特許異議申立
2024-700776
酸化染料含有組成物
- 審判番号
- 2024-700776
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-086834
- 登録番号
- 7437724
- 請求日
- 2024年08月19日
- 審決日
- 2025年11月04日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ホーユー株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人雄渾
- 【異議申立人】福▲崎▼ さおり
- 審判長/審判官
- 審判長 阪野 誠司
- 審判官 野田 定文
- 審判官 宮田 透
- 分類
- P1651.537-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第126条第7項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
結論
結 論
特許第7437724号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
特許第7437724号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7437724号の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成31年4月26日に出願され、令和6年2月15日にその特許権の設定登録がされ、同年同月26日に特許掲載公報が発行された。
その後、その請求項1~5に係る発明の特許に対して、令和6年8月19日に特許異議申立人 福▲崎▼ さおり(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。その後の主な手続の経緯は次のとおりである。
令和6年 9月30日付け: 取消理由通知
同年12月 3日 : 上申書の提出(特許権者)
令和7年 1月17日付け: 取消理由通知(決定の予告)
同年 3月19日 : 意見書及び訂正請求書の提出(特許権者)
同年 6月27日付け: 訂正請求があった旨の通知
第2 訂正請求について
1 請求の趣旨
令和7年3月19日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の請求の趣旨は、「特許第7437724号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求める。」というものである。
2 訂正の内容
本件訂正の内容は、令和7年3月19日の訂正請求書の記載及び訂正請求書に添付した特許請求の範囲の記載からみて、次の訂正事項1~3からなるものであると認められる。下線は訂正による記載の変更箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、「(D)高級アルコール」と記載されているのを、「(D)炭素数が16以上24以下の一価の高級アルコール」と訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3~5も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2において、「(D)高級アルコール」と記載されているのを、「(D)炭素数が16以上24以下の一価の高級アルコール」と訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3~5も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4において、「請求項1~3のいずれか一項に酸化染料含有組成物」と記載されているのを、「請求項1~3のいずれか一項に記載の酸化染料含有組成物」と訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。)。
3 本件訂正による訂正の適否の判断
(1)訂正事項1及び2について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る特許発明の「(D)高級アルコール」を、訂正後の「(D)炭素数が16以上24以下の一価の高級アルコール」へと訂正することで、高級アルコールの炭素数と水酸基の個数を限定するものである。また、訂正事項2は、訂正前の請求項2に係る特許発明の「(D)高級アルコール」を、訂正後の「(D)炭素数が16以上24以下の一価の高級アルコール」へと訂正することで、訂正事項1と同様に、高級アルコールを限定するものである。
したがって、訂正事項1及び2による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当する。
イ 新規事項の追加の有無
本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の【0048】及び【0049】には、以下の記載がある。下線は合議体が付加した。
「【0048】
<(D)高級アルコール>
高級アルコールは、炭化水素に置換基として水酸基を有する化合物である。水酸基の数は、特に制限されず、複数の水酸基を有する多価アルコールでもよいが、好ましくは一価アルコールである。また、水酸基以外の他の置換基を有していてもよい。・・・
【0049】
炭化水素の炭素数は、特に制限されないが、例えば、8~40である。下限値としては、好ましくは10以上であり、より好ましくは12以上であり、更に好ましくは14以上であり、特に好ましくは16以上である。上限値としては、好ましくは35以下であり、より好ましくは30以下であり、更に好ましくは28以下であり、特に好ましくは24以下である。この範囲とすることにより、常温における乳化安定性を向上するという本発明の効果を一層発揮することができる。」
そうすると、本件明細書には、高級アルコールの炭化水素の炭素数を16以上24以下とすること、及び高級アルコールを一価アルコールとすることが記載されているといえ、訂正事項1及び2は、本件明細書及び特許請求の範囲(以下「本件明細書等」という。)の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項1及び2による訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
訂正事項1及び2は、上記アで検討したとおり、特許請求の範囲を減縮したものであり、発明の対象やカテゴリーを変更するものでもないので、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1及び2による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3は、訂正前の請求項4の「請求項1~3のいずれか一項に酸化染料含有組成物」という明らかな誤記を、「請求項1~3のいずれか一項に記載の酸化染料含有組成物」と訂正するものである。
したがって、訂正事項3による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書き第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項3は、明らかな誤記の訂正を目的とするものであって、願書に最初に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。。
したがって、訂正事項3は、願書に最初に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
