃度(例えば80%程度)エタノール水溶液に、少量の殺菌剤を溶加したものであり、一般に可燃性である。 ・・・ 【0017】そこで、本発明では、消毒液エアゾール缶31の噴射剤として、窒素、空気、炭酸ガス等の圧縮ガスを使用することが望ましく、これによりエタノールを主要成分とする可燃性の消毒液を安全に噴霧することができる。・・・」 ク 甲8の記載事項 甲8には、以下の事項が記載されている。 (甲8a) 「【請求項1】 殺菌剤、低級モノアルコール、非イオン界面活性剤および水溶性高分子化合物を含有してなる消毒殺菌剤。 ・・・ 【請求項3】 殺菌剤が塩化ベンザルコニウムである前記請求項1記載の消毒殺菌剤。 【請求項4】 低級モノアルコールとしてエタノール60~90重量%を配合した前記請求項1記載の消毒殺菌剤。 ・・・ 【請求項8】 殺菌剤、低級モノアルコール、非イオン界面活性剤、水溶性高分子化合物および噴射剤を含有してなるエアゾール組成物。」 (甲8b) 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、手指や皮膚の消毒、殺菌に用いられる消毒殺菌剤に関する。また、本発明は、この消毒殺菌剤および噴射剤を含有するエアゾール組成物に関するものであって、使用にあたりフォーム(泡)状の消毒殺菌剤を与える。」 (甲8c) 「【0010】本発明の消毒殺菌剤に配合される殺菌剤としては、例えば陽イオン型界面活性剤である塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなど、・・・が挙げられる。これら殺菌剤は単独または2種以上配合して用いてよい。これらの配合量は、その薬剤の抗菌力により異なるが、所望の殺菌力が得られるよう通常エアゾール用消毒殺菌剤全体に対して通常0.01~10重量%であるのが好ましい。 【0011】つぎに本発明の消毒殺菌剤に配合される低級モノアルコールとしては、炭素数が1~4の第一級、第二級、第三級のモノアルコールが好ましい。例えば、エタノール、消毒用エタノール、無水エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノールなどが挙げられる。これら低級モノアルコールの配合量は消毒殺菌剤全体に対して60~90重量%であるのが好ましい。低級モノアルコールの配合量が60重量%より少ないと充分な殺菌効果が得られず、また90重量%より多いと泡の保持時間が短く実用的でないことがある。 ・・・ 【0018】本発明の消毒殺菌剤は通常噴射剤と共にエアゾール組成物とされる。噴射剤としては通常エアゾールに用いられるジメチルエーテル、液化石油ガス、N2ガス、亜酸化窒素ガス、CO2ガス、代替フロンガスなどを挙げることができる。噴射剤を用いないで圧縮空気を用いることもできる。また、これらの混合物を用いてもよい。噴射剤の配合量は、特に限定されないが、本発明の消毒殺菌剤全量に対して0.1~80重量%であるのが好ましい。 ・・・ 【0020】本発明の消毒殺菌剤は、常法に従って製造することができる。また、本発明の消毒殺菌剤を充填するには、アルミニウム、ブリキなどの金属製、あるいはプラスチック製の耐圧容器を用いることができる。」 (甲8d) 「【0025】[実施例1]10%オスバン水溶液1.5g(日本製薬(株):塩化ベンザルコニウムとして0.15g)、エタノール65g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(日光ケミカルズ:NIKKOL BL-9EX;HLB 11.5)1g、グリセリン3g、ジメチルシロキサン・メチル(POE)シロキサン共重合体(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株);HLB 13.0)1g、0.5%キサンタンガム水溶液10g(キサンタンガムとして0.05g)および水18.5gをとり常法に従って原液を調製した。 【0026】この原液57gおよびLPG3gをエアゾール用耐圧容器に充填し、エアゾール用バルブおよびスパウトを取付けて、エアゾール組成物を作成した。得られた組成物約1gを掌にフォーム状にてとり出し、両手で手もみ洗いしながら手のひらおよび手の甲にまんべんなく拡げたところ、約20秒でフォームは消えた。」 ケ 甲9の記載事項 甲9には、以下の事項が記載されている。 (甲9a) 「【請求項1】 噴射剤および原液からなるエアゾール組成物であって、原液が、有効成分の酸性塩、水5w/v%以上および非イオン性および/または陽イオン性界面活性剤を含むpH6~8の均一系溶液である、前記エアゾール組成物。 【請求項2】 原液が、さらにアルコールを含む、請求項1に記載のエアゾール組成物。 ・・・ 【請求項11】 有効成分の酸性塩が、抗真菌薬、抗ヒスタミン剤、局所麻酔剤、消炎鎮痛剤、殺菌消毒剤、抗生剤およびビタミン剤からなる群から選択される1種または2種以上の酸性塩である、請求項1~10のいずれかに記載のエアゾール組成物。」 (甲9b) 「【0001】 本発明は、エアゾール組成物に関する。さらに詳しくは、長期間の保存においても金属製容器を腐食したり、配合した有効成分が析出したりすることなく、優れた安定性を有するエアゾール組成物に関する。 【背景技術】 【0002】 従来から、エアゾール組成物、特に水溶液が酸性を示す有効成分を含有するエアゾール組成物を充填した金属製容器を長期間保存した場合、該エアゾール組成物中の水分によって、金属製容器が腐食する現象が起きていた。このような腐食を防ぐために、金属製容器の内面を樹脂などで被覆し、エアゾール組成物と容器の金属表面とが物理的に接触しないように加工する方法が試みられたが、樹脂等で金属表面を完全に被覆したつもりでも、樹脂等で被覆されていない、いわゆるピンホールといわれる箇所から腐食が生じていた。」 (甲9c) 「【0015】 本発明のエアゾール組成物に添加し得るアルコールとしては、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、メタノール、無水エタノールなどが挙げられるが、薬物の溶解性、安全性、人体への安全性及び使用感の観点から、無水エタノールが好ましい。また、アルコールの添加量は、原液に対し、5w/v%以上、好ましくは、30~80w/v%、特に好ましくは、40~70w/v%である。 【0016】 本発明のエアゾール組成物に用い得る界面活性剤は、非イオン性および/または陽イオン性の界面活性剤であるが、皮膚に適用するエアゾール製剤に用いるエアゾール組成物においては、皮膚への刺激性の観点から、非イオン性界面活性剤が好ましい。また、本発明のエアゾール組成物に用いる界面活性剤は、親水性および親油性のいずれであってもよいが、親油性のものを用いる場合、原液の水分量が多いと白濁して均一系溶液に調製することが困難になる虞があり、親水性のものを用いるのが好ましい。 ・・・ 【0020】 本発明のエアゾール剤の噴射剤としては、公知のものを用いることができる。すなわち、ジメチルエーテル(DME)、液化石油ガス(LPG)、窒素ガス、炭酸ガス、代替フロンガス等の通常のエアゾール剤に噴射剤として用いられるものが使用される。 本発明のエアゾール容器として利用される金属製容器(エアゾール缶)は、典型的には、アルミニウム、鋼、ブリキ等からなり、その内面をエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミドイミド樹脂等でコーティングしたものが使用される。 本発明の有効成分の酸性塩には、塩酸塩、硝酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、亜硝酸塩、次亜塩素酸塩、クエン酸、フマル酸などの酸性の塩が使用できる。特に、塩酸塩や硝酸塩などが好適に使用される。また、有効成分としては、抗真菌薬、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、局所麻酔剤、殺菌剤から選択される1種または2種以上を配合することができる。 【0021】 特に、強い掻痒感を伴う場合の多い白癬等の症状に使用される抗真菌薬は、噴射剤ガスと共に皮膚へ噴射された場合に、噴射ガスの揮発による冷却作用を有することから、本発明のエアゾール組成物の有効成分として好適に使用される。このような、抗真菌薬としては、塩酸テルビナフィン、塩酸ネチコナゾール、塩酸ブテナフィン、硝酸ミコナゾール、硝酸エコナゾール等が使用され、好ましくは塩酸ブテナフィン、塩酸ネチコナゾールである。その配合量は、エアゾール組成物の原液処方に対して、0.1~10w/v%であることが好ましく、更に好ましくは0.1~5w/v%である。 ・・・ 【0024】 本発明のエアゾール組成物は、用途に応じて、グリチルレチン酸、アラントイン、サリチル酸メチルなどの抗炎症剤、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウムなどの殺菌剤、メントール、カンフル、オイゲノールなどの清涼化剤、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、酢酸トコフェロールなどの抗酸化剤、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸アルキル、チモールなどの防腐剤、エデト酸ナトリウム、ベンジルアルコール、プロピレングリコールなどの保存剤、オレンジ油、ハッカ油、ユーカリ油、ベルガモット油などの香料等の製剤上許容される他の配合成分を適宜含有することができる。」 コ 甲10の記載事項 甲10には、以下の事項が記載されている。 (甲10a) 「【請求項1】 ヒドロキシカルボン酸及び/又はその塩を含有する酸性の洗浄剤と、 噴射剤と、 前記洗浄剤に対する耐食性を有する保護膜で被覆された内面を有し、前記洗浄剤及び前記噴射剤が充填されている金属製のエアゾール容器と、 を備えること、 を特徴とするエアゾール型エアゾール型便器リム内洗浄剤。 ・・・ 【請求項3】 前記保護膜がポリアミドイミド樹脂で構成されていること、 を特徴とする請求項1又は2に記載のエアゾール型便器リム内洗浄剤。」 (甲10b) 「【0010】 上記本発明のエアゾール型便器リム内洗浄剤においては、前記洗浄剤のpHが、4.3±0.3の範囲内であることが好ましい。」 (甲10c) 「【0021】 本実施形態のエアゾール型便器リム内洗浄剤10は、便器のリム部の内側(縁の裏側)の洗浄用として好適に使用可能なものであり、図1に示すように、エアゾール容器20の内部に洗浄剤30と噴射剤40とを充填したものである。エアゾール容器20は、高純度アルミニウム合金製で有底筒状の缶によって構成された耐圧性を有する容器本体22と、樹脂製の噴射部24と、容器本体22の開口部を封止するバルブ(図示せず)と、を備えている。 【0022】 容器本体22は、内側金属面が保護膜26によって保護されている。保護膜26は、酸性の洗浄剤30に対する耐食性を備えた素材によって構成されている。具体的には、保護膜26は、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、エバール、ポリアミドイミド樹脂、エポキシフェノール等の薄膜や、これら薄膜を積層した積層膜によって形成されている。保護膜26は、耐食性を有するものであれば単層構造、多層構造のいずれであってもよい。本発明者らは、特にポリアミドイミド樹脂又はエポキシフェノールで構成された保護膜が、酸性の洗浄剤に対して長期耐食性に優れることを見出した。 ・・・ 【0028】 洗浄剤30は、便器(特にリム部内)の洗浄に好適に使用可能な酸性水溶液によって構成されている。洗浄剤30は、主として汚れを洗浄するための成分(洗浄成分)、主として除菌作用を発揮する成分(除菌成分)、主として尿石を分解するための成分(尿石分解成分)、主として水を軟化させるための成分(水軟化成分)、主として湿潤及び洗浄補助するための成分(湿潤・洗浄補助成分)、着色成分、消臭成分等の成分を水溶させたものである。 ・・・ 【0031】 また、除菌成分としては、従来公知のものを用いることができ、例えばジアルキルジメチルアンモニウムクロライド等を好適に使用することができる。 ・・・ 【0043】 噴射剤40は、上述した洗浄剤30と共にエアゾール容器20の内部に充填されている。噴射剤40は特に限定されるものではないが、例えば、プロパン、n-ブタン、イソブタン、これらの混合物であるガス、メタンを主成分とする液化天然ガス(LPG)、イソペンタン、ジメチルエーテル等の液化ガス、フロン11(登録商標)、フロン12(登録商標)、フロン21(登録商標)、フロン113(登録商標)、フロン114(登録商標)等のフッ化炭化水素類、窒素ガス、炭酸ガス等が挙げられる。以下の実施例では噴射剤40としてLPGが採用されている。」 (甲10d) 「【0059】 [評価試験2] 上記洗浄剤のうちの水アカ・黒ズミおちーる及びトイレふちクリーンを、それぞれLPGを用いて東洋製罐(株)製の高純度アルミニウム缶に充填して、比較エアゾール洗浄剤1及び2を作製した。また、本発明の洗浄剤を、LPGを用いて東洋製罐(株)製の高純度アルミニウム缶であって内面にポリアミドイミド樹脂をコーティングしたものに充填して、本発明のエアゾール型便器リム内洗浄剤を作製した。 【0060】 これらの比較エアゾール洗浄剤1及び2、並びに本発明のエアゾール型便器リム内洗浄剤を、1ヶ月間及び3ヶ月間、40℃の環境で保管したところ、いずれもアルミニウム缶に腐食等はなく、同等の耐食性を示した。なお、表2に示す組成の本発明の酸性タイプの洗浄剤を用いて作製したエアゾール缶でも同等の結果が得られた。」 サ 甲11の記載事項 甲11には、以下の事項が記載されている。 (甲11a) 「【請求項1】 エアゾール容器内に充填され、かつ成形品の離型に用いられるエアゾ-ル組成物であって、 前記エアゾール容器内には、液相部と気相部が充填され、 液相部は、噴射剤としての液化ジメチルエーテルおよび水溶性離型剤からなり、気相部は噴射剤としての圧縮ガスからなることを特徴とするエアゾール組成物。」 (甲11b) 「【0001】 この発明は、成形品の離型剤として用いられるエアゾール組成物および組成物の水溶性離型剤を成形型の所定部分に噴射して均一に塗布し、成形品を型から離型させるエアゾール式噴射装置に関する。 ・・・ 【0011】 以下、図面に沿って本発明の実施例を説明する。 【実施例1】 【0012】 図1(a)は本発明の一実施例にかかるエアゾール式噴射装置の概略断面図を示す。 【0013】 図1(a)において1は光を透過しない密閉状であって耐圧性のエアゾール容器であり、このエアゾール容器1は有底円筒状の容器本体1aと、その上方に一体に設けられた逆漏斗状の上部1bとからなり、上部1bの中央部には外部に充填物を噴射する押しボタン式のバルブ3が設けられている。このバルブ3は、ノズル5を有する押しボタン6、容器1内に位置するハウジング7等を備えている。 【0014】 エアゾール容器1の素材としては腐食防止の観点から好ましくはアルミニウムが用いられ、かつ内部には噴射剤として利用される液化ジメチルエーテルと水溶性離型剤が充填される。符号2はその液相部を示す。また、気相部2’としての圧縮ガスも充填されている。 【0015】 エアゾール容器1の上部1bは容器本体1aと予め一体形成してなるが、容器1としては、別体の天蓋を一体化するようにしたものでも良い。 【0016】 また、エアゾール容器1の内面には好ましくはエポキシポリアミドイミドの如き耐食性の樹脂4が被覆される。 【0017】 このように、エアゾール容器1をアルミニウムで形成し、かつその内面に耐食性の樹脂4をコーティングすることにより、内部の液相部2に対して十分な経時耐久性を確保することができる。 ・・・ 【0024】 したがって、本願発明者は鋭意検討した結果、噴射剤として液化ジメチルエーテルに加えて、気相部2’として、圧縮ガスである窒素を併用することによりこの問題の解決に至った。 ・・・ 【0033】 なお、上記実施例において、エアゾール容器1は図示例の形状に限定されるものではない。また、圧縮ガスとして窒素を使用したが、窒素以外に、例えば炭酸ガス、酸素等を使用することも可能である。」 シ 甲12の記載事項 甲12には、以下の事項が記載されている。 (甲12a) 「【請求項1】 水に溶解すると酸性となる成分を含む水性成分と、油性成分とからなる油中水型エアゾール組成物を金属製のエアゾール容器に充填したエアゾール製品。 【請求項2】 水性成分のpHが2.0~6.8である請求項1記載のエアゾール製品。 【請求項3】 水性成分の塩素イオン濃度が10~5000ppmである請求項1または2記載のエアゾール製品。 【請求項4】 エアゾール組成物の5~60重量%が液化ガスである請求項1、2または3記載のエアゾール製品。」 (甲12b) 「【0002】 【従来の技術】エアゾール製品は、原液と噴射剤とからなるエアゾール組成物をエアゾール容器に充填しており、エアゾール容器としては、強度、耐圧性、加工性などの点より、アルミニウムやブリキなどの金属製のエアゾール容器が広く使用されている。 【0003】エアゾール容器の内部には、ポリアミド樹脂やフェノール樹脂、ポリエステル樹脂などの樹脂コート(内面コート)を施し、エアゾール組成物による金属部分の腐蝕を防止している。しかし、原液が酸性の水性成分や高い塩素イオン濃度の水性成分を含む場合、製品を長期間保存したとき、容器内部に前記内面コートを施しても腐蝕を充分押さえることができず、酸性成分の使用が制限されていた。 ・・・ 【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、原液が酸性の水性成分を含有する場合に、金属製のエアゾール容器を使用しても、腐蝕の問題のないエアゾール製品を提供することを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題を解決するために誠意研究を行った結果、酸性成分を含む水性成分に、油性成分を配合して油中水型エアゾール組成物とすることにより、金属製のエアゾール容器を使用しても、腐蝕の問題がないことを見出した。 ・・・ 【0010】 【発明の実施の形態】本発明のエアゾール製品は、水に溶解すると酸性となる成分(酸性成分)を含む水性成分と、油性成分とからなる油中水型エアゾール組成物を金属製のエアゾール容器に充填することにより得られる。 ・・・ 【0013】前記水性成分は、酸性成分を溶解した水溶液であって、液化ガスとともにエアゾール組成物を構成する原液の一部もしくは全部を構成する。前記水性成分は、前記酸性成分や後述する界面活性剤、必要に応じてアルコール類や他の有効成分などを水に溶解または分散させることにより得られる。 ・・・ 【0026】前記液化ガスは、油性成分の一部もしくは全部を構成し、エアゾール組成物の噴射剤として作用するだけでなく、輸注水型エアゾール組成物としたとき、連続相の主成分となり、水性成分による腐蝕を防止するための成分である。 【0027】前記液化ガスとしては、たとえば、プロパン、n-ブタン、i-ブタンおよびこれらの混合物である液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテルやフロン類およびこれらの混合物などがあげられる。前記液化ガスのうち、水への溶解量がほとんどなく、油性の強い液化石油ガスを主成分とするものを用いることが、容器の腐蝕防止効果が大きい点から好ましい。なお窒素や二酸化炭素、亜酸化窒素、圧縮空気などの圧縮ガスを、前記液化ガスとともに配合してもよい。 ・・・ 【0040】さらに、前記界面活性剤や後述する他の有効成分などを水性成分および/または油性成分に配合できるように、アルコール類を配合することができる。 【0041】前記アルコール類としては、低級アルコール、多価アルコールなどがあげられる。 【0042】前記低級アルコールは、界面活性剤や有効成分の溶解剤以外にも、冷却感の付与、乾燥性の向上など、使用感を向上させるために用いられる。前記低級アルコールとしては、たとえばエタノール、イソプロピルアルコールなど、炭素数が2~3の1価のアルコールがあげられる。 ・・・ 【0045】なお、エアゾール製品の目的、用途に応じて他の有効成分、pH調整剤、高分子化合物、粉体などを適宜選択し、前記水性成分および/または油性成分に溶解または分散した状態で配合することができる。 