特許異議申立
2023-700691
硬化性樹脂組成物、仮固定材、及び、電子部品の製造方法
- 審判番号
- 2023-700691
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-065625
- 登録番号
- 7201860
- 請求日
- 2023年07月05日
- 審決日
- 2024年03月13日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】積水化学工業株式会社
- 【権利者代理人】田口 昌浩
- 【権利者代理人】弁理士法人WisePlus
- 【異議申立人】伊東 沙織
- 審判長/審判官
- 審判長 ▲吉▼澤 英一
- 審判官 藤原 浩子
- 審判官 近野 光知
- 分類
- P1652.113-YAA(C09J) / P1652.121-YAA(C09J) / P1652.537-YAA(C09J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第113条第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第113条第4号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7201860号発明「硬化性樹脂組成物、仮固定材、及び、電子部品の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7201860号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-21〕について訂正することを認める。
特許第7201860号の請求項1、2、4、6~21に係る特許を維持する。
特許第7201860号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7201860号(以下「本件特許」という。)に係る特願2022-65625号は、令和3年9月22日を国際出願日とする特願2022-508852号(優先日 令和2年9月23日 3件)の一部を、令和4年4月12日に新たに出願したものであって、同年12月26日にその特許権の設定登録(請求項の数21)がされ、令和5年1月10日に特許掲載公報が発行され、その後、同年7月5日に特許異議申立人伊東沙織(以下「申立人」という。)により、請求項1~4及び6~21に係る特許について特許異議の申立てがされたものである。
そして、令和5年9月28日付けで取消理由を通知したところ、同年11月29日に特許権者より訂正請求書及び意見書が提出され、同年12月11日付けで申立人に対して訂正請求があった旨を通知し(特許法第120条の5第5項)、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人から意見書の提出はなかった。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和5年11月29日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、当該訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、一群の請求項〔1~21〕について訂正することを求めるものであって、その内容は以下のとおりである(下線部は訂正箇所である。)。
(1)訂正事項1~3(請求項1についての訂正)
ア 訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、「マレイミド基を有する反応性化合物(1)を含み、更に、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を含む」とあるのを、「マレイミド基を有する反応性化合物(1)を含み、更に、前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を含む」
に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2、4~15、19及び20も同様に訂正する。)
イ 訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、「接着剤層を有する」とあるのを、「接着剤層を有し、前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)及び前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)からなる群より選択される少なくとも1つは、ダイマージアミンに由来する脂肪族基を有する」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2、4~15、19及び20も同様に訂正する。)
ウ 訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、「仮固定材。」とあるのを、「仮固定材(但し、難燃剤を含む仮固定材を除く。)。」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2、4~15、19及び20も同様に訂正する。)
(2)訂正事項4(請求項3についての訂正)
訂正前の特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(3)訂正事項5(請求項4についての訂正)
訂正前の特許請求の範囲の請求項4に、「請求項1、2、又は3記載の仮固定材」とあるのを、「請求項1又は2記載の仮固定材」に訂正する。
(請求項4の記載を引用する請求項5~15、19及び20も同様に訂正する。)
(4)訂正事項6(請求項7についての訂正)
訂正前の特許請求の範囲の請求項7に、「請求項1、2、3、4、5又は6記載の仮固定材」とあるのを、「請求項1、2、4、5又は6記載の仮固定材」に訂正する。
(請求項7の記載を引用する請求項8~15、19及び20も同様に訂正する。)
(5)訂正事項7(請求項8についての訂正)
訂正前の特許請求の範囲の請求項8に、「請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の仮固定材」とあるのを、「請求項1、2、4、5、6又は7記載の仮固定材」に訂正する。
(請求項8の記載を引用する請求項9~15、19及び20も同様に訂正する。)
(6)訂正事項8(請求項9についての訂正)
訂正前の特許請求の範囲の請求項9に、「請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の仮固定材」とあるのを、「請求項1、2、4、5、6、7又は8記載の仮固定材」に訂正する。
(請求項9の記載を引用する請求項10~15、19及び20も同様に訂正する。)
(7)訂正事項9(請求項10についての訂正)
訂正前の特許請求の範囲の請求項10に、「請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の仮固定材」とあるのを、「請求項1、2、4、5、6、7、8又は9記載の仮固定材」に訂正する。
(請求項10の記載を引用する請求項11~15、19及び20も同様に訂正する。)
(8)訂正事項10(請求項11についての訂正)
