商標異議申立
2022-900406
リチウムイオン
- 審判番号
- 2022-900406
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2021-026311
- 登録番号
- 6596675
- 請求日
- 2022年09月29日
- 審決日
- 2023年08月08日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】株式会社小松製作所
- 【権利者代理人】弁理士法人三枝国際特許事務所
- 【異議申立人】株式会社 豊田自動織機
- 【異議申立人代理人】中村 知公
- 【異議申立人代理人】前田 大輔
- 【異議申立人代理人】伊藤 孝太郎
- 【異議申立人代理人】朝倉 美知
- 【異議申立人代理人】本田 彩香
- 審判長/審判官
- 審判長 小松 里美
- 審判官 山田 啓之
- 審判官 渡邉 あおい
- 分類
- T1651.13 -Z (W12) / T1651.272-Z (W12)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項3号商標法4条1項16号商標法43条の3第2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、商標法第4条第1項第16号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6596675号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6596675号商標の商標登録を取り消す。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6596675号商標(以下「本件商標」という。)は、「Lithium-ion」の文字を標準文字で表してなり、令和3年3月5日に登録出願、第12類「リチウムイオンバッテリーを搭載したフォークリフトトラック並びにその部品及び附属品,フォークリフトトラック並びにその部品及び附属品,電気自動車並びにその部品及び附属品,電動式乗物並びにその部品及び附属品」を指定商品として、同4年7月1日に登録査定、同年8月4日に設定登録されたものである。
第2 登録異議の申立ての理由(要旨)
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として資料1ないし資料19を提出した。
1 本件商標が商標法第3条第1項第3号に該当する理由
(1)本件商標は標準文字をもって、「Lithium-ion」の構成からなる商標である。
ここで、本件商標構成中の「Lithium」に相当する「リチウム」は、アルカリ金属元素の一つである。元素記号をLi、原子番号を3とし、銀白色の柔らかい金属である。
また、金属中最も軽い比重0.534であり、水と反応した場合は水素を発生させる金属である(資料1)。さらに、本件商標構成中の「ion」に相当する「イオン」は、原子が電子を帯びた状態の粒子を意味する。
そして「リチウム」が元素であること、また、「イオン」は電子を帯びた元素であることは、我が国の義務教育である中学校の理科の授業でおおむね習得するレベルの知識である。
したがって、本件商標の指定商品の需要者、取引者は、本件商標に接した場合、「電子を帯びたリチウムという元素」の観念を理解することが可能である。逆に、本件商標から「電子を帯びたリチウムという元素」なる観念以外の観念を認識することは、到底予測できない。
また、本件商標の指定商品を取り扱う需要者、取引者の行動においても、負(マイナス)の電子・電荷(イオン)を帯びた大気分子の集合を示すため「マイナスイオン」なる表示に接する機会は極めて多い。特に各種生活用品において「マイナスイオン」なる表示は多用されており、「電子を帯びたもの」を示す観念の表示として「○○○○イオン」なる表示は証拠をもって示すまでもなく、多数使用されている事実がある。
本件商標の指定商品の需要者、取引者が、かかる「マイナスイオン」なる表示に日々接している事実からも、「リチウムイオン」なる称呼が生じる本件商標から「電子を帯びたリチウムなる元素」との観念を理解することは、明らかである。
(2)本件商標の指定商品の需要者、取引者は、いわゆる「末端の消費者」ではない。本件商標の指定商品である「リチウムイオンバッテリーを搭載したフォークリフトトラック並びにその部品及び附属品、フォークリフトトラック並びにその部品及び附属品、電気自動車並びにその部品及び附属品、電動式乗物並びにその部品及び附属品」の需要者、取引者である。
