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特許異議申立

2022-700711

洗濯用シート

審判番号
2022-700711
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-513840
登録番号
7008804
請求日
2022年07月25日
審決日
2023年03月29日
公報発行日
2023年06月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
  • 【権利者代理人】阿部 達彦
  • 【権利者代理人】渡部 崇
  • 【異議申立人】森田 弘潤
審判長/審判官
  • 審判長 亀ヶ谷 明久
  • 審判官 瀬下 浩一
  • 審判官 門前 浩一
分類
P1651.537-YAA(C11D) / P1651.113-YAA(C11D) / P1651.121-YAA(C11D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第36条、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7008804号発明「洗濯用シート」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7008804号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。 特許第7008804号の請求項1-8に係る特許を維持する。

理由

理 由 特許第7008804号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。 特許第7008804号の請求項1-8に係る特許を維持する。 第1 手続の経緯 本件特許に係る出願は、2018年(平成30年)9月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年9月8日 (KR)韓国)を国際出願日とする出願であって、令和3年4月20日付けで拒絶理由が通知され、同年7月21日に意見書及び手続補正書が提出され、令和4年1月13日に特許権の設定登録がされ、同年同月29日に特許掲載公報が発行され、その後、同年7月25日に特許異議申立人 森田 弘潤により特許異議の申立てがされたものであり、当審は、同年9月15日付けで取消理由を通知し、特許権者は、その指定期間内である同年11月10日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、その内容を「本件訂正」という。)を行い、特許権者から訂正請求があったことを、令和5年1月5日付けで特許異議申立人に通知し、特許異議申立人は、同年2月10日に意見書を提出した。 第2 本件訂正の適否についての判断 1 本件訂正の内容 特許請求の範囲の請求項1に「前記洗濯用シートは、0.4,~0.9(g/cm3)の気泡度を有し、」と記載されているのを、「前記洗濯用シートは、0.5~0.9(g/cm3)の気泡度を有し、」に訂正する。 2 一群の請求項について 訂正事項に係る訂正前の請求項1~8について、請求項2~5は請求項1を引用しており、請求項6及び7は請求項1を引用する請求項5を引用しており、請求項8は請求項1を引用する請求項5を引用する請求項7を引用するものであって、訂正事項によって記載が訂正される請求項1~8に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~8に対応する訂正後の請求項1~8は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 3 訂正事項が全ての訂正要件に適合している事実の説明 (1)訂正の目的について 訂正事項は、訂正前の請求項1において、洗濯用シートが、「0.5,~0.9(g/cm3)の気泡度を有」することを限定するものである。 これは特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 (2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記(1)の理由から明らかなように、訂正事項は、洗濯用シートの気泡度の数値範囲をさらに限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。 また、訂正事項は、訂正前の請求項1の記載以外に、訂正前の請求項2~8の記載について訂正するものではなく、請求項2~8のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。 (3)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項は、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明に基づいて導き出される構成である。 願書に添付した明細書の段落【0017】には、 「望ましくは、前記気泡度(g/cm2)は、0.5~0.9、より望ましくは0.6~0.8を有し得る。」 との記載がなされている。 したがって、当該訂正事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。 第3 本件特許発明 上記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~8に係る発明は、令和4年11月10日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件特許発明1」~「本件特許発明8」、まとめて「本件特許発明」ともいう。)である。 「【請求項1】 水溶性高分子マトリクスの内部に少なくとも一つの洗濯成分が分布している洗濯用シートであって、 前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコールであり、 前記洗濯用シートは、0.5~0.9(g/cm3)の気泡度を有し、 前記ポリビニルアルコールは、ガラス転移温度Tgが62~75℃であることを特徴とする洗濯用シート。 【請求項2】 前記気泡度が、0.6~0.8(g/cm3)であることを特徴とする請求項1に記載の洗濯用シート。 【請求項3】 ドレープ剛軟度が、3.5~7.5cmであることを特徴とする請求項1に記載の洗濯用シート。 【請求項4】 前記ガラス転移温度が、62~73℃であることを特徴とする請求項1に記載の洗濯用シート。 【請求項5】 前記洗濯用シートが、界面活性剤、ビルダー及び香からなる群より選択されたいずれか一つ以上の成分をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の洗濯用シート。 【請求項6】 前記ポリビニルアルコールの総含量が、乾燥後のシートの総重量に対して30~50重量%である請求項5に記載の洗濯用シート。 【請求項7】 前記界面活性剤の総含量が、乾燥後のシートの総重量に対して30~60重量%であることを特徴とする請求項5に記載の洗濯用シート。 【請求項8】 前記界面活性剤が、炭素数8~18のアルキル硫酸塩であるアルカリ金属塩であることを特徴とする請求項7に記載の洗濯用シート。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 理由(サポート要件)本件特許の特許請求の範囲の記載は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものである。 