特許異議申立
2023-700578
廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法
- 審判番号
- 2023-700578
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-233156
- 登録番号
- 7184622
- 請求日
- 2023年06月05日
- 審決日
- 2023年09月12日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社トクヤマ
- 【権利者代理人】塩入 明
- 【権利者代理人】塩入 みか
- 【権利者】株式会社トクヤマ・チヨダジプサム
- 【権利者代理人】塩入 明
- 【権利者代理人】塩入 みか
- 【異議申立人】金澤 毅
- 審判長/審判官
- 審判長 日比野 隆治
- 審判官 宮澤 尚之
- 審判官 立木 林
- 分類
- P1651.121-Y (C01F) / P1651.537-Y (C01F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7184622号発明「廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7184622号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7184622号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成30年12月13日に出願され、令和4年11月28日にその特許権の設定登録がされ、同年12月6日に特許掲載公報が発行された。
その後、その請求項1~3に係る特許に対して、令和5年6月5日に特許異議申立人金澤毅(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
第2 本件特許請求の範囲の記載(本件発明)
本件特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。そして、請求項1~3に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」という。)は、その記載事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
廃石膏ボード由来の石膏をか焼することにより半水及び/又は無水III型の石膏粒体とし、前記石膏粒体を、石膏を含むスラリーまたは水と混合して石膏スラリーとし、石膏スラリー中に析出した二水石膏粒子を固液分離する、廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法において、
粒状あるいは繊維状の活性炭を前記石膏スラリーと混合する混合ステップと、
前記固液分離前に、活性炭を石膏スラリーから分離する分離ステップとを行うことを特徴とする、廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法。
【請求項2】
前記分離ステップでは、二水石膏粒子を通過させるが活性炭を通過させない目開きの篩により、活性炭を石膏スラリーから篩い分けすることを特徴とする、請求項1の廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法。
【請求項3】
前記篩以上の目開きの第2の篩上で予め洗浄した活性炭を前記混合ステップで使用することを特徴とする、請求項2の廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法。」
第3 特許異議の申立てについて
1 特許異議申立理由の概要
申立人が主張する特許異議申立理由は、概略、以下のとおりである。
ここで、申立人が提出した証拠方法は、次のものである。
甲第1号証 特開2012-250913号公報
甲第2号証 国際公開第2012/176688号
甲第3号証 特開平6-218361号公報
甲第4号証 特開平2-172598号公報
甲第5号証 特開2008-167675号公報
甲第6号証 特開2017-119275号公報
(1) 申立理由1(甲第1号証を主たる証拠とした進歩性欠如)
本件発明1~3は、甲第1号証に記載された発明及び周知慣用の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2) 申立理由2(甲第2号証を主たる証拠とした進歩性欠如)
本件発明1~3は、甲第2号証に記載された発明及び周知慣用の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3) 申立理由3(サポート要件違反)
本件発明1~3に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2 各甲号証の記載事項
(1) 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、「二水石膏の改質方法及び該方法で改質された改質二水石膏」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。なお、下線は当審が付した(以下同様)。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発原料とする二水石膏を焼成して半水石膏にする焼成工程と、
該焼成工程で得られた半水石膏を固形分として含むスラリーを用い、該スラリー状の半水石膏を、界面活性剤及び/又は消泡剤の存在下で水和・再結晶化することで、上記出発原料の二水石膏に比べて白色度が向上した二水石膏に改質する再結晶化工程と、
該再結晶化工程の終了後のスラリーから、改質した二水石膏を水簸法によって分別する分別工程と、
を有することを特徴とする二水石膏の改質方法。
・・・
【請求項3】
前記分別工程において、水簸法によって分別した二水石膏に再度水を加えてスラリー化した後に、脱水・洗浄して最終生成物とする請求項1又は2に記載の二水石膏の改質方法。
