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特許異議申立

2023-700749

ビールテイスト飲料

審判番号
2023-700749
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-569258
登録番号
7209021
請求日
2023年07月19日
審決日
2024年02月29日
公報発行日
2024年04月26日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】サントリーホールディングス株式会社
  • 【権利者代理人】細田 芳徳
  • 【異議申立人】猪狩 充
審判長/審判官
  • 審判長 粟野 正明
  • 審判官 井上 猛
  • 審判官 佐藤 陽一
分類
P1651.113-Y (C12C) / P1651.121-Y (C12C) / P1651.537-Y (C12C) / P1651.536-Y (C12C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第36条、特許法第113条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7209021号発明「ビールテイスト飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7209021号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7209021号(請求項の数4。以下、「本件特許」という。)は、2019年(平成31年)1月31日を国際出願日とする特許出願(特願2020-569258号)に係るものであって、令和5年1月11日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和5年1月19日である。)。 その後、令和5年7月19日に、本件特許の請求項1~4に係る特許に対して、特許異議申立人である猪狩充(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。 本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は、以下のとおりである。 令和5年 7月19日提出 特許異議申立書 10月20日付け 取消理由通知書 12月15日提出 意見書 第2 本件発明 本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」等という。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。 【請求項1】 4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン(4MMP)を含有するビールテイスト飲料であって、α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))が45以上であり、4MMPの含有量が10~250pptである、ビールテイスト飲料。 【請求項2】 α酸の含有量が1.0ppm以下である、請求項1記載のビールテイスト飲料。 【請求項3】 請求項1又は2記載のビールテイスト飲料の製造方法であって、ホップ含有水が130℃超160℃以下、0.27~0.62MPaの条件下で高温高圧処理して得られたホップ処理物を、ビールテイスト飲料の製造にかかるいずれかの工程において添加する、ビールテイスト飲料の製造方法。 【請求項4】 前記ホップ処理物の調製に用いるホップが、アポロ、カスケード、ザーツ、シトラ、シムコー、シュトリッセルシュパルト、チヌーク、ネルソンソーヴィン、及びハラタウブランからなる群より選択される1種以上の品種を含む、請求項3記載の製造方法。 第3 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要 1 特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由 本件特許の請求項1~4に係る特許は、下記(1)~(12)のとおり、特許法113条2号及び4号に該当する。証拠方法は、甲第1号証~甲第14号証(以下、単に「甲1」等という。下記(13)を参照。)である。 (1)申立理由1-1(新規性) 本件発明1、2は、甲1に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2に係る特許は、同法113条2号に該当する。 (2)申立理由1-2(新規性) 本件発明1~4は、甲2に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~4に係る特許は、同法113条2号に該当する。 (3)申立理由1-3(新規性) 本件発明1~4は、甲3に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~4に係る特許は、同法113条2号に該当する。 (4)申立理由1-4(新規性) 本件発明1~4は、甲4に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~4に係る特許は、同法113条2号に該当する。 (5)申立理由1-5(新規性) 本件発明1~4は、甲5に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~4に係る特許は、同法113条2号に該当する。 (6)申立理由2-1(進歩性) 本件発明1、2は、甲1に記載された発明及び甲4~甲7に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2に係る特許は、同法113条2号に該当する。 (7)申立理由2-2(進歩性) 本件発明1~4は、甲2に記載された発明並びに甲4~甲7、甲10及び甲11に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~4に係る特許は、同法113条2号に該当する。 (8)申立理由2-3(進歩性) 本件発明1~4は、甲3に記載された発明並びに甲4~甲7、甲10及び甲11に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~4に係る特許は、同法113条2号に該当する。 (9)申立理由2-4(進歩性) 本件発明1~4は、甲4に記載された発明並びに甲5~甲7、甲10及び甲11に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~4に係る特許は、同法113条2号に該当する。 (10)申立理由2-5(進歩性) 本件発明1~4は、甲5に記載された発明並びに甲4、甲6、甲7、甲10及び甲11に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~4に係る特許は、同法113条2号に該当する。 (11)申立理由3(サポート要件) 本件発明1、3、4については、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に適合するものではないから、本件特許の請求項1、3、4に係る特許は、同法113条4号に該当する。 (12)申立理由4(実施可能要件) 本件発明1~4については、発明の詳細な説明の記載が特許法36条4項1号に適合するものではないから、本件特許の請求項1~4に係る特許は、同法113条4号に該当する。 (13)証拠方法 ・甲1 特開2013-220091号公報 ・甲2 特開2017-49号公報 ・甲3 特開2017-50号公報 ・甲4 T. Kishimoto et al., "Comparison of 4-Mercapto-4-methylpentan-2-one Contents in Hop Cultivars from Different Growing Regions", Journal of Agricultural and Food Chemistry, 2008, 56, p.1051-1057 ・甲5 J. Gros et al., "Occurrence of Odorant Polyfunctional Thiols in Beers Hopped with Different Cultivars. First Evidence of an S-Cysteine Conjugate in Hop (Humulus lupulus L.)", Journal of Agricultural and Food Chemistry, 2012, 60, p.7805-7816 ・甲6 国際公開第2013/077055号 ・甲7 特開2014-128240号公報 ・甲8 「醸造物の成分」、財団法人日本醸造協会、平成11年12月10日、p.250-272 ・甲9 「ビール醸造技術」、食品産業新聞社、1999年12月28日、p.39-52、59-66 ・甲10 米国特許出願公開第2016/0168519号明細書 ・甲11 特開2013-135648号公報 ・甲12 吉田学、「ホップ」、醸協、2000年、第95巻、第8号、p.550-559 ・甲13 岸本徹、「ビールに特徴的な香りを付与するホップ由来香気成分」、醸協、2009年、第104巻、第3号、p.157-169 ・甲14 国際公開第2020/157891号 2 取消理由通知書に記載した取消理由 (1)取消理由1(サポート要件) 上記1の申立理由3(サポート要件)(うち、α酸の含有量に関するもの)と同旨 第4 当審の判断 以下に述べるように、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 1 取消理由1(サポート要件)、申立理由3(サポート要件) (1)本件発明1について ア 本件明細書の記載(【0005】)によれば、本件発明1が解決しようとする課題は、芳醇なカシス様の香りが付与され、かつホップ由来の嫌な苦みが低減されたビールテイスト飲料を提供することであると認められる。 