特許異議申立
2023-700487
超純水製造システム及び超純水製造方法
- 審判番号
- 2023-700487
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-177465
- 登録番号
- 7171671
- 請求日
- 2023年05月12日
- 審決日
- 2024年08月02日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】野村マイクロ・サイエンス株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人サクラ国際特許事務所
- 【異議申立人】大矢 真紀子
- 審判長/審判官
- 審判長 原 賢一
- 審判官 増山 淳子
- 審判官 金 公彦
- 分類
- P1651.113-YAA(C02F) / P1651.121-YAA(C02F) / P1651.16 -YAA(C02F) / P1651.537-YAA(C02F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第29条の2、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7171671号発明「超純水製造システム及び超純水製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7171671号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕、〔8~14〕について訂正することを認める。
特許第7171671号の請求項1~9、12~14に係る特許を維持する。
特許第7171671号の請求項10、11に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7171671号の請求項1~14に係る特許についての出願は、令和2年10月22日を出願日とする出願であり、令和4年11月7日にその特許権の設定登録がされ、同年同月15日に特許公報が発行され、その後、令和5年5月12日に、その請求項1~14に係る特許を対象として、特許異議申立人の大矢真紀子(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがなされ、同年8月17日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年10月18日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求があり、これに対し、同年12月6日に申立人より意見書の提出があり、令和6年1月25日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である同年3月21日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求があり、これに対し、同年5月17日に申立人より意見書の提出があったものである。
第2 訂正の適否についての判断
令和6年3月21日に特許権者より請求された訂正は適法になされたものと判断する。
以下、その理由につき詳述する。
1 訂正の内容
令和6年3月21日に提出された訂正請求書における訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)の趣旨は、特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり請求項1~14について訂正することを求めるものであり、その内容は、次のとおりである(下線は訂正箇所。)。
なお、本件訂正請求があったので、令和5年10月18日の訂正請求(以下、この訂正請求による訂正を「先の訂正」という。)については、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の
「前処理部、一次純水製造部及び二次純水製造部を有し、超純水を製造するための超純水製造システムであって、
前記前処理部の前段又は前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられ、原水又は被処理水を貯留できる貯留部と、
前記超純水の使用後に得られる、過酸化水素を含有する使用済超純水を、該使用済超純水中に混入された不純物を除去しつつ、前記過酸化水素の一部又は全部を透過させて回収水とする回収処理部と、
前記回収処理部から得られる回収水を、前記貯留部に返送して循環させる循環手段と、
を有することを特徴とする超純水製造システム。」
との記載を、
「前処理部、一次純水製造部及び二次純水製造部を有し、超純水を製造するための超純水製造システムであって、
前記前処理部の前段又は前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられ、原水又は被処理水を貯留できる貯留部と、
前記超純水の使用後に得られる、過酸化水素を含有する使用済超純水を、該使用済超純水中に混入された不純物を除去しつつ、前記過酸化水素の一部又は全部を透過させて回収水とする回収処理部と、
前記回収処理部から得られる回収水を、前記貯留部に返送して循環させる循環手段と、
を有し、
前記貯留部が前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられる場合、前記回収水の過酸化水素濃度が2~50ppmであり、前記前処理部で前記原水を処理して得られる前処理水の次亜塩素酸塩濃度が0.05~10ppmであり、前記貯留部における前記前処理水の供給量に対する前記回収水の供給量の比が10/90~50/50であり、
前記貯留部が前記前処理部の前段に設けられる場合、前記回収水の過酸化水素濃度が2~50ppmであり、前記原水の次亜塩素酸塩濃度が0.05~10ppmであり、前記貯留部における前記原水の供給量に対する前記回収水の供給量の比が10/90~50/50である、
ことを特徴とする超純水製造システム。」
に訂正する。
(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~7についても同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3の
「前記回収処理部が、活性炭装置を有していないことを特徴とする請求項1又は2に記載の超純水の製造システム。」
との記載を、
「前記回収処理部が、活性炭装置を有していないことを特徴とする請求項1又は2に記載の超純水製造システム。」
に訂正する。
(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4~7についても同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項7の
「前記貯留部において、前記原水又は被処理水の供給量に対する前記回収水の供給量を10/90~50/50に調整して供給できる流量調整手段を有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の超純水製造システム。」
との記載を、
「前記貯留部は、前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられ、
前記貯留部において、前記前処理水の供給量に対する前記回収水の供給量を10/90~50/50に調整して供給できる流量調整手段を有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の超純水製造システム。」
に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項8の
「前記回収水を、前記貯留部に返送して循環させる、ことを特徴とする超純水製造方法。」
との記載を、
「前記回収水を、前記貯留部に返送して循環させ、
前記貯留部が前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられる場合、前記回収水の過酸化水素濃度が2~50ppmであり、前記前処理部で前記原水を処理して得られる前処理水の次亜塩素酸塩濃度が0.05~10ppmであり、前記貯留部における前記前処理水の供給量に対する前記回収水の供給量の比が10/90~50/50であり、
前記貯留部が前記前処理部の前段に設けられる場合、前記回収水の過酸化水素濃度が2~50ppmであり、前記原水の次亜塩素酸塩濃度が0.05~10ppmであり、前記貯留部における前記原水の供給量に対する前記回収水の供給量の比が10/90~50/50である、
ことを特徴する超純水製造方法。」
に訂正する。
(請求項8の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9、12~14についても同様に訂正する。)
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項10を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項11を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項12の、「請求項8~11のいずれか1項」との記載を、「請求項8又は9に記載の」に訂正する。
(請求項12の記載を直接的又は間接的に引用する請求項13、14についても同様に訂正する。)
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の在否
(1)訂正事項1、4について
ア 目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の在否
「貯留部」に関し、貯留部が、「前記前処理部の前段又は前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられ」ることに対応し、貯留部内には、「原水又は前処理部で原水を処理して得られる前処理水」と、「回収水」と、を混合した混合水が貯留されているところ、訂正事項1、4は、
「前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられ」る場合と「前記前処理部の前段」「に設けられ」る場合に分けて記載し、「前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられ」る場合には、「回収水」の「過酸化水素濃度」が「2~50ppm」であり、「前処理部」で「原水を処理して得られる前処理水」の「次亜塩素酸塩濃度」が「0.05~10ppm」であり、貯留部における「前処理水の供給量」に対する「回収水の供給量」の比が10/90~50/50であるものに限定し、
貯留部が「前記前処理部の前段」「に設けられ」る場合には、「回収水」の「過酸化水素濃度」が「2~50ppm」であり、「原水」の「次亜塩素酸塩濃度」が「0.05~10ppm」であり、貯留部における「原水の供給量」に対する「回収水の供給量」の比が10/90~50/50であるものに限定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、上記訂正は特許請求の範囲の減縮を行う訂正であるので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
イ 新規事項の有無
(ア)まず、訂正事項1、4のうち、「前記貯留部が前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられる場合、前記回収水の過酸化水素濃度が2~50ppmであり、前記前処理部で前記原水を処理して得られる前処理水の次亜塩素酸塩濃度が0.05~10ppmであり、前記貯留部における前記前処理水の供給量に対する前記回収水の供給量の比が10/90~50/50であり」と訂正する点について検討する。
