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特許異議申立

2023-700728

粘着テープ

審判番号
2023-700728
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-564040
登録番号
7211537
請求日
2023年07月13日
審決日
2024年04月16日
公報発行日
2024年05月31日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】DIC株式会社
  • 【権利者代理人】大野 孝幸
  • 【権利者代理人】岩本 明洋
  • 【権利者代理人】菅谷 英史
  • 【権利者代理人】丹羽 雅裕
  • 【異議申立人】北岡 弘章
審判長/審判官
  • 審判長 塩見 篤史
  • 審判官 門前 浩一
  • 審判官 関根 裕
分類
P1651.113-Y (C09J) / P1651.121-Y (C09J) / P1651.537-Y (C09J)
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特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7211537号発明「粘着テープ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7211537号の請求項1-5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件特許に係る出願は、令和2年12月10日(優先権主張 令和元年12月13日)を国際出願日とする出願であって、令和5年1月16日に特許権の設定登録がされ(請求項の数5)、同年同月24日に特許掲載公報が発行された。その後、令和5年7月13日に請求項1~5に係る特許に対して、特許異議申立人 北岡 弘章(以下「申立人」という。)によって特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明など 1 本件発明 本件特許の請求項1~5に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明5」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は次のとおりのものである。 「【請求項1】 ポリエステル系樹脂、架橋剤、及び前記ポリエステル樹脂100重量部に対して0~15重量部の粘着付与樹脂を少なくとも含有する粘着剤層を有し、 前記ポリエステル系樹脂は、カルボン酸成分として、イソフタル酸と、セバシン酸及びアゼライン酸の少なくとも一方とを含み、 前記ポリエステル系樹脂の重量平均分子量(Mw)が、50,000~150,000であり、 前記架橋剤がイソシアネート系架橋剤であり、 前記架橋剤の含有量が、前記ポリエステル樹脂100重量部に対して1.4~5.0重量部であり、 前記粘着剤層のバイオマス度が、80重量%以上であり、 前記粘着剤層のゲル分率が、40重量%以上であり、 対ステンレス板接着力が、4~14N/20mmであり、 前記粘着剤層が60℃、90%の高温・高湿環境下で500時間放置した後において、 界面剥離性を有することを特徴とする、粘着テープ。 【請求項2】 前記粘着剤層のゲル分率が、40重量%~85重量%である、請求項1に記載の粘着テープ。 【請求項3】 前記ポリエステル系樹脂が、イソフタル酸と、セバシン酸と、アゼライン酸とをカルボン酸成分として含む、請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載の粘着テープ。 【請求項4】 前記粘着剤層の少なくとも片面に、離型ライナーを有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の粘着テープ。 【請求項5】 前記ポリエステル系樹脂は、前記カルボン酸成分と前記カルボン酸成分1当量当たり1.1~2当量のジオール成分とを反応して得られる重合体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の粘着テープ。」 2 本件明細書には次の記載がある。 「<粘着剤層> 【0017】 本発明の粘着テープに係る粘着剤層は粘着剤組成物から成り、上記粘着剤組成物にはポリエステル系樹脂の他、架橋剤や粘着付与剤を含むことができる。また、粘着剤組成物はさらにその他の成分を有してもよい。」 「【0019】 ポリエステルは、植物由来の原料により製造されることが好ましい。その理由としては、植物由来の原料は、カーボンニュートラルであるといわれており、地球環境にやさしく、環境対応型の粘着剤を得ることができるからである。 【0020】 ポリエステルは、カルボン酸成分を含み、カルボン酸成分としては、少なくとも、カルボキシル基を2個含むジカルボン酸を含有することが好ましい。 【0021】 ジカルボン酸は、セバシン酸、アゼライン酸、イソフタル酸などが挙げられる。ジカルボン酸は、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。中でも特に、セバシン酸やアゼライン酸は、植物由来で、地球環境にやさしいなどの観点から好ましい。」 「<<粘着付与剤>> 【0042】 本発明の粘着テープに用いられる粘着剤層を形成するため、粘着剤の主成分であるポリエステル系樹脂に、架橋剤と共に、粘着付与剤を組み合わせることで、所望の特性を有する粘着剤層を得ることができ、特に接着性(粘着性)の向上が期待できる。 【0043】 粘着付与剤としては、特に限定されるものではなく、従来公知のものを使用することができ、例えば、ロジン系粘着付与剤、テルペン系粘着付与剤、フェノール系粘着付与剤、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、キシレン樹脂、エポキシ系粘着付与剤、ポリアミド系粘着付与剤、ケトン系粘着付与剤、エラストマー系粘着付与剤などが挙げられ、特にバイオマス度を維持・向上させるため、植物由来の原料により製造されるロジン系やテルペン系粘着付与剤を用いることが好ましい。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。 