特許異議申立
2023-700110
圧力測定用チャンバ
- 審判番号
- 2023-700110
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-195093
- 登録番号
- 7119328
- 請求日
- 2023年02月02日
- 審決日
- 2024年03月27日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ニプロ株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人前田特許事務所
- 【異議申立人】金山 愼一
- 審判長/審判官
- 審判長 内藤 真徳
- 審判官 佐々木 一浩
- 審判官 安井 寿儀
- 分類
- P1651.113-YAA(A61M) / P1651.121-YAA(A61M) / P1651.537-YAA(A61M) / P1651.55 -YAA(A61M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第5項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第126条第7項、特許法第36条第6項第2号、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7119328号発明「圧力測定用チャンバ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7119328号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕、5、6、7について訂正することを認める。
特許第7119328号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7119328号の請求項1~7に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)10月 5日の出願であって、令和 4年 8月 8日にその特許権の設定登録がされ、同年 8月17日に特許掲載公報が発行された。その後、令和 5年 2月 2日にその請求項1~7に係る特許について、特許異議申立人金山愼一(以下「特許異議申立人」という。)より特許異議申立書が提出された。
特許異議の申立て以降の手続きの経緯は以下のとおりである。
令和 5年 2月 2日 特許異議申立書の提出
令和 5年 5月18日付け 取消理由通知書
令和 5年 7月24日 意見書及び訂正請求書の提出(特許権者)
令和 5年12月19日 意見書の提出(特許異議申立人)
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和 5年 7月24日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕、5、6、7について訂正することを求めるものであり、その内容は以下のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記段差は、少なくとも一部が前記ハウジングの内面における前記圧力検出ポートの位置から離間するように、前記ハウジングの内面に沿って延び、前記ハウジングと前記可撓性膜との間に通気路を形成する」と記載されているのを、
「前記段差は、少なくとも一部が、線状に延びて前記ハウジングの内面における前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内に達し、前記ハウジングと前記可撓性膜との間に通気路を形成し、前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3、4も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記段差は、少なくとも一部が前記可撓性膜の外面における前記圧力検出ポートに対応する位置から離間するように前記可撓性膜の外面に沿って非同心円状に延び、前記ハウジングと前記可撓性膜との間に通気路を形成する」と記載されているのを、
「前記段差は、前記可撓性膜が前記空気側チャンバ側に最大限変位した状態において、少なくとも一部が、線状に延びて前記可撓性膜の外面における前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内において前記空気側チャンバの内壁面と対向し、前記ハウジングと前記可撓性膜との間に通気路を形成し、前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である」に訂正する(請求項2記載を引用する請求項3、4も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に「前記通気路形成部材は、少なくとも一部が前記圧力検出ポートの位置から離間するように前記ハウジングの内壁面に沿って延びる」と記載されているのを、
「前記通気路形成部材は、少なくとも一部が、線状に延びて前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内において前記空気側チャンバの内壁面と対向し、前記通気路が前記開口領域の領域外から領域内に達し、前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に「前記ハウジングの前記空気側チャンバに接する側は、内面に開口した圧力検出ポートを有している」と記載されているのを、
「前記ハウジングの前記空気側チャンバに接する側は、内面に開口した圧力検出ポートを有し、前記通気路形成部材は、前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内において前記空気側チャンバの内壁面と対向し、前記開口領域の領域外から領域内に達する通気路を形成し、前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7に「前記通気路は、少なくとも一部が前記圧力検出ポートから離間するように前記ハウジングの内面に沿って非同心円状に延びる」と記載されているのを、
「前記通気路は、少なくとも一部が、線状に延びて前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内に達し、前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である」に訂正する。
(6)一群の請求項について
本件訂正は、一群の請求項〔1~4〕、5、6、7に対して請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「段差」について、「前記圧力検出ポートの位置から離間するように、前記ハウジングの内面に沿って延び」とあったのを、「線状に延びて」、「前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内に達し」、「前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である」と具体的に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」といい、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲及び図面も合わせたものを「本件明細書等」という。)の段落【0026】の「図1には、線状に延びる通気路形成リブ151が45度ずつずれて8方向に延びている例を示したが、」なる記載、段落【0032】の「放射状に設けられた通気路形成リブ151の1つは、圧力検出ポート119の開口領域119aに達するように設けることが好ましい。通気路形成リブ151が、圧力検出ポート119の開口縁119bに達していなくても、開口領域119aに達していれば、可撓性膜102による圧力検出ポート119の閉塞が生じにくくなり、圧力検出ポート119と通気していない空気胞が生じる可能性を大幅に低減できる。開口領域119aは、圧力検出ポート119の直径の好ましくは3倍程度、より好ましくは2倍程度の範囲の領域である。」なる記載及び【図3】の記載に基づいて導き出される事項であるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
したがって、訂正事項1は、本件明細書等の全てを総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
また、訂正事項1は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
以上を踏まえると、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2は、訂正前の請求項2の「段差」について、「圧力検出ポートに対応する位置から離間するように前記可撓性膜の外面に沿って非同心円状に延び」とあったのを、「前記可撓性膜が前記空気側チャンバ側に最大限変位した状態において」、「線状に延びて」、「圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内において前記空気側チャンバの内壁面と対向し」、「前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である」と具体的に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項2は、本件明細書等の段落【0022】の「可撓性膜102は、ハウジング101の空気側チャンバに接する側(第2の凹部形成面117)に向かって最大限変位した際に、可撓性膜102とハウジング101の内面との間にできるだけ空間ができないように、第2の凹部形成面117と略同寸法となるように形成されている。」なる記載、段落【0026】の「図1には、線状に延びる通気路形成リブ151が45度ずつずれて8方向に延びている例を示したが、」なる記載、段落【0032】の「放射状に設けられた通気路形成リブ151の1つは、圧力検出ポート119の開口領域119aに達するように設けることが好ましい。通気路形成リブ151が、圧力検出ポート119の開口縁119bに達していなくても、開口領域119aに達していれば、可撓性膜102による圧力検出ポート119の閉塞が生じにくくなり、圧力検出ポート119と通気していない空気胞が生じる可能性を大幅に低減できる。開口領域119aは、圧力検出ポート119の直径の好ましくは3倍程度、より好ましくは2倍程度の範囲の領域である。」なる記載、段落【0041】の「通気路を形成するための段差をハウジング111の内面に設ける例を示したが、可撓性膜102の空気側チャンバ106と接する側に設けることもできる。」なる記載及び【図3】の記載に基づいて導き出される事項であるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
したがって、訂正事項2は、本件明細書等の全てを総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
また、訂正事項2は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
以上を踏まえると、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項3は、訂正前の請求項5の「通気路形成部材」について、「前記圧力検出ポートの位置から離間するように前記ハウジングの内壁面に沿って延びる」とあるのを、「線状に延びて前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内において前記空気側チャンバの内壁面と対向し、前記通気路が前記開口領域の領域外から領域内に達し、前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である」と具体的に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項3は、本件明細書等の段落【0042】の「例えば図8に示す変形例においては、平面X字状となった通気路形成リブを有する通気路形成部材160を第2の枠体112と可撓性膜102との間に挟み込んでいる。」なる記載、段落【0026】の「図1には、線状に延びる通気路形成リブ151が45度ずつずれて8方向に延びている例を示したが、」なる記載、段落【0032】の「放射状に設けられた通気路形成リブ151の1つは、圧力検出ポート119の開口領域119aに達するように設けることが好ましい。通気路形成リブ151が、圧力検出ポート119の開口縁119bに達していなくても、開口領域119aに達していれば、可撓性膜102による圧力検出ポート119の閉塞が生じにくくなり、圧力検出ポート119と通気していない空気胞が生じる可能性を大幅に低減できる。開口領域119aは、圧力検出ポート119の直径の好ましくは3倍程度、より好ましくは2倍程度の範囲の領域である。」なる記載及び【図3】の記載に基づいて導き出される事項であるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
したがって、訂正事項3は、本件明細書等の全てを総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