【0046】前記他の有効成分としては、たとえば、皮膚軟化剤、かゆみ止め、消炎鎮痛剤、収斂剤、抗炎症剤、局所麻酔剤、清涼剤、消臭剤、殺菌・防腐剤、保湿剤、アミノ酸、ビタミン類、ホルモン類、害虫忌避剤、頭髪用セット剤、トリートメント剤、育毛剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、各種抽出液、美白剤、香料などが用いられる。 ・・・ 【0054】前記殺菌・防腐剤としては、たとえば、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化クロルヘキシジン、感光素、パラクロルメタクレゾールなどがあげられる。 ・・・ 【0077】本発明のエアゾール製品は、前記エアゾール組成物を金属製のエアゾール容器に充填し、前記エアゾール容器内で油中水型エアゾール組成物とすることにより得られる。 【0078】前記金属製のエアゾール容器としては、たとえば、アルミニウム製の耐圧容器、ブリキ製の耐圧容器などをあげることができる。なお、本発明のエアゾール製品はエアゾール容器の腐食を防止できるものであるが、エアゾール容器の内面には、ポリアミド樹脂やフェノール樹脂、ポリエステル樹脂などをラミネートコートやスプレーコート、または静電塗装、さらには炭素やシリカを蒸着するなどの手段により保護皮膜を設けることが好ましい。 【0079】かくして得られるエアゾール製品は、従来配合することのできなかった、または所望量配合できなかった酸性成分を水に溶解させた水溶液の状態で配合することができ、長期保存した場合であってもエアゾール容器の腐蝕を防止でき、安定なエアゾール製品である。」 (甲12c) 「【0081】<鎮痛・鎮痒剤> 実施例1 水性成分として、塩酸ジフェンヒドラミン(酸性成分)1.2重量%、グリチルレチン酸0.4重量%および濃グリセリン5.0重量%を水80.9重量%に溶解させた水溶液を調製し、水性成分の20℃におけるpHと塩素イオン濃度を測定した。 【0082】次いで原液の一部である油性成分として、エタノール5.0重量%に、l-メントール2.5重量%、HCO-5(物質名:ポリオキシエチレン(5)硬化ヒマシ油)2.0重量%およびSO-15R(物質名:ソルビタンセスキオレエート)3.0重量%を溶解し、調製した。 【0083】前記水性成分と油性成分とを混合して油中水型の原液を調製し、原液の外観、臭いを評価した。前記原液80重量%をアルミニウム製エアゾール容器(内面コート付き(ポリアミドイミド樹脂))に充填したのち、液化ガスとして液化石油ガス(LPG)20.0重量%を充填し、エアゾールバルブ(アルミニウム製マウンティングカップ(PETラミネート付き))を取り付け、油中水型エアゾール製品を得た。」 (2)引用発明 ア 甲1に記載された発明 甲1には、殺菌消毒用エアゾール組成物について記載されており(摘記甲1a~甲1f)、手指の殺菌消毒に使用することが記載されているところ(摘記甲1b)、実施例1として、殺菌消毒用エアゾール製品の具体例が記載され、該製品を手指に吐出して殺菌消毒したことが記載されていることから(摘記甲1e及び甲1f)、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。なお、摘記甲1eの【0033】(実施例1)の「塩化ベンベトニウム」との記載は、平成5年6月22日の補正により、「塩化ベンゼトニウム」へと補正されており(摘記甲1f)、ここでは、補正後の用語「塩化ベンゼトニウム」に基いて、発明を認定する。また、内圧の単位についても同様に、補正後の用語「kg/cm2 ・G」に基いて、発明を認定する。 甲1発明: 「塩化ベンゼトニウム1.5重量%、99%イソプロパノール50重量%、グリセリン3重量%、精製水(全量が100となる量)を常温で均一に混合して調製した原液60gを、エアゾール用耐圧容器(満注量:100ml)に充填し、エアゾール用バルブを取り付けたのち、噴射剤として炭酸ガス1.3gを35℃で内圧が5.5~6.5kg/cm2 ・Gとなるように加圧充填して得た手指用殺菌消毒用エアゾール製品。」 イ 甲2に記載された発明 甲2には、洗い流さないタイプの殺菌清浄剤組成物について記載されており(摘記甲2a~甲2e)、この殺菌清浄剤組成物は、手(手の平、手の指、及び手の甲)用の殺菌清浄剤組成物として好適であることが記載され、実施例として手指に適用し、適用後の滅菌を確認している例が記載されている(摘記甲2d、【0053】、摘記甲2e)。かかる甲2の記載、特に、請求項1の記載を引用する請求項3及び実施例の記載からみて、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。 甲2発明: 「(A)エタノール14.8質量%~37質量%、 (B)塩化ベンザルコニウム、 (C-1)シクロデキストリン0.2質量%~3質量%、及び (D)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油0.01質量%~0.2質量%、を含有し、 前記(A)エタノールの含有量(質量%)と、前記(C-1)シクロデキストリンの含有量(質量%)との質量比(A/C-1)が9~100であり、 前記(A)エタノールの含有量(質量%)と、前記(D)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の含有量(質量%)との質量比(A/D)が100~1,700であり、 手指に用いられ、泡状に吐出される、洗い流さないタイプの殺菌清浄剤組成物を充填してなるフォーマー容器。」 (3)対比・判断 ア 本件発明1について (ア)甲1を主引用例とした場合 a 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (a)甲1発明の「エアゾール用耐圧容器」は、本件発明1の「外装容器」に相当する。 (b)甲1発明の「イソプロパノール」は、炭素数3のアルコールであるから、本件発明1の「炭素数1~3の低級アルコール」に相当する。 (c)甲1発明の「塩化ベンゼトニウム」は、本件発明1の「第四級アンモニウム塩化物塩」に相当する。 (d)甲1発明は手指用殺菌消毒用エアゾール製品であるから、甲1発明の「イソプロパノール」及び「塩化ベンゼトニウム」を含有する「原液」は、手指の殺菌消毒作用を有することは明らかであり、本件発明1の「手指消毒剤」に相当する。また、甲1発明において、当該「原液」は、「エアゾール用耐圧容器」に充填されるから、本件発明1の「手指消毒剤」が「外装容器に収容され」ることに相当する。 (e)甲1発明の「炭酸ガス」は、35℃で内圧が5.5~6.5kg/cm2 ・Gとなるように加圧充填されたものであり、かつ、文献を例示するまでもなく「不燃性」のものであるといえるから、本件発明1の「不燃性圧縮気体」に相当する。また、甲1発明において、「炭酸ガス」は、(エアゾール用耐圧容器に)加圧充填されるものであり、エアゾール用耐圧容器には、手指消毒剤に相当する「原液」も充填されているから、本件発明1の「外装容器の内部に前記手指消毒剤とともに充填されている」ことに相当する。 (f)甲1発明の「手指用殺菌消毒用エアゾール製品」は、本件発明1の「手指消毒用エアゾール製品」に相当する。 (g)よって、両発明は、次の一致点及び相違点1~4を有すると認める。 一致点: 「外装容器と、 前記外装容器に収容され、炭素数1~3の低級アルコール、第四級アンモニウム塩化物塩を含有する手指消毒剤と、 前記外装容器の内部に前記手指消毒剤とともに充填されている不燃性圧縮気体を備える手指消毒剤用エアゾール製品。」 相違点1:「外装容器」について、本件発明1は、「内側表面がポリアミドイミド又はフェノール系エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂により被覆された被覆層を有する金属性」であるとされているのに対し、甲1発明は、そのようなものであるとされていない点。 相違点2:「手指消毒剤」について、本件発明1は、「リン酸及びリン酸三ナトリウム」を含有するのに対し、甲1発明は、それらを含有しない点。 相違点3:「手指消毒剤」について、本件発明1は、「25℃におけpHが3.0~5.0である」のに対し、甲1発明は、「原液」のpHが不明である点。 相違点4:「不燃性圧縮気体」について、本件発明1は、「窒素ガス」を備えるのに対し、甲1発明は、「炭酸ガス」である点。 b 判断 (a)相違点1について 甲1には、「通常用いられる瓶、缶、樹脂製の容器などの耐圧性の容器を適用することができる」ことが記載されているところ(摘記甲1d、【0028】)、樹脂により被覆された被覆層を有する金属性の容器を用いることについての記載及び示唆はない。 甲5には、有機溶媒を1重量%以上含有したpHが1.5~4.5の水溶液からなる高金属腐食性原液と噴射剤とを、樹脂膜によって内面がラミネート保護された金属容器内に充填したエヤゾール製品が記載されている(摘記甲5a)。さらに、リン酸等のpH調整剤等を用いることによってpHを調整すること、噴射剤としてチッ素ガス等が挙げられること、塩化ステアリルトリメチルアンモニウムを含む原液を用いたエヤゾール製品(摘記甲5b、【0020】、甲5c、甲5d)、及び、金属容器として、厚さ0.4mmのアルミニウムの容器内にポリアミドイミド系樹脂(PAI)の溶液を吹付けたのち、形成された塗膜を焼付けたもの(乾燥膜厚100μm)を用いた比較例番号2、4、7、9、10~17のエアゾール製品では、原液の成分やpHに応じて、耐金属腐食性の評価が「○:原液および噴射剤を充填する前と全く変わらない。」、「△:部分的に腐食されている。」又は「×:腐食がいちじるしい。」という結果に分かれることも記載されている(摘記甲5c、甲5d)。なお、甲5の表3については、平成6年1月10日の補正後のもの(摘記甲5d)を参照した。 甲6には、アルミニウム製の耐圧外筒缶にアルミニウム製の内側容器を収納した二重構造エアゾール容器に酸性半永久染毛剤を入れると、缶に腐食が生じるという問題があり、内側容器として内面がスプレーコートされたアルミニウム缶を使用した場合においても、通常の内面コート樹脂(ポリアミドイミド樹脂、エポキシフェノール系樹脂、オルガノゾル(ミコフレックス)系樹脂等)は、長期間保存時に酸性半永久染毛剤に含まれる酸と浸透促進剤との相互作用により変性を受けるので、結果として内側容器に腐食が発生するという問題があることが記載されている(摘記甲6a、摘記甲6b、【0006】、【0009】、摘記甲6c、【0045】、摘記甲6d)。