特許異議申立
2022-701002
ビールテイスト飲料
- 審判番号
- 2022-701002
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-155079
- 登録番号
- 7052132
- 請求日
- 2022年10月11日
- 審決日
- 2023年09月15日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】サントリーホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】小林 浩
- 【権利者代理人】古橋 伸茂
- 【権利者代理人】石原 俊秀
- 【権利者代理人】末広 尚也
- 【異議申立人】猪狩 充
- 審判長/審判官
- 審判長 磯貝 香苗
- 審判官 三上 晶子
- 審判官 佐藤 陽一
- 分類
- P1651.113-YAA(C12C) / P1651.121-YAA(C12C) / P1651.536-YAA(C12C) / P1651.537-YAA(C12C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7052132号発明「ビールテイスト飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7052132号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
特許第7052132号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7052132号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、令和3年9月24日(優先権主張 令和3年4月12日)を出願日とする特許出願であって、令和4年4月1日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年同月11日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、本件特許に対して、令和4年10月11日に特許異議申立人 猪狩 充(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし5)がされ、令和5年1月20日付けで取消理由が通知され、同年3月27日に特許権者 サントリーホールディングス株式会社(以下、「特許権者」という。)から訂正の請求(以下、「先の訂正請求」という。)がされるとともに意見書の提出がされ、同年同月30日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知を特許異議申立人に対して行ったところ、同年5月8日に特許異議申立人から意見書が提出され、同年6月8日付けで取消理由<決定の予告>が通知され、同年8月8日に特許権者から訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされるとともに意見書が提出されたものである。
なお、令和5年3月27日にされた先の訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
また、当審は、本件訂正請求につき、特許法第120条の5第5項ただし書きに規定する「特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情」がある場合に該当すると判断し、改めて、申立人に意見書を提出する機会を与えないこととした。すなわち、本件訂正請求による訂正の内容は先の訂正請求による訂正の内容に含まれており、先の訂正請求による訂正の内容については、申立人には、既に意見書を提出する機会が与えられている。したがって、当審は、申立人に意見書を提出する機会を与えないこととした。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「外観発酵度が105.0%以上、オリジナルエキス濃度が7.00質量%以上15.00質量%以下、およびアルコール度数が4.3(v/v)%以上9.0(v/v)%以下であるビールテイスト飲料。」と記載されているのを、「外観発酵度が105.0%以上、オリジナルエキス濃度が8.50質量%以上15.00質量%以下、およびアルコール度数が4.3(v/v)%以上7.0(v/v)%以下であるビールテイスト飲料。」に訂正する。
併せて、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。
(2)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし5について、請求項2ないし5は請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであるから、請求項1ないし5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
・訂正事項1について
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、訂正前の請求項1の「オリジナルエキス濃度」を、「7.00質量%以上15.00質量%以下」から「8.50質量%以上15.00質量%以下」に限定し、「アルコール度数」を、「4.3(v/v)%以上9.0(v/v)%以下」から「4.3(v/v)%以上7.0(v/v)%以下」に限定するものである。
したがって、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許明細書の【0008】及び【0013】の記載からみて、当該訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定する他の請求項についても同様である。