また、訂正事項3は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
以上を踏まえると、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項4は、訂正前の請求項6の「通気路形成部材」について、「前記通気路形成部材は、前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内において前記空気側チャンバの内壁面と対向し、前記開口領域の領域外から領域内に達する通気路を形成し、前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項4は、本件明細書等の段落【0043】の「さらに、図9に示す変形例のように、通気性の材料により形成されたドーム状の通気路形成部材162を設けることもできる。」なる記載、段落【0032】の「放射状に設けられた通気路形成リブ151の1つは、圧力検出ポート119の開口領域119aに達するように設けることが好ましい。通気路形成リブ151が、圧力検出ポート119の開口縁119bに達していなくても、開口領域119aに達していれば、可撓性膜102による圧力検出ポート119の閉塞が生じにくくなり、圧力検出ポート119と通気していない空気胞が生じる可能性を大幅に低減できる。開口領域119aは、圧力検出ポート119の直径の好ましくは3倍程度、より好ましくは2倍程度の範囲の領域である。」なる記載及び【図3】の記載に基づいて導き出される事項であるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
したがって、訂正事項4は、本件明細書等の全てを総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
また、訂正事項4は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
以上を踏まえると、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項5は、訂正前の請求項7の「通気路」について、「前記圧力検出ポートから離間するように前記ハウジングの内面に沿って非同心円状に延びる」とあるのを、「線状に延びて前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内に達し、前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である」と具体的に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項5は、本件明細書等の段落【0026】の「図1には、線状に延びる通気路形成リブ151が45度ずつずれて8方向に延びている例を示したが、」なる記載、段落【0032】の「放射状に設けられた通気路形成リブ151の1つは、圧力検出ポート119の開口領域119aに達するように設けることが好ましい。通気路形成リブ151が、圧力検出ポート119の開口縁119bに達していなくても、開口領域119aに達していれば、可撓性膜102による圧力検出ポート119の閉塞が生じにくくなり、圧力検出ポート119と通気していない空気胞が生じる可能性を大幅に低減できる。開口領域119aは、圧力検出ポート119の直径の好ましくは3倍程度、より好ましくは2倍程度の範囲の領域である。」なる記載及び【図3】の記載に基づいて導き出される事項であるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
したがって、訂正事項5は、本件明細書等の全てを総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
また、訂正事項5は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
以上を踏まえると、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(6)独立特許要件について
訂正前の請求項1~7について特許異議の申立てがされているので、訂正後の請求項1~7に係る訂正に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、同法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕、5、6、7について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正により訂正された請求項1~7に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明7」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
内部に空洞を有するハウジングと、前記空洞を血液側チャンバ及び空気側チャンバに区切る可撓性膜とを備え、
前記空気側チャンバにおいて前記ハウジングは、内面に開口した圧力検出ポートと、内面に形成された段差とを有し、
前記段差は、少なくとも一部が、線状に延びて前記ハウジングの内面における前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内に達し、前記ハウジングと前記可撓性膜との間に通気路を形成し、
前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である、血液回路の圧力測定用チャンバ。
【請求項2】
内部に空洞を有するハウジングと、前記空洞を血液側チャンバ及び空気側チャンバに区切る可撓性膜とを備え、
前記空気側チャンバにおいて前記ハウジングは、内面に開口した圧力検出ポートを有し、
前記可撓性膜の前記空気側チャンバに接する側は、外面に形成された段差を有し、
前記段差は、前記可撓性膜が前記空気側チャンバ側に最大限変位した状態において、少なくとも一部が、線状に延びて前記可撓性膜の外面における前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内において前記空気側チャンバの内壁面と対向し、前記ハウジングと前記可撓性膜との間に通気路を形成し、
前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である、血液回路の圧力測定用チャンバ。
【請求項3】
前記通気路は、前記圧力検出ポートまでつながっている、請求項1又は2に記載の血液回路の圧力測定用チャンバ。
【請求項4】
前記可撓性膜は、長軸と短軸とを有するドーム状膜であり、
前記段差は、長軸方向に延びている請求項1又は2に記載の血液回路の圧力測定用チャンバ。
【請求項5】
内部に空洞を有するハウジングと、前記空洞を血液側チャンバ及び空気側チャンバに区切る可撓性膜と、前記空気側チャンバにおいて前記ハウジングの内壁面と前記可撓性膜との間に設けられ、前記可撓性膜との間に通気路を形成する通気路形成部材とを備え、
前記ハウジングの前記空気側チャンバに接する側は、内面に開口した圧力検出ポートを有し、
前記通気路形成部材は、少なくとも一部が、線状に延びて前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内において前記空気側チャンバの内壁面と対向し、前記通気路が前記開口領域の領域外から領域内に達し、
前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である、血液回路の圧力測定用チャンバ。
【請求項6】
内部に空洞を有するハウジングと、前記空洞を血液側チャンバ及び空気側チャンバに区切る可撓性膜と、前記空気側チャンバにおいて前記ハウジングと前記可撓性膜との間に設けられ、通気性を有する材料により形成された通気路形成部材とを備え、
前記ハウジングの前記空気側チャンバに接する側は、内面に開口した圧力検出ポートを有し、
前記通気路形成部材は、前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内において前記空気側チャンバの内壁面と対向し、前記開口領域の領域外から領域内に達する通気路を形成し、
前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である、血液回路の圧力測定用チャンバ。
【請求項7】
内部に空洞を有するハウジングと、前記空洞を血液側チャンバ及び空気側チャンバに区切る可撓性膜とを備え、
前記ハウジングの前記空気側チャンバに接する側は、内面に開口した圧力検出ポートを有し、
前記空気側チャンバにおいて前記ハウジングと前記可撓性膜との間に、前記可撓性膜が前記ハウジングに接した際に気体を通過させる通気路を有し、
前記通気路は、少なくとも一部が、線状に延びて前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内に達し、
前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である、血液回路の圧力測定用チャンバ。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由の概要
令和 5年 5月18日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
理由1(明確性)
本件特許の請求項1~5及び7に係る発明は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
理由2(サポート要件)
本件特許の請求項1、2、4~7に係る発明は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
理由3(新規性)
本件特許の請求項1~4、7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~4、7に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。
・請求項1、4 引用文献1(甲第1号証)
・請求項2、3 引用文献2(甲第2号証)
・請求項7 引用文献1(甲第1号証)又は引用文献2(甲第2号証)
理由4(進歩性)
本件特許の請求項2、5~7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2、5~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
・請求項2、7 引用文献3及び2(甲第3及び2号証)
・請求項5 引用文献1、4及び5(甲第1、4及び6号証)
・請求項6 引用文献1、5、6及び7(甲第1、6、8及び9号証)
記
引用文献1:特開2016-77406号公報(特許異議申立人が提出した甲第1号証)
引用文献2:特開昭62-5355号公報(同甲第2号証)
引用文献3:米国特許出願公開第2015/0335809号明細書(同甲第3号証)
引用文献4:特開平9-220280号公報(同甲第4号証)
引用文献5:実願昭54-113072号(実開昭56-30956号)のマイクロフィルム(同甲第6号証)
引用文献6:特開平4-115133号公報(同甲第8号証)
引用文献7:特開昭61-241474号公報(同甲第9号証)
第5 当審の判断
1 上記理由1(明確性)について
(1)請求項1について
本件訂正により、請求項1の「段差」が、「線状に延びて」、「圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内に達し」、「前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である」ことが特定されたため、「段差」の構成は明確となった。
よって、請求項1に係る発明は明確である。
(2)請求項2について
本件訂正により、請求項2の「段差」が、「線状に延びて」、「圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内において前記空気側チャンバの内壁面と対向し」、「前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である」ことが特定されたため、「段差」の構成は明確となった。
よって、請求項2に係る発明は明確である。
(3)請求項3、4について
上記(1)及び(2)に記載したとおり、本件訂正により請求項1及び2に係る発明は明確となった。
よって、請求項1又は2を引用する請求項3及び4に係る発明は明確である。
(4)請求項5について
本件訂正により、請求項5の「通気路形成部材」が、「線状に延びて」、「圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内において前記空気側チャンバの内壁面と対向し、前記通気路が前記開口領域の領域外から領域内に達し、前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である」ことが特定されたため、「通気路形成部材」の構成は明確となった。
よって、請求項5に係る発明は明確である。
(5)請求項7について
本件訂正により、請求項7の「通気路」が、「線状に延びて」、「圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内に達し、前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である」ことが特定されたため、「通気路」の構成は明確となった。
