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特許異議申立

2022-700907

化粧シート及び化粧板

審判番号
2022-700907
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-005910
登録番号
7035547
請求日
2022年09月15日
審決日
2023年11月10日
公報発行日
2024年02月22日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
  • 【権利者代理人】廣瀬 一
  • 【権利者代理人】宮坂 徹
  • 【権利者代理人】田中 秀▲てつ▼
  • 【異議申立人】佐藤 惠一
審判長/審判官
  • 審判長 井上 茂夫
  • 審判官 一ノ瀬 覚
  • 審判官 八木 誠
分類
P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B) / P1651.536-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B) / P1651.851-YAA(B32B) / P1651.853-YAA(B32B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7035547号発明「化粧シート及び化粧板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7035547号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔4~8〕について訂正することを認める。 特許第7035547号の請求項1~3、5~8に係る特許を維持する。 特許第7035547号の請求項4に係る特許についての特許異議申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7035547号の請求項1~8に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成30年1月17日に出願されたものであって、令和4年3月7日にその特許権の設定登録がされ、同年3月15日に特許掲載公報が発行された。 本件特許についての特許異議申立人佐藤惠一(以下「申立人」という。)による本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和4年 9月15日 特許異議の申立て 令和5年 3月24日付け 取消理由通知 同年 5月23日 特許権者より意見書、訂正請求書の提出 同年 8月 2日 申立人より上申書の提出 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和5年5月23日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)~(6)のとおりである(下線は特許権者が付した訂正箇所である。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項5に「前記有機球状粒子の平均粒径は、10μm以上40μm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の化粧シート。」と記載されているのを、「前記有機球状粒子の平均粒径は、10μm以上40μm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の化粧シート。」に訂正する(請求項5の記載を直接ないし間接的に引用する請求項6~8も同様に訂正する。)。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項6に「前記有機球状粒子の比率は、前記表面保護層の熱硬化型樹脂の質量に対して、5質量部以上50質量部以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の化粧シート。」と記載されているのを、「前記有機球状粒子の比率は、前記表面保護層の熱硬化型樹脂の質量に対して、5質量部以上50質量部以下であることを特徴とする請求項1から3及び5のいずれか1項に記載の化粧シート。」に訂正する(請求項6の記載を直接ないし間接的に引用する請求項7、8も同様に訂正する。)。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項7に「前記絵柄模様層は、前記基材の表面側に設けられ、該表面全体を覆い絵柄の下地色を表す柄インキ層と、前記柄インキ層の表面側に設けられ、前記下地色以外の絵柄を表す導管インキ層と、を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の化粧シート。」と記載されているのを、「前記絵柄模様層は、前記基材の表面側に設けられ、該表面全体を覆い絵柄の下地色を表す柄インキ層と、前記柄インキ層の表面側に設けられ、前記下地色以外の絵柄を表す導管インキ層と、を備えることを特徴とする請求項1から3、5及び6のいずれか1項に記載の化粧シート。」に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項8も同様に訂正する。)