特許異議申立
2023-700822
気化器
- 審判番号
- 2023-700822
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-205824
- 登録番号
- 7227212
- 請求日
- 2023年08月09日
- 審決日
- 2023年11月21日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社神戸製鋼所
- 【権利者代理人】小谷 昌崇
- 【権利者代理人】玉串 幸久
- 【異議申立人】笹井 栄治
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 直欣
- 審判官 ▲高▼橋 杏子
- 審判官 稲葉 大紀
- 分類
- P1651.121-Y (F17C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7227212号発明「気化器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7227212号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7227212号の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和2年12月11日に出願され、令和5年2月13日にその特許権の設定登録がされ、令和5年2月21日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和5年8月9日に特許異議申立人笹井栄治(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
特許第7227212号の請求項1~7の特許に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本件発明1」といい、その他の請求項に係る発明も同様に称する。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
主成分と、前記主成分の沸点よりも高い沸点を有する高沸点成分である水分とを含む液化アンモニアからなる液化ガスを気化させる気化器であって、
シェルと、
前記シェル内に前記液化ガスを供給する供給部と、
前記シェル内に配置され、前記液化ガスの前記主成分を気化させる温度を有する第1加熱流体が導入される複数の伝熱管であって、当該伝熱管の周囲の液化ガスと当該伝熱管内の前記第1加熱流体とを熱交換させる前記複数の伝熱管と、
前記シェル内で気化した前記主成分を前記シェルから導出させる導出部と、
前記シェルの底部に配置され、前記シェル内に溜まった前記液化ガスを前記シェルから流出させる液流出部と、
前記液流出部を通して前記シェルから導出された前記液化ガスに含まれる前記主成分を、第2加熱流体との熱交換により気化させる加熱器と、を備え、
前記液流出部は、前記供給部を通して前記シェル内に供給される液化ガスの流量に対する、前記液流出部から導出される液化ガスの流量の割合の値が、前記供給部を通して供給される前記液化ガスに含まれる前記高沸点成分の割合以上の値になるように前記液化ガスを導出させる、気化器。
【請求項2】
請求項1に記載の気化器において、
前記供給部は、前記シェル内に前記液化ガスを供給する供給口を有しており、
前記供給口は、前記シェル内において、前記複数の伝熱管のうち最も下に位置する伝熱管よりも上に位置する、気化器。
【請求項3】
請求項1に記載の気化器において、
前記供給部は、前記シェル内に前記液化ガスを供給する供給口を有しており、
前記供給口は、前記シェル内において、前記シェル内に溜まった液化ガスの液面よりも上に位置する、気化器。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の気化器において、
前記加熱器は、前記導出部を通して導出されたガス状の前記主成分をも加熱する、気化器。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の気化器において、
前記加熱器は、前記液流出部を通して前記シェルから導出された前記液化ガスに含まれる前記高沸点成分を、前記第2加熱流体との熱交換により蒸発させる、気化器。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の気化器において、
前記供給部を通して前記シェル内に供給される液化ガスに含まれる高沸点成分の流量は、前記液流出部から流出する液化ガスに含まれる高沸点成分の流量と同じである気化器。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の気化器において、
前記第1加熱流体は水である、気化器。」
第3 申立理由の概要
申立人は、証拠として、以下の甲第1号証~甲第7号証(以下「甲1」等という。)を提出し、以下の理由を申立てている。
申立理由(進歩性)
本件発明1~7は、甲1に記載された発明及び甲2~7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反するものであるから、本件発明1~7に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
[証拠方法]
・甲1:特開2014-5157号公報
・甲2:特開2020-148357号公報
・甲3:特表2003-517560号公報
・甲4:特開2003-336934号公報
・甲5:実願昭61-76081号(実開昭62-185999号)のマイクロフィルム
・甲6:特表2009-500866号公報
・甲7:特開2000-274860号公報
