特許異議申立
2023-700560
品質判定装置
- 審判番号
- 2023-700560
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-551252
- 登録番号
- 7185166
- 請求日
- 2023年05月31日
- 審決日
- 2024年03月19日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ダイキン工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人前田特許事務所
- 【異議申立人】角田 朗
- 審判長/審判官
- 審判長 加々美 一恵
- 審判官 櫃本 研太郎
- 審判官 石井 哲
- 分類
- P1652.113-YAA(G01N) / P1652.121-YAA(G01N) / P1652.14 -YAA(G01N) / P1652.536-YAA(G01N) / P1652.537-YAA(G01N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第7項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7185166号発明「品質判定装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7185166号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~14、19、20〕について訂正することを認める。
特許第7185166号の請求項1、2、4、6、9~13、15~18に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7185166号の請求項1~18に係る特許についての出願(特願2021-551252号)は、2020年(令和2年)9月28日(先の出願に基づく優先権主張 令和元年9月30日(以下、「優先日」という。))を国際出願日とする特許出願であって、令和4年11月29日にその特許権の設定登録がされ、同年12月7日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年5月31日 : 特許異議申立人 角田 朗(以下「申立人」という。)による請求項1、2、4、6、9~13、15~18に係る特許に対する特許異議の申立て
令和5年9月6日付け : 取消理由通知書
令和5年11月6日 : 特許権者による意見書(以下、「Y意見書」という。)及び訂正請求書の提出
令和6年1月19日 : 申立人による意見書(以下、「X意見書」という。)の提出
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和5年11月6日提出の訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)による訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)の請求の趣旨は、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~14、19、20について訂正することを求めるものであって、本件訂正請求による訂正の内容は、以下の訂正事項1~8からなる。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、「備える
ことを特徴とする品質判定装置。」という記載を、「備え、
上記前兆条件は、上記対象物品(7)の状態が、該対象物品(7)の品質を回復させることが可能な状態であることを示す条件である
ことを特徴とする品質判定装置。」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2、4、6、9も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3のうち請求項1を引用するものを、独立形式に書き改める。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5のうち請求項1を引用するものを、独立形式に書き改める。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7のうち、請求項1を引用する請求項6を引用するものを、独立形式に書き改める。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8のうち、請求項1を引用するものを、独立形式に書き改める。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項10を、独立形式に書き改める。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項3のうち請求項2を引用するもの(訂正前の請求項1+2+3)と、特許請求の範囲の請求項5のうち請求項2を引用するもの(訂正前の請求項1+2+5)と、特許請求の範囲の請求項7のうち請求項2を引用する請求項6を引用するもの(訂正前の請求項1+2+6+7)と、特許請求の範囲の請求項8のうち請求項2を引用するもの(訂正前の請求項1+2+8)とを、新たに請求項19とする。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項5のうち請求項1を引用する請求項4を引用するもの(訂正前の請求項1+4+5)と、特許請求の範囲の請求項7のうち請求項1を引用する請求項4を引用する請求項6を引用するもの(訂正前の請求項1+4+6+7)と、特許請求の範囲の請求項8のうち請求項1を引用する請求項4を引用するもの(訂正前の請求項1+4+8)とを、新たに請求項20とする。
(9)一群の請求項について
訂正前の請求項2~14は請求項1を直接又は間接的に引用しているものである。また、訂正後の請求項19は、訂正前において請求項1を引用する請求項2と引用関係にある請求項3、5、7、8を新たに請求項19としたものであり(訂正事項7)、訂正後の請求項20は、訂正前において請求項1を引用する請求項4と引用関係にある請求項5、7、8を新たに請求項20としたものである(訂正事項8)。
したがって、上記訂正事項1~8は、全て一群の請求項に対してされるものである。
よって、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項で規定する当該一群の請求項ごとに請求されているものである。
2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は、「本体処理部(64)」が「成否を」「判定する」「上記対象物品(7)の品質低下の前兆を示す前兆条件」が、「上記対象物品(7)の状態が、該対象物品(7)の品質を回復させることが可能な状態であることを示す条件である」ことを限定するものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、発明特定事項の限定であって構成の削除はないから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 新規事項の有無
本件特許に係る出願の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の【0146】には、「また、本実施形態の品質判定部(64)は、対象物品(7)の品質低下の前兆を示す前兆条件が成立すると、環境変更動作を行う。そのため、対象物品(7)の品質が本格的に損なわれる前に、荷室(5)の内部環境を対象物品(7)の品質が保たれるように変更することができる。対象物品(7)の品質低下が軽微な場合は、荷室(5)の内部環境を対象物品(7)の保存に適した環境に設定すれば、対象物品(7)の品質を回復させることが可能である。従って、本実施形態の品質判定装置(13)によれば、品質判定部(64)が環境変更動作を行うことによって対象物品(7)の品質を回復させることができ、その結果、対象物品(7)の品質を長期間に亘って高く保つことが可能となる。」と記載されている。係る本件明細書の記載によれば、対象物品(7)の品質低下の前兆を示す前兆条件が成立し、環境変更動作を行うことによって対象物品(7)の品質を回復させることができる場合があるのであるから、対象物品(7)の品質低下の前兆を示す前兆条件が成立した段階で、対象物品(7)の状態が、該対象物品(7)の品質を回復させることが可能な状態があることは明らかである。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでないから、本件特許に係る出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において訂正するものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
エ 独立特許要件
本件特許異議の申立ては、訂正前の請求項1、2、4、6、9~13、15~18に対してされているから、訂正前の請求項1、2、4、6、9に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項2~6
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2~6は、訂正前の請求項3、5、8のうち請求項1を引用するもの、訂正前の請求項7のうち、請求項1を引用する請求項6を引用するもの及び請求項10について引用関係を解消するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書4号(他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること)を目的とする訂正に該当する。
イ 新規事項の有無・特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2~6による訂正は、その訂正内容からみて、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
また、訂正事項2~6による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされたものが訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項2~6による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。
したがって、訂正事項2~6による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(3)訂正事項7
ア 訂正の目的の適否
訂正事項7は、訂正前の請求項3のうち請求項2を引用するもの(訂正前の請求項1+2+3)と、訂正前の請求項5のうち請求項2を引用するもの(訂正前の請求項1+2+5)と、訂正前の請求項7のうち請求項2を引用する請求項6を引用するもの(訂正前の請求項1+2+6+7)と、訂正前の請求項8のうち請求項2を引用するもの(訂正前の請求項1+2+8)とについて、請求項1との引用関係を解消し、新たに請求項19とするものであるから、特許法120条の5第2項ただし書4号(他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること)を目的とする訂正に該当する。
イ 新規事項の有無・特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項7による訂正は、その訂正内容からみて、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