(3)本件商標とその指定商品における「電池及びバッテリー」(以下「電池」という。)の関係
ア フォークリフトの動力源である電池について「リチウムイオンバッテリー」なる電池が使用されている事実が多数存在する(資料2、資料5~資料13)。
イ 本件商標の出願人は、同社のフォークリフトトラックであって「リチウムイオン電池」を搭載する車両を示す目的で、「リチウムイオンバッテリー搭載」及び「Lithium-ion」と表示している(資料3)。
ウ 電動工具の専門メーカーである株式会社マキタは、電動工具の電池としてリチウムイオン電池を採用しており、かかる使用を需要者、取引者に告知するため、「リチウムイオンバッテリー」、「LITHIUM-ION」、「Lithium ion」の表示を実際に使用し、電動工具に装着する電池が「リチウムイオン電池」であることを表示している(資料4)。
特に、同社は、「リチウムイオンバッテリー」の態様に加え、「バッテリー」及び「電池」に相当する表示がない「Lithium-ion」及び「LITHIUM-ION」の表示を実際に電池へ表示しており、電池の種別が「リチウムイオン電池」であることを暗示している(資料4)。
エ かかる事実は、「電池」及び「バッテリー」に相当する表示を併記せず、「Lithiumion-ion」及び「LITHIUM-ION」の表示のみが電池の種別、すなわち、「リチウムイオン」を使用したバッテリーであることを示している表示法の存在を示している。
同時に、フォークリフトの分野においても、「リチウムイオン電池」及び「リチウムイオンバッテリー」の表示とともに、又は単独で「リチウムイオン」、「リチウム」若しくは「Li」の表示を使用する例が多数確認できる(資料7、資料8、資料10、資料14)。
仮に「Lithium-ion」及び「LITHIUM-ION」の表示が「ありふれたものではない」又は「普通に用いられたものではない」などの主張があるとすれば、これらの事実を看過した主張であるといわざるを得ない。
オ 前記の申立人及び株式会社マキタによる使用例に加え、フォークリフトトラックのバッテリーに「リチウムイオン電池」、「リチウムイオンバッテリー」、及びこれらを指標するために略称的に「リチウムイオン」、「リチウム」、「Li-ion」などを表示する事実が、多数確認できる(資料6~資料14)。
(4)本件商標とその指定商品「リチウムイオンバッテリーを搭載したフォークリフトトラック並びにその部品及び附属品」との関係
上記(3)の事例は、「リチウムイオン電池」、「リチウムイオンバッテリー」、「リチウムイオン」、「リチウム」、「Li-ion」などが、いずれもフォークリフトトラックが搭載する電池が「リチウムイオン電池」(リチウムイオンバッテリー)であることを指し示す表示である。
フォークリフトトラックの電池は、旧来から「鉛電池」を使用している。しかしながら、リチウムイオン電池は鉛電池と比較し、環境負荷物質がゼロとあるためカーボンニュートラルに貢献すること、鉛電池に対し製品寿命が約三倍長持ちすること、鉛電池の必要な補水作業が不要でありメンテナンスフリーであること、充電時間が鉛電池と比較し約1/4という短時間であること、などの搭載又は導入メリットがあることから、リチウムイオン電池を標準搭載したフォークリフトトラックの発売や、鉛電池を使用したフォークリフトトラックのリチウムイオン電池への切換えなどが、フォークリフトトラックの取引業界では積極的に実施されていることを前記事実から容易に理解できる。
すなわち、本件商標の指定商品である「リチウムイオンバッテリーを搭載したフォークリフトトラック並びにその部品及び附属品」の取引界においては、「リチウムイオン電池」、「リチウムイオンバッテリー」、「リチウムイオン」、「リチウム」の表示は、フォークリフトトラックに搭載する電池の種別及び品質を表示するものとして広く使用されている明らかな事実が本件商標の登録時である2022年8月4日の時点で多数存在する。
その結果、本件商標の指定商品である「リチウムイオンバッテリーを搭載したフォークリフトトラック並びにその部品及び附属品」の需要者、取引者は、本件商標を表示した当該指定商品に接した場合、「リチウムイオンバッテリーを搭載したフォークリフトトラック」と当該指定商品の「品質」を理解することは明らかである。
または、かかるフォークリフトトラックに使用する「部品及び附属品」の表示、すなわち、指定商品である「部品及び附属品」はフォークリフトトラックのリチウムイオン電池として使用されるという「効能」若しくは「用途」を表示するものとして理解することが自然である。
