特許異議申立
2023-700745
延長チューブポートプローブへのアクセスが改善された統合型末梢静脈内カテーテル
- 審判番号
- 2023-700745
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-502628
- 登録番号
- 7208971
- 請求日
- 2023年07月18日
- 審決日
- 2025年02月05日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
- 【権利者代理人】弁理士法人谷・阿部特許事務所
- 【異議申立人】宮崎 理絵
- 審判長/審判官
- 審判長 佐々木 正章
- 審判官 平瀬 知明
- 審判官 栗山 卓也
- 分類
- P1651.113-YAA(A61M) / P1651.121-YAA(A61M) / P1651.537-YAA(A61M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第36条第6項第2号、特許法第126条第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特許第7208971号発明「延長チューブポートプローブへのアクセスが改善された統合型末梢静脈内カテーテル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7208971号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。
特許第7208971号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7208971号の請求項1~3に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)7月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年7月19日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、令和5年1月11日にその特許権の設定登録がされ、令和5年1月19日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許について、令和5年7月18日に特許異議申立人宮崎理絵(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
その後の手続の経緯は次のとおりである。
令和 5年11月30日付け 取消理由通知
令和 6年 3月 1日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 6月14日 申立人による意見書の提出
同年 7月25日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年10月28日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年11月28日 特許権者による手続補正書(方式)の提出
なお、令和6年3月1日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
また、すでに申立人に意見書の提出の機会が与えられており、後記第2の1のとおり、令和6年10月28日にされた訂正請求(同年11月28日に手続補正)によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、後記第6及び7のとおり、提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となるものであって、特許法第120条の5第5項ただし書に規定された特別の事情があるときに該当し、申立人に再度の意見書の提出の機会を与えていない。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和6年10月28日の訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下のとおりである。なお、本件訂正請求については、令和6年11月28日に手続補正がなされた。下線部は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記サイドポートから前記カテーテルハブに入るプローブの接触角は90度より大きく、」
と記載されているのを、
「前記サイドポートから前記カテーテルハブに挿入されるプローブの前記移行ステップでの接触角は90度より大きく、」
に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記接触角は、前記カテーテルハブの長軸の遠位端から測定した、接触点における、前記プローブの先端における前記プローブの長手方向軸線と、前記内壁との間の角度を指すことを特徴とする」
と記載されているのを、
「前記接触角は、前記カテーテルハブの長軸の遠位端側から測定した、前記移行ステップでの接触点における、前記プローブの先端における前記プローブの長手方向軸線と、前記内壁との間の角度を指し、前記接触角が、前記プローブの先端が前記内壁と接触する最初の瞬間での角度であることを特徴とする」
に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2に、
「前記サイドポート内に少なくとも部分的に、さらにプローブを含む」
と記載されているのを、
「前記サイドポート内に少なくとも部分的に、プローブを含む」
に訂正する。
請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明の「プローブ」に関して、統合カテーテルにおいて「挿入される」ものであることを特定して、その本来の意を明らかにするとともに、同発明の「接触角」に関して、「移行ステップでの」との発明特定事項を追加するものであるので、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び同項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