第4 当審の判断
1 甲1~7に記載された事項・発明
(1)甲1
ア 甲1には、次の事項が記載されている。下線は、理解の便宜のため、当審が付した。以下同様である。
「【請求項1】
不純物が含有される粗アンモニアを精製するアンモニア精製システムにおいて、
気相および液相が形成されるように、内部空間に粗アンモニアを貯留し、その貯留された粗アンモニアを、気相または液相から導出する貯留手段と、
前記貯留手段における、前記内部空間の容積に対する液相の容積の比である容積比を算出し、該容積比が、予め定める閾値以上である場合には、液相から一部の粗アンモニアを導出するように前記貯留手段を制御し、前記容積比が、前記閾値未満である場合には、気相から粗アンモニアを導出するように前記貯留手段を制御する導出制御手段と、
前記貯留手段の液相から導出された液体状の粗アンモニアの一部を気化し、気体状のアンモニアを導出する気化手段と、
前記貯留手段の気相から導出された気体状の粗アンモニア、または、前記気化手段から導出された気体状のアンモニアに含有される不純物を、吸着剤によって吸着除去し、気体状のアンモニアを導出する吸着手段と、を備えることを特徴とするアンモニア精製システム。」
「【0002】
半導体製造工程および液晶製造工程においては、窒化物皮膜の作製などに用いる処理剤として、高純度のアンモニアが利用されている。このような高純度のアンモニアは、粗アンモニアを精製して不純物を除去することにより得られる。
【0003】
粗アンモニア中には、水素、窒素、酸素、アルゴン、一酸化炭素、二酸化炭素などの低沸点ガス、炭化水素などの有機化合物、水分などが不純物として含まれており、一般的に入手可能な粗アンモニアの純度は98~99重量%程度である。」
「【0018】
導出制御手段は、貯留手段における、前記内部空間の容積に対する液相の容積の比である容積比を算出し、該容積比が、予め定める閾値以上である場合に、液相から粗アンモニアを導出するように貯留手段を制御する。また、導出制御手段は、前記容積比が、前記閾値未満である場合に、気相から粗アンモニアを導出するように貯留手段を制御する。換言すると、導出制御手段は、貯留手段の内部空間における液体状の粗アンモニアの充填量(貯留量)に応じて、貯留手段における粗アンモニアの導出状態を切替える(気相および液相のいずれの相から粗アンモニアを導出させるかの導出動作の制御)ように構成されている。これによって、不純物濃度のばらつきが少ない状態で、粗アンモニアを貯留手段から導出することができる。したがって、最終的に精製されるアンモニアの純度に大きなばらつきが発生するのを防止することができる。」
「【0024】
図1は、本発明の第1実施形態に係るアンモニア精製システム100の構成を示す図である。本実施形態のアンモニア精製システム100は、不純物が含まれる液体状の粗アンモニアを精製するシステムである。アンモニア精製システム100は、貯留手段である原料貯留タンク1、導出制御手段である制御ユニット2、気化手段である気化器3、吸着手段である吸着ユニット4、分縮手段であるコンデンサ5、および回収タンク61を含んで構成される。
【0025】
原料貯留タンク1は、粗アンモニアを貯留するものである。本実施形態において、原料貯留タンク1に貯留される粗アンモニアは、純度99重量%以上、好ましくは純度99.0~99.9重量%である。
【0026】
原料貯留タンク1は、耐圧性および耐腐食性を有する保温容器であれば特に制限されるものではない。この原料貯留タンク1は、粗アンモニアを液体状のアンモニアとして貯留し、所定の温度および圧力になるように制御されている。原料貯留タンク1は、円柱状の内部空間を有し、その内部空間に液体状の粗アンモニアを貯留した状態で、原料貯留タンク1の上部には気相が形成され、下部には液相が形成されている。また、原料貯留タンク1には、原料貯留タンク1内に貯留される液体状の粗アンモニアの一部を気化させ、気相におけるアンモニア濃度を上昇させるために、液体状の粗アンモニアを加熱する加熱装置11が設けられている。」
「【0028】
また、本実施形態では、原料貯留タンク1は、貯留された粗アンモニアを、気相および液相のいずれの相からも導出可能に構成されている。
【0029】
原料貯留タンク1の下部(液相が形成された部分)には、液体状の粗アンモニアが導出される配管となる第1配管71が接続されている。第1配管71の、原料貯留タンク1と接続される側とは反対側の端部は、気化器3に接続されている。また、第1配管71には、第1配管71における流路を開放または閉鎖する第1バルブ711が設けられている。原料貯留タンク1に貯留された粗アンモニアは、第1バルブ711が開放された状態で、原料貯留タンク1に形成される液相から液体状の粗アンモニアとして導出される。このようにして原料貯留タンク1から導出された液体状の粗アンモニアは、第1配管71を流れて、気化器3に供給される。原料貯留タンク1から導出された液体状の粗アンモニアは、気化器3によって気化されて、気体状のアンモニアとして流量調整器63に供給される。このようにして気化器3によって気化された気体状のアンモニアは、流量調整器63によって流量が調整されて、吸着ユニット4に供給されることになる。
【0030】
また、原料貯留タンク1の上部(気相が形成された部分)には、気体状の粗アンモニアが導出される配管となる第2配管72が接続されている。第2配管72の、原料貯留タンク1と接続される側とは反対側の端部は、流量調整器63に接続されている。また、第2配管72には、第2配管72における流路を開放または閉鎖する第2バルブ721が設けられている。」
「【0037】