3 訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
また、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし5に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明5」という。)は、令和5年8月8日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
外観発酵度が105.0%以上、オリジナルエキス濃度が8.50質量%以上15.00質量%以下、およびアルコール度数が4.3(v/v)%以上7.0(v/v)%以下であるビールテイスト飲料。
【請求項2】
総ポリフェノール量が30mg/L以上である、請求項1に記載のビールテイスト飲料。
【請求項3】
糖質含有量が2.0g/100mL以下である、請求項1または2に記載のビールテイスト飲料。
【請求項4】
麦芽使用比率が30質量%以上である、請求項1~3のいずれかに記載のビールテイスト飲料。
【請求項5】
pHが2.0以上である、請求項1~4のいずれかに記載のビールテイスト飲料。」
第4 特許異議の申立ての理由の概要
令和4年10月11日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、下記の甲第1号証に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第2号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、下記の甲第2号証に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 申立理由3(甲第3号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、下記の甲第3号証に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
4 申立理由4(甲第4号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、下記の甲第4号証に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
5 申立理由5(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、下記の(1)ないし(2)の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)実施例におけるビールテイスト飲料の「ビールテイスト飲料らしい刺激感」の評価について、評価基準に該当するサンプルの調製方法が本件特許明細書には全く記載されていないので、当業者は、本件特許発明に従い調製したビールテイスト飲料が意図する効果(ビールテイスト飲料らしい刺激感)を奏するか否かを評価することができず、結果として、本件特許発明に係る物を製造することができない。
(2)本件特許発明の効果は「ビールテイスト飲料らしい刺激感」であるが、本件特許明細書は、ビールテイスト飲料らしい刺激感の達成に大きく影響するはずのホップの種類、使用量及び使用方法(ケトルホッピング、レイトホッピング)や、炭酸ガスの圧力に関する具体的な指針を全く記載していない。
ホップの種類、使用量及び使用方法や炭酸ガスの圧力等により刺激の感じ方は変化するので、これらの指針が全く存在しない状況下では、ビールテイスト飲料らしい刺激感を感じることができるビールテイスト飲料を作製するために、当業者は、過度の試行錯誤、複雑高度な実験等を行なう必要がある。
6 申立理由6(サポート要件)
本件特許の請求項2ないし5に係る特許は、下記の(1)ないし(4)の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)本件特許発明2の「総ポリフェノール量が30mg/L以上」は、ビールテイスト飲料の「刺激感、シマリ感、飲み応え、味の厚み、味わいをより向上させ」るという課題の解決手段である。
一方、本件特許明細書の実施例で具体的に評価した総ポリフェノール量は「44~157mg/L」の範囲にとどまる。
このような本件特許明細書の記載からでは、出願時の技術常識を参酌したとしても、当業者は、「総ポリフェノール量が30mg/L以上」の全範囲にわたって課題が解決できることを理解できないので、本件特許発明2はサポート要件を満たさない。
請求項2を引用して特定する本件特許発明3ないし5にも同様の不備が存在する。
(2)本件特許発明3の「糖質含有量が2.0g/100mL以下」は、ビールテイスト飲料の「後味が爽快に感じられ、ビールテイスト飲料らしい味わいのふくらみを感じやすく」するという課題の解決手段である。
一方、本件特許明細書には、「糖質含有量が2.0g/100mLよりも多い」の比較例は記載されていない。
本件特許発明3の比較例のデータが存在しない本件特許明細書の記載からでは、出願時の技術常識を参酌したとしても、当業者は、前記の課題を本件特許発明3によって解決できることを理解できないので、本件特許発明3はサポート要件を満たさない。
請求項3を引用して特定する本件特許発明4ないし5にも同様の不備が存在する。
(3)本件特許発明4の「麦芽使用比率が30質量%以上」は、「麦芽に由来する麦の旨味をより強く感じることができる」ビールテイスト飲料を提供するという課題の解決手段である。
一方、本件特許明細書には、「麦芽使用比率が30質量%未満」の比較例は記載されていない。
本件特許発明4の比較例のデータが存在しない本件特許明細書の記載からでは、出願時の技術常識を参酌したとしても、当業者は、前記の課題を本件特許発明4によって解決できることを理解できないので、本件特許発明4はサポート要件を満たさない。
