特許異議申立
2021-700295
ショベル
- 審判番号
- 2021-700295
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-501421
- 登録番号
- 6761102
- 請求日
- 2021年03月19日
- 審決日
- 2022年03月18日
- 公報発行日
- 2022年06月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】住友建機株式会社
- 【権利者代理人】伊東 忠重
- 【権利者代理人】伊東 忠彦
- 【異議申立人】江藤 保子
- 審判長/審判官
- 審判長 住田 秀弘
- 審判官 土屋 真理子
- 審判官 有家 秀郎
- 分類
- P1651.113-YAA(E02F) / P1651.121-YAA(E02F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6761102号発明「ショベル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6761102号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正することを認める。
特許第6761102号の請求項1ないし8、10ないし12に係る特許を維持する。
特許第6761102号の請求項9に係る特許についての特許異議申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6761102号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)2月22日(優先権主張 平成29年2月22日、日本国)を国際出願日とする出願であって、令和2年9月7日にその特許権の設定登録がされ、同年同月23日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和3年 3月19日 :特許異議申立人江藤保子(以下「申立人」とい
う。)による特許異議の申立て
同年 6月21日付け:取消理由通知
同年 8月24日 :特許権者による意見書の提出及び訂正の請求
同年10月11日 :申立人による意見書(以下「申立人意見書」と
いう。)の提出
同年11月 9日 :申立人による特許異議申立書の手続補正書(以
下「手続補正書」という。)の差出
同年11月29日付け:取消理由通知(決定の予告)
令和4年 2月 4日 :特許権者による意見書の提出及び訂正の請求
なお、令和4年2月4日に訂正の請求がなされたので、令和3年8月24日になされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
また、特許権者提出の令和4年2月4日付け訂正請求書による訂正により、令和3年11月29日付け取消理由通知(決定の予告)で指摘した請求項に係る特許は、実質的に削除されることとなった。よって、当該訂正の内容が実質的な判断に影響を与えるものではないから、申立人に意見書を提出する機会を与えないこととする。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和4年2月4日付けの訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)は、「特許第6761102号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~12について訂正することを求める」というものであり、その訂正の内容は、本件特許に係る願書に添付した特許請求の範囲を、次のように訂正するものである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、を備えたショベルであって、
油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータを操作するための操作装置と、
ショベルの周囲における所定領域内の物体を検出する物体検出装置と、
前記操作装置の有効状態と無効状態とを切り替え可能なゲートロックレバーと、
前記ゲートロックレバーとは別に前記操作装置の有効状態と無効状態とを切り替え可能な制御装置と、を有し、
前記制御装置は、ショベルの待機状態において、前記ゲートロックレバーによって前記操作装置が有効状態に切り替えられている場合であって、且つ、前記物体検出装置の出力に基づいて前記所定領域内に物体が存在すると判定した場合に、前記操作装置を無効状態にする、
ショベル。」と記載されているのを、
「下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、を備えたショベルであって、
油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータを操作するための複数の操作装置と、
ショベルの周囲における所定領域内の物体を検出する物体検出装置と、
前記操作装置の有効状態と無効状態とを切り替え可能なゲートロックレバーと、
前記ゲートロックレバーとは別に前記操作装置の有効状態と無効状態とを切り替え可能な制御装置と、を有し、
前記制御装置は、
ショベルの待機状態において、前記ゲートロックレバーによって前記操作装置が有効状態に切り替えられている場合であって、且つ、前記物体検出装置の出力に基づいて前記所定領域内に物体が存在すると判定した場合に、前記操作装置を無効状態にし、
複数の前記操作装置の有効状態と無効状態とを個別に切り替えできるように構成されている、
ショベル。」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記制御装置は、前記操作装置を無効状態にした後で、前記所定領域内から物体が退出したと判定した場合に、前記操作装置を有効状態に戻す、
請求項1に記載のショベル。」と記載されているのを、
「下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、を備えたショベルであって、
油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータを操作するための操作装置と、
ショベルの周囲における所定領域内の物体を検出する物体検出装置と、
前記操作装置の有効状態と無効状態とを切り替え可能なゲートロックレバーと、
前記ゲートロックレバーとは別に前記操作装置の有効状態と無効状態とを切り替え可能な制御装置と、を有し、
前記制御装置は、
ショベルの待機状態において、前記ゲートロックレバーによって前記操作装置が有効状態に切り替えられている場合であって、且つ、前記物体検出装置の出力に基づいて前記所定領域内に物体が存在すると判定した場合に、前記操作装置を無効状態にし、
前記操作装置を無効状態にした後で、前記所定領域内から物体が退出したと判定した場合に、前記操作装置を有効状態に戻す、
ショベル。」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「前記制御装置は、前記操作装置を無効状態にした後で、前記所定領域内から物体が退出したと判定した場合であっても、前記ゲートロックレバーによって前記操作装置が無効状態に切り替えられた後で更に有効状態に切り替えられるまでは、前記操作装置の無効状態を維持する、
請求項1に記載のショベル。」と記載されているのを、
「下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、を備えたショベルであって、
油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータを操作するための操作装置と、
ショベルの周囲における所定領域内の物体を検出する物体検出装置と、
前記操作装置の有効状態と無効状態とを切り替え可能なゲートロックレバーと、
前記ゲートロックレバーとは別に前記操作装置の有効状態と無効状態とを切り替え可能な制御装置と、を有し、
前記制御装置は、
ショベルの待機状態において、前記ゲートロックレバーによって前記操作装置が有効状態に切り替えられている場合であって、且つ、前記物体検出装置の出力に基づいて前記所定領域内に物体が存在すると判定した場合に、前記操作装置を無効状態にし、
前記操作装置を無効状態にした後で、前記所定領域内から物体が退出したと判定した場合であっても、前記ゲートロックレバーによって前記操作装置が無効状態に切り替えられた後で更に有効状態に切り替えられるまでは、前記操作装置の無効状態を維持する、
ショベル。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項9を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項12に「前記スイッチは、前記操作装置に設けられている、
請求項5に記載のショベル。」と記載されているのを、
「下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、を備えたショベルであって、
油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータを操作するための操作装置と、
ショベルの周囲における所定領域内の物体を検出する物体検出装置と、
前記操作装置の有効状態と無効状態とを切り替え可能なゲートロックレバーと、
前記ゲートロックレバーとは別に前記操作装置の有効状態と無効状態とを切り替え可能な制御装置と、
前記制御装置によって無効状態に切り替えられた前記操作装置を有効状態に戻すスイッチと、を有し、
前記制御装置は、ショベルの待機状態において、前記ゲートロックレバーによって前記操作装置が有効状態に切り替えられている場合であって、且つ、前記物体検出装置の出力に基づいて前記所定領域内に物体が存在すると判定した場合に、前記操作装置を無効状態にし、
前記スイッチは、前記操作装置に設けられている、
ショベル。」に訂正する。
(6)一群の請求項
本件訂正前の請求項2~12は、本件訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用しているから、本件訂正前の請求項1~12は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、訂正事項1~5に係る訂正は、当該一群の請求項〔1~12〕に対し請求されたものである。
2 本件訂正についての当審の判断
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1の「操作装置」を、「複数の操作装置」に特定し、また、制御装置が、前記操作装置を無効状態とする態様を、「複数の前記操作装置の有効状態と無効状態とを個別に切り替えできるように構成されてい」るものに特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
「油圧アクチュエータを操作するための複数の操作装置」について、本件明細書の段落【0020】には、「操作装置26は、操作者が油圧アクチュエータの操作のために用いる装置である。本実施例では、操作装置26は、パイロットラインを介して、パイロットポンプ15が吐出する作動油を油圧アクチュエータのそれぞれに対応する制御弁のパイロットポートに供給できる。・・・図2は、操作装置26の例として、旋回操作レバー26Aとアーム操作レバー26Bとを代表的に示している。」と記載され、「複数の前記操作装置の有効状態と無効状態とを個別に切り替えできるように構成されてい」ることについて、本件明細書等の段落【0027】には、「ゲートロック弁50は、複数の電磁弁で構成されていてもよい。・・・ゲートロック弁50は、パイロットポンプ15とリモコン弁27のそれぞれとの間に設けられていてもよい。例えば、旋回操作レバー26Aのみを無効状態に切り替えられるよう、位置50Aで示すようにリモコン弁27Aに関する個別管路に設けられていてもよく、アーム操作レバー26Bのみを無効状態に切り替えられるよう、位置50Bで示すようにリモコン弁27Bに関する個別管路に設けられていてもよい。・・・このように、コントローラ30は、複数の操作装置26の有効状態と無効状態とを個別に切り替えできるように構成されていてもよい。」と記載されているから、訂正事項1の「油圧アクチュエータを操作するための複数の操作装置」、及び、制御装置が「複数の前記操作装置の有効状態と無効状態とを個別に切り替えできるように構成されてい」ることは、本件明細書に記載されている。
よって、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
上記アのとおり、訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ まとめ
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の要件を満たしている。
(2)訂正事項2、3及び5
ア 訂正の目的について
訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。訂正事項3に係る訂正も、同様である。
訂正事項5に係る訂正は、訂正前の請求項12が訂正前の請求項1及び5を順に引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1及び請求項5を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。
イ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
訂正事項2、3及び5に係る訂正は、上記アのとおり、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ まとめ
したがって、訂正事項2、3及び5に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の要件を満たしている。
(3)訂正事項4
訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項9を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正を認める。
第3 訂正後の本件特許発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1ないし12に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正発明1」等といい、これらを合わせて「本件訂正発明」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、を備えたショベルであって、
油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータを操作するための複数の操作装置と、
ショベルの周囲における所定領域内の物体を検出する物体検出装置と、
前記操作装置の有効状態と無効状態とを切り替え可能なゲートロックレバーと、
前記ゲートロックレバーとは別に前記操作装置の有効状態と無効状態とを切り替え可能な制御装置と、を有し、
前記制御装置は、
ショベルの待機状態において、前記ゲートロックレバーによって前記操作装置が有効状態に切り替えられている場合であって、且つ、前記物体検出装置の出力に基づいて前記所定領域内に物体が存在すると判定した場合に、前記操作装置を無効状態にし、
複数の前記操作装置の有効状態と無効状態とを個別に切り替えできるように構成されている、
ショベル。
【請求項2】
下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、を備えたショベルであって、
油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータを操作するための操作装置と、
ショベルの周囲における所定領域内の物体を検出する物体検出装置と、
前記操作装置の有効状態と無効状態とを切り替え可能なゲートロックレバーと、
前記ゲートロックレバーとは別に前記操作装置の有効状態と無効状態とを切り替え可能な制御装置と、を有し、
前記制御装置は、
ショベルの待機状態において、前記ゲートロックレバーによって前記操作装置が有効状態に切り替えられている場合であって、且つ、前記物体検出装置の出力に基づいて前記所定領域内に物体が存在すると判定した場合に、前記操作装置を無効状態にし、
前記操作装置を無効状態にした後で、前記所定領域内から物体が退出したと判定した場合に、前記操作装置を有効状態に戻す、
ショベル。
【請求項3】
前記制御装置は、前記操作装置を無効状態にした後で、前記所定領域内から物体が退出したと判定し、且つ、前記操作装置が中立状態であると判定した場合に、前記操作装置を有効状態に戻す、
請求項2に記載のショベル。
【請求項4】
下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、を備えたショベルであって、
油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータを操作するための操作装置と、
ショベルの周囲における所定領域内の物体を検出する物体検出装置と、
前記操作装置の有効状態と無効状態とを切り替え可能なゲートロックレバーと、
前記ゲートロックレバーとは別に前記操作装置の有効状態と無効状態とを切り替え可能な制御装置と、を有し、
前記制御装置は、
ショベルの待機状態において、前記ゲートロックレバーによって前記操作装置が有効状態に切り替えられている場合であって、且つ、前記物体検出装置の出力に基づいて前記所定領域内に物体が存在すると判定した場合に、前記操作装置を無効状態にし、
前記操作装置を無効状態にした後で、前記所定領域内から物体が退出したと判定した場合であっても、前記ゲートロックレバーによって前記操作装置が無効状態に切り替えられた後で更に有効状態に切り替えられるまでは、前記操作装置の無効状態を維持する、
ショベル。
【請求項5】
前記制御装置によって無効状態に切り替えられた前記操作装置を有効状態に戻すスイッチを更に有する、
請求項1に記載のショベル。
【請求項6】
前記操作装置に作動油を供給するパイロットポンプと、