上記の訂正は、本件の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の【0046】に「本実施形態においては、貯留部5において、前処理水と回収水を混合する」こと、すなわち、貯留部が前処理部と一次純水製造部の間に設けられる場合についての実施形態である旨の記載、及び、「前処理水には、通常、殺菌のための次亜塩素酸塩(例えば次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)等)が含有され、また、回収水には過酸化水素(H2O2)が含有され」ることが記載され、【0051】に「回収水の過酸化水素の濃度は、2~50ppmが好ましく」と記載されていることから、「回収水の過酸化水素の濃度は、2~50ppm」であることを特定し、【0041】に「原水を前処理部2に供給して、原水中の懸濁物質を除去して前処理水を得る」と記載され、【0051】に「前処理水の次亜塩素酸塩の濃度は0.05~10ppmが好ましく」と記載されていることから、「前記前処理部で前記原水を処理して得られる前処理水の次亜塩素酸塩の濃度が0.05~10ppm」であることを特定し、【0052】に「貯留部5における、前処理水の供給量と回収水との供給量は・・・前処理水の供給量に対する回収水の供給量の比(回収水の供給量/前処理水の供給量)を、10/90~50/50とすることが好ましく」と記載されていることから、「前記貯留部における前記前処理水の供給量に対する前記回収水の供給量の比が10/90~50/50であ」ることを特定するものであり、本件明細書に記載された事項の範囲内においてしたものでる。
(イ)次に、訂正事項1、4のうち、「前記貯留部が前記前処理部の前段に設けられる場合、前記回収水の過酸化水素濃度が2~50ppmであり、前記原水の次亜塩素酸塩濃度が0.05~10ppmであり、前記貯留部における前記原水の供給量に対する前記回収水の供給量の比が10/90~50/50である」と訂正する点について検討する。
本件明細書の【0049】には、前処理水と回収水を混合する場合に、「混合により、その混合水中には、次亜塩素酸塩と過酸化水素が共存し、これらの化合物は反応して、一重項酸素(1O2)又はOHラジカル(・OH)が発生する。一重項酸素(1O2)もOHラジカル(・OH)も、いずれも活性が高く、有機物の分解等の作用を有するため、貯留部5内での殺菌処理が、次亜塩素酸塩単独、過酸化水素単独に比べて、著しく向上でき、好ましい殺菌作用を発現できる」と記載されている。
そして、【0029】には、「貯留部5は、図1では、前処理部2と一次純水製造部3との間に設けられている例を示しているが、前処理部2の前段に設けて、原水を一旦貯留部5に供給し、これを回収処理部6で得られた回収水と混合するようにしてもよい」と記載されており、貯留部は前処理部の前段に設けることが記載されている。そうすると、原水と回収水を混合する場合についても、前処理水と回収水を混合する場合と同様に殺菌作用を発現させることを意図していることが理解できるから、原水と回収水を混合する場合、すなわち、「前記貯留部が前記前処理部の前段に設けられる場合」についても、前処理水と回収水を混合する場合、すなわち、「前記貯留部が前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられる場合」と同様に、「回収水の過酸化水素濃度が2~50ppmであり、前記原水の次亜塩素酸塩濃度が0.05~10ppmであり、前記貯留部における前記原水の供給量に対する前記回収水の供給量の比が10/90~50/50である」ことが記載されているといえる。したがって、この訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項3において「超純水製造システム」と記載すべきところを、「超純水の製造システム」と記載していたという誤記を正すものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3について
ア 目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の在否
(ア)訂正事項3のうち、「前記貯留部は、前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられ、」と訂正する点については、「貯留部」の位置を「前記前処理部と前記一次純水製造部の間」に限定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、上記訂正は特許請求の範囲の減縮を行う訂正であるので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(イ)訂正事項3のうち、「前記原水又は被処理水の供給量」を「前記前処理水の供給量」と訂正する点については、「前記貯留部は、前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられ」ることが特定されたことに伴い、貯留部に供給される水が「原水又は被処理水」ではなく、「前処理水」となったため、「原水又は被処理水」との記載を「前処理水」に改めて整合させたものである。そのため、訂正事項3のうち、「前記原水又は被処理水の供給量」を「前記前処理水の供給量」と訂正する点は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
イ 新規事項の有無
(ア)訂正事項3のうち、「前記貯留部は、前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられ、」と訂正する点については、本件明細書【0028】に「本実施形態における貯留部5は、前処理部2と一次純水製造部3との間に設けられ」との記載があることから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
(イ)訂正事項3のうち、「前記原水又は被処理水の供給量」を「前記前処理水の供給量」と訂正する点については、上記ア(イ)に記載したとおり、「前記貯留部は、前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられ」ることが特定されたことに伴い、貯留部に供給される水が「原水又は被処理水」ではなく、「前処理水」となったため、「原水又は被処理水」との記載を「前処理水」に改めて整合させたものであるため、新規事項の追加に該当しない。
(4)訂正事項5、6について
訂正事項5は訂正前の請求項10を削除するものであり、訂正事項6は訂正前の請求項11を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)訂正事項7について
訂正事項7は、訂正事項5及び6により請求項10及び11が削除されたことに伴い、請求項12が請求項10又は11を引用しないようにするものであり、引用請求項数を減少させるものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 申立人の意見
(1)申立人は、令和6年5月17日に提出した意見書において、本件訂正は、下記の点で訂正要件を満たしていない旨主張している。
本件明細書には、「貯留部が前処理部の前段に設けられる場合」について、「原水の次亜塩素酸濃度」及び「貯留部における原水の供給量に対する回収水の供給量」は具体的に示されていない。そして、前処理部の装置において、活性炭吸着(装置)は周知の装置であり、活性炭吸着(装置)により、次亜塩素酸塩が吸着、除去されることは周知技術である。そうすると、このような周知の前処理装置である活性炭吸着(装置)を用いた場合など、前処理装置の構成によっては、「前処理部」の前後、すなわち原水と前処理水とにおける次亜塩素酸塩濃度は変動することがあり、一概に、原水が原水由来の前処理水と同等の次亜塩素酸濃度や過酸化水素濃度を示しているとはいえない。したがって、原水が、原水由来の前処理水と同等の次亜塩素酸濃度や過酸化水素濃度を有していること、さらに、次亜塩素酸濃度や過酸化水素濃度、原水と回収水の混合比について、前処理水の場合と同様の数値限定が適用可能であるとはいえず、本件訂正は発明の詳細な説明に記載された事項を超えるものである。
(2)しかし、本件発明において、前処理部は「例えば、原水中の懸濁物質を除去するための砂ろ過装置、精密ろ過装置等を適宜選択して構成され、さらに必要に応じて原水の温度調整を行う熱交換器等を備えて構成される。なお、原水の水質によっては、前処理部2を省略してもよい」(【0022】)ものであり、活性炭吸着装置等の、次亜塩素酸塩濃度を変化させるようなものは想定されていない。したがって、上記申立人の意見は採用できない。
4 小括
本件訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項〔1~7〕、〔8~14〕について訂正することを求めるものであるところ、上記2に記載のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号乃至第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項において読み替えて準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、訂正後の請求項〔1~7〕、〔8~14〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2に記載のとおり、本件訂正は容認し得るものであるから、異議申立ての対象である本件訂正後の請求項1~9、12~14に係る発明(以下、各請求項に係る発明及び特許を項番に対応させて「本件発明1」、「本件特許1」などといい、併せて「本件発明」、「本件特許」ということがある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~9、12~14に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
前処理部、一次純水製造部及び二次純水製造部を有し、超純水を製造するための超純水製造システムであって、
前記前処理部の前段又は前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられ、原水又は被処理水を貯留できる貯留部と、
前記超純水の使用後に得られる、過酸化水素を含有する使用済超純水を、該使用済超純水中に混入された不純物を除去しつつ、前記過酸化水素の一部又は全部を透過させて回収水とする回収処理部と、
前記回収処理部から得られる回収水を、前記貯留部に返送して循環させる循環手段と、
を有し、
前記貯留部が前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられる場合、前記回収水の過酸化水素濃度が2~50ppmであり、前記前処理部で前記原水を処理して得られる前処理水の次亜塩素酸塩濃度が0.05~10ppmであり、前記貯留部における前記前処理水の供給量に対する前記回収水の供給量の比が10/90~50/50であり、
前記貯留部が前記前処理部の前段に設けられる場合、前記回収水の過酸化水素濃度が2~50ppmであり、前記原水の次亜塩素酸塩濃度が0.05~10ppmであり、前記貯留部における前記原水の供給量に対する前記回収水の供給量の比が10/90~50/50である、
ことを特徴とする超純水製造システム。
【請求項2】
前記回収処理部が、第1の逆浸透膜装置を有することを特徴とする請求項1に記載の超純水製造システム。
【請求項3】
前記回収処理部が、活性炭装置を有していないことを特徴とする請求項1又は2に記載の超純水製造システム。
【請求項4】
前記一次純水製造部が、第2の逆浸透膜装置を有し、該第2の逆浸透膜装置の前段に次亜塩素酸除去装置を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の超純水製造システム。
【請求項5】
前記次亜塩素酸除去装置が、活性炭装置である請求項4に記載の超純水製造システム。
【請求項6】
前記活性炭装置が、高分解型活性炭装置である請求項5に記載の超純水製造システム。
【請求項7】
