特許異議申立
2025-700342
メルトブロー不織布及びエアフィルター
- 審判番号
- 2025-700342
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-212709
- 登録番号
- 7567447
- 請求日
- 2025年03月25日
- 審決日
- 2025年06月02日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】東洋紡エムシー株式会社
- 【異議申立人】村上 兄
- 審判長/審判官
- 審判長 梶尾 誠哉
- 審判官 綿引 隆
- 審判官 緑川 隆
- 分類
- P1651.113-Y (D04H) / P1651.121-Y (D04H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7567447号発明「メルトブロー不織布及びエアフィルター」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7567447号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許7567447号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)12月22日の出願であって、令和6年10月7日にその特許権の設定登録がされ、同年10月16日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対し、令和7年3月25日に特許異議申立人 村上兄(以下、「異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~4に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明4」といい、併せて「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、請求項1~4に記載された構成要件「A」、「B」、・・・、「G」等の符号は、異議申立人が異議申立書で付与したものであり、本決定でも採用した。
「【請求項1】
A:不織布を形成する樹脂を100重量部とした場合、ヒンダートアミン系添加剤を0.01重量部~3重量部、かつ、
B:脂肪酸金属塩を0.025重量部~0.25重量部を含有し、
C:引張試験における破断伸度[%]を目付[g/m2]で割った値が0.5~4.0であることを特徴とする
D:メルトブロー不織布。
【請求項2】
E:引張試験における破断強度[N/50mm]を目付[g/m2]で割った値が0.2~1.0であることを特徴とする請求項1に記載のメルトブロー不織布。
【請求項3】
F:エレクトレット化されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のメルトブロー不織布。
【請求項4】
G:請求項1~3のいずれか1項に記載のメルトブロー不織布を備えていることを特徴とするエアフィルター。
第3 申立理由の概要
1 異議申立人の提出した証拠
異議申立人は、次の甲第1~6号証(以下、それぞれ、「甲1」~「甲6」という。)を証拠として提出している。
甲第1号証(甲1):特開2002-309099号公報
甲第2号証(甲2):特開昭63-280408号公報
甲第3号証(甲3):特開2015-183327号公報
甲第4号証(甲4):特開昭63-123414号公報
甲第5号証(甲5):特開平11-181664号公報
甲第6号証(甲6):特開平6-330446号公報
2 特許異議の申立理由
異議申立人の主張する特許異議の申立ての理由は、以下のとおりである。
(1) 申立理由1(新規性)
本件発明1~4は、甲1又は甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許の請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2) 申立理由2(進歩性)
本件発明1~4は、甲1に記載された発明及び甲5、甲6に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、本件発明1~4は、甲2に記載された発明及び甲5、甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明1~4は、甲3に記載された発明、甲1、2、4に示される技術常識及び甲5、甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
第4 異議申立人の提出した証拠の記載
1 甲1について
(1) 甲1の記載
甲1には、以下の記載がある(下線は当審において加筆した。以下同じ。)。
「【請求項1】高分子重合体において、前記高分子重合体100重量部あたり0.01~10重量部のヒンダードアミン系、含窒素ヒンダードフェノール系、金属塩ヒンダードフェノール系、フェノール系、ヒンダードフェノール系、フェノール系硫黄系耐候性付与剤から選ばれた少なくとも1種配合し、かつ前記ヒンダードアミン系、含窒素ヒンダードフェノール系、金属塩ヒンダードフェノール系、フェノール系、ヒンダードフェノール系、フェノール系硫黄系耐候性付与剤1重量部あたり0.01~10重量部の下記一般式(1)で表されるアルキルホスフィン酸化合物及び脂肪酸金属塩を配合してなることを特徴とする耐熱性エレクトレット材料。
【化1】
[図:0001424626000001.jpg]
(式中、R1及びR2は有機基又はハロゲン原子を示し、m及びnは0~4の整数を示し、mまたはnが2~4の整数の場合にR1及びR2はそれぞれ同一またはことなってもよい。)
・・・