前記操作装置と前記パイロットポンプとを接続する管路の連通・遮断を切り替える電磁弁と、
前記ゲートロックレバーによって状態が切り替わるゲートロックスイッチと、
前記ゲートロックスイッチと前記電磁弁とを接続する電路の連通・遮断を切り替えるリレーと、有し、
前記ゲートロックスイッチは、前記電路を通じて前記電磁弁にロック信号を出力して前記管路を遮断し、或いは、前記電路を通じて前記電磁弁にロック解除信号を出力して前記管路を連通させ、
前記制御装置は、前記リレーをオン状態にして前記電路を連通させ、或いは、前記リレーをオフ状態にして前記電路を遮断する、
請求項1に記載のショベル。
【請求項7】
前記制御装置は、前記ゲートロックスイッチ、キースイッチ、シートベルトスイッチ、及びシート着座スイッチの少なくとも1つの出力に基づいて前記リレーを制御する、
請求項6に記載のショベル。
【請求項8】
前記制御装置は、ショベルの待機状態において、前記ゲートロックレバーによって前記操作装置が無効状態に切り替えられている場合、前記所定領域内に物体が存在するか否かにかかわらず、前記操作装置の無効状態を継続する、
請求項1に記載のショベル。
【請求項9】(削除)
【請求項10】
前記所定領域内の物体を監視するカメラを有する、
請求項1に記載のショベル。
【請求項11】
前記カメラは、少なくとも2つ以上設けられている、
請求項10に記載のショベル。
【請求項12】
下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、を備えたショベルであって、
油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータを操作するための操作装置と、
ショベルの周囲における所定領域内の物体を検出する物体検出装置と、
前記操作装置の有効状態と無効状態とを切り替え可能なゲートロックレバーと、
前記ゲートロックレバーとは別に前記操作装置の有効状態と無効状態とを切り替え可能な制御装置と、
前記制御装置によって無効状態に切り替えられた前記操作装置を有効状態に戻すスイッチと、を有し、
前記制御装置は、ショベルの待機状態において、前記ゲートロックレバーによって前記操作装置が有効状態に切り替えられている場合であって、且つ、前記物体検出装置の出力に基づいて前記所定領域内に物体が存在すると判定した場合に、前記操作装置を無効状態にし、
前記スイッチは、前記操作装置に設けられている、
ショベル。」
第4 特許異議申立理由及び取消理由通知で通知した取消理由の概要
1 特許異議申立理由の概要
申立人は、令和3年3月19日に特許異議申立書を提出し、同年11月9日差出の特許異議申立書の手続補正書を提出し、本件訂正前の本件特許の請求項1ないし12に係る発明に対して、証拠として下記甲第1号証ないし甲第15号証を提出し、次の特許異議申立理由を申し立てている。
(1)新規性 本件特許の請求項1、5、10及び11に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許を受けることができない。
(2)進歩性 本件特許の請求項1ないし12に発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明に基いて、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて、または、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
甲第1号証 特開2014-181509号公報
甲第2号証 特開2015-139161号公報
甲第3号証 特開2000-104291号公報
甲第4号証 特表2013-179517号公報
甲第5号証 特開平8-333767号公報
甲第6号証 特開2012-219461号公報
甲第7号証 特開2012-17626号公報
甲第8号証 特開2009-215855号公報
甲第9号証 特開平11-181821号公報
甲第10号証 特表2014-013911号公報
甲第11号証 特表2014-013910号公報
甲第12号証 特開2002-371593号公報
甲第13号証 特開平10-195915号公報
甲第14号証 特開平9-242110号公報
甲第15号証 特開2000-309947号公報
2 取消理由通知で通知した取消理由の概要
令和3年8月24日付け訂正請求により訂正された請求項1、5ないし8、10及び11に係る特許に対して、当審が令和3年11月29日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。
(1)新規性
令和3年8月24日付け訂正請求により訂正された本件特許の請求項1、5、8、10及び11に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
(2)進歩性
令和3年8月24日付け訂正請求により訂正された本件特許の請求項1、5ないし8、10及び11に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、若しくは甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
第5 当審の判断
1 甲各号証について
(1)甲第1号証(以下「甲1」という。他の証拠についても同様。)
ア 甲1の記載事項
甲1には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付加した。以下、同様。)。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の周囲における人の存否を判定する機能を備える作業機械用周辺監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ショベルに搭載される障害物検出器の監視範囲内で作業者が検出された場合に警報音を発する周辺監視装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、ショベルの周囲に設定した作業エリア内に進入した作業者が共同作業者であるか否かをその作業者のヘルメットに取り付けられたLEDの発光パターンから判断して警報音を出力させるか否かを決定する警報システムが知られている(例えば、特許文献2参照。)。また、フォークリフトとその近傍(周り)で作業を行う作業者との間で通信を行い、この通信に基づいて警報音の出力を制御する安全装置が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1~3の技術は何れも、所定範囲内に進入した作業者を確実に検出できることを前提としており、所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合を想定していない。そのため、ショベル等の操作者は、警報音が止めば、所定範囲内で作業していた作業者が所定範囲外に退出したものと判断し、操作者自身による確認を行うことなくショベル等による作業を開始してしまうおそれがある。
【0005】
上述の点に鑑み、本発明は、作業機械の周囲の所定範囲内に存在していた人が所定範囲外に退出したことの確認を操作者に促すことができる作業機械用周辺監視装置を提供することを目的とする。」
(イ)「【0011】
画像生成装置100は、作業機械の周辺を監視する作業機械用周辺監視装置の1例であり、制御部1、カメラ2、入力部3、記憶部4、表示部5、人検出センサ6、警報出力部7、ゲートロックレバー8、及びイグニッションスイッチ9で構成される。具体的には、画像生成装置100は、作業機械に搭載されたカメラ2が撮像した入力画像に基づいて出力画像を生成しその出力画像を操作者に提示する。また、画像生成装置100は、人検出センサ6の出力に基づいて、提示すべき出力画像の内容を切り換える。
【0012】
図2は、画像生成装置100が搭載される作業機械としてのショベル60の構成例を示す図であり、ショベル60は、クローラ式の下部走行体61の上に、旋回機構62を介して、上部旋回体63を旋回軸PVの周りで旋回自在に搭載している。
【0013】
また、上部旋回体63は、その前方左側部にキャブ(運転室)64を備え、その前方中央部に掘削アタッチメントEを備え、その右側面及び後面にカメラ2(右側方カメラ2R、後方カメラ2B)及び人検出センサ6(右側方人検出センサ6R、後方人検出センサ6B)を備えている。なお、キャブ64内の操作者が視認し易い位置には表示部5が設置されている。また、キャブ64内には、警報出力部7(右側方警報出力部7R、後方警報出力部7B)、ゲートロックレバー8、イグニッションスイッチ9が設置されている。」
(ウ)「【0014】
次に、画像生成装置100の各構成要素について説明する。
【0015】
制御部1は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)等を備えたコンピュータである。本実施例では、制御部1は、例えば、後述する座標対応付け手段10、画像生成手段11、人存否判定手段12、警報制御手段13、及び作業機械状態判定手段14のそれぞれに対応するプログラムをROMやNVRAMに記憶し、一時記憶領域としてRAMを利用しながら各手段に対応する処理をCPUに実行させる。
【0016】
カメラ2は、ショベル60の周囲を映し出す入力画像を取得するための装置である。本実施例では、カメラ2は、例えば、キャブ64にいる操作者の死角となる領域を撮像できるよう上部旋回体63の右側面及び後面に取り付けられる右側方カメラ2R及び後方カメラ2Bである(図2参照。)。また、カメラ2は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を備える。なお、カメラ2は、上部旋回体63の右側面及び後面以外の位置(例えば、前面及び左側面である。)に取り付けられていてもよく、広い範囲を撮像できるよう広角レンズ又は魚眼レンズが装着されていてもよい。
【0017】
また、カメラ2は、制御部1からの制御信号に応じて入力画像を取得し、取得した入力画像を制御部1に対して出力する。なお、カメラ2は、魚眼レンズ又は広角レンズを用いて入力画像を取得した場合には、それらレンズを用いることによって生じる見掛け上の歪曲やアオリを補正した補正済みの入力画像を制御部1に対して出力する。また、カメラ2は、その見掛け上の歪曲やアオリを補正していない入力画像をそのまま制御部1に対して出力してもよい。その場合には、制御部1がその見掛け上の歪曲やアオリを補正する。
【0018】
入力部3は、操作者が画像生成装置100に対して各種情報を入力できるようにするための装置であり、例えば、タッチパネル、ボタンスイッチ、ポインティングデバイス、キーボード等である。
【0019】
記憶部4は、各種情報を記憶するための装置であり、例えば、ハードディスク、光学ディスク、又は半導体メモリ等である。
【0020】
表示部5は、画像情報を表示するための装置であり、例えば、ショベル60のキャブ64(図2参照。)内に設置された液晶ディスプレイ又はプロジェクタ等であって、制御部1が出力する各種画像を表示する。
【0021】
人検出センサ6は、ショベル60の周囲に存在する人を検出するための装置である。本実施例では、人検出センサ6は、例えば、キャブ64にいる操作者の死角となる領域に存在する人を検出できるよう上部旋回体63の右側面及び後面に取り付けられる(図2参照。)。
【0022】
人検出センサ6は、人以外の物体から人を区別して検出するセンサであり、例えば、対応する監視空間内のエネルギ変化を検出するセンサであって、焦電型赤外線センサ、ボロメータ型赤外線センサ、赤外線カメラ等の出力信号を利用した動体検出センサを含む。本実施例では、人検出センサ6は、焦電型赤外線センサを用いたものであり、動体(移動する熱源)を人として検出する。また、右側方人検出センサ6Rの監視空間は、右側方カメラの撮像空間に含まれ、後方人検出センサ6Bの監視空間は、後方カメラ2Bの撮像空間に含まれる。
【0023】
なお、人検出センサ6は、カメラ2と同様、上部旋回体63の右側面及び後面以外の位置(例えば、前面及び左側面である。)に取り付けられてもよく、上部旋回体63の前面、左側面、右側面、及び後面のうちの何れか1つに取り付けられていてもよく、全ての面に取り付けられていてもよい。
【0024】
警報出力部7は、ショベル60の操作者に対する警報を出力する装置である。例えば、警報出力部7は、音及び光の少なくとも一方を出力する警報装置であり、ブザー、スピーカ等の音声出力装置、LED、フラッシュライト等の発光装置を含む。本実施例では、警報出力部7は、警報音を出力するブザーであり、キャブ64の右側内壁に取り付けられる右側方警報出力部7R、及び、キャブ64の後側内壁に取り付けられる後方警報出力部7Bで構成される(図2参照。)。
【0025】
ゲートロックレバー8は、ショベル60の状態を切り換える装置である。本実施例では、ゲートロックレバー8は、ショベル60を作業不可状態とするロック状態と、ショベル60を作業可能状態とするロック解除状態とを有する。なお、「作業可能状態」は、操作者がショベル60を操作できる状態を意味し、「作業不可状態」は、操作者がショベル60を操作できない状態を意味する。ゲートロックレバー8は、自身の現在の状態を表す信号を所定周期で繰り返し制御部1に対して出力する。
・・・
【0027】
ロック解除状態において、ゲートロックレバー8は、キャブ64の乗降口を遮って操作者がキャブ64から退出するのを規制しながら、キャブ64内の図示しない操作レバー及び操作ペダル等(以下、「操作ペダル等」とする。)による操作を有効にして操作者がショベル60を操作できるようにする。
【0028】
一方、ロック状態において、ゲートロックレバー8は、キャブ64の乗降口を開放して操作者がキャブ64から退出するのを許容しながら、キャブ64内の操作レバー等による操作を無効にして操作者がショベル60を操作できないようにする。
【0029】
より具体的には、ゲートロックレバー8は、ロック状態においてゲートロック弁を閉状態とし、ロック解除状態においてゲートロック弁を開状態とする。ゲートロック弁は、コントロールバルブ(図示せず。)と操作レバー等との間の油路の間に設けられる切換弁である。また、コントロールバルブは、図示しない油圧ポンプと各種油圧アクチュエータとの間の作動油の流れを制御する流量制御弁である。ゲートロック弁は、閉状態において、コントロールバルブと操作レバー等との間の作動油の流れを遮断して操作レバー等を無効にする。また、ゲートロック弁は、開状態において、コントロールバルブと操作レバー等との間で作動油を連通させて操作レバー等を有効にする。
【0030】
イグニッションスイッチ9は、ショベル60の状態を切り換える装置である。本実施例では、イグニッションスイッチ9は、ショベル60を作業不可状態とするオフ状態と、ショベル60を作業可能状態とするオン状態とを有する。イグニッションスイッチ9は、自身の現在の状態を表す信号を所定周期で繰り返し制御部1に対して出力する。
【0031】
具体的には、操作者は、イグニッションスイッチ9を押下することによりイグニッションスイッチ9のオン状態とオフ状態とを切り換える。
【0032】
オン状態において、イグニッションスイッチ9は、エンジンを始動させることによって、コントロールバルブと操作レバー等との間の油路に作動油を供給するコントロールポンプを始動させる。そして、イグニッションスイッチ9は、キャブ64内の操作レバー等による操作を有効にして操作者がショベル60を操作できるようにする。」
(エ)「【0041】
次に、制御部1が有する各種手段について説明する。
・・・
【0044】
画像生成手段11は、出力画像を生成するための手段である。本実施例では、画像生成手段11は、例えば、処理対象画像にスケール変換、アフィン変換、又は歪曲変換を施すことによって、処理対象画像平面R3上の座標と出力画像が位置する出力画像平面上の座標とを対応付ける。そして、画像生成手段11は、その対応関係を記憶部4の処理対象画像・出力画像対応マップ42に記憶する。そして、画像生成手段11は、入力画像・空間モデル対応マップ40及び空間モデル・処理対象画像対応マップ41を参照しながら、出力画像における各画素の値と入力画像における各画素の値とを関連付けて出力画像を生成する。各画素の値は、例えば、輝度値、色相値、彩度値等である。
・・・
【0049】
人存否判定手段12は、作業機械の周囲に設定される複数の監視空間のそれぞれにおける人の存否を判定する手段である。本実施例では、人存否判定手段12は、人検出センサ6の出力に基づいてショベル60の周囲の人の存否を判定する。
【0050】
また、人存否判定手段12は、カメラ2が撮像した入力画像に基づいて作業機械の周囲に設定される複数の監視空間のそれぞれにおける人の存否を判定してもよい。具体的には、人存否判定手段12は、オプティカルフロー、パターンマッチング等の画像処理技術を用いて作業機械の周囲の人の存否を判定してもよい。なお、人存否判定手段12は、カメラ2とは別の画像センサの出力に基づいて作業機械の周囲の人の存否を判定してもよい。
【0051】
或いは、人存否判定手段12は、人検出センサ6の出力とカメラ2等の画像センサの出力とに基づいて作業機械の周囲に設定される複数の監視空間のそれぞれにおける人の存否を判定してもよい。
【0052】
警報制御手段13は、警報出力部7を制御する手段である。本実施例では、警報制御手段13は、人存否判定手段12の判定結果に基づいて、或いは、人存否判定手段12の判定結果と作業機械状態判定手段14の判定結果とに基づいて、警報出力部7を制御する。なお、警報制御手段13による警報出力部7の制御についてはその詳細を後述する。
【0053】
作業機械状態判定手段14は、作業機械の状態を判定する手段である。本実施例では、作業機械状態判定手段14は、ショベル60が作業可能状態にあるか否かを判定する。なお、作業機械状態判定手段14によるショベル60の状態の判定についてはその詳細を後述する。」
(オ)「【0134】
なお、空間モデルMDの半径は、例えば、5メートルである。また、平行線群PLが処理対象画像平面R3との間で形成する角度、又は、補助線群ALの始点高さは、ショベル60の旋回中心から掘削アタッチメントEの最大到達距離(例えば12メートルである。)だけ離れた位置に物体(例えば、作業者である。)が存在する場合にその物体が表示部5で十分大きく(例えば、7ミリメートル以上である。)表示されるように、設定され得る。」
