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特許異議申立

2022-700957

化粧材

審判番号
2022-700957
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-549085
登録番号
7044071
請求日
2022年09月30日
審決日
2024年12月12日
公報発行日
2025年05月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
  • 【権利者代理人】廣瀬 一
  • 【権利者代理人】宮坂 徹
  • 【権利者代理人】田中 秀▲てつ▼
  • 【異議申立人】佐藤 惠一
審判長/審判官
  • 審判長 一ノ瀬 覚
  • 審判官 八木 誠
  • 審判官 神山 茂樹
分類
P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B) / P1651.536-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B) / P1651.851-YAA(B32B) / P1651.853-YAA(B32B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条の2、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7044071号発明「化粧材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7044071号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。 特許第7044071号の請求項1~4、9に係る特許を維持する。 特許第7044071号の請求項5~8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7044071号の請求項1~9に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、2017年(平成29年)11月2日(優先日 平成28年11月2日)を国際出願日とする出願であって、令和4年3月22日にその特許権の設定登録がされ、同年3月30日に特許掲載公報が発行された。 本件特許についての特許異議申立人佐藤惠一(以下「申立人」という。)による本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和4年 9月30日 特許異議の申立て 令和5年 2月 7日付け 取消理由通知 同年 4月10日 特許権者より意見書・訂正請求書 同年 6月19日 申立人より意見書 同年 8月22日付け 取消理由通知(決定の予告) 同年10月24日 特許権者より意見書 同年11月29日 申立人より上申書 同年12月15日付け 取消理由通知(決定の予告) 令和6年 2月14日 特許権者より意見書・訂正請求書 同年 4月12日 申立人より意見書 同年 5月31日付け 取消理由通知(決定の予告) 同年 7月24日 特許権者より意見書・訂正請求書 同年 9月 4日 申立人より意見書 なお、令和5年4月10日及び令和6年2月14日の訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 第2 本件訂正 1 訂正の内容 令和6年7月24日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)~(6)(なお、下線は訂正箇所である。)のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1の「前記艶消し剤は、1次粒子が2次凝集して形成された粒子であることを特徴とする」を「前記艶消し剤は、1次粒子が2次凝集して形成された粒子であり、前記基材と前記第1の艶調整層との間に設けられた柄インキ層を更に備え、前記第1の艶調整層は、前記基材の前記第1の艶調整層側の面の全面を被覆しており、前記第1の艶調整層は、前記柄インキ層の上面に直接接触して形成され、前記第2の艶調整層は、前記柄インキ層の直上以外の部分と重なる部分に形成されて、前記柄インキ層の柄模様と前記第1の艶調整層の艶とが同調していることを特徴とする」に変更する(請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項2~4、9も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項8を削除する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項9の「シリカ粒子であることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の」を「シリカ粒子であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の」に変更する。 (7)一群の請求項 本件訂正前の請求項1~9は、請求項2~6、9が、本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあり、請求項8、9が、本件訂正前の請求項7の記載を引用する関係にあるから、本件訂正の請求は、一群の請求項〔1~9〕について請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1に、「前記基材と前記第1の艶調整層との間に設けられた柄インキ層を更に備え、前記第1の艶調整層は、前記基材の前記第1の艶調整層側の面の全面を被覆しており、前記第1の艶調整層は、前記柄インキ層の上面に直接接触して形成され、前記第2の艶調整層は、前記柄インキ層の直上以外の部分と重なる部分に形成されて、前記柄インキ層の柄模様と前記第1の艶調整層の艶とが同調している」との限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 訂正事項1は、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の請求項6の「前記基材と前記第1の艶調整層との間に設けられた柄インキ層を更に備え、前記第1の艶調整層は、前記基材の前記第1の艶調整層側の面の全面を被覆しており、前記第2の艶調整層は、前記柄インキ層の直上以外の部分と重なる部分に形成されて、前記柄インキ層の柄模様と前記第1の艶調整層の艶とが同調している」との事項や図2によるのは明らかであるから、新規事項を追加するものではない。 (2)訂正事項2~5について 訂正事項2~5は、それぞれ、請求項5~8を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、新規事項を追加するものではない。 (3)訂正事項6について 訂正事項6は、請求項5~8を削除するのに伴って、請求項9において、引用する請求項から請求項5~8を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、新規事項を追加するものではない。 3 小括 以上によれば、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり本件訂正は認められたから、本件訂正後の本件特許の請求項1~4、9に係る発明(以下「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~4、9に記載された事項により特定される、以下のとおりのものであると認められる。 「【請求項1】 基材上に設けられた第1の艶調整層と、前記第1の艶調整層上に部分的に設けられ、前記第1の艶調整層の艶と異なる艶を有する第2の艶調整層とを備え、 前記第1の艶調整層と前記第2の艶調整層とのうち、少なくとも相対的に艶の低い艶調整層が艶消し剤を含み、前記相対的に艶の低い艶調整層に含まれる艶消し剤の平均粒径が6.0μm以上15.0μm以下であり、 前記相対的に艶の低い艶調整層の層厚は、1μm以上18μm以下であり且つ前記相対的に艶の低い艶調整層に含まれる艶消し剤の粒径の1.2倍以下の層厚であり、 前記艶消し剤は、1次粒子が2次凝集して形成された粒子であり、 前記基材と前記第1の艶調整層との間に設けられた柄インキ層を更に備え、 前記第1の艶調整層は、前記基材の前記第1の艶調整層側の面の全面を被覆しており、 前記第1の艶調整層は、前記柄インキ層の上面に直接接触して形成され、 前記第2の艶調整層は、前記柄インキ層の直上以外の部分と重なる部分に形成されて、前記柄インキ層の柄模様と前記第1の艶調整層の艶とが同調していることを特徴とする化粧材。 【請求項2】 前記相対的に艶の低い艶調整層の層厚は、前記相対的に艶の低い艶調整層に含まれる艶消し剤の粒径の1/3以上の層厚であることを特徴とする請求項1に記載の化粧材。 【請求項3】 前記艶消し剤は、無機材料からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の化粧材。 【請求項4】 前記無機材料は、シリカまたはガラスであることを特徴とする請求項3に記載の化粧材。 【請求項5】(削除) 【請求項6】(削除) 【請求項7】(削除) 【請求項8】(削除) 【請求項9】 前記艶消し剤は、1次粒子が2次凝集して形成されたシリカ粒子であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の化粧材。」 第4 取消理由の概要 令和6年5月31日付けで当審が通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。 本件特許の下記請求項に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、この出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 以下、申立人が提出した「甲第○号証」は「甲○」という。 記 [引用文献一覧] 甲1:特開平8-300595号公報 甲3:特開2009-113386号公報 甲6:赤崎忠行、福永登志一、「ゲル法シリカの特徴と応用」、東ソー研究・技術報告、2001年、45巻、65~69ページ 甲20:特表2012-508804号公報 甲21:特表平11-504354号公報 甲25:特開2001-315286号公報 ・請求項 1~3、9 ・引用文献 甲1、甲6、甲20、甲21 ・請求項 4、9 ・引用文献 甲1、甲3、甲6、甲20、甲21、甲25 第5 取消理由についての判断 1 引用文献の記載事項等 (1)甲1について ア 記載事項 甲1には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審において付与。以下同様。)。 (ア)「【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、家具用表面材、建築用内外装材、キャビネット用表面材、キッチン扉用内装材、自動車内装材およびそれらの外縁部材などとして用いる板状物、棒状物などの材料に、木目柄を形成するために使用する木目柄装飾シートと、これを用いた木目柄ラミネート製品の製造方法に関するものである。」 (イ)「【0005】この発明は上記の欠点を解決し、色調が一様で継ぎ目などが目立たず、しかも木目が深く凹んだ木質感と表面強度とを兼ね備えた木目柄を有する木目柄ラミネート製品を得るための木目柄装飾シートと、これを用いた木目柄ラミネート製品の製造方法を提供することを目的としている。」 (ウ)「【0013】以下、この発明についてさらに詳しく説明する。この発明の木目柄装飾シート10は、透明な基体シート1の表面に透明な表面保護層2と着色された艶消し木目層3が順次形成され、裏面に木目層4と不透明下地層5が順次形成されたものを基本構成とする。」 (エ)「【0017】透明な表面保護層2の表面は、上記の樹脂を用いる場合は、通常は艶状である(図1、図6)。透明な表面保護層2の表面は、上記樹脂中に炭酸カルシウム、酸化ケイ素、酸化チタンなどの粒子を混ぜることによって艶消し状とすることができる(図2、図3、図7、図8)。この粒子の粒径は0.1μm~10μmである。 【0018】艶消し木目層3は、通常、木材を切断したときの切り口に現れる年輪、繊維、導管など木目模様を表現するための層である。