訂正前の特許請求の範囲の請求項11に、「請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載の仮固定材」とあるのを、「請求項1、2、4、5、6、7、8、9又は10記載の仮固定材」に訂正する。
(請求項11の記載を引用する請求項12~15、19及び20も同様に訂正する。)
(9)訂正事項11(請求項14についての訂正)
訂正前の特許請求の範囲の請求項14に、「請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は13記載の仮固定材」とあるのを、「請求項1、2、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は13記載の仮固定材」に訂正する。
(請求項14の記載を引用する請求項15、19及び20も同様に訂正する。)
(10)訂正事項12~14(請求項16についての訂正)
ア 訂正事項12
訂正前の特許請求の範囲の請求項16に、「マレイミド基を有する反応性化合物(1)を含み、更に、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を含み」とあるのを、「マレイミド基を有する反応性化合物(1)を含み、更に、前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を含み」に訂正する。
(請求項16の記載を引用する請求項17~21も同様に訂正する。)
イ 訂正事項13
訂正前の特許請求の範囲の請求項16に、「第1の接着剤層と、第2の接着剤層とを有する」とあるのを、「第1の接着剤層と、第2の接着剤層とを有し、前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)及び前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)からなる群より選択される少なくとも1つは、ダイマージアミンに由来する脂肪族基を有する」に訂正する。
(請求項16の記載を引用する請求項17~21も同様に訂正する。)
ウ 訂正事項14
訂正前の特許請求の範囲の請求項16に、「仮固定材。」とあるのを、「仮固定材(但し、難燃剤を含む仮固定材を除く。)。」に訂正する。
(請求項16の記載を引用する請求項17~21も同様に訂正する。)
(11)訂正事項15(請求項19についての訂正)
訂正前の特許請求の範囲の請求項19に、「請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17又は18記載の仮固定材」とあるのを、「請求項1、2、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17又は18記載の仮固定材」に訂正する。
(請求項19の記載を引用する請求項20も同様に訂正する。)
(12)訂正事項16(請求項20についての訂正)
訂正前の特許請求の範囲の請求項20に、「請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18又は19記載の仮固定材」とあるのを、「請求項1、2、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18又は19記載の仮固定材」に訂正する。
なお、訂正前の請求項1~15、19、20は、訂正される請求項1とそれに連動して訂正される請求項であり、また、訂正前の請求項16~21は、訂正される請求項16とそれに連動して訂正される請求項であるが、訂正前の請求項1~15、19、20と、訂正前の16~21とは、共通する請求項19、20を有しており互いに関連しているから、本件訂正は、一群の請求項である請求項1~21について請求されている。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1~3について(請求項1についての訂正)
ア 訂正事項1は、訂正前の請求項1において、「マレイミド基を有する反応性化合物(1)」と「イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)」とが、同じ化合物である場合を包含するのか否かが明瞭でなかったところ、「マレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)」と訂正し、それらが同じ化合物である場合がないことを明確にするものである。
また、願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の実施例で用いられた上記反応性化合物(1)と上記樹脂(2)(【0091】、【0093】、【0095】)は、互いに異なる構造を有しているから、訂正事項1は、新規事項を追加するものではない。
イ 訂正事項2は、訂正前の請求項1における「マレイミド基を有する反応性化合物(1)」と「イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)」について、訂正前の請求項3に記載されていた「前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)及び前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)からなる群より選択される少なくとも1つは、ダイマージアミンに由来する脂肪族基を有する」との事項を限定するものである。
また、訂正事項2は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項3の記載に基づくものであり、本件明細書の実施例で用いられた上記反応性化合物(1)と上記樹脂(2)(【0091】、【0093】、【0095】)は、いずれも、ダイマージアミンに由来する脂肪族基を有するものであるから、訂正事項2は、新規事項を追加するものではない。
ウ 訂正事項3は、訂正前の請求項1の「仮固定材」から、甲1に記載された「難燃剤を含む仮固定材」を除いて、「仮固定材」を限定するものである。
また、本件明細書の実施例における固定材は、難燃剤を含まないものであるから、訂正事項3は、新規事項を追加するものではない。
エ したがって、訂正事項1~3は、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、新規事項を追加するものでもない。
(2)訂正事項4~11、15、16について(請求項3、4、7~11、14、19、20についての訂正)
訂正事項4は、訂正前の請求項3を削除するものであり、また、訂正事項5~11、15、16は、請求項3を引用していた訂正前の請求項4、7~11、14、19、20において、訂正事項4により削除される請求項3を引用しないようにする訂正である。
したがって、訂正事項4~11、15、16は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、新規事項を追加するものでもない。
(3)訂正事項12~14について(請求項16についての訂正)
ア 訂正事項12は、訂正前の請求項16において、「マレイミド基を有する反応性化合物(1)」と「イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)」とが、同じ化合物である場合を包含するのか否かが明瞭でなかったところ、「マレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)」と訂正し、同じ化合物である場合がないことを明確にするものである。
