特許異議申立
2023-700739
光学積層体及び表示装置
- 審判番号
- 2023-700739
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-047073
- 登録番号
- 7225294
- 請求日
- 2023年07月14日
- 審決日
- 2025年02月25日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】住友化学株式会社
- 【権利者代理人】松谷 道子
- 【権利者代理人】西下 正石
- 【異議申立人】浅野 幸義
- 審判長/審判官
- 審判長 岩谷 一臣
- 審判官 木原 裕二
- 審判官 金丸 治之
- 分類
- P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B) / P1651.536-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7225294号発明「光学積層体及び表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7225294号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
特許第7225294号の請求項1~3、6~7に係る特許を維持する。
特許第7225294号の請求項4~5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7225294号の請求項1~7に係る特許についての出願(特願2021-47073号)は、令和2年8月12日(優先権主張 令和元年10月28日)に出願した特願2020-136370号の一部を令和3年3月22日に新たな特許出願としたものであって、令和5年2月10日にその特許権の設定登録がされ、令和5年2月20日に特許掲載公報が発行された。
本件の特許異議の申立てに係る手続の経緯の概要は、次のとおりである。
令和5年 7月14日 :特許異議申立人浅野幸義(以下「申立人」という。)による請求項1~7に係る特許に対する本件特許異議の申立て
令和5年11月15日付け:取消理由通知書
令和6年 1月17日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和6年 2月26日 :令和6年1月17日提出の訂正請求書に対する手続補正書の提出
令和6年 8月23日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和6年10月15日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、この訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)
第2 本件訂正の適否
1 請求項1~7に係る訂正について
(1)本件訂正の内容
本件訂正のうち、請求項1~7に係る訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
ア 訂正事項1
本件訂正前の請求項1に記載された
「該耐衝撃層は、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂又はポリエステル系樹脂を含み、」を、
「該耐衝撃層は、ポリイミド系樹脂(但し、ポリアミドイミド系樹脂は除く。)又はポリエステル系樹脂を含み、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~3、6~7も同様に訂正する)。
イ 訂正事項2
本件訂正前の請求項1に記載された
「該耐衝撃層が35~105μmの厚さを有し、」を、
「該耐衝撃層が40~105μmの厚さを有し、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~3、6~7も同様に訂正する)。
ウ 訂正事項3
本件訂正前の請求項1に記載された「105μmの厚さを有し、」の後に、
「該粘着剤層は、第1粘着剤層と第2粘着剤層とを含み、
該第1粘着剤層が5~100μmの厚さを有し、
該第2粘着剤層が5~100μmの厚さを有し、」を挿入する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~3、6~7も同様に訂正する)。
エ 訂正事項4
本件訂正前の請求項1に記載された「温度25℃、屈曲速度30rpm」の前に、
「該第1及び第2粘着層と該耐衝撃層とが、135~190μmの合計厚さを有し、」を挿入する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~3、6~7も同様に訂正する)。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲4及び5を削除する。
カ 訂正事項6
本件訂正前の請求項6に記載された
「請求項3又は4に記載の」を、
「請求項3に記載の」に訂正する。
キ 訂正事項7
本件訂正前の請求項7に記載された
「請求項1~6のいずれか一項に記載の」を、
「請求項1~3及び6のいずれか一項に記載の」に訂正する。
(2) 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~7は、請求項2~7が、本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~7〕について請求されたものである。
