特許異議申立
2020-700855
天然ガス燃料の供給装置および方法
- 審判番号
- 2020-700855
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-025005
- 登録番号
- 6700324
- 請求日
- 2020年11月06日
- 審決日
- 2022年05月31日
- 公報発行日
- 2022年09月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ブルクハルト コンプレッション アーゲー
- 【権利者代理人】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
- 【権利者代理人】永島 秀郎
- 【異議申立人】畑山 千里
- 審判長/審判官
- 審判長 久保 克彦
- 審判官 藤原 直欣
- 審判官 藤井 眞吾
- 分類
- P1651.121-YAA(F17C) / P1651.537-YAA(F17C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6700324号発明「天然ガス燃料の供給装置および方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6700324号の特許請求の範囲を令和3年12月28日の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~18〕〔19~32〕について訂正することを認める。
特許第6700324号の請求項1~3、5、9、13~16、18に係る特許を維持する。
特許第6700324号の請求項4、6~8、10~12、17、19~32に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6700324号の請求項1~32に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)2月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2008年3月10日 欧州特許庁(EP)、2008年3月19日 欧州特許庁(EP))を国際出願日とする出願(特願2010-550168号)の一部を、平成27年1月8日に新たな出願とした特願2015-2139号の一部を、平成30年2月15日に新たな特許出願としたものであって、令和2年5月7日に特許権の設定登録がされ、令和2年5月27日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和2年11月 6日 :特許異議申立人畑山千里(以下「申立人」という)による特許異議の申立て
令和3年 3月 2日付け:取消理由通知書
令和3年 6月 2日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
令和3年 9月30日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和3年12月28日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
令和4年 2月21日 :申立人による意見書の提出
なお、令和3年6月2日の訂正請求書による訂正請求は、特許法第120の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「前記第一および第二圧縮ステージ(9、10)は潤滑油を含んでおらず、圧縮ステージ(9、10、13、14)のうちの少なくとも一つは、天然ガス燃料が前記流出口(7)において100バール(10MPa)から500バール(50MPa)の間の送給圧力を有するようにする可制御弁(23、24、25)を備えたバイパス(20、21、22)を有する」を、
「前記第一および第二圧縮ステージ(9、10)は潤滑油を含んでおらず、圧縮ステージ(9、10、13、14)のうちの少なくとも一つは、天然ガス燃料が前記流出口(7)において100バール(10MPa)から500バール(50MPa)の間の送給圧力を有するようにする可制御弁(23、24、25)を備えたバイパス(20、21、22)を有しており、
前記第二圧縮ステージ(10)と前記第三圧縮ステージ(13)との間に、逆止弁(16)が存在しており、
前記流入口(3)と前記逆止弁(16)との間に、天然ガスを前記LNG貯蔵タンク(5)に戻すためのリターンパイプ(50)が存在しており、
前記逆止弁(16)の下流の圧縮ステージが油で潤滑され、前記逆止弁(16)の前の全ての圧縮ステージ(9、10)は油不使用である」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5の「請求項4に記載の装置」を、「請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置」に訂正する。
また、請求項5を直接的又は間接的に引用する請求項9、13乃至16、18も同様に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項9の「請求項1乃至8のいずれか一項に記載の装置」を、「請求項1乃至3、5のいずれか一項に記載の装置」に訂正する。
