特許異議申立
2023-700427
中間転写フィルム
- 審判番号
- 2023-700427
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-079063
- 登録番号
- 7159601
- 請求日
- 2023年04月25日
- 審決日
- 2024年05月28日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】松沼 泰史
- 【権利者代理人】鈴木 史朗
- 【権利者代理人】清水 雄一郎
- 【権利者代理人】大槻 真紀子
- 【異議申立人】佐藤 惠一
- 審判長/審判官
- 審判長 里村 利光
- 審判官 西岡 貴央
- 審判官 関根 洋之
- 分類
- P1651.121-ZAA(B41M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条、特許法第113条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7159601号発明「中間転写フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7159601号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。
特許第7159601号の請求項1に係る特許を取り消す。
理由
理 由
第1 手続等の経緯
特許第7159601号の請求項1に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2018-79063号)は、2018年(平成30年)4月17日を出願日とする特許出願であって、令和4年10月17日に特許権の設定の登録がされたものである。
その後、本件特許について、令和4年10月25日に特許掲載公報が発行されたところ、発行の日から6月以内である令和5年4月25日に、特許異議申立人 佐藤 惠一(以下「特許異議申立人」という。)から、特許異議の申立てがされた。
その後の手続等の概要は、以下のとおりである。
令和5年 7月31日付け:取消理由通知書
令和5年 9月29日 :意見書(特許権者)の提出
令和5年 9月29日 :訂正請求書の提出
(この訂正請求書による訂正の請求を、以下「本件訂正請求」という。)
令和5年 11月27日 :意見書(特許異議申立人)の提出
令和6年 1月 9日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和6年 3月14日 :意見書(特許権者)の提出
令和6年 5月 8日 :上申書(特許異議申立人)の提出
第2 本件訂正請求について
1 訂正の趣旨及び訂正の内容
(1) 訂正の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、特許第7159601号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを求める、というものである。
(2) 訂正の内容
本件訂正請求において特許権者が求める訂正の内容は、以下の本件訂正事項からなるものである。
なお、下線は当合議体が付したものであり、訂正箇所を示す。
特許請求の範囲の請求項1を
「 顔料を色素として有するインク層を設けた熱転写媒体と組み合わせて用いられる中間転写フィルムであって、
前記中間転写フィルムが、支持体上の全面に、剥離層、中間層、受像層を、この順に積層してなり、
前記受像層上に前記熱転写媒体によって形成される1画面分の画像を形成する印画領域を有し、
前記支持体と、前記剥離層との間にセンサーマークが設けられてなり、
前記センサーマークが、前記中間転写フィルムの搬送方向に対してかつ幅方向に前記印画領域を避けた外側であって、中間転写フィルムの幅方向の末端部に設けられており、
前記中間転写フィルムから被転写体に前記剥離層、前記中間層、前記受像層を含む層が2次転写され、最終印画物を形成する、ことを特徴とする中間転写フィルム。」
に訂正する。
2 訂正の適否についての判断
(1) 訂正の目的
上記1(2)アの訂正事項に係る訂正は、訂正前の請求項1に記載の「支持体上に、少なくとも剥離層、中間層、受像層を、この順に積層し」た「中間転写フィルム」について、積層の構成を「少なくとも剥離層、中間層、受像層」から「剥離層、中間層、受像層」に限定し、「剥離層、中間層、受像層」の積層箇所を「支持体上」から「支持体上の全面」に限定することを含む。また、上記訂正は、訂正前の請求項1に記載の「センサーマーク」の平面方向の配置について、「前記中間転写フィルムの搬送方向に対して、幅方向に前記印画領域を避けた外側」から「前記中間転写フィルムの搬送方向に対してかつ幅方向に前記印画領域を避けた外側」へとより限定した箇所に設けること、すなわち、より限定した配置であることを特定するものである。
そうしてみると、上記訂正事項に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(2) 新規事項の追加の有無
上記訂正事項は、以下のア及びイに係る訂正事項からなるところ、新規事項を追加するものである否かを、以下、順次検討する。
ア 「剥離層、中間層、受像層」の支持体上の積層の構成及びその積層箇所に係る訂正事項
この訂正事項は、願書に添付した明細書及び図面(以下「本件特許明細書等」という。)の【0015】、【0018】、【0053】及び図1、3の記載に基づいて導き出される事項である。
具体的には、本件特許明細書等の【0015】には、「図1」が「本発明の実施形態に係る中間転写フィルムの例を示す断面図」であり、「図3」が「本発明の実施形態に係る中間転写フィルムの例を示す平面図」であることが記載されている。ここで、本件特許明細書等の【0018】及び図1には、「中間転写フィルム」の積層方向の構成が、「支持体(11)の片面に、」「剥離層(13)、中間層(14)、受像層(15)が、この順に積層された構成」であることが記載されている。そして、図3の「中間転写フィルム」の印画領域18は、「受像層(15)上に1画面分の画像形成」(【0053】)される領域であることから、図3における印画領域18には、支持体11上に剥離層13、中間層14、受像層15が積層されていると理解できる。