訂正事項3は、明らかな誤記の訂正を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
したがって、訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。
(3)独立特許要件について
本件特許異議申立においては、訂正前の請求項1~5の全てについての特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1~5について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。
(4)一群の請求項について
訂正事項1~3に係る訂正前の請求項1~5について、請求項3~5は請求項1及び2の記載を直接的に又は間接的に引用するものであって、訂正事項1及び2によって記載が訂正される請求項1及び2に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~5に対応する訂正後の請求項1~5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
4 まとめ
以上のとおり、訂正事項1~3による本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付の訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
本件訂正により訂正された請求項1~5に係る発明(以下、各請求項に係る発明を請求項の番号順に「本件訂正発明1」等といい、まとめて、「本件訂正発明」ともいう。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~5(以下、請求項の番号順に「訂正請求項1」等という。)に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
下記(A)~(E)成分を含有し、前記(E)成分の含有量に対する前記(C)成分の含有量の比(C/E比)は、2以上であり、乳化状であることを特徴とする、酸化染料含有組成物。
(A)塩が付加された酸化染料
(B)付加モル数が60以上であるポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤
(C)カチオン性界面活性剤
(D)炭素数が16以上24以下の一価の高級アルコール
(E)付加モル数が15以下であるポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤
【請求項2】
下記(A)~(E)成分を含有し、前記成分(B)は、不飽和炭化水素基を有し、乳化状であることを特徴とする、酸化染料含有組成物。
(A)塩が付加された酸化染料
(B)付加モル数が60以上であるポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤
(C)カチオン性界面活性剤
(D)炭素数が16以上24以下の一価の高級アルコール
(E)付加モル数が15以下であるポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤
【請求項3】
エステル油及び炭化水素油の含有量の和は、2.5質量%以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の酸化染料含有組成物。
【請求項4】
前記(A)成分の含有量は、2質量%以上であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の酸化染料含有組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の酸化染料含有組成物からなる第1剤と、酸化剤を含有する第2剤と、を備えることを特徴とする、酸化染毛剤。」
第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要
1 特許異議申立理由の概要
申立人が特許異議申立書(以下「申立書」という。)に記載した申立理由の概要は、以下の(1)~(3)に示すとおりであり、申立書に添付して提出された証拠方法は、以下の(4)に示すとおりである。
(申立理由の番号は、当審合議体が付した。また、下記(4)に示す甲号証を、以下、それぞれ番号順に「甲1」等といい、本件訂正前の請求項1~5に係る発明を、「本件特許発明1~5」という。)
(1)申立理由1(サポート要件)
以下の(i)~(iv)の理由により、本件特許発明1~5は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、請求項1~5に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法113条第4号の規定に該当し取り消されるべきものである。
(i)出願時の技術常識に照らしても、p-トルイレンジアミン硫酸塩以外のあらゆる塩が付加された酸化染料をも包含する本件特許発明1~5の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
(ii)出願時の技術常識に照らしても、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム以外のあらゆるカチオン性界面活性剤をも包含する本件特許発明1~5の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
(iii)出願時の技術常識に照らしても、ステアリルアルコールとセタノールの組み合わせ以外のあらゆる高級アルコールをも包含する本件特許発明1~5の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
(iv)本件明細書【0022】の教示を参酌すれば、(A)成分の含有量を0.01質量%以上とすることで乳化安定性をより一層向上させることができるものと認められるが、本件明細書の実施例では、(A)成分の含有量が6質量%のものしか示されておらず、たとえ当業者であっても乳化安定性に対する(A)成分の含有量の効果を把握することはできない。
(2)申立理由2(明確性要件)
以下の理由により、本件特許発明1~5は、特許法第36条第6項第2号適合するものではなく、請求項1~5に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法113条第4号の規定に該当し取り消されるべきものである。
炭素数の範囲が明確に規定されていない本件特許発明1~5の「高級アルコール」の意味内容を当業者は理解することができず、本件特許発明1~5は明確でない。
(3)申立理由3(進歩性)
本件特許発明1~5は、甲1に記載された発明及び甲2~5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項1~5に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法113条第2号の規定に該当し取り消されるべきものである。
(4)証拠方法
甲第1号証:特開2019-059699号公報
甲第2号証:特開2018-104327号公報
甲第3号証:特開2017-210431号公報
甲第4号証:特開2014-088359号公報
甲第5号証:特開2003-252735号公報
甲第6号証:化学大辞典,第1版,株式会社東京化学同人,第7刷2005年7月1日,第756、1913及び2461頁
2 当審合議体が通知した取消理由(決定の予告)の概要
本件訂正前の特許について、当審において令和7年1月17日付けで通知した取消理由の概要は、以下に示すとおりである。
〔理由1〕本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。