(カ)「【0194】
本実施例では、警報出力部7は、警報音を出力する。そして、画像生成手段11は、例えば、図21の出力画像D22に示すように、路面高さ基準の周辺監視用仮想視点画像を頭高さ基準の周辺監視用仮想視点画像に切り換えて表示する。具体的には、人存否判定手段12は、後方監視空間ZBに作業者P1が存在すると判定した場合に警報制御手段13に対して検出信号を通知する。そして、警報制御手段13は、左側方警報出力部7L、後方警報出力部7B、及び右側方警報出力部7Rに対して警報開始信号を出力し、3つ全ての警報出力部から警報音を出力させる。また、画像生成手段11は、頭高さ基準の周辺監視用仮想視点画像上に警報停止ボタンG1を重畳表示する。警報停止ボタンG1は、入力部3としてのタッチパネルとの協働によって構成されるソフトウェアボタンである。操作者は、警報停止ボタンG1を押下することによって警報音を停止させることができる。なお、警報停止ボタンG1は、表示部5の近傍に設置されるハードウェアボタンであってもよい。この場合、画像生成手段11は、警報停止ボタンG1としてのハードウェアボタンを押下することによって警報を停止させることができる旨を表すテキストメッセージを周辺監視用仮想視点画像に重畳表示してもよい。また、画像生成手段11は、ショベル60の周囲に人が存在すると判定された場合であっても、図21の出力画像D23に示すように、路面高さ基準の周辺監視用仮想視点画像をそのまま用いながら警報停止ボタンG1を重畳表示してもよい。」
(キ)「【0201】
次に、図22~図25を参照して、警報制御手段13が人存否判定手段12の判定結果と、作業機械状態判定手段14の判定結果とに基づいて警報出力部7を制御する処理(以下、「第2警報制御処理」とする。)について説明する。なお、図22は、第2警報制御処理の流れを示すフローチャートであり、図23は、第2警報制御処理中に表示される出力画像の推移の一例を示す。また、図24は、作業機械状態判定手段14が作業機械の状態を判定する処理(以下、「作業機械状態判定処理」とする。)の流れを示すフローチャートであり、図25は、作業不能状態から作業可能状態への切り替わり時に警報制御手段13が警報出力部7を制御する処理(以下、「作業開始時警報制御処理」とする。)の流れを示すフローチャートである。なお、警報制御手段13は、所定周期で繰り返し第2警報制御処理を実行し、作業機械状態判定手段14は、所定周期で繰り返し作業機械状態判定処理を実行する。また、警報制御手段13は、作業不能状態から作業可能状態への切り替わり時に作業開始時警報制御処理を実行する。
【0202】
最初に、人存否判定手段12は、ショベル60の周囲に人が存在するか否かを判定する(ステップS21)。このとき、画像生成手段11は、表示部5が起動している場合には、例えば、図23の出力画像D31に示すような路面高さ基準の周辺監視用仮想視点画像を生成して表示する。
【0203】
ショベル60の周囲に人が存在すると判定した場合(ステップS21のYES)、人存否判定手段12は、作業機械状態判定手段14による判定の結果(後述の図24参照。)を参照する(ステップS22)。この場合、人存否判定手段12は、ゲートロックレバー8をロック状態に固定してもよい。具体的には、人存否判定手段12は、操作者がゲートロックレバー8を引き上げることができないようにしてもよく、ゲートロックレバー8が引き上げられたとしてもロック解除状態とならないようにしてもよい。
【0204】
作業機械状態判定手段14によりショベル60が作業可能状態にあると判定された場合(ステップS22のYES)、人存否判定手段12は、検出信号を警報制御手段13に対して出力する。検出信号を受けた警報制御手段13は、警報を出力させるための警報開始信号を警報出力部7に対して出力し、警報出力部7から警報を出力させる(ステップS23)。
【0205】
本実施例では、警報出力部7は、警報音を出力する。具体的には、人存否判定手段12は、左側方監視空間ZLに人(ここでは作業者P10~P12である。)が存在すると判定した場合に警報制御手段13に対して左側方検出信号を通知する。そして、警報制御手段13は、左側方警報出力部7L、後方警報出力部7B、及び右側方警報出力部7Rに対して警報開始信号を出力し、3つ全ての警報出力部から警報音を出力させる。この場合、制御部1は、表示部5が起動していない場合には表示部5を起動させる。そして、画像生成手段11は、図21の出力画像D22に示すように、路面高さ基準の周辺監視用仮想視点画像を頭高さ基準の周辺監視用仮想視点画像に切り換えて警報停止ボタンG1を重畳表示する。また、画像生成手段11は、図21の出力画像D23に示すように、路面高さ基準の周辺監視用仮想視点画像上に警報停止ボタンG1を重畳表示してもよい。この場合、警報制御手段13は、警報停止ボタンG1が押下されるまで、ショベル60による作業を禁止してもよい。具体的には、警報制御手段13は、ゲートロック弁を閉状態にし、コントロールバルブと操作レバー等との間の作動油の流れを遮断して操作レバー等を無効にしてもよい。
・・・
【0210】
一方、警報停止ボタンG1が押下されていないと判定した場合(ステップS25のNO)、警報制御手段13は、警報停止信号を警報出力部7に対して出力しない。すなわち、警報制御手段13が出力させた警報は、その後に人存否判定手段12がショベル60の周囲に人が存在しないと判定した場合であっても、警報停止ボタンG1が押下されるまで停止しない。また、画像生成手段11は、頭高さ基準の周辺監視用仮想視点画像(出力画像D33参照。)を表示している場合には、その頭高さ基準の周辺監視用仮想視点画像の表示を継続させる。」
(ク)「【0212】
次に、図24を参照して、作業機械状態判定手段14による作業機械状態判定処理について説明する。
【0213】
最初に、作業機械状態判定手段14は、イグニッションスイッチ9の出力に基づいて、イグニッションスイッチ9がオン状態にあるか否かを判定する(ステップS31)。
【0214】
イグニッションスイッチ9がオン状態にあると判定した場合(ステップS31のYES)、作業機械状態判定手段14は、ゲートロックレバー8の出力に基づいてゲートロックレバー8がロック解除状態にあるか否かを判定する(ステップS32)。
【0215】
ゲートロックレバー8がロック解除状態にあると判定した場合(ステップS32のYES)、作業機械状態判定手段14は、ショベル60が作業可能状態にあると判定する(ステップS33)。
【0216】
一方、イグニッションスイッチ9がオン状態にないと判定した場合(ステップS31のNO)、或いは、ゲートロックレバー8がロック解除状態にないと判定した場合(ステップS32のNO)、作業機械状態判定手段14は、ショベル60が作業可能状態にない、すなわち、ショベル60が作業不可状態にあると判定する(ステップS34)。
【0217】
その後、作業機械状態判定手段14は、NVRAM等に用意された作業可能フラグの値を判定結果に応じて設定する。人存否判定手段12は、図22に示す第2警報制御処理のステップS22においてこの作業可能フラグの値を参照し、参照した値に基づいて警報出力の有無を判断する。なお、作業可能フラグは、初期値として値「0」(オフ)が設定されており、作業可能フラグの値「1」(オン)は作業可能であることを表し、作業可能フラグの値「0」(オフ)は作業不可であることを表す。
【0218】
なお、作業機械状態判定手段14は、ゲートロックレバー8及びイグニッションスイッチ9の何れか一方の状態のみに基づいてショベル60が作業可能状態にあるか否かを判定してもよい。」
(ケ)「【0219】
次に、図25を参照して、警報制御手段13による作業開始時警報制御処理について説明する。
【0220】
最初に、警報制御手段13は、人検出フラグの値を参照する(ステップS41)。そして、人検出フラグの値が「1」オンであると判定した場合(ステップS41のYES)、警報制御手段13は、警報開始信号を警報出力部7に対して出力し、警報出力部7から警報を出力させる(ステップS42)。具体的には、警報制御手段13は、人存否判定手段12により、現時点においてショベル60の周囲に人が存在しないと判定された場合であっても警報を出力させる。本実施例では、警報制御手段13は、左側方警報出力部7L、後方警報出力部7B、及び右側方警報出力部7Rに対して警報開始信号を出力し、3つ全ての警報出力部から警報音を出力させる。この場合、警報制御手段13は、警報の出力が停止されるまで、ショベル60による作業を禁止してもよい。具体的には、警報制御手段13は、ゲートロック弁を閉状態にし、コントロールバルブと操作レバー等との間の作動油の流れを遮断して操作レバー等を無効にしてもよい。
・・・
【0223】
一方、警報開始後に所定時間が経過したと判定した場合(ステップS43のYES)、警報制御手段13は、警報停止信号を警報出力部7に対して出力し、警報出力部7からの警報の出力を停止させる(ステップS44)。また、警報制御手段13は、人検出フラグの値を「0」(オフ)にリセットする(ステップS45)。なお、警報制御手段13は、警報停止ボタンG1が押下されるまで警報を停止させないようにしてもよい。
・・・
【0225】
一方で、画像生成装置100は、現時点において監視空間内に人が存在しないと判定した場合であっても、ショベル60が作業不可状態にある間に作業者が監視範囲内に進入していた場合には警報を出力する。そのため、画像生成装置100は、ショベル60の周囲の監視空間に存在していた作業者が監視空間外に退出したことの確認を操作者に促すことができる。」
イ 甲1発明
上記アより、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
(甲1発明)
「下部走行体61の上に、上部旋回体63を旋回自在に搭載しているショベル60であり、
画像生成装置100が搭載され、
画像生成装置100は、制御部1、カメラ2、入力部3、記憶部4、表示部5、人検出センサ6、警報出力部7、ゲートロックレバー8、及びイグニッションスイッチ9で構成され、
上部旋回体63は、その前方左側部にキャブ64を備え、その右側面及び後面にカメラ2を備え、キャブ64内には、表示部5、警報出力部7、ゲートロックレバー8、イグニッションスイッチ9が設置され、
表示部5は、制御部1が出力する各種画像を表示する液晶ディスプレイ又はプロジェクタ等であり、
ゲートロックレバー8は、ショベル60の状態を、作業不可状態とするロック状態と、作業可能状態とするロック解除状態と切り換える装置であり、「作業可能状態」は、操作者がショベル60を操作できる状態を意味し、「作業不可状態」は、操作者がショベル60を操作できない状態を意味するものであり、ロック状態においてゲートロック弁を閉状態とし、ロック解除状態においてゲートロック弁を開状態とし、自身の現在の状態を表す信号を所定周期で繰り返し制御部1に対して出力し、
ロック解除状態において、ゲートロックレバー8は、キャブ64内の操作レバー及び操作ペダルによる操作を有効にして操作者がショベル60を操作できるようにし、
ゲートロック弁は、コントロールバルブと操作レバー等との間の油路の間に設けられる切換弁であり、閉状態において、コントロールバルブと操作レバー等との間の作動油の流れを遮断して操作レバー等を無効にし、開状態において、コントロールバルブと操作レバー等との間で作動油を連通させて操作レバー等を有効にし、
コントロールバルブは、油圧ポンプと各種油圧アクチュエータとの間の作動油の流れを制御する流量制御弁であり、
イグニッションスイッチ9は、ショベル60の状態を、作業不可状態とするオフ状態と、作業可能状態とするオン状態とに切り換える装置であり、オン状態において、イグニッションスイッチ9は、エンジンを始動させることによって、コントロールバルブと操作レバー等との間の油路に作動油を供給するコントロールポンプを始動させ、キャブ64内の操作レバー等による操作を有効にして操作者がショベル60を操作できるようにし、
制御部1は、画像生成手段11、人存否判定手段12、警報制御手段13、作業機械状態判定手段14のそれぞれに対応するプログラムを実行させ、
画像生成手段11は、出力画像を生成するための手段であり、
人存否判定手段12は、ショベル60の周囲を映し出す入力画像を取得するための装置であるカメラ2が撮像した入力画像に基づいて作業機械の周囲に設定される複数の監視空間のそれぞれにおける人の存否を判定し、
作業機械状態判定手段14は、作業機械の状態を判定する手段であって、イグニッションスイッチ9がオン状態にあると判定した場合ゲートロックレバー8がロック解除状態にあるか否かを判定し、ゲートロックレバー8がロック解除状態にあると判定した場合、ショベル60が作業可能状態にあると判定し、一方、イグニッションスイッチ9がオン状態にないと判定した場合、或いは、ゲートロックレバー8がロック解除状態にないと判定した場合、ショベル60が作業不可状態にあると判定し、
警報制御手段13は、人存否判定手段12の判定結果と作業機械状態判定手段14の判定結果とに基づいて、警報出力部7を制御するものであり、
警報制御手段13が人存否判定手段12の判定結果と、作業機械状態判定手段14の判定結果とに基づいて警報出力部7を制御する処理は、最初に、人存否判定手段12は、ショベル60の周囲に人が存在するか否かを判定し、ショベル60の周囲に人が存在すると判定した場合、作業機械状態判定手段14による判定の結果を参照し、作業機械状態判定手段14によりショベル60が作業可能状態にあると判定された場合、人存否判定手段12は、検出信号を警報制御手段13に対して出力し、検出信号を受けた警報制御手段13は、警報を出力させるための警報開始信号を警報出力部7に対して出力し、警報出力部7から警報を出力させ、
画像生成手段11は、周辺監視用仮想視点画像に警報停止ボタンG1を重畳表示し、警報制御手段13は、警報停止ボタンG1が押下されるまで、ショベル60による作業を禁止し、具体的には、警報制御手段13は、ゲートロック弁を閉状態にし、コントロールバルブと操作レバー等との間の作動油の流れを遮断して操作レバー等を無効にし、
警報停止ボタンG1は、入力部3としてのタッチパネルとの協働によって構成されるソフトウェアボタンであり、表示部5の近傍に設置されるハードウェアボタンであってもよく、
警報制御手段13が出力させた警報は、その後に人存否判定手段12がショベル60の周囲に人が存在しないと判定した場合であっても、警報停止ボタンG1が押下されるまで停止しない、
ショベル60。」
(2)甲2
ア 甲2の記載事項
甲2には、次の事項が記載されている。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の周囲の画像を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置によって取得された画像を上方視点となるように視点変換して仮想視点画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部によって生成された前記仮想視点画像を表示装置に表示させる表示制御部とを備える作業機械の周囲監視装置において、
前記作業機械の周囲に存在する障害物を検出する障害物検出部と、前記障害物検出部で検出された障害物の前記作業機械に対する相対的な移動方向を検出する移動方向検出部と、前記移動方向検出部で検出された前記障害物の相対的な移動方向に基づいて、前記障害物の相対的な移動方向が、予め設定した移動方向の範囲に含まれる場合に、前記障害物が前記作業機械の運転者に報知する必要のある報知対象障害物であると判定する判定部とを備える、作業機械の周囲監視装置。
・・・
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の作業機械の周囲監視装置において、
前記判定部によって前記障害物が前記報知対象障害物であると判定された場合に、前記作業機械の走行動作を制限する動作制限部をさらに備える、作業機械の周囲監視装置。」
(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の周囲監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ダンプトラック等の作業機械において、障害物が警告領域内に位置すると判定された場合に、カメラ画像をモニタに表示させることによって運転者に作業機械周囲の状況を把握させるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の装置は、ダンプトラックの走行状態に応じて、障害物の存在を運転者に警告する必要のある警告領域を設定している。」
(ウ)「【0023】
図5~7に示す報知対象領域の中にある円について説明する。図4に示すように,この円は、円の中心からの放射方向が障害物の相対的移動方向を示し、ダンプトラック1の前後方向に沿って前方を0度、後方を180度とし、時計回りに角度が増大している。この円内の網掛け部が、報知する必要のある障害物の相対的な移動方向として設定される角度範囲である。図4の場合は、一例として報知する必要のある障害物の相対的な移動方向の角度範囲を180度~270度で示している。矢印A1、A2は障害物の相対的移動方向を想定しており、障害物の相対的移動方向が矢印A1の場合は、上述の角度範囲内に有り、矢印A2の場合は、上述の角度範囲外となる。図5で示した前方近傍領域CFおよび前方通常領域WFの円においては、障害物がダンプトラック1の前方に存在した場合、比較的接触等を起こす可能性が高いことから、報知する必要のある障害物の相対的な移動方向の角度範囲を0度~360度と設定している。なお、図5~7に示す報知対象領域の内、円中心部に小円が記載されている報知対象領域、例えば図5の前方近傍領域CF等は、角度範囲に関係なく静止した障害物も報知対象に含むように設定可能な領域であることを示し、これら領域にある静止した障害物は後述する判定部170で報知対象として判定される。特に運転手から見えにくい右側方や後方で設定可能であるため、運転手が障害物を確認する上で有効である。」
(エ)「【0030】
障害物検出部150は、前方カメラ21、右側方カメラ22、左側方カメラ23、および後方カメラ24から入力された複数の画像データに基づいて画像処理を行い、ダンプトラック1の周囲に存在する障害物を検出するとともに、検出した障害物のダンプトラック1に対する相対位置を検出する。ダンプトラック1の周囲に存在する障害物には、例えば作業員やサービスカーが含まれる。