イ 本件明細書の記載(【0006】~【0008】、【0011】)によれば、上記アの課題は、一応、「4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン(4MMP)を含有」し、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))が45以上」であるビールテイスト飲料によって解決できるとされている。 ウ(ア)また、本件明細書には、4MMPは、カシス様の香りをもつ成分であり、ビールテイスト飲料にカシス様の香りを付与する観点から、好ましくは10ppt以上であること(【0009】)、α酸は、ホップに含まれる苦味成分であり、ホップ由来の嫌な苦みの一因であり、ビールテイスト飲料におけるホップ由来の嫌な苦みを低減する観点から、好ましくは1.0ppm以下であること(【0010】)が記載されている。 (イ)そして、本件明細書には、試験例1(添加官能)(【0041】~【0045】、表1)、試験例2(ビール醸造)(【0046】~【0051】、表2)が記載されているところ、これら試験例の結果からは、4MMPの含有量が10ppt以上、α酸の含有量が1.0ppm以下、4MMP(ppt)/α酸(ppm)が45以上であるビールテイスト飲料であれば、上記アの課題が解決できることが理解できるものの、4MMPの含有量が10ppt未満である場合や、α酸の含有量が1.0ppm超である場合においても、4MMP(ppt)/α酸(ppm)が45以上であれば、上記アの課題が解決できることが理解できるとはいえない。 特に、本件明細書には、4MMPの含有量が10ppt以上、α酸の含有量が1.0ppm超、4MMP(ppt)/α酸(ppm)が45以上であるビールテイスト飲料の具体例が記載されていないから、ホップ由来の嫌な苦みの一因であるα酸の含有量が1.0ppm超である場合においても、4MMPの含有量が10ppt以上であり、4MMP(ppt)/α酸(ppm)が45以上であれば、上記アの課題が解決できること(特に、ホップ由来の嫌な苦みが低減されること)が理解できるとはいえない。また、本件明細書には、そのようなことが理解できるような説明がされているともいえない。 エ(ア)取消理由通知書では、取消理由1(サポート要件)として、概ね上記ウ(イ)の点について指摘した。なお、取消理由1(サポート要件)は、申立理由3(サポート要件)(うち、α酸の含有量に関するもの)と同旨のものである。 (イ)これに対して、特許権者は、令和5年12月15日提出の意見書において、概ね以下のとおり主張した。 「本件発明は「ビールテイスト飲料におけるα酸の含有量に対する4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン(4MMP)の含有量の質量比を一定以上とすること」で課題を解決するものであり(本件明細書【0008】)、α酸の含有量が1.0ppm以下に限定されるものではない(本件明細書【0010】)。 また、4MMPの含有量が10ppt以上、α酸の含有量が1.0ppm超、4MMP(ppt)/α酸(ppm)が45以上であるサンプルA~Cについて、本件実施例と同様にして官能評価を行ったところ、α酸が2.0ppm、3.0ppm、5.0ppmのいずれのサンプルについても、4MMP(ppt)/α酸(ppm)が50であれば、苦みの質に優れるものであり、課題を解決できていることが分かる。これは、4MMPによりα酸の苦みがマスキングされているためと推測される。 [図:0001409130000001.jpg] 」 (ウ)特許権者の上記(イ)の主張は、本件明細書に記載された事項に基づくものと認められるところ、当該主張によれば、当業者であれば、α酸の含有量が1.0ppm超である場合においても、4MMPの含有量が10ppt以上であり、4MMP(ppt)/α酸(ppm)が45以上であれば、上記アの課題が解決できることが理解できる(よって、取消理由1(サポート要件)と、これと同旨の申立理由3(サポート要件)(うち、α酸の含有量に関するもの)は解消した。)。 オ 以上のとおり、特許権者の上記エ(イ)の主張を考慮し、本件明細書の記載を総合すれば、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))が45以上であり、4MMPの含有量が10~250pptである」ことが特定された本件発明1は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであって、当業者が出願時の技術常識に照らして発明の詳細な説明の記載により上記アの課題を解決できると認識できる範囲のものということができる。 したがって、本件発明1については、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものである。 (2)本件発明3、4について ア 本件明細書の記載(【0005】)によれば、本件発明3、4が解決しようとする課題は、芳醇なカシス様の香りが付与され、かつホップ由来の嫌な苦みが低減されたビールテイスト飲料の製造方法を提供することであると認められる。 イ 本件発明3、4は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるところ、本件明細書には、「ホップ含有水が130℃超160℃以下、0.27~0.62MPaの条件下で高温高圧処理して得られたホップ処理物を、ビールテイスト飲料の製造にかかるいずれかの工程において添加する」こと(【0013】、【0014】)、「前記ホップ処理物の調製に用いるホップが、アポロ、カスケード、ザーツ、シトラ、シムコー、シュトリッセルシュパルト、チヌーク、ネルソンソーヴィン、及びハラタウブランからなる群より選択される1種以上の品種を含む」こと(【0014】)についても記載されている。 ウ そうすると、上記(1)で本件発明1について述べたのと同様の理由により、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))が45以上であり、4MMPの含有量が10~250pptである」ことが特定された本件発明3、4は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであって、当業者が出願時の技術常識に照らして発明の詳細な説明の記載により上記アの課題を解決できると認識できる範囲のものということができる。 したがって、本件発明3、4についても、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものである。 (3)申立人の主張について ア 申立人は、本件発明3、4が解決しようとする課題は、芳醇なカシス様の香りが付与され、かつホップ由来の嫌な苦みが低減されたビールテイスト飲料の製造方法を提供することであるところ、本件明細書の記載等について以下のイ~オのとおり指摘し、本件発明3、4の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないと主張する。 しかしながら、申立人の主張にかかわらず、本件発明3、4については、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものであることは、上記(2)のとおりである。 よって、申立人の主張は採用できない。 以下、念のため、申立人の指摘について検討する。 イ 申立人は、本件明細書には、本件発明3の温度及び圧力を満たす条件でホップ含有水を高温高圧処理して得られたホップ処理物をビールテイスト飲料の製造工程において添加することで、ビールテイスト飲料を実際に製造した具体例は記載されていない(実施例8では、130℃で高温高圧処理しており、「130℃超」ではない。)と指摘する。 しかしながら、本件明細書には、ホップ含有水を130~160℃で高温高圧処理してホップ処理物を得て、ビールテイスト飲料の製造工程において添加することが記載され(【0013】、【0014】)、また、実施例8では、ホップ含有水を「130℃超」に近接した条件である130℃で高温高圧処理してホップ処理物を得て、ビールテイスト飲料を実際に調製したことが記載され(【0046】、表2)、さらに、試験例3の調製例4~8では、ホップ含有水を135~150℃の各温度で高温高圧処理して、ビールテイスト飲料の調製に用いるホップ処理物(ホップ抽出物)を得たことが記載されている(【0052】、【0054】、表3)。 本件明細書の上記記載を踏まえると、本件明細書に、本件発明3の温度及び圧力を満たす条件でホップ含有水を高温高圧処理して得られたホップ処理物をビールテイスト飲料の製造工程において添加することで、ビールテイスト飲料を実際に製造した具体例が記載されていないとしても、当業者であれば、ホップ含有水を130℃超160℃以下で高温高圧処理してホップ処理物を得て、ビールテイスト飲料の製造工程において添加することで、ビールテイスト飲料を実際に製造できることが理解でき、それにより本件発明3、4の課題が解決できることも理解できる。 ウ 申立人は、本件発明3の温度及び圧力を満たす条件でホップ含有水を高温高圧処理して得られたホップ処理物をビールテイスト飲料の製造工程において添加したからといって、目的の組成を有するビールテイスト飲料が当然に得られるとは限らず、本件明細書の記載を考慮しても、一般的なビールテイスト飲料の製造方法において、どのような製造条件を採用すれば、4MMP/α酸量が45未満であるホップ処理物をビールテイスト飲料の製造工程において添加した場合に、4MMP/α酸量が45以上であるビールテイスト飲料が得られるのか明らかではないと指摘する。 しかしながら、本件発明3、4では、「請求項1又は2記載のビールテイスト飲料」の製造方法であることが特定されていることから、申立人の指摘にかかわらず、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))が45以上」であるビールテイスト飲料が製造される場合に限定されているものである。 また、本件発明3、4は、本件発明3の温度及び圧力を満たす条件でホップ含有水を高温高圧処理して得られたホップ処理物をビールテイスト飲料の製造工程において添加するだけで、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))が45以上」であるビールテイスト飲料が製造されるものに限定されているわけではない。