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特許異議申立

2021-701029

担持触媒

審判番号
2021-701029
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-035420
登録番号
6864300
請求日
2021年10月28日
審決日
2022年09月06日
公報発行日
2022年12月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社フルヤ金属
  • 【権利者代理人】今下 勝博
  • 【権利者代理人】岡田 賢治
  • 【権利者】国立大学法人京都大学
  • 【権利者代理人】今下 勝博
  • 【異議申立人】加藤 純子
審判長/審判官
  • 審判長 原 賢一
  • 審判官 宮澤 尚之
  • 審判官 後藤 政博
分類
P1651.113-YAA(B01J) / P1651.121-YAA(B01J) / P1651.537-YAA(B01J) / P1651.851-YAA(B01J) / P1651.852-YAA(B01J) / P1651.853-YAA(B01J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第6864300号発明「担持触媒」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6864300号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の〔1~4〕について訂正することを認める。 特許第6864300号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6864300号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成27年2月28日に出願した特願2015-39662号の一部を、平成30年11月20日に新たな特許出願とした特願2018-217115号の一部を、さらに令和2年3月3日に新たな特許出願としたものであって、令和3年4月6日にその特許権の設定登録がされ、同年同月28日に特許掲載公報が発行された。 その後、その請求項1~4に係る特許に対して、令和3年10月28日に特許異議申立人加藤純子(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和4年2月16日付けで取消理由が通知され、同年4月22日に特許権者により意見書及び訂正請求書の提出がされ、同年6月13日に申立人により意見書の提出がされた。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和4年4月22日提出の訂正請求書による訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、特許法第120条の5第4項及び同条第9項で準用する同法第126条第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項1~4を訂正の単位として訂正することを求めるものであり、その内容(訂正事項)は、次のとおりである。なお、訂正箇所に下線を付した。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「前記Ru粒子は、Ruの単一組成を有し、かつ、前記担持体の表面での析出粒子であること」と記載されているのを、 「前記Ru粒子は、Ruの単一組成を有し、かつ、前記担持体の表面での析出粒子であり、かつ、平均粒子径が、3.14~100nmであること」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。 (2) 訂正事項2 明細書の段落【0007】に 「前記Ru粒子は、Ruの単一組成を有し、かつ、前記担持体の表面での析出粒子であること」と記載されているのを、 「前記Ru粒子は、Ruの単一組成を有し、かつ、前記担持体の表面での析出粒子であり、かつ、平均粒子径が、3.14~100nmであること」に訂正する。 (3) 訂正事項3 明細書の段落【0024】に 「有機溶媒は、多価アルコール、ブタノール、イソブタノール、エトキシエタノール、ジメチルホルムアミド、キシレン、N-メチルピロリジノン、ジクロロベンゼン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルラクテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、リエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル及びポリエチレングリコールモノメチルエーテルの中から選ばれる1種以上であることが好ましい。」と記載されているのを、 「有機溶媒は、多価アルコール、ブタノール、イソブタノール、エトキシエタノール、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリジノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル及びポリエチレングリコールモノメチルエーテルの中から選ばれる1種以上であることが好ましい。」に訂正する。 2 訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について)の判断 (1) 訂正事項1について 訂正事項1は、願書に添付された明細書の段落【0017】及び【0037】の記載に基づき、訂正前の請求項1に記載された「ナノ粒子として」の「Ru粒子」の「平均粒子径」を限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2) 訂正事項2について 訂正事項2は、前記訂正事項1により特許請求の範囲の記載が訂正されることに伴い、訂正後の特許請求の範囲の記載との整合を図るものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3) 訂正事項3について 訂正事項3のうち、列挙した有機溶媒から特定の有機溶媒を削除する訂正については、願書に添付された明細書の段落【0022】の「有機溶媒は、炭素数が2以上であり、還元性をもつ。」