また、本件特許明細書等の図1を参照すると、センサーマーク12の右側に隙間(剥離層13と支持体11の境界部であってセンサーマーク12が設けられていない領域)が存在することから、図1の「中間転写フィルム」の断面図は、図3の「中間転写フィルム」の平面図におけるセンサーマーク12を含めた搬送方向の断面図であると理解できる(仮に、図1の断面図が図3におけるセンサーマーク12を含めた幅方向の断面図である場合には、図3でも示されるようにセンサーマークは幅方向末端部に配置されるため、図1においてセンサーマークの右側に隙間はなく、センサーマークが端部に配置されるよう図示されているはずである。)。そうすると、図3上側のセンサーマークを含む搬送方向の領域には、支持体11上に剥離層13、中間層14、受像層15が積層されていると理解できる。
そして、本件特許明細書等の図3の「中間転写フィルム」の平面図には、印画領域18以外に領域を区切る表示もなく、本件特許明細書等には、支持体11上に剥離層13、中間層14、受像層15を積層しない領域をあえて設ける旨の記載もないことからすると、図3において、上記印画領域18及び図3上側のセンサーマークを含む搬送方向の領域以外の全ての領域においても、同様に支持体11上に剥離層13、中間層14、受像層15が積層されていると解するのが自然な解釈といえる。
したがって、中間転写フィルムにおいて「支持体上の全面に、剥離層、中間層、受像層を、この順に積層」する構成とする訂正事項は、本件特許明細書等の【0015】、【0018】、【0053】及び図1、3の記載に基づいて導き出される事項である。
イ 「センサーマーク」の平面方向の配置に係る訂正事項
この訂正事項は、本件特許明細書等の【0054】、【0056】及び図3の記載に基づいて導き出される事項である。
具体的には、中間転写フィルムの平面図である図3には、センサーマークが中間転写フィルムの幅方向において、印画領域18の外側に配置される構成が看取されるとともに、中間転写フィルムの搬送方向においても印画領域18の外側に配置された構成が看取される。
さらに、特許異議申立人が令和5年11月27日に提出した意見書において、「【図3】に関しても、センサーマーク(12)と印画領域(18)との搬送方向における位置関係を意識して記載されていると考える根拠はありません」と主張しているが、本件特許明細書等の【0054】に、「ここで、センサーマーク(12)は、図3に示すように、中間転写フィルム(10)における印画領域(18)の外側に設けられていることが望ましい。」と記載され、その上で、【0056】に「また、センサーマーク(12)の設置位置は、中間転写フィルム(10)の搬送方向に対して、幅方向に印画領域(18)を避けて設けられていることが、更に好ましいと言える。」(当合議体注:下線部は当合議体が付したものである。)と記載されており、センサーマーク12を印画領域18の幅方向の外側だけでなく、それ以外の搬送方向の外側に配置する構成も意図していると理解できることから、図3と併せてみれば上記結論は是認される。
したがって、中間転写フィルムにおいて「前記センサーマークが、前記中間転写フィルムの搬送方向に対してかつ幅方向に前記印画領域を避けた外側」に設ける構成とする訂正事項は、本件特許明細書等の【0054】【0056】及び図3の記載に基づいて導き出される事項といえる。
ウ 上記ア及びイによれば、本件訂正事項に係る訂正は、本件特許の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。
(3) 特許請求の範囲の実質拡張、変更の有無
本件訂正事項のうち、「剥離層、中間層、受像層」の支持体上の積層箇所を、「支持体上」から「支持体上の全面」に限定する訂正が、発明のカテゴリーや対象、目的を変更しないことは明らかである。また、本件訂正事項のうち、「センサーマーク」の平面方向の配置について、「前記中間転写フィルムの搬送方向に対して、幅方向に前記印画領域を避けた外側」から「前記中間転写フィルムの搬送方向に対してかつ幅方向に前記印画領域を避けた外側」に限定する訂正も、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、本件訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。
3 小括
以上総合すると、本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書、同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められたので、本件特許の訂正後の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
顔料を色素として有するインク層を設けた熱転写媒体と組み合わせて用いられる中間転写フィルムであって、
前記中間転写フィルムが、支持体上の全面に、剥離層、中間層、受像層を、この順に積層してなり、
前記受像層上に前記熱転写媒体によって形成される1画面分の画像を形成する印画領域を有し、
前記支持体と、前記剥離層との間にセンサーマークが設けられてなり、
前記センサーマークが、前記中間転写フィルムの搬送方向に対してかつ幅方向に前記印画領域を避けた外側であって、中間転写フィルムの幅方向の末端部に設けられており、
前記中間転写フィルムから被転写体に前記剥離層、前記中間層、前記受像層を含む層が2次転写され、最終印画物を形成する、ことを特徴とする中間転写フィルム。」
第4 令和6年1月9日付け取消理由通知で通知した取消しの理由の概要
令和6年1月9日付け取消理由通知の概要は以下のとおりである。
理由:(進歩性)(甲第3号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
甲第3号証:特表2017-527457号公報(以下「甲3」という。)
第5 取消しの理由についての当合議体の判断
1 甲3に記載された事項