【0044】 ロジン系粘着付与剤としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの未変性ロジン(生ロジン)や、これらの未変性ロジンを重合、不均化、水添化などにより変性した変性ロジン(重合ロジン、安定化ロジン、不均化ロジン、完全水添ロジン、部分水添ロジンや、その他の化学的に修飾されたロジンなど)の他、各種のロジン誘導体などが挙げられる。上記ロジン誘導体としては、例えば、ロジン類(未変性ロジン、変性ロジンや、各種ロジン誘導体など)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール系樹脂;未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したロジンのエステル化合物(未変性ロジンエステル)や、重合ロジン、安定化ロジン、不均化ロジン、完全水添ロジン、部分水添ロジンなどの変性ロジンをアルコール類によりエステル化した変性ロジンのエステル化合物(重合ロジンエステル、安定化ロジンエステル、不均化ロジンエステル、完全水添ロジンエステル、部分水添ロジンエステルなど)などのロジンエステル系樹脂;未変性ロジンや変性ロジン(重合ロジン、安定化ロジン、不均化ロジン、完全水添ロジン、部分水添ロジンなど)を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン系樹脂;ロジンエステル系樹脂を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル系樹脂;未変性ロジン、変性ロジン(重合ロジン、安定化ロジン、不均化ロジン、完全水添ロジン、部分水添ロジンなど)、不飽和脂肪酸変性ロジン系樹脂や不飽和脂肪酸変性ロジンエステル系樹脂におけるカルボキシル基を還元処理したロジンアルコール系樹脂;未変性ロジン、変性ロジンや、各種ロジン誘導体等のロジン系樹脂(特に、ロジンエステル系樹脂)の金属塩などが挙げられる。 【0045】 テルペン系粘着付与剤としては、例えば、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、ジペンテン重合体などのテルペン系樹脂や、これらのテルペン系樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性など)した変性テルペン系樹脂(例えば、テルペンフェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂など)などが挙げられる。 【0046】 粘着付与剤としては、中でも、軟化点が、100~170℃のものが好ましく、より好ましくは、100~165℃であり、更に好ましくは、100~135℃である。 【0047】 粘着付与剤は含有させないか或いは含有させても少ない方が、良好な再剥離性を示す。しかし、接着力が弱くなる場合がある。一方、粘着付与剤の含有量が多いと高い接着力を示すが、再剥離性が悪くなる場合がある。そこで、本発明では接着力及び再剥離性の両方の観点から考慮し、粘着付与剤の種類及び配合量を選択することが好ましい。例えば、粘着付与剤の配合量は、粘着剤の主成分であるポリエステル系樹脂100重量部に対して、0~15重量部が好ましい。」 「(実施例4) 【0093】 上記ポリエステル系樹脂(A-1)100重量部に、粘着付与剤Aとして荒川化学工業株式会社「スーパーエステルA-100」(バイオマス度:100重量%)10重量部、架橋剤として「D-40」2.4重量部を配合し、ゲル分率が45重量%になる粘着剤を得た。 【0094】 上記粘着剤を、離型ライナー(両面が剥離処理された厚さ125μmの剥離紙)の重剥離処理面に塗工し、85℃で3分間乾燥させることによって、厚さ50μmの粘着剤層を作製した。その後、40℃の環境下で96時間熟成させることによって、両面粘着テープを得た。その後、両面粘着テープを上述の接着力評価及び再剥離性評価1に関する評価試験に供した。評価結果の詳細を表1に示す。また、上述した式から算出した粘着剤層のバイオマス度の値を表1に示す。」 「 [図:0001410219000001.jpg] 」 第3 特許異議申立ての概要 申立人の主張する理由の概要は次のとおりである。 1 新規性及び進歩性欠如 (1)証拠方法 以下、申立人が提示した甲第1号証を甲1などという。 甲1:特開2019-172874号公報 甲2:特開2019-172977号公報 甲3:特開2017-115149号公報 甲4:特開2011-88958号公報 (2)主張の概要 本件発明1~5は、甲1に記載された発明であるか、甲1に記載された発明及び甲1~4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号の発明に該当し、特許を受けることができない発明であるか、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であって、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 2 記載要件 (1)サポート要件違背 本件発明は、「カルボン酸成分として、イソフタル酸と、セバシン酸及びアゼライン酸の少なくとも一方とを含」むと規定されている。一方、本件明細書に記載された実施例においては、イソフタル酸と、セバシン酸及びアゼライン酸の両方を含む例しか開示されていないから、セバシン酸またはアゼライン酸の一方のみを用いる場合にまで発明を拡張・一般化することができず、本件発明の記載はサポート要件に違背するものである。 (2)明確性要件違背 本件発明1に規定された「粘着付与樹脂」について、その文言自体が本件明細書には何ら記載されていない。本件明細書の段落【0017】などには、「粘着付与剤」と記載されているが、用語が異なるから、異なるものを指していると解されるから、「粘着付与樹脂」については、明細書に何ら説明がない。 第4 証拠方法の記載事項 1 甲1には次の記載がある。 「【0001】 本発明は、耐熱性に優れたポリエステル系粘着剤組成物に関するものである。更に詳しくは、粘着力、耐湿熱性、耐熱性、保持力および透明性等の特性が優れ、ラベル、粘着テープもしくはシート等に使用されるポリエステル系粘着剤組成物および該粘着剤組成物からなる層を設けてなる粘着シートに関するものである。」 「【0012】 本発明の目的は、従来のアクリル系粘着剤とポリエステル系粘着剤が有していた上記の課題を解決するものである。すなわち、本発明の目的は、粘着力、耐湿熱性、耐熱性、保持力および透明性の特性が共に優れ、さらに長期安定性に優れたラベル、粘着テープもしくはシート等に使用されるポリエステル系粘着剤を提供することにある。」 