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特許異議申立

2023-700830

高圧水素容器

審判番号
2023-700830
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-069733
登録番号
7230094
請求日
2023年08月10日
審決日
2023年12月20日
公報発行日
2024年01月26日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】JFEスチール株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人きさ特許商標事務所
  • 【権利者】JFEコンテイナー株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人きさ特許商標事務所
  • 【異議申立人】若井 麻衣子
審判長/審判官
  • 審判長 藤原 直欣
  • 審判官 金丸 治之
  • 審判官 稲葉 大紀
分類
P1651.113-Y (F17C) / P1651.121-Y (F17C) / P1651.537-Y (F17C)
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特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
データ出所
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特許第7230094号発明「高圧水素容器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7230094号の請求項1~21に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7230094号の請求項1~21に係る特許についての出願は、令和3年4月16日(優先権主張 令和2年4月20日)の出願であって、令和5年2月17日にその特許権の設定登録がされ、令和5年2月28日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1~21に係る特許に対し、令和5年8月10日に特許異議申立人若井麻衣子(以下「申立人」という。)により、本件特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~21に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~21に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 高圧水素の貯蔵用の金属円筒と、 前記金属円筒の両端部を覆った一対の蓋部材と、 長手方向を前記金属円筒の中心軸に平行にして配列された複数の締結部材と、 を備え、 前記一対の蓋部材のそれぞれには、前記複数の締結部材を挿通する複数の貫通孔が形成され、 前記複数の締結部材のそれぞれは、 両端部が前記一対の蓋部材のそれぞれに形成された前記複数の貫通孔に差し込まれ、 前記金属円筒よりも外側に点在して前記金属円筒の外周を囲んで配置され、 前記一対の蓋部材の間に前記金属円筒を挟み込んだ状態で固定し、 前記一対の蓋部材は、 前記金属円筒の両端面と直接当接して前記金属円筒の内部を密封した高圧水素容器。 【請求項2】 高圧水素の貯蔵用の金属円筒と、 前記金属円筒の両端部を覆った一対の蓋部材と、 前記一対の蓋部材の間に前記金属円筒を挟み込んだ状態で固定した複数の締結部材と、を備え、 前記金属円筒及び前記一対の蓋部材の中における前記金属円筒の内部から外部に至る際に、前記一対の蓋部材のうちどちらか一方の前記蓋部材において、外部に至る経路と、前記複数の締結部材のうち前記金属円筒に最も近い締結部材が当該蓋部材に挿通された位置に至る経路と、のうち共通する最短の距離の共通経由位置を有し、 当該蓋部材における前記共通経由位置から外部への最低厚みがt[mm]とされ、 前記共通経由位置と前記複数の締結部材のうち前記金属円筒に最も近い締結部材が当該蓋部材に挿通された位置との間がL0[mm]とされると、 L0>tが満たされている高圧水素容器。 【請求項3】 前記一対の蓋部材のそれぞれには、前記複数の締結部材を挿通する複数の貫通孔が形成され、 前記複数の締結部材のそれぞれは、前記一対の蓋部材のそれぞれに形成された前記複数の貫通孔に差し込まれている請求項2に記載の高圧水素容器。 【請求項4】 前記複数の締結部材のそれぞれは、長手方向を前記金属円筒の中心軸に平行に配列されている請求項3に記載の高圧水素容器。 【請求項5】 前記複数の締結部材は、前記金属円筒の外周に点在して前記金属円筒の外周を囲んでいる請求項2~請求項4のいずれか1項に記載の高圧水素容器。 【請求項6】 前記複数の締結部材は、 同一円周上に同じ間隔で点在し、 前記金属円筒と前記金属円筒の外周を囲んだ前記複数の締結部材とは、 前記金属円筒の中心軸を中心とした同心円を構成している請求項1又は請求項5に記載の高圧水素容器。 【請求項7】 前記金属円筒と前記金属円筒の外周を囲んだ前記複数の締結部材との間には、前記金属円筒と前記複数の締結部材とを離間させた隙間が形成されている請求項5又は請求項6に記載の高圧水素容器。 【請求項8】 前記複数の締結部材には、ボルトが用いられている請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の高圧水素容器。 【請求項9】 前記金属円筒と前記一対の蓋部材のそれぞれとを嵌め合う2つの嵌め合い構造を有する請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の高圧水素容器。 【請求項10】 前記一対の蓋部材のそれぞれは、 前記金属円筒側にて前記金属円筒の内周に嵌め合わせる外周を有する凸部を有する請求項9に記載の高圧水素容器。 【請求項11】 前記凸部の側周面と前記金属円筒の内周面とを密封する第1シール部が設けられている請求項10に記載の高圧水素容器。 