原料貯留タンク1内における液体状の粗アンモニアの充填量(貯留量)によって、原料貯留タンク1に形成される気相の不純物(特に揮発性の高い不純物)濃度が異なる。原料貯留タンク1内における液体状の粗アンモニアの充填量が多いほど、原料貯留タンク1に形成される気相において、揮発性の高い不純物濃度が高くなる。また、原料貯留タンク1内における液体状の粗アンモニアの充填量が少ないほど、原料貯留タンク1に形成される液相において、揮発性の低い不純物(たとえば、水、炭素数が大きい有機化合物)の濃度が高くなる。すなわち、原料貯留タンク1に形成される液相から液体状の粗アンモニアを導出する場合、原料貯留タンク1内における液体状の粗アンモニアの充填量が減少するにつれて、揮発性の低い不純物濃度が高い粗アンモニアが原料貯留タンク1の液相から導出されることになる。
【0038】
そこで、前述のように、本実施形態のアンモニア精製システム100は、原料貯留タンク1内における液体状の粗アンモニアの充填量に応じて、粗アンモニアの導出状態(気相および液相のいずれの相から粗アンモニアを導出させるかの導出動作の制御)を切替えるように構成されている。これによって、不純物濃度のばらつきが少ない状態で、粗アンモニアを原料貯留タンク1から導出することができる。したがって、最終的に精製されるアンモニアの純度に大きなばらつきが発生するのを防止することができる。
【0039】
気化器3は、原料貯留タンク1の液相から導出された液体状の粗アンモニアの一部を気化する。すなわち、気化器3は、液体状の粗アンモニアを加熱して所定の気化率で気化して気相成分と液相成分とに分離し、気体状のアンモニアを導出する。気化器3は、液体状の粗アンモニアの一部を気化するので、粗アンモニア中に含有される揮発性の低い不純物(たとえば、水分、炭素数6以上の炭化水素など)が液相に残り、揮発性の低い不純物が低減された気体状のアンモニアを導出することができる。」
「【図1】
[図:0001404840000001.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
上記アを総合すると、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「揮発性の低い不純物(たとえば、水、炭素数が大きい有機化合物)が含有される液体状の粗アンモニアを精製するアンモニア精製システムにおいて、
気相および液相が形成されるように、内部空間に粗アンモニアを貯留し、その貯留された粗アンモニアを、気相または液相から導出するものであって、液体状の粗アンモニアを加熱する加熱装置が設けられた貯留手段と、
前記貯留手段における、前記内部空間の容積に対する液相の容積の比である容積比を算出し、該容積比が、予め定める閾値以上である場合には、液相から一部の液体状の粗アンモニアを前記貯留手段の下部(液相が形成された部分)に接続された第1配管を流れて導出するように前記貯留手段を制御し、前記容積比が、前記閾値未満である場合には、気相から気体状の粗アンモニアを前記貯留手段の上部(気相が形成された部分)に接続された第2配管を流れて導出するように前記貯留手段を制御する導出制御手段と、
前記貯留手段の液相から導出された液体状の粗アンモニアの一部を気化し、気体状のアンモニアを導出する気化手段と、
前記貯留手段の気相から導出された気体状の粗アンモニア、または、前記気化手段から導出された気体状のアンモニアに含有される不純物を、吸着剤によって吸着除去し、気体状のアンモニアを導出する吸着手段と、を備えるアンモニア精製システム。」
(2)甲2
ア 甲2には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
液体アンモニアを気化させてアンモニア蒸気を生成し、当該アンモニア蒸気を燃料として燃焼させることにより電力を発生させる発電システムであって、
前記液体アンモニアを貯留するタンクと、
前記液体アンモニアを所定の熱交換器で海水と熱交換させて前記アンモニア蒸気を発生させる気化器と、
前記アンモニア蒸気を燃焼させることにより動力を発生する動力発生装置と、
該動力発生装置によって駆動される発電機と
を備えることを特徴とする発電システム。」
「【0024】
このような第1気化器10について、加熱海水X7に含まれる異物が内部に蓄積することを防ぐため、加熱海水X7の流速を十分に確保する必要がある。このような事情から第1気化器10には、シェル&チューブ型の熱交換器を採用することが好ましい。
【0025】
また、この場合にはチューブ側に加熱海水X7を流通させ、シェル側に脱水アンモニアX9を流通させる。さらに、第1気化器10におけるチューブ側の材料としては、耐食性の高い金属(例えばチタン)を採用することが好ましい。このような第1気化器10は、アンモニア蒸気X2を燃料調節弁11に供給する。なお、第1気化器10は、本発明における気化器に相当する。」
イ 甲2に記載された技術的事項
上記アを総合すると、甲2には、次の技術的事項が記載されていると認められる(以下「甲2に記載された技術的事項」という。)。
「液体アンモニアを気化させてアンモニア蒸気を生成し、当該アンモニア蒸気を燃料として燃焼させることにより電力を発生させる発電システムであって、
気化器には、シェル&チューブ型の熱交換器を採用する発電システム。」
(3)甲3
ア 甲3には、次の事項が記載されている。
「【請求項30】 蒸気圧縮冷却システムのための流下液膜式蒸発器であって、
蒸気流出口を有するシェルと、
管束と、
冷媒ディストリビューターとを有し、
前記管束の管が前記シェルの中で水平方向に走っており、前記管束が少なくとも一つの蒸気レーンを規定しており、前記蒸気レーンが前記管束の内部から外側側部へ、及びそこから前記蒸気流出口への気体冷媒の導通を容易にするような概ね障害のない流路であり、
