特許異議申立
2023-700792
作業システムおよび制御方法
- 審判番号
- 2023-700792
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-194678
- 登録番号
- 7216472
- 請求日
- 2023年08月01日
- 審決日
- 2023年11月16日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社小松製作所
- 【権利者代理人】弁理士法人志賀国際特許事務所
- 【異議申立人】江藤 保子
- 審判長/審判官
- 審判長 住田 秀弘
- 審判官 太田 恒明
- 審判官 蔵野 いづみ
- 分類
- P1651.121-Y (E02F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7216472号発明「作業システムおよび制御方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7216472号の請求項1~9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7216472号(以下「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、平成29年10月4日に出願された特願2017-194678号であって、令和5年1月24日にその特許権の設定登録がされ、同年2月1日に特許掲載公報が発行された。
その特許について、同年8月1日に特許異議申立人江藤 保子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1~9に係る発明(以下、各々を「本件特許発明1」等という。)は、特許請求の範囲の請求項1~9に記載された、次の事項により特定されるとおりのものである。なお、本件特許発明1等における符号1A等は分説のため当審で付与した。分説された本件特許発明1等の発明特定事項を、符号に基づき以下「発明特定事項1A」等という。
「 【請求項1】
1A 旋回体と、前記旋回体に取り付けられバケットを含む作業機とを備える積込機械を制御する作業システムであって、
1B 運搬車両の位置情報および方位情報を取得する被積込機械情報取得部と、
1C 前記位置情報および前記方位情報に基づいて、積込対象を前記運搬車両に積み込むための排土位置を特定する排土位置特定部と、
1D オペレータからの前記旋回体および前記作業機の操作信号、および前記バケットを前記排土位置まで移動させる排土指示信号の入力を受け付ける操作信号入力部と、
1E 前記排土指示信号が入力されたときの前記バケットの位置を特定するバケット位置特定部と、
1F 前記バケットを、前記特定した位置から前記排土位置まで移動させるための操作信号を生成する操作信号生成部と、
1G 前記操作信号入力部からの操作信号を出力する操作信号出力部であって、前記排土指示信号が入力された場合に、前記操作信号生成部が生成した前記操作信号を出力する操作信号出力部
1H を備える作業システム。
【請求項2】
取得された前記位置情報および前記方位情報に基づいて、前記バケットと前記運搬車両とが干渉しない干渉回避位置を特定する回避位置特定部を備える
請求項1に記載の作業システム。
【請求項3】
前記干渉回避位置は、旋回中心から所定の距離だけ離れた位置であって、前記バケットの下方に前記運搬車両が存在しない位置である
請求項2に記載の作業システム。
【請求項4】
前記操作信号生成部は、前記バケットの高さが前記バケット位置特定部で特定されたバケット位置から前記干渉回避位置の高さに至るまで、前記旋回体および前記作業機を駆動させる前記操作信号を生成する
請求項2または請求項3に記載の作業システム。
【請求項5】
前記被積込機械情報取得部は、前記運搬車両が検出した前記位置情報および前記方位情報を取得する
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の作業システム。
【請求項6】
前記積込機械は、検出方向に存在する対象物を検出する検出装置を備え、
前記被積込機械情報取得部は、前記検出装置の検出結果に基づいて前記位置情報および前記方位情報を取得する
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の作業システム。
【請求項7】
前記作業機はブームとアームとを含み、
前記操作信号生成部は、前記ブームおよび前記アームが駆動しても前記バケットの角度が変化しないようにバケット操作信号を生成する
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の作業システム。
【請求項8】
前記操作信号入力部は、前記積込機械から遠隔に設けられた操作装置から、前記旋回体および前記作業機の操作信号、および前記排土指示信号の入力を受け付ける
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の作業システム。
【請求項9】
9A 旋回体と、前記旋回体に取り付けられバケットを含む作業機とを備える積込機械の制御方法であって、
9D1 オペレータから入力される前記旋回体および前記作業機の操作信号を出力するステップと、
9B 運搬車両の位置情報および方位情報を取得するステップと、
9C 前記位置情報および前記方位情報に基づいて、積込対象を前記運搬車両に積み込むための排土位置を特定するステップと、
9D2 前記オペレータからの前記バケットを前記排土位置まで移動させる排土指示信号の入力を受け付けるステップと、
9E 前記排土指示信号が入力されたときの前記バケットの位置を特定するステップと、
9FG 前記排土指示信号が入力された場合に、前記特定した位置から前記排土位置まで移動させるための操作信号を生成し、出力するステップと、
9H を備える制御方法。」
第3 特許異議申立理由の概要
申立人による異議申立理由の概要は、次のとおりである。
本件特許発明1~9は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された発明、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
第4 証拠
1 証拠一覧
申立人により、特許異議申立書とともに提出された証拠は、次のとおりである。
甲第1号証:特開2016-89559号公報
甲第2号証:国際公開2012/133410号
甲第3号証:特開平10-88625号公報
甲第4号証:特開昭61-204423号公報
甲第5号証:本件特許の出願についての拒絶査定不服審判2022-4923号の審判請求書(本件特許の出願経緯における特許権者の効果に関する主張を示すもの。)
2 各証拠について
(1)甲1
申立人が甲第1号証として提出した特開2016-89559号公報(以下「甲1」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 記載事項
「【0011】
[第1実施形態]
本発明に係る建設機械の第1実施形態は、例えば、図1に示す油圧ショベル1から構成されている。この油圧ショベル1は、車体の下部に配置され、左右に無端状に巻き掛けられた履帯2Aが回動することで走行する走行体2と、この走行体2上に旋回フレーム5を介して旋回可能に設けられた旋回体3と、これらの走行体2と旋回体3との間に介在され、旋回体3を旋回させる旋回装置3Aと、旋回体3の前方に取り付けられ、上下方向に回動して掘削等の作業を行う作業装置としてのフロント作業機4とを備えている。」
「【0013】
図1において、フロント作業機4は、基端が旋回フレーム5に回動可能に取り付けられ、上下方向に回動するブーム4Aと、このブーム4Aの先端に回動可能に取り付けられたアーム4Bと、このアーム4Bの先端に回動可能に取り付けられたバケット4Cとを有している。また、フロント作業機4は、旋回体3とブーム4Aとを接続し、伸縮することによってブーム4Aを回動させるブームシリンダ4aと、ブーム4Aとアーム4Bとを接続し、伸縮することによってアーム4Bを回動させるアームシリンダ4bと、アーム4Bとバケット4Cとを接続し、伸縮することによってバケット4Cを回動させるバケットシリンダ4cとを有している。」