また、請求項9を直接的又は間接的に引用する請求項13乃至16、18も同様に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項10を削除する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項11を削除する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項12を削除する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項13の「請求項1乃至12のいずれか一項に記載の装置」を、「請求項1乃至3、5、9のいずれか一項に記載の装置」に訂正する。
また、請求項13を直接的又は間接的に引用する請求項14乃至16、18も同様に訂正する。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項14の「請求項1乃至13のいずれか一項に記載の装置」を、「請求項1乃至3、5、9、13のいずれか一項に記載の装置」に訂正する。
また、請求項14を直接的又は間接的に引用する請求項15乃至16、18も同様に訂正する。
(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項15の「請求項1乃至14のいずれか一項に記載の装置」を、「請求項1乃至3、5、9、13、14のいずれか一項に記載の装置」に訂正する。
また、請求項15を直接的又は間接的に引用する請求項16、18も同様に訂正する。
(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項16の「請求項1乃至15のいずれか一項に記載の装置」を、「請求項1乃至3、5、9および13乃至15のいずれか一項に記載の装置」に訂正する。
また、請求項16を引用する請求項18も同様に訂正する。
(15)訂正事項15
特許請求の範囲の請求項17を削除する。
(16)訂正事項16
特許請求の範囲の請求項18の「請求項1乃至17のいずれか一項に記載の装置の使用法」を、「請求項1乃至3、5、9および13乃至16のいずれか一項に記載の装置の使用法」に訂正する。
(17)訂正事項17
特許請求の範囲の請求項19~32を削除する。
2 一群の請求項
請求項1に係る本件訂正は、訂正前に引用関係を有する請求項1~18に対して、また、請求項19に係る本件訂正は、訂正前に引用関係を有する請求項19~32に対して、それぞれ請求されたものである。
よって、本件訂正請求は、一群の請求項ごとに請求されたものである。
3 訂正の適否
(1)訂正事項1
訂正事項1による請求項1についての訂正は、訂正前の請求項4、6及び7に記載された事項を追加して限定するとともに、訂正前の請求項1に記載された「前記第一および第二圧縮ステージ(9、10)は潤滑油を含んでおらず」に関して、逆止弁との配置関係について「前記逆止弁(16)の前の全ての圧縮ステージ(9、10)は油不使用である」点を追加して限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1は、訂正前の請求項4、6及び7の記載に加えて、明細書の【0017】、【0022】及び【0039】並びに図3の記載に基づくものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2、4~6、8~10及び15
訂正事項2、4~6、8~10及び15は、それぞれ請求項4、6~8、10~12及び17の削除であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3、7、11~14及び16
訂正事項3、7、11~14及び16は、「請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置」と記載された請求項4の削除に加えて、請求項6~8、10~12及び17の削除に伴い、削除された各請求項を引用しないものとするものであるから、明瞭でない記載の釈明又は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項17
訂正事項17は、請求項19~32の削除であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、訂正後の請求項〔1~18〕〔19~32〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正は認められたから、本件特許の請求項1~3、5、9、13~16及び18に係る発明(以下、「本件発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~3、5、9、13~16及び18に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
【請求項1】