仮に、本件発明3の温度及び圧力を満たす条件でホップ含有水を高温高圧処理して得られたホップ処理物をビールテイスト飲料の製造工程において添加するだけでは、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))が45以上」であるビールテイスト飲料を製造することができないのであれば、例えば、本件明細書の試験例1(【0042】、表1)のように、市販のα酸や4MMPを添加することによって、所望の組成を有するビールテイスト飲料を製造することができることは、当業者にとって明らかである。 エ 申立人は、ホップ処理物をビールテイスト飲料の製造工程において添加することによって所望のビールテイスト飲料を得るためには、ホップ処理物の調製に用いるホップが4MMP又はその前駆体成分を含んでいる必要があるところ、あらゆる品種のホップに4MMP又はその前駆体成分が含まれているとは限らず、4MMP又はその前駆体成分を含まないホップから得られたホップ処理物をビールテイスト飲料の製造工程において添加した場合に、得られるビールテイスト飲料が課題を当然に解決できるとはいえないと指摘する。 しかしながら、本件明細書の記載全体を合理的に理解すれば、本件発明3、4においては、4MMP又はその前駆体成分が含まれているホップが用いられることは、当然のことともいえる。 仮に、4MMP又はその前駆体成分が含まれないホップが用いられることがあったとしても、本件明細書の記載(【0013】、【0014】)によれば、本件発明3、4における高温高圧処理により、α酸の異性化が促進され、その結果、α酸の含有量が低減することが理解でき、また、所望のビールテイスト飲料を得るために4MMPの含有量が不足するのであれば、例えば、本件明細書の試験例1(【0042】、表1)のように、市販の4MMPを添加すればよいことも、当業者であれば理解でき、それにより本件発明3、4の課題が解決できることも理解できる。 オ 申立人は、本件特許の出願後に公開されたが出願日が同じである甲14によれば、ホップ処理物の製造条件(温度、圧力、時間等)が実質的に同じであっても、得られるホップ処理物の組成が大きく変わることが出願時の技術常識であったから、本件発明3、4で具体的に特定されていない製造条件又は方法がホップ処理物の組成を大きく左右している蓋然性が高く、高温高圧処理の条件が本件発明3の範囲内であり、ホップ処理物の調製に用いるホップの品種が本件発明4の範囲内であったとしても、他の製造条件次第では、所望のホップ処理物及びビールテイスト飲料が得られるとは限らないと指摘する。 申立人の指摘は、甲14を根拠とする本件特許の出願時の技術常識を前提とするものと解されるところ、甲14は、申立人も自認するように、本件特許の出願後に公開されたものであり、本件特許の出願時の技術常識を示すものとはいえないから、前提を欠くものであり、失当である。 その点は措くとしても、ホップ処理物の組成がいかなるものであったとしても、例えば、本件明細書の試験例1(【0042】、表1)のように、市販のα酸や4MMPを添加することによって、所望の組成を有するビールテイスト飲料を製造することができることは、当業者にとって明らかである。 (4)まとめ したがって、取消理由1(サポート要件)、申立理由3(サポート要件)によっては、本件特許の請求項1、3、4に係る特許を取り消すことはできない。 2 申立理由4(実施可能要件) (1)申立人の主張について ア 申立人は、本件明細書の記載(【0013】、【0019】、【0023】)によれば、ビールテイスト飲料の製造工程においてホップ処理物を添加することが、所望のビールテイスト飲料を製造するために重要な役割を担っているといえるところ、上記1(3)オで指摘したとおり、高温高圧処理の条件が本件発明3の範囲内であり、ホップ処理物の調製に用いるホップの品種が本件発明4の範囲内であったとしても、所望のホップ処理物及びビールテイスト飲料を製造できるとは限らず、ホップの品種及び高温高圧処理の製造条件以外の製造条件をどのように選択及び制御すれば、所望のビールテイスト飲料を得るために適したホップ処理物を製造でき、これを使用して所望のビールテイスト飲料を製造できるのか、当業者は理解できないと主張する。 しかしながら、ホップ処理物の組成がいかなるものであったとしても、例えば、本件明細書の試験例1(【0042】、表1)のように、市販のα酸や4MMPを添加することによって、所望の組成を有するビールテイスト飲料を製造することができることは、当業者にとって明らかである。 よって、申立人の主張は採用できない。 イ 申立人は、仮に、本件発明3、4で特定された製造条件を満たしさえすれば、必然的に所望の組成のビールテイスト飲料を得ることができるのであれば、本件発明1~4は、甲10又は甲11に記載された発明であるか、甲10、甲11、甲4~甲7に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張する。 しかしながら、単に、本件発明3、4で特定された製造条件を満たしさえすれば、必然的に所望の組成のビールテイスト飲料を得ることができるとはいえないことは、当業者にとって明らかであるから、申立人の主張は、前提を欠くものであり、失当である。 (2)まとめ したがって、申立理由4(実施可能要件)によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 3 申立理由1-1(新規性)、申立理由2-1(進歩性) (1)甲1に記載された発明 甲1の記載(請求項1、2、【0005】、【0006】、【0010】、【0013】~【0015】、【0076】~【0081】、図4)によれば、特に、【0013】の記載を前提として、実施例4の例4-1、例4-2(【0076】~【0081】、図4)にそれぞれ着目すると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「ホップを使用しないこと以外は、通常のビールと同様にして製造された発泡性アルコール飲料、すなわち、大麦麦芽を使用しホップを使用することなく植物原料液(ビールの麦汁に相当)を調製し、当該植物原料液にビール酵母を添加することによりアルコール発酵を行い、さらに熟成を行って製造された、エタノール含有量が約5体積%の発泡性アルコール飲料に、4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン(4MMP)のみを添加した、添加後の発泡性アルコール飲料であって、 4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン(4MMP)の含有量が40pptである、添加後の発泡性アルコール飲料。」(以下、「甲1発明1」という。) 「ホップを使用しないこと以外は、通常のビールと同様にして製造された発泡性アルコール飲料、すなわち、大麦麦芽を使用しホップを使用することなく植物原料液(ビールの麦汁に相当)を調製し、当該植物原料液にビール酵母を添加することによりアルコール発酵を行い、さらに熟成を行って製造された、エタノール含有量が約5体積%の発泡性アルコール飲料に、モノテルペンアルコールであるリナロール、ゲラニオール、β-シトロネロールと、4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン(4MMP)を添加した、添加後の発泡性アルコール飲料であって、 リナロールの含有量が50ppbであり、ゲラニオールの含有量が50ppbであり、β-シトロネロールの含有量が50ppbであり、4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン(4MMP)の含有量が40pptである、添加後の発泡性アルコール飲料。」(以下、「甲1発明2」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明1、2とを対比する。 (ア)甲1発明1、2における、「ホップを使用しないこと以外は、通常のビールと同様にして製造された発泡性アルコール飲料、すなわち、大麦麦芽を使用しホップを使用することなく植物原料液(ビールの麦汁に相当)を調製し、当該植物原料液にビール酵母を添加することによりアルコール発酵を行い、さらに熟成を行って製造された、エタノール含有量が約5体積%の発泡性アルコール飲料に」所定の成分「を添加した、添加後の発泡性アルコール飲料」は、本件発明1における「ビールテイスト飲料」に相当する。 (イ)甲1発明1、2における、所定の「発泡性アルコール飲料に」所定の成分「を添加した、添加後の発泡性アルコール飲料」は、「4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン(4MMP)」を添加したものであるから、上記(ア)を踏まえると、本件発明1における「4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン(4MMP)を含有するビールテイスト飲料」に相当する。 (ウ)甲1発明1、2において「4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン(4MMP)の含有量が40pptである」ことは、本件発明1において「4MMPの含有量が10~250pptである」ことに相当する。 (エ)以上によれば、本件発明1と甲1発明1、2とは、 「4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン(4MMP)を含有するビールテイスト飲料であって、4MMPの含有量が10~250pptである、ビールテイスト飲料。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点1-1 本件発明1では、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))が45以上であ」るのに対して、甲1発明1、2では、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))が45以上であ」るかどうか不明である点。 