また、訂正事項7による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされたものが訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項7による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。
したがって、訂正事項7による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(4)訂正事項8
ア 訂正の目的の適否
訂正事項8は、訂正前の請求項5のうち請求項1を引用する請求項4を引用するもの(訂正前の請求項1+4+5)と、訂正前の請求項7のうち請求項1を引用する請求項4を引用する請求項6を引用するもの(訂正前の請求項1+4+6+7)と、訂正前の請求項8のうち請求項1を引用する請求項4を引用するもの(訂正前の請求項1+4+8)とについて、請求項1との引用関係を解消し、新たに請求項20とするものであるから、特許法120条の5第2項ただし書4号(他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること)を目的とする訂正に該当する。
イ 新規事項の有無・特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項8による訂正は、その訂正内容からみて、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
また、訂正事項8による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされたものが訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項8による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。
したがって、訂正事項8による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(5)小括
以上のとおり、訂正事項1~8に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書、かつ、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~14、19、20について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおり、本件訂正請求による、請求項1~14、19、20についての訂正が認められた。してみると、訂正後の本件特許の請求項1、2、4、6、9~13、15~18に係る発明(以下、「本件特許発明1」などという。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、2、4、6、9~13、15~18に記載された事項により特定される次のとおりのものである。ここで、各構成単位冒頭に、当審において分説記号「A」等を付し、以下「構成A」などという。
「【請求項1】
A 内部環境が制御された収容空間(5)に収容された青果物である対象物品(7)の状態を示す状態指標を検知する状態検知器(15)から、上記状態指標を取得するように構成された状態取得部(75,101)と、
B1 上記対象物品(7)の品質低下の前兆を示す前兆条件の成否を、上記状態取得部(75,101)が取得した上記状態指標に基づいて判定する判定動作を行うように構成された本体処理部(64)とを備え、
B2 上記前兆条件は、上記対象物品(7)の状態が、該対象物品(7)の品質を回復させることが可能な状態であることを示す条件である
C ことを特徴とする品質判定装置。
【請求項2】
請求項1において、
D 上記本体処理部(64)は、上記前兆条件が成立したと判定すると、上記収容空間(5)の内部環境を調節する環境調節装置(14)に対して、上記対象物品(7)の品質低下を抑えるための上記収容空間(5)の内部環境の変更を指示する環境変更動作を行うように構成される
2C ことを特徴とする品質判定装置。
・・・
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つにおいて、
E 上記本体処理部(64)は、上記前兆条件が成立したと判定すると、人間に対して情報を告知する告知装置(80,130)に対して、上記対象物品(7)の品質が低下するおそれの告知を指示する告知動作を行うように構成される
4C ことを特徴とする品質判定装置。
・・・
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つにおいて、
F 上記状態取得部(75,101)は、上記対象物品(7)のクロロフィル蛍光の強度を、状態指標として取得するように構成される
6C ことを特徴とする品質判定装置。
・・・
【請求項9】
請求項1乃至5のいずれか一つにおいて、
G 上記状態取得部(75,101)は、上記対象物品(7)についての、上記対象物品(7)からの細胞の内部成分の漏出量、上記対象物品(7)から発生したストレスに関する植物ホルモンの濃度、上記対象物品(7)の嫌気呼吸によって生じる物質の濃度、上記対象物品(7)の内部褐変の程度、上記対象物品(7)に含まれるフェノールの濃度、上記対象物品(7)に含まれるクロロゲン酸の濃度、上記対象物品(7)に含まれるカロチンの濃度、及び上記対象物品(7)のpHのうちの少なくとも1つを、状態指標として取得するように構成される
9C ことを特徴とする品質判定装置。
【請求項10】
10A 内部環境が制御された収容空間(5) に収容された青果物である対象物品( 7) の状態を示す状態指標を検知する状態検知器(15) から、上記状態指標を取得するように構成された状態取得部(75,101) と、
10B 上記対象物品(7) の品質低下の前兆を示す前兆条件の成否を、上記状態取得部(75,101) が取得した上記状態指標に基づいて判定する判定動作を行うように構成された本体処理部(64) とを備え、
H1 上記収容空間(5)の内部環境に関連する環境情報を取得するように構成された情報取得部(102)と、
H2 上記収容空間(5)の内部環境を示す環境指標の設定値である設定情報を取得する設定取得部(103)と、
H3 上記状態検知器(15)が検知した上記状態指標と、上記情報取得部(102)が取得した上記環境情報および上記設定取得部(103)が取得した設定情報との相関関係を学習させた状態推定モデル(111~113)を生成するように構成された学習部(104)とを備え、
H4 上記本体処理部(64)は、上記状態推定モデル(111~113)に上記環境情報および上記設定情報を入力することによって算出した上記状態指標の推定値に基づいて、上記前兆条件の成否を判定するように構成される
10C ことを特徴とする品質判定装置。
【請求項11】
請求項10において、
I1 上記本体処理部(64)は、上記前兆条件が成立したと判定すると、上記収容空間(5)の内部環境を調節する環境調節装置(14)に対して、上記対象物品(7)の品質低下を抑えるための上記収容空間(5)の内部環境の変更を指示する環境変更動作を行うように構成され、
I2 上記本体処理部(64)は、上記環境変更動作において、上記状態推定モデル(111~113)に上記環境情報および上記設定情報を入力することによって算出した上記状態指標の推定値を所定の基準値と比較した結果に基づいて、上記環境指標の設定値の変更を上記環境調節装置(14)に対して指示するように構成される
11C ことを特徴とする品質判定装置。
【請求項12】
請求項10又は11において、
J 上記情報取得部(102)が取得する上記環境情報には、上記収容空間(5)内の空気の温度、酸素濃度、及び二酸化炭素濃度のうちの少なくとも一つが含まれる
12C ことを特徴とする品質判定装置。
【請求項13】
請求項10乃至12のいずれか一つにおいて、
K 上記情報取得部(102)が取得する上記環境情報には、上記収容空間(5)の温度を調節する冷凍装置(20)の運転状態を示し、且つ上記収容空間(5)の温度に相関する物理量が含まれる
13C ことを特徴とする品質判定装置。
・・・
【請求項15】
15A 内部環境が制御された収容空間(5)に収容された 青果物である対象物品(7)の状態を示す状態指標を、該状態指標を検知する状態検知器(15)から取得する第1取得ステップと、
15H1 上記収容空間(5)の内部環境に関連する環境情報を取得する第2取得ステップと、
15H2 上記収容空間(5)の内部環境を示す環境指標の設定値である設定情報を取得する第3取得ステップと、
15H3 上記第1取得ステップで取得した上記状態指標と、上記第2取得ステップで取得した上記環境情報および上記第3取得ステップで取得した上記設定情報との相関関係を学習させた状態推定モデル(111~113)を生成する学習ステップと、
15H4 上記対象物品(7)の品質低下の前兆を示す前兆条件の成否を、上記状態推定モデル(111~113)に上記環境情報および上記設定情報を入力することによって算出した上記状態指標の推定値に基づいて判定する判定ステップとを備える
15C ことを特徴とする品質判定方法。
【請求項16】
請求項15において、
16I1 上記判定ステップで前兆条件が成立したと判定されると、上記収容空間(5)の内部環境を調節する環境調節装置(14)に対して、上記対象物品(7)の品質低下を抑えるための上記収容空間(5)の内部環境の変更を指示する環境変更ステップを備え、
16I2 上記環境変更ステップでは、上記状態推定モデル(111~113)に上記環境情報および上記設定情報を入力することによって算出した上記状態指標の推定値を所定の基準値と比較した結果に基づいて、上記環境指標の設定値の変更を上記環境調節装置(14)に対して指示する
16C ことを特徴とする品質判定方法。
【請求項17】
17A 内部環境が制御された収容空間(5)に収容された 青果物である対象物品(7)の状態を示す状態指標を、該状態指標を検知する状態検知器(15)から取得する第1取得処理と、
17H1 上記収容空間(5)の内部環境に関連する環境情報を取得する第2取得処理と、
17H2 上記収容空間(5)の内部環境を示す環境指標の設定値である設定情報を取得する第3取得処理と、
17H3 上記第1取得処理で取得した上記状態指標と、上記第2取得処理で取得した上記環境情報および上記第3取得処理で取得した上記設定情報との相関関係を学習させた状態推定モデル(111~113)を生成する学習処理と、
17H4 上記対象物品(7)の品質低下の前兆を示す前兆条件の成否を、上記状態推定モデル(111~113)に上記環境情報および上記設定情報を入力することによって算出した上記状態指標の推定値に基づいて判定する判定処理とをコンピュータに実行させる
17C ことを特徴とするプログラム。
【請求項18】
請求項17において、
18I1 上記判定処理で前兆条件が成立したと判定されると、上記収容空間(5)の内部環境を調節する環境調節装置(14)に対して、上記対象物品(7)の品質低下を抑えるための上記収容空間(5)の内部環境の変更を指示する環境変更処理をコンピュータに実行させ、
18I2 上記環境変更処理では、上記状態推定モデル(111~113)に上記環境情報および上記設定情報を入力することによって算出した上記状態指標の推定値を所定の基準値と比較した結果に基づいて、上記環境指標の設定値の変更を上記環境調節装置(14)に対して指示する処理をコンピュータに実行させる
18C ことを特徴とするプログラム。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1、2、4、6、9に係る特許に対して、当審が令和5年9月6日付けで特許権者に通知した取消理由(以下、単に「取消理由」という。)の要旨は、次のとおりである。
(1)取消理由(新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明(以下、「甲1発明」という。)、甲第2号証に記載された発明(以下、「甲2発明」という。)又は甲第3号証に記載された発明(以下、「甲3発明」という。)であるか、甲1発明、甲2発明又は甲3発明に基いて当業者が容易に発明できたものである。