さらに、染毛剤組成物のpHを2.0~4.0に調整するためにはリン酸等の酸を使用すること、酸は、さらにそのカリウム塩、ナトリウム塩等と組み合わせて系に緩衝能をもたせることが好ましいこと(摘記6c、【0039】、【0040】)、酸性半永久染毛剤には、酸性染料や浸透促進剤の溶解性を高めるために、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール等の低級アルコールを含有させることができること(摘記6c、【0041】)、及び製品から酸性半永久染毛剤を吐出させるため、外筒缶とインナーバッグとの間に封入する噴射剤として、窒素ガス、炭酸ガス、亜酸化窒素ガスなどの圧縮ガスを使用することができ、中でも、窒素ガスを好ましく使用することができること(摘記甲6c、【0043】)も記載されている。 甲9には、噴射剤および原液からなるエアゾール組成物であって、原液が、有効成分の酸性塩、水5w/v%以上および非イオン性および/または陽イオン性界面活性剤を含むpH6~8の均一系溶液である、エアゾール組成物が記載され(摘記甲9a)、水溶液が酸性を示す有効成分を含有するエアゾール組成物を充填した金属製容器を長期間保存した場合、該エアゾール組成物中の水分によって金属製容器が腐食するのを防ぐために、金属製容器の内面を樹脂などで被覆し、エアゾール組成物と容器の金属表面とが物理的に接触しないように加工する方法が試みられたことが記載されている(摘記甲9b)。さらに、エアゾール製剤を皮膚に適用すること(摘記甲9c、【0016】、【0021】)、エアゾール組成物には、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、メタノール、無水エタノール等のアルコールを添加し得ること(摘記甲9c、【0015】)、エアゾール剤の噴射剤として窒素ガス等の通常のエアゾール剤に噴射剤として用いられるものが使用されること、エアゾール容器として利用される金属製容器(エアゾール缶)は、典型的には、アルミニウム、鋼、ブリキ等からなり、その内面をエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミドイミド樹脂等でコーティングしたものが使用されること(摘記甲9c、【0020】)、及びエアゾール組成物は、用途に応じて、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウムなどの殺菌剤を適宜含有することができること(摘記甲9c、【0024】)も記載されている。 甲10には、エアゾール容器の内部に洗浄剤と噴射剤とを充填したエアゾール型便器リム内洗浄剤に関し、高純度アルミニウム合金製の容器本体の内側金属面を保護する、ポリアミドイミド樹脂又はエポキシフェノールで構成された保護膜が、酸性の洗浄剤に対して長期耐食性に優れることが記載されている(摘記10a、摘記10c、【0021】、【0022】、摘記10d)。さらに、洗浄剤のpHは、4.3±0.3の範囲内が好ましいこと(摘記10b)、洗浄剤は、便器の洗浄に好適に使用可能な酸性水溶液によって構成され、除菌成分として、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド等を好適に使用することができること(摘記甲10c、【0028】、【0031】)、及び噴射剤として窒素ガス等が挙げられること(摘記甲10cの【0043】)も記載されている。 甲11には、成形品の離型剤として用いられるエアゾール組成物を充填するエアゾール式噴射装置について、エアゾール容器の内面には好ましくはエポキシポリアミドイミドの如き耐食性の樹脂が被覆されることが記載されている(摘記甲11a、摘記甲11b、【0001】、【0012】~【0017】)。さらに、噴射剤として、圧縮ガスである窒素を併用することも記載されている(摘記甲11b、【0024】、【0033】)。 甲12には、原液と噴射剤とからなるエアゾール組成物をエアゾール容器に充填したエアゾール製品について、エアゾール容器としては、強度、耐圧性、加工性などの点より、アルミニウムやブリキなどの金属製の容器が広く使用され、エアゾール容器の内部には、ポリアミド樹脂やフェノール樹脂、ポリエステル樹脂などの樹脂コート(内面コート)を施し、エアゾール組成物による金属部分の腐蝕を防止していること、原液が酸性の水性成分や高い塩素イオン濃度の水性成分を含む場合、製品を長期間保存したとき、容器内部に内面コートを施しても腐蝕を十分抑えることができず、酸性成分の使用が制限されていたことが記載されている(摘記甲12a、摘記甲12b、【0002】、【0003】)。さらに、エアゾール容器の内面には、ポリアミド樹脂やフェノール樹脂、ポリエステル樹脂などをラミネートコートやスプレーコート、または静電塗装などの手段により保護皮膜を設けることが好ましいこと(甲12bの【0078】)、エアゾール製品の水性成分のpHが2.0~6.8であること(摘記甲12a、【請求項2】)、液化ガスに、窒素などの圧縮ガスを配合してもよいこと(摘記甲12b、【0027】)、及びエアゾール組成物には、低級アルコールとしてエタノール、イソプロピルアルコールなど炭素数が2~3の1価のアルコール、pH調整剤、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどの殺菌・防腐剤を配合できること(摘記甲12b、【0040】、【0041】、【0045】、【0054】、摘記甲12c、【0081】~【0083】)も記載されている。 甲5、6、9~12の上記記載によれば、殺菌消毒剤、pH調整剤、窒素ガス等の噴射剤を内容物として含むエアゾール容器に金属製のものを用いること、内容物によって金属製のエアゾール容器が腐食されるのを防止するためにエアゾール容器の内面を樹脂で被覆することは、いずれも周知の技術的事項であるといえる。また、被覆する樹脂としてポリアミドイミド及びフェノール系エポキシ樹脂は、周知であるといえる。 しかし、甲1には、金属性の容器を使用することについて記載も示唆もないから、甲1発明において、「エアゾール用耐圧容器」を「金属性」のものとし、さらに、「内側表面がポリアミドイミド又はフェノール系エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂により被覆された被覆層を有する」ものとする動機付けがあるとはいえない。 仮に、上記周知の技術的事項に基づいて、甲1発明のエアゾール用耐圧容器に金属性のものを用いること、容器の腐食を防止するためにその内面を樹脂で被覆すること自体は当業者が容易になし得た事項であるといえたとしても、甲5、6、12に記載されるとおり、容器の内容物のpH、原液に含まれる成分、被覆する樹脂の種類等によって、エアゾール容器の内面を樹脂で被覆すれば、必ずエアゾール容器の腐食を防止できるというものでないことは周知であることに鑑みれば、たとえ、甲5、6、9~12に記載されたエアゾールの内容物が、甲1発明のエアゾール製品の内容物と一部一致するとしても、樹脂としてポリアミドイミド、フェノール系エポキシ樹脂を選択することは当業者が容易になし得た事項であるとはいえず、また、甲1発明のエアゾール製品の内容物を金属性の容器に充填した場合に、ポリアミドイミド又はフェノール系エポキシ樹脂が当該金属の腐食の防止に有効であることを予測することはできない。 したがって、甲1発明の原液及び噴射剤を充填する容器を、「金属性」のものとした上で、該容器について「内側表面がポリアミドイミド又はフェノール系エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂により被覆された被覆層を有する」ものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるということはできない。 (b)相違点2及び相違点3について 甲1には、甲1発明の原液に「リン酸及びリン酸三ナトリウム」を含有するものとすること、原液を「25℃におけpHが3.0~5.0である」ものとすることについて記載も示唆もない。 甲2には、殺菌清浄剤組成物のpHについて、pHが4未満であると、皮膚マイルド性が不十分となることがあり、7を超えると防腐力が不十分となることがあるため、25℃で4~7が好ましく、4~6がより好ましいこと、pHの調整はpH調整剤を用いて行うことができ、pH調整剤に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、クエン酸及びクエン酸ナトリウムの併用が好ましいことが記載されている(摘記甲2d、【0045】)。 甲3には、菌だけでなくウイルスに対しても効力を発揮する、手に擦り込んで用いる粘稠消毒剤について(摘記甲3a、請求項1、摘記甲3b)、菌の生育を阻み、死滅させるとともに、エタノールと併存することによりノンエンベロープウイルスに対しても不活化、増殖などの効力を有する有効成分として酸、具体的にはリン酸及びリン酸三ナトリウム塩を含有させることが記載されている(摘記甲3a、請求項1、摘記甲3c、【0018】、摘記甲3d、【0025】、【0039】、【0040】、【0043】)。さらに、25℃におけるpHを2.5~5.0、具体的には3.2、3.5、4.5等とすることも記載されている(摘記甲3a、請求項2、摘記甲3d、【0040】、【0043】)。 甲4には、皮膚洗浄料組成物について、皮膚刺激低減性及び洗浄力を得る観点等から、pHを3~8、好ましくは3~5とすることが記載されている(摘記甲4a、摘記甲4b、【0010】、【0063】)。さらに、リン酸、リン酸三ナトリウム等のpH調整剤が含まれてもよく、これらを2種以上組み合わせて用いてもよいことも記載されている(摘記甲4b、【0061】)。 甲5には、有機溶媒を1重量%以上含有したpHが1.5~4.5の水溶液からなる高金属腐食性原液と噴射剤とを、樹脂膜によって内面がラミネート保護された金属容器内に充填したエヤゾール製品が記載され(摘記甲5a、摘記甲5b、【0001】)、リン酸等のpH調整剤等を用いることによってpHを調整することも記載されている(摘記甲5b、【0021】)。 