前記貯留部は、前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられ、
前記貯留部において、前記前処理水の供給量に対する前記回収水の供給量を10/90~50/50に調整して供給できる流量調整手段を有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の超純水製造システム。
【請求項8】
原水を、前処理部、一次純水製造部及び二次純水製造部で処理して超純水を製造する超純水製造方法であって、
前記前処理部の前段又は前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられ、原水又は被処理水を貯留できる貯留部を有し、
前記超純水の使用後に得られる、過酸化水素を含有する使用済超純水を、回収処理部により処理して、該使用済超純水中に混入された不純物を除去しつつ、前記過酸化水素の一部又は全部を透過させて回収水とし、
前記回収水を、前記貯留部に返送して循環させ、
前記貯留部が前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられる場合、前記回収水の過酸化水素濃度が2~50ppmであり、前記前処理部で前記原水を処理して得られる前処理水の次亜塩素酸塩濃度が0.05~10ppmであり、前記貯留部における前記前処理水の供給量に対する前記回収水の供給量の比が10/90~50/50であり、
前記貯留部が前記前処理部の前段に設けられる場合、前記回収水の過酸化水素濃度が2~50ppmであり、前記原水の次亜塩素酸塩濃度が0.05~10ppmであり、前記貯留部における前記原水の供給量に対する前記回収水の供給量の比が10/90~50/50である、
ことを特徴とする超純水製造方法。
【請求項9】
前記回収処理部が、第1の逆浸透膜装置を有することを特徴とする請求項8に記載の超純水製造方法。
【請求項10】
(削除)
【請求項11】
(削除)
【請求項12】
前記一次純水製造部が、第2の逆浸透膜装置と、その前段に次亜塩素酸除去装置を有し、
前記次亜塩素酸除去装置により、前記回収水に含まれている次亜塩素酸塩を除去することを特徴とする請求項8又は9に記載の超純水製造方法。
【請求項13】
前記次亜塩素酸除去装置が、活性炭装置であることを特徴とする請求項12に記載の超純水製造方法。
【請求項14】
前記活性炭装置において、被処理水をSV=5~40h-1で通水することを特徴とする請求項13に記載の超純水製造方法。
第4 異議申立人による特許異議申立理由、令和5年8月17日付けで通知した取消理由、及び令和6年1月25日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要
1 特許異議申立理由の概要
申立人が主張する特許異議申立理由は、概略、以下の通りである。
ここで、申立人が提出した証拠方法は、以下のものである。
甲第1号証:特開2014-226642号公報
甲第2号証:特許第5454468号公報
甲第3号証:特開2004-181364号公報
甲第4号証:特開平8-39079号公報
甲第5号証:特開2012-188318号公報
甲第6号証:特開2020-146619号公報
甲第7号証:特開2012-96187号公報
甲第8号証:特開2006-297180号公報
甲第9号証:特開2010-158605号公報
甲第10号証:松浦輝男、「酸素酸化反応」、昭和52年、丸善株式会社発行、61頁、237頁
甲第11号証:特開2011-224424号公報
甲第12号証:特開昭63-141694号公報
甲第13号証:特開2014-213306号公報
甲第14号証:特開平5-261284号公報
甲第15号証:「超純水の科学」、平成2年、半導体基盤技術研究会編、株式会社リアライズ社発行、164~165頁、191~202頁
甲第16号証:特開2015-100733号公報
甲第17号証:特願2020-102306号(特開2021-194587号公報)
甲第18号証:KOBE INDUSTRIAL WATER 神戸市の工業用水、神戸市水道局、令和2年3月、1~14頁
甲第19号証:大阪市工業用水道特定運営事業等の実施について、令和2年1月29日戦略会議資料、大阪市水道局、表紙及び第18~32頁
(以下、甲第1号証等を略して、「甲1」等という。)
なお、主たる証拠は甲1及び甲17であり、甲2~4は、活性炭が過酸化水素を完全には分解できずにその一部を不可避に透過させてしまうこと、甲5は、逆浸透膜装置では過酸化水素を完全には除去できずにその一部を不可避に透過させてしまうこと、甲6は、EDI装置において過酸化水素を完全には除去できずにその一部を不可避に透過させてしまうこと、甲7は貯留槽等における微生物の増殖による汚染の発生を次亜塩素酸ナトリウムが抑制すること、甲8は、過酸化水素が殺菌作用を有すること、甲9は、塩素系酸化剤の殺菌作用でスライム障害を防止できること、甲10は、過酸化水素と次亜塩素酸が反応すると一重項酸素が生じること、甲11は、ヒドロキシラジカルや一重項酸素、過酸化水素が微生物と反応して抗菌、殺滅作用を発現すること、甲12は、逆浸透膜の殺菌目的に過酸化水素を添加すること、甲13~15は、活性炭は次亜塩素酸ナトリウムを除去できること、甲16は、活性炭装置における通水速度、甲18、19は、工業用水は塩素処理が行われないことについて記載されたものである。
(1)申立理由1(新規性・進歩性)
設定登録時の請求項1、2、7~9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、設定登録時の請求項1~14に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2~16に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって、設定登録時の請求項1、2、7~9に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してなされたものであり、設定登録時の請求項1~14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由2(拡大先願)
設定登録時の請求項1、8に係る発明は、本件特許の出願日前の特許出願であって、本件特許の出願後に出願公開された、甲17である、先願の願書に最初に添付された明細書又は特許請求の範囲(以下、それぞれ「先願明細書」、「先願特許請求の範囲」といい、まとめて「先願明細書等」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の発明者が先願明細書等に記載された発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願時において、本件特許の出願人が先願の出願人と同一でもない。したがって、設定登録時の請求項1、8に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。
(3)申立理由3(サポート要件)
設定登録時の請求項1~14に係る特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
ア 設定登録時の請求項1~14に係る発明の課題は、「使用済超純水を、その中に含まれる過酸化水素を含有させた状態で回収し、循環させて超純水の製造に再利用することにより、超純水製造工程において、細菌の発生や増殖等を抑制し、有機物の含有量を低減し、「簡易な構成で」、装置の清浄化に寄与しうる超純水の製造システム及び製造方法を提供すること」であるところ、この課題の解決には、装置が「簡易な構成」を有することが必要である。そして、設定登録時の請求項1~14に係る発明では「活性炭装置」を有さないことによってこの課題を解決している。そうすると超純粋製造システムが「活性炭装置」を有さないことを特定していない、設定登録時の請求項1~14に係る発明は、発明の課題を解決しない範囲を包含するものである。
イ 設定登録時の請求項1~14に係る発明の課題は、「使用済超純水を、その中に含まれる過酸化水素を含有させた状態で回収し、循環させて超純水の製造に再利用することにより、超純水製造工程において、細菌の発生や増殖等を抑制し、有機物の含有量を低減し、簡易な構成で、装置の清浄化に寄与しうる超純水の製造システム及び製造方法を提供すること」である。そして、この課題を解決するためには、貯留部内において、過酸化水素と次亜塩素酸が、殺菌作用を有する一重項酸素若しくはOHラジカルを所定量で発生させられる濃度で存在していることが必要である。そうすると、貯留部内における過酸化水素濃度及び次亜塩素酸の濃度を特定していない設定登録時の請求項1~14に係る発明は、発明の課題を解決しない範囲を包含するものである。
(4)申立理由4(明確性要件)
設定登録時の請求項1~14に係る特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
ア 「回収処理部」をどのような構成とすれば、過酸化水素の一部又は全部を、本件発明の課題を解決可能な透過量で透過させることができるのか、理解できないため、設定登録時の請求項1~14に係る発明は明確でない。また、「逆浸透膜処理装置62」は「膜処理装置61」の下位概念であるため、膜処理装置61と逆浸透膜装置62とを明確に区別できないし、仮に「回収処理部」を「膜処理装置61と逆浸透膜処理装置62とをこの順番で配置する構成」に限定したとしても、依然として「回収処理部」の技術的範囲は不明確である。
イ 回収処理部において透過させる過酸化水素の量(境界)が明確に特定されていないため、設定登録時の請求項1~14に係る発明は明確でない。
ウ 貯留部における過酸化水素濃度を把握、特定することができないため、設定登録時の請求項1~14に係る発明は明確でない。
2 令和5年8月17日付けで通知した取消理由の概要
(1)取消理由1(新規性・進歩性)
設定登録時の請求項1、2、8、9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、設定登録時の請求項1、2、4~6、8、9、12~14に係る発明は甲1に記載された発明、甲13に記載された事項及び甲2~4に記載された技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって、設定登録時の請求項1、2、8、9に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、設定登録時の請求項1、2、4~6、8、9、12~14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)取消理由2(拡大先願)
設定登録時の請求項1、8に係る発明は、本件特許の出願日前の特許出願であって、本件特許の出願後に出願公開された、甲17の先願明細書等に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の発明者が先願明細書等に記載された発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願時において、本件特許の出願人が先願の出願人と同一でもない。したがって、設定登録時の請求項1、8に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。
(3)取消理由3(サポート要件)
設定登録時の請求項1~14に係る特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
設定登録時の請求項1~14に係る発明の課題は、「使用済超純水を、その中に含まれる過酸化水素を含有させた状態で回収し、循環させて超純水の製造に再利用することにより、超純水製造工程において、細菌の発生や増殖等を抑制し、有機物の含有量を低減し、簡易な構成で、装置の清浄化に寄与し得る、超純水の製造システム及び製造方法を提供すること」ことであり、この課題を解決するためには、「回収水の過酸化水素の濃度」が「2~50ppm」であり、「前処理水の次亜塩素酸塩濃度」が「0.05~10ppm」であり、「前処理水の供給量に対する回収水の供給量の比」が「10/90~50/50」であることが必要である。しかし、設定登録時の請求項1~14にはそのような特定がなく、これらの請求項に係る発明は、課題を解決しないものである。
