特許異議申立
2024-700954
積層体およびそれを用いたスタンディングパウチ
- 審判番号
- 2024-700954
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-018757
- 登録番号
- 7463749
- 請求日
- 2024年10月01日
- 審決日
- 2025年12月23日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】清水 義憲
- 【権利者代理人】鈴木 洋平
- 【権利者代理人】和田 雄二
- 【権利者代理人】須藤 康洋
- 【権利者代理人】▲高▼木 太尊
- 【異議申立人】宮崎 理絵
- 【異議申立人】渡辺 陽子
- 【異議申立人】後藤 麻衣子
- 審判長/審判官
- 審判長 八木 誠
- 審判官 長谷川 一郎
- 審判官 金丸 治之
- 分類
- P1651.121-YAA(B32B) / P1651.536-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7463749号発明「積層体およびそれを用いたスタンディングパウチ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7463749号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
特許第7463749号の請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7463749号の請求項1~6に係る特許についての出願(特願2020-18757号)は、令和2年2月6日の出願であって、令和6年4月1日にその特許権の設定登録がされ、令和6年4月9日に特許掲載公報が発行された。
本件の特許異議の申立てに係る手続の経緯の概要は、次のとおりである。
令和6年10月 1日 :特許異議申立人宮崎理絵(以下「申立人A」という。)による請求項1~6に係る特許に対する本件特許異議の申立て
令和6年10月 8日 :特許異議申立人渡辺陽子(以下「申立人B」という。)による請求項1~6に係る特許に対する本件特許異議の申立て
令和6年10月 8日 :特許異議申立人後藤麻衣子(以下「申立人C」という。)による請求項1~6に係る特許に対する本件特許異議の申立て
令和7年 1月28日付け:取消理由通知書
令和7年 3月26日 :特許権者による意見書の提出
令和7年 6月17日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和7年 8月 6日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、当該令和7年8月6日に提出された訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)
令和7年 9月22日 :申立人Bによる意見書(以下「意見書B」という。)の提出
令和7年 9月26日 :申立人Cによる意見書(以下「意見書C」という。)の提出
令和7年8月26日付けで申立人A、申立人B及び申立人Cに対して、訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)を、期間を指定して行ったものであるが、当該期間内に申立人Aからは応答がなかった。
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正請求の趣旨は、「特許第7463749号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1乃至6について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1に記載された
「前記シーラント層が、密度0.910~0.920g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレンからなる厚さ100~150μmのフィルムからなる」を、
「前記シーラント層が、密度0.910~0.920g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレンからなる厚さ100~150μmのフィルムからなり、
前記バリアフィルム層のバリア層が、蒸着法によって形成された金属酸化物層を有し、
前記金属酸化物層の厚さが5nm~500nmである」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~6も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
本件訂正前の請求項3に記載された
「前記バリアフィルム層のバリア層が、蒸着法によって形成された金属酸化物層と前記金属酸化物層上に形成されたガスバリア皮膜層とからなり、」を、
「前記バリアフィルム層の前記バリア層が、前記金属酸化物層と前記金属酸化物層上に形成されたガスバリア皮膜層とからなり、」に、
「前記ガスバリア皮膜層が、水溶性高分子と1種類以上の金属アルコキシド又はその加水分解生成物を含む」を、
「前記ガスバリア皮膜層が、水溶性高分子と1種類以上の金属アルコキシド又はその加水分解生成物を含み、
前記金属酸化物層にAl、Siのいずれかが含まれており、
前記ガスバリア皮膜層は、前記水溶性高分子と1種類以上の金属アルコキシドまたはその加水分解生成物を含んだ水溶液あるいは水・アルコール混合溶液を主成分としたコーティング剤を塗布、乾燥することで得たものであり、
前記水溶性高分子は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、またはそれらの混合物であり、
前記金属アルコキシドがアルコキシシランを含む」に、それぞれ訂正する(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4~6も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
本件訂正前の請求項4に記載された
「前記金属酸化物層にAl、Siのいずれかが含まれている」を、
「前記金属酸化物層にAlが含まれている」に訂正する(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5及び6も同様に訂正する)。
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~6は、請求項2~6が、本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~6〕についてされたものである。
3 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の適否について
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1のバリアフィルム層のバリア層について、「蒸着法によって形成された金属酸化物層を有し、金属酸化物層の厚さが5nm~500nmであ」ることを規定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1の「前記バリアフィルム層のバリア層が、蒸着法によって形成された金属酸化物層を有」することは、本件特許の【0023】の記載、「金属酸化物層の厚さが5nm~500nmである」ことは、本件特許の【0024】の記載にそれぞれ基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項1は、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2のうち、本件訂正前の請求項3に対して「前記バリアフィルム層の前記バリア層が、前記金属酸化物層と前記金属酸化物層上に形成されたガスバリア皮膜層とからな」ると訂正したことは、請求項3が引用する請求項1の訂正に伴い「前記バリアフィルム層のバリア層」が限定されたことを、「前記バリア層」及び「前記金属酸化物層」として引用し、本件訂正前の請求項3の「前記バリアフィルム層のバリア層」を限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正事項2のうち、本件訂正前の請求項3のガスバリア皮膜層について「前記金属酸化物層にAl、Siのいずれかが含まれており、前記ガスバリア皮膜層は、前記水溶性高分子と1種類以上の金属アルコキシドまたはその加水分解生成物を含んだ水溶液あるいは水・アルコール混合溶液を主成分としたコーティング剤を塗布、乾燥することで得たものであり、前記水溶性高分子は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、またはそれらの混合物であり、金属アルコキシドがアルコキシシランを含む」と規定したことは、本件訂正前の請求項3のガスバリア皮膜層について限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2のうち、「前記バリアフィルム層の前記バリア層が、前記金属酸化物層と前記金属酸化物層上に形成されたガスバリア皮膜層とからな」ると訂正したことは、本件特許明細書等の【0023】及び【0024】の記載に基づくものである。