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特許異議申立

2025-700052

積層体、包装袋及びその製造方法

審判番号
2025-700052
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-014380
登録番号
7516764
請求日
2025年01月08日
審決日
2025年08月19日
公報発行日
2025年11月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】東洋製罐株式会社
  • 【権利者代理人】山本 修
  • 【権利者代理人】新井 規之
  • 【権利者代理人】鈴木 雄太
  • 【異議申立人】赤松 智信
審判長/審判官
  • 審判長 田口 傑
  • 審判官 稲葉 大紀
  • 審判官 葛原 怜士郎
分類
P1651.121-YAA(B32B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7516764号発明「積層体、包装袋及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7516764号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。 特許第7516764号の請求項1~8に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7516764号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和2年1月31日を出願日とするものであって、令和6年7月8日に特許権の設定登録(特許掲載公報 令和6年7月17日発行)がされ、その特許について、令和7年1月8日に特許異議申立人赤松智信(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。 本件異議申立以後の経緯は、以下のとおりである。 令和 7年 3月14日付け:取消理由通知書 同年 5月22日 :特許権者による訂正請求書・意見書の提出 (以下、この訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。) 同年 6月26日 :申立人による意見書の提出 第2 本件訂正請求について 1 訂正の内容 本件訂正請求は、「特許第7516764号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、以下の訂正事項からなるものである。なお、下線は、当審において訂正箇所に付したものである。 (1) 訂正事項 特許請求の範囲の請求項1において、 「前記第一の層と前記第二の層の合計の厚み100%に対する、前記第二の層の厚みの割合が50~90%であり、 前記第一のポリエチレンが高密度ポリエチレン(HDPE)であり、前記第二のポリエチレンが直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)であり、 前記積層体に含まれる全ての樹脂100質量%に対する、前記積層体に含まれるポリエチレンの質量の割合が90質量%以上である」 と記載されているのを、 「前記第一の層と前記第二の層の合計の厚み100%に対する、前記第二の層の厚みの割合が55~85%であり、 前記第一のポリエチレンが高密度ポリエチレン(HDPE)であり、前記第二のポリエチレンが直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)であり、 前記積層体に含まれる全ての樹脂100質量%に対する、前記積層体に含まれるポリエチレンの質量の割合が90質量%以上であり、 前記第一の層の厚みが30μm以下である」 に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~8についても同様に訂正する。)。 (2) 一群の請求項について 訂正前の請求項1~8について、請求項2~8は請求項1を引用する請求項である。 そうすると、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~8〕について請求されたものである。 2 訂正の適否 ア 訂正の目的について 訂正事項は、積層体について、「前記第一の層と前記第二の層の合計の厚み100%に対する、前記第二の層の厚みの割合」を、「50~90%」から「55~85%」に限定するとともに、「前記第一の層の厚みが30μm以下である」ことを特定するものであるから、積層体の構成をさらに限定して、特許請求の範囲を減縮するものである。 そうすると、請求項1についてする訂正事項による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であるかについて 本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)の【0035】には、「第一の層と第二の層の合計の厚み100%に対する、第二の層の厚みの割合は、ヒートシール時における第二の層への熱伝導性向上及び接着性向上の観点から、50~90%であることが好ましく、55~85%であることがより好ましく、60~80%であることがさらに好ましい。」と記載されていることから、「前記第一の層と前記第二の層の合計の厚み100%に対する、前記第二の層の厚みの割合が55~85%であ」ることは、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内である。 また、本件特許明細書等の【0027】には、「第一の層の厚みは、ヒートシール時における第二の層への熱伝導性向上の観点から、40μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。」