特許異議申立
2023-700588
酸化剤含有組成物及びその使用方法
- 審判番号
- 2023-700588
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-129408
- 登録番号
- 7199070
- 請求日
- 2023年06月06日
- 審決日
- 2024年03月19日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ホーユー株式会社
- 【権利者代理人】恩田 誠
- 【権利者代理人】恩田 博宣
- 【異議申立人】森 力
- 審判長/審判官
- 審判長 阪野 誠司
- 審判官 木村 敏康
- 審判官 関 美祝
- 分類
- P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7199070号発明「酸化剤含有組成物及びその使用方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7199070号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
特許第7199070号の請求項3~4に係る特許を維持する。
特許第7199070号の請求項1~2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7199070号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成29年6月30日の出願であって、令和4年12月22日に特許権の設定登録がされ、令和5年1月5日に特許掲載公報が発行され、その請求項1~4に係る発明の特許に対し、令和5年6月6日に森力(以下「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
特許異議の申立て以後の手続の経緯は次のとおりである。
令和5年10月16日付け 取消理由通知
同年12月15日 意見書・訂正請求書(特許権者)
令和6年 1月 9日付け 訂正請求があった旨の通知
同年 2月 1日 意見書(特許異議申立人)
第2 訂正の適否
1.訂正の内容
令和5年12月15日付けの訂正請求による訂正(以下「第1訂正」ともいう。)の「請求の趣旨」は「特許第7199070号の明細書、特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求める。」というものであり、その内容は、以下の訂正事項1~5からなるものである(なお、訂正箇所に下線を付す。)。
(1)訂正事項1
訂正前の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
訂正前の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
訂正前の請求項3の「さらに(C)多価アルコールを含有する請求項1又は2に記載の酸化剤含有組成物。」との記載を、
訂正後の請求項3の「エアゾール容器より泡状の剤として吐出され、アルカリ剤を含有する剤と混合して染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として使用される酸化剤含有組成物であって、
(A)流動パラフィンを9質量%以下、(B)酸化剤、及び(C)多価アルコールを含有し、両性界面活性剤を実質的に含まない酸化剤含有組成物(過酸化水素、非イオン界面活性剤、高級アルコール、及び炭化水素を含有するエアゾール染毛用第2剤組成物の構成であって、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、高級アルコール、高級アルコール以外の25℃で液状である油剤、酸化染料中間体、及びアルカリ剤を含有するエアゾール染毛用第1剤組成物と混合して使用され、ブラシ台の幅方向の両側の側縁部に沿って各々設けられ、前記ブラシ台の長さ方向に所定の間隔をおいて配置された複数本の外側ブラシ歯からなる外側ブラシ歯列と、該外側ブラシ歯の前記幅方向の内側に隣接して設けられ、前記長さ方向に所定の間隔をおいて配置された複数本の内側ブラシ歯からなる内側ブラシ歯列とを有しており、前記内側ブラシ歯の引張弾性率が前記外側ブラシ歯の引張弾性率よりも低いものである毛髪処理剤用ブラシを用いて毛髪に塗布されるものを除く)。」との記載に改める。
(4)訂正事項4
訂正前の請求項4の「請求項1~3のいずれか一項」との記載部分を、
訂正後の請求項4の「請求項3」との記載に改める。
(5)訂正事項5
訂正前の明細書の段落0065の「以下実施例7~9,15は、参考例7~9,15に置き換えるものとする。」との記載部分を、
訂正後の明細書の段落0065の「以下実施例3~9,14,15は、参考例3~9,14,15に置き換えるものとする。」との記載に改める。
2.第2訂正による訂正の適否
(1)訂正事項1~2について
訂正事項1~2は、訂正前の請求項1~2を削除する訂正であるから、いずれも願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「特許請求の範囲の減縮」を目的として訂正するものに該当する。
そして、訂正事項1~2は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1~2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6号の規定に適合するものである。
(2)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項3のうち、請求項1を引用する請求項2を引用するものについて、独立形式での記載に改めて、訂正後の請求項3とするとともに、明細書の段落0019の「第2剤中における(A)成分の含有量の上限は、…さらに好ましくは9質量%以下である。」との記載を根拠に、訂正前の請求項1の「(A)分岐鎖を有しない炭化水素」を「(A)流動パラフィン」とし、その含有量の上限を「9質量%以下」に限定するものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」及び「特許請求の範囲の減縮」を目的として訂正するものに該当する。
