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特許異議申立

2022-700801

金属試料中の介在物および/または析出物の分析方法、および、金属試料中の介在物および/または析出物の捕集方法

審判番号
2022-700801
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-062709
登録番号
7020447
請求日
2022年08月12日
審決日
2023年11月28日
公報発行日
2024年02月22日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】JFEスチール株式会社
  • 【権利者代理人】磯村 哲朗
  • 【権利者代理人】熊坂 晃
  • 【権利者代理人】坂井 哲也
  • 【権利者代理人】森 和弘
  • 【異議申立人】古川 慎二
審判長/審判官
  • 審判長 樋口 宗彦
  • 審判官 櫃本 研太郎
  • 審判官 石井 哲
分類
P1652.113-YAA(G01N) / P1652.121-YAA(G01N) / P1652.536-YAA(G01N) / P1652.537-YAA(G01N) / P1652.851-YAA(G01N)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第7項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7020447号発明「金属試料中の介在物および/または析出物の分析方法、および、金属試料中の介在物および/または析出物の捕集方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7020447号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項3について訂正することを認める。 特許第7020447号の請求項3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7020447号の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成31年3月28日に出願され、令和4年2月7日にその特許権の設定登録がされ、令和4年2月16日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和4年8月15日 : 特許異議申立人 古川慎二(以下「申立人」という。)による請求項3に係る特許に対する特許異議の申立て 令和4年10月31日付け : 取消理由通知書 令和5年1月4日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和5年3月8日 : 申立人による意見書の提出 令和5年6月12日付け : 取消理由通知書(決定の予告) 令和5年8月8日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和5年6月12日付け取消理由通知書(決定の予告)の写し、同年8月8日提出の特許権者による意見書・訂正請求書・訂正特許請求の範囲の各副本を、同年9月13日付けで申立人に送付するとともに期間を指定して意見を求めたが、申立人から期間内に応答はなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和5年8月8日提出の訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)による訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)の請求の趣旨は、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項3について訂正することを求めるものであって、本件訂正請求による訂正の内容は、以下の訂正事項1からなる。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項3において、「洗浄後の金属試料を分散溶液に浸漬し、」という記載を、「洗浄後の金属試料を分散溶液である析出物分散用のメタノール液に浸漬し、」に訂正する。 また、特許請求の範囲の請求項3において、「前記分散溶液をろ過して分散溶液中の介在物および/または析出物を捕集する捕集工程と、」という記載を、「前記分散溶液を、PTFE製メンブレンフィルタによりろ過して分散溶液中の介在物および/または析出物を捕集する捕集工程と、」に訂正する。 また、特許請求の範囲の請求項3において、「金属試料中の介在物および/または析出物の捕集方法。」という記載を、「、前記介在物および/または析出物に含まれるリン化物の析出物量を分析するための金属試料中の介在物および/または析出物の捕集方法。」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無 (1)訂正の目的の適否 訂正事項1は、分離工程について、分散溶液が「析出物分散用のメタノール液」であることを限定し、捕集工程について、「PTFE製メンブレンフィルタにより」ろ過することを限定し、さらに捕集方法の目的を「前記介在物および/または析出物に含まれるリン化物の析出物量を分析するため」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮であって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (3)新規事項の有無 訂正事項1は、本件特許に係る出願の願書に添付した明細書の段落【0035】における「電解液から引き揚げた被検試料は、付着した電解液を除去するために、直ちに清浄なメタノール溶液に浸し、すぐに引き上げるすすぎ操作を行った後、析出物分散用のメタノール液中に入れ、超音波を印加して析出物を被検試料から分離し、メタノール液中に分散させた。」との記載に基づいて分離工程の内容を限定するとともに、段落【0035】における「次いで被検試料を取り出したのち、分散液中に分散させた析出物を、公称0.2μm孔径のPTFE製メンブレンフィルタに濾過捕集した。」との記載に基づき捕集工程において、分散溶液を、PTFE製メンブレンフィルタによりろ過することを限定し、さらに、段落【0033】における「当該鉄鋼試料は、析出物としてリン化物(リン化鉄)を多量に析出するが、化学的に不安定であり、析出物が電解液中に溶解する。そこで、本発明の分析方法を用いて以下の手順で析出物量を求めた。」との記載及び段落【0036】における「捕集した析出物は、硝酸と塩酸の混合溶液で分解し(なお、分解後PTFEフィルタは取り出した。)、ICP発光分光分析法によりリンの定量を行った。得られた溶液濃度と、電解量から、各電流密度条件における当該鉄鋼試料中の析出物量(析出P量)を求めた。その結果を図1に示す。」との記載に基づき、介在物および/または析出物に含まれるリン化物の析出物量を分析するための捕集方法であることを限定する訂正である。 したがって、訂正事項1は、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでないから、本件特許に係る出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において訂正するものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (4)独立特許要件 本件特許異議の申立ては、訂正前の請求項3に対してされているから、訂正前の請求項3に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 (5)小括 上記のとおり、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項3について訂正することを認める。 第3 本件訂正発明 上記第2のとおり、本件訂正請求による、請求項3についての訂正が認められた。訂正後の本件特許の請求項3に係る発明(以下、「本件訂正発明3」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項3】 金属試料を非水溶媒系電解液中で電解する電解工程と、 電解後の金属試料に付着している電解液を除去する洗浄工程と、 洗浄後の金属試料を分散溶液である析出物分散用のメタノール液に浸漬し、金属試料表面から介在物および/または析出物を分散溶液中に分離する分離工程と、 前記分散溶液を、PTFE製メンブレンフィルタによりろ過して分散溶液中の介在物および/または析出物を捕集する捕集工程と、 を含む、前記介在物および/または析出物に含まれるリン化物の析出物量を分析するための金属試料中の介在物および/または析出物の捕集方法。