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特許異議申立

2023-700514

飲料及び飲料における塩味の抑制方法

審判番号
2023-700514
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-232735
登録番号
7175177
請求日
2023年05月17日
審決日
2024年07月26日
公報発行日
2024年10月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】アサヒ飲料株式会社
  • 【権利者代理人】正林 真之
  • 【異議申立人】山本 美映子
審判長/審判官
  • 審判長 粟野 正明
  • 審判官 相澤 啓祐
  • 審判官 佐藤 陽一
分類
P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第7項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7175177号発明「飲料及び飲料における塩味の抑制方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7175177号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3、5〕、4について訂正することを認める。 特許第7175177号の請求項1~5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7175177号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願(特願2018-232735号。以下、「本願」という。)は、平成30年12月12日の出願であって、令和 4年11月10日にその特許権の設定登録がされ、同年11月18日にその特許掲載公報が発行された。 本件は、その後、令和 5年 5月17日に特許異議申立人である山本 美映子(以下、「申立人」という。)により請求項1~4(全請求項)に係る特許に対してなされた特許異議申立事件であり、その後の経緯は以下のとおりである。 令和 5年 9月 5日付け 取消理由通知書 同年10月20日差出 訂正請求書及び意見書(特許権者) 同年12月15日差出 意見書(申立人) 令和 6年 3月15日付け 取消理由通知書(決定の予告) 同年 4月25日差出 訂正請求書及び意見書(特許権者) 同年 6月 6日差出 上申書(申立人) なお、令和 5年10月20日提出の訂正請求書による訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなされる。 また、既に申立人に意見書の提出の機会が与えられており、下記第2の1のとおり、令和 6年4月25日提出の訂正請求書による訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、事件において提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体が判断したため、特許法第120条の5第5項ただし書に規定された「特別の事情があるとき」に該当し、申立人に対して改めて意見書を提出する機会を与えないこととした。 ただし、下記第7の「当審の判断」をするに当たり、申立人による上記上申書の内容を考慮した。 第2 本件訂正請求について 1 訂正請求の趣旨及び訂正の内容 令和 6年 4月25日提出の訂正請求書により特許権者が行った訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求めるものであり、本件訂正請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。 (1)訂正事項1 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「クワシンを含み」と記載されているのを、「クワシン濃度が100ppb以下であり」に訂正する。 請求項1を引用する請求項2についても、同様に訂正する。 (2)訂正事項2 ア 訂正事項2-1 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3に「スポーツ飲料である、請求項1又は2に記載の飲料。」と記載されているのを、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「クワシンを含み、ナトリウム濃度が20mg/100ml以上80mg/100ml以下であり、ブリックス値が3.0以下である、スポーツ飲料。」に訂正する。 イ 訂正事項2-2 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3に「スポーツ飲料である、請求項1又は2に記載の飲料。」と記載されているのを、請求項2を引用するものについて、本件訂正後の請求項3を引用する形式に改め、新たな請求項5として、「食塩を含む、請求項3に記載の飲料。」に訂正する。 (3)訂正事項3 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4に「クワシンを配合すること」と記載されているのを、「100ppb以下のクワシンを配合すること」に訂正する。 2 訂正の適否についての当審の判断 (1)訂正の目的、特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、及び新規事項追加の有無 ア 訂正事項1 訂正事項1に係る訂正は、本件訂正前の請求項1に記載の「クワシン」について、その含量が「100ppb以下」であること(ただし、本願の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の【0017】の「クワシンをナトリウム高含有飲料に配合すれば、糖類の配合量が少なくとも、又は、糖類を用いずに、塩味がマスキングされたナトリウム高含有飲料が得られる。」及び【0018】の「本発明の飲料に含まれるクワシンの含量は特に限定されず、配合されるナトリウムの含量や、得ようとする塩味抑制効果の程度等に応じて適宜調整できる。」との記載からみて、クワシンが全く含まれない場合(含量0の場合)は想定されていない。)を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 また、訂正事項1に係る訂正は、上記のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するとはいえない。 さらに、「クワシン濃度が100ppb以下であ」ることは、本件明細書の【0018】の「クワシンの含量は、塩味抑制効果を奏しつつ、クワシンに由来する風味(苦み等)を抑えられやすいという観点から、好ましくは100ppb以下、より好ましくは50.0ppb以下、さらに好ましくは40.0ppb以下であってもよい。」との記載に基づいているから、訂正事項1に係る訂正は、本願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 イ 訂正事項2 訂正事項2に係る訂正は、本件訂正前の請求項3が請求項1又は2の記載を引用するものであったのに対し、訂正事項2-1に係る訂正によって請求項1の記載を引用する請求項3を独立形式に改めるとともに、訂正事項2-2に係る訂正によって請求項2の記載を引用する請求項3を新たな請求項5とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。 また、訂正事項2に係る訂正は、上記のとおり、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるし、本願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであることも明らかである。 ウ 訂正事項3 訂正事項3に係る訂正は、本件訂正前の請求項4に記載の「クワシン」について、その含量が「100ppb以下」であること(ただし、本件明細書の【0017】の「クワシンをナトリウム高含有飲料に配合すれば、糖類の配合量が少なくとも、又は、糖類を用いずに、塩味がマスキングされたナトリウム高含有飲料が得られる。」及び【0018】の「本発明の飲料に含まれるクワシンの含量は特に限定されず、配合されるナトリウムの含量や、得ようとする塩味抑制効果の程度等に応じて適宜調整できる。」との記載からみて、クワシンが全く含まれない場合(含量0の場合)は想定されていない。)を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 また、訂正事項3に係る訂正は、上記のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するとはいえない。 