本件特許の請求項2に係る発明は、甲1発明であるか、甲1発明に基いて当業者が容易に発明できたものである。
本件特許の請求項6に係る発明は、甲1発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明できたものである。
本件特許の請求項9に係る発明は、甲3発明であるか、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。また、本件発明9は、甲1発明、甲第1号証に記載された技術的事項並びに甲第5号証及び甲第6号証の記載に裏付けられる周知技術1、又は甲1発明並びに甲第5号証及び甲第6号証の記載に裏付けられる周知技術2に基いて当業者が容易に発明できたものである。
そうすると、本件特許の請求項1、2及び9に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2及び9に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
また、本件特許の請求項1、2、4、6、9に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件特許の請求項1、2、4、6、9に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)取消理由において引用した証拠
甲第1号証:特開2018-96712号公報(以下、「甲1」という。)
甲第2号証:特開2016-133296号公報(以下、「甲2」という。)
甲第3号証:特開2001-41640号公報(以下、「甲3」という。)
甲第5号証:永田 雅靖、青果物の鮮度に関する収穫後生理学、食糧-その科学と技術-No.56、平成30年3月29日、p.43~66(以下、「甲5」という。)
甲第6号証:邨田 卓夫、青果物の低温障害と保蔵適正温度、日本冷凍空調学会論文集、1986年、3巻1号、p.1~11(以下、「甲6」という。)
引用文献1:特開2006-300351号公報
(3)その他の証拠
甲第4号証:特開平7-92121号公報(以下、「甲4」という。)
甲第7号証:特開2019-16305号公報(以下、「甲7」という。)
甲第8号証:特開平7-83557号公報(以下、「甲8」という。)
2 各証拠の記載
(1)甲1
ア 甲1の記載事項
甲1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。
(ア) 「【0011】
また本発明は、
前記制御部が、前記生鮮食品のうち、肉類または魚介類については、前記光センサが検出した前記所定の波長域の光強度と前記生鮮食品中の細菌数との相関関係に基づく判定基準により判定を行い、野菜については、前記光センサが検出した前記所定の波長域の光強度と前記生鮮食品中のビタミンCまたはアミノ酸量に基づく判定基準により判定を行い、果物については、前記光センサが検出した前記所定の波長域の光強度と前記生鮮食品の糖度との相関関係に基づく判定基準により判定を行うことを特徴とする。
【0012】
本発明では、光センサが検出した所定の波長域の光強度と、各生鮮食品に適した鮮度・熟成を示すパラメータとの相関関係により得られた適切な判定基準により、生鮮食品の鮮度または熟成に関する判定をより確実に行うことができる。」
(イ) 「【0021】
本実施形態に係る鮮度・熟成判定装置2は、単独の機器として構成される場合もあり得るし、図3に示すように、冷蔵庫の中に配置される場合もあり得る。鮮度・熟成判定装置2は、生鮮食品を収容可能な収容部4を備える。収容部4は、底面及び4つの側面で囲まれ、上部が開口した収容空間を有する引出部8と、引出部8を出入可能に収容する外枠部6から構成される。外枠部6は、上面部6aと、下面部6bと、上面部6a及び下面部6bの3辺について上面部6a及び下面部6bを上下に繋ぐ側面部6cとから構成される。
・・・
【0024】
<光センサ>
収容部4の外枠部6の上面部6aにおいて、2つのファン12,14の間に、引出部8の中に配置された生鮮食品Fに可視光を照射する光源10aと、生鮮食品Fから反射された光の所定の波長域の光強度を検出する光センサ10bとが備えられている。本実施形態では、光源10a及び光センサ10bを1つの筐体に収めた光センサユニット10を用いている。ただし、これに限られるものではなく、個々の機器である光源10a及び光センサ10bを隣接して配置することもできる。
【0025】
本実施形態では、光源10aから白色光を出射するようになっている。光源10aとして、発光ダイオード(LED)をはじめとする任意の光源装置を用いることができる。
本実施形態の光センサ10bは、図2(b)に示すように、受光素子と、それぞれ青色光のみを透過させるフィルタB、緑色光のみを透過させるフィルタG及び赤色光のみを透過させるフィルタRとを備えている。各フィルタB,G,Rを透過した青色光、緑色光または赤色光の光強度が、受光素子により電気信号に変換され、制御部へ送信される。
・・・
【0028】
<ガスセンサ>
収容部4の外枠部6の上面部6aに配置された2つのファン12,14の間には、光センサユニット10に隣接して、気体の所定のガス成分の濃度を検出するガスセンサ20が備えられている。引出部8を外枠部6の奥まで押し込んだ収納状態において、判定を行う生鮮食品Fの載置位置の上方に、ガスセンサ20の感知部20aが下向きに配置されている。
【0029】
図2(c)に、ガスセンサ20の外形を示す。本実施形態では、ガスセンサ20として半導体ガスセンサを用いることができる。半導体ガスセンサは、酸化スズ、酸化亜鉛等の酸化金属系の半導体を用いて、ガスに触れると電気伝導度が変化することによりガス濃度を検出する。半導体ガスセンサは小型で低価格であり、感度が高く、応答が速いという利点を有する。本実施形態では、測定を行うガス成分として、主に腐敗の進行の過程で生鮮食品Fから発生するアンモニアガスやアルコールを検知する。ただし、ガスセンサ20は半導体ガスセンサに限られるものではなく、その他の既知のあらゆるガスセンサを用いることができる。
【0030】
ガスセンサ20によりガス濃度の検出を開始するとき、図2(a)の白抜きの矢印に示すように、2つのファン12,14を駆動させて、外部の新鮮な空気を収容部4の中に取り入れ、ガスセンサ20のキャリブレ-ションを行う。毎測定の前に収容部4内に新鮮な空気を通し、臭い残りによる測定誤差が発生しないようにしている。キャリブレーション後、2つのファン12,14を停止させ、所定時間経過後に、生鮮食品Fから発生する所定のガス成分の濃度を検出する。」
(ウ) 「【0033】
本実施形態に係る冷蔵庫50は、5個の収容領域を有しており、図2では、一番上の冷蔵室52は扉が取り除かれて、内部が視認可能な状態で示されている。冷蔵室52より下の他の収容室は、それぞれ冷蔵室、冷凍室、野菜室の機能を有するが、本実施形態に係る鮮度判定装置と関連しないので、更に詳細な説明は省略する。冷蔵室52内の矢印Bで示す領域に、鮮度・熟成判定装置2が配置されている。図1の図面左側の外枠部6の開口側が、図3の手前側に配置されており、引出部8を出し入れすることにより、生鮮食品Fを鮮度・熟成判定装置2の収納部4の内部に収めたり、取り出したりすることができる。この鮮度・熟成判定装置2は、生鮮食品Fの鮮度や熟成の判定を行うだけでなく、生鮮食品Fの貯蔵領域として利用することもできる。」
(エ) 「【0036】
(本発明の1つの実施形態に係る制御部の説明)
図4は、本発明の1つの実施形態に係る鮮度・熟成判定装置2の制御部100の基本構成を示すブロックダイアグラムである。次に、図4を参照しながら、本発明の1つの実施形態に係る鮮度・熟成判定装置2の制御部100の概要を説明する。
【0037】
制御部100は、
(1)光センサユニット10に備えられた光源10a及び光センサ10bを制御する光センサ制御部110と、
(2)ガスセンサ20を制御するガセセンサ制御部120と、
(3)光センサ10bやガスセンサ20の検出信号に基づいて、生鮮食品Fの鮮度や熟成を判定する判定部130と、
(4)判定部130による判定の結果を表示装置30に表示するための表示制御部140と、
を備える。」
(オ) 「【0039】
判定部130により鮮度や熟成の判定がなされたとき、判定結果を表示装置30に表示して、使用者に報知することができる。鮮度・熟成判定装置2が、単体の機器として存在する場合には、鮮度・熟成判定装置2に表示装置30を備えることができるし、鮮度・熟成判定装置2が冷蔵庫50の中に配置される場合には、冷蔵庫50の扉に設けられた表示装置を用いて、判定結果を表示することもできる。
【0040】
(鮮度・熟成判定処理の説明)
以上のような制御機器の構成に基づき、判定部130が、光センサ10bやガスセンサ20の検出信号に基づいて、下記に示すような生鮮食品の鮮度・熟成判定を行う。」
(カ) 「【0053】
<鮮度・熟成判定の可否の説明>
図6は、生鮮食品の各食品種と、光センサが検出した光強度またはガスセンサが検出したガス濃度との相関の有無を示した表である。ここで、
(1)表に示された〇印は、相関性が強いものを示す。更に詳細に述べれば、相関係数Rについて、R22≧0.8の場合を意味する。
(2) 表に示された△印は、相関性が認められたものを示す。更に詳細に述べれば、相関係数Rについて、0.8≧R22>0.6の場合を意味する。
(3) 表に示された×印は、相関性が認められなかったものを示す。
【0054】
試験は、食品を密閉容器に入れ、経過時間が、0,3,7,10日における、光センサ及びガスセンサの測定値に基づいてデータベースを作成し、図6の表に示す試験結果が得られた。肉類及び魚介類については、各食品種について、7個の試料に関するデータを取得して、図6の表に示す試験結果が得られた。野菜については、各食品種について、5個の試料に関するデータを取得して、図6の表に示す試験結果が得られた。果物については、表にn=1~3と示されたものを除く各食品種について、5個の試料に関するデータを取得して、図6の表に示す試験結果が得られた。表に示すnの値は、試料数を示す。
試験結果に基づき、〇印で示す相関性が強いもの、及び△印に示す相関性が認められたものについて、鮮度・熟成判定が可能であると判断され、鮮度・熟成判定のアルゴリズムを作成した。図6の表では、鮮度・熟成判定が可能な食品類を、太線の破線で囲んで示す。」
(キ) 「【0062】
野菜のうち、食品種がレタスの場合の鮮度・熟成判定のアルゴリズムは以下のようになる。
[赤色光の場合]
(1)光センサにより検出されたる赤色光の光強度が130以上の場合には、新鮮な可食状態にあると判断する。
(2)光センサにより検出されたる赤色光の光強度が100以上130未満の場合には、要加熱の状態であり、早めに食べるべき状態であると判断する。
(3)光センサにより検出されたる赤色光の光強度が100未満となった場合には、腐敗している状態であると判断する。
[緑色光の場合]
(1)光センサにより検出されたる緑色光の光強度が300以上の場合には、新鮮な可食状態にあると判断する。
(2)光センサにより検出されたる緑色光の光強度が270以上300未満の場合には、要加熱の状態であり、早めに食べるべき状態であると判断する。
(3)光センサにより検出されたる色光の光強度が270未満となった場合には、腐敗している状態であると判断する。
【0063】
果物のうち、食品種がモモの場合の鮮度・熟成判定のアルゴリズムは以下のようになる。
[緑色光の場合]
(1)光センサにより検出されたる緑色光の光強度が220以上の場合には、新鮮な可食状態にあると判断する。
(2)光センサにより検出されたる緑色光の光強度が200以上220未満の場合には、熟成された食べ頃のであると判断する。
(3)光センサにより検出されたる赤色光の光強度が200未満となった場合には、腐敗している状態であると判断する。