本件特許発明の課題は、本願明細書の【0007】~【0010】、特に【0009】の記載からみて、「壊れにくく、裁断が容易な洗濯用シートを提供すること」であると認められる。 ここで、本件特許発明1は、請求項1の記載からみて、「0.4~0.9(g/cm3)の気泡度を有し」なる発明特定事項を含む。 しかし、本件特許明細書の【表1】からみて、区分03~区分07の気泡度が0.5~0.9であるものと異なり、区分02の気泡度0.4(g/cm3)のものは、その評価が、溶解度が不足であり、裁断の便利性が1(不良)であり、上記課題を解決できるものとはいえないし、同【0017】において「望ましくは、前記気泡度(g/cm2)は、0.5~0.9、より望ましくは0.6~0.8を有し得る。前記範囲から外れる場合、シートの製造は容易となるが、水によく溶けず、所望の量だけを破れて使いにくくなるか、溶解は容易であるが、製造時においてよく切れるという問題が発生し得る。」と記載されていることからも、「0.4~0.9(g/cm3)の気泡度を有し」なる発明特定事項を含む本件特許発明1は、明らかに本願発明の課題を解決できない態様を含むといえる。 したがって、発明の詳細な説明の記載から、本件特許発明1まで拡張ないし一般化できるとはいえない。 また、本件特許発明1を引用し、0.4~0.9(g/cm3)の気泡度を有し」なる発明特定事項を含む本件特許発明3~8についても同様である。 第5 前記第4における理由(サポート要件)について 1 判断 本件特許発明の課題は、本件特許明細書の【0007】~【0010】、特に【0009】の記載からみて、「壊れにくく、裁断が容易な洗濯用シートを提供すること」であると認められる。 そして、前記訂正により、本件特許発明1はその発明特定事項である気泡度は「0.5~0.9(g/cm3)」となり、本件特許明細書の実施例の記載からみて、気泡度が「0.5~0.9(g/cm3)」である洗濯用シートは前記課題を解決できるといえる。 そうすると、発明の詳細な説明の記載から、本件特許発明1まで拡張ないし一般化できないとはいえない。 また、本件特許発明1を引用し、「0.5~0.9(g/cm3)の気泡度を有し」なる発明特定事項を含む本件特許発明3~8についても同様である。 2 特許異議申立人の主張及び当審の判断 ア 特許異議申立人は、令和5年1月20日付けの意見書において「然るところ、被申立人がその根拠とする表1において用いられているのは、本件明細書の段落【0062】によれば、ここで用いられているのは「PVA(鹸化度86.5%、平均重合度500)」であるところ、これが本件訂正発明の「ガラス転移温度Tgが62~75℃である」という規定を充足していることに関しては、何ら確認がなされておりません。 ・・・ 以上の被申立人主張を前提とすれば、鹸化度が86.5%であるポリビニルアルコールではポリビニルアルコールは約58℃以下のガラス転移温度を有することとない、本件発明の実施態様ではないことになりますが、上述のとおり、上記表1の実施例では鹸化度86.5%のポリビニルアルコールが用いられているため、そのガラス転移温度は約58℃以下ということになり、本件発明の「前記ポリビニルアルコールは、ガラス転移温度Tgが62~75℃」の数値範囲外ということになります。 ・・・そして、(本件訂正発明の範囲である)ガラス転移温度Tgが62~75℃のポリビニルアルコールを用いた場合にも、気泡度と裁断性などの効果との関係に関し、上記表1などと同じ傾向を示すか否かは不明という他なく、このことが技術常識から自明であるとも認められません。 ・・・ 然るところ、表1では、気泡度が本件訂正発明の数値範囲内である0.5ないし0.6(g/cm3)のサンプル03,04においては、溶解度が「普通」という評価となっており、気泡度が0.7ないし0.95(g/cm3)のサンプル05~08の「優秀」とは明白な差があることは明らかです。さらに、気泡度が本件訂正発明の数値範囲内である0.8ないし0.9(g/cm3)のサンプル06,07においては、物性結果が「△」となっており、本件訂正により明確にその効果を否定し権利範囲外となった、0.4(g/cm3)のサンプル02の評価結果すらも下回る結果となっております。」と主張する。 イ 確かに、表1において用いられているポリビニルアルコールは、「ガラス転移温度Tgが62~75℃」の数値範囲内か否かは明らかでないが、本件特許明細書の【0077】の【表4】からみて、「ガラス転移温度Tgが62~75℃」の数値範囲のものは物性結果が良好であるから、表1において用いられているポリビニルアルコールの「ガラス転移温度Tgが62~75℃」の数値範囲内となれば、物性結果が悪くなることはあり得ず、表1などと同じ傾向を示すことは、明らかであり、物性結果が「△(製造良好)」であれば、前記課題を解決できるといえる。 そうすると、特許異議申立人の前記主張は採用できない。 第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 特許異議申立人の主張は以下のとおりである。 1 理由1(明確性要件)本件特許の特許請求の範囲の記載は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものである。 特許法36条6項2号は、特許請求の範囲の記載に関し、特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨規定するが、特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断される。 然るところ、本件特許発明1では、「前記ポリビニルアルコールは、ガラス転移温度Tgが62~75℃であることを特徴とする」と記載されているように、ガラス転移温度の数値範囲が本件発明の特徴であることが記載され、さらに、本件特許の審査段階における令和3年7月21日付け意見書において、特許権者は「本願の当初明細書には、ガラス転移温度を所望の範囲内にすることで、シートが容易に破れるようにし、製作を容易にすることが記載されています(当初明細書の段落[0027]及び[0030])。このような技術的効果は、引用文献1及び2には記載も示唆もされておらず、本願発明で見出した有利な効果です。また、当業者といえども、ポリビニルアルコールのガラス転移温度を62~75℃とすることによる技術的効果について記載も示唆もされていない引用文献1及び2に基づいて、本願発明の洗濯用シートを想到することは容易ではありません」と主張し、ガラス転移温度の数値範囲を強調して特許が付与されたという経緯があるのであるから、その明確性については厳密な定義が求められることは言うまでもない。 然るところ、例えば甲第3号証(技術レポート No.T1704「【技術資料】[基礎講座]高分子物性の世界 1~ガラス転移温度~」、http ://www.tosoh-arc.co.jp/techrepo/files/tarc00498/Tl704Y.pdf)において、ガラス転移を評価する代表的な方法を下記の4種類が存在し、「いずれもガラス転移温度を評価する手法ですが、得られた値は必ずしも一致しません」と記載されている。 「〇1(当審注:原文は丸付き数字であるが、○の次に数字で表す。以下同じ。)DSC法ガラス転移前後で比熱が変化することを利用します。 〇2TMA法ガラス転移前後で熱膨張係数が変化することを利用します。 〇3PVT法ガラス転移前後で密度の温度依存性が変化することを利用します。 〇4DMA法ガラス転移前後で弾性率が変化し、位相差tanδがピークを示すことを利用します。」 さらに、「また、一つの手法の中でも、評価条件で変化します」「DMA以外の手法でも、例えば、昇温速度を変えると、ガラス転移温度は変わります」「ガラス転移温度は必ずしも固定された値ではなく、幅を持っていることが分かります。