さらに、「クワシン濃度が100ppb以下であ」ることは、本件明細書の【0018】の「クワシンの含量は、塩味抑制効果を奏しつつ、クワシンに由来する風味(苦み等)を抑えられやすいという観点から、好ましくは100ppb以下、より好ましくは50.0ppb以下、さらに好ましくは40.0ppb以下であってもよい。」との記載に基づいているから、訂正事項3に係る訂正は、本願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 (2)独立特許要件について 本件は、本件訂正前の全請求項について特許異議の申立てがされているので、本件訂正前の請求項1~4に対応する、訂正事項1~3に係る訂正後の請求項1~5に係る発明について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (3)一群の請求項について 本件訂正前の請求項1~3について、本件訂正前の請求項2、3はそれぞれ本件訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1の訂正に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~3は一群の請求項である。 そして、本件訂正請求は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正事項2を含むものであるが、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めはないから、訂正後の請求項〔1~3、5〕、4を訂正単位として訂正の請求をするものである。 3 本件訂正請求についてのむすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3、5〕、4について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2の3のとおり、本件訂正請求による訂正は認められるから、本件特許の請求項1~5に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、以下において、請求項1~5に係る発明をそれぞれ「本件発明1」~「本件発明5」といい、これらを総称して「本件発明」という。 「【請求項1】 クワシン濃度が100ppb以下であり、 ナトリウム濃度が20mg/100ml以上80mg/100ml以下であり、 ブリックス値が3.0以下である、飲料。 【請求項2】 食塩を含む、請求項1に記載の飲料。 【請求項3】 クワシンを含み、 ナトリウム濃度が20mg/100ml以上80mg/100ml以下であり、 ブリックス値が3.0以下である、スポーツ飲料。 【請求項4】 100ppb以下のクワシンを配合することを特徴とする、ナトリウム濃度が20mg/100ml以上80mg/100ml以下であり、かつブリックス値が3.0以下である飲料における塩味の抑制方法。 【請求項5】 食塩を含む、請求項3に記載の飲料。」 第4 特許異議申立理由 申立人は、証拠方法として、次の甲第1~13号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲13」という。)を提出し、以下の申立理由1~4により、本件訂正前の本件特許の請求項1~4に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。 (証拠方法) 甲第1号証:特開2014-55号公報 甲第2号証:Mediterranean Lemon Alcohol-Free Soft Drink, Mintel GNPD, 記録番号(ID#)1744197, 2012年3月 <https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/1744197/from_search/KW2cHtQ5X6/?page=5> 甲第3号証:特開2014-168464号公報 甲第4号証:Tonic & Vodka, Mintel GNPD, 記録番号(ID#)3289131, 2015年6月 <https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/3289131/> 甲第5号証:ムギオのお酒探訪 ウイスキー・クラフトジン・日本酒などをご紹介、「ウィルキンソントニックウォーター・ニガキ皮の苦味と柑橘が柔らかに」2018年5月11日 <https://www.mugiosake.com/willkinsontonic/> 甲第6号証:特許第7175177号公報 甲第7号証:特開2017-176168号公報 甲第8号証:特開2017-216937号公報 甲第9号証:British Lemon Tonic, Mintel GNPD, 記録番号(ID#)1825072, 2012年6月 <https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/1825072/from_search/ZRlKIek7fR/?page=1> 甲第10号証:特開2014-128251号公報 甲第11号証:厚生労働省医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課 事務連絡 「「熱中症対策」表示ガイドラインの改訂について」、平成28年(2016年)6月16日 <http://j-sda.or.jp/images_j/pdf/necchusho_guideline_2016_0616.pdf> 甲第12号証:遠藤由香外1名、「にがり成分が食塩の呈味性に及ぼす影響」、Bulletin of the Society of Sea Water Science, Japan、2015、Vol69、pp.105-110 甲第13号証:特開2013-201952号公報 1 申立理由1(新規性、進歩性) 本件訂正前の請求項1、4に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲1に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、また、本件訂正前の請求項2に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲3に記載された事項に基いて、本件訂正前の請求項3に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 申立理由2(進歩性) 本件訂正前の請求項1、3、4に係る発明は、甲4に記載された発明に基いて、本件訂正前の請求項2に係る発明は、甲4に記載された発明及び甲7、8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 3 申立理由3(進歩性) 本件訂正前の請求項1、3、4に係る発明は、甲9に記載された発明及び甲11~13に記載された事項に基いて、本件訂正前の請求項2に係る発明は、甲9に記載された発明及び甲3、11~13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 4 申立理由4(進歩性) 本件訂正前の請求項1、3、4に係る発明は、甲11に記載された発明及び甲10、12、13に記載された事項に基いて、本件訂正前の請求項2に係る発明は、甲11に記載された発明及び甲3、10、12、13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 第5 取消理由の概要 当審は、上記第4の各申立理由のうち、申立理由1の一部を採用し、令和 5年 9月 5日付けで以下の取消理由1を通知した。 1 取消理由1(新規性、進歩性) 本件訂正前の請求項1、2、4に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、同発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 また、本件訂正前の請求項1、4に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるし、本件訂正前の請求項2に係る発明は、甲1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 なお、上記「周知技術」とは、「食塩を飲料に添加すること」である。 第6 取消理由(決定の予告) 当審は、令和 5年10月20日提出の訂正請求書によって特許権者が行った訂正請求に係る訂正により、上記第5の1の取消理由1(新規性、進歩性)は解消したものの、新たな取消理由が生じたと判断したため、令和 6年 3月15日付けで以下の取消理由1’(新規性)を通知した。 