よって、請求項7に係る発明は明確である。
2 上記理由2(サポート要件)について
(1)請求項1、2、4~7について
本件訂正により、請求項1、2、4~7の「段差」、「通気路形成部材」又は「通気路」が、圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内に達することが特定された。
よって、請求項1、2、4~7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。
3 上記理由3(新規性)について
(1)引用文献1(甲第1号証)の記載事項、認定事項及び引用発明1
ア 引用文献1の記載事項
引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0021】
(実施の形態1)
図1を参照して、血液回路は、血液を患者から取り出すための血液導入口1、血液導入口1に接続される脱血圧測定部位2、脱血圧測定部位2の血圧を測定する圧力トランスデューサー3、脱血圧測定部位2から排出された血液を加圧する血液ポンプ4、血液ポンプ4の下流側に位置するPD圧測定部位5、PD(Pre-dialyzer)圧測定部位5の血圧を測定する圧力トランスデューサー6、PD圧測定部位5から排出された血液を、ダイアライザー血液導入口7aを経て受け入れるダイアライザー8、ダイアライザー8のダイアライザー血液導出口7bの下流側に位置する静脈圧測定部位11、静脈圧測定部位11の血圧を測定する圧力トランスデューサー12、血液を患者に戻すための血液導出口13を有する。
【0022】
ダイアライザー8は、透析液導出口9aおよび透析液導入口9bを経由して透析装置本体10と接続されており、透析液を用いて血液中の老廃物の除去、血液中の水分調整を行う。
【0023】
図2を参照して、圧力測定部100は、図1における脱血圧測定部位2、PD(Pre-dialyzer)圧測定部位5、および静脈圧測定部位11のいずれかに設けられる。圧力測定部100は、ハウジング101と、ハウジング101に接続される血液ライン210,220とを備える。
【0024】
ハウジング101は、下部ハウジング110と、下部ハウジング110に嵌合する上部ハウジング130とを備える。下部ハウジング110には、血液が導入される入口ポート111と、血液が排出される出口ポート112とが設けられている。入口ポート111には血液ライン210が、出口ポート112には血液ライン220が各々挿入されている。
【0025】
上部ハウジング130には圧力測定ポート140が設けられており、圧力測定ポート140には圧力モニターライン240が接続されている。圧力モニターライン240の先端のコネクタ241は圧力トランスデューサーに接続される。圧力モニターライン240にはクリップ242が取り付けられており、圧力モニターライン240を閉塞させることが可能である。」
「【0028】
図4(A)を参照して、下部ハウジング110下面には溝118が設けられており、溝118は入口ポート111から出口ポート112まで延びている。下部ハウジング110は、下に凸の形状である。
【0029】
下部ハウジング110の取付面119には、可撓性膜120が当接している。可撓性膜120は、ハウジングにより構成されるチャンバ102を2つの空間に分割する。チャンバ102は血液が通過する血液室150と、圧力測定用の空気が存在する空気室160とに分割される。
【0030】
血液室150には、入口ポート111から血液が導入され、血液室150の血液は出口ポート112から排出される。可撓性膜120は弾性を有しており下部ハウジング110に近づく方向に変形可能であるため、血液室150の体積は可変である。
【0031】
空気室160は、図4(A)では可撓性膜120と上部ハウジング130との間にわずかな隙間に形成されている。可撓性膜120は、下部ハウジング110へ近づく方向に変形可能であるため、空気室160の体積も可変である。」
「【0035】
圧力測定ポート140は、空気室160に連通しているが、血液室150には連通していない。血液室150内の血液の流れに応じて可撓性膜120が変位して空気室160の体積が変化すると、この体積変化はトランスデューサーに伝達されるため、トランスデューサーにより血圧を測定することが可能である。」
「【0065】
(実施の形態7)
図42から45を参照して、実施の形態7に従った圧力測定部100では、上部ハウジング130にリブ145が設けられることで、空間146が確保される。リブ145は圧力測定ポート140近傍に設けられる。これにより可撓性膜120が上部ハウジング130に張り付くことを防止できる。」
引用文献1には、以下の図が示されている。
図1
[図:0001411265000001.jpg]
図4(A)
[図:0001411265000002.jpg]
図7
[図:0001411265000003.jpg]
図44
[図:0001411265000004.jpg]
図45
[図:0001411265000005.jpg]
イ 引用文献1からの認定事項
上記アから、以下の事項が認定できる。
(ア)段落【0023】の「圧力測定部100は、ハウジング101と、ハウジング101に接続される血液ライン210,220とを備える。」、段落【0029】の「可撓性膜120は、ハウジングにより構成されるチャンバ102を2つの空間に分割する。」なる記載を踏まて、図7をみると、圧力測定部100は、内部にチャンバ102を有するハウジング101を備えることが看取できる。
(イ)段落【0029】の「可撓性膜120は、ハウジングにより構成されるチャンバ102を2つの空間に分割する。チャンバ102は血液が通過する血液室150と、圧力測定用の空気が存在する空気室160とに分割される。」なる記載を踏まえて、図7をみると、圧力測定部100は、チャンバ102を血液室150と空気室160に分割する可撓性膜120を備えることが看取できる。
(ウ)段落【0031】の「空気室160は、図4(A)では可撓性膜120と上部ハウジング130との間にわずかな隙間に形成されている。」、段落【0035】の「圧力測定ポート140は、空気室160に連通しているが、血液室150には連通していない。」、段落【0065】の「圧力測定部100では、上部ハウジング130にリブ145が設けられることで、空間146が確保される。リブ145は圧力測定ポート140近傍に設けられる。」なる記載を踏まえて、図7及び図45をみると、空気室160においてハウジング101は、空気室160に連通した圧力測定ポート140と、内面に形成されたリブ145とを有する。
(エ)段落【0065】の「圧力測定部100では、上部ハウジング130にリブ145が設けられることで、空間146が確保される。リブ145は圧力測定ポート140近傍に設けられる。これにより可撓性膜120が上部ハウジング130に張り付くことを防止できる。」なる記載を踏まえて、図45をみると、リブ145は、ハウジング101の内面における圧力測定ポート140の開口の周囲に設けられ、ハウジング101と可撓性膜120との間に空間146が確保されることにより、可撓性膜120が上部ハウジング130に張り付くことを防止することが看取できる。
(オ)段落【0021】の「図1を参照して、血液回路は、血液を患者から取り出すための血液導入口1、血液導入口1に接続される脱血圧測定部位2、脱血圧測定部位2の血圧を測定する圧力トランスデューサー3、脱血圧測定部位2から排出された血液を加圧する血液ポンプ4、血液ポンプ4の下流側に位置するPD圧測定部位5、PD(Pre-dialyzer)圧測定部位5の血圧を測定する圧力トランスデューサー6、PD圧測定部位5から排出された血液を、ダイアライザー血液導入口7aを経て受け入れるダイアライザー8、ダイアライザー8のダイアライザー血液導出口7bの下流側に位置する静脈圧測定部位11、静脈圧測定部位11の血圧を測定する圧力トランスデューサー12、血液を患者に戻すための血液導出口13を有する。」、段落【0023】の「圧力測定部100は、図1における脱血圧測定部位2、PD(Pre-dialyzer)圧測定部位5、および静脈圧測定部位11のいずれかに設けられる。」なる記載から、血液回路は圧力測定部100を有する。
ウ 引用発明1
上記ア、イから、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明1>
「内部にチャンバ102を有するハウジング101と、チャンバ102を血液室150と空気室160とに分割する可撓性膜120とを備え、
空気室160においてハウジング101は、内面に開口した圧力測定ポート140と、内面に形成されたリブ145とを有し、
リブ145は、ハウジング101の内面における圧力測定ポート140の開口の周囲に設けられ、ハウジング101と可撓性膜120との間に空間146が確保されることにより、可撓性膜120が上部ハウジング130に張り付くことを防止する、血液回路の圧力測定部100。」
(2)引用文献2(甲第2号証)の記載事項、認定事項及び引用発明2
ア 引用文献2の記載事項
引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア)第4ページ左上欄第7~9行
「3.〔発明の詳細な説明〕
本発明は、透析装置等の流体流動移送装置と共に使用する装置およびその使用方法に関する。」
(イ)第5ページ左上欄第1~9行
「 第1図乃至第5図を参照すると、患者の穿刺針に接続する管、血液ポンプローラ,透析装置,および食塩・ヘパリン溶液供給源を備える流体流動室カセット10が図示されている。このカセット10は、透明なPVCプラスチック製であり、2つの一次流体流動室,動脈室14および静脈室16を備え、血液は、透析装置の入口管18および出口管20の通過前後、これらを通って流動していく。」
(ウ)第5ページ右上欄第16~右下欄第12行
「 第2図および第6図乃至第8図を参照すると、背板98は、動脈室14の穴60,62を備え、静脈室16は、配設方向が逆である点を除いて、同一である隔膜64,66によって覆われている。動脈室14内にて、負圧を受ける隔膜64は、その半円形の波形部分80を動脈室14から伸長させ、動脈室14内にて正圧を受ける隔膜66は、その半円形の波形部分を動脈室14内まで伸長させている。使用時(第6図)、カセット10を接続する機械の表面に取付けた圧力センサ83の円筒状伸長体82を嵌入させる円筒状の貫通路71を備えた隔膜止め輪68,70が隔膜64,66の後側に設けられている。隔膜64,66の周縁には、止め輪68,70の環状面74,76と穴60,62を囲繞する環状対向面78間で狭搾されるビード部72が形成されている。隔膜64,66の端縁部96は、止め輪68,70のリップ片63と穴60,62を囲繞する対向リップ片65間に狭搾され、隔膜と止め輪間、並びに隔膜と背板間に密封装置を形成する。
第6図を参照すると、伸長体82は、円筒状通路71の内面に対する密封装置を形成するOリング84を備えている。圧力変換器要素85は、壁86内部の容積、通路88(伸長体82に形成)および止め輪68の内面と隔膜64間の領域を包含する室57に暴露される。同一の圧力センサが、止め輪70の円筒状通路71の内面と契合する。半円形波形部分80が、隔膜64に沿って伸長し、外表面の半径は0.125インチ(約3.18mm)で、その中心の周囲で180°伸長している。上め輪68の反対面は、同一半径であるが、中心の周囲で完全には180°伸長せず、隔膜64の中心部分90上方0.065インチ(約1.65mm)の位置に位置する面89を終端としている。隔膜64,66の反対面には、4つの半径方向突起92が設けてあり、これら突起は、静脈室内の隔膜66において、通路88の閉塞を防止する効果がある。」
引用文献2には、以下の図が示されている。
図1
[図:0001411265000006.jpg]
図2
[図:0001411265000007.jpg]
図6
[図:0001411265000008.jpg]
図7
[図:0001411265000009.jpg]
イ 引用文献2からの認定事項
上記アから、以下の事項が認定できる。
(ア)上記摘示ア(イ)の「このカセット10は、透明なPVCプラスチック製であり、2つの一次流体流動室,動脈室14および静脈室16を備え、」、上記摘示ア(ウ)の「圧力変換器要素85は、壁86内部の容積、通路88(伸長体82に形成)および止め輪68の内面と隔膜64間の領域を包含する室57に暴露される。同一の圧力センサが、止め輪70の円筒状通路71の内面と契合する。」なる記載を踏まえて図1、図6及び図7をみると、カセット10及び隔膜止め輪70は、内部に静脈室16及び室57を備えることが看取できる。
(イ)上記摘示ア(ウ)の「第2図および第6図乃至第8図を参照すると、背板98は、動脈室14の穴60,62を備え、静脈室16は、配設方向が逆である点を除いて、同一である隔膜64,66によって覆われている。」、「圧力変換器要素85は、壁86内部の容積、通路88(伸長体82に形成)および止め輪68の内面と隔膜64間の領域を包含する室57に暴露される。同一の圧力センサが、止め輪70の円筒状通路71の内面と契合する。」なる記載を踏まえて、図7をみると、静脈室16と室57とを区切る隔膜66を備えることが看取できる。