「【0015】
図1において、旋回体3は、車体の前部に配置され、オペレータが搭乗する運転室(キャビン)7と、車体の後部に配置され、車体の重量のバランスを保つカウンタウェイト8と、これらの運転室7とカウンタウェイト8との間に配置され、後述のエンジン11(図2参照)が内部に搭載されるエンジンルーム9とを備えている。
……
【0017】
さらに、旋回体3は、エンジン11の駆動力で動作し、油圧を発生する油圧源となる油圧ポンプ15と、この油圧ポンプ15の容量を調整するポンプ容量調節装置16と、旋回体3の内部及び外部の機器との間で種々の信号の送受信を行い、車体の動作を制御する制御装置17と、車体の周囲の環境を認識し、その認識結果を制御装置17へ送信する環境認識装置18とを備えている。
【0018】
旋回体3の外部の機器として、例えば、車体の動作を遠隔的に指示する遠隔操作装置19が油圧ショベル1から離れた場所に設置されており、遠隔操作装置19及び制御装置17には、無線機(図示せず)が内部にそれぞれ搭載されている。従って、これらの無線機によって遠隔操作装置19と油圧ショベル1との間で信号の送受信が行われるようになっている。」
「【0019】
運転室7は、オペレータが着座する運転席7A(図3参照)と、各油圧アクチュエータ3a,4a~4cの動作を含む車体の動作を指示する操作装置としての4本の操作レバー7a1~7a4と、油圧ショベル1の動作に関する各種の情報を表示する表示装置7bと、操作レバー7a1~7a4の操作状態、すなわち操作レバー7a1~7a4の操作位置に応じた信号を出力する操作レバー状態検出部7cとを含んでおり、これらの操作レバー7a1~7a4、表示装置7b、及び操作レバー状態検出部7cは制御装置17に接続されている。なお、運転室7には、操作レバー7a1~7a4、表示装置7b、及び操作レバー状態検出部7cの他に、例えば、エンジン11を停止させるエンジン停止ボタン(図示せず)、及び制御装置17の電源をON状態又はOFF状態に切替える電源スイッチ(図示せず)が設けられている。
……
【0021】
図3に示すように、操作レバー7a1~7a4は、例えば、運転席7Aに着座したオペレータが把持して車体の動作を手動で操作するものであり、これらの各操作レバー7a1~7a4の操作信号は制御装置17へ送信される。」
「【0025】
一方、図2において、遠隔操作装置19は、運転室7の操作レバー7a1~7a4と同様の操作レバー19a1~19a4と、油圧ショベル1の動作に関する各種の情報を表示すると共に、環境認識装置18の認識結果を表示して油圧ショベル1の周囲の環境の様子を提示する表示装置19bと、操作レバー19a1~19a4の操作状態、すなわち操作レバー19a1~19a4の操作位置に応じた信号を出力する操作レバー状態検出部19cとを含んでおり、これらの操作レバー19a1~19a4、表示装置19b、及び操作レバー状態検出部19cは制御装置17に無線通信を介して接続されている。なお、遠隔操作装置19には、操作レバー19a1~19a4、表示装置19b、及び操作レバー状態検出部19cの他に、例えば、非常時にエンジン11を停止させる非常停止ボタン(図示せず)、及びエンジン11の回転数を操作するエンジン操作部(図示せず)が設けられている。また、表示装置19bの基本構成は、上述の運転室7の表示装置7bの構成と同じである。」
「【0029】
制御装置17は、運転室7、ガバナ12、回転数センサ13、油圧制御弁14、油圧ポンプ15、ポンプ容量調節装置16、環境認識装置18、遠隔操作装置19、各角度センサ3a1,4a1~4c1、及び各圧力センサ3a2,3a3,4a2,4a3,4b2,4b3,4c2,4c3に接続されている。そして、制御装置17は、ガバナ12を調整してエンジン11の回転数を制御したり、運転室7内の操作レバー7a1~7a4又は遠隔操作装置19内の操作レバー19a1~19a4の操作信号を受信することにより、各操作レバー7a1~7a4又は操作レバー19a1~19a4の操作信号に対する指令信号を油圧制御弁14の電磁比例弁へ送信する。」
「【0031】
環境認識装置18は、油圧ショベル1が掘削する掘削物としての土砂の形状の認識、油圧ショベル1の周囲にある障害物の認識、後述のダンプトラック101(図4参照)の位置の認識、ダンプトラック101の荷台102(図4参照)への放土位置の認識、及び荷台102の積載状態の認識等を行う。また、環境認識装置18は、例えば、車体に設けられ、車体の周囲を撮影する複数のカメラから構成され、これらのカメラで撮影された映像は遠隔操作装置19の表示装置19bに表示される。なお、環境認識装置18は、カメラの代わりに、例えば、レーダ、GPS等から構成されていてもよいし、これらのものと同様の効果が得られるものであれば、他のものであってもよい。また、環境認識装置18は、上述した認識の全てを行わなくてもよく、上述した認識の一部を行うものであってもよい。」
「【0032】
ここで、油圧ショベル1によって行われる掘削積込作業について、図4を参照して詳細に説明する。図4は油圧ショベル1が掘削した掘削物をダンプトラック101の荷台102に積載する様子を示す図である。
【0033】
図4に示すように、掘削積込作業のサイクルとして、油圧ショベル1のバケット4Cで土砂を掘削する掘削動作A、バケット4Cが掘削した土砂を保持した状態で、旋回体3が掘削位置からダンプトラック101の荷台102側へ旋回する運搬動作B、土砂をバケット4Cからダンプトラック101の荷台102へ落とす放土動作C、ダンプトラック101の荷台102側から旋回して掘削位置へ戻るリーチング動作Dがある。
【0034】
ダンプトラック101は、荷台102の積載量が所定量に到達すると、積載した土砂を集積場所(図示せず)へ輸送する。そして、荷台102に何も積載されていない(空の)別のダンプトラック101が油圧ショベル1の付近に到着し、油圧ショベル1による上述の掘削積込作業が再度行われる。このように、掘削積込作業の一連の動作A~Dが繰り返して行われるので、掘削積込作業には生産性の向上が求められ、土砂をダンプトラック101の荷台102に効率良く積込む必要があり、オペレータの経験とスキルが要求される。
【0035】
特に、掘削積込作業の一連の動作A~Dのうち運搬動作B及びリーチング動作Dは、ダンプトラック101の荷台102や油圧ショベル1の周囲の障害物に接触させないように、オペレータが気を使う作業であるため、オペレータが慎重に操作レバー7a1~7a4を操作すると、作業に時間を費やして生産性が低下する可能性がある。また、ダンプトラック101の荷台102に油圧ショベル1の旋回体3やフロント作業機4を接触させると、油圧ショベル1及びダンプトラック101が破損する可能性がある。
【0036】
一方、オペレータが油圧ショベル1から離れた場所で遠隔操作装置19の操作レバー19a1~19a4を操作して掘削積込作業を行う際に、表示装置19bによって油圧ショベル1の周囲の環境の状況が提示されても、オペレータの操作に必要な情報が不足していたり、あるいは映像や信号の伝送遅れが発生した場合には、作業の効率が低下する可能性がある。」
「【0037】
そこで、本発明の第1実施形態では、制御装置17は、図2に示すように、掘削積込作業の一連の動作A~Dうち運搬動作B及びリーチング動作Dを自動で操作する自動運転を行う自動運転制御部17Aと、運転室7の操作レバー7a1~7a4又は遠隔操作装置19の操作レバー19a1~19a4によって手動運転から自動運転(自動運転モード)へ移行するための所定の操作が行われたかどうかを判定する運転移行判定部としてのレバー操作判定部17Bと、手動運転による掘削動作Aが終了したかどうかを判定する掘削終了判定部17Cと、フロント作業機4によって掘削された土砂を放土可能な状況にあるかどうかを判定する後述の放土判定部とを含んでいる。そして、制御装置17は、レバー操作判定部17Bによって上述の所定の操作が行われたと判定されたことを条件として車体の自動運転を実行するための制御を開始するようにしている。
……
【0040】