・・・」
イ 「【0003】
しかしながら、天然石膏や上記したような副生石膏、さらには廃石膏などの、原料とする既存の二水石膏を、簡易な方法で連続して、平均粒径が60μmを超える、例えば、平均粒径64μm以上の大きな結晶からなる純度の高い粒径の揃った二水石膏に改質する技術は確立されておらず、このような技術が確立されれば、実用上、極めて有用である。一方、石膏プラスターなどの石膏製品を使用した際に、石膏原料中に含有されている硫酸カルシウム以外の溶解性または不溶解性の不純物に起因し、石膏製品に黒ずみが生じる場合がある。これに対して、黒ずみの原因となる不純物を含有しない白色度の高い石膏原料は少なく、天然石膏や副生石膏や廃石膏などを原料とする二水石膏を、純度の高い白色の石膏原料に簡易に改質できる技術が開発されれば、特に、高い白色度が要求される歯科用石膏などの製品を作る原料の提供に対して、非常に有用である。」
ウ 「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、天然石膏や各種の副生石膏及び廃石膏など原料とする二水石膏を、一旦焼成して半水石膏とし、これを連続して再結晶化することで、元の結晶形態とは別の結晶形態の改質二水石膏にする方法であって、特に、一般的には得ることができない60μmよりも大きい、さらには、平均粒径が64μm以上の大きな結晶であって、粒径の揃った95%以上の高純度の二水石膏に連続して改質する、石膏原料の改質方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、同時に、石膏プラスターなどの石膏製品を製造した場合に、天然石膏や副生石膏や廃石膏などの原料とする石膏中に含有されている硫酸カルシウム以外の不純物に起因して生じる、石膏製品の黒ずみの発生を防止し、純度の高い、結晶粒径の大きい白色の改質二水石膏を、簡易な連続した処理方法で得ることができる二水石膏の改質方法を提供することにある。」
エ 「【0015】
以下、好ましい形態を挙げて本発明を詳細に説明する。本発明で改質の対象とする二水石膏は、石膏製品の原料として広く用いられているものをいずれも使用できる。具体的には、天然石膏、合成石膏、種々の化学プロセスの副産物として得られる各種の副生石膏、廃石膏型、或いは一戸建て、集合住宅若しくはマンション等の新築や解体時に発生する石膏ボード廃材に由来する廃石膏など、二水石膏であれば、いずれのものも原料として使用できる。本発明では、上記に挙げたような原料とする二水石膏(以下、「原料石膏」と呼ぶ)を、簡易な連続処理方法で、各種用途に最適な石膏原料として利用が可能な、これまで一般的には得ることができなかった大きな結晶粒径を有する純度の高い粒径の揃った二水石膏に改質する。本発明の方法は、少なくとも、上記に挙げたような原料石膏を焼成して半水石膏にする半水化工程と、上記半水石膏を再結晶反応槽内の水性スラリーへ供給する仕込み工程と、上記半水石膏を水性スラリー中で水和・再結晶化して、原料石膏とは別の結晶形態の改質二水石膏(以下、改質二水石膏と呼ぶ)にする再結晶化工程と、上記改質二水石膏の一部を上記再結晶反応槽より抜き出す抜き出し工程とを有する。そして、上記再結晶化工程において、上記再結晶化反応槽中で、水性スラリーの固形分と液分が分離せず、均一分散するように撹拌しつつ、一定の温度(好ましくは、80℃よりも高く、かつ、90℃以下の温度)に保持して再結晶化する。本発明では、上記再結晶化反応槽への半水石膏の供給量及び再結晶化した改質二水石膏の抜き出し量が実質的に等量になるよう制御し、連続して又は間歇して供給及び抜き出しを行い(好ましくは、一時間当りの供給量及び抜き出し量のいずれもが再結晶反応槽内の全石膏量の20%以下となるようにする)、連続処理によって上記半水石膏を水和・再結晶化して改質二水石膏にする。以下、詳述する。」
オ 「【0029】
(種晶)
さらに、本発明では、再結晶化反応槽中に、種晶となる二水石膏を僅かな量、連続または間歇して添加することが好ましい。具体的な添加量としては、供給する半水石膏に対して0.01質量%以上5質量%未満の範囲で、より好ましくは、0.05~2.0質量%の範囲で添加することが好ましい。このようにすれば、より安定して、上記優れた改質二水石膏を得ることが可能になる。本発明においては、必ずしも種晶を添加しなくてもよいが、本発明者らの検討によれば、種晶を添加しない場合は、改質二水石膏の粒径が揃わない傾向があり、過剰な量の種晶を添加すると、改質二水石膏の粒径が小さくなる傾向があるので、より高品位の製品を得るためには若干量の種晶を添加することが好ましい。」
カ 「【0038】
(界面活性剤及び/又は消泡剤)
本発明の二水石膏の改質方法の再結晶化工程では、再結晶化反応槽中に、界面活性剤及び/又は消泡剤を1種以上、合計で、0.01~0.2質量%の範囲で含有させてもよい。この際に使用することができる界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルフォン酸系界面活性剤、アルキルサルフェート系界面活性剤、アルキルエーテルサルフェート系界面活性剤、リグニンスルフォン酸系界面活性剤、ナフタレンスルフォン酸系界面活性剤、ビスフェノール系界面活性剤、ポリカルボン酸系界面活性剤が挙げられる。また、同様に使用できる消泡剤としては、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル型消泡剤、鉱油配合型消泡剤、シリコーン系消泡剤、エマルジョン型消泡剤が挙げられる。このような界面活性剤又は消泡剤を添加すると、再結晶化が終了した後に二水石膏を取り出す際に、黒ずみの原因となるような不純物である汚れ成分を好適に分離することができる。本発明者らの検討によれば、アルキルベンゼンスルフォン酸系界面活性剤やポリカルボン酸系界面活性剤には、結晶調整剤としての効果もあり、これらを併用することで、先に述べた別に添加する結晶調整剤の量を節減できるという利点もある。」
キ 「【0039】
[白い石膏を得る技術としての分別工程]