文献値と比較する場合は、測定方法や条件を合わせることが重要となります」と記載されており、手法が同じでもその測定条件によりその値が異なるというのが技術常識である。 実際、例えば本件特許の審査段階でも引用文献3として引用されている甲第4号証(特表2009-534493号公報)の段落【0107】において、「完全に鹸化されたポリビニルアルコールは、85℃のガラス転移温度、および228℃の融点を有する。部分加水分解(87~89%)生成物の対応する数値は、かなり低く、それぞれ、約58℃、186℃である」と記載され、被申立人自身も令和3年7月11日付の意見書において「ここで、引用文献1の実施例では、鹸化度が72~88%であるポリビニルアルコールが使用されているため(引用文献1の表1及び表5)、引用文献1の実施例で用いられているポリビニルアルコールは約5 8℃以下のガラス転移温度を有することとなります。すなわち、引用文献1は、58℃超のガラス転移温度を有するポリビニルアルコールを用いて製造された洗濯用シートを実質的に開示しているとは言えません」と述べているように、ポリビニルアルコールのガラス転移温度がポリビニルアルコールの鹸化度に依存するというのが技術常識である。 しかしながら、例えば、同様の鹸化度を有するポリビニルアルコールでも、その測定方法や測定条件によりガラス転移温度の値は異なっており、上記甲第4号証(特表2009-534493号公報)では、鹸化度が87~89%で約58℃とされているが、下記の文献ではこれと異なる値となっている。 例えば、甲第5号証(Ghent University Faculty of Pharmaceutical Sciences 2016 "Partially hydrolyzed polyvinyl alcohol as functional excipient in oral solid dosage forms prepared via extrusion")の77頁によれば、鹸化度が88%のポリビニルアルコールのガラス転移温度はDSC法(昇温速度:10℃/min)で1回目で45.7℃、2回目で67.0℃とされている。さらに、甲第6号証(Journal of Food Engineering 191?199,vol.87(2008) "The effect of the degree of hydrolysis of the PVA and the plasticizer concentration on the color, opacity, and thermal and mechanical properties of films based on PVA and gelatin blends")の195頁のTable2によると、鹸化度が88%で、DSC法で1回目で53.4℃、2回目で63.6℃とされている。また、甲第7号証(Ionics, published online: 20 April 2017 "Effect of hydrolysis degree and mass molecular weight on the structure and properties of PVA films")の Tablel、Table3では、ポリビニルアルコールのガラス転移温度は、鹸化度が87~89%では、DSC法で1回目で27~29℃、2回目で68~70℃とされている。 このように、測定方法や測定条件の違いにより、同じ構造のポリビニルアルコールでも、ガラス転移温度の値が大きく異なるのであるから、ガラス転移温度を規定するに際し、その点を明確に定義しない場合には、その数値範囲の技術的意味を一義的に特定できないことになり、明確性要件違反の無効理由を包含することになる。しかしながら、本件特許発明1においては、「前記ポリビニルアルコールは、ガラス転移温度Tgが62~75℃である」と規定しているのみで、その測定方法や測定条件は一切記載されていないのであるから、本件発明が明確性要件を充足しないことは明らかと言える。 この点、本件明細書の段落【0079】では、「イ.Tg測定 Mettler-Toledo社のheat Flux DSCで昇温速度10℃/minで測定した」と記載されており、実施例ではDSC法(昇温速度:10℃/min)で測定した値が用いられていることが理解できるが、構成要件として明記されているものではなく、また、本件明細書の一般記載としても存在しないため、本件発明に規定するガラス転移温度がこれに限定されるか否かは定かでない。しかしながら、仮にこの条件(DSCで昇温速度10℃/min)が本件発明のガラス転移温度の定義だとしても、上記のとおり、DSC法では1回目と2回目と合計2回の測定が行われるのが通常であり、それによってガラス転移温度の値が大きく異なるが、本件明細書のどこを見てもどちらの測定結果を意味しているのか明らかではない。従って、いずれにしても、本件特許発明に規定するガラス転移温度に関して、その技術的意味を一義的に特定し得るほどの定義が存在しないことに変わりはない。 以上のとおり、本件発明1並びにこれを引用する本件発明2乃至8は、いずれも明確性要件に違反してしている。 2 理由2(サポート要件)本件特許の特許請求の範囲の記載は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものである。 サポート要件の判断基準に関し、知財高裁平成17年11月11日大合議判決(平成17年(行ケ)第10042号)判時1911号48頁(いわゆる「偏光フィルム事件」)では、一般論として「特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであ」る旨判示しており、かつそういった明細書のサポート要件の存在は、特許出願人又は特許権者が証明責任を負う旨の判示もされている。 本件特許発明は、「前記ポリビニルアルコールは、ガラス転移温度Tgが62~75℃である」といった物理的特性を基にその構成が特定されており、審査段階における令和3年7月11日付の意見書において、これらのパラメータを強調して特許が付与された(裏を返せば、これらのパラメータなしでは特許を取得することができなかった)経緯があり、典型的なパラメータ発明に該当するものである。然るところ、上記偏光フィルム事件特別部判決においては、そのようなパラメータ発明のサポート要件充足性に関し、「発明の詳細な説明は、その数式が示す範囲と得られる効果(性能)との関係の技術的な意味が、特許出願時において、具体例の開示がなくとも当業者に理解できる程度に記載するか、又は、特許出願時の技術常識を参酌して、当該数式が示す範囲内であれば、所望の効果(性能)が得られると当業者において認識できる程度に、具体例を開示して記載することを要する」と判示されており、「それは、当然のことながら、その数式の示す範囲が単なる憶測ではなく、実験結果に裏付けられたものであることを明らかにしなければならない」とされている。さらに、「特許出願後に実験データを提出して発明の詳細な説明の記載内容を記載外で補足することによって、その内容を特許請求の範囲に記載された発明の範囲まで拡張ないし一般化し、明細書のサポート要件に適合させることは、発明の公開を前提に特許を付与するという特許制度の趣旨に反し許されない」と判示されており、サポート要件の充足性に関し、特許出願後に実験データを提出して発明の詳細な説明の記載内容を記載外で補足することは許されないことである。 さらに、知財高裁平成29年6月8日判決(平成28年(行ケ)第10147号・いわゆる「伊藤園トマトジュース事件」最高裁ホームページ参照)においては、上記大合議判決によって示されたサポート要件の判断基準に準拠しつつ、官能試験によってその効果を示す場合の留意点に関しても示されており、具体的には、基準となる標品を示すことによってその評価基準を揃えた上で、各パネラーの個別の評点が記載しなければ、少しの風味変化で加点又は減点の幅を大きくとらえるパネラーや、大きな風味変化でも加点又は減点の幅を小さくとらえるパネラーが存在する可能性が否定できず、各飲料の風味の評点を全パネラーの平均値でのみ示すことで当該風味を客観的に正確に評価したものととらえることも困難であること、各評価項目の加点又は減点の幅を等しくとらえるためには何らかの評価基準が示される必要があることなどの留意事項が述べられている。 