「【0018】 本発明で用いるポリエステル樹脂(A)は特定構造および物性を有する。そのため、該ポリエステル樹脂(A)、イソシアネート硬化剤(B)および溶剤(C)を含有する粘着剤組成物は、指圧程度の圧力で十分な粘着力を発揮するとともに、結晶化による初期粘着力の低下が発生しない。さらに、ポリエステル樹脂の特徴である耐熱性、耐久性、機械的強度を損なうことがなく、長期安定性に優れた粘着剤とそのシートを得ることができる。すわなち、本発明の粘着剤組成物は、粘着力、耐湿熱性、耐熱性、保持力、透明性および長期安定性の特性にも優れた効果を有するものである。」 「【0019】 以下、本発明の実施形態であるポリエステル系粘着剤組成物について説明する。本発明におけるポリエステル系粘着剤組成物は、ポリエステル樹脂(A)、イソシアネート硬化剤(B)を必須成分として含有する。 【0020】 <ポリエステル樹脂(A)> 本発明に用いるポリエステル樹脂(A)は下記(1)~(4)の要件を満足する。 ・・・ 【0027】 <要件(2)> ポリエステルセグメント(A-1)の多価カルボン酸成分を100モル%としたとき、芳香族ジカルボン酸成分の含有量が10モル%以上であることが必要である。好ましくは12モル%以上であり、より好ましくは15モル%以上である。10モル%未満の場合、得られる粘着剤組成物の機械的強度が低くなることがあり、十分な粘着力が得られない場合がある。上限は特に限定されないが、70モル%以下であることが好ましく、より好ましくは60モル%以下であり、さらに好ましくは50モル%以下である。多すぎるとガラス転移温度が高くなり、十分な粘着力が得られないことがある。」 「【0030】 グリコール成分は、側鎖に炭化水素基を有する脂肪族グリコールを使用することが好ましい。ここで、側鎖とは2個の水酸基をつなぐ炭化水素基(炭素鎖)を主鎖とし、該主鎖から枝分かれしている炭化水素基をいう。主鎖から枝分かれしている側鎖の数は特に限定されず、1~3が好ましく、1~2がより好ましい。また、側鎖の炭素数の合計は1~4であることが好ましく、より好ましくは2~3である。上記範囲内とすることで共重合ポリエステルの結晶性による初期粘着力の低下が発生せず、さらに共重合ポリエステル樹脂の耐加水分解性の向上が期待できる。 【0031】 側鎖に炭化水素基を有するグリコール成分の具体例としては、特に限定されないが、1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール(以下、2MGともいう)、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(以下、ネオペンチルグリコールまたはNPGともいう)、2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、2,2-ジメチル-1,4-ブタンジオール、2,3-ジメチル-1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチル-1,5-ペンタンジオールが挙げられる。これら側鎖に炭化水素基を有するグリコール成分を単独でまたは2種以上併用して使用することができる。好ましくはNPGまたは3-メチル-1,5-ペンタンジオールである。」 「【0096】 前記粘着剤層は、剥離ライナーにより保護されていてもよい。また、粘着剤層が支持体の片面に形成されている粘着シートでは、支持体の粘着剤層とは反対側の面に剥離処理を施すことにより、該剥離処理面を利用して粘着剤層を保護することも可能である。このような剥離ライナーや、支持体の剥離処理面を利用して、シート状に段重ねしたり、ロール状に巻き回して、シート状やテープ状の形態の粘着シート類を作製することができる。」 「【0114】 ポリエステルセグメント(A-1-1)の合成 撹拌機、温度計、加熱ヒーター、冷却装置、溜出用冷却器を装備した反応缶内に、テレフタル酸63質量部、イソフタル酸50質量部、アゼライン酸244質量部、無水トリメリット酸4質量部、エチレングリコール124質量部、2,2-ジメチル1,3-プロパンジオール208質量部およびテトラブチルチタネート0.08質量部を仕込み、230℃まで昇温しつつ4時間かけてエステル化反応を行った。エステル化反応終了後、系内を240℃まで昇温しながら30分かけて10torrまで減圧し、さらに1torr以下の真空下まで減圧して240℃で30分間重縮合反応を行った。その後、系内に窒素を流し、真空破壊することで重縮合反応を終了させた。反応終了後、ポリエステルセグメントを取り出し、冷却することによりポリエステルセグメント(A-1-1)を得た。得られたポリエステルセグメント(A-1-1)はNMR分析の結果、多価カルボン酸成分がモル比でテレフタル酸/イソフタル酸/アゼライン酸/トリメリット酸=19/15/65/1であり、多価アルコール成分がモル比でエチレングリコール/2,2-ジメチル1,3-プロパンジオール=40/60であった。 【0115】 ポリエステルセグメント(A-1-2)~(A-1-11)の合成 ポリエステルセグメント(A-1-1)と同様にして組成が表1に示されるポリエステルセグメント(A-1-2)~(A-1-11)を合成した。結果を表1に示す。なお、表中のTi、Ge、Sb、Znはそれぞれテトラブチルチタネート、二酸化ゲルマニウム、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛を示す。 【0116】 【表1】 [図:0001410219000002.jpg] 」 「【0117】 ポリエステル樹脂(A-1)の調製 ポリエステルセグメント(A-1-1)100質量部を酢酸エチルに固形分濃度が50質量%となるように溶解した。この溶解物に触媒失活剤としてリン酸を0.021質量部(15ppm)添加した。さらに、カルボジイミドAを5質量部(2.5質量%)添加し、70℃で二時間撹拌を行い反応させた。その他の樹脂物性と併せて測定結果を表2に示す。 【0118】 ポリエステル樹脂(A-2)~(A-11)の調製 ポリエステル樹脂(A-1)の調製例と同様にして組成が表2に示されるポリエステル樹脂(A-2)~(A-11)を調製した。樹脂物性の測定結果を表2に示す。なお、カルボジイミドは以下のものを使用した。表2は固形分換算の量を記載した。 