【0031】
障害物検出部150は、各カメラ21~24から入力された複数の画像データに基づいて、周知の画像認識技術により障害物を検出することができる。例えば障害物が移動体である場合は、画像データ中に形成された障害物に相当する一定の領域を検出し、時間的に異なる複数の画像データを比較して当該領域が異なる位置に移動する場合に、当該領域を移動体として検出する。例えば障害物が静止体である場合は、画像データ中に形成された障害物に相当する一定の領域を検出し、当該領域のエッジ、輝度、色等を総合的に判断して当該領域を静止体として検出する。」
(オ)「【0061】
判定部170は、障害物検出部150によって検出された障害物の相対位置、移動方向検出部160によって検出された障害物の相対的な移動方向、および移動速度検出部165から入力される障害物の移動速度に基づいて、遠方領域FF,FFR,FFL,FR,FL,FB,FBR,FBLに存在する障害物については、ダンプトラック1に接近する障害物の接近速度が所定値(例えば20km/h)以上の場合に、当該障害物を報知対象障害物として判定する。」
(カ)「【0081】
周囲監視装置100Bは、判定部170によって障害物が報知対象障害物であると判定された場合に、ダンプトラック1の走行動作を制限する動作制限部182を備える。報知対象障害物が存在する場合に、ダンプトラックを減速、停止、または発車禁止することにより、障害物との接触等のリスクを予め回避することが可能となる。また、上述したように、障害物が報知対象障害物であるか否かを的確に判断するので、必要のある場合のみ、ダンプトラック1の走行動作を制限することが可能となり、運転者に煩わしさを与えることがない。」
(キ)「【0092】
(6)以上説明した第1から第4の実施の形態においては、作業機械の一例として大型のダンプトラック1に周囲監視装置100,100A,100B,100Cを搭載する例を説明した。ただし、これには限定されず、自走式の作業機械であれば、小型や中型の油圧ショベル、または油圧ショベル以外のクレーン等、他の作業機械にも同様に搭載することができる。なお、作業機械が下部走行体と、下部走行体に対して旋回可能な上部旋回体とを備える場合、上部旋回体の旋回方向を加味して報知対象領域を設定してもよい。これにより、運転者に報知する必要のある報知対象障害物を的確に判断することが可能となる。」
(3)甲3
ア 甲3の記載事項
甲3には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はクレーン等の建設機械において、運転開始時のオペレータの意図しないアクチュエータ動作を防止する誤動作防止装置に関するものである。」
(イ)「【0031】運転開始時には、キースイッチ17がオンされた後、エンジン1を始動させ、運転休止レバー15を運転位置に下げる。
【0032】このとき操作レバー5がすでに操作位置にあると、上記エンジン始動、または運転休止レバー15の運転位置への操作という運転開始操作が行われると、オペレータの意思に反してアクチュエータ3が動き出してしまう。
【0033】そこで、このような事態を避けるために、図2の動作タイムチャートおよび図3のフローチャートに示すような作用が行われる。
【0034】キースイッチオン(ステップS1)、ロック解除フラグ=0の初期セット(ステップS2)を経て制御が開始された後、オルタネータ信号に基づく発電の有無によってエンジン回転中か否か(ステップS3)、運転休止スイッチ16のオン・オフ信号に基づいて運転休止レバー15が運転位置か否かが相次いで判断され(ステップS3,S4)、ここでともにYESの場合、すなわち運転を開始するために必要な二つの操作が行われている場合に、ロック解除フラグ=0が確認された(ステップS5)後、操作レバー5が中立位置にあるか否かが判断される(ステップS6)。
【0035】レバー中立でない場合はステップS7で切換弁9,10が非励磁状態とされ、それぞれ遮断位置ロにセットされるため、コントロールバルブ4は作動せず、従ってアクチュエータに圧油は供給されない。
【0036】この状態は、操作レバー5が中立位置に戻される(ステップS8でレバー中立が判断される)まで継続され、レバー5が中立位置に戻されるとステップS9でロック解除フラグ=1(レバー中立に戻されたことの確認)の操作が行われた後、切換弁9,10への通電・励磁が開始されて(ステップS10)、切換弁9,10が開通位置イに転じる。」
(ウ)「【0050】(6)上記実施形態では、エンジン1が始動操作されたことと、運転休止レバー15が運転位置に操作されたことという、機械の運転を開始するのに必要な二つの操作の双方が行われた場合にアクチュエータ作動をストップさせる構成をとったが、いずれか一方のみの操作が行われたときにアクチュエータ作動をストップさせる構成をとってもよい。
【0051】また、運転開始操作が別にある機械の場合はその操作を検出し、ロック作動の条件としてもよい」
(4)甲4
ア 甲4の記載事項
甲4には、次の事項が記載されている。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータを操作するための操作部材と、
前記操作部材の操作に応じたパイロット圧を出力するパイロット弁と、
入力される前記パイロット圧に応じて前記油圧アクチュエータを制御するアクチュエータ制御弁と、
ロック位置と解除位置とに切換可能なロック部材と、
前記アクチュエータ制御弁への前記パイロット圧の供給を許容する解除状態と、前記アクチュエータ制御弁への前記パイロット圧の供給を遮断するロック状態とに切り換えられるロック弁と、
前記ロック部材が前記ロック位置から前記解除位置に切り換えられると、前記ロック弁を前記ロック状態から前記解除状態に切り換えるロック弁切換部と、
前記ロック部材が前記ロック位置から前記解除位置に切り換えられた時点からの経過時間を検知する経過時間検知部と、
前記経過時間が所定時間以上であるか否かを判定する経過時間判定部と、
前記パイロット圧が所定圧力以上であるか否かを判定するパイロット圧判定部と、
前記パイロット圧が所定圧力以上であるか否かを判定するパイロット圧判定部と、
前記経過時間が前記所定時間以上であるときに前記パイロット圧が前記所定圧力以上となった場合には、前記ロック弁切換部による前記ロック弁の切換を許容し、前記経過時間が前記所定時間未満であるときに前記パイロット圧が前記所定圧力以上となった場合には、前記ロック弁を前記ロック状態に切り換える誤操作監視部と、
を備える作業車両。
・・・
【請求項7】
前記経過時間が前記所定時間未満であると前記経過時間判定部が判断すると、前記前記ロック部材が前記解除位置から前記ロック位置に戻されない限り、前記誤操作監視部は、前記ロック弁切換部による前記ロック弁の切換を禁止する、
請求項1に記載の作業車両。
・・・
【請求項10】
前記作業車両は、旋回体を有する油圧ショベルであり、
前記油圧アクチュエータは、前記旋回体を旋回させる旋回モータ、走行用の油圧モータ、ブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダのいずれかである、
請求項1から9のいずれかに記載の作業車両。」
イ 甲4発明
上記アより、甲4には、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されている。
(甲4発明)
「油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータを操作するための操作部材と、
ロック位置と解除位置とに切換可能なロック部材と、
ロック部材がロック位置から解除位置に切り換えられると、ロック弁をロック状態から解除状態に切り換えるロック弁切換部と、
経過時間が所定時間以上であるか否かを判定する経過時間判定部と、
経過時間が所定時間以上でパイロット圧が所定圧力以上となった場合には、ロック弁切換部によるロック弁の切換を許容し、経過時間が所定時間未満であるときには、ロック弁をロック状態に切り換える誤操作監視部と、
を備え
経過時間が所定時間未満であると経過時間判定部が判断すると、ロック部材が解除位置からロック位置に戻されない限り、誤操作監視部は、ロック弁切換部によるロック弁の切換を禁止する、作業車両であって、
作業車両は、油圧ショベルであり、
油圧アクチュエータは、旋回体を旋回させる旋回モータ、走行用の油圧モータ、のいずれかである、
作業車両。」
(5)甲5
ア 甲5の記載事項
甲5には、次の事項が記載されている。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 運転室を有する本体と、この本体の前記運転室の側方に回動可能に設けられた第1ブームと、この第1ブームに対してオフセット機構を介し横方向に移動可能に連結された第2ブームと、この第2ブームに対して回動可能に連結されたアームと、このアームに対して回動可能に連結されたバケットと、これら第1,第2ブーム、オフセット機構とアームおよびバケットで構成される作業機を駆動する複数のシリンダと、前記作業機の各部材の相対角度を検出して角度信号を出力する角度センサと、前記運転室の周囲に設定された干渉防止領域および該干渉防止領域の外側に設定された干渉回避領域を記憶し、前記角度信号に基づいて該干渉回避領域に前記作業機が侵入したか否かを判断する演算装置と、前記作業機の各操作レバーにそれぞれ連動してパイロットポンプからのパイロット圧を供給するパイロット弁と、前記パイロット圧に応じて作動し、前記シリンダに供給される作動油の流れを制御する方向切換弁とを備えた油圧ショベルであって、
前記演算装置から出力される制御信号に応じてアームシリンダをダンプ方向へ動作させる作業機制御手段を有し、前記作業機が前記干渉回避領域に侵入したとき、前記作業機制御手段の制御により前記アームを強制的に前記運転室から離れる方向へ回動させ、前記作業機を前記干渉回避領域から退避させることを特徴とする油圧ショベルの運転室干渉防止装置。」
(イ)「【0021】また、前記アーム引きパイロット管路38には第1電磁比例減圧弁43が、前記ブーム上げパイロット管路34には第2電磁比例減圧弁44が、前記運転室接近用オフセットパイロット管路37には第3電磁比例減圧弁45がそれぞれ介設されており、これら電磁比例減圧弁43~45はタンクに接続されるポートを有している。これら電磁比例減圧弁43~45は、前記演算装置15から出力される制御信号の電流値に比例して動作され、通常は最大レベルの電流Iaを入力してアーム引きパイロット管路38、ブーム上げパイロット管路34、および運転室接近用オフセットパイロット管路37をそれぞれ全開し、制御信号として電流値が最小レベルの電流Ibを入力した場合、アーム引きパイロット管路38、ブーム上げパイロット管路34、および運転室接近用オフセットパイロット管路37の圧油を遮断してタンクに戻し、制御信号として電流値が最大レベルと最小レベルの間の電流Icを入力した場合、アーム引きパイロット管路38、ブーム上げパイロット管路34、および運転室接近用オフセットパイロット管路37の圧油を絞ってパイロット圧を減圧する。これによって、これら電磁比例減圧弁43~45により、パイロット弁31~33から供給されるパイロット圧を減圧するパイロット圧減圧手段が構成されている。
・・・
【0024】次に、アーム6の先端座標が前方から干渉回避領域14に侵入する場合の動作について説明する。図4に示すように作業機12と運転室2との接触のおそれがない通常時に、各電磁比例減圧弁43,44,45はそれぞれ全開位置にあり、アーム押し用電磁切換弁42は閉じている。この状態で、ブーム用操作レバー25を上げ方向(図4の反時計方向)に押圧操作すると、パイロットポンプ27からの圧油は、ブーム用パイロット弁31の左側の室からブーム上げパイロット管路34、第2電磁比例減圧弁44を経てブーム用方向切換弁28の左側のパイロット室に供給され、ブーム用方向切換弁28は作動を開始する。そして、ブーム用方向切換弁28が中立位置から左側の位置に切り換えられると、油圧ポンプ26の圧油はブーム用方向切換弁28を経てブームシリンダ8のボトム側に供給され、ブームシリンダ8が伸長してブーム3が上昇する。同時に、アーム用操作レバー25を引き方向(図4の反時計方向)に押圧操作すると、パイロットポンプ27からの圧油は、アーム用パイロット弁33の左側の室からアーム引きパイロット管路38、第1電磁比例減圧弁43を経てアーム用方向切換弁30の左側のパイロット室に供給され、アーム用方向切換弁30は作動を開始する。そして、アーム用方向切換弁30が中立位置から左側の位置に切り換えられると、油圧ポンプ26の圧油はアーム用方向切換弁30を経てアームシリンダ10のボトム側に供給され、アームシリンダ10が伸長してアーム6が図1の矢印Aで示す方向(アーム6の先端側が運転室2に近づく方向)へ回動する。
【0025】前述したブーム上げとアーム引きの複合動作により、アーム6の先端座標が図2の矢印Aで示す方向に移動して干渉回避領域14に侵入すると、演算装置15からの制御信号に応じて、第1電磁比例減圧弁43が閉じてアーム引きパイロット管路38のパイロット圧が減圧されると共に、アーム押し用電磁切換弁42が開いてパイロット圧がパイロット管路41、電磁切換弁42、シャットル弁40を経てアーム用方向切換弁30の右側のパイロット室に供給され、アーム用方向切換弁30は左方向へ作動を開始する。そして、アーム用方向切換弁30が中立位置から右側の位置に切り換えられると、油圧ポンプ26の圧油はアーム用方向切換弁30を経てアームシリンダ10のロッド側に供給され、アームシリンダ10の縮小によりアーム6が図2の矢印Bで示す方向(アーム6の先端側が運転室2から離れる方向)へ回動する。また、ブーム上げ動作が比較的速い場合、演算装置15からの制御信号に応じて第2電磁比例減圧弁44が閉じてブーム上げパイロット管路34のパイロット圧が減圧されるため、ブーム上げ速度が減少する。その結果、ブーム3の上げ動作が適度な速度で継続すると共にアーム6がダンプ方向に回動するので、アーム6の先端座標が干渉回避領域14の前方境界面14aに沿って上昇する。」
(6)甲6
ア 甲6の記載事項
甲6には、次の事項が記載されている。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体上に上部旋回体を旋回自在に搭載してなる自走式作業機械の制御装置であって、
外部電源から前記作業機械に給電する給電ケーブルに加わる張力を検出する張力検出手段と、
前記下部走行体の走行方向を検出する走行方向検出手段と、
前記上部旋回体の旋回方向を検出する旋回方向検出手段と、
前記走行方向検出手段によって検出された前記下部走行体の走行方向を記憶する走行方向記憶手段と、
前記旋回方向検出手段によって検出された前記上部旋回体の旋回方向を記憶する旋回方向記憶手段と、
前記張力検出手段で検出された給電ケーブルの張力が前記第1閾値より大きくなったとき前記下部走行体の走行操作がない場合には前記下部走行体の走行を禁止し、前記下部走行体の走行操作がある場合には前記走行方向記憶手段に直前に記憶された走行方向への走行を停止すると共に禁止する走行禁止手段と、
前記張力検出手段で検出された給電ケーブルの張力が前記第1閾値より大きくなったとき前記上部旋回体の旋回操作がない場合には前記上部旋回体の旋回を禁止し、前記上部旋回体の旋回操作がある場合には前記旋回方向記憶手段に直前に記憶された旋回方向への旋回を停止すると共に禁止する旋回禁止手段と
を備えることを特徴とする制御装置。」
(イ)「【背景技術】
【0002】
従来、自走式作業機械の動力源には、排気ガス対策と騒音対策との観点から、電動機が用いられている。電動機には外部電源から電気を供給するため給電ケーブルが接続されている。したがって、自走式作業機械は、この給電ケーブルの長さで規定される可動範囲内で作業をすることになる。
【0003】
この種の自走式作業機械では、可動範囲を越えて稼動すると、給電ケーブルに過大な張力が生じて給電ケーブルが損傷し又は切断する恐れがある。その対策として、給電ケーブルに加わる張力が一定の値を超えたとき自走式作業機械の作動を停止させることが知られている(例えば、特許文献1)。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された自走式作業機械では、自走式作業機械の走行と旋回の作動を停止した後の停止解除については考慮されていない。
【0006】
すなわち、自走式作業機械の走行と旋回の作動を停止した状態で停止を解除すると、給電ケーブルに加わる張力は一定の値を超えたままであるため、自走式作業機械の走行と旋回の作動がすぐに停止する可能性がある。
【0007】
本発明は、上記のように自走式作業機械の走行と旋回を停止した後その停止状態を解除しても不都合を生じさせない制御装置を提供することを目的とする。」
(ウ)「【0026】
次に図3を参照して、油圧制御装置30について説明する。図3では、斜線を含まない実線は作動油を供給する供給路を示し、斜線を含む実線は電気信号線を示す。図3に示すように、油圧制御装置30は、ロードリミッタ22と油圧回路40とCPU100とを備える。CPU100は、ロードリミッタ22からの信号が入力されるようにロードリミッタ22と接続されている。
【0027】
油圧回路40は、駆動輪8a、8dを駆動させための走行モータ41、42と、上部旋回体3を旋回させるための旋回モータ43と、走行モータ41、42及び旋回モータ43の作動を制御する油圧切換弁44~46と、油圧切換弁44~46に作動油を供給するメインポンプ47を備えている。
【0028】
また、油圧切換弁44はパイロットポート44a、44bを有し、油圧切換弁45はパイロットポート45a、45bを有し、油圧切換弁46はパイロットポート46a、46bを有している。
【0029】
パイロットポート44a、44bは、供給路59a、59bを介して、電磁切換弁50、51と、走行バルブ56と、パイロットポンプ76と接続されている。また、パイロットポート44a、44bと同様に、パイロットポート45a、45bは、電磁切換弁52、53と走行バルブ57とパイロットポンプ76とに接続され、パイロットポート46a、46bは、電磁切換弁54、55と旋回バルブ58とパイロットポンプ76とに接続されている。
【0030】