具体的な木目模様としては、柾目の筋、板目の曲線、条痕による断線などがある。艶消し木目層3は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などの樹脂と、炭酸カルシウム、酸化ケイ素、酸化チタンなどの粒子とを混ぜ合わせたものを用いる。この粒子の粒径は、0.1μm~10μmである。艶消し木目層3は、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの通常の印刷法などにより形成するとよい。艶消し木目層3は、上記樹脂と粒子との混合物に顔料や染料などの着色材を混ぜ合わせて、木目の色に着色された層である。あるいは、着色されかつ光を透過させる層であってもよい。艶消し木目層3の厚みは、0.5μm~2μmが適当である。 【0019】また、艶消し木目層3の表面は、表面保護層2の表面より強い艶消し状であってもよい。具体的には、表面保護層2中に混ぜる粒子の配合率より、艶消し木目層3中に混ぜる粒子の配合率の方を多くするとよい。たとえば、表面保護層2中に混ぜる粒子の配合率を3重量%とし、艶消し木目層3中に混ぜる粒子の配合率を7重量%とする。あるいは、表面保護層2中に混ぜる粒子の粒径より、艶消し木目層3中に混ぜる粒子の粒径の方を大きくするとよい。たとえば、表面保護層2中に混ぜる粒子の粒径を3μmとし、艶消し木目層3中に混ぜる粒子の粒径を7μmとする。粒径の差を2μm以上とすれば、艶消し木目層3の木目がより深く凹んだ木質感を得ることができる点で効果的である。 【0020】木目層4は、木材を切断したときの切り口に現れる年輪、繊維、導管など木目模様を表現するための層である。具体的な木目模様としては、柾目の筋、板目の曲線、条痕による断線などがある。木目層4は、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリル、ポリウレタン、塩化ゴム、硝化綿などの熱可塑性樹脂をバインダーとして用い、木目模様の色の染顔料を着色材として含有するものを用いて、茶色や焦げ茶色、黄土色、赤茶色などから単一あるいは複数色を選択する。木目層4は、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの通常の印刷法などにより形成する。あるいは、木目層4は、天然の木目模様により近いものとするために、色濃度あるいは膜厚を段階的あるいは連続的に変化させるようにグラデーションをかけて、基体シート1の一部あるいは全面に形成してもよい。木目層4の厚みは、0.5μm~5μmの範囲内で調節する。」 (オ)「【0022】なお、艶消し木目層3の木目模様は、木目層4の木目模様と同調したものでもよい。同調とは、たとえば、艶消し木目層3の導管の柄と木目層4の木目の柄(導管の柄を除く。)とが、木目柄意匠として一体的に融合した感じに視覚的に認識できることである。あるいは、艶消し木目層3の導管の筋と木目層4の導管の筋とが、平行に沿って並ぶことである。 【0023】また、艶消し木目層3の木目模様と木目層4の木目模様とが上下に完全に重なり合ってもよい(厳密に言うと、両者の間に表面硬化層と基体シート1とを挟んでいることになる。)(図3、図8)。あるいは、艶消し木目層3の木目模様の一部と木目層4の木目模様の一部とが重なってもよい。艶消し木目層3の木目模様と木目層4の木目模様とが上下に完全にあるいは一部重なり合った関係の場合、艶消し木目層3が光を透過させる層であると、木目層4の色をそのまま生かすことができるだけでなく、艶消し木目層3の艶消し作用により木目層4の木目が深く凹んだ木質感を得ることができるという2つの点で効果的である。また、艶消し木目層3が、木目層4の色と同系の色に着色された透明な層であると、木目層4の色と艶消し木目層3の色とを複合させて、木目層4の木目模様をより濃色とすることができるだけでなく、艶消し木目層3の艶消し作用により木目層4の木目がより深く凹んだ木質感を得ることができるという2つの点で効果的である。」 (カ)「【0026】この発明の木目柄ラミネート製品の製造方法を、接着層6を有しない木目柄装飾シート10の不透明下地層5を接着面として基材7上に接着する製造方法(製造方法A)と、接着剤層60を有しない基材7上に、木目柄装飾シート10の接着層6を接着面として接着する製造方法(製造方法B)とに分けて説明する。製造方法Aでは、基材7に接着剤を塗布しないで、接着層6を有しない木目柄装飾シート10の不透明下地層5に接着剤を塗布する工程を経る方法(図4)と、接着層6を有しない木目柄装飾シート10の不透明下地層5に接着剤を塗布しないで、基材7に接着剤を塗布する工程を経る方法(図5)とがある。前者の方法の場合は、木目柄装飾シート10の不透明下地層5に接着剤を塗布した後、乾燥炉にて溶剤を排除し、基材7上に、木目柄装飾シート10の接着剤層60を重ね合わせ、ゴムロール(図示せず)を用いて基材7の各面を加圧して、木目柄ラミネート製品100を得る(図10)。後者の方法の場合は、接着剤を塗布した基材7上に木目柄装飾シート10の不透明下地層5を重ね合わせ、ゴムロールを用いて基材7の各面を加圧して、木目柄ラミネート製品100を得る(図10)。後者の方法の場合は、接着剤を塗布した基材7上に木目柄装飾シート10の不透明下地層5を重ね合わせ、ゴムロールを用いて基材7の各面を加圧して、木目柄ラミネート製品100を得る(図10)。通常、ゴムロールによる加圧は、基材7の一面について、ゴムロールを1本あるいは数本用い、基材7の同じ面を1度あるいは数度押圧するものである。接着剤としては、接着層6として用いることができるアクリル樹脂などの樹脂群および二液硬化型樹脂の中から適宜選択するとよい。」 (キ)「【0029】 【作用】この発明の木目柄装飾シートおよび木目柄ラミネート製品の製造方法は、木目層と不透明下地層とで木目柄を表現するので、従来技術である単板オーバーレイ合板の欠点を解決するために、天然木材の木目柄を用いることを要しない木目柄ラミネート製品が得られる。また、表面保護層を有する透明な基体シートが木目層と不透明下地層とを覆って保護しているので、木目柄層が表面に露出せず、従来技術であるプリント合板の欠点を解決した木目柄ラミネート製品が得られる。