イ 相違点1-1の検討 (ア)まず、相違点1-1が実質的な相違点であるか否かについて検討する。 a 甲1には、甲1発明1、2に係る添加後の発泡性アルコール飲料における「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」については記載されておらず、α酸の含有量についても記載されていない。また、甲1発明1、2に係る添加後の発泡性アルコール飲料であれば、必ず、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」が「45以上」であることが技術常識であるともいえない。 b この点、申立人は、甲1発明1、2に係る添加後の発泡性アルコール飲料は、ホップを使用せずに製造されているから、α酸の含有量は限りなく0ppmに近いため、当該飲料における「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」は「45以上」であると主張する。 しかしながら、甲1発明1、2に係る添加後の発泡性アルコール飲料が、ホップを使用せずに製造されているとしても、他の原料等から全く混入することがないかどうかは不明であるから、当該飲料におけるα酸の具体的な含有量は不明であり、また、そうであれば、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」も不明というほかない。 c 以上によれば、相違点1-1は実質的な相違点である。 したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。 (イ)次に、相違点1-1の容易想到性について検討する。 a 上記(ア)で述べたとおり、甲1には、甲1発明1、2に係る添加後の発泡性アルコール飲料における「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」については記載されておらず、α酸の含有量についても記載されていない。 また、甲1のほか、甲4~甲7にも、甲1発明1、2において、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」を「45以上」とすることを動機付ける記載は見当たらない。 b この点、申立人は、α酸がホップ由来の苦み成分であること(甲6、甲7)、4MMPがカシス様の香りを有すること(甲4、甲5)は、いずれも周知の事実であるため、α酸に対する4MMPの質量比が大きくなれば、ホップ由来のいやな苦みは弱くなり、カシス様の香りは強くなるから、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」を「45以上」とすることによって、芳醇なカシス様の香りが付与され、かつ、ホップ由来の嫌な苦みが低減されたビールテイスト飲料を得ることができるという効果は、従来から知られている効果を単に組み合わせただけで、当業者が予測できない顕著な効果ではないと主張する。 しかしながら、申立人の主張にかかわらず、甲1発明1、2において、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」を「45以上」とすることが動機付けられないことは、上記aのとおりである。 c 以上によれば、甲1発明1、2において、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」を「45以上」とすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。 したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲4~甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明及び甲4~甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1を引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明及び甲4~甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明2についても同様に、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明及び甲4~甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)まとめ 以上のとおり、本件発明1、2は、甲1に記載された発明であるとはいえない。 また、本件発明1、2は、甲1に記載された発明及び甲4~甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、申立理由1-1(新規性)、申立理由2-1(進歩性)によっては、本件特許の請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。 4 申立理由1-2(新規性)、申立理由2-2(進歩性) (1)甲2に記載された発明 甲2の記載(請求項1、4、【0005】、【0006】、【0011】、【0014】~【0018】、【0068】、【0079】~【0083】、図2)によれば、特に、請求項1、【0068】の記載を前提として、実施例2の例2-2~例2-8(【0079】~【0083】、図2)に着目すると、甲2には、以下の発明が記載されていると認められる。 「予め製造されたビール(大麦麦芽及びホップを使用し、アルコール発酵を行って製造された発泡性アルコール飲料)に、4-メチル-4-スルファニルペンタン-2-オン(4MSP)及び3-スルファニル-4-メチルペンタン-1-オール(3S4MP)の含有量が、10ppt及び80ppt、20ppt及び160ppt、40ppt及び320ppt、70ppt及び560ppt、100ppt及び800ppt、120ppt及び960ppt、150ppt及び1200pptのいずれかとなる量で、市販の4MSP含有試薬(4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン、Combi-Blocks社製)(4MSPを含有する組成物)と、人工的に合成された3S4MPを含有する試薬(3S4MPを含有する組成物)を添加することにより製造された飲料。」(以下、「甲2発明」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲2発明とを対比する。 (ア)甲2発明における、「予め製造されたビール(大麦麦芽及びホップを使用し、アルコール発酵を行って製造された発泡性アルコール飲料)に」所定の試薬を「添加することにより製造された飲料」は、本件発明1における「ビールテイスト飲料」に相当する。 (イ)甲2発明における、「予め製造されたビール(大麦麦芽及びホップを使用し、アルコール発酵を行って製造された発泡性アルコール飲料)に」所定の試薬を「添加することにより製造された飲料」は、「4-メチル-4-スルファニルペンタン-2-オン(4MSP)」の含有量が所定量となる量で、「市販の4MSP含有試薬(4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン、Combi-Blocks社製)(4MSPを含有する組成物)」を添加したものであり、「4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン」を含有するものといえるから、上記(ア)を踏まえると、本件発明1における「4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン(4MMP)を含有するビールテイスト飲料」に相当する。 (ウ)甲2発明において「4-メチル-4-スルファニルペンタン-2-オン(4MSP)」の含有量、すなわち、「4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン」の含有量が、「10ppt」、「20ppt」、「40ppt」、「70ppt」、「100ppt」、「120ppt」、「150ppt」のいずれかとなる量であることは、本件発明1において「4MMPの含有量が10~250pptである」ことに相当する。 (エ)以上によれば、本件発明1と甲2発明とは、 「4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン(4MMP)を含有するビールテイスト飲料であって、4MMPの含有量が10~250pptである、ビールテイスト飲料。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点2-1 本件発明1では、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))が45以上であ」るのに対して、甲2発明では、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))が45以上であ」るかどうか不明である点。 イ 相違点2-1の検討 (ア)まず、相違点2-1が実質的な相違点であるか否かについて検討する。 a 甲2には、甲2発明に係る飲料における「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」については記載されておらず、α酸の含有量についても記載されていない。また、甲2発明に係る飲料であれば、必ず、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」が「45以上」であることが技術常識であるともいえない。 