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 令和5年1月4日提出の訂正請求書により訂正された請求項3に係る特許に対して、当審が令和5年6月12日付けで特許権者に通知した取消理由(以下、単に「取消理由」という。)の要旨は、次のとおりである。 (1) 取消理由(進歩性) 請求項3に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、甲第5号証及び甲第8号証の記載に裏付けられる周知技術及び甲第5号証に記載の技術事項から当業者が容易に発明をすることができたものである。また、請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証記載の技術事項及び甲第5号証及び甲第8号証の記載に裏付けられる周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)取消理由において引用した甲号証 甲第1号証:特公昭55-29386号公報(以下「甲1」という。) 甲第2号証:再公表特許WO2009/131175号公報(以下「甲2」という。) 甲第5号証:特開2004-198144号公報(以下「甲5」という。) 甲第8号証:千野淳、外2名、“鋼中リン化物の抽出定量法及びその析出挙動調査”、「鉄と鋼」日本鉄鋼協会第105回講演大会 講演概要集(I)、社団法人日本鉄鋼協会、昭和58年3月1日、Vol.69、No.4、表紙、第29、300頁(以下「甲8」という。) (3)その他の甲号証 甲第3号証:特開2009-8584号公報(以下「甲3」という。) 甲第4号証:特開2010-127791号公報(以下「甲4」という。) 甲第6号証:特許第4103661号公報(平成20年6月18日発行。以下「甲6」という。) 甲第7号証:本件特許の特許査定前の審査段階で特許出願人(現特許権者)が審査官宛てに提出した意見書(提出日:令和3年10月21日)及び提出日が記載された経過情報(以下「甲7」という。) 2 各甲号証の記載 (1)甲1 ア 甲1の記載 本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である甲1には、図面とともに次の事項が記載されている(ここで記載された「ろ過」および「ろ別」における「ろ」は、甲1では、偏(へん)がさんずい、旁(つくり)が戸の漢字で記載されている。下線は当審において付与した。以下同様である。)。下線は特に引用した箇所を示すべく当審にて付した(以下同様)。 (ア) 「特許請求の範囲 1 金属試料をセツトした電解槽下部とろ過器よりなる複数個のユニツトを各々搬送台に保持して移動させ、その内の1個のユニツトと電極を内蔵した電解槽上部とを一体として電解槽を形成させ、前記電解槽に電解液を加えて電解を行ない、電解終了後電解液を吸引・除去し洗浄をしたのち、さらに洗浄液を加えてから前記電解槽上部からユニツトを取外し、搬送台により移動させその移動させた所で金属試料および洗浄液に超音波振動を与えて介在物をフイルター上に吸引捕集し、その間つぎのユニツトが電解槽上部と一体化して電解を行なう、かかる操作を順次各ユニツトに対して自動的に繰返すことを特徴とする金属中非金属介在物の自動電解抽出分離方法。」(第1欄第19-33行) (イ) 「本発明は金属中における酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、りん化物、金属間化合物あるいは金属マトリツクス以外の金属相など(以下、本発明ではこれらを非金属介在物と総称する)の電解抽出分離のための実用的な自動化方法および装置を提供するものである。 一般に実用されている金属および合金には金属マトリツクス以外に非金属介在物が存在し、金属および合金の諸性質に大きな影響を及ぼしている。従って金属製造工程の改良や新規の金属を開発するにはその正確な分析法が是非とも必要である。その分析法は非金属介在物の量、化学組成、結晶構造、粒度、分布状態を解明することを目的としている。現行の非金属介在物の分析法は手法的には二分され、抽出分離(金属マトリツクスを選択的に溶解除去して、対象とする非金属介在物を分離すること)して分析する方法と金属試料を直接的に分析する方法とにわけられる。最近X線マイクロアナライザーのように、後者の直接的分析方法も多く用いられるようになつてきているが、局所的かつ二次元的な情報しかえられないため金属試料中の非金属介在物の平均的な量をはじめ、化学組成、結晶構造、粒度などを容易に知ることができる抽出分離分析法が多用されている。この方法は抽出分離する段階と抽出分離した残さを分析する段階にわけられ、非金属介在物を金属マトリツクスから分離したのちは通常のあらゆる分析法、たとえば、抽出分離残さの重量測定、元素分析、光学・電子顕微鏡観察、X線回折分析、赤外線吸収分析、熱分析、X線マイクロアナライザー分析、粒度分布測定などを駆使して目的とする非金属介在物のいろいろな情報が得られる。」(第2欄第9行-第3欄第3行) (ウ) 「ろ過器付電解槽3は第1図およびその主要部は第2図に示した。この部分は本発明の特徴とするところであり、ろ過器付電解槽下部と電解槽上部とに分割した形になつている。第2図などからわかるように、電解槽下部19となる部分と吸引ろ過器20となる部分が一体化してユニツト10を形成し、それぞれを多数個(この場合12個)ターンテーブル1上にならべる。このユニツト10はターンテーブル1の昇降器12によって順番に、上部で別に固定している電解槽上部21と合体し電解槽3を形成し、電解を実施するものである。 ユニツト10はガラスフイルター付吸引ろ過器20、有機質ミクロフイルター22、環状すのこ型試料架台23、該試料架台にのせられた金属試料24、電解槽下部19からなり、吸引ろ過器20の吸引口18は電解液・洗浄液排出装置6の管に接続している。」(第5欄第20-36行) (エ) 「電解槽上部21は白金陰極26、電解液導入管27、洗浄液導入管28、特殊型電極29(第2図のように参照電極と白金陽極が一体となつたもの)、不活性ガス導入管30を電解槽上部用ふた部31でそれぞれ保持されており、ターンテーブル1上の支持棒11にテトラフルオロエチレン樹脂保持固定具32を介して設定されている。」(第6欄第5-11行) (オ) 「超音波振動子5は電解後の金属試料表面に付着している残さを落すために用いるものである。従来、介在物を試料から落す場合にはハケか指などを用いていたが、超音波振動を使用した方がより完全に試料表面の残渣を脱落させることができる。 本発明の特徴の一つである超音波剥離方法は第4図に示すように自動化に適するように、ホーン型振動子40とリング型電歪振動子41を組み合せる方式をあらたに考案して採用した。すなわち、ホーン型振動子40(ステンレス製、上部径38mm、下部径20mm、長さ120mm、フエライト系の振動子と接続、共振周波数20KHz)とその下端が中心にくるようにテトラフルオロエチレン樹脂製保持具42に支えられたリング型電歪振動子41(チタン酸ジルコン酸鉛、表面樹脂コーテイング、外径51mm、内径45mm、長さ20mm、共振周波数20KHz)を第4図で示すように組み合せて、それぞれの端子(リング型の場合43)を超音波発生装置7(最大出力100W、発振周波数20KHz)に結線し、使用することにした。この振動子を用いる剥離方法は電解終了後、つぎの新しい試料が電解を行なつている間に、その隣で電解槽上部(当審注:13欄の記載(「19・・・電解槽下部」)及び第2図・第4図から、「電解槽下部」の誤記と認められる。)19の中に、組み合わさつた2つの振動子を第4図に示すように中央部に金属試料24がくるような位置になるように設置して、超音波振動が良好に金属試料24に伝わるようにして、水あるいはアルコール中で同時に超音波をかけて試料表面に付着している残さを落し、時々先端がリング状になつており、その外側および内側に細孔をあけた洗浄液導入管44より洗浄液を出して洗浄し、あらかじめ設置してある有機質ミクロフイルター22上に吸引ろ別する。」(第7欄第28行-第8欄第15行) (カ) 「電解液・洗浄液排出装置6の詳細について説明する。本装置は非常に微細な粒子の介在物残さの捕集には目孔の小さい(0.2μ程度)フイルターが必要で、たとえば有機質ミクロフイルター(市販のゲルマンフイルター、ニユークルポアフイルターなど)などがある。このような目孔の小さいフイルターの使用は、吸引しなければほとんど電解液はもれることがないため、ろ過器下部にコツクを付ける必要もなく、より自動化に適したものであるが、一方溶液をろ過する場合には吸引操作が必要である。 