ここで、フォークリフトトラックの搭載電池を表示するためには「リチウムイオン電池」又は「リチウムイオンバッテリー」の表示が一般的であり、本件商標の表示は指定商品「リチウムイオンバッテリーを搭載したフォークリフトトラック並びにその部品及び附属品」を表示するものとして、「実際に使用されていない」ことを理由に、本件商標は指定商品の品質等を表示するものではないとする主張があるかもしれない。
しかしながら、商標法第3条第1項第3号に掲げる商標が、自他商品の識別力の要件を欠くと規定されているのは、このような商標は、指定商品との関係で、その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途等を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品の識別力を欠くものであることによるものと解される(最高裁 昭和53年(行ツ)第129号参照)。
そうすると、出願に係る商標が、その指定商品について商品の品質等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるというためには、商標登録がされた時点において、当該商標が当該商品である「リチウムイオンバッテリーを搭載したフォークリフトトラック並びにその部品及び附属品」との関係でこれら商品の品質を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、当該商標の取引者、需要者によって当該商品に使用された場合に、将来を含め、商品の品質を表示したものと一般に認識されるものであれば足りると解される。
そして、当該商標の取引者、需要者によって当該商品に使用された場合に商品の品質等を表示したものと一般に認識されるかどうかは、当該商標の構成やその指定商品に関する取引の事情を考慮して判断すべきである(知財高裁 令和4年(行ケ)第10002号参照)。
「Lithium-ion」は、「リチウムイオン電池」の商品の品質を表示記述するものとして取引に際し必要不可欠な表示であり、本件商標の取引者、需要者によって「リチウムイオンバッテリーを搭載したフォークリフトトラック並びにその部品及び附属品」に使用された場合に、将来を含め、商品の品質、用途及び効能を表示したものと、すなわち、「リチウムイオンバッテリーを搭載したフォークリフトトラック並びにその部品及び附属品」と一般に認識されるものである。
そして、本件商標の取引者、需要者によって当該商品に使用された場合に商品の品質等を表示したものと一般に認識されるかどうかは、当該商標の構成やその指定商品に関する取引の事情を考慮して判断すべきである。
ここで改めて確認するに、指定商品「リチウムイオンバッテリーを搭載したフォークリフトトラック並びにその部品及び附属品」の分野において、フォークリフトトラックに搭載する電池の名称を示す表示として「リチウムイオン電池」、「リチウムイオンバッテリー」、「リチウムイオン」、「リチウム」、「Li」が、前述のとおり多数使用されている事実がある。
一方、仮に「リチウムイオン」及び「リチウム」がフォークリフトトラックの搭載電池又は搭載バッテリーを指し示すものとして使用されていない場合であっても、フォークリフトトラックに搭載する電池の名称を指し示す表示として「リチウムイオン電池」及び「リチウムイオンバッテリー」が多用されている事実から、指定商品である「リチウムイオンバッテリーを搭載したフォークリフトトラック並びにその部品及び附属品」に表示された「Lithium-ion」の商標に接した需要者、取引者は、かかる商標から「Lithium-ion」はフォークリフトトラック搭載の電池の品質又は部品若しくは附属品の用途を表す表示と理解することが想定される。
現に、本件商標の出願人は「リチウムイオンバッテリーを搭載したフォークリフトトラック」の広報資料に「Lithium-ion」を表示し搭載する電池が「リチウムイオン電池」であることを表示するために使用している(資料3)。
そして、「リチウムイオンバッテリーを搭載したフォークリフトトラック並びにその部品及び附属品」は実際にリチウムイオン電池を搭載していることから、かかる指定商品の取引に際し、指定商品の品質等を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないことが明らかである。