【請求項12】 前記第1シール部は、 前記凸部の側周面を一回りして形成された第1シール溝と、 前記第1シール溝内に配置された第1オーリングと、 前記第1シール溝内の前記第1オーリングよりも前記蓋部材側に配置されたバックアップリングと、を有する請求項11に記載の高圧水素容器。 【請求項13】 前記一対の蓋部材と前記金属円筒の前記一対の蓋部材のそれぞれに当接する端面とを密封する第2シール部が設けられている請求項11又は請求項12に記載の高圧水素容器。 【請求項14】 前記第2シール部は、 前記金属円筒の前記端面を一回りして形成された第2シール溝と、 前記第2シール溝内に配置された第2オーリングと、を有する請求項13に記載の高圧水素容器。 【請求項15】 前記金属円筒における前記第1シール部と前記第2シール部との間には、内部から外部に貫通したリークポートが設けられている請求項13又は請求項14に記載の高圧水素容器。 【請求項16】 前記リークポートを通る気体に含まれる水素を検知する水素センサを更に備える請求項15に記載の高圧水素容器。 【請求項17】 前記水素センサは、 前記リークポートを通る気体に含まれる水素の量を常時監視し、前記リークポートを通る気体に含まれる水素の量が規定値以上の場合に報知する請求項16に記載の高圧水素容器。 【請求項18】 前記水素センサは、 前記リークポートを通る気体に含まれる水素の量が0になった場合に報知する請求項16又は請求項17に記載の高圧水素容器。 【請求項19】 前記一対の蓋部材のそれぞれは、 前記凸部の外周側に位置する溝部を更に備え、 前記溝部は、前記凸部の突出方向とは反対方向に凹んで前記金属円筒が嵌め込まれる請求項10~請求項18のいずれか1項に記載の高圧水素容器。 【請求項20】 前記一対の蓋部材のぞれぞれは、表裏形状が正方形である板状体を用いている請求項1~請求項19のいずれか1項に記載の高圧水素容器。 【請求項21】 当該高圧水素容器は、輸送用車両のカウンターウェイトの一部を兼ねる請求項1~請求項20のいずれか1項に記載の高圧水素容器。」 第3 申立理由の概要 申立人は、証拠として、以下の甲第1号証~甲第9号証(以下「甲1」等という。)を提出し、以下の理由1~3を申立てている。 1 理由1(新規性違反) 本件発明1~10、19~21は、下記の甲1、甲2又は甲3に記載された発明であり、本件発明1~10、19~21に係る特許は、特許法第29条第1項3号に該当し、同条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 2 理由2(進歩性違反) 本件発明1~21は、下記の甲1、甲2又は甲3に記載された発明及び甲4~9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明1~21に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 3 理由3(明確性違反) 本件発明2の「前記金属円筒及び前記一対の蓋部材の中における前記金属円筒の内部から外部に至る際に、前記一対の蓋部材のうちどちらか一方の前記蓋部材において、外部に至る経路と、前記複数の締結部材のうち前記金属円筒に最も近い締結部材が当該蓋部材に挿通された位置に至る経路と、のうち共通する最短の距離の共通経由位置を有し、」は明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであるから、本件発明2~21に係る特許は、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。 4 証拠方法 甲1:国際公開第98/12079号 甲2:米国特許第9247655号明細書 甲3:特開2003-267482号公報 甲4:実公平6-6540号公報 甲5:実願昭62-63866号(実開昭63-170987号)のマイクロフィルム 甲6:特公昭54-6505号公報 甲7:特許第3532714号公報 甲8:実願昭63-59052号(実開平1-166859号)のマイクロフィルム 甲9:特許第5973816号公報 第4 各甲号証 1 甲1に記載された発明 甲1の第1頁第3行~同第6行及び、第2頁第14行~同第15行から、甲1には、エアバッグガス発生器のガス発生器用圧力容器について記載されていることは明らかである。 甲1の第2頁第22行~同第26行、FIG.1及びFIG.2より、ボルトGは、長手方向を管状壁Bの中心軸に平行にして配列されていること、蓋E及びFのそれぞれには、複数のボルトGを挿通する複数の貫通孔が形成されていること、複数のボルトGのそれぞれは、両端部が蓋E及びFのそれぞれに形成された前記複数の貫通孔に差し込まれていること、管状壁Bよりも外側に点在して管状壁Bの外周を囲んで配置されていること、蓋E及びFの間に前記管状壁Bを挟み込んだ状態で固定すること、蓋E及びFは管状壁Bの開放端C及びDと直接当接していることは、いずれも明らかである。 また、甲1の第2頁第22行~同第26行、FIG.1及びFIG.2より、管状壁Bの開放端C及びDと直接当接することによって管状壁Bの内部は当接部分において密封されていることは明らかである。 さらに、甲1の第2頁第22行~同第26行、FIG.1及びFIG.2より、管状壁B及び蓋E及びFの中における前記管状壁Bの内部から外部に至る際に、前記蓋E及びFのうち蓋E又はFにおいて、外部に至る経路を定義することはできる。一方で、複数のボルトGのうち前記管状壁Bに最も近いボルトGが当該蓋E又はFに挿通された位置に至る経路については、複数のボルトGのうち前記管状壁Bに最も近いボルトGが当該蓋E又はFに挿通された位置は、管状壁B及び蓋E及びFの当接部分に直結しており、そこには蓋E又はFは存在しておらず、当該蓋E又はFの厚みで与えられる当該経路について定義することはできない。 したがって、上記認定事項及び甲1に記載されている事項(第1頁第3行~同第6行、第2頁第14行~同第15行、同第22行~同第26行、FIG.1及びFIG.2)を総合すれば、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明1」及び「甲1発明2」という。)