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特許異議申立

2023-700445

リサイクルされたアルミニウムスクラップの鋳造

審判番号
2023-700445
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-552143
登録番号
7163304
請求日
2023年04月28日
審決日
2023年09月11日
公報発行日
2023年10月27日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】ノベリス・インコーポレイテッド
  • 【権利者代理人】松谷 道子
  • 【権利者代理人】江間 晴彦
  • 【権利者代理人】新免 勝利
  • 【異議申立人】黒野 美穂
審判長/審判官
  • 審判長 池渕 立
  • 審判官 山本 佳
  • 審判官 土屋 知久
分類
P1651.121-Y (C22B) / P1651.537-Y (C22B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7163304号発明「リサイクルされたアルミニウムスクラップの鋳造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7163304号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7163304号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~11に係る特許についての出願(以下、「本願」という。)は、2018年(平成30年) 3月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年 3月23日米国(US))を国際出願日とする出願であって、令和 4年10月21日に特許権の設定登録がされ、同年10月31日に特許掲載公報が発行され、その後、令和 5年 4月28日に、請求項1~11(全請求項)に係る特許に対し、特許異議申立人である黒野美穂(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 本件特許の特許請求の範囲の請求項1~11に係る発明は、本願の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、順に「本件発明1」~「本件発明11」といい、総称して「本件発明」ということがある。また、本件特許の願書に添付した明細書及び図面を「本件明細書等」という。)。 「【請求項1】 リサイクルされたアルミニウムを液体金属に溶融することと、 改質液体金属を形成するために合金元素を前記液体金属に添加することであって、前記合金元素がマグネシウム、シリコン、または銅を含む、ことと、 前記改質液体金属を金属製品に鋳造することであって、前記改質液体金属が少なくとも50%のリサイクルされたアルミニウムを含み、鋳造中に0.08mL/100グラム~0.25mL/100グラムの水素含有量を有する、ことと、 前記金属製品を圧延することであって、前記圧延が前記金属製品を熱間圧延および冷間圧延することを含む、ことと、 前記冷間圧延後に前記金属製品を焼鈍温度まで再加熱することと、を含み、前記焼鈍温度が、前記金属製品の固相線温度未満であり、 前記改質液体金属が、0.1~0.9重量%のCu、0.25重量%~0.7重量%のFe、0.6重量%~7.0重量%のMg、0.1重量%~0.9重量%のMn、0.01重量%~1.0重量%のSi、0.01重量%~0.15重量%のTi、0.01重量%~5.0重量%のZn、0.01重量%~0.25重量%のCr、0.01重量%~0.1重量%のZr、最大0.15重量%までの不純物、およびAl、を含むアルミニウム合金を含み、 前記不純物が、Sn、Ga、Ca、Bi、Na、Pb、Li、W、Mo、Ni、およびVから選択された少なくとも1種を、各元素について0.05重量%以下の量で含む、 金属鋳造方法。 【請求項2】 前記圧延が、前記金属製品を配送のためのゲージに冷間圧延することを含む、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記配送のためのゲージが、中間ゲージである、請求項2に記載の方法。 【請求項4】 前記配送のためのゲージが、最終ゲージである、請求項2に記載の方法。 【請求項5】 前記改質液体金属が、1.5重量%~7.0重量%の量のマグネシウムを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。 【請求項6】 前記改質液体金属が、約1.5重量%~約4重量%の量のマグネシウムを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。 【請求項7】 前記鋳造が、前記改質液体金属を連続的に鋳造することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。 【請求項8】 前記鋳造が、前記改質液体金属を直接チル鋳造することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。 【請求項9】 前記リサイクルされたアルミニウムが、缶蓋および缶胴からのリサイクルされた金属の混合物を含有する使用済み飲料缶スクラップを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。 【請求項10】 前記改質液体金属が、少なくとも60%のリサイクルされたアルミニウムを含む、請求項1~ 9のいずれか一項に記載の方法。 【請求項11】 前記改質液体金属が、少なくとも80%のリサイクルされたアルミニウムを含む、請求項10に記載の方法。」 第3 申立理由の概要 申立人は、証拠方法として、次の甲第1~8号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲8」という。)を提出し、以下の申立理由1~4により、請求項1~11に係る本件特許は取り消されるべきものである旨主張している。 (証拠方法) 甲第1号証:特開平11-293363号公報 甲第2号証:特表平11-501988号公報 甲第3号証:特開平5-320808号公報 甲第4号証:吉田政博、「アルミニウムの脱ガスと溶湯ろ過(当審注:原文では「ろ」は「さんずい」に「戸」)、日本金属学会会報、1984年、第23巻、第11号、第941~949頁 甲第5号証:大塚良達、「アルミニウムの溶解と溶湯処理」、軽金属、1994年、Vol.44、No.8、p.461~471 甲第6号証:特開平7-205534号公報 甲第7号証:アルミニウムハンドブック(第7版)、社団法人日本アルミニウム協会、2007年、p.16~17 甲第8号証:アルミニウムハンドブック(第7版)、社団法人日本アルミニウム協会、2007年、p.32 1 申立理由1(進歩性) 本件発明1~6、9~11は、甲1に記載された発明及び甲3~甲5に記載された事項に基いて、また、本件発明7~8は、甲1に記載された発明及び甲3~甲6に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 申立理由2(進歩性) 本件発明1~6、9~11は、甲2に記載された発明及び甲3~甲5に記載された事項に基いて、また、本件発明7~8は、甲2に記載された発明及び甲3~甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 3 申立理由3(明確性要件) 本件発明1~11について、焼鈍温度に関し、下限温度が不明であり、本件明細書等に具体的に記載されている「約1時間、350℃以上の温度に加熱すること」以外の温度条件を含みうるのか否かが明確ではないため、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 4 申立理由4(サポート要件) 本件発明1~11について、焼鈍温度に関し、下限温度が特定されておらず、本件明細書等に具体的に記載されている「約1時間、350℃以上の温度に加熱すること」の要件を超える範囲を含んでいるため、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 第4 当審の判断 以下に述べるように、上記第3の申立理由のいずれによっても本件特許の請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない。 