よって、本件特許の請求項1~5に係る発明に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法113条第4号の規定に該当し取り消されるべきものである。
〔理由2〕本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。
よって、本件特許の請求項1~5に係る発明に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法113条第4号の規定に該当し取り消されるべきものである。
記
・理由2(明確性要件)について
本件明細書の段落0049の「炭化水素の炭素数は、特に制限されないが、例えば、8~40である。」との記載にあるとおりの定義によっては、請求項1及び2に記載された「高級アルコール」の技術的な範囲を明確に把握することができず、(訂正前の)本件特許の請求項1及び2の「高級アルコール」との記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるといわざるを得ない。
・理由1(サポート要件)について
(訂正前の)本件特許の請求項1及び2に記載された(D)の「高級アルコール」という発明特定事項の範囲について、本件明細書の段落0049の記載及び実施例1~13の「試験結果」の記載によっては、これが『炭素数が16以上24以下の一価の高級アルコール』以外のものであっても、本件明細書の段落0005の記載を含む発明の詳細な説明の記載から把握される『塩が付加された酸化染料を含有する酸化染料含有組成物において、様々な温度(常温、高温、低温)においても優れた乳化安定性を有する酸化染料含有組成物の提供』という課題を解決できると当業者が認識できると、直ちに認めることはできない。
第5 当審合議体の判断
当審合議体は、訂正請求項1~5に係る特許は、取消理由通知で通知した取消理由及び申立人が申し立てた申立理由によっては、取り消すことができないものと判断する。その理由は以下のとおりである。
なお、以下の記載事項の摘記において、下線は当審合議体が付加したものであり、「・・・」は摘記の省略を示す。
1 取消理由についての判断
(1)理由2について
訂正請求項1及び2の「高級アルコール」は、「炭素数が16以上24以下の一価の高級アルコール」であることが特定され、その炭素数及び水酸基の数が明確であるから、訂正請求項1及び2の「高級アルコール」についての記載は明確である。
(2)理由1について
訂正請求項1及び2の「高級アルコール」には、「炭素数が16以上24以下の一価の高級アルコール」以外のものが含まれないから、本件訂正発明は課題を解決できると当業者が認識できる。
2 取消理由で採用しなかった申立理由(申立理由1及び3)について
(1)申立理由1(サポート要件)について
ア サポート要件の判断の前提
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、その記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
イ 本件明細書の記載
本件明細書には、以下の記載がある。
摘記a:
「【技術分野】
【0001】
本発明は、塩が付加された酸化染料を含有する酸化染料含有組成物に関する。また、毛髪等を染毛するための酸化染毛剤に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化染毛剤は、酸化染料を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤を備え、毛髪へ適用する際に第1剤と第2剤を混合して使用するものである。毛髪へ適用された酸化染毛剤は、酸化染料が毛髪内部に浸透し、毛髪内部で酸化重合することにより発色する。酸化染料は、酸化重合することにより酸化染料重合体を形成し、毛髪内部に留まり、染毛料や一時着色料に比べて長期間染毛状態が維持される。
【0003】
酸化染料としては、染料中間体やカプラー、それらの硫酸塩及び塩酸塩等が知られており、例えば、特許文献1には、塩が付加された酸化染料、カチオン性界面活性剤、HLBが17~20であるノニオン性界面活性剤、及び、HLBが11以下であるノニオン性界面活性剤を含有する、酸化染毛剤組成物が開示されている。
また、特許文献2、3には、塩が付加された酸化染料、ポリオキシエチレン鎖長が50以上のポリオキシエチレンアルキルエーテル、前記のポリオキシエチレンアルキルエーテルのポリオキシエチレン鎖長より短いポリオキシエチレン鎖長を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルを備える2剤式毛髪化粧料が開示されている。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
乳化状態の酸化染料含有組成物において、塩が付加された酸化染料を含有すると、製剤の乳化安定性が悪くなるため、様々な温度(常温、高温、低温)において乳化状態を維持することができないという問題がある。
そこで、本発明の課題は、塩が付加された酸化染料を含有する酸化染料含有組成物において、様々な温度においても優れた乳化安定性を有する酸化染料含有組成物を提供することである。」
摘記b:
「【0018】
<(A)塩が付加された酸化染料>
酸化染料は、酸化剤により酸化重合して発色する染料である。酸化染料には、染料中間体とカプラーがあり、染料中間体は、自身の酸化により発色する物質であり、カプラーは、染料中間体との組み合わせにより種々の色調となる物質である。
・・・
【0021】
塩が付加された酸化染料には、塩が付加された染料中間体及び塩が付加されたカプラーが含まれる。酸化染料に付加される塩としては、有機酸の付加塩、無機酸の付加塩が挙げられる。より具体的には、例えば、塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、トシル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、リン酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩等が挙げられる。これらの具体例のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。これらの中で、染毛力に優れるという観点から、好ましくは硫酸塩、塩酸塩であり、特に好ましくは硫酸塩である。また、硫酸塩は、様々な温度(常温、高温、低温)において乳化安定性を低下しやすいため、本発明の効果をより一層発揮することができる。
【0022】
酸化染料含有組成物中における塩が付加された酸化染料の含有量は、特に制限されないが、例えば、0.01~20質量%である。下限値としては、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、更に好ましくは0.7質量%以上であり、特に好ましくは2質量%以上である。上限値としては、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下であり、更に好ましくは6質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以下である。
(A)成分の含有量を0.01質量%以上とすることにより、優れた染毛性を得ることができる。また、乳化安定性を向上するという本発明の効果をより一層発揮することができる。一方、(A)成分の含有量を20質量%以下とすることにより、乳化安定性を向上することができる。」
摘記c:
「【0027】
<(B)付加モル数が60以上であるポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤>