と記載されていることから、「前記第一の層の厚みが30μm以下である」ことは、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内である。 そうすると、訂正事項は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内である。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるかについて 訂正事項は、積層体の層構成をさらに限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 3 本件訂正請求についてのまとめ したがって、訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正後の請求項〔1~8〕について訂正を認める。 第3 本件特許の請求項に係る発明 上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~8に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 樹脂として第一のポリエチレンのみを含み、融点Tm1を有する第一の層と、 樹脂として第二のポリエチレンのみを含み、融点Tm2を有する第二の層と、 前記第一の層と前記第二の層とを接着する、接着剤を含む接着層と、からなる積層体であって、 前記第一の層及び前記第二の層は前記積層体の最表面にそれぞれ配置されており、 Tm1-Tm2≧24.0℃であり、 前記接着剤が、ウレタン系、酸変性ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、及びポリアミド系からなる群から選択される少なくとも一種であり、 前記第一の層と前記第二の層の合計の厚み100%に対する、前記第二の層の厚みの割合が55~85%であり、 前記第一のポリエチレンが高密度ポリエチレン(HDPE)であり、前記第二のポリエチレンが直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)であり、 前記積層体に含まれる全ての樹脂100質量%に対する、前記積層体に含まれるポリエチレンの質量の割合が90質量%以上であり、 前記第一の層の厚みが30μm以下である、積層体。 【請求項2】 前記第一の層が、前記第一のポリエチレンの延伸フィルムである請求項1に記載の積層体。 【請求項3】 前記第二の層が、前記第二のポリエチレンの無延伸フィルムである請求項1又は2に記載の積層体。 【請求項4】 前記積層体がナイロンを含まない請求項1から3のいずれか一項に記載の積層体。 【請求項5】 請求項1から4のいずれか一項に記載の積層体を含む包装袋。 【請求項6】 液体収容用である請求項5に記載の包装袋。 【請求項7】 請求項1から4のいずれか一項に記載の積層体をヒートシールする工程を含む、包装袋の製造方法。 【請求項8】 前記ヒートシールの温度が130℃以上である請求項7に記載の包装袋の製造方法。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 本件訂正前の請求項1~8に係る特許に対して、当審において令和7年3月14日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。 取消理由(進歩性) 本件特許の請求項1~8係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明、甲第1号証に記載された事項及び技術常識に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 <引用文献等一覧> 引用文献1:特開2001-225428号公報 甲第1号証:特開2019-189334号公報 甲第2号証:特表2017-518205号公報 甲第4号証:宇梶友乃、他3名、"HDPE/LLDPEブレンドの部分融解と結晶化"、p.63-68、[online]、東ソー研究・技術報告、東ソー株式会社、2018年、第62巻、[2024年12月18日検索]、インターネット<URL:https://www.tosoh.co.jp/technology/assets/18-3-8.pdf> 以下、甲第○号証を「甲○」という。 2 当審の判断 (1) 引用文献の記載等 ア 引用文献1について (ア) 引用文献1の記載 引用文献1には以下の記載がある。下線は当審において付与し、「・・・」は省略を示す。以下同様。 「【0068】本発明の積層シートの厚さは、使いやすさの点から、好ましくは40μm~5mmである。また、本発明の積層シートの第I層および第II層の各層の厚さは、各層の特性(第I層:非水蒸気透過性、保香性等、第II層:耐熱性、耐ピンホール性、ヒートシール性、耐ESCR性等)を十分発揮させるために、それぞれ20~2.5mmの範囲で選択されることが望ましい。」 「【0085】<積層シートの評価> [ヒートシール強度]テスター産業(株)製ヒートシール試験機(シールバー幅1mm、シール圧力2kg/cm2)を用い、積層シートの最内層(第II層)面どうしを、シール温度165℃で1秒間シールし、室温23℃かつ湿度50%で24時間状態調節後、シール部を15mm幅で短冊状に切り出し、引張試験機にて300mm/minでシール部を剥離し、その最大荷重を測定した。」 「【0088】実施例および比較例に用いた各種成分は以下の通りである。 (1)高密度ポリエチレン エチレン・1-ブテン共重合体(HDPE-1) MFR=1.0g/10分、密度=0.956g/cm3、日本ポリオレフィン(株)製」 「【0092】3)一般メタロセン触媒によるエチレン・ヘキセン-1共重合体(LLDPE-4) 窒素で置換した撹拌機付き加圧反応器に精製トルエンを入れ、次いで、1-ヘキセンを添加し、更にビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、メチルアルモキサン(MAO)の混合液を(Al/Zrモル比=500)を加えた後、80℃に昇温し、メタロセン触媒を調整した。