また、訂正事項2のうち、「前記金属酸化物層にAl、Siのいずれかが含まれて」いることは、本件特許明細書等の【0023】の記載に、「前記ガスバリア皮膜層は、前記水溶性高分子と1種類以上の金属アルコキシドまたはその加水分解生成物を含んだ水溶液あるいは水・アルコール混合溶液を主成分としたコーティング剤を塗布、乾燥することで得たものであ」ることは、本件特許明細書等の【0025】の記載に、「前記水溶性高分子は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、またはそれらの混合物であ」ることは、本件特許明細書等の【0026】の記載に、及び、「金属アルコキシドがアルコキシシランを含む」ことは、本件特許明細書等の【0028】の記載に、それぞれ基づくものである。したがって、訂正事項2に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項2は、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、本件訂正前の請求項4において、「前記金属酸化物層にAl、Siのいずれかが含まれている」と、任意選択的に記載されていたものから、選択肢の一部を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項3は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項3は、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
4 小括
以上のとおりであるから、訂正事項1~3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたから、本件特許の請求項1~6に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1~6を「本件発明」と総称することもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
少なくともバリアフィルム層、接着剤層、シーラント層とがこの順に積層され、前記バリアフィルム層が、密度0.940~0.980g/cm3の高密度ポリエチレンからなる厚さ20~40μmのフィルムと前記フィルム上に形成されたバリア層とからなり、前記シーラント層が、密度0.910~0.920g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレンからなる厚さ100~150μmのフィルムからなり、
前記バリアフィルム層のバリア層が、蒸着法によって形成された金属酸化物層を有し、
前記金属酸化物層の厚さが5nm~500nmであることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記積層体の高密度ポリエチレンフィルム同士のヒートシール開始温度と、前記積層体の直鎖状低密度ポリエチレン同士のヒートシール強度が飽和するヒートシール飽和温度との差が30℃以上あることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記バリアフィルム層の前記バリア層が、前記金属酸化物層と前記金属酸化物層上に形成されたガスバリア皮膜層とからなり、前記ガスバリア皮膜層が、水溶性高分子と1種類以上の金属アルコキシド又はその加水分解生成物を含み、
前記金属酸化物層にAl、Siのいずれかが含まれており、
前記ガスバリア皮膜層は、前記水溶性高分子と1種類以上の金属アルコキシドまたはその加水分解生成物を含んだ水溶液あるいは水・アルコール混合溶液を主成分としたコーティング剤を塗布、乾燥することで得たものであり、
前記水溶性高分子は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、またはそれらの混合物であり、
前記金属アルコキシドがアルコキシシランを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記金属酸化物層にAlが含まれていることを特徴とする請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
前記バリアフィルム層の前記高密度ポリエチレンフィルムと前記バリア層との間にアンカーコート剤を含有する密着層を備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の積層体を用いたスタンディングパウチ。」
第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~6に係る特許に対して、当審合議体が特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)取消理由1(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
請求項1は、バリアフィルム層がバリア層を有することを特定するが、バリア層の構成については特定していない。しかしながら、本件特許明細書等の【0006】~【0008】の説示のとおり、バリア層の構成として付加される材料によっては、リサイクル性の点で不適なものもあることから、バリア層の構成について特定していない請求項1の記載は、請求項1に係る発明が、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえない。
(2)取消理由2(進歩性)
本件の請求項1~6に係る発明は、以下の甲1B、引用文献1~3、甲6B及び甲7Bに記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<取消理由(決定の予告)で通知した引用文献等一覧>
甲1B:特開2001-225428号公報(申立人Bの提示した甲第1号証)
引用文献1:特開2005-219485号公報(当審が引用した文献)
引用文献2:特開平9-136391号公報(同上)
引用文献3:特開昭57-189851号公報(同上)
甲6B:特開平11-49226号公報(申立人Bの提示した甲第6号証)
甲7B:特開2016-68533号公報(同甲第7号証)
2 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由についての当審における判断
当審合議体は、上記取消理由1及び2によっては、本件発明1~6に係る特許は取り消されるべきものではないと判断する。
(1)引用文献の記載、引用発明及び周知技術について
ア 甲1B
(ア)甲1Bの記載
甲1Bには、以下の記載がある。(下線は当審で付した。「・・・」は記載の省略を示す。以下同様。)
「【請求項1】 密度が0.94g/cm3以上の高密度ポリエチレンを主成分とする樹脂材料(i)からなる第I層と、密度0.94g/cm3未満の線状低密度ポリエチレンを主成分とする樹脂材料(ii)からなる第II層とを有することを特徴とする積層シート。