付加モル数が60以上であるポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤は、親水基としてポリオキシエチレン鎖を有し、疎水基として炭化水素基を有する界面活性剤であり、ポリオキシエチレンの付加モル数が60以上のものである。ポリオキシエチレンの付加モル数は、好ましくは70以上であり、より好ましくは80以上であり、更に好ましくは90以上であり、特に好ましくは100以上である。
・・・
【0028】
付加モル数が60以上であると、様々な温度(常温、高温、低温)における乳化安定性が向上するという効果がある。これは、乳化粒子の周囲に付加モル数が60以上であるポリオキシエチレン鎖の層が形成され、塩が付加された酸化染料の乳化を破壊する作用を抑制していると推察される。」
摘記d:
「【0041】
<(C)カチオン性界面活性剤>
カチオン性界面活性剤は、水に溶解してイオン解離をする親水基が陽イオンとなる界面活性剤である。
例えば、モノアルキル型4級アンモニウム塩、ジアルキル型4級アンモニウム塩、トリアルキル型4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩、モノアルキルエーテル型4級アンモニウム塩等のアルキル4級アンモニウム塩類、アルキルアミン塩、脂肪酸アミドアミン塩、エステル含有3級アミン塩、アーコベル型3級アミン塩等のアミン塩類、アルキルピリジニウム塩、アルキルイソキノリウム塩等の環式4級アンモニウム塩類、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
・・・
【0046】
酸化染料含有組成物中におけるカチオン性界面活性剤の含有量は、特に制限されないが、例えば、0.001~10質量%である。下限値として、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、更に好ましくは0.5質量%以上であり、特に好ましくは0.8質量%以上である。上限値として、好ましくは8質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは4質量%以下であり、特に好ましくは3質量%以下である。カチオン性界面活性剤の含有量を、上記範囲に調整することにより、様々な温度(常温、高温、低温)における乳化安定性が一層高まるという効果を奏する。」
摘記e:
「【0048】
<(D)高級アルコール>
高級アルコールは、炭化水素に置換基として水酸基を有する化合物である。水酸基の数は、特に制限されず、複数の水酸基を有する多価アルコールでもよいが、好ましくは一価アルコールである。また、水酸基以外の他の置換基を有していてもよい。
また、炭化水素は、飽和炭化水素および不飽和炭化水素のいずれでもよい。
【0049】
炭化水素の炭素数は、特に制限されないが、例えば、8~40である。下限値としては、好ましくは10以上であり、より好ましくは12以上であり、更に好ましくは14以上であり、特に好ましくは16以上である。上限値としては、好ましくは35以下であり、より好ましくは30以下であり、更に好ましくは28以下であり、特に好ましくは24以下である。この範囲とすることにより、常温における乳化安定性を向上するという本発明の効果を一層発揮することができる。
・・・
【0051】
酸化染料含有組成物中における高級アルコールの含有量は、特に制限されないが、例えば、1~20質量%である。下限値として、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、更に好ましくは6質量%以上であり、特に好ましくは7質量%以上である。上限値として、好ましくは18質量%以下であり、より好ましくは16質量%以下であり、更に好ましくは14質量%以下であり、特に好ましくは12質量%以下である。この範囲とすることにより、様々な温度(常温、高温、低温)における乳化安定性を向上するという本発明の効果を一層発揮することができる。
【0052】
酸化染料含有組成物において、(D)成分として、(d1)炭素数18以上の高級アルコールを含有することが好ましく、更には、(d1)炭素数18以上の高級アルコール及び(d2)炭素数16以下の高級アルコールの両方を含有することが好ましい。
炭素数18以上の高級アルコールとしては、例えば、好ましくはステアリルアルコール、アラキルアルコール及びベヘニルアルコール等であり、特に好ましくはステアリルアルコールである。炭素数16以下の高級アルコールとしては、好ましくは、セチルアルコールである。
(d1)炭素数18以上の高級アルコールを含有すると、高温における乳化安定性が向上するという効果がある。また、(d1)炭素数18以上の高級アルコールと、(d2)炭素数16以下の高級アルコールを併用すると、高温及び低温における乳化安定性が向上するという効果がある。」
摘記f:
「【0054】
<(E)付加モル数が15以下であるポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤>
付加モル数が15以下であるポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤は、親水基としてポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤であり、ポリオキシエチレンの付加モル数が15以下のものである。ポリオキシエチレンの付加モル数の下限値は、好ましくは4以上であり、上限値は、好ましくは12以下であり、より好ましくは10以下であり、更に好ましくは8以下であり、特に好ましくは6以下である。
・・・
【0055】
付加モル数が15以下であるポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤を含有すると、様々な温度(常温、高温、低温)における乳化安定性が向上するという効果がある。特に、ポリオキシエチレン鎖の付加モル数が10以下の場合には、高温と低温の乳化安定性がさらに向上するという効果を奏する。これは、乳化粒子の周囲に形成された付加モル数が60以上であるポリオキシエチレン鎖の層が、(E)成分によって補強され、塩が付加された酸化染料の乳化を破壊する作用を抑制していると推察される。」
摘記g:
「【実施例】
【0113】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の技術範囲が限定されるものではない。
[酸化染料含有組成物の調製]
表1~3に示す組成の乳化状の酸化染料含有組成物を下記の方法で調製し、「乳化安定性」を以下に示す評価方法で評価した。評価結果は表の下段に示した。
【0114】
<酸化染料含有組成物の調製方法>
恒温槽で80℃に保たれた状態の容器に、油性成分及び界面活性剤を加え、3連式乳化試験機(型番ET-3A;日光ケミカルズ社製;H7製)により200rpmの回転速度で乳化を行った。乳化後、50rpmの回転速度で室温(25℃)まで冷却した後、アルカリ剤、酸化染料及びその他の成分を加え、上記と同様の3連式乳化試験機により50rpmの回転速度で撹拌、混合を行い、乳化状の酸化染料含有組成物を調製した。
【0115】
<常温における乳化安定性の評価方法>
上記で調製した酸化染料含有組成物を、4号規格瓶に30グラム量り取り、中蓋及び蓋をして常温(25℃)にて、2ヶ月静置し、以下の基準で評価を行った。
(評価基準)
○:分離なし。
×:規格瓶の底から3mm以上分離している。
【0116】
<高温における乳化安定性の評価方法>
上記で調製した酸化染料含有組成物を、4号規格瓶に30グラム量り取り、中蓋及び蓋をして60℃にて、1週間静置し、以下の基準で評価を行った。