本発明者らは操作の迅速化などを考慮して、吸引ろ別方式を採用することにしたわけであるが、吸引ろ過は一般に1lの吸引びんなどを使ってその中にろ過溶液を捕集していたが、本発明のように自動操作の場合はそれぞれの部分をなるべくコンパクトにする必要から、吸引びんも小型にして吸引ろ別と排出を同時に行なわせることにした。装置の詳細は第5図に示すとおりであり、あらかじめ多数(この場合12個)のユニツト10の吸引びんの排出口18と第5図に示すようにターンテーブルの中心軸に固定され、ターンテーブルと共に回転する円盤45の同心円上に一定間隔で多数(この場合12個)あけられた孔46と直結した管47と接続する。その下部円盤45上にターンテーブル1の回転では動かず、別に固定されている上部円盤48が下部円盤45と同心円状に設定されており、この上部円盤48には同心円線上に2つの孔49(この場合30°の間隔)があけられてあつて、これらの孔49は溶液留容器50をとおつて吸引ポンプ51までの配管52と連結している。下部円盤45の孔46と上部円盤48の孔49とは順次それぞれ一つずつターンテーブルの回転によつて合うようになつている。まず、電解終了後容液留容器50を介して吸引ポンプ51に連通する電磁コツク54が開となつて、ユニツト10の吸引びん53が吸引され、上部円盤48の一方の孔より電解液および洗浄液が排出されたのち、ユニツト10がターンテーブル1によって搬送(この場合30°)されて、この部分でアルコール中で介在物が超音波振動子、40,41によつて落され、電磁コツク55を開いて吸引びん56より上部円盤48の別の孔より洗浄液を排出し、有機質ミクロフイルター22上に介在物残さを捕集する。」(第8欄第16行-第9欄第16行) (キ) 「制御プログラムの一例を第6,7図に示す。第6図は試料交換、電解、吸引ろ過操作などを行なうプログラムで、第7図は試料表面から介在物を超音波によつて落す操作を示すプログラムである。第6図の出力No.1のターンテーブル回転信号によつてターンテーブル1がまわり、電解槽下部19と吸引ろ過器20のユニツト10がつぎのユニツトにおきかわり、そのユニツトはターンテーブルの昇降器12にのつて上昇し、ターンテーブル1と固定した支持棒11によつて所定位置にあらかじめ設置してある電解槽上部21と嵌合する。特殊型電極29は金属試料24と良好に接触する。出力No.3で第7図の介在物残さ剥離操作のプログラム作動信号を送る。出力No.4で電解の回数を数える。ついで出力No.5で電解液の所定量(250mlが標準、電解液としては、たとえば、10%アセチルアセトン-1%テトラメチルアンモニウムクロライド-メチルアルコール溶液などを用いる)を電磁コツク16を開にすることによつて注入する。出力No.6,7の電解装置のリセツト信号により、電解装置が稼動できるようにし、出力No.8の電解開始信号によつて電解を開始する。このあと指定量(標準は0.5g)まで電解が行なわれる。 電解が終了すると電解装置からの信号によつてプログラムタイマーはつぎの工程に移り、出力No.9の吸引が行なわれる。吸引は吸引用ポンプ51を用いることにし、その配管52途中に電磁コツク54をおきそのコツクを開とすることによつて吸引が開始できるようにした。この場合の吸引は電解液の除去のためである。つぎに出力No.10の洗浄液(この場合アルコール)の注入に移り、電磁コツク15を開いて金属試料24および電解槽3内壁を洗浄し、電磁コツク54を開にして吸引ろ過をする。この吸引、洗浄操作を3回繰り返し行なつたのち、吸引びん53内の減圧状態を解消するため、出力No.11の電磁コツク57を開いて大気圧にもどす。出力No.10の洗浄液注入の電磁コツク15を開いて金属試料24が洗浄液に充分に浸る量約200mlを入れる。つぎに出力No.12のターンテーブルの昇降器12を下降し、出力No.lのプログラムにもどる。ここで、前述した出力No.3のプログラム2への信号は第二番目の電解が開始するときに初めて入るようにする。 すなわち、このターンテーブル1の回転は時計方向なので、第一番目の電解が開始したときは、その1つ前のユニツトにある試料は電解する順番としては最後になるのでまだ終つてないため、第7図のプログラム2には移ることができないため、第一番目の電解が終了したあとに始めて第7図のプログラム2が作動するようにする。 第6図のプログラム1の第二番目の電解を行なうのと平行して、第7図のプログラム2が作動し、出力No.1,2はホーン型超音波振動子40とリング型超音波振動子41が振動を開始し、金属試料24表面に付着している介在物を洗浄液中に落す。出力No.3で吸引ポンプ51に通じている電磁コツク55を開けて洗浄液を吸引ろ過し、介在物をフイルター上に捕集する出力No.4では電磁コツク58を開にして吸引びん内を大気圧にもどす。出力No.5では洗浄液用の電磁コツクを開けて洗浄液を約200ml注入する。再び出力No.1の超音波振動を行なう。このような操作を3回繰り返し行なつて試料に付着している介在物を完全に落す。最後に出力No.3で吸引ろ別を行ない、出力No.4で大気圧にもどしたのち、出力No.5で洗浄液を約10ml注入して一工程を終了する。プログラムタイマーは出力No.1に戻りつぎの作動信号がくるまでそのまま停止する。」(第9欄第27行-第11欄第7行) (ク) 「本装置を用いて金属試料中の介在物を抽出分離した結果の例として、鋼試料中のセメンタイト、炭化ニオブを抽出分離し、それぞれを定量し、結果を第1表および第2表に示した。」(第11欄第17行-第20行) (ケ) 「第2図 [図:0001406675000001.jpg] 」 (コ) 「第4図 [図:0001406675000002.jpg] 」 (サ) 「第5図 [図:0001406675000003.jpg] 」 (シ) 「第6図 [図:0001406675000004.jpg] 」 イ 看取・認定事項 (ア)第2図の記載から、以下の事項を読み取ることができる。 「洗浄液導入管28が金属試料24の上部に位置していること」 (イ)上記ア(キ)及び第6図の「工程No.」「8」~「10」に関する記載から、以下の事項を読み取ることができる。 「電解液の除去のため、吸引口18を有する吸引びん53が、電解液・洗浄液排出装置6の吸引ポンプ51を用いて60秒間吸引され、つぎに洗浄液(アルコール)の注入に移り、金属試料24およびろ過器付電解槽3内壁を洗浄し、洗浄液(アルコール)の注入から2秒後に60秒間の吸引ろ過をすること」 ウ 甲1発明 上記ア~イよれば、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。 「金属中における酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、りん化物、金属間化合物あるいは金属マトリツクス以外の金属相など(以下、これらを非金属介在物と総称する)を、非金属介在物の量、化学組成、結晶構造、粒度、分布状態を解明することを目的とする分析のために、フイルター上に吸引捕集する方法であって、 ガラスフイルター付吸引ろ過器20、有機質ミクロフイルター22、環状すのこ型試料架台23、該試料架台にのせられた金属試料24、電解槽下部19からなり、ガラスフイルター付吸引ろ過器20の吸引びん53の吸引口18が電解液・洗浄液排出装置6の管に接続しているユニツト10を、多数個ターンテーブル1上にならべ、このユニツト10は、ターンテーブル1の昇降器12によって順番に、上部で別に固定している電解槽上部21と合体しろ過器付電解槽3を形成し、電解を実施するものであり、 電解槽上部21は、白金陰極26、電解液導入管27、洗浄液導入管28、特殊型電極29、不活性ガス導入管30を電解槽上部用ふた部31でそれぞれ保持しており、 ユニツト10はターンテーブル1の昇降器12にのつて上昇し、ターンテーブル1と固定した支持棒11によつて所定位置にあらかじめ設置してある電解槽上部21と嵌合し、特殊型電極29は金属試料24と良好に接触し、洗浄液導入管28は金属試料24の上部に位置し、ユニツト10を電解槽上部21と合体して形成されたろ過器付電解槽3に電解液(10%アセチルアセトン-1%テトラメチルアンモニウムクロライド-メチルアルコール溶液)を注入して電解を行ない、 電解終了後、電解液の除去のため、吸引口18を有する吸引びん53が、電解液・洗浄液排出装置6の吸引ポンプ51を用いて60秒間吸引され、つぎに洗浄液(アルコール)の注入に移り、金属試料24およびろ過器付電解槽3内壁を洗浄し、洗浄液(アルコール)の注入から2秒後に60秒間の吸引ろ過をし、この吸引、洗浄操作を3回繰り返し行なつたのち、吸引びん53内を大気圧にもどし、 洗浄液(アルコール)を金属試料24が洗浄液に充分に浸る量入れ、ターンテーブル1の昇降器12を下降し、ユニツト10がターンテーブル1によって搬送されて、ユニツト10がつぎのユニツトにおきかわり、そのユニツトがターンテーブル1の昇降器12にのつて上昇し、電解槽上部21と嵌合し、つぎの新しい試料が電解を行なつている間に、その隣で電解槽下部19の中に、ホーン型振動子40とリング型電歪振動子41を設置して、超音波振動が良好に金属試料24に伝わるようにして、洗浄液(アルコール)中で同時に超音波をかけて金属試料24表面に付着している非金属介在物を洗浄液中に落し、 洗浄液を吸引ろ過し、非金属介在物を有機質ミクロフイルター22上に捕集する、方法。」 (2)甲2 ア 甲2の記載 本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である甲2には、図面とともに次の事項が記載されている。 (ア) 「【0001】 本発明は、フィールドフローフラクショネーション(FFF: Field Flow Fractionation)法を利用した金属材料中微粒子(析出物及び非金属介在物)の粒度測定方法に関する。」 (イ)「【0016】 本発明は、金属材料中に含まれる微粒子のサイズ及び個数密度を迅速かつ正確に定量解析することができ、好ましくは、微粒子の組成及び結晶構造も迅速かつ正確に定量解析することができる金属材料中微粒子の粒度分布測定方法を提供することを目的とする。」 (ウ) 「【0025】 そこで、発明者らは、粒子のサイズ毎に篩い分けてから、撮影することを検討した。しかし、従来の金属製篩網であれば、最小でも20μmほどが、現在手に入る一番小さいものであり、これより小さいサイズは、サイズ毎に分けることが困難である。そこで、本発明者らは、測定対象は20μm以下の微粒子を、サイズ毎に篩い分ける方法に特化して研究を重ねた。 ・・・ 【0028】 このようにして、複数の分離分析手段を実際に試しながら、最終的にサイズ毎に篩い分ける方法として実用化に耐えるのが、フィールドフローフラクショネーション(FFF:Field Flow Fractionation)法であることに辿り着くことができた。 【0029】 本発明では、金属材料中の微粒子の個数密度を迅速かつ再現性よく定量するために、予め微粒子をサイズ毎に、篩い分ける。 【0030】 図1に本発明の一実施形態に係る金属材料中微粒子の粒度分布測定方法の基本フローを示す。本実施形態の実施に用いる微粒子分析装置は、鋼中粒子抽出装置1と、粒子微細分散装置2と、FFF装置3と、を主に備える。本実施形態に係る粒度分布測定方法では、まず始めに、鋼中粒子抽出装置1を用いて金属材料中に含有される微粒子を安定的に抽出する。次に、粒子微細分散装置2で、上述した金属材料中の微粒子を溶液中に凝集させることなく微細分散させる。そして、溶液中に微細分散させた金属材料中の微粒子をFFF装置3に入れて、微粒子のサイズ別篩い分けとサイズ測定と個数密度測定を行う。このFFF装置3の作用の例を以下に示す。」 (エ) 「【0033】 鋼中粒子抽出装置1は、金属中から微粒子を安定的に抽出する装置である。図2は、鋼中粒子抽出装置1の一例を示す図である。本実施形態における金属試料中の微粒子の抽出方法は、例えば、酸溶液中で鉄鋼試料の鉄マトリックスを溶解する酸分解法、ヨウ素メタノール混合溶液あるいは臭素メタノール混合溶液中で鉄鋼試料の鉄マトリックスを溶解するハロゲン溶解法、非水溶媒系定電流電解法、又は、非水溶媒系定電位電解(SPEED:Selective Potentiostatic Etching by Electrolytic Dissolution Method)法等である。これらの内、SPEED法は、溶媒中に微粒子が分散された際に、組成やサイズの変化が起こり難く、不安定な微粒子でも安定的に抽出できるため好適である。SPEED法の内容は、例えば非特許文献4に記載されている。本実施形態に関して、非水溶媒系定電位電解法(SPEED法)による鉄鋼材料中の微粒子の評価方法を例に取り、説明を行うが、本発明における抽出の方法はSPEED法に限定されるものではなく、また、金属材料は鉄鋼材料に限定されるものではない。 【0034】 まず初めに、金属試料4を、例えば、20mm×40mm×2mmの大きさに加工して、表層のスケール等の酸化皮膜等を化学的研磨又は機械的研磨等により除去し、金属層を出しておく。逆に、酸化皮膜層に含まれる微粒子を解析する場合は、そのままの形態で残しておく。 【0035】 次に、この金属試料4を、SPEED法を用いて電解する。具体的には、電解槽10に電解溶液9を満たし、その中に金属試料4を浸漬させて、参照電極7を金属試料4に接触させる。白金電極6と金属試料4を電解装置8に接続する。一般的に上記電解法を用いると、金属試料4のマトリックスとなる金属部分の電解電位に比べて、析出物等の鋼中微粒子の電解電位は、高い電解電位を持つ。そこで、電解装置8を用いて金属試料4のマトリックスを溶解し、かつ析出物等の微粒子を溶解しない電解電位の間に、電圧を設定することにより、マトリックスのみを選択的に溶解することが可能となる。電解抽出粒子5が金属試料4の表層部及び電解溶液9中に分散する。 【0036】 その後、電解溶液9中に分散した電解抽出粒子5をろ過によって分離捕集し、この電解抽出粒子5を、金属試料4と共に清浄な溶媒中に入れる。そして、これらに超音波照射等を行うことにより、金属試料4の表層部分に付着していた電解抽出粒子5を金属試料4から離脱させる。この結果、金属試料4から抽出された電解抽出粒子5を含む粒子抽出溶液が得られる。溶媒としては、水系、有機溶媒系等問わないが、介在物等の電解抽出粒子5を溶解せず安定的に保持するために、有機溶媒が好ましい。有機溶媒の中でも、特に、アルコール系溶媒、例えば、メタノール及びエタノール等は容易に入手でき、安定性が高い。 【0037】 従来の定電位電解法では、例えば、10質量%アセチルアセトン(以降“AA”と称す)-1質量%テトラメチルアンモニウムクロライド(以降“TMAC”と称す)-メタノール溶液、又は10質量%無水マレイン酸-2質量%TMAC-メタノール溶液が電解溶液として用いられている。また、サリチル酸メチル等の金属イオンとキレート錯体を形成するキレート試薬と、テトラメチルアンモニウムクロライド(TMAC)等の電流を流すための電解質を、非水溶媒であるメタノール溶媒に溶かしこんだ電解溶液として用いられることもある。これらの電解溶液は、作業性及び抽出安定性の観点で好ましいため、多用されている。」 (オ) 「【0041】 図3は、粒子微細分散装置2に用いる溶液の作成法の一例を示す図である。上述のように、超音波照射等を経て作製された粒子抽出溶液13、即ち鋼中粒子抽出装置1を用いて金属試料4から抽出した電解抽出粒子5を含む粒子抽出溶液13を、溶液保持容器11に入れ、更に、電解抽出粒子5を微細に分散させるために、分散剤12を添加する。分散剤としては、例えば界面活性剤を用いる。また、ゼータ電位をPHで調整したりすることにより、電解抽出粒子5の表面の電位を上げて分散させることも可能である。但し、分散剤として主に界面活性剤を用いる方が効果的である。」 (カ) 「【0045】 そして、これらの多種の界面活性剤の有効性について種々検討を行った結果、アニオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤の両方とも、分散剤12として有効であることが判明した。その中でも、比較的入手し易く、生物化学分野等で活用されているラウリル硫酸ナトリウム(C12H25NaO4S:SDS(sodium dodecyl sulfate))等の硫酸のモノ長鎖アルキルエステルのナトリウム塩が好ましい。歯磨き粉、シャンプー等の日用品としても使用され、人体に安全で安価なためである。」 (キ) 「【0047】 鋼等の金属材料4から抽出した介在物等の電解抽出粒子5を含む粒子抽出溶液13を、約1mlから20ml、好ましくは10mlほど試験管等の溶液保持容器11に採取して、SDSの濃度が0.0001質量%~10質量%、好ましくは0.05質量%以下の分散液12を2ml添加して、超音波を1分~10分、好ましくは3分ほど照射して分散させる。・・・ ・・・ 【0049】 このようにして電解抽出粒子5が分散した溶液が得られるが、この溶液に含まれる電解抽出粒子5のサイズは幅広く、測定方法によっては、粗大な電解抽出粒子5が、FFF装置3の内部の小穴をふさいだり、フィルターをふさいだりする可能性がある。このため、事前に粗大な電解抽出粒子5を取り除くことが好ましい。例えば、数μmメッシュのフィルターで事前ろ過してもよい。また、遠心分離装置で数分以上かけて、1μm以上の粗大な粒子を下方に沈降させ、得られた液の、上方の上澄み液を採取して、FFF装置3にかけてもよい。 【0050】 図4を用いて、FFF法のサイズ分離原理を説明する。FFF装置3の溶離流出液としては、界面活性剤を含む分離溶液を用いて、最初、クロスフロー14と呼ばれる液の流れをセルの上方から下方セルに向かって生じさせながら、分離セル16の左側と右側からも液を流し、その間に微粒子を含むサンプル溶液15を添加する。