が記載されていると認められる。 <甲1発明1> 「ガス発生器用圧力容器に用いられる管状壁Bと、 前記管状壁Bの開放端C及びDを覆った蓋E及びFと、 長手方向を前記管状壁Bの中心軸に平行にして配列された複数のボルトGと、 を備え、 前記蓋E及びFのそれぞれには、前記複数のボルトGを挿通する複数の貫通孔が形成され、 前記複数のボルトGのそれぞれは、 両端部が前記蓋E及びFのそれぞれに形成された前記複数の貫通孔に差し込まれ、 前記管状壁Bよりも外側に点在して前記管状壁Bの外周を囲んで配置され、 前記蓋E及びFの間に前記管状壁Bを挟み込んだ状態で固定し、 前記蓋E及びFは、 前記管状壁Bの開放端C及びDと直接当接して前記管状壁Bの内部を密封したガス発生器用圧力容器」 <甲1発明2> 「ガス発生器用圧力容器に用いられる管状壁Bと、 前記管状壁Bの開放端C及びDを覆った蓋E及びFと、 前記蓋E及びFの間に前記管状壁Bを挟み込んだ状態で固定した複数のボルトGと、を備えた、ガス発生器用圧力容器。」 2 甲2に記載された発明 甲2の第1欄第3行~第23行及び第3欄第53行~第56行より、甲2には、ガス検知機を収容する耐圧防爆筐体について記載されていることは明らかである。 また甲2の第3欄第57行~第4欄第5行及びFIG.3より、外部タイロッド68a、68bは、長手方向を板金性の筐体62の中心軸に平行にして配列されており、第1及び第2の付加要素64a、64bのそれぞれには、複数の外部タイロッド68a、68bを挿通する複数の貫通孔が形成され、複数の外部タイロッド68a、68bのそれぞれは、両端部が第1及び第2の付加要素64a、64bのそれぞれに形成された前記複数の貫通孔に差し込まれていることは明らかである。 そして、甲2の第3欄第57行~第4欄第5行、同第10行~同20行及びFIG.3より、外部タイロッド68a、68bは板金性の筐体62よりも外側に点在して板金性の筐体62の外周を囲んで配置されており、第1及び第2の付加要素64a、64bは、板金性の筐体62の開口部62a、62bと直接当接していることは明らかである。 さらに、甲2の第3欄第57行~第4欄第5行、同第10行~同20行及びFIG.3より、板金性の筐体62及び第1及び第2の付加要素64a、64bの中における前記板金性の筐体62の内部から外部に至る際に、前記第1及び第2の付加要素64a、64bのうちどちらか一方の前記付加要素において、外部に至る経路と、複数の外部タイロッド68a、68bのうち前記板金性の筐体62に最も近い外部タイロッド68a、68bが当該付加要素に挿通された位置に至る経路と、のうち共通する最短の距離の位置としての共通経由位置を定義することができ、当該付加要素における前記共通経由位置から外部への最低厚みであるt[mm]及び、前記共通経由位置と前記複数の外部タイロッド68a、68bのうち前記板金性の筐体62に最も近い外部タイロッドが当該付加要素に挿通された位置との間の距離であるL0[mm]を定義することはできる。 したがって、上記認定事項及び甲2に記載されている事項(第1欄第3行~第23行、第3欄第47行~第4欄第20行及びFIG.3)を総合すれば、甲2には、以下の発明(以下「甲2発明1」及び「甲2発明2」という。)が記載されていると認められる。 <甲2発明1> 「ガス検知器を収容するための耐圧防爆の板金性の筐体62と、 前記板金性の筐体62の開口部62a、62bを覆った第1及び第2の付加要素64a、64bと、 長手方向を前記板金性の筐体62の中心軸に平行にして配列された複数の外部タイロッド68a、68bと、 を備え、 前記第1及び第2の付加要素64a、64bのそれぞれには、前記複数の外部タイロッド68a、68bを挿通する複数の貫通孔が形成され、 前記複数の外部タイロッド68a、68bのそれぞれは、 両端部が前記第1及び第2の付加要素64a、64bのそれぞれに形成された前記複数の貫通孔に差し込まれ、 前記板金性の筐体62よりも外側に点在して前記板金性の筐体62の外周を囲んで配置され、 前記第1及び第2の付加要素64a、64bの間に前記板金性の筐体62を挟み込まれし、 前記第1及び第2の付加要素64a、64bは、 前記板金性の筐体62の開口部62a、62bと直接当接して前記板金性の筐体62の内部領域V2を囲む耐圧防爆筐体。」 <甲2発明2> 「ガス検知器を収容するための耐圧防爆の板金性の筐体62と、 前記板金性の筐体62の開口部62a、62bを覆った第1及び第2の付加要素64a、64bと、 前記第1及び第2の付加要素64a、64bの間に前記板金性の筐体62を挟み込んだ状態で固定した複数の外部タイロッド68a、68bと、 を備え、 前記板金性の筐体62及び前記第1及び第2の付加要素64a、64bの中における前記板金性の筐体62の内部から外部に至る際に、前記第1及び第2の付加要素64a、64bのうちどちらか一方の前記付加要素において、外部に至る経路と、前記複数の外部タイロッド68a、68bのうち前記板金性の筐体62に最も近い外部タイロッド68a、68bが当該付加要素に挿通された位置に至る経路と、のうち共通する最短の距離の共通経由位置を有し、 当該付加要素における前記共通経由位置から外部への最低厚みがt[mm]とされ、 前記共通経由位置と前記複数の外部タイロッド68a、68bのうち前記板金性の筐体62に最も近い外部タイロッドが当該付加要素に挿通された位置との間がL0[mm]とされる、耐圧防爆筐体。」 3 甲3に記載された発明 甲3の【請求項5】より、長手方向をアクリル性の筒状胴部金属円筒の中心軸に平行にして配列された複数のタイロッド締結部材が記載されているといえる。 また、甲3の段落【0031】及び【図3】より、タイロッドのそれぞれは、アクリル製筒状胴部よりも外側に点在して前記金属円筒の外周を囲んで配置されているものである。 そして、甲3の段落【0029】、【0033】、【図3】及び【図4】より、天板及び底板の間にアクリル製筒状胴部を挟み込んだ状態で固定し、天板及び底板は、アクリル製筒状胴部の両端面と直接当接することは明らかな事項である。 