前記冷媒ディストリビューターが前記シェル内の前記管束の鉛直上向きに取り付けられており、液体冷媒が前記ディストリビューターから概ね鉛直方向下向きに前記管束の上部の上に落ちるように、前記管束の上部の上に圧力の助けなしで重力によって概ね予測可能で制御された量で液体冷媒が落下されるようにしたことを特徴とする蒸気圧縮冷却システムのための流下液膜式蒸発器。」
「【0002】
(背景技術)
最も単純には、蒸気圧縮冷却方式の冷却器は一つのコンプレッサー、一つのコンデンサー、一つの膨張装置、及び一つの蒸発器を有する。気体冷媒がかなり高い圧力の下で、コンプレッサーの中で圧縮され、冷却され液体状態に凝縮されるコンデンサーへと運ばれる。凝縮された冷媒はコンデンサーから膨張装置へ進み、そこを通り抜けて行く。この冷媒が膨張装置を通るとその中での圧力低下及び、さらにそこでの冷却を生じる。結果として、この膨張装置から蒸発器へ運ばれた冷媒は通常、かなり冷えており、二相混合の満ちた状態となっている。
【0003】
蒸発器へ運ばれた混合二相冷媒は、その中に配置された、中を比較的温かい例えば水のような熱転移媒体が流れている管束と接触するような状況にされる。この媒体は、冷却器が冷却することを目的としている熱負荷と熱交換接触して温められる。
【0004】
比較的冷えた冷媒と、管束を通り流れる比較的温かい熱転移媒体の間の接触による熱交換は冷媒の気化及び熱転移媒体の冷却を生じさせる。今冷却されたその媒体はさらに熱負荷を冷却するように戻され、一方で、熱により今気化された冷媒は蒸発器の外へ方向付けられ、再圧縮及び引き続きの過程でコンデンサーに運ぶために冷却装置のコンプレッサーの中に引き込まれる。」
「【0040】
管束52は、概ね水平方向の最上部となる52aや二つの概ね鉛直方向の外側部分52b及び52cを有している。ひとたび管束52の上部に落下すると、さらに説明していくような方法で、液体冷媒及びオイルは管束を通って下方へ滴る。
この液体冷媒及びオイルの一部分は蒸発器シェルの底部へ進み、そこでプール54を形成する。そこから、さらに説明していくようにポンプ34やオイルリターンライン36などにより、このオイルはコンプレッサーに戻される。」
「【図2】
[図:0001404840000002.jpg]
」
イ 甲3に記載された技術的事項
上記アを総合すると、甲3には、次の技術的事項が記載されていると認められる(以下「甲3に記載された技術的事項」という。)。
「蒸気圧縮冷却システムのための流下液膜式蒸発器であって、
蒸気流出口を有するシェルと、
管束と、
冷媒ディストリビューターとを有し、
前記管束の管が前記シェルの中で水平方向に走っており、前記管束が少なくとも一つの蒸気レーンを規定しており、前記蒸気レーンが前記管束の内部から外側側部へ、及びそこから前記蒸気流出口への気体冷媒の導通を容易にするような概ね障害のない流路であり、
前記冷媒ディストリビューターが前記シェル内の前記管束の鉛直上向きに取り付けられており、液体冷媒が前記ディストリビューターから概ね鉛直方向下向きに前記管束の上部の上に落ちるように、前記管束の上部の上に圧力の助けなしで重力によって概ね予測可能で制御された量で液体冷媒が落下されるようにし、
液体冷媒及びオイルの一部分はシェルの底部へ進み、そこでプールを形成し、そこから、さらに説明していくようにポンプやオイルリターンラインなどにより、このオイルはコンプレッサーに戻される、
蒸気圧縮冷却システムのための流下液膜式蒸発器。」
(4)甲4
ア 甲4には、次の事項が記載されている。
「【0002】
【従来の技術】先ず、上記アンモニア吸収式冷凍機は、アンモニア水溶液を動作媒体とする吸収式冷凍機であり、その一般的な冷凍サイクルについて、図1を参照しながら説明する(尚、図1は本発明に係るアンモニア吸収式冷凍機の冷凍サイクルを示す図である)。蒸発圧力Pe(例えば、0.29MPa at -10℃)下で蒸発器1内において蒸発したアンモニア蒸気は、吸収器2で蒸発圧力Peに維持するようにアンモニア水溶液に吸収される。その際発生する吸収熱は外部へ冷却水等により放出する。アンモニア蒸気を吸収して生じた濃溶液(アンモニアを吸収してアンモニア濃度が高まった溶液)は、溶液ポンプ9によって圧力が高められ、溶液熱交換器8を経て熱回収した後、精留器4に送られる。そして、発生器3に流下した濃溶液は、凝縮圧力Pc(例えば、1.55MPa at 40℃)下で外部の熱源蒸気等によって加熱されてアンモニア蒸気を発生させる。ただし、アンモニアと水との沸点差があまり大きくないので、発生器3からは水分を含んだアンモニア蒸気が発生する。この蒸気は精留器4並びに分縮器5に入り、凝縮器6で発生した冷媒溶液の一部をリフラックスポンプ10により分縮器5に還流して、自己蒸発によって蒸気を過冷却し水分を分縮させて蒸気中の水分を除去する。そして、図2に示すような高濃度(高純度)のアンモニア蒸気(例えば、99.8%以上)に精製して凝縮器6に送り、凝縮器6において冷却水等により冷却液化させてアンモニア溶液(冷媒溶液)にする。
【0003】上記冷媒溶液は膨張弁7を経て冷媒溶液供給口19から蒸発器1に入り、ブライン入口22から流入した被冷却媒体(例えばブライン)から熱を奪うことにより蒸発したのち、蒸発したアンモニア蒸気は吸収器2内でスプレーされる稀溶液(発生器3で部分的にアンモニアを蒸発してアンモニア濃度が低くなった溶液)に吸収される。このとき、冷媒溶液中に含まれている水分はアンモニアに比べて蒸発し難いので、蒸発器1内の冷媒溶液中の水分濃度が高まり、図3に示すように沸点(蒸発温度)の上昇を生じる。図3には、蒸発圧力を変えて冷媒の蒸発温度を変化させた各条件での蒸発温度の上昇を示す。尚、上記冷媒溶液は、蒸発器1に入る前に、蒸発器1から出るアンモニア蒸気の冷熱を回収するための過冷却器11、及び、後述のブリード熱交換器12に通されて冷却される。
