特許異議申立
2023-700657
網状構造体の製造方法
- 審判番号
- 2023-700657
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-545478
- 登録番号
- 7218499
- 請求日
- 2023年06月21日
- 審決日
- 2023年10月24日
- 公報発行日
- 2023年11月24日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】東洋紡エムシー株式会社
- 【異議申立人】永井 睦男
- 審判長/審判官
- 審判長 久保 克彦
- 審判官 金丸 治之
- 審判官 藤原 直欣
- 分類
- P1651.113-Y (D04H) / P1651.121-Y (D04H) / P1651.537-Y (D04H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7218499号発明「網状構造体の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7218499号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7218499号の請求項1に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)10月14日(優先権主張 平成27年10月16日)を国際出願日とする出願であって、令和5年1月30日にその特許権の設定登録がされ、同年2月7日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和5年6月21日に特許異議申立人永井睦男(以下、「申立人」という。)は、その請求項1に対して本件特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
特許第7218499号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、本件特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
ポリエステル系熱可塑性エラストマーからなる繊維径が0.1mm以上3.0mm以下の連続線状体で構成された三次元ランダムループ接合構造を有する網状構造体の製造方法であって、
下記(1)で示されるQ/Nが、3以上200以下であり、下記(2)で示されるV/Qが、1以上30以下であり、見かけ密度が0.005g/cm3以上0.20g/cm3以下であり、酸価が32meq/kg以下である網状構造体の製造方法。
(1)吐出あたりのせん断量(Q/N、単位:cm3/rev)
Q:樹脂が、ノズルから出される1分間あたりの吐出量(cm3/min)
N:Qを出すためのスクリュー回転数(rev/min)
(2)配管内通過時間(V/Q、単位:min)
V:エクストルーダーにより溶融、押し出された樹脂がエクストルーダーを出た後、配管を経由しノズルから吐出されるまでの全容積(cm3)
Q:樹脂が、ノズルから出される1分間あたりの吐出量(cm3/min)」
第3 申立理由の概要
申立人が提出した特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである(記載要件についての申立理由から記載する)。
1 申立理由1(サポート要件)
本件特許の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、本件特許の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないため、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第1号証を主たる引用例とする新規性・進歩性)
以下の理由から、本件特許の請求項1に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものである。
また、本件特許の請求項1に係る発明は、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
3 証拠方法
甲第1号証:特開2013-91862号公報
以下、甲第1号証を「甲1」という。
第4 甲1の記載事項と甲1に記載された発明
1 甲1の記載事項
甲1には、次の記載がある。
「【0009】