さらに、甲3の段落【0031】、【0033】、【図3】より、アクリル製筒状胴部及び天板及び底板の中における前記アクリル製筒状胴部の内部から外部に至る際に、前記天板及び底板のうち天板又は底板において、外部に至る経路と、複数のタイロッドのうち前記アクリル製筒状胴部に最も近い締結部材が当該天板又は底板に挿通された位置に至る経路と、のうち共通する最短の距離の位置としての共通経由位置を定義することができ、当該天板又は底板における前記共通経由位置から外部への最低厚みであるt[mm]及び、前記共通経由位置と前記複数のタイロッドのうち前記アクリル製筒状胴部金属円筒に最も近いタイロッドが当該天板又は底板に挿通された位置との間の距離であるL0[mm]を定義することはできる。 したがって、上記認定事項及び甲3に記載されている事項(【請求項5】、段落【0026】~【0033】、【図3】及び【図4】)を総合すれば、甲3には、以下の発明(以下「甲3発明1」及び「甲3発明2」という。)が記載されていると認められる。 <甲3発明1> 「外部環境温度よりも高温の酸性溶液を貯液するアクリル製筒状胴部と、 前記アクリル製筒状胴部の上端開口部を塞ぐ天板と下端開口部を塞ぐ底板と、 長手方向を前記アクリル製筒状胴部の中心軸に平行にして配列された複数のタイロッドと、 を備え、 前記天板及び底板のそれぞれには、前記複数のタイロッドを挿通する複数の貫通孔が形成され、 前記複数のタイロッドのそれぞれは、 両端部が前記天板及び底板のそれぞれに形成された前記複数の貫通孔に挿通され、 前記アクリル製筒状胴部よりも外側に点在して前記金属円筒の外周を囲んで配置され、 前記天板及び底板の間に前記アクリル製筒状胴部を挟み込んだ状態で固定し、 前記天板及び底板は、 前記アクリル製筒状胴部の両端面と直接当接して前記アクリル製筒状胴部の内部を密封したアクリル製容器。」 <甲3発明2> 「外部環境温度よりも高温の酸性溶液を貯液するアクリル製筒状胴部と、 前記アクリル製筒状胴部の上端開口部を塞ぐ天板と下端開口部を塞ぐ底板と、 前記一対の天板及び底板の間に前記アクリル製筒状胴部を挟み込んだ状態で固定した複数のタイロッドと、 を備え、 前記アクリル製筒状胴部及び前記天板及び底板の中における前記アクリル製筒状胴部の内部から外部に至る際に、前記天板及び底板のうち天板又は底板において、外部に至る経路と、前記複数のタイロッドのうち前記アクリル製筒状胴部に最も近い締結部材が当該天板又は底板に挿通された位置に至る経路と、のうち共通する最短の距離の共通経由位置を有し、 当該天板又は底板における前記共通経由位置から外部への最低厚みがt[mm]とされ、 前記共通経由位置と前記複数のタイロッドのうち前記アクリル製筒状胴部に最も近いタイロッドが当該天板又は底板に挿通された位置との間がL0[mm]とされる、アクリル製容器。」 4 甲4に記載された事項 甲4の第3欄第26行~第4欄第13行、【第1図】より、円筒1及び一対の蓋3の中における円筒1の内部から外部に至る際に、前記一対の蓋3のうちどちらか一方の前記蓋3において、外部に至る経路を定義することはできる。一方で、複数のボルト4のうち前記円筒1に最も近いボルト4が当該蓋3に挿通された位置に至る経路については、複数のボルト4のうち前記円筒1に最も近いボルト4が当該蓋3に挿通された位置は、円筒1及び蓋3の当接部分に直結しており、そこには蓋3は存在しておらず、当該蓋3の厚みで与えられる当該経路について定義することはできない。 したがって、上記認定事項及び甲4に記載されている事項(第1欄第12行~第13行、第3欄第26行~第4欄第13行、【第1図】)を総合すれば、甲4には、以下の技術事項(以下「甲4記載事項)が記載されていると認められる。 「電気機器を収納する円筒容器の円筒1と、前記円筒1の両端部を覆った一対の蓋3と、 前記一対の蓋3に前記円筒1を固定した複数のボルト4と、を備えた、 電気機器を収納する円筒容器。」 5 甲5に記載された事項 甲5の明細書第7頁第1行~同第8頁第12行、第1図より、容器本体22及び前記一対の蓋25の中における前記容器本体22の内部から外部に至る際に、前記一対の蓋25のうちどちらか一方の前記蓋25において、外部に至る経路を定義することはできる。一方で、前記複数のボルト26のうち前記容器本体22に最も近いボルト26が当該蓋25に挿通された位置に至る経路については、複数のボルト26のうち前記容器本体22に最も近いボルト26が当該蓋25に挿通された位置は、容器本体22及び蓋25の当接部分に直結しており、そこには蓋25は存在しておらず、当該蓋25の厚みで与えられる当該経路について定義することはできない。 したがって、上記認定事項及び甲5に記載されている事項(明細書第2頁第3行~同第4行、同第7頁第1行~同第8頁第12行、第1図)を総合すれば、甲5には、以下の技術事項(以下「甲5記載事項)が記載されていると認められる。 「電子機器を収納する円筒容器の容器本体22と、 前記容器本体22の両端部を覆った一対の蓋25と、 前記一対の蓋25に前記容器本体22を固定した複数のボルト26と、を備えた、電子機器を収納する円筒容器。」 6 甲6に記載された事項 甲6の第1欄第30行~第2欄第21行、第3欄第33行~第4欄第10行、第1図より、次の技術事項(以下「甲6記載事項」という。)が記載されていると認められる。 「耐圧性ガラスオートクレープ用のガラス円筒3と、 前記ガラス円筒3の両端部を覆った上部フランジ1及び下部フランジ2と、 前記上部フランジ1及び下部フランジ2の間に前記ガラス円筒3を挟み込んだ状態で固定した複数のスタッドボルト4と、を備え、 前記ガラス円筒3と前記ガラス円筒3の外周を囲んだ前記複数のスタッドボルト4との間には、前記ガラス円筒3と前記複数のスタッドボルト4とを離間させた隙間が形成され、 前記上部フランジ1及び下部フランジ2のそれぞれは、 前記ガラス円筒3側にて前記ガラス円筒3の内周に嵌め合わせる外周を有する凸部を有し、 前記凸部の側周面と前記ガラス円筒3の内周面とを密封するシール部が設けられ、 前記シール部は、 前記凸部の側周面を一回りして形成された溝と、 前記溝内に配置されたパッキング5及び6と、を有する耐圧性ガラスオートクレープ。」 