【請求項4】請求項1乃至3のいずれかに記載の耐熱性エレクトレット材料からなる絶縁性、帯電性に優れた除塵フィルター。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐熱安定性、永久帯電性の優れたエレクトレット材料に関するものである。特に、タバコ煙の除去を目的とする機器、室内空気清浄機のフィルター、作業用防塵マスクなどの利用に適するものである。
・・・
【0011】
【発明の実施の形態】本発明に使用する高分子重合体は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイト、フッ素系樹脂、塩素系樹脂、ビニール樹脂および/またはブレンド、共重合されたもの等の可紡性のある樹脂を用いる。特にエレクトット材料としては、ポリプロピレンが絶縁性の面からも好ましい。
・・・
【0013】本発明に使用する酸化防止剤の一例として、ヒンダードアミンの場合、ポリ[{(6-(1,1,3,3,-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル){(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}}(チバガイギー社商品名でキマソーブ944LD)、コハク酸ジメチル-1-ヒドロキシエチル]-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物(チバガイギー社商品名でチヌビン622LD)、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)(チバガイギー社商品名でチヌビン144)などがある。
・・・
【0030】本発明に使用される脂肪酸金属塩は、直鎖状脂肪酸基を有するものが好ましい。また脂肪酸基は炭素数10~20のものが好ましい。たとえば、ラウリル酸アルミニウム、ミリスチン酸アルミニウム、パルミチン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、ラウリル酸マグムシウム、ミリスチン酸マグムシウム、パルミチン酸マグムシウム、ステアリン酸マグムシウム、などが上げられる。添加量としては、ポリマーに対して0.01重量%以上5重量%以下、好ましくは、0.02重量%1重量%であればよい。これ以下であれば、効果は小さく、逆にこの範囲以上であればブリードアウトする場合がある。
・・・
【0035】本発明は繊維集合体、いわゆる不織布を公知の方法で直接エレクトレット化してもよく、繊維をエレクトレット化後不織布化してもよく、フィルム状でエレクトレット処理化し、これを繊維状に解繊した後不織布化してもよい。
【0036】実施例により本発明のさらに詳細な説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。メルトブロー不織布は、所定の添加剤をポリプロピレン樹脂に溶融混合したものを、ルーダーより溶融押し出しでメルトブロー法により、目付け30g/m2、平均繊維径が2.0μm、厚み0.3mmになるようにメルトブロー紡糸して不織布を得た。
【0037】上記で得られた不織布への荷電法は、該不織布を半導体シートを敷いたアース板上に置き、アース板の上方1cmに設置した針電極(春日電機株式会社製 帯電電極)に+20Kvの直流こう電圧を印加し、コロナ正イオンを発生させ10秒間エレクトレット化処理した。
・・・
【0045】実施例1~6に具体的な添加剤と配合量を示し、またトラップ電荷量、着色、除塵効率について表1に示した。いずれの場合も、アルキルホスフィン酸化合物、脂肪酸金属塩を添加することにより、高温サイドにおいて高い表面電荷密度を有し、長時間にわたり電荷を安定に保持する耐熱性、着色性に優れていることがわかる。このエレクトレット材料は製造後、6ヶ月経過した後もほとんど性能の変化はなかった。
・・・
【0048】
【表3】
[図:0001424626000002.jpg]
」
(2) 甲1発明
ア 上記(1)の【0045】の「実施例1~6に具体的な添加剤と配合量を示し、またトラップ電荷量、着色、除塵効率について表1に示した。」との記載によれば、表1に記載されている配合物についての数値は「配合量」であるから、同様に【0048】【表3】に記載されている配合物についての数値も「配合量」であるといえる。
イ また、上記(1)の【請求項1】において、配合している各成分の量を「重量部」で記載しているから、上記アの「配合量」の単位は「重量部」であるといえる。
ウ 上記(1)及び上記イによれば、甲1には、実施例3として、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている(括弧内の記載は、根拠箇所を示す。)。
「100重量部の可紡性のある樹脂であるポリプロピレンに(【0011】、【0048】【表3】)、
アルキルホスフィン酸化合物として9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイドを0.02重量部(【0048】【表3】)、
IR1425Wを0.2重量部(【0048】【表3】)、
ヒンダートアミンであるキマソーブ944LDを0.2重量部(【0013】、【0048】【表3】)、
、脂肪酸金属塩であるステアリン酸マグムシウムを0.1重量部(【0030】、【0048】【表3】)
融混合したものを、目付け30g/m2になるようにメルトブロー紡糸し、エレクトレット化処理して得たメルトブロー不織布(【0036】、【0037】)。」
(3) 甲1記載事項
上記(1)の【0030】によれば、甲1には、脂肪酸金属塩の添加量としては、ポリマーに対して0.01重量%以上5重量%以下、好ましくは、0.02重量%1重量%であればよく、これ以下であれば、効果は小さく、逆にこの範囲以上であればブリードアウトする場合があること(以下、「甲1記載事項」という。)が記載されている。