1 申立理由3(明確性要件)について (1)申立理由3の概要は次のとおりである。すなわち、本件請求項1に記載の「冷間圧延後に前記金属製品を焼鈍温度まで再加熱することと、を含み、前記焼鈍温度が、前記金属製品の固相線温度未満であ」るという記載(以下、「焼鈍処理要件」という。)に関し、焼鈍温度の下限温度が特定されていないから、本件明細書等に具体的に記載されている「約1時間、350℃以上の温度に加熱すること」以外の温度条件での処理、例えば、180℃に再加熱する処理が上記焼鈍処理要件に含まれるのか否かが明確でないため、本件請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が明確でない(特許異議申立書第34頁)。 (2)しかしながら、アルミニウム製造において、「焼鈍」とは、加工・成形などによって生じる材料内部の歪みを除去して材料を軟化させる処理を意味するものであって、例えば、材料の母相に固溶している元素を析出して材料を硬化させる時効処理を含まないことは明らかである。 (3)そして、本件明細書等にも、「冷間圧延された金属製品318を熱処理することができる。場合によっては、熱処理には焼鈍しが含まれる。ブロック312では、冷間圧延された金属製品319を、好適な期間、焼鈍温度以上に再加熱することができる。例えば、冷間圧延された金属製品319を約1時間、350℃以上の温度に加熱すると、金属製品はO調質となり得る。」(段落【0097】)と記載されており、「O調質」とは、「焼鈍し後のアルミニウム合金を指す」(段落【0020】)ことが記載されている。 (4)上記(2)、(3)によれば、上記焼鈍処理要件とは、上記(2)で述べたとおり、材料を軟化させる処理を意味していることは明確である。 (5)したがって、上記焼鈍処理要件に該当するか否かは、焼鈍温度によるものではなく、材料を軟化させる処理であるか否かによって判断されるものであり、材料を軟化させない処理は上記焼鈍処理要件に該当しない。すなわち、上記(1)の180℃に再加熱する処理が上記焼鈍処理要件に該当するか否かは、180℃に再加熱することが材料を軟化させる処理である場合には該当し、材料を軟化させない処理である場合には該当しないといえる。 (6)よって、本件請求項1、及び、本件請求項1を引用する本件請求項2~11の記載は、特許を受けようとする発明が明確である。 (7)申立理由3のまとめ したがって、本件請求項1、及び、本件請求項1を引用する本件請求項2~11の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものであるから、申立理由3によっては、本件特許の請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない。 2 申立理由4(サポート要件) (1)申立理由4の概要は次のとおりである。すなわち、焼鈍温度に関し、下限温度が特定されておらず、本件明細書等に具体的に記載されているのは「約1時間、350℃以上の温度に加熱すること」のみであるため、「約1時間、350℃以上の温度に加熱すること」の要件を超える範囲を含んでいるから、本件発明は、発明の詳細な説明の記載によってサポートされているとはいえない(特許異議申立書第35頁)。 (2)本件発明に関するサポート要件の判断 ア 本件明細書等には、「UBCスクラップなどのリサイクルされたスクラップを使用してある特定の金属製品、特に、ある特定の仕様制限内の材料特性を有していなければならない製品を製造する現在の技術では、時間、空間、およびエネルギー(例えば、液体UBC金属からの不純物の除去または広範囲の鋳造後加工および処理)の点で高価であるか、または(例えば、液体UBC金属を十分量の新規な金属で希釈することにより)相当な量の新規な材料の使用が必要となる」(段落【0006】)、「リサイクルされたスクラップは他の不純物および合金元素を含んでいる場合があり、」「これらの不純物および合金元素の濃度は、液体金属を(例えば、熱的、化学的、磁気的、および/または電気的に)処理して不純物または合金元素を除去することによって、かつ/または新規の一次アルミニウムを溶融液に加えることによって、低下させることができる。液体金属の処理には、時間、機器、エネルギーが必要である。一次アルミニウムはリサイクルされたスクラップよりも生産コストが高いため、一次アルミニウムを加えると、リサイクルされた含有量を低下させ、コストを上昇させる。」「本明細書に記載の技術を使用すると、リサイクルされたスクラップを、ほとんどまたは全く精製せず、かつ一次アルミニウムをほとんどまたは全く添加せずに、使用することができる。」(段落【0028】)と記載されている。 イ 上記アによれば、本件発明の解決しようとする課題(以下、単に「課題」という。)は、UBCスクラップなどのリサイクルされたスクラップを使用して、リサイクルされたスクラップを、ほとんどまたは全く精製せず、かつ一次アルミニウムをほとんどまたは全く添加せずに、ある特定の金属製品、特に、ある特定の仕様制限内の材料特性を有していなければならない製品を製造することであると認められる。 ウ そして、本件明細書等には、段落【0029】~【0030】に、リサイクルされたスクラップは、マグネシウムおよび/または他の合金元素を添加することで、液体金属の鋳造性が改善され、最終製品の冶金学的特性が改善されたリサイクルされた含有物合金を得ることができ、追加の合金元素として、場合によっては銅(Cu)および/またはシリコン(Si)が添加できること、段落【0089】~【0097】にも、冷間および熱間圧延を使用して、リサイクルされたスクラップ由来の金属製品を鋳造および圧延するためのプロセスにおいて、リサイクルされたスクラップから得られる液体金属に、追加の合金元素を添加して、所望の濃度の合金元素を有する改質液体金属を達成できることが記載されている。 エ さらに、本件明細書等には、実施例1に、「約0.25重量%のCuおよび約0.15重量%のSiをUBCスクラップに添加することによって生成され、約0.37重量%のCuおよび約0.29重量%のSiを含む組成物」である「UBC1合金」と、「UBC1と同様に作製されるが、約1.0重量%のMgが添加され、約2.59重量%のMgを含む組成物」である「UBC2合金」を得る方法が記載され、例えば、実施例2、実施例5では、「UBC1合金」、「UBC2合金」について、「標準5754DC合金」との特性の比較が記載され、特に、「UBC2合金」において、「UBCスクラップにマグネシウムを添加すると、連続鋳造技術を使用して合金が鋳造される場合、規格限界が達成され得ること」(段落【0158】)、「UBC2は、5754CC1合金と同様の機械的特性を達成した」(段落【0192】)ことが記載されている。 オ そうすると、上記ウ、エに述べた本件明細書等の記載を考慮すれば、本件発明1のように「リサイクルされたアルミニウムを液体金属に溶融」し、「マグネシウム、シリコン、または銅を含む」「合金元素」を「液体金属に添加」し、「改質液体金属を形成」することによれば、上記イの課題が解決できることが理解できる。 カ よって、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2~11は、「リサイクルされたアルミニウムを液体金属に溶融することと、改質液体金属を形成するために合金元素を前記液体金属に添加することであって、前記合金元素がマグネシウム、シリコン、または銅を含む」との特定事項を備えたものであり、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものとはいえないから、発明の詳細な説明に記載されたものである。 (3)申立人による上記(1)の主張を検討すると、焼鈍条件によって、上記(2)イの課題を解決できないのではないかとの疑義を生じる根拠は何ら示されていない。 加えて、上記1(2)~(5)で述べたとおり、本件明細書等の記載から、本件発明において、「焼鈍」とは、材料を軟化させる処理を意味することは明らかであるから、本件明細書等に具体例として「約1時間、350℃以上の温度に加熱すること」のみが記載されていることのみをもって、サポート要件違反であるとはいえない。 