【0004】上記冷媒溶液の沸点上昇が生じると、被冷却媒体(ブライン)の温度と冷媒の蒸発温度の差が小さくなり、蒸発器1の熱交換量が低下して、ブライン出口23で所定のブライン出口温度が得られなくなる。そのため、蒸発器1内の冷媒溶液のアンモニア濃度を、凝縮器6からの冷媒溶液のアンモニア濃度(例えば、99.8%)に対して沸点上昇分1℃程度に抑えることができる値、具体的には、96~97%に維持する必要がある(図3参照)。すなわち、凝縮器6から送られてくる冷媒溶液中の水分と同じ量の水分を取り除く必要がある。ただし、水分だけを取り除くことは不可能であるので、水分を含んだ冷媒溶液(アンモニア濃度96~97%)をブリードとして、冷媒循環量(凝縮器6から送られてくる冷媒溶液量)の4~5%を蒸発器1から取り出すようにしている。
【0005】冷媒溶液中の水分を効率よく取り除くためには、冷媒溶液中の水分濃度が一番高い位置の冷媒溶液を取り出すことが必要である。そこで、ブライン入口22付近ではブラインと冷媒溶液との温度差が大きく、すなわちヒートフラックが大きく蒸発が盛んな部分であり、冷媒溶液中の水分濃度が最も高くなる傾向になり、また、冷媒液室内での冷媒溶液の流れを一方方向にすることにより、冷媒溶液が流れるに従って水分濃度が次第に高くなることから、冷媒溶液及びブラインの流れ方向を筒軸方向に沿って反対向きにして、ブライン出口23側に冷媒溶液の供給口19を配置するとともに、ブライン入口22側にブリード取出し口20を設けている。なお、このブリード取出し口20で取り出した高水分濃度の冷媒溶液は、ブリード熱交換器12で蒸発器1に入る前の冷媒溶液に冷熱回収されたのち、吸収器2に送られる。」
イ 甲4に記載された技術的事項
上記アを総合すると、甲4には、次の技術的事項が記載されていると認められる(以下「甲4に記載された技術的事項」という。)。
「アンモニア水溶液を動作媒体とするアンモニア吸収式冷凍機であり、蒸発器1内の冷媒溶液のアンモニア濃度を、凝縮器6からの冷媒溶液のアンモニア濃度(例えば、99.8%)に対して沸点上昇分1℃程度に抑えることができる値、具体的には、96~97%に維持するために、凝縮器6から送られてくる冷媒溶液中の水分と同じ量の水分を取り除く必要があるが、水分だけを取り除くことは不可能であるので、水分を含んだ冷媒溶液(アンモニア濃度96~97%)をブリードとして、冷媒循環量(凝縮器6から送られてくる冷媒溶液量)の4~5%を蒸発器1から取り出す、アンモニア吸収式冷凍機。」
(5)甲5
ア 甲5には、次の事項が記載されている。
「2 実用新案登録請求の範囲
〇1(当審注:数字を〇で囲んだものについては、「〇1」等と代用表記する。) 熱源水通過用第1チューブ(2)を第1タンク(1)内の液状中間熱媒体(L)に浸漬して設け、多数の低温液化ガス通過用チューブ(3)を前記第1タンク(1)内に液状中間熱媒体(L)の上方に位置させて設け、前記多数の低温液化ガス通過用チューブ(3)の出口に連通するガス集合室(7)に第2タンク(12)をガス回収路(6)で接続し、熱源水通過用第2チューブ(13)を前記第2タンク(12)内に設け、製品ガス回収路(15)を前記第2タンク(12)に接続した低温液化ガス用気化器であって、前記ガス集合室(7)とガス回収路(6)との接続部(8)の内部にミストセパレータ(9)を設け、前記ガス集合室(7)の下部にドレン回収路(11)を接続してある低温液化ガス用気化器。
〇2 前記ドレン回収路(11)の出口側を前記第2タンク(12)内への撒布用ノズル(17)に接続してある実用新案登録請求の範囲第〇1項に記載の気化器。」
「 第1タンク(1)内にプロパンやフロン等の中間熱媒体を収容し、熱源水を通過させるための多数の第1チューブ(2)を、第1タンク(1)内に液状中間熱媒体(L)に浸潤させて設け、低温液化ガス(LG)を通過させるための多数のU形のチューブ(3)を、第1タンク(1)内に液状中間熱媒体(L)の上方に位置させて設け、熱源水による加熱で液状中間熱媒体(L)を気化させ、ガス状中間熱媒体による加熱でLGを気化させ、かつ、ガス状中間熱媒体を凝縮させるように構成してある。」(明細書第6ページ第13行~第7ページ第3行)
「 ガス回収路(6)に第2タンク(12)を接続し、熱源水を通過させるための多数の第2チューブ(13)を第2タンク(12)内に設け、第2タンク(12)内にジグザグ状のガス流路を形成するバッフル(14)を多数並設し、ガスを第2チューブ(13)に繰返して接触させて、-20℃程度以下でガス回収路(6)から送られてくるガスを、熱源水による加熱で常温程度に昇温させて、第2タンク(12)に接続した製品ガス回収路(15)に供給するように構成してある。」(明細書第8ページ第2行~第11行)
イ 甲5に記載された技術的事項
上記アを総合すると、甲5には、次の技術的事項が記載されていると認められる(以下「甲5に記載された技術的事項」という。)。
「熱源水通過用第1チューブ(2)を第1タンク(1)内の液状中間熱媒体(L)に浸漬して設け、多数の低温液化ガス通過用チューブ(3)を前記第1タンク(1)内に液状中間熱媒体(L)の上方に位置させて設け、前記多数の低温液化ガス通過用チューブ(3)の出口に連通するガス集合室(7)に第2タンク(12)をガス回収路(6)で接続し、熱源水通過用第2チューブ(13)を前記第2タンク(12)内に設け、製品ガス回収路(15)を前記第2タンク(12)に接続した低温液化ガス用気化器であって、前記ガス集合室(7)とガス回収路(6)との接続部(8)の内部にミストセパレータ(9)を設け、前記ガス集合室(7)の下部にドレン回収路(11)を接続してあり、ガスを第2チューブ(13)に繰返して接触させて、-20℃程度以下でガス回収路(6)から送られてくるガスを、熱源水による加熱で常温程度に昇温させて、第2タンク(12)に接続した製品ガス回収路(15)に供給する、低温液化ガス用気化器。」
(6)甲6
ア 甲6には、次の事項が記載されている。