b この点、申立人は、甲2発明に係る飲料は、予め製造されたビール(大麦麦芽及びホップを使用し、アルコール発酵を行って製造された発泡性アルコール飲料)から製造されているところ、一般的なビール中に極微量(例えば、0~4ppm又は0.5~1.5ppm程度)のα酸が存在し、ホップ加工技術の進歩及び醸造技術の進歩に伴ってビール中のα酸の含有量が少なくなっていること、若ビール中のα酸の含有量が0.4ppm程度であることは、周知の事実であり(甲8)、また、ビールの製造過程において、熱によりα酸が異性化し、pH又は温度の低下に伴ってα酸の溶解度が低下するため、最終ビール中にα酸は痕跡程度した存在していないことも周知の事実であり(甲9)、さらに、通常のビールの製造においては好ましくないとされるα酸をあえて含むビールテイスト飲料でさえ、α酸の好ましい含有量は0.1~4ppm又は0.5~3ppm程度である(甲7)から、甲2発明に係る飲料におけるα酸の含有量は、1ppm以下である蓋然性が高く、α酸の含有量が1ppmを超える場合であっても、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」は、「45以上」であると主張する。 しかしながら、甲2発明に係る飲料におけるα酸の具体的な含有量は不明であり、また、そうであれば、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」も不明というほかない。 c 以上によれば、相違点2-1は実質的な相違点である。 したがって、本件発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえない。 (イ)次に、相違点2-1の容易想到性について検討する。 a 上記(ア)で述べたとおり、甲2には、甲2発明に係る飲料における「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」については記載されておらず、α酸の含有量についても記載されていない。 また、甲2のほか、甲4~甲7、甲10、甲11にも、甲2発明において、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」を「45以上」とすることを動機付ける記載は見当たらない。 b この点、申立人は、α酸がホップ由来の苦み成分であることは周知の事実であり、苦みを低減するためにα酸の含有量が1ppm以下であるビールテイスト飲料も知られており(甲6、甲7)、また、通常のビールの製造においては好ましくないとされるα酸をあえて含むビールテイスト飲料でさえ、α酸の好ましい含有量は0.1~4ppm又は0.5~3ppm程度であり(甲7)、さらに、4MMPがカシス様の香りを有することも周知の事実である(甲4、甲5)ため、α酸に対する4MMPの質量比が大きくなれば、ホップ由来のいやな苦みは弱くなり、カシス様の香りは強くなるから、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」を「45以上」に調整することに格別の困難性はなく、それによって、芳醇なカシス様の香りが付与され、かつ、ホップ由来の嫌な苦みが低減されたビールテイスト飲料を得ることができるという効果は、従来から知られている効果を単に組み合わせただけであり、当業者が予測できない顕著な効果ではないと主張する。 しかしながら、申立人の主張にかかわらず、甲2発明において、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」を「45以上」とすることが動機付けられないことは、上記aのとおりである。 c 以上によれば、甲2発明において、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」を「45以上」とすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。 したがって、本件発明1は、甲2に記載された発明並びに甲4~甲7、甲10及び甲11に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえず、また、甲2に記載された発明並びに甲4~甲7、甲10及び甲11に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲2に記載された発明であるとはいえず、また、甲2に記載された発明並びに甲4~甲7、甲10及び甲11に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明2~4についても同様に、甲2に記載された発明であるとはいえず、また、甲2に記載された発明並びに甲4~甲7、甲10及び甲11に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)まとめ 以上のとおり、本件発明1~4は、甲2に記載された発明であるとはいえない。 また、本件発明1~4は、甲2に記載された発明並びに甲4~甲7、甲10及び甲11に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、申立理由1-2(新規性)、申立理由2-2(進歩性)によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 5 申立理由1-3(新規性)、申立理由2-3(進歩性) (1)甲3に記載された発明 甲3の記載(請求項1、4、【0005】、【0006】、【0011】、【0014】~【0018】、【0066】、【0077】~【0081】、図2)によれば、特に、請求項1、【0066】の記載を前提として、実施例2の例2-4~例2-8(【0077】~【0081】、図2)に着目すると、甲3には、以下の発明が記載されていると認められる。 「予め製造されたビール(大麦麦芽及びホップを使用し、アルコール発酵を行って製造された発泡性アルコール飲料)に、4-メチル-4-スルファニルペンタン-2-オン(4MSP)及び3-スルファニル-4-メチルペンタン-1-オール(3S4MP)の含有量が、10.0ppt及び1000ppt、20.0ppt及び2000ppt、30.0ppt及び3000ppt、40.0ppt及び4000ppt、50.0ppt及び5000pptのいずれかとなる量で、市販の4MSP含有試薬(4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン、Combi-Blocks社製)(4MSPを含有する組成物)と、人工的に合成された3S4MPを含有する試薬(3S4MPを含有する組成物)を添加することにより製造された飲料。」(以下、「甲3発明」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲3発明とを対比する。 (ア)甲3発明における、「予め製造されたビール(大麦麦芽及びホップを使用し、アルコール発酵を行って製造された発泡性アルコール飲料)に」所定の試薬を「添加することにより製造された飲料」は、本件発明1における「ビールテイスト飲料」に相当する。 (イ)甲3発明における、「予め製造されたビール(大麦麦芽及びホップを使用し、アルコール発酵を行って製造された発泡性アルコール飲料)に」所定の試薬を「添加することにより製造された飲料」は、「4-メチル-4-スルファニルペンタン-2-オン(4MSP)」の含有量が所定量となる量で、「市販の4MSP含有試薬(4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン、Combi-Blocks社製)(4MSPを含有する組成物)」を添加したものであり、「4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン」を含有するものといえるから、上記(ア)を踏まえると、本件発明1における「4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン(4MMP)を含有するビールテイスト飲料」に相当する。 (ウ)甲3発明において「4-メチル-4-スルファニルペンタン-2-オン(4MSP)」の含有量、すなわち、「4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン」の含有量が、「10.0ppt」、「20.0ppt」、「30.0ppt」、「40.0ppt」、「50.0ppt」のいずれかとなる量であることは、本件発明1において「4MMPの含有量が10~250pptである」ことに相当する。 (エ)以上によれば、本件発明1と甲3発明とは、 「4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン(4MMP)を含有するビールテイスト飲料であって、4MMPの含有量が10~250pptである、ビールテイスト飲料。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点3-1 本件発明1では、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))が45以上であ」るのに対して、甲3発明では、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))が45以上であ」るかどうか不明である点。 イ 相違点3-1の検討 (ア)まず、相違点3-1が実質的な相違点であるか否かについて検討する。 a 甲3には、甲3発明に係る飲料における「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」については記載されておらず、α酸の含有量についても記載されていない。また、甲3発明に係る飲料であれば、必ず、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」が「45以上」であることが技術常識であるともいえない。 b この点、申立人は、上記4(2)イ(ア)bで甲2発明に係る飲料について述べたのと同様の理由により、甲3発明に係る飲料におけるα酸の含有量は、1ppm以下である蓋然性が高く、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」は、「45以上」であると主張するが、甲3発明に係る飲料におけるα酸の具体的な含有量は不明であり、また、そうであれば、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」も不明というほかない。 c 以上によれば、相違点3-1は実質的な相違点である。 