自動運転制御部17Aは、環境認識装置18の認識結果に基づいて、目標とする掘削位置や放土位置、及びブーム4A、アーム4B、バケット4Cの目標軌道を演算する。そして、自動運転制御部17Aは、各油圧アクチュエータ3a,4a~4cの角度センサ3a1,4a1~4c1及び圧力センサ3a2,3a3,4a2,4a3,4b2,4b3,4c2,4c3の検出信号をフィードバックし、油圧ショベル1の旋回体3及びフロント作業機4が演算した掘削位置や放土位置、及びブーム4A、アーム4B、バケット4Cの目標軌道で動作するように、油圧制御弁14を介して各油圧アクチュエータ3a,4a~4cを制御する。」
「【図2】
[図:0001404835000001.jpg]
」
「【図4】
[図:0001404835000002.jpg]
」
イ 認定事項1
上記アにおける【0018】の記載及び【図2】から、甲1には、
油圧ショベル1と遠隔操作装置19を含むシステム(以下「認定事項1」という。)
が記載されているといえる。
ウ 認定事項2
上記アにおける【0018】、【0040】の記載及び【図2】から、甲1には、
油圧ショベル1の制御方法(以下「認定事項2」という。)
が記載されているといえる。
エ 甲1発明1
以上のことから、甲1には、次の発明(以下「甲1発明1」という。)が記載されていると認められる。なお、発明特定事項1A等に概ね対応させて符号1a等を付与し、引用箇所の段落番号等を併記した。以下同様。
「1aア
油圧ショベル1と遠隔操作装置19を含むシステムであって(認定事項1)、
1aイ
油圧ショベル1は、車体の下部に配置され、左右に無端状に巻き掛けられた履帯2Aが回動することで走行する走行体2と、この走行体2上に旋回フレーム5を介して旋回可能に設けられた旋回体3と、これらの走行体2と旋回体3との間に介在され、旋回体3を旋回させる旋回装置3Aと、旋回体3の前方に取り付けられ、上下方向に回動して掘削等の作業を行う作業装置としてのフロント作業機4とを備えており(【0011】)、
1aウ
フロント作業機4は、基端が旋回フレーム5に回動可能に取り付けられ、上下方向に回動するブーム4Aと、このブーム4Aの先端に回動可能に取り付けられたアーム4Bと、このアーム4Bの先端に回動可能に取り付けられたバケット4Cとを有しており(【0013】)、
1bア,cア,dア
旋回体3は、車体の前部に配置され、オペレータが搭乗する運転室7を備えており(【0015】)、
さらに、旋回体3は、旋回体3の内部及び外部の機器との間で種々の信号の送受信を行い、車体の動作を制御する制御装置17と、車体の周囲の環境を認識し、その認識結果を制御装置17へ送信する環境認識装置18とを備えており(【0017】)、
旋回体3の外部の機器として、車体の動作を遠隔的に指示する遠隔操作装置19が油圧ショベル1から離れた場所に設置されており、遠隔操作装置19及び制御装置17には、無線機が内部にそれぞれ搭載されており(【0018】)、
1dイ
運転室7は、オペレータが着座する運転席7Aと、各油圧アクチュエータ3a,4a~4cの動作を含む車体の動作を指示する操作装置としての4本の操作レバー7a1~7a4と、油圧ショベル1の動作に関する各種の情報を表示する表示装置7bと、操作レバー7a1~7a4の操作状態、すなわち操作レバー7a1~7a4の操作位置に応じた信号を出力する操作レバー状態検出部7cとを含んでおり、これらの操作レバー7a1~7a4、表示装置7b、及び操作レバー状態検出部7cは制御装置17に接続されており(【0019】)、
操作レバー7a1~7a4は、例えば、運転席7Aに着座したオペレータが把持して車体の動作を手動で操作するものであり、これらの各操作レバー7a1~7a4の操作信号は制御装置17へ送信され(【0021】)、
1dウ
一方、遠隔操作装置19は、運転室7の操作レバー7a1~7a4と同様の操作レバー19a1~19a4と、油圧ショベル1の動作に関する各種の情報を表示すると共に、環境認識装置18の認識結果を表示して油圧ショベル1の周囲の環境の様子を提示する表示装置19bと、操作レバー19a1~19a4の操作状態、すなわち操作レバー19a1~19a4の操作位置に応じた信号を出力する操作レバー状態検出部19cとを含んでおり、これらの操作レバー19a1~19a4、表示装置19b、及び操作レバー状態検出部19cは制御装置17に無線通信を介して接続されており(【0025】)、
1dエ,gア
制御装置17は、運転室7内の操作レバー7a1~7a4又は遠隔操作装置19内の操作レバー19a1~19a4の操作信号を受信することにより、各操作レバー7a1~7a4又は操作レバー19a1~19a4の操作信号に対する指令信号を油圧制御弁14の電磁比例弁へ送信し(【0029】)、
1bイ,cイ
環境認識装置18は、ダンプトラック101の位置の認識、ダンプトラック101の荷台102への放土位置の認識を行い(【0031】)、
1e,f,gイ
掘削積込作業のサイクルとして、油圧ショベル1のバケット4Cで土砂を掘削する掘削動作A、バケット4Cが掘削した土砂を保持した状態で、旋回体3が掘削位置からダンプトラック101の荷台102側へ旋回する運搬動作B、土砂をバケット4Cからダンプトラック101の荷台102へ落とす放土動作C、ダンプトラック101の荷台102側から旋回して掘削位置へ戻るリーチング動作Dがあり(【0033】)、
制御装置17は、掘削積込作業の一連の動作A~Dうち運搬動作B及びリーチング動作Dを自動で操作する自動運転を行う自動運転制御部17Aと、運転室7の操作レバー7a1~7a4又は遠隔操作装置19の操作レバー19a1~19a4によって手動運転から自動運転(自動運転モード)へ移行するための所定の操作が行われたかどうかを判定する運転移行判定部としてのレバー操作判定部17Bと、手動運転による掘削動作Aが終了したかどうかを判定する掘削終了判定部17Cとを含んでおり、そして、制御装置17は、レバー操作判定部17Bによって上述の所定の操作が行われたと判定されたことを条件として車体の自動運転を実行するための制御を開始するようにしており(【0037】)、
自動運転制御部17Aは、環境認識装置18の認識結果に基づいて、目標とする掘削位置や放土位置、及びブーム4A、アーム4B、バケット4Cの目標軌道を演算し、そして、自動運転制御部17Aは、油圧ショベル1の旋回体3及びフロント作業機4が演算した掘削位置や放土位置、及びブーム4A、アーム4B、バケット4Cの目標軌道で動作するように、油圧制御弁14を介して各油圧アクチュエータ3a,4a~4cを制御する(【0040】)、
1h
システム(認定事項1)。」
オ 甲1発明9
また、甲1には、次の発明(以下「甲1発明9」という。)も記載されていると認められる。
「9aア
油圧ショベル1の制御方法であって(認定事項2)、
9aイ
油圧ショベル1は、車体の下部に配置され、左右に無端状に巻き掛けられた履帯2Aが回動することで走行する走行体2と、この走行体2上に旋回フレーム5を介して旋回可能に設けられた旋回体3と、これらの走行体2と旋回体3との間に介在され、旋回体3を旋回させる旋回装置3Aと、旋回体3の前方に取り付けられ、上下方向に回動して掘削等の作業を行う作業装置としてのフロント作業機4とを備えており(【0011】)、
9aウ
フロント作業機4は、基端が旋回フレーム5に回動可能に取り付けられ、上下方向に回動するブーム4Aと、このブーム4Aの先端に回動可能に取り付けられたアーム4Bと、このアーム4Bの先端に回動可能に取り付けられたバケット4Cとを有しており(【0013】)、
9bア,cア,dア
旋回体3は、車体の前部に配置され、オペレータが搭乗する運転室7を備えており(【0015】)、
さらに、旋回体3は、旋回体3の内部及び外部の機器との間で種々の信号の送受信を行い、車体の動作を制御する制御装置17と、車体の周囲の環境を認識し、その認識結果を制御装置17へ送信する環境認識装置18とを備えており(【0017】)、
旋回体3の外部の機器として、車体の動作を遠隔的に指示する遠隔操作装置19が油圧ショベル1から離れた場所に設置されており、遠隔操作装置19及び制御装置17には、無線機が内部にそれぞれ搭載されており(【0018】)、
9dイ
運転室7は、オペレータが着座する運転席7Aと、各油圧アクチュエータ3a,4a~4cの動作を含む車体の動作を指示する操作装置としての4本の操作レバー7a1~7a4と、油圧ショベル1の動作に関する各種の情報を表示する表示装置7bと、操作レバー7a1~7a4の操作状態、すなわち操作レバー7a1~7a4の操作位置に応じた信号を出力する操作レバー状態検出部7cとを含んでおり、これらの操作レバー7a1~7a4、表示装置7b、及び操作レバー状態検出部7cは制御装置17に接続されており(【0019】)、