「【0028】
図1を参照して、好ましくは屋内または大気温度での作動を可能にする囲い(図示せず)内に、システム100が設けてある。アンモニアを、イソテナ(isotainer)のような、運搬容器10で非空気ガス製造業者から最終ユーザへ運搬する。この運搬容器は、導管20を経て気化容器40と流体連通している。この運搬容器から気化容器へのアンモニアの移し替えは、この運搬容器への高圧、不活性ガスの注入でこの運搬容器を加圧することによって容易になるかも知れない。例えば、加圧は、ヘリウム供給システム30から運搬容器10へ気体ヘリウムを提供することによって達成できる。この不活性ガスは、典型的には運搬容器10の中に約0.69MPa(ゲージ圧力)と2.41MPa(ゲージ圧力)の間の圧力レベルを維持するように、約13.79MPa(ゲージ圧力)と41.37MPa(ゲージ圧力)の間の圧力でボンベに入れて供給する。しかし、もし純度問題で不活性ガス注入が望ましくないなら、運搬容器10は、加熱毛布、または何か他の適当な加熱装置を使って、運搬容器10にエネルギーを供給することによって加圧してもよい。更に、この運搬容器から気化容器へ液体を移し替えるためにポンプを利用できる。」
「【0033】
この気化容器は、その中へ移し替えた低蒸気圧流体を気化するための手段を含む。この蒸気流を気化容器40から引出すとき、その中の圧力が下がり始める。この影響を相殺し、この圧力を機能する範囲内に維持するために、ヒータ160を使ってこの容器内の液体アンモニアを部分的に気化する。典型的にこの気化容器内の圧力は、0.35MPa(ゲージ圧力)ないし2.07MPa(ゲージ圧力)の範囲に維持する。対応する温度は、約0°Cないし52°Cに及ぶ。
【0034】
この気化手段は、シェルアンドチューブ形交換器のような、従来の熱交換器を含んでもよく、その中で液体の低蒸気圧流体を第2流体に当てて沸立たせる。その代りに、この容器をこの容器の表面上または容器内に位置するヒータを使って加熱してもよい。多種多様なヒータを使うことができる。これらには、加熱毛布、加熱ロッドのような、抵抗ヒータ、または米国特許第6,363,728号に記載してあり且つ参考までにその全体をここに援用する加熱毛布がある。ヒータの更なる例には、米国特許出願公報第2004/0035533号に記載してあるような、マイクロウエーブベースのヒータは勿論、輻射及び誘導ヒータがある。」
「【0038】
引出して導管60を通して運んだ蒸気流に所望の汚染物質レベルを維持するために、低揮発性汚染物質が濃い液体流をこの気化容器から導管100を介して純度制御弁110へ引出すことができる。この液体流に関連する流れは、この気化容器内の液体の純度に依って変動し、典型的にはこの気化容器への液体または二相の流体の流量の0と90%の間に及ぶ。この気化容器内にほぼ一定の液体レベルを維持するので、主として蒸気を含むこのガス流に関連する汚染物質レベルは、一定のままで、一定純度に対する半導体、LEDおよびLCD製造業者の要件を満足する。」
イ 甲6に記載された技術的事項
上記アを総合すると、甲6には、次の技術的事項が記載されていると認められる(以下「甲6に記載された技術的事項」という。)。
「液状または二相のアンモニアをこの運搬容器10から気化容器40に移し替えるものであり、
蒸気流を気化容器40から引出すとき、その中の圧力が下がり始める影響を相殺し、この圧力を機能する範囲内に維持するために、ヒータ160を使ってこの容器内の液体アンモニアを部分的に気化し、この気化手段は、シェルアンドチューブ形交換器のような、従来の熱交換器を含むものであり、
引出して導管60を通して運んだ蒸気流に所望の汚染物質レベルを維持するために、低揮発性汚染物質が濃い液体流をこの気化容器から導管100を介して純度制御弁110へ引出し、この液体流に関連する流れは、この気化容器内の液体の純度に依って変動し、典型的にはこの気化容器への液体または二相の流体の流量の0と90%の間に及ぶものである、
システム100。」
(7)甲7
ア 甲7には、次の事項が記載されている。
「【0020】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の実施の第1形態としての吸収式冷凍暖房装置の概略的な構成を示す。本実施形態の吸収式冷暖房装置は、アンモニア吸収式冷凍サイクルによって、蒸発器(1)で冷媒であるアンモニアが蒸発し、冷熱媒体である冷却ブラインを0℃以下に冷却することができる。蒸発器(1)で蒸発したアンモニア冷媒は、吸収器(2)で吸収液である稀溶液に吸収される。稀溶液は、発生器(3)に送られ、加熱されてアンモニア冷媒が蒸発し、吸収液は濃溶液になり、吸収器(2)に送られる。発生器(3)から発生されたアンモニア冷媒の蒸気は、凝縮器(4)で凝縮され、液冷媒として蒸発器(1)に送られる。本発明では、後述するように、吸収器(2)から温水を取出すことが特徴である。
【0021】発生器(3)で吸収液であるアンモニア水溶液を加熱すると、冷媒であるアンモニアとともに水分も蒸発する。発生器(3)から純度の高いアンモニア蒸気を凝縮器(4)に送るため、精留塔(5)が設けられる。精留塔(5)の下部には、発生器(3)からのアンモニアと水の混合水蒸気が送られる。精留塔(5)からは、精留に利用されたアンモニア水溶液が、発生器(3)の上部にフィードされる。この溶液は、発生器(3)で加熱、濃縮され、高温の稀溶液になって溶液熱交換器(6)に送られる。