【請求項2】 積層シートの厚さが40μm~5mmであり、かつ第I層および第II層の厚さがそれぞれ20~2.5mmの範囲であることを特徴とする請求項1記載の積層シート。
【請求項3】 熱成形用シートであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の積層シート。
・・・
【請求項5】 さらに、バリヤー層(IV)を有することを特徴とする請求項1ないし4いずれか一項に記載の積層シート。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はポリエチレン系樹脂を主体とする積層シートに関し、透明性、柔軟性、耐熱性、耐ピンホール性、ヒートシール性、耐ESCR性、非水蒸気透過性、保香性、低臭性、衛生性等に優れ、リサイクル性を有し、食品、飲料、洗剤、薬剤、医療用輸液、化粧品、入浴剤などの容器・包装材に適用される積層シート、その製造方法、およびその積層シートを用いた容器に関する。」
「【0068】本発明の積層シートの厚さは、使いやすさの点から、好ましくは40μm~5mmである。また、本発明の積層シートの第I層および第II層の各層の厚さは、各層の特性(第I層:非水蒸気透過性、保香性等、第II層:耐熱性、耐ピンホール性、ヒートシール性、耐ESCR性等)を十分発揮させるために、それぞれ20~2.5mmの範囲で選択されることが望ましい。」
「【0071】本発明の積層シートは、さらにバリヤー層(IV)を有していてもよい。バリヤー層(IV)を設けることによってガスバリヤー性(非水蒸気透過性、保香性、耐湿性)がさらに向上する。上記バリヤー層(IV)としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンー酢酸ビニル共重合体鹸化物、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート等のプラスチックフイルムまたはシート(これらの延伸物、印刷物、金属等の蒸着物等の二次加工したフイルム、シートを包含する)、あるいは本発明の趣旨を逸脱しない範囲でアルミニウム、鉄、銅、これらを主成分とする合金等の金属箔または金属板、セロファン、紙、織布、不織布等も場合によっては用いてもよい。
【0072】積層シートの層構成としては、I/II、I/III/II、I/II/III、I/II/IV、I/IV/II等が挙げられる。具体的にはsLL/HD、sLL+LD/HD、sLL/HD+LL、sLL+LD/HD+LL、sLL/RC/HD、sLL+LD/RC/HD、sLL+LD/RC+LL/HD、sLL/HD/RC+HD、sLL/接着剤/バリヤー層(EVOH、PA,PEs、OPPなど)/接着剤/HD等が挙げられる。(ここで、LL:従来の線状低密度ポリエチレン、sLL:本発明における(A)線状低密度ポリエチレン、LD:高圧ラジカル法低密度ポリエチレン、HD:高密度ポリエチレン、RC:リサイクルされたブレンド樹脂、EVOH:エチレン-酢酸ビニル共重合体鹸化物、PA:ポリアミド樹脂、PEs:ポリエステル樹脂、OPP:二軸延伸ポリプロピレン、接着剤:酸変性ポリエチレンである。)」
「【0078】本発明の成形体としては、本発明の積層シートからなる袋(バッグ)、容器、ボトル、チューブ、トレー、カップ等が挙げられる。これら成形体は、本発明の積層シートを、押出成形、射出成形、中空成形、圧縮成形および熱成形のいずれかの成形法により成形したものである。成形法は特に限定されない。また、積層シートをヒートシールによって袋状とし、パウチとして利用することもできる。
・・・
【0081】前記容器は、内層が前記(A)線状低密度ポリエチレンを主成分とする樹脂材料(ii)からなる第II層であることが望ましい。ヒートシール性を有する第II層を内層とすることで、容器の成形性が良好になる。・・・
【0082】前記容器の他の態様としてはスタンドパウチ、バッグインボックス用内袋が挙げられる。また、他の態様としては、医療用容器が挙げられる。バッグインボックス用内袋または医療用容器においては、該内袋または容器の少なくとも内層がヒートシール性を有する第II層であることが望ましい。また、ハロゲンを含まない(A)線状低密度ポリエチレンを用いた樹脂材料(ii)や外部に溶出してしまうような添加剤が含まれていない樹脂材料(ii)からなる第II層が該内袋または容器の内層であれば、クリーンな内袋または容器となる。該バッグインボックス用内袋または医療用容器は、2層または3層以上の積層シートや、(A)線状低密度ポリエチレン/接着剤/バリヤー性樹脂/接着剤/高密度ポリエチレン等のバリヤー性樹脂などを使用した上記の積層シートの適当な態様から形成される。」
「【0090】[気相重合]連続式の流動床気相重合装置を用い、重合温度80℃、全圧20kgf/cm2 Gでエチレンと1-ヘキセンの共重合を行った。前記固体触媒を連続的に供給し、エチレン、1-ヘキセンおよび水素を所定のモル比に保つように供給して重合を行い、エチレン共重合体(LLDPE-1およびLLDPE-2)を得た。その物性を表1に示した。
・・・
【0094】
【表1】
[図:0001434125000001.jpg]
」
「【0096】[実施例1、3~9、比較例1~4、参考例1~2]トミー機械工業(株)製2層インフレーション成形機(40mmφ押出機2台)を用い、成形リップギャップ3mm、成形温度200℃の条件下で、所定量の酸化防止剤(イルガノックス1076、イルガフォス168)とステアリン酸カルシウム(中和剤)を配合した表2~表4に示す各層用の樹脂材料を成形し、巾が300mmであり、表2~表4に示す層厚み構成を有する積層シートを製造した。さらに、積層シートの第II層どうしをヒートシールして内容量500mlの容器を製造した。積層シートおよび容器の評価を行った。結果を表2~表4に示す。
[実施例2]酸化防止剤とステアリン酸カルシウムを配合せずに、表2に示す各層用の樹脂材料を実施例1と同様に成形して、積層シートと容器を製造し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0097】
【表2】
[図:0001434125000002.jpg]
【0098】
【表3】
[図:0001434125000003.jpg]
」
(イ)甲1Bに記載されていると認められる事項
a 【0094】の【表1】より、LLDPE-2及びLLDPE-5の密度はそれぞれ0.918g/cm3及び0.910g/cm3であることは明らかである。
b 【0097】の【表2】に示された実施例2は、第I層が高密度ポリエチレンであるHDPE-1、第II層が線状低密度ポリエチレンであるLLDPE-2からなり、第I層及び第II層の厚さが80μmであることが明らかである。
c 【0098】の【表3】に示された実施例9は、第I層が高密度ポリエチレンであるHDPE-1、第II層が線状低密度ポリエチレンであるLLDPE-5からなり、第I層及び第II層の厚さが80μmであることが明らかである。
(ウ)引用発明
よって、甲1Bには、特に【0097】の【表2】に示された実施例2及び【0098】の【表3】に示された実施例9により、以下の発明(以下「引用発明」)が記載されていると認める。
「少なくとも第I層、第II層とが2層インフレーション成形機で積層され、前記第I層が、HDPEからなる厚さ80μmのフィルムからなり、前記第II層が、密度0.918g/cm3または密度0.910g/cm3のLLDPEからなる厚さ80μmのフィルムからなる積層シート。」
イ 周知技術
(ア)引用文献1の記載
「【0035】
(2)高密度ポリエチレン(C)
本発明の積層体の中間層に用いる高密度ポリエチレン(C)は、下記(C1)~(C2)の特性を有する高密度ポリエチレンである。
・・・
【0036】
(C2)密度
本発明で用いる成分(C)の密度は、0.940~0.980g/cm3、好ましくは0.950~0.980g/cm3、さらに好ましくは0.960~0.980g/cm3である。成分(C)の密度が0.940g/cm3未満では耐熱性改良効果が十分ではなく、0.980g/cm3を超えるポリエチレンの製造は困難である。
・・・」
(イ)引用文献2の記載