操作レバー7a1~7a4は、例えば、運転席7Aに着座したオペレータが把持して車体の動作を手動で操作するものであり、これらの各操作レバー7a1~7a4の操作信号は制御装置17へ送信され(【0021】)、
9dウ
一方、遠隔操作装置19は、運転室7の操作レバー7a1~7a4と同様の操作レバー19a1~19a4と、油圧ショベル1の動作に関する各種の情報を表示すると共に、環境認識装置18の認識結果を表示して油圧ショベル1の周囲の環境の様子を提示する表示装置19bと、操作レバー19a1~19a4の操作状態、すなわち操作レバー19a1~19a4の操作位置に応じた信号を出力する操作レバー状態検出部19cとを含んでおり、これらの操作レバー19a1~19a4、表示装置19b、及び操作レバー状態検出部19cは制御装置17に無線通信を介して接続されており(【0025】)、
9dエ,gア
制御装置17は、運転室7内の操作レバー7a1~7a4又は遠隔操作装置19内の操作レバー19a1~19a4の操作信号を受信することにより、各操作レバー7a1~7a4又は操作レバー19a1~19a4の操作信号に対する指令信号を油圧制御弁14の電磁比例弁へ送信し(【0029】)、
9bイ,cイ
環境認識装置18は、ダンプトラック101の位置の認識、ダンプトラック101の荷台102への放土位置の認識を行い(【0031】)、
9e,f,gイ
掘削積込作業のサイクルとして、油圧ショベル1のバケット4Cで土砂を掘削する掘削動作A、バケット4Cが掘削した土砂を保持した状態で、旋回体3が掘削位置からダンプトラック101の荷台102側へ旋回する運搬動作B、土砂をバケット4Cからダンプトラック101の荷台102へ落とす放土動作C、ダンプトラック101の荷台102側から旋回して掘削位置へ戻るリーチング動作Dがあり(【0033】)、
制御装置17は、掘削積込作業の一連の動作A~Dうち運搬動作B及びリーチング動作Dを自動で操作する自動運転を行う自動運転制御部17Aと、運転室7の操作レバー7a1~7a4又は遠隔操作装置19の操作レバー19a1~19a4によって手動運転から自動運転(自動運転モード)へ移行するための所定の操作が行われたかどうかを判定する運転移行判定部としてのレバー操作判定部17Bと、手動運転による掘削動作Aが終了したかどうかを判定する掘削終了判定部17Cとを含んでおり、そして、制御装置17は、レバー操作判定部17Bによって上述の所定の操作が行われたと判定されたことを条件として車体の自動運転を実行するための制御を開始するようにしており(【0037】)、
自動運転制御部17Aは、環境認識装置18の認識結果に基づいて、目標とする掘削位置や放土位置、及びブーム4A、アーム4B、バケット4Cの目標軌道を演算し、そして、自動運転制御部17Aは、油圧ショベル1の旋回体3及びフロント作業機4が演算した掘削位置や放土位置、及びブーム4A、アーム4B、バケット4Cの目標軌道で動作するように、油圧制御弁14を介して各油圧アクチュエータ3a,4a~4cを制御する(【0040】)、
9h
制御方法(認定事項2)。」
(2)甲2
申立人が甲第2号証として提出した国際公開2012/133410号(以下「甲2」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 記載事項
「[0001]
本発明は、例えば鉱山で鉱石を採掘する掘削機械等を積込機械とし、この積込機械からの鉱石を運搬するダンプトラック等を運搬機械として、運搬機械を円滑かつ迅速に積込機械による積込作業に最適な位置及び方向となるように相対位置決めするための運搬機械の位置調整を支援するシステムに関するものである。」
「[0022]
図2に掘削機械1とダンプトラック2との間で掘削物の受け渡しを行っている状態を模式的に示す。……バケット13で掘削が行われると、旋回体11により旋回して、バケット13での掘削物を運搬機械としてのダンプトラック2に投入することになる。
……
[0025]
積込作業が行われる作業現場は鉱山であり、ダンプトラック2の積込目標位置を探る手掛かりとなる目標や目印等といったものは存在しない。しかも、通常はダンプトラック2は後進することにより積込目標位置に向けて進行する。このために、正確に積込目標位置に配置するのは困難で、車両を頻繁に切り返す等の操作が必要となり、積込目標位置で正確に停止させるのに多大な時間がかかるおそれがある。以上のことから、ダンプトラック2の積込目標位置に円滑かつ確実に移動させるための支援するシステムを備えている。」
「[0026]
図3にこの支援システムの構成を示す。同図において、ダンプトラック2は走行するものであり、その地理的位置と移動方向とが検出されるようになっている。このために、全地球測位衛星システムを構成する複数のGPS衛星30からの電波を受信するGPSアンテナ31,31が一対設けられており、これら一対のGPSアンテナ31からの受信信号がGPS受信機32に取り込まれて、当該ダンプトラック2の位置と移動方向とが検出されるようになっている。このダンプトラック2の位置と移動方向との信号は制御回路33に取り込まれる。
……
[0030]
現位置画像P1については、既に説明したように、GPS受信機32によるダンプトラック2の位置及び方向の検出信号に基づいて表示される。一方、目標位置画像P2は、掘削機械1との関係で、ダンプトラック2がどの位置及び方向であれば、掘削機械1のバケット13から円滑かつ確実に掘削物を投入できるかを測定し、その時のダンプトラック2の位置及び方向を検出することにより認識される。この認識情報は制御回路42に記録・設定される。この検出データはダンプトラック2のディスプレイ36に表示されておれば良いのであるが、掘削機械1に対して複数台のダンプトラック2がアクセスすることから、ダンプトラック2の位置及び方向の検出データは掘削機械1の制御回路42に記憶される。」
「[図2]
[図:0001404835000003.jpg]
」
「[図3]
[図:0001404835000004.jpg]
」
イ 甲2記載事項
以上のことから、甲2には、次の事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されていると認められる。なお、引用箇所の段落番号等を併記した。
「運搬機械を円滑かつ迅速に積込機械による積込作業に最適な位置及び方向となるように相対位置決めするための運搬機械の位置調整を支援するシステムであって([0001])、
積込作業が行われる作業現場は鉱山であり、ダンプトラック2の積込目標位置を探る手掛かりとなる目標や目印等といったものは存在せず、しかも、通常はダンプトラック2は後進することにより積込目標位置に向けて進行するために、正確に積込目標位置に配置するのは困難で、車両を頻繁に切り返す等の操作が必要となり、積込目標位置で正確に停止させるのに多大な時間がかかるおそれがあり([0025])、
ダンプトラック2は走行するものであり、その地理的位置と移動方向とが検出されるようになっており([0026])、
目標位置画像P2は、掘削機械1との関係で、ダンプトラック2がどの位置及び方向であれば、掘削機械1のバケット13から円滑かつ確実に掘削物を投入できるかを測定し、その時のダンプトラック2の位置及び方向を検出することにより認識され、この認識情報は制御回路42に記録・設定される([0030])
運搬機械の位置調整を支援するシステム([0001])。」
(3)甲3
申立人が甲第3号証として提出した特開平10-88625号公報(以下「甲3」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 記載事項
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、掘削対象物を掘削し、該掘削した掘削物を積み込み対象に積み込む一連の処理を自動的に行う自動掘削積み込み技術に関する。」
「【0020】岩肌1には、発破をかけて崩落した爆落石2が堆積されており、この自動システムにおいては、ホイールローダやパワーショベルなどの掘削機3を用いて堆積された爆落石2を掘削し、これをダンプトラック4に積み込むまでの作業を実行する。」