(3) 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の適否について
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1では、耐衝撃層に含まれる材料として「ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂又はポリエステル系樹脂」の4種類が択一的に規定していたものを、訂正後の請求項1では、「ポリイミド系樹脂(但し、ポリアミドイミド系樹脂は除く。)又はポリエステル系樹脂」とすることによって「ポリイミド系樹脂」又は「ポリエステル系樹脂」の2種類に限定するとともに、ポリイミド系樹脂については、ポリアミドイミド系樹脂以外のポリイミド系樹脂であることを規定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1は、本件特許の請求項1及び明細書の【0113】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項1は、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
イ 訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項1では、耐衝撃層の厚さを「35~105μm」と規定していたものを、訂正後の請求項1では、「40~105μm」と限定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2は、本件特許の請求項1及び明細書の【0116】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項2は、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
ウ 訂正事項3について
訂正事項3は、粘着剤層について、訂正後の請求項1で、「該粘着剤層は、第1粘着剤層と第2粘着剤層とを含み、該第1粘着剤層が5~100μmの厚さを有し、該第2粘着剤層が5~100μmの厚さを有し、」と限定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項3のうち、「第1粘着剤層と第2粘着剤層とを含」むことについては明細書の【0097】の記載、粘着剤層の厚さについては明細書の【0107】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項3は、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
エ 訂正事項4について
訂正事項4は、訂正後の請求項1で、「該第1及び第2粘着層と該耐衝撃層とが、135~190μmの合計厚さを有し、」と限定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項4は、明細書の【0110】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項4は、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
オ 訂正事項5について
訂正事項5は、特許請求の範囲4及び5を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項5は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
カ 訂正事項6について
訂正事項6は、請求項6の引用請求項から請求項4を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項6は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
キ 訂正事項7について
訂正事項7は、請求項7の引用請求項から請求項4~5を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項7は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項7は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4) 小括
以上のとおりであるから、本件訂正のうち訂正事項1~7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4~第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
2 明細書に係る訂正について
(1)本件訂正の内容
本件訂正のうち、明細書に係る訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
ア 訂正事項8について
明細書の【0123】の「限定されるものではない。」の後に、
「但し、実施例1、2及び実施例7は参考例である。」を挿入する。
(2)訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の適否、明細書の訂正に係る請求項について