(ウ)上記摘示ア(ウ)の「使用時(第6図)、カセット10を接続する機械の表面に取付けた圧力センサ83の円筒状伸長体82を嵌入させる円筒状の貫通路71を備えた隔膜止め輪68,70が隔膜64,66の後側に設けられている。」、「圧力変換器要素85は、壁86内部の容積、通路88(伸長体82に形成)および止め輪68の内面と隔膜64間の領域を包含する室57に暴露される。同一の圧力センサが、止め輪70の円筒状通路71の内面と契合する。」なる記載を踏まえて、図6及び図7をみると、室57において隔膜止め輪70は、内面に開口した圧力センサ83の通路88を有することが看取できる。
(エ)上記摘示ア(ウ)の「隔膜64,66の反対面には、4つの半径方向突起92が設けてあり、これら突起は、静脈室内の隔膜66において、通路88の閉塞を防止する効果がある。」なる記載を踏まえて、図7をみると、隔膜66の室57に接する側は、外面に形成された4つの半径方向突起92を有することが看取できる。
(オ)上記摘示ア(ウ)の「使用時(第6図)、カセット10を接続する機械の表面に取付けた圧力センサ83の円筒状伸長体82を嵌入させる円筒状の貫通路71を備えた隔膜止め輪68,70が隔膜64,66の後側に設けられている。」、「圧力変換器要素85は、壁86内部の容積、通路88(伸長体82に形成)および止め輪68の内面と隔膜64間の領域を包含する室57に暴露される。同一の圧力センサが、止め輪70の円筒状通路71の内面と契合する。」、「隔膜64,66の反対面には、4つの半径方向突起92が設けてあり、これら突起は、静脈室内の隔膜66において、通路88の閉塞を防止する効果がある。」なる記載を踏まえて、図7をみると、4つの半径方向突起92は、隔膜66の外面における圧力センサ83の通路88の周囲において止め輪70の内壁面に対向し、通路88の閉塞を防止することが看取できる。
(カ)上記摘示ア(ア)の「本発明は、透析装置等の流体流動移送装置と共に使用する装置およびその使用方法に関する。」、上記適示ア(ウ)の「使用時(第6図)、カセット10を接続する機械の表面に取付けた圧力センサ83の円筒状伸長体82を嵌入させる円筒状の貫通路71を備えた隔膜止め輪68,70が隔膜64,66の後側に設けられている。」及び「圧力変換器要素85は、壁86内部の容積、通路88(伸長体82に形成)および止め輪68の内面と隔膜64間の領域を包含する室57に暴露される。同一の圧力センサが、止め輪70の円筒状通路71の内面と契合する。」なる記載を踏まえて図6をみると、カセット10及び隔膜止め輪70は、透析装置の圧力センサ83の通路88を備えていることが看取できる。
ウ 引用発明2
上記ア、イから、引用文献2には、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明2>
「内部に静脈室16及び室57を備えるカセット10及び隔膜止め輪70と、静脈室16と室57とを区切る隔膜66とを備え、
室57において隔膜止め輪70は、内面に開口した圧力センサ83の通路88を有し、
隔膜66の室57に接する側は、外面に形成された4つの半径方向突起92を有し、
4つの半径方向突起92は、隔膜66の外面における圧力センサ83の通路88の周囲において止め輪70の内壁面に対向し、通路88の閉塞を防止する、透析装置の圧力センサ83の通路88を備えたカセット10及び隔膜止め輪70。」
(3)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明1とを対比する。
(ア)引用発明1の「チャンバ102」は、本件発明1の「空洞」に相当する。
よって、引用発明1の「内部にチャンバ102を有するハウジング101」は、本件発明1の「内部に空洞を有するハウジング」に相当する。
(イ)引用発明1の「血液室150」は、本件発明1の「血液側チャンバ」に相当し、以下同様に、「空気室160」は「空気側チャンバ」に、「分割する」は「区切る」に、それぞれ相当する。
よって、引用発明1の「チャンバ102を血液室150と空気室160とに分割する可撓性膜120」は、本件発明1の「前記空洞を血液側チャンバ及び空気側チャンバに区切る可撓性膜」に相当する。
(ウ)引用発明1の「圧力測定ポート140」は、本件発明1の「圧力検出ポート」に相当し、以下同様に、「リブ145」は「段差」に相当する。
そうすると、上記(イ)も踏まえると、引用発明1の「空気室160においてハウジング101は、内面に開口した圧力測定ポート140と、内面に形成されたリブ145とを有」することは、本件発明1の「前記空気側チャンバにおいて前記ハウジングは、内面に開口した圧力検出ポートと、内面に形成された段差とを有」することに相当する。
(エ)引用発明1の「空間146」は「可撓性膜120が上部ハウジング130に張り付くことを防止する」ものであるから、本件発明1の「通気路」に相当する。
よって、引用発明1の「リブ145は、ハウジング101の内面における圧力測定ポート140の開口の周囲に設けられ、ハウジング101と可撓性膜120との間に空間146が確保されることにより、可撓性膜120が上部ハウジング130に張り付くことを防止する」ことと、
本件発明1の「前記段差は、少なくとも一部が、線状に延びて前記ハウジングの内面における前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内に達し、前記ハウジングと前記可撓性膜との間に通気路を形成し、前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である」こととは、
前記段差は、少なくとも一部が、前記ハウジングの内面における前記圧力検出ポートの開口の周囲に設けられ、前記ハウジングと前記可撓性膜との間に通気路を形成する、限りで一致する。
(オ)引用発明1の「血液回路の圧力測定部100」は、「内部にチャンバ102を有するハウジング101」を備えるから、本件発明1の「血液回路の圧力測定用チャンバ」に相当する。
以上を踏まえると、本件発明1と引用発明1との一致点、相違点は以下のとおりと認められる。
〔一致点1〕
「内部に空洞を有するハウジングと、前記空洞を血液側チャンバ及び空気側チャンバに区切る可撓性膜とを備え、
前記空気側チャンバにおいて前記ハウジングは、内面に開口した圧力検出ポートと、内面に形成された段差とを有し、
前記段差は、少なくとも一部が、前記ハウジングの内面における前記圧力検出ポートの開口の周囲に設けられ、前記ハウジングと前記可撓性膜との間に通気路を形成する、血液回路の圧力測定用チャンバ。」
〔相違点1〕
「段差」に関し、本件発明1は「前記段差は、少なくとも一部が、線状に延びて前記ハウジングの内面における前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内に達し」、「前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である」のに対し、引用発明1は「リブ145は、ハウジング101の内面における圧力測定ポート140の開口の周囲に設けられ」ている点。
イ 判断
上記相違点1は、実質的な相違点であるから、本件発明1は引用発明1ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しない。
(4)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と引用発明2とを対比する。
(ア)引用発明2の「静脈室16及び室57」は、本件発明2の「空洞」に相当し、以下同様に、「カセット10及び隔膜止め輪70」は「ハウジング」に相当する。
よって、引用発明2の「内部に静脈室16及び室57を備えるカセット10及び隔膜止め輪70」は、本件発明1の「内部に空洞を有するハウジング」に相当する。
(イ)引用発明2の「静脈室16」は、本件発明2の「血液側チャンバ」に相当し、以下同様に、「室57」は「空気側チャンバ」に、「隔膜66」は「可撓性膜」に、それぞれ相当する。
よって、上記(ア)も踏まえると、引用発明2の「静脈室16と室57とを区切る隔膜66」は、本件発明2の「前記空洞を血液側チャンバ及び空気側チャンバに区切る可撓性膜」に相当する。
(ウ)引用発明2の「隔膜止め輪70」は、本件発明2の「ハウジング」に相当し、同様に、「圧力センサ83の通路88」は「圧力検出ポート」に相当する。
よって、上記(イ)も踏まえると、引用発明2の「室57において隔膜止め輪70は、内面に開口した圧力センサ83の通路88を有」することは、本件発明2の「前記空気側チャンバにおいて前記ハウジングは、内面に開口した圧力検出ポートを有」することに相当する。
(エ)引用発明2の「4つの半径方向突起92」は、本件発明2の「段差」に相当する。
よって、上記(イ)、(ウ)も踏まえると、引用発明2の「隔膜66の室57に接する側は、外面に形成された4つの半径方向突起92を有」することは、本件発明2の「前記可撓性膜の前記空気側チャンバに接する側は、外面に形成された段差を有」することに相当する。
(オ)引用発明2の「圧力センサ83の通路88の周囲において」と、本件発明2の「前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内において」とは、前記圧力検出ポートの開口の周囲において、という限りで一致する。
さらに、引用発明2の「通路88の閉塞を防止する」ことは、隔膜66の外面に形成された4つの半径方向突起92が、通路88の周囲に当接して通気路を形成することであるから、本件発明2の「前記可撓性膜が前記空気側チャンバ側に最大限変位した状態において」、「前記ハウジングと前記可撓性膜との間に通気路を形成」することに相当する。
そうすると、上記(イ)、(ウ)も踏まえると、引用発明2の「4つの半径方向突起92は、隔膜66の外面における圧力センサ83の通路88の周囲において止め輪70の内壁面に対向し、通路88の閉塞を防止する」ことと、
本件発明2の「前記段差は、前記可撓性膜が前記空気側チャンバ側に最大限変位した状態において、少なくとも一部が、線状に延びて前記可撓性膜の外面における前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内において前記空気側チャンバの内壁面と対向し、前記ハウジングと前記可撓性膜との間に通気路を形成し、前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である」こととは、
前記段差は、前記可撓性膜が前記空気側チャンバ側に最大限変位した状態において、前記可撓性膜の外面における前記圧力検出ポートの開口の周囲において前記空気側チャンバの内壁面と対向し、前記ハウジングと前記可撓性膜との間に通気路を形成する、限りで一致する。
(カ)引用発明2の「透析装置」は、上記摘示ア(イ)に「血液は、透析装置の入口管18および出口管20の通過前後、これらを通って流動していく。」と記載されているから、本件発明2の「血液回路」に相当し、以下同様に、「圧力センサ83の通路88を備え」ていることは「圧力測定用」であることに相当する。
よって、上記(ア)、(ウ)も踏まえると、引用発明2の「透析装置の圧力センサ83の通路88を備えたカセット10及び隔膜止め輪70」は、本件発明2の「血液回路の圧力測定用チャンバ」に相当する。
以上を踏まえると、本件発明2と引用発明2との一致点、相違点は以下のとおりと認められる。
〔一致点2〕
「内部に空洞を有するハウジングと、前記空洞を血液側チャンバ及び空気側チャンバに区切る可撓性膜とを備え、
前記空気側チャンバにおいて前記ハウジングは、内面に開口した圧力検出ポートを有し、
前記可撓性膜の前記空気側チャンバに接する側は、外面に形成された段差を有し、
前記段差は、前記可撓性膜が前記空気側チャンバ側に最大限変位した状態において、前記可撓性膜の外面における前記圧力検出ポートの開口の周囲において前記空気側チャンバの内壁面と対向し、前記ハウジングと前記可撓性膜との間に通気路を形成する、血液回路の圧力測定用チャンバ。」
〔相違点2〕
「段差」に関し、本件発明2は「少なくとも一部が、線状に延びて前記可撓性膜の外面における前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内において前記空気側チャンバの内壁面と対向し、前記ハウジングと前記可撓性膜との間に通気路を形成し、前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である」のに対し、引用発明2は「4つの半径方向突起92は、隔膜66の外面における圧力センサ83の通路88の付近において止め輪70の内壁面に対向し、通路88の閉塞を防止する」点。
イ 判断
上記相違点2は、実質的な相違点であるから、本件発明2は引用発明2ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しない。
(5)本件発明3及び4について
本件発明3及び4は、本件発明1又は2の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、上記2及び3で検討したのと同じ理由により、本件発明3及び4は、引用発明1又は2ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しない。
(6)本件発明7について
ア 引用発明1との対比
本件発明7と引用発明1とを対比する。
(ア)引用発明1の「チャンバ102」は、本件発明7の「空洞」に相当する。
よって、引用発明1の「内部にチャンバ102を有するハウジング101」は、本件発明7の「内部に空洞を有するハウジング」に相当する。
(イ)引用発明1の「血液室150」は、本件発明7の「血液側チャンバ」に相当し、以下同様に、「空気室160」は「空気側チャンバ」に、「分割する」は「区切る」に、それぞれ相当する。