との記載と整合しない有機溶媒を削除して、段落【0024】の記載を段落【0022】の記載に整合させるためのものであるから、当該訂正は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 また、訂正事項3のうち、「リエチレングリコールモノメチルエーテル」との記載を「トリエチレングリコールモノメチルエーテル」とする訂正については、「リエチレングリコールモノメチルエーテル」との化合物が存在せず、当該記載が誤記であって、その正しい記載が「トリエチレングリコールモノメチルエーテル」であることは、当業者その他一般第三者からみても明らかであるから、当該訂正は、「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものであり、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号から第3号までに掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。 第3 本件特許請求の範囲の記載(本件発明) 前記第2のとおり、本件訂正請求は適法にされたものであるから、本件特許請求の範囲の記載は、次のとおりである(以下、各請求項に係る発明を、項番号に合わせて「本件発明1」などといい、纏めて「本件発明」という。)。 「【請求項1】 ナノ粒子としてRu粒子が担持体に担持された担持触媒において、 前記担持体は、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ及びカーボンナノホーンの中から選ばれる1種以上であり(但し、前記担持体が炭素ナノ繊維である場合を除く。)、 前記担持触媒の外表面に高分子保護材が存在せず、 前記Ru粒子は、Ruの単一組成を有し、かつ、前記担持体の表面での析出粒子であり、かつ、平均粒子径が、3.14~100nmであることを特徴とする担持触媒。 【請求項2】 前記高分子保護材を含有しないことを特徴とする請求項1に記載の担持触媒。 【請求項3】 前記ナノ粒子と前記担持体との間に前記高分子保護材が介在しないことを特徴とする請求項1又は2に記載の担持触媒。 【請求項4】 前記Ru粒子は、fcc構造を有していることを特徴とすることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の担持触媒。」 第4 特許異議の申立てについて 1 特許異議申立理由の概要 申立人が主張する特許異議申立理由は、概略、以下のとおりである。 ここで、申立人が提出した証拠方法は、次のものである。 甲第1号証:特開2006-281201号公報 甲第2号証:特開2010-189332号公報 甲第3号証:特開2010-202555号公報 甲第4号証:白崎高保、藤堂尚之編、「触媒調製」、株式会社講談社、 第1版、昭和49年11月10日、第45~59頁 甲第5号証:特開平9-168739号公報 (1) 申立理由1(甲第1号証を主たる証拠とした新規性・進歩性欠如) 設定登録時の請求項1~4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するか、又は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。 (2) 申立理由2(甲第2号証を主たる証拠とした新規性・進歩性欠如) 設定登録時の請求項1~4に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するか、又は、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。 (3) 申立理由3(甲第3号証を主たる証拠とした進歩性欠如) 設定登録時の請求項1~4に係る発明は、甲第3号証に記載された発明、並びに、甲第4号証及び甲第5号証に記載された周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2 取消理由通知書に記載した取消理由の概要 設定登録時の請求項1~3に係る特許に対して、当審において令和4年2月16日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 (1) 取消理由1(甲第1号証を主たる証拠とした新規性・進歩性欠如) 設定登録時の請求項1~3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するか、又は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。 (2) 取消理由2(甲第2号証を主たる証拠とした新規性・進歩性欠如) 設定登録時の請求項1~3に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するか、又は、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。 (3) 取消理由3(サポート要件違反) 設定登録時の請求項1~3に係る特許は、特許請求の範囲の記載が後記5(3)アの点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 3 申立人が主張する新たな取消理由の概要 令和4年6月13日付け意見書において、申立人が主張する新たな取消理由は、概略、以下のとおりである。 (1) 新たな取消理由(サポート要件違反) 請求項1~4に係る特許は、特許請求の範囲の記載が後記5(5)アの点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 4 各甲号証の記載内容について (1) 甲第1号証の記載事項 甲第1号証には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審が付した(以下同様。)。 ア 「【発明が解決しようとする課題】 【0012】 本発明の目的は、炭素材料を担持媒体とし可及的に微細且つ均一にナノメートルサイズの金属微粒子を担持して触媒等として有用な高い活性と耐久性を示す構造体を調製する新しい技術を提供することにある。 