訂正事項8は、訂正事項2による特許請求の範囲1~3、6~7の訂正により、実施例1、2及び実施例7が特許請求の範囲1~3、6~7の範囲に含まれなくなったことに伴い、実施例1、2及び実施例7が実施例に該当しないことを明記する訂正であり、明瞭でない記載の釈明の目的とするものである。
訂正事項8は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項8は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
そして、訂正事項8は、一群の請求項である請求項1~7と関係するものである。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正のうち訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4~第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の明細書を、訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたから、本件特許の請求項1~3、6~7に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1~3、6~7を「本件発明」と総称することもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~3、6~7に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
前面板と少なくとも一つの粘着剤層と耐衝撃層とを有する光学積層体であって、
該耐衝撃層は、ポリイミド系樹脂(但し、ポリアミドイミド系樹脂は除く。)又はポリエステル系樹脂を含み、
該耐衝撃層が40~105μmの厚さを有し、
該粘着剤層は、第1粘着剤層と第2粘着剤層とを含み、
該第1粘着剤層が5~100μmの厚さを有し、
該第2粘着剤層が5~100μmの厚さを有し、
該第1及び第2粘着層と該耐衝撃層とが、135~190μmの合計厚さを有し、
温度25℃、屈曲速度30rpm及び屈曲半径1.00mmの条件下で前面板を内側にして180°曲げ伸ばしを行う連続屈曲性試験において、15万回以上の耐屈曲回数を示す、
光学積層体。
【請求項2】
100~500μmの厚さを有する、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記粘着剤層として第1粘着剤層及び第2粘着剤層を含み、前面板の内部方向に、第1粘着剤層、耐衝撃層、及び第2粘着剤層を、この順に備える、請求項1又は2に記載の光学積層体。」
「【請求項6】
前記第1粘着剤層と第2粘着剤層とが、15/85~85/15の厚さ比rを有する、請求項3に記載の光学積層体。
【請求項7】
請求項1~3及び6のいずれか一項に記載の光学積層体と、光学積層体の内部方向に表示ユニットとを備える、表示装置。」
第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~3、6~7に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
取消理由(進歩性)
本件特許の請求項1~3、6~7に係る発明は、甲2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<引用文献等一覧>
甲2:特開2018-28573号公報(申立人が提出した甲第2号証)
第5 当審の判断
当審合議体は、上記取消理由(決定の予告)で通知した取消理由(進歩性)によっては、本件特許の請求項1~3、6~7に係る特許は取り消されるべきものではないと判断する。
1 甲2の記載事項及び引用発明
(1)甲2の記載
甲2には次の記載がある。
「【請求項1】
複数の粘着剤層と、少なくとも偏光膜を含む光学フィルムと、を含むフレキシブル画像表示装置用積層体であって、
前記偏光膜の厚みが、20μm以下であり、
前記複数の粘着剤層のうち、前記積層体を折り曲げた場合の凸側の最外面の粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率G’が、他の粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率G’と略同一、又は、小さいことを特徴とするフレキシブル画像表示装置用積層体。」
「【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載のフレキシブル画像表示装置用積層体と、有機EL表示パネルと、を含み、
前記有機EL表示パネルに対して、視認側に前記フレキシブル画像表示装置用積層体が配置されることを特徴とするフレキシブル画像表示装置。」
「【0006】
そこで、本発明は、少なくとも偏光膜を含む光学フィルムと、複数の特定の粘着剤層を用いることで、繰り返しの屈曲に対してもハガレや破断することがなく、耐屈曲性や密着性に優れたフレキシブル画像表示装置用積層体、及び、前記フレキシブル画像表示装置用積層体が配置されたフレキシブル画像表示装置を提供することを目的とする。」
「【0078】