「【0050】これらの熱可塑性樹脂の中ではポリオレフィンが好ましく、更に好ましくは、密度0.940~0.980、極限粘度2~7dl/gの高密度ポリエチレンが好ましく使用される。」
(ウ)引用文献3の記載
「エチレンの線状重合体は、エチレンの単独重合体及びそれと他のα-オレフィンとの共重合体を含む。単独重合体は、高密度ポリエチレン(密度的0.940~0.980g/ml)として公知であり、デュポン社及びユニオン・カーバイド社(Union Carbide Corporation)を含むいくつかの製造業者から入手することができる。」(第5頁右下欄第7行~同第13行)
(エ)甲6Bの記載
「【0010】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の包装体に用いる積層包装材料の構成を説明する断面図である。図1において、1はバリアフィルム、2は基材、3は金属酸化物蒸着層、4は被覆層、5はシーラント層、7は印刷層の積層構成の包装材料である。図2は、図1の被覆層4、および印刷層7とシーラント層5の間に介在フィルム6を設けた包装材料である。
【0012】基材2は、シート状またはフィルム状のものであって、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン-6、ナイロン-66等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミドなど、あるいはこれらの高分子の共重合体など、通常包装材料として用いられるプラスチックフィルムないしはシートが使用できる。
【0013】・・・さらに基材の表面(蒸着面)をポリエステル系、アクリル系、ウレタン系のアンカーコート層を設け表面改質を行い、蒸着層の密着性を向上させることがより効果的である。
【0014】金属酸化物蒸着層3は、珪素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、錫などの酸化物、窒化物、弗化物の単体、あるいはそれらの複合物からなり、・・・真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ気相成長法(CVD法)などの真空プロセスにより形成される。金属酸化物蒸着層3の膜厚は、100Å~800Åの範囲が適している。
【0015】被覆層4は、水溶性高分子と、(a)1種以上の金属アルコキシド及びその加水分解物、または(b)塩化錫の少なくとも一方を含む水溶液、あるいは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤からなる。水溶性高分子と塩化錫を水系(水あるいは水/アルコール混合)溶媒で溶解させた溶液、あるいはこれに金属アルコキシドを直接、あるいは予め加水分解させるなどの処理を行ったものを混合した溶液を、プラスチック基材2上の無機化合物蒸着層3にコーティング、加熱乾燥し、形成したものである。コーティング剤に含まれる各成分について以下に詳述する。」
「【図1】
[図:0001434125000004.jpg]
」
(オ)甲7Bの記載
「【0023】
B.バリア層
本発明のアルカリ溶液用包装材料において、バリア層としては、酸素ガスおよび水蒸気等の透過を防ぐガスバリア性を有し、さらに好ましくは、アルカリ溶液に対するバリア性を有する任意のバリア膜またはバリアフィルムを使用することができる。
・・・
【0026】
特に、優れたバリア性、及び、耐アルカリ性接着層との良好な層間接着強度を発揮することから、本発明においては、無機物または無機酸化物の蒸着膜、または、プラスチックフィルム上に該蒸着膜を設けてなる蒸着フィルムが特に好適に使用される。
【0028】
蒸着膜及び蒸着フィルムについて、さらに詳細に説明する。蒸着フィルムを形成するプラスチックフィルムとしては、化学的ないし物理的強度に優れ、蒸着膜を形成する条件等に耐え、蒸着膜の特性を損なうことなく良好に保持し得ることができるプラスチックフィルムを使用することができる。
・・・
【0030】
プラスチックフィルムは、蒸着膜を設ける前に、必要に応じて、コロナ処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガスなどを用いて低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品などを用いて処理する酸化処理等の前処理を任意に施すことができる。また、上記表面前処理は、プラスチックフィルムと蒸着膜との密着性を改善するための方法として実施するものであるが、上記の密着性を改善する方法として、例えば、プラスチックフィルムの表面に、あらかじめ、プライマーコート剤層、アンダーコート剤層、あるいは、アンカーコート剤層等を任意に形成することもできる。
【0031】
蒸着膜を形成する材料としては、酸素、水蒸気等に対するガスバリア性を有する無機物または無機酸化物であればよく、例えば、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウム等の酸化物であるが、特に、ガスバリア性、生産効率等の点から、酸化アルミニウム及び酸化珪素が好適に用いられる。
・・・
【0038】
本発明においては、上記蒸着膜上に、さらに以下で説明するようなガスバリア性塗布膜を設けることによって、一層優れたガスバリア性が得られるだけでなく、後述の耐アルカリ性接着層との密接着性が高まる。
本発明において、ガスバリア性塗布膜とは、アルコキシドと水溶性高分子とをゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物を塗布し乾燥させた膜である。」
(カ)周知技術について
上記(ア)、(イ)及び(ウ)より、以下の技術事項は周知の技術(以下「周知技術1」という。)である。また、上記(エ)及び(オ)より、以下の技術事項は周知の技術(以下「周知技術2」、「周知技術3」及び「周知技術4」という。)である。
<周知技術1>
「密度0.940~0.980g/cm3である高密度ポリエチレン。」
<周知技術2>
「バリアフィルムが、プラスチックフィルムに設けた金属酸化物の蒸着膜と、前記蒸着膜上に形成された水溶性高分子とアルコキシドを含む被覆層からなること。」
<周知技術3>
「金属酸化物層として、AlやSiを含んだものを採用すること。」
<周知技術4>
「バリアフィルムの、プラスチックフィルムと蒸着膜との間にアンカーコート層を備えること。」
(2)取消理由1(サポート要件)について
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下検討する。
ア 発明の課題
本件発明が解決しようとする課題は、本件特許明細書等の【0011】の記載から、「ガスバリア性を有する積層体であって、再利用性に優れ、特にスタンディングパウチに好適に使用できる積層体」を提供することである。
イ 発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か
本件の請求項1に係る発明は、本件の請求項1に記載のとおりのものであり、積層体が「少なくともバリアフィルム層、接着剤層、シーラント層とがこの順に積層され、前記バリアフィルム層が、密度0.940~0.980g/cm3の高密度ポリエチレンからなる厚さ20~40μmのフィルムと前記フィルム上に形成されたバリア層とからなり、前記シーラント層が、密度0.910~0.920g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレンからなる厚さ100~150μmのフィルムからな」ることを規定するとともに、バリア層の構成について「蒸着法によって形成された金属酸化物層を有し、金属酸化物層の厚さが5nm~500nmである」と規定する。