「前記ポリビニルアルコールは、ガラス転移温度Tgが62~75℃である」に関し、以下の方法で作られてPVAフィルムシート(厚さ0.01cm)を用いて実験がなされており、その評価結果が表4に記載されている。 【0077】 3.水溶性高分子のガラス転移温度及び物性 (1) シートの製造 【表4】 [図:0001398275000001.jpg] 【0078】 前記表に示したようなTgを有するPVAを各々用いてシートを製造した。各PVA(前記29~40)200gを蒸留水800gに投入した後、80℃で4時間溶解して20重量%のPVA水溶液を製造した。製造した PVA水溶液に界面活性剤(SLS)、ビルダー(炭酸ナトリウム)、香などを、PVA 40重量%、界面活性剤 48重量%、ビルダー 10重量%、香 2重量%の割合で投入し、メカニカル撹拌機を用いて混合して溶解した。製造したPVA水溶液を離型フィルムの上に載せた後、エルコメーター社のフィルムアプリケータを用いて一定の厚さで製造した後、105℃のドライングオーブンで10分間乾燥してPVAフィルムシート(厚さ0.01cm)を製造した。そして、ここでの評価項目である香調変化及び香りの持続性(残香性)に関し、以下の方法で評価されている。」 しかしながら、上記段落【0078】の記載のとおり、ここでは上記段落【0062】に記載の「メカニカルスターラーのrpm及び撹拌時間を調節し、前記表のような気泡度を各々有するPVA水溶液を製造し」という工程が存在しないため、ここでは製造されてたPVAフィルムシートは、本件発明に規定する「0.4~0.9(g/cm3)の気泡度」を有するものではないことが理解できる。従って、上記表4に関しても、本件発明の実施例ではないことになり、また、上記のような気泡度を有するPVAフィルムシートを用いた場合にも、ガラス転移温度と物性結果という評価結果との関係に関し、上記表4と同じ傾向を示すか否かは不明という他なく、このことが技術常識から自明であるとも認められない。 その上、ここで評価されているのは物性結果のみであって、裁断の便利性に関して評価結果が記載されていないのであるから、本件発明に規定するガラス転移温度の数値範囲内において、水溶性洗濯シートが希望するサイズヘの裁断が困難となり、移送時に不良がよく発生していた問題を解決するという本件発明の技術的課題を解決できるという裏付けは全く存在しない。また、表4にも「物性結果」という官能評価による評価項目が存在するが、その評価基準に関し、同段落【0074】において「物性結果:0(製造優秀)、△(製造良好)、×(製造不良:よく切れるか、壊れてしまう)」と記載されているのみである。従って、上述のとおり、そもそもここでの「製造優秀」及び「製造良好」とは具体的にどのような状態を指しているのか不明である上、具体的にどのようなパネラーがどのような試験を行った結果であるのか全く記載がないのであるから、その評価基準や評価結果の持つ意味を理解することは全くできず、上掲伊藤園トマトジュース事件判決の規範に照らし、本件発明のサポートとなるような実験データと認められないことは明らかである。 以上のことから、本件発明の「前記ポリビニルアルコールは、ガラス転移温度Tgが62~75℃である」という規定に関しても、上記偏光フィルム事件大合議判決の規範に照らし、その数式が示す範囲と得られる効果との関係の技術的な意味が、具体例の開示がなくとも当業者に理解できる程度に記載されているとも、技術常識を参酌して、当該数式が示す範囲内であれば、所望の効果が得られると当業者において認識できる程度に、具体例を開示して記載されているとも認められない。 以上のとおり、本件特許発明1並びにこれを引用する本件特許発明2乃至8は、いずれもサポート要件に違反しており、本件特許にはいずれもサポート要件違反の取消理由が存在する。 3 理由3(新規性)本件特許の下記の請求項1、4~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物(後記第9 1における甲第1号証又は甲第2号証)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、下記の請求項1、5~8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 4 理由4(進歩性)本件特許の下記の請求項1~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物(後記第9 1における甲第1号証~甲第5号証)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 第7 前記第6における理由1(明確性要件)について 本件特許明細書の段落【0079】では、「イ.Tg測定 Mettler-Toledo社のheat Flux DSCで昇温速度10℃/minで測定した」と記載されており、本件特許発明1で特定されるガラス転移温度Tgはそのように特定されたものであることが明確であり、DSC法で、2回ではなく、1回測定が行われると考えるのが自然である。 そうすると、本件特許発明1の「前記ポリビニルアルコールは、ガラス転移温度Tgが62~75℃であることを特徴とする」なる特定は明確であり、本件特許発明1は明確である。 そして、本件特許発明1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2~8も明確である。 第8 前記第6における理由2(サポート要件)について 本件特許発明の課題は、本願明細書の【0007】~【0010】、特に【0009】の記載からみて、「壊れにくく、裁断が容易な洗濯用シートを提供すること」であると認められる。 そして、本件特許明細書の【0061】の【表1】の記載からみて、「0.5~0.9(g/cm3)の気泡度」を有する洗濯用シートは前記課題を解決できるといえる。 確かに、本件特許明細書の【0061】の【表1】の洗濯用シートが「ポリビニルアルコールは、ガラス転移温度Tgが62~75℃である」の範囲内にあるのか不明であるかもしれないが、本件特許明細書の【0077】の【表4】からみて、「ポリビニルアルコールは、ガラス転移温度Tgが62~75℃である」の範囲内のものは物性結果が良好であるから、表1において用いられているポリビニルアルコールが「ポリビニルアルコールは、ガラス転移温度Tgが62~75℃である」の数値範囲内となれば、物性結果が悪くなることはあり得ず、表1などと同じ傾向を示すことは明らかであり、前記課題を解決できるといえる。 また、本件特許明細書の【0077】の【表4】の記載からみて、「ポリビニルアルコールは、ガラス転移温度Tgが62~75℃である」洗濯用シートは前記課題を解決できるといえる。 確かに、本件特許明細書の【0077】の【表4】の洗濯用シートが「0.5~0.9(g/cm3)の気泡度を有し」の範囲内にあるのか不明であるかもしれないが、本件特許明細書の【0061】の【表1】からみて、「0.5~0.9(g/cm3)の気泡度を有し」の範囲内のものは物性結果や裁断の利便性が良好であるから、表4において用いられているポリビニルアルコールが「0.5~0.9(g/cm3)の気泡度を有し」の数値範囲内となれば、物性結果や裁断の利便性が悪くなることはあり得ず、表4などと同じ傾向を示すことは明らかであり、前記課題を解決できるといえる。 