本発明の二水石膏の改質方法では、前記したように、上記のような再結晶化工程の後に、再結晶化した二水石膏を分別する工程を設け、平均粒径の大きい改質二水石膏を分別し、さらに、石膏製品の原料としてより価値を高めるために、下記のような処理をすることが好ましい。先にも述べた通り、この分別方法は、白い石膏を得る技術として、本発明の二水石膏の改質技術と切り離して利用することもできる。以下、この分別方法について説明する。再結晶化工程の終了後、改質二水石膏を含有するスラリーから、下記に述べるような水簸法によって、汚れ成分を除去することができる。再結晶化工程で半水石膏を再結晶化することによって、原料石膏に含まれていた可溶性或いは不溶性の不純物は、改質二水石膏と分離されて、スラリーに混合された状態になっている。原料石膏に含まれる不溶性不純物は、多くの場合、平均粒径が30μm以下の微細なもので、改質二水石膏と比較すると沈降速度が小さいため、水簸法を用いることによってスラリー中から不溶性の不純物を良好な状態で分別することが可能である。さらに、水簸法の回数を繰り返すことにより、より純度の高い改質二水石膏を得ることができる。液体サイクロンを利用して分別する方法もあるが、本発明者らの検討によれば、改質二水石膏と、不溶性の不純物が混合した状態の石膏スラリーから、不溶性の不純物のみを分別する方法としては不向きである。これに対し水簸法では、平均粒径の大きな改質二水石膏の結晶の沈降速度が不溶性の不純物よりも早いという沈降速度の差を利用することで、上澄み水を排出することで、不純物を分別除去できる。この場合、同時に平均粒径の小さい改質二水石膏の結晶も一部不純物側に分別されるので、得られる改質二水石膏の平均粒径は更に大きくできる。また、分別されて排出された上澄み水は、半水石膏化工程や再結晶化工程で使用する水として戻して再利用するように構成することができる(図1参照)。このようにすれば、再度、改質処理が行われて、平均粒径の小さい改質二水石膏が、石膏製品の原料として好適な所望の粒径の改質二水石膏に改質される。また、上澄み水を排出した後に残った平均粒径の大きな改質二水石膏の結晶は、再度水を加えてスラリー化し、その後に、遠心分離機、フィルタープレス等の公知の方法で処理して水を分離することで、石膏製品の原料として好適な所望の粒径の改質二水石膏からなる石膏原料になる。また、上記の水を分離する際に、脱水前又は脱水中に清澄な水で洗浄することによって可溶性の不純物を除くことができる(脱水・洗浄工程)。
【0040】
本発明者らの検討によれば、天然石膏や各種の副生石膏及び廃石膏などを焼成して半水石膏とし、本発明と同様に、これを水中に入れて再結晶化させることで、結晶内に取り込まれていた汚れ成分を除去することが可能となる。より具体的には、汚れ成分の分離をよくするため、界面活性剤又は消泡剤の存在下で、半水石膏をスラリー状にし、半水石膏を再結晶化させる際に、半水石膏に付着していた汚れ成分及び半水石膏の結晶内に取り込まれていた汚れ成分を分離する。この時のスラリー温度は、水和反応が進むのであれば特に限定されない。その後、上記分別方法を実施すれば、汚れ成分を除去することができる。再結晶化の際に使用する界面活性剤及び/又は消泡剤は、先に挙げたような界面活性剤及び/又は消泡剤を1種以上、合計で、0.01~0.2質量%の範囲で含有させることが好ましい。このようにすれば、色差計で測定し、ハンター白色度で表した場合に、例えば、白色度が80以上の、良好な白色石膏を得ることができる。天然石膏や各種の副生石膏及び廃石膏などを原料に用いた場合には、従来の方法では白色度の高い製品を容易に得ることができず、その用途が制限されていたが、上記の方法を用いることで用途拡大を実現できるので、リサイクル、環境保全の点からも多大なメリットがある。」
(2) 甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、「石膏ボード廃材から石膏を再生する方法」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。
ア 「請求の範囲
1. 少なくとも
石膏ボード廃材を破砕して石膏ボード廃材破砕物を得る破砕工程、
前記石膏ボード廃材破砕物を加熱して半水石膏を得る焼成工程、
前記半水石膏を水性媒体に溶解し次いで二水石膏を析出させ、二水石膏スラリーを得る晶析工程、および
前記二水石膏スラリーから水性媒体を除去する脱水工程
を含む、石膏ボード廃材から石膏を再生する方法であって、
前記晶析工程後、脱水工程前に、前記二水石膏スラリーから石膏ボード原紙由来の繊維状異物を除去する繊維状異物除去工程を備えることを特徴とする、前記方法。
2. 前記繊維状異物除去工程における繊維状異物の除去が、二水石膏スラリーを篩にかけ、微小異物を篩上に除去することによって行われる、請求項1に記載の方法。
・・・」
イ 「これまで、石膏ボード廃材から得られる廃石膏の処理方法については、数多くの提案がなされている。その中には、石膏ボード廃材等から廃石膏を回収して従来の石膏用途(たとえば石膏ボード、セメント組成物等)へ再利用する技術に関する検討も含まれている。
・・・
一方、再生石膏をセメント組成物用途に使用する場合、廃石膏に含まれる界面活性剤等の含有割合を十分に低減することが必要となるが、従来技術の方法はこの点に対する対処が不十分である。」(明細書第1頁第23行~第2頁12行)
ウ 「本発明の目的は、石膏ボート廃材から、ボード原紙に起因する繊維状異物が効率よく高精度に除去され、しかも全累積細孔容積が小さく、粒径がそろった二水石膏を再生する方法を提供することにある。」(明細書第4頁第4~6行)
エ 「(焼成工程)
次に、焼成工程において、前記破砕工程から回収された二水石膏破砕物を加熱して半水石膏を得る。この焼成工程における加熱温度は、好ましくは100~200℃であり、より好ましくは110~160℃であり、加熱時間は、好ましくは2~60分であり、より好ましくは5~30分である。焼成工程における加熱は適宜の装置により行うことができ、たとえば熱風乾燥器、伝導電熱乾燥機、流動化装置等を使用して行うことができる。