【0013】 本発明者らは鋭意検討を行なった結果、反応性に富むヘキサゴナル網面の端面(エッジ面)の含有率が高い炭素材料である炭素ナノ繊維を担持担体として用い、金属カルボニル化合物を金属微粒子源とすることによって、如上の目的が達成されることを見出し、本発明を導き出した。」 イ 「【0024】 実施例1~実施例7は、実施例4を除き、本発明に従う金属微粒子担持炭素ナノ繊維から成る構造体の調製例である。実施例4は、比較のために、担持媒体として活性炭を用いて同様の操作で合成した場合の結果を示すものである。」 ウ 「【0028】 〔実施例4〕 ルテニウム担持活性炭(Ru/AC)の合成 100mLの2口フラスコの片方に上部に三方コックをつけた冷却管、もう一方に活栓を付け、磁気撹拌子を加えて9Torrで減圧乾燥した後、フラスコ内をアルゴン雰囲気に置換した。活性炭(関東化学Cat.No. 01085-02)(300mg)とRu3(CO)12(95.8mg、0.15mmol)をフラスコに加え、0.04Torrで約10分減圧乾燥した後、再びアルゴン雰囲気に置換した。トルエン(50mL)をシリンジで加えて錯体を溶解した。この活性炭が懸濁した錯体溶液を24時間加熱還流した。反応物を室温まで冷却した後、メンブランろ紙を用いてろ取し、そのままトルエン(60mL)と引き続きエーテル(80mL)で洗浄した。得られた活性炭を30MLナスフラスコに移し、その上部に三方コックをつけた後、0.04Torrの減圧下、室温で乾燥することにより、ルテニウム担持活性炭(Ru/AC)(349.4mg)を得た。 以上のようにして得られたRu/ACのルテニウム担持量をICP-MSにより測定したところ、約1.3~1.4重量%であった。 また、得られたRu担持活性炭について、透過型電子顕微鏡(TEM)によりルテニウム金属微粒子の担持状態を確認した結果を図5に示す。図5から金属微粒子は活性炭表面にはあまり担持されておらず、活性炭特有の孔の中に入り込んでいるのが確認できる。平均粒子径を計測したところ約2.9 nmであった。」 エ 「【0036】 〔実施例12~16〕 トルエンの核水素化反応における炭素担持媒体の効果 100mLオートクレーブ用ガラス内管に実施例1から4、ならびに市販の5%ルテニウム炭素触媒(Ru/C)(エヌエーケムキャット社製)(5mg)とトルエン(3mL、2.61 g、28.3mmol)を加え、オートクレーブに設置した後、20~30気圧の水素を充填した。このオートクレーブを100℃の油浴につけ、5時間加熱撹拌した。反応容器を室温まで冷却した後、オートクレーブのコックを徐々に開放して常圧に戻した。反応物に内部標準物質としてn-オクタンを加え、ガスクロマトグラフによりトルエンの転化率ならびにメチルシクロヘキサンの収率を決定した。 ・・・ 【0038】 表2から、市販の5%ルテニウム炭素触媒は活性が低く、活性炭や魚骨型、円筒型積層炭素ナノ繊維担持のルテニウム触媒では、反応に再現性が見られないことがわかる。・・・」 (2) 甲第2号証の記載事項 甲第2号証には、次の事項が記載されている。 ア 「【0014】 単環芳香族炭化水素の部分水素化によりシクロヘキセンに代表されるシクロオレフィンを製造する方法としてベンゼンを部分水素化してシクロヘキセンを製造する方法においてはルテニウム触媒が用いられているが、ルテニウムは上記したように希少資源であり、また高価であることから、これを用いることなくシクロオレフィンを製造する方法が望まれる。また、従来のルテニウム触媒を用いる方法は、水を連続相、ベンゼンを分散相とし、激しく攪拌した二相混合系にルテニウム触媒を懸濁させ、ここに加圧水素を共存させる4相からなる反応場が不可欠であるので、よりシンプルな系、プロセス条件により、シクロオレフィンを製造する方法が望まれる。 【0015】 本発明は、このような従来の課題を解決すべくなされたものであり、単環芳香族炭化水素を部分水素化することによりシクロオレフィンを製造する際、ルテニウム触媒を用いることなく、かつシンプルな系、シンプルなプロセス条件で、高選択率でシクロオレフィンを製造する方法を提供することを目的とするものである。 【0016】 また、本発明は、この方法に用いられる触媒を提供することをも目的とするものである。 【課題を解決するための手段】 【0017】 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、従来単環芳香族炭化水素を触媒の存在下に部分水素化してシクロオレフィンを製造する際、その触媒としてルテニウムのみが有効であるとされていたところ、驚くべきことに、金を触媒として用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、この知見にもとづいて本発明をなしたものである。」 イ 「【0080】 比較例2〔Ru/C触媒の調製(1wt%、含浸法)〕 共栓付三角フラスコに乾燥トルエン100mlを入れ、これにAr雰囲気中でRu(acac)3(分子量398.4)100mgを加え、攪拌溶解させ、Ru(acac)3のトルエン溶液を作製した。Ar雰囲気を解除した後、これに十分に乾燥した高比表面積活性炭(関西熱化学(株)、比表面積:2000m2/g以上)2.54gを加えて懸濁液とし、さらに攪拌を続けた。次に、縣濁液を1Lの四つ口フラスコに移し、Ar気流中でトルエンを加熱蒸発除去した後、平底ビーカーに移し、引き続き乾燥機中、120℃で12時間乾燥した。Ru/Cは、水素化反応への使用に先立ち固定床流通型反応装置内でH2気流中(57.5ml/min)、300℃で1時間の還元処理を行って、活性炭担持金属微粒子ルテニウム触媒を調製した。金属微粒子ルテニウムの平均粒径は1.9nm、ルテニウムの担持量は1重量%であった。」 (3) 甲第3号証の記載事項 甲第3号証には、次の事項が記載されている。 ア 「【0011】 本発明に用いられる触媒は、ルテニウム及び白金(以下、単に「触媒金属」ともいう。)から選ばれる少なくとも1種の金属が活性炭担体に担持された触媒である。この触媒は活性炭を担体として、ルテニウム及び白金(プラチナ)から選ばれる少なくとも1種の金属が担持されている。ルテニウム及び/又は白金を用いることにより、これらの金属の触媒反応により、酸化反応、及びアルコールからのアルデヒド化合物への反応が促進されて、高い収率(選択率)でカルボニル化合物を効率的に製造することができる。 