本発明の網状構造体は、100~100000デシテックスの連続線状体を曲がりくねらせランダムループを形成し、夫々のループを互いに溶融状態で接触せしめて、接触部の大部分を融着させてなる三次元ランダムループ接合構造を備える網状構造体であって、該連続線状体が、ポリエステル系熱可塑性エラストマーと、R1-CONH-R2あるいはR1-CONH-(CH2)n-NHCO-R1からなる構造を持つ置換アミド類(R1,R2は、それぞれ独立して炭素数6以上の脂環族基、芳香族基、飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基のいずれかの基であり、nは1~20の整数である。)とを含む組成物で構成されており、前記ポリエステル系熱可塑性エラストマーと前記置換アミド類との重量比が100:0.01~20であることを特徴とする。」
「【0031】
本発明の網状構造体1は、クッション材としての機能が発現できる観点から、平均の見掛け密度が0.005~0.20g/cm3の範囲内であることが好ましく、0.01~0.10g/cm3の範囲内であることがより好ましく、0.03~0.06g/cm3の範囲内であることが特に好ましい。網状構造体1の平均の見掛け密度が0.005g/cm3未満である場合には、反発力が失われ、クッション材には不適当である場合があるためであり、網状構造体の平均の見掛け密度が0.20g/cm3を超えると反発力が高すぎて座り心地が悪くなってしまう場合があるためである。」
「【0038】
次に、図4および図5を参照して、三次元ランダムループ接合構造を有する本発明の網状構造体1の製造方法について述べるが、以下の方法は一例であって、これに限定するものではない。本発明の網状構造体1は、たとえば溶融紡糸によって作製される。
【0039】
まず、図4に示すように、ポリエステル系熱可塑性エラストマーと特定の置換アミド類とを含む組成物11を一般的な溶融押出機12に投入し、融点より10~80℃高い温度に加熱して溶融状態とし、複数のオリフィス14を持つ吐出装置13より下向きに吐出させる。
【0040】
オリフィス14の形状は特に限定されないが、オリフィス14を異形断面(たとえば、三角形、Y型、星型などの断面二次モーメントが高くなる形状)または中空断面(たとえば、三角中空、丸型中空、突起付きの中空などの形状)を有する形状とすることが好ましい。この場合には、溶融状態の連続線状体前駆体2aが流動緩和し難くなり、連続線状体前駆体2aの接触点での流動時間を長く保持することによって、連続線状体前駆体2aの接着点を強固にすることができる。また、この場合には、網状構造体1の見掛けの嵩を高くすることができるとともに、軽量化することができ、また抗圧縮性が向上し、弾発性も改良することができるため、得られた網状構造体1をへたりにくくすることができる。
【0041】
また、オリフィス14が中空断面を有する場合には、中空率が80%を超える場合には連続線状体前駆体2aの断面の中空部が潰れやすくなるため、オリフィス14に中空断面を採用する場合の中空率は、好ましくは軽量化の効果が発現できる10~70%であり、より好ましくは20~60%である。
【0042】
また、オリフィス14間のピッチは、3~20mmであることが好ましく、5~10mm以下であることがより好ましい。オリフィス14間のピッチが3~20mmである場合、特に5~10mmである場合には、連続線状体前駆体2aが形成するランダムループ同士を十分に接触させることができる。なお、網状構造体1を密な構造にするためには、オリフィス14間のピッチは短い方が好ましく、粗な構造とするためには、オリフィス14間のピッチは長い方が好ましい。
【0043】
なお、オリフィス14の列間のピッチあるいは孔間のピッチを変えた構成、または列間のピッチと孔間のピッチとの双方を変えた構成とすることなどによって、網状構造体1に異なる見掛け密度を設けることもできる。
【0044】
また、オリフィス14の断面積を変更することによって連続線状体前駆体2aの吐出時の圧力損失を付与した場合には、溶融状態のポリエステル系熱可塑性エラストマーと特定の置換アミド類とを含む組成物をノズルから一定の圧力で吐出した場合に、圧力損失の大きいオリフィス14ほど、連続線状体前駆体2aの吐出量が小さくなる。この原理を利用して、各オリフィス14から吐出される連続線状体前駆体2aによって形成される連続線状体2の異繊度化が可能となる。
【0045】