したがって、申立人の上記(1)の主張は採用できない。 (4)申立理由4のまとめ したがって、本件発明1~11について、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものであるから、申立理由4によっては、本件特許の請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない。 3 申立理由1(甲1を主たる引用文献とする新規性、進歩性について) (1)甲1の記載 甲1には、「自動車部材用アルミニウム合金の製造方法及びこれにより得られる自動車部材」(発明の名称)に関して、次の記載がある。(なお、下線は当審が付した。以下同じ。) ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 アルミニウム合金鋳物屑にアルミニウム合金展伸材屑もしくは地金を加えて、溶解して不純物を希釈し、必要に応じて成分調整を行うことを特徴とする自動車部材用アルミニウム合金の製造方法。 【請求項2】 アルミニウム合金鋳物屑の50%以上が自動車用アルミニウム合金鋳物屑で構成されたものである請求項1記載の自動車部材用アルミニウム合金の製造方法。 【請求項3】 溶解、希釈後、必要に応じて成分調整を行った後のアルミニウム合金の組成が、Si0.5~5.0wt%、Mg0.2~5.0wt%、Mn0.01~1.2wt%、Zn0.1~1.2wt%、Cu0.2~1.2wt%、Fe0.2~2.0wt%を含み、かつCr0.01~0.2wt%、Zr0.01~0.2wt%、V0.01~0.2wt%、Ti0.01~0.2wt%のうち1種または2種以上を含み残部Alと不可避的不純物とからなるものである請求項1または2に記載の自動車部材用アルミニウム合金の製造方法。」 イ 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は自動車部材用アルミニウム合金の製造方法とこれにより得られる自動車部材に関するものであり、より詳しくはアルミニウム合金鋳物屑をスペースフレーム等自動車部材用展伸材にリサイクルすることを可能にする自動車部材用のアルミニウム合金の製造方法に関するものである。」 ウ 「【0002】 【従来の技術】近年、あらゆる分野で資源のリサイクル等有効利用を求める声が高まっており、アルミニウムにおいても例外ではなく、資源のリサイクルが望まれている。アルミニウム合金材料をリサイクルする場合、一般的な方法として、不純物の少ない高品位の材料から不純物が多い低品位の材料へとリサイクルされて行く方法が取られている。従って、アルミニウム合金は、リサイクルされる度に、不純物の多いより低品位の材料へと再生使用され、最終的には不純物を多く含んだ鋳物部品等に利用される。 【0003】さらに鋳物部品が屑になった場合、一部は鉄鋼脱酸材に利用されていくが、その他は再度鋳物へ回されるかもしくは向け先のない余剰屑として廃棄されるのが現状であった。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、アルミニウム合金鋳物屑を再生し、自動車部材として適用可能なアルミニウム合金を得ることができる製造方法とこれにより得られる自動車部材を提供することを目的とするものである。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明者等は上記課題に鑑み鋭意検討した結果、アルミニウム合金鋳物屑にアルミニウム合金展伸材屑もしくは地金を加えて、溶解、希釈し、必要に応じて成分調整を行うことで上記課題を解決できることを見出し、これに基づき本発明を完成されるに至った。」 エ 「【0009】 【発明の実施の形態】以下に本発明の詳細について説明する。本発明は、アルミニウム合金鋳物屑にアルミニウム合金展伸材屑もしくは地金を加えた後、溶解、希釈し、必要に応じて成分調整を行うことで、鋳物屑からアルミニウム合金自動車部材を製造するものである。 【0010】ここで、自動車部材とは、自動車に使用される外板、内板等の板材、その他部品として使用される各種展伸材を指す。通常、上記鋳物屑はSiを代表とした種々の不純物を多く含んでおり、これをそのまま上記自動車部材としての適用を考える場合、これらの不純物が特性に悪影響を及ぼすため、そのまま使用することは困難である。 【0011】そこで、本発明においては、この鋳物屑に対してアルミニウム合金材料を加えて不純物の希釈を行う。これにより不純物量が低減され自動車部材への適用が可能となる。この時混合するアルミニウム合金材料を効率良く希釈するために使用する材料は、地金を使用することが有効であるが、敢えてコストが高い地金を使用することもなく、鋳物屑より不純物が少ない合金であれば、地金以外にそれらの材料も使用できる。特に、アルミニウム合金展伸材屑は鋳物屑より不純物が少なくこれ自身屑としてアルミニウム合金展伸材から展伸材へとリサイクルされるものであり、リサイクルの立場で考えると有効な希釈材である。希釈材として使用する屑は鋳物屑よりSi量が少ないものが望ましく、市場で入手可能な屑、例えばアルミキャン屑(UBC)、アルミサッシ屑、自動車部材、その他アルミ板製品屑あるいはアルミ押出し製品屑等の加工工程で得られる種々の屑が適用可能である。 【0012】この溶解希釈後に得られた組成は、その希釈の程度により自動車部材用としてそのまま使用可能な場合もあるが、その後必要に応じて成分調整を行うことでさらに広範囲の自動車部材用途への適用が可能となる。この成分調整は、自動車部材の特性をさらに向上させるために、一部の元素の所定成分までの添加あるいは混合希釈後もなお多く含まれる特定の元素の濃度を低減することであり、特にその方法を限定するものではなく、以下に示すような種々の方法で成分調整を行うことができる。即ち、特定の元素の添加は、Zn、Cu等のように単体添加するものと、所定の成分のアルミニウム合金に調整した母合金として添加する場合がある。また、後者の特定元素の濃度を低下させるためには、ゾーンメルティング法、真空蒸留法、フラックス添加法およびガス吹き込み法、フィルター法等、これまで提案されている種々の元素低減方法を用いることができる。」 オ 「【0017】 【実施例】次に、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明する。表1に示す混合比で鋳物屑と展伸材屑あるいは地金を溶解希釈した。そして同表に示す本発明例1~7においてそれぞれ種々の成分調整を行い自動車部材用アルミニウム合金とした。これらの合金を、混合後および成分調整後に化学組成を調査した。さらに、ここで得られた材料の化学成分分析結果を表1にまとめた。 【0018】 【表1】 [図:0001402791000001.jpg] 【0019】さらに、ここで得られた合金は表2に示す展伸材に加工を行った。押出材については、押出用ビレットに鋳造後、530℃×4Hの均熱処理を行った後、室温まで冷却後、さらにこれを450℃に加熱し、その温度にて、1辺40mm×板厚2mmで日の字形状の断面を有するホロー形材に押出しを行った。 【0020】圧延材については、圧延用インゴットに鋳造、面削後530℃×4Hの均熱処理を行った後、圧延率90%の熱間圧延を500℃~280℃の範囲で行って、板厚4mmの薄板とした後、50%の冷間圧延を行って、板厚2mmの薄板圧延材を得た。さらに、これらの押出し材と圧延材を室温まで冷却後、180℃×2Hの時効処理を施した。また、これらの材料について引張特性、曲げ加工性等の材料特性評価を行った。」 カ 「【0022】 【表2】 [図:0001402791000002.jpg] 」 (2)甲1に記載された発明 ア 上記(1)エによれば、「本発明は、アルミニウム合金鋳物屑にアルミニウム合金展伸材屑もしくは地金を加えた後、溶解、希釈し、必要に応じて成分調整を行う」(段落【0009】)ものであるから、上記(1)オの実施例の試料No.5は、「自動車鋳物屑」に「UBC」を加えた後、溶解し、成分調整を行ったものであり、試料No.6は、「鋳物部品屑」に「UBC」を加えた後、溶解し、成分調整を行ったものである。 