2 甲2について
(1) 甲2の記載
甲2には、以下の記載がある。
「2.特許請求の範囲
(1)高分子重合体に、ヒンダードアミン系,含窒素ヒンダードフェノール系、金属塩ヒンダードフェノール系あるいはフェノール系の安定剤から選ばれた少なくとも1種を配合してなる材料からなり,かつ100°C以上における熱刺激脱分極電流からのトラップ電荷量が2.0×10-10クーロン/cm2以上である耐熱性エレクトレット材料。」(第1頁左下欄第4行~第12行)
「 これらの条件を満たす配合物としては比較的分子量が大きく,加工時の熱(250°C程度)に対してもほとんど揮発したり,分解しない安定な配合物を高分子重合体100部に対し,少なくとも0.1部以上配合することが高いトラップ電荷量を材料に付与するため必要である。 好ましくは0.2部以上配合することが望ましい。 さらに好ましくは0.3部以上配合することが望ましい。 また安定性を増すために,タイプの異なった安定剤を配合しても良い。
ただし,配合量が2部以上ともなると材料としての均一性に欠けることがある。
高分子重合体に配合するヒンダードアミン系,含窒素ヒンダードフェノール系,金属塩ヒンダードフェノール系あるいはフェノール系安定剤の一例としては,ヒンダードアミンの場合4ポリ[{(6-(1,1,3,3,-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6,-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}へキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}](チバガイギー社商品名でキマソーブ944LDと以後略称する),コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物(チバガイギー社商品名でチヌビン622LDと以後略称する),2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)(チバガイギー社商品名でチヌビン144と以後略称する)などがある。」(第2頁右上欄第18行~第2頁右下欄第8行)
「 [実施例]
実施例及び比較例
ポリプロピレン100部に対し,キマソーブ944LD,イルガノックス1425WL,イルガノックス3114,BHT,DSTDTを第1表,第2表のごとく配合し,MIが55のチップを作成した。
メルトブロー方法により目付30g/m2、平均繊維径がほぼ3ミクロンになるようにメルトブロー紡糸し不織布シートを得た。
このシートに第1図の装置によりエレクトレット加工を施した。」(第3頁左下欄第15行~第3頁右下欄第6行)
「
[図:0001424626000003.jpg]
」(第4頁右上欄)
(2) 甲2発明
上記(1)によれば、甲2には、実施例3として、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている(括弧内の記載は、根拠箇所を示す。)。
「ポリプロピレン100部に対し、ステアリン酸カルシウムを0.1部、BHTを0.05部、IR1425WLを0.2部、キマソーブ944LDを0.2部配合し(第3頁左下欄第15行~第3頁右下欄第6行及び第1表)、
目付30g/m2になるようにメルトブロー紡糸し、エレクトレット加工を施した、不織布シート(第3頁左下欄第15行~第3頁右下欄第6行)。」
3 甲3について
(1) 甲3の記載
甲3には、以下の記載がある。
「【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる平均単繊維径が0.1μm~8.0μmである長繊維からなる不織布であって、前記不織布の平均繊維配向度が40~80度、見掛け密度が0.1~0.5g/cm3であり、エレクトレット加工されてなることを特徴とするメルトブロー不織布。
【請求項2】
引張強力のタテ/ヨコ比が0.7~1.3であり、テープ接着引張試験時の1%伸長時応力が1.0N/5cm~12.0N/5cmである請求項1記載のメルトブロー不織布。」
「【0001】
本発明は、主に空気清浄機用フィルターとして好適に用いられる、集塵および脱臭の両方の性能を兼ね備えた複合濾材およびエアフィルターユニットに好適に用いられるメルトブロー不織布と、そのメルトブロー不織布を用いてなる複合濾材およびエアフィルターユニットに関するものである。
・・・
【0023】
本発明によれば、優れた機械的強度を有し、高い捕集効率を有するエレクトレット不織布が得られる。
【0024】
本発明によれば、プリーツ加工してもエレクトレット不織布の破れが発生しないため、高い微細塵の捕集性能を有し、かつガス除去粒子による脱臭効果も有する薄型のフィルターユニットが得られる効果を奏する。
・・・
【0027】
本発明のメルトブロー不織布は、熱可塑性樹脂からなる平均単繊維径が0.1μm~8.0μmである長繊維からなる不織布であって、前記の不織布の平均繊維配向度が40~80度、見掛け密度が0.1~0.5g/cm3であり、エレクトレット加工されてなるメルトブロー不織布である。
・・・
【0030】
上記の平均単繊維径と同じ目的において、メルトブロー不織布の目付は、10~50g/m2であることが好ましく、より好ましくは15~40g/m2である。目付が高すぎると、複合濾材の厚みが増しフィルター圧損を上げる傾向にある。逆に、目付が低すぎると、捕集効率の低下が起こる傾向がある。
・・・
【0033】
本発明におけるメルトブロー不織布は、メルトブロー不織布の表面および内部に電荷を付与したもの、いわゆるエレクトレット加工を施したものが好ましい態様である。メルトブロー不織布に電荷を付与する方法としては、コロナ放電法、純水サクション法、および摩擦帯電法等の方法が挙げられる。