請求項4を引用して特定する本件特許発明5にも同様の不備が存在する。
(4)本件特許発明5の「pHが2.0以上」は、ビールテイスト飲料の「香味向上」という課題の解決手段である。
一方、本件特許明細書の実施例で具体的に評価したpHは「4.40~4.60」の範囲にとどまる。さらに、本件特許明細書には、「pHが2.0未満」の比較例は記載されていない。
このような本件特許明細書の記載からでは、出願時の技術常識を参酌したとしても、当業者は、前記の課題を本件特許発明5によって解決できることを理解できないので、本件特許発明5はサポート要件を満たさない。
7 証拠方法
甲第1号証:Brauindustrie, 67(1-2), 76-79 (1982)
甲第2号証:Journal of the American Society of Brewing Chemists, Vol.78, No.1, p.80-88 (2020)
甲第3号証:Carlsberg Res. Commun. Vol.50, p.325-332 (1985)
甲第4号証:特開昭60-237983号公報
甲第5号証:国際公開第2014/196265号
甲第6号証:“エタノール水溶液の容量%と比重及び重量%等との関係”、令和4年10月1日(検索日)、URL: http://www.alcohol.jp/expert/expert_table/09%20youryou%20jyuuryou.pdf
甲第7号証:英独和ビール用語辞典、平成16年2月15日、日本醸造協会、p.92-93
甲第8号証:日本醸造協會雑誌、1976年、71巻、7号、p.505-510
甲第9号証:“炭水化物/糖質”、2019年6月14日、URL: https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-018.html
甲第10号証:Beer Judge Certification Program 2015 Style Guidelines (2015)
甲第11号証:New Food Industry, Vol.30, No.3. p.6-13 (1988)
甲第12号証:Beer Styles from Around the World (2015)、Horst Dornbusch、p.196-202
甲第13号証:醸造物の成分、平成11年12月10日、日本醸造協会、p.196-201, 226-235
甲第14号証:Journal of the American Society of Brewing Chemists, Vol.77, No.1, p.1-9 (2019)
甲第15号証:“エキス分・原エキス分”、令和4年10月1日(検索日)、灘酒研究会、URL: http://www.nada-ken.com/main/jp/index_e/320.html
甲第16号証:ビールのはなし Part 2-おいしさの科学、1998年4月5日、橋本直樹、p.90-103
甲第17号証:日本農芸化学会誌、Vol.61、No.7、pp.793-802 (1987)
甲第18号証:特開2020-162601号公報
甲第19号証:特開2020-162602号公報
甲第20号証:特開2020-202878号公報
甲第21号証:特開2021-3127号公報
証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。
なお、甲第18ないし21号証は、令和5年5月8日に提出された意見書に添付されたものである。
(以下、順に「甲1」のようにいう。)
第5 取消理由<決定の予告>における取消理由の概要
当審が令和5年6月8日付けで特許権者に通知した取消理由通知<決定の予告>における取消理由の概要は、次のとおりである。
取消理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)
令和5年3月27日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項6に記載された発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲2に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
第6 取消理由通知<決定の予告>に記載した取消理由の判断
上記第2で述べたとおり、本件訂正請求による訂正により特許請求の範囲の請求項6は存在しないものとなった。そうすると、取消理由2の対象は存在しない。
第7 取消理由通知<決定の予告>において採用しなかった特許異議申立理由について
取消理由通知<決定の予告>において採用しなかった特許異議申立理由は、申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)、申立理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)、申立理由3(甲3に基づく新規性・進歩性)、申立理由4(甲4に基づく新規性・進歩性)、申立理由5(実施可能要件)、申立理由6(サポート要件)である。
以下、順に検討する。
1 主な証拠に記載された事項等
(1)甲1に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項
甲1にはおおむね次の事項が記載されている。なお、甲1は外国語文献のため訳文のみを摘記する。
・「
[図:0001404769000001.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
甲1に記載された事項を、特に、Gablinger's Extra Lightに関して整理する。
Gablinger's Extra Lightはライトビールであることから、甲1には次の発明が記載されていると認める。
<甲1発明>