カルボジイミドA:日清紡ケミカル社製カルボジライト(V-07)、イソシアネート含量8.2%(樹脂中)、固形分濃度50質量%トルエン溶液 カルボジイミドB:日清紡ケミカル社製カルボジライト(V-05)、イソシアネート含量0.5%(樹脂中)、固形分濃度100質量% 【0119】 【表2】 [図:0001410219000003.jpg] 」 「【0120】 実施例1 撹拌機、温度計、環流用冷却器を装備した反応缶内に、ポリエステル樹脂(A-1)を酢酸エチルに固形分濃度が30質量%となるよう調整し、ポリエステル樹脂(A-1)の固形分100質量部に対して硬化剤A1.0質量部を仕込み、室温で5分撹拌して、粘着剤組成物を得た。測定結果を表3に示す。 【0121】 実施例2~8、比較例1~4 実施例1と同様にして組成が表3に示される粘着剤組成物を調製した。測定結果を表3に示す。表3は固形分換算の量を記載した。 【0122】 【表3】 [図:0001410219000004.jpg] 【0123】 実施例1~8および比較例1~4においては、得られたポリエステル樹脂を酢酸エチルに固形分濃度が30質量%となるように溶解した。この溶解物に表1の量に従いイソシアネート硬化剤を配合し、粘着剤組成物とした。表1にある樹脂量は、樹脂固形分としての値を示す。尚、イソシアネート硬化剤は下記のものを使用した。 硬化剤A:ヘキサメチレンジイソシアネート変性型多官能イソシアネート化合物、バイエル社製 デスモジュール(登録商標)N3200 硬化剤B:トリメチロールプロパンヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加型イソシアネート化合物、日本ポリウレタン社製 コロネート(登録商標)L 【0124】 実施例1~8においては、得られたポリエステル系粘着剤組成物はいずれも基材への良好な粘着力を示し、剥離状態も界面剥離であった。また、85℃、85%RH環境下に750時間または、1000時間に静置した後も基材への良好な粘着力を示し、耐湿熱性も良好であった。150℃加熱後も剥離状態は界面剥離であり、高温環境下でも保持力が良好であった。また、透明性も高く、粘着剤として優れた性能を示した。」 2 甲2には次の記載がある。 「【0001】 本発明は、バイオマスを原料とする、バイオポリウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂溶液及び印刷インキに関する。詳しくは、有機溶剤型の印刷インキ用バインダーとして好適に利用できる、バイオマス度の高いバイオポリウレタン樹脂、液状のバイオポリウレタン樹脂を提供する技術に関する。その好ましい形態として、樹脂溶液を構成する有機溶剤に、臭気や安全性といった環境問題対応の観点から、エステル系溶剤やアルコール溶剤を主体としたものを使用することで、所謂、ノントルエン溶剤系或いはノントルエンノンMEK(メチルエチルケトン)溶剤系であって、しかも、接着性能、顔料分散性、印刷適性に優れる、バイオマス度の高い印刷インキの提供を可能にできる技術に関する。本発明では、イソシアネート化合物とヒドロキシ化合物との反応で得られる、ウレタン結合の繰り返しを有するポリウレタンだけでなく、イソシアネート化合物とアミン化合物との反応で得られる、ウレア結合を有する樹脂を含めて、「ポリウレタン樹脂」と呼んでいる。 【背景技術】 【0002】 近年、枯渇性資源でない産業資源として、化石資源を除く生物由来資源の(バイオマス)が注目されている。特に植物は、太陽光をエネルギーとした光合成により大気中のCO2を吸収して成長するので、植物由来原料を製品化した製品(バイオマスプラスチックや、合成繊維、印刷インキ等)は、植物の成長過程における光合成によるCO2の吸収量と、植物の焼却によるCO2の排出量が相殺され、大気中のCO2の増減に影響を与えないと考えられ(カーボンニュートラル)、その開発が期待されている。植物由来原料を使用した製品の中でも、後述するバイオマスマーク認定商品は、安全で、循環型社会の形成に貢献し、地球温暖化防止に役立つという背景から、その開発と利用が望まれている。」 「【0012】 従って、本発明の目的は、各種プラスチック基材、特に、バイオマスプラスチック基材に対して優れた接着性能を示し、しかも、高濃度で含有した顔料の分散性に優れるなどの、印刷適正を有する印刷インキ用バインダーに有用な、高度にバイオマスを含有するポリウレタン樹脂を提供することにある。また、本発明の目的は、バイオポリウレタン樹脂を印刷インキ用バインダーとして用いることで、「バイオマスマーク」認定基準であるバイオマス度が10質量%以上である、カーボンニュートラルの考えからの環境保全面の要求分野において非常に有用な印刷インキを提供することにある。さらに、上記ポリウレタン樹脂を用いることで、ノントルエン溶剤系又はノントルエンノンMEK溶剤系の印刷インキの提供を可能にすることにある。また、本発明の別の目的は、印刷インキに適用した場合に、印刷装置で先に使用していた印刷インキとの相溶性に優れ、印刷作業の過程で生じる印刷インキを変更する場合に問題となる、印刷装置内の洗浄にかかる負荷を低減できる、印刷インキ用バインダーとしてより有用なバイオポリウレタン樹脂を提供することにある。」 「【0018】 本発明の印刷インキの好ましい形態としては、下記のものが挙げられる。 [12]グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷又はインクジェット印刷のいずれかに用いられる上記[11]に記載の印刷インキ。 [13]フィルム包装、紙包装、建材又は化粧紙のいずれかへの印刷に用いられる上記[11]又は[12]に記載の印刷インキ。 【発明の効果】 【0019】 本発明によれば、各種プラスチック基材、特にバイオマスプラスチック基材に対して優れた接着性能を示し、しかも、高濃度で含有した顔料の分散性に優れる、印刷インキ用バインダーに利用可能な、バイオマス度が35質量%以上、さらには、40質量%以上である高度に植物由来成分(バイオマス)を含有するバイオポリウレタン樹脂が提供される。また、本発明によれば、この高度にバイオマスを含有するポリウレタン樹脂を印刷インキ用バインダーとして用いることで、「バイオマスマーク」認定基準であるバイオマス度が10質量%以上で、且つ、高濃度の顔料を分散してなる、接着性能、顔料分散性、印刷適性等の実用性能に優れた、カーボンニュートラルの考えからの環境保全面の要求分野において非常に有用な印刷インキの提供が可能になる。さらに、本発明の好ましい形態によれば、上記バイオポリウレタン樹脂を用いることで、トルエン系溶剤非含有の、所謂、ノントルエン溶剤系又はノントルエンノンMEK溶剤系の印刷インキが提供される。」 