なお、乳化粒子径は、システム偏光顕微鏡「OLYMPUS BX51-33P-O型」(対物レンズ20倍、接眼レンズ10倍)を使用して観察し、無作為に選出した20個の乳化粒子について最長径を測定した。そして、20個の乳化粒子の最長径の平均値を算出し、乳化粒子径とした。
(評価基準)
4:乳化状態が特に良好である(分離状態が、規定瓶の底から5mm未満であり、かつ、乳化粒子径3μm未満)。
3:乳化状態が良好である(分離状態が、規定瓶の底から5mm未満であり、かつ、乳化粒子径3μm以上4μm未満)。
2:乳化状態が普通である(分離状態が、規定瓶の底から5mm未満であり、かつ、乳化粒子径4μm以上5μm未満)。
1:乳化状態が不良である(分離状態が、規定瓶の底から5mm以上であり、もしくは、乳化粒子径5μm以上)。
【0117】
<低温における乳化安定性の評価方法>
上記で調製した酸化染料含有組成物を、4号規格瓶に30グラム量り取り、中蓋及び蓋をして-10℃にて、24時間静置し、上記の「高温における乳化安定性の評価方法」と同様に、乳化安定性を評価した。
【0118】
<粘度上昇の評価方法>
各例の酸化染料含有組成物について、調製直後の粘度と、調製後24時間後の粘度を測定し、製造後24時間後の粘度上昇(調製後24時間後の粘度-調製直後の粘度)を算出した。なお、粘度の測定方法は、B型粘度計(東機産業社製 TV-10型)を用いて行った。測定条件は、25℃、1分間とし、粘度が5000mPa・s未満の場合には、3号ローターで回転速度12rpmの条件で測定し、粘度が5000~50000mPa・sの場合には、4号ローターで回転速度12rpmの条件で測定し、粘度が50000mPa・sを超える場合には、4号ローターで回転速度6rpmの条件で測定した。製造後24時間後の粘度上昇は、以下の評価基準で評価した。
また、常温における乳化安定性の評価において、「×」の評価の場合には、粘度上昇の評価は行わなかった(評価結果には、「-」を付した。)。
(評価基準)
5:10000mPa・s以上
4:8000mPa・s以上10000mPa・s未満
3:5000mPa・s以上8000mPa・s未満
2:3000mPa・s以上、5000mPa・s未満
1:3000mPa・s未満
【0119】
【表1】
[図:0001432036000001.jpg]
【0120】
表1から、実施例1、2と比較例1~3を対比すると、(B)付加モル数が60以上であるポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤、(C)カチオン性界面活性剤、及び、(E)付加モル数が15以下であるポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤を含有する場合に、常温(25℃)、高温(60℃)、低温(-10℃)における乳化安定性が向上することがわかった。また、実施例1と実施例2を対比すると、(B)成分において、ポリオキシエチレンの付加モル数が大きい場合、又は、構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を有する場合に低温における乳化安定性が一層高まることがわかった。また、実施例1と実施例3~5を対比すると、(E)成分の付加モル数が10以下の場合に、高温及び低温における乳化安定性が一層高まることがわかった。
【0121】
【表2】
[図:0001432036000002.jpg]
【0122】
表2の実施例6~9を見ると、(C)の含有量/(E)の含有量の値を0.5以上に調整することにより、製造後24時間後の粘度が上昇することがわかる。粘度上昇の評価が向上することにより、製造時には粘度が低いため充填性や洗浄性に優れつつ、製品化時には粘度が上昇して分散安定性に優れるという効果がある。
【0123】
【表3】
[図:0001432036000003.jpg]
【0124】
表3の実施例1、10~13を対比すると、エステル油及び炭化水素油の含有量の和が2.5質量%以下の場合に、高温及び低温における乳化安定性が一層高まることがわかった。」
ウ 本件訂正発明の課題
本件訂正発明は、「塩が付加された酸化染料を含有する酸化染料含有組成物」(摘記aの【0001】)について、「乳化状態の酸化染料含有組成物において、塩が付加された酸化染料を含有すると、製剤の乳化安定性が悪くなるため、様々な温度(常温、高温、低温)において乳化状態を維持することができないという問題がある」(摘記aの【0005】)ことを踏まえたものであり、本件訂正発明の解決しようとする課題は、「塩が付加された酸化染料を含有する酸化染料含有組成物において、様々な温度においても優れた乳化安定性を有する酸化染料含有組成物を提供すること」(摘記aの【0005】)であると認められる。
エ 判断
本件明細書には、上記課題を解決する手段について、「(B)・・・付加モル数が60以上であると、様々な温度(常温、高温、低温)における乳化安定性が向上するという効果がある。これは、乳化粒子の周囲に付加モル数が60以上であるポリオキシエチレン鎖の層が形成され、塩が付加された酸化染料の乳化を破壊する作用を抑制していると推察される。」(摘記cの【0027】、【0028】)、「(E)・・・付加モル数が15以下であるポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤を含有すると、様々な温度(常温、高温、低温)における乳化安定性が向上するという効果がある。・・・これは、乳化粒子の周囲に形成された付加モル数が60以上であるポリオキシエチレン鎖の層が、(E)成分によって補強され、塩が付加された酸化染料の乳化を破壊する作用を抑制していると推察される。」(摘記fの【0054】、【0055】)と記載されている。
また、本件明細書の実施例には、例えば(A)成分としてp-トルイレンジアミン硫酸塩、(B)成分としてポリオキシエチレン(100)オレイルエーテル、(C)成分として塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、(D)成分としてセタノール及びステアリルアルコール、(E)成分としてポリオキシエチレン(5.5)セチルエーテルを含有する実施例1の酸化染料含有組成物において、25℃、60℃及び-10℃での乳化安定性の向上効果を確認することができること(摘記gの【0113】~【0117】、【表1】)や、実施例2~13の酸化染料含有組成物について、同様に乳化安定性の向上効果を確認することができることが示されている(摘記gの【表1】~【表3】)。
そうしてみれば、本件訂正発明は、(A)塩が付加された酸化染料を含有する、乳化状の酸化染料含有組成物において、(B)成分が、乳化粒子の周囲に付加モル数が60以上であるポリオキシエチレン鎖の層を形成し、(E)成分がこの層を補強することで、塩が付加された酸化染料の乳化を破壊する作用を抑制する、というメカニズムにより、様々な温度での乳化安定性を向上させることができるといえるから、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により、当業者は、本件訂正発明の課題を解決できると認識することができる。
オ 申立人の主張
申立人は、申立書(7~14頁)において、申立理由1に関し、上記第4の1(1)の(i)~(iv)の主張をしている。
カ 申立人の主張についての判断
(ア)主張(i)について
本件明細書に「乳化状態の酸化染料含有組成物において、塩が付加された酸化染料を含有すると、製剤の乳化安定性が悪くなるため、様々な温度(常温、高温、低温)において乳化状態を維持することができないという問題がある」(摘記aの【0005】)と記載されているとおり、塩が付加された酸化染料は、製剤の乳化安定性を悪くするという問題があるところ、この問題は、塩によって乳化が破壊されることによるものであるから、硫酸塩以外の塩であっても、製剤の乳化安定性が悪くなるという問題が生じ得ることに変わりはない。