「原麦汁エキス濃度が8.1g/100gであり、アルコール度数が3.51g/100gであり、真正エキス濃度が1.04g/100gであり、総ポリフェノール量が81mg/lであり、水素イオン濃度が4.27であり、外観発酵度が107.2Vs,GV%である、ライトビール。」
(2)甲2に記載された事項等
ア 甲2に記載された事項
甲2にはおおむね次の事項が記載されている。なお、甲2は外国語文献のため、表3の記載を除き訳文のみを摘記する。
・「『第81頁、左欄下から2行~右欄2行』
麦汁を、ピルスナー麦芽(Weyermann、バンベルク、ドイツ)及びハラタウマグナムホップ(Barth Haas Group、ニュルンベルク、ドイツ)で完全に醸造した。」
・「
[図:0001404769000002.jpg]
」
・「
[図:0001404769000003.jpg]
」(表3)
イ 甲2に記載された発明
甲2に記載された事項を、特に表3のビールサンプル2に関して整理する。
甲8の第92-93頁の記載によれば、オリジナルエキス濃度及び真正エキス濃度の「°P」とは質量%を意味するものであるから、甲2には次の発明が記載されていると認める。
<甲2発明>
「オリジナルエキス濃度が12.90±0.09質量%であり、真正エキス濃度が1.86±0.01質量%であり、アルコール度数が7.18±0.09%v/vであり、真正発酵度が86.4±0.3%であり、外観発酵度が105.1±0.1%である、ビール。」
(3)甲3に記載された事項等
ア 甲3に記載された事項
甲3にはおおむね次の事項が記載されている。なお、甲3は外国語文献のため、図の記載を除き訳文のみを摘記する。
・「『第325頁、Abstract、第5行』
ローカロリービール「カロリウス」の本格的な生産が続いている。」
・「『第326頁、左欄、2.1 Materialの第1行~第6行』
Carlsberg Breweriesの銘柄「カロリウス」の2つの醸造物(醸造物2602及び醸造物2609) を、下記の原材料から製造した。
5050kg ラガー麦芽(72%)
200kg カラメル麦芽(3%)
1800kg 粗挽きトウモロコシ(25%)」
・「『第327頁、図1』
[図:0001404769000004.jpg]
右側の縦軸:アルコール濃度(% w/w)
左側の縦軸:真正エキス濃度(% P)
横軸:時間(日数)
図1:低炭水化物ビールの発酵中のアルコール濃度(% w/wエタノール)及び真正エキス濃度(% プラトー)の進行。値は、ServoChem Automatic Beer Analyzerにより測定した。」
・「『第327頁、右欄、3.1 Alcohol and real extractの第11行~第14行』
更に、真性発酵度(RDF)は、55日間の発酵及び貯蔵の後で87.4%と計算することができる(従来のラガーでは67~70%)。」
・「『第329頁、図4』
[図:0001404769000005.jpg]
縦軸:炭水化物濃度(g/l)
横軸:時間(日数)
図4:低炭水化物ビールの発酵中の発酵性糖の炭水化物組成。グルコースを○で示す。DP2は●、DP3は×。各成分の値はグルコースとして測定。」
・「『第330頁、図5』
[図:0001404769000006.jpg]
縦軸:炭水化物濃度(g/l)
横軸:時間(日数)
図5:低炭水化物ビールの発酵中の小さいテキストリンの炭水化物組成。DP4を○で示す。DP5は●、DP6は×。各成分の値はグルコースとして測定。」
・「『第331頁、図6』
[図:0001404769000007.jpg]
縦軸:炭水化物濃度(g/l)
横軸:時間(日数)
図6:低炭水化物ビールの発酵中の大きいテキストリンの炭水化物組成。DP7を●で、DP8を○で示す。各成分の値はグルコースとして測定。」
イ 甲3に記載された発明
甲3に記載された事項を、特に、「3.RESULTS」の項において結果が示されている(第327頁左欄下1-3行)、Carlsberg Breweriesの銘柄「カロリウス」の醸造物2609に関して整理する。
図1の0日目の真正エキス濃度の値は、発酵前の麦汁中のエキス濃度、すなわちオリジナルエキス濃度に相当し、該値は、図1から8.2°Pであることが読み取れる。そして、甲8の第92-93頁の記載によれば、オリジナルエキス濃度及び真正エキス濃度の「°P」とは質量%を意味するものであるから、上記「8.2°P」とは「8.2質量%」を意味する。
また、図1の55日目のアルコール濃度は、アルコール度数に相当し、該値は、図1から3.6(% w/w)であることが読み取れる。
そうすると、甲3には次の発明が記載されていると認める。
<甲3発明>
「アルコール度数が3.6(% w/w)であり、オリジナルエキス濃度が8.2質量%であり、真性発酵度が87.4%である、ビール。」
(4)甲4に記載された事項
ア 甲4に記載された事項
甲4にはおおむね次の事項が記載されている。なお、摘記に際し、半角文字は全角とした。
・「例1
・・・(略)・・・
乾燥物質60gを含有する澱粉加水分解物の溶液に、80gの乾燥醸造用麦汁〔イリノイ州エルムールスト(Elmhurst)のワインメーカース(Winemakers)より手に入れることができる〕、1gのホップ、および全量を800mlとするのに十分な水が添加された。この混合物は沸騰している湯浴中で1時間攪拌され、ついで冷却され、そして殺菌蒸留水の添加により1000mlに調整された。この麦汁および澱粉加水分解物の混合物250mlに、7.5単位のG-ZYME(商標)というグルコアミラーゼ(加水分解物のgあたり0.5単位)および5gの蒸留酒製造業者用の活性乾燥酵母〔ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)のユニバーサル・フード・コーポレーション(Universal Food Corp.)のレッド・スター・ディビジョン(Red Star Division)〕が添加された。この混合物は、500mlのフラスコ中で15~16℃で5日間低速電磁攪拌機により攪拌された。このフラスコは発生したガスを解放するための手段を備えていた。5日後に、この混合物はろ過(当審注:ろ過の「ろ」は偏がさんずいに旁が戸の漢字であるが、ひらがなで記す。以下も同じ。)され、そして高性能液体クロマトグラフィーにより分析された。