【0022】精留塔(5)は、発生器(3)から送られてくる純度の低い冷媒ガス、たとえば50~60%を、高純度、たとえば99.8%のアンモニアガスに濃縮する。精留塔(5)内には、バブルキャプ式等のトレイ(7)が複数段、たとえば6~18段設置されている。各トレイ(7)では、アンモニアの純度の高い濃溶液と、アンモニアと水との混合蒸気が気液接触し、混合蒸気中の水蒸気は濃溶液中に吸収され、その時に発生する凝縮熱で濃溶液中のアンモニアがガス化する。トレイ(7)の各段毎にこれを繰返すことによって、高純度のアンモニアガスが得られる。この精留の過程で不可欠な加熱量として、精留熱(qR )がある。この精留熱qR は、蒸発温度が低いほど大になる。
【0023】凝縮器(4)は、高純度のアンモニアガスを冷却して凝縮させ、その一部はリフラックスポンプ(8)によって、精留塔(5)の頂部に送られ、精留のために利用される。凝縮したアンモニア冷媒は冷媒過冷却器(9)からブリード熱交換器(9)を介して蒸発器(1)に送られる。冷媒過冷却器(8)では、凝縮器(4)からの暖かい冷媒液と、蒸発器(1)からの冷たい冷媒ガスとを熱交換させ、冷媒液を過冷却させて冷凍効率を向上させることができる。
【0024】蒸発器(1)では、冷媒液であるアンモニア液が伝熱管内を流れる冷熱媒体から熱を奪い、蒸発して純度100%のガスになる。したがって、沸騰している冷媒液側の純度は99.8%よりも低下する。蒸発器(1)内の冷媒液の純度を96~98%に保つため、蒸発器(1)内の冷媒液を冷媒循環量の4~5%程度ブリード熱交換器(10)に放出する。ブリード熱交換器(10)は、放出された液冷媒の冷熱を回収するため、冷媒過冷却器(9)から蒸発器(1)に送られる冷媒液をさらに過冷却する。ブリード冷媒は、ブリード熱交換器(10)でガス化して、吸収器(2)で吸収液に吸収される。」
イ 甲7に記載された技術的事項
上記アを総合すると、甲7には、次の技術的事項が記載されていると認められる(以下「甲7に記載された技術的事項」という。)。
「蒸発器(1)では、冷媒液であるアンモニア液が伝熱管内を流れる冷熱媒体から熱を奪い、蒸発して純度100%のガスになり、沸騰している冷媒液側の純度は99.8%よりも低下するので、蒸発器(1)内の冷媒液の純度を96~98%に保つため、蒸発器(1)内の冷媒液を冷媒循環量の4~5%程度ブリード熱交換器(10)に放出する、吸収式冷凍暖房装置。」
2 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
甲1発明の「液体状の粗アンモニア」は、甲1の【0002】~【0003】、【0025】を参照すると、主成分は液体状のアンモニアである。同様に、本件明細書の「液化アンモニアには、主成分であるアンモニアと、主成分の沸点よりも高い沸点を有する高沸点成分である水とが含まれる。」(【0027】)との記載を踏まえると、本件発明1の「主成分」も液化アンモニアである。そうすると、甲1発明の「揮発性の低い不純物が含有される液体状の粗アンモニア」は、本件発明の「主成分と、前記主成分の沸点よりも高い沸点を有する高沸点成分である水分とを含む液化アンモニアからなる液化ガス」に相当する。
甲1発明における「貯留手段」は、「原料貯留タンク1」として「円柱状の内部空間を有し、その内部空間に液体状の粗アンモニアを貯留」するものであり、該タンクは殻ともいえるものであるから、本件発明1における「シェル」に相当する。
甲1発明における貯留手段に設けられた「液体状の粗アンモニアを加熱する加熱装置」は、甲1の「原料貯留タンク1内に貯留される液体状の粗アンモニアの一部を気化させ、気相におけるアンモニア濃度を上昇させるために、液体状の粗アンモニアを加熱する加熱装置11」(【0026】)との記載も踏まえると、本件発明1における「シェル内に配置され、前記液化ガスの前記主成分を気化させる温度を有する第1加熱流体が導入される複数の伝熱管であって、当該伝熱管の周囲の液化ガスと当該伝熱管内の前記第1加熱流体とを熱交換させる前記複数の伝熱管」とは、「液化ガスの主成分を気化させる加熱装置」である点に限り一致する。
甲1発明における「気相から気体状の粗アンモニアを」「導出する」「前記貯留手段の上部(気相が形成された部分)に接続された第2配管」は、本件発明1における「シェル内で気化した前記主成分を前記シェルから導出させる導出部」に相当する。
甲1発明における「液相から一部の液体状の粗アンモニアを」「導出する」「前記貯留手段の下部(液相が形成された部分)に接続された第1配管」と、本件発明1における「前記シェルの底部に配置され、前記シェル内に溜まった前記液化ガスを前記シェルから流出させる液流出部」とは、「シェルの下部に配置され、シェル内に溜まった液化ガスをシェルから流出させる液流出部」を備える点に限り一致する。
甲1発明における「貯留手段の液相から導出された液体状の粗アンモニアの一部を気化し、気体状のアンモニアを導出する気化手段」と、本件発明1における「液流出部を通して前記シェルから導出された前記液化ガスに含まれる前記主成分を、第2加熱流体との熱交換により気化させる加熱器」とは、「液流出部を通してシェルから導出された液化ガスに含まれる主成分を気化させる気化手段」である点に限り一致する。
甲1発明における「液体状の粗アンモニアを精製するアンモニア精製システム」は、粗アンモニアの一部を気化させる加熱装置11を含むから、本件発明1における「主成分と、・・・水分とを含む液化アンモニアからなる液化ガスを気化させる気化器」を含むといえる。
したがって、本件発明1と甲1発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
[一致点]
「主成分と、前記主成分の沸点よりも高い沸点を有する高沸点成分である水分とを含む液化アンモニアからなる液化ガスを気化させるものであって、
シェルと、
液化ガスの主成分を気化させる加熱装置と、
シェル内で気化した前記主成分をシェルから導出させる導出部と、
シェルの下部に配置され、シェル内に溜まった液化ガスをシェルから流出させる液流出部と、
液流出部を通してシェルから導出された液化ガスに含まれる主成分を気化させる気化手段と、を備える、気化器。」