電磁切換弁50、51と走行バルブ56とを接続する供給路59a、59bには、圧力センサ62、63が備えられている。また、電磁切換弁52、53と走行バルブ57とを接続する供給路60a、60b、及び電磁切換弁54、55と旋回バルブ58とを接続する供給路61a、61bには、供給路59a、59bと同様に圧力センサ64~67が備えられている。
【0031】
走行バルブ56は右走行レバー10aと一対の走行弁74、75を備えている。また、走行弁74、75には、パイロットポンプ76が接続されている。走行バルブ57、旋回バルブ58についても同様に、走行弁77、78、80、81とパイロットポンプ76が接続されている。
【0032】
次に、右走行レバー10aを操作した場合の油圧切換弁44と、電磁切換弁50、51の動作について説明する。右走行レバー10aを操作させることによって走行弁74が作動すると、パイロットポンプ76から吐出される作動油が供給路59aに流通する。
【0033】
この時、ソレノイド50sが通電されていないときには、走行弁74とパイロットポート44aとが連通する状態となり、パイロットポンプ76から吐出された作動油がパイロットポート44aに供給される。従って、メインポンプ47から吐出される作動油が走行モータ41に流通し、走行モータ41が右側の駆動輪8aに作用することによって右側の無限軌道履帯9aが下部走行体2を前進させる方向に回転する。
【0034】
その際、供給路59aに流通する作動油の油圧が圧力センサ62によって検出されており、油圧が検出された場合には、圧力センサ62からの信号がCPU100に伝達されると共に記憶される。このときは、CPU100には、下部走行体3の右側の無限軌道履帯9aが前進する方向に回転していることを示す信号が記憶される。この圧力センサ62及び後述の圧力センサ63~65が、走行方向検出手段に相当する。
【0035】
一方で、パイロットポンプ76から吐出される作動油が供給路59aに流通している時にソレノイド50sが通電される場合には、パイロットポンプ76から吐出された作動油はパイロットポート44aには供給されず、また、パイロットポート44aに供給されている作動油が電磁切換弁50を介してドレーンされる。このときは、メインポンプ47から吐出される作動油は走行モータ41には供給されずにドレーンされる。
【0036】
したがって、ソレノイド50sが通電されるときには、走行モータ42は右側の駆動輪8aに作用しないため、右側の無限軌道履帯9aは前進する方向には回転しない。
【0037】
また、ソレノイド50sが通電されていない場合と同様に、ソレノイド51sが通電されていないときには、右走行レバー10aを操作することによって、メインポンプ47から吐出される作動油が走行モータ41に流通し、走行モータ41が右側の駆動輪8aに作用することによって右側の無限軌道履帯9aが下部走行体2を後進させる方向に回転する。
その際、圧力センサ63からの信号がCPU100に伝達されると共に記憶され、CPU100には、下部走行体2の右側の無限軌道履帯9aが下部走行体2を後進させる方向に回転していることを示す信号が記憶される。また、ソレノイド50sが通電される場合と同様に、ソレノイド51sが通電される場合には、右側の無限軌道履帯9aを後進する方向に回転させることはできない。
【0038】
また、ソレノイド52s、53sについても、ソレノイド50s、51sと同様に、左走行レバー10bを操作することによって、メインポンプ47から吐出される作動油が走行モータ42に流通し、走行モータ42が左側の駆動輪8dに作用することによって左側の無限軌道履帯9bが下部走行体2を前進又は後進させる方向に回転する。その際、圧力センサ64、65からの信号がCPU100に伝達されると共に記憶され、CPU100には、下部走行体2の左側の無限軌道履帯9bが下部走行体2を前進又は後進させる方向に回転していることを示す信号が記憶される。また、ソレノイド50sが通電される場合と同様に、ソレノイド52sが通電される場合には、左側の無限軌道履帯9bは下部走行体2を前進又は後進させる方向に回転させることはできない。
【0039】
さらに、ソレノイド54s、55sについても、ソレノイド50s、51sと同様に、旋回レバー10cを操作することによって、メインポンプ47から吐出される作動油が旋回モータ43に流通し、旋回モータ43が上部旋回体3に作用することによって上部旋回体3が時計回り又は反時計回りに旋回する方向に回転する。
【0040】
その際、圧力センサ66、67からの信号がCPU100に伝達されると共に記憶され、CPU100には、上部旋回体3が時計回り又は反時計回りに回転していることを示す信号が記憶される。この圧力センサ66、67が旋回方向検出手段に相当する。また、ソレノイド50s、51sが通電される場合と同様に、ソレノイド54s、55sが通電される場合には、上部旋回体3を時計回り又は反時計回りに回転させることはできない。」
(エ)「【0066】
次に、図4のフローチャートに基づいて、給電ケーブル12に加わる張力が第1の閾値を超えた場合に停止されると共に禁止される下部走行体2の前後進と上部旋回体3の旋回の一覧を表1及び表2に示す。
【0067】
【表1】
[図:0001385151000001.jpg]
【0068】
【表2】
[図:0001385151000002.jpg]
」
(オ)図3は以下のとおり。
「
[図:0001385151000003.jpg]
」
(7)甲7
ア 甲7の記載事項
甲7には、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】
フロント装置が軸支された上部旋回体を旋回可能に支持する下部走行体を具備する作業機械の作業範囲制御装置であって、
該下部走行体に対する該上部旋回体の旋回姿勢を検出する旋回姿勢検出手段と、
該フロント装置の作業範囲としての側方作業範囲を記憶する第一記憶手段と、
該フロント装置の作業範囲として、該作業機械の機体中心から外端までの水平距離が該側方作業範囲よりも大きく設定された前方作業範囲を記憶する第二記憶手段と、
該旋回姿勢が該下部走行体の側方を向いた側方姿勢である場合に、該フロント装置の作業範囲を該側方作業範囲の内側に制限するとともに、該旋回姿勢が該下部走行体の前方又は後方を向いた前方姿勢である場合に、該フロント装置の作業範囲を該前方作業範囲の内側まで拡大する制御手段とを備えた
ことを特徴とする、作業機械の作業範囲制御装置。
【請求項2】
該フロント装置の節点角度を検出する角度検出手段と、
該角度検出手段で検出された該節点角度に基づき、該フロントの先端部の位置を演算する位置演算手段とを備え、
該制御手段が、
該旋回姿勢が該側方姿勢である場合に、該位置演算手段で演算された該位置が該側方作業範囲の外端を超える該フロント装置の操作を禁止し、
該旋回姿勢が該前方姿勢である場合に、該位置演算手段で演算された該位置が該前方作業範囲の外端を超えないまでの該フロント装置の操作を許容する
ことを特徴とする、請求項1記載の作業機械の作業範囲制御装置。」
(イ)「【0029】
[2.油圧回路]
[2-1.メイン回路]
図4に、油圧ショベル30の油圧回路を示す。この油圧回路には、油圧アクチュエータ(各種油圧駆動装置)に供給される作動油が流通するメイン回路C1と、複数のパイロット回路とが設けられる。
メイン回路C1には、エンジンによって駆動される油圧ポンプ41が設けられる。ここでは、メイン回路C1上の油圧アクチュエータとして、前述のブームシリンダ3a,ジブシリンダ4a,アームシリンダ5a及び旋回モータ25が表示されており、その他の油圧アクチュエータを省略している。
・・・
【0035】
旋回リモコン弁21Lと旋回制御弁22との間のパイロット通路上には、旋回制限電磁弁23Lが介装される。同様に、旋回リモコン弁21Rと旋回制御弁22との間のパイロット通路上には、旋回制限電磁弁23Rが介装される。これらの旋回制限電磁弁23L,23Rは、後述するリレー回路C6によってスプール位置が二位置に切り換えられる電磁弁であり、非通電時にスプール位置をa位置とし、通電時にスプール位置をb位置に変更する。
【0036】
旋回制限電磁弁23L,23Rは、図4に示すように、スプール位置がa位置の時に旋回リモコン弁21L,21Rと旋回制御弁22との間のパイロット通路を遮断し、旋回制御弁22のパイロット圧を作動油タンク24側に開放(連通)する。また、スプール位置がb位置の時に旋回リモコン弁21L,21Rと旋回制御弁22との間のパイロット通路を接続する。つまり、旋回制限電磁弁23L,23Rは、旋回操作レバー21による旋回操作を許可又は禁止するように機能する。
【0037】
[2-3.ブームパイロット回路]
ブームパイロット回路C3には、ブーム操作レバー42の下端部に固定されたブームリモコン弁42L,42Rが設けられる。
ブームリモコン弁42L,42Rはそれぞれ、ブーム操作レバー42に入力される操作量及び操作方向に応じた大きさのパイロット圧を生成する制御弁である。これらのブームリモコン弁42L,42Rには、パイロットポンプ20及び作動油タンク24が接続される。なお、一方のブームリモコン弁42Lはブーム上げ操作に係るパイロット圧を生成し、他方のブームリモコン弁42Rはブーム下げ操作に係るパイロット圧を生成する。これらのブームリモコン弁42L,42Rのうち、ブーム操作レバー42の傾動方向に対応する一方がその傾動角度に応じて開放され、開度に応じたパイロット圧を発生させる。
【0038】
ブームリモコン弁42Rとブーム制御弁26との間のパイロット通路上には、ブーム制限電磁弁15が介装される。ブーム制限電磁弁15は、コントローラ18によってスプール位置が二位置に切り換えられる電磁弁である。
【0039】
ブーム制限電磁弁15は、スプール位置がa位置の時にブームリモコン弁42Rとブーム制御弁26との間のパイロット通路を遮断し、ブーム制御弁26のパイロット圧を作動油タンク24側に開放(連通)する。また、スプール位置がb位置の時にブームリモコン弁42Rとブーム制御弁26との間のパイロット通路を接続する。つまり、ブーム制限電磁弁15は、ブーム操作レバー42によるブーム3の下げ操作(ブームシリンダ3aの縮小動作)を許可又は禁止するように機能する。
【0040】
[2-4.ジブパイロット回路]
ジブパイロット回路C4には、ジブ操作レバー43の下端部に固定されたジブリモコン弁43L,43Rが設けられる。
ジブリモコン弁43L,43Rはそれぞれ、ジブ操作レバー43に入力される操作量及び操作方向に応じた大きさのパイロット圧を生成する制御弁である。これらのジブリモコン弁43L,43Rには、パイロットポンプ20及び作動油タンク24が接続される。これらのジブリモコン弁43L,43Rのうち、ジブ操作レバー43の傾動方向に対応する一方がその傾動角度に応じて開放され、開度に応じたパイロット圧を発生させる。なお、一方のジブリモコン弁43Lはジブ上げ操作に係るパイロット圧を生成し、他方のジブリモコン弁43Rはジブ下げ操作に係るパイロット圧を生成する。
【0041】
ジブリモコン弁43Lとジブ制御弁27との間のパイロット通路上には、ジブ制限電磁弁16Lが介装される。同様に、ジブリモコン弁43Rとジブ制御弁27との間のパイロット通路上には、ジブ制限電磁弁16Rが介装される。ジブ制限電磁弁16L,16Rは、コントローラ18によってスプール位置が二位置に切り換えられる電磁弁である。
【0042】
ジブ制限電磁弁16L,16Rは、スプール位置がa位置の時にジブリモコン弁43L,43Rとジブ制御弁27との間のパイロット通路を遮断し、ジブ制御弁27のパイロット圧を作動油タンク24側に開放(連通)する。また、スプール位置がb位置の時にジブリモコン弁43L,43Rとジブ制御弁27との間のパイロット通路を接続する。つまり、ジブ制限電磁弁16L,16Rは、ジブ操作レバー43によるジブシリンダ4aの操作を許可又は禁止するように機能する。
【0043】
[2-5.アームパイロット回路]
アームパイロット回路C5の回路構成は、ジブパイロット回路C4と同様である。アームパイロット回路C5には、アーム操作レバー44の下端部に固定されたアームリモコン弁44L,44Rが設けられる。
アームリモコン弁44L,44Rはそれぞれ、アーム操作レバー44に入力される操作量及び操作方向に応じた大きさのパイロット圧を生成する制御弁である。これらのアームリモコン弁44L,44Rには、パイロットポンプ20及び作動油タンク24が接続される。これらのアームリモコン弁44L,44Rのうち、アーム操作レバー44の傾動方向に対応する一方がその傾動角度に応じて開放され、開度に応じたパイロット圧を発生させる。なお、一方のアームリモコン弁44Lはアームイン操作に係るパイロット圧を生成し、他方のアームリモコン弁44Rはアームアウト操作に係るパイロット圧を生成する。
【0044】
アームリモコン弁44Lとアーム制御弁28との間のパイロット通路上には、アーム制限電磁弁17Lが介装される。同様に、アームリモコン弁44Rとアーム制御弁28との間のパイロット通路上には、アーム制限電磁弁17Rが介装される。これらのアーム制限電磁弁17L,17Rは、コントローラ18によってスプール位置が二位置に切り換えられる電磁弁である。
【0045】
アーム制限電磁弁17L,17Rは、スプール位置がa位置の時にアームリモコン弁44L,44Rとアーム制御弁28との間のパイロット通路を遮断し、アーム制御弁28のパイロット圧を作動油タンク24側に開放(連通)する。また、スプール位置がb位置の時にアームリモコン弁44L,44Rとアーム制御弁28との間のパイロット通路を接続する。つまり、アーム制限電磁弁17L,17Rは、アーム操作レバー44によるアームシリンダ5aの操作を許可又は禁止するように機能する。」
(ウ)「【0046】
[3.コントローラ]
図5に示すコントローラ18(制御手段)は、周知のマイクロプロセッサやCPU,ROM,RAM等を集積したLSIデバイスとして提供された電子制御装置である。コントローラ18の入力側には、ブーム角センサ7,ジブ角センサ8,アーム角センサ9,一対の近接スイッチ11L,11R及び前方作業スイッチ12が接続される。コントローラ18は、これらから伝達される情報に基づき、フロント装置29の動作を制御する。
・・・
【0052】
データ切換器36は、旋回角度判定部34から伝達される信号に基づき、側方作業範囲データ記憶部32,前方作業範囲データ記憶部33に記憶された作業範囲の情報のうちの何れか一方を選択し、これを作業範囲制限判定部37に伝達するものである。ここでは、アンド演算器34bの出力信号がオフ信号である場合に前者が選択され、オン信号である場合に後者が選択される。
つまり、前方作業スイッチ12がオンに操作され、かつ、フロント装置29が前方作業域に位置するときにのみ、前方作業域の作業半径R1が作業範囲制限判定部37に伝達される。また、前方作業スイッチ12がオフに操作され、あるいは、フロント装置29が側方作業域に位置するときには、側方作業域の作業半径R2が作業範囲制限判定部37に伝達される。
【0053】
作業範囲制限判定部37は、位置演算部31で演算された軸心cの座標(XC,YC)が、データ切換器36で選択された作業範囲内であるか否かを判定し、フロント装置29を制御するものである。例えば、データ切換器36からの入力が作業半径R1であった場合には、軸心cのx座標XCが作業半径R1未満であるか否かを判定する。ここで、XC≧R1である場合には、ブーム制限電磁弁15,ジブ制限電磁弁16L,16R及びアーム制限電磁弁17L,17Rを制御して、それぞれのスプール位置をa位置に制御する。この場合、ブーム3の上げ操作のみが許容され、ジブ4やアーム5の操作が禁止される。」
(8)甲8
ア 甲8の記載事項
甲8には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0015】
図中において、1は油圧ショベルを示し、油圧ショベル1は、左右にクローラ式走行手段2を有する下部走行体3と、下部走行体3に旋回装置4を介して設けた上部旋回体5とから構成され、上部旋回体5にはオペレータが搭乗する運転室6及び各種の機械・器具類を収納した機械室建屋7が設けられている。また、上部旋回体5には、作業手段8が装着されており、この作業手段8は、土砂の掘削等といった作業を行うためのものであり、ブーム9,アーム10及び交換可能なフロントアタッチメントとしてのバケット11から構成される。
【0016】
左右一対からなるクローラ式走行手段2は、スプロケット12とアイドラ13との間に巻回して設けた履帯14を有するものであり、スプロケット12は後述するように、モータ20で回転駆動される。また、旋回装置4は、上部旋回体5を旋回させるものであり、やはりモータ21で駆動される。さらに、作業手段8には、ブームシリンダ22,アームシリンダ23及びバケットシリンダ24が設けられており、これら各シリンダ22~24を駆動することによりこれら各部を動作させて、土砂の掘削等の作業が実行される。
【0017】
図2に、前述した各駆動手段の動作制御回路の構成を示す。走行用のモータ20、具体的にはクローラ式走行手段2は左右に設けられており、図2に符号20R,20Lで示したように、走行用のモータは2個設けられる。これら走行用モータ20R,20Lは電動モータである。また、旋回用のモータ21も電動モータである。作業手段8の駆動手段であるシリンダ22~24は油圧シリンダであり、これらシリンダ22~24に圧油を供給するために、油圧ポンプ25が設けられており、この油圧ポンプ25は電動式のモータ26で駆動される。従って、モータ20R,20L及び21と、シリンダ22~24は油圧ショベル1のアクチュエータである。そして、モータ20R,20L,21及び26には、それぞれインバータ30~33が接続されており、これらインバータ30~33に電力を供給するために、機械室建屋7には蓄電装置34が設けられており、この蓄電装置34と各インバータ30~33との間は電気的に接続されている。なお、蓄電装置34のみを設けているが、この蓄電装置34と共にエンジンも設置するようにしても良い。また、モータは電動モータではなく、油圧ポンプにより駆動される油圧モータで構成することもできる。
【0018】
インバータ30~33は制御装置35からの信号に基づいて制御される。そして、運転室6には左右の走行用、旋回用及びブーム操作用,アーム操作用,バケット操作用の操作レバー27が設けられており、オペレータは運転室6内でこれら各操作レバー27を傾動するように操作される。そして、これら各操作レバー27の操作信号が制御装置35に取り込まれるようになっており、インバータ30~33の出力制御が行われる。