「【0021】掘削機3には、掘削対象(この場合は爆落石2)の立体的な全体的形状(地形)を認識するためと、ダンプトラック4(正確にはダンプトラック側面に配設された標識5)までの距離、方向などを測定するために、視覚センサ30(この場合は2台のカメラ7,8)が配設されており、2つのカメラ7,8による視差を利用したステレオ法により、認識対象までの距離を測定する。」
「【0038】次に、積み込み対象認識演算部13は、カメラ7,8の撮像データに基づいて、予め設定された停止範囲に停止されたダンプトラック4までの距離、ダンプ4の姿勢等を認識するものである。すなわち、停止範囲が設定されていたとしても、ダンプトラック4を常に同じ位置、同じ姿勢で停止させるのは、不可能である。したがって、図1の場合は、ダンプトラック4に1つの標識5を設け、この標識5を2台のカメラ7、8で撮像し、前述したステレオ法を用いる事により、標識5までの距離を測定するようにしている。
【0039】図7では、ダンプトラック4に2つの標識5を設け、距離ばかりでなくダンプ4に対する掘削機3の姿勢角βも求めるようにしている。すなわち、2つの標識5までの距離ydを前述したステレオ法を用いてそれぞれ算出し、さらに撮像画像中の各標識の位置を求めることにより、各標識のカメラ中心軸からの方位を算出する。そして、このようにして算出した各標識の方位及び距離を用いて、ダンプトラックまでの距離と、ダンプトラックに対する掘削機3の相対姿勢βを計算する。」
「【0040】次に、積込位置決定演算部14は、積み込み対象認識演算部13で求めたダンプトラックの距離ydおよび相対姿勢βに基づいて実際に積み込みする位置を決定する。例えば、ホイールローダからダンプトラックに積み込む場合は、ローダのバケット中心がダンプトラックのベッセルの中心に一致するようにするとともに、ローダのリーチを考慮して接近距離を決定する。」
「【0041】次に、自動位置決め制御演算部15について説明する。
【0042】自動位置決め制御演算部15は、この場合、走行の際、推測航法(dead reckoning)を用いて自己の現在位置を逐次算出する。すなわち、方位計(ジャイロ)19の出力から掘削機3の方位角を検出すると共に、タイヤ回転センサ20の出力から走行距離を検出し、これら検出出力から掘削機3の現在位置を逐次算出する。
【0043】掘削の際、自動位置決め制御演算部15は、掘削位置決定演算部12によって決定された掘削目標位置に向かって自動走行する。すなわち、掘削目標位置と現在位置とを結ぶ軌跡を、滑らかなステアリングが行われるように直線、円弧、高次の曲線、非線形の曲線などを用いて演算し、さらに速度パターン指定して刻々の目標位置を求め、これら複数の目標位置を掘削機3が順次経由して走行するようにアクセル制御バルブ21およびステアリングバルブ23を介してアクセル22及びステアリングシリンダ24を制御する。このアクセル制御及びステアリング制御の際には、アクセルセンサ17及びステアリングセンサ18の検出値がフィードバックされ、指令値に追従するように自動制御が行われている。
【0044】一方、積み込みの際、自動位置決め制御演算部15は、積み込み位置決定演算部14によって決定された積み込み目標位置に向かって、掘削の場合と同様にして走行する。」
「【0045】次に、作業機自動制御演算部16について説明する。
【0046】掘削の際は、掘削目標位置に到達すると、作業機自動制御演算部16は作業機制御バルブ25介して作業機シリンダ26を制御することにより、自動掘削を行う。すなわち、エンジン回転センサ28やトルクコンバータ回転センサ19の出力から負荷を検出し、負荷が大きくなり過ぎたら負荷を逃がすように作業機を駆動しながら掘削を行う。また、作業機回転角度センサの出力から各作業機の角度を検出し、目標角度との偏差に応じて作業機を駆動する。
【0047】積み込みの際は、積み込み目標位置に到達すると、作業機自動制御演算部16は作業機制御バルブ25を介して作業機シリンダ26を制御することにより、自動積み込みを実行する。積み込みの際は、掘削のときとは違って決まったシーケンスで作業機を制御すればよいので、予め設定された軌跡に沿って作業機が移動すようにして積み込み作業を行う。」
イ 甲3記載事項
以上のことから、甲3には、次の事項(以下「甲3記載事項」という。)が記載されていると認められる。なお、引用箇所の段落番号等を併記した。
「ホイールローダやパワーショベルなどの掘削機3を用いて堆積された爆落石2を掘削し、これをダンプトラック4に積み込むまでの作業を実行する自動システムであって(【0020】)、
掘削機3には、掘削対象(この場合は爆落石2)の立体的な全体的形状(地形)を認識するためと、ダンプトラック4(正確にはダンプトラック側面に配設された標識5)までの距離、方向などを測定するために、視覚センサ30(この場合は2台のカメラ7,8)が配設されており、2つのカメラ7,8による視差を利用したステレオ法により、認識対象までの距離を測定し(【0021】)、
積み込み対象認識演算部13は、カメラ7,8の撮像データに基づいて、予め設定された停止範囲に停止されたダンプトラック4までの距離、ダンプ4の姿勢等を認識するものであり(【0038】)、
ダンプトラック4に2つの標識5を設け、距離ばかりでなくダンプ4に対する掘削機3の姿勢角βも求めるようにしており、そして、このようにして算出した各標識の方位及び距離を用いて、ダンプトラックまでの距離と、ダンプトラックに対する掘削機3の相対姿勢βを計算し(【0039】)、
積込位置決定演算部14は、積み込み対象認識演算部13で求めたダンプトラックの距離ydおよび相対姿勢βに基づいて実際に積み込みする位置を決定し、例えば、ホイールローダからダンプトラックに積み込む場合は、ローダのバケット中心がダンプトラックのベッセルの中心に一致するようにするとともに、ローダのリーチを考慮して接近距離を決定し(【0040】)、
自動位置決め制御演算部15は、この場合、走行の際、自己の現在位置を逐次算出し(【0042】)、
掘削の際、自動位置決め制御演算部15は、掘削位置決定演算部12によって決定された掘削目標位置に向かって自動走行し(【0043】)、
積み込みの際、自動位置決め制御演算部15は、積み込み位置決定演算部14によって決定された積み込み目標位置に向かって、掘削の場合と同様にして走行し(【0044】)、
積み込みの際は、積み込み目標位置に到達すると、作業機自動制御演算部16は作業機制御バルブ25を介して作業機シリンダ26を制御することにより、自動積み込みを実行する(【0047】)、
自動システム(【0020】)。」
(4)甲4
申立人が甲第4号証として提出した特開昭61-204423号公報(以下「甲4」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 記載事項
「2.特許請求の範囲
ブーム角センサ1が検出したブーム角度αとアーム角センサ3が検出したアーム角度βとバケット角センサ5が検出したバケット角度γを入力しサーボ系23を介してバケットシリンダ7に作用しバケット6の対地角度θを一定に保持する制御手段と、バケット操作レバー21の操作時直接にサーボ系23を介してバケットシリンダ7に作用しバケット操作角を手動保持する手動制御手段と、バケット操作レバー21の手動操作時手動制御を優先させる優先制御手段とを備えたことを特徴とする作業機の制御装置。」(第1頁左下欄第4行~第15行)
「本発明は上記の事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、バケット手動操作を優先としバケット操作終了時点の角度を次の操作開始時点まで制御手段で保持するようにしてオペレータのバケット操作角保持操作の負担を軽減し、従来の操作感覚のまま容易にバケット角度のセット、解除、再セットができるようにするところにある。」(第1頁右下欄第9行~第16行)
イ 甲4記載事項
以上のことから、甲4には、次の事項(以下「甲4記載事項」という。)が記載されていると認められる。なお、引用箇所の段落番号等を併記した。
「ブーム角センサ1が検出したブーム角度αとアーム角センサ3が検出したアーム角度βとバケット角センサ5が検出したバケット角度γを入力しサーボ系23を介してバケットシリンダ7に作用しバケット6の対地角度θを一定に保持する制御手段を備えた作業機の制御装置(特許請求の範囲)。」