[青色光の場合]
(1)光センサにより検出されたる青色光の光強度が170以上の場合には、新鮮な可食状態にあると判断する。
(2)光センサにより検出されたる青色光の光強度が150以上170未満の場合には、熟成された食べ頃のであると判断する。
(3)光センサにより検出されたる色光の光強度が150未満となった場合には、腐敗している状態であると判断する。」
(ク) 「【0067】
果物において、早めに食べるべき状態であるという判定を加えることもできる。つまり、時間の経過とともに、新鮮な状態、熟成した状態、早めに食べるべき状態、及び腐敗した状態のうちのどの状態であるか判定することもできる。また、肉類について、熟成した状態であるか否かを判定することもできる。
更に多くの段階に分けて判定結果を示すこともできる。また、危険度をパーセント等で定量的に示すこともあり得る。また、冷蔵庫に配置されている場合、判定の結果に基づく、冷蔵庫の自動制御も可能である。例えば、要加熱の状態であり、早めに食べるべき状態であると判定された場合、冷蔵庫の冷却能力を高める制御を行うことも考えられる。」
「【0077】
<光センサ及びガスセンサによる判定に組み合せに関する説明>
上記のように、肉類に関しては、光センサ及びガスセンサによる両方の判定が可能である。この場合、判定の確率を高めるため、光センサ及びガスセンサによる両方の判定の結果が一致した時点で、判定を確定する制御処理が可能である。また、時間の経過にともない、光センサまたはガスセンサの一方による判定の結果が出た時点で、判定を確定する制御処理も可能である。用途に応じて、最適な制御処理を行うのが好ましい。
更に、光センサ及びガスセンサによる判定結果を組み合わせた演算式を形成して、最適な判断処理を行うこともできる。」
(ケ) 「図1
[図:0001411297000001.jpg]
」
(コ) 「図2
[図:0001411297000002.jpg]
」
(サ) 「図3
[図:0001411297000003.jpg]
」
(シ) 「図6
[図:0001411297000004.jpg]
」
イ 認定事項
甲1の【0033】に記載された「収納部4」は、他の段落に記載された「収容部4」と同一構成を指すものと認められる。
ウ 甲1に記載された発明
上記アによると、甲1には、次の甲1発明が記載されていると認められる。ここで、本件発明の分説記号に概ね対応して、各構成単位冒頭に「a」等の分説記号を当審で付した。以下、その他の甲号証についても同様である。
「1ac 冷蔵庫50の冷蔵室52内に配置され、生鮮食品Fの鮮度や熟成の判定を行うとともに、生鮮食品Fを収容可能な収容部4を備えた鮮度・熟成判定装置2であって、(【0021】、【0033】、図1~3)
1ag 収容部4は、底面及び4つの側面で囲まれ、上部が開口した収容空間を有する引出部8と、引出部8を出入可能に収容する外枠部6から構成され、収容部4の外枠部6の上面部6aにおいて、2つのファン12,14の間に、引出部8の中に配置された生鮮食品Fに可視光を照射する光源10aと、生鮮食品Fから反射された光の所定の波長域の光強度を検出する光センサ10bとが備えられており、収容部4の外枠部6の上面部6aに配置された2つのファン12,14の間には、光センサユニット10に隣接して、アンモニアガスやアルコールの濃度を検出するガスセンサ20が備えられており、光センサ10bは、受光素子と、それぞれ青色光のみを透過させるフィルタB、緑色光のみを透過させるフィルタG及び赤色光のみを透過させるフィルタRとを備え、各フィルタB,G,Rを透過した青色光、緑色光または赤色光の光強度が、受光素子により電気信号に変換され、制御部へ送信され、(【0021】、【0024】、【0025】、【0028】、【0029】、図1、2)
1age 鮮度・熟成判定装置2の制御部100は、光センサユニット10に備えられた光源10a及び光センサ10bを制御する光センサ制御部110と、ガスセンサ20を制御するガスセンサ制御部120と、光センサ10bやガスセンサ20の検出信号に基づいて、生鮮食品Fの鮮度や熟成を判定する判定部130と、判定部130による判定の結果を表示装置30に表示するための表示制御部140と、を備え、(【0036】、【0037】)
1b 野菜のうち、食品種がレタスの場合、光センサにより検出されたる赤色光の光強度が130以上の場合には、新鮮な可食状態にあると判断し、光センサにより検出されたる赤色光の光強度が100以上130未満の場合には、要加熱の状態であり、早めに食べるべき状態であると判断し、光センサにより検出されたる赤色光の光強度が100未満となった場合には、腐敗している状態であると判断し、光センサにより検出されたる緑色光の光強度が300以上の場合には、新鮮な可食状態にあると判断し、光センサにより検出されたる緑色光の光強度が270以上300未満の場合には、要加熱の状態であり、早めに食べるべき状態であると判断し、光センサにより検出されたる色光の光強度が270未満となった場合には、腐敗している状態であると判断し、
果物のうち、食品種がモモの場合、光センサにより検出されたる緑色光の光強度が220以上の場合には、新鮮な可食状態にあると判断し、光センサにより検出されたる緑色光の光強度が200以上220未満の場合には、熟成された食べ頃であると判断し、光センサにより検出されたる赤色光の光強度が200未満となった場合には、腐敗している状態であると判断し、光センサにより検出されたる青色光の光強度が170以上の場合には、新鮮な可食状態にあると判断し、光センサにより検出されたる青色光の光強度が150以上170未満の場合には、熟成された食べ頃であると判断し、光センサにより検出されたる色光の光強度が150未満となった場合には、腐敗している状態であると判断し、(【0062】、【0063】)
1b2 果物において、早めに食べるべき状態であるという判定を加え、時間の経過とともに、新鮮な状態、熟成した状態、早めに食べるべき状態、及び腐敗した状態のうちのどの状態であるか判定することもでき、(【0067】)
1d 要加熱の状態であり、早めに食べるべき状態であると判定された場合、冷蔵庫の冷却能力を高める制御を行い、(【0067】)
1e 判定部130により鮮度や熟成の判定がなされたとき、冷蔵庫50の扉に設けられた表示装置を用いて、判定結果を表示する、(【0039】)
1c 鮮度・熟成判定装置2。」
(2)甲2
ア 甲2の記載事項
甲2には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。
(ア) 「【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る冷蔵庫の構造の一例を示す側断面図である。図2は、本発明の実施の形態1に係る冷蔵庫のブロック図である。図3は、本発明の実施の形態1に係る冷蔵庫の機能ブロック図である。図3では、特に本発明の機能及び本発明の機能のために用いられる構成について図示している。冷蔵庫は、野菜を収納する収納部17と、収納部17が設けられた野菜室12を開閉する開閉部16の開閉を検知する検知部13と、収納部17に野菜が収納された収納タイミングを特定する特定部23と、収納部17の撮像画像又は光源41から収納部17内に照射された光の分光反射率を判定用情報として取得する取得部30と、少なくとも収納タイミング及び収納タイミングの後の劣化確認タイミングで取得部30を動作させる動作制御部21と、収納タイミングに取得された判定用情報及び劣化確認タイミングに取得された判定用情報に基づいて野菜の劣化を判定する判定部24と、判定部24による判定結果に応じて報知を行う報知部25とを備える。光源41については、実施の形態3で図8及び図9を参照して説明する。
【0012】
また、冷蔵庫は、野菜室12を含む収納室を有する本体1を備える。具体的には、箱状の本体1は、野菜を冷蔵することが想定された野菜室12の他に、冷蔵室7及び冷凍室11を備える。本体1は、さらに、冷蔵庫使用者が冷蔵庫の各部屋の温度調整などを指定することができる操作パネル5で複数の設定温度を選択できる切替室9、冷蔵庫内に設けられたチルド室8及び氷を自動的に製造する製氷室10を備えていてもよい。各収納室は、断熱部材で仕切られている。」
(イ) 「【0014】
冷蔵庫は、本体1内を冷却する冷却部を備える。冷却部は、冷媒を圧縮する圧縮機2、冷媒の気化に伴う吸熱により周囲の空気を冷却して冷気とする冷却器3、冷却器3の冷気を各部屋に送風する送風機4を有する。冷却部は、冷却器3で冷やされた空気を送風機4で押し出し、送風ダクトを介して吹出口から各収納室へ冷気を送風する。各収納室内の収納物を冷却し暖められた空気は、各々の収納室に設けられた吸込口から戻りダクトを通じて冷却器3の周囲に戻り、冷却器3を通過して冷却され再び各収納室へ送風される。」
(ウ) 「【0018】
取得部30は、収納部17内を撮像して撮像画像を出力する撮像部14と、撮像画像に含まれる野菜の画像を検出する検出部22とを備える。撮像部14は、野菜室12の背面上側に設けられて野菜室12内を撮影する撮像素子を有するデジタルカメラであり、野菜室12の収納部17内を撮影する。収納部17内に野菜が存する場合、撮像部14による撮像画像には野菜の画像が含まれることになる。検出部22は、画像のパターンマッチングにより収納部17内に野菜があるか否かを判定する処理を行う回路である。より具体的には、実施の形態1における制御盤6は、収納部17内が空である場合の撮像画像を示すパターン画像及び検出部22により野菜と判定される物体の色を算出するため色リストデータを記録している。検出部22は、制御盤6からパターン画像及び色リストデータを読み出して参照し、撮像部14による撮像画像とのパターンマッチングを行って撮像画像に野菜の画像が含まれるか否か判定する。撮像画像に含まれる野菜の画像は、収納部17内における野菜の位置を示す情報及び野菜の劣化の度合いを判定する際に用いられる判定用情報として機能する。すなわち、実施の形態1の取得部30により取得される判定用情報は、野菜の画像である。」
(エ) 「【0027】
収納タイミングが特定された場合、判定部24は、収納部17に収納された野菜の画像の色を測定する。判定部24は、野菜の画像から野菜の色を抽出する処理及び抽出された野菜の色に基づいて野菜の劣化を判定する処理を行う回路を有し、収納タイミングにおける野菜の色を示すデータをV_c_iniとし、一時的なデータとして保持する。すなわち、判定部24は、撮像部14の画像から収納部17に収納された野菜に応じた色を得る。特定部23は、収納タイミングを再設定した場合、V_c_iniも再設定する。
・・・
【0031】
判定部24は、収納タイミングに取得された野菜の画像と劣化確認タイミングに取得された野菜の画像との明度の差に基づいて野菜の劣化を判定する。具体的には、判定部24は、劣化確認タイミングにおける野菜の色を示すデータをV_cとし、一時的なデータとして保持する。判定部24は、収納タイミングにおける野菜の色を示すデータであるV_c_iniと劣化確認タイミングにおける野菜の色を示すデータであるV_cとの比較結果に基づいて野菜の劣化を判定する。
【0032】
判定部24は、野菜の色が退色する第1の劣化の進行と、野菜が食べるのに適さないほど劣化する第2の劣化の進行とを判定する。具体的には、判定部24は、V_cが示す野菜の色とV_c_iniが示す野菜の色との差が野菜の劣化を冷蔵庫使用者に報知すべき変化であるV_c_limit1を超えたかどうかを判定する。V_c_limit1を超えたと判定された場合、報知部25による第1の劣化の報知フラグが成立する。すなわち、V_c_limit1を超えた場合、判定部24は、野菜の鮮度が落ちて野菜の色が退色したと判定する。また、判定部24は、V_cが示す野菜の色とV_c_iniが示す野菜の色との差が野菜の腐敗の開始を報知すべき変化であるV_c_limit2を超えたかどうかを判定する。V_c_limit2を超えたと判定された場合、報知部25による第2の劣化の報知フラグが成立する。すなわち、V_c_limit2を超えた場合、判定部24は、野菜が枯れた又は腐敗してカビが生えたと判定する。