さらに、艶消し木目層が表面に露出しているので、艶消し木目層の表面の艶消しを形成している凹凸によって、色調による凹み感に加えて視覚的な凹みをも表現できる。さらに、木目層による年輪などの木目模様だけでなく、濃色に着色された艶消し木目層による導管などの黒っぽい部分そのものを艶消し状に表現することができる。よって、よりリアルな木目意匠および木質感を確実に表現できる。」 (ク)「【図2】 [図:0001422364000001.jpg] 」 (ケ)「【図4】 [図:0001422364000002.jpg] 」 (コ)「【図5】 [図:0001422364000003.jpg] 」 イ 認定事項 (ア)【0013】、【0019】、【0020】、【0023】の記載、及び図2の図示内容から、図2の木目柄装飾シート10は、透明な基体シート1上の全面に設けられた表面保護層2と、表面保護層2上の一部に設けられ、表面保護層2の表面より強い艶消し状の表面を有する艶消し木目層3とを備えていることが認められる。 (イ)【0017】~【0018】の記載から、表面保護層2と艶消し木目層3の両方が、艶消し状とするための粒子を含み、艶消し状とするための粒子として炭酸カルシウム、酸化ケイ素、酸化チタンなどの粒子が使用できることが認められる。 (ウ)【0013】、【0022】、【0023】の記載、及び図2の図示内容から、図2の木目柄装飾シート10は、基体シート1の表面保護層2が設けられた面と反対の面に木目層4と不透明下地層5が順次形成され、木目層4は、艶消し木目層3と重ならないように配置されていることが認められる。 (エ)【0026】の記載、及び、図4、5の図示内容から、図4、5の木目柄ラミネート製品100は、木目柄装飾シート10と、木目柄装飾シート10の不透明下地層5に接着剤層60を介して接着される基材7とを、有することが認められる。 ウ 甲1発明 上記ア、イを総合すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「透明な基体シート1上の全面に設けられた表面保護層2と、前記表面保護層2上の一部に設けられ、前記表面保護層2の表面より強い艶消し状の表面を有する艶消し木目層3とを備え、 前記表面保護層2と前記艶消し木目層3の両方が艶消し状とするための粒子を含み、艶消し状とするための粒子として炭酸カルシウム、酸化ケイ素、酸化チタンなどの粒子が使用でき、前記表面保護層2に含まれる艶消し状とするための粒子の粒径が0.1μm~10μmであり、前記艶消し木目層3に含まれる艶消し状とするための粒子の粒径が0.1μm~10μmであり、 前記艶消し木目層3の厚みは、0.5μm~2μmであり、 前記基体シート1の前記表面保護層2が設けられた面と反対の面に木目層4と不透明下地層5が順次形成され、 前記木目層4は、前記艶消し木目層3と重ならないように配置されている木目柄装飾シート10と、 木目柄装飾シート10の不透明下地層5に接着剤層60を介して接着される基材7とを有する、木目柄ラミネート製品100。」 2 対比・判断 (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、後者の「木目柄ラミネート製品100」は前者の「化粧材」に相当し、以下同様に、「基材7」は「基材」に、「表面保護層2」は「第1の艶調整層」に、「前記表面保護層2上の一部に」は「前記第1の艶調整層上に部分的に」に、「前記表面保護層2の表面より強い艶消し状の表面を有する」は「前記第1の艶調整層の艶と異なる艶を有する」に、「艶消し木目層3」は「第2の艶調整層」に、それぞれ相当する。また、例えば、本件明細書等の【0018】の記載によれば、前者の「柄インキ層」は、木目模様等の柄模様を付加するための層であるところ、後者の「木目層4」は、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの通常の印刷法などにより形成された層であるから(甲1の【0020】等参照。)、前者の「柄インキ層」に相当し、後者の「艶消し木目層3」は、「前記表面保護層2の表面より強い艶消し状の表面を有する」ことから、前者の「前記第1の艶調整層と前記第2の艶調整層のうち」「相対的に艶の低い艶調整層」にも相当する。 後者の「艶消し状とするための粒子」は前者の「艶消し剤」に相当し、後者の「前記表面保護層2と前記艶消し木目層3の両方が艶消し状とするための粒子を含み」は、前者の「前記第1の艶調整層と前記第2の艶調整層とのうち、少なくとも相対的に艶の低い艶調整層が艶消し剤を含み」に相当する。 後者の「粒径」、及び「厚み」は、前者の「平均粒径」、及び「層厚」にそれぞれ相当する。 後者において、基材7は基体シート1よりも下にあることを勘案すると、後者の「基体シート1上の全面に設けられた表面保護層2」は、前者の「基材上に設けられた第1の艶調整層」及び「前記第1の艶調整層は、前記基材の前記第1の艶調整層側の面の全面を被覆して」いることに相当する。 そして、後者の「前記基体シート1の前記表面保護層2が設けられた面と反対の面に木目層4と不透明下地層5が順次形成され」ること及び「木目柄装飾シート10の不透明下地層5に接着剤層60を介して接着される基材7」は、前者の「前記基材と前記第1の艶調整層との間に設けられた柄インキ層を更に備え」ることに相当する。 また、後者の「前記基体シート1の前記表面保護層2が設けられた面と反対の面に木目層4」「が」「形成され」ていることは、前者の「前記第1の艶調整層は、前記柄インキ層の上面に直接接触して形成され」ていることと、前記第1の艶調整層は、前記柄インキ層の上面に形成されているという点で共通する。 そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「基材上に設けられた第1の艶調整層と、前記第1の艶調整層上に部分的に設けられ、前記第1の艶調整層の艶と異なる艶を有する第2の艶調整層とを備え、 前記第1の艶調整層と前記第2の艶調整層とのうち、少なくとも相対的に艶の低い艶調整層が艶消し剤を含み、 前記基材と前記第1の艶調整層との間に設けられた柄インキ層を更に備え、 前記第1の艶調整層は、前記基材の前記第1の艶調整層側の面の全面を被覆しており、 前記第1の艶調整層は、前記柄インキ層の上面に形成されている化粧材」 <相違点1-1> 相対的に艶の低い艶調整層について、本件発明1では、「相対的に艶の低い艶調整層に含まれる艶消し剤の平均粒径が6.0μm以上15.0μm以下であり」、「相対的に艶の低い艶調整層の層厚は、1μm以上18μm以下であり且つ前記相対的に艶の低い艶調整層に含まれる艶消し剤の粒径の1.2倍以下の層厚であ」るのに対して、甲1発明では、艶消し木目層3に含まれる艶消し状とするための粒子の粒径が0.1μm~10μmであり、艶消し木目層3の厚みが0.5μm~2μmであるものの、艶消し木目層3の厚みが艶消し状とするための粒子の粒径との関係で特定されていない点。 <相違点1-2> 艶消し剤について、本件発明1では、「1次粒子が2次凝集して形成された粒子」であるのに対して、甲1発明では、そのような特定がされていない点。 <相違点1-3> 本件発明1では、前記第1の艶調整層は、前記柄インキ層の上面に「直接接触して」形成されているのに対し、甲1発明では、前記基体シート1の前記表面保護層2が設けられた面と反対の面に木目層4と不透明下地層5が順次形成されている、すなわち、表面保護層2は、木目層4の上面に基体シート1を介して形成されている点。 <相違点1-4> 本件発明1では、柄インキ層は「前記第2の艶調整層は、前記柄インキ層の直上以外の部分と重なる部分に形成されて、前記柄インキ層の柄模様と前記第1の艶調整層の艶とが同調している」のに対し、甲1発明では、前記木目層4は、前記艶消し木目層3と重ならないように配置されている点。 イ 相違点についての判断 事案に鑑み、まず相違点1-3について検討する。 甲1発明において、相違点1-3に係る本件発明1の構成とするには、表面保護層2と木目層4の間にある基体シート1を別の層に移すか、除くことが必要になるが、甲1には、基体シート1を表面保護層2と木目層4との間から移したり、除くことについては、記載も示唆も見いだせない。 そして、甲1だけでなく、申立人が提出したいずれの証拠(上記第4に提示していないものは下記参照。ただし、本件の優先日後に公開になった甲4等は除く。)にも、甲1発明において、基体シート1を表面保護層2と木目層4との間から移したり、除くことについては、記載も示唆も見いだせない。 したがって、甲1発明において、相違点1-3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとは認められない。 記 ・申立人が提出したその他の甲号証 甲2:国際公開第2015/046568号 甲4:特願2016-189193号(特開2017-65261号公報) 甲5:神保元二ら、微粒子ハンドブック、初版第1刷、株式会社朝倉書店、1991年9月1日、52~61、174~207ページ 甲7:特開2017-176380号公報 甲8:特許第2600114号公報 甲9:中峯浩ら、「魚群形状の楕円近似」、システム制御情報学会論文誌、1993年、Vol.6、No.7、297~304ページ 甲10:特開2008-87269号公報 甲11:特開平8-132578号公報 甲12:特開2015-77709号公報 甲13:特開2015-193209号公報 甲14:「製品と用途」、[online]、エボニックジャパン株式会社、[2022年9月26日出力]、 <URL:https://www.carplex.jp/ja/product-application> 甲15:「樹脂添加剤」、[online]、水澤化学工業株式会社、[2022年9月26日出力]、 <URL:https://www.mizusawa-chem.co.jp/product/mizukasil.html> 甲16:「製品一覧」、[online]、富士シリシア化学株式会社、[2022年9月26日出力]、 <URL:https:/ /www.fuji-silysia .co.jp/products/p390/> 甲17:特開平7-166091号公報 甲18:特許第6958551号公報 甲19:特開平7-3182号公報 甲22:松井智隆 外4名、「艶消し塗料の配合最適化」、品質工学、2011年2月1日、19号、68~75ページ 甲23:国際公開第2008/129667号 甲24:特開2004-90319号公報 甲26:「オーバーレイ合板(オーバーレイゴウハン)」、[online]、東建コーポレイション株式会社、[2022年9月26日出力]、 <URL:https://www.token.co.jp/estate/useful/archipedia/word.php?jid=00016&wid=28828&wdid=01> 甲27:「特殊合板の種類」、[online]、<URL:https://mokuseikagu.com/tokushugouhan/> 甲28:「プリント合板って何?」、[online]、一般社団法人日本特殊加工化粧板協議会、 <URL:http://www.mokushin.com/npc/printed_plywood/index.html> 甲29:「プリント合板をDIYで重ね貼りしました。」、[online]、<URL:https://became-free.com/print-gouban/> ウ 申立人の主張について 申立人は、令和6年9月4日の意見書において、相違点1-3に係る本件発明1の構成は、周知技術(甲3の図1等、甲25の図1等、甲2の[0014]、[0015]及び請求項11等、甲4等参照。)であるから、甲1発明に上記周知技術を提供して、相違点1-13に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである旨主張する。 しかしながら、そもそも、甲4は本件の優先日前に公開されておらず、甲3の図1等に図示されたものは、第1の意匠表現層41が基材層2の全面を覆うものではなく、相違点1-3に係る本件発明1の構成の前提となる、「前記第1の艶調整層は、前記基材の前記第1の艶調整層側の面の全面を被覆しており」との構成を有していない。そして、上記イで説示したように、甲1発明において、相違点1-3に係る本件発明1の構成とするには、表面保護層2と木目層4の間にある基体シート1を別の層に移すか、除くことが必要であるところ、甲2や甲25にも、そのようなことは記載も示唆も見いだせない。 よって、申立人の上記主張は当を得たものとはいえず、採用することはできない。 