また、訂正事項1は、発明特定事項につき、その本来の意を明らかにするとともに、直列的に追加するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
そして、訂正事項1は、明細書の段落【0008】、【0027】、【0028】、【0041】、【0042】及び【図4】等の記載に基づくものであるので、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項1に係る発明の「接触角」に関して、「カテーテルハブの長軸の遠位端側から」測定したものであって、「前記プローブの先端が前記内壁と接触する最初の瞬間での角度である」ことを特定して、その本来の意を明らかにするとともに、「移行ステップでの」との発明特定事項を追加するものであるので、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び同項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものといえる。
また、訂正事項2は、発明特定事項につき、その本来の意を明らかにするとともに、直列的に追加するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
そして、訂正事項2は、明細書の段落【0008】、【0022】、【0027】、【0028】、【0052】及び【図4】等の記載に基づくものであるので、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
(3)訂正事項3
訂正事項3は、請求項2の記載につき、その本来の意を明らかにするものであるので、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものといえる。
また、訂正事項3は、発明特定事項の本来の意を明らかにするものであるので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合する。
(4)一群の請求項
訂正前の請求項1~3について、請求項2及び3は請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであるから、請求項1~3は一群の請求項であり、上記訂正事項1~3は、その一群の請求項においてなされたものであるから、特許法第120条の5第4項で規定する当該一群の請求項ごとに請求されているものである。
3 小括
以上のとおり、訂正事項1~3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正を認める。
第3 本件訂正発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~3に係る発明(以下「本件訂正発明1~3」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
統合カテーテルであって、
生物学的部位に挿入するためのカテーテル;
カテーテルハブおよびサイドポートを有するカテーテルアダプタを含み、
前記カテーテルハブは、前記カテーテルに動作可能に連結された第1の端部、第1の端部の反対側の第2の端部、およびそれらの間に内部流体通路を画定する内壁を有し、前記サイドポートは、前記内部流体通路と流体連通しており、
前記内壁は、第2の端部に近位の内部流体通路の大径部分と第1の端部の内部流体通路の小径部分との間の移行ステップをさらに画定し、
前記サイドポートから前記カテーテルハブに挿入されるプローブの前記移行ステップでの接触角は90度より大きく、前記接触角は、前記カテーテルハブの長軸の遠位端側から測定した、前記移行ステップでの接触点における、前記プローブの先端における前記プローブの長手方向軸線と、前記内壁との間の角度を指し、前記接触角が、前記プローブの先端が前記内壁と接触する最初の瞬間での角度であることを特徴とする、統合カテーテル。
【請求項2】
前記サイドポート内に少なくとも部分的に、プローブを含むことを特徴とする、請求項1に記載の統合カテーテル。
【請求項3】
前記移行ステップが、内部流体通路を介して前記カテーテルのルーメン内にサイドポートからプローブの通過を容易にするように構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の統合カテーテル。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和5年7月18日に申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1(明確性要件)
本件特許の請求項1~3に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
請求項1~3の「移行ステップ」は、本件明細書の記載を参酌しても、具体的にどのようなものかを当業者が理解することができず、「移行ステップ」、「内壁」及び「内部流体通路」の各用語の定義及びこれらの用語が示す構成の相互の関係性も不明確である。また、請求項1~3において、「プローブ」という用語で特定される構成が不明確である。したがって、請求項1~3に係る発明は不明確である。
2 申立理由2(サポート要件)
本件特許の請求項1~3に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
請求項1~3では「移行ステップ」の位置は特定されておらず、請求項1~3の「移行ステップ」には、プローブの挿入に全く影響を与えないようなもの、すなわち、課題を解決できないものも含まれるとともに、「移行ステップ」、「内壁」及び「内部流体通路」の各用語の定義及びこれらの用語が示す構成の相互の関係性も不明確である。また、請求項1~3には、必要なプローブの長さを短くする課題を解決するための具体的な構成は記載されていないから、課題を解決できないものも含まれている。したがって、請求項1~3の記載は、サポート要件を満たしていない。