甲6には、染毛剤組成物のpHを2.0~4.0に調整するためにはリン酸等の酸を使用すること、酸は、さらにそのカリウム塩、ナトリウム塩等と組み合わせて系に緩衝能をもたせることが好ましいことが記載されている(摘記6c、【0039】、【0040】)。 しかし、甲1には、pH調整剤を使用することについて何らの記載も示唆もなく、甲2の記載を参酌しても、甲2には、pH調整剤としてリン酸及びリン酸三ナトリウムを採用することについての記載はないから、甲1発明において、リン酸及びリン酸三ナトリウムを含有させ、かつ、25℃におけるpHを3~5とする動機は見いだせない。 また、甲3の記載を参酌しても、甲1発明の原液には、カチオン系殺菌消毒剤として塩化ベンゼトニウムが含まれており、甲1発明の原液にさらなる消毒成分として、リン酸及びリン酸三ナトリウム塩を配合することが動機付けられるとはいえず、また、甲3に記載の粘稠消毒剤は、酸を含有するものであり、そのpHが2.5~5.0であるところ、上述のとおり、甲1発明の原液にリン酸を配合する動機付けはないから、甲1発明の原液のpHを3.0~5.0の範囲とする動機付けもない。 そして、甲4は皮膚洗浄料組成物であって、甲1発明の殺菌消毒用エアゾール組成物とはその用途が異なるものであるし、甲4には、リン酸及びリン酸三ナトリウムをpH調整剤として配合することが記載されているところ(摘記甲4b、【0061】)、甲1には、原液にpH調整剤を配合して所定の範囲のものとすることは記載も示唆もされていないから、甲4の記載を参酌しても、甲1発明において、リン酸及びリン酸三ナトリウムを含有させ、かつ、25℃におけるpHを3~5とする動機は見いだせない。 さらに、甲5には有機溶媒を1重量%以上含有したpHが1.5~4.5の水溶液からなる高金属腐食性原液が記載され、甲6には染毛剤組成物が記載されているが、それらは甲1発明の殺菌消毒用エアゾール組成物とはその用途が全く異なるものであるから、甲5、6の記載を参酌しても、甲1発明において、リン酸及びリン酸三ナトリウムを含有させ、かつ、25℃におけるpHを3~5とする動機は見いだせない。 したがって、甲1発明において、相違点2及び3に係る技術的事項を備えるものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 (c)相違点4について 甲1に記載された発明は、臨界温度が0~50℃の噴射剤を用いるものであり、それにより、「一般に発泡剤として配合される界面活性剤を用いないばあいであっても、良好な泡沫状の吐出形態を呈する殺菌消毒用エアゾール組成物をうることができ、しかも該界面活性剤を多量に配合したときのようなべたつきや皮膚への刺激が緩和されるなどといったすぐれた性質が発現される。」(摘記甲1d)という効果を奏するものである。 一方、窒素の臨界温度は-147℃であり(必要があればhttps://oilgas-info.jogmec.go.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/009/164/5_1_gas_components_2022_j.pdf等参照)、「窒素ガス」は、甲1に記載されている「臨界温度が0~50℃の噴射剤」には該当しない。さらに、甲1では、噴射剤としてチッ素ガスを用いたものは、泡沫安定性や使用感の劣る比較例(比較例3)とされている(摘記甲1e、【0051】)。 そうすると、甲5~甲12に記載されるとおり(摘記甲5b、【0025】、摘記甲6c、【0043】、摘記甲7c、【0017】、摘記甲8c、【0018】、摘記甲9c、【0020】、摘記甲10c、【0043】、摘記甲11b、【0024】、【0033】、摘記甲12b、【0027】)、不燃性圧縮気体として窒素ガスが周知であったとしても、甲1発明において、噴射剤として炭酸ガスに代えて窒素ガスを用いることは、甲1発明の効果を損なうものであって、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 (d)本件発明1の効果について 本件発明1は、「炭素数1~3の低級アルコール、第四級アンモニウム塩化物塩を含有する消毒剤を収容するエアゾール製品について、長期保存しても当該消毒剤を収容する容器が腐食して容器内に封入されている圧縮ガスの圧力により破裂するおそれがない」手指消毒用エアゾール製品が得られる(本件明細書、【0010】、【0040】~【0044】等参照。)という、当業者が甲1~12に記載された事項から予測できない顕著な効果を奏するものである。 c 甲1を主引例とした場合の小括 以上検討したとおりであるから、本件発明1は、甲1~12に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (イ)甲2を主引例とした場合 a 対比 本件発明1と甲2発明とを対比する。 (a)甲2発明の「フォーマー容器」は、「殺菌清浄剤組成物」を充填するものであるから、本件発明1の「外装容器」に相当する。 (b)甲2発明の「エタノール」は、炭素数2のアルコールであるから、本件発明1の「炭素数1~3の低級アルコール」に相当する。 (c)甲2発明の「塩化ベンザルコニウム」は、本件発明1の「第四級アンモニウム塩化物塩」に相当する。 (d)甲2発明の「手指に用いられ、洗い流さないタイプの殺菌清浄剤組成物」は、本件発明1の「手指消毒剤」に相当する。 (e)甲2発明の「手指に用いられ、洗い流さないタイプの殺菌清浄剤組成物」は「フォーマー容器」に充填されているから、本件発明1の「外装容器に収容され」る「手指消毒剤」に相当する。 (f)甲2発明の「手指に用いられ、洗い流さないタイプの殺菌清浄剤組成物」が充填されている「フォーマー容器」は、本件発明1の「手指消毒剤用」「製品」に相当する。 (g)よって、両発明は、次の一致点及び相違点5~8を有すると認める。 一致点:「外装容器と、前記外装容器に収容され、炭素数1~3の低級アルコール及び第四級アンモニウム塩化物塩、を含有する手指消毒剤を備える手指消毒剤用製品。」 相違点5:「外装容器」について、本件発明1は、「内側表面がポリアミドイミド又はフェノール系エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂により被覆された被覆層を有する金属性」であるとされているのに対し、甲2発明は、そのようなものであるとされていない点。 相違点6:「手指消毒剤」について、本件発明1は、「リン酸及びリン酸三ナトリウム」を含有するのに対し、甲2発明は、それらを含有しない点。 相違点7:「手指消毒剤」について、本件発明1は、「25℃におけpHが3.0~5.0である」のに対し、甲2発明は、「殺菌洗浄剤組成物」のpHが不明である点。 相違点8:「手指消毒剤用製品」について、本件発明1は、「外装容器の内部に」「手指消毒剤とともに充填されている不燃性圧縮気体として窒素ガスを備える」とされ、「エアゾール」製品であるとされているのに対し、甲2発明は、そのような製品であるとされていない点。 b 判断 (a)相違点5及び8について 相違点5と相違点8は外装容器に関係し、互いに関連する相違点であるから、併せて検討する。 甲2にはフォーマー容器について、「前記フォーマー容器としては、例えば、ノンガス型の泡吐出容器、噴射剤と耐圧容器とを使用したエアゾール容器などが挙げられる。」(摘記甲2d、【0048】)と記載されているところ、その記載に続いて、「これらの中でも、ノンガス型の泡吐出容器が好ましい。」と記載され、その後もノンガス型の泡吐出容器について記載され(摘記甲2d、【0049】及び【0050】)、実施例にももっぱらノンガス型のフォーマー容器が記載されている(摘記甲2e)一方で、エアゾール容器についての記載は、上記【0048】の記載以外にはない。 一方、上記(ア)b(a)で述べたとおり、甲5、6、9~12の記載からみて、エアゾール容器に金属製のものを用いること、内容物によって金属製のエアゾール容器が腐食されるのを防止するためにエアゾール容器の内面を樹脂で被覆することは、いずれも周知の技術的事項であるといえる。また、被覆する樹脂としてポリアミドイミド及びフェノール系エポキシ樹脂は、周知であるといえる。 しかし、上述のとおり、甲2には、ノンガス型の泡吐出容器が好ましいことが記載されており、ノンガス型の泡吐出容器に金属性のものを用いることが技術常識であるともいえないから、甲2発明において、あえて腐食の問題を生じる可能性がある金属製の容器を用いた上で、さらに、特定の樹脂によってその内側表面を被覆する動機付けがあるとはいえない。 また、甲1、甲5~甲12には、エアゾールの噴射剤として窒素ガスを用いることが記載されているから(摘記甲5b、【0025】、摘記甲6c、【0043】、摘記甲7c、【0017】、摘記甲8c、【0018】、摘記甲9c、【0020】、摘記甲10c、【0043】、摘記甲11b、【0024】、【0033】、摘記甲12b、【0027】)、エアゾールの噴射剤として窒素ガスを用いることは周知であるといえるが、上述のとおり、甲2には、ノンガス型の泡吐出容器が好ましいことが記載されているから、甲2発明において、あえて「不燃性圧縮気体として窒素ガスを備える」、「エアゾール」製品とする動機付けがあるとはいえない。 仮に、甲2の「フォーマー容器としては、例えば、ノンガス型の泡吐出容器、噴射剤と耐圧容器とを使用したエアゾール容器などが挙げられる」との記載(摘記甲2d、【0048】)から、エアゾール容器を用いる動機付けがあったとしても、上述のとおり、腐食の問題を生じる可能性がある金属製の容器を用いた上で、さらに、特定の樹脂によってその内側表面を被覆する動機付けがあるとはいえないから、「外装容器」を所定の樹脂で被覆され、金属性のものとした上で、「外装容器の内部に」「手指消毒剤とともに充填されている不燃性圧縮気体として窒素ガスを備える」「エアゾール」製品とすることは当業者が容易になし得た事項であるということはできない。 