イ 上記(1)エによれば、「溶解希釈後に得られた組成は、」「一部の元素の所定成分までの添加あるいは混合希釈後もなお多く含まれる特定の元素の濃度を低減する」「成分調整」(段落【0012】)を行うものであって、上記(1)オの実施例の試料No.5、No.6も、実施された成分調整方法は不明であるものの、「一部の元素の所定成分までの添加あるいは混合希釈後もなお多く含まれる特定の元素の濃度を低減する」「成分調整」がなされていることは表1に「成分調整後」の化学組成が記載されていることから明らかである。 ウ 上記ア~イによれば、甲1には、特に、実施例の試料No.5、No.6の自動車部材用アルミニウム合金から自動車用板材を製造する方法、すなわち、自動車部材用アルミニウム合金を、圧延用インゴットに鋳造、面削後530℃×4Hの均熱処理を行った後、圧延率90%の熱間圧延を500℃~280℃の範囲で行って、板厚4mmの薄板とした後、50%の冷間圧延を行って、板厚2mmの薄板圧延材を得、これらの圧延材を室温まで冷却後、180℃×2Hの時効処理を施こす方法(段落【0020】)に注目すると、以下の発明が記載されているといえる。 「自動車鋳物屑60%にUBC40%を加えた後、溶解、希釈し、 wt%で、Siを4.88%、Feを1.26%、Cuを1.40%、Mnを0.53%、Mgを0.82%、Znを0.52%、Crを0.04%、Zrを0.00%、Vを0.01%、Tiを0.01%、残Alの化学組成とし、 一部の元素の所定成分までの添加あるいは混合希釈後もなお多く含まれる特定の元素の濃度を低減する成分調整を行い、 wt%で、Siを4.85%、Feを0.90%、Cuを1.38%、Mnを0.30%、Mgを0.79%、Znを0.53%、Crを0.03%、Zrを0.00%、Vを0.00%、Tiを0.01%、残Alの化学組成を有する自動車部材用アルミニウム合金とし、 上記合金を圧延用インゴットに鋳造、面削後530℃×4Hの均熱処理を行った後、圧延率90%の熱間圧延を500℃~280℃の範囲で行って、板厚4mmの薄板とした後、50%の冷間圧延を行って得られた板厚2mmの薄板圧延材を室温まで冷却後、180℃×2Hの時効処理を施した自動車用板材製造方法。」(甲1発明1) 「鋳物部品屑50%にUBC50%を加えた後、溶解、希釈し、 wt%で、Siを5.63%、Feを0.63%、Cuを1.57%、Mnを0.51%、Mgを0.83%、Znを0.27%、Crを0.04%、Zrを0.00%、Vを0.00%、Tiを0.01%、残Alの化学組成とし、 一部の元素の所定成分までの添加あるいは混合希釈後もなお多く含まれる特定の元素の濃度を低減する成分調整を行い、 wt%で、Siを2.70%、Feを0.65%、Cuを0.70%、Mnを0.52%、Mgを0.40%、Znを0.20%、Crを0.05%、Zrを0.03%、Vを0.03%、Tiを0.03%、残Alの化学組成を有する自動車部材用アルミニウム合金とし、 上記合金を圧延用インゴットに鋳造、面削後530℃×4Hの均熱処理を行った後、圧延率90%の熱間圧延を500℃~280℃の範囲で行って、板厚4mmの薄板とした後、50%の冷間圧延を行って得られた板厚2mmの薄板圧延材を室温まで冷却後、180℃×2Hの時効処理を施した自動車用板材製造方法。」(甲1発明2) (3)本件発明1について ア 本件発明1と甲1発明1との対比 本件発明1と甲1発明1を対比する。 (ア)甲1発明1における「自動車鋳物屑」、「UBC」は、本件発明1における「リサイクルされたアルミニウム」に相当する。 (イ)甲1発明1における「溶解」は、本件発明1の「液体金属に溶融すること」に相当する。 (ウ)甲1発明1の「自動車部材用アルミニウム合金」は、本件発明1の「改質液体金属」に相当する。 (エ)甲1発明1における「一部の元素の所定成分までの添加あるいは混合希釈後もなお多く含まれる特定の元素の濃度を低減する成分調整を行」う点は、本件発明1の「改質液体金属を形成するために合金元素を前記液体金属に添加することであって、前記合金元素がマグネシウム、シリコン、または銅を含む」点における「改質液体金属を形成するために合金元素を前記液体金属に添加すること」が改質液体金属を形成するための成分調整といえるから、両者は「改質液体金属を形成するために成分調整」をする点で共通している。 (オ)甲1発明1の「自動車部材用アルミニウム合金」「を圧延用インゴットに鋳造」する点は、本件発明1の「改質液体金属を金属製品に鋳造すること」に相当する。 (カ)甲1発明1の「圧延用インゴット」を「圧延率90%の熱間圧延を500℃~280℃の範囲で行って、板厚4mmの薄板とした後、50%の冷間圧延を行」う点は、本件発明1の「金属製品を圧延することであって、前記圧延が前記金属製品を熱間圧延および冷間圧延することを含む、こと」に相当する。 (キ)甲1発明1における「wt%で、Siを4.85%、Feを0.90%、Cuを1.38%、Mnを0.30%、Mgを0.79%、Znを0.53%、Crを0.03%、Zrを0.00%、Vを0.00%、Tiを0.01%、残Alの化学組成を有する自動車部材用アルミニウム合金」は、本件発明1の「改質液体金属が、0.1~0.9重量%のCu、0.25重量%~0.7重量%のFe、0.6重量%~7.0重量%のMg、0.1重量%~0.9重量%のMn、0.01重量%~1.0重量%のSi、0.01重量%~0.15重量%のTi、0.01重量%~5.0重量%のZn、0.01重量%~0.25重量%のCr、0.01重量%~0.1重量%のZr、最大0.15重量%までの不純物、およびAl、を含むアルミニウム合金を含み、前記不純物が、Sn、Ga、Ca、Bi、Na、Pb、Li、W、Mo、Ni、およびVから選択された少なくとも1種を、各元素について0.05重量%以下の量で含む」点と、改質液体金属が、Cu、Fe、0.6重量%~7.0重量%のMg、0.1重量%~0.9重量%のMn、Si、0.01重量%~0.15重量%のTi、0.01重量%~5.0重量%のZn、0.01重量%~0.25重量%のCr、最大0.15重量%までの不純物、およびAl、を含むアルミニウム合金を含み、前記不純物が、Sn、Ga、Ca、Bi、Na、Pb、Li、W、Mo、Ni、およびVから選択された少なくとも1種を、各元素について0.05重量%以下の量で含む点で共通する。 (ク)甲1発明1の「自動車用板材製造方法」は、その工程に「鋳造」が含まれるから、本件発明1の「金属鋳造方法」に相当する。 (ケ)上記(ア)~(ク)によれば、本件発明1と甲1発明1とは、以下の一致点において一致するとともに、以下の相違点1~5において相違する。 <一致点> リサイクルされたアルミニウムを液体金属に溶融することと、 改質液体金属を形成するために成分調整をすることと、 前記改質液体金属を金属製品に鋳造することと、 前記金属製品を圧延することであって、前記圧延が前記金属製品を熱間圧延および冷間圧延することを含む、ことと、 前記改質液体金属が、Cu、Fe、0.6重量%~7.0重量%のMg、0.1重量%~0.9重量%のMn、Si、0.01重量%~0.15重量%のTi、0.01重量%~5.0重量%のZn、0.01重量%~0.25重量%のCr、最大0.15重量%までの不純物、およびAl、を含むアルミニウム合金を含み、前記不純物が、Sn、Ga、Ca、Bi、Na、Pb、Li、W、Mo、Ni、およびVから選択された少なくとも1種を、各元素について0.05重量%以下の量で含む、 金属鋳造方法。 <相違点1> 成分調整に関し、本件発明1では、「改質液体金属を形成するために合金元素を前記液体金属に添加することであって、前記合金元素がマグネシウム、シリコン、または銅を含む」のに対して、甲1発明1は、「一部の元素の所定成分までの添加あるいは混合希釈後もなお多く含まれる特定の元素の濃度を低減する成分調整を行」うものであるが、具体的な添加元素等は不明である点。 <相違点2> リサイクルされたアルミニウムの含有割合に関し、本件発明1では、「改質液体金属が少なくとも50%のリサイクルされたアルミニウムを含」んでいるのに対して、甲1発明1は、成分調整方法が不明であるから、成分調整後の自動車部材用アルミニウム合金がどの程度の割合のリサイクルされたアルミニウムを含有しているかが不明である点。 <相違点3> 水素含有量に関し、本件発明1では、「改質液体金属が少なくとも50%のリサイクルされたアルミニウムを含み、鋳造中に0.08mL/100グラム~0.25mL/100グラムの水素含有量を有する」のに対して、甲1発明1は、水素含有量が不明である点。 <相違点4> 冷間圧延後の熱処理に関し、本件発明1では、「冷間圧延後に前記金属製品を焼鈍温度まで再加熱することと、を含み、前記焼鈍温度が、前記金属製品の固相線温度未満であ」るのに対し、甲1発明1は、「板厚2mmの薄板圧延材を室温まで冷却後、180℃×2Hの時効処理を施」す点。 <相違点5> 改質液体金属の組成に関し、本件発明1では、「0.1~0.9重量%のCu、0.25重量%~0.7重量%のFe」、「0.01重量%~1.0重量%のSi」、「0.01重量%~0.1重量%のZr」であるのに対して、甲1発明1はwt%で「Cuを1.38%」、「Feを0.90%」、「Siを4.85%」、「Zrを0.00%」である点。 イ 判断 (ア)相違点4について 事案に鑑み、相違点4についてまず検討する。 a 上記1(2)~(5)で述べたとおり、本件発明1における「焼鈍」は、加工・成形などによって生じる材料内部の歪みを除去して材料を軟化させる処理であって、「焼鈍」によれば、材料の硬度は低下する。 b 一方、甲1発明1の「時効処理」とは、上記1(2)で述べたとおり、材料の母相に固溶している元素を析出して材料を硬化させる処理である。 c そうすると、「時効処理」によって材料を硬化させている甲1発明1において、「時効処理」に代えて、材料を軟化させる「焼鈍」を行う動機が見当たらない。 さらに、甲3~甲6の記載を参酌しても上記動機が見当たらないことは同様である。 d したがって、甲1発明1において、上記相違点4に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 (イ)相違点5について 次に、相違点5について、検討する。 a 甲1発明1は、「Siを4.85」wt%含有する。 b Siに関し、甲1には、「アルミニウム合金鋳物屑をスペースフレーム等自動車部材用展伸材にリサイクルする」(段落【0001】)場合に、「鋳物屑はSiを代表とした種々の不純物を多く含んでおり、これをそのまま上記自動車部材としての適用を考える場合、これらの不純物が特性に悪影響を及ぼすため、そのまま使用することは困難である」(段落【0010】)ために、「鋳物屑に対してアルミニウム合金材料を加えて不純物の希釈を行う」(段落【0011】)こと、さらに、「特定の元素の添加」や「ゾーンメルティング法、真空蒸留法、フラックス添加法およびガス吹き込み法、フィルター法等」の「特定元素の濃度を低下させる」「成分調整」を行うこと(段落【0012】)が記載されている。 c そして、甲1の表1には、甲1発明1の「自動車鋳物屑」は、試料No.9によれば、Siを9.50wt%含むものであって、自動車鋳物屑60%にUBC40%を加えることによって、Siを4.88wt%まで低減させ、その後の成分調整によって、Siを4.85wt%としたものである。 d そうすると、甲1発明1において、Siの含有割合をさらに低減させ、1.0重量%以下とするためには、自動車鋳物屑の割合をさらに著しく低減し、UBCの割合をさらに著しく増加させるか、あるいは、Alの地金をさらに追加する元素の添加方法、あるいは、上記bの元素の低減方法を用いる必要があるものの、上記bのとおり、甲1発明1は、アルミニウム合金鋳物屑をリサイクルする発明であるから、リサイクル割合が極めて低くなるような上記元素の添加方法を採用してSiの含有割合を1.0重量%以下とする積極的な動機が見当たらない。 e また、甲1の特許請求の範囲には、「Si0.5~5.0wt%」という記載がある点に基いて、仮に甲1発明1において、上記bの元素の低減方法を用いて、Siの含有割合を1.0重量%以下とすることが、当業者に容易に想到し得たとしても、その場合に、Si以外の他の元素に関し、本件発明1の「0.1~0.9重量%のCu、0.25重量%~0.7重量%のFe、0.6重量%~7.0重量%のMg、0.1重量%~0.9重量%のMn、」「0.01重量%~0.15重量%のTi、0.01重量%~5.0重量%のZn、0.01重量%~0.25重量%のCr、0.01重量%~0.1重量%のZr」を全て満たす組成とする動機が見当たらない。 この点は、甲3~甲6の記載を参酌しても同様である。 f したがって、甲1発明1において、上記相違点5に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 (ウ)したがって、相違点1~3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明1及び甲3~甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 本件発明1と甲1発明2との対比 本件発明1と甲1発明2を対比する。 (ア)甲1発明2における「鋳物部品屑」、「UBC」は、本件発明1における「リサイクルされたアルミニウム」に相当する。 (イ)甲1発明2における「溶解」は、本件発明1の「液体金属に溶融すること」に相当する。 (ウ)甲1発明2の「自動車部材用アルミニウム合金」は、本件発明1の「改質液体金属」に相当する。 (エ)甲1発明2における「一部の元素の所定成分までの添加あるいは混合希釈後もなお多く含まれる特定の元素の濃度を低減する成分調整を行」う点は、本件発明1の「改質液体金属を形成するために合金元素を前記液体金属に添加することであって、前記合金元素がマグネシウム、シリコン、または銅を含む」点における「改質液体金属を形成するために合金元素を前記液体金属に添加すること」が改質液体金属を形成するための成分調整といえるから、両者は「改質液体金属を形成するために成分調整」をする点で共通している。 (オ)甲1発明2の「自動車部材用アルミニウム合金」「を圧延用インゴットに鋳造」する点は、本件発明1の「改質液体金属を金属製品に鋳造すること」に相当する。 (カ)甲1発明2の「圧延用インゴット」を「圧延率90%の熱間圧延を500℃~280℃の範囲で行って、板厚4mmの薄板とした後、50%の冷間圧延を行」う点は、本件発明1の「金属製品を圧延することであって、前記圧延が前記金属製品を熱間圧延および冷間圧延することを含む、こと」に相当する。 (キ)甲1発明2における「wt%で、Siを2.70%、Feを0.65%、Cuを0.70%、Mnを0.52%、Mgを0.40%、Znを0.20%、Crを0.05%、Zrを0.03%、Vを0.03%、Tiを0.03%、残Alの化学組成を有する自動車部材用アルミニウム合金」は、本件発明1の「改質液体金属が、0.1~0.9重量%のCu、0.25重量%~0.7重量%のFe、0.6重量%~7.0重量%のMg、0.1重量%~0.9重量%のMn、0.01重量%~1.0重量%のSi、0.01重量%~0.15重量%のTi、0.01重量%~5.0重量%のZn、0.01重量%~0.25重量%のCr、0.01重量%~0.1重量%のZr、最大0.15重量%までの不純物、およびAl、を含むアルミニウム合金を含み、前記不純物が、Sn、Ga、Ca、Bi、Na、Pb、Li、W、Mo、Ni、およびVから選択された少なくとも1種を、各元素について0.05重量%以下の量で含む」点と、改質液体金属が、0.1~0.9重量%のCu、0.25重量%~0.7重量%のFe、Mg、0.1重量%~0.9重量%のMn、Si、0.01重量%~0.15重量%のTi、0.01重量%~5.0重量%のZn、0.01重量%~0.25重量%のCr、0.01重量%~0.1重量%のZr、最大0.15重量%までの不純物、およびAl、を含むアルミニウム合金を含み、前記不純物が、Sn、Ga、Ca、Bi、Na、Pb、Li、W、Mo、Ni、およびVから選択された少なくとも1種を、各元素について0.05重量%以下の量で含む点で共通する。 (ク)甲1発明2の「自動車用板材製造方法」は、その工程に「鋳造」が含まれるから、本件発明1の「金属鋳造方法」に相当する。 (ケ)上記(ア)~(ク)によれば、本件発明1と甲1発明2とは、以下の一致点において一致するとともに、以下の相違点6~10において相違する。 <一致点> リサイクルされたアルミニウムを液体金属に溶融することと、 改質液体金属を形成するために成分調整をすることと、 前記改質液体金属を金属製品に鋳造することと、 前記金属製品を圧延することであって、前記圧延が前記金属製品を熱間圧延および冷間圧延することを含む、ことと、 前記改質液体金属が、0.1~0.9重量%のCu、0.25重量%~0.7重量%のFe、Mg、0.1重量%~0.9重量%のMn、Si、0.01重量%~0.15重量%のTi、0.01重量%~5.0重量%のZn、0.01重量%~0.25重量%のCr、0.01重量%~0.1重量%のZr、最大0.15重量%までの不純物、およびAl、を含むアルミニウム合金を含み、前記不純物が、Sn、Ga、Ca、Bi、Na、Pb、Li、W、Mo、Ni、およびVから選択された少なくとも1種を、各元素について0.05重量%以下の量で含む、 金属鋳造方法。 <相違点6> 成分調整に関し、本件発明1では、「改質液体金属を形成するために合金元素を前記液体金属に添加することであって、前記合金元素がマグネシウム、シリコン、または銅を含む」のに対して、甲1発明2は、「一部の元素の所定成分までの添加あるいは混合希釈後もなお多く含まれる特定の元素の濃度を低減する成分調整を行」うものであるが、具体的な添加元素等は不明である点。 <相違点7> リサイクルされたアルミニウムの含有割合に関し、本件発明1では、「改質液体金属が少なくとも50%のリサイクルされたアルミニウムを含」んでいるのに対して、甲1発明2は、成分調整方法が不明であるから、成分調整後の自動車部材用アルミニウム合金がどの程度の割合のリサイクルされたアルミニウムを含有しているかが不明である点。 <相違点8> 水素含有量に関し、本件発明1では、「改質液体金属が少なくとも50%のリサイクルされたアルミニウムを含み、鋳造中に0.08mL/100グラム~0.25mL/100グラムの水素含有量を有する」のに対して、甲1発明2は、水素含有量が不明である点。 <相違点9> 冷間圧延後の熱処理に関し、本件発明1では、「冷間圧延後に前記金属製品を焼鈍温度まで再加熱することと、を含み、前記焼鈍温度が、前記金属製品の固相線温度未満であ」るのに対し、甲1発明2は、「板厚2mmの薄板圧延材を室温まで冷却後、180℃×2Hの時効処理を施」す点。 <相違点10> 改質液体金属の組成に関し、本件発明1では、「0.6~7.0重量%のMg」、「0.01重量%~1.0重量%のSi」であるのに対して、甲1発明2はwt%で「Mgを0.40%」、「Siを2.70%」である点。 エ 判断 (ア)相違点9について 事案に鑑み、相違点9についてまず検討すると、上記イ(ア)で述べたことと同様に、「時効処理」によって材料を硬化させている甲1発明2において、「時効処理」に代えて、材料を軟化させる「焼鈍」を行う動機が見当たらない。 さらに、甲3~甲6の記載を参酌しても上記動機が見当たらないことも同様である。 したがって、甲1発明2において、上記相違点9に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 (イ)相違点10について 次に、相違点10について、検討する。 a 甲1発明2は、「Siを2.70」wt%含有するものであるが、甲1の表1によれば、甲1発明2の「鋳物部品屑」は、試料No.8によれば、Siを11.0wt%含むものであって、「鋳物部品屑50%にUBC50%を加えることによって、Siを5.63wt%まで低減させ、その後の成分調整によって、Siを2.70wt%としたものである。 b 甲1発明2において、Siの含有割合をさらに低減させ、1.0重量%以下とするためには、上記イ(イ)b、dで述べたことと同様に部品鋳物屑の割合をさらに著しく低減し、UBCの割合をさらに著しく増加させるか、あるいは、Alの地金をさらに追加する元素の添加方法、あるいは、上記bの元素の低減方法を用いる必要があるものの、上記イ(イ)bのとおり、甲1発明2は、アルミニウム合金鋳物屑をリサイクルする発明であるから、リサイクル割合が極めて低くなるような上記元素の添加方法を採用してSiの含有割合を1.0重量%以下とする積極的な動機が見当たらない。 c また、上記イ(イ)eで述べたことと同様に、上記甲1の特許請求の範囲には、「Si0.5~5.0wt%」という記載がある点に基いて、仮に甲1発明2において、上記bの元素の低減方法を用いて、Siの含有割合を1.0重量%以下とすることが、当業者に容易に想到し得たとしても、その場合に、Si以外の他の元素に関し、本件発明1の「0.1~0.9重量%のCu、0.25重量%~0.7重量%のFe、0.6重量%~7.0重量%のMg、0.1重量%~0.9重量%のMn、」「0.01重量%~0.15重量%のTi、0.01重量%~5.0重量%のZn、0.01重量%~0.25重量%のCr、0.01重量%~0.1重量%のZr」を全て満たす組成とする動機が見当たらない。 この点は、甲3~甲6の記載を参酌しても同様である。 d したがって、甲1発明2において、上記相違点10に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 (ウ)したがって、相違点6~8について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明2及び甲3~甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 オ 小括 よって、本件発明1は、甲1に記載の発明及び甲3~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)本件発明2~11について ア 本件発明2~11は、本件発明1の記載を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(3)で述べたとおり、本件発明1が甲1に記載の発明及び甲3~甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明2~11についても同様に甲1に記載の発明及び甲3~甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (5)申立理由1のまとめ したがって、申立理由1によっては、本件発明1~11に係る特許を取り消すことはできない。 4 申立理由2(甲2を主たる引用文献とする新規性、進歩性について) (1)甲2の記載 甲2には、「改良されたアルミニュウム合金シート製品の製造方法」(発明の名称)に関して、次の記載がある。(なお、「・・・」は記載の省略を意味する。) ア「【特許請求の範囲】・・・ 21.アルミニュウム合金帯板ストックを製造する方法であって、 (a)少なくとも約75重量パーセントのスクラップから派生したアルミニュウム合金溶融物を形成する工程と、そのアルミニュウム合金溶融物は (i)約0.7から約1.3重量パーセントのマンガンと、 (ii)約1.0から約1.5重量パーセントのマグネシウムと、 (iii)約0.35から約0.5重量パーセントの銅と、 (iv)約0.5重量パーセント以下のシリコンと、 (v)約0.4から約0.65重量パーセントの鉄とを含み、残りがアルミニュウム、付随的な添加物材料及び不純物であることと、 (b)前記合金溶融物を連続的に鋳造することにより、鋳造帯板を形成する工程と、 (c)前記鋳造帯板を熱間圧延することにより、前記鋳造帯板の厚さを少なくとも約70パーセント低減させて熱間圧延帯板を形成する工程と、 (d)少なくとも約0.5時間にわたり、華氏約700度(摂氏約371度)から華氏約900度(摂氏約482度)の温度で、前記熱間圧延帯板を焼き鈍すことにより熱間ミル焼き鈍し帯板を形成する工程と、 (e)前記熱間ミル焼き鈍し帯板を少なくとも約0.5時間にわたって冷却する工程と、 (f)前記熱間ミル焼き鈍し帯板を冷間圧延することにより、冷間圧延帯板を形成する工程と、ここで、前記熱間ミル焼き鈍し帯板の厚さは1回のパスにつき、約35%から約60%だけ低減されることと、 (g)前記冷間圧延帯板の、 (i)華氏約650度(摂氏約343度)から華氏約750度(摂氏約399度)の温度でのバッチ処理による焼き鈍し、あるいは (ii)華氏約800度(摂氏約426度)から華氏約1050度(摂氏約566度)の温度での連続的な焼き鈍し によって、冷間ミル焼き鈍し帯板を形成する工程と、 (h)前記冷間ミル焼き鈍し帯板を更に冷間圧延することにより、その帯板の厚さを低減させて、アルミニュウム合金帯板ストックを形成する工程と、 前記アルミニュウム合金帯板ストックは少なくとも約37ksi(約26kgf/mm2)のベーク後の降伏強度を有し、かつ約2パーセント未満のイヤーを有することとからなる方法。」 イ 「容器本体の加工に使用される一般的なアルミニュウム合金は、アルミニュウム協会(Aluminum Association)に登録されているAA3004である。AA3004の物理特性は容器本体の延伸及び馴らし加工に適している。