3 申立理由3(甲第1号証に基づく新規性)
本件特許の請求項1~3に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
4 申立理由4
(1)申立理由4-1(甲第1号証に基づく進歩性)
・本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明、甲第2、4~7号証に記載された技術的事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
・本件特許の請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
・本件特許の請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立理由4-2(甲第2号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明、甲第1及び8号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)申立理由4-3(甲第3号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証に記載された発明、又は甲3号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
5 証拠方法
甲第1号証:特開2000-14791号公報
甲第2号証:特表平9-504442号公報
甲第3号証:特表2015-509815号公報
甲第4号証:特開平11-33004号公報
甲第5号証:特開平11-76183号公報
甲第6号証:特許第3675835号公報
甲第7号証:特許第6395826号公報
甲第8号証:特表2014-526306号公報
甲第9号証:ロングマン現代英英辞典の「transition」の意味,[online],[令和5年7月12日検索],インターネット<URL:https://www.ldoceonline.com/jp/dictionary/transition>
甲第10号証:ロングマン現代英英辞典の「step」の意味,[online],[令和5年7月12日検索],インターネット<URL:https://www.ldoceonline.com/jp/dictionary/step>
(以下、甲第1号証を「甲1」といい、他の甲号証についても同様に省略する。)
第5 取消理由(決定の予告)の概要
本件特許の請求項1~3に係る特許に対して、当審が令和6年7月25日付けの取消理由通知書(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
本件特許の請求項1~3に係る特許は、請求項1の「接触角」に係る記載が不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4項に該当し取り消すべきものである。
第6 取消理由(決定の予告)についての当審の判断
本件訂正請求の訂正により、本件特許の請求項1の「接触角」について、「前記プローブの先端が前記内壁と接触する最初の瞬間での角度である」ことが特定された(訂正事項2)。
したがって、取消理由(決定の予告)は、当該訂正により解消された。
第7 取消理由(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立理由1について
(1)判断基準
特許法36条6項2号の趣旨は、仮に、特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には、特許の付与された発明の技術的範囲が不明確となり、第三者に不測の不利益を及ぼすことがあり得るので、そのような不都合な結果を防止することにある。そして、特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである(知財高裁平成21年(行ケ)第10434号平成22年8月31日判決)。
(2)判断
本件特許の請求項1~3の「移行ステップ」については、本件特許の明細書の段落【0008】及び【0027】において、「内壁」及び「内部流体通路」との関連を含めて記載があるほか、段落【0020】には「内壁」の定義があり、また、段落【0051】、【0052】及び図3~4等には、「内壁」及び「内部流体通路」の実施形態として「内壁203」及び「内部流体通路204」が記載され、かつ図示されている。
また、同請求項の「プローブ」については、段落【0016】に、その定義及び具体例(各種データを測定するセンサ)が記載されている。
本件特許の明細書における前記段落及び図面の記載等を踏まえると、本件特許の請求項1~3の「移行ステップ」、「内壁」、「内部流体通路」及び「プローブ」の各用語が示す具体的な構成は、当業者にとって理解できるものであって、これらの用語を含む、本件特許の特許請求の範囲の記載(前記第3参照)が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
したがって、本件特許の請求項1~3に係る発明は不明確であるとはいえない。
2 申立理由2について
(1)判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(知財高裁平成17年(行ケ)第10042号平成17年11月11日判決)。
(2)判断
本件特許の特許請求の範囲の記載は、前記第3のとおりである。
これに対して、本件特許の発明の詳細な説明の記載から、次のとおり理解される。
本件特許の発明が解決しようとする課題は、「延長チューブサイドポートを介してデバイス流体通路への、および、患者の血管系内へのプローブアクセスを容易にし、さらにカテーテルアダプタの近くへのアクセス可能とし必要なプローブの長さを短くする、統合カテーテルなどの血管アクセスデバイスを得ること」(段落【0004】)である。