よって、引用発明1の「チャンバ102を血液室150と空気室160とに分割する可撓性膜120」は、本件発明7の「前記空洞を血液側チャンバ及び空気側チャンバに区切る可撓性膜」に相当する。
(ウ)引用発明1の「圧力測定ポート140」は、本件発明7の「圧力検出ポート」に相当する。
引用発明1の「圧力測定ポート140」は、図45からハウジング101の空気室160に接する側に設けられていることが看取できるから、引用発明1の「ハウジング101は、内面に開口した圧力測定ポート140」、「を有」することは、本件発明7の「前記ハウジングの前記空気側チャンバに接する側は、内面に開口した圧力検出ポートを有」することに相当する。
(エ)引用発明1の「ハウジング101と可撓性膜120との間に空間146が確保されることにより、可撓性膜120が上部ハウジング130に張り付くことを防止する」ことは、張り付くことを防止するための通気路を有することが明らかであるから、本件発明7の「前記ハウジングと前記可撓性膜との間に、前記可撓性膜が前記ハウジングに接した際に気体を通過させる通気路を有」することに相当する。
そうすると、上記(イ)、(ウ)も踏まえると、引用発明1の「空気室160においてハウジング101は」、「内面に形成されたリブ145とを有し」、「リブ145は、ハウジング101の内面における圧力測定ポート140の開口の周囲に設けられ、ハウジング101と可撓性膜120との間に空間146が確保されることにより、可撓性膜120が上部ハウジング130に張り付くことを防止する」ことと、
本件発明7の「前記空気側チャンバにおいて前記ハウジングと前記可撓性膜との間に、前記可撓性膜が前記ハウジングに接した際に気体を通過させる通気路を有し、前記通気路は、少なくとも一部が、線状に延びて前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内に達し、前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である」こととは、
前記空気側チャンバにおいて前記ハウジングと前記可撓性膜との間に、前記可撓性膜が前記ハウジングに接した際に気体を通過させる通気路を有する、限りで一致する。
(オ)引用発明1の「血液回路の圧力測定部100」は、「内部にチャンバ102を有するハウジング101」を備えるから、本件発明7の「血液回路の圧力測定用チャンバ」に相当する。
以上を踏まえると、本件発明7と引用発明1との一致点、相違点は以下のとおりと認められる。
〔一致点3〕
「内部に空洞を有するハウジングと、前記空洞を血液側チャンバ及び空気側チャンバに区切る可撓性膜とを備え、
前記ハウジングの前記空気側チャンバに接する側は、内面に開口した圧力検出ポートを有し、
前記空気側チャンバにおいて前記ハウジングと前記可撓性膜との間に、前記可撓性膜が前記ハウジングに接した際に気体を通過させる通気路を有する、血液回路の圧力測定用チャンバ。」
〔相違点3〕
「通気路」に関し、本件発明7は「前記通気路は、少なくとも一部が、線状に延びて前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内に達し、前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である」のに対し、引用発明1は「空気室160においてハウジング101は」、「内面に形成されたリブ145とを有し、リブ145は、ハウジング101の内面における圧力測定ポート140の開口の周囲に設けられ、ハウジング101と可撓性膜120との間に空間146が確保されることにより、可撓性膜120が上部ハウジング130に張り付くことを防止する」点。
イ 判断
上記相違点3は、実質的な相違点であるから、本件発明7は引用発明1ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しない。
ウ 引用発明2との対比
本件発明7と引用発明2とを対比する。
(ア)引用発明2の「静脈室16及び室57」は、本件発明7の「空洞」に相当し、以下同様に、「カセット10及び隔膜止め輪70」は「ハウジング」に相当する。
よって、引用発明2の「内部に静脈室16及び室57を備えるカセット10及び隔膜止め輪70」は、本件発明7の「内部に空洞を有するハウジング」に相当する。
(イ)引用発明2の「静脈室16」は、本件発明2の「血液側チャンバ」に相当し、以下同様に、「室57」は「空気側チャンバ」に、「隔膜66」は「可撓性膜」に、それぞれ相当する。
よって、上記(ア)も踏まえると、引用発明2の「静脈室16と室57とを区切る隔膜66」は、本件発明7の「前記空洞を血液側チャンバ及び空気側チャンバに区切る可撓性膜」に相当する。
(ウ)引用発明2の「隔膜止め輪70」は、本件発明7の「ハウジング」に相当し、以下同様に、「圧力センサ83の通路88」は「圧力検出ポート」に相当する。
よって、引用発明2の「室57において隔膜止め輪70は、内面に開口した圧力センサ83の通路88を有」することは、本件発明7の「前記空気側チャンバにおいて前記ハウジングは、内面に開口した圧力検出ポートを有」することに相当する。
(エ)引用発明2の「隔膜66の室57に接する側は、外面に形成された4つの半径方向突起92を有し、4つの半径方向突起92は、隔膜66の外面における圧力センサ83の通路88の周囲において止め輪70の内壁面に対向し、通路88の閉塞を防止する」ことは、隔壁66の外面に形成された4つの半径方向突起92が、通路88の周囲に当接して通気路を形成することであるから、本件発明7の「前記空気側チャンバにおいて前記ハウジングと前記可撓性膜との間に、前記可撓性膜が前記ハウジングに接した際に気体を通過させる通気路を有」することに相当する。
よって、引用発明2の「隔膜66の室57に接する側は、外面に形成された4つの半径方向突起92を有し、4つの半径方向突起92は、隔膜66の外面における圧力センサ83の通路88の周囲において止め輪70の内壁面に対向し、通路88の閉塞を防止する」ことと、
本件発明7の「前記空気側チャンバにおいて前記ハウジングと前記可撓性膜との間に、前記可撓性膜が前記ハウジングに接した際に気体を通過させる通気路を有し、前記通気路は、少なくとも一部が、線状に延びて前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内に達し、前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である」こととは、
前記空気側チャンバにおいて前記ハウジングと前記可撓性膜との間に、前記可撓性膜が前記ハウジングに接した際に気体を通過させる通気路を有する、限りで一致する。
(オ)引用発明2の「透析装置」は、上記摘示ア(イ)に「血液は、透析装置の入口管18および出口管20の通過前後、これらを通って流動していく。」と記載されているから、本件発明7の「血液回路」に相当し、以下同様に、「圧力センサ83の通路88を備え」ていることは「圧力測定用」であることに相当する。
よって、上記(イ)も踏まえると、引用発明2の「透析装置の圧力センサ83の通路88を備えたカセット10及び隔膜止め輪70」は、本件発明7の「血液回路の圧力測定用チャンバ」に相当する。
以上を踏まえると、本件発明7と引用発明2との一致点、相違点は以下のとおりと認められる。
〔一致点4〕
「内部に空洞を有するハウジングと、前記空洞を血液側チャンバ及び空気側チャンバに区切る可撓性膜とを備え、
前記ハウジングの前記空気側チャンバに接する側は、内面に開口した圧力検出ポートを有し、
前記空気側チャンバにおいて前記ハウジングと前記可撓性膜との間に、前記可撓性膜が前記ハウジングに接した際に気体を通過させる通気路を有する、血液回路の圧力測定用チャンバ。」
〔相違点4〕
「通気路」に関し、本件発明7は「前記通気路は、少なくとも一部が、線状に延びて前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内に達し、前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である」のに対し、引用発明2は「隔膜66の室57に接する側は、外面に形成された4つの半径方向突起92を有し、4つの半径方向突起92は、隔膜66の外面における圧力センサ83の通路88の周囲において止め輪70の内壁面に対向し、通路88の閉塞を防止する」点。
エ 判断
上記相違点4は、実質的な相違点であるから、本件発明7は引用発明2ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しない。
4 理由4(進歩性)について
(1)引用文献1(甲第1号証)の記載事項、認定事項及び引用発明1
引用文献1の記載事項、認定事項及び引用発明1については、上記「3 上記理由3(新規性)について」の(1)に示したとおりである。
(2)引用文献2(甲第2号証)の記載事項、認定事項及び引用発明2
引用文献2の記載事項、認定事項及び引用発明2については、上記「3 上記理由3(新規性)について」の(2)に示したとおりである。
(3)引用文献3(甲第3号証)の記載事項、認定事項及び引用発明3
ア 引用文献3の記載事項
引用文献3には、図面とともに以下の事項が記載されている。以下では翻訳のみを示す。
「[0048]体外血液処理システム10は、空気ポンプ装置14と、1つ以上の圧力変換器(例えば、Pline、P1、P2、P3、Ppump)と、空気ポンプ装置14及び1つ以上の圧力変換器(例えば、Pline、P1、P2、P3、Ppump)に動作的に結合されたコントローラ20とを含んでいる。体外血液セット(一般に参照番号22として示される)は、接続治具(例えば、1つ以上のポート84A~84C、戻り圧ポート86など含む嵌合受入具)を用いて、体外血液処理システムのシステムハウジング11に取り付けられるように構成された複数の構成要素(例えば、圧力ポッド装置80A~80C、脱気室監視ライン82など)を含む。」
「[0069]すなわち、例えば、図1及び図4に示すように、使い捨て構成要素を有する圧力センサが、圧力ポッド本体111(例えば、ポッドと呼ぶことがある硬質プラスチックケーシング)とを備えた圧力ポッド装置112などの使い捨て可能な部分を含んでもよい。圧力ポッド装置112は、ポッド本体111を2つの液密区画又はキャビティ117、113に分離するように配置されたダイアフラム114を含む。入口115および出口116は、キャビティ117内に開口して、液体がキャビティ117内へと流れることを可能にしている(本明細書の液体側キャビティとも呼ばれる)。ダイアフラム114の反対側のもう一方のキャビティ113は、流体連通するために(例えば、キャビティ113の空気のような乾燥ガスの連通のために(乾式/湿式変換器も圧力ポッド装置112と共に使用してもよいが)、流体連通を可能にする少なくとも1つのアクセスポイント(例えば、一般的に、ただ1つのアクセスポイント)を有する。変換器は、ダイアフラム114の変換器側の空気(たとえば、乾燥ガス)と圧力検出状態にあるので、このキャビティ113は、ここでは、変換器側キャビティ又は区画室とも呼ばれる。本明細書で使用されるように、空気、ガス及び乾燥ガスは、交換可能に使用される。」
「[0075]図5A~5Cは、例示的な圧力ポッド装置412の一実施形態を示す、分解上面斜視図、分解底面斜視図、及び分解側断面図である。圧力ポッド装置412は、少なくともポッド本体部分422とベース本体部分424とを含む圧力ポッド411を含む。例えば、液体側キャビティ417(図5C参照)の少なくとも一部を画定するポッド本体部分422は、環状エッジ458から軸439に向かって内側に延びる環状クランプ部分454を含んでもよい。・・・」
「[0076]例えば、変換器側キャビティ413の少なくとも一部を画定するベース本体部分424は、環状縁部459から軸439に向かって内側に延びる環状クランプ部分456を含むことができる。ほぼ凹状の部分455(例えば、変換器側キャビティ413に隣接する内面475を含む)は、軸439に対して環状クランプ領域456の内側に位置する。軸439に沿って環状クランプ領域456を終端する略凹状部分455またはドーム部分(例えば、ポッド本体部分422に面し、軸439上に中心を有し軸439に沿って位置する略凹状部分)は、例えば、変換器側キャビティ413と、流体処理システムの一部として提供される圧力変換器との間の流体連通を可能にするアクセス開口部470(例えば、ほぼ凹状の部分455を通して画定される)を含む円筒形ポート471を含む(例えば、図2~3に示される制御装置360の一部として)。例えば、ポート471は、(例えば、図6A~6Cに示すようなレセプタクルと嵌合するためなどの)接続装置の一部を受け入れることができる内面477を含むことができる。さらに、例えば、ポート471は、接続装置の一部と嵌合することができる(例えば、図6A~6Cに示すようなレセプタクルと嵌合するなど)外面478を含むことができる。さらに、ポート471と接続装置との間の嵌合は、(例えば、チューブ、ポンプなどの他の圧力感知構成要素を考慮した場合に、変換器側キャビティ413が液密キャビティとなるように)それらの間にシールを提供し得る。このようなシールは、シール装置(例えば、Oリング、シール材など)の使用など、任意の適切な方法で設けることができる。