したがって、甲2発明において、相違点5及び8に係る技術的事項を備えるものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 (b)相違点6について 甲2には、殺菌清浄剤組成物のpHについて、皮膚マイルド性、及び防腐力の点から、25℃で4~7が好ましく、4~6がより好ましいこと、pHの調整はpH調整剤を用いて行うことができ、pH調整剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、クエン酸及びクエン酸ナトリウムの併用が好ましいことが記載されている(摘記甲2d、【0045】)が、リン酸及びリン酸三ナトリウムを用いることは記載も示唆もされていない。 一方、甲3には、菌だけでなくウイルスに対しても効力を発揮する、手に擦り込んで用いる粘稠消毒剤について(摘記甲3a、請求項1、摘記甲3b)、菌の生育を阻み、死滅させるとともに、エタノールと併存することによりノンエンベロープウイルスに対しても不活化、増殖などの効力を有する有効成分として酸、具体的にはリン酸及びリン酸三ナトリウム塩を含有させることが記載され(摘記甲3a、請求項1、摘記甲3c、【0018】、摘記甲3d、【0025】、【0039】、【0040】、【0043】)、25℃におけるpHを2.5~5.0、具体的には3.2、3.5、4.5等とすることが記載されている(摘記甲3a、請求項2、摘記甲3d、【0040】、【0043】)。 甲4には、皮膚洗浄料組成物について、皮膚刺激低減性及び洗浄力を得る観点等から、pHを3~8、好ましくは3~5とすること(摘記甲4a、摘記甲4b、【0010】、【0063】)、リン酸、リン酸三ナトリウム等のpH調整剤が含まれてもよく、これらを2種以上組み合わせて用いてもよいこと(摘記甲4b、【0061】)、噴霧式容器として、エアゾール式スプレー容器が挙げられること(摘記甲4b、【0006】)が記載されている。 甲5には、有機溶媒を1重量%以上含有したpHが1.5~4.5の水溶液からなる高金属腐食性原液と噴射剤とを、樹脂膜によって内面がラミネート保護された金属容器内に充填したエヤゾール製品が記載され(摘記甲5a、摘記甲5b、【0001】)、リン酸等のpH調整剤等を用いることによってpHを調整することが記載されている(摘記甲5b、【0021】)。 甲6には、染毛剤組成物のpHを2.0~4.0に調整するためにはリン酸等の酸を使用すること、酸は、さらにそのカリウム塩、ナトリウム塩等と組み合わせて系に緩衝能をもたせることが好ましいことが記載されている(摘記甲6c、【0039】、【0040】)。 しかしながら、甲3には、リン酸及びリン酸三ナトリウムをpH調整剤として使用することは記載されておらず、甲4~甲6に、リン酸を、甲4に、リン酸三ナトリウムをそれぞれpH調整剤として用いることができることが記載されているとしても、甲2には、pH調整剤は適宜選択することができるとされ、具体的なpH調整剤としてはクエン酸及びクエン酸ナトリウムしか記載されていない(摘記甲2d、【0045】)から、甲2発明において、多数存在することが周知である(例えば、摘記甲4b、【0061】には「pH調整剤(リン酸、塩酸、ギ酸、酢酸、クエン酸、グリコール酸、グルクロン酸、クロロ酢酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸、マロン酸、リンゴ酸、乳酸、安息香酸、リン酸カリウム、リン酸二カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸アンモニウム、三リン酸五ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム(クエン酸三ナトリウム)、クエン酸カルシウム、グリコール酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、スルホコハク酸三ナトリウム、フマル酸ナトリウム、酒石酸カリウム、酒石酸二ナトリウム、ピロリン酸四カリウム、ピロリン酸二ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられ、好ましくはクエン酸、水酸化カリウムが挙げられる。)」と記載されているように、40種以上の化合物が記載されている。)pH調整剤の中から、リン酸とリン酸三ナトリウムの組み合わせを選択する動機付けがあるとはいえない。 したがって、甲2発明において、「殺菌清浄剤組成物」が「リン酸及びリン酸三ナトリウム」を含有するものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 (c)本件発明1の効果について検討する。 本件発明1は、上記(3)ア(ア)b(d)で述べたとおりの効果を奏するものである。 c 甲2を主引例とした場合の小括 以上検討したとおりであるから、相違点7について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2、甲1及び甲3~12に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 本件発明2について 本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記アで述べたのと同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)申立人の主張について ア 申立人の主張 申立人は、特許異議申立書において、本件発明を以下のとおり文節し、以下(ア)、(イ)の主張をしている(特許異議申立書、8頁、22~23頁)。 「【請求項1】 (A)内側表面がポリアミドイミド又はフェノール系エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂により被覆された被覆層を有する金属性の外装容器と、 (B)前記外装容器に収容され、 (C)炭素数1~3の低級アルコール、 (D)第四級アンモニウム塩化物塩、 (E)リン酸及びリン酸三ナトリウムを含有し、 (F)25℃におけpHが3.0~5.0である (G)手指消毒剤と、 (H)前記外装容器の内部に前記手指消毒剤とともに充填されている不燃性圧縮気体として窒素ガスを備えることを特徴とする (I)手指消毒剤用エアゾール製品。 【請求項2】 (J)第四級アンモニウム塩化物塩が、塩化ベンザルコニウム又は塩化ベンゼトニウムの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の手指消毒剤用エアゾール製品。」 (ア)甲1の比較例3には、エアゾール用耐圧容器に充填される不燃性圧縮気体として炭酸ガスの代わりに窒素ガスを用いた例が記載されており、甲1の比較例3は実施例に比べて評価がやや落ちているが、揮発性評価は実施例と同様Aの結果であり、使用感もA~Eの5段階評価でCの結果であり、甲1の段落0040の評価基準を見る限りでは、評価Cでも、評価者50名中○が20~29名であり、使用可能な範囲の結果を示すものである。 甲1には、本件の構成(B)~(D)、(G)~(I)が記載されており、耐食性の効果を得るために、構成(A)とすることは周知の技術であり(甲5、甲6、甲9~12)、構成(E)及び(F)は、甲3、甲4に記載され、甲5には、リン酸及びその緩衝液を含有し、pHが3.0~5.0であることが記載されており、甲6には、リン酸及びリン酸のナトリウム塩を含有し、pHが3.0~5.0であることが記載され、甲3、甲4の記載からも明らかなように、リン酸三ナトリウムは、リン酸の緩衝液やリン酸のナトリウム塩として通常使用されるものであるのに対し、本件特許の出願時の明細書には、構成(E)及び(F)による顕著な効果は示されていないから、本件発明は、甲1、3~6、9~12の記載に基づき、当業者にとって容易に想到可能であり進歩性を有さない。 (イ)甲2には、本件の構成(B)~(D)、(F)及び(G)が記載されており、耐食性の効果を得るために、構成(A)とすることは周知の技術(甲5、甲6、甲9~12)である。また、甲2はpH調整剤を用いることが記載され、pH調整剤を本件特許発明の構成(E)とすることは、甲3、甲4に記載されている。そして、甲2は噴射剤を使用することが記載されており、噴射剤を窒素ガスとすることは、周知の技術である(甲1、甲5~12)。一方、本件特許の出願時の明細書には、構成(E)、(F)及び(H)による顕著な効果は示されていない。 したがって、本件発明は、甲1~12の記載に基づき、当業者にとって容易に想到可能であり、進歩性を有さない。 イ 申立人の主張の検討 (ア)上記(3)ア(ア)b(c)で述べたとおり、甲1の比較例3は、泡沫安定性や使用感の劣る比較例とされているから(摘記甲1e、【0051】)、この比較例3の殺菌消毒用エアゾール製品を引用発明として、その容器等を変更する動機付けがあるとはいえず、仮に、比較例3の殺菌消毒用エアゾール製品を引用発明としたとしても(この場合、相違点4は存在しない。)、上記(3)ア(ア)b(a)及び(b)で述べたのと同様の理由により、相違点1~3に係る技術的事項(構成(A)、(E)及び(F)に対応する。)を備えたものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 したがって、(ア)の主張は、採用できない。 (イ)上記(3)ア(イ)b(a)及び(b)で述べたとおり、甲2発明について、甲1~12の記載を参照しても、相違点5、6及び8に係る技術的事項(構成(A)、(E)及び(H)に対応する。)を備えたものとすることは当業者が容易になし得た事項であるということはできない。 したがって、申立人の主張は、採用できない。 (5)申立理由1についてのまとめ 以上のとおりであるから、申立理由1(進歩性)は理由がない。 3 申立理由2(サポート要件)について ア 判断の前提 特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 イ 判断 (ア)本件明細書の記載 本件明細書には、以下の事項が記載されている。 (本a) 「【技術分野】 【0001】 本件発明は、使用者の手や指に付着した細菌、カビやウイルス等を死滅、不活化させるための消毒剤を内包するエアゾール製品に関する。 【背景技術】 【0002】 従来、使用者の手や指に付着した細菌、カビやウイルス等を死滅、不活化させるために、有効成分としてエタノールなどを配合した消毒剤が知られている。 