ここで、【0041】~【0053】には、高密度ポリエチレンフィルムおよびシーラント層で構成される積層体である「構成1」~「構成6」について説明されており、そのうち、「少なくともバリアフィルム層、接着剤層、シーラント層とがこの順に積層され、前記バリアフィルム層が、密度0.940~0.980g/cm3の高密度ポリエチレンからなる厚さ20~40μmのフィルムと前記フィルム上に形成されたバリア層とからなり、前記シーラント層が、密度0.910~0.920g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレンからなる厚さ100~150μmのフィルムからな」り、バリア層の構成が「蒸着法によって形成された金属酸化物層を有し、金属酸化物層の厚さが5nm~500nmである」「構成3」及び「構成4」が、ガスバリア性を有する積層体であって、再利用性に優れ、特にスタンディングパウチに好適に使用できる積層体の例として示されているものである。すなわち、上記請求項1の記載は、請求項1に係る発明が、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
また、バリア層の構成として付加される材料として、リサイクル性の点で不適なものを示した【0006】~【0008】の説示に照らしても、バリア層の構成が「蒸着法によって形成された金属酸化物層を有し、金属酸化物層の厚さが5nm~500nmである」ものとして規定した上記請求項1の記載は、請求項1に係る発明が、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると把握できるものである。
以上、請求項1及びこれを引用する請求項2~6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。
ウ 申立人の主張について
申立人Cは意見書Cにて、「本件発明1は、依然としてエチレン-酢酸ビニル、アイオノマー、EVOHといったリサイクル中にゲルなどの不純物を生じる可能性のある物質を再利用性に影響を与えるような量で含む形態も含むものである。従って、本件発明1は、「ガスバリア性を有する積層体であって、再利用性に優れ、特にスタンデ ィングパウチに好適に使用できる積層体」を提供するという課題を解決できると認識できる範囲のものではなく」(第3頁第3行~第8行)と主張する。
しかしながら、本件特許明細書の【0041】~【0053】における「構成3」及び「構成4」は、「少なくともバリアフィルム層、接着剤層、シーラント層とがこの順に積層され、前記バリアフィルム層が、密度0.940~0.980g/cm3の高密度ポリエチレンからなる厚さ20~40μmのフィルムと前記フィルム上に形成されたバリア層とからなり、前記シーラント層が、密度0.910~0.920g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレンからなる厚さ100~150μmのフィルムからな」り、バリア層の構成が「蒸着法によって形成された金属酸化物層を有し、金属酸化物層の厚さが5nm~500nmである」積層体であるところ、当該積層体は、ガスバリア性を有し、再利用性に優れ、特にスタンディングパウチに好適に使用できることが示されるものであり、上記請求項1の記載は、本件発明1が、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。また、本件特許の【0008】には、「また、包装用の積層体には、酸素バリア性や水蒸気バリア性などの特性が求められる場合が多いが、特許文献1ではEVOHなどの樹脂を推奨しているが、その場合には接着性樹脂を介さねば上下の層との接着強度が得られず、さらにEVAなどと同様に、繰り返しの熱処理によりゲルなどが生じやすく、再利用の障害となりうる。」との記載は、酸素バリア性や水蒸気バリア性などの特性の付与にあたりEVOHを採用した場合に、ゲルなどの不純物を生じる可能性のある樹脂の採用の必要性を説明しているものであるところ、本件発明1は、バリア層としてEVOHを採用しているものでもない。
以上、申立人Cの上記主張は採用することはできない。
エ 小括
以上、請求項1及びこれを引用する請求項2~6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。
(3)取消理由2(進歩性)について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明を対比する。
引用発明の「第I層」は、「第I層」という呼称が、層の役割や組成等を示すものではなく単に他との区別のための呼称であることが明らかであるから、本件発明1の「バリアフィルム層」と、「第I層」である限りにおいて一致するといえる。また、引用発明の「第II層」は、同様に、「第II層」という呼称が、前記「第I層」と同様に、層の役割や組成等を示すものではなく単に他との区別のための呼称であることが明らかであるから、本件発明1の「シーラント層」と、「第II層」である限りにおいて一致するといえる。そうすると、引用発明の「第I層、第II層とが2層インフレーション成形機で積層され」ることは、本件発明1の「少なくともバリアフィルム層、接着剤層、シーラント層とがこの順に積層され」ることと、「少なくとも第I層、第II層とがこの順に積層され」ることである限りにおいて一致する。
引用発明の「前記第I層が、HDPEからなる厚さ80μmのフィルムからな」ることは、「HDPE」は「高密度ポリエチレン」に相当することは明らかであるから、本件発明1の「前記バリアフィルム層が、密度0.940~0.980g/cm3の高密度ポリエチレンからなる厚さ20~40μmのフィルムと前記フィルム上に形成されたバリア層とからな」ることと、「前記第I層が、高密度ポリエチレンのフィルムを含」む限りにおいて一致する。
引用発明の「LLDPE」は、本件発明1の「直鎖状低密度ポリエチレン」に相当し、引用発明の「密度0.918g/cm3または密度0.910g/cm3」は、本件発明1の「密度0.910~0.920g/cm3」の数値範囲内であるから、引用発明の「前記第II層が、密度0.918g/cm3または密度0.910g/cm3のLLDPEのフィルムからなること」は、本件発明1の「前記シーラント層が、密度0.910~0.920g/cm3のLLDPE直鎖状低密度ポリエチレンからなる厚さ100~150μmのフィルムからなること」と、「前記第II層が、密度0.910~0.920g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレンからなるフィルムからなること」である限りにおいて一致する。
引用発明の「積層シート」は、本件発明1の「積層体」に相当する。
以上より、本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点1>
「少なくとも第I層、第II層とがこの順に積層され、前記第I層が、高密度ポリエチレンのフィルムを含み、前記第II層が、密度0.910~0.920g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレンからなるフィルムからなる積層体。」
<相違点1>
少なくとも第I層、第II層とがこの順に積層されることについて、本件発明1では、「少なくともバリアフィルム層、接着剤層、シーラント層とがこの順に積層され」るのに対して、引用発明では、「第I層、第II層とが2層インフレーション成形機で積層され」る点。
<相違点2>
「第I層」について、本件発明1では「バリアフィルム層」であり、「密度0.940~0.980g/cm3の高密度ポリエチレンからなる」「フィルム」と「前記フィルム上に形成されたバリア層とからなり、前記バリアフィルム層のバリア層が、蒸着法によって形成された金属酸化物層を有」し、「金属酸化物層の厚さが5nm~500nmである」のに対し、引用発明では「第I層」の機能について不明で、「HDPEからなる」「フィルム」である点。
<相違点3>
「密度0.910~0.920g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレンからなるフィルムからなる」「第II層」について、本件発明1では「シーラント層」であるのに対し、引用発明では「第II層」の機能について不明である点。
<相違点4>
「第I層」及び「第II層」の厚さについて、本件発明1では、「バリアフィルム層」は「厚さ20~40μm」であり、「シーラント層」は「厚さ100~150μm」であるのに対し、引用発明では、「第I層」及び「第II層」は、いずれも「厚さ80μm」である点。
(イ)判断
事案に鑑み<相違点2>から検討する。