そうすると、発明の詳細な説明の記載から、本件特許発明1まで拡張ないし一般化できないとはいえない。 また、本件特許発明1を引用し、「0.5~0.9(g/cm3)の気泡度を有し」及び「ポリビニルアルコールは、ガラス転移温度Tgが62~75℃である」なる発明特定事項を含む本件特許発明2~8についても同様である。 第9 前記第6における理由3(新規性)及び理由4(進歩性)について 1 甲号証について 甲第1号証:国際公開2017/111498号 甲第2号証:特表2005-538202号公報 甲第5号証:W. DE JAEGHERE, Ghent University Faculty of Pharmaceutical Sciences 2016 "Partially hydrolyzed polyvinyl alcohol as functional excipient in oral solid dosage forms prepared via extrusion" (URL)https://biblio.ugent.be/publication/7236777/file/7236779.pdf 甲第6号証:Thais M.C.Maria et al. Journal of Food Engineering 191-199, vol. 87 (2008) "The effect of the degree of hydrolysis of the PVA and the plasticizer concentration on the color, opacity, and thermal and mechanical properties of films based on PVA and gelatin blends" (URL)https://www.researchgate.netiprofi1e/Ana-Bittante/publication/229421152_The_effect_of_the_degree_of_hydrolysis_of_the_PVA_and_the_plasticizer_concentration_on_the_color_opacity_and_thermal_and_mechanical_properties_of_films_based_on_PVA_and_gelatin_blends/links/6034f3d6299bflcc26e580d8/The-effect-of-the-degree-ofhydrolysis-of-the-PVA-and-the-plasticizer-concentration-on-the-coloropacity-and-thermal-and-mechanical-properties-of-films-based-on-PVAand-gelatin-blends.pdf 甲第7号証:M. Hdidar et al. Ionics, pub1ished on1ine: 20 Apri1 2017 "Effect of hydrolysis degree and mass molecular weight on the structure and properties of PVA films" (URL)https://www.researchgate.net/profile/Mahdi-Hqidar-2/publication/316339646_Effect_of_hydrolysis_degree_and_mass_molecular_weight_on_the_structure_and_properties_of_PVA_films/links/5c90f25c299bf14e7e850f4f/Effect-of-hydrolysis-degree-and-mass-molecular-weight-onthe-structure-and-properties-of-PVA-films.pdf 2 甲号証の記載について (1)甲第1号証(以下、「甲1」という。) なお、便宜上、当該甲1の記載の摘示にあたっては、パテントファミリーである特表2019?502783号公報を訳文として使用し、当該公報の対応箇所を示すこととした。 1a「【請求項1】 水溶性高分子を含み、水で相異なる溶解速度を有する2以上のシートを含み、 前記シートは、それぞれi)洗濯用洗剤成分、ii)洗濯用柔軟成分、iii)香料、またはiv)これらのうち2種以上を含むことを特徴とする洗濯製品。」 1b「【0044】 本発明において、前記「洗濯用洗剤成分」は、一般に広く使われている陰イオン界面活 性剤、非イオン界面活性剤または両性界面活性剤であり得、これらのうち2種以上を混合した形態であっても良い。 ・・・ 【0059】 また、本発明による洗濯製品は、前記2以上のシートに含まれてまたは別個に、分散剤、香料、防腐剤、安定化剤、色素または抗菌剤をさらに含むことができる。前記香料は香りブースターを含むことができる。」 1c「【0119】 <比較例8> シート(1):PVA(鹸化度:88%、平均重合度:1,000)200gを蒸留水800gに投入した後、80℃で4時間溶解させて20重量%のPVA溶液を製造した。製造したPVA溶液に、下記表5に示された組成比に従って有効成分を添加した後、撹拌機を用いて混合した。混合した溶液を離型フィルム上に載せて、エルコメーター社製のフィルムアプリケーターを用いて一定厚さで製造した後、105℃の乾燥炉で10分間乾燥し、最終有効成分を含む洗濯用シート(厚さ:0.01cm)を製造した。 【0120】 シート(2):前記シート(1)と同じPVA(鹸化度:88%、平均重合度:1,000)200gを蒸留水800gに投入した後、80℃で4時間溶解させて20重量%のPVA溶液を製造した。製造したPVA溶液に、下記表5に示された組成比に従って有効成分を添加した後、撹拌機を用いて混合した。混合した溶液を離型フィルム上に載せて、エルコメーター社製のフィルムアプリケーターを用いて一定厚さで製造した後、105℃の乾燥炉で10分間乾燥し、最終有効成分を含む洗濯用シート(厚さ:0.01cm)を製造した。 【0121】 製造したシート(1)とシート(2)とを合紙して最終シート(厚さ:0.02cm)を製造した。 【0122】 下記表5には、比較例5~8のシート製造時に、より速い溶解が求められる洗浄成分が適用されるシート(1)に対し、上記比較例でのPVA溶液と有効成分とを混合した溶液に対して空気を注入しながら撹拌することで溶液内に微細気泡を形成するバブリング処理、又は、上記比較例で製造したシート(1)に対して打抜機を用いた穿孔処理を行った実施例を示した。 【0123】 【表5】 [図:0001398275000002.jpg] 」 (2)甲第2号証(以下、「甲2」という。) 2a「【請求項1】 セッケン、少なくとも1つのフィルム-形成性または骨格-形成性のポリマーおよび空気気泡を含み、固体であることを特徴とするセッケン調製物。」 2b「【0014】 セッケン調製物の別な特性は、1を下まわるその密度である。密度はもっぱら空気気泡の数および寸法によって事実上影響される。セッケン調製物中の空気気泡の寸法および数は製造方法によって本質的に制御することができる。空気気泡は、好ましくは約100μmより小さい、特に好ましくは30μmより小さい寸法を有する。しかしながら、著しくより小さい(ナノメータ範囲にある)空気気泡がセッケン調製物中に存在してよいことを考慮すべきである。従って、これらの性質の結果、セッケン調製物の密度は、1~0.05g/cm3、好ましくは0.7~0.1g/cm3であってよい。」 