そして、訂正事項3は「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」及び「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6号の規定に適合するものである。
(3)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項4の「請求項1~3のいずれか一項」という択一的な引用記載のうち、請求項1~2を引用するものを削除する訂正であるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「特許請求の範囲の減縮」を目的として訂正するものに該当する。
そして、訂正事項4は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6号の規定に適合するものである。
(4)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の明細書の段落0065の「実施例7~9,15は、参考例7~9,15」との記載のうち、実施例に該当しない実施例3~6及び14のものを参考例との記載に改めるものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「明瞭でない記載の釈明」を目的として訂正するものに該当する。
そして、訂正事項5は、明細書の記載を訂正するものであり、特許請求の範囲に記載された用語の定義や発明特定事項の技術的範囲を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6号の規定に適合するものである。
(5)一群の請求項について
訂正事項1~4に係る訂正前の請求項1~4について、その請求項2~4は直接又は間接的に請求項1を引用するものであるから、訂正前の請求項1~4に対応する訂正後の請求項1~4は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
また、訂正事項5による明細書の訂正に係る請求項は、訂正前の請求項1~4であって、訂正事項1~4と関係する請求項〔1~4〕の一群の請求項が請求の対象とされているから、訂正事項5による明細書の訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。
3.まとめ
以上総括するに、訂正事項1~5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、なおかつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~4〕についての訂正を認める。
第3 本件発明
第1訂正により訂正された請求項1~4に係る発明(以下「本1発明」~「本4発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】(削除)
【請求項2】(削除)
【請求項3】エアゾール容器より泡状の剤として吐出され、アルカリ剤を含有する剤と混合して染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として使用される酸化剤含有組成物であって、
(A)流動パラフィンを9質量%以下、(B)酸化剤、及び(C)多価アルコールを含有し、両性界面活性剤を実質的に含まない酸化剤含有組成物(過酸化水素、非イオン界面活性剤、高級アルコール、及び炭化水素を含有するエアゾール染毛用第2剤組成物の構成であって、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、高級アルコール、高級アルコール以外の25℃で液状である油剤、酸化染料中間体、及びアルカリ剤を含有するエアゾール染毛用第1剤組成物と混合して使用され、ブラシ台の幅方向の両側の側縁部に沿って各々設けられ、前記ブラシ台の長さ方向に所定の間隔をおいて配置された複数本の外側ブラシ歯からなる外側ブラシ歯列と、該外側ブラシ歯の前記幅方向の内側に隣接して設けられ、前記長さ方向に所定の間隔をおいて配置された複数本の内側ブラシ歯からなる内側ブラシ歯列とを有しており、前記内側ブラシ歯の引張弾性率が前記外側ブラシ歯の引張弾性率よりも低いものである毛髪処理剤用ブラシを用いて毛髪に塗布されるものを除く)。
【請求項4】請求項3に記載の酸化剤含有組成物の使用方法であって、
前記酸化剤含有組成物をエアゾール容器より泡状の剤として吐出する工程、該泡状の剤を、アルカリ剤を含有する泡状の剤と混合し、染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤を調製する工程、を含む酸化剤含有組成物の使用方法。」
第4 取消理由通知の概要
令和5年10月16日付けの取消理由通知で通知された取消理由は、次の理由1~3からなるものである。
〔理由1〕本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件出願日前に日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
甲第1号証:特開2015-227291号公報
甲第2号証:特開2016-44136号公報
よって、本件特許の請求項1~4に係る発明に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定に該当し取り消されるべきものである。