[相違点1]
「液化ガスの主成分を気化させる加熱装置」が、本件発明1では、「シェル内に配置され、前記液化ガスの前記主成分を気化させる温度を有する第1加熱流体が導入される複数の伝熱管であって、当該伝熱管の周囲の液化ガスと当該伝熱管内の前記第1加熱流体とを熱交換させる前記複数の伝熱管」であるのに対し、甲1発明では、「加熱手段」の具体的な構成が特定されていない点。
[相違点2]
「シェルの下部に配置され、シェル内に溜まった液化ガスをシェルから流出させる液流出部」が、本件発明1では、「前記シェルの底部に配置され」ているのに対し、甲1発明では、「貯留手段の底部」に配置されているか特定されていない点。
[相違点3]
「液流出部を通してシェルから導出された液化ガスに含まれる主成分を気化させる気化手段」が、本件発明1では、「液流出部を通して前記シェルから導出された前記液化ガスに含まれる前記主成分を、第2加熱流体との熱交換により気化させる加熱器」であるのに対し、甲1発明では、「気化手段」の具体的な構成が特定されていない点。
[相違点4]
本件発明1は、「前記シェル内に前記液化ガスを供給する供給部」を備え、「前記液流出部は、前記供給部を通して前記シェル内に供給される液化ガスの流量に対する、前記液流出部から導出される液化ガスの流量の割合の値が、前記供給部を通して供給される前記液化ガスに含まれる前記高沸点成分の割合以上の値になるように前記液化ガスを導出させる」のに対し、甲1発明は、前記貯留手段における、前記内部空間の容積に対する液相の容積の比である容積比を算出し、該容積比が、予め定める閾値以上である場合には、液相から一部の液体状の粗アンモニアを前記貯留手段の下部(液相が形成された部分)に接続された第1配管を流れて導出するように前記貯留手段を制御し、前記容積比が、前記閾値未満である場合には、気相から気体状の粗アンモニアを前記貯留手段の上部(気相が形成された部分)に接続された第2配管を流れて導出するように前記貯留手段を制御する導出制御手段を備える点。
(2)判断
事案に鑑みて、上記相違点4について検討する。
甲1発明の「貯留手段」は液体状及び気体状の粗アンモニアを導出するものであるから、「液化ガスを供給する供給部」を有することは甲1に記載されているに等しい事項である。
そして、甲1発明の相違点4に係る構成について、甲1の発明の詳細な説明を参照すると、「原料貯留タンク1内における液体状の粗アンモニアの充填量が多いほど、原料貯留タンク1に形成される気相において、揮発性の高い不純物濃度が高くなる。また、・・・充填量が少ないほど、原料貯留タンク1に形成される液相において、揮発性の低い不純物(たとえば、水、炭素数が大きい有機化合物)の濃度が高くなる。」(【0037】)ことを踏まえ、「導出制御手段は、貯留手段における、前記内部空間の容積に対する液相の容積の比である・・・、該容積比が、予め定める閾値以上である場合に、液相から粗アンモニアを導出するように貯留手段を制御する。また、・・・、前記閾値未満である場合に、気相から粗アンモニアを導出するように貯留手段を制御する。」(【0018】)ことが記載されている。そして、これらの記載を整理すると、甲1には、液体状の粗アンモニアの充填量が少ないほど液相中の揮発性の低い、すなわち高沸点といえる不純物の濃度が高くなるから、液相からの導出を停止し、気相から粗アンモニアを導出する制御を行うことが記載されている。
そうすると、甲1発明において、本件発明1のように、シェル内に溜まる液化ガス内に高沸点成分が蓄積(【0005】)することを抑制するために、「前記液流出部が、前記供給部を通して前記シェル内に供給される液化ガスの流量に対する、前記液流出部から導出される液化ガスの流量の割合の値が、前記供給部を通して供給される前記液化ガスに含まれる前記高沸点成分の割合以上の値になるように液化ガスを導出させる」構成とすることの動機はない。
また、甲4は、アンモニア吸収式冷凍機であり、凝縮器、膨張弁、蒸発器、吸収器及び発生器等により冷凍サイクルを構成するものであるから、甲1発明のアンモニア精製システムとは技術が異なり、甲4装置の一部の機器に係る流量態様を甲1発明に適用する動機はない。
また、甲7も甲4と同様の吸収式冷凍及び暖房同時取出し機であり、甲1発明のアンモニア精製システムに適用する動機はない。
更に、甲2に記載された技術的事項、甲3に記載された技術的事項、甲5に記載された技術的事項及び甲6に記載された技術的事項において、「前記液流出部が、前記供給部を通して前記シェル内に供給される液化ガスの流量に対する、前記液流出部から導出される液化ガスの流量の割合の値が、前記供給部を通して供給される前記液化ガスに含まれる前記高沸点成分の割合以上の値になるように液化ガスを導出させる」ことは、記載も示唆もされていない。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~甲7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得るものではない。
3 本件発明2~7について
本件発明2~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記2で検討したものと同じ理由により、本件発明2~7は、甲1発明及び甲2~甲7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得るものではない。
4 小括
したがって、本件発明1~7は、甲1発明及び甲2~甲7に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
第5 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700822