この焼成工程によって二水石膏は半水石膏となるのであるが、二水石膏のうちの一部がそのまま残存する場合がある。また脱水が進み、一部がIII型無水石膏まで脱水される場合がある。更に、使用する石膏ボード廃材の種類によっては、焼成前の石膏ボード廃材中にII型無水石膏が含有されている場合もある。」(明細書第7頁第10~20行)
オ 「(晶析工程)
続いて行われる晶析工程では、前記焼成工程によって得られた半水石膏を水性媒体に溶解し、次いで二水石膏を析出させて二水石膏スラリーを得る。前記水性媒体としては水が好ましい。石膏ボード廃材より得られる二水石膏を加熱して半水石膏とし、次いでこれを水性媒体中に溶解した後に二水石膏として析出させることにより、良質の二水石膏を安定的に製造することができる。
水性媒体中には、種晶石膏となる二水石膏を存在させてもよい。水性媒体中に種晶石膏となる二水石膏が存在することにより、良質の二水石膏を極めて安定的に製造できるとともに、二水石膏の析出に要する時間を短縮できる点で好ましい。」(明細書第8頁第26行~第9頁第6行)
カ 「(繊維状異物除去工程)
このようにして再生された二水石膏は、石膏ボード廃材由来の二水石膏とは異なる、全累積細孔容積の小さい二水石膏である。従って、前記の晶析工程によって得られる二水石膏スラリーは、十分な流動性を有する。
従って、前記晶析工程の後、後述する脱水工程の前に、繊維状異物除去工程を備えて、晶析工程によって得られた二水石膏スラリーから繊維状異物を効率よく分離除去することが可能である。ここで繊維状異物とは、特に限定されないが、主としてボード原紙由来の微小な紙片、紙繊維等からなる異物であり、前記粗大異物除去工程で除去されずに石膏ボード廃材破砕物に同伴されて系内に混入した紙の小片ないし繊維である。該繊維状異物の大きさは、長手方向で1~5mm程度である。
繊維状異物を分離除去する方法については、公知の方法を制限なく用いることができる。たとえば、篩、遠心分離、浮遊分離等が挙げられる。中でも、篩は、連続プロセスとしての処理効率が良いため、好ましい。以下、篩を用いた繊維状異物の除去について説明する。
晶析工程より得られる二水石膏スラリーは、流動性に優れるから、スラリーのまま容易に篩にかけることができる。またこのスラリーは粒子の凝集もないから、従来行われている乾式における繊維状異物除去の篩に比べ、目開きを小さくすることが可能である。従って、従来の乾式法では除去できなかったボード原紙由来の細かい繊維状異物を、目詰まりなく、精度良く除去することができる。その結果、得られる二水石膏の純度は非常に高いものとなる。
繊維状異物除去工程に用いる篩は、特に制限されるものではなく、一般的なものでよい。篩として、たとえば振動篩、回転篩、超音波篩等を用いることにより、篩効率が向上する点で好ましい。篩の目開きは、好ましくは0.2~3mmであり、より好ましくは0.5~1mmである。
この繊維状異物除去工程に供される二水石膏スラリー中の二水石膏濃度の好ましい範囲は、篩の目開きの大きさによって適宜に決定される。たとえば、前記の好ましい目開きの篩を使用した場合には、篩処理の精度を高くするとの観点から、二水石膏濃度を10重量%以下に調整することが好ましく、5重量%以下に調整することがより好ましい。二水石膏スラリー中の二水石膏濃度が前記濃度よりも高い場合、篩上に分離される繊維状異物の量にはほとんど影響がないものの、二水石膏の回収率が減少する場合があるため、好ましくない。そこで、先ず二水石膏濃度10%を超えるスラリーについて1回目の篩処理を行い、篩上に残った繊維状異物と二水石膏との混合物を再度水性媒体に懸濁して二水石膏濃度10重量%以下のスラリーとし、これについて2回目の篩処理を行ってもよい。
該繊維状異物除去工程においては、1段の篩で篩ってよいし、多段の篩を用いて篩ってもよい。多段の篩を用いて篩う場合、篩の目開きを段階的に小さくし、最終的な目開きが前記範囲になるよう、篩を選択してもよい。」(明細書第9頁第21行~第11頁第2行)
キ 「実施例1
家屋の新築現場から分別回収した石膏ボード廃材を、4軸ロール破砕機に投入して破砕した。得られた破砕物を目開き11mmの篩上に導入し、篩上に紙片状異物、篩下に二水石膏の粉体を分離した。この二水石膏における紙の含有割合は1.6重量%、二水石膏の回収率は90重量%であった。この分離した二水石膏を流動層か焼機に投入し、150℃において20分間加熱処理して半水石膏とした。この半水石膏における二水石膏の含有割合は0.6重量%であった。この半水石膏を風力分級機能付きの微粉砕機に投入し、平均粒径3μmまで粉砕した。
スラリー中の二水石膏濃度40重量%、スラリー温度50℃に調整したスラリー容積6リットルの撹拌式反応槽に、前記粉砕後の半水石膏を200g/h、水を393ml/hの速度で連続的に供給し、反応を開始した。反応開始から48時間以降に反応槽から排出された二水石膏スラリーに水を加えて二水石膏濃度10重量%とした後、目開き500μmの振動篩を通過させた。篩下のスラリー中の二水石膏は、紙の含有率が0.3重量%であり、二水石膏の回収率は99重量%であった。石膏ボード廃材に対する二水石膏の回収率は、89重量%であった。
得られた二水石膏スラリーを真空ろ過することにより、含水率12重量%、粒径(D50)42μm、累積細孔容積0.3ml/gの二水石膏を得た。」(明細書第14頁第25行~第15頁第14行)
(3) 甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、「活性炭吸着装置」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 被処理水と粉末活性炭との混合スラリーを貯留する吸着槽と、吸着槽に被処理水を供給する供給管と、吸着槽に浸漬して設けた膜分離ユニットと、膜分離ユニットに連通する吸引管に介装した吸引ポンプと、吸着槽の底部側に配設した散気管と、散気管に送気管を介して連通するブロアーとを備えたことを特徴とする活性炭吸着装置。」
イ 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、粉末状の活性炭を用いて水処理を行う活性炭吸着装置に関する。」