第5 当審の判断
1 本件特許発明1と甲1発明1との対比
本件特許発明1と甲1発明1とを対比する。
(1)発明特定事項1Aについて
甲1発明1の「旋回体3」、「バケット4C」は、それぞれ、本件特許発明1の「旋回体」、「バケット」に相当する。
また、甲1発明1の「フロント作業機4」は、「バケット4C」「を有しており」、「旋回体3の前方に取り付けられ」るから、本件特許発明1の「前記旋回体に取り付けられバケットを含む作業機」に相当する。
また、甲1発明1の「油圧ショベル1」は、「旋回体3と、」「フロント作業機4とを備えている」から、本件特許発明1の「旋回体と、前記旋回体に取り付けられバケットを含む作業機とを備える積込機械」に相当する。
また、甲1発明1の「遠隔操作装置19」が「車体の動作を」「指示する」ことは、本件特許発明1の「積込機械を制御する」ことに相当する。
そうすると、甲1発明1の「油圧ショベル1と遠隔操作装置19を含むシステム」は、本件特許発明1の「旋回体と、前記旋回体に取り付けられバケットを含む作業機とを備える積込機械を制御する作業システム」に相当する。
よって、甲1発明1は、発明特定事項1Aに相当する構成を有する。
(2)発明特定事項1Bについて
甲1発明1の「ダンプトラック101の位置」は、本件特許発明1の「運搬車両の位置情報」に相当し、甲1発明1の「ダンプトラック101の位置の認識」は、本件特許発明1の「運搬車両の位置情報」「を取得する」ことに相当する。
また、甲1発明1の「環境認識装置18」は、本件特許発明1の「被積込機械情報取得部」に相当する。
よって、甲1発明1は、本件特許発明1と、「運搬車両の位置情報」「を取得する被積込機械情報取得部」に相当する構成を備える点で、共通する。
(3)発明特定事項1Cについて
甲1発明1の「ダンプトラック101の荷台102への放土位置」は、本件特許発明1の「積込対象を前記運搬車両に積み込むための排土位置」に相当し、甲1発明1の「ダンプトラック101の荷台102への放土位置の認識」は、本件特許発明1の「積込対象を前記運搬車両に積み込むための排土位置を特定する」ことに相当する。
また、甲1発明1の「環境認識装置18」は、本件特許発明1の「排土位置特定部」に相当する。
ここで、甲1発明1の「環境認識装置18」は、「ダンプトラック101の位置の認識」と「ダンプトラック101の荷台102への放土位置の認識」を行うところ、「ダンプトラック101の位置の認識」に基づいて「ダンプトラック101の荷台102への放土位置の認識」を行うことは明らかである。
よって、甲1発明1は、本件特許発明1と、「前記位置情報」「に基づいて、積込対象を前記運搬車両に積み込むための排土位置を特定する排土位置特定部」に相当する構成を備える点で、共通する。
(4)発明特定事項1Dについて
甲1発明1では、「操作レバー7a1~7a4は、例えば、運転席7Aに着座したオペレータが把持して車体の動作を手動で操作するものであり、これらの各操作レバー7a1~7a4の操作信号は制御装置17へ送信され」、また、「遠隔操作装置19は、運転室7の操作レバー7a1~7a4と同様の操作レバー19a1~19a4」「を含んで」いるところ、「制御装置17は、運転室7内の操作レバー7a1~7a4又は遠隔操作装置19内の操作レバー19a1~19a4の操作信号を受信する」から、甲1発明1の「制御装置17」は、本件特許発明1の「オペレータからの前記旋回体および前記作業機の操作信号」「を受け付ける操作信号入力部」に相当する構成を含むといえる。
よって、甲1発明1は、本件特許発明1と、「オペレータからの前記旋回体および前記作業機の操作信号」「を受け付ける操作信号入力部」に相当する構成を備える点で、共通する。
(5)発明特定事項1E、1Fについて
甲1発明1では、「自動運転制御部17Aは、環境認識装置18の認識結果に基づいて、目標とする」「放土位置、及びブーム4A、アーム4B、バケット4Cの目標軌道を演算し、そして、自動運転制御部17Aは、油圧ショベル1の旋回体3及びフロント作業機4が演算した」「放土位置、及びブーム4A、アーム4B、バケット4Cの目標軌道で動作するように、油圧制御弁14を介して各油圧アクチュエータ3a,4a~4cを制御する」ところ、「動作するように」「制御する」ために信号を生成することは明らかであるから、甲1発明1の「自動運転制御部17A」は、本件特許発明1の「前記バケットを、」「前記排土位置まで移動させるための操作信号を生成する操作信号生成部」に相当する構成を含むといえる。
また、「自動運転制御部17A」が「バケット4Cの目標軌道で動作するように」「制御する」ためには、「自動運転制御部17A」は「バケット4Cの目標軌道」の終点となる「放土位置」だけでなく、「バケット4Cの目標軌道」の始点を特定する構成が必要であることは明らかであるから、甲1発明1の「自動運転制御部17A」は、本件特許発明1の「前記バケットの位置を特定するバケット位置特定部」に相当する構成を含むといえる。
よって、甲1発明1は、本件特許発明1と、「前記バケットの位置を特定するバケット位置特定部」に相当する構成、及び、「前記バケットを、」「前記排土位置まで移動させるための操作信号を生成する操作信号生成部」に相当する構成を備える点で、共通する。
(6)発明特定事項1Gについて
甲1発明1では、「制御装置17は、運転室7内の操作レバー7a1~7a4又は遠隔操作装置19内の操作レバー19a1~19a4の操作信号を受信することにより、各操作レバー7a1~7a4又は操作レバー19a1~19a4の操作信号に対する指令信号を油圧制御弁14の電磁比例弁へ送信」するから、甲1発明1の「制御装置17」は、本件特許発明1の「前記操作信号入力部からの操作信号を出力する操作信号出力部」に相当する構成を含むといえる。
また、上記(5)で述べたように、甲1発明1の「自動運転制御部17A」は、本件特許発明1の「前記バケットを、」「前記排土位置まで移動させるための操作信号を生成する操作信号生成部」に相当する構成を含むといえるところ、そのような構成を含むならば、甲1発明1における「自動運転制御部17A」において「前記操作信号生成部が生成した前記操作信号を出力する」ことは明らかである。
よって、甲1発明1は、本件特許発明1と、「前記操作信号入力部からの操作信号を出力する操作信号出力部であって、」「前記操作信号生成部が生成した前記操作信号を出力する操作信号出力部」に相当する構成を備える点で、共通する。
(7)発明特定事項1Hについて
甲1発明1の「システム」は、本件特許発明1の「作業システム」に相当する。
よって、甲1発明1は、発明特定事項1Hに相当する構成を有する。
(8)一致点・相違点
上記(1)~(7)からみて、本件特許発明1と甲1発明1とは、
「1A 旋回体と、前記旋回体に取り付けられバケットを含む作業機とを備える積込機械を制御する作業システムであって、
1B’ 運搬車両の位置情報を取得する被積込機械情報取得部と、
1C’ 前記位置情報に基づいて、積込対象を前記運搬車両に積み込むための排土位置を特定する排土位置特定部と、
1D’ オペレータからの前記旋回体および前記作業機の操作信号の入力を受け付ける操作信号入力部と、
1E’ 前記バケットの位置を特定するバケット位置特定部と、
1F’ 前記バケットを、前記排土位置まで移動させるための操作信号を生成する操作信号生成部と、
1G’ 前記操作信号入力部からの操作信号を出力する操作信号出力部であって、前記操作信号生成部が生成した前記操作信号を出力する操作信号出力部
1H を備える作業システム。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-1(発明特定事項1B)>
本件特許発明1の「被積込機械情報取得部」は、「運搬車両の位置情報」だけでなく「方位情報」も「取得する」のに対し、
甲1発明1では、そのように構成されていない点。
<相違点1-2(発明特定事項1C)>
本件特許発明1の「排土位置特定部」は、「前記位置情報」だけでなく「前記方位情報」にも基づいて「積込対象を前記運搬車両に積み込むための排土位置を特定する」のに対し、
甲1発明1では、そのように構成されていない点。
<相違点1-3(発明特定事項1D)>