したがって、本件発明1は、甲3に記載された発明であるとはいえない。 (イ)次に、相違点3-1の容易想到性について検討する。 a 上記(ア)で述べたとおり、甲3には、甲3発明に係る飲料における「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」については記載されておらず、α酸の含有量についても記載されていない。 また、甲3のほか、甲4~甲7、甲10、甲11にも、甲3発明において、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」を「45以上」とすることを動機付ける記載は見当たらない。 b この点、申立人は、上記4(2)イ(イ)bで甲2発明に係る飲料について述べたのと同様の理由により、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」を「45以上」に調整することに格別の困難性はなく、それによって、芳醇なカシス様の香りが付与され、かつ、ホップ由来の嫌な苦みが低減されたビールテイスト飲料を得ることができるという効果は、従来から知られている効果を単に組み合わせただけであり、当業者が予測できない顕著な効果ではないと主張するが、甲3発明において、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」を「45以上」とすることが動機付けられないことは、上記aのとおりである。 c 以上によれば、甲3発明において、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」を「45以上」とすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。 したがって、本件発明1は、甲3に記載された発明並びに甲4~甲7、甲10及び甲11に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明1は、甲3に記載された発明であるとはいえず、また、甲3に記載された発明並びに甲4~甲7、甲10及び甲11に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲3に記載された発明であるとはいえず、また、甲3に記載された発明並びに甲4~甲7、甲10及び甲11に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明2~4についても同様に、甲3に記載された発明であるとはいえず、また、甲3に記載された発明並びに甲4~甲7、甲10及び甲11に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)まとめ 以上のとおり、本件発明1~4は、甲3に記載された発明であるとはいえない。 また、本件発明1~4は、甲3に記載された発明並びに甲4~甲7、甲10及び甲11に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、申立理由1-3(新規性)、申立理由2-3(進歩性)によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 6 申立理由1-4(新規性)、申立理由2-4(進歩性) (1)甲4に記載された発明 ア 甲4には、以下の記載がある。 [図:0001409130000002.jpg] (表1 ホップ品種の略語、起源、収穫年、α酸の鉛伝導値 品種 国 略号 収穫年 α酸の鉛伝導値 シムコー サミット アポロ カスケード) [図:0001409130000003.jpg] (表2 ビールから抽出されるカシス様香料のチャーム値 フルーティ、カシス様、4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン) [図:0001409130000004.jpg] (表3 11品種のホップを使用したビールのホップ由来の主な香り成分の含有量) 「4-mercapto-4-methylpentan-2-one (4MMP)」(1051頁左欄「導入」の欄の2つ目の段落) (4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン(4MMP)) 「Brewing Processes. Pellets of the hop cultivars Simcoe (2005 crop), Summit, Apollo, Millennium, Cascade, Willamette, Magnum, Taurus, Hersbrucker, Saazer, and Fuggle were used in the brewing process. Unhopped beer and beers hopped with each cultivar were brewed independently. For the evaluation of cultivars, a 20 L volume of wort without hops was boiled for 60 min in a wort kettle; a 40 g sample of hops was then added after the wort-cooling process, in order to examine the properties of the hop components and the aroma characteristics independent of any temperature effect. Static fermentations were carried out in 5 L stainless steel tall tubes, modified from 2 L European Brewery Convention (EBC) tall tubes (8), which were equipped with precise pressure and temperature controls. The yeast used in the fermentations was washed twice (for 5 days each time) in unhopped wort. The washed yeast was pitched at a rate of 20 × 106 cells/mL into the wort. A 5 L sample of each wort (11.5 °P) was fermented at 12.0 °C for 6 days, under an inner-tank pressure of 0.05 MPa. Then any yeast that settled on the tank bottom was eliminated. Each beer was then allowed to mature at 12.0 °C for 5 days. The finished beer was obtained by cooling to -1 °C for 5 days and then centrifuging at 7000 rpm for 30 min.」(1052頁右欄) (醸造プロセス。 醸造プロセスでは、ホップ品種シムコー(2005年収穫)、サミット、アポロ、ミレニアム、カスケード、ウィラメット、マグナム、タウルス、ハースブルッカー、ザーザー、ファグルのペレットが使用された。ホップされていないビールと、各品種でホップを使用したビールが個別に醸造された。品種の評価のために、ホップを含まない20Lの麦汁を麦汁釜で60分間煮沸し、次に、温度の影響に関係なくホップ成分の特性と香りの特徴を調べるために、麦汁冷却プロセスの後にホップのサンプル40gを添加した。 静的発酵は、正確な圧力と温度制御を備えた2L欧州醸造会議(EBC)トールチューブを改造した、5Lステンレススチールトールチューブで実行された。発酵に使用した酵母は、ホップなしの麦汁で2回 (各回5日間)洗浄された。洗浄した酵母を20×106細胞/mLの割合で麦汁に投入した。各麦汁(11.5°P)のサンプル5Lを、タンク内圧力0.05MPa、12.0℃で6日間発酵させた。その後、タンクの底に沈殿した酵母を除去した。次に、各ビールを12.0℃で5日間熟成させた。完成したビールは、-1℃まで5日間冷却し、7000rpmで30分間遠心分離することによって得られた。) イ 甲4の上記アの記載によれば、特に表3のホップを使用したビールに着目すると、甲4には、以下の発明が記載されていると認められる。 「2005年に収穫された米国産のシムコーを使用したビールであって、 4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン(4MMP)の含有量が183.8ng/Lである、ビール。」(以下、「甲4発明1」という。) 「2006年に収穫された米国産のサミットを使用したビールであって、 4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン(4MMP)の含有量が116.4ng/Lである、ビール。」(以下、「甲4発明2」という。) 「2006年に収穫された米国産のアポロを使用したビールであって、 4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン(4MMP)の含有量が109.2ng/Lである、ビール。」(以下、「甲4発明3」という。) 「2006年に収穫された米国産のカスケードを使用したビールであって、 4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン(4MMP)の含有量が16.9ng/Lである、ビール。」(以下、「甲4発明4」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲4発明1~4とを対比する。 (ア)甲4発明1~4における各種のホップ「を使用したビール」は、本件発明1における「ビールテイスト飲料」に相当する。 (イ)甲4発明1~4における各種のホップ「を使用したビール」は、「4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン(4MMP)」を含有するものであるから、上記(ア)を踏まえると、本件発明1における「4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン(4MMP)を含有するビールテイスト飲料」に相当する。 (ウ)甲4発明1~4において「4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン(4MMP)の含有量」が「183.8ng/L」、「116.4ng/L」、「109.2ng/L」、「16.9ng/L」であることは、技術常識に照らして、「ng/L」が「1×10-9g/L」を意味し、「ppt」に換算できることを踏まえると、本件発明1において「4MMPの含有量が10~250pptである」ことに相当する。 (エ)以上によれば、本件発明1と甲4発明1~4とは、 「4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン(4MMP)を含有するビールテイスト飲料であって、4MMPの含有量が10~250pptである、ビールテイスト飲料。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点4-1 本件発明1では、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))が45以上であ」るのに対して、甲4発明1~4では、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))が45以上であ」るかどうか不明である点。 イ 相違点4-1の検討 (ア)まず、相違点4-1が実質的な相違点であるか否かについて検討する。 a 甲4には、甲4発明1~4に係るビールにおける「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」については記載されておらず、α酸の含有量についても記載されていない。また、甲4発明1~4に係るビールであれば、必ず、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」が「45以上」であることが技術常識であるともいえない。 b この点、申立人は、甲4発明1~4に係るビールは、麦汁冷却工程の後にホップを添加することによって製造されているところ、麦汁煮沸工程の後にホップを添加する場合、ホップ中のα酸の溶出がほとんど起こらないことは周知の事実であり(甲12)、また、ビールの製造過程において、pH又は温度の低下に伴ってα酸の溶解度が低下することも周知の事実であり(甲9)、さらに、通常のビールの製造においては好ましくないとされるα酸をあえて含むビールテイスト飲料でさえ、α酸の好ましい含有量は0.1~4ppm又は0.5~3ppm程度である(甲7)から、甲4発明1~4に係るビールにおけるα酸の含有量は、1ppm以下である蓋然性が高く、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」は、「45以上」であると主張する。 しかしながら、甲4発明1~4に係るビールにおけるα酸の具体的な含有量は不明であり、また、そうであれば、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」も不明というほかない。 c 以上によれば、相違点4-1は実質的な相違点である。 したがって、本件発明1は、甲4に記載された発明であるとはいえない。 (イ)次に、相違点4-1の容易想到性について検討する。 a 上記(ア)で述べたとおり、甲4には、甲4発明1~4に係るビールにおける「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」については記載されておらず、α酸の含有量についても記載されていない。 また、甲4のほか、甲5~甲7、甲10、甲11にも、甲4発明1~4において、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」を「45以上」とすることを動機付ける記載は見当たらない。 b この点、申立人は、上記4(2)イ(イ)bで甲2発明に係る飲料について述べたのと同様の理由により、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」を「45以上」に調整することに格別の困難性はなく、それによって、芳醇なカシス様の香りが付与され、かつ、ホップ由来の嫌な苦みが低減されたビールテイスト飲料を得ることができるという効果は、従来から知られている効果を単に組み合わせただけであり、当業者が予測できない顕著な効果ではないと主張するが、甲4発明1~4において、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」を「45以上」とすることが動機付けられないことは、上記aのとおりである。 c 以上によれば、甲4発明1~4において、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」を「45以上」とすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。 したがって、本件発明1は、甲4に記載された発明並びに甲5~甲7、甲10及び甲11に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明1は、甲4に記載された発明であるとはいえず、また、甲4に記載された発明並びに甲5~甲7、甲10及び甲11に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲4に記載された発明であるとはいえず、また、甲4に記載された発明並びに甲5~甲7、甲10及び甲11に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明2~4についても同様に、甲4に記載された発明であるとはいえず、また、甲4に記載された発明並びに甲5~甲7、甲10及び甲11に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)まとめ 以上のとおり、本件発明1~4は、甲4に記載された発明であるとはいえない。 また、本件発明1~4は、甲4に記載された発明並びに甲5~甲7、甲10及び甲11に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、申立理由1-4(新規性)、申立理由2-4(進歩性)によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 7 申立理由1-5(新規性)、申立理由2-5(進歩性) (1)甲5に記載された発明 ア 甲5には、以下の記載がある。 「Pilot Beer Production Beer was produced in a 60 L microbrewery (Coenco, Belgium) as described by Gros et al. (25) The following brewing process was used. A 12 kg portion of Pilsen Malt (2 rows, Malterie du Chateau, Belgium) was brewed in 60 L according to the following mashing program: 30 min at 50 °C, 30 min at 63 °C, and 30 min at 72 °C. The wort was then heated to 82 °C and filtered through the lauter tun. The 11°Plato wort thus obtained was boiled with 33 mg/L Tomahawk CO2 extract for 75 min (8-11% evaporation). Ten minutes before the end, the selected hop variety was added at 1.78 g/L. The fermentation was conducted in cylindroconical fermenters with an ale-type yeast (INBR Bras268, propagated in a glucose/maltose/yeast extract/peptone medium). This strain was pitched at 7.5 × 106 cells/mL. The fermentation was carried out at 22 °C for 4 days under an inner-tank pressure of 0.01 MPa. Maturation was held at 2 °C for 7 days with periodical purge of excess yeast from the bottom of the fermentor. After filtration on plates (0.5 μm pores, BuonVinon CA), the beer was stored under carbon dioxide until extraction the next day.」(7806頁右欄) (パイロットビールの生産 ビールは、グロスらが記載したように、60Lの地ビール醸造所(ベルギー、コエンコ)で製造された。以下の醸造プロセスが使用された。ピルゼンモルト (ベルギー、マルテリーデュシャトー、2列)12kgを、次のマッシングプログラムに従って60Lで醸造した。50℃で30分間、63℃で30分間、72℃で30分間。次に、麦汁を82℃に加熱し、ロータータンで濾過した。このようにして得られた11°プラトー麦汁を、33mg/LトマホークCO2抽出物とともに75分間煮沸した(蒸発率8~11%)。終了10分前に、選択したホップ品種を1.78g/Lで添加した。