ルテニウムが担持された触媒(以下、単に「ルテニウム触媒」ともいう。)、及び白金が担持された触媒(以下、単に「白金触媒」ともいう。)のうち、コストが安いことからルテニウム触媒が好ましい。 【0012】 上記触媒における触媒金属の含有量は、上記触媒全体に対して、1質量%以上が好ましく、3質量%以上が好ましく、5質量%がより好ましく、10質量%が更に好ましい。また、触媒金属の含有量は、通常、50質量%以下であり、30質量%以下、又は20質量%以下とすることができる。 【0013】 上記触媒金属の平均粒子径は、1~100nmが好ましく、2~20nmが特に好ましい。触媒金属の平均粒子径が上記範囲内にあると、基質である上記アルコール、酸素及び触媒金属が良好な接触状態となり、効率的にアルコールを酸化させて、カルボニル化合物を形成させることができる。 【0014】 上記触媒の担体としては、大部分が炭素質の炭からなる物質であり、吸着能を有する活性炭が用いられる。この活性炭は、特に限定されないが、通常のものを用いることができる。 【0015】 上記触媒の比表面積は、500~2000m2/gが好ましく、800~1500m2/gが特に好ましい。触媒の比表面積が上記範囲内にあると、基質である上記アルコール、酸素及び触媒に担持された触媒金属が良好な接触状態となり、効率的にアルコールを酸化させて、カルボニル化合物を形成させることができる。 また、上記触媒の形状は特に限定されず、例えば粉末状、球状、円柱状のものが挙げられる。 【0016】 上記触媒としては、市販品等を用いることができる。この市販品としては、例えば、エヌ・イー ケムキャット株式会社製「Aタイプ」、エヌ・イー ケムキャット株式会社製「Bタイプ」、エヌ・イー ケムキャット株式会社製「Kタイプ」、及びエヌ・イー ケムキャット株式会社製「NXタイプ」等が挙げられる。」 イ 「【0051】 使用した触媒は以下の通りである。 (1)10%Ru/C(K);活性炭を担体とし、触媒全体に対して10質量%のルテニウムが担持された触媒(エヌ・イー ケムキャット株式会社製「Kタイプ」)である。 (2)10%Ru/C(NX);活性炭を担体とし、触媒全体に対して10質量%のルテニウムが担持された触媒(エヌ・イー ケムキャット株式会社製「NXタイプ」)である。 (3)5%Ru/C(A);活性炭を担体とし、触媒全体に対して5質量%のルテニウムが担持された触媒(エヌ・イー ケムキャット株式会社製「Aタイプ」)であり、である。 (4)5%Ru/C(WAKO);活性炭を担体とし、触媒全体に対して5質量%のルテニウムが担持された触媒(和光純薬工業株式会社製「ルテニウム-活性炭素(Ru5%)」)。 (5)10%Pd/C;活性炭を担体とし、触媒全体に対して10質量%のパラジウムが担持された触媒(エヌ・イー ケムキャット株式会社製「Kタイプ」)。 (6)10%Rh/C;活性炭を担体とし、触媒全体に対して10質量%のロジウムが担持された触媒(エヌ・イー ケムキャット株式会社製「Kタイプ」)。 (7)10%Au/C;活性炭を担体とし、触媒全体に対して10質量%の金が担持された触媒(エヌ・イー ケムキャット株式会社製「Kタイプ」)。 (8)10%Ir/C;活性炭を担体とし、触媒全体に対して10質量%のイリジウムが担持された触媒(エヌ・イー ケムキャット株式会社製「Kタイプ」)。 (9)5%Pt/C;活性炭を担体とし、触媒全体に対して5質量%のプラチナが担持された触媒(和光純薬工業株式会社製「白金-活性炭素(Pt5%)」)。」 (4) 甲第4号証の記載事項 甲第4号証には、次の事項が記載されている。 「2.2.2 担持触媒の調製法 A.調製法の分類と特性 活性成分の担持法は次の3種の方法に大別される. 1)含浸法(Impregnation) 2)混練法(Wet and dry mixing) 3)共沈法(Coprecipitation) これらの製法の中で,最も一般的な担持触媒の調製法として多用されているものは含浸法で,基本的には既知の物性を持つ担体を,焼成することによって所要成分に分解する金属塩の水溶液につけ,乾燥,焼成して調製する.」(第46頁) (5) 甲第5号証の記載事項 甲第5号証には、次の事項が記載されている。 「【0013】活性炭へのルテニウムの担持は、含浸法により行う。原料として使用されるルテニウム化合物は塩化ルテニウム、ルテニウムカルボニル錯体、ルテニウムアセチルアセトナート、ルテニウムシアン酸カリウム、ルテニウム酸カリウム、酸化ルテニウム、硝酸ルテニウム等であるが、特にルテニウムカルボニル錯体の使用が好ましい。これらのルテニウム化合物はアセトン、テトラヒドロフラン等の極性有機溶媒、または水に溶解させて活性炭に含浸させる。ルテニウム担持量はルテニウム金属として活性炭に対して0.1~20重量%、好ましくは1~5重量%である。担持量0.1重量%以下では触媒活性が低く、担持量20重量%以上では担持量を増やしてもアンモニア合成活性の向上が認められず、高価なルテニウムを多量に使用する意味がない。」 5 当審の判断 事案に鑑み、特許異議申立理由及び取消理由を纏めて検討する。 (1) 取消理由1及び申立理由1(甲第1号証を主たる証拠とした新規性・進歩性欠如)について ア 甲第1号証に記載された発明 甲第1号証の前記4(1)ウ及びエの記載を「ルテニウム触媒」に注目して整理すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「平均粒子径が約2.9nmのルテニウム金属微粒子が活性炭に担持されたルテニウム担持活性炭からなるルテニウム触媒であって、 ルテニウム担持活性炭は、2口フラスコ内をアルゴン雰囲気に置換し、活性炭(300mg)とRu3(CO)12(95.8mg、0.15mmol)をフラスコに加え、0.04Torrで約10分減圧乾燥した後、再びアルゴン雰囲気に置換し、トルエン(50mL)をシリンジで加えて錯体を溶解し、この活性炭が懸濁した錯体溶液を24時間加熱還流し、反応物を室温まで冷却した後、メンブランろ紙を用いてろ取し、そのままトルエン(60mL)と引き続きエーテル(80mL)で洗浄し、得られた活性炭をナスフラスコに移し、0.04Torrの減圧下、室温で乾燥することにより得られたものである、ルテニウム触媒。」 イ 本件発明1について (ア) 本件発明1と甲1発明の対比 a 本件発明1と甲1発明の対応関係は、次のとおりに解することができる。 (a) 甲1発明の「平均粒子径が約2.9nmのルテニウム金属微粒子」は、本件発明1の「ナノ粒子」としての「Ru粒子」に相当する。 (b) 甲1発明の「活性炭」は、本件発明1の「担持体」に相当し、「前記担持体は、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ及びカーボンナノホーンの中から選ばれる1種以上であり(但し、前記担持体が炭素ナノ繊維である場合を除く。)」との規定を満足する。 (c) 甲1発明の「ルテニウム担持活性炭からなるルテニウム触媒」は、本件発明1の「担持触媒」に相当する。 b 以上の点に照らすと、本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点は、次のように認定することができる。 (a) 一致点 「ナノ粒子としてRu粒子が担持体に担持された担持触媒において、 前記担持体は、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ及びカーボンナノホーンの中から選ばれる1種以上である(但し、前記担持体が炭素ナノ繊維である場合を除く。)、担持触媒。」 (b) 相違点 ・相違点1 本件発明1では、担持触媒の外表面に高分子保護材が存在していないのに対して、甲1発明では、その点が明らかでない点。 ・相違点2 本件発明1では、Ru粒子は、Ruの単一組成を有し、かつ、担持体の表面での析出粒子であるのに対して、甲1発明では、その点が明らかでない点。 ・相違点3 本件発明1では、Ru粒子の平均粒子径が3.14~100nmであるのに対して、甲1発明では、ルテニウム金属微粒子の平均粒子径が約2.9nmである点。 (イ) 相違点の検討 事案に鑑み、相違点3を検討すると、本件発明1と甲1発明の「平均粒子径」の数値は明らかに異なっているため、当該相違点は実質的なものである。 次に、相違点3に係る本件発明1の構成とすることの容易想到性について検討すると、甲第1号証には、前記4(1)アによれば、「炭素材料を担持媒体とし可及的に微細且つ均一にナノメートルサイズの金属微粒子を担持して触媒等として有用な高い活性と耐久性を示す構造体を調製する新しい技術を提供する」(段落【0012】)との課題を、「反応性に富むヘキサゴナル網面の端面(エッジ面)の含有率が高い炭素材料である炭素ナノ繊維を担持担体として用い、金属カルボニル化合物を金属微粒子源とすること」(段落【0013】)で解決するとの技術的事項が記載されている。 そして、甲1発明は、前記4(1)イによれば、当該技術的事項に対する比較例として示されたものであるから、上記課題やその解決手段と関係なく、「平均粒子径」のみを変更するとの動機付けがあるとはいえない。 したがって、甲1発明において、ルテニウム金属微粒子の平均粒子径を3.14~100nmとすることは、当業者によって容易想到な事項であるといえない。 (ウ) 申立人の主張についての検討 申立人は、(i)本件発明1の「平均粒子径」と甲1発明の「平均粒子径」が極めて近い数値であること、及び、(ii)本件特許明細書には、Ru粒子の平均粒子径を3.14~100nmの範囲に限定する技術的意義が示されておらず、当該数値範囲は金属粒子担持触媒分野における技術常識であることを論拠にして、甲第1号証に記載された発明に基づく新規性及び進歩性欠如を主張している(令和4年6月13日付け意見書第2頁「(2-1)甲第1号証を主たる証拠とした取消理由に係る被申立人の主張について」の項)。 しかしながら、前記(イ)で検討したとおり、甲第1号証には、甲1発明の「平均粒子径」を変更するとの動機付けが示されていないから、上述の論拠に関わらず、相違点3に係る本件発明1に係る構成をなすことは、当業者によって容易想到な事項であるといえない。 よって、申立人の上記主張は採用できない。 (エ) 小括 以上のとおりであるから、その余の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるといえないし、また、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 ウ 本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1の特定事項を全て含むものであり、少なくとも上記相違点3で相違するから、前記イで検討した理由により、本件発明2~4は、甲第1号証に記載された発明であるといえないし、また、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 エ 取消理由1及び申立理由1についての結論 以上のとおりであるから、取消理由1及び申立理由1に理由はない。 (2) 取消理由2及び申立理由2(甲第2号証を主たる証拠とした新規性・進歩性欠如)について ア 甲第2号証に記載された発明 甲第2号証の前記4(2)イの記載を「活性炭担持金属微粒子ルテニウム触媒」に注目して整理すると、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 「平均粒子径が1.9nmの金属微粒子ルテニウムが活性炭に担持された、活性炭担持金属微粒子ルテニウム触媒であって、 活性炭担持金属微粒子ルテニウム触媒は、共栓付三角フラスコに乾燥トルエン100mlを入れ、これにAr雰囲気中でRu(acac)3100mgを加え、攪拌溶解させ、Ru(acac)3のトルエン溶液を作製し、Ar雰囲気を解除した後、これに十分に乾燥した高比表面積活性炭2.54gを加えて懸濁液とし、さらに攪拌を続け、この縣濁液を1Lの四つ口フラスコに移し、Ar気流中でトルエンを加熱蒸発除去した後、平底ビーカーに移し、引き続き乾燥機中、120℃で12時間乾燥し、固定床流通型反応装置内でH2気流中300℃で1時間の還元処理を行って調製されたものである、活性炭担持金属微粒子ルテニウム触媒。」 イ 本件発明1について (ア) 本件発明1と甲2発明の対比 a 本件発明1と甲2発明の対応関係は、次のとおりに解することができる。 (a) 甲2発明の「平均粒子径が1.9nmの金属微粒子ルテニウム」は、本件発明1の「ナノ粒子」としての「Ru粒子」に相当する。 (b) 甲2発明の「活性炭」は、本件発明1の「担持体」に相当し、「前記担持体は、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ及びカーボンナノホーンの中から選ばれる1種以上であり(但し、前記担持体が炭素ナノ繊維である場合を除く。)」との規定を満足する。 (c) 甲2発明の「活性炭担持金属微粒子ルテニウム触媒」は、本件発明1の「担持触媒」に相当する。 b 以上の点に照らすと、本件発明1と甲2発明の一致点及び相違点は、次のように認定することができる。 (a) 一致点 「ナノ粒子としてRu粒子が担持体に担持された担持触媒において、 前記担持体は、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ及びカーボンナノホーンの中から選ばれる1種以上である(但し、前記担持体が炭素ナノ繊維である場合を除く。)、担持触媒。」 の点で一致し、以下の点で一応相違しているといえる。 (b) 相違点 ・相違点4 本件発明1では、担持触媒の外表面に高分子保護材が存在していないのに対して、甲2発明では、その点が明らかでない点。 ・相違点5 本件発明1では、Ru粒子は、Ruの単一組成を有し、かつ、担持体の表面での析出粒子であるのに対して、甲2発明では、その点が明らかでない点。 ・相違点6 本件発明1では、Ru粒子の平均粒子径が3.14~100nmであるのに対して、甲2発明では、金属微粒子ルテニウムの平均粒子径が1.9nmである点。 (イ) 相違点の検討 事案に鑑み、相違点6を検討すると、本件発明1と甲2発明の「平均粒子径」の数値は明らかに異なっているため、当該相違点は実質的なものである。 次に、相違点6に係る本件発明1の構成とすることの容易想到性について検討すると、甲第2号証には、前記4(2)アによれば、「ベンゼンを部分水素化してシクロヘキセンを製造する方法においてはルテニウム触媒が用いられているが、ルテニウムは上記したように希少資源であり、また高価であることから、これを用いることなくシクロオレフィンを製造する方法が望まれる」(段落【0014】)との課題を、「金を触媒として用いること」(段落【0017】)で解決するとの技術的事項が記載されている。 そして、甲2発明は、前記4(2)イによれば、当該技術的事項に対する比較例として示されたものであるから、上記課題やその解決手段と関係のなく、平均粒子径のみを変更するとの動機付けがあるとはいえない。 したがって、甲2発明において、金属微粒子ルテニウムの平均粒子径を3.14~100nmとすることは、当業者によって容易想到な事項であるといえない。 (ウ) 申立人の主張についての検討 申立人は、(i)本件特許明細書には、Ru粒子の平均粒子径を3.14~100nmの範囲に限定する技術的意義が示されておらず、当該数値範囲は金属粒子担持触媒分野において一般的な数値範囲であること、及び、(ii)金属粒子担持触媒において粒子径を調整することは当該分野の慣用手法であることを論拠にして、甲第2号証に記載された発明に基づく新規性及び進歩性欠如を主張している(令和4年6月13日付け意見書第4頁「(2-2)甲第2号証を主たる証拠とした取消理由に係る被申立人の主張について」の項)。 しかしながら、前記(イ)で検討したとおり、甲第2号証には、甲2発明の「平均粒子径」を変更するとの動機付けが示されていないから、上述の論拠に関わらず、相違点6に係る本件発明1に係る構成をなすことは、当業者によって容易想到な事項であるといえない。 よって、申立人の上記主張は採用できない。 (エ) 小括 以上のとおりであるから、その余の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明であるといえないし、また、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 ウ 本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1の特定事項を全て含むものであり、少なくとも上記相違点6で相違するから、前記イで検討した理由により、本件発明2~4は、甲第2号証に記載された発明であるといえないし、また、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 エ 取消理由2及び申立理由2についての結論 以上のとおりであるから、取消理由2及び申立理由2に理由はない。 (3) 取消理由3(サポート要件違反)について ア 具体的な指摘事項 当該取消理由3は、要するに、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0002】、【0005】及び【0006】の記載から、本件発明の課題が、触媒の性能を低下させる高分子保護材を用いず、触媒の効果を十分に発揮できる、(fcc)Ruナノ粒子を担体に担持した担持触媒を提供することであると認定した上で、設定登録時の請求項1~3に係る発明は、Ru粒子がfcc構造を有していることを特定しておらず、当業者において本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえないから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号所定の要件に違反している、というものである。 イ 取消理由3についての検討 本件発明の課題について改めて検討すると、発明の詳細な説明には、「従来、化学反応触媒又は燃料電池などでは、カーボン系の担体にナノ粒子を担持した不均一系触媒が用いられている。また、ボイラー又は排ガスの浄化などでは、セラミックス系の担体にナノ粒子を担持した不均一系触媒が用いられている。」(段落【0002】)との背景技術を前提として、「しかし、ナノ粒子の合成時に用いた高分子保護材が触媒中に残っていると、触媒の効果が十分に発揮されない場合がある。高分子保護材の除去を目的としてナノ粒子の精製を繰り返すと、精製回数が増加するにつれて得られるナノ粒子の収量が少なくなるという問題である。」(段落【0005】)としたうえで、「発明の目的は、触媒の性能を低下させる高分子保護材を用いず、触媒の効果を十分に発揮できる担持触媒を提供することである。」(段落【0006】)と記載されている。 また、発明の詳細な説明の段落【0002】には、「不均一系触媒に用いるナノ粒子として(fcc)Ruナノ粒子が開示されている(例えば、特許文献1、又は非特許文献1を参照。)。