よって、本件商標は、指定商品「リチウムイオンバッテリーを搭載したフォークリフトトラック並びにその部品及び附属品」との関係において、自他商品の識別力を発揮することはできず、また、指定商品「リチウムイオンバッテリーを搭載したフォークリフトトラック並びにその部品及び附属品」の需要者、取引者はその使用を欲し、及び欲せざる得ない商標であるから、特定人による独占を認めるべきではない。
したがって、本件商標の指定商品である「リチウムイオンバッテリーを搭載したフォークリフトトラック並びにその部品及び附属品」に関し自他商品の識別力を有しない商標であるから、その登録は取り消されるべきである。
(5)本件商標とその指定商品「フォークリフトトラック並びにその部品及び附属品」との関係
前記(4)のとおり、現在、フォークリフトトラックに搭載する電池の品質を表示するために、「リチウムイオン電池」、「リチウムイオンバッテリー」、「リチウムイオン」、「リチウム」、「Li」の表示が多用されている事実が存在する。
よって、「フォークリフトトラック並びにその部品及び附属品」に関して、需要者、取引者が本件商標に接した場合は、「そのフォークリフトトラックはリチウムイオン電池(リチウムイオンバッテリー)」を搭載していると認識することが明らかである。
したがって、本件商標は、指定商品「フォークリフトトラック並びにその部品及び附属品」との関係において自他商品の識別力を発揮することはできない。
また、本件商標は、指定商品「フォークリフトトラック並びにその部品及び附属品」の需要者、取引者が、フォークリフトトラックの搭載する電池がリチウムイオン電池(「リチウムイオンバッテリー」)であることを示すために使用を欲し、及び欲せざる得ない商標であるから、特定人による独占を認めるべきではない。
したがって、本件商標の指定商品である「フォークリフトトラック並びにその部品及び附属品」に関し自他商品の識別力を具備しない商標であるから、その登録は取り消されるべきである。
(6)本件商標とその指定商品「電気自動車並びにその部品及び附属品」との関係
本件商標の指定商品である「電気自動車並びにその部品及び附属品」の分野において、動力源であるバッテリーにリチウムイオン電池(リチウムイオンバッテリー)が旧来から搭載されている(資料15、資料16)。すなわち、「リチウムイオンバッテリー」及び「リチウムイオン電池」の表示は、電気自動車の分野において旧来から使用されている(資料15、資料16)。
かかる事実が存在する状況下、指定商品である「電気自動車並びにその部品及び附属品」に本件商標を使用した場合、当該指定商品の需要者、取引者は、本件商標が指定商品である「電気自動車並びにその部品及び附属品」が搭載する電池が「リチウムイオン電池」又は「リチウムイオンバッテリー」であることを容易に理解するから、これを自他商品の識別標識であるとは理解しない。
ましてや、本件商標の指定商品「電気自動車並びにその部品及び附属品」の需要者、取引者は、これらの商品を購入し使用する末端の消費者のみではなく、「電気自動車並びにその部品及び附属品」の製造者、流通業者、販売業者、購買担当者など、「電気自動車並びにその部品及び附属品」に関する当業者としての知識及び見識を有する者が含まれる。
例えば、「電気自動車」の動力源である電池(バッテリー)を修理・補充電又は新品に入れ替える者が指定商品の取引の上流下流において介在するところ、かかる者が電気自動車の電池を新品に入れ替えるため購入した電池に「Lithium-ion」との表示があれば、「当該電池はリチウムイオン電池である」と商品の品質を理解せざるを得ない。
したがって、本件商標は指定商品である「電気自動車並びにその部品及び附属品」に関し自他商品の識別力を具備しない商標であるから、その登録は取り消されるべきである。
(7)本件商標とその指定商品「電動式乗物並びにその部品及び附属品」との関係
本件商標の指定商品である「電動式乗物並びにその部品及び附属品」の分野において、動力源であるバッテリーにリチウムイオン電池(リチウムイオンバッテリー)が旧来から搭載されており、「リチウムイオンバッテリー」及び「リチウムイオン電池」の表示は、「電動式乗物並びにその部品及び附属品」の分野において旧来から使用されている事実がある(資料17~資料19)。
かかる事実が存在する状況下、指定商品である「電動式乗物並びにその部品及び附属品」に本件商標を使用した場合、当該指定商品の需要者、取引者は、表示「Lithium-ion」からは、本件商標が指定商品である「電動式乗物並びにその部品及び附属品」が搭載する電池が「リチウムイオン電池」又は「リチウムイオンバッテリー」であることを容易に理解し、これを自他商品の識別標識とは理解しない。