天然ガス燃料を供給する装置(1)であって、該装置(1)はコンプレッサ(2)を備え、該コンプレッサ(2)は、天然ガス(4)の流れの流入口(3)であって、LNG貯蔵タンク(5)に連通して配置され、かつボイルオフガス(6)を前記LNG貯蔵タンク(5)から供給する流入口(3)と、船舶のディーゼルエンジンに天然ガス燃料を供給するための天然ガス供給パイプ(8)に連通して配置される流出口(7)とを備えた装置(1)において、前記コンプレッサ(2)は第一圧縮ステージ(9)および次の第二圧縮ステージ(10)を備え、前記第一および第二圧縮ステージ(9、10)はピストンリングシール式ピストンコンプレッサ(11、12)の形態を有し、前記第一圧縮ステージ(9)は前記第二圧縮ステージ(10)より大きなピストン径を備え、前記コンプレッサ(2)は少なくとも一つの次の第三圧縮ステージ(13、14)を備え、前記第三圧縮ステージ(13、14)はピストンリングシール式ピストンコンプレッサ(15)の形態を有し、前記第一および第二圧縮ステージ(9、10)は潤滑油を含んでおらず、圧縮ステージ(9、10、13、14)のうちの少なくとも一つは、天然ガス燃料が前記流出口(7)において100バール(10MPa)から500バール(50MPa)の間の送給圧力を有するようにする可制御弁(23、24、25)を備えたバイパス(20、21、22)を有しており、
前記第二圧縮ステージ(10)と前記第三圧縮ステージ(13)との間に、逆止弁(16)が存在しており、
前記流入口(3)と前記逆止弁(16)との間に、天然ガスを前記LNG貯蔵タンク(5)に戻すためのリターンパイプ(50)が存在しており、
前記逆止弁(16)の下流の圧縮ステージが油で潤滑され、前記逆止弁(16)の前の全ての圧縮ステージ(9、10)は油不使用である
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記第三圧縮ステージ(13、14)は、逆流を制御して、前記第三圧縮ステージ(13、14)の送給圧力を制御する可制御弁(25)を備えたバイパス(22)を有し、前記バイパス(22)は、前記第三圧縮ステージ(13、14)の入口と出口とを接続する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
100%の送給量が前記バイパス(22)を介して再循環されることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記第三圧縮ステージ(13、14)の前記バイパス(22)が、前記逆止弁(16)と前記流出口(7)との間に存在することを特徴とする請求項1乃至3いずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記第一圧縮ステージ(9)は、単一のピストンコンプレッサで構成されているか、又は二つの並列のピストンコンプレッサで構成されていることを特徴とする請求項1乃至3、5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記圧縮ステージ(9、10、13、14)の全ては共通クランク駆動機構(17)によって駆動されることを特徴とする請求項1乃至3、5、9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記圧縮ステージ(9、10、13、14)の全ては、共通ケーシング(18)に取付けられることを特徴とする請求項1乃至3、5、9、13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記第三圧縮ステージおよび第四圧縮ステージ(13、14)は、共通シリンダ(15a)内に位置することを特徴とする請求項1乃至3、5、9、13、14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記第二圧縮ステージ(10)は、直列に接続されたコンプレッサの二つのステージからなることを特徴とする請求項1乃至3、5、9および13乃至15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】 船舶のディーゼルエンジン(32)にLNG貯蔵タンクに貯蔵された天然ガスを供給するための請求項1乃至3、5、9および13乃至16のいずれか一項に記載の装置の使用法。
第4 取消理由の概要
令和3年9月30日付け取消理由通知書(決定の予告)の取消理由の概要は、以下のとおりである。
理由(進歩性)本件特許の請求項1~9、11~32に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
引用文献1:三宅幹彦ほか、技術資料「ガスインジェクションディーゼル機関とそのLNG船への応用」、日本舶用機関学会誌、日本国、昭和59年10月、第19巻、第10号、第17~28ページ(甲第1号証)
引用文献2:カナダ国特許出願公開第2511254号明細書(甲第2号証)
引用文献3:伊藤茂ほか、「実用機械シリーズ容積形圧縮機」、初版、日本国、産業図書株式会社、昭和45年6月30日、第2~5、32~35、74~79、132~137、230~235ページ(甲第3号証)
引用文献4:特表2002-500318号公報(甲第4号証)
引用文献5:特開2006-348752号公報(甲第5号証)
引用文献6:特開平8-312896号公報(甲第6号証)
引用文献7:特開平8-326662号公報(甲第7号証)
引用文献8:米国特許第5584664号明細書(甲第8号証)
引用文献9:特開2006-200735号公報(甲第9号証)
引用文献10:特開2002-213366号公報(甲第10号証)
引用文献11:特開2006-37759号公報(甲第11号証)
第5 取消理由についての当審の判断
1 引用文献1に記載された事項、引用文献1に記載された発明
引用文献1には、以下の記載がある(下線は当審が付した。)。
(1)「3.ガスインジェクションディーゼルのLNG船主機関への応用
Table2及びFig.8に示すようなLNG船の主機関としてのG.I.ディーゼル機関のフィジビリティスタディーの結果について述べることとする.