また、本件明細書の実施例で用いられた上記反応性化合物(1)と上記樹脂(2)(【0091】、【0093】、【0095】)は、互いに異なる構造を有しているから、訂正事項12は、新規事項を追加するものではない。
イ 訂正事項13は、訂正前の請求項16における「マレイミド基を有する反応性化合物(1)」と「イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)」について、訂正前の請求項3に記載されていた「前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)及び前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)からなる群より選択される少なくとも1つは、ダイマージアミンに由来する脂肪族基を有する」との事項を限定するものである。
また、本件明細書の実施例で用いられた上記反応性化合物(1)と上記樹脂(2)(【0091】、【0093】、【0095】)は、いずれも、ダイマージアミンに由来する脂肪族基を有するものであるから、訂正事項13は、新規事項を追加するものではない。
ウ 訂正事項14は、訂正前の請求項16の「固定材」から、甲1に記載された「難燃剤を含む仮固定材」を除いて、「固定材」を限定するものである。
また、本件明細書の実施例における固定材は、難燃剤を含まないものであるから、訂正事項14は、新規事項を追加するものではない。
エ したがって、訂正事項12~14は、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、新規事項を追加するものでもない。
(4)本件訂正後の請求項5についての独立特許要件について
上記第1で述べたとおり、請求項1~4及び6~21に係る特許について特許異議の申立てがされ、請求項5に係る特許は特許異議申立ての対象ではないものの、訂正事項2及び3による請求項1についての訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから(上記(1)イ及びウ)、下記第3に示すとおり、請求項1を間接的に引用する請求項5も、同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正がされたこととなる。
そこで、請求項5に係る発明の独立特許要件について検討すると、請求項5に係る発明は、請求項1の記載を間接的に引用し更に特定するものであるところ、下記第5に説示するように、請求項1に係る発明には、特許を受けることができないとすべき理由があるとはいえないから、請求項1を更に特定した請求項5に係る発明についても、同様に、特許を受けることができないとすべき理由があるとはいえない。
また、その他に請求項5に係る発明が特許を受けることができないとすべき理由もない。
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項に規定する要件に適合する。
3 訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項~第7項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-21〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正が認められることから、本件特許の請求項1、2、4~21に係る発明は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、2、4~21に記載された次のとおりのものと認める(以下、請求項の番号に従い、「本件発明1」などという。)。
「【請求項1】
マレイミド基を有する反応性化合物(1)を含み、更に、前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を含む硬化性樹脂組成物からなる接着剤層を有し、前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)及び前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)からなる群より選択される少なくとも1つは、ダイマージアミンに由来する脂肪族基を有することを特徴とする仮固定材(但し、難燃剤を含む仮固定材を除く。)。
【請求項2】
前記硬化性樹脂組成物は、5%重量減少温度が350℃以上であることを特徴とする請求項1記載の仮固定材。
【請求項4】
前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)は、ビスマレイミド化合物(1-I)、又は、マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)であることを特徴とする請求項1又は2記載の仮固定材。
【請求項5】
前記ビスマレイミド化合物(1-I)は、2つのマレイミド基と、ダイマージアミンに由来する脂肪族基とを有する化合物であり、前記ダイマージアミンに由来する脂肪族基は、下記一般式(4-1)で表される基、下記一般式(4-2)で表される基、下記一般式(4-3)で表される基、及び、下記一般式(4-4)で表される基からなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項4記載の仮固定材。
【化1】
[図:0001411323000001.jpg]
一般式(4-1)~(4-4)中、R1~R8及びR13~R20はそれぞれ独立して、直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表す。
【請求項6】
前記マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)は、下記一般式(1a)で表される構成単位、下記一般式(1b)で表される構成単位、及び、下記一般式(1c)で表される構成単位を有し(ただし、s>0、t≧0、u≧0)、両末端がそれぞれX1及びX2で表される化合物(1-ii)であることを特徴とする請求項4記載の仮固定材。
【化2】
[図:0001411323000002.jpg]
一般式(1a)~(1c)中、P1、P2及びP3は、それぞれ独立して、芳香族基を表し、Q1は、置換又は非置換の直鎖状、分岐鎖状又は環状の脂肪族基を表し、Q2は、置換又は非置換の芳香族構造を有する基を表し、Rは、置換又は非置換の分岐鎖状の脂肪族基又は芳香族基を表す。X1、X2及びX3からなる群より選択される少なくとも1つは、マレイミド基含有基を表す。
【請求項7】
前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)は、重量平均分子量(Mw)が2万以上であることを特徴とする請求項1、2、4、5又は6記載の仮固定材。
【請求項8】
前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)と前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)との合計100重量部に占める前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)の含有量が、20重量部以上、80重量部以下であることを特徴とする請求項1、2、4、5、6又は7記載の仮固定材。
【請求項9】