<相違点2>について
上記(1)ア(ア)に示すように、甲1Bの【0071】には、「本発明の積層シートは、さらにバリヤー層(IV)を有していてもよい。バリヤー層(IV)を設けることによってガスバリヤー性(非水蒸気透過性、保香性、耐湿性)がさらに向上する。」と記載されており、【0072】には、積層シートの層構成として、「sLL/接着剤/バリヤー層(EVOH、PA,PEs、OPPなど)/接着剤/HD」が例示されているものである。したがって、これらの記載をふまえて、引用発明の「HDPEからなる」「フィルム」に、「バリア層」を積層し、当該「フィルム」と「バリア層」の積層体を「バリアフィルム層」とすることまでは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
しかしながら、上記(1)ア(ア)に示す、甲1Bの【0071】には、「上記バリヤー層(IV)としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンー酢酸ビニル共重合体鹸化物、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート等のプラスチックフイルムまたはシート(これらの延伸物、印刷物、金属等の蒸着物等の二次加工したフイルム、シートを包含する)、あるいは本発明の趣旨を逸脱しない範囲でアルミニウム、鉄、銅、これらを主成分とする合金等の金属箔または金属板、セロファン、紙、織布、不織布等も場合によっては用いてもよい。」と記載されており、「バリヤー層(IV)」として数多くの態様を例示しているところ、「蒸着法によって形成された金属酸化物層」の明示的な例示はない。また、本件発明1のバリア層の選択については、本件特許明細書の【0008】の「また、包装用の積層体には、酸素バリア性や水蒸気バリア性などの特性が求められる場合が多いが、特許文献1ではEVOHなどの樹脂を推奨しているが、その場合には接着性樹脂を介さねば上下の層との接着強度が得られず、さらにEVAなどと同様に、繰り返しの熱処理によりゲルなどが生じやすく、再利用の障害となりうる。」という記載が、その前提であるところ、ゲルなどの不純物を生じる可能性のある樹脂の採用を避けることを考慮して、「蒸着法によって形成された金属酸化物層」を採用されたものとすれば、甲1Bには、ゲルなどの不純物を生じる可能性のある樹脂の採用を避けるという技術思想は存在しない。そうすると、引用発明の「フィルム」に積層する「バリア層」として、甲1Bの【0071】の記載より「蒸着法によって形成された金属酸化物層」を敢えて選択する動機付けは存在しない。
よって、引用発明に基いて、上記相違点2の本件発明1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。そしてこのことは、取消理由(決定の予告)で示した他の文献を参照しても同様である。
(ウ)申立人の主張について
申立人Bは意見書Bにて、「本件訂正によって追加された発明特定事項は、周知技術を付加したものにすぎず、決定予告で説示された甲1Bに記載の発明に基づく進歩性欠如の取消理由は、本件訂正後の本件発明1について、依然として解消していない。」(第4頁第9行~第12行)と主張する。
しかしながら、本件訂正によって追加された発明特定事項にかかるバリア層自体が周知技術であったとしても、上記(イ)で説示したとおり、引用発明の「バリアフィルム層」として、甲1Bの【0071】の記載より「蒸着法によって形成された金属酸化物層」を敢えて選択する動機付けは存在しないものである。
以上、申立人Bの上記主張は採用することはできない。
(エ)小括
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記に示したことと同様に、本件発明2~6は、甲1Bに記載の発明、並びに引用文献1~3、甲6B及び甲7Bによって例示される周知技術1~4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)まとめ
以上により、特許請求の範囲の請求項1~6の記載に、取消理由通知(決定の予告)で指摘した不備はなく、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
また、本件の請求項1~6に係る発明は、取消理由通知(決定の予告)で示した、本件特許出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
第5 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立書に記載の申立理由について
1 取消理由通知で採用しなかった申立理由の概要について
取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由の概要は次のとおりである。
以下の「申立理由●A」、「申立理由●B」及び「申立理由●C」は、それぞれ申立人A、申立人B及び申立人Cにより主張された申立理由である。
(1)申立理由1A(実施可能要件)
本件特許は、明細書の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
一般に当業者が入手可能な高密度ポリエチレンの密度の上限値は「0.970g/cm3」であるから、請求項1の「密度0.940~0.980g/cm3の高密度ポリエチレン」のうち、0.970g/cm3を超える密度の高密度ポリエチレンをいかに入手するのか不明である。また、製造方法についても記載されていない。
(2)申立理由2A(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
一般に当業者が入手可能な高密度ポリエチレンの密度の上限値は「0.970g/cm3」である。そうすると、【0042】の構成4における0.98g/cm3のHDPEは存在しないものであり、「密度0.940~0.980g/cm3の高密度ポリエチレン」とする請求項1の範囲まで拡張乃至一般化することはできない。
(3)申立理由3A(明確性要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
一般に当業者が入手可能な高密度ポリエチレンの密度の上限値は「0.970g/cm3」である。そうすると、【0042】の構成4における0.98g/cm3のHDPEがどのようなポリエチレンであるのか理解できず、請求項1の、「密度0.940~0.980g/cm3の高密度ポリエチレン」は不明確である。
(4)申立理由2B(明確性要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
請求項2には、「ヒートシール飽和温度」と記載されているが、当該記載は明確でない。【0034】の記載を参酌しても同様である。また、【0055】の【表2】から、構成1~6における「ヒートシール飽和温度」をいかにして特定するのか把握することもできない。
(5)申立理由1-1C(甲1Cを主引用例とする進歩性)
本件特許の請求項1~6に係る発明は、甲1C及び甲2C~甲10Cに記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(6)申立理由1-2C(甲8Cを主引用例とする進歩性)
本件特許の請求項1~6に係る発明は、甲8C及び甲1C~甲6Cに記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(7)申立理由2C(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
本件特許の明細書の【0041】~【0058】において、ガスバリア層としてAlOX層、ガスバリア皮膜層としてTEOS、PVA等からなる層とした積層体が再利用性に優れるという課題が解決できるものとして把握できない。
<引用文献等一覧>
甲1C:国際公開第2018/202479号(申立人Cが提出した甲第1号証)
甲2C:国際公開第2019/189092号(同甲第2号証)
甲3C:特開2019-14539号公報(同甲3号証)
甲4C:松田修成外1名編,「海外の食品の包材構成(ASEAN・中国編),株式会社東洋紡パッケージング・プラン・サービス,2016年6月1日,p.3、p.33及びp.66-68(同甲4号証)