特表2017-527457号公報(甲3)は、本件出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載されたものであるところ、そこには以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す(以下同様)。
(1)「【発明の詳細な説明】
【0001】
[背景技術]
クレデンシャルとしては、身分証明書、運転免許証、パスポート等の文書がある。このようなクレデンシャルは、紙基材、プラスチック基材、カード、及び他の素材を含むクレデンシャル基材又はカード基材で形成されている。一般的には、このようなクレデンシャルは、写真、口座番号、識別番号、及び他の個人情報といった印刷情報を含む。クレデンシャルはまた、例えばスマートカードチップ、磁気ストライプ、又はバーコード内に符号化記録されているデータを含み得る。
【0002】
クレデンシャル作製装置は、クレデンシャルの完成品を作成する際に、少なくとも1つの処理工程を行うことによって、クレデンシャル基材を処理する装置である。このような処理の一つは、装置の転写部の加熱転写ローラを用いてカード基材の表面に材料を転写する転写又は積層工程である。この処理を用いて、カード基材の表面に画像を転写し、及び/又は、例えば摩耗や環境状態からカード基材の表面を保護するようにすることができる。
【0003】
中間転写フィルムもしくは転写リボンは、分裂可能なラミネート又は転写層を有しており、この層は加熱転写ローラを用いてカード基材の表面に転写することができる「薄膜ラミネート」と称する場合も多い。このような転写層は、一般的には、転写リボン形成のために連続担持層又は担持裏材上に被膜された連続樹脂材である。樹脂材における、連続担持層に接着していない側には、一般的には、熱接着剤が塗布されており、この熱接着剤は、樹脂と基材の表面との間の接着を創成するのに用いられる。転写ローラは、接着剤を熱活性化させるとともに樹脂材を基材表面に押圧して、樹脂材を表面に接着するのに用いられる。担持層又は裏材が除去され、積層処理が完了する。
【0004】
転写層はまた、画像が反転画像印刷処理にて印刷されていてもよい、印刷中間物の形態であってもよい。反転画像印刷処理では、印刷ヘッドが転写層の転写区域に位置合わせされ、印刷ヘッドを用いて画像が転写区域に印刷される。次に、画像が形成された転写区域がカード基材及び/又は転写ローラに位置合わせされる。その後、転写ローラを用いて、画像が形成された転写区域の接着剤を活性化させ、画像が形成された転写区域がカード基材表面に接着される。その後、重なる積層材料の担持層又は担持裏材が、接着された状態である画像が形成された転写区域から除去され、カード基材への画像転写が完了する。
【0005】
図7は、従来技術に従った中間転写フィルム又は転写リボン700の簡略化された上面平面図である。従来の転写リボン700は、クレデンシャル作製装置が転写層の各転写区域704を印刷ヘッド、カード基材、及び/又は転写ローラに位置合わせするのに使用される、黒色の登録マーク又は位置合わせマーク702を有している。一般的には、この位置合わせ処理には、印刷ヘッド、転写ローラ、又は基材等の装置の構成要素に対してリボン700を送ると、光学センサを用いてマーク702を検出することが含まれる。典型的には、マーク702の1つが検出されると、転写区域704が所望の構成要素に位置合わせされる。
【0006】
マーク702は、一般的には、転写リボン700に印刷されている黒色樹脂又は他の黒色材料で構成されている。マーク702は転写区域704の境界の外側に位置していて、これにより、基材上に望ましくないマークを形成しかねない転写処理又は積層処理中に、マーク702が基材に転写されることが抑制される。このため、リボン700の幅706は、マーク702及び転写区域704の両方を収容するために十分に広くなければならない。少なくとも転写リボン700の転写区域704の長手方向の境界に沿った部分708は全く使用されないので、この結果転写層にかなりの無駄が生じてしまう。
【0007】
転写リボン700は、マーク702の厚みに起因して、マーク702の位置がわずかに厚い。転写リボン700をスプールに巻き付けた場合、マーク702によって厚い隆線がスプールの片側に形成されてしまう。このため、クレデンシャル作製装置の供給スプールから繰り出される際に、又は巻き取りスプールに巻き取られる際に、転写リボン700の張力が不均一になってしまう可能性がある。その結果、転写リボン700は、クレデンシャル作製装置内での使用中にしわが生じやすくなり、基材に転写された画像の品質に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0008】
本発明の各実施形態は、転写積層装置において使用する中間転写フィルム、及び、転写積層装置において中間転写フィルムを使用する方法を対象とする。中間転写フィルムのいくつかの実施形態では、担持層と、転写層と、複数の位置合わせマークとを含む。転写層は担持層に保持又は接着されており、転写積層動作を介して、担持層から基材に転写されるように構成されている。位置合わせマークは担持層上に保持されている。各位置合わせマークは、可視光線をほぼ透過し、赤外線を吸収する。
・・・中略・・・
【発明を実施するための形態】
【0012】
[発明の詳細な説明]
・・・中略・・・
【0017】
図1は、本発明の各実施形態に従った例示的な中間転写フィルム又は転写リボン100の簡略化された垂直断面図である。いくつかの実施形態では、転写リボン100は、裏材又は担持層104に接着されている転写層102を有している。転写層102は、本発明の各実施形態に従った転写積層処理によって基材表面に転写されるように構成されている。
【0018】
いくつかの実施形態において、転写層102は、分裂可能なラミネート又は薄膜ラミネートの形態である。いくつかの実施形態において、転写層102は、画像を表面108に受け取るように構成されている画像受取層106を有している。画像は、従来の技術に従って、例えば、昇華式又はインクジェット式印刷処理によって、表面108に印刷されてもよい。