LNGカーゴタンクの通常ボイルオフレート(B.O.R.)としては0.10%/日を採用しているが,この数字はFig.9に示すように,対象船に低速ディーゼル主機関を適用した場合に適当で,かつタンク防熱の面からも現実的な数字として採用した.」(第19頁右欄第20行目~第29行目)
(2)「ガス燃料の供給圧力及び温度は,ガス圧縮機の能力と所要動力,主機ガスインジェクションノズルのサイズ,及び主機の燃焼効率などに影響を与える.実験結果に基づき,最適ボイルオフガス燃料供給圧力及び温度として250bar,45℃が選定された.」(第20頁右欄第6行目~第10行目)
(3)「圧縮機としては三井トマッセン往復動式4段圧縮機を採用し,完全予備機を考慮して2台装備とした.その概略仕様をTable3に示す.駆動装置としてはシリコン整流素子による自励式インバータ方式の可変速誘導電動機を採用し,定吐出圧下での容量制御を容易にしている.ボイルオフレート0.10%/日における圧縮機の所要動力は約700kWで,これは主機出力の約4%に相当する.定格容量はボイルオフレート0.12%/日とし,ガス中のN2分率は20mol%を考慮した.」(第21頁右欄第10行目~第19行目)
(4)「
[図:0001388332000001.jpg]
」(第21頁右欄中段)
(5)「圧縮機の容量可変範囲としては,駆動装置の速度制御によって100~50%,また速度制御と圧縮機のサクションアンローダーとの組合せ制御により更に50~25%の範囲まで対応できる.また圧縮機の容量制御は吐出圧力一定制御を基本とし,更にカーゴタンクの圧力低下に対しては優先的に吐出容量を減少させる制御を行う.」(第21頁右欄第20行目~第25行目)
(6)「余剰ボイルオフガスの処理方法としては,他に再液化装置が有効であると考えられる.この方法は設備費と余剰ガスの回収,あるいはシステムの冗長性向上とのバランスで考える必要があり,処理能力も必ずしも100%である必要はない.」(第22頁右欄第5行目~第9行目)
(7)「
[図:0001388332000002.jpg]
」(第22頁下段のFig.13)
(8)上記(3)、(4)及び(7)より、4つのステージからなる往復動式4段圧縮機がカーゴタンクに連通して配置されるとともに、LNG船のディーゼルエンジンに燃料を供給する点が看取できる。
以上を総合すると、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「LNGカーゴタンクのボイルオフガス燃料を、4つのステージからなる往復動式4段圧縮機により圧縮し、最適ボイルオフガス燃料供給圧力250barでLNG船のディーゼルエンジンに燃料を供給する装置。」
2 本件発明1
(1)対比
引用発明の「LNG」は本件発明1の「天然ガス燃料」に相当し、以下同様に、「ボイルオフガス」は「ボイルオフガス(6)」に、「カーゴタンク」は「LNG貯蔵タンク(5)」に、「供給圧力」は「送給圧力」にそれぞれ相当する。また、引用発明の「往復動式4段圧縮機」は、本件発明1の「コンプレッサ(2)」に相当する。
引用発明の往復動式4段圧縮機は、カーゴタンクに接続されるものであるから、本件発明1の用語により記載すると、「天然ガス(4)の流れの流入口(3)であって、LNG貯蔵タンク(5)に連通して配置され、かつボイルオフガス(6)を前記LNG貯蔵タンク(5)から供給する流入口(3)」を備えるものであると認められ、同様に、LNG船のディーゼルエンジンにも接続されるものであるから、本件発明1の用語により記載すると、「船舶のディーゼルエンジンに天然ガス燃料を供給するための天然ガス供給パイプ(8)に連通して配置される流出口(7)」を備えるものであると認められる。
引用発明の往復動式4段圧縮機は、4つのステージを構成するものであるから、本件発明1の、「第一圧縮ステージ(9)」、「第二圧縮ステージ(10)」、「第三圧縮ステージ(13,14)」を備えるものであると認められる。
引用発明の最適ボイルオフガス燃料供給圧力250barは、本件発明1の「天然ガス燃料が前記流出口(7)において100バール(10MPa)から500バール(50MPa)の間の送給圧力」の範囲内のものである。
そうすると、本件発明1と引用発明は、次の点で一致し、相違する。
<一致点>
「天然ガス燃料を供給する装置(1)であって、該装置(1)はコンプレッサ(2)を備え、該コンプレッサ(2)は、天然ガス(4)の流れの流入口(3)であって、LNG貯蔵タンク(5)に連通して配置され、かつボイルオフガス(6)を前記LNG貯蔵タンク(5)から供給する流入口(3)と、船舶のディーゼルエンジンに天然ガス燃料を供給するための天然ガス供給パイプ(8)に連通して配置される流出口(7)とを備えた装置(1)において、前記コンプレッサ(2)は第一圧縮ステージ(9)および次の第二圧縮ステージ(10)を備え、前記コンプレッサ(2)は少なくとも一つの次の第三圧縮ステージ(13、14)を備え、圧縮ステージ(9、10、13、14)のうちの少なくとも一つは、天然ガス燃料が前記流出口(7)において100バール(10MPa)から500バール(50MPa)の間の送給圧力を有する装置。」