・・・(略)・・・
[図:0001404769000008.jpg]
例2
乾燥麦汁の代りに、麦芽エキス〔オハイオ州クリーブランド(Cleveland)のドーバー・ヴィンヤーヅ・インコーポレーテッド(Dover Vineyards Inc.)により輸入され配布されているドイツのハンスベルグ・エッキスポート(Hansberg Export)の麦芽エキス〕を使用する以外は、例1に記載の方法が繰返された。これらの実験の結果は、第II表に示すとおりで、出発材料として乾燥麦汁を使用したときに観察された結果と同様である。
[図:0001404769000009.jpg]
」(第5頁左上欄第3行-第7頁上欄)
イ 甲4に記載された発明
甲4に記載された事項を、特に第II表の、添加物として「37.4D.E.澱粉加水分解物+グルコアミラーゼ」を用いて得られた低カロリービールに関して整理すると、甲4には次の発明が記載されていると認める。
<甲4発明>
「乾燥物質60gを含有する澱粉加水分解物の溶液に、80gの麦芽エキス〔オハイオ州クリーブランド(Cleveland)のドーバー・ヴィンヤーヅ・インコーポレーテッド(Dover Vineyards Inc.)により輸入され配布されているドイツのハンスベルグ・エッキスポート(Hansberg Export)の麦芽エキス〕、1gのホップ、および全量を800mlとするのに十分な水を添加し、湯浴中で1時間攪拌し次いで冷却した後、殺菌蒸留水の添加により1000mlに調整した混合物250mlに、7.5単位のG-ZYME(商標)というグルコアミラーゼ(加水分解物のgあたり0.5単位)および5gの蒸留酒製造業者用の活性乾燥酵母〔ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)のユニバーサル・フード・コーポレーション(Universal Food Corp.)のレッド・スター・ディビジョン(Red Star Division)〕を添加し、500mlのフラスコ中で15~16℃で5日間低速電磁攪拌機により攪拌後ろ過して得られる、最初の炭水化物濃度が13.02g/100ml、最後の炭水化物濃度が0.42g/100ml、エタノール濃度が5.50g/100ml、発酵した最初の炭水化物の%が96.8%である、低カロリービール。」
2 申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「外観発酵度が107.2Vs,GV%である」は、本件特許発明1の「外観発酵度が105.0%以上」との特定事項を満たす。
甲1発明の「原麦汁エキス濃度」は、本件特許発明1の「オリジナルエキス濃度」に相当する。
甲1発明の「アルコール度数が3.51g/100gであり」を、甲6に記載の「アルコール重量%;アルコール容積%×0.79422÷比重」の式、及び、アルコール(wt%)が3.20または4.00のときのエタノールの15℃における比重である0.99をもとにv/v%に換算すると、以下のように計算される。
3.51g/100g÷0.79422×0.99=約4.38v/v%
そうすると、甲1発明は、本件特許発明1の「アルコール度数が4.3(v/v)%以上7.0(v/v)%以下」との特定事項を満たす。
甲1発明の「ライトビール。」は、本件特許発明1の「ビールテイスト飲料。」に相当する。
してみると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「外観発酵度が105.0%以上、アルコール度数が4.3(v/v)%以上7.0(v/v)%以下であるビールテイスト飲料。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1>
「オリジナルエキス濃度」が、本件特許発明1では「8.50質量%以上15.00質量%以下」であるのに対し、甲1発明では「8.1g/100g」である点。
イ 判断
上記相違点1について検討する。
甲1発明の「8.1g/100g」とは「8.1質量%」であり、これは「8.50質量%以上15.00質量%以下」を満たさないから、相違点1は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明1は、甲1発明ではない。
また、甲1発明は、上市された商品であることからみて、そのオリジナルエキス濃度を変更する動機がない。
さらに検討するに、甲1及び他の証拠には、甲1発明において、オリジナルエキス濃度を8.50質量%以上15.00質量%以下とすることは記載も示唆もされていない。
したがって、本件特許発明1は、甲1発明並びに甲1及び他の証拠の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件特許発明2ないし5について
本件特許発明2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
したがって、本件特許発明2ないし5は、本件特許発明1と同様に、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)まとめ
したがって、申立理由1には理由がない。
3 申立理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「外観発酵度が105.1±0.1%であり」は、本件特許発明1の「外観発酵度が105.0%以上」との特定事項を満たす。
甲2発明の「オリジナルエキス濃度が12.90±0.09質量%であり」は、本件特許発明1の「オリジナルエキス濃度が8.50質量%以上15.00質量%以下」との特定事項を満たす。