・・・
【0038】
本発明のメルトブロー不織布を構成する熱可塑性樹脂に、帯電性、耐候性、熱安定性、機械的特性、着色、表面特性、またはその他の特性を強化し改良するために、各種の添加剤を加えることができる。特に、メルトブロー不織布にエレクトレット加工を行う場合には、帯電性を強化する目的で、エレクトレット添加剤を含むことが好ましい態様である。
【0039】
特に、エレクトレット添加剤として、ヒンダードアミン系化合物およびトリアジン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種のエレクトレット添加剤が含まれていることが好ましい態様である。
【0040】
ヒンダードアミン系化合物としては、ポリ[(6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)](BASF・ジャパン社製、“キマソーブ”(登録商標)944LD)、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物(BASF・ジャパン社製、“チヌビン”(登録商標)622LD)、および2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)(BASF・ジャパン社製、“チヌビン”(登録商標)144)などが挙げられる。
・・・
【0042】
これらのエレクトレット添加剤の中でも、特にヒンダードアミン系化合物が好ましく用いられる。
【0043】
熱可塑性樹脂に添加される、ヒンダードアミン系化合物および/またはトリアジン系化合物の含有量は、メルトブロー不織布全質量に対して0.1~5.0質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5~3質量%の範囲であり、さらに好ましくは0.8~2.0質量%の範囲である。また、これらのヒンダードアミン系化合物やトリアジン系化合物を、不織布もしくは繊維表面に付着させるなどの場合は、メルトブロー不織布全質量に対して0.1~5.0質量%の範囲で付着させることが好ましい。
【0044】
また、本発明のメルトブロー不織布には、上記の化合物の他に、熱安定剤、耐候剤および重合禁止剤等の一般にエレクトレット加工品の不織布に使用されている通常の添加剤を添加することもできる。
・・・
【0070】
[実施例1]
熱可塑性樹脂として、温度230℃で21.18N負荷時におけるMFRが860g/10分、融点163℃のポリプロピレン(PP)樹脂を用い、これに、“キマソーブ”(登録商標)944(BASF・ジャパン(株)製)を1質量%添加したポリプロピレン樹脂組成物を使用し、押出機およびギヤポンプ、メルトブロー口金(孔ピッチ:1.0mm、孔径:0.30mm、孔深度:3.0mm)、圧縮空気発生装置および空気加熱機、捕集コンベア、および巻取機からなる装置を用いて、メルトブロー不織布の製造を行った。
【0071】
押出機に、上記のポリプロピレン樹脂組成物を投入し、加熱溶融させ、ギヤポンプを用いて一定量で計量し、メルトブロー口金に導き吐出した。図5示すように、この口金下の鉛直方向に対して、シート進行方向の前方に捕集ドラムの中心が配されるように調整し、メルトブロー口金から、高温熱風とともに繊維流として噴射し、そのメルトブロー繊維流を、その捕集ドラムの進行方向の後方側に垂直に捕集し、シート化した。捕集ドラム速度を調整し、目付が40.9g/m2、平均単繊維径が4.8μm、厚みが0.32mm、見かけ密度が0.13g/cm3、平均繊維配向度が47.6度のメルトブロー不織布を得た。
【0072】
得られたメルトブロー不織布を、純水サクション法によってエレクトレット加工した。このメルトブロー不織布の圧力損失は7.3Paであり、捕集効率は94.7%であった。また、テープ接着引張試験時の1%伸長時応力は、5.0N/5cmであった。
・・・
【0084】
【表1】
[図:0001424626000004.jpg]
」
(2) 甲3発明
上記(1)によれば、甲3には、実施例1として、以下の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されている(括弧内の記載は、根拠箇所を示す。)。
「熱可塑性樹脂として、温度230℃で21.18N負荷時におけるMFRが860g/10分、融点163℃のポリプロピレン(PP)樹脂を用い、これに、“キマソーブ”(登録商標)944(BASF・ジャパン(株)製)を1質量%添加したポリプロピレン樹脂組成物を使用して製造し(【0070】)、
エレクトレット加工された(【0072】)、
目付が40.9g/m2(【0071】、【0084】【表1】)、
タテの破断伸度が11.0%、ヨコの破断伸度が51.6%、プリーツ破れが0個である(【0084】【表1】)、
メルトブロー不織布(【0070】)。」
4 甲4について
(1) 甲4の記載
甲4には、以下の記載がある。
「2.特許請求の範囲
1.防塵用フィルタに用いられるエレクトレット化繊維であり,
絶縁性高分子材料に脂肪酸金属塩が配合された極細の繊維状物をエレクトレット化してなるエレクトレット化繊維。
2.防塵用フィルタに用いられるエレクトレット化繊維の製造方法であり,
脂肪酸金属塩を絶縁性高分子材料に配合して,これをメルトブロー法により極細の繊維状とする工程と,
該極細の繊維状物が冷却固化した後にエレクトレット化する工程と,
を包含するエレクトレット化繊維の製造方法。」(第1頁左下欄第4行~第17行)
「 高分子材料に配合される脂肪酸金属塩は,エレクトレット化する際に,例えばコロナ電極から放出されるイオン流から,繊維上に到達した電荷を効果的にトラップするものと考えられる。このような脂肪酸金属塩としては,ラウリン酸,バルミチン酸,ステアリン酸,オレイン酸等の脂肪酸と,アルミニウム,マグネシウム,カルシウム,亜鉛等の金属との化合物が挙げられる。このような脂肪酸金属塩を,金属基準で100ppm以上,好ましくは300ppm以上で2000ppm以下の範囲にて配合すればよい。