そして、当該課題を解決するための手段は、カテーテル、並びにカテーテルハブ及びサイドポートを有するカテーテルアダプタを含み、カテーテルハブが「内部流体通路」を画定する「内壁」を有し、サイドポートが「内部流体通路」と流体連通しており、「内壁」が「移行ステップ」を画定する統合カテーテルにおいて、サイドポートからカテーテルハブに挿入されるプローブの「接触角」を90度より大きくした構成であると理解される(段落【0005】~【0008】、【0025】、【0028】等)。なお、「接触角」の定義については、段落【0022】に記載されている。
そこで、本件特許の特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を対比すると、本件特許の特許請求の範囲に記載された発明は、本件特許の発明の詳細な説明に記載された発明であって、本件特許の発明の詳細な説明の記載(特に前記段落の記載)により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。
3 申立理由3について
(1)甲1
ア 甲1の記載事項
甲1には、次の事項が記載されている。下線部は、当審で付したものである(以下同様)。
「【請求項3】 先端に内套針を被着した外套針のハブを取り付ける雄ルアーを設け、前記内套針に連通するメインチューブの基端にシリンジが嵌合される雌ルアーを形成すると共に、途中にワイヤスライド機構のガイドワイヤを挿通してスライドチューブに嵌合したガイドチューブの分岐部を設けて、内部を密封状態に保持した中空状のハウジングを備えたことを特徴とするカニューラの導入具。」
「【0013】
【発明の実施の形態】実施の形態1.以下、本発明の実施の形態1を、図面を用いて説明する。図1は本発明の実施の形態1の構成説明図である。図2は図1の各部の構成を示す断面図で、(a)はA部分の断面図、(b)はZ1-Z1断面図、(c)はB部分の断面図である。図1と図2において、1はカニューラの導入具、2はハウジングである。3はハウジング2のメインチューブ、4はメインチューブ3の途中から分岐されたガイドチューブ、41はガイドチューブ4に設けられた誘導溝、42はストッパーである。ハウジング2には透明でやや硬質な樹脂材、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のプラスチック材料で一体成型されている。
【0014】5はメインチューブ3の先端に装着された内套針、6は内套針5の固着点付近の雄ルアー、7はメインチューブ3の基部に形成された雌ルアーである。内套針5には一般にステンレスのような中空の金属材が用いられて、先端に鋭利な針先51が形成されている。また、内套針5の他端はメインチューブ3の内腔内に露出して、露出部に側孔52が穿設されている〔図2(c)〕。8は樹脂からなる外套針(カニューラ)で厚さが除々に薄く作られた先端81には縮径する方向の弱い弾性力が与えられ、後端はやや硬質の雌ルアー82が形成されている。そして、外套針8は後端のハブの雌ルアー82を雄ルアー6に嵌合させて、先端を内套針5の外周に密着させてハウジング2の先に着脱可能に装着されている。
【0015】9はガイドチューブ4上に設けられたワイヤスライド機構、10はガイドワイヤ(または、スタイレット)である。91はスライドチューブ、92,93は内部を密封して輸液等のリーク防止用のチップである。スライドチューブ91は両側のチップ92,93によりガイドチューブ4の外周に同心的に軸受けされて二重管を構成し、両管の隙間で一定容積の円筒状の空隙Rを形成して摺動可能に嵌装されている。Lはスライドチューブ91の摺動範囲、LaとLbは前進位置と後退位置である。ガイドワイヤ10の一端は折り返されてスライドチューブ91とチップ93との間の隙間に挟着され、途中が誘導溝41の位置でガイドチューブ4の外周から内腔内に誘導される。そして、スライドチューブ91が図示のように範囲Lの右限の後退位置Lbにあるときに、ガイドワイヤ10の先端が内套針5の側孔52の近くに到達するような長さになっている。」
「【図1】
[図:0001422382000001.jpg]
」
「【図2】(c)
[図:0001422382000002.jpg]
」
図1等から、「メインチューブ3の内腔」及び「ガイドチューブ4の分岐部」について、メインチューブ3の先端と基端の間に先端が細く基端が太い内腔及び内腔の段差を有し、ガイドチューブ4の分岐部は、メインチューブ3の長手方向軸線に対して斜めに傾斜して設けられた態様が看取できる。
イ 甲1に記載された発明
前記アによれば、甲1には、次の発明が記載されている。
「メインチューブ3の先端に内套針5を装着し、メインチューブ3の途中にワイヤスライド機構9のガイドワイヤ10を挿通するガイドチューブ4の分岐部を設けた、中空状のハウジング2を備え、メインチューブ3の先端と基端の間に先端が細く基端が太い内腔及び内腔の段差を有し、ガイドチューブ4の分岐部は、メインチューブ3の長手方向軸線に対して斜めに傾斜して設けられた、カニューラの導入具1。」(以下「甲1発明」という。)
(2)本件訂正発明1について
ア 対比
本件訂正発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の各構成は、それぞれ、次の本件訂正発明1の構成に相当する。
<甲1発明> <本件訂正発明1>
カニューラの導入具1 統合カテーテル
内套針5 生物学的部位に挿入するためのカテーテル
メインチューブ3 カテーテルハブ
ガイドチューブ4の分岐部 サイドポート
ハウジング2 カテーテルアダプタ
メインチューブ3の先端 第1の端部
メインチューブ3の基端 第1の端部の反対側の第2の端部
メインチューブ3の内腔 内部流体通路
内腔の段差 移行ステップ
ガイドワイヤ10 プローブ
また、甲1発明の「内套針5を装着し」た「メインチューブ3の先端」は、その装着態様に照らすと、本件訂正発明1の「前記カテーテルに動作可能に連結された第1の端部」に相当する。