[0077]圧力ポッド装置412は、ダイアフラム414をさらに含む。例えば、ダイアフラム414は、環状エッジ462から軸439に向かって内側に延在する環状クランプ領域463を含む。撓み部分461(例えば、変換器側キャビティ413に隣接する第1の表面482及び液体側キャビティ417に隣接する第2の表面481を含む)は、軸439に対して環状クランプ領域463の内側に配置される。撓み部分461は、ダイアフラム膨らみ(例えば、撓み部分461の環状領域484は、図5Bに示すように、軸439に関して中心領域485よりもさらに変換器側キャビティ内に延び、あるいは、これとは逆の構造であってもよい。)と呼ばれる、他の領域よりも変換器側キャビティ413内にさらに延びる1つ以上の領域を含むような偏り、あるいは他の領域よりも液体側キャビティ417内にさらに延びる1つ以上の領域を含むような偏りを含んでもよい。測定される圧力が正であるか負であるかに応じて、ダイアフラムの膨らみは、関連する圧力範囲(例えば、正又は負)において、より大きな範囲を与えるように特定の方向に配置してもよい。」
引用文献3には、以下の図が示されている。
図1
[図:0001411265000010.jpg]
図4
[図:0001411265000011.jpg]
図5A
[図:0001411265000012.jpg]
図5B
[図:0001411265000013.jpg]
図5C
[図:0001411265000014.jpg]
イ 引用文献3からの認定事項
(ア)段落[0048]の「体外血液処理システム10は、空気ポンプ装置14と、1つ以上の圧力変換器(例えば、Pline、P1、P2、P3、Ppump)と、空気ポンプ装置14及び1つ以上の圧力変換器(例えば、Pline、P1、P2、P3、Ppump)に動作的に結合されたコントローラ20とを含んでいる。」、段落[0075]の「圧力ポッド装置412は、少なくともポッド本体部分422とベース本体部分424とを含む圧力ポッド411を含む。」、段落[0077]の「圧力ポッド装置412は、ダイアフラム414をさらに含む。例えば、ダイアフラム414は、環状エッジ462から軸439に向かって内側に延在する環状クランプ領域463を含む。撓み部分461(例えば、変換器側キャビティ413に隣接する第1の表面482及び液体側キャビティ417に隣接する第2の表面481を含む)は、軸439に対して環状クランプ領域463の内側に配置される。」なる記載を踏まえて、図5Cをみると、体外血液処理システムの圧力ポッド装置412は、内部に変換器側キャビティ413及び液体側キャビティ417を有する圧力ポッド411と、変換器側キャビティ413及び液体側キャビティ417に区切るダイアフラム414とを備えることが看取できる。
(イ)段落[0075]の「圧力ポッド装置412は、少なくともポッド本体部分422とベース本体部分424とを含む圧力ポッド411を含む。」、段落[0076]の「軸439に沿って環状クランプ領域456を終端する略凹状部分455またはドーム部分(例えば、ポッド本体部分422に面し、軸439上に中心を有し軸439に沿って位置する略凹状部分)は、例えば、変換器側キャビティ413と、流体処理システムの一部として提供される圧力変換器との間の流体連通を可能にするアクセス開口部470(例えば、ほぼ凹状の部分455を通して画定される)を含む円筒形ポート471を含む(例えば、図2~3に示される制御装置360の一部として)。」なる記載を踏まえて図5A及び図5Bをみると、変換器側キャビティ413において圧力ポッド411は、圧力変換器との間の流体連通を可能にするアクセス開口部470を有することが看取できる。
(ウ)図5Bから、ダイアフラム414のベース本体部424に接する側は、中心領域485の外面に形成された4つの半球状突部を有することが看取できる。
ウ 引用発明3
上記ア、イより、引用文献3には、以下の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されている。
<引用発明3>
「内部に変換器側キャビティ413及び液体側キャビティ417を有する圧力ポッド411と、変換器側キャビティ413及び液体側キャビティ417に区切るダイアフラム414とを備え、
変換器側キャビティ413において圧力ポッド411は、圧力変換器との間の流体連通を可能にするアクセス開口部470を有し、
ダイアフラム414のベース本体部424に接する側は、中心領域485の外面に形成された4つの半球状突部を有する、体外血液処理システムの圧力ポッド装置412。」
(4)引用文献4(甲第4号証)の記載事項
引用文献4には、以下の事項が記載されている。
「【0016】前記逃し通路としては、前記第1内面および第2内面の少なくともいずれか一方に形成された、前記第1ポートまたは第2ポートを中心として半径方向に延びる溝で構成することができる。また、前記逃し通路としては、前記第1内面および第2内面の少なくともいずれか一方に形成された、前記第1ポートまたは第2ポートを中心として半径方向に延びる凸部として形成しても良い。
【0017】前記溝または凸部は、径方向に連続的に延びるものであってもよく、断続的に形成しても良い。さらに、前記逃し通路としては、前記第1ポートまたは第2ポートに装着された前記内部空間側に突出するノズルの側壁に形成された孔であっても良い。」
「【0064】このノズル56が、入力ポート48bおよび出力ポート50bに対して、ノズル56の先端(孔58が形成してある側)がそれぞれ内面49b,51bから段差tだけ突出するように装着してある。突出段差tは、特に限定されないが、0.5~5mm程度が好ましく、逃し用孔58がそれぞれの空間53b,55bに対して連通するように設定する。」
(5)引用文献5(甲第6号証)の記載事項
引用文献5には、以下の事項が記載されている。
「実用新案登録請求の範囲
ダイヤフラムを介して加圧することにより泡原液を送出口より送出する泡消火装置の泡原液圧送タンクにおいて、上記ダイヤフラムの少なくとも上記送出口と当接する面の外周囲に複数個の突起部を設けるとともに、該突起部に囲まれた上記ダイヤフラムを、剛性を有する補強部で構成したことを特徴とする泡消火装置の泡原液圧送タンク。」
(6)引用文献6(甲第8号証)の記載事項
引用文献6には、以下の事項が記載されている。
「2.特許請求の範囲
(1)ブロック部の各面に設けられた各隔液ダイヤフラムに加えられた圧力を各通路を介してセンタダイヤフラム室の各室に導いた後、通路を介して感圧素子の各面に導いて差圧を検出させる差圧伝送器において、
前記ブロック部の前記各隔液ダイヤフラムに対応する部分の全部または一部に前記各隔液ダイヤフラムの形状と対応するバックアップ面を有する多孔質材料、
を備えたことを特徴とする差圧伝送器。」
(7)引用文献7(甲第9号証)の記載事項
引用文献7には、以下の事項が記載されている。
ア 第2ページ右下欄第1~3行
「8はサポートメツシュであり、網またはパンチングプレートなどで、下死点でダイヤフラムを支持して、それ以上の変形を防止する。」
(8)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と引用発明3とを対比する。
(ア)引用発明3の「変換器側キャビティ413及び液体側キャビティ417」は、本件発明2の「空洞」に相当し、以下同様に、「圧力ポッド411」は「ハウジング」に相当する。
よって、引用発明3の「内部に変換器側キャビティ413及び液体側キャビティ417を有する圧力ポッド411」は、本件発明2の「内部に空洞を有するハウジング」に相当する。
(イ)引用発明3の「ダイアフラム414」は、本件発明2の「可撓性膜」に相当する。
よって、上記(ア)も踏まえると、引用発明3の「変換器側キャビティ413及び液体側キャビティ417に区切るダイアフラム414」は、本件発明2の「前記空洞を血液側チャンバ及び空気側チャンバに区切る可撓性膜」に相当する。
(ウ)引用発明3の「変換器側キャビティ413」は、本件発明2の「空気側チャンバ」に相当し、以下同様に、「圧力変換器との間の流体連通を可能にするアクセス開口部470」は「内面に開口した圧力検出ポート」に相当する。
よって、上記(ア)も踏まえると、引用発明3の「変換器側キャビティ413において圧力ポッド411は、圧力変換器との間の流体連通を可能にするアクセス開口部470を有」することは、本件発明2の「前記空気側チャンバにおいて前記ハウジングは、内面に開口した圧力検出ポートを有」することに相当する。
(エ)引用発明3の「中心領域485の外面に形成された4つの半球状突部」は、本件発明2の「外面に形成された段差」に相当する。
よって、上記(イ)、(ウ)も踏まえると、引用発明3の「ダイアフラム414の変換器側キャビティ413に接する側は、中心領域485の外面に形成された4つの半球状突部を有する」ことは、本件発明2の「前記可撓性膜の前記空気側チャンバに接する側は、外面に形成された段差を有」することに相当する。
(オ)引用発明3の「体外血液処理システム」は、本件発明2の「血液回路」に相当し、以下同様に、「圧力ポッド装置412」は「圧力測定用チャンバ」に相当する。
以上を踏まえると、本件発明2と引用発明3との一致点、相違点は以下のとおりと認められる。
〔一致点5〕
「内部に空洞を有するハウジングと、前記空洞を血液側チャンバ及び空気側チャンバに区切る可撓性膜とを備え、
前記空気側チャンバにおいて前記ハウジングは、内面に開口した圧力検出ポートを有し、
前記可撓性膜の前記空気側チャンバに接する側は、外面に形成された段差を有する、血液回路の圧力測定用チャンバ。」
〔相違点5〕
「段差」に関し、本件発明2は「前記段差は、前記可撓性膜が前記空気側チャンバ側に最大限変位した状態において、少なくとも一部が、線状に延びて前記可撓性膜の外面における前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内において前記空気側チャンバの内壁面と対向し、前記ハウジングと前記可撓性膜との間に通気路を形成し、前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である」のに対し、引用発明3は「4つの半球状突部」である点。
イ 判断
上記相違点5に係る本件発明2の「前記段差は、前記可撓性膜が前記空気側チャンバ側に最大限変位した状態において、少なくとも一部が、線状に延びて前記可撓性膜の外面における前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内において前記空気側チャンバの内壁面と対向し、前記ハウジングと前記可撓性膜との間に通気路を形成し、前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である」点は、引用文献2及び他のいずれの引用文献にも、記載も示唆もされていない。
また、引用発明3の「4つの半球状突部」の機能や役割について、引用文献3には何ら記載がないから、引用発明3の「4つの半球状突部」を、上記相違点5に係る本件発明2の構成とする動機付けもない。
よって、引用発明3において、相違点5に係る本件発明2の構成とすることは、当業者にとって容易であるとすることはできない。
ウ 小括
したがって、本件発明2は、引用発明3と引用文献1、2、4~7に記載された技術的事項とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(9)本件発明5について
ア 対比
本件発明5と引用発明1とを対比する。
(ア)引用発明1の「チャンバ102」は、本件発明5の「空洞」に相当する。
よって、引用発明1の「内部にチャンバ102を有するハウジング101」は、本件発明5の「内部に空洞を有するハウジング」に相当する。
(イ)引用発明1の「血液室150」は、本件発明5の「血液側チャンバ」に相当し、以下同様に、「空気室160」は「空気側チャンバ」に、「分割する」は「区切る」に、それぞれ相当する。
よって、引用発明1の「チャンバ102を血液室150と空気室160とに分割する可撓性膜120」は、本件発明5の「前記空洞を血液側チャンバ及び空気側チャンバに区切る可撓性膜」に相当する。
(ウ)引用発明1の「圧力測定ポート140」は、本件発明5の「圧力検出ポート」に相当する。
引用発明1の「圧力測定ポート140」は、図45からハウジング101の空気室160に接する側に設けられていることが看取できるから、上記(イ)も踏まえると、引用発明1の「空気室160においてハウジング101は、内面に開口した圧力測定ポート140」、「を有」することは、本件発明5の「前記ハウジングの前記空気側チャンバに接する側は、内面に開口した圧力検出ポートを有」することに相当する。
(エ)引用発明1の「空間146」は「可撓性膜120が上部ハウジング130に張り付くことを防止する」ものであるから、本件発明5の「通気路」に相当する。
そうすると、引用発明1の「リブ145は、ハウジング101の内面における圧力測定ポート140の開口の周囲に設けられ、ハウジング101と可撓性膜120との間に空間146が確保されることにより、可撓性膜120が上部ハウジング130に張り付くことを防止する」ものであるから、通気路を形成する通気路形成部材と表現することができる。
よって、引用発明1の「空気室160においてハウジング101は」、「内面に形成されたリブ145とを有し、リブ145は、ハウジング101の内面における圧力測定ポート140の開口の周囲に設けられ、ハウジング101と可撓性膜120との間に空間146が確保されることにより、可撓性膜120が上部ハウジング130に張り付くことを防止する」ことと、