脂肪酸金属塩が配合された高分子材料は,メルトプロー法で極細の繊維状にし,冷却固化した後にエレクトレット化される。高分子材料を極細の繊維状にする方法としては,フラッシュ紡糸法,静電場紡糸法,遠心紡糸法等があるが,高分子材料を極細の繊維状として高帯電レベルにエレクトレット化するためには,メルトブロー法が最適である。メルトブロー法は,第1図に示すように,加熱部材12にて加熱されたノズル11先端の周囲へ,エア供給管13より加熱エアを高速にて噴出させておき,ノズル11先端から溶融高分子材料14を該加熱エア中へ吐出させることにより,溶融高分子と加熱エアとの複合流を形成し,吐出される溶融高分子材料14を極細の繊維状とする。
メルトブロー法により繊維状とされた溶融高分子材料14は,冷却固化された後に,例えば第2図に示すようにコロナ電極15を用いて荷電することによりエレクトレット化して,エレクトレット化繊維が得られる。メルトブロー法によれば,溶融あるいは半溶融状態のように,未硬化状態で高分子材料が高速でノズルから吐出されるため,このような高分子材料をコロナ荷電すれば,電荷の捕捉と共に電荷の中和作用も並行して起こり,ある程度の帯電レベルとされるが,十分な帯電レベルにならない。しかし,繊維状の高分子材料には脂肪酸金属塩が配合されているため,高速で通流する繊維状高分子材料は,コロナ荷電時間が数ミリ秒と極めて短くても,脂肪酸金属塩が効果的に電荷を捕捉し得るため、高帯電レベルとされる。しかも,高分子材料が完全に固化した後に,脂肪酸金属塩が高分子材料の表面に到達した電荷を効果的に捕捉するため,確実に高帯電レベルとされる。
このようにして得られるエレクトレット化繊維は,例えば,不織布とされて,防塵用フィルタとして用いられる。」(第2頁右下欄第6行~第3頁右上欄第11行)
(2) 甲4記載事項
上記(1)によれば、甲4には、高分子材料に配合される脂肪酸金属塩は、エレクトレット化する際に電荷を効果的にトラップするものと考えられること、脂肪酸金属塩を金属基準で100ppm以上,好ましくは300ppm以上で2000ppm以下の範囲にて配合すればよいこと(以下、「甲4記載事項」という。)が記載されている。
5 甲5について
(1) 甲5の記載
甲5には、以下の記載がある。
「【請求項1】 平均繊維径が0.5μm~20μmで伸度が30%以下の有機繊維と、前記有機繊維より繊維径が細く伸度が40~200%のポリオレフィン繊維が混合されてなる目付が15~100g/m2 の不織布であって、前記不織布の少なくとも一方向の破断伸度が5~200%で且つ引張強力が1.5~30kg/5cm巾であることを特徴とする複合不織布。
【請求項2】 有機繊維のMFRが2~500g/10分のポリスチレン繊維であり、且つ前記MFRがポリオレフィン繊維のMFRに比べ小さいことを特徴とする請求項1記載の複合不織布。
・・・
【請求項11】 複合不織布がエレクトレット処理されてなることを特徴とする請求項1~5,7及び8に記載の複合不織布。」
「【0004】本発明は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ね、電池セパレータ,エアーフィルター,液体フィルター,断熱材,衣料用不織布,医療用不織布などに好適な工程通過性の良い強伸度特性に優れた複合不織布を提供することを目的とする。
・・・
【0018】複合化された不織布の総目付は15~100g/m2 の間にあることが重要である。目付が15g/m2 未満であると複合化した効果が認められなかったからである。これは、オレフィン繊維を均一に分散させることが難しくなり遍在化しているためと推定される。逆に100g/m2 を越えると複合化により改善する必要がなかったからである。電池レパレータとして用いる際には40~80g/m2 が、液体フィルター用途では、30~100g/m2 、エアーフィルターでは20~70g/m2 であることが特に好ましかった。
【0019】また、該複合不織布の破断伸度が5~200%であることも重要である。破断伸度が5%未満であるとシートの切断破壊を避けるための不織布製造工程中のテンションコントロールが非常に困難になる。一方、200%を越えると不織布のテンションをかけたときのシートの巾入り(巾方向の収縮)が大きくなりすぎるなどの問題が発生して好ましくない。好ましくは10~50%である。
【0020】さらに、複合不織布の引張強力は1.5~30kg/5cm巾であることが重要である。1.5kg/5cm巾未満であると工程での不織布切断が生じやすくなる。特に電池セパレータ用途では、狭い幅のテープ上で用いられることから5kg/5cm巾以上であることが好ましく、より好ましくは7kg/5cm巾である。強度が30kg/5cm巾を越えることは実用上問題がないが、ジオテキスタイルなどの特殊な用途を除いて本発明の複合不織布を使用する必要性がないと考えられる。本発明の不織布は、カレンダー加工などの熱融着手段により繊維間の接着を強化して、不織布の強度をより高くなるように改善することも好ましい。
・・・
【0041】実施例1~4
MFR200~500g/10分のポリプロピレンとMFR160g/10分および300g/10分のシンジオタクテックポリスチレンを、隣接するオリフィスから交互に295℃の温度で単孔吐出量0.25~0.75g/minの範囲で変更して押し出し、0.8kg/cm2 で300℃の空気流で牽引細化させ、ポリプロピレンの平均繊維径が2~5μm、ポリスチレンの平均繊維径が平均繊維径が5~6μmであり、目付が50g/m2 前後のメルトブロー不織布を得た。得られた不織布の特性を表1に示した。ポリプロピレン繊維の繊維径が太いほど不織布強度が高いと予測していたのに関わらず、ポリプロピレン繊維の繊維径がポリスチレン繊維の繊維径とくらべてより細いほど不織布強度が向上する傾向が認められた。また、マシン方向(M方向)に繊維がより配列されるように不織布をつくると、該方向の不織布強度が大幅に改善された。