〔理由2〕本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件出願日前に日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
甲第1号証:特開2015-227291号公報
甲第2号証:特開2016-44136号公報
甲第3号証:特開2010-280581号公報
よって、本件特許の請求項1~4に係る発明に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定に該当し取り消されるべきものである。
〔理由3〕本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。
『本件特許の請求項1及び請求項1を引用する請求項3~4の記載は、その「(A)分岐鎖を有しない炭化水素」という技術用語の意味するところが、特許請求の範囲の記載と明細書の発明の詳細な説明の記載との間で整合性がなく、第三者にとって不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるから、特許法第36条第6項第2号に適合しない。』
よって、本件特許の請求項1及び3~4に係る発明に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定に該当し取り消されるべきものである。
第5 当審の判断
1.取消理由通知で指摘した理由3(明確性要件)について
上記〔理由3〕の記載不備として指摘した点は、第1訂正により、訂正後の請求項3の記載において、訂正前の請求項1の「(A)分岐鎖を有しない炭化水素」に対応する事項が、その下位概念としての「(A)流動パラフィン」に訂正されたので、当該〔理由3〕の記載不備について理由はない。
2.理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について
(1)甲第1~3号証の記載事項
甲第1号証:特開2015-227291号公報
甲第2号証:特開2016-44136号公報
甲第3号証:特開2010-280581号公報
甲第1号証には、次の記載がある。
摘記1a:請求項1
「【請求項1】
(I)(a)酸化組成物の総質量に対して10から60質量%の量の、少なくとも1種の脂肪物質、
(b)少なくとも1種のグリコシド型界面活性剤、
(c)少なくとも1種の酸化剤、及び
(d)水
を含む酸化組成物、並びに
(II)ジメチルエーテル(DME)を含む少なくとも1種の噴射剤を含むエアロゾル式酸化組成物。」
摘記1b:段落0027、0038、0096~0097及び0117~0118
「【0027】
本発明による組成物により提供されるフォームは良好な質を有するので、この組成物は消費者に良好な使用感を提供できる。…
【0038】
脂肪族炭化水素の例として、例えば、直鎖状又は分枝状炭化水素、例えば、鉱油(例えば流動パラフィン)、パラフィン、ワセリン又はペトロラタム、ナフタレン等、水添ポリイソブテン、イソエイコサン、ポリデセン、水添ポリイソブテン、例えばParleam、及びデセン/ブテンコポリマー、並びにそれらの混合物が挙げられる。…
【0096】
(III)他の構成成分
本発明によるエアロゾル式酸化組成物は、水性媒体を含んでいてもよい。
【0097】
水性媒体は、水又は水と少なくとも1種の有機溶媒との混合物であってもよい。有機溶媒は、好ましくは水混和性である。有機溶媒として、例えば、C1~C4アルカノール、例えばエタノール及びイソプロパノール、グリセロール、グリコール及びグリコールエーテル、例えば2-ブトキシエタノール、プロピレングリコール、プロピレングリコールのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル及びジエチレングリコールのモノメチルエーテル、並びに芳香族アルコール、例えばベンジルアルコール及びフェノキシエタノール、類似生成物並びにそれらの混合物が挙げられる。…
【0117】
本発明による組成物は、器具からその出口を通してフォームエアロゾル組成物を吐出するためのエアロゾルデバイスのために使用できる。
【0118】
本発明によるエアロゾル式酸化組成物を充填するためのエアロゾル容器は、そのエアロゾル容器が、エアロゾル式酸化組成物をその出口を通してフォームの形態で吐出するための器具を有し、噴射剤の圧力に耐えられ、保存に適切である限り、任意の材質から製造できる。」
摘記1c:段落0120及び0124~0127
「【0120】
本発明によるエアロゾル式酸化組成物は、容器から吐出でき、ケラチン繊維を組成物で直接処理することにより、毛髪等のケラチン繊維の染色及び/又は脱色において使用できる。およそ1から60分の曝露時間の後、繊維をすすぎ、任意選択でシャンプーで洗浄し、再びすすぎ、次に乾燥させるか、又は
本発明によるエアロゾル式酸化組成物及び少なくとも1種のアルカリ剤を含む他の別個の化粧用組成物を、ケラチン繊維への適用の直前に混合することによりその場で調製される化粧用組成物を、湿った又は乾燥したケラチン繊維に適用する工程、
およそ1から60分間、好ましくはおよそ5から45分間の範囲の曝露時間の間、化粧用組成物を放置して作用させる工程、
繊維をすすぐ工程、並びに
任意選択で、それらをシャンプーで洗浄し、再びすすぎ、次に乾燥させる工程
を含む方法による。…
【0124】
(実施例1~4及び比較例1~3)
表1に示す以下の組成物1から4を、表1に示す構成成分を混合して調製した。次にこれらの組成物を、DME又はLPG(アルカン混合物)の噴射剤と、表2に示す混合質量比で混合し、実施例1から4及び比較例1から3による組成物を調製した。表に示す構成成分の量についての数値は、すべて「質量%」に基づく。
【0125】【表1】
[図:0001411300000001.jpg]
【0126】【表2】
[図:0001411300000002.jpg]
【0127】
[評価]
実施例1から4及び比較例1から3による組成物の起泡の質、実施例1から3並びに比較例1及び2による噴射剤(LPG又はDME)を有しない組成物の粘度を、以下のとおり測定し評価した。」