2c「【0034】 〔実施例1〕 ポリビニルアルコールをベースとするポリマー(骨格-形成性ポリマー;ポリビニルアルコールは部分的に加水分解され、加水分解の度合いは80~95%、好ましくは85~92%でり、このポリマーの4%強度の水溶液は20℃で3~60mPas、好ましくは5~40mPasの粘度を有する)20g、Lamepon S(カリウムココイル加水分解コラーゲン)3.75g、Dehyton AB 30(ココベタイン)1.25g、Dehyquart E-CA(N-(2-ヒドロキシ-ヘキサデシル-1-)-N,N-ジメチル-N-2-ヒドロキシエチルアンモニウムクロライド)1.25g、Texapon NSO(泡沫形成剤としてのナトリウムラウレスサルフェート)3.75gおよびTexapon N 70(泡沫形成剤としてのナトリウムラウレスサルフェート)10gを水20gと混合した。この混合物を25rpmで3分撹拌した。これにより泡沫性物質が得られ、これをポリアミド製の走行ウェブ上に1200μmの厚さに広げて施した。泡沫性物質を最初70℃で20分、次いで90℃で70分乾燥した。 【0035】 〔実施例2〕 実施例1からのポリビニルアルコール16g、Lamepon S 2g、Dehyton AB30 0.5g、Dehyquart E-CA 0.5g、Texapon NSO 4gおよびTexapon N70 9gを水8gと混合した。実施例1におけるように撹拌、施用および乾燥を実施した。これによって単位面積あたりの重量が132g/cm2の固体のセッケン調製物を得た。(これは約0.11g/cm3の密度に相当した)。 【0036】 〔実施例3〕 実施例2におけるようにセッケン調製物をつくったが、ただし広げる際の広がり厚さは1600μmであった。得られる固体のセッケン調製物は単位面積あたりの重量が257g/cm2を有した。(これは0.16g/cm3の密度に相当した)。」 (3)甲第5号証(以下、「甲5」という。) 摘記箇所の後に当審の仮訳を記載した。 5a「 [図:0001398275000003.jpg] 」(第73ページ第2~8行) 材料 鹸化度の異なるPVAグレードを評価した。テクニカルグレードのPVA505(鹸化度72-75%)(ドイツ、ハッタースハイム・アム・マイン、クラレより入手)および医薬グレードのPVA4-88(鹸化度88%、ドイツ、ダルムシュタット、メルクより提供)である。モデル薬剤として、生物医薬品分類システム(BCS)クラスII薬剤(Turnerら、2012)であるセレコキシブ(CEL)(Sanico、Turnhout、ベルギー)を使用した。PVAの水溶性可塑剤としてソルビトール(Fagron, Waregem, Belgium)を使用した。 5b「 [図:0001398275000004.jpg] 」(第74ページ第1~9行) 熱分析 純成分,押出成形品および(低温)粉砕品のガラス転移温度(Tg),結晶化温度(Tc),融点(Tm)は,冷蔵冷却システムを備えたQ2000 DSC(TA Instruments, Leatherhead, UK) を用いて示差走査熱量計(DSC)により分析した。示差走査熱量計(DSC)セルのパージには、50ml/分の流速の乾燥窒素を使用した。非発熱性のアルミニウム製Tzeroパンに装填した試料を、DSC条件(昇温速度:10℃/分)に従って、-20~220℃の3サイクル(加熱、冷却、加熱)中に評価した。測定は3回行った。すべての結果は、TA Instruments社の Universal Analysis 2000ソフトウェアで解析した。 5c「 [図:0001398275000005.jpg] 」(第77ページ第12~14行) 最初のDSC加熱サイクルではソルビトール(濃度40%まで)の影響は見られなかったが、 2回目の加熱サイクルではすべてのサンプルでTgとTmが低下していることが確認された (表1)。 5d「 [図:0001398275000006.jpg] ・・・ 」(第77ページ表1) [図:0001398275000007.jpg] (4)甲第6号証(以下、「甲6」という。) 摘記箇所の後に当審の仮訳を記載した。 6a「 [図:0001398275000008.jpg] 」第192ページ右欄第9~21行) 2.1.材料 フィルム製造に使用した高分子は以下の通りである。 Gelita South America (S-a o Paulo, Brazil)から提供された豚皮ゼラチン(bloom= 242-248;molecular weight 5.2 104 Da; moisture content = 9.3%)と鹸化度(DH)と分子量(Mn, supplied by supplier)の異なる5種類のポリビニールアルコール(Celvol 504, DH= 88%,Mn= 31-50 kDa; Celvol 418, DH= 91.8%, Mn= 85-124 kDa; Celvol 425, DH= 95.7%, 85-124 kDa; Celvol 350, DH= 98.6%, Mn= 146-186 kDa;Celvol 125, DH= 99.7%, Mn= 85-124 kDa 124 kDa; Celvol 350, DH= 98.6%, Mn= 146-186 kDa;Celvol 125, DH= 99.7%,Mn= 85-124 kDa)はCelanese (Dallas, USA)から提供されたものであった。可塑剤としてグリセロール(Sinth)を使用した。 6b「 [図:0001398275000009.jpg] 」(第193ページ左欄第36~47行) 2.6熱特性 フィルムの熱特性は、Sobralら(2001)に従って、TASOOOモジュール(TA Instruments, New Castle, DE, USA)により制御されるDSC TA2010示差走査熱量計を使用して決定し た。分析の前に、フィルム(10mg)をシリコン上のアルミニウムパンで7日間コンディショニングした。シリカゲル上のアルミニウムパンで7日間コンディショニングした。使用した温度範囲は-50~150℃で,不活性雰囲気(N2を45 mL/min)中で5℃/minの昇温速度で昇温した。ガラス転移(中点)温度(Tg)および融解(ビーク)温度(Tm)は、ソフトウェアUniversal Analysis Vl.7F (TA Instruments社製)を用いて算出した。 6c「 [図:0001398275000010.jpg] [図:0001398275000011.jpg] ・・・」(第195ページ表2) [図:0001398275000012.jpg] (5)甲第7号証(以下、「甲7」という。) 摘記箇所の後に当審の仮訳を記載した。 7a「 [図:0001398275000013.jpg] 」(第2ページ左欄第10~24行) 材料及び方法試料の調整 PVAフィルムは,溶液キャスト法を用いて作製した。この研究で使用したポリビニルアル コールは,市販のミクロンサイズの粉末で,HDとMwが異なる。PVA粉末O.5gを超純水40mlに溶解し,80℃で3時間攪拌を続け,粘性のある溶液を得た。この溶液をシャーレにキャストし、無塵室でゆっくりと乾燥させた。室温、無塵室、高湿度下でゆっくりと乾燥させた。このとき,溶媒の蒸発速度を低下させ,細孔の形成を防止するために,湿度の高い雰囲気でゆっくりと乾燥させた。3日後にフィルムを剥がし,さまざまな特性評価を行った。特性評価を行った。得られたPVAのフィルムは,厚さが約5Oμmであった。提案したフィルムの記号と特性を表1に示す。フィルムは表1に示すとおりである。 7b「 [図:0001398275000014.jpg] 」(第2ページ表1) [図:0001398275000015.jpg] 7c「 [図:0001398275000016.jpg] 」(第2ページ右欄第12~18行) 示差走査熱量計による測定 示差熱分析は、パーキンエルマー社製Pyris 4000 DSCシステムを用いて、窒素雰囲気中、-50~350℃の温度範囲、5℃/minの昇温速度で行った。