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特許異議申立

2023-700675

接合基板

審判番号
2023-700675
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-505452
登録番号
7197677
請求日
2023年06月27日
審決日
2023年09月13日
公報発行日
2023年10月27日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】日本碍子株式会社
  • 【権利者代理人】吉竹 英俊
  • 【権利者代理人】有田 貴弘
  • 【権利者代理人】中尾 和樹
  • 【権利者代理人】喜多 弘行
  • 【異議申立人】関 豊美子
審判長/審判官
  • 審判長 篠原 功一
  • 審判官 山田 正文
  • 審判官 岩田 淳
分類
P1651.121-Y (H05K) / P1651.537-Y (H05K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7197677号発明「接合基板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7197677号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7197677号の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、2019年(平成31年)3月14日を国際出願日とするものであって、令和4年12月19日にその特許権が設定登録され、令和4年12月27日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和5年6月27日に特許異議申立人関豊美子(以下、「申立人」という。)により、請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 特許第7197677号の請求項1ないし3の特許に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明3」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 窒化ケイ素セラミックス基板と、 前記窒化ケイ素セラミックス基板上に配置される銅板と、 前記窒化ケイ素セラミックス基板上に配置され、前記銅板を前記窒化ケイ素セラミックス基板に接合する接合層と、 を備え、 前記接合層が、 前記窒化ケイ素セラミックス基板と前記銅板との間にある板間部と、 前記窒化ケイ素セラミックス基板と前記銅板との間からはみ出すはみ出し部と、 を備え、 前記接合層は、前記はみ出し部が備わる箇所において前記窒化ケイ素セラミックス基板が露出しないように前記窒化ケイ素セラミックス基板を覆い、 前記接合層の上面は、0.7μm以下の算術平均粗さRaを有し、5μm以下の最大高さRzを有する 接合基板。 【請求項2】 前記はみ出し部は、銀及び銅を含まない 請求項1の接合基板。 【請求項3】 前記はみ出し部は、前記窒化ケイ素セラミックス基板が露出する孔を有しない、 請求項1または請求項2の接合基板。」 第3 特許異議申立理由の概要 申立人の特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。 1 申立理由1 特許法第29条第2項(進歩性)について 本件請求項1ないし3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証に記載された発明を適用することで、当業者が容易に発明することができたものである。 また、本件請求項1ないし3に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に甲第1号証に記載された発明を適用すること、または、甲第2号証に記載された発明に甲第3ないし5号証に記載された事項を適用することで、当業者が容易に発明することができたものである。 よって、請求項1ないし3に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 2 申立理由2 特許法第36条第6項第2号(明確性)について 請求項1ないし3に係る発明は、明確でない。 よって、請求項1ないし3に係る発明の特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 3 申立理由3 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について 請求項1ないし3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 よって、請求項1ないし3に係る発明の特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 [証拠] 甲第1号証:特表2018-506496号公報 甲第2号証:特開平10-190176号公報 甲第3号証:「小特集・金属と非金属の接合-その接合機構を中心として- セラミックスと金属との接合機構」、高塩治男、日本金属学会会報、第24巻第2号、1985年、第113ないし120頁 甲第4号証:特開2018-107126号公報 甲第5号証:特開2017-35805号公報 第4 甲各号証の記載 1 甲第1号証について ア 記載事項 甲第1号証には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。 