前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)と前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)との合計100重量部に占める前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)の含有量が、20重量部以上、80重量部以下であることを特徴とする請求項1、2、4、5、6、7又は8記載の仮固定材。
【請求項10】
前記硬化性樹脂組成物は、更に、シリコーン化合物又はフッ素化合物を含むことを特徴とする請求項1、2、4、5、6、7、8又は9記載の仮固定材。
【請求項11】
前記硬化性樹脂組成物は、更に、無機充填剤を含むことを特徴とする請求項1、2、4、5、6、7、8、9又は10記載の仮固定材。
【請求項12】
前記無機充填剤の平均粒子径が5nm以上20μm以下であることを特徴とする請求項11記載の仮固定材。
【請求項13】
前記無機充填剤の含有量が、前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)と前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)との合計100重量部に対して1重量部以上、20重量部以下であることを特徴とする請求項11又は12記載の仮固定材。
【請求項14】
前記硬化性樹脂組成物は、更に、気体発生剤を含有することを特徴とする請求項1、2、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は13記載の仮固定材。
【請求項15】
前記気体発生剤は、TG-DTA(熱重量-示差熱分析)測定にて窒素雰囲気下で30℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱したときの300℃における重量減少率が5%以下であることを特徴とする請求項14記載の仮固定材。
【請求項16】
マレイミド基を有する反応性化合物(1)を含み、更に、前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を含み、更に、気体発生剤を含有する硬化性樹脂組成物からなる第1の接着剤層と、第2の接着剤層とを有し、前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)及び前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)からなる群より選択される少なくとも1つは、ダイマージアミンに由来する脂肪族基を有することを特徴とする仮固定材(但し、難燃剤を含む仮固定材を除く。)。
【請求項17】
前記第1の接着剤層は、硬化後のゲル分率が50重量%以上であることを特徴とする請求項16記載の仮固定材。
【請求項18】
更に、基材を有し、前記基材の両面にそれぞれ第1の接着剤層及び第2の接着剤層が積層されていることを特徴とする請求項16又は17記載の仮固定材。
【請求項19】
硬化後かつ300℃10分加熱後の25℃における対ガラス粘着力が1.5N/inch以下であることを特徴とする請求項1、2、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17又は18記載の仮固定材。
【請求項20】
請求項1、2、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18又は19記載の仮固定材に電子部品を仮固定する仮固定工程と、
前記仮固定材の接着剤層を硬化する硬化工程と、
前記電子部品に熱処理を行う熱処理工程と、
前記仮固定材から前記電子部品を剥離する剥離工程とを含む
ことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項21】
請求項16、17又は18記載の仮固定材を用いた電子部品の製造方法であって、
前記仮固定材の第1の接着剤層と支持体とを貼り付ける支持体貼付工程と、
前記仮固定材の第2の接着剤層と電子部品とを貼り付ける被着体貼付工程と、
前記第1の接着剤層及び前記第2の接着剤層を硬化する硬化工程と、
前記電子部品に熱処理を行う熱処理工程と、
前記第1の接着剤層から気体を発生させる気体発生工程と、
前記支持体と前記仮固定材とを剥離する剥離工程とを有する
ことを特徴とする電子部品の製造方法。」
第4 特許異議申立書に記載された申立理由及び取消理由通知書に記載した取消理由
1 申立理由の概要
申立人は、証拠方法として甲第1号証~甲第6号証(以下「甲1」などという。)を提出し、特許異議申立書において、概要、以下の申立理由を主張する。
なお、甲1~甲6は、いずれも、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である。
(1)申立理由1(新規性:特許法第113条第2号)
請求項1、3、4、11、12、20に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、それらの特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
請求項1、2、4、8、9に係る発明は、甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、それらの特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由2(進歩性:特許法第113条第2号)
請求項2、6~10、13~19、21に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2~6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それらの特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
請求項3、6、7、10~21に係る発明は、甲2に記載された発明及び甲1、3~6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それらの特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)申立理由3(明確性要件:特許法第113条第4号)
請求項1~4、6~21に係る発明は、明確ではないから、それらの特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。
(4)申立理由4(サポート要件:特許法第113条第4号)
請求項1~4、6~21に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、それらの特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。
(5)証拠方法
甲1:特開2013-199645号公報
甲2:国際公開第2015/182469号
甲3:特開2011-74245号公報
甲4:特開2013-194056号公報
甲5:特開2003-231872号公報
甲6:Progress in Polymer Science ,2017,Vol.69,p.1-21
http://dx.doi.org/10.1016/j.progpolymsci.2016.12.002
2 取消理由の概要