「【0039】 本発明で使用し得る石油由来の多官能カルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられ、本発明の所期の目的に支障ない範囲で、併用することも可能である。」 「【0062】 [ポリウレタン樹脂溶液の調製] (実施例1) まず、下記のようにしてポリエステルポリオールを調製した。多官能カルボン酸成分(以下、ジカルボン酸成分と呼ぶ)として、植物由来成分からなるダイマー酸(ダイマー純度98%)/植物由来成分からなるコハク酸=90/10(モル比)を用い、多官能アルコール成分(以下、ジオール成分と呼ぶ)として、植物由来成分からなる1,3-プロパンジオールを用いた。そして、これらの成分を、目的の分子量となる適宜な量で用いて重合して、表1-1に示した、水酸基価が37.3mgKOH/g、酸価が0.3mgKOH/g、数平均分子量が3000である、100%植物由来成分からなるポリエステルジオールPE(1)を得た。」 「【0080】 [図:0001410219000005.jpg] 」 「【0083】 [図:0001410219000006.jpg] 」 3 甲3には次の記載がある。 「【0001】 本発明は、ポリエステル系粘着剤組成物に関し、更に詳しくは、加水分解抑制剤を含有するポリエステル系粘着剤組成物であって、耐久性、耐ブリスター性に優れるポリエステル系粘着剤組成物に関するものである。」 「【0011】 そこで、本発明ではこのような背景下において、粘着剤層が高温・高湿下に晒された場合においても粘着物性(粘着力)と透明性にも優れる耐久性の高いポリエステル系粘着剤であって、かつ非常に優れた耐ブリスター性を有するポリエステル系粘着剤を得ることができるポリエステル系粘着剤組成物を提供することを目的とするものである。」 「【0028】 多価カルボン酸成分(A1)とポリオール成分(A2)の配合割合としては、多価カルボン酸成分(A1)1当量あたり、ポリオール成分(A2)が1~2当量であることが好ましく、特に好ましくは1.1~1.7当量である。ポリオール成分(A2)の含有割合が低すぎると、酸価が高くなり高分子量化が困難となる傾向があり、高すぎると収率が低下する傾向がある。」 「【0070】 上記ゲル分率は、架橋度の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。すなわち、基材となる高分子シート(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等)に粘着剤層が形成されてなる粘着シート(セパレーターを設けていないもの)を200メッシュのSUS製金網で包み、トルエン中に23℃×24時間浸漬し、金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率とする。ただし、基材の重量は差し引いておく。」 「【0074】 〔製造例2:ポリエステル系樹脂(A-2)の製造〕 温度計、攪拌機、精留塔、窒素導入管および真空装置の付いた反応缶に、多価カルボン酸成分(A1)としてイソフタル酸9.2部(0.2モル)、セバシン酸22.3部(0.4モル)、アゼライン酸20.7部(0.4モル)、ポリオール成分(A2)としてエチレングリコール8.9部(0.52モル)、シクロヘキサンジメタノール38.9部(0.98モル)、触媒として二酸化ゲルマニウム0.02部仕込み、内温250℃まで除々に温度を上げ、4時間かけてエステル化反応を行った。その後、内温270℃まで上げ1.33hPaまで減圧し、3時間かけて重縮合反応を行い、ポリエステル系樹脂(A-2)を製造した。得られたポリエステル樹脂(A-2)の数平均分子量は30,000、ガラス転移温度は-25℃、酸価は0.7(mgKOH/g)であった。」 「【0079】 (実施例3) 実施例1において、ポリステル系樹脂(A-1)をポリエステル系樹脂(A-2)に、加水分解抑制剤(B-1)を1部に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステル系粘着剤を得た。」 「【0082】 <粘着剤層付きPETフィルムの製造> 実施例1~3、比較例1及び2で得られたポリエステル系粘着剤をそれぞれ厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にアプリケータを用いて塗布し、100℃で3分間乾燥し、粘着剤層の厚さが25μmの粘着シートを得た。次いで、得られた粘着剤層表面を離型処理されたPETフィルム(離型フィルム)で覆い、40℃で5日間エージング処理を行い、離型フィルム付き粘着剤層付きPETフィルムを得た。」 「【0084】 [初期粘着力] 上記で得られた離型フィルム付き粘着剤層付きPETフィルムを23℃、50%RHの環境下で25×200mmに裁断した後、離型フィルムを剥がし、粘着剤層側をSUS板に2kgローラーを往復させ加圧貼付けし、同雰囲気下で10秒放置した後に、オートグラフ(島津製作所製「オートグラフAGS-H 500N」)を用いて、剥離速度300mm/minで180度剥離強度(N/25mm)を測定し、以下の基準で評価した。 (評価基準) ○: 1N/25mm以上 ×: 1N/25mm未満」 「【0089】 【表1】 [図:0001410219000007.jpg] 」 「【0098】 【表2】 [図:0001410219000008.jpg] 」 4 甲4には次の記載がある。 「【0001】 本発明は、表面保護用粘着シートに関する。 【背景技術】 【0002】 近年、化石資源の枯渇や地球温暖化の防止策として、再生可能な材料である植物由来の原料の使用が推奨されている。 【0003】 また、地球温暖化の原因である化石資源の燃焼による二酸化炭素の増加が懸念されており、その対策として、いわゆるカーボンニュートラルである植物由来の材料への代替が進行している。」 「【0012】 そこで、本発明は、植物由来の原料を使用し、地球環境に優しく、粘着特性や耐汚染性に優れた表面保護用粘着シートを提供することを目的とする。」 「【0032】 前記多価カルボン酸として、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、ドデセニル無水琥珀酸、フマル酸、琥珀酸、ドデカン二酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等の脂肪族や脂環族ジカルボン酸等が挙げられ、特にセバシン酸は植物から得られるため好ましい。