すると、下方の分離膜21には大きなサイズの大粒子20がクロスフロー14の流れによって押し付けられて張り付く、一方で、比較的サイズが大きな中粒子19及び小さな小粒子18は、クロスフロー14の流れに打ち勝つだけのブラウン運動を起こすため、分離セル16の下側に位置する分離膜21に押し付けられることなく、分離セル16の中にサイズ毎に浮遊する状態になる。これをフォーカシングと呼ぶ。この状態にすることで、分離セル16の中に粒子がサイズ毎に並び替えられることとなる。その後、分離セル16の左右から押し付けていた流れを変えて、チャンネルフロー17により、例えば図4の左から右に向かって分離セル16に存在する粒子を右側に押し出していく。 【0051】 このとき、上から分離膜21に向かって押さえつける役割のクロスフロー14の圧力を徐々にゼロまで減らしていくと、分離膜21に押さえつけられていた粒子が、徐々に小さな粒子から大きな粒子の順で右側から排出される。 【0052】 なお、ここでは、分離するためにクロスフロー液による押さえつけ力とブラウン運動とを組み合わせることにより、サイズ分離する例を示したが、FFFの分離原理としては、この他にも、重力、電場、磁場、温度勾配等をかけることにより、より精密に粒子を分離することができる。 【0053】 サイズ毎に分離された液は、そのままFFF装置3の内部に配置されたレーザ光照射検出部に導かれ、複数角度に設置された光検出器より、レーザ光散乱された光強度を得る。小さな粒子の場合は、角度依存性が非常に少なく全方位散乱現象を示す。一方、粗大な粒子になるにつれて、前方散乱現象が強くなるため、この角度依存性の傾きを取ることにより電解抽出粒子5のサイズを一義的に決定できる。」 (ク) 「【0063】 高Si系鉄鋼試料(Si:3質量%、Mn:0.1質量%、S:0.03質量%、Al:0.03質量%、N:0.01質量%)を20mm×40mm×0.3mmの大きさに加工して、表層のスケール等の酸化皮膜等を化学的研磨により除去し、金属層を出した。このとき、高Si系鉄鋼試料は、製造工程における加熱温度を、通常温度(1000℃)と、通常より約100℃高い高温(1100℃)とした条件で製造した鋼材からそれぞれサンプリングし、2種類の製造条件の異なる金属試料片を作成した。 【0064】 図2に示す鋼中粒子抽出装置を用いて、この金属試料片をSPEED法で電解した。電解液としては、硫化物系を安定的に電解できる3質量%サリチル酸メチル+1質量%サリチル酸+1質量%テトラメチルアンモニウムクロライド+0.05質量%SDS分散剤系を用いた。電解後に金属試料片を軽くメタノールで洗浄して、別の清浄なメタノールを入れたビーカーの中に静置した。電解溶液をフィルターでろ過し、得られたフィルターも上記ビーカーの中に入れて超音波を約1分照射して、金属試料片の表層に析出していた微粒子をメタノール溶液中に分散させた。 【0065】 図3に示す微細分散用の溶液保持容器に、上記で作製した溶液を8ml入れ、0.05質量%SDS分散溶液を2ml添加して、超音波で約5分間照射して分散を行った。 【0066】 図4に示すFFF装置に、分散した溶液を100μl添加して、FFFで測定を行った。結果を図5に示す。図5の横軸は粒径を示し、縦軸は個数密度を示す。図5に示すように、試料の加熱温度を通常と高温の2種類で比較した結果、通常材は、50nm以下に微細な粒子が数多く生じているのに対して、高温で処理した材料は、温度が高過ぎたために、50nm以下の微細な粒子が合体成長して粗大化してしまっていることが判明した。」 (ケ) 「【0069】 図7は、FFF装置でサイズごとに分離してサイズ、個数密度計測を終わった後に排出される溶液を、通常のICP(inductively coupled plasma)質量分析装置を用いて成分分析を行った結果の例を示す。横軸は微粒子のサイズを示す。図7に示すように、約10nmピッチごとに、Al、Cu、Mnの成分変化が起きていることを明瞭に把握することができた。また、ここで得られたサイズごとの排出溶液は、溶液を乾燥した後に、通常のX線結晶構造解析装置(XRD)にて解析すれば、同じくサイズごとに抽出された微粒子の結晶構造に関して情報を得ることができる。」 (コ) 「図4 [図:0001406675000005.jpg] 」 (サ) 「図7 [図:0001406675000006.jpg] 」 イ 認定事項 (ア) 上記ア(ク)において、段落【0064】~【0065】では、「金属試料片」を「電解」して「金属試料片の表層に析出し」た「微粒子」が「メタノール溶液中に分散」した溶液に、「SDS分散溶液」を「添加」した溶液が得られ、段落【0066】では、当該得られた溶液を「FFF装置に」「添加」することが記載されているといえる。 ここで、上記ア(キ)の段落【0047】および【0049】には、「鋼等の金属材料4から抽出した介在物等の電解抽出粒子5を含む粒子抽出溶液13」に、「分散液12」を「添加」して得られた「電解抽出粒子5が分散した溶液」を、「FFF装置」にかける前に、「数μmメッシュのフィルターで事前ろ過」して「事前に粗大な電解抽出粒子5を取り除く」ことが記載されていることを踏まえると、上記ア(ク)において、段落【0064】~【0065】で得られた溶液を「数μmメッシュのフィルターで事前ろ過」して「事前に粗大な」「微粒子」を取り除いた後の溶液を、段落【0066】で「FFF装置に」「添加」しているものと認められる。 (イ)上記ア(ケ)、(サ)によれば、「通常のICP(inductively coupled plasma)質量分析装置を用い」た「FFF装置でサイズごとに分離してサイズ、個数密度計測を終わった後に排出される溶液」の「成分分析」により、「サイズごとに抽出された微粒子」に含まれる各成分の量がICP(inductively coupled plasma)質量分析装置を用いて分析されているものと認められる。 ウ 甲2発明及び甲2に記載された技術的事項 上記アおよびによれば、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)又は技術事項(以下、「甲2記載の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。 「金属材料中微粒子(析出物及び非金属介在物)(単に「微粒子」ともいう。)をサイズごとに抽出し、微粒子に含まれる各成分の量をICP(inductively coupled plasma)質量分析装置を用いて分析するために、微粒子をフィールドフローフラクショネーション(FFF:Field Flow Fractionation)法でサイズ毎に篩い分ける方法であって、 高Si系鉄鋼試料(Si:3質量%、Mn:0.1質量%、S:0.03質量%、Al:0.03質量%、N:0.01質量%)を20mm×40mm×0.3mmの大きさに加工して、表層のスケール等の酸化皮膜等を化学的研磨により除去し、金属層を出して、金属試料片を作成し、 電解槽に電解液を満たし、その中に金属試料片を浸漬させて、参照電極を金属試料片に接触させ、白金電極と金属試料片を電解装置に接続することで、非水溶媒系定電位電解(SPEED:Selective Potentiostatic Etching by Electrolytic Dissolution Method)法で金属試料片を電解し、電解液としては、硫化物系を安定的に電解できる3質量%サリチル酸メチル+1質量%サリチル酸+1質量%テトラメチルアンモニウムクロライド+0.05質量%ラウリル硫酸ナトリウム(C12H25NaO4S:SDS(sodium dodecyl sulfate))分散剤系を用い、 電解後に金属試料片を軽くメタノールで洗浄して、別の清浄なメタノールを入れたビーカーの中に静置し、電解液をフィルターでろ過して電解液中に分散した電解抽出粒子を分離捕集し、得られたフィルターも上記ビーカーの中に入れて超音波を約1分照射して、金属試料片の表層部分に付着していた微粒子を金属試料片から離脱させ、メタノール溶液中に分散させ、 溶液保持容器に、前記微粒子を分散させたメタノール溶液を8ml入れ、0.05質量%SDS分散溶液を2ml添加して、超音波で約5分間照射して分散を行って得られた溶液を、数μmメッシュのフィルターで事前ろ過して事前に粗大な微粒子を取り除いた後の溶液を、FFF装置に添加し、 FFF装置の溶離流出液としては、界面活性剤を含む分離溶液を用いて、最初、クロスフロー14と呼ばれる液の流れをセルの上方から下方セルに向かって生じさせながら、分離セル16の左側と右側からも液を流し、その間に微粒子を含むサンプル溶液15を添加すると、下方の分離膜21には大きなサイズの大粒子20がクロスフロー14の流れによって押し付けられて張り付き、一方で、比較的サイズが大きな中粒子19及び小さな小粒子18は、クロスフロー14の流れに打ち勝つだけのブラウン運動を起こすため、分離セル16の下側に位置する分離膜21に押し付けられることなく、分離セル16の中にサイズ毎に浮遊する状態になり、その後、分離セル16の左右から押し付けていた流れを変えて、チャンネルフロー17により、左から右に向かって分離セル16に存在する粒子を右側に押し出していき、このとき、上から分離膜21に向かって押さえつける役割のクロスフロー14の圧力を徐々にゼロまで減らしていくと、分離膜21に押さえつけられていた粒子が、徐々に小さな粒子から大きな粒子の順で右側から排出され、微粒子のサイズ別篩い分けを行う、方法。」 (3)甲5 ア 甲5の記載 本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である甲5には、次の事項が記載されている。 (ア) 「【0029】 【課題を解決するための手段】 本発明に係る金属試料中の非金属介在物の組成および/または粒径の分析法とは、強酸を用いない化学的溶解法または電気化学的溶解法で金属試料を溶解して得られる溶解残渣と金属ペーストとの混合物にレーザ光を照射して、該溶解残渣中の非金属介在物の組成および/または粒径をレーザ励起-ICP分析法で測定するところに特徴を有する。」 (イ) 「【0044】 非水溶媒定電位電解法や非水溶媒定電流電解法では、溶媒として、一般的に10%アセチルアセトン-1%塩化テトラメチルアンモニウム-メタノール、4%サリチル酸メチル-1%塩化テトラメチルアンモニウム-メタノール、2%トリエタノールアミン-1%塩化テトラメチルアンモニウム-メタノール等が用いられる。これらは、抽出する介在物の種類によって使い分けるのがよい。」 (ウ) 「【0068】 ・・・本発明は、介在物の組成および粒径をレーザ励起-ICP分析法で測定するに際し、前記スライム法、非水溶媒定電位電解法および非水溶媒定電流電解法等の電気化学的溶解法において、電解中断後の金属試料の電解面に粘着テープを押し付けた後、剥して得られる前記非金属介在物の付着した粘着テープを試料としてもよい。 ・・・ 【0070】 具体的には、金属試料の表面を電気分解し、電気分解前の試料表面から約5~15μm深さまでマトリックスが溶解した時点で電解を中断し、金属試料の表面をアルコールで静かに洗浄し、乾燥させた後に、電解された試料表面にカーボン粘着テープ等のような粘着テープを押し付けて、試料表面から露出している介在物を粘着テープに固定し、これをレーザ励起-ICP分析に供する。」 (エ) 「【0082】 蒸発した試料は、高流量のアルゴンキャリアガスにより高速でICP部18に搬送され、ICP部18(図3参照)でイオン化され、質量分析装置19(図3参照)でイオンの個数が計測される。A元素及びB元素は、それぞれ図4の時間曲線5及び6に示される様にマススペクトルとして表わされる。 【0083】 図4に示すピーク7及び8は介在物1に対応し、ピーク9及び10は介在物1’に対応している。尚、図中記号11,12はバックグラウンドを示している。ピーク7~10の斜線部分をそれぞれ積分して得られたピーク面積値を用いて、検量線から介在物1及び1’中のA及びB元素の量をそれぞれ求めることができる。さらに、(AOの質量%)+(BOの質量%)=100であるから、計算により介在物1及び1’の組成(割合)を求めることができる。 【0084】 本発明法は、介在物が、上述の様なA元素,B元素及び酸素からなるAO及びBOの2成分系酸化物である場合に限らず、例えば、1成分または3成分系以上の酸化物や1成分系以上の硫化物、あるいは1成分系以上のりん化物等にも適用することができる。」 イ 甲5に記載された技術的事項 上記アによれば、甲5には、次の事項(以下、「甲5記載の技術事項」という。)が記載されているといえる。 「非水溶媒定電位電解法で金属試料の表面を電気分解し、電気分解前の試料表面から約5~15μm深さまでマトリックスが溶解した時点で電解を中断し、金属試料の表面をアルコールで静かに洗浄し、乾燥させた後に、電解された試料表面にカーボン粘着テープ等のような粘着テープを押し付けて、試料表面から露出している介在物を粘着テープに固定し、これを、試料がICP部18でイオン化され、質量分析装置19でイオンの個数が計測されるレーザ励起-ICP分析に供して、介在物中の元素の量を求め、さらに、介在物の組成(割合)を求める金属試料中の非金属介在物の組成および/または粒径の分析法であって、介在物がりん化物である場合にも適用できる、分析法。」 (4)甲8 ア 甲8の記載 本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である甲8には、表とともに次の事項が記載されている。 (ア) 「1.緒言 従来から鋼の焼き戻し脆性の抑制のためにMo,Ti等を添加することが行われているが、この効果の1因としてMo,Ti等がリン化物を形成しリンの粒界への濃化を抑えるということが考えられてきた。近年,リン化物のSPEED法による観察,析出挙動調査が行われるようになり,リン化物の影響が徐々に解明されるようになってきた。しかしながら,リン化物の定量化手段についてはまだ十分な検討がなされていない。そこで筆者らは,リン化物の定量法を確立し,その析出挙動を明確にするために第1段階としてFe-P系及びFe-Ti-P系鋼種での基礎検討を行った。 2. 実験方法 供試材の化学成分をTable 1に示す。・・・ なお,Sample-1にはFe-P2元系のリン化物,Sample-2にはFe-Ti-P3元系のリン化物がそれぞれ析出していることを電顕により確認した。・・・」 (イ) 「(2)リン化物試薬の10%アセチルアセトン-1%テトラメチルアンモニウムクロライド-メタノール(10%AA系)溶液,1%サリチル酸-1%テトラメチルアンモニウムクロライド-4%サリチル酸メチル-メタノール(4%MS系)溶液への浸漬実験においては溶解はほとんど認められなかった。そこで、10%AA系,4%MS系溶液による電解でリン化物の抽出精度を確認するための実験を行なった。Sample-2に析出したリン化物はいずれの電解液を用いても精度良く抽出でき,抽出物の分析からFe,Ti,Pの量論比はほぼ1:1:1となって電顕による同定結果とほぼ一致した。Sample-1中に析出したリン化物はFe-Ti-P3元系リン化物よりも化学的に不安定で,電解操作を迅速に行う必要があった。」 (ウ) 「Table 1 [図:0001406675000007.jpg] 」 イ 甲8に記載された技術的事項 上記アによれば、甲8には、次の事項が記載されているといえる。 「鋼中に析出したリン化物を、10%アセチルアセトン-1%テトラメチルアンモニウムクロライド-メタノール(10%AA系)溶液,1%サリチル酸-1%テトラメチルアンモニウムクロライド-4%サリチル酸メチル-メタノール(4%MS系)溶液による電解で抽出し、抽出物を分析してリン化物を定量する定量法。」 3 当審の判断 (1)本件訂正発明3と甲2発明との対比及び判断 本件訂正発明3と甲2発明とを対比する。 ア 甲2発明の「金属試料片」は、本件訂正発明3の「金属試料」に相当する。そして、甲2発明の「金属試料片を非水溶媒系定電位電解(SPEED:Selective Potentiostatic Etching by Electrolytic Dissolution Method)法で電解」することは、「金属試料片」を「非水溶媒系」の「電解液」の中で「定電位電解」することであるというのが技術常識であるから、本件訂正発明3の「金属試料を非水溶媒系電解液中で電解する」ことに相当する。 イ 「電解後に金属試料片を軽くメタノールで洗浄」するには、電解後、前記「洗浄」までの間に、「電解液」の「電解槽」からの抜き取り、又は「金属試料片」を「電解液」から取り出す操作を要することが明らかであるところ、甲2発明は、「電解」と、「電解後」の前記「洗浄」との間に、付着した「電解液」を除去し得る格別の工程を含まない。また、「電解後に金属試料片を軽くメタノールで洗浄」した「メタノール」については、「フィルター」による「微粒子」の「ろ過」工程に供されないことや「洗浄」が「軽」いものであることにかんがみて、「電解後に金属試料片を軽くメタノールで洗浄」することで、「金属試料片」の表層部分に付着している「微粒子」まで分離されることが想定されているとはいえない。 以上のことから、甲2発明において、「電解後」の「金属試料片」には、「電解液」が付着しており、「電解後に金属試料片を軽くメタノールで洗浄」することは、「電解後」の「金属試料片」に付着している「電解液」を取り除く(すすぐ)ことを含んでいるといえる。よって、甲2発明の「電解後に金属試料片を軽くメタノールで洗浄」する工程は、本件訂正発明3の「電解後の金属試料に付着している電解液を除去する洗浄工程」に相当する構成を備える。 