エ 小括 以上により、相違点1-1、1-2、1-4を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)本件発明2~4、9について 本件発明2~4、9は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、更なる限定を付加したものであるから、上記(1)で説示したのと同様の理由により、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)まとめ 以上によれば、本件訂正によって取消理由は解消された。 第6 令和6年5月31日付けの取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について 1 特許異議申立理由の内容 申立人は、特許異議申立書において、本件訂正前の請求項1~9に係る発明(以下「本件訂正前発明1」~「本件訂正前発明9」という。)について、以下の(1)~(5)を主張する。 (1)特許異議申立理由1(明確性要件) 本件訂正前発明1~9は、明確ではなく、本件の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないため、訂正前の請求項1~9に係る特許は、同法第36条第6項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。 (2)特許異議申立理由2(サポート要件) 本件訂正前発明1~9は、本件の発明の詳細な説明に記載されたものではなく、本件の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないため、訂正前の請求項1~9に係る特許は、同法第36条第6項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。 (3)特許異議申立理由3(実施可能要件) 本件訂正前発明1~9について、本件の発明の詳細な説明の記載は、当業者が実施し得る程度に明確かつ十分に記載されていないため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、訂正前の請求項1~9に係る特許は、同法第36条第4項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。 (4)特許異議申立理由4(新規性) 本件訂正前発明1~9は、甲1発明、甲2に記載された発明(以下「甲2発明」という。)又は甲3に記載された発明(以下「甲3発明」という。)であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、訂正前の請求項1~9に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 (5)特許異議申立理由5(進歩性) 本件訂正前発明1~9は、甲2発明及び甲2、6、10、17、19~24に記載された事項、又は、甲3発明及び甲2、6、10、17、19~24に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 (6)特許異議申立理由6(拡大先願) 本件訂正前発明1~9は、甲4で示される出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載された発明(以下「甲4発明」という。)と同一であるから、訂正前の請求項1~9に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 2 特許異議申立理由についての判断 (1)特許異議申立理由1(明確性要件)について ア 「艶消し剤の平均粒径」について (ア)申立人の主張 申立人は、特許異議申立書(37~47ページ参照。)において、本件訂正前発明1等の「艶消し剤の平均粒径が6.0μm以上15.0μm以下であり」との事項について、本件明細書等には、例えば、「艶消し剤の粒子形状が球状で無い場合には、楕円体状とみなし長径と短径との平均値を粒径とすればよい。」(【0023】)と記載されているが、上記艶消し剤は1次粒子が2次凝集して形成されたものであり、2次凝集して形成されたものは球状や楕円体状にはならないこと等を考慮すると、本件明細書等をみても、上記平均粒径がどのように定義されるのか不明確であるから、本件訂正前発明1~9は不明確である旨主張する。 (イ)主張についての検討 申立人が主張するように、本件発明1等の「1次粒子が2次凝集して形成された粒子であ」る「艶消し剤」は、球状や楕円体状にはならないのがほとんどであるかもしれないが、本件明細書等の【0023】の上記記載は、球状ではないもの(楕円体状でないものも含む)に対して楕円体状とみなして大雑把に近似することで平均粒径を定義しており、該記載を参照すれば、球状のものも球状でないものも平均粒径が定義されているから、本件発明1等の「艶消し剤の平均粒径」は明確であるから、申立人の上記主張は、当を得たものとはいえず、採用することはできない。 イ 「相対的に艶の低い」について (ア)申立人の主張 申立人は、特許異議申立書(47~49ページ参照。)において、甲10の表1(以下参照)に示されるように、光沢度で特定される艶は光の入射角によって逆転現象が生じ得るところ(例えば、実施例2において、20度及び60度では第2の表面保護層の方が第1の表面保護層より光沢度が高いのに、85度では第1の表面保護層の光沢度が高い等。)、本件訂正前発明1の「前記第1の艶調整層と前記第2の艶調整層とのうち、少なくとも相対的に艶の低い艶調整層が艶消し剤を含み」との事項のうちの「相対的に艶の低い」について、訂正前の特許請求の範囲にも、本件明細書等にも、艶を測定する光の入射角が特定されておらず、上記事項が不明確であるから、本件訂正前発明1~9は不明確である旨主張する。 ・表1 [図:0001422364000004.jpg] (イ)主張についての検討 申立人の上記主張が根拠とする甲10では、上記表1に関係する部分8、9は、図1(下図)のように形成されており、実施例1~3(【0037】~【0039】等参照。)