・・・
【0050】
【表1】
[図:0001424626000005.jpg]
」
(2) 甲5記載事項
ア 甲5記載事項1
上記(1)の【0041】、【0050】【表1】によれば、甲5には、実施例3として、破断伸度が32%、目付が50g/m2のメルトブロー不織布(以下、「甲5記載事項1」という。)が記載されている。
イ 甲5記載事項2
上記(1)の【0041】、【0050】【表1】によれば、甲5には、実施例4として、破断伸度が49%、目付が50g/m2のメルトブロー不織布(以下、「甲5記載事項2」という。)が記載されている。
ウ 甲5記載事項3
上記(1)の【0018】によれば、甲5には、複合化された不織布の総目付は15~100g/m2 の間にあることが重要であり、目付が15g/m2 未満であると複合化した効果が認められず、100g/m2 を越えると複合化により改善する必要がないこと(以下、「甲5記載事項3」という。)が記載されている。
エ 甲5記載事項4
上記(1)の【0019】によれば、甲5には、複合不織布の破断伸度が5~200%であることも重要であり、破断伸度が5%未満であるとシートの切断破壊を避けるための不織布製造工程中のテンションコントロールが非常に困難になり、200%を越えると不織布のテンションをかけたときのシートの巾入り(巾方向の収縮)が大きくなりすぎるなどの問題が発生して好ましくなく、好ましくは10~50%であること(以下、「甲5記載事項4」という。)が記載されている。
6 甲6について
(1) 甲6の記載
甲6には、以下の記載がある。
「【請求項1】 エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体からなる繊維径10μm以下の繊維から構成された不織布であり、該不織布の目付量100g/m2当たりの強力が150g/5cm以上、破断伸度が1%以上であるメルトブロー不織布。」
「【0012】ここで、メルトブロー不織布を構成する繊維の繊維径とは、不織布の任意の10カ所について電子顕微鏡写真撮影を行ない、それぞれの写真中の任意の10本の繊維について繊維径を読みとって得られる計100本の繊維径につき、その細い方から50番目の繊維の繊維径を意味する。本発明のECTFE樹脂からなるメルトブロー不織布は、さらに目付量100g/m2当たりの強力が150g/5cm以上であり、かつ破断伸度が1%以上であることによって特徴ずつられる。さらに好ましくは目付量100g/m2当たり強力が300g/5cm以上で、破断伸度が2%以上であることが望ましい。メルトブロー不織布の強力が、目付量100g/m2当たり150g/5cmよりも小さかったり、或いはその破断伸度が1%よりも小さかったりすると、その不織布は、製布後の検反、巻返し、スリット加工などの工程において破断を生じやすくなり、取扱い性や加工性が低下することになる。
【0013】強力および破断伸度の上限は特に限定されるものではないが、目付量100g/m2当たりの強力3kg/5cm以上、或いは破断伸度100%以上のECTFE樹脂からなるメルトブロー不織布を得ることは困難である。ここで、不織布の目付量100g/m2当たりの強力とは、5cm幅×20cm長のサンプル5枚について、オートグラフにより20cm/min の速度で伸長切断試験を行なった際に得られる最大の強力の平均値を、強力が目付量に比例するものと仮定して目付量100g/m2当たりに換算した値である。また、破断伸度とは最大の強力が得られたときの伸度の平均値を意味する。」
(2) 甲6記載事項
上記(1)の【0012】によれば、甲6には、メルトブロー不織布は、破断伸度が1%以上であることによって特徴づけられ、破断伸度が2%以上であることが望ましく、破断伸度が1%よりも小さいと、その不織布は、製布後の検反、巻返し、スリット加工などの工程において破断を生じやすくなり、取扱い性や加工性が低下することになること(以下、「甲6記載事項」という)が記載されている。
第5 当審の判断
1 甲1を主引例とする、申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)について
(1) 本件発明1
ア 甲1発明との対比
(ア) 構成要件Aについて
甲1発明の「可紡性のある樹脂であるポリプロピレン」は、「メルトブロー紡糸し」、「メルトブロー不織布」を得るためのものであるから、本件発明1の「不織布を形成する樹脂」に相当する。
また、甲1発明の「ヒンダートアミンであるキマソーブ944LD」は、本件発明1の「ヒンダートアミン系添加剤」に相当する。
そして、甲1発明の「メルトブロー不織布」は、「100重量部の可紡性のある樹脂であるポリプロピレンに」、「ヒンダートアミンであるキマソーブ944LDを0.2重量部」「溶融混合したもの」であるから、本件発明1の「不織布を形成する樹脂を100重量部とした場合」、「ヒンダートアミン系添加剤を0.01重量部~3重量部」含有する「メルトブロー不織布」に相当する。
(イ) 構成要件Bについて
甲1発明の「脂肪酸金属塩であるステアリン酸マグムシウム」は、本件発明1の「脂肪酸金属塩」に相当する。
そして、甲1発明の「メルトブロー不織布」は、「100重量部の可紡性のある樹脂であるポリプロピレンに」、「脂肪酸金属塩であるステアリン酸マグムシウムを0.1重量部溶融混合したもの」であるから、本件発明1の「不織布を形成する樹脂を100重量部とした場合」、「脂肪酸金属塩を0.025重量部~0.25重量部」含有する「メルトブロー不織布」に相当する。
(ウ) 構成要件Dについて