3 令和6年1月25日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要
(1)取消理由4(サポート要件)
先の訂正による請求項1~6、8~10、12~14に係る特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
先の訂正による請求項1~6、8~10、12~14に係る発明の課題は、使用済超純水を、その中に含まれる過酸化水素を含有させた状態で回収し、循環させて超純水の製造に再利用することにより、超純水製造工程において、細菌の発生や増殖等を抑制し、有機物の含有量を低減し、簡易な構成で、装置の清浄化に寄与し得る、超純水の製造システム及び製造方法を提供すること」であるところ、この課題を解決するには、「前処理部と前記一次純水製造部の間」に「貯留部」が設けられる場合は、「回収水の過酸化水素の濃度」が「2~50ppm」であり、「前処理水の次亜塩素酸塩塩濃度」が「0.05~10ppm」であり、「前処理水の供給量に対する回収水の供給量の比」が「10/90~50/50」であることが必要であり、「貯留部」が「前処理部」の「前段」に設けられる場合は、「回収水の過酸化水素の濃度」が「2~50ppm」であり、「原水の次亜塩素酸塩濃度」が「0.05~10ppm」であり、「原水」の「供給量に対する回収水の供給量の比」が「10/90~50/50」であることが必要である。しかし、先の訂正による請求項1~6、8~10、12~14にはそのような特定がなく、これらの請求項に係る発明は上記発明の課題を解決しないものである。
第5 各証拠の記載事項
1 甲1について
甲1には以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下、同様。)。
(1)「【0001】
本発明は、超純水を製造する超純水製造装置に係り、特に、原水と使用済み超純水から超純水を製造する超純水製造装置及び超純水製造方法に関する。」
(2)「【0019】
前処理システム10は、原水中の濁質分やコロイド成分を除去して原水を前処理水とする。前処理システム10は、前処理水のpHを6~8程度とする。この前処理水は、処理水ピットT1に供給されて貯留される。前処理システム10が処理する原水としては、市水、井水、河川水、工業用水等が挙げられる。このような原水は通常、硬度成分(カルシウム、マグネシウム等)、イオン成分(ナトリウム、塩素イオン、イオン性有機物等)、溶存気体(溶存炭酸、溶存酸素等)、非イオン性有機物、微粒子成分等を含んでいる。前処理システム10は、具体的には、精密ろ過膜や限外ろ過膜等を用いた膜分離装置、生物ろ過装置、紫外線照射装置、活性炭装置等を適宜選択して用いることができる。
【0020】
回収処理システム20は、半導体製造工場等(ユースポイント)で使用された使用済み超純水を回収処理する。使用済み超純水としては、例えば、半導体洗浄工程における洗浄排水を用いる。このような使用済み超純水は、半導体製造工程で使用された薬剤類、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、フッ化水素、アンモニア、水酸化ナトリウム、過酸化水素、イソプロピルアルコールや界面活性剤などの有機物等、剥離したレジスト等の有機物を含み、pHは1~3程度である。
【0021】
逆浸透膜装置21は、被処理水中の塩類やイオン性の有機物、コロイド性の有機物を除去する。すなわち、逆浸透膜装置21は、使用済み超純水中の硫酸、塩酸、硝酸、酢酸等やイオン性有機物等を除去して透過水とする。この透過水は、後段の電気脱イオン装置22に供給される。逆浸透膜装置21の濃縮水の一部は電気脱イオン装置22の電極室に電極水として供給され、残部は系外に排出される。逆浸透膜装置21としては、例えば、酢酸セルロース、ポリアミド等からなる逆浸透膜を、スパイラル型、チューブラー型、ホローファイバ型等、任意の形式としたモジュールを備えたものを用いることができる。
・・・
【0024】
電気脱イオン装置22は、逆浸透膜装置21の透過水中に残留するイオン成分を除去するものである。電気脱イオン装置22は、陽極と陰極の間に交互に配置された陰イオン交換膜と陽イオン交換膜とを有している。また、電気脱イオン装置22は、陰イオン交換膜と陽イオン交換膜によって仕切られた脱塩室と、除去されたイオン成分を含む濃縮水が流入する濃縮室とを交互に有している。電気脱イオン装置22は、脱塩室内に充填された陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂との混合体と、直流電圧を印加するための電極を有している。
・・・
【0031】
上記したように、使用済み超純水は、種々の薬剤類を含んでいるため、本実施形態の回収処理システム20は、逆浸透膜装置21の上流側に、逆浸透膜を保護する目的で、使用済み超純水中の過酸化水素等を分解除去するための活性炭装置や有機物を酸化分解するための紫外線酸化装置を備えることが好ましい。
・・・
【0040】
逆浸透膜装置31は、回収処理システム20で用いられる逆浸透膜装置21と同様の装置を用いることができる。上述したように、逆浸透膜装置31の被処理水(混合処理水)中では、フッ化水素はそのほとんどが解離して、フッ素イオンとして溶存している。そのため、逆浸透膜装置31において、酸やアルカリ等の薬品を用いてpHを調整することなく、フッ素を効率よく除去することができる。逆浸透膜装置31の脱塩率(ナトリウムイオンの除去率)は、96~99.8%であることが好ましい。逆浸透膜装置31の水回収率は、60~98%が好ましく、80~95%がより好ましい。
・・・
【0043】
電気脱イオン装置32は、逆浸透膜装置31の透過水中のイオン成分(塩類、イオン性有機物等)を除去するものであり、回収処理システム20で用いられる電気脱イオン装置22と同様のものを使用することができる。本実施形態の一次純水システム30では、逆浸透膜装置31において、イオン化したフッ素のほとんどが除去されており、電気脱イオン装置32への負荷を軽減することができる。そのため、電気脱イオン装置32でのイオン成分の除去率を向上させることができる。
・・・
【0047】
混床式イオン交換装置としては、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を混合して充填した装置を用いることができ、再生式、非再生式のいずれであってもよい。混床式イオン交換装置は、前段の紫外線酸化装置で有機物が酸化分解して生成した低分子量のイオン成分を吸着除去する。また、膜脱気装置は、紫外線酸化装置の処理水中の溶存炭酸及び溶存酸素を除去する。
・・・
【0053】
二次純水システム40は、例えば、紫外線酸化装置、非再生式ポリッシャー、膜脱気装置及び限外ろ過装置を備えている。二次純水システム40において、これらの装置が一次純水を順に処理し、全有機炭素(TOC)濃度が数十μgC/Lまで低減された一次純水中の有機物をさらに数μgC/Lまで低減して超純水とする。」
(3)「【実施例】
【0063】
次に、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。
本実施例に係る超純水製造装置2の構成を図2に示す。以下の説明において、図1と共通の機能を有する装置は同一の符号を付して示し、重複する説明を省略する。
【0064】
図2に示される超純水製造装置2は、前処理システム10と、回収処理システム20と、一次純水システム30と、二次純水システム40とを備えている。二次純水システム40は、ユースポイント(POU)50に接続され、ユースポイント(POU)50で回収された使用済み超純水は、回収処理システム20に送られるようになっている。
【0065】
回収処理システム20は、活性炭装置(AC)23と、紫外線酸化装置(TOC-UV)24と、2段逆浸透膜装置(RO)21a,21bと、電気脱イオン装置22をこの順に備えている。
【0066】
前処理システム10と回収処理システム20は、それぞれ処理水ピットT1に接続されており、処理水ピットT1の下流側には、一次純水システム30と、一次純水タンクT2と、二次純水システム40とが配管を用いてこの順に接続されている。
【0067】
一次純水システム30は、紫外線照射装置(UV)33、プレフィルター(PF)342段逆浸透膜装置(RO)31a,31b、膜脱気装置(MDG)35、電気脱イオン装置(EDI)32、紫外線酸化装置(TOC-UV)36、混床式イオン交換装置(MB)37、膜脱気装置(MDG)38をこの順に備えている。また、一次純水システム30は、余剰の一次純水が図示しない配管によって処理水ピットT1に循環されるよう構成されている。
【0068】
二次純水システム40は、紫外線酸化装置(TOC-UV)41、非再生式ポリッシャー(Polisher)42、膜脱気装置(MDG)43、限外ろ過装置(UF)44をこの順に備えている。二次純水システム40は、余剰の超純水が図示しない配管によって一次純水タンクT2に循環されるよう構成されている。
・・・
【0074】
実施例では、導電率200μS/cm、pH7.3、硬度60mg/L(as CaCO3)、炭酸濃度30mg/L(as CaCO3)の工業用水を、一日あたりの流量10,000m3/dで前処理システム10に供給した。また、導電率1,500μS/cm、pH1.8、フッ素濃度6mg/L(as CaCO3)の使用済み超純水を一日あたりの流量9,500m3/dで回収処理システム20に供給した。
実施例で用いた工業用水及び使用済み超純水の水質を表1に示す。
【0075】
【表1】
[図:0001416444000001.jpg]
・・・
【0079】
このように、超純水製造装置2では回収処理システム20及び一次純水システム30において十分なイオン除去率を得ることができる。そのため、使用済み超純水を利用して高水質の超純水を製造することができる。また、イオン交換樹脂を省略できるので、これを再生するための薬品使用量を大幅に削減でき、コストを削減することができる。」
(4)「【図2】
[図:0001416444000002.jpg]
」
2 甲17について
(1)「【請求項1】
一次純水システムと、二次純水システムと、前記二次純水システムからユースポイントに供給されて使用された超純水を回収水として回収し、前記回収水を活性炭で処理して前記一次純水システムまたはその上流側に還流させる回収システムと、を有する超純水製造装置の運転管理システムであって、 前記二次純水システムの上流側の所定位置から採取した試料水中の過酸化水素濃度を算出する過酸化水素濃度分析装置と、
前記過酸化水素濃度分析装置による算出値に基づいて、前記一次純水システムで製造された一次純水を前記二次純水システムに供給するか否かを制御するとともに、前記回収システムの前記活性炭が劣化しているか否かを判定する制御装置と、を有する、超純水製造装置の運転管理システム。」
(2)「【0001】
本発明は、超純水製造装置の運転管理システム、超純水製造装置、および超純水製造装置の運転方法に関する。
・・・
【0003】
こうした超純水製造装置の中には、洗浄などに使用された超純水を回収水として回収し、過酸化水素などの薬品を活性炭で分解処理した回収処理水を前処理システムや一次純水システムに還流させる回収システムを備えたものがある(例えば、特許文献1,2参照)。このような回収システムでは、例えば、過酸化水素濃度が活性炭で処理しきれないほど高い場合など、回収処理水に比較的高濃度の過酸化水素が残留して一次純水システムに導入されてしまい、それが一次純水システムでも処理されずにサブシステムに導入されてしまうことがある。そのような過酸化水素は、サブシステムでも処理されないため、例えば超純水をシリコンウエハの洗浄液として使用する場合、シリコンウエハの表面に自然酸化膜を形成したり、微細な配線を腐食させたりするなどの要因となる。そこで、特許文献3に記載の超純水製造装置では、サブシステムに導入される過酸化水素の濃度を管理するために、一次純水システムの任意の位置における過酸化水素濃度に基づいて、サブシステムへの一次純水の供給を制御することが行われている。」