本件発明5の「前記空気側チャンバにおいて前記ハウジングの内壁面と前記可撓性膜との間に設けられ、前記可撓性膜との間に通気路を形成する通気路形成部材とを備え」、「前記通気路形成部材は、少なくとも一部が、線状に延びて前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内において前記空気側チャンバの内壁面と対向し、前記通気路が前記開口領域の領域外から領域内に達し、前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である」こととは、
前記空気側チャンバにおいて、前記可撓性膜との間に通気路を形成する通気路形成部材を備える、限りで一致する。
(オ)引用発明1の「血液回路の圧力測定部100」は、「内部にチャンバ102を有するハウジング101」を備えるから、本件発明5の「血液回路の圧力測定用チャンバ」に相当する。
以上を踏まえると、本件発明5と引用発明1との一致点、相違点は以下のとおりと認められる。
〔一致点6〕
「内部に空洞を有するハウジングと、前記空洞を血液側チャンバ及び空気側チャンバに区切る可撓性膜と、前記空気側チャンバにおいて前記可撓性膜との間に通気路を形成する通気路形成部材とを備え、
前記ハウジングの前記空気側チャンバに接する側は、内面に開口した圧力検出ポートを有する、血液回路の圧力測定用チャンバ。」
〔相違点6〕
「通気路形成部材」に関し、本件発明5は「前記空気側チャンバにおいて前記ハウジングの内壁面と前記可撓性膜との間に設けられ」、「前記通気路形成部材は、少なくとも一部が、線状に延びて前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内において前記空気側チャンバの内壁面と対向し、前記通気路が前記開口領域の領域外から領域内に達し、前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である」のに対し、引用発明1はハウジング101の「内面に形成されたリブ145」であって、「リブ145は、ハウジング101の内面における圧力測定ポート140の開口の周囲に設けられ、ハウジング101と可撓性膜120との間に空間146が確保されることにより、可撓性膜120が上部ハウジング130に張り付くことを防止する」点。
イ 判断
上記相違点6に係る本件発明5の「前記空気側チャンバにおいて前記ハウジングの内壁面と前記可撓性膜との間に設けられ」、「前記通気路形成部材は、少なくとも一部が、線状に延びて前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内において前記空気側チャンバの内壁面と対向し、前記通気路が前記開口領域の領域外から領域内に達し、前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である」点は、引用文献4及び5、並びに、他のいずれの引用文献にも、記載も示唆もされていない。
よって、引用発明1において、相違点6に係る本件発明5の構成とすることは、当業者にとって容易であったとすることはできない。
ウ 小括
したがって、本件発明5は、引用発明1と引用文献2~7に記載された技術的事項とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(10)本件発明6について
ア 対比
本件発明6と引用発明1とを対比する。
(ア)引用発明1の「チャンバ102」は、本件発明6の「空洞」に相当する。
よって、引用発明1の「内部にチャンバ102を有するハウジング101」は、本件発明6の「内部に空洞を有するハウジング」に相当する。
(イ)引用発明1の「血液室150」は、本件発明6の「血液側チャンバ」に相当し、以下同様に、「空気室160」は「空気側チャンバ」に、「分割する」は「区切る」に、それぞれ相当する。
よって、引用発明1の「チャンバ102を血液室150と空気室160とに分割する可撓性膜120」は、本件発明6の「前記空洞を血液側チャンバ及び空気側チャンバに区切る可撓性膜」に相当する。
(ウ)引用発明1の「圧力測定ポート140」は、本件発明6の「圧力検出ポート」に相当する。
引用発明1の「圧力測定ポート140」は、図45からハウジング101の空気室160に接する側に設けられていることが看取できるから、上記(イ)も踏まえると、引用発明1の「空気室160においてハウジング101は、内面に開口した圧力測定ポート140」、「を有」することは、本件発明6の「前記ハウジングの前記空気側チャンバに接する側は、内面に開口した圧力検出ポートを有」することに相当する。
(エ)引用発明1の「リブ145は、ハウジング101の内面における圧力測定ポート140の開口の周囲に設けられ、ハウジング101と可撓性膜120との間に空間146が確保されることにより、可撓性膜120が上部ハウジング130に張り付くことを防止する」ものであるから、張り付くことを防止するための通気路を形成する通気路形成部材と表現できる。
よって、引用発明1の「空気室160においてハウジング101は」、「内面に形成されたリブ145とを有し、リブ145は、ハウジング101の内面における圧力測定ポート140の開口の周囲に設けられ、ハウジング101と可撓性膜120との間に空間146が確保されることにより、可撓性膜120が上部ハウジング130に張り付くことを防止する」ことと、
本件発明6の「前記空気側チャンバにおいて前記ハウジングと前記可撓性膜との間に設けられ、通気性を有する材料により形成された通気路形成部材とを備え」、「前記通気路形成部材は、前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内において前記空気側チャンバの内壁面と対向し、前記開口領域の領域外から領域内に達する通気路を形成し、前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である」こととは、
通気路形成部材を備える、限りで一致する。
(オ)引用発明1の「血液回路の圧力測定部100」は、「内部にチャンバ102を有するハウジング101」を備えるから、本件発明6の「血液回路の圧力測定用チャンバ」に相当する。
以上を踏まえると、本件発明6と引用発明1との一致点、相違点は以下のとおりと認められる。
〔一致点7〕
「内部に空洞を有するハウジングと、前記空洞を血液側チャンバ及び空気側チャンバに区切る可撓性膜と、通気路形成部材とを備え、
前記ハウジングの前記空気側チャンバに接する側は、内面に開口した圧力検出ポートを有する、血液回路の圧力測定用チャンバ。」
〔相違点7〕
「通気路形成部材」に関し、本件発明6は「前記空気側チャンバにおいて前記ハウジングと前記可撓性膜との間に設けられ、通気性を有する材料により形成された通気路形成部材」であって、「前記通気路形成部材は、前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内において前記空気側チャンバの内壁面と対向し、前記開口領域の領域外から領域内に達する通気路を形成し、前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である」のに対し、
引用発明1はハウジング101の「内面に形成されたリブ145」であって、「リブ145は、ハウジング101の内面における圧力測定ポート140の開口の周囲に設けられ、ハウジング101と可撓性膜120との間に空間146が確保されることにより、可撓性膜120が上部ハウジング130に張り付くことを防止する」ものである点。
イ 判断
上記相違点7に係る本件発明6の「前記空気側チャンバにおいて前記ハウジングと前記可撓性膜との間に設けられ、通気性を有する材料により形成された通気路形成部材」であって、「前記通気路形成部材は、前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内において前記空気側チャンバの内壁面と対向し、前記開口領域の領域外から領域内に達する通気路を形成し、前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である」点は、引用文献5~7及び他のいずれの引用文献にも、記載も示唆もされていない。
よって、引用発明1において、相違点7に係る本件発明6の構成とすることは、当業者にとって容易であったとすることはできない。
ウ 小括
したがって、本件発明6は、引用発明1と引用文献2~7に記載された技術的事項とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(11)本件発明7について
ア 対比
本件発明7と引用発明3とを対比する。
(ア)引用発明3の「変換器側キャビティ413及び液体側キャビティ417」は、本件発明7の「空洞」に相当し、以下同様に、「圧力ポッド411」は「ハウジング」に相当する。
よって、引用発明3の「内部に変換器側キャビティ413及び液体側キャビティ417を有する圧力ポッド411」は、本件発明7の「内部に空洞を有するハウジング」に相当する。
(イ)引用発明3の「ダイアフラム414」は、本件発明7の「可撓性膜」に相当する。
よって、上記(ア)も踏まえると、引用発明3の「変換器側キャビティ413及び液体側キャビティ417に区切るダイアフラム414」は、本件発明7の「前記空洞を血液側チャンバ及び空気側チャンバに区切る可撓性膜」に相当する。
(ウ)引用発明3の「変換器側キャビティ413」は、本件発明7の「空気側チャンバ」に相当し、以下同様に、「圧力変換器との間の流体連通を可能にするアクセス開口部470」は「内面に開口した圧力検出ポート」に相当する。
よって、上記(ア)も踏まえると、引用発明3の「変換器側キャビティ413において圧力ポッド411は、圧力変換器との間の流体連通を可能にするアクセス開口部470を有」することは、本件発明7の「前記空気側チャンバにおいて前記ハウジングは、内面に開口した圧力検出ポートを有」することに相当する。
(エ)引用発明3の「体外血液処理システム」は、本件発明7の「血液回路」に相当し、以下同様に、「圧力ポッド装置412」は「圧力測定用チャンバ」に相当する。
以上を踏まえると、本件発明7と引用発明3との一致点、相違点は以下のとおりと認められる。
〔一致点8〕
「内部に空洞を有するハウジングと、前記空洞を血液側チャンバ及び空気側チャンバに区切る可撓性膜とを備え、
前記ハウジングの前記空気側チャンバに接する側は、内面に開口した圧力検出ポートを有する、血液回路の圧力測定用チャンバ。」
〔相違点8〕
本件発明7は「前記空気側チャンバにおいて前記ハウジングと前記可撓性膜との間に、前記可撓性膜が前記ハウジングに接した際に気体を通過させる通気路を有し、前記通気路は、少なくとも一部が、線状に延びて前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内に達し、前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である」のに対し、引用発明3は「ダイアフラム414のベース本体部424に接する側は、中心領域485の外面に形成された4つの半球状突部を有する」点。
イ 判断
上記相違点8に係る本件発明7の「前記空気側チャンバにおいて前記ハウジングと前記可撓性膜との間に、前記可撓性膜が前記ハウジングに接した際に気体を通過させる通気路を有し、前記通気路は、少なくとも一部が、線状に延びて前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内に達し、前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である
」点は、引用文献2及び他のいずれの引用文献にも、記載も示唆もされていない。
また、引用発明3の「4つの半球状突部」の機能や役割について、引用文献3には何ら記載がないから、引用発明3の「4つの半球状突部」を、上記相違点8に係る本件発明7の構成とする動機付けもない。
よって、引用発明3において、相違点8に係る本件発明7の構成とすることは、当業者にとって容易であったとすることはできない。
ウ 小括
したがって、本件発明7は、引用発明3と引用文献1、2、4~7に記載された技術的事項とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第6 当審で採用しなかった異議申立理由について
1 理由A(特許法第17条の2第3項)について
異議申立人は、異議申立書の第6~8ページにおいて、令和 4年 4月 5日の手続補正により補正された、本件発明2の「段差」又は本件発明7の「通気路」が、「非同心円状」に延びるという補正事項は、明細書には「非同心円状」という用語がそもそも記載されておらず、先行技術文献(引用文献)との対比を行うことを目的としたものであるから、いわゆる新規事項に該当する旨主張する。
しかしながら、本件訂正により、本件発明2の「段差」又は本件発明7の「通気路」は、「非同心円状」に延びるものから、「線状」に延びるものに訂正された。
そして、本件訂正が新規事項を追加する訂正でないことは、上記第2の2の(2)イ、(5)イで述べたとおりである。
2 理由B(特許法第36条第6項第1号)について
異議申立人は、異議申立書の第8ページにおいて、本件発明2及び7の「非同心円状」なる発明特定事項は、発明の詳細な説明に記載されていない旨主張する。
しかしながら、本件訂正により、本件発明2の「段差」又は本件発明7の「通気路」は、「非同心円状」に延びるものから、「線状」に延びるものに訂正された。
そして、本件訂正が、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであることは、上記第2の2の(2)イ、(5)イで述べたとおりである。