ついでエチレンを張り込み、エチレンを連続的に重合しつつ全圧を6kg/cm3に維持して重合を行い、エチレン・ヘキセン-1共重合体(LLDPE-4)を製造した。その物性を表1に示した。」 「【0094】 【表1】 [図:0001429024000001.jpg] 」 「【0096】[実施例1、3~9、比較例1~4、参考例1~2]トミー機械工業(株)製2層インフレーション成形機(40mmφ押出機2台)を用い、成形リップギャップ3mm、成形温度200℃の条件下で、所定量の酸化防止剤(イルガノックス1076、イルガフォス168)とステアリン酸カルシウム(中和剤)を配合した表2~表4に示す各層用の樹脂材料を成形し、巾が300mmであり、表2~表4に示す層厚み構成を有する積層シートを製造した。さらに、積層シートの第II層どうしをヒートシールして内容量500mlの容器を製造した。積層シートおよび容器の評価を行った。結果を表2~表4に示す。 ・・・ 【0097】 【表2】 [図:0001429024000002.jpg] 【0098】 【表3】 [図:0001429024000003.jpg] 」 (イ) 引用文献1の記載から認定できる事項 上記(ア)に示した【0085】の「積層シートの最内層(第II層)面どうしを、シール温度165℃で1秒間シールし」という記載から、同【0098】の【表3】における実施例8の第II層が最内層であることは明らかである。 (ウ) 引用文献1に記載の発明 上記(ア)及び(イ)から、【0098】の【表3】における実施例8に着目すると、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「HDPE-1が100wt%である第I層と、 LLDPE-4が100wt%である第II層と、からなる積層シートであって、 第II層は最内層であり、 LLDPE-4のTmlが101.9℃であり、 第I層の厚みが80μmで、第II層の厚みが80μmである、積層シート。」 イ 甲1について (ア) 甲1の記載 甲1には以下の記載がある。 「【0019】 <包装材料用ポリエチレン積層体> 本発明による包装材料用ポリエチレン積層体を図面を参照しながら説明する。 図1に示すように、包装材料用ポリエチレン積層体10は、延伸ポリエチレンフィルム20と、接着層30と、ヒートシール性ポリエチレン層40とを少なくとも備える。・・・。」 「【0041】 <接着層> 本発明の包装材料用ポリエチレン積層体は、延伸ポリエチレンフィルムと、ヒートシール性ポリエチレン層との間に、無溶剤型接着剤を含む接着層を備える。 また、本発明の包装材料用ポリエチレン積層体が、蒸着膜を備えるポリエチレン層を備える場合、延伸ポリエチレンフィルムと、蒸着膜を備えるポリエチレン層との間、及び蒸着膜を備えるポリエチレン層と、ヒートシール性ポリエチレン層との間に該接着層を備える。 本発明の包装材料用ポリエチレン積層体が備える接着層が、無溶剤型接着剤を含むことにより、環境への負荷を低減することができる。 【0042】 接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル系接着剤、ポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレン共重合体接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエーテル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、アミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、ゴム系接着剤及びシリコーン系接着剤等が挙げられる。」 (イ) 甲1に記載の事項 上記(ア)から、甲1には以下の事項(以下「甲1記載事項」)が記載されていると認められる。 「延伸ポリエチレンフィルム20と、接着層30と、ヒートシール性ポリエチレン層40を備える包装材料用ポリエチレン積層体10であって、 接着層30の接着剤として、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエーテル系接着剤、及びポリアミド系接着剤等が挙げられる接着剤を含む、包装材料用ポリエチレン積層体10。」 ウ 甲2について (ア) 甲2の記載 甲2には以下の記載がある。 「【0006】 高密度ポリエチレンを含む第1の層と、ポリエチレン以外のポリマーを含むバリア層と、を含むリサイクル可能なバリアフィルムであって、・・・バリア層が、バリアフィルムの総重量に基づいて、5重量パーセント未満の量でバリアフィルム中に存在する、リサイクル可能なバリアフィルムが本明細書において開示される」 「【0043】・・・バリアフィルムの総重量の5wt%未満であるバリア層を使用することにより、いかなる前処理もすることなく使用後に、フィルムの直接リサイクルを可能にする。・・・。」 「【0044】 バリアフィルム100は、ポリエチレン系ストリームにおいて完全にリサイクルすることができるという点で有利である。・・・。」 (イ) 技術常識と認められる事項 上記(ア)を踏まえれば、以下の事項は技術常識(以下「技術常識1」という。)と認められる。 「ポリエチレンを含むフィルムにおいて、ポリエチレン以外のポリマーを、フィルムの総重量の5wt%未満とすることにより、フィルムの直接リサイクルが可能となること。」 エ 甲4について (ア) 甲4の記載 甲4には以下の記載がある。 「HDPEは結晶化度が高いために硬く、厚いラメラを形成しているために融解温度が高い。それに対して、LLDPEは結晶化度が低いために柔らかく、薄いラメラを形成しているために融解温度が低い。」(第63ページ右欄下から第1行~第64ページ左欄第4行) 「東ソー株式会社製のHDPE(分子量Mw=106,000、融点Tm=136℃)とLLDPE(Mw=87,000、Tm=100℃)」(第64ページ右欄「2.