・・・中略・・・
【0020】
転写リボン100はまた、転写層102と担持層104との間に脱着層109を有していてもよい。脱着層によって、転写積層処理中における転写層102の担持層104からの脱着を簡単に行えるようになる。
【0021】
いくつかの実施形態において、転写層102は、画像受取層106と担持層104の間に位置する保護層110を有している。あるいは、保護層110は画像受取層106と統合されていてもよい。いくつかの実施形態では、保護層110は1つ以上の樹脂を含んでいてもよい。保護層110は、転写層102が積層される表面を保護するように作用する。保護層110はまた、転写層102を表面に積層したときに、画像受取層106上又は内に印刷された画像も保護する。
・・・中略・・・
【0026】
いくつかの実施形態において、印刷部124は、個々に起動可能な複数の加熱素子を備えている、従来の感熱式印刷ヘッド126を有している。いくつかの実施形態において、印刷部124は従来の感熱式印刷リボン128を有しており、印刷リボン128は、例えば有色染料パネル、黒色樹脂パネル、及び/又は他の従来の印刷パネルといった従来の印刷パネルを複数備えていてもよい。
【0027】
いくつかの実施形態において、装置112の制御器113は、各モータ138を制御して、印刷リボン128の所望の印刷パネルを、転写層102の転写区域に位置合わせし、印刷動作を開始する。印刷リボン128が転写リボン100と適切に位置合わせされたら、印刷動作が開始されてもよい。いくつかの実施形態において、従来機構により印刷ヘッド126が駆動し、図2に示されているように、プラテンローラ142による支持の下、印刷リボン128が転写層102の表面108に押圧される。次に、印刷リボン128及び転写リボン100を方向140の方に送りながら、印刷ヘッド126の加熱素子を個々に起動・停止させる。この動作を、従来の技術に従って、印刷リボン128の異なる印刷パネルを用いて何度も繰り返し、転写区域の画像受取層106の表面108上又は内に所望の画像を生成してもよい。
・・・中略・・・
【0036】
いくつかの実施形態において、位置合わせマーク160の位置は、中間転写フィルム100上又は内部において様々であってもよい。これらの位置の例示的な実施形態が図1に示されている。いくつかの実施形態において、位置合わせマーク160は、中間にある転写層102上又は内に形成されている。例えば、位置合わせマーク160は、位置合わせマーク160Aで示されているように、画像受取層106上又は内に形成されていてもよく、あるいは、マーク160は、マーク160Bで示されているように、保護層110上又は内に形成されていてもよい。いくつかの実施形態では、位置合わせマーク160は、マーク160C,160Dで示されているように、担持層104上又は内に形成されている。いくつかの実施形態では、位置合わせマーク160は、マーク160Eで示されているように、脱着層109上又は内に形成されていてもよい。いくつかの実施形態では、位置合わせマーク160は、マーク160C,160Eで示されているように、例えば転写層102と担持層104との間に形成されている。リボン提供業者の大半が市販する製品に組み込まれているのは、最後に説明した種類(160C又は160D)のマークである。
【0037】
担持層104において転写層102とは反対の側に形成されているマーク160Dは、積層動作中に基材に直接転写されることはないが、中間転写フィルム100がロールに巻かれているときには、マーク160D又はその一部が上にある転写層102に転写され、これにより上にある転写層102上にマーク160Aを形成してしまうことがあることに注目されたい。その結果、転写積層動作を介して、マーク160Dが基材に間接的に転写されてもよい。このため、肉眼にはほぼ見えない材料でできているマーク160Dを有することは有用である。
【0038】
160Aのようなインク受取層上に配置されているマークは、リボン製造中に導入された場合に、同様にリボンが巻かれる時、繰り出される時、及び再度巻かれる時の表面への転写問題を引き起こしてしまう。
・・・中略・・・
【0040】
いくつかの実施形態において、マーク160はそれぞれ、少なくとも一部が、基材114に転写されるように構成されている転写区域152の内部にある。この特徴は図4に示されていて、ここでは転写区域152がマーク160の上に重なっている。さらに、図5に示されているマーク160はそれぞれ、少なくとも一部が複数の転写区域152の内部にある。その結果、中間転写フィルム100の転写層102上又は内部にマーク160を形成する場合、転写動作中に基材114に転写される転写区域152は、マーク又は複数のマーク160の少なくとも一部が、転写区域152上又は内部に形成された状態である。しかし、マーク160は可視光線をほぼ透過する、つまり見えない状態であるので、マーク160は、印刷部124によって転写区域152に印刷された画像の見かけに対して、わずかな影響しか与えない。
【0041】
位置合わせマーク160を転写区域152内部に延在させる利点の1つは、中間転写フィルム100内において、転写区域152が従来可能であった範囲よりも広い範囲を占めることができることである。例えば、例えば図7に示されているような従来技術の転写リボン700 は、マーク702 を転写区域704の外側に配置することが必要である。その結果、転写リボン700は、マーク702の幅と転写区域704の幅とを確保するのに十分な幅706がなければならない。一方、中間転写フィルム又は転写リボン100の各実施形態は、全体が転写区域152内部にあるマーク160(例えば図5のマーク160F,160G,160H)を含み、又は、転写区域152内部にある部分(例えば図4のマーク160,及び図5のマーク160I,160 J ,160K)を少なくとも含む。これにより、フィルム100にとって、中間転写フィルム100の一部を、又は少なくとも従来技術の転写リボンにおいて必要なだけの幅を、マーク160の幅のために確保する必要がないので、中間転写フィルム100の幅164(図4)を、従来技術の転写リボンと比較してより狭くすることが可能になる。その結果、本発明の各実施形態に従って形成された中間転写フィルム100の幅164を、従来技術の転写リボン700の幅706 よりも狭くすることできる。いくつかの実施形態において、本発明の各実施形態に従って形成された中間転写フィルム100の幅164は、中間転写フィルム100と印刷リボン128及び/ 又は基材114との間での幅方向の位置合わせを確実に適切に行うために必要な許容誤差を単に確保するように設定される。」