さらに、甲1発明の「メインチューブ3の先端と基端の間に」ある「内腔」は、その「内腔」を「画定する内壁」を有することは明らかであり、かつ、メインチューブ3の構成及び機能によれば、ガイドチューブ4と「流体連通」していることも明らかである。
そうすると、甲1発明の「メインチューブ3の途中にワイヤスライド機構9のガイドワイヤ10を挿通するガイドチューブ4の分岐部を設け」、「メインチューブ3の先端と基端の間に先端が細く基端が太い内腔及び内腔の段差を有」する構成は、本件訂正発明1の「前記カテーテルハブは」「それらの間に内部流体通路を画定する内壁を有し、前記サイドポートは、前記内部流体通路と流体連通しており、前記内壁は、第2の端部に近位の内部流体通路の大径部分と第1の端部の内部流体通路の小径部分との間の移行ステップをさらに画定」している構成に相当する。
そうすると、両者は、次の一致点及び相違点で一致し相違する。
(一致点)
「統合カテーテルであって、
生物学的部位に挿入するためのカテーテル;
カテーテルハブおよびサイドポートを有するカテーテルアダプタを含み、
前記カテーテルハブは、前記カテーテルに動作可能に連結された第1の端部、第1の端部の反対側の第2の端部、およびそれらの間に内部流体通路を画定する内壁を有し、前記サイドポートは、前記内部流体通路と流体連通しており、前記内壁は、第2の端部に近位の内部流体通路の大径部分と第1の端部の内部流体通路の小径部分との間の移行ステップをさらに画定している、統合カテーテル。」
(相違点1)
本件訂正発明1は、「前記サイドポートから前記カテーテルハブに挿入されるプローブの前記移行ステップでの接触角は90度より大きく、前記接触角は、前記カテーテルハブの長軸の遠位端側から測定した、前記移行ステップでの接触点における、前記プローブの先端における前記プローブの長手方向軸線と、前記内壁との間の角度を指し、前記接触角が、前記プローブの先端が前記内壁と接触する最初の瞬間での角度である」のに対して、
甲1発明は、ガイドチューブ4の分岐部がメインチューブ3の長手方向軸線に対して斜めに傾斜して設けられ、ワイヤスライド機構9のガイドワイヤ10を挿通するものの、そもそも、挿通されるガイドワイヤ10と内壁とが最初に接触するのが内腔の段差でない点。
イ 小括
前記アのとおり、本件訂正発明1と甲1発明とは、前記相違点1で相違するから、本件訂正発明1は、甲1発明ではない。
(3)本件訂正発明2及び3について
本件訂正発明2及び3は、本件訂正発明1の発明特定事項を全て含み、更に限定事項を付加したものであるから、本件訂正発明2及び3と甲1発明とは、少なくとも、前記相違点1で相違する。
したがって、本件訂正発明2及び3は、甲1発明ではない。
4 申立理由4-1について
(1)甲号証
ア 甲1
甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明については、前記3(1)のとおりである。
イ 甲2
甲2には、針組立体で使用される、血管の位置を探知するプローブが記載されている(7ページ下から6~3行)。
ウ 甲3
甲3には、カテーテルアダプタの縦軸線に対して約45°の角度で配された中心軸線を有するポートが記載されている(段落【0029】)。
エ 甲4~7
センサ付きのガイドワイヤは、周知技術である(甲4の請求項1、甲5の請求項1、甲6の請求項1、甲7の請求項1参照)。
オ 甲8
甲8には、カテーテル導入器組立体1のハブ4において、分岐導管42が接続する主要本体内部に形成された段差が記載されている(段落【0042】、【0044】、図5、図7A及び7B)。
(2)本件訂正発明1について
ア 対比
本件訂正発明1と甲1発明の一致点及び相違点は、前記3(2)アのとおりである。
イ 相違点の検討
相違点1に係る本件訂正発明1の「接触角」は、「前記カテーテルハブの長軸の遠位端側から測定した、前記移行ステップでの接触点における、前記プローブの先端における前記プローブの長手方向軸線と、前記内壁との間の角度を指し」かつ「前記プローブの先端が前記内壁と接触する最初の瞬間での角度」である。
そして、甲1発明は、内腔の段差で、挿通するガイドワイヤ10の先端が最初に接触するものではなく、甲1には、相違点1に係る「接触角」の構成は開示も示唆もない。また、甲8には、分岐導管42(サイドポート)にプローブを使用することは記載されておらず、仮にプローブを使用としたとしても、甲8の図5等から、プローブの先端が最初に接触する、段差での接触点での角度が「90度より」大きいことは、看取できない。
また、申立人が提出した他の各甲号証にも、「接触角」の構成について開示も示唆もないから、甲1発明に各甲号証に記載された事項を組み合わせたとしても、相違点1に係る本件訂正発明1の構成に到達することもない。
したがって、相違点1は、各甲号証に基づいて容易想到であるとはいえない。
ウ 小括
以上によれば、本件訂正発明1は、甲1発明及び甲2、4~7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件訂正発明2及び3について
本件訂正発明2及び3は、本件訂正発明1の発明特定事項を全て含み、更に限定事項を付加したものであるから、本件訂正発明2及び3と甲1発明とは、少なくとも、前記相違点1で相違する。
そして、前記(2)と同様の理由により、本件訂正発明2は、甲1発明及び甲3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件訂正発明3は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5 申立理由4-2について
(1)甲号証
ア 甲2
(ア)甲2の記載事項
甲2には、次の事項が記載されている。
「発明の概要
本発明は、ドップラー超音波技術を利用することにより、患者の体内の血管のような身体構造体の位置を探知するための、針組立体内で使用される、長さが調節可能なプローブを備えている。」(7ページ下から6~3行)
「好適な実施例の詳細な説明
図1には、ハウジング12と、針14と、可撓性プローブ16とを備える針組立体10が示してある。可撓性プローブ16は、以下に、より詳細に説明するように、全体として図3に矢印18で示した、ハウジング12及び針14に対して調節可能な長さを有している。