1 取消理由1’(新規性) 令和 5年10月20日提出の訂正請求書によって特許権者が行った訂正請求に係る訂正後の請求項1、2、4に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、同発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 第7 当審の判断 以下に述べるとおり、取消理由通知書(決定の予告を含む。)に記載した取消理由1、1’及び特許異議申立書に記載された申立理由1~4によっては、本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。 1 各甲号証の記載及び各甲号証に記載された発明 (1)甲1の記載及び甲1に記載された発明 ア 甲1の記載 甲1には、「低pH飲料」(発明の名称)に関して、次の記載がある。(なお、下線は当審が付し、「・・・」は記載の省略を示す。以下同様。) (ア)「【0021】 ・・・クワシンを配合する場合は、0.05~20ppm含むとき好ましく、0.1~10ppmのときより好ましく、0.1~5ppmのとき更に好ましい。」 (イ)「【0035】 本発明でいう低溶質飲料の可溶性固形分濃度は、糖度計、屈折計などを用いて得られるブリックス(Brix)値から算出される飲料の可溶性固形分濃度(SS:Soluble Solid)によって定義される。当該ブリックス値は、20℃で測定された屈折率を、ICUMSA(国際砂糖分析法統一委員会)の換算表に基づいてショ糖溶液の質量/質量パーセントに換算した値で、溶液中の可溶性固形分濃度を表す。単位は「°Bx」、「%」または「度」で表示される。 【0036】 ノンアルコール飲料では、ブリックス値をそのまま可溶性固形分濃度としてよい・・・が、アルコール飲料においては、アルコールが屈折率に影響を与えるため、次の式を用いてブリックス値から可溶性固形分濃度を算出する。」 (ウ)「【0081】 実施例8 リキュール類のノンアルコール飲料(のんある気分地中海レモン、サントリー酒類製、アルコール度数0.00%、pH3.3、炭酸ガス圧1.7kg/cm2程度、可溶性固形分濃度0.8度)に、各種苦味物質(カフェイン、ナリンジン、クワシン)を配合した(増粘剤添加無し)。具体的な添加量は、飲料中の濃度が、カフェインは10ppm、ナリンジンは10ppm、クワシンは1.5ppmとなるように添加した。 【0082】 これに、増粘剤としてアルギン酸プロピレングリコールエステル(キミカ社製)を飲料中の濃度として100ppmになるように配合してサンプルを調製した(増粘剤添加有り)。 ・・・ 【0084】 【表8】 [図:0001415268000001.jpg] 」 イ 甲1に記載された発明 (ア)上記ア(イ)には、飲料の「可用性固形分濃度」は「ブリックス(Brix)値から算出され」、「ノンアルコール飲料では、ブリックス値をそのまま可溶性固形分濃度としてよい」と記載されている。 (イ)上記ア(ウ)によれば、「のんある気分地中海レモン」は「アルコール度数0.00%」の「ノンアルコール飲料」であるから、「のんある気分地中海レモン」の「可溶性固形分濃度0.8度」とは、上記(ア)のとおり、「ブリックス値」が「0.8」であることを意味する。 (ウ)そうすると、上記ア(ウ)において、実施例8の「のんある気分地中海レモン」にクワシンを配合し、増粘剤として「アルギン酸プロピレングリコールエステル」を添加した例と添加していない例とにそれぞれ着目すれば、甲1には、次の発明が記載されていると認められる。 「リキュール類のノンアルコール飲料(のんある気分地中海レモン、サントリー酒類製、アルコール度数0.00%、pH3.3、炭酸ガス圧1.7kg/cm2程度、ブリックス値0.8)に、苦味物質として飲料中の濃度が、1.5ppmとなるようにクワシンを配合し、増粘剤としてアルギン酸プロピレングリコールエステル(キミカ社製)を飲料中の濃度として100ppmになるように配合した飲料。」(以下、「甲1発明」という。) 「リキュール類のノンアルコール飲料(のんある気分地中海レモン、サントリー酒類製、アルコール度数0.00%、pH3.3、炭酸ガス圧1.7kg/cm2程度、ブリックス値0.8)に、苦味物質として飲料中の濃度が、1.5ppmとなるようにクワシンを配合し、増粘剤としてアルギン酸プロピレングリコールエステル(キミカ社製)を飲料中の濃度として100ppmになるように配合する方法。」(以下、「甲1方法発明」という。) 「リキュール類のノンアルコール飲料(のんある気分地中海レモン、サントリー酒類製、アルコール度数0.00%、pH3.3、炭酸ガス圧1.7kg/cm2程度、ブリックス値0.8)に、苦味物質として飲料中の濃度が、1.5ppmとなるようにクワシンを配合し、アルギン酸プロピレングリコールエステルを配合しない飲料。」(以下、「甲1’発明」という。) 「リキュール類のノンアルコール飲料(のんある気分地中海レモン、サントリー酒類製、アルコール度数0.00%、pH3.3、炭酸ガス圧1.7kg/cm2程度、ブリックス値0.8)に、苦味物質として飲料中の濃度が、1.5ppmとなるようにクワシンを配合し、アルギン酸プロピレングリコールエステルを配合しない方法。」(以下、「甲1’方法発明」という。) (2)甲4の記載及び甲4に記載された発明 ア 甲4の記載 甲4には、「Asahi WILKINSON TONIC VODKA トニック+ウォッカ」に関して、次の記載がある。 「 [図:0001415268000002.jpg] 」(第1頁左上欄) 「 [図:0001415268000003.jpg] 」(第1頁右上欄) 「 [図:0001415268000004.jpg] 」(第1頁中欄) (当審仮訳:Asahi Wilkinson Tonic & Vodkaは、Lawsonの40周年記念のための新たな限定版バラエティーである。当該飲料は、ウオッカベースと、Wilkinson tonic waterとを特徴とする。強いソーダ、バランスの取れた苦味、爽快な甘み及び酸味を有することが宣伝されている。それは、リサイクル可能な350ml缶で小売りされている。2015年6月2日に希望小売価格152円で発売された。) 「 [図:0001415268000005.jpg] 」(第3頁) イ 甲4に記載された発明 上記アの摘記事項によれば、甲4には、次の発明が記載されていると認められる。 「ウオッカベースと、Wilkinson tonic waterとを特徴とし、強いソーダ、バランスの取れた苦味、爽快な甘み及び酸味を有し、100ml当たりのたんぱく質が0g、脂質が0g、糖質が6.0g、食物繊維が0g、ナトリウムが24mgのアルコール飲料(Asahi WILKINSON TONIC VODKA トニック+ウォッカ)。」(以下、「甲4発明」という。) 「ウオッカベースと、Wilkinson tonic waterとを特徴とし、強いソーダ、バランスの取れた苦味、爽快な甘み及び酸味を有し、100ml当たりのたんぱく質が0g、脂質が0g、糖質が6.0g、食物繊維が0g、ナトリウムが24mgのアルコール飲料(Asahi WILKINSON TONIC VODKA トニック+ウォッカ)を製造する方法。」(以下、「甲4方法発明」という。) (3)甲9の記載及び甲9に記載された発明 ア 甲9の記載 甲9には、「Schweppes British Lemon Tonic」に関して、次の記載がある。 「 [図:0001415268000006.jpg] 」(第1頁左上欄) 「 [図:0001415268000007.jpg] 」(第1頁右上欄) 「 [図:0001415268000008.jpg] 」(第1頁中欄) (当審仮訳:Schweppes British Lemon Tonicは、40歳以上の大人をターゲットにした炭酸飲料である。レモン果汁を3%使用し、レモンの酸味とほろ苦さが感じられる。100mlあたり12kcalと低カロリーで、仕事中のリフレッシュや帰宅後のリラックスタイムに最適である。410mlボトルで小売りされている。2012年6月11日に希望小売価格147円で発売された。) 「 [図:0001415268000009.jpg] 」(第3頁) (当審注:原材料名に「カッシア」が記載されている。) 「 [図:0001415268000010.jpg] 」(第4頁) イ 甲9に記載された発明 上記アの摘記事項によれば、甲9には、次の発明が記載されていると認められる。 「原材料にカッシアを含み、100ml当たりのたんぱく質・脂質が0g、炭水化物が3g、ナトリウムが5.4mgの炭酸飲料(Schweppes British Lemon Tonic)。」(以下、「甲9発明」という。) 「原材料にカッシアを含み、100ml当たりのたんぱく質・脂質が0g、炭水化物が3g、ナトリウムが5.4mgの炭酸飲料(Schweppes British Lemon Tonic)を製造する方法。」