請求項1~4、6~21に係る特許に対して、取消理由通知書において通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)取消理由1(新規性:特許法第113条第2号)
請求項1~4、11、12、20に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、それらの特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
請求項1、2、4、8、9に係る発明は、甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、それらの特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものである
(2)取消理由2(進歩性:特許法第113条第2号)
請求項1~4、7~20に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2、5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それらの特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
請求項1、2、4、7~20に係る発明は、甲2に記載された発明及び甲3~5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それらの特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)取消理由3(明確性要件:特許法第113条第4号)
請求項1~4、6~21に係る発明は、明確ではないから、それらの特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。
(4)取消理由4(サポート要件:特許法第113条第4号)
請求項1~4、6~21に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、それらの特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。
第5 当審の判断
特許異議の申立ての対象は請求項1~4、6~21であるところ、本件訂正により請求項3は削除されたので、請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
したがって、以下においては、本件発明1、2、4、6~21について検討する。
1 取消理由1・2及び申立理由1・2(甲1を主引例とする新規性・進歩性)について
(1)甲1に記載された発明
甲1には、芳香族系ポリイミド樹脂を、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂と組み合わせることにより、半導体素子等の電子部品を搬送するための仮固定手段であるキャリアテープないしシートの接着剤としても汎用されているところ(【0001】)、「均質な有機溶剤の溶液(樹脂ワニス)として利用でき、無機基材および有機基材に対する初期接着性ならびに耐熱接着性に優れ、硬化物状態で低タックであり、かつ糊残りも少ない新規なポリイミド系接着剤組成物を提供すること」を主たる課題(【0010】)とした発明として、請求項1には、「芳香族テトラカルボン酸類(a1)およびダイマージアミンを30モル%以上含むジアミン類(a2)を反応させてなるポリイミド樹脂(A)、熱硬化性樹脂(B)、難燃剤(C)、ならびに有機溶剤(D)を含むポリイミド系接着剤組成物」が記載されている。
そして、実施例2に記載された接着剤組成物(【0073】【0074】【0077】【表2】)を用いて製造した、キャリアシートやキャリアテープとしての使用を想定している積層体(2)(【0083】)に着目すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「以下の組成からなるポリイミド系接着剤組成物を、シート基材に塗布し加熱(200℃、30分間)して得た接着シートの接着剤面に、電解銅箔の処理面を重ね合わせた後、加熱プレス(10MPa、200℃)して作製した、仮固定手段であるキャリアシート又はキャリアテープである積層体。
〔組成〕
・ポリイミド樹脂A-1
3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(「BTDA」ダイセル化学工業(株)製)とダイマージアミン(「PRIAMINE1075」クローダジャパン(株)製)をイミド化反応させたポリイミド樹脂:100g
・熱硬化性樹脂B
1,6’-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン(「BMI-TMH」大和化成工業(株)製):1.84g
・硬化促進剤
ジクミルパーオキサイド(「パークミルD」日油(株)製):0.02g
・難燃剤C
べーマイト(「セラシュールBMT-3LV」河合石灰工業(株)製):25.76g
フェノキシフォスファゼン誘導体(「ラビトルFP-300」(株)伏見製薬所製):10.00g
・有機溶剤D
シクロヘキサノン:42.36g
メタノール:8.59g」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「熱硬化性樹脂B:1,6’-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン(BMI-TMH)」及び「ポリイミド樹脂A-1:3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)とダイマージアミン(PRIAMINE1075)をイミド化反応させたポリイミド樹脂」は、それぞれ、本件発明1の「マレイミド基を有する反応性化合物(1)」及び「前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)」に相当し、更に、本件発明1の「前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)及び前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)からなる群より選択される少なくとも1つは、ダイマージアミンに由来する脂肪族基を有する」ものにも相当する。
また、甲1発明の「ポリイミド系接着剤組成物」は、シート基材に塗布し加熱させていることから、本件発明1の「硬化性樹脂組成物からなる接着剤層」を形成するものといえる。
さらに、甲1発明の「仮固定手段であるキャリアシート又はキャリアテープである積層体」は、本件発明1の「仮固定材」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「マレイミド基を有する反応性化合物(1)を含み、更に、前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を含む硬化性樹脂組成物からなる接着剤層を有し、前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)及び前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)からなる群より選択される少なくとも1つは、ダイマージアミンに由来する脂肪族基を有することを特徴とする仮固定材。」
<相違点1>