ウ 「【0002】
【従来の技術】従来、水処理において被処理水中のCOD,色度等を除去するために、例えば、図3に示すような活性炭吸着装置を用いていた。・・・」
エ 「【0003】
【発明が解決しようとする課題】一般に活性炭はその粒子径が小さいほど吸着速度や吸着容量が向上することが知られており、粉末活性炭の使用が望ましい。・・・」
オ 「【0006】
【作用】上記した構成により、ブロアーにより送気管を通して散気管に空気を供給し、散気管から吸着槽内の混合スラリー中に空気を曝気する。曝気した空気のエアリフト作用により生起する上昇攪拌流によって吸着槽内の混合スラリーを旋回させながら粉末活性炭によって被処理水中のCODや色度を吸着除去する。」
カ 「【0012】一方、供給管13から被処理水14を連続的に吸着槽11内に供給しながら、膜分離ユニット16により混合スラリー12を固液分離する。そして、膜分離ユニット16の濾過膜を透過した透過液を処理水25として吸引管18を通して吸引ポンプ19で取り出し、処理水槽20に貯留する。また、各濾過膜モジュール17の膜面に付着した粉末活性炭15は膜モジュール17の相互の間隙を流れる上昇攪拌流により剥離させ、再び混合スラリー12中に混入させる。」
(4) 甲第4号証の記載事項
甲第4号証には、「有機性汚水の処理方法」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。
ア 「2. 特許請求の範囲
有機性汚水を生物学的硝化脱窒素処理した後、該処理工程からの活性汚泥スラリーを限外濾過膜又は精密濾過膜により膜分離し、そのさい有機性汚水の処理量をQ1、膜透過水量をQ2とするとき、Q1>Q2の条件を満たすように膜分離工程の透過水量を設定し、そこで得られる濃縮活性汚泥を前記生物学的硝化脱窒素処理工程に返送し、また膜分離工程で得られる膜透過水に汚泥脱水濾液等の雑排水を添加して、さらに生物学的硝化脱窒素処理し、該工程からの流出水に無機凝集剤を添加して酸性条件下に維持しつつ、粉末活性炭を添加して攪拌せしめた後固液分離し、そこで分離された粉末活性炭共存凝集汚泥の少なくとも一部を第1の生物学的硝化脱窒素処理工程に供給することを特徴とする有機性汚水の処理方法。」
イ 「〔産業上の利用分野〕
本発明は、し尿、浄化槽汚泥、ごみ埋立滲出汚水などの含窒素有機性汚水を二段階の生物学的硝化脱窒素処理工程で処理する処理方法において、同処理工程で消泡剤を使用しないで処理できるようにし、かつ高度に浄化された処理水を安定して得ることができる処理方法に関する。」(第1頁右下欄第3~9行)
ウ 「しかる後、前記凝集フロックを形成した処理水に粉末活性炭22を添加して接触混和槽23で前記pHに維持しながら所要時間混和する。撹拌手段としては曝気撹拌が好適であるが、機械撹拌でもよい。前記の混和時間は30~60分程度でよい。粉末活性炭の添加量は、通常 100~800 mg/l、好ましくは 150~500 mg/lとするのが好適であり、市販されているものをそのまま使用することができ、その粒度は平均粒径が 100メッシュ以下のものが好ましい。
粉末活性炭によりCOD、色度が高度に除去された粉末活性炭共存凝集スラリー24は、任意の固液分離手段25によって粉末活性炭共存凝集汚泥が分離され、無色透明のCOD、色度、リン、SS、BOD、窒素などが極めて高度に浄化された処理水26が得られる。前記の固液分離手段25としては、第1図では限外濾過膜又は精密濾過膜を用いるのが好ましいが、浮上濃縮、遠心分離でもかまわない。」(第3頁左下欄第17行~右下欄第15行)
(5) 甲第5号証の記載事項
甲第5号証には、「ダッタンソバスプラウトピューレ、その製造法並びにダッタンソバスプラウトピューレ含有飲食品の製造法」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。
「【0036】
そして、得られたダッタンソバスプラウト破砕物を、所定の目開きの篩によって分画し、その粒度分布を以下の方法で調査した。
先ず、上から目開き1.7mm、1.0mm、0.84mm、0.6mm、0.42mm及び0.35mmの篩を6段の重ね、最上段の目開き1.7mmの篩上に、破砕したダッタンソバスプラウト100gをのせて、水道水で充分に洗浄した。次いで該最上段の目開き1.7mmの篩を除いて、2段目の目開き1.0mmの篩を水道水で充分に洗浄し、同様に3段目、4段目、5段目及び6段目の篩を同様に水道水で充分に洗浄した後、各篩上の残滓の重量を測定し、また肉眼観察をして殻の混入状態を確認した。
この結果を表4(残滓の粒度分布と殻の混入状態)に示す。」
(6) 甲第6号証の記載事項
甲第6号証には、「有機性汚泥の破砕処理方法及び破砕処理設備」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。
「【0101】
次に、メッシュ開口径の異なる篩を8種類(メッシュの目開き:9.5mm、5.0mm、2.0mm(ASTM,No.10)、1.0mm(ASTM,No.18)、0.425mm(ASTM,No.40)、0.25mm(ASTM,No.60)、0.15mm(ASTM,No.100)、0.075mm(ASTM,No.200))を用い、以下に示す手順で有機性汚泥に含まれる固形物の粒度分布を測定した。
【0102】
まず、メッシュ篩を上から、目開き9.5mm、目開き5.0mm、目開き2.0mm、目開き1.0mm、目開き0.425mm、目開き0.25mm、目開き0.15mm、目開き0.075mmの順番に並べて、試料を1リットル分取して試料を受けた。目開き9.5mmのメッシュ篩上には粒径が9.5mmより大きい残留物が残る。目開き5.0mmのメッシュ篩上には粒径が5.0mm~9.5mmの残留物が残る。目開き2.0mmのメッシュ篩上には粒径が2.0mm~5.0mmの残留物が残る。目開き1.0mmのメッシュ篩上には粒径が1.0mm~2.0mmの残留物が残る。目開き0.425mmのメッシュ篩上には粒径が0.425mm~1.0mmの残留物が残る。目開き0.25mmのメッシュ篩上には粒径が0.25mm~0.425mmの残留物が残る。目開き0.15mmのメッシュ篩上には粒径が0.15mm~0.25mmの残留物が残る。目開き0.075mmのメッシュ篩上には粒径が0.075mm~0.15mmの残留物が残る。粒径が0.075mmよりも小さい残留物を含む液体は全ての篩を通過して下部に流れ落ちる。次に、蒸留水を用いて開口9.5mmのメッシュ篩の上から洗浄を行った。」