<相違点1>
本件発明1は、第一圧縮ステージ、第二圧縮ステージおよび第三圧縮ステージはピストンリングシール式ピストンコンプレッサの形態を有しているのに対し、引用発明は、往復動式4段圧縮機である点。
<相違点2>
本件発明1は、第一圧縮ステージは第二圧縮ステージより大きなピストン径を備えるものであるのに対し、引用発明は、そのような構成が特定されていない点。
<相違点3>
第一および第二圧縮ステージに関し、本件発明1は、潤滑油を含んでいないのに対し、引用発明は、潤滑油を含んでいるのか否か不明である点。
<相違点4>
圧縮ステージのうちの少なくとも一つは、天然ガス燃料が前記流出口において100バール(10MPa)から500バール(50MPa)の間の送給圧力を有することについて、本件発明1は、当該間の送給圧力を有するようにするために、可制御弁を備えたバイパスを有するのに対し、引用発明は、そのような構成を有しているのか否か不明である点。
<相違点5>
本件発明1が、「前記第二圧縮ステージ(10)と前記第三圧縮ステージ(13)との間に、逆止弁(16)が存在しており、前記流入口(3)と前記逆止弁(16)との間に、天然ガスを前記LNG貯蔵タンク(5)に戻すためのリターンパイプ(50)が存在しており、前記逆止弁(16)の下流の圧縮ステージが油で潤滑され、前記逆止弁(16)の前の全ての圧縮ステージ(9、10)は油不使用である」の対し、引用発明は、そのような構成を有していない点。
(2)判断
事案に鑑み、相違点5について検討する。
圧縮機の流入口と逆止弁との間にリターンパイプを設け、余剰のボイルオフガスをカーゴタンクに戻すことが周知技術であり(例えば、引用文献9の図1参照。)、当該周知技術を引用発明に付加するとしても、本件発明1の逆止弁の前の全ての圧縮ステージを油不使用にするとともに、逆止弁の下流の圧縮ステージを油で潤滑させる点については想到できない。
この点、圧縮機と潤滑油との関係について、「潤滑油による汚染を減らし清浄な圧縮流体を得る目的で潤滑油を含まない圧縮機を用いること」は周知であるが(例えば、引用文献2の段落[0026]、引用文献3の134頁参照。)、この周知例として用いる引用文献2及び3は、「全ての圧縮ステージを無給油式とすること」の周知例として用いるものであるから(例えば、引用文献2の段落[0026]、引用文献3の3頁24行~4頁2行、134頁5~8行参照。)、上記した点、すなわち、本件発明1の逆止弁に対する上流ないし下流の圧縮ステージの位置によって油潤滑と油不使用とを区別して配置することを示唆するものではない。
他方、他の引用文献を参照しても、上記した点については記載も示唆もないといえる。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
2 本件発明2、3、5、9、13~16、18
本件発明2、3、5、9、13~16、18は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1の発明特定事項の全てを含むものであるから、本件発明1で述べたことと同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人は、請求項7及び8に係る発明が発明の詳細な説明に記載されてない旨(特許法第36条第6項第1号違反)、及び、請求項10に係る発明が不明確である旨(特許法第36条第6項第2号違反)を主張する。
しかしながら、請求項7、8及び10は、本件訂正により削除されたから、申立人の主張の対象は存在しないものとなった。
第7 むすび
以上のとおり、請求項1~3、5、9、13~16、18に係る発明については、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項1~3、5、9、13~16、18に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に本件請求項請求項1~3、5、9、13~16、18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項4、6~8、10~12、17、19~32に係る特許は、上記のとおり訂正により削除され、これにより、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-700855