本件発明1は、「但し、難燃剤を含む仮固定材を除く。」と特定されているのに対し、甲1発明は、難燃剤を含む点。
イ 判断
(ア)新規性について
相違点1は、実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲1に記載された発明ではない。
(イ)進歩性について
a 甲1には、均質な有機溶剤の溶液(樹脂ワニス)として利用でき、無機基材及び有機基材に対する初期接着性並びに耐熱接着性に優れ、硬化物状態で低タックであり、かつ糊残りも少ない新規なポリイミド系接着剤組成物を提供することを主たる課題とする発明が開示され(【0010】)、当該課題を解決する手段として、「難燃剤(C)」を含むポリイミド系接着剤組成物が記載され(【0012】、請求項1)、実施例として具体的に調製された接着剤組成物は、いずれも「難燃剤(C)」を含むものが記載されている(【0077】【表2】)。
また、甲1には、難燃剤(C)の使用量について、「(C)成分の使用量は特に制限されないが、(A)成分または(A’)成分100重量部(固形分換算)に対して通常0~200重量部程度、好ましくは25~150重量部程度となる範囲である。」(【0051】)と記載されているが、この記載は、難燃剤(C)の含有量が「0重量部」である場合、すなわち難燃剤(C)を含まない場合を示唆するというより、0より多い量であれば少ない量で難燃剤(C)を含む場合が許容されていると理解するのが相当である。
そうすると、甲1の記載に接した当業者が、甲1発明から、積極的に難燃剤を除き、相違点1に係る本件発明1の構成を採用する動機付けがあるとはいえない。
b 甲2~5(特に実施例参照)には、デバイスの製造に用いられる仮固定用の接着剤において、難燃剤を含まない組成が記載されているものの、これらを考慮しても、甲1発明から、積極的に難燃剤を除く動機付けとなるものとまではいえない。
甲6には、硬化収縮の少ないビスマレイミドモノマーが記載されているだけであるから、甲6の記載を考慮しても、同様である。
c したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲2~6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明16について
ア 対比
上記(2)アの対比を踏まえて、本件発明16と甲1発明とを対比すると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「マレイミド基を有する反応性化合物(1)を含み、更に、前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を含む、第1の接着剤層と、第2の接着剤層とを有し、前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)及び前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)からなる群より選択される少なくとも1つは、ダイマージアミンに由来する脂肪族基を有することを特徴とする仮固定材。」
<相違点1’>
本件発明16は、「但し、難燃剤を含む仮固定材を除く。」と特定されているのに対し、甲1発明は、難燃剤を含む点。
<相違点2>
本件発明16は、第1の接着層に気体発生剤を含有し、更に第2の接着剤層を有するのに対し、甲1発明は、気体発生剤を含有せず、第2の接着剤層も有しない点。
イ 判断
相違点1’は、相違点1と実質的に同じであるから、相違点2について検討するまでもなく、上記(2)イ(イ)に説示したものと同様の理由により、本件発明16は、甲1に記載された発明及び甲2~6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明2、4、6~15、17~21について
本件発明2、4、6~15、17~19は、本件発明1又は16を更に特定した仮固定材の発明であり、また、本件発明20、21は、本件発明1、2、4~19のいずれかの仮固定材を用いて電子部品を製造する方法である。
したがって、本件発明2、4、6~15、17~21は、甲1発明とは、少なくとも相違点1又は1’において相違するから、上記(2)イ(ア)(イ)及び上記(3)イに説示したものと同様の理由により、本件発明2、4、11、12、20は、甲1に記載された発明ではなく、また、本件発明2、4、6~15、17~21は、甲1に記載された発明及び甲2~6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)小括
以上によれば、本件発明1、2、4、6~21に係る特許は、取消理由1・2及び申立理由1・2(甲1を主引例とする新規性・進歩性)によっては、取り消すことはできない。
2 取消理由1・2及び申立理由1・2(甲2を主引例とする新規性・進歩性)について
(1)甲2に記載された発明
甲2には、仮接着膜に関する発明が記載され(特許請求の範囲)、その実施例19の仮接着用組成物([0195][表1][0196][0198])と、それを用いた試験片の製造とその剥離性の試験([0182]~[0185][0192])に着目すると、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「以下の組成を有する仮接着用組成物からなる接着領域を有する、25℃から10℃/分で昇温したときの400℃質量減少率が0.4%であり、25℃のN-メチルピロリドンに対する溶解度が1g/100gSolvent未満である、仮接着膜。
〔組成〕
・溶剤可溶ポリイミド樹脂である、B-1成分Durimide 284(登録商標、富士フィルム製):37.5重量部
・架橋成分のビスマレイミド樹脂である、C-5成分BMI-5000(大和化成工業製):12.5重量部
・熱重合開始剤の有機過酸化物である、パークミルH(日油製、1分間半減期温度254℃):0.5重量部
・溶剤である、γ-ブチロラクトン:49.5重量部」
(2)本件発明1について
ア 対比
甲2発明の「架橋成分のビスマレイミド樹脂である、C-5成分BMI-5000(大和化成工業製)」、「溶剤可溶ポリイミド樹脂である、B-1成分Durimide 284(登録商標、富士フィルム製)」は、それぞれ、本件発明1の「マレイミド基を有する反応性化合物(1)」、「マレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)」に相当する。
甲2発明には、難燃剤は含まれていないから、甲2発明の「仮接着膜」は、本件発明1の「仮固定材(但し、難燃剤を含む仮固定材を除く。)」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「マレイミド基を有する反応性化合物(1)を含み、更に、前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を含む硬化性樹脂組成物からなる接着剤層を有することを特徴とする仮固定材(但し、難燃剤を含む仮固定材を除く。)。」
<相違点3>
本件発明1は、「前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)及び前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)からなる群より選択される少なくとも1つは、ダイマージアミンに由来する脂肪族基を有する」ことが特定されているのに対し、甲2発明においては、ダイマージアミンに由来する脂肪族基を有する成分を用いていない点。