透明基材としては、透明性を有するものであればよく、例えば、樹脂フィルム等からなる基材(例えば、シート状やフィルム状、板状の基材等)等が挙げられる。透明基材の厚さは、特に限定されないが、10~200μm程度が好ましく、15~150μm程度がより好ましい。
【0079】
前記樹脂フィルムの材料としては、特に制限されないが、透明性を有する各種のプラスチック材料が挙げられる。例えば、その材料として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂及びポリエーテルスルホン系樹脂である。」
「【0125】
<粘着剤層付光学積層体の作製>
前記アクリル系粘着剤組成物を、シリコーン系剥離剤で処理された厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、透明基材、セパレータ)の表面に、ファウンテンコータで均一に塗工し、155℃の空気循環式恒温オーブンで2分間乾燥し、基材の表面に厚さ25μmの粘着剤層1(第2の粘着剤層)を形成した。
次いで、得られた光学積層体の保護膜側(コロナ処理済み)に、粘着剤層1(第2の粘着剤層)を形成したセパレータを移着させ、粘着剤層付光学積層体を作製した。
【0126】
[第1の粘着剤層]
上記第2の粘着剤層と同様にして、粘着剤層4(第1の粘着剤層)を表2及び表3の配合内容に基づき、厚さ50μmの粘着剤層4(第1の粘着剤層)を形成し、厚さ75μmのPETフィルム(透明基材、三菱樹脂(株)製、商品名:ダイヤホイル)の表面(コロナ処理済み)に粘着剤層4を形成したセパレータを移着させ、粘着剤層付きPETフィルムを形成した。
【0127】
[第3の粘着剤層]
上記第2の粘着剤層と同様にして、粘着剤層2(第3の粘着剤層)を表2及び表3の配合内容に基づき、厚さ50μmの粘着剤層2(第3の粘着剤層)を形成し、厚さ77μmのポリイミドフィルム(PIフィルム、東レ・デュポン(株)製、カプトン300V、基材)の表面(コロナ処理済み)に粘着剤層2を形成したセパレータを移着させ、粘着剤層付きPIフィルムを形成した。
【0128】
<フレキシブル画像表示装置用積層体>
図6に示すように、上記のように得られた第1~第3の粘着剤層(各透明基材とともに)を、保護膜2となる(メタ)アクリル系樹脂フィルムに、第2の粘着剤層12-2を貼り合わせ、位相差膜3に第3の粘着剤層12-3を貼り合わせ、更に、第2の粘着剤層12-2が貼付されている透明基材8-2(PETフィルム)に、第1の粘着剤層12-1を貼り合わせることにより、実施例1で使用する構成Aに相当するフレキシブル画像表示装置用積層体11を作製した。なお、構成Bに相当するフレキシブル画像表示装置用積層体11は、図7に示した。」
「【0139】
(耐折性試験方法)
図5に180°耐折性試験機(井元製作所製)の概略図を示す。本装置は、恒温槽内で、マンドレルを挟んで片側のチャックが180°曲げを繰り返す機構となっており、マンドレルの直径により折り曲げ半径を変えることができる。フィルム破断すると試験が停止する機構になっている。試験は、各実施例及び比較例で得られた5cm×15cmのフレキシブル画像表示装置用積層体を装置にセットし、温度25℃、曲げ角度180°、曲げ半径3mm、曲げ速度1秒/回、重り100gの条件で実施した。フレキシブル画像表示装置用積層体の破断までの回数で耐折強さを評価した。ここで、折り曲げの回数が20万回に達した場合は、試験を打ち切った。
なお、測定(評価)方法としては、フレキシブル画像表示装置用積層体の第1の粘着剤層側を内側(凹側)にして折り曲げる場合(実施例1のみ)、第1の粘着剤層を外側(凸側)にして折り曲げる場合の、折り曲げ(曲げ)方向として、2種類について、評価した。
<破断の有無>
○:破断なし
△:屈曲部の端部にわずかな破断有り(実用上問題なし)
×:屈曲部の全面に破断有り(実用上問題あり)
<外観(ハガレ)の有無>
○:折れ・ハガレ等が確認されない
△:屈曲部にわずかに折れ・ハガレ等が確認される(実用上問題なし)
×:屈曲部の全面に折れ・ハガレ等が確認される(実用上問題あり)」
「【0142】
【表4】
[図:0001424544000001.jpg]
」
「【符号の説明】
【0146】
1 偏光膜
2 保護膜
2-1 保護膜
2-2 保護膜
3 位相差層
4-1 透明導電フィルム
4-2 透明導電フィルム
5-1 基材フィルム
5-2 基材フィルム
6 透明導電層
6-1 透明導電層
6-2 透明導電層
7 スペーサー
8 透明基材
8-1 透明基材(PETフィルム)
8-2 透明基材(PETフィルム)
9 基材(PIフィルム)
10 有機EL表示パネル
10-1 有機EL表示パネル(タッチセンサ付き)
11 フレキシブル画像表示装置用積層体(有機EL表示装置用積層体)
12 粘着剤層
12-1 第1の粘着剤層
12-2 第2の粘着剤層
12-3 第3の粘着剤層
13 加飾印刷フィルム
20 光学積層体
30 タッチパネル
40 ウインドウ
100 フレキシブル画像表示装置(有機EL表示装置)」
「【図6】
[図:0001424544000002.jpg]
」
(2)甲2の記載から明らかな事項
ア 上記(1)の【0126】、【0128】、【0146】及び【図6】の記載から、【0125】に記載の「(第2の粘着剤層)」(【図6】で「12-2」として図示)が形成されている「厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム」は、【図6】で示される「透明基材(PETフィルム)8-2」であることが読み取れる。