これはAA3004のマグネシウム(Mg)とマンガン(Mn)の含有量が比較的少ないことによる。また、AA3004の好ましい特性としては缶を製造するアルムニュウムに加える硬化処理が比較的少なくて済むことが挙げられる。」(第9頁第15~20行) ウ 「本発明は、比較的銅の割合が高い(例えば、0.3から0.6パーセント)連続鋳造合金を提供する。銅は、イアに悪影響を及ぼすことなく、これらの割合まで増加させることができると明かになった。インゴット鋳造方法において、銅が増加されると、その結果得られる合金は缶製造に強度が高すぎる場合がある。また、本発明に使用される比較的小さい割合のマグネシウム(例えば、1.0から2.0パーセント)は、市販されている連続的に鋳造された缶ボディのストックと比較して、缶の仕上げ面を良くする。例えば、本発明のアルミニュウムシートから製造された延伸及び馴らし容器を工業洗浄した場合、より少ない表面エッチングが生じ、これにより、より明るい缶が製造される。また、比較的低いマグネシウムの量はワーク硬化率を低下させる。また、市販されている連続的に鋳造された缶ボディのストックと比較して、本発明の比較的高い鉄の量は形成容易性を向上させる。形成容易性が向上するのは、低い鉄含有率を有する連続的に鋳造された材料と比較して、増加した鉄が微構造を変化させてより細かい粒子の材料を形成するためと思われる。」(第15頁第23行~第16頁第6行) エ 「合金の組成の残りは本質的にアルミニュウム、付随的な添加材料及び不純物である。付随的な添加材料及び不純物は、好ましくは各々0.05重量パーセントに限定され、付随的な添加材料及び不純物の全ての合計は、好ましくは0.15パーセントを越えない。」(第17頁第13~16行) オ 「本実施例において、上記の組成から成るアルミニュウム合金の溶融物が形成される。本発明における合金組成の一部は工場から出るスクラップ、缶のスクラップ、家庭から出るスクラップ等のスクラップ材から形成され得る。工場スクラップはインゴットの切り屑、巻かれた帯板片、その他に工場から出る合金の廃材を含み得る。缶のスクラップは飲料容器の利用者によって再生される容器を含み得る。合金溶融物を形成する際に使用されるスクラップ材の量を可能な限り増加させることが望ましい。また、本発明の合金の組成は、好ましくは、少なくとも約75パーセント、より好ましくは、少なくとも約95パーセントのスクラップから構成される。 本発明の合金の好ましい元素範囲内に設定すべく、溶融物を調整する必要がある。これは余剰の合金エレメントを希釈すべくマグネシウム若しくはマンガン等の元素金属または純粋なアルミニュウムを溶融組成物に対して加えることによって実現し得る。 金属を完全に溶融すべく、同金属を炉の中に入れ、かつ約1385°F(約752℃)の温度まで加熱する。合金の鋳造と、完成品シートの品質とに悪影響を及ぼす溶存水素及び非金属含有物等の物質を除去すべく合金を処理する。非金属含有物を溶融物から更に除去すべく合金を濾過し得る。」(第18頁第7~22行) (2)甲2に記載された発明 ア 上記(1)ア、エによれば、「付随的な添加材料及び不純物は、」「各々0.05重量パーセントに限定され、付随的な添加材料及び不純物の全ての合計は、」「0.15パーセントを越えない」(第17頁第13~第16行)ものである。 イ 上記(1)オによれば、「余剰の合金エレメントを希釈すべくマグネシウム若しくはマンガン等の元素金属または純粋なアルミニュウムを溶融組成物に対して加える」ことによって「好ましい元素範囲内に設定すべく、溶融物を調整」し、金属を完全に溶融すべく加熱し、「合金の鋳造と、完成品シートの品質とに悪影響を及ぼす溶存水素」「を除去すべく合金を処理する」ものである(第18頁第16~22行)。 ウ 上記(1)、及び、上記ア、イによれば、甲2には、請求項21に注目すると、以下の発明が記載されているといえる。 「アルミニュウム合金帯板ストックを製造する方法であって、 (a)少なくとも約75重量パーセントのスクラップから派生したアルミニュウム合金溶融物を形成する工程と、そのアルミニュウム合金溶融物は (i)約0.7から約1.3重量パーセントのマンガンと、 (ii)約1.0から約1.5重量パーセントのマグネシウムと、 (iii)約0.35から約0.5重量パーセントの銅と、 (iv)約0.5重量パーセント以下のシリコンと、 (v)約0.4から約0.65重量パーセントの鉄とを含み、残りがアルミニュウム、付随的な添加物材料及び不純物であって、付随的な添加材料及び不純物は、各々0.05重量パーセントに限定され、付随的な添加材料及び不純物の全ての合計は、0.15パーセントを越えないことと、 そのアルミニュウム合金溶融物は、余剰の合金エレメントを希釈すべくマグネシウム若しくはマンガン等の元素金属または純粋なアルミニュウムを溶融組成物に対して加えることによって好ましい元素範囲内に設定すべく、溶融物を調整し、金属を完全に溶融すべく加熱し、合金の鋳造と、完成品シートの品質とに悪影響を及ぼす溶存水素を除去すべく処理するものであって、 (b)前記合金溶融物を連続的に鋳造することにより、鋳造帯板を形成する工程と、 (c)前記鋳造帯板を熱間圧延することにより、前記鋳造帯板の厚さを少なくとも約70パーセント低減させて熱間圧延帯板を形成する工程と、 (d)少なくとも約0.5時間にわたり、華氏約700度(摂氏約371度)から華氏約900度(摂氏約482度)の温度で、前記熱間圧延帯板を焼き鈍すことにより熱間ミル焼き鈍し帯板を形成する工程と、 (e)前記熱間ミル焼き鈍し帯板を少なくとも約0.5時間にわたって冷却する工程と、 (f)前記熱間ミル焼き鈍し帯板を冷間圧延することにより、冷間圧延帯板を形成する工程と、ここで、前記熱間ミル焼き鈍し帯板の厚さは1回のパスにつき、約35%から約60%だけ低減されることと、 (g)前記冷間圧延帯板の、 (i)華氏約650度(摂氏約343度)から華氏約750度(摂氏約399度)の温度でのバッチ処理による焼き鈍し、あるいは (ii)華氏約800度(摂氏約426度)から華氏約1050度(摂氏約566度)の温度での連続的な焼き鈍し によって、冷間ミル焼き鈍し帯板を形成する工程と、 (h)前記冷間ミル焼き鈍し帯板を更に冷間圧延することにより、その帯板の厚さを低減させて、アルミニュウム合金帯板ストックを形成する工程と、 前記アルミニュウム合金帯板ストックは少なくとも約37ksi(約26kgf/mm2)のベーク後の降伏強度を有し、かつ約2パーセント未満のイヤーを有することと からなる方法。」(甲2発明) (3)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲2発明を対比する。 (ア)甲2発明における「少なくとも約75重量パーセントのスクラップ」は、当該「スクラップ」を用いて「アルミニュウム合金溶融物」とするのであるから、本件発明1における「リサイクルされたアルミニウム」に相当する。 (イ)甲2発明における「溶融組成物」、「アルミニュウム合金溶融物」は、それぞれ、本件発明1の「液体金属」、「改質液体金属」に相当する。 (ウ)上記(イ)のとおり、甲2発明における「アルミニュウム合金溶融物」は、本件発明1の「改質液体金属」に相当するから、甲2発明の「少なくとも約75重量パーセントのスクラップから派生したアルミニュウム合金溶融物」は、本件発明1の「改質液体金属が少なくとも50%のリサイクルされたアルミニウムを含」む点に相当する。 (エ)甲2発明における「余剰の合金エレメントを希釈すべくマグネシウム若しくはマンガン等の元素金属または純粋なアルミニュウムを溶融組成物に対して加えることによって好ましい元素範囲内に設定す」る点は、本件発明1の「改質液体金属を形成するために合金元素を前記液体金属に添加することであって、前記合金元素がマグネシウム、シリコン、または銅を含む」点に相当する。 (オ)甲2発明における「合金溶融物を連続的に鋳造することにより、鋳造帯板を形成する工程」は、本件発明1の「改質液体金属を金属製品に鋳造すること」に相当する。 (カ)甲2発明における「(c)前記鋳造帯板を熱間圧延することにより、前記鋳造帯板の厚さを少なくとも約70パーセント低減させて熱間圧延帯板を形成する工程と、」「(f)前記熱間ミル焼き鈍し帯板を冷間圧延することにより、冷間圧延帯板を形成する工程」は、本件発明1の「金属製品を圧延することであって、前記圧延が前記金属製品を熱間圧延および冷間圧延することを含む、こと」に相当する。 (キ)甲2発明における「(i)約0.7から約1.3重量パーセントのマンガンと、(ii)約1.0から約1.5重量パーセントのマグネシウムと、(iii)約0.35から約0.5重量パーセントの銅と、(iv)約0.5重量パーセント以下のシリコンと、(v)約0.4から約0.65重量パーセントの鉄とを含み、残りがアルミニュウム、付随的な添加物材料及び不純物であって、付随的な添加材料及び不純物は、各々0.05重量パーセントに限定され、付随的な添加材料及び不純物の全ての合計は、0.15パーセントを越えない」点は、本件発明1と、改質液体金属が、0.1~0.9重量%のCu、0.25重量%~0.7重量%のFe、0.6重量%~7.0重量%のMg、Mn、最大0.15重量%までの不純物、およびAl、を含むアルミニウム合金を含み、前記不純物が、Sn、Ga、Ca、Bi、Na、Pb、Li、W、Mo、Ni、およびVから選択された少なくとも1種を、各元素について0.05重量%以下の量で含む点で共通する。 (ク)甲2発明の「(g)前記冷間圧延帯板の、(i)華氏約650度(摂氏約343度)から華氏約750度(摂氏約399度)の温度でのバッチ処理による焼き鈍し、あるいは(ii)華氏約800度(摂氏約426度)から華氏約1050度(摂氏約566度)の温度での連続的な焼き鈍しによって、冷間ミル焼き鈍し帯板を形成する工程」は、本件発明1の「冷間圧延後に前記金属製品を焼鈍温度まで再加熱すること」に相当する。 (ケ)甲2発明の「アルミニュウム合金帯板ストックを製造する方法」は、その工程に「鋳造」が含まれるから、本件発明1の「金属鋳造方法」に相当する。 (コ)上記(ア)~(ケ)によれば、本件発明1と甲2発明とは、以下の一致点において一致するとともに、以下の相違点11~13において相違する。 <一致点> リサイクルされたアルミニウムを液体金属に溶融することと、 改質液体金属を形成するために合金元素を前記液体金属に添加することであって、前記合金元素がマグネシウム、シリコン、または銅を含む、ことと、 前記改質液体金属を金属製品に鋳造することであって、前記改質液体金属が少なくとも50%のリサイクルされたアルミニウムを含むことと、 前記金属製品を圧延することであって、前記圧延が前記金属製品を熱間圧延および冷間圧延することを含む、ことと、 前記冷間圧延後に前記金属製品を焼鈍温度まで再加熱することと、を含み、 前記改質液体金属が、0.1~0.9重量%のCu、0.25重量%~0.7重量%のFe、0.6重量%~7.0重量%のMg、Mn、最大0.15重量%までの不純物、およびAl、を含むアルミニウム合金を含み、前記不純物が、Sn、Ga、Ca、Bi、Na、Pb、Li、W、Mo、Ni、およびVから選択された少なくとも1種を、各元素について0.05重量%以下の量で含む、 金属鋳造方法。 <相違点11> 改質液体金属の水素含有量について、本件発明1は「鋳造中に0.08mL/100グラム~0.25mL/100グラムの水素含有量を有する」のに対して、甲2発明は、「合金の鋳造と、完成品シートの品質とに悪影響を及ぼす溶存水素を除去すべく処理され」るものの、水素含有量は不明な点。 <相違点12> 焼鈍温度に関し、本件発明1は「焼鈍温度が、前記金属製品の固相線温度未満であ」るのに対し、甲2発明は「(i)華氏約650度(摂氏約343度)から華氏約750度(摂氏約399度)の温度でのバッチ処理による焼き鈍し、あるいは(ii)華氏約800度(摂氏約426度)から華氏約1050度(摂氏約566度)の温度での連続的な焼き鈍し」である点。 <相違点13> 改質液体金属の組成に関し、本件発明1では、「0.1重量%~0.9重量%のMn、0.01重量%~1.0重量%のSi、0.01重量%~0.15重量%のTi、0.01重量%~5.0重量%のZn、0.01重量%~0.25重量%のCr、0.01重量%~0.1重量%のZr」であるのに対して、甲2発明は「約0.7から約1.3重量パーセントのマンガン」、「約0.5重量パーセント以下のシリコン」であり、「付随的な添加材料及び不純物」として、Ti、Zn、Cr、Zrが「各々0.05重量パーセント」まで含有しうる点。 イ 判断 (ア)相違点13について 事案に鑑み、相違点13について検討する。 a 甲2には、「容器本体の加工に使用される一般的なアルミニュウム合金は、」「AA3004である」(第9頁第15~16行)こと、スクラップ材として、「一部は工場から出るスクラップ、缶のスクラップ、家庭から出るラップ等のスクラップ材から形成され得」、「缶のスクラップは飲料容器の利用者によって再生される容器を含み得る」(第18頁第7~11行)ことが記載されている。 b 甲7には、3004合金の組成に関し、以下の記載があり、Znは最大0.25%まで含まれてもよく、Zrは「その他」の成分として「個々」に最大0.05%まで含まれてもよく、Cr、Tiは含有割合が定められていない。なお、技術常識からみて、単位は重量%であると認められる。 [図:0001402791000003.jpg] c 甲2には、組成調整によって「市販されている連続的に鋳造された缶ボディのストックと比較して、缶の仕上げ面を良くする」、「より明るい缶が製造される」、「市販されている連続的に鋳造された缶ボディのストックと比較して、本発明の比較的高い鉄の量は形成容易性を向上させる」(第15頁第23行~第16頁第6行)ことが記載されているから、甲2発明のアルミニュウム合金帯板ストックは缶ボディに用いられることが示唆されている。 d 上記cによれば、甲2発明で製造されるアルミニュウム合金帯板ストックは、缶ボディに用いられることが示唆されているから、甲2発明において、「付随的な添加材料及び不純物は、各々0.05重量パーセントに限定され」として、缶ボディに一般的に用いられる3004合金において許容される元素を、許容される含有割合で含有させること、すなわち、上記bも踏まえると、Zn、Zrをそれぞれ0.05重量パーセントまで含有してもよいと当業者であれば理解するといえる。 e しかしながら、上記bのとおり、3004合金では、Zn、Cr、Ti、Zrは0.01重量%以上含有すべき必須成分とはされていないから、甲2発明において、Zn、Cr、Ti、Zrの全ての成分を0.01重量%以上とする動機が見当たらないし、仮にZn、Cr、Ti、Zrの全ての成分を0.01重量%以上とすることを当業者が容易に想到し得たとしても、その際に、Zn、Cr、Ti、Zr以外の他の元素に関し、本件発明1の「0.1~0.9重量%のCu、0.25重量%~0.7重量%のFe、0.6重量%~7.0重量%のMg、0.1重量%~0.9重量%のMn、0.01重量%~1.0重量%のSi」を全て満たす組成とする動機が見当たらない。 この点は、甲3~甲6の記載を参酌しても同様である。 f したがって、甲2発明において、上記相違点13に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 (イ)よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明及び甲3~甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 小括 よって、本件発明1は、甲2に記載の発明及び甲3~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)本件発明2~11について 本件発明2~11は、本件発明1の記載を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(3)で述べたとおり、本件発明1が甲2に記載の発明及び甲3~甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明2~11についても同様に甲2に記載の発明及び甲3~甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (5)申立理由2のまとめ したがって、申立理由2によっては、本件発明1~11に係る特許を取り消すことはできない。 第5 まとめ 以上のとおり、特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700445

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