(3)「【0014】
超純水製造装置1は、河川水、地下水、工業用水などの原水を順次処理することにより超純水を製造し、その超純水をユースポイント2に供給するものであり、一次純水システム10と二次純水システム(サブシステム)20を有している。また、超純水製造装置1は、ユースポイント2に供給されて使用された超純水を回収水として回収して処理する回収システム30を有している。
【0015】
一次純水システム10は、前処理システム(図示せず)で除濁や脱塩素などの前処理が施された原水(前処理水)を順次処理して一次純水を製造するものであり、前処理水タンク11と、熱交換器12と、紫外線酸化装置13と、精密ろ過膜装置14と、逆浸透膜装置15と、混床式イオン交換装置16と、膜脱気装置17とを有している。これらは、超純水製造装置の一次純水システムにおいて一般的に採用されるものであり、各装置の詳細な構成や機能については、例えば、国際公開第2009/082008号を参照されたい。
・・・
【0018】
回収システム30は、回収水タンク31と、活性炭処理装置32と、混床式イオン交換装置33とを有している。ユースポイント2に供給されて使用された超純水は、回収ラインL5を通じて回収され、回収水として回収水タンク31に貯留される。なお、回収ラインL5には、バルブV3と、導電率計や全有機炭素(TOC)濃度計などの水質計(図示せず)が設けられ、バルブV3の上流側には、バルブV4を介して回収水排出ラインL6が接続されている。これにより、使用済みの超純水のうち一定の水質基準を満たしたもの、すなわち、導電率とTOC濃度のいずれもが基準値以下となったものを回収することができる。回収水タンク31に貯留された回収水は、活性炭を含む活性炭処理装置32で主に過酸化水素が除去された後、混床式イオン交換装置33でイオン類が除去される。こうして処理された回収処理水は、回収処理水ラインL7を通じて前処理水タンク11に還流される。なお、回収処理水ラインL7は、前処理システムに接続されていてもよく、したがって、回収処理水が前処理システムに還流されるようになっていてもよい。
・・・
【0025】
上述したように、一次純水システム10内の過酸化水素濃度の上昇は、被処理水(前処理水)のTOC濃度や処理流量の変動などに応じて発生するが、その他にも、回収システム30による過酸化水素の処理性能が低下した場合に発生することがある。すなわち、活性炭処理装置32の活性炭が経年劣化すると、回収水中の過酸化水素が十分に分解処理されず、回収処理水に比較的高濃度の過酸化水素が残留してしまい、一次純水システム10内の過酸化水素濃度を上昇させることがある。この場合、上述した水質回復工程により一時的に過酸化水素濃度が低下しても、高濃度の過酸化水素を含む回収処理水が一次純水システム10に還流され続けるため、一次純水システム10内の過酸化水素濃度はすぐに上昇してしまう。
【0026】
逆に言えば、制御装置5は、水質回復工程の終了後、濃度分析装置4による過酸化水素の算出濃度の変化を観察することで、活性炭処理装置32の活性炭が劣化しているか否かを判定することができる。すなわち、制御装置5は、活性炭処理装置32の活性炭の劣化の有無を判定する判定システム(状態判定システム)として機能し、過酸化水素の算出濃度が所定時間内に再び所定値を超えた場合、あるいは、算出濃度が一定以上の速度で上昇し、所定時間内に所定値を超えることが予測される場合に、活性炭処理装置32の活性炭が劣化していると判定することができる。なお、このときの所定時間は、特に限定されず、活性炭の種類や処理能力、処理水量などに応じて適宜設定することができ、例えば、最長で48時間である。
【0027】
制御装置5により活性炭処理装置32の活性炭が劣化していると判定された場合、例えば、警報などでそのことを外部に通知した上で、まず、排水運転が行われる。具体的には、一次純水供給ラインL1のバルブV1が閉鎖されるとともに、一次純水排出ラインL4のバルブV2が開放されることで、一次純水システム10で製造された一次純水が外部に排出される。こうして、サブシステム20への一次純水の供給が停止されるため、所定値を超える濃度の過酸化水素がサブシステム20に導入されることが抑制される。それと同時に、それまで行われていた回収システム30による回収水の回収が停止される。具体的には、回収ラインL5のバルブV3が閉鎖されるとともに、回収水排出ラインL6のバルブV4が開放されることで、ユースポイント2で使用された超純水は、全てが回収水排出ラインL6を通じて外部に排出される。こうして、一次純水システム10への回収処理水への還流が停止されるため、高濃度の過酸化水素が一次純水システム10に導入されることが抑制される。
【0028】
さらに、排水運転時には、上述した循環運転時と同様に、前処理水供給ラインL3を通じて前処理水タンク11に前処理水が供給される水質回復工程が実行される。これにより、所定値を超える濃度の過酸化水素を含む一次純水が外部に排出されつつ前処理水で希釈され、一次純水システム10内の過酸化水素濃度が低下する。そして、濃度分析装置4による過酸化水素の算出濃度が所定値以下になった時点で、前処理水タンク11への前処理水の供給が停止され、水質回復工程が終了するのと同時に、排水運転から給水運転への切り替えが行われ、サブシステム20への一次純水の供給が再開される。【0029】
なお、活性炭処理装置32の活性炭が劣化していると判定されたときに、前処理水タンク11の空き容量に、前処理水による希釈のみで過酸化水素濃度を低下させられるだけの余裕があれば、節水の観点から、排水運転の代わりに循環運転を行ってもよい。また、一次純水還流ラインL2に過酸化水素を分解処理する手段が設けられていれば、排水運転の代わりに循環運転を行ってもよい。過酸化水素を分解処理する手段としては、上述したように、活性炭や還元剤添加手段などが挙げられる。
【0030】
一方で、回収システム30による回収水の回収が停止された後、活性炭処理装置32の活性炭の交換が行われる。そして、活性炭の交換後、回収水排出ラインL6のバルブV4が閉鎖されるとともに、回収ラインL5のバルブV3が開放されることで、回収システム30による回収水の回収も再開される。
【0031】
以上のように、本実施形態の運転管理システム3によれば、一次純水システム10内の過酸化水素濃度が上昇しても、その過酸化水素がサブシステム20に導入されることを抑制することができる。その結果、サブシステム20に導入される過酸化水素の濃度を適切に管理することができる。加えて、一次純水システム10内の過酸化水素濃度の上昇が回収システム30の活性炭の経年劣化によるものかどうかを適切に判断することができ、活性炭の交換が必要か否かを適切に判断することもできる。」
(4)「【図1】
[図:0001416444000003.jpg]
」
3 乙第1~3号証について
特許権者は、令和5年10月18日又は令和6年3月21日に、意見書とともに、下記の乙第1~3号証を提出している。
乙第1号証:国際公開第2020/045061号
乙第2号証:特開平9-192657号公報
乙第3号証:特開昭57-35986号公報
(以下、乙第1号証等を略して、「乙1」等という。)
(1)乙1について
乙1には、以下の事項が記載されている。
「[0033] 紫外線酸化装置において過剰の紫外線照射が行われた場合、有機物の酸化分解に寄与しないOHラジカル同士が反応して過酸化水素が発生する。この発生した過酸化水素は、下流の電気式脱イオン装置が有する電極やイオン交換体を劣化させることがある。」
(2)乙2について
乙2には、以下の事項が記載されている。
「【0032】
・・・比較例では紫外線殺菌ランプ装置10をバイパスしたために、低圧紫外線ランプ酸化装置9よりリークした過酸化水素が混床式イオン交換装置11中のイオン交換樹脂を酸化して劣化させ・・・」
(3)乙3について
乙3には、以下の事項が記載されている。
「飲料水または工業用水などに提供される水道水はその衛生的見地から浄水場において塩素(または次亜塩素酸ソーダ)による滅菌処理を行ない,さらに配水途中における汚染を防止する意味で配水末端の水道栓蛇口において残留遊離塩素(以下残留塩素とする)が0・1ppm(結合残留塩素の場合は0・4ppm)以上保持されることが定められている。」(第1頁右欄9~16行)
第6 当審の判断
1 申立理由1(新規性・進歩性)および取消理由1(新規性・進歩性)について
(1)甲1に記載された発明
上記第5の1(3)には、実施例として「前処理システム10と、回収処理システム20と、一次純水システム30と、二次純水システム40とを備え」(【0064】)、「二次純水システム40は、ユースポイント(POU)50に接続され、ユースポイント(POU)50で回収された使用済み超純水は、回収処理システム20に送られ」(【0064】)、「回収処理システム20は、活性炭装置(AC)23と、紫外線酸化装置(TOC-UV)24と、2段逆浸透膜装置(RO)21a,21bと、電気脱イオン装置22をこの順に備え」(【0065】)、「前処理システム10と回収処理システム20は、それぞれ処理水ピットT1に接続されており、処理水ピットT1の下流側には、一次純水システム30と、一次純水タンクT2と、二次純水システム40とが配管を用いてこの順に接続され」(【0066】)、「一次純水システム30は、紫外線照射装置(UV)33、プレフィルター(PF)34、2段逆浸透膜装置(RO)31a,31b、膜脱気装置(MDG)35、電気脱イオン装置(EDI)32、紫外線酸化装置(TOC-UV)36、混床式イオン交換装置(MB)37、膜脱気装置(MDG)38をこの順に備え」(【0067】)、「二次純水システム40は、紫外線酸化装置(TOC-UV)41、非再生式ポリッシャー(Polisher)42、膜脱気装置(MDG)43、限外ろ過装置(UF)44をこの順に備えた」(【0068】)、「超純水製造装置2」が記載されており、「工業用水を、一日あたりの流量10,000m3/dで前処理システム10に供給し」、「使用済み超純水を一日あたりの流量9,500m3/dで回収処理システム20に供給する」(【0074】)ことが記載されている。
加えて、同(3)の【表1】には、ユースポイント(POU)50で回収されて回収処理システム20に送られる水である「使用済み超純水」の過酸化水素(H2O2)濃度が18mg/Lであることが記載されている。また、甲1には、超純水製造装置に加えて、超純水製造方法(【0001】)、すなわち「前記超純水製造装置を用いて超純水を製造する方法」についても記載されているといえる。
そうすると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「前処理システム10と、回収処理システム20と、一次純水システム30と、二次純水システム40とを備え、
二次純水システム40は、ユースポイント(POU)50に接続され、ユースポイント(POU)50で回収された使用済み超純水は、回収処理システム20に送られ、
回収処理システム20は、活性炭装置(AC)23と、紫外線酸化装置(TOC-UV)24と、2段逆浸透膜装置(RO)21a,21bと、電気脱イオン装置22をこの順に備え、
前処理システム10と回収処理システム20は、それぞれ処理水ピットT1に接続されており、処理水ピットT1の下流側には、一次純水システム30と、一次純水タンクT2と、二次純水システム40とが配管を用いてこの順に接続され、一次純水システム30は、紫外線照射装置(UV)33、プレフィルター(PF)34、2段逆浸透膜装置(RO)31a,31b、膜脱気装置(MDG)35、電気脱イオン装置(EDI)32、紫外線酸化装置(TOC-UV)36、混床式イオン交換装置(MB)37、膜脱気装置(MDG)38をこの順に備え、二次純水システム40は、紫外線酸化装置(TOC-UV)41、非再生式ポリッシャー(Polisher)42、膜脱気装置(MDG)43、限外ろ過装置(UF)44をこの順に備え、
使用済み超純水の過酸化水素(H2O2)濃度が18mg/Lであり、