【0033】
報知部25は、第1の劣化が進行したと判定された場合と第2の劣化が進行したと判定された場合とで異なる報知を行う。具体的には、報知部25は、操作パネル5に設けられた表示部と、表示部の表示内容を制御する回路とを有する。報知部25は、冷蔵庫使用者が操作パネル5を操作した時に『鮮度低下につき早めに食べる』のように、野菜の消費を促すメッセージを表示することで第1の劣化が進行したことを示す報知を行う。また、報知部25は、冷蔵庫使用者が操作パネル5を操作した時に『可食限界を超えた可能性あり、要廃棄』のように、野菜の廃棄を促すメッセージを表示することで第2の劣化が進行したことを示す報知を行う。」
(オ) 「図1
[図:0001411297000005.jpg]
」
(カ) 「図3
[図:0001411297000006.jpg]
」
イ 甲2に記載された発明
上記アによると、甲2には、次の甲2発明が記載されていると認められる。
「2abe 野菜を収納する収納部17と、収納部17が設けられた野菜室12を開閉する開閉部16の開閉を検知する検知部13と、収納部17に野菜が収納された収納タイミングを特定する特定部23と、収納部17の撮像画像を判定用情報として取得する取得部30と、少なくとも収納タイミング及び収納タイミングの後の劣化確認タイミングで取得部30を動作させる動作制御部21と、収納タイミングに取得された判定用情報及び劣化確認タイミングに取得された判定用情報に基づいて野菜の劣化を判定する判定部24と、判定部24による判定結果に応じて報知を行う報知部25とを備えた冷蔵庫であって、(【0011】、図1、3)
2a 冷蔵庫は、野菜室12を含む収納室を有する本体1、及び本体1内を冷却する冷却部を備え、(【0012】、【0014】)
2a2 取得部30は、収納部17内を撮像して撮像画像を出力する撮像部14と、撮像画像に含まれる野菜の画像を検出する検出部22とを備え、収納部17内に野菜が存する場合、撮像部14による撮像画像には野菜の画像が含まれることになり、検出部22は、制御盤6からパターン画像及び色リストデータを読み出して参照し、撮像部14による撮像画像とのパターンマッチングを行って撮像画像に野菜の画像が含まれるか否か判定し、撮像画像に含まれる野菜の画像は、収納部17内における野菜の位置を示す情報及び野菜の劣化の度合いを判定する際に用いられる判定用情報として機能し、(【0018】)
2b 判定部24は、収納部17に収納された野菜の画像の色を測定し、収納タイミングにおける野菜の色を示すデータであるV_c_iniと劣化確認タイミングにおける野菜の色を示すデータであるV_cとの比較結果に基づいて野菜の劣化を判定し、判定部24は、V_cが示す野菜の色とV_c_iniが示す野菜の色との差が野菜の劣化を冷蔵庫使用者に報知すべき変化であるV_c_limit1を超えたかどうかを判定し、V_c_limit1を超えたと判定された場合、報知部25による第1の劣化の報知フラグが成立し、野菜の鮮度が落ちて野菜の色が退色したと判定し、また、判定部24は、V_cが示す野菜の色とV_c_iniが示す野菜の色との差が野菜の腐敗の開始を報知すべき変化であるV_c_limit2を超えたかどうかを判定し、V_c_limit2を超えたと判定された場合、報知部25による第2の劣化の報知フラグが成立し、V_c_limit2を超えた場合、判定部24は、野菜が枯れた又は腐敗してカビが生えたと判定し、(【0027】、【0031】、【0032】)
2e 報知部25は、第1の劣化が進行したと判定された場合、冷蔵庫使用者が操作パネル5を操作した時に『鮮度低下につき早めに食べる』のように、野菜の消費を促すメッセージを表示することで第1の劣化が進行したことを示す報知を行う、(【0033】)
冷蔵庫。」
(3)甲3
ア 甲3の記載事項
甲3には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。
(ア) 「【0022】請求項2に記載の発明は、野菜、果物の貯蔵部分に備えたエチレンガス検知センサーと、食品貯蔵後の雰囲気温度および前記エチレンガス検知センサーの出力に基づくエチレンガスの濃度履歴を記憶する貯蔵履歴記憶手段と、前記貯蔵履歴記憶手段の出力をもとに食品の鮮度を推定する鮮度推定手段を備えたものであり、貯蔵温度による劣化推定に加えて、貯蔵中の野菜、果物から発生するエチレンガス雰囲気における老化の促進状態を濃度経過によって推定する。」
(イ) 「【0086】(実施例3)図9は、本発明の実施例3による冷蔵庫の斜視図である。図10は同実施例による冷蔵庫の断面図である。図11は、同実施例による冷蔵庫の機能ブロック図である。図9、図10において、34は冷蔵庫本体で、35は前記冷蔵庫本体34の前面開口部に取り付けられた開閉式の扉、36は引き出し式の扉である。前記開閉式の扉35の外表面には貯蔵食品の管理情報を表示する表示手段16が取り付けられている。37は前記冷蔵庫本体34の内部に形成され、前記開閉式の扉35に対向する冷蔵室であり、38は前記冷蔵庫本体34の内部に形成され、前記引き出し式の扉36に対向する野菜室である。
【0087】前記野菜室38の内部には、前記引き出し式の扉36と一体に引き出され野菜、果物などの食品を収納する収納容器39と、前記収納容器39の上面開口部を覆って収納容器39内の湿度を高めるための蓋体40が設けられている。前記蓋体40の収納容器側には容器内温度を検知する温度センサーなどの温度検知手段18と、容器内湿度を検知する湿度センサーなどの湿度検知手段19および収納容器39内に貯蔵された野菜、果物などから発生するエチレンガスを検知するエチレンガス検知センサー41が取り付けられている。」
(ウ) 「【0091】43は貯蔵中の食品の鮮度を推定する鮮度推定手段である。44は入庫された食品の貯蔵中の履歴を記憶する貯蔵履歴記憶手段であり、貯蔵開始後のタイマーなどの貯蔵時間計測手段24による経過時間と、温度検知手段18、湿度検知手段19による温、湿度の経過データおよびエチレンガス検知センサー41によるエチレンガス濃度経過データを記憶している。そして、前記鮮度推定手段43は前記食品目指定手段22および初期鮮度設定手段20の出力と、前記貯蔵履歴記憶手段44の記憶データを入力として食品の鮮度を推定し、その結果に基づいて表示手段16による鮮度表示を行う。また、貯蔵履歴記憶手段44のエチレンガス濃度データをもとに報知手段42による使用者に対する報知を行う。」
(エ) 「【0096】また、野菜、果物などの品質劣化は温、湿度に影響されるところが大であるが、貯蔵中エチレンガス雰囲気中に曝露されることによって老化ホルモンガスであるエチレンガスの影響を受け品質劣化や品目によっては熟成が促進される。エチレンガスは品目によりその発生量の大小差が比較的顕著であり、特にバナナ、メロン、りんご、キウイ、柿、アボカド、パパイヤ、青ウメなどの果物の発生量が多く、これらの品目は自身が発生するエチレンガスにより品質劣化や熟成が促進される。また、前述のエチレンガス発生量の多い品目と同じ雰囲気中に貯蔵されることによって、エチレン発生量の少ない品目も品質劣化の影響を受ける。他感作用(アレロパシー)と呼ばれるこの作用はナス、ブロッコリー、キャベツ、カリフラワー、レタス、アスパラガス、セロリなどの野菜において顕著であり、このため貯蔵中のエチレンガス濃度経過を計測することによって品目別の品質劣化を推定する一つのデータとなる。
【0097】そして、食品目指定手段22により食品目が指定され、初期鮮度設定手段20によっておよその初期鮮度が設定されて鮮度推定の基準が定められると、貯蔵履歴記憶手段44から貯蔵後の経過時間と温、湿度変化のデータおよびエチレンガスの濃度経過データを取り込み、温、湿度データを前述の鮮度相関関数に当てはめてその時点の鮮度を仮推定し、エチレンガスの濃度経過データにより鮮度劣化に一定の補正を加える。即ち、予め実験で定めた温、湿度組み合せ条件下におけるエチレンガス濃度による品質劣化促進の度合をデータとして鮮度推定手段43に格納しておき、これをもとに推定鮮度を総合的に決定する。
【0098】このようにして、食品貯蔵後のある任意の時間経過後に、使用者が表示手段16に設けた図示しない確認ボタンを押すと、その時点の推定鮮度が表示手段16に画像で表示される。そして、貯蔵中のエチレンガス濃度が所定濃度以上を所定時間の間継続して検知されると、報知手段42により使用者に鮮度劣化の進みやすい貯蔵環境にあることを報知して注意を促す。また、熟成を伴うメロンやバナナなどの果物の貯蔵においては適当な条件で報知を行うことによって使用者に食べ頃を報せることができる。」
(オ) 「図10
[図:0001411297000007.jpg]
」
イ 甲3に記載された発明
上記アによると、甲3には、次の甲3発明が記載されていると認められる。
「3a 冷蔵庫本体34の内部に形成され、前記引き出し式の扉36に対向する野菜室38の内部には、前記引き出し式の扉36と一体に引き出され野菜、果物などの食品を収納する収納容器39と、前記収納容器39の上面開口部を覆って収納容器39内の湿度を高めるための蓋体40が設けられ、前記蓋体40の収納容器側には容器内温度を検知する温度センサーなどの温度検知手段18と、容器内湿度を検知する湿度センサーなどの湿度検知手段19および収納容器39内に貯蔵された野菜、果物などから発生する老化ホルモンガスであるエチレンガスを検知するエチレンガス検知センサー41が取り付けられている冷蔵庫であって、(【0086】~【0087】、【0096】、図10)
3a2 貯蔵履歴記憶手段44は、エチレンガス検知センサー41の出力に基づくエチレンガス濃度経過データを記憶し、(【0022】、【0091】)
3be 鮮度推定手段43は、貯蔵履歴記憶手段44のエチレンガス濃度データをもとに報知手段42による使用者に対する報知を行い、貯蔵中のエチレンガス濃度が所定濃度以上を所定時間の間継続して検知されると、報知手段42により使用者に鮮度劣化の進みやすい貯蔵環境にあることを報知して注意を促す、(【0091】、【0098】)
冷蔵庫。」
(4)引用文献1
ア 引用文献1の記載事項
引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。
(ア) 「【0002】
鳥類の卵や緑黄色野菜等の食品には、ポルフィリン色素やクロロフィルが含有されている。これらは紫外線または短波長の可視光線で励起されると、赤い自家蛍光を放つ特性がある。この蛍光は、経時的に退色ないし衰退する。
すなわち、保存日数が長くなり鮮度が低下すると、新鮮なものと比較して、その表面から発する蛍光の色調が退色あるいは衰退する。そこで、食品の新鮮時の蛍光の色調を保存し、それと比較することで容易に食品の鮮度を判定できる。」
(イ) 「【0009】
野菜室5内の下部前方に鮮度を判定するための野菜8が置かれる鮮度判定部7が設けられている。また、野菜室5内の上部前方で鮮度判定部7の野菜8に光を照射できる位置に、紫外線又は短波長の可視光線を出す光源9が取り付けられている。
さらに、野菜室5の前面の扉5aの下方中央位置に、鮮度判定部7内に収容された野菜8を目視できるように比色用窓12が設けられている。その比色用窓12にはシャッター12aが取り付けられており、比色用窓12から鮮度判定部7内に置かれた野菜8を目視するときにはシャッター12aを開ける。
【0010】
上記のように構成された本発明の実施の形態1の鮮度判定機能を有する冷蔵庫の動作について説明する。
野菜室5内の取り付けられた光源9から紫外線又は短波長の可視光線の照射により、鮮度判定部7内に置かれた野菜8は自家蛍光10、11を発現するので、この自家蛍光10、11の色を野菜室5の前面の扉5aに設けられた比色用窓12からシャッター12aを開けて目視する。ところで、この自家蛍光10、11は前記したように、野菜8保有のクロロフィルに由来するもので、新鮮なときには赤色、鮮度が低下すると赤が退色する。そのため、この色から野菜8の鮮度を判定することができる。」
(ウ) 「【0020】
実施の形態3.