イ 判断
(ア)新規性について
相違点3は、実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲2に記載された発明ではない。
(イ)進歩性について
a 甲2には、「デバイスウエハに機械的または化学的な処理を施す際に、デバイスウエハを安定して仮接着できるとともに、デバイスウエハに対する仮接着を容易に解除でき、かつ、耐薬性に優れた仮接着膜」を提供することを課題とし([0012])、当該課題の解決手段が、「25℃から10℃/分で昇温したときの400℃における質量減少率が1質量%以下であり、25℃のN-メチルピロリドンに対する溶解度が1g/100gSolvent以下である接着領域と、接着領域の表面上の離型領域とを有する仮接着膜」とすることであると記載されているが([0013])、上記接着領域に含有されるポリイミド樹脂又はマレイミド樹脂として、「ダイマージアミンに由来する脂肪族基を有する」成分は例示されていない([0022]~[0033]、[0043]~[0048])。
そうすると、甲2の記載に接した当業者が、甲2発明の「溶剤可溶ポリイミド樹脂である、B-1成分Durimide 284(登録商標、富士フィルム製)」又は「架橋成分のビスマレイミド樹脂である、C-5成分BMI-5000(大和化成工業製)」を、「ダイマージアミンに由来する脂肪族基を有する」成分とする動機付けはない。
b 甲1には、「均質な有機溶剤の溶液(樹脂ワニス)として利用でき、無機基材および有機基材に対する初期接着性ならびに耐熱接着性に優れ、硬化物状態で低タックであり、かつ糊残りも少ない新規なポリイミド系接着剤組成物を提供すること」を主たる課題とし(【0010】)、「ジアミン成分として所定量のダイマージアミンを用いたポリイミド樹脂を用いることによって前記課題を解決可能な接着剤組成物が得られることを見出した。」(【0011】)と記載され、具体的な接着剤組成物として、「芳香族テトラカルボン酸類(a1)およびダイマージアミンを30モル%以上含むジアミン類(a2)を反応させてなるポリイミド樹脂(A)、熱硬化性樹脂(B)、難燃剤(C)、ならびに有機溶剤(D)を含むポリイミド系接着剤組成物、ならびに、芳香族テトラカルボン酸類(a1)およびダイマージアミンを30モル%以上含むジアミン類(a2)を反応させてなるポリイミド樹脂(A)を更に(a2)成分で鎖伸長してなるポリイミド樹脂(A’)、熱硬化性樹脂(B)、難燃剤(C)、ならびに有機溶剤(D)を含むポリイミド系接着剤組成物」が記載されている(【0012】)。
甲1に記載されたポリイミド系接着剤組成物は、電子部品を搬送するための仮固定手段であるキャリアテープなどとして使用されるものであり(【0014】【0001】)、甲2発明に係る仮接着膜と、同じ技術分野に属するものではあるが、甲1に記載されたダイマージアミンを用いたポリイミド樹脂を使用した場合においても、甲2における課題解決手段である「25℃から10℃/分で昇温したときの400℃における質量減少率が1質量%以下であり、25℃のN-メチルピロリドンに対する溶解度が1g/100gSolvent以下である接着領域」を形成できるかは、当業者において明らかとはいえない。
そうすると、甲1の上記記載を考慮しても、甲2発明において、「溶剤可溶ポリイミド樹脂である、B-1成分Durimide 284(登録商標、富士フィルム製)」に代えて、ダイマージアミンを用いたポリイミド樹脂を用いる動機付けがあるとはいえない。
c 甲6には、熱安定性(熱分解温度(Td)>400℃)を有しつつ、低弾性率で、低熱硬化収縮である、以下の構造を有するビスマレイミド樹脂が記載され(9頁左欄「2.5」、Fig.17)、当該構造は、「ダイマージアミンに由来する脂肪族基を有する」ものである。
[図:0001411323000003.jpg]
しかしながら、甲6には、上記構造を有するビスマレイミド樹脂を、甲2発明の用途である仮接着膜に使用することは記載も示唆もされていないし、甲6に記載の上記ビスマレイミド樹脂を使用した場合にも、甲2における課題解決手段である「25℃から10℃/分で昇温したときの400℃における質量減少率が1質量%以下であり、25℃のN-メチルピロリドンに対する溶解度が1g/100gSolvent以下である接着領域」を形成できるかは、当業者において明らかとはいえない。
そうすると、甲6の上記記載を考慮しても、甲2発明において、「溶剤可溶ポリイミド樹脂である、B-1成分Durimide 284(登録商標、富士フィルム製)」に代えて、甲6に記載されたダイマージアミンを用いたポリイミド樹脂を用いる動機付けがあるとはいえない。
d 甲3~5には、「ダイマージアミンに由来する脂肪族基を有する」成分については、記載も示唆もされていない。
e したがって、本件発明1は、甲2に記載された発明及び甲1、3~6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。
(3)本件発明16について
ア 対比
上記(2)アの対比を踏まえて、本件発明16と甲2発明とを対比すると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「マレイミド基を有する反応性化合物(1)を含み、更に、前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を含む、第1の接着剤層を有することを特徴とする仮固定材(但し、難燃剤を含む仮固定材を除く。)。」
<相違点3’>
本件発明16は、「前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)及び前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)からなる群より選択される少なくとも1つは、ダイマージアミンに由来する脂肪族基を有する」ことが特定されているのに対し、甲2発明においては、ダイマージアミンに由来する脂肪族基を有する成分を用いていない点。
<相違点4>
本件発明16は、第1の接着層に気体発生剤を含有し、更に第2の接着剤層を有するのに対し、甲2発明は、気体発生剤を含有せず、第2の接着剤層も有しない点。
イ 判断
相違点3’は、相違点3と実質的に同じであるから、相違点4について検討するまでもなく、上記(2)イ(イ)に説示したものと同様の理由により、甲16発明は、甲2に記載された発明及び甲1、3~6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明2、4、6~15、17~21について
本件発明2、4、6~15、17~19は、本件発明1又は16を更に特定した仮固定材の発明であり、また、本件発明20、21は、本件発明1、2、4~19のいずれかの仮固定材を用いて電子部品を製造する方法である。
したがって、本件発明2、4、6~15、17~21は、甲2発明とは、少なくとも相違点3又は3’において相違するから、上記(2)イ(ア)(イ)及び上記(3)イに説示したものと同様の理由により、本件発明2、4、8、9は、甲2に記載された発明ではなく、また、本件発明2、4、6~15、17~21は、甲2に記載された発明及び甲1、3~6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)小括
以上によれば、本件発明1、2、4、6~21に係る特許は、取消理由1・2及び申立理由1・2(甲2を主引例とする新規性・進歩性)によっては、取り消すことはできない。