ハウジング12は、各種の針に接続し得るようにした第一の端部20を備えている。第二の端部22が、第一の端部20と軸方向に関して対向し且つ第一の端部20と同軸状に設けられていることが好ましい。第二の端部22は、例えば、注射器に接続し得るようにされている。ハウジング12は、第一の端部20と第二の端部22との間に画成された第一の通路24を備えている。第三の端部26が、可撓性のプローブ16を受け入れ得るように配置されている。第三の端部26と、曲がり部分30を画成する第一の通路24に沿った中間位置との間に第二の通路28が画成される。図示するように、使用するとき、可撓性プローブ16は、第二の通路28、第一の通路24及び針14の一部を通して軸方向に可動であり、このため、可撓性のプローブ16は、曲がり部分30の周囲に沿って曲がる。第一の通路24及び第二の通路28は、典型的には、約30°の相対的角度で方向決めされている。
第三の端部26は、係止手段31を備えることが好ましい。該係止手段31は、ハウジング12の第三の端部26に形成することの出来る雄ねじ32を備えている。雌ねじ付きの可調節部材34が、雄ねじ32上で支承される。加圧手段36が、可調節部材34の表面38に接触するように設けられる。該加圧手段36は、符号40で示したハウジング12の部分に受け入れられ、このため、部材34を雄ねじ32に沿って相対的に調節することで、表面38は加圧手段36に当接し且つ該加圧手段36に対し軸方向への圧力を付与することができる。かかる軸方向への圧力により加圧手段36が圧縮され、それによって該加圧手段36は、可撓性プローブ16に対して半径方向の圧縮力を付与する。このようにして、可撓性プローブ16は、ハウジング12に対して軸方向に関して固定状態となるよう、一時的に保持される。また、加圧手段36は、第三の端部26からの漏洩を防止するためのシールとしても機能する。
可撓性プローブ16は、ハウジング12及び針14を通して適当な位置まで軸方向に摺動することが出来、それによって、可撓性プローブ16の基端42は、針14内で適正な位置に配置される。係止手段31を適当に調節することによって、可撓性プローブ16がこの所定の位置を保つようにすることが出来る。
ハウジング12は、操作が容易であり、また、適当なときに、薬剤又は血液が第一の通路24を通るのを医者が観察し得るようにするため、透明で軽量なプラスチック材料で形成することが好ましい。」(9ページ8行~10ページ14行)
「【図1】
[図:0001422382000003.jpg]
」
図1から、「第一の通路24」について、第一の端部20が細く第二の端部22が太く両端部の間に段差を有する態様が看取できる。
(イ)甲2に記載された発明
前記(ア)によれば、甲2には、次の発明が記載されている。
「血管の位置を探知するための針組立体10であって、
第一の端部20、第一の端部20と軸方向に対向する第二の端部22、第一の端部20と第二の端部22との間に画成され、薬剤又は血液が通る第一の通路24、可撓性のプローブ16を受け入れるように配置された第三の端部26、及び、第三の端部26と曲がり部分30を画成する第一の通路24に沿った中間位置との間に画成された第二の通路28を備えるハウジング12と、
第一の端部20に接続し得る針14と、ハウジング12内に配置された可撓性のプローブ16を備え、
第一の通路24は、第一の端部20が細く第二の端部22が太く両端部の間に段差を有し、第一の通路24及び第二の通路28は、典型的には約30°の相対的角度で方向決めされており、可撓性のプローブ16は、曲がり部分30の周囲に沿って曲がる、針組立体10。」(以下「甲2発明」という。)
イ 甲1及び甲8
甲1には、カニューラの導入具の内部流体通路に形成された段差が記載されている(図1参照)。また、甲8には、前記4(1)オで示した事項が記載されている。
(2)本件訂正発明1について
ア 対比
本件訂正発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明の各構成は、それぞれ、次の本件訂正発明1の構成に相当する。
<甲2発明> <本件訂正発明1>
血管の位置を探知するための針組立体10 統合カテーテル
針14 生物学的部位に挿入するた
めのカテーテル
曲がり部分30又は第二の通路28 サイドポート
ハウジング12 カテーテルアダプタ
第一の端部20 第1の端部
第二の端部22 第1の端部の反対側の第2
の端部
薬剤又は血液が通る第一の通路24 内部流体通路
第一の通路24の段差 移行ステップ
可撓性のプローブ16 プローブ
また、甲2発明の「ハウジング12」のうち「第一の通路24」が配置された部分(以下「甲2ハウジング部分」という。)は、本件訂正発明1の「カテーテルハブ」に相当する。
そうすると、甲2ハウジング部分を含む甲2発明の「ハウジング12」が「第一の端部20」、「第二の端部22」及び「第一の通路24」を備える態様は、本件訂正発明1の「前記カテーテルハブ」が「第1の端部、第1の端部の反対側の第2の端部」を備える態様に相当する。
また、甲2発明の「針14」が「接続し得る」「第一の端部20」は、その接続態様に照らすと、本件訂正発明1の「前記カテーテルに動作可能に連結された第1の端部」に相当する。
また、甲2発明の「薬剤又は血液が通る第一の通路24」は、その通路を「画定する内壁」を有することは明らかであり、かつ、ハウジング12の構成及び機能によれば、曲がり部分30又は第二の通路28と「流体連通」していることも明らかである。
そうすると、甲2発明の「薬剤又は血液が通る第一の通路24」と「第三の端部26と曲がり部分30を画成する第一の通路24に沿った中間位置との間に画成された第二の通路28を備えるハウジング12」は、本件訂正発明1の「それらの間に内部流体通路を画定する内壁を有し、前記サイドポートは、前記内部流体通路と流体連通して」いる「前記カテーテルハブ」に相当する。