甲1発明の「メルトブロー不織布」は、本件発明1の「メルトブロー不織布」に相当する。
以上によれば、本件発明1と甲1発明は、以下の一致点、相違点を有する。
[一致点]
A:不織布を形成する樹脂を100重量部とした場合、ヒンダートアミン系添加剤を0.01重量部~3重量部、かつ、
B:脂肪酸金属塩を0.025重量部~0.25重量部を含有する、
D:メルトブロー不織布。
[相違点]
本件発明1は、「引張試験における破断伸度[%]を目付[g/m2]で割った値が0.5~4.0である」(構成要件C)のに対し、甲1発明は、そのような構成となっているのか明らかでない点(以下、相違点1という)。
イ 申立理由1(新規性)についての判断
「メルトブロー不織布」について、「引張試験における破断伸度[%]を目付[g/m2]で割った値」(以下、「本件値」という。)は、繊維の主材料である「可紡性のある樹脂であるポリプロピレン」の分子量等の特性、配合剤の種類、配合剤の配合量、繊維径、エレクトレット不織布の帯電量、繊維がどの程度自己融着しているか等の様々な要因に依存するものであるといえる。
そこで検討するに、甲1発明の「メルトブロー不織布」は、「可紡性のある樹脂であるポリプロピレン」の分子量等の特性が不明であり、「ヒンダートアミンであるキマソーブ944LD」及び「脂肪酸金属塩であるステアリン酸マグムシウム」の他に、「アルキルホスフィン酸化合物として9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド」及び「IR1425W」も配合されており、さらに、繊維がどの程度自己融着しているかについても不明である。
そうすると、甲1発明の「メルトブロー不織布」の本件値は「0.5~4.0である」とはいえないから、甲1発明は、相違点1に係る本件発明1の構成を有しているとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲1発明であるとはいえない。
ウ 申立理由2(進歩性)についての判断
本件明細書の【0015】には、本件値(破断伸度[%]を目付[g/m2]で割った値)について、以下の記載がある。
「 本発明のメルトブロー不織布は、破断伸度[%]を目付[g/m2]で割った値が0.5~4.0であり、好ましくは、1.0~3.5である。破断伸度を目付で割った値が4.0を超えると、不織布を濾材として用いるフィルターの製造工程において、巻取りや補強材との貼り合せ加工時に幅入りし取り扱いが悪くなる。また、0.5を下回ると、、不織布の柔軟性がなく、プリーツ加工時に破断、問題となる。0.5~4.0の範囲であると、加工時の幅入りが小さく、加工性、作業性の向上が見込める。」
本件明細書の当該記載によれば、本件値は、4.0を超えると、不織布を濾材として用いるフィルターの製造工程において、巻取りや補強材との貼り合せ加工時に幅入りし取り扱いが悪くなり、0.5を下回ると、不織布の柔軟性がなく、プリーツ加工時に破断、問題となるから、本件発明1は、本件値を0.5~4.0の範囲としたものであり、それによって、加工時の幅入りが小さく、加工性、作業性の向上が見込めるという効果を奏するものである。
したがって、本件発明1において、本件値が「0.5~4.0」の範囲であることは、当該効果を奏するための技術的意義を有するものであって、単なる設計的事項ではない。
一方、甲1には、メルトブロー不織布の破断伸度についての記載はなく、甲1発明の「メルトブロー不織布」の本件値を、「0.5~4.0」とすることの問題点の存在や、本件値による効果などの技術的意義についても何ら記載はないから、甲1発明において、相違点1に係る構成を採用することの動機付けはない。
なお、上記第4の5(2)のとおり、異議申立人の主張する甲5には、甲5記載事項1~4が記載されているところ、仮に、本件値と同様に、破断伸度を目付で割ってみると、甲5記載事項1では「0.64」(=32/50)、甲5記載事項2では「0.98」(=49/50)となり、それぞれ、本件発明1における本件値の「0.5~4.0」の範囲の間に含まれる数値となる。
しかしながら、甲5記載事項3によれば、「複合化された不織布の総目付は15~100g/m2の間にあることが重要」であり、甲5記載事項4によれば「複合不織布の破断伸度が5~200%であることも重要」であって、その範囲について、本件値と同様に破断伸度を目付で割ってみると、甲5において重要であるとする本件値は、本件発明1において技術的意義を有する「0.5~4.0」の範囲よりも上限下限ともにかなり広い数値範囲である「0.05」(=5/100)から「13.3」(=200/15)の範囲となる。
そうすると、甲5には、本件値が「0.5~4.0」の範囲の間の数値である「0.64」と「0.98」が一応開示されているものの、単に、「0.05」~「13.3」の範囲の中の2つの数値が開示されているにとどまり、本件発明1において、技術的意義を有する、本件値が「0.5~4.0」の範囲とすることが開示されているとはいえない。
さらに、上記第4の6(2)のとおり、異議申立人の主張する甲6には甲6記載事項が記載されているものの、本件値を「0.5~4.0」の範囲とすることが開示されているとはいえないし、その他の甲2~甲4をみても開示はない。
したがって、甲1発明において、相違点1の構成を採用することは、当業者であっても容易に想到し得るものではない。
よって、本件発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲2~6に記載された事項を含めて検討しても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2) 本件発明2~4
上記第2のとおり、本件発明2~4は、本件発明1の全ての構成を有するものであり、いずれも上記相違点1に係る本件発明1の構成を有している。