この測定により、ガラス転移温度(Tg)および各種転移温度温度を測定することができた。 7d「 [図:0001398275000017.jpg] 」(第4ページ表3) [図:0001398275000018.jpg] 7e「 [図:0001398275000019.jpg] 」(第4ページ左欄第5~9行) この表では、各PVAについて、2回目のスキャンを行った際のガラス転移温度のTg1からTg2への上昇を記している。Tgは約30℃から約70℃に変化している。これは、1回目のスキャン時に水分が蒸発したためと考えられる。水は湿った試料では可塑剤として作用する[22,26,30]。 3 甲号証に記載された発明 (1)甲1に記載された発明 甲1には、実施例8のシート(1)として「鹸化度:88%、平均重合度:1,000のPVA:ポリビニルアルコールを溶解させたPVA溶液に洗浄成分としてSLS(ラウリル硫酸ナトリウム)を添加した後、撹拌機を用いて混合し、混合した溶液を離型フィルム上に載せて、エルコメーター社製のフィルムアプリケーターを用いて一定厚さで製造した後、105℃の乾燥炉で10分間乾燥し、得た、シート(1)とシート(2)とを合紙した最終シートを基準に、PVAを20重量%及び洗浄成分を29重量%からなり、比重0.6である洗濯用シート(1)。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる(摘記1c参照)。 (2)甲2に記載された発明 甲2には、実施例2として「ポリビニルアルコールをベースとするポリマー(骨格-形成性ポリマー;ポリビニルアルコールは部分的に加水分解され、加水分解の度合いは80~95%、好ましくは85~92%であり、このポリマーの4%強度の水溶液は20℃で3~60mPas、好ましくは5~40mPasの粘度を有する)16g、Lamepon S(カリウムココイル加水分解コラーゲン)0.5g、Dehyton AB 30(ココベタイン)1.25g、Dehyquart E-CA(N-(2-ヒドロキシ-ヘキサデシル-1-)-N,N-ジメチル-N-2-ヒドロキシエチルアンモニウムクロライド)0.5g、Texapon NSO(泡沫形成剤としてのナトリウムラウレスサルフェート)4gおよびTexapon N 70(泡沫形成剤としてのナトリウムラウレスサルフェート)9gを水20gと混合し、この混合物を25rpmで3分撹拌し、これにより泡沫性物質が得られ、これをポリアミド製の走行ウェブ上に1200μmの厚さに広げて施し、最初70℃で20分、次いで90℃で70分乾燥して、得た、密度0.11g/cm3の泡沫性物質。」の発明(以下、「甲2発明1」という。)が記載されているといえる(摘記2c参照)。 甲2には、実施例3として「ポリビニルアルコールをベースとするポリマー(骨格-形成性ポリマー;ポリビニルアルコールは部分的に加水分解され、加水分解の度合いは80~95%、好ましくは85~92%であり、このポリマーの4%強度の水溶液は20℃で3~60mPas、好ましくは5~40mPasの粘度を有する)16g、Lamepon S(カリウムココイル加水分解コラーゲン)0.5g、Dehyton AB 30(ココベタイン)1.25g、Dehyquart E-CA(N-(2-ヒドロキシ-ヘキサデシル-1-)-N,N-ジメチル-N-2-ヒドロキシエチルアンモニウムクロライド)0.5g、Texapon NSO(泡沫形成剤としてのナトリウムラウレスサルフェート)4gおよびTexapon N 70(泡沫形成剤としてのナトリウムラウレスサルフェート)9gを水20gと混合し、この混合物を25rpmで3分撹拌し、これにより泡沫性物質が得られ、これをポリアミド製の走行ウェブ上に1600μmの厚さに広げて施し、最初70℃で20分、次いで90℃で70分乾燥して、得た、密度0.16g/cm3の泡沫性物質。」の発明(以下、「甲2発明2」という。)が記載されているといえる(摘記2c参照)。 4 対比・判断 (1)甲1発明を主引用発明とする場合 ア 本件特許発明1 (ア)甲1発明との対比 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明の「洗濯用シート(1)」は、PVA:ポリビニルアルコールを溶解させたPVA溶液に洗浄成分としてSLS(ラウリル硫酸ナトリウム)を添加した後、撹拌機を用いて混合し、混合した溶液を離型フィルム上に載せて、エルコメーター社製のフィルムアプリケーターを用いて一定厚さで製造した後、105℃の乾燥炉で10分間乾燥し、得ているから、PVAマトリクス内部に洗浄成分が分布するものとなっていることは明らかであり、PVAは水溶性高分子であるから、本件特許発明1の「水溶性高分子マトリクスの内部に少なくとも一つの洗濯成分が分布している洗濯用シート」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲1発明は、「水溶性高分子マトリクスの内部に少なくとも一つの洗濯成分が分布している洗濯用シートであって、 前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコールである、洗濯用シート。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-1> 本件特許発明1では、洗濯用シートは、0.5~0.9(g/cm3)の気泡度を有するのに対し、甲1発明では比重0.6である点。 <相違点1-2> ポリビニルアルコールが、本件特許発明1では、ガラス転移温度Tgが62~75℃であるのに対し、甲1発明ではそのような特定がない点。 (イ)相違点についての検討 <相違点1-1>について 甲1発明の「比重0.6」は、単位はg/cm3であることは明らかであり、本件特許明細書【0021】の「気泡度=1-真密度」の記載から、気泡度は0.4g/cm3となるから、この点は実質的な相違点である。 そして、甲1には、甲1発明の洗濯用シート(1)の気泡度を0.5~0.9(g/cm3)とすることについて、記載も示唆もない。 ここで、甲2には、シート状のセッケン調製物の密度は0.7~0.1g/cm3であってよいことが記載されており(摘記2b、2c参照)、気泡度は0.3~0.9(g/cm3)であるが、その記載をもって、甲1発明の洗浄成分を含むシート(1)において、気泡度が、0.5~0.9(g/cm3)であるものとする動機付けがあるとはいえない。 <相違点1-2>について 甲5には鹸化度が88%のポリビニルアルコールのガラス転移温度は67.0℃であることが記載され(摘記5d参照)、甲6には鹸化度が88%のポリビニルアルコールのガラス転移温度は63.6℃であることが記載され(摘記6c参照)、甲7には鹸化度が87~89%のポリビニルアルコールのガラス転移温度は68~70℃であることが記載されているが(摘記7d参照)、いずれも、2回目の測定による値であり、一回目の測定では、それぞれ、45.7℃、53.4℃及び27~29℃である。 そうすると、甲1発明の洗濯用シート(1)における鹸化度:88%、平均重合度:1,000のPVA:ポリビニルアルコールのガラス転移温度Tgが62~75℃の範囲にあるとはいえず、上記相違点は実質的な相違点である。 そして、甲1には、甲1発明の洗濯用シート(1)においてTgが62~75℃の範囲にあるポリビニルアルコールを使用することについて、記載も示唆もないし、甲2~甲7においても、甲1発明の洗濯用シート(1)においてガラス転移温度Tgが62~75℃の範囲にあるポリビニルアルコールを使用することについて、記載も示唆もないから、甲1発明の洗濯用シート(1)において、ポリビニルアルコールがガラス転移温度Tgが62~75℃であるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。 (ウ)本件特許発明1の効果について 本件特許明細書の記載からみて、本件特許発明1の洗濯シートは、壊れにくく、裁断が容易という効果を奏するものであり、そのような効果は甲1~甲7の記載から、当業者が予測できない顕著なものであるといえる。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明及び甲2~甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 イ 本件特許発明2~8について 本件特許発明2~8は、「ポリビニルアルコールは、ガラス転移温度Tgが62~75℃である」という点を発明特定事項に備えているところ、上記本件特許発明1と甲1発明の<相違点1>と同じ相違点を有するものであるから、本件特許発明2~8は、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明及び甲2~甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 (2)甲2発明1及び甲2発明2を主引用発明とする場合 ア 本件特許発明1 (ア)甲2発明1及び甲2発明2との対比 本件特許発明1と甲2発明1及び甲2発明2を対比する。 甲2発明1及び甲2発明2の「Lamepon S(カリウムココイル加水分解コラーゲン)0.5g、Dehyton AB 30(ココベタイン)」及び「Dehyquart E-CA(N-(2-ヒドロキシ-ヘキサデシル-1-)-N,N-ジメチル-N-2-ヒドロキシエチルアンモニウムクロライド)」は、本件特許発明1の「洗濯成分」に相当し、甲2発明1の「ポリアミド製の走行ウェブ上に1200μmの厚さに広げて施し、最初70℃で20分、次いで90℃で70分乾燥して、得た」及び「泡沫性物質」、並びに、甲2発明2の「ポリアミド製の走行ウェブ上に1200μmの厚さに広げて施し、最初70℃で20分、次いで90℃で70分乾燥して、得た」及び「泡沫性物質」は、「Lamepon S(カリウムココイル加水分解コラーゲン)0.5g、Dehyton AB 30(ココベタイン)」及び「Dehyquart E-CA(N-(2-ヒドロキシ-ヘキサデシル-1-)-N,N-ジメチル-N-2-ヒドロキシエチルアンモニウムクロライド)」と「ポリビニルアルコールをベースとするポリマー(骨格-形成性ポリマー;ポリビニルアルコールは部分的に加水分解され、加水分解の度合いは80~95%、好ましくは85~92%であり、このポリマーの4%強度の水溶液は20℃で3~60mPas、好ましくは5~40mPasの粘度を有する)」と混合しているから、「Lamepon S(カリウムココイル加水分解コラーゲン)0.5g、Dehyton AB 30(ココベタイン)」及び「Dehyquart E-CA(N-(2-ヒドロキシ-ヘキサデシル-1-)-N,N-ジメチル-N-2-ヒドロキシエチルアンモニウムクロライド)」は「ポリビニルアルコールをベースとするポリマー(骨格-形成性ポリマー;ポリビニルアルコールは部分的に加水分解され、加水分解の度合いは80~95%、好ましくは85~92%であり、このポリマーの4%強度の水溶液は20℃で3~60mPas、好ましくは5~40mPasの粘度を有する)」マトリクス内部で分布していることは明らかであり、1200μmの厚さに広げているから、シート状であり、本件特許発明1の「水溶性高分子マトリクスの内部に少なくとも一つの洗濯成分が分布している洗濯用シート」に相当する。 甲2発明1の「密度0.11g/cm3」及び甲2発明2の「密度0.16g/cm3」は、本件特許明細書【0021】の「気泡度=1-真密度」の記載から、気泡度は、それぞれ、0.89g/cm3、0.86g/cm3となるから、本件特許発明1の「前記洗濯用シートは、0.5~0.9(g/cm3)の気泡度を有し」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲2発明1及び甲2発明2は、「水溶性高分子マトリクスの内部に少なくとも一つの洗濯成分が分布している洗濯用シートであって、 前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコールであり、 前記洗濯用シートは、0.5~0.9(g/cm3)の気泡度を有する、洗濯用シート。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点2> ポリビニルアルコールが、本件特許発明2では、ガラス転移温度Tgが62~75℃であるのに対し、甲2発明1及び甲2発明2ではそのような特定がない点。 (イ)相違点についての検討 甲2発明1及び甲2発明2のポリビニルアルコールをベースとするポリマーは加水分解の度合いは85~92%であるから、鹸化度が85~92%である。 ここで、甲5には鹸化度が88%のポリビニルアルコールのガラス転移温度は67.0℃であることが記載され(摘記5d参照)、甲6には鹸化度が88%のポリビニルアルコールのガラス転移温度は63.6℃であることが記載され(摘記6c参照)、甲7には鹸化度が87~89%のポリビニルアルコールのガラス転移温度は68~70℃であることが記載されているが(摘記7d参照)、いずれも、2回目の測定による値であり、一回目の測定では、それぞれ、45.7℃、53.4℃及び27~29℃である。 そうすると、甲1発明の洗濯用シート(1)における鹸化度:88%、平均重合度:1,000のPVA:ポリビニルアルコールのガラス転移温度Tgが62~75℃の範囲にあるとはいえず、上記相違点は実質的な相違点である。 そして、甲2には、甲2発明1及び甲2発明2の泡沫性物質においてガラス転移温度Tgが62~75℃の範囲にあるポリビニルアルコールを使用することについて、記載も示唆もないし、甲1及び甲3~甲7においても、甲2発明1及び甲2発明2の泡沫性物質においてガラス転移温度Tgが62~75℃の範囲にあるポリビニルアルコールを使用することについて、記載も示唆もないから、甲2発明1及び甲2発明2の泡沫性物質において、ポリビニルアルコールがガラス転移温度Tgが62~75℃であるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。 (ウ)本件特許発明1の効果について 本件特許明細書の記載からみて、本件特許発明1の洗濯シートは、壊れにくく、裁断が容易という効果を奏するものであり、そのような効果は甲1~甲7の記載から、当業者が予測できない顕著なものであるといえる。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、甲2に記載された発明ではなく、甲2に記載された発明、並びに、甲1及び甲3~甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 イ 本件特許発明2~8について 本件特許発明2~8は、「ポリビニルアルコールは、ガラス転移温度Tgが62~75℃である」という点を発明特定事項に備えているところ、上記本件特許発明1と甲2発明1及び甲2発明2の<相違点2>と同じ相違点を有するものであるから、本件特許発明2~8は、甲2に記載された発明ではなく、甲2に記載された発明、並びに、甲1及び甲3~甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 第10 むすび 以上のとおりであるから、令和4年9月15日付けの取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700711

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