3 取消理由3及び申立理由3(明確性要件)について
取消理由3の概要は、訂正前の請求項1~4、6~21の記載は、「マレイミド基を有する反応性化合物(1)」と「イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)」とが、別の構造を有する成分であることが明らかではないから、訂正前の請求項1~4、6~21に係る発明は明確ではないというものであり、申立理由3も同旨である。
本件訂正により、上記樹脂(2)が、「前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)」と訂正されたことにより、「マレイミド基を有する反応性化合物(1)」と「イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)」とが、別の構造を有する成分であることが明らかとなり、本件発明1、2、4、6~21は、明確となった。
以上によれば、本件発明1、2、4、6~21に係る特許は、取消理由3及び申立理由3(明確性)によっては、取り消すことはできない。
4 取消理由4及び申立理由4(サポート要件)について
(1)本件発明1、2、4、6~21の課題
本件発明1、2、4、6~21の課題は、「被着体と支持体とを固定した状態で300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても支持体との間のボイド及び浮きの発生を抑えることができ、高温加工処理を経た後には容易に剥離できる硬化性樹脂組成物を提供すること、及び、該硬化性樹脂組成物からなる接着剤層を有する仮固定材、及び、該仮固定材を用いた電子部品の製造方法を提供すること」であると認められる(【0006】)。
(2)判断
ア 発明の詳細な説明には、「上記マレイミド基を有する反応性化合物(1)を含むことにより、本発明の硬化性樹脂組成物は、加熱又は光の照射によりその全体が均一にかつ速やかに重合架橋し、弾性率が上昇することにより粘着力が大きく低下するため、被着体に対して接着亢進を起こしたり、被着体との剥離時に糊残りが発生したりするのを防止することができる。
また、上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)は、イミド骨格を有することによって極めて耐熱性に優れ、300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても主鎖の分解が起こりにくい。このため、上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を含むことにより、本発明の硬化性樹脂組成物は、高温加工処理中は支持体との間のボイド及び浮きの発生を抑えることができ、また、被着体に対して接着亢進を起こしたり、被着体との剥離時に糊残りが発生したりするのを防止することができる。」(【0009】)と記載され、「マレイミド基を有する反応性化合物(1)」と「イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)」とは、それぞれ異なる役割を有することが記載されている。
さらに、「マレイミド基を有する反応性化合物(1)」には、「ビスマレイミド化合物(1-I)」と「マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)」とが含まれ得るところ、上記化合物(1-II)は、「イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する」点で、上記樹脂(2)と共通の骨格を有するものであるが、上記化合物(1-II)は重量平均分子量が1000以上2万未満であり(【0019】)、樹脂(2)は重量平均分子量が2万以上でマレイミド基を有さないものであること(【0040】【0041】)が好ましいと記載されている。
そして、実施例1~19において、ビスマレイミド化合物(1-I)として【0091】の式(A)、上記化合物(1-II)として【0093】の重量平均分子量が5000の式(B)、上記樹脂(2)として【0095】の重量平均分子量が72000で、マレイミド基を有しない式(C)を用いた仮固定材とすることにより、上記発明の課題が解決できたことが記載されている(【0113】~【0115】の【表1】~【表3】)。
<式(A)>
[図:0001411323000004.jpg]
<式(B)>
[図:0001411323000005.jpg]
<式(C)>
[図:0001411323000006.jpg]
イ 発明の詳細な説明の上記アの記載によれば、「マレイミド基を有する反応性化合物(1)」のマレイミド基により硬化性樹脂組成物の全体が均一にかつ速やかに重合架橋すること、及び、「マレイミド基を有する反応性化合物(1)以外の構造であるイミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)」のイミド骨格の優れた耐熱性により、これらの成分を含有する本件発明1、2、4、6~21により、上記発明の課題が解決できることを、当業者であれば認識できる。
したがって、本件発明1、2、4、6~21は、上記発明の課題が解決できることを当業者が認識できるものであり、発明の詳細な説明に記載された発明である。
(3)申立人の主張について
申立人は、発明の詳細な説明の比較例1及び2で用いられた「化合物(1-II)」は、訂正前の請求項1の「マレイミド基を有する反応性化合物(1)」と「イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)」のいずれにも該当し、訂正前の請求項1の要件を充足するにもかかわらず、発明の課題を解決できないことが示されているため、請求項1により特定された発明の範囲まで、発明の詳細な説明に記載された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、訂正前の請求項1、2、4、6~21は、発明の詳細な説明に記載されたものではない旨を主張する(特許異議申立書35頁)。
しかしながら、本件訂正後の本件発明1、2、4、6~21においては、上記反応性化合物(1)と上記樹脂(2)とは、異なる構造のものであることが特定されており、発明の詳細な説明の比較例1及び2は、本件発明1、2、4、6~21の構成を備えるものではない。そして、上記(2)に説示したように、本件発明1、2、4、6~21は、その課題が解決できることを当業者が認識できるものであり、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(4)小括
以上によれば、本件発明1、2、4、6~21に係る特許は、取消理由4及び申立理由4(サポート要件)によっては、取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、請求項1、2、4、6~21に係る特許は、特許異議申立書に記載された申立理由及び取消理由通知書に記載した取消理由によっては、取り消すことはできない。
また、その他に、請求項1、2、4、6~21に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項3に係る特許についての特許異議の申立ては、本件訂正により請求項3が削除され、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700691