そうすると、本件発明2~4と甲1発明を対比すると、少なくとも、上記相違点1の構成で相違するから、本件発明1について判断したことと同様の理由により、本件発明2~4も、甲1発明であるとはいえない。
また、本件発明1について判断したことと同様の理由により、本件発明2~4も、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 甲2を主引例とする、申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)について
(1) 本件発明1
ア 甲2発明との対比
上記第4の2(2)のとおり、甲2には、甲2発明が記載されているところ、本件発明1と甲2発明とを対比すると、本件発明1は、「引張試験における破断伸度[%]を目付[g/m2]で割った値が0.5~4.0である」(構成要件C)のに対し、甲2発明は、そのような構成となっているのか明らかでない点、すなわち、上記1(1)アの相違点1の構成で相違している。
イ 申立理由1(新規性)についての判断
上記1(1)イと同様、甲2発明の新規性について検討するに、甲2発明の「不織布シート」は、「ポリプロピレン」の分子量等の特性が不明であり、「ステアリン酸カルシウム」及び「キマソーブ944LD」の他に、「BHT」及び「IR1425WL」も配合されており、さらに、繊維がどの程度自己融着しているかについても不明である。
そうすると、甲2発明の「不織布シート」の本件値は「0.5~4.0である」とはいえないから、甲2発明は、相違点1に係る本件発明1の構成を有しているとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲2発明であるとはいえない。
ウ 申立理由2(進歩性)についての判断
上記1(1)ウにおいて、本件発明1について判断したことと同様、甲2には、不織布シートの破断伸度についての記載はなく、甲2発明の「不織布シート」の本件値を、「0.5~4.0」とすることの技術的意義について何ら記載はないから、甲2発明において、相違点1に係る構成を採用することの動機付けはない。
そして、甲5、6を含め、その他の甲1、甲3及び甲4をみても、本件値を「0.5~4.0」の範囲とすることの開示はない。
したがって、甲2発明において、相違点1の構成を採用することは、当業者であっても容易に想到し得るものではない。
よって、本件発明1は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲1、甲3~6に記載された事項を含めて検討しても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2) 本件発明2~4
上記第2のとおり、本件発明2~4は、本件発明1の全ての構成を有するものであり、いずれも上記相違点1に係る本件発明1の構成を有している。
そうすると、本件発明2~4と甲2発明を対比すると、少なくとも、上記相違点1の構成で相違するから、本件発明1について判断したことと同様の理由により、本件発明2~4も、甲2発明であるとはいえない。
また、本件発明1について判断したことと同様の理由により、本件発明2~4も、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 甲3を主引例とする申立理由2(進歩性)について
(1) 本件発明1
ア 甲3発明との対比
上記第4の3(2)のとおり、甲3には、甲3発明が記載されているところ、本件発明1と甲3発明とを対比すると、本件発明1は、「引張試験における破断伸度[%]を目付[g/m2]で割った値が0.5~4.0である」(構成要件C)のに対し、甲3発明は、そのような構成となっているのか明らかでない点、すなわち、上記1(1)アの相違点1の構成、及び、本件発明1は、「脂肪酸金属塩を0.025重量部~0.25重量部を含有」(構成要件B)しているのに対し、甲3発明は、対応する構成を含有していない点(以下、相違点2という)で相違している。
イ 申立理由2(進歩性)についての判断
相違点1について検討する。
上記1(1)ウにおいて、本件発明1について判断したことと同様、甲3には、甲3発明の「メルトブロー不織布」の本件値を、「0.5~4.0」とすることの技術的意義について何ら記載はないから、甲3発明において、相違点1に係る構成を採用することの動機付けはない。
そして、甲5、6を含め、その他の甲1、甲2及び甲4をみても、本件値を「0.5~4.0」の範囲とすることの開示はない。
そうすると、甲3発明において、相違点1の構成を採用することは、当業者であっても容易に想到し得るものではない。
したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲1、甲2、甲4~6に記載された事項を含めて検討しても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2) 本件発明2~4
上記第2のとおり、本件発明2~4は、本件発明1の全ての構成を有するものであり、いずれも上記相違点1に係る本件発明1の構成を有している。
そうすると、本件発明2~4と甲3発明を対比すると、少なくとも、上記相違点1の構成で相違するから、本件発明1について判断したことと同様の理由により、本件発明2~4も、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
4 小括
したがって、異議申立人の主張する申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)は理由がない。
第6 むすび
以上の次第であるから、特許異議の申立ての理由及び異議申立人の提出した証拠によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2025-700342