甲2発明の「ビール」は、本件特許発明1の「ビールテイスト飲料」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲2発明とは、
「外観発酵度が105.0%以上、オリジナルエキス濃度が8.50質量%以上15.00質量%以下であるビールテイスト飲料。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2>
アルコール度数が、本件特許発明1では「4.3(v/v)%以上7.0(v/v)%以下」であるのに対し、甲2発明では「7.18±0.09%v/v」である点。
イ 判断
上記相違点2について検討する。
甲2発明の「7.18±0.09%v/v」は、「4.3(v/v)%以上7.0(v/v)%以下」を満たさないから、相違点2は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明1は甲2発明であるとはいえない。
また、甲2発明においてアルコール度数を変更する動機はない。
さらに検討するに、甲2及び他の証拠には、甲2発明においてアルコール度数を4.3(v/v)%以上7.0(v/v)%以下とすることは記載も示唆もされていない。
そして、本件特許発明1は、アルコール度数を4.3(v/v)%以上7.0(v/v)%以下とすることで、ビールテイスト飲料らしい刺激感を感じることができるという、甲2発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項からみて当業者が予測することができる範囲を超えた顕著な効果を奏するものである。
なお、特許異議申立人は、令和5年5月8日付け意見書において、甲2の表3には、甲2発明であるビールサンプル2と並列的に、アルコール度数が7.0(v/v)以下のビールサンプルとして、3D(アルコール度数:6.18±0.08(v/v)%)及び4D(アルコール度数:6.09±0.13(v/v)%)が開示されているから、甲2発明のアルコール度数を6%程度にすることを当業者は容易に想到できる旨主張する。
上記主張について検討する。
甲2発明において相違点2に係る特定事項を採用するには、甲2発明において「外観発酵度が105.0%以上」を満たしつつ、「アルコール度数」を「4.3(v/v)%以上7.0(v/v)%以下」にする必要がある。
ここで、特許異議申立人が指摘するビールサンプル3D及び4Dは、いずれも、アルコール度数が6%程度ではあるが、外観発酵度が105.0%未満である。これらビールサンプル3D、4Dのアルコール度数と外観発酵度の数値関係からも理解されるように、アルコール度数が低いときは、発酵の度合いも低く、外観発酵度が低い。
そうすると、甲2発明において、甲2のビールサンプル3D、4Dの各種数値のうちのアルコール度数のみを適用し、「外観発酵度が105.0%以上」を維持しつつ、「4.3(v/v)%以上7.0(v/v)%以下」とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
また、上述のとおり、甲2発明においてアルコール度数を変更する動機はなく、甲2の他のビールサンプル3D、4Dのアルコール度数の数値を参酌してアルコール度数を「4.3(v/v)%以上7.0(v/v)%以下」の範囲に設定することが当業者において容易に想到しえた事項であるともいえない。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
したがって、本件特許発明1は、甲2発明並びに甲2及び他の証拠の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件特許発明2ないし5について
本件特許発明2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
したがって、本件特許発明2ないし5は、本件特許発明1と同様に、甲2発明であるとはいえないし、甲2発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)まとめ
したがって、申立理由2には理由がない。
4 申立理由3(甲3に基づく新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「アルコール度数が3.6(% w/w)であり」を、甲6に記載の「アルコール重量%;アルコール容積%×0.79422÷比重」の式、及び、アルコール(wt%)が3.20または4.00のときのエタノールの15℃における比重である0.99をもとにv/v%に換算すると、以下のように計算される。
3.6(% w/w)÷0.79422×0.99=約4.49v/v%
そうすると、甲3発明は、本件特許発明1の「アルコール度数が4.3(v/v)%以上9.0(v/v)%以下」との特定事項を満たす。
甲3発明の「ビール。」は、本件特許発明1の「ビールテイスト飲料。」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲3発明とは、
「アルコール度数が4.3(v/v)%以上9.0(v/v)%以下であるビールテイスト飲料。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点3-1>
本件特許発明1が「外観発酵度が105.0%以上」であるのに対し、甲3発明の外観発酵度が不明である点。
<相違点3-2>
オリジナルエキス濃度が、本件特許発明1では「8.50質量%以上15.00質量%以下」であるのに対し、甲3発明では「8.2質量%」である点。
イ 判断
事案に鑑み、上記相違点3-2について検討する。
甲3発明の「8.2質量%」は「8.50質量%以上15.00質量%以下」を満たさないから、相違点3-2は実質的な相違点である。
したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲3発明ではない。