発酵は、エール型酵母(INBR Bras268、グルコース/マルトース/酵母エキス/ペプトン培地で増殖)を用いて円筒円錐形の発酵槽で実施した。この株は7.5×106細胞/mLでピッチされた。発酵は22℃、槽内圧力0.01MPaで4日間行った。発酵槽の底から過剰な酵母を定期的にパージしながら、熟成を2℃で7日間保持した。プレート(0.5μm細孔、BuonVinon CA)上で濾過した後、ビールを翌日の抽出まで二酸化炭素下で保管した。) 「Results and Discussion To assess how a hop variety can affect the polyfunctional thiol profile of beer, pilot worts were hopped at the late stage of boiling (1.78 g/L) with four different cultivars, Tomahawk (TH), Nelson Sauvin (NS), Cascade (C), and Saaz (S), and compared with a nonhopped (NH) beer (these beers are henceforth referred to as THB, NSB, CB, SB, and NHB).」(7811頁左欄) (結果と考察 ホップ品種がビールの多官能性チオールプロファイルにどのような影響を与えるかを評価するために、パイロット麦汁を沸騰の後期段階(1.78g/L)で4つの異なる品種、トマホーク(TH)、ネルソンソービン(NS)、カスケード(C)、ザーツ(S)でホップし、ノンホップ(NH)ビールと比較した(以降、これらのビールをTHB、NSB、CB、SB、NHBと呼ぶ)。) [図:0001409130000005.jpg] (表3 β位にカルボニル官能基を有するスルファニルアルキル トマホーク、ネルソンソービン、ザーツ、エールビール、麦汁 4-スルファニル-4-メチルペンタン-2-オン、猫のような、カシス) イ 甲5の上記アの記載によれば、特に表3のホップを使用したエールビールに着目すると、甲5には、以下の発明が記載されていると認められる。 「トマホークを使用したエールビールであって、 4-スルファニル-4-メチルペンタン-2-オンの含有量が40ng/Lである、エールビール。」(以下、「甲5発明1」という。) 「ネルソンソービンを使用したエールビールであって、 4-スルファニル-4-メチルペンタン-2-オンの含有量が129ng/Lである、エールビール。」(以下、「甲5発明2」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲5発明1、2とを対比する。 (ア)甲5発明1、2における各種のホップ「を使用したエールビール」は、本件発明1における「ビールテイスト飲料」に相当する。 (イ)甲5発明1、2における各種のホップ「を使用したエールビール」は、「4-スルファニル-4-メチルペンタン-2-オン」を含有するものであるところ、技術常識に照らして、「4-スルファニル-4-メチルペンタン-2-オン」は、4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン(4MMP)と同一の物質であるから、上記(ア)を踏まえると、本件発明1における「4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン(4MMP)を含有するビールテイスト飲料」に相当する。 (ウ)甲5発明1、2において「4-スルファニル-4-メチルペンタン-2-オンの含有量」が「40ng/L」、「129ng/L」であることは、技術常識に照らして、「ng/L」が「1×10-9g/L」を意味し、「ppt」に換算できることを踏まえると、本件発明1において「4MMPの含有量が10~250pptである」ことに相当する。 (エ)以上によれば、本件発明1と甲5発明1、2とは、 「4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン(4MMP)を含有するビールテイスト飲料であって、4MMPの含有量が10~250pptである、ビールテイスト飲料。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点5-1 本件発明1では、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))が45以上であ」るのに対して、甲5発明1、2では、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))が45以上であ」るかどうか不明である点。 イ 相違点5-1の検討 (ア)まず、相違点5-1が実質的な相違点であるか否かについて検討する。 a 甲5には、甲5発明1、2に係るエールビールにおける「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」については記載されておらず、α酸の含有量についても記載されていない。また、甲5発明1、2に係るエールビールであれば、必ず、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」が「45以上」であることが技術常識であるともいえない。 b この点、申立人は、甲5発明1、2に係るエールビールは、麦汁煮沸工程の終了直前にホップを添加することによって製造されているところ、麦汁煮沸工程の終了直前にホップを添加する場合、ホップ中のα酸の溶出がほとんど起こらないことは周知の事実であり(甲12)、また、ビールの製造過程において、pH又は温度の低下に伴ってα酸の溶解度が低下することも周知の事実であり(甲9)、さらに、通常のビールの製造においては好ましくないとされるα酸をあえて含むビールテイスト飲料でさえ、α酸の好ましい含有量は0.1~4ppm又は0.5~3ppm程度である(甲7)から、甲5発明1、2に係るエールビールにおけるα酸の含有量は、1ppm以下である蓋然性が高く、α酸の含有量が1ppmを超える場合であっても、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」は、「45以上」であると主張する。 しかしながら、甲5発明1、2に係るエールビールにおけるα酸の具体的な含有量は不明であり、また、そうであれば、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」も不明というほかない。 c 以上によれば、相違点5-1は実質的な相違点である。 したがって、本件発明1は、甲5に記載された発明であるとはいえない。 (イ)次に、相違点5-1の容易想到性について検討する。 a 上記(ア)で述べたとおり、甲5には、甲5発明1、2に係るエールビールにおける「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」については記載されておらず、α酸の含有量についても記載されていない。 また、甲5のほか、甲4、甲6、甲7、甲10、甲11にも、甲5発明1、2において、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」を「45以上」とすることを動機付ける記載は見当たらない。 b この点、申立人は、上記4(2)イ(イ)bで甲2発明に係る飲料について述べたのと同様の理由により、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」を「45以上」に調整することに格別の困難性はなく、それによって、芳醇なカシス様の香りが付与され、かつ、ホップ由来の嫌な苦みが低減されたビールテイスト飲料を得ることができるという効果は、従来から知られている効果を単に組み合わせただけであり、当業者が予測できない顕著な効果ではないと主張するが、甲5発明1、2において、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」を「45以上」とすることが動機付けられないことは、上記aのとおりである。 c 以上によれば、甲5発明1、2において、「α酸に対する4MMPの質量比(4MMP(ppt)/α酸(ppm))」を「45以上」とすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。 したがって、本件発明1は、甲5に記載された発明並びに甲4、甲6、甲7、甲10及び甲11に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明1は、甲5に記載された発明であるとはいえず、また、甲5に記載された発明並びに甲4、甲6、甲7、甲10及び甲11に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲5に記載された発明であるとはいえず、また、甲5に記載された発明並びに甲4、甲6、甲7、甲10及び甲11に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明2~4についても同様に、甲5に記載された発明であるとはいえず、また、甲5に記載された発明並びに甲4、甲6、甲7、甲10及び甲11に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)まとめ 以上のとおり、本件発明1~4は、甲5に記載された発明であるとはいえない。 また、本件発明1~4は、甲5に記載された発明並びに甲4、甲6、甲7、甲10及び甲11に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、申立理由1-5(新規性)、申立理由2-5(進歩性)によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 第5 むすび 以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700749

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