これらは、1種または2種以上を組み合わせて使用できる。 【0033】 更に、本発明の表面保護用粘着シートに用いられるポリエステルの特性を損なわない程度であれば、芳香族二塩基酸を使用することができる。前記芳香族二塩基酸としては、特に限定されないが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,2’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等が挙げられる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて使用できる。」 「【0071】 前記多価イソシアヌレートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアヌレート体などが挙げられる。これらを用いることにより、得られる粘着剤層の透明性や、高いゲル分率を得るという目的を達成することができ、有効である。前記多価イソシアヌレートの市販品を使用することもでき、具体的には、商品名「デュラネートTPA-100」(旭化成ケミカルズ社製)、商品名「コロネートHK」、「コロネートHX」、「コロネート2096」(日本ポリウレタン工業社製)等が挙げられる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて使用できる。」 「【0083】 また、本発明に用いられる粘着剤層を形成するため、前記ポリエステル系粘着剤組成物に、前記架橋剤と共に、粘着付与樹脂を組み合わせることで、所望の特性を有する粘着剤層を得ることができる。 【0084】 前記粘着付与樹脂としては、特に限定されるものではなく、従来公知のものを使用することができ、例えば、テルペン系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、ロジン系粘着付与樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、キシレン樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂などが挙げられ、特にバイオマス度を向上させるため、植物由来の原料により製造されるロジン系やテルペン系粘着付与樹脂を用いることが好ましい。これらは、1種または2種以上を組み合わせて使用できる。」 「【0098】 前記粘着剤層の形成方法としては、特に制限されないが、たとえば、粘着剤組成物(粘着剤組成物を溶剤に溶解した粘着剤組成物溶液や、熱溶融液)を、前記支持体(基材)に塗布・乾燥して粘着剤層を形成する方法や、形成した粘着剤層を移着する方法、粘着剤層形成材を支持体(基材)上に押出し形成塗布する方法、支持体(基材)と粘着剤層を二層または多層にて押出しする方法、支持体(基材)上に粘着剤層を単層ラミネートする方法などの公知の粘着シートの製造方法に基づき、行うことができる。また、熱可塑性樹脂からなる支持体(基材)とともに、粘着剤層をインフレーション法やTダイ法による二層又は多層による共押出し成形する方法などを用いることができる。なお、本発明における粘着シートとは、粘着フィルムや粘着テープ等を含むものである。」 「【0102】 (ポリエステルAの調製) 撹拌機、温度計、流出用冷却機を装備した反応缶内に、ダイマー酸86部、セバシン酸10部、1,3-プロピレングリコール30部、トリメチロールプロパン0.4部、DL-ラクチド50部、及び重合触媒であるテトラブチルチタネートを0.014部、オクチル酸錫を0.014部配合し、窒素雰囲気の常圧下で、5時間かけて250℃まで昇温させた後、1時間反応させ、留出する水を系外に除去し、エステル化反応を行った。更に、30分かけて、10mmHgまで減圧し、250℃で30分間、初期重合を行った。更に、1mmHgまで30分間かけて減圧し、250℃で、後期重合を行い、ポリエステルAを得た。」 「【0107】 (粘着剤組成物の調製) <実施例1> ポリエステルAを92部、乾燥した分岐型ポリエステルオリゴマー(Perstorp社製、ハイパーブランチポリマー Boltorn H20、水酸基価500mgKOH/g、重量平均分子量2100)8部を、メチルエチルケトン(MEK)117部と酢酸エチル117部の混合溶媒に溶解した後、架橋剤として、ポリイソシアヌレート(日本ポリウレタン社製、コロネートHK)10部、触媒としてジオクチルスズジウラレート(東京ファインケミカル社製、エンビライザーOL-1)0.1部を配合し、この混合物を乾燥後の厚みが5μmになるように、支持体としての厚さが25μmのポリ乳酸フィルム(ユニチカ社製「テラマック」)上に塗布し、80℃で3分間乾燥後、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルムの剥離処理面に組成物層を貼り合わせ、更に50℃で5日間放置し、粘着シートを得た。」 「【0125】 (ゲル分率) 実施例及び比較例で得られた粘着シート(粘着剤層の厚さは50μm)を5cm×5cm角に切り出した。切り出したサンプルを、重さがわかっているテフロン(登録商標)シートで包み、重量を秤量し、トルエン中に23℃で7日間放置して、サンプル中のゾル分を抽出した。その後、120℃で2時間乾燥し、乾燥後の重量を秤量した。ゲル分率を下記の式にて算出した。 ゲル分率(%)=(乾燥後の重量-テフロンシート重量)/(乾燥前の重量-テフロンシート重量)×100 【0126】 【表1】 [図:0001410219000009.jpg] 」 「【0127】 【表2】 [図:0001410219000010.jpg] 」 「【0128】 【表3】 [図:0001410219000011.jpg] 」 第5 当審の判断 1 第3、2(1)の主張について (1)アゼライン酸について アゼライン酸を構造式で表すと、 HOOC-(CH2)7-COOH となっているものである。 (2)セバシン酸について セバシン酸を構造式で表すと、 HOOC-(CH2)8-COOH となっているものである。 (3)検討 前記のように、アゼライン酸とセバシン酸の構造は類似しており、その差異はわずかなものであるから、アゼライン酸を単独で用いたり、セバシン酸を単独で用いた場合であっても、本件明細書に記載された実施例と大きく異なることにはならないから、本件明細書に記載された課題が解決されるものと推認できる。