そして、本件訂正発明は、(B)成分が、乳化粒子の周囲に付加モル数が60以上であるポリオキシエチレン鎖の層を形成し、(E)成分がこの層を補強することで、塩が付加された酸化染料の乳化を破壊する作用を抑制するというメカニズムにより、上記問題を解決するから、p-トルイレンジアミン硫酸塩以外の酸化染料であっても、本件訂正発明の課題を解決できるといえる。
したがって、申立人の主張(i)を採用することはできない。
(イ)主張(ii)について
本件明細書に「酸化染料含有組成物中におけるカチオン性界面活性剤の含有量は、特に制限されないが、例えば、0.001~10質量%である。・・・カチオン性界面活性剤の含有量を、上記範囲に調整することにより、様々な温度(常温、高温、低温)における乳化安定性が一層高まるという効果を奏する。」(摘記dの【0046】)と記載されており、カチオン性界面活性剤は、乳化安定性を一層高めるための成分であるから、カチオン性界面活性剤の種類によらず、本件訂正発明により上記問題を解決できると当業者であれば認識することができる。
そのため、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム以外のカチオン性界面活性剤を用いた場合であっても、本件訂正発明の課題を解決できるといえる。
したがって、申立人の主張(ii)を採用することはできない。
(ウ)主張(iii)について
本件明細書に「高級アルコールは、・・・好ましくは一価アルコールである。・・・炭化水素の炭素数は、・・・特に好ましくは16以上である。上限値としては、・・・特に好ましくは24以下である。この範囲とすることにより、常温における乳化安定性を向上するという本発明の効果を一層発揮することができる。」(摘記eの【0049】、【0050】)、「酸化染料含有組成物中における高級アルコールの含有量は、特に制限されないが、例えば、1~20質量%である。・・・この範囲とすることにより、様々な温度(常温、高温、低温)における乳化安定性を向上するという本発明の効果を一層発揮することができる。」(摘記eの【0051】)と記載されており、炭素数が16以上24以下の一価の高級アルコールは、乳化安定性を向上するという本発明の効果を一層発揮するための成分であるから、当該高級アルコールとしてどのような材料を用いたとしても、炭素数が16以上24以下の一価の高級アルコールである限り、本件訂正発明により上記問題を解決できると当業者であれば認識することができる。
そのため、ステアリルアルコールとセタノールの組み合わせ以外の高級アルコールを用いた場合であっても、本件訂正発明の課題を解決できるといえる。
したがって、申立人の主張(iii)を採用することはできない。
(エ)主張(iv)について
本件明細書に「酸化染料含有組成物中における塩が付加された酸化染料の含有量は、特に制限されないが、例えば、0.01~20質量%である。・・・(A)成分の含有量を0.01質量%以上とすることにより、優れた染毛性を得ることができる。また、乳化安定性を向上するという本発明の効果をより一層発揮することができる。一方、(A)成分の含有量を20質量%以下とすることにより、乳化安定性を向上することができる。」(摘記bの【0022】)と記載されており、塩が付加された酸化染料の含有量の範囲は、特に制限されないものであるから、(A)成分の含有量が0.01質量%以上20質量%以下の範囲外であっても、製剤の乳化安定性を悪くするという問題を有し、本件訂正発明により上記問題を解決できると当業者であれば認識することができる。
そのため、(A)成分の含有量を具体的に特定しなくても、本件訂正発明の課題を解決できるといえる。
したがって、申立人の主張(iv)を採用することはできない。
キ まとめ
以上検討したとおり、本件訂正発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものといえるので、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。
したがって、申立理由1によっては、訂正請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
(2)申立理由3(進歩性)について
ア 甲1の記載事項
甲1には、「すすぎ時の指通りが良好であり、かつ第1剤組成物が高温条件下で安定である染毛剤組成物」(段落【0001】、【0011】)として、以下の染毛剤組成物が記載されている(【請求項1】)。
「アルカリ剤を含有する第1剤組成物と、酸化剤を含有する第2剤組成物とを混合して使用する染毛剤組成物であって、
(A)塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム
(B)不揮発性シリコーン油
(C)多価アルコール
を含有し、かつ、前記(A)成分、前記(B)成分および前記(C)成分の含有量の質量比(B+C)/Aが1.4~7であり、
また、前記第1剤組成物中に
(A)塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム
(D)25℃で固体の高級アルコール
(E)非イオン性界面活性剤
を含有し前記(A)成分、前記(D)成分および前記(E)成分の第1剤組成物中の含有量の質量比D/(A+E)が0.14~1.8であることを特徴とする染毛剤組成物。」
また、甲1には、「(E)成分は、・・・POEヒマシ油類、POE硬化ヒマシ油類・・・が挙げられる」こと(【0029】)、「本発明による第1剤組成物および第2剤組成物は、前記成分の他に必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で前記成分以外の各成分、例えば、酸化染料、・・・を含有してよい」こと(【0048】)も記載されている。
そして、甲1には、第1剤組成物の具体例である実施例28として、以下の成分及び含有量の組成物が記載され(【表6】)、「各成分の含有量を示す単位はすべて質量%」であることも記載されている(【0052】)。
(第1剤組成物)
なお、実施例28部分の枠組みは当審合議体が追加したものである。
[図:0001432036000004.jpg]
さらに、甲1には、「すすぎ時の指通り」とは、第1剤組成物及び以下の第2剤組成物それぞれ50gを混合した染毛剤組成物を、毛髪試験用ドールの毛髪に塗布し20分間放置後、40℃の水ですすぎ、その時の指通りを、専門のパネラー3名が評価したものであり、「高温条件下の安定性」とは、第1剤組成物をアルミチューブに40g充填し、60℃条件下で24時間保存した後、常温に戻したアルミチューブから全量絞り出し第1剤組成物の状態を目視にて確認したものであることも記載されている(【0053】~【0058】)。
(第2剤組成物)
[図:0001432036000005.jpg]
イ 甲1に記載された発明
そうすると、甲1には、実施例28として、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
甲1発明:
「アルカリ剤を含有する第1剤組成物と、酸化剤を含有する第2剤組成物とを混合して使用する染毛剤組成物における第1剤組成物であって、