甲第2号証には、次の記載がある。
摘記2a:請求項1
「【請求項1】
アルカリ剤を含有する第1剤と混合して使用され、酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物であって、(A)過酸化水素、(B)POEラウリルエーテルおよびPOEアルキル(12~14)エーテルから選ばれる1種または2種以上、(C)アルカリ金属の水酸化物、(D)1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸を含有するエアゾール原液と、(E)噴射剤を含有し、エアゾール原液がpH4.5以下であることを特徴とする酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物。」
摘記2b:段落0001~0002、0013及び0031
「【0001】
本発明は、染毛剤で用いられる酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物に関するものである。…
【0002】
染毛剤としては、染毛剤、脱染剤、脱色剤、脱染・脱色剤などが知られており、2種類以上の剤を用時混合して調合される。…
【0013】
本発明は、保管条件や運搬条件を考慮する必要がなく、高温条件下に長時間さらされても、過酸化水素の安定性に優れた酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物であり、なおかつ低温時の使用にも発泡性を損なうことなく使用できる酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物を提供することができる。…
【0031】
本発明の酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物は、その他の化粧料等に通常用いられる原料を、本発明の効果を損なわない範囲内で適宜配合してもよい。油剤、溶剤、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、抗酸化剤、紫外線吸収剤、キレート剤、防腐剤、抗菌剤、着色剤、香料、ビタミン類、植物抽出液等を用いることができ、これらは1種または2種以上を含有してもよい。」
摘記2c:段落0042~0043及び0047
「【0042】
調製方法
(B)成分、その他の油性成分、活性剤等および精製水を80℃以上にて混合乳化する。乳化後、冷却し、35℃の時点で、(A)成分、(C)成分および(D)成分を混合し、エアゾール原液を得る。前記エアゾール原液を、(E)成分と混合し、酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物を得る。
【0043】
表1はアルカリ剤と酸化染料を含有する染毛剤第1剤の成分と含有量を示す。この染毛剤第1剤と得られた酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物を「染毛剤第1剤:酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物(第2剤)=1:1」の混合比で混合し、これを用いて「毛髪の染毛性」を評価した。…
【0047】【表3】
[図:0001411300000003.jpg]
」
甲第3号証には、次の記載がある。
摘記3a:段落0064
「【0064】
本実施形態のエアゾール式泡沫状染毛・脱色剤組成物は、使用時に、エアゾール式吐出容器から吐出されて、使用される。
前記組成物は、毛髪に塗布する前に、所定のブラシ、コーム、容器等の染毛・脱色用器具上に取り出してもよいし、所定の手袋を装着した手のひら上に取り出してもよい。
前記組成物を毛髪に塗布する方法としては、上記のように、一旦、手のひら上に前記組成物を取り出した後、その組成物を手で揉み込むように、毛髪に塗布する方法が好ましい。なお、ブラシ等の器具を利用して、毛髪に塗布してもよい。」
摘記3b:段落0019及び0023
「【0019】
〔エアゾール式泡沫状染毛・脱色剤組成物〕
本実施形態のエアゾール式泡沫状染毛・脱色剤組成物は、アルカリ剤及び噴射剤を含有する第1剤と、酸化剤及び噴射剤を含有する第2剤とから構成され、前記第1剤が、(A1)アルキルエーテル型ノニオン界面活性剤、(B)多価アルコールを0.2~10.0質量%、(C)アルケニルエーテル型ノニオン界面活性剤を0.1~2.0質量%、及び(D)炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム及び尿素から選ばれる少なくとも1種0.1~4.0質量%を含有し、前記第2剤が、(A2)アルキルエーテル型ノニオン界面活性剤、及び(E)ラノリン0.1~1.0質量%を含有し、前記(A1)及び前記(A2)の総含有量が0.1~10.0質量%であるものからなる。…
【0023】
前記(B)多価アルコールとしては、例えば、グリコール、グリセリン等が挙げられる。
前記グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3-ブチレングリコール等が挙げられる。
前記グリセリンとしては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
第1剤用原液における前記(B)多価アルコールの含有量は、0.2~10.0質量%が好ましい。前記含有量が0.2質量%未満であると、十分な泡の保形性の向上効果が得られない。これに対し、前記含有量が10.0質量%を超えると、泡の保形性が低下してしまう。」
(2)引用発明
ア 甲1発明
摘記1aの「(I)(a)…脂肪物質、…(c)…酸化剤…を含む酸化組成物、並びに(II)…噴射剤を含むエアロゾル式酸化組成物。」との記載、