したがって、本件発明の記載がサポート要件を満たさないということはできない。 2 第3、2(2)の主張について (1)前記第2、2に摘記した本件明細書の実施例4には、粘着剤に配合する粘着付与剤について、「粘着付与剤Aとして荒川化学工業株式会社「スーパーエステルA-100」(バイオマス度:100重量%)」と記載されている。 (2)荒川化学工業株式会社のウェブサイト(https://www.arakawachem.co.jp/jp/products/adhesive/10.html)によると、スーパーエステルA-100は、ロジンエステルであって、前記第2、2に摘記した本件明細書の段落【0044】における「未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したロジンのエステル化合物」であると認められる。 (3)ロジンエステルは、樹脂由来のものであって、本件発明1において規定されている「粘着付与樹脂」が本件明細書に規定された「粘着付与剤」と同義であることは明らかである。これらを別の物質を指すということを前提とした申立人の主張は前提に誤りがあって、採用できない。 (4)また、申立人は、本件明細書の段落【0017】には、「粘着付与剤を含むことができる」という記載から、粘着付与剤が本件発明における任意成分であると主張し、必須成分である「粘着付与樹脂」とは異なると主張するが、本件発明における「0~15重量部の粘着付与樹脂」という記載は、その数値範囲にゼロを含んでいるから、粘着付与樹脂が任意成分であると解される。申立人の主張は特許請求の範囲の記載に基づくものでなく採用できない。 3 第3、1の主張について (1)引用発明の認定 ア 前記第4、1に摘記した甲1の段落【0121】~【0122】に記載された甲1の実施例6に注目すると、ポリエステル樹脂(A-5)100質量部に対して硬化剤Bが1.6質量部用いられており、ゲル分率が62重量%であって、基材B(SUS)に対する粘着力が7.6N/25mmであり、85℃85%RH750時間後の剥離状態が界面剥離であることが読み取れる。また、硬化剤Bは、甲1の段落【0123】に記載のように、「トリメチロールプロパンヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加型イソシアネート化合物」である。 イ 甲1のポリエステル樹脂は、【請求項1】の記載から、ポリエステルセグメント、ポリカルボジイミドセグメント、ウレタンセグメントからなるものである。前記アの実施例6のポリエステル樹脂(A-5)は、甲1の段落【0119】【表2】から、ポリエステルセグメント(A-1-5)100質量部、ポリカルボジイミドセグメント(B)1.0質量%からなるものであり、重量平均分子量が79000であることが読み取れる。 ウ 前記イのポリエステルセグメント(A-1-5)は、甲1の段落【0116】【表1】から(甲1の段落【0114】を参照すると、【表1】は、組成比を表していると解される。)、カルボン酸成分として、テレフタル酸4モル%、イソフタル酸10モル%、アゼライン酸85モル%、無水トリメリット酸1モル%からなり、また、グリコール成分として、エチレングリコール40モル%、2,2-ジメチル1,3-プロパンジオール30モル%、1,5ペンタンジオール30モル%からなり、これらをGe触媒で脱水縮合したものであることが読みとれる。 エ 甲1発明 前記ア~ウを整理すると、次の発明(以下「甲1発明」という。)が読み取れる。 「ポリエステル系樹脂(A-5)及び硬化剤(B)からなる粘着剤層を有し、前記ポリエステル系樹脂は、カルボン酸成分として、テレフタル酸4モル%とイソフタル酸10モル%とアゼライン酸85モル%と無水トリメリット酸1モル%からなり、グリコール成分として、エチレングリコール40モル%、2,2-ジメチル1,3-プロパンジオール30モル%、1,5ペンタンジオール30モル%からなり、前記ポリエステル系樹脂の重量平均分子量(Mw)が、79000であり、前記硬化剤(B)がイソシアネート系硬化剤であり、前記硬化剤の含有量が、前記ポリエステル系樹脂100質量部に対して1.6質量部であり、前記粘着剤層のゲル分率が62重量%であり、対ステンレス板接着力が、7.6N/25mmであり、前記粘着剤層が85℃、85%の高温・高湿度環境下で750時間放置した後において、界面剥離性を有する粘着テープ」 (2)本件発明1との対比 ア 甲1発明における「硬化剤(B)」、「カルボン酸成分として、テレフタル酸・・・とイソフタル酸・・・とアゼライン酸・・・と無水トリメリット酸・・・からなり」は、本件発明1における「架橋剤」、「カルボン酸成分として、イソフタル酸と、セバシン酸及びアゼライン酸の少なくとも一方とを含み」に相当する。 イ 甲1発明における「前記ポリエステル系樹脂の重量平均分子量(Mw)が、79000であり」は、本件発明1の「ポリエステル系樹脂の重量平均分子量(Mw)が、50,000~150,000であり」を充足する。 ウ 甲1発明における「前記硬化剤の含有量が、前記ポリエステル系樹脂100質量部に対して1.6質量部であり」は、本件発明1の「前記架橋剤の含有量が、前記ポリエステル樹脂100重量部に対して1.4~5.0重量部であり」を充足する。 エ 甲1発明における「前記粘着剤層のゲル分率が62重量%であり」は、本件発明1の「前記粘着剤層のゲル分率が、40重量%以上であり」を充足する。 オ 甲1発明における「対ステンレス板接着力が、7.6N/25mmであり」は、20mmあたりに換算すると、「6.1N/20mm」であるから、本件発明1の「対ステンレス板接着力が、4~14N/20mmであり」を充足する。 (3)一致点・相違点 以上から、本件発明1と甲1発明とは次の一致点及び相違点がある。 ア 一致点 「 ポリエステル系樹脂、架橋剤、及び前記ポリエステル樹脂100重量部に対して0~15重量部の粘着付与樹脂を少なくとも含有する粘着剤層を有し、 前記ポリエステル系樹脂は、カルボン酸成分として、イソフタル酸と、セバシン酸及びアゼライン酸の少なくとも一方とを含み、 前記ポリエステル系樹脂の重量平均分子量(Mw)が、50,000~150,000であり、 前記架橋剤がイソシアネート系架橋剤であり、 前記架橋剤の含有量が、前記ポリエステル樹脂100重量部に対して1.4~5.0重量部であり、 前記粘着剤層のゲル分率が、40重量%以上であり、 対ステンレス板接着力が、4~14N/20mmである粘着テープ。」 