そして、図5に示すように、連続線状体前駆体2aは、複数のオリフィス14から、その融点よりも高い温度の雰囲気に吐出され、曲がりくねらせることにより溶融状態でランダムループを形成する。この際、ノズル面とポリエステル系熱可塑性エラストマーと特定の置換アミド類とを含む組成物を固化させる冷却媒体上に設置した引取りコンベアとの距離、ポリエステル系熱可塑性エラストマーと特定の置換アミド類とを含む組成物の溶融粘度、オリフィスの孔径と吐出量などによりループ径と線状体の繊度が決まる。冷却媒体53が収容された冷却槽54に設けられた対向する一対の引き取りコンベア51,52のエンドレスネット55間に連続線状体前駆体2aを挟み込み、停留させることでループが発生し、オリフィスの孔間隔をループが接触できる孔間隔にしておくことで発生したループを互いに接触させる。このように互いにループを接触させることで、ループがランダムなループによる三次元形態を形成しつつ、ループの互いに接触した部分(接触部)は融着する。次いでランダムな三次元形態を形成しつつ接触部が融着した連続線状体を連続して冷却媒体53中に引込み固化させ網状構造体1が形成される。
【0046】
ここで、引き取りコンベア51,52において、溶融状態の三次元ランダムループ構造を有する網状構造体1の両側の外表面の曲りくねった連続線状体前駆体2aを好ましくは30°以上、より好ましくは45°以上折り曲げて変形させ、網状構造体1の外表面を実質的に平坦にすると同時に、曲げられていない連続線状体前駆体2aとの接触点で接着するように網状構造体1を形成することが好ましい。その後、連続して冷却媒体53(通常は室温の水を用いる方が冷却速度を早くでき、コスト面でも安くなるので好ましい。)で急冷して本発明の網状構造体1を得る。次いで水切り乾燥するが、冷却媒体53中に界面活性剤などを添加すると、水切りや乾燥がしにくくなったり、ポリエステル系熱可塑性エラストマーが膨潤したりすることがあり、好ましくない。」
「【0061】
<合成例1>
ジメチルテレフタレート(DMT)と1,4-ブタンジオール(1,4-BD)とポリテトラメチレングリコール(PTMG:平均分子量1000)とを少量の触媒と共に仕込み、常法によりエステル交換後、昇温減圧しつつ重縮合せしめ、DMT/1,4-BD/PTMG=100/84/16mol%のポリエステルエーテルブロック共重合エラストマーを生成させ、次いで抗酸化剤1%を添加混合練込み後ペレット化し、50℃48時間真空乾燥してポリエステル系熱可塑性エラストマー原料(A-1)を得た。その特性を表1に示す。」
「【0064】
<実施例1>
100kgの合成例1で得られたポリエステル系熱可塑性エラストマー(A-1)、0.5kgのエチレンビスオレイン酸アミド(日本化成株式会社製「スリパックス-O」)、0.25kgのヒンダードフェノール系酸化防止剤(ADEKA社製「アデカスタブAO330」)および0.25kgの燐系酸化防止剤(ADEKA社製「アデカスタブPEP36」)をタンブラーにて5分間混合した後、スクリュー径φ57mmの二軸押出機でシリンダー温度220℃、スクリュー回転数130rpmにて溶融混練し、水浴にストランド状に押出して冷却後、ポリエステル系熱可塑性エラストマーと特定の置換アミド類とを含む組成物のペレットを得た。得られた組成物を幅65cm、長さ5cmのノズル有効面に孔径1.0mmの丸型中実形状オリフィスを幅方向5.2mm、長さ方向6.0mmの間隔で配列したノズルより、240℃の温度で溶融して、単孔吐出量を2.0g/分で吐出させ、ノズル面30cm下に冷却水を配し、幅70cmのステンレス製エンドレスネットを平行に5cm間隔で一対の引取りコンベアを水面上に一部出るように配した上に引取り、接触部分を融着させつつ、両面を挟み込みつつ毎分0.5mの速度で冷却水中へ引込み固化させ、次いで100℃の熱風乾燥機中で15分疑似結晶化処理した後、疑似結晶化処理した後、所定の大きさに切断して網状構造体を得た。得られた網状構造体の特性を表2に示す。」
「【0072】
【表2】
[図:0001403688000001.jpg]
」
「【図4】
[図:0001403688000002.jpg]
」
「【図5】
[図:0001403688000003.jpg]
」
2 甲1に記載された発明
上記1に示した甲1の摘記事項(特に実施例1の記載)、並びに、【図4】及び【図5】の図示から、甲1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「100kgのポリエステル系熱可塑性エラストマーと0.5kgのエチレンビスオレイン酸アミドとを含む組成物からなる繊度4500dtexの連続線状体で構成された三次元ランダムループ構造を有し接触点で接着する嵩密度が0.080g/cm3である網状構造体の製造方法であって、