摘記1bの「本発明による組成物により提供されるフォームは良好な質を有するので、この組成物は消費者に良好な使用感を提供できる。…本発明による組成物は、器具からその出口を通してフォームエアロゾル組成物を吐出するためのエアロゾルデバイスのために使用できる。…本発明によるエアロゾル式酸化組成物を充填するためのエアロゾル容器は、そのエアロゾル容器が、エアロゾル式酸化組成物をその出口を通してフォームの形態で吐出するための器具を有し、噴射剤の圧力に耐えられ、保存に適切である限り、任意の材質から製造できる。」との記載、並びに
摘記1cの「本発明によるエアロゾル式酸化組成物は…毛髪等のケラチン繊維の染色及び/又は脱色において使用できる。…本発明によるエアロゾル式酸化組成物及び少なくとも1種のアルカリ剤を含む他の別個の化粧用組成物を、ケラチン繊維への適用の直前に混合することによりその場で調製される化粧用組成物を、湿った又は乾燥したケラチン繊維に適用する…(実施例1~4…)表1に示す以下の組成物1から4を、表1に示す構成成分を混合して調製した。次にこれらの組成物を、DME…の噴射剤と、表2に示す混合質量比で混合し、実施例1から4…による組成物を調製した。表に示す構成成分の量についての数値は、すべて「質量%」に基づく。…【表1】…比較例2…イソステアリルアルコール…4…ベヘネス-10…8…鉱油…30…カプリリルグルコシド(50%活性)…2.4…エチドロン酸四ナトリウム…0.2…ピロリン酸四ナトリウム…0.04…サリチル酸ナトリウム…0.035…セテアレス-60 ミリスチルグリコール…0.6…過酸化水素(50%活性)…12…リン酸…pH2.2…グリセリン…4…水…残部」との記載、及び、下線を付した「表1に示す以下の組成物1から4を、表1に示す構成成分を混合して調製」との記載によれば、表1の「比較例2」との表記は「組成物2」の明らかな誤記と認められることからみて、甲第1号証には、
『フォームの形態で吐出するための器具からその出口を通してエアロゾル式酸化組成物を吐出でき、ケラチン繊維への適用の直前にアルカリ剤を含む他の別個の化粧用組成物と混合し、毛髪等のケラチン繊維の染色及び/又は脱色において使用できるエアロゾル式酸化組成物であって、イソステアリルアルコール、ベヘネス-10、鉱油30質量%、カプリリルグルコシド(50%活性)、エチドロン酸四ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、セテアレス-60 ミリスチルグリコール、過酸化水素(50%活性)、リン酸、グリセリン、及び水からなる構成成分を混合して調製した酸化組成物を、噴射剤(DME)と混合してなるエアロゾル式酸化組成物。』についての発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
イ 甲2発明
摘記2aの「アルカリ剤を含有する第1剤と混合して使用され、酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物」との記載、
摘記2bの「本発明は、染毛剤で用いられる酸化剤を含有する乳化型エアゾール組成物に関するものである。…染毛剤としては、染毛剤、脱染剤、脱色剤、脱染・脱色剤などが知られており、…本発明は…過酸化水素の安定性に優れ…低温時の使用にも発泡性を損なうことなく使用できる」との記載、及び
摘記2cの「実施例3」の記載からみて、甲第2号証には、
『アルカリ剤を含有する第1剤と混合して使用され、染毛剤で用いられ、過酸化水素の安定性に優れ、なおかつ低温時の使用にも発泡性を損なうことなく使用できる乳化型エアゾール組成物であって、過酸化水素(35%)、POEラウリルエーテル(4.2E.O.)、水酸化カリウム、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、ポリオキシエチレンセチルエーテル(2.0E.O.)、ポリオキシエチレンセチルエーテル(15E.O.)、セタノール、ステアリルアルコール、流動パラフィン4重量%、精製水からなるエアゾール原液と、噴射剤(LPG)からなる乳化型エアゾール組成物。』についての発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。
(3)甲1発明を主引用例とした場合の対比・判断
ア 対比
本3発明と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「フォームの形態で吐出するための器具からその出口を通してエアロゾル式酸化組成物を吐出でき、ケラチン繊維への適用の直前にアルカリ剤を含む他の別個の化粧用組成物と混合し、毛髪等のケラチン繊維の染色及び/又は脱色において使用できるエアロゾル式酸化組成物」は、本3発明の「エアゾール容器より泡状の剤として吐出され、アルカリ剤を含有する剤と混合して染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として使用される酸化剤含有組成物」に相当する。
甲1発明の「鉱油」は、甲第1号証の段落0038(摘記1b)の「鉱油(例えば流動パラフィン)」との記載にあるように、主としてパラフィン(炭素原子の数が20以上のアルカン)からなる組成のものであって、その構成成分に直鎖型のアルカンが含まれることが当業者の技術常識から明らかなので、本3発明でいうところの「(A)流動パラフィン」に相当する。
甲1発明の「過酸化水素(50%活性)」は、本件特許明細書の段落0014の「酸化剤の具体例としては、例えば過酸化水素…等が挙げられる。」との記載からみて、本3発明の「(B)酸化剤」に相当する。
甲1発明の「グリセリン」は、本件特許明細書の段落0020の「多価アルコールとしては、例えばグリコール、グリセリン等が挙げられる。」との記載からみて、本3発明の「(C)多価アルコール」に相当する。