また、甲3発明は、Carlsberg Breweriesの銘柄「カロリウス」のレシピに基づいて製造された醸造物であることからみて、そのレシピを変更し、オリジナルエキス濃度を変更する動機がない。
さらに検討するに、甲3及び他の証拠には、甲3発明において、オリジナルエキス濃度を8.50質量%以上15.00質量%以下とすることは記載も示唆もされていない。
したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲3発明並びに甲3及び他の証拠の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件特許発明2ないし5について
本件特許発明2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
したがって、本件特許発明2ないし5は、本件特許発明1と同様に、甲3発明であるとはいえないし、甲3発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)まとめ
したがって、申立理由3には理由がない。
4 申立理由4について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲4発明とを対比する。
甲4発明の「低カロリービール」は本件特許発明1の「ビールテイスト飲料」に相当するから、両者は、「ビールテイスト飲料。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点4-1>
本件特許発明1が「外観発酵度が105.0%以上」であるのに対し、甲4発明の外観発酵度が不明である点。
<相違点4-2>
本件特許発明1が「オリジナルエキス濃度が8.50質量%以上15.00質量%以下」であるのに対し、甲4発明のオリジナルエキス濃度が不明である点。
<相違点4-3>
本件特許発明1が「アルコール度数が4.3(v/v)%以上7.0(v/v)%以下」であるのに対し、甲4発明が「エタノール濃度が5.50g/100ml」である点。
イ 判断
事案に鑑み、上記相違点4-2について検討する。
甲4には、甲4発明が相違点4-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を有すると認められるような記載はないし、甲4を含め他の証拠をみても、甲4発明が該発明特定事項を有する蓋然性が高いともいえない。
したがって、相違点4-2は実質的な相違点である。
なお、特許異議申立人は、特許異議申立書において、甲4発明の「オリジナルエキス濃度」について、以下のように主張している。
甲4発明は、1000ml中に、乾燥物質60g、麦芽エキス80gを含有しており、その不揮発性成分の量は、乾燥物質60gと麦芽エキス80gとの合計である140gであるから、甲4発明のオリジナルエキス濃度は、最高でも、140g/1000ml、すなわち、14.00質量%である。
また、甲4発明のオリジナルエキス濃度は、最低でも「最初の炭水化物」の濃度である13.02g/100ml以上である。
したがって、甲4発明のオリジナルエキス濃度は13.02~14.00質量%であると推定できるから、甲4発明は、「オリジナルエキス濃度が8.50質量%以上15.00質量%以下」との特定事項を充足する。
上記主張について検討する。
甲4発明は、1000ml中に乾燥物質60g、麦芽エキス80gを含有する混合液の250mlに、グルコアミラーゼ及び5gの活性乾燥酵母が添加されてなるものであり、かかる混合液の比重を約1として計算すると、甲4発明のオリジナルエキス濃度の最高値は、{(60+80)÷1000×250+5}÷(250+5)=約15.69質量%である。
そうすると、甲4発明のオリジナルエキス濃度は13.02~15.69質量%であると推定されるから、甲4発明が「オリジナルエキス濃度が8.50質量%以上15.00質量%以下」との特定事項を充足するとはいえない。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲4発明であるとはいえない。
また、甲4及び他のいずれの証拠を見ても、甲4発明において、オリジナルエキス濃度を8.50質量%以上15.00質量%以下とすることは記載も示唆もされておらず、甲4発明において、オリジナルエキス濃度を8.50質量%以上15.00質量%以下とする動機付けもない。
したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲4発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件特許発明2ないし5について
本件特許発明2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
したがって、本件特許発明2ないし5は、本件特許発明1と同様に、甲4発明であるとはいえないし、甲4発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)まとめ
したがって、申立理由4には理由がない。
6 申立理由5(実施可能要件)について
(1)実施可能要件についての判断基準
本件特許発明1ないし5は、上記第3のとおり、「物」の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。
(2)実施可能要件についての判断