工業用水が一日あたりの流量10,000m3/dで前処理システム10に供給され、使用済み超純水が一日あたりの流量9,500m3/dで回収処理システムに供給される
超純水製造装置及び前記超純水製造装置を用いて超純水を製造する方法。」
(2)本件発明1について
ア 甲1発明との対比
(ア)甲1発明の「超純水製造装置」は、超純水を製造するための装置であり、前処理システム10と、回収処理システム20と、一次純水システム30と、二次純水システム40とを備えている。
ここで、「システム」とは、「複数の要素が有機的に関係しあい、全体としてまとまった機能を発揮している要素の集合体[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]」を意味する語句であるため、前処理システム10、回収処理システム20、一次純水システム30、二次純水システム40という4つの要素を有し、これら4つが機能を発揮することで全体として超純水製造を実行している甲1発明の超純水製造装置は、超純水製造システムであるといえる。
そのため、甲1発明の超純水を製造するための「超純水製造装置」は、本件発明1の「超純水を製造するための超純水製造システム」に相当する。
(イ)本件発明1の「前処理部」は、本件明細書【0022】の記載によれば「原水中の懸濁物質を除去」するものである。これに対し、甲1発明の「前処理システム10」は「原水中の濁質分やコロイド成分を除去して原水を前処理水とする」(【0019】)ものである。そして、本件発明1の「前処理部」と甲1発明の「前処理システム10」は、両者とも、原水中の濁質分を除去する機能を担っていることから、甲1発明の「前処理システム10」は本件発明1の「前処理部」に相当する。
(ウ)本件発明1の「一次純水製造部」は、本件明細書【0024】の記載によれば「前処理水中の不純物を除去して純水を製造するもの」である。これに対し、甲1発明の「一次純水システム30」は、2段逆浸透膜装置(RO)31a,31b、膜脱気装置(MDG)35、電気脱イオン装置(EDI)32、混床式イオン交換装置(MB)37を備えており、逆浸透膜装置は被処理水から不純物であるナトリウムイオンを除去(【0040】)し、電気脱イオン装置は不純物であるイオン成分(塩類、イオン性有機物等)を除去(【0043】)し、膜脱気装置は不純物である溶存炭酸及び溶存酸素を除去(【0047】)し、混床式イオン交換装置は不純物であるイオン成分を吸着除去(【0047】)するものである。本件発明1の「一次純水製造部」と甲1発明の「一次純水システム30」は、両者とも、不純物の除去を行っていることから、甲1発明の「一次純水システム30」は本件発明1の「一次純水製造部」に相当する。
(エ)本件発明1の「二次純水製造部」は、本件明細書【0027】の記載によれば「一次純水中の微量不純物を除去して超純水を製造する」ものである。これに対し、甲1発明の「二次純水システム40」は「一次純水中の有機物をさらに数μgC/Lまで低減して超純水とする」(【0053】)ものであり、両者とも一次純水中の不純物除去を行っていることから、甲1発明の「二次純水システム40」は本件発明1の「二次純水製造部」に相当する。
(オ)上記(ア)~(エ)を踏まえると、甲1発明の「前処理システム10と、回収処理システム20と」、「二次純水システム40とを備え」た「超純水製造装置」は、本件発明1の「前処理部、一次純水製造部及び二次純水製造部を有し、超純水を製造するための超純水製造システム」に相当する。
(カ)甲1発明の「処理水ピットT1」は「前処理システム10から得られた前処理水と、回収処理システム20から得られた回収処理水を貯留することで、これらを混合して混合処理水とするもの」(【0036】)であり、「前処理水」、「回収処理水」、そしてこれらが混合された「混合処理水」が貯留される部分である。一方、本件発明1の「貯留部」は、「前処理部2で処理された前処理水と、後述する回収処理部6で得られた回収水とが、それぞれ供給され、これらを混合して一次純水製造部以降の被処理水として貯留する」(【0028】)ものである。そのため、甲1発明の「混合処理水」、「処理水ピットT1」は、それぞれ本件発明1の「被処理水」、「貯留部」に相当する。
(キ)甲1発明の「前処理システム10」が「処理水ピットT1に接続され」る点と、「処理水ピットT1の下流側には、一次純水システム30」が「接続」される点から、処理水ピットT1は前処理システム10と一次純水システム30の間にあるといえる。そのため、甲1発明の「前処理システム10」は「処理水ピットT1に接続され」、「処理水ピットT1の下流側には、一次純水システム30」が「接続」される点は、本件発明1の(貯留部が)「前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられ」に相当する。
(ク)上記(カ)及び(キ)を踏まえると、甲1発明の、「前処理システム10」は「処理水ピットT1に接続され」、「処理水ピットT1の下流側には、一次純水システム30」が「接続」され、前処理水と回収処理水を貯留し、これらを混合して混合処理水とする「処理水ピットT1」は、本件発明1の「前記前処理部の前段又は前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられ、原水又は被処理水を貯留できる貯留部」に相当する。
(ケ)甲1発明では、使用済み超純水の過酸化水素(H2O2)濃度が18mg/Lである。濃度が0より大きいので、この使用済み超純水は過酸化水素を含有しているといえる。また、ユースポイント(POU)50とは超純水が使用される場所である。そのため、甲1発明の、ユースポイント(POU)50で回収された、「過酸化水素(H2O2)濃度が18mg/L」である「使用済み超純水」は、本件発明1の「超純水の使用後に得られる、過酸化水素を含有する使用済超純水」に相当する。
(コ)甲1発明の回収処理システム20は、2段逆浸透膜装置(RO)21a,21bと、電気脱イオン装置22とを備えている。逆浸透膜装置21は、不純物である塩類、イオン性の有機物、コロイド性の有機物を除去(【0021】)するものであり、電気脱イオン装置は不純物であるイオン成分を除去(【0024】)するものである。そのため、甲1発明の、「2段逆浸透膜装置(RO)21a,21bと、電気脱イオン装置22と」を備えた「回収処理システム20」は、本件発明1の「使用済超純水中に混入された不純物を除去しつつ、前記過酸化水素の一部又は全部を透過させて回収水とする回収処理部」と、「使用済超純水中に混入された不純物を除去し」「回収水とする回収処理部」である点で共通する。
(サ)甲1発明は「回収処理システム20は、それぞれ処理水ピットT1に接続されており、処理水ピットT1の下流側には、一次純水システム30と、一次純水タンクT2と、二次純水システム40とが配管を用いてこの順に接続され」る構成であり、回収処理システム20と処理水ピットT1、処理水ピットT1と一次純水システム30、一次純水システム30と二次純水システム40とが、それぞれ配管で接続されている。そして、回収処理システム20で処理された回収処理水は接続された順に、つまり、回収処理システム20、処理水ピットT1、一次純水システム30、二次純水システム40の順に流れる構成である。他方、本件発明1の「循環手段」について、本件明細書【0038】には「回収水を貯留部5へと流通できる配管」であると記載されている。そのため、甲1発明の回収処理システム20と処理水ピットT1を接続する「配管」は、本件発明1の「循環手段」に相当する。すると、甲1発明の、回収処理システム20と処理水ピットT1が「配管」により接続され、回収処理システム20で処理された回収処理水が処理水ピットT1へと流れる点は、本件発明1の「回収処理部から得られる回収水を、前記貯留部に返送して循環させる循環手段」に相当する。
(シ)上記(ア)~(サ)によると、本件発明1と甲1発明は、
「前処理部、一次純水製造部及び二次純水製造部を有し、超純水を製造するための超純水製造システムであって、
前記前処理部の前段又は前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられ、原水又は被処理水を貯留できる貯留部と、
前記超純水の使用後に得られる、過酸化水素を含有する使用済超純水を、該使用済超純水中に混入された不純物を除去して回収水とする回収処理部と、
前記回収処理部から得られる回収水を、前記貯留部に返送して循環させる循環手段と、
を有し、
前記貯留部が前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられる、
超純水製造システム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1は、「使用済超純水中に混入された不純物を除去しつつ、前記過酸化水素の一部又は全部を透過させて回収水とする回収処理部」を備えるのに対し、甲1発明の「回収処理システム20」は、不純物(塩類、イオン性の有機物、コロイド性の有機物、イオン成分)を除去する構成ではあるものの、過酸化水素等を分解除去する機能を持つ活性炭装置23を備えているため、過酸化水素の一部を透過させるものであるかどうか不明である点。
<相違点2>
「前記貯留部が前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられる場合」について、本件発明1は「前記回収水の過酸化水素濃度が2~50ppmであり、前記前処理部で前記原水を処理して得られる前処理水の次亜塩素酸塩濃度が0.05~10ppmであり、前記貯留部における前記前処理水の供給量に対する前記回収水の供給量の比が10/90~50/50であ」るのに対し、甲1発明では「使用済み超純水の過酸化水素(H2O2)濃度が18mg/Lであり、工業用水が一日あたりの流量10,000m3/dで前処理システム10に供給され、使用済み超純水が一日あたりの流量9,500m3/dで回収処理システムに供給され」るものであり、
「前記貯留部が前記前処理部の前段に設けられる場合」について、本件発明1は「前記回収水の過酸化水素濃度が2~50ppmであり、前記原水の次亜塩素酸塩濃度が0.05~10ppmであり、前記貯留部における前記原水の供給量に対する前記回収水の供給量の比が10/90~50/50である」のに対し、甲1発明では「前記貯留部が前記前処理部の前段に設けられる場合」について特定がない点。
イ 相違点について
事案に鑑み、相違点2について検討する。
「前記貯留部が前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられる場合」について、甲1発明では、使用済み超純水が、活性炭装置(AC)、紫外線酸化装置(TOC-UV)、2段逆浸透膜装置(RO)、電気脱イオン装置をこの順に備える回収処理システムで処理される。そして、甲1には、第5の1(2)によれば「回収処理システム20は、逆浸透膜装置21の上流側に、逆浸透膜を保護する目的で、使用済み超純水中の過酸化水素等を分解除去するための活性炭装置・・・を備えることが好ましい」(【0031】)ことが記載されている。そうすると、甲1発明においては、回収処理システム中の逆浸透膜の保護のために、逆浸透膜に到達する前に、使用済み超純水の過酸化水素濃度をできるだけ下げることが好ましいことが記載されているといえるため、回収処理システムを経た使用済み超純水の過酸化水素濃度をできるだけ下げることが記載されているといえる。また、乙1(第5の3(1))にも記載されているとおり、電気式脱イオン装置は、過酸化水素で劣化することが知られているため、甲1発明の回収処理システム中の電気脱イオン装置の保護のためにも過酸化水素濃度はできるだけ下げられていることも理解される。
一方、本件発明1では、回収処理水の過酸化水素濃度をできるだけ下げるということはせず、あえて2~50ppmとすることによって、「混合水中には、次亜塩素酸塩と過酸化水素が共存し、これらの化合物は反応して、一重項酸素(1O2)又はOHラジカル(・OH)が発生する。一重項酸素(1O2)もOHラジカル(・OH)も、いずれも活性が高く、有機物の分解等の作用を有するため、貯留部5内での殺菌処理が、次亜塩素酸塩単独、過酸化水素単独に比べて、著しく向上でき、好ましい殺菌作用を発現できる」(【0049】)との効果を発揮するものである。