(以下、「甲9方法発明」という。) (4)甲11の記載及び甲11に記載された発明 ア 甲11の記載 甲11には、「「熱中症対策」表示ガイドライン」に関して、次の記載がある。 「 [図:0001415268000011.jpg] 」(別添資料) イ 甲11に記載された発明 上記アの摘記事項によれば、甲11には、次の発明が記載されていると認められる。 「ナトリウム濃度として、少なくとも、飲料100mlあたり40~80mg含有するスポーツドリンクなどの清涼飲料水。」(以下、「甲11発明」という。) 「ナトリウム濃度として、少なくとも、飲料100mlあたり40~80mg含有するスポーツドリンクなどの清涼飲料水を製造する方法。」(以下、「甲11方法発明」という。) 2 取消理由1、1’及び申立理由1について (1)本件発明1について ア 本件発明1と甲1発明及び甲1’発明との対比及び判断 (ア)対比 a 甲1発明及び甲1’発明における「飲料中の濃度が、1.5ppmとなるようにクワシンを配合」することは、本件発明1における「クワシン濃度が100ppb以下であ」ることと、「クワシン」を含む点で共通する。 b 甲1発明及び甲1’発明における「ブリックス値0.8」は、本件発明1における「ブリックス値が3.0以下」に相当する。 c 上記a及びbによれば、本件発明1と甲1発明及び甲1’発明とは、以下の一致点において一致するとともに、以下の相違点において相違する。 <一致点1-1> 「クワシンを含み、 ブリックス値が3.0以下である、飲料。」である点。 <相違点1-1> 本件発明1における飲料は、クワシン濃度が「100ppb以下」であるのに対し、甲1発明及び甲1’発明における飲料は、クワシン濃度が「1.5ppm(=1500ppb)」である点。 <相違点1-2> 本件発明1における飲料は、「ナトリウム濃度が20mg/100ml以上80mg/100ml以下であ」るのに対し、甲1発明及び甲1’発明における飲料は、ナトリウム濃度が不明である点。 (イ)判断 a 事案に鑑み、まず上記相違点1-1について検討すると、上記相違点1が実質的な相違点であることは明らかである。 b 次に上記相違点1-1の容易想到性について検討すると、上記1(1)ア(ア)には、「クワシンを配合する場合は、0.05~20ppm含むとき好ましく、0.1~10ppmのときより好ましく、0.1~5ppmのとき更に好ましい。」と記載されており、クワシン濃度を「0.05~20ppm」、すなわち「50~20000ppb」とすることが好ましい旨が記載されているから、甲1発明及び甲1’発明において、飲料のクワシン濃度を「50~100ppb」とする動機付けはあるといえる。 c しかしながら、本件発明によって奏される「甘味及び塩味の強さがいずれも抑制されたナトリウム高含有飲料が提供される」との効果(本件明細書の【0013】参照)は、甲1の記載や本願出願時の技術常識を考慮しても、当業者が予測し得ない顕著なものであると認められる。 d この点、申立人は、令和 6年 6月 6日提出の上申書において、「クワシンの量を100ppb以下とすることにより、100ppbを超える場合と比較して顕著な効果が得られることは、本件特許明細書には全く示されていません。したがって、効果にもとづいて進歩性を肯定することもできません。」(第2頁下から4行~1行)と主張しているが、本件発明によって奏される効果については上記cにおいて述べたとおりであるから、当該主張を採用することはできない。 e したがって、甲1発明及び甲1’発明において、上記相違点1-1に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 f よって、上記相違点1-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明又は甲1’発明であるとはいえないし、甲1発明又は甲1’発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 イ 小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 よって、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないから、取消理由1、1’及び申立理由1によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 また、本件発明1は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、取消理由1及び申立理由1によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 (2)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1の特定事項を全て含むものである。 上記(1)イのとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、甲3にも、上記(1)ア(イ)cに示した効果は記載も示唆もされていないから、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 したがって、本件発明2も、甲1に記載された発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 この判断は、本願出願時において、食塩を飲料に添加することが周知技術であったことを考慮しても変わらない。 よって、本件発明2は、甲1に記載された発明及び甲3に記載された事項並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、取消理由1及び申立理由1によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 (3)本件発明3について ア 本件発明3と甲1発明及び甲1’発明との対比及び判断 (ア)対比 a 甲1発明及び甲1’発明における「クワシンを配合」することは、本件発明3における「クワシンを含」む事項に相当する。 b 甲1発明及び甲1’発明における「ブリックス値0.8」は、本件発明3における「ブリックス値が3.0以下」に相当する。 c 上記a及びbによれば、本件発明3と甲1発明及び甲1’発明とは、以下の一致点において一致するとともに、以下の相違点において相違する。 <一致点1-2> 「クワシンを含み、 ブリックス値が3.0以下である、飲料。」である点。 <相違点1-3> 本件発明3における飲料は、「ナトリウム濃度が20mg/100ml以上80mg/100ml以下であ」るのに対し、甲1発明及び甲1’発明における飲料は、ナトリウム濃度が不明である点。 <相違点1-4> クワシンを含む飲料が、本件発明3は、「スポーツ飲料」であるのに対し、甲1発明及び甲1’発明は、「リキュール類のノンアルコール飲料」である点。 (イ)判断 a 事案に鑑み、まず上記相違点1-4の容易想到性について検討すると、甲1発明及び甲1’発明は、「のんある気分地中海レモン」という商品名の、炭酸ガス圧が1.7kg/cm2程度のリキュール類のノンアルコール飲料を基としているから、これを「スポーツ飲料」とする動機付けはないといえる。 b この点、申立人は、上記特許異議申立書において、「スポーツ飲料は、広く知られたノンアルコール飲料の一種であるから、甲1発明をスポーツ飲料とすることに何ら困難性はない。」(第18頁下から9行~7行)と主張しているが、上記aにおいて述べたとおりであるから、当該主張を採用することはできない。 c したがって、甲1発明及び甲1’発明において、上記相違点1-4に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 d よって、上記相違点1-3について検討するまでもなく、本件発明3は、甲1発明又は甲1’発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 小括 以上のとおりであるから、本件発明3は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 よって、本件発明3は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由1によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 (4)本件発明4について ア 本件発明4と甲1方法発明及び甲1’方法発明との対比及び判断 (ア)対比 a 甲1方法発明及び甲1’方法発明における「飲料中の濃度が、1.5ppmとなるようにクワシンを配合」することは、本件発明4における「100ppb以下のクワシンを配合すること」と、「クワシンを配合」する点で共通する。 b 甲1方法発明及び甲1’方法発明における「ブリックス値0.8」は、本件発明4における「ブリックス値が3.0以下」に相当する。 