7 甲7に記載された事項 甲7の【請求項1】~【請求項3】、【0024】~【0040】、【図1】~【図3】より、次の技術事項(以下「甲7記載事項」という。)が記載されている。 「一方部材と他方部材との互いの嵌合面の前記一方部材の嵌合面に有する取付溝血にゴム状弾性材製のOリングと該Oリングより硬質のバックアップリングとが並列に配置されたシール装置。」 8 甲8に記載された事項 甲8の明細書第2頁第13行~第15行、同第5頁第6行~同第7頁第12行、第1図には、次の技術事項(以下「甲8記載事項」という。)が記載されている。 「ガス又は液体を充填、貯蔵するセラミック中空筒1と、 前記セラミック中空筒1の両端部を覆った一対の蓋体2と、 前記一対の蓋体2の間に前記セラミック中空筒1を挟み込んだ状態で固定した複数の締付ボルト5と、を備え、 前記一対の蓋体2のそれぞれは、 前記セラミック中空筒1側にて前記セラミック中空筒1の内周に合わせる外周を有するランド部2bを有し、 前記ランド部2b凸部の外周側に位置する凹陥部2bを更に備え、 前記凹陥部2bは、密封剤3を有する、ガス又は液体を充填、貯蔵する容器。」 9 甲9に記載された事項 甲9の【0005】~【0009】、【図1】には、、次の技術事項(以下「甲9記載事項」という。)が記載されている。 「金属Oリング11を端面5aに備えた接続管5は、高圧ガス容器1の管台部4の先端に隣接して配置され、袋ナット6が被せられ、袋ナット6には、管台都4の先端面4aと接続管5の端面5aとの隙間につながるリークポート6aが穿設されており、高圧ガス容器1には、水素が充填される点。」 第5 当審の判断 1 理由3(明確性)について 本件特許の請求項2には、「前記金属円筒及び前記一対の蓋部材の中における前記金属円筒の内部から外部に至る際に、前記一対の蓋部材のうちどちらか一方の前記蓋部材において、外部に至る経路と、前記複数の締結部材のうち前記金属円筒に最も近い締結部材が当該蓋部材に挿通された位置に至る経路と、のうち共通する最短の距離の共通経由位置を有し、」と記載されているものである。 ここで、「前記金属円筒及び前記一対の蓋部材の中における前記金属円筒の内部から外部に至る際に、前記一対の蓋部材のうちどちらか一方の前記蓋部材において、外部に至る経路」とは、蓋部材の厚みであることが明らかである、そして、「前記金属円筒及び前記一対の蓋部材の中における前記金属円筒の内部から外部に至る際に、前記一対の蓋部材のうちどちらか一方の前記蓋部材において、・・・前記複数の締結部材のうち前記金属円筒に最も近い締結部材が当該蓋部材に挿通された位置に至る経路」についても、締結部材が蓋部材に挿通された位置に至るまでの、蓋部材の厚みであることが明らかである。そうすると、「前記金属円筒及び前記一対の蓋部材の中における前記金属円筒の内部から外部に至る際に、前記一対の蓋部材のうちどちらか一方の前記蓋部材において、外部に至る経路と、前記複数の締結部材のうち前記金属円筒に最も近い締結部材が当該蓋部材に挿通された位置に至る経路と、のうち共通する最短の距離の共通経由位置」とは、蓋部材と金属円筒の取り付け部分のうち、金属円筒の端部の直径方向外側の位置が該当することが明らかである。 よって、請求項2の記載は明確である。 2 理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について (1)甲1を主引用例とする新規性及び進歩性の検討 ア 本件発明1について (ア) 対比 本件発明1と甲1発明1を、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 甲1発明1の「管状壁B」は材質が明らかでないことより、甲1発明1の「管状壁B」と本件発明1の「金属円筒」とは、「円筒」である限りにおいて一致する。同様に甲1発明1の「前記管状壁Bの開放端C及びD」と本件発明1の「前記金属円筒の両端部」とは、「前記円筒の両端部」である限りにおいて一致する。 そして、甲1発明1の「蓋E及びF」及び「ボルトG」は、本件発明1の「一対の蓋部材」及び「締結部材」に相当する。 さらに、甲1発明1の「ガス発生器用圧力容器」と、本件発明1の「高圧水素容器」とは、「圧力容器」である限りにおいて一致し、甲1発明1の「ガス発生器用圧力容器に用いられる管状壁B」と、本件発明1の「高圧水素の貯蔵用の金属円筒」とは、「圧力容器用の円筒」である限りにおいて一致する。 そうすると、本件発明1と甲1発明1とは、以下の点で一致し、かつ、<相違点1-1>及び<相違点1-2>で相違する。 <一致点> 「圧力容器用の円筒と、 前記円筒の両端部を覆った一対の蓋部材と、 長手方向を前記円筒の中心軸に平行にして配列された複数の締結部材と、 を備え、 前記一対の蓋部材のそれぞれには、前記複数の締結部材を挿通する複数の貫通孔が形成され、 前記複数の締結部材のそれぞれは、 両端部が前記一対の蓋部材のそれぞれに形成された前記複数の貫通孔に差し込まれ、 前記円筒よりも外側に点在して前記円筒の外周を囲んで配置され、 前記一対の蓋部材の間に前記円筒を挟み込んだ状態で固定し、 前記一対の蓋部材は、 前記円筒の両端面と直接当接して前記金属円筒の内部を密封した圧力容器。」 <相違点1-1> 本件発明1は、「高圧水素容器」に関するものであり、円筒が「高圧水素の貯蔵用」であるのに対し、甲1発明1は「ガス発生器用圧力容器」に関するものであり、円筒が「ガス発生器用圧力容器に用いられる」ものである点。 <相違点1-2> 円筒に関し、本件発明1は、「金属円筒」であるのに対し、甲1発明1の「管状壁B」は材質が不明である点。 (イ) 判断 <相違点1-1>について検討する。 本件発明1の「高圧水素容器」について、本件特許明細書を参酌しても高圧水素の状態の詳細については明らかではないが、少なくとも高圧の水素又は高圧の液体状の水素が充填されることは明らかであり、水素が漏洩しやすく反応性が高く貯蔵圧力が高いという技術常識に照らせば、相当の気密性又は水密性並びに耐圧性が要求されるものである。一方で、甲1発明1の「ガス発生器用圧力容器」は、甲1の第1頁第4行~第6行から明らかなとおり、エアバッグ用のガス発生器に関するものであり、耐圧性は要求されるものの気密性又は水密性については特に問題とされないことは明らかである。