甲1発明の「イソステアリルアルコール、ベヘネス-10、鉱油30質量%、カプリリルグルコシド(50%活性)、エチドロン酸四ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、セテアレス-60 ミリスチルグリコール、過酸化水素(50%活性)、リン酸、グリセリン、及び水からなる構成成分を混合して調製した酸化組成物を、噴射剤(DME)と混合してなるエアロゾル式酸化組成物」は、その「ベヘネス-10」が、ベヘニスアルコールにポリオキシエチレン10モルが付加した化合物を意味するところ、その組成に「両性界面活性剤」が含まれておらず、本3発明で「除く」とされる特定のブラシを用いて髪に塗布されるものではないので、本3発明の「両性界面活性剤を実質的に含まない酸化剤含有組成物(過酸化水素、非イオン界面活性剤、高級アルコール、及び炭化水素を含有するエアゾール染毛用第2剤組成物の構成であって、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、高級アルコール、高級アルコール以外の25℃で液状である油剤、酸化染料中間体、及びアルカリ剤を含有するエアゾール染毛用第1剤組成物と混合して使用され、ブラシ台の幅方向の両側の側縁部に沿って各々設けられ、前記ブラシ台の長さ方向に所定の間隔をおいて配置された複数本の外側ブラシ歯からなる外側ブラシ歯列と、該外側ブラシ歯の前記幅方向の内側に隣接して設けられ、前記長さ方向に所定の間隔をおいて配置された複数本の内側ブラシ歯からなる内側ブラシ歯列とを有しており、前記内側ブラシ歯の引張弾性率が前記外側ブラシ歯の引張弾性率よりも低いものである毛髪処理剤用ブラシを用いて毛髪に塗布されるものを除く)」に相当する。
してみると、本3発明と甲1発明は、両者とも『エアゾール容器より泡状の剤として吐出され、アルカリ剤を含有する剤と混合して染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として使用される酸化剤含有組成物であって、(A)流動パラフィン、(B)酸化剤、及び(C)多価アルコールを含有し、両性界面活性剤を実質的に含まない酸化剤含有組成物(過酸化水素、非イオン界面活性剤、高級アルコール、及び炭化水素を含有するエアゾール染毛用第2剤組成物の構成であって、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、高級アルコール、高級アルコール以外の25℃で液状である油剤、酸化染料中間体、及びアルカリ剤を含有するエアゾール染毛用第1剤組成物と混合して使用され、ブラシ台の幅方向の両側の側縁部に沿って各々設けられ、前記ブラシ台の長さ方向に所定の間隔をおいて配置された複数本の外側ブラシ歯からなる外側ブラシ歯列と、該外側ブラシ歯の前記幅方向の内側に隣接して設けられ、前記長さ方向に所定の間隔をおいて配置された複数本の内側ブラシ歯からなる内側ブラシ歯列とを有しており、前記内側ブラシ歯の引張弾性率が前記外側ブラシ歯の引張弾性率よりも低いものである毛髪処理剤用ブラシを用いて毛髪に塗布されるものを除く)。』という点において一致し、次の(α)の点で相違する。
(α)本3発明は(A)成分としての「流動パラフィン」を「9質量%以下」の量で含むのに対して、甲1発明は、脂肪物質である「鉱油」を「30質量%」の量で含むものである点
イ 判断
上記(α)の相違点について検討するに、甲第1号証の請求項1(摘記1a)の「酸化組成物の総質量に対して10から60質量%の量の、少なくとも1種の脂肪物質」との記載からみて、甲1発明の脂肪物質(鉱油)の「30質量%」という量を、本3発明の「9質量%以下」という量に変更することが、当業者にとって容易に想到し得たとはいえない。
また、本件特許明細書の段落0072の表1には、流動パラフィンの量を0.2~1質量%とした実施例1~2のものが、その量を10~30質量%とした参考例3~6のものに比して、発泡速度などの評価において優れていることが記載されているので、上記(α)の相違点に係る構成要件の付加が、技術的に無意味な構成要件の付加であるとはいえない。
したがって、上記(α)の相違点は、実質的な差異であるから、本3発明が甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。
また、上記(α)の相違点に係る構成を具備し、それにより格別の効果が奏されることついては、甲第1~3号証に記載の技術事項をどのように組み合わせても、当業者にとって容易であるとはいえないから、本3発明が甲第1~3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 特許異議申立人の主張について
令和6年2月1日付けの意見書において、特許異議申立人は「流動パラフィンの上限値を9質量%とすべき臨界的意義を見いだすことはできない」と主張するが、上記イに示したように、本3発明の量の特定を満たす実施例1~2のものが、これを満たさない参考例3~6のものに比して優れた効果が得られることが示されているので、当該主張は採用できない。
(4)甲2発明を主引用例とした場合の対比・判断
ア 対比
本3発明と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「アルカリ剤を含有する第1剤と混合して使用され、染毛剤で用いられ、過酸化水素の安定性に優れ、なおかつ低温時の使用にも発泡性を損なうことなく使用できる乳化型エアゾール組成物」は、本3発明の「エアゾール容器より泡状の剤として吐出され、アルカリ剤を含有する剤と混合して染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として使用される酸化剤含有組成物」に相当する。
甲2発明の「流動パラフィン」は、本件特許明細書の実施例1~2及び10~13で用いられている「流動パラフィン」と合致する炭化水素であって、本3発明の(A)成分としての「流動パラフィン」に相当する。
甲2発明の「過酸化水素(35%)」は、本件特許明細書の実施例1~2及び10~13で用いられている「35質量%過酸化水素」と合致する酸化剤であって、本3発明の「(B)酸化剤」に相当する。