【0003】 例えば、特許文献1には、実施例1において、エアゾール耐圧容器に、塩化ベンゼトニウム、99%イソプロピルアルコール、グリセリン、精製水からなる原液を入れ、噴射剤として炭酸ガスを充填したエアゾール製品、実施例2において、エアゾール耐圧容器に、塩化ベンザルコニウム、99%エタノール、精製水からなる原液を入れ、噴射剤として炭酸ガスを充填したエアゾール製品が開示されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 【特許文献1】特開平6-327750号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、特許文献1のエアゾール製品においては、耐圧性を確保するために金属性の容器が使用されているところ、内包される消毒剤に有機塩化物が含有されているため、徐々に有機塩化物から遊離された塩化物イオンが容器の内面を腐食し、長期間保存すると容器の一部に穴が開き、容器内に封入されている圧縮ガスの圧力により破裂するおそれがあった。 【0006】 そこで、本件発明では、炭素数1~3の低級アルコール、第四級アンモニウム塩化物塩を含有する消毒剤を収容するエアゾール製品について、長期保存しても当該消毒剤を収容する容器が腐食して容器内に封入されている圧縮ガスの圧力により破裂するおそれがない手指消毒剤用エアゾール製品を提供することを目的とする。」 (本b) 「【0013】 外装容器1は、本発明の手指消毒剤用エアゾール製品において、使用者から視認することができる最も外側に位置し、内部に手指消毒剤2及び圧縮ガスを収容する金属性の部材である。外装容器1の内部に不燃性圧縮気体を充填することから、アルミ合金、ステンレスなどの金属性であり、所定の圧力以下では破断しないように耐圧性を有している。本実施形態において、外装容器1は、上部に開口を有する中空の有底円筒状である。その上部の開口は、図1に示すように、マウンティングカップ3によって封止される。 【0014】 外装容器1は、その内側表面、すなわち、手指消毒剤2と接触する表面に、ポリアミドイミド又はフェノール系エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂により被覆された被覆層11を有している。被覆層11により、外装容器1が、第四級アンモニウム塩化物塩を含有する手指消毒剤2を収容している状態で長期保存しても、塩化物イオンが被覆層11に阻まれて外装容器1の内側表面に到達しないために外装容器1が腐食されない。また、被覆層11の厚みとしては、0.1~100μmが好ましく、0.5~50μmがさらに好ましく、1~30μmが最も好ましい。被覆層11の厚みがこの範囲であると、塗工作業が行い易く、また、手指消毒剤2による外装容器1の腐食を抑制することができる。 ・・・ 【0022】 本発明の手指消毒剤2において酸を配合することができる。当該酸は、エタノールや第四級アンモニウム塩化物塩等と併存することにより、核酸を保護するカプシドを破壊することで、エタノールや第四級アンモニウム塩化物塩等の細胞への浸透を促進させ、とりわけエンベロープの有無を問わず幅広いRNAウイルス及びDNAウイルスに対しても不活化などの効力を増強させる成分である。 【0023】 酸としては、具体的に、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、ホウ酸、乳酸、ギ酸、シュウ酸、プロピオン酸などの有機酸や、リン酸、硫酸などの無機酸が好ましい。これらの酸は単独して使用することができるが、二種以上組み合わせて使用されてもよい。 【0024】 酸の含有割合は、手指消毒剤2のうち、0.1w/v%~3.0w/v%が好ましく、0.2w/v%~2.5w/v%がさらに好ましい。酸の含有割合がこの範囲にあると、ウイルスの不活化、菌の死滅などの効力を奏することができる。 ・・・ 【0029】 上述した成分が配合されている手指消毒剤2は、酸性・アルカリ性の程度を示す液性として、25℃におけるpHが3.0~5.0であることが好ましく、3.0~4.0であることがさらに好ましい。手指消毒剤2のpHがこの範囲であると、細菌の死滅や各種ウイルスの不活化に効果を奏する。 ・・・ 【0031】 本発明の不燃性圧縮気体は、手指消毒剤2とともに外装容器1に充填され、通常使用される10~30℃程度の常温において、火気により引火及び燃焼が起きず、外装容器1内にて大気圧より高い圧力の状態である気体である。後述するアクチュエータ7が押されることにより、手指消毒剤2とともに不燃性圧縮気体が外部へ排出されることとなる。具体的に、不燃性圧縮気体は、窒素、二酸化炭素、亜酸化窒素、ヘリウム、アルゴンから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。不燃性圧縮気体がこれらの気体であると、使用者の近くに火気が存在していても引火等しないために本発明の手指消毒剤用エアゾール製品を安全に使用することができる。」 (本c) 「【実施例】 【0035】 以下、本件発明における手指消毒剤2について具体的に説明する。なお、本件発明は以下の実施例に限定されるものではない。 【0036】 <処方1> 20℃の室温中において、容量が200mlのグリフィンビーカーに、炭素数1~3の低級アルコールとしてエタノールを25g、第四級アンモニウム塩化物塩として塩化ベンザルコニウムとして0.05g、保湿剤としてグリセリンを0.2g、同じく保湿剤としてヒアルロン酸ナトリウム(2)を0.001g、そして、残余として精製水を加え、攪拌し、合計100mlの手指消毒剤を得た。 【0037】 <処方2~11> 処方2~11は、炭素数1~3の低級アルコール及び第四級アンモニウム塩化物塩を必須成分とし、必要に応じて、酸、前記酸に対応する塩を、それぞれ表1に示したように処方し、実施例1と同様にして、合計100mlの手指消毒剤を得た。 【0038】 【表1】 [図:0001429029000014.jpg] 【0039】 このようにして得られた手指消毒剤及び圧縮ガスとして窒素ガスを内包するエアゾール製品は、以下の評価方法において性能が確認された。なお、処方1から処方11の組成物において、いずれも菌に対する効果はあった。 【0040】 〔安定性試験〕 処方1から処方11の手指消毒剤及び圧縮ガスとして窒素ガスを内包するエアゾール製品において、外装容器1の内側表面に、ポリアミドイミド又はフェノール系エポキシ樹脂により被覆された被覆層11を有するエアゾール製品と、その被覆層11を有さないエアゾール製品を用意し、それぞれ気温40℃の環境下で静置し、1ケ月後、2ケ月後、3ケ月後の状態を目視にて確認した。そして、それぞれのエアゾール製品において、外観上まったく変化がないものを「○」と評価し、外観上被覆層11に軽度の剥離や気泡の発生が見られたものを「△」と評価し、外観上被覆層11が侵食され外装容器1の内側表面が露出したものを「×」と評価した。このとき、「○」と「△」をエアゾール製品として破裂などを起こさないとして優良と、「×」をエアゾール製品として破裂などを起す可能性があるとして不良と判断した。 【0041】 安定性試験に関するこれらの結果を表2及び表3に示す。 【0042】 【表2】 [図:0001429029000015.jpg] 【0043】 【表3】 [図:0001429029000016.jpg] 【0044】 表2及び表3に示すように、処方1から処方11の手指消毒剤及び圧縮ガスとして窒素ガスを内包するエアゾール製品において、比較例1から比較例11である外装容器1の内側表面に被覆層11を有さないエアゾール製品では、1ケ月後にはすでに外観上被覆層11が侵食され外装容器1の内側表面が露出していることから不良であり、実施例1から実施例22である外装容器1の内側表面にポリアミドイミド又はフェノール系エポキシ樹脂により被覆された被覆層11を有するエアゾール製品では、3ケ月経過しても依然として外観上変化がないことから良好であり、これらの被覆層11により、顕著な効果を奏することが明らかとなった。」 (イ)本件発明の課題 本件明細書及び図面の記載事項全体、特に本件明細書の【0006】の記載からみて、本件発明の解決しようとする課題は、「炭素数1~3の低級アルコール、第四級アンモニウム塩化物塩を含有する消毒剤を収容するエアゾール製品について、長期保存しても当該消毒剤を収容する容器が腐食して容器内に封入されている圧縮ガスの圧力により破裂するおそれがない手指消毒剤用エアゾール製品を提供すること」であると認める。 (ウ)本件発明がサポート要件を満たすか否かについての判断 本件明細書の【0005】には、「特許文献1のエアゾール製品においては、耐圧性を確保するために金属性の容器が使用されているところ、内包される消毒剤に有機塩化物が含有されているため、徐々に有機塩化物から遊離された塩化物イオンが容器の内面を腐食し、長期間保存すると容器の一部に穴が開き、容器内に封入されている圧縮ガスの圧力により破裂するおそれがあった。」と記載され、【0014】には、「外装容器1は、その内側表面、すなわち、手指消毒剤2と接触する表面に、ポリアミドイミド又はフェノール系エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂により被覆された被覆層11を有している。被覆層11により、外装容器1が、第四級アンモニウム塩化物塩を含有する手指消毒剤2を収容している状態で長期保存しても、塩化物イオンが被覆層11に阻まれて外装容器1の内側表面に到達しないために外装容器1が腐食されない。」と記載されている。 また、実施例には、本件発明の手指消毒剤に相当する処方6の手指消毒剤(炭素数2のアルコールであるエタノールと第四級アンモニウム塩化物塩である塩化ベンザルコニウムを含有する。)及び圧縮ガスとして窒素ガスを内包するエアゾール製品であって、外装容器の内側表面に、ポリアミドイミド又はフェノール系エポキシ樹脂により被覆された被覆層を有するエアゾール製品を用意し、気温40℃の環境下で静置し、1ケ月後、2ケ月後、3ケ月後の状態を目視にて確認する安定性試験において、外観上まったく変化がないという「○」の評価、又は、外観上被覆層に軽度の剥離や気泡の発生が見られたという「△」の評価がされた結果が記載され、いずれも、エアゾール製品として破裂などを起こさないものと判断されたことが記載されている(【0036】~【0044】)。 