ましてや、本件商標の指定商品「電動式乗物並びにその部品及び附属品」の需要者、取引者は、これらの商品を購入し使用する末端の消費者のみではなく、「電動式乗物並びにその部品及び附属品」の製造者、流通業者、販売業者、購買担当者など、「電動式乗物並びにその部品及び附属品」に関する当業者としての知識及び見識を有する者が含まれる。
例えば、「電動式乗物」の動力源である電池(バッテリー)を修理・補充電又は新品に入れ替える者が指定商品の取引において介在するところ、かかる者が電動式乗物の電池を新品に入れ替えるため購入した電池に「Lithium-ion」との表示があれば、「当該電池はリチウムイオン電池である」と商品の品質を理解せざるを得ない。
したがって、本件商標は指定商品である「電動式乗物並びにその部品及び附属品」に関し自他商品の識別力を具備しない商標であるから、その登録は取り消されるべきである。
2 本件商標が商標法第4条第1項第16号に該当する理由
上記1のとおり、本件商標の指定商品の需要者、取引者は、本件商標に接した場合、指定商品である「リチウムイオンバッテリーを搭載したフォークリフトトラック,フォークリフトトラック,電気自動車,電動式乗物」の動力源である電池が、リチウムイオン電池(リチウムイオンバッテリー)であることを示す表示にすぎず、自他商品の識別力を欠く商標であると理解する。
よって、かかるリチウムイオン電池(リチウムイオンバッテリー)を表示する本件商標を、リチウムイオン電池(リチウムイオンバッテリー)を搭載しない指定商品であるフォークリフトトラック、例えば、鉛電池を搭載するフォークリフトトラックに本件商標を使用した場合は、商品の品質について誤認を招くことは明らかである。
また、昨今の二酸化炭素排出量規制の状況化、化石燃料のみを使用するガソリンエンジンのフォークリフトトラックに本件商標を表示すれば、需要者、取引者に対し、その商品の動力源はリチウムイオン電池を使用したフォークリフトトラックとの誤認を招くおそれもある。
一方、本件商標の指定商品の需要者、取引者は、本件商標「Lithium-ion」に接した場合、指定商品である「リチウムイオンバッテリーを搭載したフォークリフトトラックの部品及び附属品,フォークリフトトラックの部品及び附属品,電気自動車の部品及び附属品,電動式乗物の部品及び附属品」がリチウムイオン電池(リチウムイオンバッテリー)であることを認識することとなり、仮にその指定商品がリチウムイオン電池(リチウムイオンバッテリー)でない場合は、その商品の品質に誤認を招く結果となる。
したがって、本件商標は、その指定商品に使用した場合、商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標であるから、その登録は取り消されるべきである。
3 結語
以上のとおり、本件商標は、その指定商品との関係において、自他商品の識別力を欠く商標であるから、商標法第3条第1項第3号に該当し、また、需要者、取引者に対し商品の品質の誤認を招く商標であるから、同法第4条第1項第16号に該当する。よって、本件商標の登録は取り消されるべきである。
第3 当審における取消理由の要旨及びそれに対する本件商標権者の意見
当審において、本件商標は、その指定商品に使用した場合、それが「リチウムイオン電池を用いた商品」であるという商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから、商標法第3条第1項第3号に該当し、これをその指定商品中、「リチウムイオン電池を用いた商品」以外の商品に使用した場合、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるというべきであるから、同法第4条第1項第16号に該当する旨の取消理由を本件商標権者に対し令和5年5月12日付けで通知し、相当の期間を指定して意見を求めた。
本件商標権者は、上記取消理由の通知に対して、指定した期間内に何ら意見を述べていない。
第4 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
(1)事実認定
本件商標は、上記第1のとおり、「Lithium-ion」の標準文字からなるところ、職権による調査によれば、本件商標の登録査定時以前に発行された辞書類において、別掲のとおり、「リチウム(Lithium)」、「イオン(ion)」、「リチウムイオンバッテリー(「Lithium-ion」 battery)」及び「リチウムイオン電池(「Lithium-ion」 battery)」の文字に関する記載がある。