甲2発明の「過酸化水素(35%)、POEラウリルエーテル(4.2E.O.)、水酸化カリウム、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、ポリオキシエチレンセチルエーテル(2.0E.O.)、ポリオキシエチレンセチルエーテル(15E.O.)、セタノール、ステアリルアルコール、流動パラフィン4重量%、精製水からなるエアゾール原液と、噴射剤(LPG)からなる乳化型エアゾール組成物」は、その構成成分に「両性界面活性剤」が含まれていないことが明らかであって、本3発明で「除く」とされる特定のブラシを用いて髪に塗布されるものではないので、本3発明の「両性界面活性剤を実質的に含まない酸化剤含有組成物(過酸化水素、非イオン界面活性剤、高級アルコール、及び炭化水素を含有するエアゾール染毛用第2剤組成物の構成であって、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、高級アルコール、高級アルコール以外の25℃で液状である油剤、酸化染料中間体、及びアルカリ剤を含有するエアゾール染毛用第1剤組成物と混合して使用され、ブラシ台の幅方向の両側の側縁部に沿って各々設けられ、前記ブラシ台の長さ方向に所定の間隔をおいて配置された複数本の外側ブラシ歯からなる外側ブラシ歯列と、該外側ブラシ歯の前記幅方向の内側に隣接して設けられ、前記長さ方向に所定の間隔をおいて配置された複数本の内側ブラシ歯からなる内側ブラシ歯列とを有しており、前記内側ブラシ歯の引張弾性率が前記外側ブラシ歯の引張弾性率よりも低いものである毛髪処理剤用ブラシを用いて毛髪に塗布されるものを除く)」に相当する。
してみると、本3発明と甲2発明は、両者とも『エアゾール容器より泡状の剤として吐出され、アルカリ剤を含有する剤と混合して染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として使用される酸化剤含有組成物であって、(A)流動パラフィンを9質量%以下、及び(B)酸化剤を含有し、両性界面活性剤を実質的に含まない酸化剤含有組成物(過酸化水素、非イオン界面活性剤、高級アルコール、及び炭化水素を含有するエアゾール染毛用第2剤組成物の構成であって、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、高級アルコール、高級アルコール以外の25℃で液状である油剤、酸化染料中間体、及びアルカリ剤を含有するエアゾール染毛用第1剤組成物と混合して使用され、ブラシ台の幅方向の両側の側縁部に沿って各々設けられ、前記ブラシ台の長さ方向に所定の間隔をおいて配置された複数本の外側ブラシ歯からなる外側ブラシ歯列と、該外側ブラシ歯の前記幅方向の内側に隣接して設けられ、前記長さ方向に所定の間隔をおいて配置された複数本の内側ブラシ歯からなる内側ブラシ歯列とを有しており、前記内側ブラシ歯の引張弾性率が前記外側ブラシ歯の引張弾性率よりも低いものである毛髪処理剤用ブラシを用いて毛髪に塗布されるものを除く)。』という点において一致し、次の(β)の点において相違する。
(β)本3発明は「(C)多価アルコール」を含有するのに対して、甲2発明は「(C)多価アルコール」に相当する成分を含有するものではない点
イ 判断
上記(β)の相違点について検討するに、摘記3bには「アルカリ剤及び噴射剤を含有する第1剤と、酸化剤及び噴射剤を含有する第2剤とから構成され」る「エアゾール式泡沫状染毛・脱色剤組成物」の「第1剤用原液」に「多価アルコール」を配合することで「十分な泡の保形性の向上効果」が得られることが記載されているものの、酸化剤を含有する第2剤に「多価アルコール」を配合することについては示唆を含めて記載がない。
また、甲第2号証の段落0031(摘記2b)には、溶剤や保湿剤などの「化粧料等に通常用いられる原料」を適宜配合してもよいことが記載されているものの、多価アルコールを配合することについては示唆を含めて記載がない。
そして、本件特許明細書の段落0072~0073の表1~表2には、第2剤に多価アルコール(プロピレングリコール)を0.5質量%配合した実施例2のものが、これを配合しない参考例14のものに比して、泡質(モッチリ感)の評価において優れていることが記載されているので、上記(β)の相違点に係る構成要件の付加が、技術的に無意味な構成要件の付加であるともいえない。
したがって、上記(β)の相違点は、実質的な差異であって、この相違点に係る構成を具備し、それにより格別の効果が奏されることついては、甲第1~3号証に記載の技術事項をどのように組み合わせても、当業者にとって容易であるとはいえないから、本3発明が、甲第1~3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 特許異議申立人の主張について
令和6年2月1日付けの意見書において、特許異議申立人は、参考資料1(特開2007-314523号公報)を提示して「酸化剤を含有する染毛剤に対して、物質が具体的に特定されていない多価アルコールを単に加えることは、当業者にとって単なる設計事項に過ぎない」と主張する。
しかしながら、参考資料1には、その段落0032~0033に「第1剤又は第2剤中に不揮発性親水性溶剤を含有することが好ましい。…ポリオール類やその低級(炭素数1~4)アルキルエーテル類などの消泡作用のないものが好ましい。ポリオール類としては、…例えば、グリセリン…等が挙げられる。…不揮発性親水性溶剤の含有量は、…泡質を良好なものとする点から、…特に0.2~3重量%が好ましい。」として、特定のポリオール類のみに限定されない不揮発性親水性溶剤の配合が泡質を良好なものとする旨の記載があるものの、その段落0059~0061に記載の実施例1~10のものは、いずれも第1剤のみに多価アルコール(プロピレングリコール)を配合しているので、参考資料1を参酌しても、第2剤に多価アルコールを配合する本3発明の構成を導き出すことが、当業者にとって単なる設計事項にすぎないとはいえず、当該主張は採用できない。