「【0001】 本発明は、パワー半導体が実装される基板に関し、特に、ろう材を用いて銅板がセラミックス基板に接合される接合基板に関する。」 「【0023】 <接合基板の概要> 図1は、本発明の実施の形態に係る接合基板10(10A、10B)の断面構成を模式的に示す図である。接合基板10は、例えばスイッチング素子、IGBT、MOSFETなどの図示しないパワー半導体を含むパワー半導体モジュールにおいて、該パワー半導体が実装される基板である。 【0024】 接合基板10は、概略、セラミックス基板1の一方主面に接合層2を介して銅板3が接合された構成を有する。係る接合基板10は、セラミックス基板1の一方主面上に少なくともAg、Tiを含むペースト状のろう材を塗布した後、該ろう材の塗布面に銅板3を重ね合わせ、真空下もしくはAr雰囲気下で加熱および加圧することによって(真空下もしくはAr雰囲気下での加熱加圧接合によって)得られる。換言すれば、接合基板10は、接合層2が相異なる界面においてセラミックス基板1と銅板3との双方に隣接する構成を有する。図1においては、セラミックス基板1と接合層2とが界面I1をなし、接合層2と銅板3とが界面I2をなすものとしている。 【0025】 セラミックス基板1としては、窒化珪素(Si3N4)基板や窒化アルミニウム(AlN)基板などの窒化物セラミックス基板が例示される。本発明を実現するうえにおいては、セラミックス基板1の平面形状やサイズに特段の制限はないが、パワー半導体モジュールの小型化を図るという観点からは、一辺が20mm~70mm程度で厚みが0.1mm~1.0mmの平面視矩形状のセラミックス基板1が例示される。 【0026】 銅板3は、セラミックス基板1の平面サイズと同じ平面サイズを有していてもよく、あるいは、セラミックス基板1よりもわずかに小さい平面サイズを有していてもよい。図1に示す構成は、前者の場合に相当する。後者の場合、セラミックス基板1の外縁部は銅板3が接合されずに露出することになる。一方、厚みについては、パワー半導体モジュールの小型化を図るという観点からは、0.5mm~2.0mm程度であることが好ましい。 【0027】 より詳細には、パワー半導体は接合基板10を構成する銅板3の非接合面(接合層2が存在する側とは反対側の主面)上に実装される。係る場合において、銅板3はそれ自体に電気回路パターンが形成されてなる回路基板として用意され、該電気回路パターン上にパワー半導体が実装される態様であってよい。ただし、以降の説明においては、このような電気回路パターンが形成されてなる回路基板も含め、単に銅板3と総称する。 【0028】 接合層2は、TiNを主成分とする層である。係る接合層2は、上述した加熱加圧接合の過程において、ろう材中に活性金属として含まれるTiと、セラミックス基板1を構成するNとから生成される。接合層2は、概ねサブミクロンオーダーから数μm程度の厚みを有して形成されるが、セラミックス基板1と銅板3の表面凹凸に比して厚みが小さい等の理由から必ずしも一様な厚みに形成されるものではなく、場所によるばらつき(層内ばらつき)があってもよい。」 「【0034】 加えて、図1の概略図においては省略しているが、接合基板10においては、図2および図3においてドットにて模式的に示すように、銅板3内の、少なくとも接合層2との界面I2近傍に、Ag原子が分布している。Ag原子は、界面I2から遠くなるほど(銅板3の非接合面に近づくほど)濃度が小さくなる態様にて分布している。なお、図2および図3においては、Ag原子の存在比率が大きい領域ほどドットが密であるように表している。 【0035】 セラミックス基板1と銅板3とをろう材を用いて接合するという接合基板10の作製過程と、銅板3におけるAg原子の分布態様とを鑑みれば、銅板3内に存在するAg原子は、そもそもはろう材に含有されていたものが、加熱加圧接合の過程において固体状態の銅板3へと拡散した(固溶した)ものに他ならない。」 「【0048】 係る接合基板10についてさらにいえば、接合基板10を構成するセラミックス基板1および銅板3の表面には通常、微細な凹凸がランダムに存在することから、ろう材による接合の結果として両者と接合層2との間に形成される界面I1、I2も微視的にはランダムな凹凸を有するものとなっている。」 イ 記載された技術事項 上記摘記事項の記載より、甲第1号証には次の技術的事項が記載されているといえる。 (ア)段落【0024】の記載によれば、甲第1号証には、セラミックス基板1の一方主面に接合層2を介して銅板3が接合された構成を有する接合基板10が記載されている。そして、接合基板10は、セラミックス基板1の一方主面上に少なくともAg、Tiを含むペースト状のろう材を塗布した後、該ろう材の塗布面に銅板3を重ね合わせ、真空下もしくはAr雰囲気下で加熱および加圧することによって(真空下もしくはAr雰囲気下での加熱加圧接合によって)得られるものである。 してみると、接合基板10は、セラミックス基板1の一方主面上に少なくともAg、Tiを含むペースト状のろう材を塗布した後、該ろう材の塗布面に銅板3を重ね合わせ、真空下もしくはAr雰囲気下で加熱および加圧することによって(真空下もしくはAr雰囲気下での加熱加圧接合によって)得られる、セラミックス基板1の一方主面に接合層2を介して銅板3が接合された構成を有するものである。 (イ)段落【0025】の記載によれば、セラミックス基板は、窒化珪素(Si3N4)基板である。 (ウ)段落【0028】、【0035】の記載によれば、ろう材に含有されていたAgが、加熱加圧接合の過程において固体状態の銅板3へと拡散(固溶)し、接合層2は、ろう材中に活性金属として含まれるTiと、セラミックス基板1を構成するNとから生成される、TiNを主成分とする層であるといえる。 ウ 記載された発明 上記「イ(ア)ないし(ウ)」の記載事項を総合勘案すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「セラミックス基板の一方主面上に少なくともAg、Tiを含むペースト状のろう材を塗布した後、該ろう材の塗布面に銅板を重ね合わせ、真空下もしくはAr雰囲気下で加熱および加圧することによって(真空下もしくはAr雰囲気下での加熱加圧接合によって)得られる、セラミックス基板の一方主面に接合層を介して銅板が接合された構成を有する接合基板において、 セラミックス基板は、窒化珪素(Si3N4)基板であり、 ろう材に含有されていたAgが、加熱加圧接合の過程において固体状態の銅板へと拡散(固溶)し、接合層は、ろう材中に活性金属として含まれるTiと、セラミックス基板を構成するNとから生成される、TiNを主成分とする層である、 接合基板。」 2 甲第2号証について ア 記載事項 甲第2号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、高い信頼性、放熱性を要する電子部品のパワーモジュール等に使用される回路基板に関する。」 「【0010】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、回路基板の放熱性、絶縁耐圧を損なうことなく、セラミックス基板のクラックの発生を低減させ、信頼性の高いパワーモジュール用回路基板を提供することを目的とする。 【0011】 【課題を解決するための手段】本発明者らは上記目的を達成するため、セラミックス基板を用いた回路基板のろう材と銅板の位置関係について見直しを行い、ろう材が銅板の縁よりも少なくとも外にはみ出しているように接合する事により、クラックが大幅に減少することを見出し、本発明に到達した。」 「【0015】 【発明の実施の形態】本発明で使用されるセラミックス基板の材質に特に制限はないが、金属との熱膨張差の大きい窒化アルミニウム、又は窒化珪素の場合特にクラック低減効果が大きい。セラミックス基板は、良好な放熱性を示すためには、熱伝導率が80W/mK以上のものが適している。また、セラミックス基板の曲げ強さについては、回路基板の強さに影響を及ぼすため350MPa以上が好ましい。 【0016】セラミックス基板の厚みとしては、要求される回路基板の強さによって異なるが、通常、0.3mmから1.5mmのものが使われる。 【0017】本発明において、セラミックス基板に形成される金属回路もしくは金属回路と金属放熱板について説明すると、その材質は、銅、ニッケル、アルミニウム、モリブデン、タングステン等の純金属もしくは合金が用いられる。その金属回路又は金属放熱板の厚みは0.1~2.0mmが好ましい。」 「【0020】本発明に係る接合層はろう材ペーストを用いて形成されたものである。ここで使用されるろう材ペーストは、例えば金属回路又は金属放熱板の材質がCuである場合、AgもしくはCuもしくはAgとCuを含むろう材である。また基板が窒化アルミニウム、又は窒化珪素である場合、適宜Ti、Zr等からなる活性金属成分をろう材に添加することが出来る。」 「【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明に係る回路基板について、その断面を模式的に示したものである。 ・・・ 【符号の説明】 a:金属回路 b:金属回路接合層 c:セラミックス基板 d:金属放熱板接合層 e:金属放熱板 T:金属回路の厚み w:金属回路接合層のはみ出し幅 θ1、θ2、θ3:接合層とセラミックス基板との接触角 【図1】 [図:0001402816000001.jpg] 」 イ 記載された技術事項 上記摘記事項の記載より、甲第2号証には次の技術的事項が記載されているといえる。 (ア)段落【0011】の記載によれば、甲第2号証には、セラミックス基板を用いた回路基板において、ろう材が銅板の縁よりも少なくとも外にはみ出しているように接合した回路基板が記載されているといえる。また、図1より、回路基板は、金属放熱板、金属放熱板接合層、セラミックス基板、金属回路接合層、金属回路の順に積層され、金属回路接合層が金属回路の縁よりも外にはみ出して形成されていることが見てとれ、段落【0020】には「接合層はろう材ペーストを用いて形成されたものである」と記載されている。 してみると、金属回路接合層はろう材を用いて形成されたものであり、甲第2号証には、金属放熱板、金属放熱板接合層、セラミックス基板、ろう材を用いて形成された金属回路接合層、金属回路の順に積層され、金属回路接合層が金属回路の縁よりも外にはみ出して形成された回路基板が記載されているといえる。 (イ)段落【0015】の記載によれば、セラミックス基板の材質は窒化珪素である。 (ウ)段落【0011】の「銅板」なる記載と段落【0017】の記載によれば、金属回路と金属放熱板の材質は銅である。 (エ)段落【0020】の記載によれば、用いられるろう材ペーストは、金属回路の材質がCuである場合、AgもしくはCuもしくはAgとCuを含むろう材であり、セラミックス基板が窒化珪素である場合、適宜Ti、Zr等からなる活性金属成分をろう材に添加したものであるといえる。 ウ 記載された発明 上記「イ(ア)ないし(エ)」の記載事項を総合勘案すると、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 「金属放熱板、金属放熱板接合層、セラミックス基板、ろう材を用いて形成された金属回路接合層、金属回路の順に積層され、金属回路接合層が金属回路の縁よりも外にはみ出して形成された回路基板において、 セラミックス基板の材質は窒化珪素であり、 金属回路と金属放熱板の材質は銅であり、 用いられるろう材ペーストは、金属回路の材質がCuである場合、AgもしくはCuもしくはAgとCuを含むろう材であり、セラミックス基板が窒化珪素である場合、適宜Ti、Zr等からなる活性金属成分をろう材に添加したものである、 回路基板。」 3 甲第3号証について ア 記載事項 甲第3号証には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。 (ア)「1. 緒 言 セラミックスの応用においては,金属あるいはプラスチックスなど,異種材料との組合せによりデバイス,システムとして,それらの特長を生かしている場合が多い.その方が単独で使用する場合よりはるかに用途が拡大される. また,高耐熱性,高電気抵抗,高硬度といった優れた特性を持つセラミックスも,機械的,熱的衝撃に比較的弱いという欠点を持っている.これらの欠点をおぎなうものとして,セラミックスと金属との複合材料が研究開発されている.そのほか,応用分野によって導電性を必要とする部分が必要となるためセラミックスと金属との接合が要求される.」(第113頁左欄第1ないし13行) (イ)「(5) 非酸化物系セラミックスの接合 非酸化物系セラミックスと金属との接合も表1に示した方法,すなわち固相-気相系接合方法,固相-液相系接合方法,固相-固相系接合方法でおこなうことができる. 先ず,固相-液相系接合について説明する.遊離Siを含むようなSiCセラミックスは, このSiをうまく活用すれば金属的なものとして扱い接合することができる.例えば, Geをソルダーとして真空中1423~1473K(1150~1200℃)で加熱することにより接合できる.これはSiとGeの相互拡散による接合である(5). また, SiCセラミックス, Si3N4セラミックスの表面および表面近くのSiは,その多くがSiO2の状態で存在している.あるいはSiO2になるような処理をしてもよい.さらに,Al2O3 ,Y2O3などの酸化物添加物を比較的多く含むものについては,表面のSiO2あるいは添加物の酸化物をうまく活用すれば酸化物的なものとして扱い接合することができる.すなわち,酸化物ソルダー法,金属ソルダー法などで接合できる.例えばSi3N4セラミックスと金属との接合はZrOn-CaO(その他微量の添加物を含む),Al2O3-SiO2,Al2O3-MgOなどの酸化物ソルダーを用い,液相が生じる温度以上に加熱することにより接合することができる(6).これはセラミックス表面のSiO2と酸化物ソルダーとの拡散,反応による接合である.また、Ti-Ni,Ti-Cu,Ti-Ni-Agなどの金属ソルダーを用い,液相が生じる温度以上に加熱することにより接合することができる.これはセラミックス表面のSiO2またはSi3N4とTiとの拡散,反応による接合である. 固相-固相系接合については表2が参考になる.例としては, SiCセラミックスについて, SiC-Al,SiC-Al-Si,SiC-Ni,SiC-Mo,および他の炭化セラミックスについて, TiC-Mo,TaC-Mo,B4C-Moの組合わせは高温加熱法により界面部に反応層を形成し接合する. Si3N4セラミックスについて,Si3N4-Ti,Si3N4-Zr,Si3N4-Mo,Si3N4-W,Si3N4-Ta,Si3N4-Feの組合わせは高温加熱法により界面部に反応層を形成し接合する.そのほか, BNセラミックス,AlNセラミックスについては,BN-Mo,BN-W,BN-Ta,AlN-Taの組合わせは高温加熱法により界面部に反応層を形成し接合する. もちろん固相-気相系接合,例えばCVD法,イオンプレーティング法,スパッター法での接合も可能である.」 イ 記載された技術事項 上記摘記事項の記載より、甲第3号証には、次の技術(以下、「甲3記載の技術」という。)が記載されているといえる。 「Si3N4セラミックスと金属との接合はZrOn-CaO,Al2O3-SiO2,Al2O3-MgOなどの酸化物ソルダーを用い,液相が生じる温度以上に加熱することにより接合する」技術。 4 甲第4号証について ア 記載事項 甲第4号証には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。 「【0008】 従って、本発明の目的は、導電部をセラミックス基板に強固に接合できる導電性ペースト並びにこのペーストを用いて得られた電子基板及びその製造方法を提供することにある。 ・・・ 【0011】 すなわち、本発明の導電性ペーストは、焼成温度を超える融点を有する高融点金属粒子と、焼成温度で溶融し、かつ700℃以下の融点を有する溶融金属粒子と、活性金属を含む活性金属粒子と、有機ビヒクルとを含むとともに、焼成温度で溶融し、かつ400℃以下の融点を有する合金を含まない。前記溶融金属粒子は、Mg、Al、Zn、In、Sn、Bi、Pb及びSbから選択された少なくとも1種を含んでいてもよい。前記活性金属粒子において、活性金属は、Ti及び/又はZrであってもよい。前記活性金属粒子は、水素化チタン粒子、ホウ化チタン粒子及び水素化ジルコニウム粒子からなる群より選択された少なくとも1種であってもよい。前記高融点金属粒子は、Cu、Ag及びNiからなる群より選択された少なくとも1種の金属又はこの金属を含む合金で形成されていてもよい。前記高融点金属粒子と前記溶融金属粒子との質量割合は、高融点金属粒子/溶融金属粒子=90/10~40/60程度である。前記活性金属粒子の割合は、高融点金属粒子及び溶融金属粒子の合計100質量部に対して0.5~30質量部程度である。前記溶融金属粒子の中心粒径は0.01~30μmである。前記活性金属粒子の中心粒径は0.1~15μm程度である。前記高融点金属粒子の中心粒径は0.01~15μm程度である。」 イ 記載された技術事項 上記摘記事項の記載より、甲第4号証には、次の技術(以下、「甲4記載の技術」という。)が記載されているといえる。 「導電部をセラミックス基板に強固に接合できる導電性ペーストは、 焼成温度を超える融点を有する高融点金属粒子と、焼成温度で溶融し、かつ700℃以下の融点を有する溶融金属粒子と、活性金属を含む活性金属粒子と、有機ビヒクルとを含み、 前記溶融金属粒子は、Mg、Al、Zn、In、Sn、Bi、Pb及びSbから選択された少なくとも1種、 前記活性金属粒子において、活性金属は、Ti及び/又はZrであり、 前記高融点金属粒子は、Niとする」技術。 5 甲第5号証について ア 記載事項 甲第5号証には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。 「【0011】 そして、窒化珪素基板と導体層とを、チタン、ジルコニウム、バナジウム及び/又はアルミニウムの薄膜層の介在下でホットプレスやHIP(熱間等方圧加圧)等することで、製造された金属セラミック接合基板では、窒化珪素基板に含まれる窒素及び、導体層に含まれる銅のそれぞれが、上記の薄膜層側に拡散するとともに化合物となって接合層を形成することにより、比較的薄い接合層で、窒化珪素基板と導体層とが強固に接合されるとの知見を得た。」 イ 記載された技術事項 上記摘記事項の記載より、甲第5号証には、次の技術(以下、「甲5記載の技術」という。)が記載されているといえる。 「窒化珪素基板と導体層とを、チタン、ジルコニウム、バナジウム及び/又はアルミニウムの薄膜層の介在下でホットプレスやHIP(熱間等方圧加圧)等することで、金属セラミック接合基板を製造する」技術。 第5 当審の判断 1 申立理由1について ア 甲第1号証を主引用文献とした場合 (ア)本件発明1について a 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (a)甲1発明における「セラミックス基板」は、窒化珪素(Si3N4)基板であるから、本件発明1の「窒化ケイ素セラミックス基板」に相当する。 (b)甲1発明の「銅板」は、セラミックス基板の一方主面上に少なくともAg、Tiを含むペースト状のろう材を塗布した後、該ろう材の塗布面に重ね合わせ、真空下もしくはAr雰囲気下で加熱および加圧することによって(真空下もしくはAr雰囲気下での加熱加圧接合によって)得られるものであるから、本件発明1の「前記窒化ケイ素セラミックス基板上に配置される銅板」に相当する。 (c)甲1発明は「セラミックス基板の一方主面に接合層を介して銅板が接合された構成」を有するから、甲1発明の「接合層」がセラミックス基板上に配置され銅板とセラミックス基板とを接合しているのは明らかであり、本件発明1の「前記窒化ケイ素セラミックス基板上に配置され、前記銅板を前記窒化ケイ素セラミックス基板に接合する接合層」に相当する。 (d)甲1発明は「セラミックス基板の一方主面に接合層を介して銅板が接合された構成」を有するから、甲1発明の「接合層」がセラミックス基板と銅板との間にある部位を有することは明らかであり、甲1発明が当該部位を有することは、本件発明1の「前記接合層が、前記窒化ケイ素セラミックス基板と前記銅板との間にある板間部と」「を備え」ることに相当する。 (e)接合層が、本件発明1は「前記窒化ケイ素セラミックス基板と前記銅板との間からはみ出すはみ出し部と、を備え、」「前記はみ出し部が備わる箇所において前記窒化ケイ素セラミックス基板が露出しないように前記窒化ケイ素セラミック基板を覆」っているのに対して、甲1発明ははみ出し部を備えていない点で相違する。 (f)接合層について、本件発明1は「上面は、0.7μm以下の算術平均粗さRaを有し、5μm以下の最大高さRzを有する」のに対して、甲1発明はその旨特定されていない点で相違する。 (g)甲1発明の「接合基板」は、窒化珪素(Si3N4)基板であるセラミックス基板と銅板を備え、セラミックス基板の一方主面に接合層を介して銅板が接合された構成を有するから、本件発明1の「接合基板」に相当する。 (h)上記(a)ないし(g)より、本件発明1と甲1発明とは、 「窒化ケイ素セラミックス基板と、 前記窒化ケイ素セラミックス基板上に配置される銅板と、 前記窒化ケイ素セラミックス基板上に配置され、前記銅板を前記窒化ケイ素セラミックス基板に接合する接合層と、 を備え、 前記接合層が、 前記窒化ケイ素セラミックス基板と前記銅板との間にある板間部と、 を備える 接合基板。」 である点で一致し、次の点で相違する。 〈相違点1〉 接合層が、本件発明1は「前記窒化ケイ素セラミックス基板と前記銅板との間からはみ出すはみ出し部と、を備え、」「前記はみ出し部が備わる箇所において前記窒化ケイ素セラミックス基板が露出しないように前記窒化ケイ素セラミック基板を覆」っているのに対して、甲1発明ははみ出し部を備えていない点。 〈相違点2〉 接合層について、本件発明1は「上面は、0.7μm以下の算術平均粗さRaを有し、5μm以下の最大高さRzを有する」のに対して、甲1発明はその旨特定されていない点。 b 判断 事案に鑑み、相違点2について検討する。 甲第1号証の段落【0048】には、セラミックス基板1および銅板3の表面には通常、微細な凹凸がランダムに存在することから、ろう材による接合の結果として両者と接合層2との間に形成される界面I1、I2も微視的にはランダムな凹凸を有するものとなっていることは記載されているものの、甲第1号証、甲第2号証のいずれにも、接合層の上面の算術平均粗さRaや最大高さRzは記載も示唆もされておらず、甲第1号証及び甲第2号証には、接合層の上面を0.7μm以下の算術平均粗さRaを有し、5μm以下の最大高さRzを有するものとする動機付けとなる記載も示唆もない。 したがって、相違点2に係る構成を得ることは、甲1発明及び甲第2号証の記載に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。 そして、本件明細書段落【0024】、【0025】の記載を考慮すれば、本件発明1は接合層(はみ出し部)の上面を0.7μm以下の算術平均粗さRaを有し、5μm以下の最大高さRzを有するものとすることにより、電気絶縁性の低下の原因となる薬剤残渣が残りにくく、接合基板の電気絶縁性を向上することができるものである。 よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証に記載された発明を適用することで当業者が容易に発明することができたものではない。 (イ)本件発明2ないし3について 請求項2ないし3は、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項であり、本件発明2ないし3は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2ないし3は甲第1号証に記載された発明に甲第2号証に記載された発明を適用することで当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 甲第2号証を主引用文献とした場合 (ア)本件発明1について a 対比 本件発明1と甲2発明とを対比する。 (a)甲2発明における「セラミックス基板」は、材質が窒化珪素であるから、本件発明1の「窒化ケイ素セラミックス基板」に相当する。 (b)甲2発明は「金属放熱板、金属放熱板接合層、セラミックス基板、ろう材を用いて形成された金属回路接合層、金属回路の順に積層され」たものであるから、甲2発明の「金属回路」は金属回路接合層を介してセラミックス基板上に配置されているのは明らかである。そして、甲2発明の「金属回路」は、材質が銅である。してみると、甲2発明の「金属回路」は、本件発明1の「前記窒化ケイ素セラミックス基板上に配置される銅板」に相当する。 (c)上記(b)で検討したように、甲2発明は、金属回路は金属回路接合層を介してセラミックス基板上に配置されたものであるから、甲2発明の「金属回路接合層」がセラミックス基板上に配置され金属回路をセラミックス基板に接合することは明らかであり、本件発明1の「前記窒化ケイ素セラミックス基板上に配置され、前記銅板を前記窒化ケイ素セラミックス基板に接合する接合層」に相当する。 (d)上記(b)で検討したように、甲2発明は、金属回路は金属回路接合層を介してセラミックス基板上に配置されたものであるから、甲2発明の「金属回路接合層」がセラミックス基板と金属回路との間にある部分を有することは明らかである。また、甲2発明の「金属回路接合層」は金属回路の縁よりも外にはみ出して形成されたものであるから、甲2発明の「金属回路接合層」は、セラミックス基板と金属回路との間からはみ出す部分を有するといえる。 そして、甲2発明の「金属回路接合層」がセラミックス基板と金属回路との間にある部分を有することは、本件発明1の「前記接合層が、前記窒化ケイ素セラミックス基板と前記銅板との間にある板間部と」「を備え」ることに相当し、甲2発明の「金属回路接合層」がセラミックス基板と金属回路との間からはみ出す部分を有することは、本件発明1の「前記接合層が、前記窒化ケイ素セラミックス基板と前記銅板との間からはみ出すはみ出し部と、を備え」ることに相当する。 (e)上記(b)で検討したように、甲2発明は、金属回路は金属回路接合層を介してセラミックス基板上に配置されたものであるから、金属回路接合層はセラミックス基板が露出しないようにセラミックス基板を覆うものであり、金属回路接合層がセラミックス基板と金属回路との間からはみ出す部分でも、金属回路接合層はセラミックス基板が露出しないようにセラミックス基板を覆っている。 