イ 【図6】の記載から、「8-1 透明基材(PETフィルム)」は積層体の前面に設けられていることが看取される。
(3)甲2に記載の発明
上記(1)及び(2)より、甲2には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「前面に設けられた透明基材(PETフィルム)8-1と第1の粘着剤層12-1及び第2の粘着剤層12-2と透明基材(PETフィルム)8-2とを有するフレキシブル画像表示装置に用いられる積層体であって、
透明基材(PETフィルム)8-2が38μmの厚さを有し、
該第1の粘着剤層12-1が50μmの厚さを有し、
該第2の粘着剤層12-2が25μmの厚さを有し、
該第1の粘着剤層12-1及び第2の粘着剤層12-2と該透明基材(PETフィルム)8-2とが、113μmの合計厚さを有し、
温度25℃、曲げ速度1秒/回及び曲げ半径3mmの条件下で180°曲げを繰り返す耐折性試験において、20万回の折り曲げの回数を示す、
フレキシブル画像表示装置に用いられる積層体。」
2 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と、引用発明とを対比する。
引用発明の「前面に設けられた透明基材(PETフィルム)8-1」は、その配置位置にかんがみれば、本件発明1の「前面板」に相当する。
引用発明の「透明基材(PETフィルム)8-2」は、耐衝撃性を有するか否かはさておき、その材質及び配置位置からみて、本件発明1の「ポリイミド系樹脂(但し、ポリアミドイミド系樹脂は除く。)又はポリエステル系樹脂を含」む「耐衝撃層」との対比において、「ポリエステル系樹脂を含」む「樹脂層」である限りにおいて一致する。
引用発明は、「第1の粘着剤層12-1」及び「第2の粘着剤層12-2」を持つものであるから、本件発明1における「少なくとも一つの粘着剤層」を有するものであり、また、これらはまとめて、本件発明1の「第1粘着剤層」及び「第2粘着剤層」に相当する。引用発明の「積層体」は、「フレキシブル画像表示装置」に用いられるものであるから、その用途にかんがみれば、本件発明1の「光学積層体」に相当する。
引用発明の「該第1の粘着剤層12-1が50μmの厚さを有」すること及び「該第2の粘着剤層12-2が25μmの厚さを有」することは、その数値に限り、まとめて本件発明1の「該第1粘着剤層が5~100μmの厚さを有」すること及び「該第2粘着剤層が5~100μmの厚さを有」することに相当する。
したがって、本件発明1と引用発明とは、
「前面板と少なくとも一つの粘着剤層と樹脂層とを有する光学積層体であって、
該樹脂層は、ポリイミド系樹脂(但し、ポリアミドイミド系樹脂は除く。)又はポリエステル系樹脂を含み、
該粘着剤層は、第1粘着剤層と第2粘着剤層とを含み、
該第1粘着剤層が5~100μmの厚さを有し、
該第2粘着剤層が5~100μmの厚さを有する
光学積層体。」
で一致し、相違点は以下のとおりである。
<相違点1>
本件発明1では、「耐衝撃層」を有し、「40~105μmの厚さを有」するものであり、「該第1及び第2粘着層と該耐衝撃層とが、135~190μmの合計厚さを有」するのに対し、引用発明では、耐衝撃性を有するか否かが不明な「透明基材(PETフィルム)8-2」が設けられているものであり、その厚さについても、「38μm」であり、さらに「該第1の粘着剤層12-1及び第2の粘着剤層12-2と該透明基材(PETフィルム)8-2とが、113μmの合計厚さを有」するものである点。
<相違点2>
本件発明1では、「前面板」、「第1粘着剤層」、「第2粘着剤層」、「耐衝撃層」とを有する「光学積層体」において、「温度25℃の条件下で前面板を内側にして180°曲げ伸ばしを行う連続屈曲性試験において、15万回以上の対屈曲回数を示す」ものであるのに対して、引用発明では、類似の「180°曲げを繰り返す耐折性試験」を行っているものの、設定条件が必ずしも本件発明1と一致していない点。
(2)判断
上記相違点について検討する。
<相違点1>について
本件発明1の、「該第1及び第2粘着層と該耐衝撃層とが、135~190μmの合計厚さを有」することについて、本件特許の【0110】の「粘着剤層と耐衝撃層との合計厚さが100μm以上であることで光学積層体の耐衝撃性が向上し、・・・より好ましくは135~190μmである。」という記載より、合計厚さの下限を135μmとすることは耐衝撃性の向上を指向したものであることがわかる。
ここで、甲2の【0078】には、「透明基材の厚さは、特に限定されないが、10~200μm程度が好ましく、15~150μm程度がより好ましい。」と記載されている。しかしながら甲2には、「該第1の粘着剤層12-1及び第2の粘着剤層12-2と該透明基材(PETフィルム)8-2と」の合計厚さの程度については記載がなされていない。さらに、引用発明の「フレキシブル画像表示装置に用いられる積層体」は、【0114】、【0121】、【0127】、【0128】及び【図6】に記載のとおり、引用発明の積層体に、保護膜2、偏光膜1、位相差層3、第3の粘着剤層12-3及びPIフィルム9をさらに積層するものを想定しており、ここで衝撃から保護すべき層は偏光膜1及び位相差層3であるところ、耐衝撃性に寄与するのは「透明基材(PETフィルム)8-2」に加えて「保護膜2」が存している。そうすると、耐衝撃性を向上させるとしても、当該「保護膜2」を含まない「該第1の粘着剤層12-1及び第2の粘着剤層12-2と該透明基材(PETフィルム)8-2」の合計厚さの程度についてのみ当業者が設計変更を行う動機づけはない。