そうすると、本件発明は、消毒剤に含有される有機塩化物から徐々に遊離した塩化物イオンが容器の内面を腐食し、長期間保存すると容器の一部に穴が開き、容器内に封入されている圧縮ガスの圧力により破裂するのを、ポリアミドイミド又はフェノール系エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂により被覆された被覆層を容器の内側表面に有するものとすることにより解決したものであって、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により、本件発明は、上記(イ)に示した課題を解決できると認識できるものといえる。 したがって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。 ウ 申立人の主張について 申立人は、以下(ア)~(オ)の点を挙げて、本件発明1~2は、サポート要件を満たしていないことを主張している(特許異議申立書、24~26頁)。 (ア)本件の出願時の明細書の表1及び表2では、「リン酸及びリン酸三ナトリウム」を含有する処方例6を用いた実施例11及び12は、リン酸及びリン酸三ナトリウムを含有しない処方例1~5及び7~11を用いた実施例1~10及び13~22と結果が同様となっている。したがって、リン酸及びリン酸三ナトリウムを含有する構成の顕著な効果が本件の出願時の明細書に記載されていない。 (イ)本件特許発明の明細書の記載は、窒素を用いた実施例のみであり、窒素ガスによる顕著な効果は示されていない。したがって、窒素ガスを含有する構成による顕著な効果は、本件特許発明の明細書に示されていない。 (ウ)本件の請求項1には、25℃におけるpHが3.0~5.0であることが記載されているが、本件の明細書の実施例においてpHは測定されておらず、実施例にはpHの記載は一切なく、pHによる効果の裏付けもない。 (エ)本件の請求項1の記載は、内側表面が2種以上の樹脂により被覆された被覆層を有する金属性の外装容器を含むものであるが、実施例には、「外装容器1の内側表面に、ポリアミドイミド又はフェノール系エポキシ樹脂により被覆された被覆層11を有するエアゾール製品」を用いた例が記載されるのみであり、2種以上の樹脂により被覆された被覆層を有する金属性の外装容器を用いた実施例は記載されていない。 (オ)本件の請求項2の記載は、第四級アンモニウム塩化物塩が2種以上で あること、を含むものであるが、実施例には、塩化ベンザルコニウム又は塩化ベンゼトニウムのいずれか1種を用いた例が記載されるのみであり、2種以上の第四級アンモニウム塩化物塩を用いた実施例は記載されていない。 申立人の主張について、以下、順に検討する。 (ア)について 本件明細書には、リン酸及びリン酸三ナトリウムを含有する処方6の手指消毒剤を内包する、本件発明のエアゾール製品が、菌に対する効果があったこと、所定の安定性試験において、エアゾール製品として破裂などを起こさないものと判断されたことが記載されている(【0036】~【0044】)。 また、本件明細書の【0022】~【0025】には、手指消毒剤に酸を配合することができ、当該酸は、エタノールや第四級アンモニウム塩化物塩等と併存することにより、核酸を保護するカプシドを破壊することで、エタノールや第四級アンモニウム塩化物塩等の細胞への浸透を促進させ、とりわけエンベロープの有無を問わず幅広いRNAウイルス及びDNAウイルスに対しても不活化などの効力を増強させる成分であること、酸としては、リン酸等が好ましいこと、酸の含有割合が所定の範囲にあると、ウイルスの不活化、菌の死滅などの効力を奏することができること、酸に対応する塩が含まれることによって、手指消毒剤が所定範囲のpHとなるとともに、手指消毒剤において炭素数1~3の低級アルコールや水が長く使用して少々揮発したとしても、pHの大きな変動が抑制されるため、使用者は所定範囲の液性にて使用することができることが記載されている。 そうすると、当業者は、手指消毒剤がリン酸及びリン酸三ナトリウムを含有するものである本件発明が、上記イ(イ)に示した課題を解決できると認識できるものといえ、また、本件明細書には、リン酸及びリン酸三ナトリウムを含有することによって、上記のとおりの効果を奏することが記載されているといえる。 そして、本件特許の出願時の明細書に、リン酸及びリン酸三ナトリウムを含有するものとしないものとで安定性試験の結果が同様であることが記載されていたとしても、そのことによって本件発明がサポート要件違反であるとする理由にはならない。 したがって、主張(ア)は採用できない。 (イ)について 本件明細書には、処方6の手指消毒剤及び圧縮ガスとして窒素ガスを内包する本件発明のエアゾール製品が、菌に対する効果があったこと、所定の安定性試験において、エアゾール製品として破裂などを起こさないものと判断されたことが記載されている(【0036】~【0044】)。 また、本件明細書の【0031】には、不燃性圧縮気体が窒素の気体であると、使用者の近くに火気が存在していても引火等しないために本件発明の手指消毒剤用エアゾール製品を安全に使用することができることが記載されている。 そうすると、当業者は、外装容器の内部に充填されている窒素ガスを備える本件発明が、本件の上記イ(イ)に示した課題を解決できると認識できるものといえ、また、本件明細書には、窒素ガスを用いることによって、上記のとおりの効果を奏することが記載されているといえる。 したがって、主張(イ)は採用できない。 (ウ)について 本件明細書には、「手指消毒剤2は、酸性・アルカリ性の程度を示す液性として、25℃におけるpHが3.0~5.0であることが好ましく、3.0~4.0であることがさらに好ましい。手指消毒剤2のpHがこの範囲であると、細菌の死滅や各種ウイルスの不活化に効果を奏する。」ことが記載されている(【0029】)。また、本件明細書には、実施例の手指消毒剤について、「処方1から処方11の組成物において、いずれも菌に対する効果はあった。」と記載されている(【0039】)。 そして、本件明細書の実施例に記載の処方6の手指消毒剤は、酸であるリン酸が配合されており、菌に対する効果があったとされているのであるから、25℃におけるpHが3.0~5.0のものであると考えるのが自然である。 したがって、本件明細書の実施例の処方6について、pHの明示はされていないものの、実質的にpHが3.0~5.0のものであるということができる。 よって、主張(ウ)は採用できない。 (エ)について 本件明細書には、外装容器の内側表面に、ポリアミドイミド又はフェノール系エポキシ樹脂により被覆された被覆層を有する外装容器を備えたエアゾール製品が、菌に対する効果があったこと、所定の安定性試験において、エアゾール製品として破裂などを起こさないものと判断されたことが記載されている(【0036】~【0044】)。 そして、2種以上の樹脂を用いることで、本件発明が上記課題を解決できなくなるという理由は見いだせない。 したがって、主張(エ)は採用できない。 (オ)について 本件明細書には、手指消毒剤が第四級アンモニウム塩である塩化ベンザルコニウムを含有するエアゾール製品が、菌に対する効果があったこと、所定の安定性試験において、エアゾール製品として破裂などを起こさないものと判断されたことが記載されている(【0036】~【0044】)。 また、本件明細書には、第四級アンモニウム塩は、細菌の細胞膜やウイルスのエンベロープを破壊するためのものであることが記載されている(【0020】)。 そして、2種以上の第四級アンモニウム塩を用いることで、本件発明が上記課題を解決できなくなるという理由は見いだせない。 したがって、主張(オ)は採用できない。 オ 申立理由2についてのまとめ 以上のとおりであるから、申立理由2(サポート要件)は理由がない。 4 申立理由3(明確性)について 本件の特許請求の範囲には、「内側表面がポリアミドイミド又はフェノール系エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂により被覆された被覆層を有する金属性の外装容器」と記載されている。 この記載について、申立人は、本件の請求項1の記載「ポリアミドイミド又はフェノール系エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂」は、2種以上の樹脂が選ばれる場合、ポリアミドイミドから2種以上、又はフェノール系エポキシ樹脂から2種以上、が選ばれることを意味し、ポリアミドイミド及びフェノール系エポキシ樹脂を併用するものは包含されないのか、ポリアミドイミド及びフェノール系エポキシ樹脂を併用するものも包含されるのか、明確ではないことを主張している。 しかしながら、「ポリアミドイミド又はフェノール系エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂」との記載はその文言どおり、ポリアミドイミド樹脂又はフェノール系エポキシ樹脂から選ばれた樹脂であって、その1種以上の樹脂のことを意味するといえる。 そして、ポリアミドイミド樹脂及びフェノール系エポキシ樹脂は、それぞれ様々な樹脂があることは周知の技術的事項であるから、「ポリアミドイミド又はフェノール系エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂」には、ポリアミドイミド樹脂の2種以上、フェノール系エポキシ樹脂の2種以上、又はポリアミドイミド樹脂及びフェノール系エポキシ樹脂を併用するもの、のいずれも含まれると解される。 したがって、本件発明は明確であり、申立理由3(明確性)は理由がない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、申立理由及び証拠によっては、請求項1~2に係る特許を取り消すことはできない。 また、ほかに請求項1~2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700323

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