してみると、甲2発明の「金属回路接合層」は、本件発明1の「前記接合層は、前記はみ出し部が備わる箇所において前記窒化ケイ素セラミックス基板が露出しないように前記窒化ケイ素セラミック基板を覆」うことに相当する構成を有する。 (f)接合層について、本件発明1は「上面は、0.7μm以下の算術平均粗さRaを有し、5μm以下の最大高さRzを有する」のに対して、甲2発明はその旨特定されていない点で相違する。 (g)甲2発明の「回路基板」は、材質が窒化珪素であるセラミックス基板と材質が銅である金属回路を備え、セラミックス基板、ろう材を用いて形成された金属回路接合層、金属回路の順に積層されたものであるから、本件発明1の「接合基板」に相当する。 (h)上記(a)ないし(g)より、本件発明1と甲2発明とは、 「窒化ケイ素セラミックス基板と、 前記窒化ケイ素セラミックス基板上に配置される銅板と、 前記窒化ケイ素セラミックス基板上に配置され、前記銅板を前記窒化ケイ素セラミックス基板に接合する接合層と、 を備え、 前記接合層が、 前記窒化ケイ素セラミックス基板と前記銅板との間にある板間部と、 前記窒化ケイ素セラミックス基板と前記銅板との間からはみ出すはみ出し部と、 を備え、 前記接合層は、前記はみ出し部が備わる箇所において前記窒化ケイ素セラミックス基板が露出しないように前記窒化ケイ素セラミックス基板を覆う 接合基板。」 である点で一致し、次の点で相違する。 〈相違点3〉 接合層について、本件発明1は「上面は、0.7μm以下の算術平均粗さRaを有し、5μm以下の最大高さRzを有する」のに対して、甲2発明はその旨特定されていない点。 b 判断 相違点3について検討する。 相違点3に係る本件発明1の構成は、相違点2に係る本件発明1の構成と同一である。 したがって、上記「ア(ア)b」で検討したのと同様に、相違点3に係る構成を得ることは、甲2発明及び甲第1号証の記載に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。 また、甲3記載の技術、甲4記載の技術、甲5記載の技術のように、接合材料として銀及び銅を含まないものを用いることは周知技術であるものの、甲第3号証ないし甲第5号証のいずれにも、接合層の上面の算術平均粗さRaや最大高さRzは記載も示唆もされておらず、甲第3号証ないし甲第5号証には、接合層の上面を0.7μm以下の算術平均粗さRaを有し、5μm以下の最大高さRzを有するものとする動機付けとなる記載も示唆もない。 したがって、相違点3に係る構成を得ることは、甲2発明及び甲第3ないし5号証の記載に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。 よって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明に甲第1号証に記載された発明を適用することで当業者が容易に発明することができたものではない。また、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明に甲第3ないし5号証に記載された発明を適用することで当業者が容易に発明することができたものではない。 (イ)本件発明2ないし3について 請求項2ないし3は、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項であり、本件発明2ないし3は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2ないし3は甲第2号証に記載された発明に甲第1号証に記載された発明を適用することで当業者が容易に発明をすることができたものではない。また、本件発明2ないし3は、甲第2号証に記載された発明に甲第3ないし5号証に記載された発明を適用することで当業者が容易に発明することができたものではない。 ウ 特許異議申立書における申立人の主張について 申立人は、特許異議申立書において、甲第1号証の記載より、甲1発明(甲第1号証に記載された発明)の接合層も銀及び銅を含まないことが分かり、銀及び銅を含まない接合層がエッチングされても、その平坦性は損なわれないと解され、相違点1f(上記相違点2(相違点3))に係る特性(構成)は、甲2発明(甲第2号証に記載された発明)の接合層のはみ出し部を、甲1発明の接合層に適用した結果得られる構成に過ぎない旨主張している。(第29頁下から5ないし1行目) しかしながら、セラミックス基板の一方主面上に設けられる接合層上面の算術平均粗さRa及び最大高さRzは、接合層の組成のみならず、セラミックス基板主面の状態や接合層の製法により変化することは明らかであり、甲1発明の接合層が銀及び銅を含まないことのみから、当該接合層の上面が0.7μm以下の算術平均粗さRaを有し、5μm以下の最大高さRzを有するとはいえない。 よって、申立人の主張は採用できない。 