してみれば、引用発明における「該第1の粘着剤層12-1及び第2の粘着剤層12-2と該透明基材(PETフィルム)8-2」による合計厚さについて、本件発明1で規定する「該第1及び第2粘着層と該耐衝撃層と」の合計厚さのような数値範囲とすることは、当業者といえども容易に想到するものではない。
(3)小括
よって、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本件発明2~3、6~7について
本件発明2~3、6~7は、直接的又は間接的に本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記に示したことと同様に、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 取消理由通知(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立書に記載の申立理由について
1 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由の概要について
取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由の概要は次のとおりである。
(1)申立理由1-1(新規性)
本件特許の請求項1~2及び7に係る発明は甲1に記載の発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由1-2(新規性)
本件特許の請求項3~6に係る発明は甲2に記載の発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(3)申立理由2(進歩性)
本件特許の請求項1~7に係る発明は、甲1及び甲2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<引用文献等一覧>
甲1:特開2019-14255号公報(申立人が提出した甲第1号証)
甲2:特開2018-28573号公報(上記「甲2」、申立人が提出した甲第2号証)
(4)申立理由3(実施可能要件)
本件特許は、明細書の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
本件特許発明と同じ構成の積層体が甲2に記載されているのにもかかわらず、甲2に記載の発明が本件特許発明が有する耐屈曲性を有さないのであれば、如何にして本件特許発明の積層体を製造できるのか不明であり、発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
(5)申立理由4(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
発明の詳細な説明で、発明の課題が解決できる実施例としては2つの粘着層を有する光学積層体のみについて記載されているが、特許請求の範囲では、2つの粘着層を必須の構成要件とはしておらず、効果が確認された実施例の範囲に比べ特許請求の範囲が極めて広く、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を越えている。
2 当審の判断
(1)申立理由1-1(新規性)及び申立理由2(進歩性)について
ア 甲1に記載の発明
甲1には、【0002】、【0004】、【0061】、【0169】、【0171】、【0179】~【0181】及び【図6】の記載より、特に【0181】の【表2】の実施例1及び比較例6~8により、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
「第1フィルムおよび第2フィルムと、第1フィルムと第2フィルムの間の接着剤層からなる積層フィルムであって、
該第1フィルムおよび第2フィルムはポリ(アミド-イミド)コポリマーを含み、
該第1フィルムおよび第2フィルムが36μmの厚さを有し、
該粘着剤層は、50μmの厚さを有し、
屈曲半径1mmにして、積層フィルムを20万回折りたたんだり伸ばしたりすることを反復し、何ら変化もなく、柔軟に折りたたまれたり伸ばされたりする、
積層フィルム。」
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
本件発明1の「前面板」は「樹脂製の板状体(例えば樹脂板、樹脂シート、樹脂フィルム等)」(【0023】)であり、「耐衝撃層」は「前記耐衝撃層の材料が、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群から選択される」(【請求項5】)とされ、「例えば、上記熱可塑性樹脂からなるフィルムを延伸(一軸延伸又は二軸延伸等)した」(【0115】)ものを含んでいる。また、甲1発明の「第1フィルム」及び「第2フィルム」の位置関係については、「前記表示パネルの前面の上に配置される第1フィルム」(【請求項1】)とされていることから、甲1発明の「第2フィルム」及び「第1フィルム」は、本件発明1の「前面板」及び「耐衝撃層」にそれぞれ相当し、甲1発明の「接着剤層」は、PSA接着剤層(【0171】)であり、PSA(Pressure-Sensitive Adhesive)は接着剤の一種で、粘着テープに塗布されている「粘着剤」のことであることより、本件発明1の「粘着剤層」に相当し、甲1発明の「積層フィルム」は、その機能からして、本件発明1の「光学積層体」に相当する。そうすると、甲1発明の「第1フィルムおよび第2フィルムと、第1フィルムと第2フィルムの間の接着剤層からなる積層フィルム」は、本件発明1の「前面板と少なくとも一つの粘着剤層と耐衝撃層とを有する光学積層体」に相当する。