実験」第1行~第3行) (イ) 技術常識と認められる事項 上記(ア)を踏まえれば、以下の事項は技術常識(以下「技術常識2」という。)であると認められる。 「HDPEは、LLDPEに対して融点が高く、融点が136℃のものが含まれること。」 (2) 本件発明1について ア 対比 本件発明1と引用発明を対比する。 (ア) 第Iの層について 引用発明の「第I層」は、本件発明1の「第一の層」に相当する。また、引用発明の「HDPE-1が100wt%である第I層」は、ある温度の融点を有していることは明らかであるから、本件発明1の「前記第一のポリエチレンが高密度ポリエチレン(HDPE)であり、」「樹脂として第一のポリエチレンのみを含み、融点Tm1を有する第一の層」に相当する。 (イ) 第IIの層について 引用発明の「第II層」は、本件発明1の「第二の層」に相当する。また、引用発明の「LLDPE-4が100wt%である第II層」は、「LLDPE-4のTmlが101.9℃であ」るから、本件発明1における「前記第二のポリエチレンが直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)であり、」「樹脂として第二のポリエチレンのみを含み、融点Tm2を有する第二の層」に相当する。 (ウ) 積層シートについて 引用発明の「HDPE-1が100wt%である第I層と、LLDPE-4が100wt%である第II層と、からなる積層シート」は、本件発明1の「樹脂として第一のポリエチレンのみを含み、融点Tm1を有する第一の層と、樹脂として第二のポリエチレンのみを含み、融点Tm2を有する第二の層と、前記第一の層と前記第二の層とを接着する、接着剤を含む接着層と、からなる積層体」と、「樹脂として第一のポリエチレンのみを含み、融点Tm1を有する第一の層と、樹脂として第二のポリエチレンのみを含み、融点Tm2を有する第二の層と、を備える積層体」である限りにおいて一致する。 (エ) 第I層及び第II層の配置について 引用発明の「積層シート」は、第I層と第II層の2層構成であり、「第II層は最内層であ」ることから、第I層が最外層であることは明らかである。このことを踏まえれば、引用発明の「積層シート」において「第II層は最内層であ」る構成は、本件発明1の「前記第一の層及び前記第二の層は前記積層体の最表面にそれぞれ配置されて」いる構成に相当する。 イ 一致点及び相違点 上記アを踏まえれば、本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 (ア) 一致点 [一致点1] 「樹脂として第一のポリエチレンのみを含み、融点Tm1を有する第一の層と、 樹脂として第二のポリエチレンのみを含み、融点Tm2を有する第二の層と、を備える積層体であって、 前記第一の層及び前記第二の層は前記積層体の最表面にそれぞれ配置されており、 前記第一のポリエチレンが高密度ポリエチレン(HDPE)であり、前記第二のポリエチレンが直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)である、積層体。」 (イ) 相違点 [相違点1] 積層体について、本件発明1は、「第一の層と、・・・第二の層と、・・・前記第一の層と前記第二の層とを接着する、接着剤を含む接着層と、からな」り、「前記接着剤が、ウレタン系、酸変性ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、及びポリアミド系からなる群から選択される少なくとも一種であ」り、「積層体に含まれる全ての樹脂100質量%に対する、前記積層体に含まれるポリエチレンの質量の割合が90質量%以上である」のに対して、引用発明は接着層を有していない点。 [相違点2] 第一の層及び第二の層について、本件発明1は「Tm1-Tm2≧24.0℃であ」るのに対して、引用発明は、第II層のLLDPE-4のTmlが101.9℃であるものの、第I層のHDPE-1の融点が不明である点。 [相違点3] 第一の層及び第二の層について、本件発明1は「前記第一の層と前記第二の層の合計の厚み100%に対する、前記第二の層の厚みの割合が55~85%であり」、「前記第一の層の厚みが30μm以下である」のに対して、引用発明は、第I層の厚みが80μmで、第II層の厚みが80μmである点。 ウ 判断 事案に鑑み、相違点2及び3をまとめて検討する。 まず、引用発明の「第I層」における「HDPE-1」の融点について、上記(1)エ(イ)に示した技術常識2を踏まえれば、「第I層」の融点は、「第II層」の融点より24℃以上高いといえるため、相違点2は実質的な相違点でない。 しかしながら、引用発明は、第I層(HDPE-1)の厚みが80μmで、第II層(LLDPE-4)の厚みが80μmであるところ、引用文献1には、第II層がLLDPE-4(Tmlが101.9℃)からなる実施例は他に記載されていないし、そのような構成を示唆する記載もない。 ここで、上記(1)ア(ア)に示した【0068】には、第I層と第II層の厚さを、層の特性に応じて20(当審注:「20」は「20μm」の誤記。)~2.5mmの範囲で選択することが記載されているものの、第I層と第II層の樹脂の構成については記載されていないから、上記【0068】の記載は、引用発明において、第I層がHDPE-1、第II層がLLDPE-4という構成を維持したまま、第I層と第II層の合計の厚み100%に対する、第II層の厚みの割合を55~85%とし、かつ、第I層の厚みを30μm以下とすることを動機付けるものではない。 また、甲1、甲2及び甲4においても、Tm1-Tm2≧24.0℃を満たす、融点Tm1を有する第一の層と、融点Tm2を有する第二の層を備える積層体において、第一の層と第二の層の合計の厚み100%に対する、第二の層の厚みの割合が55~85%とし、かつ、第一の層の厚みが30μm以下とすることは記載も示唆もされていない。 