本件特許発明1の「操作信号入力部」は、「オペレータからの前記旋回体および前記作業機の操作信号」だけでなく「前記バケットを前記排土位置まで移動させる排土指示信号」も「入力を受け付ける」のに対し、
甲1発明1では、「排土指示信号」がない点。
<相違点1-4(発明特定事項1E)>
本件特許発明1では、「バケット位置特定部」が「特定する」「前記バケットの位置」が「前記排土指示信号が入力されたときの前記バケットの位置」であるのに対し、
甲1発明1では、「前記排土指示信号」がなく、「自動運転制御部17A」が特定する「バケット4Cの目標軌道」の始点は「前記排土指示信号が入力されたときの」「バケット4C」の位置ではない点。
<相違点1-5(発明特定事項1F)>
本件特許発明1の「操作信号生成部」が「生成する」「操作信号」は、「前記特定した位置から前記排土位置まで移動させるための操作信号」であるのに対し、
甲1発明1では、相違点1-4で述べたように、「自動運転制御部17A」が特定する「バケット4Cの目標軌道」の始点は「前記排土指示信号が入力されたときの」「バケット4C」の位置ではないから(すなわち、甲1発明1では「前記特定した位置」が存在しないから)、「自動運転制御部17A」が「演算」する「バケット4Cの目標軌道」の始点は「前記特定した位置」ではない点。
<相違点1-6(発明特定事項1G)>
本件特許発明1の「操作信号出力部」が「前記操作信号生成部が生成した前記操作信号を出力する」のは、「前記排土指示信号が入力された場合」であるのに対し、
甲1発明1では、「前記排土指示信号」がなく、「制御装置17は、レバー操作判定部17Bによって上述の所定の操作が行われたと判定されたことを条件として車体の自動運転を実行するための制御を開始するようにして」いる点。
2 本件特許発明9と甲1発明9との対比
本件特許発明9と甲1発明9とを対比する。
(1)発明特定事項9Aについて
上記1(1)で述べたことと同様に、
甲1発明9の「旋回体3」、「バケット4C」は、それぞれ、本件特許発明9の「旋回体」、「バケット」に相当し、
また、甲1発明9の「フロント作業機4」は、本件特許発明9の「前記旋回体に取り付けられバケットを含む作業機」に相当し、
また、甲1発明9の「油圧ショベル1」は、本件特許発明9の「旋回体と、前記旋回体に取り付けられバケットを含む作業機とを備える積込機械」に相当する。
そうすると、甲1発明9の「油圧ショベル1の制御方法」は、本件特許発明9の「旋回体と、前記旋回体に取り付けられバケットを含む作業機とを備える積込機械の制御方法」に相当する。
よって、甲1発明9は、発明特定事項9Aに相当する構成を有する。
(2)発明特定事項9D1について
上記1(4)で述べたことと同様に、
甲1発明9では、「操作レバー7a1~7a4は、例えば、運転席7Aに着座したオペレータが把持して車体の動作を手動で操作するものであり、これらの各操作レバー7a1~7a4の操作信号は制御装置17へ送信され」、また、「遠隔操作装置19は、運転室7の操作レバー7a1~7a4と同様の操作レバー19a1~19a4」「を含んで」いるところ、「制御装置17は、運転室7内の操作レバー7a1~7a4又は遠隔操作装置19内の操作レバー19a1~19a4の操作信号を受信する」から、甲1発明9は、本件特許発明9の「オペレータから入力される前記旋回体および前記作業機の操作信号を出力するステップ」に相当するステップを行うといえる。
よって、甲1発明9は、発明特定事項9D1に相当する構成を有する。
(3)発明特定事項9Bについて
上記1(2)で述べたことと同様に、
甲1発明9の「ダンプトラック101の位置」は、本件特許発明9の「運搬車両の位置情報」に相当し、甲1発明9の「ダンプトラック101の位置の認識」は、本件特許発明9の「運搬車両の位置情報」「を取得する」ことに相当し、
また、甲1発明9の「環境認識装置18」は、本件特許発明9の「運搬車両の位置情報」「を取得するステップ」に相当するステップを行うといえる。
よって、甲1発明9は、本件特許発明9と、「運搬車両の位置情報」「を取得するステップ」に相当するステップを備える点で、共通する。
(4)発明特定事項9Cについて
上記1(3)で述べたことと同様に、
甲1発明9の「ダンプトラック101の荷台102への放土位置」は、本件特許発明9の「積込対象を前記運搬車両に積み込むための排土位置」に相当し、甲1発明9の「ダンプトラック101の荷台102への放土位置の認識」は、本件特許発明9の「積込対象を前記運搬車両に積み込むための排土位置を特定する」ことに相当し、
また、甲1発明9の「環境認識装置18」は、本件特許発明9の「前記位置情報」「に基づいて、積込対象を前記運搬車両に積み込むための排土位置を特定するステップ」に相当するステップを行うといえ、
ここで、甲1発明9の「環境認識装置18」は、「ダンプトラック101の位置の認識」と「ダンプトラック101の荷台102への放土位置の認識」を行うところ、「ダンプトラック101の位置の認識」に基づいて「ダンプトラック101の荷台102への放土位置の認識」を行うことは明らかである。
よって、甲1発明9は、本件特許発明9と、「前記位置情報」「に基づいて、積込対象を前記運搬車両に積み込むための排土位置を特定するステップ」に相当するステップを備える点で、共通する。
(5)発明特定事項9E、9FGについて
上記1(5)で述べたことと同様に、
甲1発明9では、「自動運転制御部17Aは、環境認識装置18の認識結果に基づいて、目標とする」「放土位置、及びブーム4A、アーム4B、バケット4Cの目標軌道を演算し、そして、自動運転制御部17Aは、油圧ショベル1の旋回体3及びフロント作業機4が演算した」「放土位置、及びブーム4A、アーム4B、バケット4Cの目標軌道で動作するように、油圧制御弁14を介して各油圧アクチュエータ3a,4a~4cを制御する」ところ、「動作するように」「制御する」ために信号を生成することは明らかであるから、甲1発明9の「自動運転制御部17A」は、本件特許発明9の「前記排土位置まで移動させるための操作信号を生成」「するステップ」に相当するステップを行うといえ、そして、そのようなステップを行うならば、甲1発明9における「自動運転制御部17A」において「前記排土位置まで移動させるための操作信号を生成し、出力するステップ」に相当するステップを行うことは明らかであり、
また、「自動運転制御部17A」が「バケット4Cの目標軌道で動作するように」「制御する」ためには、「自動運転制御部17A」は「バケット4Cの目標軌道」の終点となる「放土位置」だけでなく、「バケット4Cの目標軌道」の始点を特定する構成が必要であることは明らかであるから、甲1発明9の「自動運転制御部17A」は、本件特許発明9の「前記バケットの位置を特定するステップ」に相当するステップを行うといえる。
よって、甲1発明9は、本件特許発明9と、「前記バケットの位置を特定するステップ」に相当するステップ、及び、「前記排土位置まで移動させるための操作信号を生成し、出力するステップ」に相当するステップを備える点で、共通する。
(6)発明特定事項9Hについて
甲1発明9の「制御方法」は、本件特許発明9の「制御方法」に相当する。
よって、甲1発明9は、発明特定事項9Hに相当する構成を有する。
(7)一致点・相違点
上記(1)~(6)からみて、本件特許発明9と甲1発明9とは、
「9A 旋回体と、前記旋回体に取り付けられバケットを含む作業機とを備える積込機械の制御方法であって、
9D1’ オペレータから入力される前記旋回体の操作信号を出力するステップと、
9B’ 運搬車両の位置情報を取得するステップと、
9C’ 前記位置情報に基づいて、積込対象を前記運搬車両に積み込むための排土位置を特定するステップと、
9E’ 前記バケットの位置を特定するステップと、
9FG’ 前記排土位置まで移動させるための操作信号を生成し、出力するステップと、
9H を備える制御方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点9-1(発明特定事項9B)>
本件特許発明9の「取得するステップ」では、「運搬車両の位置情報」だけでなく「方位情報」も「取得する」のに対し、
甲1発明9では、そのように構成されていない点。
<相違点9-2(発明特定事項9C)>