甲1発明の「屈曲半径1mmにして、積層フィルムを20万回折りたたんだり伸ばしたりすることを反復し、何ら変化もなく、柔軟に折りたたまれたり伸ばされたりする」と本件発明1の「温度25℃、屈曲速度30rpm及び屈曲半径1.00mmの条件下で前面板を内側にして180°曲げ伸ばしを行う連続屈曲性試験において、15万回以上の耐屈曲回数を示す」とは、いずれも連続屈曲性試験で耐屈曲性を判断しているものであるから、両者は「屈曲半径1.00mmの条件下で曲げ伸ばしを行う連続屈曲性試験において、15万回以上の耐屈曲回数を示す」という限りにおいて一致する。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、
「前面板と少なくとも一つの粘着剤層と耐衝撃層とを有する光学積層体であって、
屈曲半径1.00mmの条件下で曲げ伸ばしを行う連続屈曲性試験において、15万回以上の耐屈曲回数を示す
光学積層体。」
で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
耐衝撃層について、本件発明1が「ポリイミド系樹脂(但し、ポリアミドイミド系樹脂は除く。)又はポリエステル系樹脂を含」んでいるのに対し、甲1発明では「第1フィルム」が「ポリ(アミド-イミド)コポリマーを含」んでいる点。
<相違点2>
粘着剤層について、本件発明1が、「該粘着剤層は、第1粘着剤層と第2粘着剤層とを含み、該第1粘着剤層が5~100μmの厚さを有し、該第2粘着剤層が5~100μmの厚さを有し」ているのに対し、甲1発明では、「接着剤層」を一層のみ有するものであり、「該粘着剤層は、50μmの厚さを有」するものである点。
<相違点3>
本件発明1が、「該耐衝撃層が40~105μmの厚さを有し、」「該第1及び第2粘着層と該耐衝撃層とが、135~190μmの合計厚さを有」するものであるのに対し、甲1発明では、「該第1フィルムおよび第2フィルムが36μmの厚さを有」するものであり、第1フィルム、第2フィルム及び接着剤層の合計厚さについては規定していない点。
<相違点4>
屈曲半径1.00mmの条件下で曲げ伸ばしを行う連続屈曲性試験において、15万回以上の耐屈曲回数を示している点に関して、本件発明1が、温度25℃、屈曲速度30rpmの条件下で前面板を内側にして180°曲げ伸ばしを行う連続屈曲性試験であるのに対し、甲1発明が、「屈曲半径1mmにして、積層フィルムを20万回折りたたんだり伸ばしたりすることを反復し、何ら変化もなく、柔軟に折りたたまれたり伸ばされたりする」であり、試験条件として温度、屈曲速度、折り曲げの態様について不明であり、耐屈曲性の基準としての屈曲回数が相違している点。
(イ)判断
事案に鑑み<相違点3>より検討する。
<相違点3>について
耐衝撃層の厚さについて、甲1発明の数値は、本件発明1の数値範囲内のものではなく、「該第1及び第2粘着層と該耐衝撃層と」の「合計厚さ」については、甲1発明において、第1フィルム、第2フィルム及び接着剤層の合計厚さを算出したとしても122μm(接着剤層50μm)であるから、本件発明1の数値範囲のものではない。よって、相違点3は実質的な相違点である。
また、甲1の【0182】の「高い鉛筆硬度を有する80μmの厚いフィルム(比較例1と比較例3)は、屈曲半径1mmでの屈曲性テストを通過することができない」、【0184】の「光特性の場合、同一の組成からなるフィルムであれば、より薄いフィルムの光特性(透過率および黄色度)が厚いフィルムの光特性よりよく、」の各記載より、第1フィルム及び第2フィルムを厚くする方向に当業者は検討することはないと把握され、さらに甲1の【0184】の「前記実施例1~2と比較例6~9では、第1フィルムと第2フィルムの間にPSA接着剤層を介在して積層フィルムを製造するところ、このように第1フィルムと第2フィルムの間に接着剤層または超弾性層などを介在して積層フィルムを製造する場合、前記二つのフイルムのみからなる場合に示され得る透過率に比べて透過率が多少落ちることがある。このような現象は、・・・接着剤層または超弾性層の厚さをより薄くするか、・・・ことによって改善することができる。」の記載より、接着剤層を厚くする方向すなわち、第1フィルム、第2フィルム及び接着剤層の合計厚さを厚くする方向に当業者は検討することはないと把握されるとするのが相当である。そうすると、甲1発明に基いて、相違点3に係る本件発明1のような構成とすることは、当業者といえども容易に想到し得たことではない。
また、上記引用発明(甲2に記載の事項)を参照したとしても、甲1発明の第1フィルム及び第2フィルムを厚くする方向に当業者は検討することはなく、第1フィルム、第2フィルム及び接着剤層の合計厚さを厚くする方向に当業者は検討することはない。そうすると、甲1発明及び引用発明に基いて、相違点3に係る本件発明1のような構成とすることは、当業者といえども容易に想到し得たことではない。