3 当審の判断
(1) 申立理由1(甲第1号証を主たる証拠とした進歩性欠如)について
ア 甲第1号証に記載された発明(甲1発明)
甲第1号証には、前記2(1)アによれば、「出発原料とする二水石膏を焼成して半水石膏にする焼成工程と、該焼成工程で得られた半水石膏を固形分として含むスラリーを用い、該スラリー状の半水石膏を、界面活性剤及び/又は消泡剤の存在下で水和・再結晶化することで、上記出発原料の二水石膏に比べて白色度が向上した二水石膏に改質する再結晶化工程と、該再結晶化工程の終了後のスラリーから、改質した二水石膏を水簸法によって分別する分別工程と、を有」し、「前記分別工程において、水簸法によって分別した二水石膏に再度水を加えてスラリー化した後に、脱水・洗浄して最終生成物とする」「二水石膏の改質方法」が記載されている。
また、前記2(1)エによれば、「天然石膏、合成石膏、種々の化学プロセスの副産物として得られる各種の副生石膏、廃石膏型、或いは一戸建て、集合住宅若しくはマンション等の新築や解体時に発生する石膏ボード廃材に由来する廃石膏」を「原料として使用できる」ことや、「半水石膏を再結晶反応槽内の水性スラリーへ供給」して、「半水石膏を固形分として含むスラリー」とすることが記載されている。
さらに、前記2(1)キによれば、「脱水・洗浄工程」に関して、「遠心分離機、フィルタープレス等」で「脱水」することや、「脱水前又は脱水中に清澄な水で洗浄することによって可溶性の不純物を除く」ことが記載されている。
これらの記載事項を整理すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「天然石膏、合成石膏、種々の化学プロセスの副産物として得られる各種の副生石膏、廃石膏型、又は、石膏ボード廃材に由来する廃石膏を出発原料として、該出発原料を焼成して半水石膏にする焼成工程と、該焼成工程で得られた半水石膏を再結晶反応槽内の水性スラリーへ供給して、半水石膏を固形分として含むスラリーとし、該スラリー状の半水石膏を、界面活性剤及び/又は消泡剤の存在下で水和・再結晶化することで、前記出発原料の二水石膏に比べて白色度が向上した二水石膏に改質する再結晶化工程と、該再結晶化工程の終了後のスラリーから、改質した二水石膏を水簸法によって分別する分別工程と、水簸法によって分別した二水石膏に再度水を加えてスラリー化した後に、遠心分離機、フィルタープレス等で脱水し、また、脱水前又は脱水中に清澄な水で洗浄することによって可溶性の不純物を除いて最終生成物とする脱水・洗浄工程とを有する、二水石膏の改質方法。」
イ 本件発明1について
(ア) 本件発明1と甲1発明との対比
a 本件発明1と甲1発明の対応関係
本件発明1と甲1発明の対応関係は、次のとおりと解される。
(a) 甲1発明の「焼成工程」は、「石膏ボード廃材に由来する廃石膏」を「焼成して半水石膏」としているから、本件発明1の「廃石膏ボード由来の石膏をか焼することにより半水及び/又は無水III型の石膏粒体と」することに相当する。
(b) 甲1発明の「再結晶化工程」は、「該焼成工程で得られた半水石膏を再結晶反応槽内の水性スラリーへ供給して、半水石膏を固形分として含むスラリーとし、該スラリー状の半水石膏を」「二水石膏」に「再結晶化」しているから、本件発明1の「前記石膏粒体を、石膏を含むスラリーまたは水と混合して石膏スラリーとし、石膏スラリー中に」「二水石膏粒子」を「析出」させることに相当する。
(c) 甲1発明の「分別工程」及び「脱水・洗浄工程」は、「再結晶化工程の終了後のスラリーから、改質した二水石膏を水簸法によって分別」し、「水簸法によって分別した二水石膏に再度水を加えてスラリー化した後に、遠心分離機、フィルタープレス等で脱水」しているから、本件発明1の「石膏スラリー中に析出した二水石膏粒子を固液分離する」ことに相当する。
(d) 甲1発明の「二水石膏の改質方法」は、「石膏ボード廃材に由来する廃石膏」から、「改質」された「二水石膏」を得ているから、本件発明1の「廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法」に相当する。
b 本件発明1と甲1発明の一致点と相違点
前記aを踏まえると、本件発明1と甲1発明とは、「廃石膏ボード由来の石膏をか焼することにより半水及び/又は無水III型の石膏粒体とし、前記石膏粒体を、石膏を含むスラリーまたは水と混合して石膏スラリーとし、石膏スラリー中に析出した二水石膏粒子を固液分離する、廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法」の点で一致し、本件発明1では、「粒状あるいは繊維状の活性炭を前記石膏スラリーと混合する混合ステップと、前記固液分離前に、活性炭を石膏スラリーから分離する分離ステップとを行う」のに対して、甲1発明では、その点が明らかでない点で相違している(以下、この相違点を「相違点1」という。)。
(イ) 相違点1の検討
本件特許の願書に添付された明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の【0005】、【0007】~【0010】の記載によれば、本件発明1は、「廃石膏ボードから回収する二水石膏の色調を改善すること」を課題として、「粒状あるいは繊維状の活性炭を前記石膏スラリーと混合する混合ステップと、前記固液分離前に、活性炭を石膏スラリーから分離する分離ステップとを行う」ことを特徴とするものである。
他方、甲第1号証にも、「石膏プラスターなどの石膏製品を製造した場合に、天然石膏や副生石膏や廃石膏などの原料とする石膏中に含有されている硫酸カルシウム以外の不純物に起因して生じる、石膏製品の黒ずみの発生を防止」するとの同様な課題が記載されている(前記2(1)ウ参照)。