そして、本件発明1は「Tm1-Tm2≧24.0℃」とすることで、第一の層の耐熱性を向上させつつ、第二の層を低温で溶融させることができるため、ヒートシール性を向上させることができ(【0025】)、「前記第二の層の厚みの割合が55~85%」とすることでヒートシール時における第二の層への熱伝導性を向上し(【0027】)、「前記第一の層の厚みが30μm以下」とすることで、ヒートシール時における第二の層への熱伝導性を向上する(【0027】)という格別な効果を奏するものと認められる。 したがって、引用発明に基いて、上記相違点2及び3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 エ 申立人の主張について 申立人は、令和7年6月26日提出の意見書(特に6~8ページ)において、後述の(i)について甲2に接した当業者が容易想到であったことと、(ii)及び(iii)について甲1に開示があることから、引用文献1を主引例として本件発明1の進歩性が否定される旨主張する。 「(i)Tm1-Tm2≧24.0℃であること、 (ii)融点Tm1を有する第一の層と、融点Tm2を有する第二の層を備え、第一の層と第二の層の合計の厚み100%に対する、第二の層の厚みの割合が55~85%であること、 (iii)第一の層の厚みが30μm以下であること」 しかしながら、上記ウで検討したとおり、甲1及び甲2において、Tm1-Tm2≧24.0℃を満たす、融点Tm1を有する第一の層と、融点Tm2を有する第二の層を備える積層体において、第一の層と第二の層の合計の厚み100%に対する、第二の層の厚みの割合が55~85%とし、かつ、第一の層の厚みが30μm以下とすることは記載も示唆もされていないから、引用発明に基いて、上記相違点2及び3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 よって、上記申立人の主張は採用できない。 オ 小括 上記ウのとおり、相違点2及び3についての検討を考慮すると、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、引用文献1に記載された発明、甲第1号証に記載された事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3) 本件発明2~8について 本件発明2~8は、本件発明1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明であるから、上記(2)と同様に、引用文献1に記載された発明、甲第1号証に記載された事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第5 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由について 1 申立理由の概要 (1) 申立理由(進歩性) 本件特許の請求項1~8に係る発明は、甲1に記載の発明及び甲2~甲4に記載の事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するので、取り消されるべきものである。 (2) 申立人が提出した証拠 甲1:特開2019-189334号公報 甲2:特表2017-518205号公報 甲3:“Technical Information ELITETM AT6111 Enhanced Polyethylene Resin”、p.1-3、[online]、The Dow Chemical Company、2012年、[2024年12月9日検索]、インターネット<URL:https://www.dow.com/ja-jp/document-viewer.html?docPath=/content/dam/dcc/documents/400/400-001/400-00141656en-elite-at-6111-tds.pdf> 甲4:宇梶友乃、他3名、"HDPE/LLDPEブレンドの部分融解と結晶化"、p.63-68、[online]、東ソー研究・技術報告、東ソー株式会社、2018年、第62巻、[2024年12月18日検索]、インターネット<URL:https://www.tosoh.co.jp/technology/assets/18-3-8.pdf> 2 当審の判断 当審合議体は、本件発明1~8について、取消理由通知で通知しなかった上記申立理由について検討しても、以下に示すように理由がないと判断する。 (1) 甲1について ア 甲1の記載 甲1には以下の記載がある。 「【0002】 ポリエチレンフィルムは、適度な柔軟性を有し、透明性、防湿性、耐薬品性等に優れるとともに、安価であることから、各種の包装材料に使用されている。ポリエチレンの融点は、種類によっても多少異なるが概ね100~140℃程度であるため、包装材料分野ではヒートシール性フィルムとして使用されるのが一般的である。 【0003】 一方、他の熱可塑性樹脂フィルムと比較して、ポリエチレンフィルムは、剛性が劣るため、印刷適性が低く、その表面に鮮明な画像を形成することが困難であった。また、ポリエチレンフィルムは、包装材料の外装として要求される耐久性を満たすことができる程度の強度を有していなかった。 そのため、ポリエステルフィルムやナイロンフィルム等の剛性及び強度に優れる樹脂フィルムと、ポリエチレンフィルムとをラミネートすることで積層体とし、この積層体のポリエチレンフィルム側が内側となるように、積層体端部をヒートシールすることにより包装材料を作製することが行われている(例えば、特開2005-104525号公報)。 【0004】 ところで、近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、包装材料をリサイクルして使用することが試みられている。しかしながら、上記のような異種の樹脂フィルムを貼り合わせた場合、樹脂フィルム同士を分離することが難しく、リサイクルに適しておらず、より環境負荷の少ない包装材料を使用したいという要求もあった。 ・・・ 【0006】 本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、環境への負荷を顕著に低減することができると共に、高い印刷適性及び強度を有する、包装材料用ポリエチレン積層体を提供することをその解決しようとする課題とするものである。」 「【0022】 延伸ポリエチレンフィルムに含まれるポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が挙げられる。また、延伸ポリエチレンフィルムは、これらを2種以上含むことができる。 これらの中でも、ポリエチレン積層体の印刷適性、強度、耐熱性及び延伸適正という観点から、高密度ポリエチレン(HDPE)及び中密度ポリエチレン(MDPE)が好ましく、延伸適正という観点から、中密度ポリエチレンがより好ましい。 なお、本発明において、高密度ポリエチレンは密度が0.945g/cm3以上のものを、中密度ポリエチレンは密度が0.925~0.944g/cm3のものを、低密度ポリエチレンは密度が0.925g/cm3未満のものをいう。」 「【0031】 延伸ポリエチレンフィルムにおけるポリエチレンの含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。」 「【0042】 接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル系接着剤、ポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレン共重合体接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエーテル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、アミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、ゴム系接着剤及びシリコーン系接着剤等が挙げられる。」 「【0044】 <ヒートシール性ポリエチレン層> ヒートシール性ポリエチレン層は、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレンとその他のモノマーとの共重合体の少なくとも1つを含む。これらの中でも、ヒートシール性という観点からは、低密度ポリエチレン(LDPE)及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましい。環境負荷の観点からは、これらポリエチレンは、バイオマス由来のものであることが好ましい。 【0045】 ヒートシール性ポリエチレン層におけるポリエチレンの含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。」 「【0052】 蒸着膜を備えるポリエチレン層におけるポリエチレンの含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。」 「【0057】 <包装材料> 一実施形態において、本発明による包装材料は、上記ポリエチレン積層体のヒートシール性ポリエチレン層が内側となるように、二つ折にして重ね合わせて、その端部をヒートシールすることにより製造することができる。 また、2枚のポリエチレン積層体を、ヒートシール性ポリエチレン層が向かい合うように重ね合わせ、その端部をヒートシールすることにより製造することができる。 シール方法により、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型、その他等のヒートシール形態によりヒートシールして、種々の形態の包装材料を製造することができる。 その他、例えば、自立性包装用袋(スタンデイングパウチ)等も可能である。ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。」 「【0062】 <実施例2> 高密度ポリエチレン(密度:0.961g/cm3、融点135℃、MFR:0.7g/10分、ExxonMobil社製、商品名:HTA108)及び中密度ポリエチレン(密度:0.941g/cm3、融点129℃、MFR:1.3g/10分、Dowchemical社製、商品名:Elite5538G)を、インフレーション成形法により製膜し、高密度ポリエチレン層/中密度ポリエチレン層/高密度ポリエチレン層からなるポリエチレンフィルムを作製した。高密度ポリエチレン層の厚さは、それぞれ20μm、中密度ポリエチレン層の厚さは、60μmであった。 このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、厚さ20μmの延伸ポリエチレンフィルムを得た。 【0063】 上記延伸ポリエチレンフィルムと、厚さ40μmの、未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(東洋紡(株)製、商品名:L6100)とを、2液硬化無溶剤型ポリエステル系接着剤(ロックペイント(株)製、商品名RN-920/HN:920)を介して積層し、ポリエチレン積層体を得た。」 イ 甲1の記載から認定できる事項 (ア) 上記アに示した【0044】の記載を踏まえれば、【0062】及び【0063】に記載の実施例2における「未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム」が、「ヒートシール性ポリエチレン層」であることは明らかである。 (イ) 上記アに示した【0045】の「ヒートシール性ポリエチレン層におけるポリエチレンの含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい」という記載を踏まえれば、実施例2における「未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム」におけるポリエチレンの含有量は、少なくとも50質量%以上であるといえる。 (ウ) 上記アに示した【0057】の「本発明による包装材料は、上記ポリエチレン積層体のヒートシール性ポリエチレン層が内側となるように、二つ折にして重ね合わせて、その端部をヒートシールすることにより製造することができる」という記載を踏まえれば、【0062】及び【0063】に記載の実施例2における「未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム」が、内側に配置されていることは明らかである。 ウ 甲1に記載の発明 上記ア及びイの記載から、甲1の【0062】及び【0063】に記載の実施例2に着目すると、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 「高密度ポリエチレン(密度:0.961g/cm3、融点135℃、MFR:0.7g/10分、ExxonMobil社製、商品名:HTA108)及び中密度ポリエチレン(密度:0.941g/cm3、融点129℃、MFR:1.3g/10分、Dowchemical社製、商品名:Elite5538G)を、インフレーション成形法により製膜し、高密度ポリエチレン層/中密度ポリエチレン層/高密度ポリエチレン層からなるポリエチレンフィルムを作製し、 このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、厚さ20μmの延伸ポリエチレンフィルムを得、 上記延伸ポリエチレンフィルムと、厚さ40μmの、未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(東洋紡(株)製、商品名:L6100)とを、2液硬化無溶剤型ポリエステル系接着剤(ロックペイント(株)製、商品名RN-920/HN:920)を介して積層して得た、ポリエチレン積層体であって、 未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムにおけるポリエチレンの含有量が、50質量%以上であり、 未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムが内側に配置された、ポリエチレン積層体。」 (2) 本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア) 甲1発明の「延伸ポリエチレンフィルム」、「未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム」、「2液硬化無溶剤型ポリエステル系接着剤」、及び「ポリエチレン積層体」は、それぞれ本件発明1の「第一の層」、「第二の層」、「接着剤」、及び「積層体」に相当する。 (イ) 甲1発明の「延伸ポリエチレンフィルム」は、ある温度の融点を有していることは明らかであるから、本件発明1における「融点Tm1を有する第一の層」に相当する。 (ウ) 甲1発明の「未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム」は、ある温度の融点を有していることは明らかであるから、本件発明1における「前記第二のポリエチレンが直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)であり、」「樹脂として第二のポリエチレンのみを含み、融点Tm2を有する第二の層」に相当する。 (エ) 甲1発明の「ポリエチレン積層体」は、「延伸ポリエチレンフィルムと、・・・未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムとを、2液硬化無溶剤型ポリエステル系接着剤・・・を介して積層して得」られるから、本件発明1の「前記第一の層と前記第二の層とを接着する、接着剤を含む接着層と、からなる積層体」に相当する。 (オ) 甲1発明は「未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムが内側に配置され」ていることから、「延伸ポリエチレンフィルム」が最外層であることは明らかである。このことを踏まえれば、甲1発明の「ポリエチレン積層体」において「未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムが内側に配置され」ている構成は、本件発明1の「前記第一の層及び前記第二の層は前記積層体の最表面にそれぞれ配置され」た構成に相当する。 (カ) 甲1発明の「2液硬化無溶剤型ポリエステル系接着剤」は、本件発明1の「前記接着剤が、ウレタン系、酸変性ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、及びポリアミド系からなる群から選択される少なくとも一種であ」るに相当する。 (キ) 甲1発明の「厚さ20μmの延伸ポリエチレンフィルム」と「厚さ40μmの、未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム」である構成は、本件発明1の「前記第一の層と前記第二の層の合計の厚み100%に対する、前記第二の層の厚みの割合が55~85%であり、」「前記第一の層の厚みが30μm以下である」構成に相当する。 イ 一致点及び相違点 上記アから、本件発明1と甲1発明は以下の点で一致し、相違する。 (ア) 一致点 [一致点2] 「融点Tm1を有する第一の層と、 樹脂として第二のポリエチレンのみを含み、融点Tm2を有する第二の層と、 前記第一の層と前記第二の層とを接着する、接着剤を含む接着層と、からなる積層体であって、 前記第一の層及び前記第二の層は前記積層体の最表面にそれぞれ配置されており、 前記接着剤が、ウレタン系、酸変性ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、及びポリアミド系からなる群から選択される少なくとも一種であり、 前記第一の層と前記第二の層の合計の厚み100%に対する、前記第二の層の厚みの割合が55~85%であり、 前記第二のポリエチレンが直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)であり、 前記第一の層の厚みが30μm以下である、積層体。」 (イ) 相違点 [相違点4] 第一の層について、本件発明1は、「樹脂として第一のポリエチレンのみを含」み、「前記第一のポリエチレンが高密度ポリエチレン(HDPE)であ」るのに対して、甲1発明は、「高密度ポリエチレン層/中密度ポリエチレン層/高密度ポリエチレン層からなるポリエチレンフィルム」を延伸して得るものである点。 [相違点5] 第一の層及び第二の層について、本件発明1は「Tm1-Tm2≧24.0℃であ」るのに対して、甲1発明は、「延伸ポリエチレンフィルム」及び「未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム」の融点が不明である点。 [相違点6] 積層体について、本件発明1は、「前記積層体に含まれる全ての樹脂100質量%に対する、前記積層体に含まれるポリエチレンの質量の割合が90質量%以上であ」るのに対して、甲1発明は、「未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムにおけるポリエチレンの含有量が、50質量%以上であ」るものの、積層体のポリエチレンの質量の割合が不明な点。 ウ 判断 事案に鑑み、上記相違点4及び5をまとめて検討する。 甲1発明の「延伸ポリエチレンフィルム」について検討すると、上記(1)アに示した【0022】には、「延伸ポリエチレンフィルムに含まれるポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が挙げられる。」、「これらの中でも、ポリエチレン積層体の印刷適性、強度、耐熱性及び延伸適正という観点から、高密度ポリエチレン(HDPE)及び中密度ポリエチレン(MDPE)が好ましく、延伸適正という観点から、中密度ポリエチレンがより好ましい。」と記載されている。そして、実施例1~3においても延伸ポリエチレンフィルムに中密度ポリエチレンが含まれていることも踏まえると、甲1に記載の延伸ポリエチレンフィルムが、中密度ポリエチレンを最適な素材としていることは明らかである。そうすると、甲1発明の「高密度ポリエチレン層/中密度ポリエチレン層/高密度ポリエチレン層からなるポリエチレンフィルム」を延伸して得る「延伸ポリエチレンフィルム」において、最適な素材である中密度ポリエチレンを除外し、高密度ポリエチレンのみからなる構成とすることに、動機付けはない。 また、甲1発明では、「未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム」として「東洋紡(株)製、商品名:L6100」を用いており、L6100の製品情報(URL:https://www.toyobo.co.jp/seihin/film/package/pdf/pro3-p/L6100.pdf)を参酌すると、「実温120℃までのレトルトが可能である」と記載されており、L6100の融点は120℃以上であると推認できるから、甲1発明の「延伸ポリエチレンフィルム」の融点が、「未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム」の融点より24.0℃以上高い蓋然性が高いとはいえない。 加えて、上記(1)アに示した【0006】には、課題の1つに強度が挙げられていることを踏まえると、甲1発明において、「未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム」として、「延伸ポリエチレンフィルム」より融点が24.0℃以上低くなる直鎖状低密度ポリエチレンを採用することは、当業者といえども容易に想到することはない。 また、高密度ポリエチレンのみを含む第一の層と、直鎖状低密度ポリエチレンのみを含む第二の層を備えた積層体において、各層の融点の差(Tm1-Tm2)に着目することは、甲2~甲4にも記載も示唆もされていないから、甲1発明において、甲2~甲4に記載の事項を参酌しても、Tm1-Tm2≧24.0℃とすることは、当業者といえども容易に想到することはない。 よって、本件発明1の上記相違点4及び5に係る構成は、甲1に記載の発明及び甲2~甲4に記載の事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものではないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載の発明及び甲2~甲4に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 申立人の主張について 申立人は、令和7年1月8日提出の異議申立書(特に23~25ページ)及び令和7年6月26日提出の意見書(特に4~6ページ)において、甲2に接した当業者が、甲1発明に、上記相違点4~6に係る構成を適用することは容易である旨主張する。 しかしながら、上記ウで検討したとおり、甲1発明において、甲1の記載、甲2~甲4に記載の事項を参酌しても、上記相違点4~6に係る構成は、当業者といえども容易に想到するとはいえない。 よって、上記申立人の主張は採用できない。 (3) 本件発明2~8について 本件発明2~8は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記(2)と同様の理由により、甲1に記載の発明及び甲2~甲4に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、請求項1~8に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700052

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