(ウ)小括
よって、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲1発明ではない。
また、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲1発明及び甲2に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明2及び7について
本件発明2及び7は、直接的又は間接的に本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記に示したことと同様に、本件発明2及び7は甲1発明ではない。
また、本件発明2及び7は、甲1発明及び甲2に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件発明3及び6について
本件発明3及び6は、直接的又は間接的に本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記に示したことと同様に、本件発明3及び6は、甲1発明及び甲2に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 申立理由1-1(新規性)及び申立理由2(進歩性)についてのまとめ
本件特許の請求項1~2及び7に係る発明は甲1に記載の発明ではない。
また、本件特許の請求項1~3、6~7に係る発明は、甲1及び甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
なお、請求項4~5は本件訂正により削除されたため、請求項4~5に係る特許についての申立ては、申立ての対象が存在しないものとなった。
(2)申立理由1-2(新規性)について
上記第5の2(1)及び(2)に示したとおり、本件発明1と甲2とを対比したとき実質的な相違点を有するものである。よって、請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項3及び6に係る発明は甲2に記載の発明ではない。
なお、請求項4~5は本件訂正により削除されたため、請求項4~5に係る特許についての申立ては、申立ての対象が存在しないものとなった。
(3)申立理由3(実施可能要件)
物の発明について実施可能要件を満たすためには、明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、当該発明に係る物を作り、使用をすることができる程度のものでなければならない。以下検討する。
本件発明が、本件特許の請求項1に記載のとおりのものであるところ、【0123】~【0152】には、実施例が示され、本件発明の発明特定事項を有する実施例3~6及び8が【0007】の記載の発明が解決しようとする課題である「耐屈曲性、耐衝撃性に優れた光学積層体を提供すること」を解決するものとして記載されている。
これらの記載を参照することにより、当業者が、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明を実施できるものである。
また、申立人は、本件特許発明と同じ構成の積層層体が甲2に記載されているのにもかかわらず、甲2に記載の発明が本件特許発明が有する耐屈曲性を有さないのであれば、如何にして本件特許発明の積層体を製造できるのか不明である旨主張するが、上記第5の2(1)及び(2)にも示したとおり、本件訂正によって訂正された本件発明1と引用発明(本件特許発明と甲2に記載の発明)と対比したとき実質的な相違点を有するものであり、本件訂正により、当該申立人の主張する実施可能要件についての記載不備は解消した。
(4)申立理由4(サポート要件)
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下検討する。
本件発明の解決しようとする課題は、【0007】の記載のとおり、「耐屈曲性、耐衝撃性に優れた光学積層体を提供すること」である。そして【0123】~【0151】には、本件発明の請求項1の発明特定事項を有する実施例3~6及び8が、耐屈曲性、耐衝撃性に優れた光学積層体であることが理解できる。
そうすると、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであり、特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するものである。
また、申立人は、発明の詳細な説明で、発明の課題が解決できる実施例としては2つの粘着層を有する光学積層体のみについて記載されているが、特許請求の範囲では、2つの粘着層を必須の構成要件とはしておらず、効果が確認された実施例の範囲に比べ特許請求の効果が確認された発明の詳細な説明の実施例の範囲の比べ特許請求の範囲が極めて広い旨主張するが、本件訂正により、2つの粘着層を有することが限定されたものであり、当該申立人の主張するサポート要件についての記載不備は解消した。
第7 むすび
以上のとおり、請求項1~3、6~7に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件特許の請求項4~5は、本件訂正により削除されたため、請求項4~5に係る特許についての本件特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700739