しかしながら、当該課題の解決手段は、前記2(1)カ、キによれば、甲1発明の「再結晶化工程」において、界面活性剤及び/又は消泡剤の存在下でスラリー状の半水石膏を再結晶化することで、原料石膏に含まれていた黒ずみの原因となる可溶性又は不溶性の不純物を分離し、「分別工程」の水簸法で不溶性の不純物を分別し、さらに、「脱水・洗浄工程」の洗浄で可溶性の不純物を除去することであり、甲第1号証には、原料石膏に含まれていた黒ずみの原因となる可溶性又は不溶性の不純物を「粒状あるいは繊維状の活性炭」で除去することは記載も示唆もされていない。
また、甲第3号証及び甲第4号証には、前記2(3)及び(4)によれば、水処理分野において、粉末活性炭で被処理水中のCODや色度を除去することが記載されているものの、石膏スラリー中の可溶性又は不溶性の不純物を除去対象とすることは示されていない。
加えて、甲第2号証、甲第5号証及び甲第6号証には、石膏スラリー中の着色物質を粒状あるいは繊維状の活性炭で除去し、石膏スラリー中に析出した二水石膏粒子を固液分離する前に、活性炭を石膏スラリーから分離することが記載されていないし(前記2(2)、(5)、(6)参照)、このような事項が周知慣用の技術であることを示す証拠もない。
したがって、甲1発明において、「粒状あるいは繊維状の活性炭を前記石膏スラリーと混合する混合ステップと、前記固液分離前に、活性炭を石膏スラリーから分離する分離ステップとを行う」こと(相違点1に係る本件発明1の構成とすること)は、当業者にとって容易想到の事項といえない。
(ウ) 小括
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び周知慣用の技術に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
ウ 本件発明2、3について
本件発明2、3は、本件発明1の全ての特定事項を含むものであるから、前記イで検討したのと同様の理由により、甲第1号証に記載された発明及び周知慣用の技術に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
エ 申立理由1についての結論
以上のとおりであるから、申立理由1に理由はない。
(2) 申立理由2(甲第2号証を主たる証拠とした進歩性欠如)について
ア 甲第2号証に記載された発明
甲第2号証には、前記2(2)アの請求項1の記載に注目すると、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「少なくとも、石膏ボード廃材を破砕して石膏ボード廃材破砕物を得る破砕工程、前記石膏ボード廃材破砕物を加熱して半水石膏を得る焼成工程、前記半水石膏を水性媒体に溶解し次いで二水石膏を析出させ、二水石膏スラリーを得る晶析工程、及び、前記二水石膏スラリーから水性媒体を除去する脱水工程を含む、石膏ボード廃材から石膏を再生する方法であって、前記晶析工程後、脱水工程前に、前記二水石膏スラリーから石膏ボード原紙由来の繊維状異物を除去する繊維状異物除去工程を備える、石膏ボード廃材から石膏を再生する方法。」
イ 本件発明1について
(ア) 本件発明1と甲2発明との対比
a 本件発明1と甲2発明の対応関係
甲2発明の「石膏ボード廃材破砕物」、「加熱」、「半水石膏」、「水性媒体に溶解」すること、「二水石膏スラリー」、「二水石膏スラリーから水性媒体を除去する脱水工程」、「石膏ボード廃材から石膏を再生する方法」は、それぞれ、本件発明1の「廃石膏ボード由来の石膏」、「か焼すること」、「半水及び/又は無水III型の石膏粒体」、「石膏を含むスラリーまたは水と混合」すること、「石膏スラリー」、「石膏スラリー中に析出した二水石膏粒子を固液分離する」こと、「廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法」に相当する。
b 本件発明1と甲2発明の一致点と相違点
前記aを踏まえると、本件発明1と甲2発明とは、「廃石膏ボード由来の石膏をか焼することにより半水及び/又は無水III型の石膏粒体とし、前記石膏粒体を、石膏を含むスラリーまたは水と混合して石膏スラリーとし、石膏スラリー中に析出した二水石膏粒子を固液分離する、廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法」の点で一致し、本件発明1では、「粒状あるいは繊維状の活性炭を前記石膏スラリーと混合する混合ステップと、前記固液分離前に、活性炭を石膏スラリーから分離する分離ステップとを行う」のに対して、甲2発明では、その点が明らかでない点で相違している(以下、この相違点を「相違点2」という。)。
(イ) 相違点2の検討
甲2発明は、前記2(2)ウに摘記したとおり、「石膏ボート廃材から、ボード原紙に起因する繊維状異物が効率よく高精度に除去され、しかも全累積細孔容積が小さく、粒径がそろった二水石膏を再生する方法を提供すること」を目的とするものであり、甲第2号証には、再生された石膏の色調に関することは記載も示唆もされていない。
また、前記(1)イ(イ)において検討したとおり、石膏スラリー中の着色物質を粒状あるいは繊維状の活性炭で除去し、石膏スラリー中に析出した二水石膏粒子を固液分離する前に、活性炭を石膏スラリーから分離することは、甲第1号証、甲第3号証~甲第6号証のいずれにも記載されていないし、このような事項が周知慣用の技術であることを示す証拠もない。
したがって、甲2発明において、「粒状あるいは繊維状の活性炭を前記石膏スラリーと混合する混合ステップと、前記固液分離前に、活性炭を石膏スラリーから分離する分離ステップとを行う」こと(相違点2に係る本件発明1の構成とすること)は、当業者にとって容易想到の事項といえない。
(ウ) 小括
したがって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明及び周知慣用の技術に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
ウ 本件発明2、3について