図12は本発明の実施の形態3に係る冷蔵庫の野菜室の電気系統を示すブロック図、図13は同冷蔵庫の野菜室の前面の扉に設けられた鮮度表示部を示す説明図である。
この実施の形態3において、実施の形態1と同様の構成は同一符号を付して重複した構成の説明を省略する。
この実施の形態3は、冷蔵庫1の野菜室5の側壁側の上方に、鮮度判定部7内の野菜8からの自家蛍光量を計測する光センサ13が配置されている。その光センサ13は数値演算部14に接続されている。その数値演算部14は内部に数値記憶部16を備えている。数値演算部14は野菜室5の前面の扉5aに設けられた鮮度表示部15に接続されている。
【0021】
上記のように構成された本発明の実施の形態3の鮮度判定機能を有する冷蔵庫の動作について説明する。
光源9からの紫外線又は短波長の可視光線の照射で発現した鮮度判定部7内の保存直後の野菜8の自家蛍光10の自家蛍光量を野菜室5の側壁側の上方に配置した光センサ13で計測する。光センサ13は野菜8からの自家蛍光量を光強度(μw/cm2)として検出し、数値演算部14は光センサ13が検出した光強度から演算により鮮度を数値化する。
数値演算部14は数値化された保存直後の野菜の鮮度161を数値記憶部16に記憶させると共に、数値記憶部16に記憶された保存直後の野菜の鮮度161を鮮度表示部15にビジュアル表示し、野菜8自体の保存も開始される。
【0022】
次に、保存直後からある時間が経過した現在も保存中の野菜8について、保存中の鮮度を確認したい場合、図示省略のスイッチを動作させて光源9から紫外線又は短波長の可視光線を照射させ、その照射で発現した自家蛍光10の自家蛍光量を光強度(μw/cm2)として光センサ13が検出し、数値演算部14は光センサ13が検出した光強度から演算により鮮度を数値化し、その数値化された現在の野菜の鮮度162を数値記憶部16に記憶させると共に、数値記憶部16に記憶された現在の野菜の鮮度162を鮮度表示部15にビジュアル表示する。」
(エ) 「図12
[図:0001411297000008.jpg]
」
イ 引用文献1に記載された技術的事項
上記アによると、引用文献1には、次の技術的事項(以下、「引用文献1技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「鮮度判定機能を有する冷蔵庫において、野菜室5内に取り付けられた光源9から紫外線又は短波長の可視光線を照射し、野菜室5内の下部前方に設けられた鮮度判定部7内に置かれた野菜8は当該照射で自家蛍光10を発現するので、この自家蛍光10の自家蛍光量を光強度(μw/cm2)として光センサ13が検出し、数値演算部14は光センサ13が検出した光強度から演算により鮮度を数値化し、その数値化された現在の野菜の鮮度162を数値記憶部16に記憶させると共に、数値記憶部16に記憶された現在の野菜の鮮度162を鮮度表示部15にビジュアル表示し、(【0009】~【0010】、【0020】、【0022】、図12)
この自家蛍光10は、野菜8保有のクロロフィルに由来するもので、新鮮なときには赤色、鮮度が低下すると赤が退色すること。(【0010】)」
(5)甲5及び甲6
ア 甲5の記載事項
甲5には、次の事項が記載されている。
(ア) 「さらに、青果物のまわりの酸素濃度が極端に低い場合には、無気呼吸によって、ピルビン酸からアセトアルデヒドを経てエタノールが生成し、強い異臭や異味の原因となる。また、低酸素下に置かれたブロッコリーは、エタノールやアセトアルデヒドだけでなく、メタンチオールやジメチルジスルフィド等の硫黄化合物も異臭成分として生成するが、外観には異常が無く、加熱調理する段階で強い異臭が発生することがあるので、注意が必要である。」(第54頁第9~14行)
(イ) 「ナスなどは低温で貯蔵すると、種子のまわりが茶色になり(褐変)、表皮に茶色のへこみ(ピッティング)ができる場合がある」(第56頁第26~29行)
(ウ) 「包装で密閉したまま想定以上に温度が高くなると、中に入れた野菜の呼吸によって酸素が消費し尽くされ、嫌気呼吸によりエタノールやアセトアルデヒド等の異臭物質が生成するので注意が必要である。」(第59頁第6~10行)
イ 甲6の記載事項
甲6には、次の事項が記載されている。
「2.2.1 低温障害発生に伴う形態学的、生理化学的変化
(a)形態学的変化
青果物の低温障害に伴って見られる外観上の変化は・・・、内部症状としては内部組織異常(internal breakdowning)、内部褐変(internal browning)、・・・等である。
・・・
(c)化学成分の変化
低温障害の発生に伴って、青果物の構成成分の中、ビタミンC(lーアルコルビン酸)の減少、フェノール類の酸化、αケト酸、アセトアルデヒド、アルコール、ある種のアミノ酸、可溶性タンパク質の増加、脂肪酸の不飽和化などの現象が起ることが知られている。」(第4頁右欄下から4行~第5頁右欄第2行)
ウ 甲5及び甲6の記載に裏付けられる周知技術
(ア) 周知技術1
上記アの(ア)及び(ウ)並びにイから、「青果物において、酸素不足による嫌気呼吸や低温障害によってアルコールが生成され、異味や異臭の原因となること」という技術的事項が周知であること(以下、「周知技術1」という。)が裏付けられる。
(イ) 周知技術2
また、上記ア(イ)及びイから、「青果物において、低温障害で内部褐変を生じる」という技術的事項が周知であること(以下、「周知技術2」という。)が裏付けられる。
(6)甲4
甲4には、次の事項が記載されている。
「【0010】また、必要に応じて、青果物の種類ごとに、内部品質が未熟,適熟,過熟,腐敗のうちの少なくとも一つの状態にあるときの渦電流値をあらかじめ求めておき、測定した渦電流値とあらかじめ求めた渦電流値を比較することによって試料青果物の内部品質の状態を判断するようにしてある。」
「【0012】次に、褐変に至る過程を、切断した試料リンゴにより時を追って観察した。この観察によると、先ず、リンゴの果芯部と果肉との境界部分に「蜜症状」といわれる半透明な部分が発生し、やがて褐色に変化した。この蜜症状は、細胞内の液状物質が細胞間に浸み出した状態であり、褐変は細胞が壊死したものであると考えられる。さらに時を経ると、やがて腐敗してしまった。したがって、上記蜜症状と褐変に関する推測は正しいと考えられる。以上の観察から、高鮮度を保持した正常な果肉の細胞は、互に強く結合した状態にあり、細胞間に液状物質の浸み出しがないものであると考えられる。」
(7)甲7
甲7には、次の事項が記載されている。
「【0078】
判定部56は、特徴量算出部54から取得した特徴量に基づき、受精卵Fの品質を判定する。また、判定部56は、特徴量算出部54から出力された状態変化に基づき、受精卵Fの発育状況も判定する。
【0079】
判定部56は、特徴量及び状態変化に基づき判定した判定結果を表示制御部58と、受精卵情報データベース59に出力する。」
「【0083】
また、受精卵情報データベース59は、特徴量算出部54から取得した状態変化や特徴量、判定部56から取得した受精卵Fに関する判定結果、予測部57から取得した予測値、さらには、入力部70から入力された入力情報等を記憶する。」
「【0122】
(ステップS06:品質判定)
判定部56は、特徴量算出部54から出力された状態変化又は特徴量に関する数値データと、予め受精卵情報データベース59に記憶されている状態変化又は特徴量に対応する第4の品質データとを照合することにより、受精卵Fの品質や発育状態等を判定する。」
「【0134】
(機械学習アルゴリズム)
本技術の情報処理装置50では、上述したステップS02~ステップS07の工程が、機械学習アルゴリズムに従って、実行される。この機械学習アルゴリズムは特に限定されず、例えばRNN(Recurrent Neural Network:再帰型ニューラルネットワーク)、CNN(Convolutional Neural Network:畳み込みニューラルネットワーク)又はMLP(Multilayer Perceptron:多層パーセプトロン)等のニューラルネットワークを用いた機械学習アルゴリズムが用いられる。その他、教師あり学習法、教師なし学習法、半教師あり学習法、強化学習法等を実行する任意の機械学習アルゴリズムが用いられてもよい。」
「【0174】
さらに、判定部56は、期間T10,T11が検出された受精卵Fの動き平均速度に関する数値データを受精卵情報データベース59から読み出し、当該数値データに所定の解析処理を施すことによって、期間T11の内、動き平均速度が例えば0.25より大きい期間T12と、0.25より小さい期間T13を検出する。なお、本実施形態の動き平均速度の単位は、例えば「μm/s」であるが、受精卵Fの動き平均速度が表示された画像のピクセル数に応じて適宜変更されてもよい。」
(8)甲8
甲8には、次の事項が記載されている。
「【0008】
【実施例】
実施例1.以下この発明の一実施例について、図1~4を用いて説明する。図1は、この発明による冷蔵庫の一実施例の全体構成図である。1は冷媒ガスを圧縮し冷凍サイクル内を循環させる圧縮機、2はこの液化冷媒を蒸発させる蒸発器として動作する冷却器、3はこの冷却器2により冷却させた冷気を循環させるファン、5はこの冷気の一部を冷蔵室4へ導く冷蔵室風路、6はこの風路5を開閉して冷蔵室4への冷気をコントロールするダンパー、7は冷却器2に付いた霜を解かす霜取りヒータ、9は冷凍室8の温度を検知するFサーミスタ、10は冷蔵室4の温度を検知するRサーミスタ、11は扉の開閉を検知するドア検知器、12は冷蔵庫の周囲温度を検知する外気サーミスタ、13は霜取りを終了させるために冷却器2の温度を検知するDEFサーミスタ、14は冷蔵庫全体を制御する制御基板であり、ここで制御基板14は、制御手段15と制御方法決定手段16からなる。」
3 当審の判断
3-1 本件特許発明1について
(1-1)本件特許発明1と甲1発明との対比
ア 甲1発明の「冷蔵庫50」は、技術常識によると「収容部4を備えた鮮度・熟成判定装置2」が配置された「冷蔵室52内」(構成1ac)の温度を制御するものであると認められる。すると、甲1発明の「収容部4」は、本件特許発明1の構成Aの「内部環境が制御された収容空間(5)」に相当する。
イ 甲1発明の構成1bの「レタス」や「モモ」は、本件特許発明1の「青果物」に相当し、「光センサにより検出されたる赤色光の光強度」、「光センサにより検出されたる緑色光の光強度」及び「光センサにより検出されたる青色光の光強度」は、本件特許発明1の「青果物である対象物品(7)の状態を示す状態指標」に相当する。すると、甲1発明の構成1agの「引出部8の中に配置された生鮮食品Fに可視光を照射する光源10aと、生鮮食品Fから反射された光の所定の波長域の光強度を検出する光センサ10b」は、本件特許発明1の「状態検知器(15)」に相当し、甲1発明の、「光センサ10b」から「電気信号に変換され」た「青色光、緑色光または赤色光の光強度」が「送信され」る「制御部」(構成1ag)が、本件特許発明1の「状態取得部(75,101)」に相当する。
ウ 甲1発明の構成1b、1b2における、「レタス」、「モモ」、「果物」の「腐敗している状態」や「腐敗した状態」は、本件特許発明1の構成B1の「品質低下」に相当し、甲1発明の構成1bにおいて、「レタス」が「腐敗している状態」の前段階である「早めに食べるべき状態」と判断されることは、本件特許発明1の構成B1の「品質低下の前兆」に相当し、「早めに食べるべき状態」と判断される条件となる、「光センサにより検出されたる赤色光の光強度が100以上130未満」又は「光センサにより検出されたる緑色光の光強度が270以上300未満」であることは、「品質低下の前兆を示す前兆条件」に相当する。