ウ 甲2発明の「金属材料中微粒子(析出物及び非金属介在物)(単に「微粒子」ともいう。)」は、本件訂正発明3の「介在物および/または析出物」に相当する。 そして、甲2発明の「金属試料片を」「別の清浄なメタノールを入れたビーカーの中に静置し、」「超音波を約1分照射して、金属試料片の表層部分に付着していた微粒子を金属試料片から離脱させ」る工程は、上記イにおける「洗浄」に続く工程であるから、本件訂正発明3の「洗浄後の金属試料を分散溶液である析出物分散用のメタノール液に浸漬し、金属試料表面から介在物および/または析出物を分散溶液中に分離する分離工程」に相当する。 エ 甲2発明の「溶液保持容器に、前記微粒子を分散させたメタノール溶液を8ml入れ、0.05質量%SDS分散溶液を2ml添加して、超音波で約5分間照射して分散を行って得られた溶液」は、「前記微粒子を分散させたメタノール溶液」が、「微粒子」を含む「別の清浄なメタノール」であるから、「微粒子」を含む「別の清浄なメタノール」を含む「溶液」である。 そして、甲2発明の「別の清浄なメタノール」に含まれている「微粒子」には、複数の「サイズ」の「微粒子」が含まれており、「粗大な」「サイズ」である「粗大な微粒子」も含まれているものであるから、上記「微粒子」を含む「別の清浄なメタノール」を含む「溶液」には、「粗大な微粒子」が含まれているものである。 そうすると、甲2発明の「溶液保持容器に、前記微粒子を分散させたメタノール溶液を8ml入れ、0.05質量%SDS分散溶液を2ml添加して、超音波で約5分間照射して分散を行って得られた溶液を、数μmメッシュのフィルターで事前ろ過」することは、「粗大な微粒子」を含む「別の清浄なメタノール」を含む「溶液」を「ろ過」して「粗大な微粒子」を「数μmメッシュのフィルター」に捕捉することであるといえるから、本件訂正発明3の「前記分散溶液を」「フィルタによりろ過して分散溶液中の介在物および/または析出物を捕集する」ことに相当する。 オ 甲2発明の「溶液保持容器に、前記微粒子を分散させたメタノール溶液を8ml入れ、0.05質量%SDS分散溶液を2ml添加して、超音波で約5分間照射して分散を行って得られた溶液を、数μmメッシュのフィルターで事前ろ過して事前に粗大な微粒子を取り除いた後の溶液」は、当該「溶液」を「FFF装置に添加」した場合に、「下方の分離膜21には大きなサイズの大粒子20がクロスフロー14の流れによって押し付けられて張り付き、一方で、比較的サイズが大きな中粒子19及び小さな小粒子18は、・・・分離セル16の中にサイズ毎に浮遊する状態にな」ることから、少なくとも大・中・小粒子からなる複数の「サイズ」の「微粒子」を含む「別の清浄なメタノール」を含む「溶液」であるといえる。 そして、甲2発明の「溶液保持容器に、前記微粒子を分散させたメタノール溶液を8ml入れ、0.05質量%SDS分散溶液を2ml添加して、超音波で約5分間照射して分散を行って得られた溶液を、数μmメッシュのフィルターで事前ろ過して事前に粗大な微粒子を取り除いた後の溶液を、FFF装置に添加」することは、「クロスフロー14と呼ばれる液の流れをセルの上方から下方セルに向かって生じさせながら、分離セル16の左側と右側からも液を流し、その間に」、複数の「サイズ」の「微粒子」を含む「別の清浄なメタノール」を含む「溶液」を「添加」することであるといえる。 また、甲2発明における「微粒子のサイズ別篩い分けを行う」ことは、「下方の分離膜21に」「大きなサイズの大粒子20がクロスフロー14の流れによって押し付けられて張り付」けられることを含む。 してみると、甲2発明の「溶液保持容器に、前記微粒子を分散させたメタノール溶液を8ml入れ、0.05質量%SDS分散溶液を2ml添加して、超音波で約5分間照射して分散を行って得られた溶液を、数μmメッシュのフィルターで事前ろ過して事前に粗大な微粒子を取り除いた後の溶液を、FFF装置に添加し、」「微粒子のサイズ別篩い分けを行う」工程は、複数の「サイズ」の「微粒子」を含む「別の清浄なメタノール」を含む「溶液」を「分離膜21」を有する「分離セル16」に通して「大きなサイズの」「微粒子」を「分離膜21」に捕捉することを含むといえるから、本件訂正発明3の「前記分散溶液をろ過して分散溶液中の介在物および/または析出物を捕集する」工程に相当する構成を備えているものである。 カ 甲2発明の「金属材料中微粒子(析出物及び非金属介在物)(単に「微粒子」ともいう。)を」「フィールドフローフラクショネーション(FFF:Field Flow Fractionation)法でサイズ毎に篩い分ける方法」は、「微粒子」が、「金属材料中」すなわち「金属試料片」中に含まれているものであり、複数の「サイズ」の「微粒子」のうち、上記エおよびオのとおり、大きい「サイズ」の「微粒子」を捕捉する工程を含んでいるから、本件訂正発明3の「金属試料中の介在物および/または析出物の捕集方法」を備えているものである。 キ 以上から、本件訂正発明3と甲2発明とは、次の一致点を有する。 <一致点> 「 金属試料を非水溶媒系電解液中で電解する電解工程と、 電解後の金属試料に付着している電解液を除去する洗浄工程と、 洗浄後の金属試料を分散溶液である析出物分散用のメタノール液に浸漬し、金属試料表面から介在物および/または析出物を分散溶液中に分離する分離工程と、 前記分散溶液をフィルタによりろ過して分散溶液中の介在物および/または析出物を捕集する捕集工程と、 を含む、前記介在物および/または析出物に含まれる各成分の量を分析するための金属試料中の介在物および/または析出物の捕集方法。」 また、本件訂正発明3と甲2発明とは、少なくとも以下の相違点を有する。 <相違点1> 捕集工程について、本件訂正発明3は、「前記分散溶液を、PTFE製メンブレンフィルタによりろ過」するのに対し、甲2発明は、「PTFE製メンブレンフィルタ」との構成を備えていない点。 ク 判断 上記相違点1について検討する。 金属材料中微粒子(析出物及び非金属介在物)を分散させた溶液を事前ろ過して事前に粗大な微粒子を取り除くためのフィルターや、FFF装置の分離セル16の下側に位置する分離膜21に、PTFE製メンブレンフィルタを採用することについて、取消理由において提示した甲1,2,5及び8のいずれにも開示されておらず、その他、申立人が提示した、本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である甲3,4及び6にも開示されていない。また、周知技術であるとも、技術常識であるともいえない。 すると、当業者といえども甲2発明に相違点1に係る構成を具備させることが容易であったということはできない。 ケ 小括 よって、他に相違点があるとしてもそれについて論ずるまでもなく、本件訂正発明3は、甲2発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件訂正発明3と甲1発明との対比及び判断 本件訂正発明3と甲1発明とを対比する。 ア 甲1発明の「金属試料24」は本件訂正発明3の「金属試料」に相当する。また、甲1発明の「電解液(10%アセチルアセトン-1%テトラメチルアンモニウムクロライド-メチルアルコール溶液)」は本件発明3の「非水溶媒系電解液」に相当する。 そして、甲1発明の「ユニツト10はターンテーブルの昇降器12にのつて上昇し、ターンテーブル1と固定した支持棒11によつて所定位置にあらかじめ設置してある電解槽上部21と嵌合し、特殊型電極29は金属試料24と良好に接触し、ユニツト10を電解槽上部21と合体して形成されたろ過器付電解槽3に電解液(10%アセチルアセトン-1%テトラメチルアンモニウムクロライド-メチルアルコール溶液)を注入して電解を行な」うことは、「金属試料24」を有する「ユニツト10」を、「特殊型電極29」を「保持」する「電解槽上部21」と嵌合して、「特殊型電極29」を「金属試料24」に接触させるとともに、「ろ過器付電解槽3」を「形成」し、当該「ろ過器付電解槽3」に「電解液(10%アセチルアセトン-1%テトラメチルアンモニウムクロライド-メチルアルコール溶液)」「を注入し」、「金属試料24」を「電解液(10%アセチルアセトン-1%テトラメチルアンモニウムクロライド-メチルアルコール溶液)」の中で「電解」することであるといえるから、本件訂正発明3の「金属試料を非水溶媒系電解液中で電解する」に相当する構成を備えているものである。 イ 甲1発明の「電解終了後」の「電解液」の「除去」は、吸引ポンプでの吸引なのだから、甲1発明で「電解終了後、」「電解液」が「除去」された後の「金属試料24」には、「電解液」(の成分)が残って(付いて)いることが明らかであると解される。よって、「電解液」が「除去」された後の「金属試料24」を「洗浄液(アルコール)」で「洗浄」することは、「電解終了後」の「金属試料24」に残って(付いて)いる「電解液」を取り除く(すすぐ)ことを含んでいるといえる。 