c 上記a及びbによれば、本件発明4と甲1方法発明及び甲1’方法発明とは、以下の一致点において一致するとともに、以下の相違点において相違する。 <一致点1-3> 「クワシンを配合することを特徴とする、ブリックス値が3.0以下である飲料における方法。」 である点。 <相違点1-5> 本件発明4は、飲料に「100ppb以下」のクワシンを配合するものであるのに対し、甲1方法発明及び甲1’方法発明は、飲料に「1.5ppm(=1500ppb)」のクワシンを配合するものである点。 <相違点1-6> 本件発明4における飲料は、「ナトリウム濃度が20mg/100ml以上80mg/100ml以下であ」るのに対し、甲1方法発明及び甲1’方法発明における飲料は、ナトリウム濃度が不明である点。 <相違点1-7> 本件発明4は、クワシンを配合することにより、「飲料における塩味」を「抑制」する方法であるのに対し、甲1方法発明及び甲1’方法発明は、飲料における塩味を抑制する方法であるのか不明である点。 (イ)判断 a 事案に鑑み、まず上記相違点1-5について検討すると、上記相違点1-5が実質的な相違点であることは明らかである。 b 次に上記相違点1-5の容易想到性について検討すると、上記相違点1-5は上記(1)ア(ア)cに示した上記相違点1-1と実質的に同じであるから、上記(1)ア(イ)b~eで検討したのと同様の理由により、甲1方法発明及び甲1’方法発明において、上記相違点1-5に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 c よって、上記相違点1-6、1-7について検討するまでもなく、本件発明4は、甲1方法発明又は甲1’方法発明であるとはいえないし、甲1方法発明又は甲1’方法発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 イ 小括 以上のとおりであるから、本件発明4は、甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 よって、本件発明4は、甲1に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないから、取消理由1、1’及び申立理由1によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 また、本件発明4は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、取消理由1及び申立理由1によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 (5)本件発明5について 本件発明5は、本件発明3の特定事項を全て含むものである。 上記(3)イのとおり、本件発明3は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、甲3にも、「スポーツ飲料」については記載も示唆もされていないから、本件発明3は、甲1に記載された発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 したがって、本件発明5も、甲1に記載された発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 よって、本件発明5は、甲1に記載された発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由1によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 3 申立理由2について (1)本件発明1について ア 本件発明1と甲4発明との対比及び判断 (ア)対比 a 甲4発明における飲料の「100ml当たりの」「ナトリウムが24mg」は、本件発明1における飲料の「ナトリウム濃度が20mg/100ml以上80mg/100ml以下」に相当する。 b 上記aによれば、本件発明1と甲4発明とは、以下の一致点において一致するとともに、以下の相違点において相違する。 <一致点2-1> 「ナトリウム濃度が20mg/100ml以上80mg/100ml以下である、飲料。」である点。 <相違点2-1> 本件発明1における飲料は、「クワシン濃度が100ppb以下であ」るのに対し、甲4発明における飲料は、クワシンを含むのか不明である点。 <相違点2-2> 本件発明1における飲料は、「ブリックス値が3.0以下である」のに対し、甲4発明における飲料は、「100ml当たりのたんぱく質が0g、脂質が0g、糖質が6.0g、食物繊維が0g、ナトリウムが24mg」であり、ブリックス値が不明である点。 (イ)判断 a 事案に鑑み、まず上記相違点2-2の容易想到性について検討すると、甲4発明における飲料のブリックス値は不明であるが、ブリックス値は水溶液中の可溶性固形分の濃度(%)を示すものであり、上記1(2)イによれば、甲4発明における飲料は「100ml当たりのたんぱく質が0g、脂質が0g、糖質が6.0g、食物繊維が0g、ナトリウムが24mg」であるから、飲料の密度を考慮しなければ、ブリックス値は約(6.0+24/1000)/100×100であると推計される。 b ここで、上記aのブリックス値(約(6.0+24/1000))は「3.0以下」ではないが、甲4には、ブリックス値については記載も示唆もされていないから、甲4発明の「Asahi WILKINSON TONIC VODKA トニック+ウォッカ」という商品名のアルコール飲料において、飲料全体の呈味を考慮することなく、単にブリックス値を「3.0以下」とする動機付けはないといえる。 c この点、申立人は、上記特許異議申立書において、「近年の健康志向を考慮すると糖質量を減らす動機づけがあり、そして糖質量を減らすと必然的にブリックス値も低下する。したがって、甲4発明のブリックス値を低下させて本件特許発明1の構成に想到することは容易である。」(第22頁下から8行~5行)と主張しているが、上記bにおいて述べたとおりであるから、当該主張を採用することはできない。 d したがって、甲4発明において、上記相違点2-2に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 e よって、上記相違点2-1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 よって、本件発明1は、甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由2によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 (2)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1の特定事項を全て含むものである。 上記(1)イのとおり、本件発明1は、甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、甲7、8にも、ブリックス値については記載も示唆もされていないから、本件発明1は、甲4に記載された発明及び甲7、8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 したがって、本件発明2も、甲4に記載された発明及び甲7、8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 よって、本件発明2は、甲4に記載された発明及び甲7、8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由2によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 (3)本件発明3について ア 本件発明3と甲4発明との対比及び判断 (ア)対比 a 甲4発明における飲料の「100ml当たりの」「ナトリウムが24mg」は、本件発明3における飲料の「ナトリウム濃度が20mg/100ml以上80mg/100ml以下」に相当する。 b 上記aによれば、本件発明3と甲4発明とは、以下の一致点において一致するとともに、以下の相違点において相違する。 <一致点2-2> 「ナトリウム濃度が20mg/100ml以上80mg/100ml以下である、飲料。」である点。 <相違点2-3> 本件発明3における飲料は、「クワシンを含」むのに対し、甲4発明における飲料は、クワシンを含むのか不明である点。 <相違点2-4> 本件発明3における飲料は、「ブリックス値が3.0以下である」のに対し、甲4発明における飲料は、「100ml当たりのたんぱく質が0g、脂質が0g、糖質が6.0g、食物繊維が0g、ナトリウムが24mg」であり、ブリックス値が不明である点。 <相違点2-5> 本件発明3は、「スポーツ飲料」であるのに対し、甲4発明は、「アルコール飲料(Asahi WILKINSON TONIC VODKA トニック+ウォッカ)」である点。 (イ)判断 a 事案に鑑み、まず上記相違点2-4の容易想到性について検討すると、上記相違点2-4は上記(1)ア(ア)bに示した上記相違点2-2と同じであるから、上記(1)ア(イ)a~dで検討したのと同様の理由により、甲4発明において、上記相違点2-4に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 b よって、上記相違点2-3、2-5について検討するまでもなく、本件発明3は、甲4発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 小括 以上のとおりであるから、本件発明3は、甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 よって、本件発明3は、甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由2によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 (4)本件発明4について ア 本件発明4と甲4方法発明との対比及び判断 (ア)対比 a 甲4方法発明における飲料の「100ml当たりの」「ナトリウムが24mg」は、本件発明4における飲料の「ナトリウム濃度が20mg/100ml以上80mg/100ml以下」に相当する。 b 上記aによれば、本件発明4と甲4方法発明とは、以下の一致点において一致するとともに、以下の相違点において相違する。 <一致点2-3> 「ナトリウム濃度が20mg/100ml以上80mg/100ml以下である、飲料における方法。」である点。 <相違点2-6> 本件発明4は、「100ppb以下のクワシンを配合することを特徴とする」のに対し、甲4方法発明は、クワシンを配合するのか不明である点。 <相違点2-7> 本件発明4における飲料は、「ブリックス値が3.0以下である」のに対し、甲4方法発明における飲料は、「100ml当たりのたんぱく質が0g、脂質が0g、糖質が6.0g、食物繊維が0g、ナトリウムが24mg」であり、ブリックス値が不明である点。 <相違点2-8> 本件発明4は、クワシンを配合することにより、「飲料における塩味」を「抑制」する方法であるのに対し、甲4方法発明は、飲料における塩味を抑制する方法であるのか不明である点。 (イ)判断 a 事案に鑑み、まず上記相違点2-7の容易想到性について検討すると、上記相違点2-7は上記(1)ア(ア)bに示した上記相違点2-2と同じであるから、上記(1)ア(イ)a~dで検討したのと同様の理由により、甲4方法発明において、上記相違点2-7に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 b よって、上記相違点2-6、2-8について検討するまでもなく、本件発明4は、甲4方法発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 小括 以上のとおりであるから、本件発明4は、甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 よって、本件発明4は、甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由2によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 (5)本件発明5について 本件発明5は、本件発明3の特定事項を全て含むものである。 上記(3)イのとおり、本件発明3は、甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、甲7、8にも、ブリックス値については記載も示唆もされていないから、本件発明3は、甲4に記載された発明及び甲7、8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 したがって、本件発明5も、甲4に記載された発明及び甲7、8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 よって、本件発明5は、甲4に記載された発明及び甲7、8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由2によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 4 申立理由3について (1)本件発明1について ア 本件発明1と甲9発明との対比及び判断 (ア)対比 a 本件発明1と甲9発明とは、以下の一致点において一致するとともに、以下の相違点において相違する。 <一致点3-1> 「ナトリウムを含む、飲料。」である点。 <相違点3-1> 本件発明1における飲料は、「クワシン濃度が100ppb以下であ」るのに対し、甲9発明における飲料は、「原材料にカッシアを含」み、カッシア濃度が不明である点。 <相違点3-2> 本件発明1における飲料は、「ナトリウム濃度が20mg/100ml以上80mg/100ml以下であ」るのに対し、甲9発明における飲料は、「100ml当たりの」「ナトリウムが5.4mg」である点。 <相違点3-3> 本件発明1における飲料は、「ブリックス値が3.0以下である」のに対し、甲9発明における飲料は、「100ml当たりのたんぱく質・脂質が0g、炭水化物が3g、ナトリウムが5.4mg」であり、ブリックス値が不明である点。 (イ)判断 a 事案に鑑み、まず上記相違点3-2の容易想到性について検討すると、甲9には、飲料の100ml当たりのナトリウムが5.4mgであることは記載されているものの、ナトリウム濃度を所定の範囲に調整することについては記載も示唆もされていないから、甲9発明において、ナトリウム濃度を「20mg/100ml以上80mg/100ml以下」とする動機付けがあるとはいえない。 b この点、申立人は、上記特許異議申立書において、「本件特許の出願当時にナトリウム濃度を本件特許発明1の範囲まで高める動機付けがあった。具体的には、甲第11号証に記載されているとおり、熱中症対策のためにナトリウム濃度を少なくとも飲料100mlあたり40~80mgとすることが記載されている。また、その際に塩味の強さが懸念される可能性はあるが、甲第12および13号証には、上記で引用した部分に示されているとおり、苦味によって塩味がマスキングされることが示唆されている。」(第28頁下から11行~5行)と主張しているが、上記1(3)アの摘記事項によれば、甲9発明の飲料は「仕事中のリフレッシュや帰宅後のリラックスタイムに最適」なものであるから、「熱中症対策のために」あえてナトリウム濃度を高める必要性は認められず、上記主張を採用することはできない。 c したがって、甲9発明において、上記相違点3-2に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 d よって、上記相違点3-1、3-3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲9発明及び甲11~13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲9に記載された発明及び甲11~13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 よって、本件発明1は、甲9に記載された発明及び甲11~13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由3によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 (2)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1の特定事項を全て含むものである。 上記(1)イのとおり、本件発明1は、甲9に記載された発明及び甲11~13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、甲3にも、ナトリウム濃度については記載も示唆もされていないから、本件発明1は、甲9に記載された発明及び甲3、11~13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 したがって、本件発明2も、甲9に記載された発明及び甲3、11~13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 よって、本件発明2は、甲9に記載された発明及び甲3、11~13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由3によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 (3)本件発明3について ア 本件発明3と甲9発明との対比及び判断 (ア)対比 a 本件発明3と甲9発明とは、以下の一致点において一致するとともに、以下の相違点において相違する。 <一致点3-2> 「ナトリウムを含む、飲料。」である点。 <相違点3-4> 本件発明3における飲料は、「クワシンを含」むのに対し、甲9発明における飲料は、「原材料にカッシアを含」む点。 <相違点3-5> 本件発明3における飲料は、「ナトリウム濃度が20mg/100ml以上80mg/100ml以下であ」るのに対し、甲9発明における飲料は、「100ml当たりの」「ナトリウムが5.4mg」である点。 <相違点3-6> 本件発明3における飲料は、「ブリックス値が3.0以下である」のに対し、甲9発明における飲料は、「100ml当たりのたんぱく質・脂質が0g、炭水化物が3g、ナトリウムが5.4mg」であり、ブリックス値が不明である点。 <相違点3-7> 本件発明3は、「スポーツ飲料」であるのに対し、甲9発明は、「炭酸飲料(Schweppes British Lemon Tonic)」である点。 (イ)判断 a 事案に鑑み、まず上記相違点3-5の容易想到性について検討すると、上記相違点3-5は上記(1)ア(ア)aに示した上記相違点3-2と同じであるから、上記(1)ア(イ)a~cで検討したのと同様の理由により、甲9発明において、上記相違点3-5に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 b よって、上記相違点3-4、3-6、3-7について検討するまでもなく、本件発明3は、甲9発明及び甲11~13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 小括 以上のとおりであるから、本件発明3は、甲9に記載された発明及び甲11~13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 よって、本件発明3は、甲9に記載された発明及び甲11~13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由3によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 (4)本件発明4について ア 本件発明4と甲9方法発明との対比及び判断 (ア)対比 a 本件発明4と甲9方法発明とは、以下の一致点において一致するとともに、以下の相違点において相違する。 <一致点3-3> 「ナトリウムを含む飲料における方法。」である点。 <相違点3-8> 本件発明4は、「100ppb以下のクワシンを配合することを特徴とする」のに対し、甲9方法発明は、飲料の「原材料にカッシアを含」むものであり、カッシア濃度が不明である点。 <相違点3-9> 本件発明4における飲料は、「ナトリウム濃度が20mg/100ml以上80mg/100ml以下であ」るのに対し、甲9方法発明における飲料は、「100ml当たりの」「ナトリウムが5.4mg」である点。 <相違点3-10> 本件発明4における飲料は、「ブリックス値が3.0以下である」のに対し、甲9方法発明における飲料は、「100ml当たりのたんぱく質が0g、脂質が0g、糖質が6.0g、食物繊維が0g、ナトリウムが24mg」であり、ブリックス値が不明である点。 <相違点3-11> 本件発明4は、クワシンを配合することにより、「飲料における塩味」を「抑制」する方法であるのに対し、甲9方法発明は、飲料における塩味を抑制する方法であるのか不明である点。 (イ)判断 a 事案に鑑み、まず上記相違点3-9の容易想到性について検討すると、上記相違点3-9は上記(1)ア(ア)aに示した上記相違点3-2と実質的に同じであるから、上記(1)ア(イ)a~cで検討したのと同様の理由により、甲9方法発明において、上記相違点3-9に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 b よって、上記相違点3-8、3-10、3-11について検討するまでもなく、本件発明4は、甲9方法発明及び甲11~13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 小括 以上のとおりであるから、本件発明4は、甲9に記載された発明及び甲11~13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 よって、本件発明4は、甲9に記載された発明及び甲11~13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由3によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 (5)本件発明5について 本件発明5は、本件発明3の特定事項を全て含むものである。 上記(3)イのとおり、本件発明3は、甲9に記載された発明及び甲11~13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、甲3にも、ナトリウム濃度については記載も示唆もされていないから、本件発明3は、甲9に記載された発明及び甲3、11~13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 したがって、本件発明5も、甲9に記載された発明及び甲3、11~13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 よって、本件発明5は、甲9に記載された発明及び甲3、11~13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由3によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 5 申立理由4について (1)本件発明1について ア 本件発明1と甲11発明との対比及び判断 (ア)対比 a 甲11発明における「ナトリウム濃度として、少なくとも、飲料100mlあたり40~80mg含有する」ことは、本件発明1における「ナトリウム濃度が20mg/100ml以上80mg/100ml以下であ」ることに相当する。 b 上記aによれば、本件発明1と甲11発明とは、以下の一致点において一致するとともに、以下の相違点において相違する。 <一致点4-1> 「ナトリウム濃度が20mg/100ml以上80mg/100ml以下である、飲料。」である点。 <相違点4-1> 本件発明1における飲料は、「クワシン濃度が100ppb以下であ」るのに対し、甲11発明における飲料は、クワシンを含むのか不明である点。 <相違点4-2> 本件発明1における飲料は、「ブリックス値が3.0以下である」のに対し、甲11発明における飲料は、ブリックス値が不明である点。 (イ)判断 a 事案に鑑み、まず上記相違点4-1の容易想到性について検討すると、甲11には、飲料にクワシンを含ませることについては記載も示唆もされていないから、甲11発明において、「クワシン」を「100ppb以下」の「濃度」で含ませる動機付けはないといえる。 b この点、申立人は、上記特許異議申立書において、「そのような高ナトリウム濃度飲料に、本件特許発明1の構成Aのようにクワシンを用いる動機づけもある。なぜなら、理由3に関して上記したとおり、高濃度のナトリウムを用いる際に塩味の強さが懸念されるところ、甲第12および13号証には、苦味によって塩味がマスキングされることが示唆されているうえ、クワシンが苦味物質として知られていた(甲第10号証の段落【0023】)からである。」(第32頁第8~14行)と主張している。 c しかしながら、甲11には、「高濃度のナトリウムを用いる際に塩味の強さが懸念される」ことは記載も示唆もされていない。また、甲12には、「苦味によって塩味がマスキングされたのだと推察される」(第110頁左欄第19行)とは記載されているものの、当該「苦味」はにがり成分によってもたらされるものであって(第109頁右欄~第110頁左欄の「4.まとめ」参照)、クワシンによってもたらされるものではない。さらに、甲13には、「本発明によれば、天然物由来の物質であり、塩味をマスキングして呈味を改善し、香味バランスに優れた機能性飲料を提供可能な香草エキスの製造方法を提供することができる。」(【0021】)と記載されているが、「香草エキス」は「苦味」をもたらすものではない。そして、甲10には、「苦味物質と麦芽エキスとを含有させることによって得られる新規なビールテイスト飲料に関する」発明が記載されており(【0001】参照)、甲10の【0023】には、「苦味物質としては、・・・具体的には、例えば、ゲンチオオリゴ糖(ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオースなどを含む)、ナリンジン、クワシン、カフェイン等を挙げることができるが、より好ましくはゲンチオオリゴ糖、ナリンジン又はクワシンを、更に好ましくはゲンチオオリゴ糖又はナリンジンを用いることができる。」