また、甲1発明の構成1b2における、「果物」(構成1bの「モモ」も含むと解される)の、「腐敗した状態」の前段階である「早めに食べるべき状態」と判定されることは、本件発明1の構成B1の「品質低下の前兆」に相当する。ここで、甲1発明では、構成1bにおいて、「モモ」の「新鮮な可食状態」、「熟成された食べ頃」、及び「腐敗している状態」を、「光センサにより検出されたる赤色光の光強度」、「光センサにより検出されたる緑色光の光強度」に基づいて判断しているから、構成1b2における「果物」が「時間の経過とともに、新鮮な状態、熟成した状態、早めに食べるべき状態、及び腐敗した状態のうちのどの状態であるか」の「判定」も、少なくとも「光センサにより検出されたる赤色光の光強度」、「光センサにより検出されたる緑色光の光強度」に基づいて判定していると解される。すると、「早めに食べるべき状態」と判定されるための条件は、本件特許発明1の構成B1における、「上記状態取得部(75,101)が取得した上記状態指標に基づいて」その「成否を」「判定する」「品質低下の前兆を示す前兆条件」に相当する。
よって、甲1発明の構成1b、1b2には、本件特許発明1の構成B1の「判定動作」に相当する構成が含まれるということができ、構成1ageの「判定部130」は、「本体処理部(64)」に相当する。
エ 甲1発明の「鮮度・熟成判定装置2」は、本件発明1の「品質判定装置」に相当する。
オ 以上により、本件特許発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「A 内部環境が制御された収容空間(5)に収容された青果物である対象物品(7)の状態を示す状態指標を検知する状態検知器(15)から、上記状態指標を取得するように構成された状態取得部(75,101)と、
B1 上記対象物品(7)の品質低下の前兆を示す前兆条件の成否を、上記状態取得部(75,101)が取得した上記状態指標に基づいて判定する判定動作を行うように構成された本体処理部(64)とを備える
C 品質判定装置。」
<相違点1>(構成B2)
前兆条件について、本件特許発明1では、「上記対象物品(7)の状態が、該対象物品(7)の品質を回復させることが可能な状態であることを示す条件である」のに対し、甲1発明において「早めに食べるべき状態」と判断される条件となる、「光センサにより検出されたる赤色光の光強度が100以上130未満」又は「光センサにより検出されたる緑色光の光強度が270以上300未満」との条件が、「レタス」が品質を回復させることが可能な状態であることを示すか不明であり、「果物において、早めに食べるべき状態である」と判定される条件が、「果物」が品質を回復させることが可能な状態であることを示すか不明である点。
(1-2)相違点1についての判断
甲1~8及び引用文献1のいずれにも、青果物の品質を回復させることが可能な状態であることを示す条件の成否を判定する事項について記載も示唆もされておらず、係る事項が優先日における技術常識ともいえない。
また、青果物において、早めに食べるべき状態が、品質を回復させることが可能な状態であるとの技術常識や、品質を回復させることが可能な状態であることを示す条件の成否により、早めに食べるべき状態であることの判定を行うとの技術常識は存在しない。
してみると、甲1発明において、当業者が上記相違点1に係る構成に容易に想到し得たとはいえない。
(1-3)小括
以上(1-2)のとおりであるから、本件特許発明1は、甲1発明ではないし、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(2-1)本件特許発明1と甲2発明との対比
ア 甲2発明の「冷却部」により「冷却」される「本体1内」の「野菜室12」に設けられた「収納部17」(構成2abe)は、本件特許発明1の「内部環境が制御された収容空間(5)」に相当する。
イ 甲2発明では、「撮像画像に含まれる野菜の画像は、収納部17内における野菜の位置を示す情報及び野菜の劣化の度合いを判定する際に用いられる判定用情報として機能」するから(構成2a2)、「撮像画像に含まれる野菜の画像」は、本件特許発明1の「状態指標」に相当し、「収納部17内を撮像して撮像画像を出力する撮像部14」(構成2a2)は、「状態検知器(15)」に相当する。「撮像画像に含まれる野菜の画像を検出する検出部22」(構成2a2)は、本件特許発明1の「状態取得部(75,101)」に相当する。
ウ 甲2発明の構成2bにおける、「野菜が枯れた又は腐敗してカビが生えた」ことは、本件特許発明1の構成B1の「品質低下」に相当する。すると、甲2発明の構成2bにおける、「野菜の鮮度が落ちて野菜の色が退色したと判定」されること、すなわち「第1の劣化の報知フラグが成立」することは、本件特許発明1の構成B1の「品質低下の前兆」に相当し、「第1の劣化の報知フラグが成立」する条件となる、「V_cが示す野菜の色とV_c_iniが示す野菜の色との差が野菜の劣化を冷蔵庫使用者に報知すべき変化であるV_c_limit1を超え」ることは、「品質低下の前兆を示す前兆条件」に相当するものといえる。よって、甲2発明の構成2bには、本件特許発明1の構成B1の「判定動作」に相当する構成が含まれているということができ、甲2発明の「判定部24」は、本件特許発明1の「本体処理部(64)」に相当する。
エ 甲2発明の「冷蔵庫」は、「野菜の劣化を判定する」から(構成2abe)、本件特許発明1の「品質判定装置」に相当するといえる。
オ 以上により、本件特許発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「A 内部環境が制御された収容空間(5)に収容された青果物である対象物品(7)の状態を示す状態指標を検知する状態検知器(15)から、上記状態指標を取得するように構成された状態取得部(75,101)と、
B1 上記対象物品(7)の品質低下の前兆を示す前兆条件の成否を、上記状態取得部(75,101)が取得した上記状態指標に基づいて判定する判定動作を行うように構成された本体処理部(64)とを備える
C 品質判定装置。」
<相違点2>(構成B2)
前兆条件について、本件特許発明1では、「上記対象物品(7)の状態が、該対象物品(7)の品質を回復させることが可能な状態であることを示す条件である」のに対し、甲2発明において「第1の劣化の報知フラグが成立」する条件となる、「V_cが示す野菜の色とV_c_iniが示す野菜の色との差が野菜の劣化を冷蔵庫使用者に報知すべき変化であるV_c_limit1を超え」るとの条件が、野菜が品質を回復させることが可能な状態であることを示すか不明である点。
(2ー2)相違点2についての判断
甲1~8及び引用文献1のいずれにも、青果物の品質を回復させることが可能な状態であることを示す条件の成否を判定する事項について記載も示唆もされておらず、係る事項が優先日における技術常識ともいえない。
また、「野菜の鮮度が落ちて野菜の色が退色したと判定」された野菜が、品質を回復させることが可能な状態であるとの技術常識や、品質を回復させることが可能な状態であることを示す条件の成否により、「野菜の鮮度が落ちて野菜の色が退色した」ことの判定を行うとの技術常識は存在しない。
してみると、甲2発明において、当業者が上記相違点2に係る構成に容易に想到し得たとはいえない。
(2-3)小括
以上(2-2)のとおりであるから、本件特許発明1は、甲2発明ではないし、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3-1)本件発明1と甲3発明との対比
ア 甲3発明の「冷蔵庫」は、技術常識によると「野菜、果物などの食品を収納する収納容器39」が設けられた「野菜室38」を含む「冷蔵庫本体34の内部」(構成3a)の温度を制御するものであると認められる。すると、甲3発明の「収納容器39」は、本件特許発明1の構成Aの「内部環境が制御された収容空間(5)」に相当する。
イ 甲3発明の構成3a及び3beからすると、「エチレンガス検知センサー41の出力に基づくエチレンガス濃度経過データ」(構成3a2)は、本件特許発明1の構成Aの「青果物である対象物品(7)の状態を示す状態指標」に相当し、「収納容器39内に貯蔵された野菜、果物などから発生する老化ホルモンガスであるエチレンガスを検知するエチレンガス検知センサー41」(構成3a)は、構成Aの「状態検知器(15)」に相当し、「エチレンガス検知センサー41の出力に基づくエチレンガス濃度経過データを記憶」する「貯蔵履歴記憶手段44」(構成3a2)は、構成Aの「状態取得部(75,101)」に相当する。
ウ 甲3発明の構成3beにおける「鮮度劣化の進みやすい貯蔵環境にあること」は、「鮮度劣化」することの前ぶれといえるから、本件特許発明1の構成B1の「品質低下の前兆」に相当するといえる。すると、「使用者に鮮度劣化の進みやすい貯蔵環境にあることを報知して注意を促す」ことの契機となる、「貯蔵中のエチレンガス濃度が所定濃度以上を所定時間の間継続して検知される」こと(構成3be)は、「品質低下の前兆を示す前兆条件」に相当するものといえる。よって、甲3発明の構成3beには、構成B1の「判定動作」に相当する構成が含まれるということができ、構成3beの「鮮度推定手段43」は、構成B1の「本体処理部(64)」に相当する。
エ 甲3発明の「冷蔵庫」は、「鮮度劣化の進みやすい貯蔵環境にあること」を判定するものといえるから、本件特許発明1の「品質判定装置」に相当する。
オ 以上により、本件特許発明1と甲3発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「A 内部環境が制御された収容空間(5)に収容された青果物である対象物品(7)の状態を示す状態指標を検知する状態検知器(15)から、上記状態指標を取得するように構成された状態取得部(75,101)と、
B1 上記対象物品(7)の品質低下の前兆を示す前兆条件の成否を、上記状態取得部(75,101)が取得した上記状態指標に基づいて判定する判定動作を行うように構成された本体処理部(64)とを備える
C 品質判定装置。」
<相違点3>(構成B2)
前兆条件について、本件特許発明1では、「上記対象物品(7)の状態が、該対象物品(7)の品質を回復させることが可能な状態であることを示す条件である」のに対し、甲3発明において「使用者に鮮度劣化の進みやすい貯蔵環境にあることを報知して注意を促す」ことの契機となる、「貯蔵中のエチレンガス濃度が所定濃度以上を所定時間の間継続して検知される」ことが、野菜が品質を回復させることが可能な状態であることを示すか不明である点。
(3-2)相違点3についての検討
甲1~8及び引用文献1のいずれにも、青果物の品質を回復させることが可能な状態であることを示す条件の成否を判定する事項について記載も示唆もされておらず、係る事項が優先日における技術常識ともいえない。
また、「貯蔵中のエチレンガス濃度が所定濃度以上を所定時間の間継続して検知される」ことで「鮮度劣化の進みやすい貯蔵環境にある」とされた野菜・果物が、品質を回復させることが可能な状態であるとの技術常識や、品質を回復させることが可能な状態であることを示す条件の成否により、「鮮度劣化の進みやすい貯蔵環境にある」ことの判定を行うとの技術常識は存在しない。