してみれば、甲1発明では過酸化水素濃度はできるだけ下げるべきものであるため、その過酸化水素濃度を2~50ppmとする動機付けはないし、過酸化水素濃度を2~50ppmとすることによって、貯留部内で好ましい殺菌作用が発現されるという効果も予測できるものではない。そうすると、本件発明1のうち「前記貯留部が前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられる場合」については、甲1発明から容易に想到しうるものではない。
次に、「前記貯留部が前記前処理部の前段に設けられる場合」について検討すると、甲1には、貯留部が前処理部の前に設けられることは記載も示唆もされていないし、第5の1(2)によれば甲1発明は「回収処理システム20は、逆浸透膜装置21の上流側に、逆浸透膜を保護する目的で、使用済み超純水中の過酸化水素等を分解除去するための活性炭装置・・・を備えることが好ましい」(【0031】)ものであるから、貯留部を前処理部の前段に設けることは想定されていない。
しかも、「前記貯留部が前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられる場合」で述べたのと同様の理由により、回収水の過酸化水素濃度を2~50ppmとする動機付けはないし、過酸化水素濃度を2~50ppmとすることによって、貯留部で好ましい殺菌作用が発現されるという効果も予測できるものではない。
したがって、「前記貯留部が前記前処理部の前段に設けられる場合」についても、甲1発明から容易に想到しうるものではない。
また、甲2~16には、前処理水または原水の過酸化水素濃度を2~50ppmとすることについての記載や示唆はない。
したがって、本件発明1は、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲2~16に記載の事項から当業者が容易に発明しうるものではない。
(3)本件発明8について
本件発明8は、システムの発明である本件発明1を装置の発明に書き換えたものであるから、本件発明8と甲1発明は、本件発明1と甲1発明と同じ一致点、相違点を有する。したがって、上記(2)の記載を踏まえると、本件発明8は、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲2~16に記載の事項から当業者が容易に発明しうるものではない。
(4)本件発明2~7、9、12~14について
本件発明2~7は、本件発明1の全ての特定事項を含むものであるから、上記(2)で検討したのと同様の理由により、甲1発明であるといえないし、甲1発明及び甲2~甲16に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものともいえない。
また、本件発明9、12~14は、本件発明8の全ての特定事項を含むものであるから、上記(3)で検討したのと同様の理由により、甲1発明であるといえないし、甲1発明及び甲2~16に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものともいえない。
(5)小括
以上のとおりであるから、申立理由1および取消理由1は理由がない。
2 申立理由2(拡大先願)及び取消理由2(拡大先願)について
(1)甲17先願明細書等に記載された発明
ア 甲17先願明細書等の上記第5の2(1)の記載によれば、【請求項1】として、「一次純水システムと、二次純水システムと、前記二次純水システムからユースポイントに供給されて使用された超純水を回収水として回収し、前記回収水を活性炭で処理して前記一次純水システムまたはその上流側に還流させる回収システムと、を有する超純水製造装置の運転管理システムであって、前記二次純水システムの上流側の所定位置から採取した試料水中の過酸化水素濃度を算出する過酸化水素濃度分析装置と、前記過酸化水素濃度分析装置による算出値に基づいて、前記一次純水システムで製造された一次純水を前記二次純水システムに供給するか否かを制御するとともに、前記回収システムの前記活性炭が劣化しているか否かを判定する制御装置と、を有する、超純水製造装置」が記載されているといえる。
イ 上記アの「一次純水システム」について、上記第5の2(3)には「一次純水システム10は、前処理システム(図示せず)で除濁や脱塩素などの前処理が施された原水(前処理水)を順次処理して一次純水を製造する」(【0015】)との記載があることから、超純水製造装置が一次純水システムの前段に「前処理システム」を備えることがわかる。
ウ また、上記アの「一次純水システム」について、上記第5の2(3)には「一次純水システム10は、前処理システム(図示せず)で除濁や脱塩素などの前処理が施された原水(前処理水)を順次処理して一次純水を製造するものであり、前処理水タンク11と、熱交換器12と、紫外線酸化装置13と、精密ろ過膜装置14と、逆浸透膜装置15と、混床式イオン交換装置16と、膜脱気装置17とを有している。」(【0015】)との記載、及び、「回収水タンク31に貯留された回収水は、活性炭を含む活性炭処理装置32で主に過酸化水素が除去された後、混床式イオン交換装置33でイオン類が除去される。こうして処理された回収処理水は、回収処理水ラインL7を通じて前処理水タンク11に還流される。」(【0018】)との記載があることから、一次純水システム10が「前処理水タンク11」と、「精密ろ過膜装置14と、逆浸透膜装置15と、混床式イオン交換装置16と、膜脱気装置17」を備えること、前処理水タンク11に前処理が施された原水が流入すると共に、活性炭処理装置及び混床式イオン交換装置で処理された回収処理水が回収水ラインを通じて還流されることがわかる。
エ 上記アの「回収水」について、上記第5の2(3)には「活性炭処理装置32の活性炭が経年劣化すると、回収水中の過酸化水素が十分に分解処理されず、回収処理水に比較的高濃度の過酸化水素が残留してしまい」(【0025】)との記載があることから、回収水が過酸化水素を含有することがわかる。
オ 上記第5の2(2)の、「本発明は、超純水製造装置の運転管理システム、超純水製造装置、および超純水製造装置の運転方法に関する」(【0001】)との記載によれば、甲17先願明細書等には、超純水製造装置の運転管理システムに加えて、超純水製造装置、超純水製造装置の運転方法についても記載されていると認められるが、超純水製造装置の運転方法において、超純水製造装置を運転するとは、超純水製造装置とは不可分の関係にある超純水製造装置の運転管理システムを運転することであるともいえるから、甲17先願明細書等には、超純水製造装置の運転管理システムの運転方法も記載されているといえる。
カ 上記ア~オを踏まえると、甲17先願明細書等には次の発明(以下、「甲17発明」という。)が記載されていると認められる。
「一次純水システムと、二次純水システムと、前記二次純水システムからユースポイントに供給されて使用された超純水を回収水として回収し、前記回収水を活性炭で処理して前記一次純水システムまたはその上流側に還流させる回収システムと、を有する超純水製造装置の運転管理システム、及び、超純水製造装置の運転管理システムの運転方法であって、
前記二次純水システムの上流側の所定位置から採取した試料水中の過酸化水素濃度を算出する過酸化水素濃度分析装置と、
前記過酸化水素濃度分析装置による算出値に基づいて、前記一次純水システムで製造された一次純水を前記二次純水システムに供給するか否かを制御するとともに、前記回収システムの前記活性炭が劣化しているか否かを判定する制御装置と、
前処理システムと、を有し、
前記一次純水システムは、前処理システムで除濁や脱塩素などの前処理が施された原水(前処理水)を順次処理して一次純水を製造するものであり、
前記一次純水システムは、前処理水タンクと、精密ろ過膜装置と、逆浸透膜装置と、混床式イオン交換装置と、膜脱気装置とを備え、
前処理水タンクに、前処理が施された原水が流入すると共に、回収システムの活性炭及び混床式イオン交換装置で処理された回収処理水が回収水ラインを通じて還流され、
前記回収水が過酸化水素を含有する、
超純水製造装置の運転管理システム、及び、超純水製造装置の運転管理システム。」
(2)本件発明1について
ア 甲17発明との対比
(ア)甲17発明の「超純水製造装置の運転管理システム」は、「超純水」を「製造」するために、「超純水製造装置の運転管理」を行う「システム」であるから、本件発明1の「超純水を製造するための超純水製造システム」に相当する。
(イ)本件発明1の「前処理部」は、本件明細書【0022】の記載によれば「原水中の懸濁物質を除去」するものである。これに対し、甲17発明の「前処理システム」は「除濁や脱塩素などの前処理」(【0015】)を行うものである。そして、本件発明1の「前処理部」と甲17発明の「前処理システム」は、両者とも、原水中の「濁」を除去する機能を担っていることから、甲17発明の「前処理システム」は本件発明1の「前処理部」に相当する。
(ウ)本件発明1の「一次純水製造部」は、本件明細書【0024】の記載によれば、「前処理水中の不純物を除去して純水を製造するもの」である。これに対し、甲17発明の「精密ろ過膜装置14と、逆浸透膜装置15と、混床式イオン交換装置16と、膜脱気装置17」は、いずれも一次純水を製造するために不純物を除去する装置である。そのため、甲17発明の「精密ろ過膜装置14と、逆浸透膜装置15と、混床式イオン交換装置16と、膜脱気装置17」は本件発明1の「一次純水製造部」に相当する。
(エ)本件発明1の「二次純水製造部」は、本件明細書【0027】の記載によれば、「一次純水中の微量不純物を除去して超純水を製造する」ものである。これに対し、甲17発明の「二次純水システム」(【0017】ではサブシステム20と呼称)は「一次純水システム10で製造された一次純水を順次処理して超純水を製造」(【0017】)ものであり、両者とも一次純水を処理して超純水を製造していることから、甲17発明の「二次純水システム」は本件発明1の「二次純水製造部」に相当する。
(オ)上記(ア)~(エ)を踏まえると、甲17発明の「前処理システム」と、「一次純水システムと、二次純水システム」とを備えた「超純水製造装置の運転管理システム」は、本件発明1の「前処理部、一次純水製造部及び二次純水製造部を有し、超純水を製造するための超純水製造システム」に相当する。
(カ)甲17発明の「前処理水タンク」は、前処理が施された原水と、回収システムの活性炭及び混床式イオン交換装置で処理された回収処理水が導入されるタンクである。そして、タンクとは、液体又は気体を収容し貯める容器を意味する語句であるので、「前処理水タンク」は、前処理が施された原水と、回収システムの活性炭及び混床式イオン交換装置で処理された回収処理水とを収容し貯める容器を意味する。そのため、甲17発明の「前処理された原水」が貯められる「前処理水タンク」は、本件発明1の「原水又は被処理水を貯留できる貯留部」に相当する。
(キ)上記第5の2(3)の「一次純水システム10は、前処理システム(図示せず)で除濁や脱塩素などの前処理が施された原水(前処理水)を順次処理して一次純水を製造するものであり、前処理水タンク11と、熱交換器12と、紫外線酸化装置13と、精密ろ過膜装置14と、逆浸透膜装置15と、混床式イオン交換装置16と、膜脱気装置17とを有している。」(【0015】)の記載からは、甲17発明の「前処理水タンク11」が「前処理システム」の下流に存在することが分かる。加えて、上記第5の2(4)の【図1】からは、甲17発明の「前処理水タンク11」が「精密ろ過膜装置14、逆浸透膜装置15、混床式イオン交換装置16、膜脱気装置17」の上流に位置している点が看取できる。
また前記(ウ)に記載したとおり、甲17発明の「精密ろ過膜装置14と、逆浸透膜装置15と、混床式イオン交換装置16と、膜脱気装置17」は本件発明1の「一次純水製造部」に相当する。