そうすると、甲1発明の「電解終了後、電解液の除去のため、吸引口18を有する吸引びんが、電解液・洗浄液排出装置6の吸引ポンプ51を用いて60秒間吸引され」る工程に続く、「洗浄液(アルコール)の注入に移り、金属試料24およびろ過器付電解槽3内壁を洗浄し、洗浄液(アルコール)の注入から2秒後に60秒間の吸引ろ過を」行う工程は、本件発明3の「電解後の金属試料に付着している電解液を除去する洗浄工程」に相当する。 ウ 甲1発明の「非金属介在物」は、本件訂正発明3の「介在物および/または析出物」に相当する。 そして、甲1発明の、「洗浄」された後の「金属試料24」が浸され、その液中に超音波をかけられて「金属試料24表面に付着している非金属介在物」がその液中に落とされる「洗浄液(アルコール)」は、本件訂正発明3の「分散溶液」に相当する。 そうすると、甲1発明の「洗浄液(アルコール)を金属試料24が洗浄液に充分に浸る量入れ」ることは、本件発明3の「洗浄後の金属試料を分散溶液」「に浸漬」することに相当する。また、甲1発明の「電解槽下部19の中に、ホーン型振動子40とリング型電歪振動子41を設置して、超音波振動が良好に金属試料24に伝わるようにして、洗浄液(アルコール)中で同時に超音波をかけて金属試料24表面に付着している非金属介在物を洗浄液中に落」すことは、本件訂正発明3の「金属試料表面から介在物および/または析出物を分散溶液中に分離する」ことに相当する。 エ 甲1発明の「洗浄液を吸引ろ過し、非金属介在物を有機質ミクロフイルター22上に捕集する」することは、本件訂正発明3の「前記分散溶液を」有機質「フィルタによりろ過して分散溶液中の介在物および/または析出物を捕集する」ことに相当する。 オ 甲1発明の「金属中における酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、りん化物、金属間化合物あるいは金属マトリックス以外の金属相など(以下、これらを非金属介在物と総称する)を」「フイルター上に吸引捕集する方法」は、「非金属介在物」が「金属中」すなわち「金属試料24」中に含まれるものであるから、本件訂正発明3の「金属試料中の介在物および/または析出物の捕集方法」に相当する。 カ 以上から、本件訂正発明3と甲1発明とは、次の一致点を有する。 <一致点> 「 金属試料を非水溶媒系電解液中で電解する電解工程と、 電解後の金属試料に付着している電解液を除去する洗浄工程と、 洗浄後の金属試料を分散溶液である析出物分散用のアルコール液に浸漬し、金属試料表面から介在物および/または析出物を分散溶液中に分離する分離工程と、 前記分散溶液を有機質フィルタによりろ過して分散溶液中の介在物および/または析出物を捕集する捕集工程と、 を含む、金属試料中の介在物および/または析出物の捕集方法。」 また、本件訂正発明3と甲1発明とは、少なくとも次の相違点を有する。 <相違点2> 捕集工程について、本件訂正発明3は、「前記分散溶液を、PTFE製メンブレンフィルタによりろ過」するのに対し、甲1発明は、「PTFE製メンブレンフィルタ」との構成を備えていない点。 キ 判断 上記相違点2について検討する。 上記(1)クで説示した相違点1に対する判断と同様の理由により、当業者といえども甲1発明に相違点2に係る構成を具備させることが容易であったということはできない。 ク 小括 よって、本件訂正発明3は、甲1発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)新規性について 上記(1)ク及び(2)キに説示するように、本件訂正発明3は、取消理由において提示した証拠及びその他申立人が提示した証拠のいずれにも記載されていない構成を有し、甲1や甲2との対比検討において容易想到といえないのだから、当然新規性を有する。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 理由3(実施可能要件) 申立人は、本件特許発明3では、りん化物を精度よく捕集することはできず、本件特許明細書全体及び図面に鑑みても、金属試料中の介在物および/または析出物が電解液に化学溶解しやすいリン化物(リン化鉄)の場合、本件特許発明3の課題を解決できる『捕集方法』が記載されているとは言えないから、発明の詳細な説明の記載は、本件特許発明3を、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない旨を主張する(特許異議申立書の第26頁第13行~第28頁第26行)。 しかしながら、そもそも本件訂正発明3はリン化物捕集の精度について、数値的・相対的など、なんらの特定もしていない。一方、本件特許明細書の段落【0017】には、分離工程の前に、電解液を除去する洗浄工程を行うことで、熱力学平衡計算による析出量に近い結果が得られたことが記載され、段落【0032】~【0039】には、電解液に化学溶解しやすいリン化物を捕集して定量し、定量値を精度よく求めることが可能であることが具体的に開示されているから、本件特許明細書には、析出量の定量値が精度よく求められる程度に精度よくリン化物を捕集することについて具体的に記載されているといえる。そして上述したとおり、それ以上の精度をもって捕集することについて本件訂正発明3は何ら特定していないから、本件特許明細書には、化学的に不安定で、電解液中に化学溶解する介在物および/または析出物を、精度よく捕集するという課題を解決できる実施例が記載されているといえる。してみると、発明の詳細な説明の記載は、本件訂正発明3を、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 したがって、申立人の係る主張は、採用することができない。 2 理由4(サポート要件) 申立人は、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、洗浄工程については、電解後の金属試料(被検試料)をメタノール液中に浸すこと、分離工程については、洗浄後の金属試料を洗浄工程とは別のメタノール液に浸漬して超音波を印加することが記載されているものの、メタノール液中に浸す以外の洗浄手段や別のメタノール液に浸漬して超音波を印加すること以外の分離手段は記載も示唆もなく出願時の技術常識でもないから、洗浄工程について洗浄手段が特定されず、 分離工程について、分散溶液は特定されておらず、分散溶液に浸漬すること以外は特定されていない本件特許発明3の範囲まで発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない旨主張する(特許異議申立書の第28頁第27行~第29頁第27行)。 しかしながら、洗浄工程において、本件特許明細書が電解後の金属試料(被検試料)をメタノール液中に浸すのは、段落【0025】によれば、電解後の金属試料に付着している電解液を除去するためであるところ、本件訂正発明3の洗浄工程は、「電解後の金属試料に付着している電解液を除去する」ことが特定されているから、洗浄工程の課題は解決されている。 分離工程について、本件訂正発明3では、分散溶液が析出物分散用のメタノール液であることが特定されている。そして、本件特許明細書が分離工程において超音波を印加するのは、段落【0035】によれば、析出物を被検試料から分離するためであるところ、本件訂正発明3の分離工程は、「金属試料表面から介在物および/または析出物を分散溶液中に分離する」ことが特定されているから、分離工程の課題は解決されている。 すると、本件訂正発明3の洗浄工程及び分離工程は、発明の詳細な説明に記載されたそれぞれの課題を解決できる範囲内のものであるから、発明の詳細な説明に記載されたものである。 したがって、申立人の係る主張は、採用することができない。 3 理由5(明確性要件) 申立人は、本件特許発明3の洗浄工程及び分離工程について、洗浄手段、分散溶液などが特定されておらず、明確でない旨主張する。 しかしながら、本件訂正発明3の洗浄工程は、「電解後の金属試料に付着している電解液を除去する」ものであることが特定され、分離工程は、分散溶液が「析出物分散用のメタノール液」であることが特定されるとともに、「金属試料表面から介在物および/または析出物を分散溶液中に分離する」ものであることが特定されているから、明確である。 したがって、申立人の係る主張は、採用することができない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

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2022-700801

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