本件特許発明9の「排土位置を特定するステップ」では、「前記位置情報」だけでなく「前記方位情報」にも基づいて「積込対象を前記運搬車両に積み込むための排土位置を特定する」のに対し、
甲1発明9では、そのように構成されていない点。
<相違点9-3(発明特定事項9D2)>
本件特許発明9では、「前記オペレータからの前記バケットを前記排土位置まで移動させる排土指示信号の入力を受け付けるステップ」を備えるのに対し、
甲1発明9では、そのように構成されていない点。
<相違点9-4(発明特定事項9E)>
本件特許発明9では、「前記バケットの位置を特定するステップ」が「特定する」「前記バケットの位置」が「前記排土指示信号が入力されたときの前記バケットの位置」であるのに対し、
甲1発明9では、「前記排土指示信号」がなく、「自動運転制御部17A」が備えるステップで特定される「バケット4Cの目標軌道」の始点は「前記排土指示信号が入力されたときの」「バケット4C」の位置ではない点。
<相違点9-5(発明特定事項9FG)>
本件特許発明9の「操作信号を生成し、出力するステップ」が「生成する」「操作信号」は、「前記特定した位置から前記排土位置まで移動させるための操作信号」であるのに対し、
甲1発明9では、相違点9-4で述べたように、「自動運転制御部17A」が備えるステップで特定される「バケット4Cの目標軌道」の始点は「前記排土指示信号が入力されたときの」「バケット4C」の位置ではないから(すなわち、甲1発明9では「前記特定した位置」が存在しないから)、「自動運転制御部17A」が「演算」する「バケット4Cの目標軌道」の始点は「前記特定した位置」ではない点。
3 本件特許発明1についての判断
(1)相違点1-1について
ア 当審の判断
運搬車両の方位情報を取得することは、甲2及び甲3に記載されている(上記第4の2(2)イの甲2記載事項の「その地理的位置と移動方向とが検出される」こと、及び上記第4の2(3)イの甲3記載事項の「ダンプトラック4(正確にはダンプトラック側面に配設された標識5)までの距離、方向などを測定する」こと。)。
しかしながら、甲2記載事項は、「運搬機械を円滑かつ迅速に積込機械による積込作業に最適な位置及び方向となるように相対位置決めするための運搬機械の位置調整を支援するシステムであって、」「ダンプトラック2は後進することにより積込目標位置に向けて進行するために、正確に積込目標位置に配置するのは困難で、車両を頻繁に切り返す等の操作が必要となり、積込目標位置で正確に停止させるのに多大な時間がかかるおそれがあ」るとの課題が存在するものであるから、運搬機械を積込目標位置に向けて進行するための走行を制御するものであり、検出された「移動方向」が、本件特許発明1のように「積み込み対象を前記運搬車両に積み込むための排土位置を特定」するために、どの程度貢献するものか不明である。
また、甲3記載事項は、「積み込み対象認識演算部13は、カメラ7,8の撮像データに基づいて、予め設定された停止範囲に停止されたダンプトラック4までの距離、ダンプ4の姿勢等を認識するものであり、」「積み込みの際、自動位置決め制御演算部15は、積み込み位置決定演算部14によって決定された積み込み目標位置に向かって、掘削の場合と同様にして走行」するものであるから、ダンプトラック4を積み込み目標位置に向かって走行するための走行を制御するものであり、測定された「方向」が、本件特許発明1のように「積み込み対象を前記運搬車両に積み込むための排土位置を特定」するために、どの程度貢献するものか不明である。
これに対して、甲1発明1は、「掘削積込作業のサイクル」における、「バケット4Cが掘削した土砂を保持した状態で、旋回体3が掘削位置からダンプトラック101の荷台102側へ旋回する運搬動作B」及び「ダンプトラック101の荷台102側から旋回して掘削位置へ戻るリーチング動作D」を「自動で操作する自動運転を行う」ものであるから、甲2記載事項や甲3記載事項のような、走行の制御において取得された「方位情報」を、甲1発明1の上記サイクルに適用する動機付けは存在しない。
したがって、甲1発明1に甲2記載事項や甲3記載事項を適用することにより、相違点1-1に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
なお、本件特許発明7に対して提示された甲4にも、相違点1-1に係る本件特許発明1の構成が記載されていないことは明らかである。
イ 申立人の主張について
(ア)周知技術に基づく容易想到性
申立人は、特許異議申立書の第25頁において、甲1発明1における掘削積込作業においては、油圧ショベルで放土を運搬車両の荷台に積み込むものであり、運搬車両は進行方向を長手方向として伸びる方位性を持つ荷台を有するのが常であるから、荷台に満遍なく放土し、運搬車両一台で運搬できる放土をその積載量の範囲で最適化することが技術常識であり、また、周知技術であるから、そのような掘削積込作業において、運搬車両の位置のみならず、荷台の方位を考慮して油圧ショベルを操作するようにすることは当業者であれば当然想定可能である旨を主張する。
しかしながら、仮に、荷台に満遍なく放土し、運搬車両一台で運搬できる放土をその積載量の範囲で最適化することが、当該作業者が日頃から考慮している事項であったとしても、掘削積込作業において、運搬車両の位置のみならず、荷台の方位までも考慮することが当然想定可能であるとは認められず、そのような証拠も提示されていない。
よって、申立人の主張は採用できない。
(イ)甲2記載事項、甲3記載事項に基づく容易想到性
申立人は、特許異議申立書の第27頁において、甲2記載事項に知見を得て、相違点1-1の如く構成することは、その技術分野及び解決すべき課題・作用の共通性からみて、当業者であれば容易に想到できる旨、及び、同第28頁において、甲3記載事項は、「ダンプトラックまでの距離および相対姿勢に基づいて実際に積み込みする目標位置」を決定しており、かかる距離及び相対姿勢には、ダンプトラックの構造上、その方位に関する情報を含むことは当業者には明白であるから、この甲3記載事項に知見を得て、相違点1-1の如く構成することは、その技術分野及び解決すべき課題・作用の共通性からみて、当業者であれば容易に想到できる旨を主張する。
しかしながら、甲2記載事項及び甲3記載事項に関する判断については、上記(ア)で検討したとおりであるから、申立人の主張は採用できない。
(2)小括
以上のとおり、相違点1-1に係る本件特許発明1の構成をなすことは、当業者が容易になし得たことであるとはいえないから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された発明、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 本件特許発明2~8についての判断
本件特許発明2~8は、本件特許発明1の構成を全て有し、さらに限定を付加したものであるところ、上記1及び3において対比・判断したとおり、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された発明、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2~8も、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された発明、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5 本件特許発明9についての判断
上記3(1)で述べたことと同様に、相違点9-1に係る本件特許発明9の構成をなすことは、当業者が容易になし得たことであるとはいえないから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明9は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された発明、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1~9に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことができない。
また、他に本件特許の請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-700792