。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項8に「基板と、前記基板の表面側に設けられた請求項1から7のいずれか1項に記載の化粧シートと、を備えることを特徴とする化粧板。」と記載されているのを、「基板と、前記基板の表面側に設けられた請求項1から3、及び5から7のいずれか1項に記載の化粧シートと、を備えることを特徴とする化粧板。」に訂正する。 (6)一群の請求項 本件訂正の請求は、一群の請求項〔4~8〕について請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 訂正事項1は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2~5 訂正事項2~5は、訂正事項1による請求項4の削除に伴い、請求項5~8において請求項4を引用しないものとするであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3 小括 以上のとおり、訂正事項1~5による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項におけて準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔4~8〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり本件訂正は認められたから、本件訂正後の本件特許の請求項1~3、5~8に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」等ともいい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~3、5~8に記載された事項により特定される、以下のとおりのものであると認められる。 「【請求項1】 基材と、 前記基材の表面側に設けられた絵柄模様層と、 前記絵柄模様層の表面側に設けられた表面保護層と、を備える化粧シートであって、 前記表面保護層は、モース硬度が2以上3以下の有機球状粒子が添加された、ウレタン結合を有する熱硬化型樹脂を含み、 前記表面保護層の表面のうち前記有機球状粒子によって被覆されている部分の割合は、5%以上50%以下であることを特徴とする化粧シート。 【請求項2】 前記基材は、2枚の紙基材と、前記2枚の紙基材の間に配置された防湿樹脂層とを備えることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。 【請求項3】 前記基材は、紙基材であることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 前記有機球状粒子の平均粒径は、10μm以上40μm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の化粧シート。 【請求項6】 前記有機球状粒子の比率は、前記表面保護層の熱硬化型樹脂の質量に対して、5質量部以上50質量部以下であることを特徴とする請求項1から3及び5のいずれか1項に記載の化粧シート。 【請求項7】 前記絵柄模様層は、 前記基材の表面側に設けられ、該表面全体を覆い絵柄の下地色を表す柄インキ層と、 前記柄インキ層の表面側に設けられ、前記下地色以外の絵柄を表す導管インキ層と、を備えることを特徴とする請求項1から3、5及び6のいずれか1項に記載の化粧シート。 【請求項8】 基板と、 前記基板の表面側に設けられた請求項1から3、及び5から7のいずれか1項に記載の化粧シートと、を備えることを特徴とする化粧板。」 第4 取消理由の概要 令和5年3月24日付けで当審が通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 理由1:(明確性要件)本件の請求項1~3、5~7に係る発明は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、当該請求項に係る特許は、特許法第36条第6項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 理由2(進歩性)本件の請求項4及び請求項4を直接ないし間接的に引用する請求項5~7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 記 ・引用文献一覧 引用文献1:特開2016-187942号公報 引用文献2:特開2017-165030号公報(周知技術を示す例示文献) 引用文献3:特開2017-136766号公報(周知技術を示す例示文献) 上記引用文献1~3は、それぞれ申立人が提出した甲第1、3、8号証である。以下、申立人が提出した証拠は「甲1」等と略記する。 第5 当審の判断 1 理由1(明確性要件)について 理由1は、具体的には、本件特許の請求項1の「前記表面保護層の表面のうち前記有機球状粒子によって被覆されている部分の割合は、5%以上50%以下である」との記載は、何の割合であるのかが明確でないから、請求項1及び請求項1を直接ないし間接的に引用する請求項2、3、5~7に係る発明は明確でないというものである。 ここで、「被覆」の一般的な意味は、「おおいかぶせること。」