してみると、甲3発明において、当業者が上記相違点3に係る構成に容易に想到し得たとはいえない。
(3-3)小括
以上(3-2)のとおりであるから、本件特許発明1は、甲3発明ではないし、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
3-2 本件特許発明2、4、6、9について
本件特許発明2、4、6、9は、いずれも本件特許発明1に従属するものであって、本件特許発明2、4、6、9は、本件特許発明1の構成を全て具備するものである。
したがって、上記3-1と同様に、本件特許発明2、4、6、9は、甲1、2又は3発明のいずれでもないし、甲1、2又は3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
3-3 本件特許発明10について
甲1~8及び引用文献1のいずれにも、本件特許発明10の少なくとも構成H2~H4について記載も示唆もされていない。また、構成H2~H4が、優先日における技術常識であるともいえない。
したがって、本件特許発明10は、甲1、2又は3発明のいずれでもないし、甲1、2又は3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
3-4 本件特許発明11~13
本件特許発明11~13は、いずれも本件特許発明10に従属するものであって、本件特許発明11~13は、本件特許発明10の構成を全て具備するものである。
したがって、上記3-3と同様に、本件特許発明11~13は、甲1、2又は3発明のいずれでもないし、甲1、2又は3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
3-5 本件特許発明15について
本件特許発明15の構成15H2~15H4は、本件特許発明10の構成H2~H4とカテゴリの相違を除き対応するものである。したがって、上記3-3と同様の理由により、本件特許発明15は、甲1、2又は3発明のいずれでもないし、甲1、2又は3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
3-6 本件特許発明16について
本件特許発明16は、本件特許発明15に従属するものであって、本件特許発明16は、本件特許発明15の構成を全て具備するものである。
したがって、上記3-5と同様に、本件特許発明16は、甲1、2又は3発明のいずれでもないし、甲1、2又は3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
3-7 本件特許発明17について
本件特許発明17の構成17H2~17H4は、本件特許発明10の構成H2~H4を処理として特定している点を除き対応するものである。したがって、上記3-3と同様の理由により、本件特許発明17は、甲1、2又は3発明のいずれでもないし、甲1、2又は3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
3-8 本件特許発明18について
本件特許発明18は、本件特許発明17に従属するものであって、本件特許発明18は、本件特許発明17の構成を全て具備するものである。
したがって、上記3-7と同様に、本件特許発明18は、甲1、2又は3発明のいずれでもないし、甲1、2又は3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
3-9 申立人の意見について
(1) X意見書において、申立人は、概略以下のように主張している。
ア 産業上の利用可能性・実施可能要件に関する主張
(ア) 「回復」について、広辞苑(第六版)には「一度失ったものをとりもどすこと。もとどおりになること。」とある。
(イ)上記(ア)からすると、本件特許発明は、処置さえ講じれば青果物の状態をいつまでも元通りにできる発明ということである。
(ウ)上記(イ)のような発明は、「実際上、明らかに実施できない発明」であるか、仮に可能だとしても、(本件特許に係る発明の詳細な説明は)当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。
イ 不明確・進歩性に関する主張
(ア)「回復」について、Y意見書では、「完全に元通りとまではいかないまでも、ある程度は回復させることが可能」という主張がある。
(イ)上記(ア)の主張について、明細書等には記載がなく、本件特許発明は不明確である。
(ウ)上記(イ)により、「回復」の字義が不明確であるから、劣化の抑制とほぼ変わらないとすれば、甲1発明等との差異がなく、本件特許発明は進歩性を有しない。
ウ サポート要件に関する主張
(ア)Y意見書では、本件特許発明は、「内部環境の変化が小さい輸送用コンテナに未成熟な状態の青果物を収容する場合」を想定してなされ、当該場合で課題を解決できる発明である。
(イ)上記(ア)からすると、コンテナ以外の用途を含む範囲まで発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することはできず、本件特許発明はサポート要件を満たさない。
(2)各主張に対する当審の見解
ア 産業上の利用可能性・実施可能要件に関する主張について
上記(1)ア(ア)に示される広辞苑(第六版)による「回復」の語義には、「一度失ったものをとりもどすこと。」が含まれる。してみれば、本件特許発明1の「回復」を、広辞苑(第六版)による「回復」の語義後段に記載された「もとどおりになること。」に限定して解釈すべき理由はなく、申立人の主張するように「処置さえ講じれば青果物の状態をいつまでも元通りにできる発明」と解するのは相当でない。
すると、本件特許発明1の「品質を回復させることが可能な状態」は、品質を部分的にでも回復することが可能な状態であれば足りると解されるから、本件特許発明1が「実際上、明らかに実施できない発明」であるということはできない。
また、上記第2の2(1)ウに示した本件明細書の【0146】には、本件明細書等に開示された実施形態の品質判定装置により、品質を回復されることが可能であることが記載され、実施形態の具体的内容については、本件明細書等において十分に説明されている。
よって、本件特許に係る発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
イ 不明確・進歩性に関する主張について
Y意見書における「完全に元通りとまではいかないまでも、ある程度は回復させることが可能」という主張について、明細書等に特段の説明がないとしても、上記アに説示したように「回復」の語義自体から明らかと言える。
また、部分的にでも回復するのであるから、劣化の抑制とは明らかに区別される。
すると、本件特許発明1と甲1~3発明との間には明らかな差異があり、本件特許発明1は進歩性を有する。
ウ サポート要件に関する主張について
本件特許発明1に係る品質判定装置は、少なくとも「前兆条件」が「上記対象物品(7)の状態が、該対象物品(7)の品質を回復させることが可能な状態であることを示す条件」である場合に限られる。してみると、内部環境の変化の大きい家庭用冷蔵庫にある程度成熟した青果物用の食品を収容する場合のような、収容された青果物の状態を回復させることができない用途(Y意見書の5(4)(4-1)(c))が、本件特許発明1に含まれないことは、請求項1の記載自体から明らかである。一方、本件特許発明1の特定事項を充足する限り、輸送用コンテナ以外の用途も当然に含まれうる。
加えて、本件明細書の【0300】には、「また、この庫内環境制御システム(10)の設置対象は、輸送用コンテナ(1)に限定されない。つまり、この庫内環境制御システム(10)は、例えば、冷蔵倉庫や、業務用の冷蔵庫などに設置されてもよい。」と記載されており、輸送用コンテナに用途が限定されないことが明らかである。
よって、本件明細書には、本件特許発明1に係る品質判定装置が輸送用コンテナに限らず様々な用途に使用できることが記載されており、コンテナ以外の用途を含む範囲まで発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することはできないとの申立人の主張は失当である。
エ 以上ア~ウのとおりであるから、申立人の主張はいずれも採用することができないものである。
3-10 小括
以上3-1~3-9により、本件特許発明1、2、4、6、9~13、15~18に係る特許は、特許法第29条第1項、同法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
また、本件特許発明1、2、4、6、9~13、15~18に係る特許は、特許法第29条第1項柱書き、同法第36条第6項第1号、同法第36条第6項第2号、同法第36条第4項第1号の規定に違反してされたものではない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 本件特許発明10、11、15~18
申立人は、特許異議申立書において、本件特許発明10、11、15~18について甲1に記載の発明、及び周知技術(甲7)に基づく進歩性欠如を主張している。
申立人の主張するように、甲1の【0077】には、光センサ及びガスセンサによる判定結果を組み合わせた演算式を形成して、最適な判断処理を行うこともできることが記載されている。しかしながら、当該演算式に「ガスセンサ20」の出力(構成H1の「環境情報」に相当)及び「環境指標の設定値」(構成H2、H3)を入力することによって算出した「光センサにより検出されたる赤色光の光強度」、「光センサにより検出されたる緑色光の光強度」及び「光センサにより検出されたる青色光の光強度」(構成10A、10B、H3の「状態指標」に相当。上記3-1(1-1)イを参照)の推定値に基づいて「早めに食べるべき状態」であるか否かを判定する構成について、甲1には記載も示唆もされていない。
また、甲7は、特徴量に基づき、受精卵Fの品質を判定する技術に関する文献であり、上記構成に対する示唆は全く見当たらない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
2 本件特許発明12について
申立人は、特許異議申立書において、本件特許発明12について甲1に記載の発明、甲3及び周知技術(甲5)に基づく進歩性欠如を主張している。
しかしながら、少なくとも上記1で説示した構成について、甲1、3及び5のいずれにも記載も示唆もされていないから、申立人の上記主張は採用できない。
3 本件特許発明13について
申立人は、特許異議申立書において、本件特許発明13について甲1に記載の発明及び甲5に基づく進歩性欠如を主張している。
しかしながら、少なくとも上記1で説示した構成について、甲1及び5のいずれにも記載も示唆もされていないから、申立人の上記主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては本件請求項1、2、4、6、9~13、15~18に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、2、4、6、9~13、15~18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700560