また、提出されている証拠において、水素に関する記載のある甲9は容器自体ではなくシールに関するものであり、その他の証拠には水素容器に関する記載はない。 そうすると、甲1発明1の「ガス発生器用圧力容器」を、要求される性能が異なる「高圧水素容器」に転用することは当業者といえども容易に想到し得るものではない。 したがって、<相違点1-2>を検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明1ではなく、また、本件発明1は甲1発明1及び甲4~10記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 本件発明2について (ア) 対比 本件発明2と甲1発明2を、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 甲1発明2の「ガス発生器用圧力容器に用いられる管状壁B」、「管状壁B」、「開放端C及びD」、「蓋E及びF」、「ボルトG」及び「ガス発生器用圧力容器」に対する本件発明2の発明特定事項との相当関係については、上記ア(ア)のとおりである。 そうすると、本件発明2と甲1発明2とは、以下の点で一致し、かつ、<相違点1-1>~<相違点1-3>で相違する。 <一致点> 「圧力容器用の円筒と、 前記円筒の両端部を覆った一対の蓋部材と、 前記一対の蓋部材の間に前記円筒を挟み込んだ状態で固定した複数の締結部材と、を備えた、圧力容器。」 <相違点1-1> 本件発明2は、「高圧水素容器」に関するものであり、円筒が「高圧水素の貯蔵用」であるのに対し、甲1発明2は「ガス発生器用圧力容器」に関するものであり、円筒が「ガス発生器用圧力容器に用いられる」ものである点。 <相違点1-2> 円筒に関し、本件発明2は、「金属円筒」であるのに対し、甲1発明2の「管状壁B」は材質が不明である点。 <相違点1-3> 本件発明2は、「前記金属円筒及び前記一対の蓋部材の中における前記金属円筒の内部から外部に至る際に、前記一対の蓋部材のうちどちらか一方の前記蓋部材において、外部に至る経路と、前記複数の締結部材のうち前記金属円筒に最も近い締結部材が当該蓋部材に挿通された位置に至る経路と、のうち共通する最短の距離の共通経由位置を有し、 当該蓋部材における前記共通経由位置から外部への最低厚みがt[mm]とされ、 前記共通経由位置と前記複数の締結部材のうち前記金属円筒に最も近い締結部材が当該蓋部材に挿通された位置との間がL0[mm]とされる」のに対し、甲1発明2はこのような構成を有しない点。 (イ) 判断 <相違点1-1>について検討する。 <相違点1-1>についての判断は上記ア(イ)のとおりである。 したがって、<相違点1-2>及び<相違点1-3>を検討するまでもなく、本件発明2は甲1発明2及び甲4~10記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件発明3~10、19~21について 本件発明3~5は、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記アで検討したものと同じ理由により、本件発明3~5は甲1発明1ではない。また、本件発明6~10、19~21は、本件発明1又は本件発明2の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記ア又は上記イで検討したものと同じ理由により、本件発明6~10、19~21は甲1発明1又は甲1発明2ではない。 エ 本件発明3~21について 本件発明3~21は、本件発明1又は本件発明2の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記ア及び上記イで検討したものと同じ理由により、本件発明3~21は甲1発明1又は甲1発明2並びに甲4~9記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)甲2を主引用例とする新規性及び進歩性の検討 ア 本件発明1について (ア) 対比 本件発明1と甲2発明1を、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 甲2発明1の「板金性の筐体62」、「開口部62a、62b」、「第1及び第2の付加要素64a、64b」及び「外部タイロッド68a、68b」は、それぞれ本件発明1の「金属円筒」、「両端部」、「一対の蓋部材」及び「締結部材」に相当する。 さらに、甲2発明1の「耐圧防爆筐体」と、本件発明1の「高圧水素容器」とは、「耐圧容器」である限りにおいて一致し、甲2発明1の「ガス検知器を収容するための耐圧防爆の板金性の筐体62」と、本件発明1の「高圧水素の貯蔵用の金属円筒」とは、「耐圧容器用の金属円筒」である限りにおいて一致する。 そうすると、本件発明1と甲2発明1とは、以下の点で一致し、かつ、<相違点2-1>で相違する。 <一致点> 「耐圧容器用の金属円筒と、 前記金属円筒の両端部を覆った一対の蓋部材と、 長手方向を前記金属円筒の中心軸に平行にして配列された複数の締結部材と、 を備え、 前記一対の蓋部材のそれぞれには、前記複数の締結部材を挿通する複数の貫通孔が形成され、 前記複数の締結部材のそれぞれは、 両端部が前記一対の蓋部材のそれぞれに形成された前記複数の貫通孔に差し込まれ、 前記金属円筒よりも外側に点在して前記金属円筒の外周を囲んで配置され、 前記一対の蓋部材の間に前記金属円筒を挟み込んだ状態で固定し、 前記一対の蓋部材は、 前記金属円筒の両端面と直接当接して前記金属円筒の内部を密封した耐圧容器。」 <相違点2-1> 本件発明1は、「高圧水素容器」に関するものであり、円筒が「高圧水素の貯蔵用」であるのに対し、甲2発明1は「耐圧防爆筐体」に関するものであり、円筒が「ガス検知器を収容するための耐圧防爆の」ものである点。 (イ) 判断 <相違点2-1>について検討する。 本件発明1の「高圧水素容器」について、本件特許明細書を参酌しても高圧水素の状態の詳細については明らかではないが、少なくとも高圧の水素又は高圧の液体状の水素が充填されることは明らかであり、水素が漏洩しやすく反応性が高く貯蔵圧力が高いという技術常識に照らせば、相当の気密性又は水密性並びに耐圧性が要求されるものである。