得られた組成物を、孔径1.0mmの丸型中実形状オリフィスが幅方向5.2mm長さ方向6.0mmの間隔で配列された、有効面が幅65cm、長さ5cmのノズルから、樹脂組成物を単孔吐出量2.0g/minで吐出させ、ステンレス製エンドレスネットの引取りコンベアを水面上に一部出るように配した上に引取り、接触部分を溶融させつつ、両面を挟み込み0.5m/minの速度で冷却水中に引込み固化させ、次いで100℃の熱風乾燥機中で疑似結晶化処理した後、所定の大きさに切断して網状構造体を得る網状構造体の製造方法。」
第5 当審の判断
1 申立理由1(サポート要件)について
(1)本件発明が、発明の詳細な説明に記載したものであるか否かについて検討する。
本件発明は、上記第2に記載したとおりのものである。そして本件特許明細書の記載から、本件発明の課題は「耐加水分解性に優れた網状構造体を提供すること」(段落【0005】)である。そして、実施例1ないし実施例4(段落【0049】~【0052】)及び各実施例が列記された【表2】(段落【0056】)を参照すると、本件発明の発明特定事項である、「繊維径」、「Q/N」、「V/Q」、「見かけ密度」及び「酸価」の数値範囲を充足する網状構造体が、好適といえる97%~99%の「加熱溶融後の還元粘度保持率(%)」の数値を示している。他方、「酸価」の数値範囲すなわち「32meq/kg以下」を充足しない比較例1ないし3においては、「加熱溶融後の還元粘度保持率(%)」は、それぞれ、92%、87%及び89%と低下することが示されている。そして、「加熱溶融後の還元粘度保持率(%)」とは、「値が大きいほど加熱溶融後の分子量低下の程度が小さい、すなわち、耐加水分解性が高いという具合に、本発明の網状構造体の耐加水分解性を評価するための指標となるもの」(段落【0038】)であり、「網状構造体を加熱溶融した後の還元粘度保持率が95%より小さくなると、溶融する程度に高温で熱成型加工した場合や再溶融して新たな網状構造体を製造した場合に網状構造体のクッション性が損なわれる可能性があるので好ましくない」(段落【0038】)とされるものであるから、本件発明は、上記本件発明の課題を解決できると認識できるものである。
したがって、本件特許は、本件特許の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号の規定に適合するものに付与されたものである。
(2)申立人の主張
申立人は、サポート要件の理由について、以下ア~ウのとおり主張している。
ア 本件明細書の発明の詳細な説明には、3次元ランダムループ接合構造を有する網状構造体の製造方法として特定の工程からなる製造方法しか開示されておらず、本件出願時の技術常識に照らしても、発明の詳細な説明において開示された内容を、製造工程を何ら限定しない本件発明の範囲まで拡張ないし一般化できるとはいえない。
イ 本件明細書の比較例3の網状構造体の製造方法では、吐出あたりのせん断量Q/Nが「25.0(cm3/rev)」、配管内通過時間V/Qが「21min」と本件発明の構成要件を満足しているにもかかわらず、製造された網状構造体の酸価「45meq/kg」となっており、本件発明の規定範囲「82meq/kg以下」を満たしていないから、本件発明は、発明の課題を解決するための手段が反映されていない。
ウ 吐出量Q(cm3/min)と、スクリュー回転数N(rev/min)が同じであっても、エクストルーダーの有効長さが長い程、エクストルーダーのスクリューから受けるせん断量は大きくなり、樹脂の分子量が低下して酸価が大きくなると考えられる。また同様に、エクストルーダーの種類(1軸か2軸)やスクリューの直径などによっても、エクストルーダーのスクリューから受けるせん断量は異なると考えられる。そうすると、本件発明は、発明の課題を解決するための手段が反映されていない。
エ しかし、上記(1)で説示したとおり、本件特許は、特許法第36条第6項第1項の規定に適合するものであるから、当該3つの申立人の主張は採用できない。
2 申立理由2(甲1に基づく新規性・進歩性)について
(1) 対比
本件発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「連続線状体で構成された三次元ランダムループ構造を有し接触点で接着する」は、本件発明の「連続線状体で構成された三次元ランダムループ接合構造を有する」に相当する
また、引用発明の「嵩密度」は、本件発明の「見かけ密度」に相当し、本件発明の「見かけ密度が0.005g/cm3以上0.20g/cm3以下」に、引用発明の「嵩密度が0.080g/cm3」は、包含される。
そうすると、本件発明と引用発明は、以下の点で一致し、かつ、相違する。
<一致点>