(2) 「【図1】
[図:0001415266000001.jpg]
【図2】
[図:0001415266000002.jpg]
【図7】
[図:0001415266000003.jpg]
」
(当合議体注:図7は便宜のため右90°回転して摘記した。)
2 甲3発明
上記1の記載事項によれば、甲3には、従来技術として、次のような開示があることが認められる。
(1) 中間転写フィルム700について
ア 甲3には、「中間転写フィルム又は転写リボン700」が、「分裂可能なラミネート又は転写層を有しており、この層は加熱転写ローラを用いてカード基材の表面に転写することができ」、「転写層は、一般的には、転写リボン形成のために連続担持層又は担持裏材上に被膜され」る(【0003】)構成を有することが記載されていることから、甲3でいう「中間転写フィルム又は転写リボン700」は「連続担持層又は担持裏材上に」「転写層」を「被膜」した構成を有していると理解できる。また、上記第2の2(2)アで検討したように、甲3の「中間転写フィルム又は転写リボン700」の図7の上面平面図には、転写区域704以外に領域を区切る表示もなく、甲3の他の箇所をみても、前記連続担持層上に転写層を被膜しない領域をあえて設ける旨の記載もない。さらに、甲3の【0006】の「転写リボン700の転写区域704の長手方向の境界に沿った部分708は全く使用されないので、この結果転写層にかなりの無駄が生じてしまう。」(下線は強調のために当合議体が付与したものである。)との記載によれば、甲3の「中間転写フィルム又は転写リボン700」は、連続担持層上の全面に「転写層」を被膜した構成を有すると解するのが自然な解釈といえる。
イ また、甲3には、「中間転写フィルム又は転写リボン700」の「転写層」に「画像」を「反転画像印刷処理にて印刷」すること、また、「画像が形成された転写区域がカード基材及び/又は転写ローラに位置合わせされ」、「画像が形成された転写区域がカード基材表面に接着され」、「その後、重なる積層材料の担持層又は担持裏材が、接着された状態である画像が形成された転写区域から除去され、カード基材への画像転写が完了する」(【0004】)ことが記載されていることから、「中間転写フィルム又は転写リボン700」は、「印刷ヘッドを用いて画像が」「転写層の」「転写区域に印刷され」るものであり、「中間転写フィルム又は転写リボン700」から「カード基材」に、「転写区域に印刷され」た「画像」を有する「転写層」を「転写」することでカード基材への画像転写が完了するものであると理解できる。そして、甲3の「印刷部124は、個々に起動可能な複数の加熱素子を備えている、従来の感熱式印刷ヘッド126を有している。いくつかの実施形態において、印刷部124は従来の感熱式印刷リボン128を有しており、印刷リボン128は、例えば有色染料パネル、黒色樹脂パネル、及び/又は他の従来の印刷パネルといった従来の印刷パネルを複数備えていてもよい」との記載(【0026】)によれば、当業者は、甲3の前記「中間転写フィルム又は転写リボン700」を用いた印刷が感熱式印刷であることが前提であると理解する。
ウ さらに、甲3には、「従来機構により印刷ヘッド126が駆動し、図2に示されているように、プラテンローラ142による支持の下、印刷リボン128が転写層102の表面108に押圧される。次に、印刷リボン128及び転写リボン100を方向140の方に送りながら、印刷ヘッド126の加熱素子を個々に起動・停止させる。この動作を、従来の技術に従って、印刷リボン128の異なる印刷パネルを用いて何度も繰り返し、転写区域の画像受取層106の表面108上又は内に所望の画像を生成してもよい。」(【0027】)ことが記載されていることから、前記「中間転写フィルム又は転写リボン700」は、「印刷リボン128」と組み合わせて用いられており、これにより、「印刷リボン128」から「中間転写フィルムまたは転写リボン700」の「転写層102」に画像が印刷されるものと理解できる。
(2) 位置合わせマークの平面方向の配置について
甲3には、「中間転写フィルム又は転写リボン700」が「クレデンシャル作製装置が転写層の各転写区域704を印刷ヘッド、カード基材、及び/又は転写ローラに位置合わせするのに使用される、」「登録マーク又は位置合わせマーク702」を有すること(【0005】)が記載されている。また、「中間転写フィルム又は転写リボン700」の平面方向における「登録マーク又は位置合わせマーク702」の配置に関して、甲3には、「マーク702は転写区域704の境界の外側に位置していて、これにより、基材上に望ましくないマークを形成しかねない転写処理又は積層処理中に、マーク702が基材に転写されることが抑制される。」(【0006】)と記載され、その具体的な配置が図7に記載されている。
これらの各記載によれば、前記「中間転写フィルム又は転写リボン700」は、「登録マーク又は位置合わせマーク702」が「中間転写フィルム又は転写リボン700」の搬送方向及び幅方向において、転写区域704の境界の外側であって、かつ、「中間転写フィルム又は転写リボン700」の幅方向の末端部に配置される構成を有していると認められる。
以上(1)及び(2)の開示内容を踏まえれば、甲3には、従来技術として、少なくとも、感熱式印刷で用いる印刷リボンと組み合わせて用いられる、次に示す「中間転写フィルム700」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「感熱式印刷で用いる印刷ヘッド126を用いて、画像を印刷リボン128から転写層の転写区域に印刷される中間転写フィルム700であって(上記(1)イ~ウ)、
連続担持層上の全面に転写層を被膜した構成と(上記(1)ア)、