イ 相違点1 本件発明1においては、「前記粘着剤層のバイオマス度が、80重量%以上であり」と特定されているのに対して、甲1発明においてはバイオマス度が明らかでない点。 ウ 相違点2 界面剥離性における条件について、本件発明においては、「60℃、90%の高温・高湿環境下で500時間放置」するのに対して、甲1発明においては、「85℃、85%の高温・高湿度環境下で750時間放置」する点。 (4)相違点についての判断 ア 相違点1が実質的な相違点であるかの検討 (ア)申立人は、甲1発明において、そのバイオマス度が80%以上である蓋然性が高く、相違点1は実施的な相違点ではないと主張する。 (イ)甲1発明における、カルボン酸成分のうち、アゼライン酸については、バイオマス由来である蓋然性は高いといえる。しかし、他のカルボン酸成分であるテレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸無水物については、ベンゼン環を有しており、バイオマス由来とすることは困難であることは技術常識である。 (ウ)甲1発明におけるグリコール成分のうち、エチレングリコールについては、バイオマス由来とすることは一応可能であるといえる。しかし、他のグリコール成分である2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオールについては、バイオマス由来とすることは困難であることは技術常識である。 (エ)エチレングリコールを石油由来とした場合の計算 甲1発明におけるバイオマス度を検討する。テレフタル酸及びイソフタル酸は、166.14ダルトン、アゼライン酸は188.22ダルトン、無水トリメリット酸は192.13ダルトン、エチレングリコールを62.08ダルトン、2,2-ジメチル1,3-プロパンジオール及び1,5-ペンタンジオールが104.15ダルトンであることを考慮すると、ジカルボン酸成分とジオール成分とが等モルであるという前提で、バイオマス度は、0.85×188.22/(0.14×166.14+0.85×188.22+0.01×192.13+0.40×62.08+0.60×104.15)×100=159.99/272.49×100=58.7%となる。そうすると、アゼライン酸がバイオマス由来であるとしても、バイオマス度は本件発明における80重量%以上ではないから、相違点1は実質的な相違点である。 (オ)エチレングリコールをバイオマス由来とした場合の計算 仮に、甲1発明のエチレングリコールとしてバイオマス由来のものを採用した場合は、次のように計算できる。(159.99+24.83)/(0.14×166.14+0.85×188.22+0.01×192.13+0.40×62.08+0.60×104.15)×100=67.8重量%となり、やはり、本件発明1の「80重量%以上」とはならない。 (カ)そうすると、相違点1は実質的な相違点である。 イ 相違点1が容易に想到可能かの検討 (ア)カルボン酸成分について 前記第4、1に摘記した甲1の段落【0027】の記載「ポリエステルセグメント(A-1)の多価カルボン酸成分を100モル%としたとき、芳香族ジカルボン酸成分の含有量が10モル%以上であることが必要である。好ましくは12モル%以上であり、より好ましくは15モル%以上である。10モル%未満の場合、得られる粘着剤組成物の機械的強度が低くなることがあり、十分な粘着力が得られない場合がある。」からみて、甲1発明には、バイオマス由来では得られない芳香族ジカルボン酸が必須であって、バイオマス度を上昇させることに阻害要因がある。 (イ)グリコール成分について 前記第4、1に摘記した甲1の段落【0030】には、「グリコール成分は、側鎖に炭化水素基を有する脂肪族グリコールを使用することが好ましい。ここで、側鎖とは2個の水酸基をつなぐ炭化水素基(炭素鎖)を主鎖とし、該主鎖から枝分かれしている炭化水素基をいう。主鎖から枝分かれしている側鎖の数は特に限定されず、1~3が好ましく、1~2がより好ましい。また、側鎖の炭素数の合計は1~4であることが好ましく、より好ましくは2~3である。上記範囲内とすることで共重合ポリエステルの結晶性による初期粘着力の低下が発生せず、さらに共重合ポリエステル樹脂の耐加水分解性の向上が期待できる。」と記載されている。このような側鎖を有するグリコール成分をバイオマス由来で製造することは困難であるから、グリコール成分についてもバイオマス度を上昇させることに阻害要因がある。 (ウ)上記(ア)(イ)を総合すると、甲1に接した当業者は、甲1における粘着剤層の強度の低下や耐加水分解性を犠牲にして、バイオマス度を「80重量%」以上とすることには、阻害要因があるといえる。 (エ)そうすると、甲2~甲4に記載された周知技術があったとしても、甲1発明において、相違点1に係る構成を採用することは当業者が容易になし得ることではない。 (オ)以上から、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (カ)本件発明2~5 本件発明2~5は、本件発明1を包含し、さらに特定事項を追加したものであるから、本件発明1と同様に当業者が容易に発明できたものではない。 (6)小括 以上から、本件発明1~5は甲1発明ではなく、また、甲1発明及び甲2~4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではないから、本件発明1~5に係る特許は取り消されるべきものではない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本件発明1~5について取り消すべき理由があるということはできない。 また、他に本件発明1~5を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700728

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  • 2024-700608異議申立 / 2026-02-04 / 訂正認容活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物、粘着剤層、積層体
    共通の審決分類: 113・C09J、121・C09J、537・C09J
  • 2024-701045異議申立 / 2025-11-18 / 訂正認容粘着剤及び粘着テープ
    共通の審決分類: 113・C09J、121・C09J、537・C09J

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