甲5C:松田修成編,「海外の食品の包材構成(アメリカ大陸編),株式会社東洋紡パッケージング・プラン・サービス,2017年9月1日,p.3及びp.56(同甲5号証)
甲6C:松田修成外1名編,「海外の食品の包材構成(欧州編 分冊□1(当審注:「□1」は1の□囲い文字)),株式会社東洋紡パッケージング・プラン・サービス,2016年9月1日,p.2及びp.61(同甲6号証)
甲7C:LILLI MANOLIS SHERMAN,“Recyclable All-PE Pouches: Sustainable Opportunity for Film Extruders”,[online],2019年11月5日,インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20191105081119/https://www.ptonline.com/articles/recyclable-all-pe-pouches-sustainable-opportunity-for-film-extruders>(同甲7号証)
甲8C:特開2002-52668号公報(同甲8号証)
甲9C: “Product Data Sheet SURPASS○R(当審注:「○R」はRの○囲いで上付き文字) VPsK914 Series Resin”,NOVA Chemicals ,[online],2024年1月9日,インターネット<URL: https://www.novachem.com/wp-content/uploads/SURPASSVPsK914-Series_DS_EN.pdf>
甲10C:“Product Data Sheet VPs412-A Resin”,NOVA Chemicals ,[online],2019年10月2日,インターネット<URL: https://www.polymertrack.com/public_files/Nova%20Chemicals_sVLDPE26062020.pdf>
2 取消理由通知で採用しなかった申立理由についての当審における判断
(1)甲号証について
ア 甲1C
甲1Cについては、日本語訳として特表2020―519487号公報の記載を参照した。甲1Cの、第5頁第19行~第6頁第35行(特表2020―519487号公報の【0022】~【0028】。以下同様。)、第8頁第32行~第11頁第20行(【0039】~【0048】)より、特に、第5頁第19行~第6頁第35行(【0022】~【0028】)の記載及びFig.1(図1)に示され、第11頁第10行~同第20行(【0048】)のように製造されたVerpackungslaminates 1(「包装用積層材1」)として、以下の発明(以下「甲1C発明」という。」)が記載されていると認める。
「第一のラミネート層2、ラミネート接着剤の層、第二のラミネート層3とがこの順で積層され、前記第一のラミネート層2が、80体積%のHDPEのPEからなり厚さ5~35μmの基材層4と基材層4上に接合されたバリア層6とからなり、前記第二のラミネート層3が、PEからなるからなる厚さ20~200μmの層からなり、
前記第一のラミネート層2のバリア層6が、EVOHからなり、
厚さが2~8nmである包装用積層材1。」
イ 甲8C
甲8Cの、【0101】~【0103】より、特に【0103】【表2】の実施例2を参照すると、以下の発明(以下「甲8C発明」という。」)が記載されていると認める。
「第I層、第II層とが2層インフレーション成形機で積層され、前記第I層が、HDPEからなる厚さ40μmのフィルムからなり、第I層はバリア層IIIを積層し、前記第II層がLLDPEからなる厚さ80μmのフィルムからなり、
前記バリア層IIIが、O-ナイロンによって形成され、
厚さが15nmである積層体。」
ウ 甲2C
甲2Cには、以下の記載がある。
「[0066] また、例えば、50g以上、2000g以下の内容物を充填する図5に示すようなスタンドパウチ30を作製する場合、ヒートシール層の厚さは、50μm以上、200μm以下であることが好ましい。
ヒートシール層の厚さを50μm以上とすることにより、充填された内容物が、ヒートシール層の破損により漏れてしまうことを防止することができる。また、ヒートシール層の厚さを200μm以下とすることにより、本発明の積層体の加工適性を向上することができる。」
エ 甲3C
甲3Cには、以下の記載がある。
「【0030】
シーラント層34の厚みは、40μm以上200μm以下の範囲にあるのが好ましい。
この場合、パウチ1の流通過程において生じ得る落下に対する耐衝撃強度に優れると共に、内容物の充填し易さ、内容物の詰替え易さといった取扱性にも優れる。」
オ 甲4C~甲6C
甲4C~甲6Cには、甲4Cの66頁、67頁上欄及び68頁、甲5Cの56頁、並びに甲6Cの61頁上欄より、以下の記載がある。
「スタンディングパウチを構成する包材構成において、最内層に該当するポリエチレンフィルムの厚さを100~150μmとすること。」
カ 甲7C、及び甲9C、甲10C
(ア)甲7Cの6頁には、以下の事項が記載されている。
「PEパッケージにおいて、HDPEの含有量を減らした場合には、剛性や耐熱性が低下すること。」
また、甲7Cの4頁には、以下の事項が記載されている。
「シーラント層としてVPsK914及びVPs412-Aが好適であること。」
(イ)甲9Cには、以下の記載がある。
「VPsK914の密度が0.913g/cm3であること。」
(ウ)甲10Cには、以下の記載がある。
「VPs412-Aの密度が0.912g/cm3であること。」
(2)申立理由1A(実施可能要件)について
物の発明について実施可能要件を満たすためには、明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、当該発明に係る物を作り、使用をすることができる程度のものでなければならない。以下検討する。
本件発明が、本件特許の請求項1~6に記載のとおりのものであるところ、【0040】~【0058】には、実施例が示され、本件発明の発明特定事項を有する構成3及び構成4が【0011】の記載から把握できる本件特許に係る発明が解決しようとする課題を解決するものとして記載されている。
これらの記載を参照することにより、当業者が、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明を実施できるものである。
申立人Aは、一般に当業者が入手可能な高密度ポリエチレンの密度の上限値は「0.970g/cm3」であると主張するが、上記第4の2(1)イ(カ)で周知技術1として示したとおり、「密度0.940~0.980g/cm3である高密度ポリエチレン。」は周知であり、申立人Aの主張は採用することができない。
(3)申立理由2A、及び申立理由2C(サポート要件)について
上記第4の2(2)に示したとおり、請求項1及びこれを引用する請求項2~6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。
申立人Aは、一般に当業者が入手可能な高密度ポリエチレンの密度の上限値は「0.970g/cm3」であると主張するが、上記第4の2(1)イ(カ)で周知技術1として示したとおり、「密度0.940~0.980g/cm3である高密度ポリエチレン。」は周知であり、申立人Aの主張は採用することができない。
申立人Cは、ガスバリア層としてAlOX層、ガスバリア皮膜層としてTEOS、PVA等からなる層とした積層体が再利用性に優れるという課題が解決できるものとして把握できないと主張するが、AlOX層、ガスバリア皮膜層としてTEOS、PVA等からなる層は、バリア層の構成として付加される材料として、リサイクル性の点で不適なものを示した【0006】~【0008】の記載に照らして、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると把握できるものである。よって、申立人Cの主張する申立理由は採用することができない。
(4)申立理由3A、及び申立理由2B(明確性要件)について