(A)塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム 2.40質量%、(B)メチルポリシロキサン3,000CS 2.80質量%、高重合メチルポリシロキサン10,000CS 0.20質量%、(C)グリセリン4.00質量%、(D)セタノール 3.50質量%、ステアリルアルコール 2.50質量%、(E)ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油(HLB値:6.5) 0.70質量%、ポリオキシエチレン(80)硬化ヒマシ油(HLB値:15.0) 6.30質量%、アスコルビン酸 0.50質量%、亜硫酸ナトリウム 0.50質量%、エデト酸四ナトリウム四水塩 0.20質量%、80%モノエタノールアミン液 7.00質量%、28%アンモニア水 3.50質量%、パラアミノフェノール 1.00質量%、メタアミノフェノール 0.10質量%、レゾルシン 0.60質量%、5-アミノオルトクレゾール 0.40質量%、トルエン-2,5-ジアミン 0.40質量%、香料 0.80質量%、ポリ塩化ジメチルジメチレンピロリジニウム液 1.00質量%、及び精製水 61.80質量%からなる第1剤組成物。」
ウ 本件訂正発明1と甲1発明との対比
本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明における「ポリオキシエチレン(80)硬化ヒマシ油(HLB値:15.0)」は、ポリオキシエチレンの付加モル数が80であって、「親水基としてポリオキシエチレン鎖を有し、疎水基として炭化水素基を有する界面活性剤であり、ポリオキシエチレンの付加モル数が60以上のもの」(本件明細書【0027】)に当たるから、本件訂正発明1の「(B)付加モル数が60以上であるポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤」に相当する。
(イ)甲1発明における「塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム」は、本件明細書【0043】に列挙された「カチオン性界面活性剤」の具体例に含まれる化合物であるから、本件訂正発明1の「(C)カチオン性界面活性剤」に相当する。
(ウ)甲1発明における「セタノール」及び「ステアリルアルコール」は、それぞれ、炭素数16及び炭素数18の一価アルコールであるから、本件訂正発明1の「(D)炭素数が16以上24以下の一価の高級アルコール」に相当する。
(エ)甲1発明における「ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油(HLB値:6.5)」は、「親水基としてポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤であり、ポリオキシエチレンの付加モル数が15以下のもの」(本件明細書【0054】)に当たるから、本件訂正発明1の「(E)付加モル数が15以下であるポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤」に相当する。
(オ)本件明細書の「酸化染料としては、染料中間体やカプラー、それらの硫酸塩及び塩酸塩等が知られており、例えば、特許文献1には、塩が付加された酸化染料、・・・を含有する、酸化染毛剤組成物が開示されている。」(【0003】)及び「酸化染料は、酸化剤により酸化重合して発色する染料である。」(【0018】)等の記載からみて、塩が付加されているか否かに関わらず、酸化剤により酸化重合して発色する染料は「酸化染料」であり、本件訂正発明1における「(A)塩が付加された酸化染料」は「酸化染料」の一種といえる。そして、甲1発明における「パラアミノフェノール」及び「トルエン-2,5-ジアミン」は、本件明細書【0019】に列挙された「酸化染料」(染料中間体)の具体例に含まれる化合物であり、甲1発明における「メタアミノフェノール」、「レゾルシン」及び「5-アミノオルトクレゾール」は、本件明細書【0020】に列挙された「酸化染料」(カプラー)の具体例に含まれる化合物であるから、甲1発明のこれらの化合物は、本件訂正発明1の「(A)塩が付加された酸化染料」と、「酸化染料」である点で一致する。
(カ)甲1発明における「ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油(HLB値:6.5)」に対する「塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム」の質量比は、2.4/0.7≒3.4と算出されるから、甲1発明は、本件訂正発明1の「(E)成分の含有量に対する・・・(C)成分の含有量の比(C/E比)は、2以上」の範囲に含まれる。
(キ)甲1には、「本発明による第1剤組成物には、乳化安定性の観点から、(E)非イオン性界面活性剤を含有する。」(【0028】)等と記載され、また、甲1発明の「高温条件下の安定性」について、「○:60℃条件下24時間保存で若干の水ハキはあるものの分離せず」と評価されている(【0055】、【表6】)ことから、甲1発明の「第1剤組成物」は、乳化状であると認められるから、甲1発明は、本件訂正発明1の「乳化状である」とのという点で一致する。
(ク)甲1発明には、上記(ア)~(カ)で指摘した化合物以外の成分として、「メチルポリシロキサン3,000CS」、「高重合メチルポリシロキサン10,000CS」、「グリセリン」、「アスコルビン酸」、「亜硫酸ナトリウム」、「エデト酸四ナトリウム四水塩」、「80%モノエタノールアミン液」、「28%アンモニア水」、「香料」、「ポリ塩化ジメチルジメチレンピロリジニウム液」及び「精製水」が含まれるが、本件訂正請求項1の「下記(A)~(E)の成分を含有し」との記載、並びに、本件明細書の「本発明の酸化染料含有組成物は、上記成分以外にも、必要に応じて以下の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、アルカリ剤、・・・油性成分、・・・無水亜硫酸ナトリウム等の酸化防止剤、・・・ポリ塩化ジメチルジメチレンピペリジニウム液、・・・上記(D)成分以外の多価アルコール、・・・キレート剤、・・・ビタミン類、香料、・・・が挙げられる。」(【0088】~【0102】)との記載、及び、実施例の組成物に「精製水」が含まれていること(【表1】~【表3】)からみて、本件特許発明1には、他の成分が含まれ得ると解され、この点は、両発明の相違点ではない。
(ケ)甲1発明の「第1剤組成物」は、上記(オ)で述べたとおり、本件訂正発明1の「酸化染料」に相当する化合物を含むものである。一方、本件訂正発明1の「酸化染料組成物」は、アルカリ剤を含む「第1剤」を、酸化剤を含む「第2剤」と混合して酸化染毛剤として用いるものであるから(本件明細書の【0105】~【0110】、実施例)、甲1発明の「アルカリ剤を含有」し、「酸化剤を含有する第2剤組成物とを混合して使用する染毛剤組成物」における「第1剤組成物」は、本件訂正発明1の「酸化染料組成物」に相当する。
(コ)そうすると、本件訂正発明1と甲1発明は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
(一致点)
「下記(A’)~(E)成分を含有し、前記(E)成分の含有量に対する前記(C)成分の含有量の比(C/E比)は、2以上であり、乳化状であることを特徴とする、酸化染料含有組成物。
(A’)酸化染料
(B)付加モル数が60以上であるポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤
(C)カチオン性界面活性剤
(D)炭素数が16以上24以下の一価の高級アルコール
(E)付加モル数が15以下であるポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤」
(相違点)
「酸化染料」について、本件訂正発明1は、「塩が付加された酸化染料」であるのに対し、甲1発明は、「パラアミノフェノール」及び「トルエン-2,5-ジアミン」、「メタアミノフェノール」、「レゾルシン」及び「5-アミノオルトクレゾール」であって、塩が付加されていない点。
エ 相違点についての判断
上記相違点について検討する。