一方で、甲2発明1の「耐圧防爆筐体」は、「ガス検知器を収容するための耐圧防爆の」ものであり、耐圧性は要求されるものの気密性又は水密性については特に問題とされないことは明らかである。また、提出されている証拠において、水素に関する記載のある甲9は容器自体ではなくシールに関するものであり、その他の証拠には水素容器に関する記載はない。 そうすると、甲2発明1の「耐圧防爆筐体」を、要求される性能が異なる「高圧水素容器」に転用することは当業者といえども容易に想到し得るものではない。 したがって、本件発明1は甲2発明1ではなく、また、本件発明1は甲2発明1及び甲4~10記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 本件発明2について (ア) 対比 本件発明2と甲2発明2を、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 甲2発明2の「ガス検知器を収容するための耐圧防爆の板金性の筐体62」、「板金性の筐体62」、「開口部62a、62b」、「第1及び第2の付加要素64a、64b」、「外部タイロッド68a、68b」及び「耐圧防爆筐体」に対する本件発明2の発明特定事項との相当関係については、上記ア(ア)のとおりである。 加えて、甲2発明2の「前記第1及び第2の付加要素64a、64bのうちどちらか一方の前記付加要素」は、本件発明2の「前記一対の蓋部材のうちどちらか一方の前記蓋部材」に相当し、甲2発明2の「当該付加要素」は、本件発明2の「当該蓋部材」に相当する。 そうすると、本件発明2と甲2発明2とは、以下の点で一致し、かつ、<相違点2-1>及び<相違点2-2>で相違する。 <一致点> 「耐圧容器用の金属円筒と、 前記金属円筒の両端部を覆った一対の蓋部材と、 前記一対の蓋部材の間に前記金属円筒を挟み込んだ状態で固定した複数の締結部材と、 を備え、 前記金属円筒及び前記一対の蓋部材の中における前記金属円筒の内部から外部に至る際に、前記一対の蓋部材のうちどちらか一方の前記蓋部材において、外部に至る経路と、前記複数の締結部材のうち前記金属円筒に最も近い締結部材が当該蓋部材に挿通された位置に至る経路と、のうち共通する最短の距離の共通経由位置を有し、 当該蓋部材における前記共通経由位置から外部への最低厚みがt[mm]とされ、 前記共通経由位置と前記複数の締結部材のうち前記金属円筒に最も近い締結部材が当該蓋部材に挿通された位置との間がL0[mm]とされる、耐圧容器。」 <相違点2-1> 本件発明2は、「高圧水素容器」に関するものであり、円筒が「高圧水素の貯蔵用」であるのに対し、甲2発明2は「ガス発生器用圧力容器」に関するものであり、円筒が「ガス発生器用圧力容器に用いられる」ものである点。 <相違点2-2> 蓋部材における共通経由位置から外部への最低厚みがt[mm]と、前記共通経由位置と複数の締結部材のうち円筒に最も近い締結部材が当該蓋部材に挿通された位置との間の距離であるL0[mm]との関係について、本件発明2では「L0>tが満たされている」のに対して、甲2発明2では、当該関係は有していない点。 (イ) 判断 <相違点2-1>について検討する。 <相違点2-1>についての判断は上記ア(イ)のとおりである。 したがって、<相違点2-2>を検討するまでもなく、本件発明2は甲2発明2及び甲4~10記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件発明3~10、19~21について 本件発明3~5は、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記アで検討したものと同じ理由により、本件発明3~5は甲2発明1ではない。また、本件発明6~10、19~21は、本件発明1又は本件発明2の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記ア又は上記イで検討したものと同じ理由により、本件発明6~10、19~21は甲2発明1又は甲2発明2ではない。 エ 本件発明3~21について 本件発明3~21は、本件発明1又は本件発明2の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記ア及び上記イで検討したものと同じ理由により、本件発明3~21は甲2発明1又は甲2発明2並びに甲4~9記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)甲3を主引用例とする新規性及び進歩性の検討 ア 本件発明1について (ア) 対比 本件発明1と甲3発明1を、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 甲3発明1の「アクリル製筒状胴部」と本件発明1の「金属円筒」とは、「円筒」である限りにおいて一致する。 そして、甲3発明1の「天板及び底板」及び「タイロッド」は、本件発明1の「一対の蓋部材」及び「締結部材」に相当し、甲3発明1の「上端開口部を塞ぐ天板と下端開口部を塞ぐ底板」は、本件発明1の「両端部を覆った一対の蓋部材」に相当する。 また、甲3発明1の「複数の貫通孔に挿通され」は、本件発明1の「複数の貫通孔に差し込まれ」に相当する。 さらに、甲3発明1の「アクリル製容器」と、本件発明1の「高圧水素容器」とは、「容器」である限りにおいて一致し、甲3発明1の「外部環境温度よりも高温の酸性溶液を貯液するアクリル製筒状胴部」と、本件発明1の「高圧水素の貯蔵用の金属円筒」とは、「貯蔵用の円筒」である限りにおいて一致する。 そうすると、本件発明1と甲3発明1とは、以下の点で一致し、かつ、<相違点3-1>及び<相違点3-2>で相違する。 <一致点> 「貯蔵用の円筒と、 前記円筒の両端部を覆った一対の蓋部材と、 長手方向を前記円筒の中心軸に平行にして配列された複数の締結部材と、 を備え、 前記一対の蓋部材のそれぞれには、前記複数の締結部材を挿通する複数の貫通孔が形成され、 前記複数の締結部材のそれぞれは、 両端部が前記一対の蓋部材のそれぞれに形成された前記複数の貫通孔に差し込まれ、 前記円筒よりも外側に点在して前記金属円筒の外周を囲んで配置され、 前記一対の蓋部材の間に前記円筒を挟み込んだ状態で固定し、 前記一対の蓋部材は、 前記円筒の両端面と直接当接して前記円筒の内部を密封した容器。」 <相違点3-1> 本件発明1は、「高圧水素容器」に関するものであり、円筒が「高圧水素の貯蔵用」であるのに対し、甲3発明1は「アクリル製容器」に関するものであり、円筒が「外部環境温度よりも高温の酸性溶液を貯液する」ものである点。 <相違点3-2> 円筒に関し、本件発明1は、「金属円筒」であるのに対し、甲3発明1は「アクリル製筒状胴部」である点。 (イ) 判断 <相違点3-1>について検討する。 本件発明1の「高圧水素容器」について、本件特許明細書を参酌しても高圧水素の状態の詳細については明らかではないが、少なくとも高圧の水素又は高圧の液体状の水素が充填されることは明らかであり、水素が漏洩しやすく反応性が高く貯蔵圧力が高いという技術常識に照らせば、相当の気密性又は水密性並びに耐圧性が要求されるものである。一方で、甲3発明1の「アクリル製容器」は、「外部環境温度よりも高温の酸性溶液を貯液する」ものであり、気密性又は水密性については要求されるものの耐圧性については特に問題とされないことは明らかである。また、提出されている証拠において、水素に関する記載のある甲9は容器自体ではなくシールに関するものであり、その他の証拠には水素容器に関する記載はない。 そうすると、甲3発明1の「アクリル製容器」を、要求される性能が異なる「高圧水素容器」に転用することは当業者といえども容易に想到し得るものではない。 したがって、<相違点3-2>を検討するまでもなく、本件発明1は甲3発明1ではなく、また、本件発明1は甲3発明1及び甲4~10記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 本件発明2について (ア) 対比 本件発明2と甲3発明2を、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 甲3発明2の「外部環境温度よりも高温の酸性溶液を貯液するアクリル製筒状胴部」、「アクリル製筒状胴部」、「上端開口部を塞ぐ天板と下端開口部を塞ぐ底板」、「天板及び底板」、「タイロッド」及び「アクリル製容器」に対する本件発明2の発明特定事項との相当関係については、上記ア(ア)のとおりである。 加えて、甲3発明2の「前記天板及び底板のうち天板又は底板」は、本件発明2の「前記一対の蓋部材のうちどちらか一方の前記蓋部材」に相当し、甲3発明2の「当該天板又は底板」は、本件発明2の「当該蓋部材」に相当する。 そうすると、本件発明2と甲3発明2とは、以下の点で一致し、かつ、<相違点3-1>~<相違点3-3>で相違する。 <一致点> 「貯蔵用の円筒と、 前記円筒の両端部を覆った一対の蓋部材と、 前記一対の一対の蓋部材の間に前記円筒を挟み込んだ状態で固定した複数の締結部材と、 を備え、 前記円筒及び前記一対の蓋部材の中における前記円筒の内部から外部に至る際に、前記一対の蓋部材のうちどちらか一方の前記蓋部材において、外部に至る経路と、前記複数の締結部材のうち前記金属円筒に最も近い締結部材が当該蓋部材に挿通された位置に至る経路と、のうち共通する最短の距離の共通経由位置を有し、 当該蓋部材における前記共通経由位置から外部への最低厚みがt[mm]とされ、 前記共通経由位置と前記複数の締結部材のうち前記円筒に最も近い締結部材が当該蓋部材に挿通された位置との間がL0[mm]とされる、容器。」 <相違点3-1> 本件発明1は、「高圧水素容器」に関するものであり、円筒が「高圧水素の貯蔵用」であるのに対し、甲3発明2は「アクリル製容器」に関するものであり、円筒が「外部環境温度よりも高温の酸性溶液を貯液する」ものである点。 <相違点3-2> 円筒に関し、本件発明1は、「金属円筒」であるのに対し、甲3発明2は「アクリル製筒状胴部」である点。 <相違点3-3> 蓋部材における共通経由位置から外部への最低厚みがt[mm]と、前記共通経由位置と複数の締結部材のうち円筒に最も近い締結部材が当該蓋部材に挿通された位置との間の距離であるL0[mm]との関係について、本件発明2では「L0>tが満たされている」のに対して、甲3発明2では、当該関係は有していない点。 (イ) 判断 <相違点3-1>について検討する。 <相違点3-1>についての判断は上記ア(イ)のとおりである。 したがって、<相違点3-2>及び<相違点3-3>を検討するまでもなく、本件発明2は甲3発明2及び甲4~10記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件発明3~10、19~21について 本件発明3~5は、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記アで検討したものと同じ理由により、本件発明3~5は甲3発明1ではない。また、本件発明6~10、19~21は、本件発明1又は本件発明2の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記ア又は上記イで検討したものと同じ理由により、本件発明6~10、19~21は甲3発明1又は甲3発明2ではない。 エ 本件発明3~21について 本件発明3~21は、本件発明1又は本件発明2の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記ア及び上記イで検討したものと同じ理由により、本件発明3~21は甲3発明1又は甲3発明2並びに甲4~9記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~21に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~21に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700830

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