【0019】
蓄電装置34に電力供給するために、整流器36が設けられており、この整流器36には外部電源37からの電力ケーブル38に設けたプラグ39が着脱可能とするコネクタ40が設けられている。そして、整流器36は電源切換器41に電気的に接続されており、この電源切換器41は、蓄電装置34を各インバータ30~33と接続した駆動電力供給モードと、外部電源37から充電される充電モードとの間に切り換えを行えるようになっている。また、電源切換器41が充電モードに切り換わったときにも、蓄電装置34と各インバータ30~33との間を導通させた状態に保持される。
【0020】
さらに、コネクタ42には、検出手段としてのスイッチ42が設けられており、このスイッチ42は電力ケーブル38のプラグ38がコネクタ40に接続されると、このプラグ38に設けたピン38aによりスイッチ42がONするようになっている。そして、この信号は制御装置35に取り込まれ、この検出信号に基づいて、電源切換器41による蓄電装置34から各インバータ30~33への電力供給時における出力レベルが制限されるようになっている。なお、スイッチ42は単にON,OFF制御するだけでなく、出力レベルを出力レベルが最大になるまで段階的に若しくは無段階的に変化させるものであっても良い。」
(イ)「【0029】
そして、オペレータがケーブル接続中であることを自覚しておれば、走行方向及び走行距離を限定するように操作することになる。従って、運転室6内に切換スイッチ28を設けて、この切換スイッチ28をONの状態となるように操作したときには、前述した速度制限を解除して、通常の速度で走行できるようにする。これにより迅速な緊急回避動作が可能となる。しかも、切換スイッチ28を操作したということは、オペレータがケーブル接続中であることを認識しているのであるから、慎重な走行駆動を行うようになり、電力ケーブル38を離脱させたり、履帯14で踏み付けたりすることはない。
【0030】
上部旋回体5に設けた作業手段8は、これを動作させたとしても、電力ケーブル38と接触するおそれは殆どない。図1から明らかなように、作業手段8は上部旋回体5から大きく突出している。図1の姿勢状態では、作業手段8は上方に向けて折り畳んだ状態となっているが、油圧ショベル1が停止する際に、必ずしもこの姿勢状態とする訳ではなく、様々な姿勢とする可能性がある。従って、緊急回避動作を行うに当って、作業手段8のブーム9,アーム10,バケット11を動かして、他の車両等と接触しないように姿勢を変更する必要がある。また、緊急回避動作を行うために、下部走行体3による走行駆動を行ったときに、他の物体との衝突を避け、また姿勢のバランスを取るために、この作業手段8の駆動には制限を設けない。そして、既に説明したように、旋回を禁止しておけば、作業手段8を動作させたとしても、土砂の掘削等といった作業を行うことはできない。従って、ケーブル接続中に作業を実行してしまうという事態が生じることはない。
【0031】
従って、制御装置35においては、図3に示したフローチャートに基づいた制御がなされる。即ち、スタータキーが入ると、常時外部電源37の電力ケーブル38に設けたプラグ39がコネクタ40に接続されたか否かの判断がなされ(ステップ1)、プラグ39が接続されていない場合には、駆動各部は制限なく、通常動作がなされる(ステップ2)。これに対して、プラグ39が接続されていることが検出されると、つまりケーブル接続中検出信号が出力されると、切換スイッチ28がONされているか否かが判定される(ステップ3)。この判定の結果、切換スイッチ28がONの状態になっていない場合には、旋回動作が禁止され、また走行動作は速度制限を受ける(ステップ4)。一方、切換スイッチ28がONされていることが検出されると、旋回動作だけが禁止されて、走行動作は制限のない可動状態となる(ステップ5)。なお、ステップ4では旋回と走行とを禁止し、ステップ5では旋回は禁止で、走行は速度を制限するように設定することもできる。」
(ウ)図3は以下のとおり。
「
[図:0001385151000004.jpg]
」
(9)甲9
ア 甲9の記載事項
甲9には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は作業機を搭載し、運転室の少なくとも前方および上方に設定された進入禁止領域に作業機の一部が進入したことを検知した時に、その進入動作を停止させる干渉防止機能を具えた干渉防止機能付き建設作業機械の技術分野に属する。」
(イ)「【0016】また、手順S6の判断結果が否、即ち、バケット1の爪先11の仮想回動軌跡ciが進入禁止境界B0の内部に入っていて、ブーム上許可領域、即ち、ブーム上許可境界c0の上部から下方にはみ出していた場合は、第1ブーム4のみを上方に回動操作した時でもバケット1の爪先11が運転室5に接触する虞があるので、従来と同様の停止処理(S9)、即ち、バケット1の爪先11の仮想回動軌跡ciが進入禁止境界B0に向かうような全ての動作を停止させる。つまり、アーム用電磁比例減圧弁31および第1ブーム用電磁比例減圧弁33にそれぞれ導かれていた弁駆動信号t1 ,t3を0にして、これらの電磁比例減圧弁31,33の開口面積を0にし、パイロット管路T1 ,T3を閉路すると共に、第2ブーム用電磁切替弁32に導かれていた弁駆動信号t2を0にして、第2ブーム用電磁切替弁32を閉じてパイロット管路T2を閉路し、アーム用方向切替弁25、第2ブーム用方向切替弁26および第1ブーム用方向切替弁27を全て強制的に中立位置に戻させ、アーム用操作桿16、第2ブーム用操作桿17および第1ブーム用操作桿18の操作の如何に拘らずアーム2の掻込み動作、第2ブーム3の左方動作および第1ブーム4の上げ動作を停止させる。
【0017】手順S6の判断結果が然り、即ち、バケット1の爪先11の仮想回動軌跡ciが進入禁止境界B0の内部に入っていて、ブーム上許可領域のみにあったならば、第1ブーム4を上方に回動させてもバケット1の爪先11が運転室5に接触する虞はないので、第1ブーム4の緩やかな上げ動作のみを許容して他の進入禁止境界B0に向かうような全ての動作を停止させるブーム上許可処理(S10)を行う。つまり、第1ブーム用電磁比例減圧弁33にあまり大きくない電流値の弁駆動信号t3を供給して半開状態にし、操作者の第1ブーム用操作桿18の操作による上方動作の第1ブーム用パイロット弁30からのパイロット圧がパイロット管路T3を通じて第1ブーム用方向切替弁27の一方のパイロット受圧室に僅かに伝達されるようにすると共に、アーム用電磁比例減圧弁31および第2ブーム用電磁切替弁32に伝達されていた弁駆動信号t1 ,t2を0にして、それらを閉じてパイロット管路T1 ,T2を閉路し、アーム用方向切替弁25および第2ブーム用方向切替弁26を強制的に中立位置に戻させ、アーム2の掻込み動作および第2ブーム3の左動作を停止させる。
【0018】このように、この具体例ではバケット1の爪先11の仮想回動軌跡ciが進入禁止境界B0の内部に進入した場合であっても、それが第1ブーム4の回動支点から半径r0のブーム上許可境界c0の上部のみにある場合には、第1ブーム4を上方に回動させる操作が許可され、第1ブーム4の緩やかな上げ動作が可能になるから、運転室5との干渉を防止しながら、例えば、油圧ショベル10の旋回体を狭い空間で旋回させるために第1ブーム4のみを上方に回動させる動作を継続して実施することができるから、荷積作業の作業効率を著しく向上できる。」
(ウ)図3は以下のとおり
「
[図:0001385151000005.jpg]
」
(10)甲10
ア 甲10の記載事項
甲10には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0037】
また、運転者が多機能型携帯情報端末40の音声入力機能を使用したいときに操作するスイッチ42が、例えば、操作レバー26Aに設けられる。スイッチ42を運転者が操作すると、信号がコントローラ30に送られる。コントローラ30はこの信号に基づいて多機能型携帯情報端末40に制御信号を送り、多機能型携帯情報端末40の音声入力機能をONとする。
【0038】
このように、運転者は操縦レバーから手を離さずにスイッチ42を容易に操作することができ、多機能型携帯情報端末40の音声入力機能を利用して、指令をショベルの制御装置に入力することができる。」
(11)甲11
ア 甲11の記載事項
甲11には、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項7】
請求項1乃至4のうちいずれか一項記載のショベルであって、
前記多機能型携帯情報端末の音声認識機能をON/OFFするスイッチは、前記ショベルの操作レバーに設けられていることを特徴とするショベル。」
(イ)「【0060】
本実施形態では、運転者が多機能型携帯情報端末40の音声入力機能を使用したいときに操作するスイッチ42が、例えば、操作レバー26Aに設けられる。スイッチ42を運転者が操作すると、信号がコントローラ30に送られる。コントローラ30はこの信号に基づいて多機能型携帯情報端末40に制御信号を送り、多機能型携帯情報端末40の音声入力機能をONとする。
【0061】
このように、運転者は操縦レバーから手を離さずにスイッチ42を容易に操作することができ、多機能型携帯情報端末40の音声入力機能を利用して、指令をショベルの制御装置に入力することができる。」
(12)甲12
ア 甲12の記載事項
甲12には、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】 ベースマシンに作業アタッチメントが取付けられ、この作業アタッチメントに、油圧式の開閉シリンダによって開閉運動を行う作業装置が、油圧式の回転アクチュエータによって回転駆動される状態で設けられ、上記開閉シリンダ及び回転アクチュエータと、これらの油圧源である油圧ポンプ及びタンクとの間に、開閉シリンダ及び回転アクチュエータの作動を制御するコントロールバルブが設けられた作業機械において、上記コントロールバルブと上記回転アクチュエータとを結ぶ管路に、開閉シリンダが少なくとも一方のストロークエンドに達したときに発生する圧力によって開くシーケンス弁と、回転アクチュエータからの油の流出のみを許容するチェック弁が設けられたことを特徴とする作業機械。
【請求項2】 油圧ポンプの吐出ラインに、設定圧力がシーケンス弁の開弁圧力よりも低い低圧と開弁圧力よりも高い高圧とに切換可能な2段リリーフ弁が設けられたことを特徴とする請求項1記載の作業機械。
【請求項3】 2段リリーフ弁として、外部からの電気切換信号によって設定圧力が切換えられる電磁式リリーフ弁が用いられ、このリリーフ弁に電気切換信号を送るスイッチが設けられたことを特徴とする請求項2記載の作業機械。
【請求項4】 スイッチが、コントロールバルブを操作するレバーに設けられたことを特徴とする請求項3記載の作業機械。」
(イ)「【0055】とくに、請求項4の発明によると、上記スイッチをコントロールバルブ操作用のレバーに手元スイッチとして設けたから、上記切換操作がさらに楽になる。」
(13)甲13
ア 甲13の記載事項
甲13には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0002】
【従来の技術】従来の多関節建設機械の制御装置としては、特開昭62-33937号公報に記載のものがある。この制御装置が適用される多関節建設機械は、第1ブーム、第2ブーム、アーム及びバケットからなる2ピースブーム型作業機であり、この制御装置は、第1ブームを操作する操作レバーに設けられたスイッチにより自動モードが選択されると、上部旋回体を操作する操作レバーを操作するだけで、第1ブーム、アームを操作する操作レバーや第2ブームを操作する操作ペダルを操作しなくても、第2ブーム先端の軌跡が制御されて直線側溝掘りを簡単かつ適確に行うことができる。また、スイッチにより自動モードが選択されないときは、第2ブームは、操作ペダルの操作に応じて駆動し、第1ブームやアームはこれらに係わる操作レバーの操作に応じてそれぞれ駆動する。」
(14)甲14
ア 甲14の記載事項
甲14には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0020】
【課題を解決するための手段】本発明は、作業機を駆動する複数のアクチュエータのうちの少なくとも1つを操作する操作手段を、他のアクチュエータを操作する操作レバーの握り部に設けてあり、オペレータは操作レバーを把持して操作することにより、この操作レバーに対応するアクチュエータを動作させるとともに、例えば、作業機が干渉防止領域に侵入して自動停止したとき、操作レバーに設けた操作手段を操作することにより、作業機を干渉防止領域から退避させる。
【0021】このように構成した本発明では、作業機に備えられるオフセットなどのアタッチメント類の操作時に操作ペダルの足踏み操作を要せずに済むため、オペレータは座席に座った状態で両足で身体を保持して安定した姿勢を保つことができる。また、手で操作手段を操作することにより良好な操作感覚が得られるとともに微操作を行なうことができる。したがって、作業機の運転室との干渉を防止できるばかりか、この干渉を回避するためにオフセット等のアタッチメント類を操作する際の操作性を向上することができる。」
(イ)「【0027】
【実施例】実施例について図面を参照して説明すると、図1は本発明の第1実施例に係る油圧式建設機械の干渉防止装置を備えた油圧ショベルの油圧回路図、図2は図1の干渉防止装置の全体構成を示すブロック図、図3は該油圧ショベルの運転室内の説明図、図4は該油圧ショベルに備えられる操作釦を拡大して示す平面図であり、前述した図7~図10に対応する部分には同一符号を付してある。
【0028】図1,図2に示すように、本実施例に係る干渉防止装置49では、前述した図7~図10に示す従来の干渉防止装置31と比べて、オフセットシリンダ9を伸長方向と伸縮方向とにそれぞれ操作する一対の操作釦50a,50bを設けた点と、干渉防止領域Zの範囲制限を解除する解除釦50cと、コントローラ35により制御される右オフセット用電磁比例弁52および左オフセット用電磁比例弁53を設けた点が主として異なっており、その他の構成は基本的に従来のものと同等である。なお、本実施例では、オフセットシリンダ9を操作する足踏み式操作ペダル29が前記操作釦50a,50bに並設されるとともに、この足踏み式操作ペダル29の近傍に前記オフセットシリンダ9などの動作を加速する足踏み式アクセルペダル30も並設されている。
【0029】図3に示すように、一対の操作釦50a,50bおよび解除釦50cは右操作レバー25の握り部25aに配設されており、これら操作釦50a,50bはプッシュスイッチのオン・オフ動作を行なう操作つまみである。図4に示すように、右側に位置する右オフセット用操作釦50aの表面にはその動作方向を示す右向き三角形の表示部51aが付されるとともに、左側に位置する左オフセット用操作釦50bの表面にもその動作方向を示す左向き三角形の表示部51bが付されており、これら操作釦50a,50bの下方に解除釦50cが位置している。」
(ウ)「【0034】上記第1実施例では、オフセット操作の際に、操作ペダル29の踏込み操作は必ずしも必要でなく、右操作レバー25の握り部25aに設けた操作釦50a,50bの押圧操作で済むため、オペレータは座席3aに座った状態で両足で身体を保持して安定した姿勢を保つことができ、特に、右操作レバー25と操作釦50a,50bの両方をオペレータの手で同時に操作することができる。また、手で操作釦50a,50bを押圧操作することにより、良好な操作感覚が得られるとともに微操作を行なうことができる。したがって、作業機7の運転室3との干渉を防止できるばかりか、この干渉を回避するためにオフセットシリンダ9を操作する際の操作性を向上することができる。」
(15)甲15
ア 甲15の記載事項
甲15には、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】 前方作業機を備えた建設機械において、その作業機操作用の操作レバーにおけるノブの前側上部に、指操作できるスイッチ手段が設けられ、このスイッチ手段からの電気信号でコントロールバルブを作動させて前記作業機における付属機器のアクチュエータを操作できるようにされていることを特徴とする建設機械における作業機の駆動操作装置。」
(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主として前方作業装置を備えた建設機械における駆動操作装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、油圧ショベルなど前方作業装置を備える建設機械は、その前方作業装置の各アクチュエータを作動させるのに、コントロールバルブに内蔵させる切換弁を制御することによって行われている。その切換弁の切換操作はオペレータが運転席周りに設けられた操作レバーやペダルを動かしてリンクもしくはケーブルにより直接的に操作するか、あるいはパイロット弁により二次的に操作されている。例えば、油圧ショベルには、作業装置を車体中心線に対して左右方向に平行に移動させるオフセット式、あるいは円弧方向にスイング移動させるスイング式作業機があり、作業機のバケット幅以上の溝掘削に使用されるものでは、そのバケットのオフセット操作およびスイング操作は、もっぱら運転室内でオペレータのペダル操作によってオフセットあるいはスイング用の方向切替弁を作動させて、それぞれの油圧シリンダ(アクチュエータ)の伸縮動作によってバケットの移動を操作している。
【0003】また、最近では、他の形式の作業装置を備える建設機械において、オペレータのレバー操作を電気信号に変換して、その電気信号に基づき電磁弁により切換弁を駆動する方式が提案されている。その一例として特開平10-37231号公報に開示されるものでは、操作レバーの頂部にオペレータが指で操作可能なスイッチを設け、このスイッチを操作することにより油圧ショベルにおける二ピースブームの第一ブームと第二ブームとのアクチュエータ(油圧シリンダ)を合理的に駆動できるようにされることが記載されている。