クレデンシャル作製装置が転写層の各転写区域704を印刷ヘッド126、カード基材、及び/又は転写ローラに位置合わせするのに使用される位置合わせマーク702とを有し(上記(2))、
前記黒色の位置合わせマーク702は、中間転写フィルム700の搬送方向及び幅方向において、転写区域704の境界の外側であって、かつ、中間転写フィルム700の幅方向の末端部に配置されており(上記(2))、
前記印刷ヘッドを用いて画像が転写層の転写区域704に印刷され、中間転写フィルム700からカード基材に、転写区域704に印刷された画像を有する転写層を転写することでカード基材への画像転写が完了する(上記(1)イ)、
中間転写フィルム700。」
(当合議体注:上記認定にあたり、「中間転写フィルム700」及び「転写リボン700」は前者に、「登録マーク702」及び「位置合わせマーク702」は後者に用語を統一した。)
3 対比及び判断
(1) 対比
本件特許発明と引用発明を対比する。
ア 中間転写フィルム
引用発明の「中間転写フィルム700」、「連続担持層」、「転写区域704」及び「カード基材」は、本件特許発明の「中間転写フィルム」、「支持体」、「印画領域」及び「被転写体」にそれぞれ相当する。また、引用発明の「転写層」は、「画像が印刷リボン128から」「転写区域704に印刷され」るものであるから、少なくとも本件特許発明の「受像層」に相当する層を有する。
そして、引用発明の「中間転写フィルム700」は「連続担持層上の全面に転写層を被膜した構成」を有するものであるから、本件特許発明の「中間転写フィルムが、支持体上の全面に、受像層を積層してなり」との要件を満たす。
また、引用発明の「中間転写フィルム700」は、「中間転写フィルム700からカード基材に、転写区域704に印刷された画像を有する転写層を転写」し、その結果「カード基材への画像転写が完了する」ことから、技術的にみて、本件特許発明の「前記中間転写フィルムから被転写体に前記受像層を含む層が2次転写され、最終印画物を形成する」との要件を満たす。
イ 印画領域への画像形成
また、引用発明の「中間転写フィルム」は、「感熱式印刷で用いる印刷ヘッドを用いて、画像が印刷リボンから転写層の転写区域に印刷される」ものであるから、引用発明の「印刷リボン128」は、技術的にみて、本件特許発明の「熱転写媒体」に相当する。
そして、甲3の図7によれば、1画面分の画像を形成する各転写区域704が記載されているから、引用発明の「中間転写フィルム700」が、本件特許発明の「熱転写媒体と組み合わせて用いられる」との要件、及び、「前記受像層上に前記熱転写媒体によって形成される1画面分の画像を形成する印画領域を有し」との要件を満たすことは明らかである。
ウ センサーマーク
引用発明の「黒色の位置合わせマーク702」は、「クレデンシャル作成装置が転写層の各転写区域704を印刷ヘッド、カード基材、及び/又は転写ローラに位置合わせするのに使用され」るものであるから、本件特許発明の「センサーマーク」に相当する。
そして、引用発明の「中間転写フィルム700」は、「黒色の位置合わせマーク702は、中間転写フィルムの搬送方向及び幅方向において、転写区域704の境界の外側であって、かつ、中間転写フィルム700の幅方向の末端部に配置されて」いることから、本件特許発明の「前記センサーマークが、前記中間転写フィルムの搬送方向に対してかつ幅方向に前記印画領域を避けた外側であって、中間転写フィルムの幅方向の末端部に設けられており」との要件を満たす。
(2) 一致点及び相違点
本件特許発明と引用発明は、下記アの点で一致し、下記イの点で相違又は一応相違する。
ア 一致点
「熱転写媒体と組み合わせて用いられる中間転写フィルムであって、
前記中間転写フィルムが、支持体上の全面に、受像層を、積層してなり、
前記受像層上に前記熱転写媒体によって形成される1画面分の画像を形成する印画領域を有し、
前記センサーマークが、前記中間転写フィルムの搬送方向に対してかつ幅方向に前記印画領域を避けた外側であって、中間転写フィルムの幅方向の末端部に設けられており、
前記中間転写フィルムから被転写体に前記受像層を含む層が2次転写され、最終印画物を形成する、中間転写フィルム」
イ 相違点
(相違点1)
「中間転写フィルム」について、本件特許発明は「顔料を色素として有するインク層を設けた熱転写媒体と組み合わせて用いられる」ものであるのに対して、
引用発明は「感熱式印刷で用いる印刷ヘッドを用いて」いるものの、画像形成において組み合わせて用いられる熱転写媒体(印刷リボン128)が、顔料を色素として有するインク層を設けたものであるのかが特定されていない点。
(相違点2)
「中間転写フィルム」の積層方向の構成について、本件特許発明が「支持体上の全面に、剥離層、中間層、受像層を、この順に積層してなり」と特定されているのに対して、
引用発明は「連続担持層上の全面に転写層を被膜した構成」と特定されるにとどまり、剥離層、中間層を有するか特定されていない点。
(相違点3)
「センサーマーク」の積層方向の位置について、本件特許発明が「前記支持体と、前記剥離層との間にセンサーマークが設けられてなり」と特定しているのに対して、
引用発明はそのような特定がされていない点。
(3) 判断
ア 相違点1について
引用発明の「中間転写フィルム」は、「感熱式印刷で用いる印刷ヘッドを用いて、画像を印刷リボン128から転写層の転写区域704に印刷される」ものである。ここで、感熱式印刷に関して、甲7(特開2012-126004号公報)の【0010】には、「受像層および受像層兼接着層とは、感熱転写プリンタまたはインクジェットプリンタ等によって印刷の版無しで画像情報(文字、記号等も含む)を記録できる受像適性を備えた層であり、中間転写媒体の転写前に染料または顔料による印刷画像を設けることが可能である。」と記載され、【0011】には、「受像層兼接着層への情報の形成は、中間転写媒体を主要部がドラムおよびサーマルヘッドで構成される転写装置に搬送し、色材が熱移行性材料である感熱転写記録媒体の色材層を中間転写媒体の受像層兼接着層に当接させると共に、前記サーマルヘッドを感熱転写記録媒体側から圧接し、かつ画像データに基づき前記サーマルヘッドの発熱素子群を適宜発熱させて、画像データに基づく画像パターンを受像層兼接着層に形成・印刷する方法が採用される。」と記載されており、甲8(特開2012-66544号公報)の【0006】、【0007】、甲9(特開2014-76614号公報)の【0010】、【0011】にも同様の記載があることから、感熱式印刷の技術分野において、顔料を色素として有する色材層を設けた感熱転写記録媒体と組み合わせて中間転写フィルムに印刷画像を形成することは、本件出願日当時に周知の技術事項であるといえる。