このことから、甲17発明の、「前処理システム」の下流、且つ、「精密ろ過膜装置14、逆浸透膜装置15、混床式イオン交換装置16、膜脱気装置17」の上流に位置する「前処理水タンク」は、本件発明1の「前記処理部と前記一次純水製造部の間に設けられ」る「貯留部」に相当する。
(ク)上記(カ)及び(キ)を踏まえると、甲17発明の、「前処理システム」の下流、且つ、「精密ろ過膜装置14、逆浸透膜装置15、混床式イオン交換装置16、膜脱気装置17」の上流に位置し、「前処理された原水」が貯められる「前処理水タンク」は、本件発明1の「前記前処理部の前段又は前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられ、原水又は被処理水を貯留できる貯留部」に相当する。
(ケ)甲17発明では、「ユースポイントに供給されて使用された超純水を回収水として回収」しており、この回収水は過酸化水素を含有している。そのため、甲17発明の「ユースポイントに供給されて使用され」、「過酸化水を含有」している「回収水」は、本件発明1の「超純水の使用後に得られる、過酸化水素を含有する使用済超純水」に相当する。
(コ)甲17発明の「回収システム」は、混床式イオン交換装置33を備えており、混床式イオン交換装置33では不純物であるイオン類が除去される(【0018】)構成である。そのため、甲17発明の、「混床式イオン交換装置」を備えた「回収システム」は、本件発明1の「使用済超純水中に混入された不純物を除去しつつ、前記過酸化水素の一部又は全部を透過させて回収水とする回収処理部」と、「使用済超純水中に混入された不純物を除去し」「回収水とする回収処理部」である点で共通する。
(サ)上記(カ)で記載したように、甲17発明の「前処理水タンク」は、本件発明1の「貯留部」に相当する。そして、甲17発明の「回収水ライン」と本件発明1の「循環手段」は、いずれも回収水(回収処理水)を貯留部(タンク)へ送る経路である。そのため、甲17発明の、「回収システムの活性炭及び混床式イオン交換装置で処理された回収処理水」を「前処理水タンク」に還流させる「回収水ライン」は、本件発明1の「回収処理部から得られる回収水を、前記貯留部に返送して循環させる循環手段」に相当する。
(シ)上記(ア)~(サ)によると、本件発明1と甲17発明は、
「前処理部、一次純水製造部及び二次純水製造部を有し、超純水を製造するための超純水製造システムであって、
前記前処理部の前段又は前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられ、原水又は被処理水を貯留できる貯留部と、
前記超純水の使用後に得られる、過酸化水素を含有する使用済超純水を、該使用済超純水中に混入された不純物を除去しつつ、回収水とする回収処理部と、
前記回収処理部から得られる回収水を、前記貯留部に返送して循環させる循環手段と、
を有する超純水製造システム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点3>
本件発明1は「使用済超純水中に混入された不純物を除去しつつ、前記過酸化水素の一部又は全部を透過させて回収水とする回収処理部」を備えるのに対し、甲17発明の「回収システム」は不純物(イオン類)を除去する構成ではあるものの、過酸化水素を分解除去する機能を持つ活性炭処理装置32を備えているため、過酸化水素の一部を透過させるものであるかどうか不明である点。
<相違点4>
「前記貯留部が前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられる場合」について、本件発明1は、「前記回収水の過酸化水素濃度が2~50ppmであり、前記前処理部で前記原水を処理して得られる前処理水の次亜塩素酸塩濃度が0.05~10ppmであり、前記貯留部における前記前処理水の供給量に対する前記回収水の供給量の比が10/90~50/50であ」るのに対し、甲17発明では、回収システムの活性炭及び混床式イオン交換装置で処理された回収処理水の過酸化水素濃度、前処理が施された原水の次亜塩素酸塩濃度、回収処理水と前処理が施された原水の供給量の比が不明であり、「前記貯留部が前記前処理部の前段に設けられる場合」について、本件発明1は「前記回収水の過酸化水素濃度が2~50ppmであり、前記原水の次亜塩素酸塩濃度が0.05~10ppmであり、前記貯留部における前記原水の供給量に対する前記回収水の供給量の比が10/90~50/50である」のに対し、甲17発明では「前記貯留部が前記前処理部の前段に設けられる場合」について特定がない点。
イ 相違点について
事案に鑑み、相違点4について検討する。
甲17発明は、「前記貯留部が前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられる場合、前記回収水の過酸化水素濃度が2~50ppmであり、前記前処理部で前記原水を処理して得られる前処理水の次亜塩素酸塩濃度が0.05~10ppmであり、前記貯留部における前記前処理水の供給量に対する前記回収水の供給量の比が10/90~50/50」である、又は、「前記貯留部が前記前処理部の前段に設けられる場合、前記回収水の過酸化水素濃度が2~50ppmであり、前記原水の次亜塩素酸塩濃度が0.05~10ppmであり、前記貯留部における前記原水の供給量に対する前記回収水の供給量の比が10/90~50/50」との構成を有していないが、甲17先願明細書等には、甲17発明が上記の構成を有する蓋然性があることを示す記載や示唆もない。
してみれば、少なくとも相違点4は実質的な相違点である。
したがって、本件発明1は甲17発明であるとはいえない。
(3)本件発明8について
本件発明8は、システムの発明である本件発明1を装置の発明に書き換えたものであるから、本件発明8と甲17発明は、本件発明1と甲17発明と同じ一致点、相違点を有する。したがって、上記(2)を踏まえると、本件発明8は、甲17発明ではない。
(4)小括
以上のとおりであるから、申立理由2及び取消理由2は理由がない。
3 申立理由3(サポート要件)、取消理由3(サポート要件)及び取消理由4(サポート要件)について
(1)申立理由3のうち、上記第4の1(3)アの点について
本件明細書の【0070】には「以上より、過酸化水素を含有する使用済超純水を回収して再利用する超純水製造装置において、回収処理時に、あえて過酸化水素を含有させたまま循環させ、被処理水とすることで、原水又は前処理水と混合した後、生菌数やTOC等を抑制することができることがわかった。
このとき、回収処理時に通常設けられていた活性炭装置を省略することができ、装置を簡素化するとともに、設置面積を縮小することもできる。」
と記載されている。そうすると、本件発明の主な課題は「原水又は前処理水と混合した後、生菌数やTOC等を抑制すること」であり、「活性炭装置を省略すること」、「装置を簡素化するとともに、設置面積を縮小すること」は、主な課題ではなく、好ましい一態様の副次的な効果であることが理解できる。
したがって、「活性炭装置」を有さないことを特定していなくとも、本件発明1~14は本件発明の課題を解決するものである。
(2)申立理由3のうち、上記第4の1(3)イの点、取消理由3、及び取消理由4について
ア 本件訂正によって、本件発明は、「前記貯留部が前記前処理部と前記一次純水製造部の間に設けられる場合、前記回収水の過酸化水素濃度が2~50ppmであり、前記前処理部で前記原水を処理して得られる前処理水の次亜塩素酸塩濃度が0.05~10ppmであり、前記貯留部における前記前処理水の供給量に対する前記回収水の供給量の比が10/90~50/50であり、
前記貯留部が前記前処理部の前段に設けられる場合、前記回収水の過酸化水素濃度が2~50ppmであり、前記原水の次亜塩素酸塩濃度が0.05~10ppmであり、前記貯留部における前記原水の供給量に対する前記回収水の供給量の比が10/90~50/50である」ものとなった。
イ 申立理由3のうち、上記第4の1(3)イの点について
本件訂正によって貯留部に供給される回収水の過酸化水素濃度、貯留部に供給される前処理水又は原水の次亜塩素酸塩濃度、貯留部に供給される回収水と前処理水又は原水の量比が特定されたのであるから、貯留部内における過酸化水素濃度及び次亜塩素酸の濃度が特定範囲にあることが特定されたといえる。
ウ 取消理由3について
「回収水の過酸化水素の濃度」が「2~50ppm」であり、「前処理水の次亜塩素酸濃度」が「0.05~10ppm」であり、「前処理水の供給量に対する回収水の供給量の比」が「10/90~50/50」であることが特定された。
エ 取消理由4について
「前処理部と前記一次純水製造部の間」に「貯留部」が設けられる場合は、「回収水の過酸化水素の濃度」が「2~50ppm」であり、「前処理水の次亜塩素酸塩濃度」が「0.05~10ppm」であり、「前処理水の供給量に対する回収水の供給量の比」が「10/90~50/50」であること、「貯留部」が「前処理部」の「前段」に設けられる場合は、「回収水の過酸化水素の濃度」が「2~50ppm」であり、「原水の次亜塩素酸塩濃度」が「0.05~10ppm」であり、原水の「供給量に対する回収水の供給量の比」が「10/90~50/50」であることが特定された。
(3)小括
上記のとおりであるから、申立理由3、取消理由3及び取消理由4には理由がない。
4 申立理由4(明確性)について
(1)第4の1(4)のアについて
本件明細書の記載も考慮すれば、同【0030】に、「回収処理部6は、過酸化水素を含有する使用済超純水から、使用により混合された不純物を除去しつつ、過酸化水素は透過させて、再度超純水を製造する被処理水として回収するもの」であることが記載されており、回収処理部の意味するところは明確である。
さらに、【0032】~【0034】には、「回収処理部としては・・・膜処理装置61と逆浸透膜装置62(第1の逆浸透膜装置)とを、この順番で配置する構成が例示できる。」、「ここで膜処理装置61としては、精密ろ過膜(MF)、限外ろ過膜(UF)等が例示でき、使用済超純水中に含まれる微粒子を除去するもので、逆浸透膜装置62の前段に配置されるものである。なお、膜処理装置は必須の要素ではない。」、「逆浸透膜装置62としては、水処理で用いられる公知の逆浸透膜装置が挙げられ、特に限定されるものではない。」と記載されている。ここで、「膜処理装置61と逆浸透膜装置62(第1の逆浸透膜装置)とを、この順番で配置する構成」において、「膜処理装置62」は、「精密ろ過膜(MF)、限外ろ過膜(UF)等の、使用済超純水中に含まれる微粒子を除去するもの」であり、逆浸透膜装置とは異なる処理装置である。そうすると、「逆浸透膜処理装置62」が「膜処理装置61」の下位概念ということはなく、「逆浸透膜処理装置62」と「膜処理装置61」を明確に区別できるから、回収処理部が「膜処理装置と逆浸透膜装置とをこの順番で配置する構成」についても、明確である。
(2)第4の1(4)のイについて
訂正により、本件発明1~14において、回収処理部において透過させる過酸化水素の量(境界)は2~50ppmであることが特定された。
(3)第4の1(4)のウについて
本件訂正によって、貯留部に供給される回収水の過酸化水素濃度、貯留部に供給される前処理水又は原水の次亜塩素酸塩濃度、貯留部に供給される回収水と前処理水又は原水の量比が特定されたのであるから、貯留部内における過酸化水素濃度が特定範囲にあることが特定されたといえる。
(4)小括
以上のとおりであるから、申立理由4は理由がない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1~9、12~14に係る特許は、特許異議申立書に記載された申立理由、及び、当審が通知した取消理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件発明1~9、12~14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件訂正により請求項10、11は削除されたから、請求項10、11に係る特許異議の申立てについては対象となる請求項が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700487