(広辞苑第六版)であるところ、令和5年5月23日の特許権者の意見書の5(4)」に、「被覆」は「表面保護層の表面」に対する「有機球状粒子の割合」をおおいかぶせることであり、上記記載は、表面保護層の表面に位置する平面に対して、「有機球状粒子」のうちの表面から突出した部分をおおいかぶせる割合を意味し、明確である旨主張する。 本件発明は、「耐傷性に優れるとともに、接触した物体が損傷することを防止可能な化粧シート及び化粧板を提供すること」(段落【0004】)という課題を解決するために発明されたものであるところ、接触した物体の損傷を防止するためには、当然、表面保護層の表面全体の面積に対する、表面から突出した粒子の部分が占める面積の合計の割合が問題となることは当然のことである。そして、本件発明における「被覆」という語が、当該突出した粒子の部分の面積を特定するものであり、上述の表面保護層の表面に位置する平面に対して、「有機球状粒子」のうちの表面から突出した部分をおおいかぶせる割合と理解することができ、本件特許の請求項1の記載は、明確である。 したがって、理由1により、本件の請求項1~3、5~7に係る特許を取り消すことはできない。 なお、申立人は、令和5年8月2日付けの上申書において、甲12(特開2014-85528号公報)、甲13(特開2017-132662号公報)、甲14(特開2007-290165号公報)、甲15(特開平1-264628号公報)を上申書に添付して提出し、被覆率の算定方法は様々であるから明確でない旨主張するが、それら個々の甲号証における定義が開示されているにすぎず、本件発明における「割合」については、上述のとおりのものと理解できるのであるから、当該主張は採用できない。 2 理由2(進歩性)について 上記第2のとおり、本件訂正により、請求項4が削除され、請求項5~7は請求項4を引用しないものとなったので、理由2は解消された。 第6 取消理由通知で採用しなかった異議理由について 1 特許法第36条第6項第2号(明確性要件)について 申立人は、特許異議申立書(25~30ページ参照。)において、請求項5の「前記有機球状粒子の平均粒径は、10μm以上40μm以下であること」という記載について、平均粒径の定義、測定方法が不明である旨主張する。 しかしながら、平均粒径は粒状製品の仕様として一般に用いられるものであり、本件発明において、そのような仕様の粒子を用いていることを示すにすぎないことは明らかであり、第三者に不測の不利益を及ぼす程度に不明確ではない。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 また、申立人は、特許異議申立書(30~34ページ参照。)において、請求項1の「モース硬度が2以上3以下の有機球状粒子」という記載について、有機球状粒子のモース硬度を特定することができず、不明である旨主張する。 しかしながら、モース硬度は有機球状粒子の仕様として一般に用いられるものであり、本件発明において、そのような仕様の粒子を用いていることを示すにすぎないことは明らかであり、記載は明確である。 したがって、申立人の上記主張も採用できない。 2 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について (1)申立人の主張 申立人は、特許異議申立書(40~55ページ参照。)において、次の点を主張する。 ア 本件明細書の実施例、比較例は、実際に実験がなされたとすれば当然に記載されるべき事項が記載されておらず、具体性に欠ける極めて不自然な記載がなされている上、技術的な矛盾を含んでいるのであるから、当業者において再現不可能であり、このような実験が本当になされたのかも疑わしいものであるから、実験データが本件発明のサポートとなり得ない(47ページ)。 イ 本件発明1~4、6~8には、本件発明5の「有機球状粒子の平均粒径は、10μm以上40μm以下である」が存在せず、その平均粒径に関して何ら制限のない本件発明1~4、6~8が、上記比較例1のような本件発明の技術的課題を解決出来ない態様を含んでいることが明らかと言える(49ページ)。 また、本件発明5の「有機球状粒子の平均粒径は、10μm以上40μm以下である」という規定についても、実施例1で具体的に10μm以上40μm以下の範囲のどの値であるのか全く特定ができないから、「10μm以上40μm以下」の範囲において課題を解決できると認識し得ない。 ウ 本件発明の「モース硬度が2以上3以下の有機球状粒子が添加され」、「有機球状粒子によって被覆されている部分の割合は、5%以上50%以下である」という規定に関し、これらの数式が示す範囲内であれば所望の効果が得られると当業者が認識できる程度に、具体例を開示して記載されているとはいえないから、サポート要件を充足しないことが明らかである(53~55ページ)。 (2)判断 ア 本件発明の解決しようとする課題は、「耐傷性に優れるとともに、接触した物体が損傷することを防止可能な化粧シート及び化粧板を提供すること」(本件明細書の段落【0004】)であるところ、この課題は、有機球状粒子3aの硬さを、モース硬度で2以上3以下とすることにより解決し得る(本件明細書の段落【0017】)。 本件発明は、「モース硬度で2以上3以下の有機球状粒子が添加」されることが特定されており、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものではない。 