そうしてみると、引用発明において、感熱式印刷で用いる印刷ヘッドを用いて中間転写フィルムの転写層の転写区域に画像を印刷する際に、「印刷リボン128」として、上記周知技術である顔料を色素として有するインク層を設けた熱転写媒体を用いることは、当業者が容易になし得たことである。
イ 相違点2について
引用発明の「中間転写フィルム700」は、「連続担持層上の全面に転写層を被膜した構成」であるところ、中間転写フィルムの積層方向の具体的構成について、甲3には、「転写層102は、画像を表面108に受け取るように構成されている画像受取層106を有している。」(【0018】)、「転写層102と担持層104との間に脱着層109を有していてもよい。脱着層によって、転写積層処理中における転写層102の担持層104からの脱着を簡単に行えるようになる。」(【0020】)、「転写層102は、画像受取層106と担持層104の間に位置する保護層110を有している。」(【0021】)と記載され、図1にはその具体的な積層構造として、担持層上に、脱着層、保護層、画像受取層がこの順に積層される構成が記載されており、「担持層」、「脱着層」、「保護層」及び「画像受取層」は、本件特許発明の「支持体」、「剥離層」、「中間層」及び「受像層」にそれぞれ相当する。甲3の上記記載は、甲3における「本発明」に関する記載ではあるものの、中間転写フィルムの技術分野において、支持体上に、剥離層、中間層、受像層をこの順に積層する積層構造は従来から周知の構造(甲2(特開2009-83139号公報)の【0013】、甲7(特開2012-126004号公報)の【0006】~【0008】、甲8(特開2012-66544号公報)の【0004】~【0005】、甲9(特開2014-76614号公報)の【0006】~【0008】等参照)であり、甲3に記載された従来技術としての引用発明においても前提構成として当然に採用されている構成と理解するのが自然である。また、仮にそうでなかったとしても、少なくとも当業者であれば適宜採用を試みる程度の周知の構成といえる。そうしてみると、相違点2に係る本件特許発明の構成は、実質的な相違点とはいえないか、又は、引用発明の中間転写フィルムの積層方向の構成として、当業者が容易に想到し得た構成にすぎないというべきである。
ウ 相違点3について
まず、引用発明の「中間転写フィルム700」における「黒色の位置合わせマーク702」が、積層方向においてある特定の位置に配置されていることが前提とされているかについて、検討する。
引用発明は、甲3において、従来技術として開示された発明であって、当該従来技術に対応する記載箇所は、甲3の【0001】~【0007】及び図7である。
そして、上記記載箇所には、相違点3に係る「位置合わせマーク702」の積層方向における位置について明示の記載は存在しないものの、次の記載がある。
(ア) 「マーク702は、一般的には、転写リボン700に印刷されている黒色樹脂又は他の黒色材料で構成されている。マーク702は転写区域704の境界の外側に位置していて、これにより、基材上に望ましくないマークを形成しかねない転写処理又は積層処理中に、マーク702が基材に転写されることが抑制される。このため、リボン700の幅706は、マーク702及び転写区域704の両方を収容するために十分に広くなければならない。少なくとも転写リボン700の転写区域704の長手方向の境界に沿った部分708は全く使用されないので、この結果転写層にかなりの無駄が生じてしまう。」(【0006】)
(イ) 「転写リボン700は、マーク702の厚みに起因して、マーク702の位置がわずかに厚い。転写リボン700をスプールに巻き付けた場合、マーク702によって厚い隆線がスプールの片側に形成されてしまう。このため、クレデンシャル作製装置の供給スプールから繰り出される際に、又は巻き取りスプールに巻き取られる際に、転写リボン700の張力が不均一になってしまう可能性がある。その結果、転写リボン700は、クレデンシャル作製装置内での使用中にしわが生じやすくなり、基材に転写された画像の品質に悪影響を及ぼすおそれがある。」(【0007】)
また、甲3には、甲3において「本発明」とされる実施形態について、次の記載がある。
(ウ) 「本発明の各実施形態は、転写積層装置において使用する中間転写フィルム、及び、転写積層装置において中間転写フィルムを使用する方法を対象とする。中間転写フィルムのいくつかの実施形態では、担持層と、転写層と、複数の位置合わせマークとを含む。転写層は担持層に保持又は接着されており、転写積層動作を介して、担持層から基材に転写されるように構成されている。位置合わせマークは担持層上に保持されている。各位置合わせマークは、可視光線をほぼ透過し、赤外線を吸収する。」(【0008】)
(エ) 「いくつかの実施形態において、マーク160はそれぞれ、少なくとも一部が、基材114に転写されるように構成されている転写区域152の内部にある。・・・中略・・・しかし、マーク160は可視光線をほぼ透過する、つまり見えない状態であるので、マーク160は、印刷部124によって転写区域152に印刷された画像の見かけに対して、わずかな影響しか与えない。」(【0040】)
(オ) 「位置合わせマーク160を転写区域152内部に延在させる利点の1つは、中間転写フィルム100内において、転写区域152が従来可能であった範囲よりも広い範囲を占めることができることである。」(【0041】)