【0004】また、特開平10-8503号公報には、建設機械におけるブレーカ操作装置として、選択スイッチの操作により、レバーノブに設けられたスイッチでブレーカ操作あるいは油圧回路のリリーフ圧力設定の昇圧のいずれか一方を制御できるようにされることが記載されている。また、特開平5-332033号公報には、油圧ショベルのアタッチメントとして使用される破砕機の開閉操作を操作グリップの先端に切換スイッチを取付けて操作できるようにすることが記載されている。その他に、特開昭61-162500号公報には、フォークリフトにおける操作レバーのノブ頂端に操作スイッチを取付けて、リフトシリンダまたはティルトシリンダのいずれか一方を制御操作できるようにすることが記載されている。
【0005】そのほかに、特開平6-128983号公報には、作業機のドーザ装置におけるドーザをフローティング状態に切換えられるようにする制御弁を操作レバーのノブの頂部に押しスイッチを付設して、その押しスイッチを操作するとドーザを昇降させる油圧シリンダがフローティング状態に切換えられる構成について記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このような先行技術にあっては、作業機の作動操作を行わせる操作レバーに、電気的に制御弁を切換えてアクチュエータの作動を操作するための操作スイッチを設けるようにすることが提案されている。しかし、それらはいずれも操作レバーにおけるノブの頂部に操作スイッチを設けるようにされている。このような構成とすることは、オペレータが操作レバーを操作するとき、そのノブを手で握って操作するものであるために、操作レバーのノブを握った状態では、どうしても自由が利くのはノブを握っている手の親指となることから、最も有効な手段であるとみなされていることにある。
【0007】しかしながら、従来、一般の前方作業機を備える建設機械においては、その作業機を操作するための操作レバーには、ノブの頂部に警報ブザー(ホーン)を操作するスイッチ操作ボタン,あるいは油圧ショベルの場合ワンタッチ掘削力アップ用(ごく短時間だけ掘削力を高める)の操作スイッチボタンが設けられている。そして、これら操作ボタンは、それぞれ前記作動操作を行わせるようにすることが、この種機械を運転するオペレータには広く認知される状態にある。したがって、前述のように緊急時における警報ブザーを吹鳴させることやワンタッチ掘削力アップの操作を行うものに代えて別な機能を発揮させる操作ボタンを設けることは、オペレータが従来同様の感覚で操作すると誤操作を招くという問題がある。そのために、たとえ操作レバーのノブ頂面部に別途機能の操作用スイッチを設けることができるとしても、危険性が高く実用的でない。
【0008】本発明は、このような問題点を解消するためになされたもので、オペレータが操作レバーを握った状態で誤操作することなしに、作業機を操作レバー部分ですべて作動操作できる建設機械における作業機の駆動操作装置を提供することを目的とするものである。」
2 取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由について
(1)本件訂正発明1について
ア 対比
本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「下部走行体61」、「上部旋回体63」及び「ショベル60」は、本件訂正発明1の「下部走行体」、「上部旋回体」及び「ショベル」に相当する。
(イ)甲1発明における「油圧アクチュエータ」は、本件訂正発明1の「油圧アクチュエータ」に相当する。
(ウ)甲1発明の「操作レバー等」は、「イグニッションスイッチ9」で「エンジンを始動させることによって、コントロールバルブと操作レバー等との間の油路に作動油を供給するコントロールポンプを始動させ」、「操作を有効にして操作者がショベル60を操作できるように」するものである。また、「コントロールバルブ」が「油圧ポンプと各種油圧アクチュエータとの間の作動油の流れを制御する流量制御弁」であることから、「操作レバー等による操作によって」油圧ポンプと各種油圧アクチュエータとの間の油路が制御され、それによって「油圧アクチュエータを操作」することは自明である。そして、甲1発明は、操作を行う部材として「操作レバー」に加え「操作ペダル」を挙げており、「操作ペダル」が「操作レバー」とは別の操作部材として「操作レバー等」に含まれることは明らかである。してみると、甲1発明の「操作レバー」及び「操作ペダル」を含む「操作レバー等」は、本件訂正発明1の「油圧アクチュエータを操作するための複数の操作装置」に相当する。
(エ)甲1発明の「人存否判定手段12」は、「カメラ2が撮像した入力画像」に基づいて作業機械の周囲に設定される複数の「監視空間」のそれぞれにおける人の存否を判定するものであるところ、甲1発明の「監視空間」は、本件訂正発明1のショベルの周囲における「所定領域」といえ、また、甲1発明の「人」は、存否判定のために「検出対象」とされる「物体」であるといえるから(上記1(1)ア(オ)段落【0134】)、甲1発明の「ショベル60の周囲を映し出す入力画像を取得するための」「カメラ2」は、本件訂正発明1の「ショベルの周囲における所定領域内の物体を検出する物体検出装置」に相当する。
(オ)甲1発明の「ゲートロックレバー8」は、「コントロールバルブと操作レバー等との間の油路の間に設けられる切換弁」である「ゲートロック弁を閉状態とし、」「コントロールバルブと操作レバー等との間の作動油の流れを遮断して操作レバー等を無効にし」たロック状態と、「ゲートロック弁を開状態とし、」「コントロールバルブと操作レバー等との間で作動油を連通させて操作レバー等を有効にし」たロック解除状態とを切り換えるものであるから、本件訂正発明1の「前記操作装置の有効状態と無効状態とを切り替え可能なゲートロックレバー」に相当する。
(カ)甲1発明において「ショベル」に「搭載され」た「画像生成装置100」が「制御部1」を備えて構成され、「制御部1」の「警報制御手段13は、ゲートロック弁を閉状態にし、コントロールバルブと操作レバー等との間の作動油の流れを遮断して操作レバー等を無効に」するものであるから、甲1発明の「制御部1」は、本件訂正発明1の「前記ゲートロックレバーとは別に前記操作装置の有効状態と無効状態とを切り替え可能な制御装置」に相当する。
(キ)本件訂正発明1の「前記制御装置は、ショベルの待機状態において、前記ゲートロックレバーによって前記操作装置が有効状態に切り替えられている場合であって、且つ、前記物体検出装置の出力に基づいて前記所定領域内に物体が存在すると判定した場合に、前記操作装置を無効状態に」することについて、
a 本件訂正発明1の「ショベルの待機状態」について、本件特許明細書において「・・・待機状態は、例えば、少なくともコントローラ30が起動中で、エンジン11が作動中で、且つ、操作装置26が操作されていない状態(中立状態)であることを意味する。但し、・・・操作中止後に所定時間が経過するまでは、操作装置26が中立状態であったとしても待機状態であるとは判定されないようにしてもよい。」(本件特許明細書段落【0041】)と記載されている。また、本件訂正発明1は、「・・・操作装置が有効状態のままでショベルの操作が中断されているときに操作装置が不注意に或いは不適切に動かされてしまい、操作者の意図とは無関係に油圧アクチュエータが動いてしまうのを防止できる」(本件特許明細書段落【0005】)ことを意図しているものである。これらのことから、本件訂正発明1の「ショベルの待機状態」は、「操作者がショベル60を操作するとショベルが作業できる状態」であると解される。
b 甲1発明の「作業機械状態判定手段14」は、「イグニッションスイッチ9がオン状態にある」ことと「ゲートロックレバー8がロック解除状態にある」ことによって、「ショベル60が作業可能状態にあると判定」するものである。そして、「ショベルの待機状態」は上記aで検討したとおりであるから、甲1発明の「作業機械状態判定手段14」の「判定」において「イグニッションスイッチ9がオン状態にある」ことと「ゲートロックレバー8がロック解除状態にある」ことから「ショベル60が作業可能状態にあると判定」される状態であることは、本件訂正発明1の「ショベルの待機状態において、前記ゲートロックレバーによって前記操作装置が有効状態に切り替えられている場合」に相当するといえる。
c 甲1発明の「人存否判定手段12」が「カメラ2」が撮像した入力画像に基づいて、作業機械の周囲に設定される「監視空間」において「ショベル60の周囲に人が存在すると判定」することは、本件訂正発明1の「前記物体検出装置の出力に基づいて前記所定領域内に物体が存在すると判定」することに相当する。
d 甲1発明の「警報制御手段13」が「ゲートロック弁を閉状態にし、コントロールバルブと操作レバー等との間の作動油の流れを遮断して操作レバー等を無効にする」ことは、本件訂正発明1の「操作装置を無効状態に」することに相当する。
e 甲1発明の「人存否判定手段12」、「警報制御手段13」及び「作業機械状態判定手段14」は、全て制御部1がプログラムを実行させるものであるから、上記a~dの対比を踏まえると、甲1発明において、「制御部1」の「警報制御手段13」が、「作業機械状態判定手段14」により「ショベル60が作業可能状態にあると判定された」判定の結果と、「人存否判定手段12」により「ショベル60の周囲に人が存在すると判定した」判定の結果とに基づいて「警報出力部7から警報を出力させ」、「ゲートロック弁を閉状態にし、コントロールバルブと操作レバー等との間の作動油の流れを遮断して操作レバー等を無効に」することは、本件訂正発明1の「前記制御装置は、ショベルの待機状態において、前記ゲートロックレバーによって前記操作装置が有効状態に切り替えられている場合であって、且つ、前記物体検出装置の出力に基づいて前記所定領域内に物体が存在すると判定した場合に、操作装置を無効状態に」することに相当するといえる。
(ク)以上を整理すると、本件訂正発明1と甲1発明とは、
「下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、を備えたショベルであって、
油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータを操作するための複数の操作装置と、
ショベルの周囲における所定領域内の物体を検出する物体検出装置と、
前記操作装置の有効状態と無効状態とを切り替え可能なゲートロックレバーと、
前記ゲートロックレバーとは別に前記操作装置の有効状態と無効状態とを切り替え可能な制御装置と、を有し、
前記制御装置は、
ショベルの待機状態において、前記ゲートロックレバーによって前記操作装置が有効状態に切り替えられている場合であって、且つ、前記物体検出装置の出力に基づいて前記所定領域内に物体が存在すると判定した場合に、前記操作装置を無効状態にする、
ショベル。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
本件訂正発明1は、制御装置は、「複数の前記操作装置の有効状態と無効状態とを個別に切り替えできるように構成されている」のに対し、甲1発明はそのように特定されていない点。
イ 判断
(ア)甲1は、「作業機械の周囲における人の存否を判定する機能を備える作業機械用周辺監視装置」に関する特許出願の公開公報であり、従来、「ショベル等の操作者は、警報音が止めば、所定範囲内で作業していた作業者が所定範囲外に退出したものと判断し、操作者自身による確認を行うことなくショベル等による作業を開始してしまうおそれがある」ことから、「作業機械の周囲の所定範囲内に存在していた人が所定範囲外に退出したことの確認を操作者に促すことができる作業機械用周辺監視装置を提供することを目的とする」ものである。(上記第5の1(1)ア(ア))
(イ)そして、甲1発明は、「作業機械の周囲の所定範囲内に存在していた人が所定範囲外に退出したことの確認を操作者に促す」ようにするために、「人存否判定手段12」が「ショベル60の周囲に人が存在すると判定」したことを一つの条件として、「警報制御手段13」が「警報を出力さ」せ、その際に「警報制御手段13は、警報停止ボタンG1が押下されるまで、ショベル60による作業を禁止」するものと認められる。
(ウ)上記のように、甲1発明は、ショベル60の周囲の人をショベル操作者が確認するまでショベル60による作業を禁止するためにゲートロック弁を遮断して操作レバー等を無効にするものであって、複数の操作装置を個別に無効にする必然性はないから、複数の操作装置の有効状態と無効状態とを切り替えることができる油圧回路構成が周知技術であるとしても、甲1発明において当該「油圧回路構成」を採用し、甲1発明の「制御装置」を「複数の前記操作装置の有効状態と無効状態とを個別に切り替えできるように構成されている」ものとする動機付けはない。
(エ)よって、甲1発明及び甲2ないし甲15に記載の事項から、甲1発明において、制御装置を「複数の前記操作装置の有効状態と無効状態とを個別に切り替えできるように構成されている」ものとして、上記相違点1に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者といえども、容易になし得たものとはいえない。
ウ 申立人の主張について
(ア)申立人の主張の概要
申立人は、申立人意見書(第10ページ下から3行~第32ページ第12行)及び手続補正書(第52ページ下から4行~第69ページ第17行)にて、周知例として甲5ないし甲9を示すとともに、概略以下の主張をしている。
a 複数の操作装置の信号を個別に有効状態及び無効状態とに切替え可能を行うことができるような(当審注:「切替え可能な」または「切替えを行うことができるような」の誤記と認める。)制御弁を油圧回路に組み込んだ油圧回路構成は、甲5ないし甲9を周知例として示すように普通に知られていることである。
b そもそもショベルの作業環境もこれまた様々なものであることも併せて考慮すれば、安全の求められる程度が多様であることもあり、複数の操作装置を個別に制御できるようにして、より正確、安全、効率的な作業につなげようとすることは、当業者であれば当然想定し得るものである。
他方、操作装置が単数で複数の操作の制御を単純に制御した場合には、想定すべき安全の種類、度合い等を単純化して決める必要が生じ、製品の使い勝手が頗る不便になることも想定し得る。そうすると、複数の操作装置において、個別の安全制御(すなわち有効制御と無効制御を切り替え類の制御)を施そうとするのは、当業者であれば容易に着想し得る事項といえる。
(イ)主張の検討
上記イで検討したように、甲1発明は、「作業機械の周囲の所定範囲内に存在していた人が所定範囲外に退出したことの確認を操作者に促す」べく、「人存否判定手段12」が、「ショベル60の周囲に人が存在すると判定」し、「警報制御手段13」によって「警報を出力さ」れる際に「警報制御手段13は、警報停止ボタンG1が押下されるまで、ショベル60による作業を禁止」するものである。
そうすると、甲1発明においては、複数の操作装置を単純に制御した場合に製品の使い勝手が頗る不便になるといった事情は認められない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
エ 小括
したがって、本件訂正発明1は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第15号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件訂正発明5ないし8、10及び11について
本件訂正発明5ないし8、10及び11は、本件訂正発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を加えた発明であるから、上記(1)で検討した理由と同じ理由により、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第15号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった理由について
(1)本件訂正発明2について
ア 対比
本件訂正発明2と甲1発明とを対比する。
(ア)本件訂正発明2の「操作装置」は、本件訂正発明1の「複数の操作装置」の上位概念といえるから、上記2(1)アの本件訂正発明1と甲1発明との対比における(ア)ないし(キ)については、本件訂正発明2と甲1発明との対比についても同様である。
(イ)そうすると、本件訂正発明2と甲1発明とは、
「下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、を備えたショベルであって、
油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータを操作するための操作装置と、
ショベルの周囲における所定領域内の物体を検出する物体検出装置と、
前記操作装置の有効状態と無効状態とを切り替え可能なゲートロックレバーと、
前記ゲートロックレバーとは別に前記操作装置の有効状態と無効状態とを切り替え可能な制御装置と、を有し、
前記制御装置は、
ショベルの待機状態において、前記ゲートロックレバーによって前記操作装置が有効状態に切り替えられている場合であって、且つ、前記物体検出装置の出力に基づいて前記所定領域内に物体が存在すると判定した場合に、前記操作装置を無効状態にする、
ショベル。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点2)
本件訂正発明2は、制御装置は、「前記操作装置を無効状態にした後で、前記所定領域内から物体が退出したと判定した場合に、前記操作装置を有効状態に戻す」のに対し、甲1発明はそのように特定されていない点。
イ 判断
上記相違点2について検討する。
(ア)甲1は、「作業機械の周囲における人の存否を判定する機能を備える作業機械用周辺監視装置」に関する特許出願の公開公報であり、従来、「ショベル等の操作者は、警報音が止めば、所定範囲内で作業していた作業者が所定範囲外に退出したものと判断し、操作者自身による確認を行うことなくショベル等による作業を開始してしまうおそれがある」ことから、「作業機械の周囲の所定範囲内に存在していた人が所定範囲外に退出したことの確認を操作者に促すことができる作業機械用周辺監視装置を提供することを目的とする」ものである。(上記第5の1(1)ア(ア))