イ 申立人の上記主張アについて しかし、「モース硬度で2以上3以下の有機球状粒子が添加」された実施例1~4から、耐傷試験、収納物劣化確認試験で、いずれも合格ラインを超える評価であるのに対し、そのような有機球状粒子を添加していない比較例1、2では、合格ラインを下回る評価であることが把握できるから、実験データが本件発明のサポートとなり得ないということはない。 ウ 申立人の上記主張イについて 本件発明の課題は「モース硬度で2以上3以下の有機球状粒子が添加」されることにより解決されるから、上記課題を解決するために、「有機球状粒子の平均粒径は、10μm以上40μm以下である」ことを規定することまでは要しない。 エ 申立人の上記主張ウについて 本件発明の「モース硬度が2以上3以下の有機球状粒子が添加され」との規定は、モース硬度が「2」を下回れば柔らかくなって耐傷性が劣るようになり、「3」を上回れば固くなって物体が損傷し易くなることが、当業者であれば認識できるから、実施例において具体的なモース硬度が開示されていないとしても、サポート要件を充足しないものではない。 また、「有機球状粒子によって被覆されている部分の割合は、5%以上50%以下である」という規定については、本件発明の課題は、「モース硬度が2以上3以下の有機球状粒子が添加され」ることで解決されているから、具体例の開示が十分でないことをもってサポート要件を充足しないものとすることはできない。 オ したがって、申立人の上記主張は、いずれも採用できない。 3 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について 申立人は、特許異議申立書(55~57ページ参照。)において、有機球状粒子のモース硬度を特定することは不可能であり、また、「前記表面保護層の表面のうち前記有機球状粒子によって被覆されている部分の割合は、5%以上50%以下である」ことは、どのような数値範囲であるのか不明である上、調整の具体的な方法が発明の詳細な説明に記載されていないから、実施可能要件を満たしていない旨主張する。 しかしながら、前者については、上記1で述べたのと同様の理由により特定可能なものであり、後者についても、上記第5の1で述べたように、上記「割合」の意味するところは明らかであり、調整についても、有機球状樹脂の平均粒径やその添加量や表面保護層の厚みなどを変更することにより、上記「割合」を調整できることは明らかであるから、上記「割合」を満たすものを当業者が実施できないとすることはできない。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 4 特許法第29条第1項第3号(新規性)、同法第29条第2項(進歩性)について (1)甲1(特開2016-187942号公報)を主引例とする場合(新規性、進歩性) 申立人は、特許異議申立書(57~75ページ、78~79ページ参照。)において、請求項1~3、5~8に係る発明は、甲1に記載された発明であるか、あるいは、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張するので、以下検討する。 (1-1)甲1発明 甲1の【請求項1】及び【0024】、【0026】、【0028】、【0029】の記載より、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。 「基材シート上に、低艶絵柄層及び表面保護層が少なくともこの順に積層されている化粧シートであって、 前記低艶絵柄層はパターン状に形成され、且つ、前記表面保護層と接するように積層されており、 前記表面保護層は、熱硬化型樹脂のポリウレタン樹脂からなり、 前記表面保護層の厚みは2~15μmであり、 前記表面保護層は、平均粒子径が25μm以下である耐摩耗性フィラーを含有し、 前記耐摩耗性フィラーは、モース硬度が3以上が好ましく8以下であり、 前記耐摩耗性フィラーは、有機粒子を用い、 前記耐摩耗性フィラーの含有量は、前記表面保護層に含まれる樹脂成分100質量部に対して3~15質量部である、化粧シート。」 (1-2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 ・後者の「基材シート」は、前者の「基材」に相当し、同様に、「低艶絵柄層」は、「絵柄模様層」に、「表面保護層」は、「表面保護層」に、「化粧シート」は「化粧シート」に、それぞれ相当する。また、後者の「有機粒子を用い」た「耐摩耗性フィラー」と、前者の「有機球状粒子」とは、「有機粒子」である点で共通する。 そして、上記相当関係を踏まえると以下のことがいえる。 ・後者の「基材シート上に、低艶絵柄層及び表面保護層が少なくともこの順に積層されている化粧シート」は、前者の「基材と、前記基材の表面側に設けられた絵柄模様層と、前記絵柄模様層の表面側に設けられた表面保護層と、を備える化粧シート」に相当する。 ・後者の「前記表面保護層は、熱硬化型樹脂のポリウレタン樹脂からなり、」「前記表面保護層は、平均粒子径が25μm以下である耐摩耗性フィラーを含有し、前記耐摩耗性フィラーは、モース硬度が3以上が好ましく8以下であり、前記耐摩耗性フィラーは、有機粒子を用い」ることと、前者の「前記表面保護層は、モース硬度が2以上3以下の有機球状粒子が添加された、ウレタン結合を有する熱硬化型樹脂を含」むこととは、「前記表面保護層は、有機粒子が添加された、ウレタン結合を有する熱硬化型樹脂を含」むという点で共通する。 