エ 小括 したがって、本件請求項1ないし3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証に記載された発明を適用することで、当業者が容易に発明することができたものではなく、請求項1ないし3に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 また、本件請求項1ないし3に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に甲第1号証に記載された発明を適用すること、または、甲第2号証に記載された発明に甲第3ないし5号証に記載された事項を適用することで、当業者が容易に発明することができたものではなく、請求項1ないし3に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 2 申立理由2について 申立人は、特許異議申立書において概略以下のように主張している。 本件発明1には、「前記接合層の上面は、0.7μm以下の算術平均粗さRaを有し、5μm以下の最大高さRzを有する」ことが規定されている。 この「接合層の上面」は、本件特許明細書の【0024】、【0047】-【0048】、【0051】などの記載を踏まえると、「接合層におけるはみ出し部の上面」を意味すると解される。 一方、本件発明1では、具体的に接合層のどの部分が、0.7μm以下の算術平均粗さRaを有し、5μm以下の最大高さRzを有するか特定されていないため、本件発明1は明確でない。(第34頁下から2行ないし第35頁第6行) しかしながら、申立人も認めるように、本件特許明細書の段落【0024】の「はみ出し部121の上面121U及びはみ出し部123の上面123Uは、望ましくは0.7μm以下の算術平均粗さRaを有し、5μm以下の最大高さRzを有する。」、段落【0048】の「また、作製した接合基板100のはみ出し部121の上面121U及び窒化ケイ素セラミックス基板110の主面1101の表面粗さを評価した。」との記載を考慮すれば、本件発明1の「前記接合層の上面は、0.7μm以下の算術平均粗さRaを有し、5μm以下の最大高さRzを有する」との構成の「接合面の上面」とは、接合層のはみ出し部の上面であることは明らかである。 よって、請求項1ないし3に係る発明は明確であり、申立人の意見は採用できない。 3 申立理由3について 申立人は、特許異議申立書において概略以下のように主張している。 本件特許明細書の段落【0026】、【0032】、【0034】、【0036】、【0037】、【0044】などの記載によれば、本件特許発明に係る接合基板の接合層は、ろう材に含有される銀が銅板に拡散して得られるものである。 ここで、甲第3号証、甲第4号証、及び甲第5号証などに記載されたように、銀及び銅を含まないペーストや箔をセラミックス基板との接合に用いることは、周知の技術である。 一方で、本件発明1では、接合層が銀を含んだろう材から作製される点について、何ら特定されていない。このため、本件発明1は、銀や銅を含まないろう材から作製された接合層を備える接合基板を包含するものである。 しかしながら、本件特許明細書には、銀を含まないろう材を用いることについて、何ら記載されていない。 このため、本件発明1-3は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではない。(第35頁第8ないし20行) 上記主張について検討する。 本件特許明細書の段落【0008】の記載によれば、本件発明が解決しようとする課題は、銅板の端部への応力の集中に起因する接合基板の不良を抑制しながら、隣接する銅板の間の電気絶縁性を向上することができる接合基板を提供することである。 そして、本件特許明細書の段落【0021】の「接合層112は、板間部120及びはみ出し部121を備える。・・・接合基板100においては、銅板111及び113の端部への応力の集中が、それぞれはみ出し部121及び123により緩和される。これにより、銅板111及び113の端部への応力の集中に起因する接合基板100の不良を抑制することができる。」、段落【0024】の「はみ出し部121の上面121U及びはみ出し部123の上面123Uは、望ましくは0.7μm以下の算術平均粗さRaを有し、5μm以下の最大高さRzを有する。」、段落【0025】の「はみ出し部121及び123は、このように高い平坦性を有する。このため、はみ出し部121及び123上には、電気絶縁性の低下の原因となる薬液残渣が残りにくい。これにより、接合基板100の電気絶縁性を向上することができる。」との記載によれば、発明の詳細な説明には、接合層がセラミックス基板と銅板との間からはみ出すはみ出し部を備え、前記接合層のはみ出し部の上面は、0.7μm以下の算術平均粗さRaを有し、5μm以下の最大高さRzを有することにより、銅板の端部への応力の集中が緩和されると共に電気絶縁性を向上することができることが記載されている。 してみると、接合層が銀を含んだろう材から作製されるか否かに関わらず、接合層がセラミックス基板と銅板との間からはみ出すはみ出し部を備え、前記接合層のはみ出し部の上面は、0.7μm以下の算術平均粗さRaを有し、5μm以下の最大高さRzを有することにより、本件発明が解決しようとする課題を解決することができると、当業者は認識することができるものと認められる。 したがって、請求項1ないし3に係る発明は、発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものではなく、申立人の意見は採用できない。 第6 むすび 以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700675

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