3 理由D(特許法第29条第2項)について
(1)本件発明1について
異議申立人は、異議申立書の第18~23ページにおいて、本件発明1は、引用文献3(甲第3号証)及び引用文献2(甲第2号証)に記載された発明に基いて、容易に発明をすることができたものである旨主張するので、以下検討する。
ア 対比
本件発明1と引用発明3とを対比する。
(ア)引用発明3の「変換器側キャビティ413及び液体側キャビティ417」は、本件発明1の「空洞」に相当し、以下同様に、「圧力ポッド411」は「ハウジング」に相当する。
よって、引用発明3の「内部に変換器側キャビティ413及び液体側キャビティ417を有する圧力ポッド411」は、本件発明1の「内部に空洞を有するハウジング」に相当する。
(イ)引用発明3の「ダイアフラム414」は、本件発明1の「可撓性膜」に相当する。
よって、上記(ア)も踏まえると、引用発明3の「変換器側キャビティ413及び液体側キャビティ417に区切るダイアフラム414」は、本件発明1の「前記空洞を血液側チャンバ及び空気側チャンバに区切る可撓性膜」に相当する。
(ウ)引用発明3の「変換器側キャビティ413」は、本件発明1の「空気側チャンバ」に相当し、以下同様に、「圧力変換器との間の流体連通を可能にするアクセス開口部470」は「内面に開口した圧力検出ポート」に相当する。
よって、上記(ア)も踏まえると、引用発明3の「変換器側キャビティ413において圧力ポッド411は、圧力変換器との間の流体連通を可能にするアクセス開口部470を有」することは、本件発明1の「前記空気側チャンバにおいて前記ハウジングは、内面に開口した圧力検出ポート」、「を有」することに相当する。
(エ)引用発明3の「体外血液処理システム」は、本件発明1の「血液回路」に相当し、以下同様に、「圧力ポッド装置412」は「圧力測定用チャンバ」に相当する。
以上を踏まえると、本件発明1と引用発明3との一致点、相違点は以下のとおりと認められる。
〔一致点ア〕
「内部に空洞を有するハウジングと、前記空洞を血液側チャンバ及び空気側チャンバに区切る可撓性膜とを備え、
前記空気側チャンバにおいて前記ハウジングは、内面に開口した圧力検出ポートを有する、血液回路の圧力測定用チャンバ。」
〔相違点ア〕
本件発明1は「前記空気側チャンバにおいて前記ハウジングは」、「内面に形成された段差とを有し」、「前記段差は、少なくとも一部が、線状に延びて前記ハウジングの内面における前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内に達し、前記ハウジングと前記可撓性膜との間に通気路を形成し、前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である」のに対し、引用発明3は「ダイアフラム414のベース本体部424に接する側は、中心領域485の外面に形成された4つの半球状突部を有する」点。
イ 判断
引用発明3の「4つの半球状突部」は、ダイヤフラム414(可撓性膜)に設けられており、圧力ポッド411(ハウジング)に設けられたものでない。また、その形状も半球状であって、線状ではない。
よって、上記相違点アに係る本件発明1の「前記空気側チャンバにおいて前記ハウジングは」、「内面に形成された段差とを有し」、「前記段差は、少なくとも一部が、線状に延びて前記ハウジングの内面における前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内に達し、前記ハウジングと前記可撓性膜との間に通気路を形成し、前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域である」点は、引用文献3、引用文献2及び他のいずれの甲号証にも、記載も示唆もされていない。
また、引用発明3の「4つの半球状突部」の機能や役割については、引用文献3には何ら記載がないから、引用発明3の「4つの半球状突部」を、上記相違点アに係る本件発明1の構成とする動機付けもない。
よって、引用発明3において、相違点アに係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易であったとすることはできない。
ウ 小括
したがって、本件発明1は、引用発明3と甲第1、2、4~11号証に記載された技術的事項とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件発明3について
異議申立人は、異議申立書の第26~28ページにおいて、本件発明3は、引用文献1(甲第1号証)又は引用文献2(甲第2号証)に記載された発明に基いて、容易に発明をすることができたものである旨主張するので、以下検討する。
ア 引用発明1との対比
請求項1を引用する本件発明3と引用発明1とを対比する。
上記「3 上記理由3(新規性)について」の「(3)本件発明1について」の「ア 対比」に示した事項は全て援用する。
そうすると、請求項1を引用する本件発明3と引用発明1とは、以下の相違点イで相違し、その余の点で一致する。
〔相違点イ〕
本件発明3は「前記段差は、少なくとも一部が、線状に延びて前記ハウジングの内面における前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内に達し」、「前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域であ」り、「前記通気路は、前記圧力検出ポートまでつながっている」のに対し、引用発明1は「リブ145は、ハウジング101の内面における圧力測定ポート140の開口の周囲に設けられ」ている点。
イ 判断
上記相違点イについて検討する。
引用発明1の「リブ145」は「前記圧力検出ポートの開口の周囲に設けられ」ているものの、少なくとも一部が、線状に延びるものでない。
そして、相違点イに係る本件発明3の「前記段差は、少なくとも一部が、線状に延びて前記ハウジングの内面における前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内に達し」、「前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域であ」り、「前記通気路は、前記圧力検出ポートまでつながっている」点は、引用文献1及び他のいずれの甲号証にも記載も示唆もされていない。
よって、引用発明1において、相違点イに係る本件発明3の構成とすることは、当業者にとって容易であったとすることはできない。
ウ 引用発明2との対比
請求項2を引用する本件発明3と引用発明2とを対比する。
上記「3 上記理由3(新規性)について」の「(4)本件発明2について」の「ア 対比」に示した事項は全て援用する。
そうすると、請求項2を引用する本件発明3と引用発明2とは、以下の相違点ウとで相違し、その余の点で一致する。
〔相違点ウ〕
本件発明3は「前記段差は、前記可撓性膜が前記空気側チャンバ側に最大限変位した状態において、少なくとも一部が、線状に延びて前記可撓性膜の外面における前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内において前記空気側チャンバの内壁面と対向し、前記ハウジングと前記可撓性膜との間に通気路を形成し、前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域であ」り、「前記通気路は、前記圧力検出ポートまでつながっている」のに対し、引用発明2は「隔膜66の室57に接する側は、外面に形成された4つの半径方向突起92を有し、4つの半径方向突起92は、隔膜66の外面における圧力センサ83の通路88の周囲において止め輪70の内壁面に対向し、通路88の閉塞を防止する」点。
エ 判断
上記相違点ウについて検討する。
引用発明2の「4つの半径方向突起92」は、少なくとも一部が、線状に延びるものでない。
そして、相違点ウに係る本件発明3の「前記段差は、前記可撓性膜が前記空気側チャンバ側に最大限変位した状態において、少なくとも一部が、線状に延びて前記可撓性膜の外面における前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内において前記空気側チャンバの内壁面と対向し、前記ハウジングと前記可撓性膜との間に通気路を形成し、前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域であ」り、「前記通気路は、前記圧力検出ポートまでつながっている」点は、引用文献2及び他のいずれの甲号証にも、記載も示唆もされていない。
よって、引用発明2において、相違点ウに係る本件発明3の構成とすることは、当業者にとって容易であったとすることはできない。
オ 小括
したがって、本件発明3は、引用発明1又は2と、甲第3~11号証に記載された技術的事項とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明4について
異議申立人は、異議申立書の第28~29ページにおいて、本件発明4は、引用文献1(甲第1号証)及び引用文献2(甲第2号証)に記載された発明に基いて、容易に発明をすることができたものである旨主張するので、以下検討する。
ア 引用発明1との対比
請求項1を引用する本件発明4と引用発明1とを対比する。
上記「3 上記理由3(新規性)について」の「(3)本件発明1について」の「ア 対比」に示した事項は全て援用する。
そうすると、請求項1を引用する本件発明4と引用発明1とは、以下の相違点エで相違し、その余の点で一致する。
〔相違点エ〕
本件発明4は「前記段差は、少なくとも一部が、線状に延びて前記ハウジングの内面における前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内に達し」、「前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域であ」り、「前記可撓性膜は、長軸と短軸とを有するドーム状膜であり、前記段差は、長軸方向に延びている」のに対し、引用発明1は「リブ145は、ハウジング101の内面における圧力測定ポート140の開口の周囲に設けられ」ている点。
イ 判断
上記相違点エについて検討する。
引用発明1の「リブ145」は「前記圧力検出ポートの開口の周囲に設けられ」ているものの、少なくとも一部が、線状に延びるものでない。
そして、相違点1に係る本件発明4の「前記段差は、少なくとも一部が、線状に延びて前記ハウジングの内面における前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内に達し」、「前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域であ」り、「前記可撓性膜は、長軸と短軸とを有するドーム状膜であり、前記段差は、長軸方向に延びている」点は、引用文献1及び他のいずれの甲号証にも記載も示唆もされていない。
よって、引用発明1において、相違点エに係る本件発明4の構成とすることは、当業者にとって容易であったとすることはできない。
ウ 引用発明2との対比
請求項2を引用する本件発明4と引用発明2とを対比する。
上記「3 上記理由3(新規性)について」の「(4)本件発明2について」の「ア 対比」に示した事項は全て援用する。
そうすると、請求項2を引用する本件発明4と引用発明2とは、以下の相違点オとで相違し、その余の点で一致する。
〔相違点オ〕
本件発明4は「前記段差は、前記可撓性膜が前記空気側チャンバ側に最大限変位した状態において、少なくとも一部が、線状に延びて前記可撓性膜の外面における前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内において前記空気側チャンバの内壁面と対向し、前記ハウジングと前記可撓性膜との間に通気路を形成し、前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域であ」り、「前記可撓性膜は、長軸と短軸とを有するドーム状膜であり、前記段差は、長軸方向に延びている」のに対し、引用発明2は「隔膜66の室57に接する側は、外面に形成された4つの半径方向突起92を有し、4つの半径方向突起92は、隔膜66の外面における圧力センサ83の通路88の周囲において止め輪70の内壁面に対向し、通路88の閉塞を防止する」点。
エ 判断
上記相違点オについて検討する。
引用発明2の「4つの半径方向突起92」は、少なくとも一部が、線状に延びるものでない。
そして、相違点オに係る本件発明4の「前記段差は、前記可撓性膜が前記空気側チャンバ側に最大限変位した状態において、少なくとも一部が、線状に延びて前記可撓性膜の外面における前記圧力検出ポートの開口領域の領域外から領域内において前記空気側チャンバの内壁面と対向し、前記ハウジングと前記可撓性膜との間に通気路を形成し、前記開口領域は、前記圧力検出ポートの中心を中心とし、前記圧力検出ポートの前記ハウジングの内面における開口直径の3倍の直径を有する円状領域であ」り、「前記可撓性膜は、長軸と短軸とを有するドーム状膜であり、前記段差は、長軸方向に延びている」点は、引用文献2及び他のいずれの甲号証にも、記載も示唆もされていない。
よって、引用発明2において、相違点オに係る本件発明4の構成とすることは、当業者にとって容易であったとすることはできない。
オ 小括
したがって、本件発明4は、引用発明1又は2と、甲第3~11号証に記載された技術的事項とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700110