上記(ア)~(オ)の記載によれば、引用発明は、「黒色の位置合わせマークは、中間転写フィルムの搬送方向及び幅方向において、転写区域の境界の外側であ」るとの構成を採用することによって、基材上に望ましくないマークを形成しかねない転写処理又は積層処理中に、マークが基材に転写されることを抑制するようにした発明であると認められる。
これに対して、甲3の「本発明」は、引用発明においては、リボン700の幅が十分に広くなければならないため、転写層に無駄が生じるという問題(【0006】)、及び、転写リボンの片側に厚い隆線が形成され、しわの発生や転写画像の品質に悪影響を及ぼしてしまうという問題(【0007】)が生じることから、これを解決するために、可視光線をほぼ透過し、赤外線を吸収する位置合わせマークを採用し、さらに当該マークを転写区域内部に延在させることによって、転写積層動作を介して転写層が担持層から基材に転写されたとしても画像にわずかな影響しか与えないようにした発明であると理解される。
以上総合すると、甲3の従来技術に相当する引用発明に係る「中間転写フィルム700」は、少なくとも、上記(ア)のマーク702が基材に転写されるという課題(以下「課題ア-1」という。)については、転写区域704外に「マーク702」を配置することによって解決する一方、上記(ア)の転写層にかなりの無駄が生じてしまうという課題(以下「課題ア-2」という。)及び上記(イ)の下線部の課題(以下「課題イ」という。)については未解決であるもの(上記(ウ)及び(エ)の下線部の構成を有しないもの)と理解することができる。
上記理解に照らせば、引用発明における「マーク702」のフィルム積層方向の位置が、甲3の図1に示される160A~160Eのうちのいずれの位置であったとしても、「マーク702」が「転写区域704の境界の外側」に配置されてさえいれば、基材への直接転写やロールに巻かれて保管された場合における望ましくないマークの基材への形成を抑制できることは明らかである。他方、引用発明における「黒色の位置合わせマーク702」と「転写区域704」との位置関係からみて、課題アー2及び課題イが、160A~160Eの位置に関わらず、未解決であることも明らかである。
したがって、引用発明における「位置合わせマーク702」が、積層方向においてある特定の位置に配置されていることが前提とされているとはいえないと解するのが相当である。
以上を踏まえて、甲3の【0036】をみると、そこには「位置合わせマーク160の位置は、中間転写フィルム100上又は内部において様々であってもよい。これらの位置の例示的な実施形態が図1に示されている。・・・中略・・・いくつかの実施形態では、位置合わせマーク160は、マーク160C,160Dで示されているように、担持層104上又は内に形成されている。・・・中略・・・リボン提供業者の大半が市販する製品に組み込まれているのは、最後に説明した種類(160C又は160D)のマークである。」と記載されている。
上記記載によれば、中間転写フィルムの担持層と脱着層の間にマーク160Cを設ける構成は市販する製品の大半に組み込まれていることを意味し、160C又は160Dにマークを設ける構成は、本件出願日当時における慣用技術であったと認められるから、引用発明において想定されている構成のうちの1つ(記載されているに等しい構成)といえる。また、上記構成が慣用技術であることは、甲1(特開2004-284096号公報。「レジマーク」が、「シート基材」の「樹脂層」と、「透明シート」の間に設けられている。(【0017】、【図2】参照))、甲2(特開2009-83139号公報。「検知マーク」が、「基材シート」と「保護層」の間に設けられている。(【0013】、【0014】、【図1】参照))に記載された「中間転写記録媒体」の発明においても、転写基材の位置を読み取るためのマークが、支持体と剥離層との間に設けられていることからも理解できる事項である。
そうしてみると、支持体と剥離層との間にセンサーマークが設ける構成、すなわち、相違点3に係る構成は、実質的な相違点ではないか、又は、甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
(4) 特許権者の主張と合議体の判断
ア 特許権者の主張
特許権者は、特許権者が令和6年3月14日に提出した意見書において、概要、以下のように主張する。
(ア) 甲3従来技術は、「基材上に望ましくないマークを形成しかねない転写処理又は積層処理中に」、「マーク702」が「基材に転写されること」を、「マーク702」を「転写区域704」の境界の外側に位置」させることで「抑制」するものであり、甲3の【0037】の記載を考慮すると、「位置合わせマーク」として、「転写リボン700」の表面に設けられた「マーク160D」を有していることが明らかである。
(イ) 甲3従来技術と、甲3開示発明(甲3における本発明)を組み合わせることに阻害要因があり、組み合わせる動機づけがない。
イ 合議体の判断
上記主張について検討する。
上記(3)ウで検討したとおり、引用発明において、位置合わせマークの位置は160Dの位置に形成されることに限定されるものではなく、160A~160Eのいずれかの位置に形成されるものである。また、位置合わせマークの積層方向の位置に係る「相違点3」の判断は、引用発明と甲3における本発明の記載を組み合わせたような論理構成を採用したものではないことは明らかであって、上記(イ)の主張は前提において誤りである。そして、甲3の【0036】の記載から、位置合わせマークを160Cの位置に設けることは、当該技術分野における慣用技術と認められ、相違点3に係る本件特許発明の構成は、引用発明において採用されている構成であるか、甲3に記載された事項及び慣用技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものであることは、上記(3)で説示したとおりである。
(5) 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明は、甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明は、甲3に記載された技術的事項及び慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700427