「連続線状体で構成された三次元ランダムループ接合構造を有する網状構造体の製造方法であって、見かけ密度が0.005g/cm3以上0.20g/cm3以下である網状構造体の製造方法」、
<相違点1>
連続線状体を得るために用いられる原料が、本件発明では、ポリエステル系熱可塑性エラストマーであるのに対して、引用発明ではポリエステル系熱可塑性エラストマーとエチレンビスオレイン酸アミドとを含む組成物である点。
<相違点2>
本件発明では、連続線状体の繊維径が0.1mm以上3.0mm以下と規定されているのに対して、引用発明では連続線状体の繊度が4500dtexである点。
<相違点3>
本件発明では、吐出あたりのせん断量(Q/N、単位:cm3/rev)が3以上200以下であるのに対して、引用発明では吐出あたりのせん断量Q/Nが明らかでない点。
<相違点4>
本件発明では、配管内通過時間(V/Q、単位:min)が、1以上30以下であるのに対して、引用発明では配管内通過時間V/Qが明らかでない点。
<相違点5>
本件発明では、網状構造体の酸価が32meq/kg以下であるのに対して、引用発明では網状構造体の酸価が明らかでない点。
(2) 判断
ア 事案に鑑み、最初に相違点5について検討する。
まず、新規性について検討すると、相違点5は、実質的な相違点といえるものであり、本件発明は引用発明でない。
次いで、進歩性について検討する。
引用発明では網状構造体の酸価が明らかでない。そして網状構造体の酸価を32meq/kg以下とすることは、当業者にとって自明の事項でもない。
イ 申立人の主張
申立人は、上記<相違点5>に関して、本件発明の網状構造体の製造方法を鑑みると、引用発明の製造方法で得られた網状構造体は、本件発明で規定する酸価を当然に有していると推測される旨、主張している。
しかし、以下の理由によりかかる主張には理由がない。
(ア)網状構造体の成形方法の相違について
a スクリュー回転数について
甲1には、スクリュー回転数(rev/min)について記載されていない。申立人は、ノズルやオリフィスの構成や単孔吐出量が近似していることを理由にスクリュー回転数(rev/min)も近似しているものと主張しているが、スクリューの個数や形状についても明らかではないところ、スクリュー回転数(rev/min)の程度について判断できないことは明らかである。
b 配管内通過時間について
また、甲1には、エクストルーダーにより溶融、押し出された樹脂がエクストルーダーを出た後、配管を経由しノズルから吐出されるまでの全容積(cm3)Vについて記載されておらず、配管内通過時間(V/Q、単位:min)についても記載されていないし算出することもできない。これについて申立人は、当該エクストルーダーにより溶融、押し出された樹脂がエクストルーダーを出た後、配管を経由しノズルから吐出されるまでの全容積(cm3)Vについて記載されていないことは首肯するものの、ノズルやオリフィスの構成や単孔吐出量が近似していることを理由に配管内通過時間(V/Q、単位:min)も近似しているものと主張しているが、配管内通過時間(V/Q、単位:min)は、エクストルーダーにより溶融、押し出された樹脂がエクストルーダーを出た後、配管を経由しノズルから吐出されるまでの全容積(cm3)Vから算出される物理量であるから、ノズルやオリフィスの構成や単孔吐出量によって配管内通過時間(V/Q、単位:min)を一義的に決定できるまたは推量できるものではないことは当業者にとって技術常識である。
(イ)酸価がいかに決定されるかについて
申立人は、網状構造体の成形方法について、本件発明の成形方法と引用発明の成形方法とが実質的に相違していないことを説示し、引用発明の酸価は、本件発明で規定する酸価を当然に有していると主張するものであるが、上記(ア)のとおり、本件発明の成形方法と引用発明の成形方法とは相違しており、申立人の上記主張には理由がない。
ウ まとめ
そうすると、引用発明において、相違点5に係る本件発明の構成を備えたものとすることは、当業者といえども容易に想到し得たこととはいえない。
そして、本件発明は、当該相違点5に係る発明特定事項を有することにより、耐加水分解性に優れており、高温加熱や再溶融した場合も材料の分子量低下が少なく、熱成形加工性やリサイクル性に優れた網状構造体を提供できるという格別の効果を奏するものである。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明は、引用発明でないし、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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