本件発明2、3は、本件発明1の全ての特定事項を含むものであるから、前記イで検討したのと同様の理由により、甲第2号証に記載された発明及び周知慣用の技術に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
エ 申立理由2についての結論
以上のとおりであるから、申立理由2に理由はない。
(3) 申立理由3(サポート要件違反)について
ア サポート要件についての検討
(ア) 本件発明の課題
本件発明の課題は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0002】~【0005】の記載からして、「廃石膏ボードから回収する二水石膏の色調を改善する」ことといえる。
(イ) 発明の詳細な説明の記載
本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例1には、「廃石膏ボードを破砕及び粉砕し平均粒径2mmの廃二水石膏を得、熱風乾燥機で130℃に加熱し、半水石膏とした。半水石膏を100g/hrで、粒径分布範囲が1~3mmの破砕活性炭(目開き1mmの振動篩上で水洗済み)を0.8g/hrで、60℃の水を200mL/hrで、濃度40mass%の石膏スラリー3000mL中に40時間供給し、この間スラリーを常時撹拌し、スラリー温度を60℃に保った。40時間熟成後のスラリーを採取し、目開き0.5mmの篩で活性炭と石膏スラリーを分離し、分離した石膏スラリーをろ過し、二水石膏粒体を抽出した。二水石膏粒体の乾燥後に上記のようにして白色度を測定したところ、ハンター白色度は89.7であった」ことが記載され(【0025】~【0026】)、活性炭を投入しない比較例1(【0027】)よりもハンター白色度が向上したことが記載されている。
また、発明の詳細な説明には、「着色の正確な機構は不明であるが、活性炭で除去可能な物質が原因であることは確実である」こと(【0007】)、「半水及び/又は無水III型の石膏は水と接触することによりいったん溶解し、二水石膏として析出する。この過程において、活性炭を存在させることにより、前述したような着色物質(有機物)が活性炭に吸着され、析出時に二水石膏の結晶中に取り込まれる着色物質の量を大幅に減少させることができているためであると推測される」こと(【0009】)、「そこで活性炭は粒状あるいは繊維状とし、粒状の場合、顆粒状の成型活性炭でも不定形の破砕活性炭でも良い。そして活性炭を石膏スラリー中に混合し、言い換えると石膏スラリー中に分散させ、分離ステップにより、二水石膏粒子の固液分離前に、石膏スラリーから活性炭を分離する。以上のようにして、この発明では回収した二水石膏粒子の色調を改善することができる」こと(【0010】)、及び、「活性炭に含まれる微粉等を予め除去することにより、微粉等が石膏スラリー中に残存することを防止する」こと(【0012】)が記載されている。
そして、これらの記載を併せ考えれば、半水及び/又は無水III型の石膏を水で溶解した石膏スラリーとし、この石膏スラリーから、活性炭に吸着する着色物質(有機物)を除去すること、及び、石膏スラリーに活性炭が残存しないように、活性炭を分離することで、実施例1と同様に、回収された二水石膏の色調は改善されると当業者であれば認識できる。
(ウ) 特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との対比・検討
本件発明1は、前記第2のとおりの「廃石膏ボードからの二水石膏の回収方法」であるところ、「廃石膏ボード由来の石膏をか焼することにより半水及び/又は無水III型の石膏粒体とし、前記石膏粒体を、石膏を含むスラリーまたは水と混合して石膏スラリーと」すること、及び、「粒状あるいは繊維状の活性炭を前記石膏スラリーと混合する混合ステップと、前記固液分離前に、活性炭を石膏スラリーから分離する分離ステップとを行う」ことを特定している。
そして、前記「活性炭を石膏スラリーから分離する分離ステップ」は、発明の詳細な説明の記載を参酌すれば、石膏スラリーに活性炭が残存しないように活性炭を分離することを示していることは明らかである。
そうしてみると、本件発明1は、前記(イ)で検討した発明の詳細な説明の記載により、当業者が本件発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるといえる。
さらに、本件発明2、3についてみても状況に変わりはない。
(エ) 小括
したがって、本件発明1及びこれを引用する本件発明2、3は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
イ 申立人の主張についての検討
申立人は、(i)本件発明1の「前記固液分離前に、活性炭を石膏スラリーから分離する分離ステップ」との特定事項は、あらゆる分離方法を包含し、両者を十分に分離できずに、活性炭が石膏スラリーに高い割合で残存する場合を包含するため、本件発明の課題を解決できないこと、及び、(ii)活性炭を添加することで色調を改善できる具体的な機構が明らかでないため、実施例の記載から本件発明1の範囲にまで拡張又は一般化できないことを論拠として、本件発明1~3は発明の詳細な説明に記載されたものではない旨を主張している。
しかしながら、前記イ(ウ)で検討したとおり、本件発明1の「活性炭を石膏スラリーから分離する分離ステップ」は、発明の詳細な説明の記載を参酌すれば、石膏スラリーに活性炭が残存しないように活性炭を分離することを示していることは明らかであるし、また、前記イ(イ)で検討したとおり、石膏スラリーから、活性炭に吸着する着色物質(有機物)を除去できれば、活性炭の種類によらず、本件発明の課題を解決できると認識できるから、申立人の主張はいずれも採用できない。
ウ 申立理由3についての結論
以上のとおりであるから、申立理由3に理由はない。
第4 むすび
以上の検討のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に当該請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700578