請求項に係る発明が明確に把握されるためには、請求項に係る発明の範囲が明確であること、すなわち、ある具体的な物や方法が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるように記載されていることが必要である。
ここで、本件特許の請求項1の
「少なくともバリアフィルム層、接着剤層、シーラント層とがこの順に積層され、前記バリアフィルム層が、密度0.940~0.980g/cm3の高密度ポリエチレンからなる厚さ20~40μmのフィルムと前記フィルム上に形成されたバリア層とからなり、前記シーラント層が、密度0.910~0.920g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレンからなる厚さ100~150μmのフィルムからなり、
前記バリアフィルム層のバリア層が、蒸着法によって形成された金属酸化物層を有し、
金属酸化物層の厚さが5nm~500nmであることを特徴とする積層体。」という記載は、積層体を規定するものとして明確であり、ある具体的な物が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるものである。
申立人Aは、一般に当業者が入手可能な高密度ポリエチレンの密度の上限値は「0.970g/cm3」であると主張するが、上記第4の2(1)イ(カ)で周知技術1として示したとおり、「密度0.940~0.980g/cm3である高密度ポリエチレン。」は周知であり、申立人Aの主張は採用することができない。
申立人Bは、請求項2の、「ヒートシール飽和温度」という記載について、当該記載は明確でないと主張するが、当業者であれば【0034】の記載により、「ヒートシール飽和温度」を把握することができる。また、【0055】の【表2】から、「ヒートシール飽和温度」を読み取り、構成1~4が本件特許の明細書の【0033】で規定する「本積層体の高密度ポリエチレンフィルム側同士(以下、基材間)のヒートシール開始温度THDと、本積層体の直鎖状低密度ポリエチレンフィルム側同士(以下、シーラント間)のヒートシール強度が飽和するヒートシール飽和温度TLLとの差が30℃以上となる場合」に該当するものを把握することができる。よって申立人Bの主張は採用することはできない。
(5)申立理由1-1C(甲1Cを主引用例とする進歩性)
ア 本件発明1について
(ア)対比及び判断
本件発明1と甲1C発明とを対比する。
甲1C発明の「第一のラミネート層2」、「ラミネート接着剤の層」、「第二のラミネート層3」、「バリア層6」及び「包装用積層材1」は、本件発明1の「バリアフィルム層」、「接着剤層」、「シーラント層」、「バリア層」及び「積層体」に相当するから、本件発明1と甲1C発明とは、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点5>
本件発明1では、「前記バリアフィルム層のバリア層が、蒸着法によって形成された金属酸化物層を有し、金属酸化物層の厚さが5nm~500nmであるの」に対して、甲1C発明では、「前記第一のラミネート層2のバリア層6が、EVOHからなり、厚さが2~8nmである」点
上記<相違点5>について検討すると、
本件発明1は、再利用性を考慮してバリア層を選択したものであるが、甲1Cには再利用性を考慮してバリア層を選択する技術思想はなく、甲1C発明のEVOHに換えて、蒸着法によって形成された金属酸化物層に設計変更する動機付けは存在しない。
よって、甲1C発明に基いて、上記相違点5の本件発明1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。そしてこのことは、特許異議申立書で示された他の文献を参照しても同様である。
(イ)小括
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1C及び甲2C~甲10Cに記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記に示したことと同様に、本件発明2~6は、甲1C及び甲2C~甲10Cに記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)申立理由1-2C(甲8Cを主引用例とする進歩性)
ア 本件発明1について
(ア)対比及び判断
本件発明1と甲8C発明とを対比する。
甲8C発明の「第I層」は、「第I層」という呼称が、層の役割や組成等を示すものではなく単に他との区別のための呼称であることが明らかであるから、本件発明1の「バリアフィルム層」と、「第I層」である限りにおいて一致するといえる。また、引用甲8C発明の「第II層」は、同様に、「第II層」という呼称が、前記「第I層」と同様に、層の役割や組成等を示すものではなく単に他との区別のための呼称であることが明らかであるから、本件発明1の「シーラント層」と、「第II層」である限りにおいて一致するといえる。
また、甲8C発明の「バリア層III」及び「積層体」は、本件発明1の「バリア層」及び「積層体」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲8C発明とは、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点6>
本件発明1では、「前記バリアフィルム層のバリア層が、蒸着法によって形成された金属酸化物層を有し、金属酸化物層の厚さが5nm~500nmであるの」に対して、甲18C発明では、「前記バリア層IIIが、O-ナイロンによって形成され、厚さが15nmである」点
上記<相違点6>について検討すると、
本件発明1は、再利用性を考慮してバリア層を選択したものであるが、甲8Cには再利用性を考慮してバリア層を選択する技術思想はなく、甲8C発明のO-ナイロンに換えて、蒸着法によって形成された金属酸化物層に設計変更する動機付けは存在しない。
よって、甲8C発明に基いて、上記相違点6の本件発明1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。そしてこのことは、特許異議申立書で示された他の文献を参照しても同様である。
(イ)小括
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲8C及び甲1C~甲6Cに記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記に示したことと同様に、本件発明2~6は、甲8C及び甲1C~甲6Cに記載された発明に基いて、に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明は、他の相違点について検討するまでもなく、甲7発明及び甲10に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(7)取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった申立理由についての当審の判断のまとめ
よって、本件特許は、明細書の記載に不備はなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。また、特許請求の範囲の記載に不備はなく、特許法第36条第6項第1号又は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
さらに、本件発明1~6は、甲1C及び甲2C~甲10Cに記載された発明に基いて、及び、甲8C及び甲1C~甲6Cに記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
したがって、本件発明1~6は、取消理由通知(決定の予告)に採用しなかった申立理由によって取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおり、請求項1~6に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては取り消すことはできない。さらに、他に請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700954