さらに、甲2発明の「第一の通路24は、第一の端部20が細く第二の端部22が太く両端部の間に段差を有し」との構成は、本件訂正発明1の「前記内壁は、第2の端部に近位の内部流体通路の大径部分と第1の端部の内部流体通路の小径部分との間の移行ステップをさらに画定」する構成に相当する。
そうすると、両者は、次の一致点及び相違点で一致し相違する。
(一致点)
「統合カテーテルであって、
生物学的部位に挿入するためのカテーテル;
カテーテルハブおよびサイドポートを有するカテーテルアダプタを含み、
前記カテーテルハブは、前記カテーテルに動作可能に連結された第1の端部、第1の端部の反対側の第2の端部、およびそれらの間に内部流体通路を画定する内壁を有し、前記サイドポートは、前記内部流体通路と流体連通しており、
前記内壁は、第2の端部に近位の内部流体通路の大径部分と第1の端部の内部流体通路の小径部分との間の移行ステップをさらに画定している、統合カテーテル。」
(相違点2)
本件訂正発明1は、「前記サイドポートから前記カテーテルハブに挿入されるプローブの前記移行ステップでの接触角は90度より大きく、前記接触角は、前記カテーテルハブの長軸の遠位端側から測定した、前記移行ステップでの接触点における、前記プローブの先端における前記プローブの長手方向軸線と、前記内壁との間の角度を指し、前記接触角が、前記プローブの先端が前記内壁と接触する最初の瞬間での角度である」のに対して、
甲2発明は、「可撓性のプローブ16を備え」、「第一の通路24及び第二の通路28は、典型的には約30°の相対的角度で方向決めされており、可撓性のプローブ16は、曲がり部分30の周囲に沿って曲がる」ものの、そもそも、挿入される可撓性のプローブ16と内壁とが最初に接触するのが段差でない点。
イ 相違点の検討
相違点2に係る本件訂正発明1の「接触角」は、「前記カテーテルハブの長軸の遠位端側から測定した、前記移行ステップでの接触点における、前記プローブの先端における前記プローブの長手方向軸線と、前記内壁との間の角度を指し」かつ「前記プローブの先端が前記内壁と接触する最初の瞬間での角度」である。
そして、甲2発明は、第一の通路24の段差で、挿入される可撓性のプローブ16の先端が最初に接触するものではなく、甲2には、相違点2に係る「接触角」の構成は開示も示唆もない。
また、申立人が提出した他の各甲号証にも、「接触角」の構成について開示も示唆もないから(甲8については、前記4(2)イを参照)、甲2発明に各甲号証に記載された事項を組み合わせたとしても、相違点2に係る本件訂正発明1の構成に到達することもない。
したがって、相違点2は、各甲号証に基づいて容易想到であるとはいえない。
ウ 小括
以上によれば、本件訂正発明1は、甲2発明並びに甲1及び8に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
6 申立理由4-3について
(1)甲号証
ア 甲3
(ア)甲3の記載事項
甲3には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
末端および基端と、該末端と該基端との間に延びる内腔と、を有するカテーテルアダプタと、
前記カテーテルアダプタの側壁に配設され、前記内腔と外部環境との間に開口を形成するポートと、
前記ポートに結合され、前記ポートの前記開口を封止する弁と、
を含むカテーテルアッセンブリー。」
「【0016】
図1は、カテーテルアッセンブリー10の一実施例の断面図を示す。示されるように、カテーテルアッセンブリー10は、通常、カテーテルアダプタ14の末端26に結合されたカテーテル12を含む。カテーテル12およびカテーテルアダプタ14は、カテーテルアダプタ14の内腔16がカテーテル12に広がるように一体に結合されている。カテーテル12は、通常、可撓性ポリマーまたは半可撓性ポリマー製の生体適合性材料を含む。カテーテル12は、示されるように。堅い誘導針20と組み合わせて使用可能とされ、カテーテル12を患者に挿入することを可能にする。他の形式の植え込み可能なカテーテルアッセンブリーが本発明と組み合わせて使用されてもよいことが考えられる。」
「【0019】
いくつかの例では、流体は、カテーテルアダプタ14の側壁32におけるポート30を通じてカテーテル12から注入され、引き抜かれ得る。そのポート30は、カテーテルアダプタ14の側壁32を貫通する開口34を形成することができる。側壁32は、カテーテルアダプタ14に沿って(縦軸線24に関連して)実質的に縦方向に延在するカテーテルアダプタ14のいずれかの壁であり得る。ポート30は、側部ポート、即ち、最上部ポートとすることができる。ポート30は、外部環境からカテーテルアダプタ14の内腔16への流路を形成することができる。」
「【0025】
図2は、図1のカテーテルアッセンブリー10の斜視上面図を示す。図示したように、ポート30は、セプタム56のスリット58を通じて挿入される雄型ルアー装置(図6のルアーアクセスコネクタ80など)を用いて利用可能とされる。雄型ルアー装置がルアーロックを含む場合、雄型ルアー装置は、ルアーねじ50と連結することができる。このようにして、別個のアクセスデバイス(access device)は、その中を通じて流体連通を作るように、ポート30によりカテーテルアダプタ14に結合可能とされる。加えて、注射器、針、または他のそのような装置が、それを通して流体を引き抜くように、セプタム58のスリット58を通して挿入可能とされる。」
「【0029】
ここで、カテーテルアダプタ14の縦軸線24に対して約45°の角度42で配された中心軸線38を有するポート30を示す図6を参照する。」
「【図6】
[図:0001422382000004.jpg]
」
図6から、「カテーテルアダプタ14の内腔16」について、末端26が細く基端28が太く両端の間に段差を有する態様が看取できる。
(イ)甲3に記載された発明
前記(ア)によれば、甲3には、次の発明が記載されている。
「末端26及び基端28と、末端26と基端28との間に延びる内腔16と、を有するカテーテルアダプタ14と、カテーテルアダプタ14の末端26に結合されたカテーテル12と、カテーテルアダプタ14の側壁に配設され、内腔16と外部環境との間に開口を形成するポート30と、を含むカテーテルアッセンブリー10であって、