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件特許発明が「外観発酵度、およびアルコール度数を所定の範囲に調整したビールテイスト飲料を提供する」(【0005】)、「外観発酵度、およびアルコール度数を調整することで、水っぽい味になることなく、アルコール感、炭酸ガス、ビールテイスト飲料らしい苦味等から感じされるビールテイスト飲料らしい刺激感を感じられるビールテイスト飲料とすることができる。また、本発明のビールテイスト飲料では、外観発酵度が105.0%以上なので、糖質の含有量を抑制することができる。」(【0009】)と記載され、「【発明を実施するための形態】」として、ビールテイスト飲料の定義(【0007】)、アルコール度数の定義及び測定方法及び調整方法(【0008】)、外観発酵度の定義及び算出方法及び調整方法(【0009】ないし【0012】)、オリジナルエキス濃度の定義及び調整方法(【0013】)、総ポリフェノール量の定義及び調整方法(【0019】ないし【0023】)、糖質の定義及び糖質含有量の測定方法及び調整方法(【0014】ないし【0016】)、麦芽使用比率の定義及び調整方法(【0032】ないし【0033】)、pHの測定方法及び調整方法(【0027】)が記載され、加えて、ビールテイスト飲料の製造方法の一般的な記載(【0048】ないし【0058】)があり、さらには、外観発酵度、オリジナルエキス濃度、アルコール度数が本件特許発明の所定の値となるビールテイスト飲料の具体的な製造例も記載されている。
これらの記載によれば、本件特許発明1ないし5に関し、明細書の発明の詳細な説明には過度の試行錯誤を要することなく当業者が本件特許発明1ないし5を生産し、使用することができる程度の記載があるといえ、実施可能要件を満たす。
よって、本件特許発明1ないし5に関する明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定に適合する。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、上記「第4 5」に記載のとおり、及び、令和5年5月8日付け意見書の第5に記載のとおり主張するが、実施可能要件の判断は上記(1)の基準にしたがって判断されるものであり、特許異議申立人の主張は何れも、上記(2)における検討に何ら影響するものではない。
(4)まとめ
上記(2)及び(3)のとおりであるから、申立理由5は、その理由がない。
7 申立理由6(サポート要件)について
(1)サポート要件についての判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(2)サポート要件についての判断
本件特許発明における発明の課題(以下、「発明の課題」という。)は、「ビールテイスト飲料らしい刺激感を感じることができる新規なビールテイスト飲料」を提供すること(【0004】)である。
そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「本発明のビールテイスト飲料は、外観発酵度が105.0%以上とする。しかし、外観発酵度が高いビールテイスト飲料は、旨味が低下し水っぽい味となり、ビールテイスト飲料らしい刺激感が低下する傾向がある。また、アルコール度数が4.0v/v%以下になると、アルコール感が低下し、ビールらしい刺激が感じにくい傾向がある。そこで、本発明のビールテイスト飲料では、外観発酵度を105.0%以上、かつ、アルコール度数が4.3v/v%以上となるように、糖化条件および発酵条件を調整して製造される。外観発酵度、およびアルコール度数を調整することで、水っぽい味になることなく、アルコール感、炭酸ガス、ビールテイスト飲料らしい苦味等から感じされるビールテイスト飲料らしい刺激感を感じられるビールテイスト飲料とすることができる。また、本発明のビールテイスト飲料では、外観発酵度が105.0%以上なので、糖質の含有量を抑制することができる。」(下線は説明のために付した。また、摘記に際し、改行は省略した。)と記載され(【0009】)、外観発酵度の定義及び算出方法及び調整方法(【0009】ないし【0012】)、アルコール度数の定義及び測定方法及び調整方法(【0008】)の記載があり、加えて、ビールテイスト飲料の製造方法の一般的な記載(【0048】ないし【0058】)があり、さらには、外観発酵度が105.0%以上、アルコール度数が4.3(v/v)%以上となるよう調整したビールテイスト飲料がビールテイスト飲料らしい刺激感を感じることができるものであることが実施例により具体的に示されている。
これらの記載に接した当業者であれば、外観発酵度が105.0%以上、アルコール度数が4.3(v/v)%以上とすることにより、発明の課題を解決できると認識できる。
そして、本件特許発明1ないし5は、外観発酵度が105.0%以上、アルコール度数が4.3(v/v)%以上であるとの特定事項を全て有し、かつ、さらに特定するものである。
よって、本件特許発明1ないし5は、明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であり、明細書の発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合する。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、上記「第4 6」のとおり主張する。
しかしながら、上記(2)で検討したとおり、本件特許発明1ないし5の発明の課題は、「外観発酵度が105.0%以上、アルコール度数が4.3(v/v)%以上とする」ことにより解決できると認識できるものであり、特許異議申立人の主張は、いずれも、「外観発酵度が105.0%以上、アルコール度数が4.3(v/v)%以上とする」こととは関係がない。
また、特許異議申立人の主張は、「外観発酵度が105.0%以上、アルコール度数が4.3(v/v)%以上」であっても発明の課題を解決し得ないとする具体的な証拠を提示するものでもない。
よって、特許異議申立人の主張はいずれも採用できない。
(4)まとめ
上記(2)及び(3)のとおりであるから、申立理由6は、その理由がない。
第8 結語
上記第6及び7のとおり、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701002