と記載されているが、甲11発明の「スポーツドリンクなどの清涼飲料水」とは全く種類の異なる「ビールテイスト飲料」に関する甲10に記載された事項に基いて、甲10に記載されている複数の苦味物質の中からあえてクワシンを選択し、甲11発明の飲料に含ませるのは、たとえ甲12、13を参照したとしても無理があるといわざるを得ないから、上記bの主張を採用することはできない。 d したがって、甲11発明において、上記相違点4-1に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 e よって、上記相違点4-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲11発明及び甲10、12、13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲11に記載された発明及び甲10、12、13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 よって、本件発明1は、甲11に記載された発明及び甲10、12、13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由4によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 (2)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1の特定事項を全て含むものである。 上記(1)イのとおり、本件発明1は、甲11に記載された発明及び甲10、12、13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、甲3にも、クワシンについては記載も示唆もされていないから、本件発明1は、甲11に記載された発明及び甲3、10、12、13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 したがって、本件発明2も、甲11に記載された発明及び甲3、10、12、13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 よって、本件発明2は、甲11に記載された発明及び甲3、10、12、13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由4によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 (3)本件発明3について ア 本件発明3と甲11発明との対比及び判断 (ア)対比 a 甲11発明における「ナトリウム濃度として、少なくとも、飲料100mlあたり40~80mg含有する」ことは、本件発明1における「ナトリウム濃度が20mg/100ml以上80mg/100ml以下であ」ることに相当する。 b 甲11発明において、「清涼飲料水」が「スポーツドリンク」であることは、本件発明1における「スポーツ飲料」との事項に相当する。 c 上記a、bによれば、本件発明3と甲11発明とは、以下の一致点において一致するとともに、以下の相違点において相違する。 <一致点4-2> 「ナトリウム濃度が20mg/100ml以上80mg/100ml以下である、スポーツ飲料。」である点。 <相違点4-3> 本件発明3における飲料は、「クワシンを含」むのに対し、甲11発明における飲料は、クワシンを含むのか不明である点。 <相違点4-4> 本件発明3における飲料は、「ブリックス値が3.0以下である」のに対し、甲11発明における飲料は、ブリックス値が不明である点。 (イ)判断 a 事案に鑑み、まず上記相違点4-3の容易想到性について検討すると、上記相違点4-3は、クワシンの含有の有無という点では、上記(1)ア(ア)bに示した上記相違点4-1と同じであるから、上記(1)ア(イ)a~dで検討したのと同様の理由により、甲11発明において、上記相違点4-3に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 b よって、上記相違点4-4について検討するまでもなく、本件発明3は、甲11発明及び甲10、12、13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 小括 以上のとおりであるから、本件発明3は、甲11に記載された発明及び甲10、12、13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 よって、本件発明3は、甲11に記載された発明及び甲10、12、13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由4によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 (4)本件発明4について ア 本件発明4と甲11方法発明との対比及び判断 (ア)対比 a 甲11方法発明における「ナトリウム濃度として、少なくとも、飲料100mlあたり40~80mg含有する」ことは、本件発明4における「ナトリウム濃度が20mg/100ml以上80mg/100ml以下であ」ることに相当する。 b 上記aによれば、本件発明1と甲11方法発明とは、以下の一致点において一致するとともに、以下の相違点において相違する。 <一致点4-3> 「ナトリウム濃度が20mg/100ml以上80mg/100ml以下である、飲料における方法。」である点。 <相違点4-5> 本件発明4は、「100ppb以下のクワシンを配合することを特徴とする」のに対し、甲11方法発明は、100ppb以下のクワシンを配合するのか不明である点。 <相違点4-6> 本件発明4における飲料は、「ブリックス値が3.0以下である」のに対し、甲11方法発明における飲料は、ブリックス値が不明である点。 <相違点4-7> 本件発明4は、クワシンを配合することにより、「飲料における塩味」を「抑制」する方法であるのに対し、甲11方法発明は、飲料における塩味を抑制する方法であるのか不明である点。 (イ)判断 a 事案に鑑み、まず上記相違点4-5の容易想到性について検討すると、上記相違点4-5は上記(1)ア(ア)bに示した上記相違点4-1と実質的に同じであるから、上記(1)ア(イ)a~dで検討したのと同様の理由により、甲11方法発明において、上記相違点4-5に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 b よって、上記相違点4-6、4-7について検討するまでもなく、本件発明4は、甲11方法発明及び甲10、12、13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 小括 以上のとおりであるから、本件発明4は、甲11に記載された発明及び甲10、12、13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 よって、本件発明4は、甲11に記載された発明及び甲10、12、13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由4によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 (5)本件発明5について 本件発明5は、本件発明3の特定事項を全て含むものである。 上記(3)イのとおり、本件発明3は、甲11に記載された発明及び甲10、12、13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、甲3にも、クワシンについては記載も示唆もされていないから、本件発明3は、甲11に記載された発明及び甲3、10、12、13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 したがって、本件発明5も、甲11に記載された発明及び甲3、10、12、13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 よって、本件発明5は、甲11に記載された発明及び甲3、10、12、13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由4によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 第8 むすび 以上のとおり、取消理由通知書(決定の予告を含む。)に記載した取消理由1、1’及び特許異議申立書に記載された申立理由1~4のいずれによっても、本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700514

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