したがって、本件発明1と甲1発明との一致点、相違点は次のとおりと認める。 〔一致点1〕 「基材と、 前記基材の表面側に設けられた絵柄模様層と、 前記絵柄模様層の表面側に設けられた表面保護層と、を備える化粧シートであって、 前記表面保護層は、有機粒子が添加された、ウレタン結合を有する熱硬化型樹脂を含む、化粧シート。」 〔相違点1-1〕 有機粒子の形状について、本件発明1では、「球状」であるのに対し、甲1発明では、形状の特定がない点。 〔相違点1-2〕 有機粒子の硬度について、本件発明1では、「モース硬度が2以上3以下」であるのに対し、甲1発明では、「モース硬度が3以上が好ましく8以下であ」る点。 〔相違点1-3〕 本件発明1では、「前記表面保護層の表面のうち前記有機球状粒子によって被覆されている部分の割合は、5%以上50%以下である」のに対し、甲1発明では、そのような特定がない点。 イ 判断 事案に鑑み、上記相違点1-2と1-3について検討する。 (ア)新規性について 少なくとも上記相違点1-3は実質的な相違点であるので、本件発明1は甲1発明であるとはいえない。 (イ)進歩性について 本件発明1は、上記相違点1-2に係る事項を前提として、上記相違点1-3に係る事項と合わせたことにより、「接触した物体が損傷することを防止可能」(段落【0006】)という作用効果を奏するものであるが、甲1には、「前記表面保護層の表面のうち前記有機球状粒子によって被覆されている部分の割合」を所定値以下として、接触した物体が損傷することを防止することの記載も示唆もない。 次に、甲2(特開2015-77709号公報)、甲7(特開2017-154388号公報)の甲1発明への適用について、以下検討する。 a 甲2について 甲2には次の記載がある。 ・「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、表面の各種耐性を有し、表面の立体意匠感や手触り感を有し、かつ塗工適性など製造が容易となる化粧シートを提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明はこの課題を解決したものであり、その請求項1記載の発明は、基材上に着色層およびまたは絵柄模様層を有し、最表面に表面保護層を有し、化粧シートにおいて、前記表面保護層に、平均粒径40μm~80μmの無機粒子あるいは合成樹脂粒子を含有し、前記無機粒子あるいは合成樹脂粒子が、化粧シート表面の面積比率で10~20%表出していることを特徴とする化粧シートである。」 ・「【0018】 本発明における表面保護層5には、表面保護層5中に平均粒径40μm~80μmの無機粒子あるいは合成樹脂粒子6を含有し、前記無機粒子あるいは合成樹脂粒子6が、化粧シート表面の面積比率で10~20%表出するように用いられる。前記無機粒子あるいは合成樹脂粒子6としては、α-アルミナ、酸化クロム、酸化鉄、ダイヤモンド、などの無機粒子、または架橋アクリルなどの有機樹脂ビーズが使用可能である。」 段落【0005】の「表面の各種耐性」とは化粧シート自体の表面の耐性のことであり、接触した物体が損傷することを防止可能とすることを狙ったものではなく、このことは、粒子として、「α-アルミナ、酸化クロム、酸化鉄、ダイヤモンド、などの無機粒子」といった明らかに接触した物体を損傷させる可能性が高いものも有機樹脂ビーズと同列に列挙されていることからも明らかである。すなわち、甲2に記載されるものは、粒子を柔らかいものとして、接触相手の物体を保護するという技術的思想をそもそも有しておらず、本件発明1の「前記表面保護層の表面のうち前記有機球状粒子によって被覆されている部分の割合」に相当する数値範囲について重複する範囲(面積比率で10~20%)を有していたとしても、その技術的意味は本件発明1とは異なるものである。 そうすると、甲2には架橋アクリルの有機樹脂ビーズのモース硬度についての記載はない上、甲1の実施例5(表1参照。)にアクリルビーズのモース硬度が5であることが示されていることからも、甲2に記載された多種の粒子の中から、架橋アクリルのものを選択し得たとしても、上記相違点1-2に係る事項を有するものになるとまではいえないし、架橋アクリルのものを選択した上でさらにモース硬度をあえて2以上3以下に変更する動機付けもなく、そのような変更をした上で、さらに甲1発明に適用することは、当業者であっても容易になし得たことではない。 b 甲7について 甲7には次の記載がある。 ・「【課題を解決するための手段】 【0005】 上記課題を解決するために、本発明の一態様は、基材と、基材上に形成された絵柄模様層と、絵柄模様層上に形成された表面保護層と、を備える化粧シートにおいて、表面保護層が、表面保護層の表面から一部が突出した表面粒子を含有する。これに加え、表面粒子が表面保護層を構成する樹脂成分に対して占める比重が、1.0以上1.4以下の範囲内である。 【発明の効果】 【0006】 本発明の一態様によれば、表面粒子が、表面保護層を構成する樹脂成分中で沈降せず均一に分散するため、各種耐性、表面の立体意匠感、手触り感、塗工適性等、生産内ばらつきを抑制して、品質を同等に維持した化粧シート及び化粧板を提供することが可能となる。」 ・「【0025】 (表面粒子) 表面粒子12の平均粒径は、40[μm]以上80[μm]以下の範囲内である。 