(イ)そして、甲1発明は、「警報制御手段13が出力させた警報は、その後に人存否判定手段12がショベル60の周囲に人が存在しないと判定した場合であっても、警報停止ボタンG1が押下されるまで停止しない」とされるものであるから、「警報制御手段13」が「警報を出力させるための警報開始信号を警報出力部7に対して出力し、警報出力部7から警報を出力させ」るとともになされる、「ゲートロック弁を閉状態にし、コントロールバルブと操作レバー等との間の作動油の流れを遮断して操作レバー等を無効に」することも同様に、操作者自身による確認が行われ、「警報停止ボタンG1が押下される」まで「停止しない」ものと認められる。
(ウ)上記(ア)において指摘したように、甲1発明が、「作業機械の周囲の所定範囲内に存在していた人が所定範囲外に退出したことの確認を操作者に促すことができる」ようにすることを目的とすることに鑑みると、甲1発明において、「制御装置」を、操作者による確認が不要となる、「前記操作装置を無効状態にした後で、前記所定領域内から物体が退出したと判定した場合に、前記操作装置を有効状態に戻す」ものに変更する動機付けがあったとはいえない。
(エ)よって、甲1発明及び甲2ないし甲15に記載の事項から、上記相違点2に係る本件訂正発明2の構成とすることは、当業者といえども、容易になし得たものとはいえない。
ウ 申立人の主張について
(ア)申立人の主張の概要
申立人は、手続補正書(第35ページ第9行~第36ページ第11行)にて、概略以下の主張をしている。
a 甲第1号証の段落【0205】に記載されたごとく、甲1発明においては、「警報制御手段13は、警報停止ボタンG1が押下されるまで、ショベル60による作業を禁止してもよい。具体的には、警報制御手段13は、ゲートロック弁を閉状態にし、コントロールバルブと操作レバー等との間の作動油の流れを遮断して操作レバー等を無効にしてもよい。」とされており、しかも、同段落【0223】に「一方、警報開始後に所定時間が経過したと判定した場合(ステップS43のYES)、警報制御手段13は、警報停止信号を警報出力部7に対して出力し、警報出力部7からの警報の出力を停止させる(ステップS44)。また、警報制御手段13は、人検出フラグの値を「0」(オフ)にリセットする(ステップS45)。」とされている。
b 警報制御手段13は、「警報停止ボタンG1が押下されるまで、ショベル60による作業を禁止してもよい。」とあるように、安全を確保すべき領域から安全確保の対象となる物体が退出又は不存在であることがわかったら、元の状態に戻そうとすることは当業者が当然想定することである(なお、ここでさらに安全を期するための装置や課程を加えることは任意事項であり、本件特許発明2とは無関係である。)。
(イ)主張の検討
a 段落【0223】(上記第5の1(1)ア(ク))には、「警報開始後に所定時間が経過したと判定した場合」に「警報出力部7からの警報の出力を停止させる」ことは記載されているものの、「警報開始後に所定時間が経過した」ことと「所定領域内から物体が退出したと判定」することとは異なることであるから、段落【0223】には、相違点2に係る本件訂正発明2の「前記操作装置を無効状態にした後で、前記所定領域内から物体が退出したと判定した場合に、前記操作装置を有効状態に戻す」に相当する構成が記載されているとはいえない。
b また、甲1は、「作業機械の周囲における人の存否を判定する機能を備える作業機械用周辺監視装置」に関する特許出願の公開公報であり、従来、「ショベル等の操作者は、警報音が止めば、所定範囲内で作業していた作業者が所定範囲外に退出したものと判断し、操作者自身による確認を行うことなくショベル等による作業を開始してしまうおそれがある」ことから、「作業機械の周囲の所定範囲内に存在していた人が所定範囲外に退出したことの確認を操作者に促すことができる作業機械用周辺監視装置を提供することを目的とする」ものであり((上記第5の1(1)ア(ア))、このような甲1の目的に鑑みると、甲1発明において、「安全を確保すべき領域から安全確保の対象となる物体が退出又は不存在であることがわかったら、元の状態に戻」すように変更する動機付けがあったとはいえない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
エ 小括
したがって、本件訂正発明2は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第15号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件訂正発明3について
本件訂正発明3は、本件訂正発明2の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を加えた発明であるから、上記(1)で検討した理由と同じ理由により、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第15号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件訂正発明4について
ア 対比
本件訂正発明4と甲1発明とを対比する。
(ア)本件訂正発明4の「操作装置」は、本件訂正発明1の「複数の操作装置」の上位概念といえるから、上記2(1)アの本件訂正発明1と甲1発明との対比における(ア)ないし(キ)については、本件訂正発明4と甲1発明との対比についても同様である。
(イ)そうすると、本件訂正発明4と甲1発明とは、
「下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、を備えたショベルであって、
油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータを操作するための操作装置と、
ショベルの周囲における所定領域内の物体を検出する物体検出装置と、
前記操作装置の有効状態と無効状態とを切り替え可能なゲートロックレバーと、
前記ゲートロックレバーとは別に前記操作装置の有効状態と無効状態とを切り替え可能な制御装置と、を有し、
前記制御装置は、
ショベルの待機状態において、前記ゲートロックレバーによって前記操作装置が有効状態に切り替えられている場合であって、且つ、前記物体検出装置の出力に基づいて前記所定領域内に物体が存在すると判定した場合に、前記操作装置を無効状態にする、
ショベル。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点3)
本件訂正発明4は、制御装置は、「前記操作装置を無効状態にした後で、前記所定領域内から物体が退出したと判定した場合であっても、前記ゲートロックレバーによって前記操作装置が無効状態に切り替えられた後で更に有効状態に切り替えられるまでは、前記操作装置の無効状態を維持する」のに対し、甲1発明は「警報停止ボタンG1が押下されるまで、ショベル60による作業を禁止」するものであり、「警報停止ボタンG1」は、「画像生成手段11」が、「周辺監視用仮想視点画像」に「重畳表示」し、「入力部3としてのタッチパネルとの協働によって構成されるソフトウェアボタン」であるが、「表示部5の近傍に設置されるハードウェアボタンであってもよ」いとされている点。
イ 判断
上記相違点3について検討する。
(ア)甲1は、「作業機械の周囲における人の存否を判定する機能を備える作業機械用周辺監視装置」に関する特許出願の公開公報であり、従来、「ショベル等の操作者は、警報音が止めば、所定範囲内で作業していた作業者が所定範囲外に退出したものと判断し、操作者自身による確認を行うことなくショベル等による作業を開始してしまうおそれがある」ことから、「作業機械の周囲の所定範囲内に存在していた人が所定範囲外に退出したことの確認を操作者に促すことができる作業機械用周辺監視装置を提供することを目的とする」ものである。(上記第5の1(1)ア(ア))
(イ)そして、甲1発明の「警報停止ボタンG1」が、「画像生成手段11」が「周辺監視用仮想視点画像」に「重畳表示」し、「入力部3としてのタッチパネルとの協働によって構成されるソフトウェアボタン」であるが、「表示部5の近傍に設置されるハードウェアボタンであってもよ」いとされるのは、上記(ア)に関連し、ショベル等の操作者が表示部の目視による作業機械の周囲の確認を確実にする意図があるものと認められる。
(ウ)上記(イ)において検討したように、甲1発明は、ショベル等の操作者が表示部の目視による作業機械の周囲の確認を確実にする意図があると認められることからすると、甲1発明において、操作者による表示部の目視確認を確実にするために「警報停止ボタンG1が押下されるまで、ショベル60による作業を禁止」する構成を離れて、「操作レバー等を無効」とした状態の解除を「ゲートロックレバー8」の操作によって行う動機付けはない。
(エ)そうすると、甲1発明及び甲2ないし甲15に記載の事項から、甲1発明において、表示部から離れて、「ゲートロックレバー8」によって無効状態の解消を行うものとし、相違点3に係る本件訂正発明4の「前記操作装置を無効状態にした後で、前記所定領域内から物体が退出したと判定した場合であっても、前記ゲートロックレバーによって前記操作装置が無効状態に切り替えられた後で更に有効状態に切り替えられるまでは、前記操作装置の無効状態を維持する」構成とすることは、当業者といえども、容易になし得たものとはいえない。
ウ 申立人の主張について
(ア)申立人の主張の概要
申立人は、手続補正書(第41ページ第10行~第45ページ最終行)にて、甲4発明を示し、概略以下の主張をしている。
a 甲4発明は、実質的に、「操作装置を無効にした後で、ゲートロックレバーによって操作装置が無効状態に切り替えられた後で更に有効状態に切り替えられるまでは、操作装置の無効状態を維持する、」構成を備えており、「ショベル」の技術分野に関するものであることで共通し、不如意の作動による危険を回避するために安全措置を講じるものである点で作用、機能が共通するものであって、そのような安全装置をさらに工夫しようとする動機付けがあるから、それらを組み合わせて相違点に係る構成に達することは当業者であれば容易になし得るものである。
(イ)主張の検討
a 上記イで検討したとおり、甲1発明が「警報停止ボタンG1」を「周辺監視用仮想視点画像」に「重畳表示」し、「入力部3としてのタッチパネルとの協働によって構成されるソフトウェアボタン」または「表示部5の近傍に設置されるハードウェアボタン」とするのは、ショベル等の操作者が表示部の目視による作業機械の周囲の確認を確実にする意図があるものと認められるから、甲1発明において安全装置にさらに工夫をするとしても、「警報停止ボタンG1」を表示部から離れた位置に配置することにはならず、甲1発明において「操作装置を無効にした後で、ゲートロックレバーによって操作装置が無効状態に切り替えられた後で更に有効状態に切り替えられるまでは、操作装置の無効状態を維持する」構成を採用する動機付けはない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
エ 小括
したがって、本件訂正発明4は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第15号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件訂正発明12について
ア 対比
本件訂正発明12と甲1発明とを対比する。
(ア)本件訂正発明12の「操作装置」は、本件訂正発明1の「複数の操作装置」の上位概念といえるから、上記2(1)アの本件訂正発明1と甲1発明との対比における(ア)ないし(キ)については、本件訂正発明12と甲1発明との対比についても同様である。
(イ)甲1発明は、「警報制御手段13」が「警報を出力させるための警報開始信号を警報出力部7に対して出力し、警報出力部7から警報を出力させ」るとともに、「警報停止ボタンG1が押下されるまで」、「ゲートロック弁を閉状態にし、コントロールバルブと操作レバー等との間の作動油の流れを遮断して操作レバー等を無効に」するものである。
そうすると、甲1発明は、「ゲートロック弁を閉状態にし、コントロールバルブと操作レバー等との間の作動油の流れを遮断して操作レバー等を無効」にした状態を「警報停止ボタンG1が押下される」ことによって有効状態にするものと認められ、甲1発明の「警報停止ボタンG1」は、本件訂正発明12の「前記制御装置によって無効状態に切り替えられた前記操作装置を有効状態に戻すスイッチ」に相当するといえる。
(ウ)よって、本件訂正発明12と甲1発明とは、
「下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、を備えたショベルであって、
油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータを操作するための操作装置と、
ショベルの周囲における所定領域内の物体を検出する物体検出装置と、
前記操作装置の有効状態と無効状態とを切り替え可能なゲートロックレバーと、
前記ゲートロックレバーとは別に前記操作装置の有効状態と無効状態とを切り替え可能な制御装置と、
前記制御装置によって無効状態に切り替えられた前記操作装置を有効状態に戻すスイッチを有し、
前記制御装置は、
ショベルの待機状態において、前記ゲートロックレバーによって前記操作装置が有効状態に切り替えられている場合であって、且つ、前記物体検出装置の出力に基づいて前記所定領域内に物体が存在すると判定した場合に、前記操作装置を無効状態にする、
ショベル。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点4)
本件訂正発明12は、「前記スイッチは、前記操作装置に設けられている」のに対し、甲1発明は「警報停止ボタンG1」は、「画像生成手段11」が、「周辺監視用仮想視点画像」に「重畳表示」し、「入力部3としてのタッチパネルとの協働によって構成されるソフトウェアボタン」または「表示部5の近傍に設置されるハードウェアボタン」として、表示部5ないしその近傍に設けられている点。
イ 判断
上記相違点4について検討する。
(ア)甲1は、「作業機械の周囲における人の存否を判定する機能を備える作業機械用周辺監視装置」に関する特許出願の公開公報であり、従来、「ショベル等の操作者は、警報音が止めば、所定範囲内で作業していた作業者が所定範囲外に退出したものと判断し、操作者自身による確認を行うことなくショベル等による作業を開始してしまうおそれがある」ことから、「作業機械の周囲の所定範囲内に存在していた人が所定範囲外に退出したことの確認を操作者に促すことができる作業機械用周辺監視装置を提供することを目的とする」ものである。(上記第5の1(1)ア(ア))
(イ)そして、甲1発明の「警報停止ボタンG1」が、「画像生成手段11」が、「周辺監視用仮想視点画像」に「重畳表示」し、「入力部3としてのタッチパネルとの協働によって構成されるソフトウェアボタン」または「表示部5の近傍に設置されるハードウェアボタン」として、表示部5ないしその近傍に設けられているのは、上記(ア)に関連し、ショベル等の操作者が表示部の目視による作業機械の周囲の確認を確実にする意図があるものと認められる。
(ウ)各種スイッチを操作装置に設けることは、甲10ないし甲15に示されるように周知技術であるといえる。
(エ)しかし、上記(イ)において検討したように、甲1発明は、ショベル等の操作者が表示部の目視による作業機械の周囲の確認を確実にする意図があると認められるから、各種スイッチを操作装置に設けることが周知技術であるとしても、「警報停止ボタンG1」を甲1発明の表示部から離れて、「操作装置」に設けることは、当業者といえども、容易になし得たこととはいえない。
(オ)そうすると、甲1発明及び甲2ないし甲15に記載の事項から、甲1発明において、「前記スイッチは、前記操作装置に設けられている」ものとすることは、当業者といえども、容易になし得たこととはいえない。
ウ 申立人の主張について
(ア)申立人の主張の概要
申立人は、申立人意見書(第33ページ下から5行~第37ページ第6行)及び手続補正書(第72ページ第5行~第75ページ第6行)にて、周知例として甲10ないし甲15を示し、概略以下の主張をしている。
a 各種スイッチを操作装置に設けることは、甲10ないし甲15に示されるように、古くから知られていることであり、甲1発明において「前記スイッチは、前記操作装置に設けられている、」という構成を採用することは、当業者であれば容易になし得るものである。
(イ)主張の検討
a 上記イで検討したとおり、甲1発明が「警報停止ボタンG1」を、「画像生成手段11」が「周辺監視用仮想視点画像」に「重畳表示」し「入力部3としてのタッチパネルとの協働によって構成されるソフトウェアボタン」または「表示部5の近傍に設置されるハードウェアボタン」として、表示部5ないしその近傍に設けられているものとするのは、ショベル等の操作者が表示部の目視による作業機械の周囲の確認を確実にする意図があるものと認められるから、甲1発明において、「警報停止ボタンG1」を表示部から離した位置に配置する変更は、表示部の目視による確認を確実とする意図に沿うものではなく、甲1発明において「警報停止ボタンG1」(スイッチ)について、「操作装置に設けられている」構成を採用する動機付けはない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
エ 小括
したがって、本件訂正発明12は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第15号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件訂正発明9について
上記第2のとおり、請求項9を削除する本件訂正が認められた。
そして、請求項9に対する本件特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
第6 むすび
以上のとおり、本件訂正特許発明1ないし8、10ないし12に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に本件訂正特許発明1ないし8、10ないし12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項9に対する本件特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700295