これらの記載及び申立人の提出に係る証拠(資料1~資料19)によれば、次の事実が認められる。
ア 「リチウム(Lithium)」の文字は、要するに、「アルカリ金属元素の一種であって、リチウムイオン電池の材料として用いるもの」の意味合いを有する語であって、本件商標の登録査定時以前から、「リチウムイオン電池」の用例で親しまれている、広く知られた語であることが認められ、「イオン(ion)」の文字は、「正または負の電気をもつ原子または原子団。」の意味を有する広く知られた語であることが認められる(別掲(1))。
イ 「リチウムイオンバッテリー(Lithium-ion battery)」と「リチウムイオン電池(Lithium-ion battery)」は同義と認められるところ(以下、これらをまとめて「リチウムイオン電池」という。)、これは、リチウムイオンを用いた充電式電池の一種であって、本件商標の登録査定時以前には、「電気自動車」のバッテリー(動力源)として注目されていたことや、「リチウムイオン電池」の進歩により、「電気自動車」の性能が飛躍的に高まり、2009年以降、各自動車メーカーによる「電気自動車」の生産量が増加してきたことが認められる(別掲(2)、(3))。
ウ 本件商標の指定商品の分野においては、本件商標の登録査定時以前から、自動車の電動化の必要性やその市場の拡大の可能性が重視され、「電気自動車」、「ハイブリッド自動車」及び「フォークリフト」に搭載するための「リチウムイオン電池」が開発されていた実情がうかがえるとともに(資料7、資料8、資料15、資料17)、実際に、「リチウムイオン電池」を用いた「フォークリフト」、「電気自動車」及び「ハイブリッド自動車」が存在していた事実が認められる(資料2、資料8、資料11、資料15)。
(2)判断
上記(1)の認定事実によれば、本件商標は、我が国において広く知られる「リチウム(Lithium)」と「イオン(ion)」の両語を「ハイフン(「-」)」を介して結合し、「Lithium-ion」と英語表記したものと容易に理解させるものといえる。
また、「リチウム(Lithium)」の語は、「リチウムイオン電池の材料として用いるもの」として本件商標の登録査定時以前より広く知られているものであって、「リチウムイオン電池」の用例で親しまれているものといえる。
そして、「リチウムイオン電池」は、本件商標の登録査定時以前から、「電気自動車」のバッテリー(動力源)として注目されていたことや、その進歩により「電気自動車」の生産が増加してきた事実が認められ、「フォークリフト」や「ハイブリッド自動車」の分野においても、本件商標の登録査定時以前に、動力源として用いられていた事実が認められ、さらに、「電気自動車」、「ハイブリッド自動車」及び「フォークリフト」に搭載するための「リチウムイオン電池」が開発されていた実情がうかがえる。
以上からすると、本件商標は、これをその指定商品である「リチウムイオンバッテリーを搭載したフォークリフトトラック並びにその部品及び附属品,フォークリフトトラック並びにその部品及び附属品,電気自動車並びにその部品及び附属品,電動式乗物並びにその部品及び附属品」に使用した場合には、本件商標の登録査定時において、その商品の取引者、需要者に、それが「リチウムイオン電池を用いた商品」であると認識させるものであったというのが相当である。
そして、本件商標は、「Lithium-ion」の文字を標準文字で表してなることから、その構成文字を普通に用いられる方法で表示する標章であることは明らかである。
したがって、本件商標は、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として、商標法第3条第1項第3号に該当する。
また、本件商標は、これをその指定商品中、「リチウムイオン電池を用いた商品」以外の商品に使用した場合、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるというべきであるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。
2 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反してされたものであるから。同法第43条の3第2項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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