カテーテルアダプタ14の内腔16は、末端26が細く基端28が太く両端の間に段差を有し、
ポート30は、外部環境からカテーテルアダプタ14の内腔16への流路を形成することができ、雄型ルアー装置、注射器、針又は他の装置が挿入可能であり、カテーテルアダプタ14の縦軸線24に対して約45°の角度42で配された中心軸線38を有する、
カテーテルアッセンブリー10。」(以下「甲3発明」という。)
イ 甲2
甲2には、針組立体で使用される、血管の位置を探知するプローブが記載されている(7ページ下から6~3行)。
(2)本件訂正発明1について
ア 対比
本件訂正発明1と甲3発明とを対比すると、甲3発明の各構成は、それぞれ、次の本件訂正発明1の構成に相当する。
<甲3発明> <本件訂正発明1>
カテーテルアッセンブリー10 統合カテーテル
カテーテル12 生物学的部位に挿入するためのカ
テーテル
カテーテルアダプタ14 カテーテルハブ
ポート30 サイドポート
末端26 第1の端部
基端28 第1の端部の反対側の第2の端部
内腔16 内部流体通路
段差 移行ステップ
また、甲3発明の「カテーテルアダプタ14」と「ポート30」を併せた構成は、本件訂正発明1の「カテーテルアダプタ」に相当する。
また、甲3発明の「カテーテル12」が「結合された」「カテーテルアダプタ14の末端26」は、その結合態様に照らすと、本件訂正発明1の「前記カテーテルに動作可能に連結された第1の端部」に相当する。
また、甲3発明の「カテーテルアダプタ14」の「内腔16」は、その「内腔」を「画定する内壁」を有することは明らかであり、かつ、「ポート30は、外部環境からカテーテルアダプタ14の内腔16への流路を形成することができ」るから、ポート30と「流体連通」していることは、明らかである。
そうすると、甲3発明の「カテーテルアダプタ14の側壁に配設され、内腔16と外部環境との間に開口を形成するポート30」であって「外部環境からカテーテルアダプタ14の内腔16への流路を形成することができ」る構成は、本件訂正発明1の「前記カテーテルハブは」「それらの間に内部流体通路を画定する内壁を有し、前記サイドポートは、前記内部流体通路と流体連通して」いる構成に相当する。
さらに、甲3発明の「カテーテルアダプタ14の内腔16は、末端26が細く基端28が太く両端の間に段差を有し」との構成は、本件訂正発明1の「前記内壁は、第2の端部に近位の内部流体通路の大径部分と第1の端部の内部流体通路の小径部分との間の移行ステップをさらに画定」する構成に相当する。
そうすると、両者は、次の一致点及び相違点で一致し相違する。
(一致点)
「統合カテーテルであって、
生物学的部位に挿入するためのカテーテル;
カテーテルハブおよびサイドポートを有するカテーテルアダプタを含み、
前記カテーテルハブは、前記カテーテルに動作可能に連結された第1の端部、第1の端部の反対側の第2の端部、およびそれらの間に内部流体通路を画定する内壁を有し、前記サイドポートは、前記内部流体通路と流体連通しており、
前記内壁は、第2の端部に近位の内部流体通路の大径部分と第1の端部の内部流体通路の小径部分との間の移行ステップをさらに画定している、統合カテーテル。」
(相違点3)
本件訂正発明1は、「前記サイドポートから前記カテーテルハブに挿入されるプローブの前記移行ステップでの接触角は90度より大きく、前記接触角は、前記カテーテルハブの長軸の遠位端側から測定した、前記移行ステップでの接触点における、前記プローブの先端における前記プローブの長手方向軸線と、前記内壁との間の角度を指し、前記接触角が、前記プローブの先端が前記内壁と接触する最初の瞬間での角度である」のに対して、
甲3発明は、「ポート30は」「カテーテルアダプタ14の縦軸線24に対して約45°の角度42で配された中心軸線38を有する」ものの、そもそも、ポート30に挿入される「雄型ルアー装置、注射器、針又は他の装置」と内壁とが最初に接触するのが段差でない点。
イ 相違点の検討
相違点3に係る本件訂正発明1の「接触角」は、「前記カテーテルハブの長軸の遠位端側から測定した、前記移行ステップでの接触点における、前記プローブの先端における前記プローブの長手方向軸線と、前記内壁との間の角度を指し」かつ「前記プローブの先端が前記内壁と接触する最初の瞬間での角度」である。
そして、甲3発明は、内腔16の段差で、挿入される「雄型ルアー装置、注射器、針又は他の装置」の先端が最初に接触するものではなく、甲3には、相違点3に係る「接触角」の構成は開示も示唆もない。
また、申立人が提出した他の各甲号証にも、「接触角」の構成について開示も示唆もないから(甲8については、前記4(2)イを参照)、甲3発明に各甲号証に記載された事項を組み合わせたとしても、相違点3に係る本件訂正発明1の構成に到達することもない。
したがって、相違点3は、各甲号証に基づいて容易想到であるとはいえない。
ウ 小括
以上によれば、本件訂正発明1は、甲3発明に基いて、又は、甲3発明及び甲2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
7 申立理由についてのむすび
以上のとおり、本件特許の請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号及び第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当しない。
また、本件訂正発明1~3は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1~3に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
したがって、申立理由1~4-3の理由では、本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
第8 むすび
以上のとおり、本件特許の請求項1~3に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700745