また、表面粒子12は、表面粒子12が表面保護層10を構成する樹脂成分に対して占める比重が、1.0以上1.4以下の範囲内となるように、表面保護層10に含有させる。 また、表面粒子12は、化粧シート1を表面保護層10側から見た、化粧シート1の表面(表面保護層10の表面)における、表面保護層10から突出した表面粒子12の面積比率が、10[%]以上20[%]以下の範囲内となるように、表面保護層10に含有させる。 また、表面粒子12としては、例えば、α-アルミナ、酸化クロム、酸化鉄、ダイヤモンド等の無機粒子、または、架橋アクリル等の有機樹脂ビーズを用いることが可能である。 第一実施形態では、表面粒子12として、アクリル樹脂ビーズ(合成樹脂粒子)を用いた場合を説明する。」 甲7についても上記(1)の甲2と同様に、段落【0006】の「各種耐性」とは化粧シート自体の耐性のことであり、接触した物体が損傷することを防止可能とすることを狙ったものではなく、このことは、粒子として、「α-アルミナ、酸化クロム、酸化鉄、ダイヤモンド、などの無機粒子」といった明らかに接触した物体を損傷させる可能性が高いものも有機樹脂ビーズと同列に列挙されていることからも明らかである。すなわち、甲7に記載されるものは、粒子を柔らかいものとして、接触相手の物体を保護するという技術的思想をそもそも有しておらず、本件発明1の「前記表面保護層の表面のうち前記有機球状粒子によって被覆されている部分の割合」に相当する数値範囲について重複する範囲(面積比率が、10[%]以上20[%]以下の範囲内)を有していたとしても、その技術的意味は本件発明1とは異なるものである。 そうすると、甲7には架橋アクリルの有機樹脂ビーズのモース硬度についての記載はない上、甲1の実施例5(表1参照。)にアクリルビーズのモース硬度が5であることが示されていることからも、甲2に記載された多種の粒子の中から、架橋アクリルのものを選択し得たとしても、上記相違点1-2に係る事項を有するものになるとまではいえないし、架橋アクリルのものを選択した上でさらにモース硬度をあえて2以上3以下に変更する動機付けもなく、そのような変更をした上で、さらに甲1発明に適用することは、当業者であっても容易になし得たことではない。 以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ウ 小括 したがって、本件発明1は甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (1-3)本件発明2~3、5~8について 本件発明2~3、5~8は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、上記(1-2)と同様の理由により、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (2)甲2を主引例とする場合(進歩性) 申立人は、特許異議申立書(79~86ページ、88~90ページ参照。)において、請求項1~3、5~8に係る発明は、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張するので、以下検討する。 (2-1)甲2発明 甲2の【請求項1】、【0018】、【0019】の記載より、甲2には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認める。 「基材上に着色層およびまたは絵柄模様層を有し、最表面に表面保護層を有する化粧シートにおいて、前記表面保護層に、平均粒径40μm~80μmのα-アルミナ、酸化クロム、酸化鉄、ダイヤモンドなどの無機粒子、あるいは、架橋アクリルなどの合成樹脂粒子を含有し、前記無機粒子あるいは合成樹脂粒子が、化粧シート表面の面積比率で10~20%表出しているものであり、前記表面保護層は、前記無機粒子あるいは合成樹脂粒子を硬化型樹脂組成物中に含有させたもの塗工後、硬化させることで設けるものであり、硬化型樹脂組成物としては熱硬化型樹脂組成物、電離放射線硬化型樹脂組成物、2液硬化型樹脂組成物など各種架橋により硬化する樹脂組成物である、化粧シート。」 (2-2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲2発明とを対比する。 ・後者の「基材」は、前者の「基材」に相当し、同様に、「絵柄模様層」は、「絵柄模様層」に、「表面保護層」は、「表面保護層」に、「化粧シート」は「化粧シート」に、それぞれ相当する。また、後者の「α-アルミナ、酸化クロム、酸化鉄、ダイヤモンドなどの無機粒子、あるいは、架橋アクリルなどの合成樹脂粒子」と、前者の「有機球状粒子」とは、「粒子」である点で共通する。さらに、後者の「硬化型樹脂組成物としては熱硬化型樹脂組成物、電離放射線硬化型樹脂組成物、2液硬化型樹脂組成物など各種架橋により硬化する樹脂組成物」と、前者の「ウレタン結合を有する熱硬化型樹脂」とは、「硬化型樹脂」である点で共通する。 そして、上記相当関係を踏まえると以下のことがいえる。 ・後者の「基材上に着色層およびまたは絵柄模様層を有し、最表面に表面保護層を有する化粧シート」は、前者の「基材と、前記基材の表面側に設けられた絵柄模様層と、前記絵柄模様層の表面側に設けられた表面保護層と、を備える化粧シート」に相当する。 ・後者の「前記表面保護層に、平均粒径40μm~80μmのα-アルミナ、酸化クロム、酸化鉄、ダイヤモンドなどの無機粒子、あるいは、架橋アクリルなどの合成樹脂粒子を含有し」、「前記表面保護層は、前記無機粒子あるいは合成樹脂粒子を硬化型樹脂組成物中に含有させたもの塗工後、硬化させることで設けるものであり、硬化型樹脂組成物としては熱硬化型樹脂組成物、電離放射線硬化型樹脂組成物、2液硬化型樹脂組成物など各種架橋により硬化する樹脂組成物である」ことと、前者の「前記表面保護層は、モース硬度が2以上3以下の有機球状粒子が添加された、ウレタン結合を有する熱硬化型樹脂を含」むこととは、「前記表面保護層は、粒子が添加された、硬化型樹脂を含」むという点で共通する。 ・後者の「前記無機粒子あるいは合成樹脂粒子が、化粧シート表面の面積比率で10~20%表出しているものであ」ることと、前者の「前記表面保護層の表面のうち前記有機球状粒子によって被覆されている部分の割合は、5%以上50%以下である」こととは、「前記表面保護層の表面のうち前記粒子によって被覆されている部分の割合は、5%以上50%以下である」という点で共通するといえる。 したがって、本件発明1と甲2発明との一致点、相違点は次のとおりと認める。 〔一致点2〕 「基材と、 前記基材の表面側に設けられた絵柄模様層と、 前記絵柄模様層の表面側に設けられた表面保護層と、を備える化粧シートであって、 前記表面保護層は、粒子が添加された、硬化型樹脂を含み、 前記表面保護層の表面のうち前記粒子によって被覆されている部分の割合は、5%以上50%以下である化粧シート。」 〔相違点2-1〕 粒子の形状について、本件発明1では、「球状」であるのに対し、甲2発明では、形状の特定がない点。 〔相違点2-2〕 粒子の硬度及び素材について、本件発明1では、「モース硬度が2以上3以下の有機」からなるものであるのに対し、甲2発明では、モース硬度の特定がない「α-アルミナ、酸化クロム、酸化鉄、ダイヤモンドなどの無機」のもの、あるいは、「架橋アクリルなどの合成樹脂」からなるものである点。 〔相違点2-3〕 硬化型樹脂について、本件発明1では、「ウレタン結合を有する熱硬化型樹脂」であるのに対し、甲2発明では、「無機粒子あるいは合成樹脂粒子を硬化型樹脂組成物中に含有させたもの塗工後、硬化させることで設けるものであり、硬化型樹脂組成物としては熱硬化型樹脂組成物、電離放射線硬化型樹脂組成物、2液硬化型樹脂組成物など各種架橋により硬化する樹脂組成物」である点。 イ 判断 事案に鑑み、上記相違点2-2について検討する。 上記(1)(1-2)イ(イ)aで述べたように、甲2に記載されるものは、接触した物体が損傷することを防止可能とすることを狙ったものではなく、粒子として、「α-アルミナ、酸化クロム、酸化鉄、ダイヤモンド、などの無機粒子」といった明らかに接触した物体を損傷させる可能性が高いものも有機樹脂ビーズと同列に列挙されていることから、粒子を柔らかいものとして、接触相手の物体を保護するという技術的思想をそもそも有しておらず、本件発明1の「前記表面保護層の表面のうち前記有機球状粒子によって被覆されている部分の割合」に相当する数値範囲について重複する範囲(面積比率で10~20%表出)を有していたとしても、その技術的意味は本件発明1とは異なるものである。 そうすると、甲2発明に、粒子の選択肢として「架橋アクリルなどの合成樹脂粒子」が挙げられ、架橋アクリルが例示されているが、甲1の実施例5(表1参照。)にアクリルビーズのモース硬度が5であることが示されていることからも、当該例示があるからといって、上記相違点2-2に係る本件発明1の事項を満たすものとはいえない。また、甲1にはモース硬度3のウレタンビーズの実施例(表1参照。)も示されているが、粒子を柔らかいものとして、接触相手の物体を保護するという技術的思想をそもそも有していない甲2発明において、あえてそのようなウレタンビーズを採用する動機付けがあるともいえない。 以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ウ 小括 したがって、本件発明1は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2-3)本件発明2~3、5~8について 本件発明2~3、5~8は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、上記(2-2)と同様の理由により、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3)甲3(特開2017-165030号公報)を主引例とする場合(進歩性) 申立人は、特許異議申立書(90~100ページ、101~102ページ参照。)において、請求項1~3、5~8に係る発明は、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張するので、以下検討する。 (3-1)甲3発明 甲3の【請求項1】、【請求項4】【0026】の記載より、甲3には次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているものと認める。 「シート基材上に、絵柄模様層と、第1表面保護層と、第2表面保護層とが、この順に積層され、 前記第1表面保護層は、ウレタン結合を有する熱硬化型樹脂と、紫外線硬化型樹脂と、平均粒径が3.0μm以上7.0μm以下のシリコーン樹脂からなる球状フィラーとを含み、 前記第2表面保護層は、硬度が高い紫外線硬化型樹脂又は電離放射線硬化型樹脂を含み、前記第1表面保護層の20%以上80%以下の面積を被覆する化粧シート。」 (3-2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲3発明とを対比する。 ・後者の「シート基材」は、前者の「基材」に相当し、同様に、「絵柄模様層」は、「絵柄模様層」に、「第1表面保護層」及び「第2表面保護層」の両者を合わせたものは、「表面保護層」に、「化粧シート」は「化粧シート」に、それぞれ相当する。また、後者の「シリコーン樹脂からなる球状フィラー」と、前者の「有機球状粒子」とは、「球状粒子」である点で共通する。 そして、上記相当関係を踏まえると以下のことがいえる。 ・後者の「シート基材上に、絵柄模様層と、第1表面保護層と、第2表面保護層とが、この順に積層され」た「化粧シート」は、前者の「基材と、前記基材の表面側に設けられた絵柄模様層と、前記絵柄模様層の表面側に設けられた表面保護層と、を備える化粧シート」に相当する。 ・後者の「前記第1表面保護層は、ウレタン結合を有する熱硬化型樹脂と、紫外線硬化型樹脂と、平均粒径が3.0μm以上7.0μm以下のシリコーン樹脂からなる球状フィラーとを含み、前記第2表面保護層は、硬度が高い紫外線硬化型樹脂又は電離放射線硬化型樹脂を含み、前記第1表面保護層の20%以上80%以下の面積を被覆する」ことと、前者の「前記表面保護層は、モース硬度が2以上3以下の有機球状粒子が添加された、ウレタン結合を有する熱硬化型樹脂を含」むこととは、「前記表面保護層は、球状粒子が添加された、ウレタン結合を有する熱硬化型樹脂を含」むという点で共通する。 したがって、本件発明1と甲3発明との一致点、相違点は次のとおりと認める。 〔一致点3〕 「基材と、 前記基材の表面側に設けられた絵柄模様層と、 前記絵柄模様層の表面側に設けられた表面保護層と、を備える化粧シートであって、 前記表面保護層は、球状粒子が添加された、ウレタン結合を有する熱硬化型樹脂を含む化粧シート。」 〔相違点3-1〕 球状粒子の硬度及び素材について、本件発明1では、「モース硬度が2以上3以下の有機」のものからなるものであるのに対し、甲3発明では、モース硬度の特定がない「シリコーン樹脂」からなるものである点。 〔相違点3-2〕 本件発明1では、「前記表面保護層の表面のうち前記有機球状粒子によって被覆されている部分の割合は、5%以上50%以下である」のに対し、甲3発明では、そのような特定がない点。 イ 判断 上記相違点3-1について検討する。 本件発明1の「表面保護層」に相当する甲3発明の「第1表面保護層」及び「第2表面保護層」は、そのうちの「第2表面保護層」が「硬度が高い紫外線硬化型樹脂又は電離放射線硬化型樹脂を含」むという事項を有するものである。そして、それは「硬度が高い樹脂を含むため、化粧シート10の最表面層の硬度を向上でき、化粧シート10の耐摩耗性や、耐擦傷性、耐溶剤性等の表面物性を向上できる」(段落【0026】)ためのものであって、甲3発明は、粒子を柔らかいものとして、接触相手の物体を保護するという技術的思想をそもそも有していない。 そうすると、甲1にはモース硬度3のウレタンビーズの実施例(表1参照。)も示されているが、粒子を柔らかいものとして、接触相手の物体を保護するという技術的思想をそもそも有していない甲3発明において、あえてそのようなウレタンビーズを採用する動機付けがあるとはいえない。 また、仮に採用したとしても、甲3発明は、上記の第2表面保護層に係る事項を有するものであるから、本件発明1が奏する「接触した物体が損傷することを防止可能」という効果を得ることはできないため、作用効果の予測性があるとはいえない。 以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ウ 小括 したがって、本件発明1は、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3-3)本件発明2~3、5~8について 本件発明2~3、5~8は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、上記(3-2)と同様の理由により、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 5 まとめ 以上1~4のとおりであるから、申立人の上記各申立理由には、いずれも理由がない。 第7 むすび 以上検討したとおり、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載された特許異議申立理由及び証拠によっては、請求項1~3、5~8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~3、5~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項4に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項4に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700907

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