(ア)甲1には、「酸化染料」について、「本発明による第1剤組成物および第2剤組成物は、前記成分の他に必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で前記成分以外の各成分、例えば、酸化染料、・・・を含有してよい。」と記載されているが、これらの酸化染料である化合物に塩を付加することについての記載や示唆はない。
(イ)甲2には、染毛剤の第1剤に含有される酸化染料として、トルエン-2,5-ジアミン(パラトルイレンジアミン)、p-アミノフェノール、レゾルシン、5-アミノ-o-クレゾール、m-アミノフェノール及びそれらの塩が挙げられており(【0057】~【0060】)、酸化染料として硫酸トルエン-2,5-ジアミンを用いた実施例も記載されている(【表1】、【表2】)。
(ウ)甲3には、酸化染毛剤組成物の第1剤に含有される酸化染料として、酸付加塩である酸化染料の塩を用いることが記載され、具体例として、トルエン-2,5-ジアミン(p-トルイレンジアミン)、p-アミノフェノール、レゾルシン、5-アミノ-o-クレゾール、及びm-アミノフェノールの各塩が挙げられており(【0011】~【0014】)、酸化染料として硫酸p-トルイレンジアミンを用いた実施例も記載されている(【表1】、【表2】)。
(エ)甲4には、2剤式毛髪化粧料の第1剤に含有される酸化染料として、5-アミノオルトクレゾール、硫酸5-アミノオルトクレゾール、トルエン-2,5-ジアミン、メタアミノフェノール、硫酸トルエン-2,5-ジアミン、硫酸メタアミノフェノールが挙げられており(【0034】)、酸化染料として硫酸トルエン-2,5-ジアミンを用いた実施例も記載されている(【表1】、【表2】)。
(オ)甲5には、酸化型染毛剤1剤に含有される酸化染料として、トルエン-2,5-ジアミン、硫酸トルエン-2,5-ジアミンが挙げられており(【請求項1】、【0011】)、酸化染料として硫酸トルエン-2,5-ジアミンを用いた実施例も記載されている(【0024】、【0025】)。
(カ)上記(イ)~(オ)のとおり、酸化染料として、硫酸トルエン-2,5-ジアミンのような、酸付加塩を用いること自体は、当業者にとって既に公知の技術的事項といえる。
しかしながら、甲1発明は、アルカリ剤を含有する第1剤組成物であり、その組成を特定のものとすることにより、染毛剤組成物の「すすぎ時の指通りが良好であり」、かつ「第1剤組成物が高温条件下でも安定である」といった効果を奏するものであるところ、甲1には、塩が付加された酸化染料を用いることは記載も示唆もされておらず、上記効果に大きな影響を及ぼすことになる、甲1発明の組成の変更を更に行うという動機付けはない。このことは、甲2~5に記載されている、酸付加塩が酸化染料として単に公知であったとしても、同様である。
(キ)本件訂正発明1は、乳化状態の酸化染料含有組成物において、塩が付加された酸化染料を含有すると、製剤の乳化安定性が悪くなるため、様々な温度(常温、高温、低温)において乳化状態を維持することができないという課題を、本件訂正発明1に特定される所定の組成物とすることにより解決したものであるから、本件訂正発明1の塩が付加された酸化染料を含有しても様々な温度(常温、高温、低温)において乳化状態を維持できるという効果は、甲1~甲5の記載をみても、当業者が予測できない顕著なものといえる。
オ 申立人の主張
申立人は、申立書(15~37頁)において、甲1の実施例28から上記イの甲1発明と同様の「甲1号証に記載の発明」を認定し、本件訂正発明1と対比し、上記ウ(コ)と同様の一致点・相違点を認定した上で、以下の(i)、(ii)の点を挙げて、本件訂正発明1は、甲2~5の記載を参酌することにより、甲1に記載の発明から当業者が容易に想到できたものであることを主張している。
(i)甲2~5の教示(甲2、4及び5ではトルエン-2,5-ジアミン等とそれらの塩の両方を使用でき、甲3ではトルエン-2,5-ジアミン等の塩を使用できる旨の教示)及び甲2~5の実施例における具体的な開示(硫酸トルエン-2,5-ジアミンの使用を具体的に開示)を参酌することにより、甲1発明のパラアミノフェノール、メタアミノフェノール、レゾルシン、5ーアミノオルトクレゾール、及びトルエン-2,5-ジアミンのいずれかを塩が付加されたものに変更することは、当業者であれば容易になし得たことである。
(ii)本件明細書の実施例では、全ての実施例及び比較例において酸化染料として「p-トルイレンジアミン硫酸塩」が使用されており、本件明細書においては、酸化染料に塩を付加したことによって得られる効果は明らかではなく、それにより甲1号証に記載の発明と比較して有利な効果を奏するとも認められないし、仮に効果が認められたとしても、それは、「(A)塩が付加された酸化染料」を「p-トルイレンジアミン硫酸塩」等に限定した場合に認められるものにすぎない。
カ 申立人の主張についての判断
(ア)主張(i)について
上記エ(カ)で述べたとおり、甲2~5の記載を参照しても、甲1発明において、塩が付加された酸化染料を用いる動機付けとなる記載は見いだせない。むしろ、硫酸トルエン-2,5-ジアミン等の塩である染料は、乳化を不安定にすることが知られている(例えば甲4の【0013】)ことから、甲1発明において、乳化を不安定にする塩である染料をあえて用いることは、当業者が容易になし得たことではない。
したがって、申立人の主張(i)を採用することはできない。
(イ)主張(ii)について
上記エ(キ)で述べたとおり、本件訂正発明1は、乳化状態の酸化染料含有組成物において、塩が付加された酸化染料を含有すると、製剤の乳化安定性が悪くなるため、様々な温度(常温、高温、低温)において乳化状態を維持することができないという課題を、本件訂正発明1に特定される所定の組成物とすることにより、解決したものであり、p-トルイレンジアミン硫酸塩以外の塩が付加された酸化染料であっても同様の課題が生じ得、本件訂正発明1の組成によって乳化安定性が改善されるといえるから、酸化染料として「p-トルイレンジアミン硫酸塩」以外のものを使用しても、本件訂正発明1の効果を奏するといえる。
したがって、申立人の主張(ii)を採用することはできない。
キ 本件訂正発明1についての小括
以上検討したとおり、本件訂正発明1は、甲1~5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
したがって、申立理由3によっては、訂正請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
ク 本件訂正発明2~5について
本件訂正発明2と甲1発明とを対比すると、上記ウ(ア)~(オ)及び(キ)~(ケ)の点は、本件訂正発明2と甲1発明との対比についても同様にあてまる。
そうすると、本件訂正発明2と甲1発明とは、少なくとも上記ウ(コ)の相違点で相違するが、上記エ~キで検討したとおり、本件訂正発明2は、甲1~5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件訂正発明3~5は、本件訂正発明1又は2の特定事項を備えたものであり、本件訂正発明1及び2と同様、甲1~5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件訂正発明2~5も、本件訂正発明1と同様、甲1~5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
よって、申立理由3によっては、訂正請求項2~5に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由並びに申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに本件請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700776