(5)本4発明について
本4発明は、本3発明の酸化剤含有組成物の使用方法に関する発明であるから、本3発明の新規性及び進歩性が、甲第1~3号証によって否定できない以上、その新規性及び進歩性を否定することはできない。
(6)新規性及び進歩性のまとめ
以上総括するに、第1訂正による訂正後の本3発明及び本4発明について、その新規性ないし進歩性を否定することはできないので、本3発明及び本4発明が、特許法第29条第1項第3号及び同条第2項の規定に違反して特許されたものであるとは認められないので、上記〔理由1〕及び〔理由2〕に理由があるとはいえない。
3.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)申立理由1(新規性)について
特許異議申立人が主張する申立理由1(新規性)は、第1訂正前の本1~本4発明は、甲第1号証に記載された発明であり、本1~本2及び本4発明は、甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号)に該当し、取り消されるべきであるというものである。
そして、申立理由1は、上記第4の〔理由1〕において採用されているから、取消理由において採用しなかった特許異議申立理由に該当しない。
(2)申立理由2(進歩性)について
特許異議申立人が主張する申立理由2(進歩性)は、第1訂正前の本1~本4発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、あるいは、甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、若しくは、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、あるいは、甲第1~3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得た発明であるから、特許法第29条第2項(同法第113条第2号)に該当し、取り消されるべきであるというものである。
そして、申立理由2は、上記第4の〔理由2〕において採用されているから、取消理由において採用しなかった特許異議申立理由に該当しない。
(3)訂正により生じた新たな取消理由について
令和6年2月1日付けの意見書において、特許異議申立人は、第1訂正により本3発明に流動パラフィンの上限値が導入された結果、本3発明に流動パラフィンを0質量%含む場合(流動パラフィンを含有しない場合)を含み得るか否かが当業者にとって不明確となり、本3発明及び本4発明に特許法第36条第6項第2号を理由とする取消理由が新たに生じたと主張する。
また、同意見書において、仮に本3発明が流動パラフィンを0質量%含む態様を含み得るとすれば、本3発明及び本4発明は、訂正後の本件特許明細書に記載されていない事項を含む発明であり、特許法第36条第6項第1号を理由とする取消理由が新たに生じたと主張する。
しかしながら、一般に『特許を受けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載だけではなく,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願当時における技術的常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきことはいうまでもない。』とされているところ〔平成21年(行ケ)第10434号判決参照。〕、本件特許明細書の段落0007の「本発明は、炭化水素を配合することにより、酸化剤含有組成物の製剤安定性、泡質、及び発泡速度を向上できることを見出したことに基づくものである。」との記載を考慮すれば、本3発明の「(A)流動パラフィン9質量%以下」の範囲に、流動パラフィンを0質量%含む態様が含まれないことは明らかである。
また、一般に『特許法36条6項1号は,特許請求の範囲の記載に際し,発明の詳細な説明に記載した発明の範囲を超えて記載してはならない旨を規定したものであり,…所定の数値範囲を発明特定事項に含む発明について,特許請求の範囲の記載が同号所定の要件(サポート要件)に適合するか否かは,当業者が,発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識から,当該発明に含まれる数値範囲の全体にわたり当該発明の課題を解決することができると認識できるか否かを検討して判断すべきものと解するのが相当である。』とされているところ〔平成30年(行ケ)10110号判決参照。〕、本件特許明細書の段落0072~0073の表1~表2には、流動パラフィンの含有量が0.2~1質量%の実施例1~2及び10~13のものに比して、同10~30質量%の参考例3~6及び同0質量%の比較例1~2のものが、泡質(モッチリ感)や発泡速度の点で十分な評価が得られないことが示されているので、本3発明の「9質量%以下」という数値範囲の全体にわたり、本3発明の課題を解決できると当業者は認識できることは明らかである。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由、並びに特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、本3発明及び本4発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに本3発明及び本4発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、訂正前の請求項1~2は削除されているので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、請求項1~2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700588