での第2の表面保護層5の厚さは約6μm、その部分8に含まれる合成樹脂ビーズ6の平均粒子径は17μm、合成樹脂ビーズ6の粒子径は第2の表面保護層5の約2.8倍となるような形状であり、実施例1は、部分8が上に凸な形状として、ほぼ平坦と解される部分9とは表面形状が大きく異なることで、部分9より光沢度を高めているのに対し、第2の表面保護層5に平均粒子径3.5μmのシリカ粒子(艶消し剤)を実施例2では8質量%、実施例3では16質量%、実施例1のものに配合したものである。 そうすると、甲10からは、90度に近いほど光沢度が高くなり、艶消し剤を使うと光沢度は低くなり、上に凸な形状とすることでも光沢度が高くなること(以下「甲10技術事項」という。)が認められる。申立人が示した例は、表面形状を平坦とは異なる上に凸な形状として光沢度を高めた部分8に艶消し剤を使って光沢度を低くした実施例2、3において、該部分8と、表面形状がほぼ平坦で艶消し剤も使っていない部分9とで、入射角によって光沢度に逆転現象が起こるものであると認められるところ、本件明細書等には、「相対的に艶の低い」の対象である第1の艶調整層と第2の艶調整層のいずれも、表面形状を平坦から大きく異なるものとして光沢度を高めることについては、記載も示唆も見いだせないから、本件発明の「前記第1の艶調整層と前記第2の艶調整層とのうち、少なくとも相対的に艶の低い艶調整層が艶消し剤を含み」との事項を満たすものにおいて、甲10の実施例2、3に示されるような入射角の違いによる光沢度の逆転現象が起こるとは認められず、そのことは、甲10技術事項とも矛盾しない。 したがって、申立人の上記主張は当を得たものとはいえず、採用することはできない。 ・図1 [図:0001422364000005.jpg] ウ 小括 以上によれば、特許異議申立理由1は成り立たない。 (2)特許異議申立理由2(サポート要件)について ア 艶消し剤の平均粒径について (ア)申立人の主張 申立人は、特許異議申立書(51~53ページ参照。)において、本件訂正前発明1の「艶消し剤の平均粒径が6.0μm以上15.0μm以下であり」との事項について、甲14、15に示されるように、実施例2~6で使用される艶消し剤はメーカーのホームページをみても存在せず、実際に実現可能な実施例は実施例1のみであり、実施例1の6.4μmとの例のみで、上記事項が表す数値範囲をサポートしているとは到底認められず(本件訂正前発明8の「前記艶消し剤の平均粒径は、6.4μm以上10.0μm以下であること」も同様。)、仮に実施例2~6を考慮しても、6.4~10.0μmの範囲で「平均粒径が6.0μm以上15.0μm以下」の広範な範囲をサポートしているとは到底認められないから、本件訂正前発明1~9は発明の詳細な説明に記載されたものではない旨主張する。 (イ)主張についての検討 申立人は、上記主張において、甲14、15を提示して、メーカーのホームページに実施例2~6の艶消し剤が掲載されていないから、実施例2~6は再現不可能であり、本件発明の効果等を裏付けものではない旨主張するが(以下「主張1」という。)、本件特許異議の申立て時に、メーカーのホームページで実施例で使用された艶消し剤が見付からなかったことが、本件出願前に行ったとされる実施例の内容に誤りがあることを証明するものとは認められない。そして、本件明細書等には、実施例2~6の艶消し剤について、材質や平均粒径等の基本的な事項は開示されており、下記に示す表1(【0041】)に示される評価結果についても、本件明細書等の記載とも矛盾しないから、実施例1だけでなく、実施例2~6についても、本件発明の効果等を理解する場合に、排除する理由はないとするのが相当である。 そして、表1は、意匠性と耐傷性が「○」である実施例1~6において、相対的に艶の低い艶調整層(艶消し剤の添加量が多い層)の艶消し剤の粒径が6.4μm~10.0μmであることを示し、意匠性や耐傷性が「×」である比較例において、艶消し剤の粒径が4.0μm、18.0μmであることを示していること等を参照すると、「相対的に艶の低い艶調整層の平均粒径が6.0μm以上15.0μm以下」という発明特定事項を有する本件発明は、「耐傷性と意匠性とに優れた化粧材を提供する」(【0007】)との課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものであると認められる。 よって、申立人の上記主張は採用できない。 ・表1 [図:0001422364000006.jpg] イ 艶消し剤の材質について (ア)申立人の主張 申立人は、特許異議申立書(53~55ページ参照。)において、シリカを用いた場合に十分な艶消し効果が得られたからといって、他の粒子でも同様の効果があるとは限らず、本件明細書等の【0023】の記載からも、利用な可能な艶消し剤粒子の種類が限られることが示唆され、甲6によれば、2次凝集されたシリカであっても、沈降法によるシリカとゲル法によるシリカでは艶消し効果に関連する特性に違いがあり、沈降法によるシリカで得られた効果がゲル法によるシリカでも得られるとは認識できないから、艶消し剤粒子の材質に関して規定がない本件訂正前発明1~8は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも認められないから、発明の詳細な説明に記載されたものではない旨主張する。 (イ)主張についての検討 艶消し剤については、発明の詳細な説明には、「艶消し剤としては、市販されている公知の艶消し剤等を用いることができる。艶消し剤としては、例えば、シリカ、ガラス、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アクリル等の無機材料からなる微粒子が挙げられる。第1、第2の艶調整層5、6は、透明性が高いことが要求されるため、なかでも、透明性の高いシリカ、ガラス、アクリル等の微粒子を用いることが望ましい。特に、シリカ微粒子のなかでも、中実の真球状粒子ではなく、微細な1次粒子が2次凝集してなる嵩密度の低い艶消し剤は添加量に対する艶消し効果が高い。それゆえ、このような艶消し剤を用いることで、より艶の低い艶調整層を形成できる。これにより、第1の艶調整層5と第2の艶調整層6の艶の差を大きくすることができ、得られる凹凸感を大きくすることができる。これにより、より深みのある優れた意匠表現が可能となる。」(【0023】)と記載されている。