非特許文献1では、(fcc)Ruナノ粒子を担体に担持して不均一系触媒として使用する場合、ポリビニルピロリドンなどの高分子保護材を用いてナノ粒子を合成・精製した後に、得られたナノ粒子を担体に担持している。」と記載されているものの、「本発明に係る担持触媒では、前記Ru粒子は、fcc構造を有していることが好ましい。hcp構造を有するRu粒子を担持させた触媒と比較し、異なる触媒活性を得ることができる。」(段落【0010】)及び「図4に実施例2AのXRDパターンを示す。・・・図4において、Ruのパターンは(fcc)Ruのパターン及び(hcp)Ruのパターンを含むことが示されていた。」(段落【0038】)の記載を参酌すれば、段落【0002】の前記記載は、背景技術における「担体にナノ粒子を担持した不均一系触媒」の一例を示したものであると理解できる。 したがって、これら事項を踏まえると、本件発明の課題は、触媒の性能を低下させる高分子保護材を用いず、触媒の効果を十分に発揮できる、担体にナノ粒子を担持した担持触媒を提供することといえる。 そして、本件発明1~4では、前記第3のとおり、「ナノ粒子としてRu粒子が担持体に担持された担持触媒」との特定や、「前記担持触媒の外表面に高分子保護材が存在せず」との特定がされていることから、本件発明1~4は、発明の詳細な説明の段落【0014】等の記載を参酌すれば、当業者において本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 ウ 申立人の主張についての検討 申立人は、(i)甲第2号証、甲第5号証、甲第6号証(特開2002-186854号公報)及び甲第7号証(特開2004-216337号公報)等の記載から、高分子保護材を用いずにRu担持触媒が製造されることが一般的であること、並びに、(ii)本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0002】の記載を論拠にして、本件発明の課題は、製造プロセス中で高分子保護材を必要とする(fcc)Ru粒子において、高分子保護材の除去することであり、本件発明1は、課題を解決するための手段が反映されていない旨を主張している(令和4年6月13日付け意見書第6頁「(3)サポート要件違反に係る被申立人の主張について」の項)。 しかしながら、サポート要件の適否は、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載に関する問題であるから、その判断は、第一次的にはこれらの記載に基づいてなされるべきであり、課題の認定、抽出に関しても、例外的な事情(発明の詳細な説明に課題に関する記載が全くない等)がある場合でない限りは同様であるといえる。したがって、出願時の技術水準等は、その記載内容を理解するために補助的に参酌されるべき事項にすぎず、課題を抽出するための事項として扱われるべきものではないものと解される(知的財産高等裁判所判決 平成30年5月24日言渡(平成29年(行ケ)第10129号))。 しかも、甲第2号証、甲第5号証、甲第6号証及び甲第7号証に記載された事項は、本件特許明細書の発明の詳細な説明中で言及されていないものであるから、本件発明が解決しようとする課題を認定するにあたり、このような、発明の詳細な説明に言及のない従来技術を取り込んで判断することは妥当であるとはいえない。 また、発明の詳細な説明の段落【0002】の「不均一系触媒に用いるナノ粒子として(fcc)Ruナノ粒子が開示されている(例えば、特許文献1、又は非特許文献1を参照。)。非特許文献1では、(fcc)Ruナノ粒子を担体に担持して不均一系触媒として使用する場合、ポリビニルピロリドンなどの高分子保護材を用いてナノ粒子を合成・精製した後に、得られたナノ粒子を担体に担持している。」との記載は、前記イで検討したとおり、背景技術における「担体にナノ粒子を担持した不均一系触媒」の一例を示したものにすぎないから、段落【0002】の当該記載は、本件発明の課題を限定する理由にならない。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 エ 取消理由3についての結論 以上のとおりであるから、取消理由3に理由はない。 (4) 申立理由3(甲第3号証を主たる証拠とした進歩性欠如)について ア 甲第3号証に記載された発明 甲第3号証の前記4(3)ア及びイの記載を「ルテニウム触媒」に注目して整理すると、甲第3号証には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。 「平均粒子径が1~100nmであるルテニウムが活性炭に担持されたルテニウム触媒であって、エヌ・イー ケムキャット株式会社製「Kタイプ」、「NXタイプ」、「Aタイプ」又は和光純薬工業株式会社製「ルテニウム-活性炭素(Ru5%)」である、ルテニウム触媒。」 イ 本件発明1について (ア) 本件発明1と甲3発明の対比 a 本件発明1と甲3発明の対応関係は、次のとおりに解することができる。 (a) 甲3発明の「平均粒子径が1~100nmであるルテニウム」は、本件発明1の「ナノ粒子」としての「Ru粒子」に相当する。 (b) 甲3発明の「活性炭」は、本件発明1の「担持体」に相当し、「前記担持体は、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ及びカーボンナノホーンの中から選ばれる1種以上であり(但し、前記担持体が炭素ナノ繊維である場合を除く。)」との規定を満足する。 (c) 甲3発明の「ルテニウムが活性炭に担持されたルテニウム触媒」は、本件発明1の「担持触媒」に相当する。 b 以上の点に照らすと、本件発明1と甲3発明の一致点及び相違点は、次のように認定することができる。 (a) 一致点 「ナノ粒子としてRu粒子が担持体に担持された担持触媒において、 前記担持体は、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ及びカーボンナノホーンの中から選ばれる1種以上である(但し、前記担持体が炭素ナノ繊維である場合を除く。)、担持触媒。」 (b) 相違点 ・相違点7 本件発明1では、担持触媒の外表面に高分子保護材が存在していないのに対して、甲3発明では、その点が明らかでない点。 ・相違点8 本件発明1では、Ru粒子は、Ruの単一組成を有し、かつ、担持体の表面での析出粒子であるのに対して、甲3発明では、その点が明らかでない点。 ・相違点9 本件発明1では、Ru粒子の平均粒子径が3.14~100nmであるのに対して、甲3発明では、ルテニウムの平均粒子径が1~100nmである点。 (イ) 相違点の検討 相違点7を検討すると、甲3発明は、市販品である「エヌ・イー ケムキャット株式会社製「Kタイプ」、「NXタイプ」、「Aタイプ」又は和光純薬工業株式会社製「ルテニウム-活性炭素(Ru5%)」」であるところ、当該市販品の担持触媒の外表面に高分子保護材が存在していないことを示す証拠はないから、当該相違点は実質的なものといえる。 また、市販品である「エヌ・イー ケムキャット株式会社製「Kタイプ」、「NXタイプ」、「Aタイプ」又は和光純薬工業株式会社製「ルテニウム-活性炭素(Ru5%)」」は、特定な製造方法によって製造された物であるから、当該製造方法を甲第4号証及び甲第5号証に記載された含浸法(前記4(4)及び(5)参照。申立人は、ポリビニルピロリドンといった分散剤(高分子保護材)を使用しない方法であると主張している。)に変更する動機付けも存在しない。 したがって、甲3発明において、相違点7に係る本件発明1に係る構成をなすことは、当業者によって容易想到な事項であるといえない。 (ウ) 小括 以上のとおりであるから、その余の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明、並びに、甲第4号証及び甲第5号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 ウ 本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1の特定事項を全て含むものであり、少なくとも上記相違点7で相違するから、前記イで検討した理由により、本件発明2~4は、甲第3号証に記載された発明、並びに、甲第4号証及び甲第5号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 エ 申立理由3についての結論 以上のとおりであるから、申立理由3に理由はない。 (5) 申立人が主張する新たな取消理由(サポート要件違反)について ア 具体的な指摘事項 (ア) Ru粒子の平均粒子径について 本件特許明細書において引用した特許文献1(国際公開第2013/038674号)において、高分子保護材はルテニウム微粒子の凝集防止として添加することが説明され、そして、凝集の生成が予測困難であることが当業者の一般常識であることを鑑みると、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された実施例1及び2の評価結果(Ru粒子の平均粒子径がそれぞれ3.34nm及び3.14nm)をもって、平均粒子径が数十から100nmの範囲においてまで、本件発明の課題を解決できると当業者が認識できないから、特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たさない(令和4年6月13日付け意見書第8頁「(4-1)Ru粒子の平均粒子径について」の項)。 (イ) Ru粒子の生成メカニズムについて 本件発明1の「Ru粒子」が、特許権者の主張した「有機溶媒によって還元され、担持体の表面でRu粒子の核生成及び核成長が起こる」というメカニズムから得られたものであると限定的に解釈すべきであると仮定すると、特許請求の範囲において、「Ru粒子」と記載するたけでは、他のメカニズムで得られたRu粒子を含むため、特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たさない(同意見書第9頁「(4-2)Ru粒子の生成メカニズムについて」の項)。 イ 申立人が主張する新たな取消理由についての検討 (ア) Ru粒子の平均粒子径について 前記特許文献1には、コロイド溶液中の析出ルテニウム微粒子の凝集防止のために高分子保護材を添加することが記載されている(段落[0015]、[0025]~[0052])ことからして、申立人が主張する一般常識は、コロイド溶液又は分散溶液中の微粒子の凝集性を示しているものといえる。他方、本件発明1~4の「Ru粒子」は、担持体表面での析出粒子である。そして、担持体表面での析出粒子が、コロイド溶液又は分散溶液中の析出粒子と同様の凝集性を示すことが技術常識であるとの証拠もないから、申立人の主張は、その前提が誤っているから採用できない。 加えて、前記(3)イで検討したとおり、本件発明の課題は、触媒の性能を低下させる高分子保護材を用いず、触媒の効果を十分に発揮できる、担体にナノ粒子を担持した担持触媒を提供することであり、本件発明1~4において、「ナノ粒子としてRu粒子が担持体に担持された担持触媒」であって、「前記担持触媒の外表面に高分子保護材が存在せず」とのことが特定されることによって、本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえるから、本件発明1~4のRu粒子の平均粒子径が数十から100nmの範囲であったとしても、実施例1及び2と同様に、本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 (イ) Ru粒子の生成メカニズムについて 本件特許明細書の発明の詳細な説明の子細をみても、本件発明1の「Ru粒子」が、「有機溶媒によって還元され、担持体の表面でRu粒子の核生成及び核成長が起こる」というメカニズムから得られたものであると限定的に解釈すべき理由はないから、申立人の前記ア(イ)における主張は採用できない。 ウ 申立人が主張する新たな取消理由についての結論 以上のとおりであるから、申立人が主張する新たな取消理由に理由はない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、請求項1~4に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由、及び、取消理由通知書に記載した取消理由によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-701029

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