市販の艶消し剤にも一定以上の艶消し効果があるという技術常識も考慮すると、発明の詳細な説明の上記記載からは、シリカの微細な1次粒子が2次凝集してなる嵩密度の低い艶消し剤が最も適したものであるが、他の材質の艶消し剤でも使用可能であることは、当業者であれば理解できると解するのが相当である。 したがって、艶消し剤粒子の材質に関して規定がない本件訂正前発明1~8は、発明の詳細な説明の記載により当業者が意匠性に優れた化粧材を提供するという当該発明の課題(【0007】)を解決できると認識できる範囲のものであると認められるから、発明の詳細な説明に記載されたものである。 以上により、申立人の上記主張は当を得たものとはいえず、採用することはできない。 ウ 艶消し剤の平均粒径と膜厚の関係について (ア)申立人の主張 申立人は、特許異議申立書(56~59ページ)において、本件訂正前発明1では、相対的に艶の低い艶調整層の膜厚が該層に含まれる艶消し剤の粒径の1.2倍以下であるとの構成を規定しており、発明の詳細な説明の【0026】及び【0034】の記載から、上記構成は、艶調整層の表面に凹凸を十分に付与して艶調整層の艶を大きく下げることによって、2つの艶調整層の艶の差を大きくして、得られる凹凸感を大きくすることにより、優れた意匠表現を可能とするものであると考えられるところ、発明の詳細な説明に記載の実施例では何ら裏付けられておらず、上記構成について、サポート条件を充足しないのは明らかであるから、本件訂正前発明1~9は発明の詳細説明に記載されたものではない旨主張し(以下「主張1」という。)、また、発明の詳細な説明の【0022】の記載から、艶消し剤の粒径が大きすぎると艶調整層からの艶消し剤の突出量が大きくなって、艶消し剤が脱落しやすくなり、耐傷性が十分でなくなるおそれがあると認められるところ、本件発明1等では、相対的に艶の低い艶調整層の層厚は、1μm以上18μm以下であり、その範囲の下限値付近では、平均粒径が6.0μm以上15.0μm以下である艶消し剤の粒子を相対的に艶の低い艶調整層で安定的に保持できるとは考えられないことからも、本件訂正前発明1~9は発明の詳細な説明に記載されたものではない旨主張する(以下「主張2」という。)。 (イ)主張についての検討 発明の詳細な説明の【0033】には、「(2)また、本実施形態の化粧材1では、相対的に艶の低い艶調整層の層厚を、1μm以上18μm以下とし、さらに、艶消し剤の粒径の1.2倍以下とした。 この構成によれば、艶消し剤の一部が表面から露出した状態とすることができ、耐傷性をより確実に向上できる。」と記載されており、相対的に艶の低い艶調整層の膜厚が該層に含まれる艶消し剤の粒径の1.2倍以下であるとの構成は、意匠性ではなく、耐傷性に関するものであって、申立人の主張1は、前提において根拠を欠くものであるから、採用することはできない。 また、発明の詳細な説明の【0026】には、「艶消し剤を含有する場合には、前述の通り、艶消し剤の平均粒径は6.0μm以上15.0μm以下が好ましいため、第1、第2の艶調整層5、6の層厚は1μm以上18μm以下が好ましく、さらに、艶消し剤の粒径の1.2倍以下の層厚とすることが好ましい。これにより、艶消し剤の一部が表面から露出した状態とすることができる。」(【0026】)と記載されていること、該記載の「前述」は【0022】の記載を指すと認められることや、申立人も認めているように、1次粒子が2次凝集して形成された粒子である艶消し剤は球状のものではないことを勘案すると、当業者であれば、相対的に艶の低い艶調整層の層厚の下限値付近で、平均粒径が6.0μm以上15.0μm以下である艶消し剤の粒子を相対的に艶の低い艶調整層で安定的に保持することは可能であると解するのが相当であるから、申立人の主張2は当を得たものとはいえず、採用することはできない。 エ 「化粧材」の構成について (ア)申立人の主張 申立人は、特許異議申立書(59ページ)において、発明の課題は、耐傷性と意匠性とに優れた化粧材を提供すること(【0007】)であるが、本件訂正前発明1~4、7~9は、該課題に関係する「柄インキ層」の存在すら規定されていないから、サポート条件を充足しないのは明らかである旨主張する。 (イ)主張についての検討 本件訂正により、本件発明1~4、9には、「柄インキ層」についての構成が追加されたから、申立人の上記主張による理由は解消された。 オ 小括 以上によれば、特許異議申立理由2も成り立たない。 (3)特許異議申立理由3(実施可能要件)について 申立人は、特許異議申立書(59~61ページ)において、艶消し剤の平均粒径について定義等が不明確であり(以下「前提1」という。)、また、本件訂正前発明1等において、層厚に対して粒径が大きくなりすぎるものも含んでおり、そのようなものを製造するのは困難であること(以下「前提2」という。)から、本件訂正前発明1~9は、過度な試行錯誤をすることなく実施できないことは明らかであるから、実施可能要件に違反するものである旨主張する。 しかしながら、前提1は、上記(2)ア(イ)で説示したように成り立たない。 また、実施可能要件を満たすためには、その発明の構成を充足する全ての実施態様が実施可能であることを示す必要はなく、1つの実施態様が実施可能であることを示せば足りるところ、仮に前提2が妥当であると認められたとしても、実施可能要件に違反することにはならない。そして、実施例等の記載を参照すれば、当業者であれば、特定の実施形態を実施することは可能であると認められる。 よって、申立人の上記主張は、前提において根拠を欠くものであるから、採用することはできない。 以上によれば、特許異議申立理由3も成り立たない。 (4)特許異議申立理由4(新規性)について ア 甲1発明を主引用発明とする場合 (ア)本件発明1について 上記「第5 2(1)ア」で説示したように、本件発明1と甲1発明には、相違点1-1~1-4があり、少なくとも相違点1-3は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲1発明ではない。 (イ)本件発明2~4、9について 本件発明2~4、9は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、更なる限定を付加するものであるから、上記(ア)で説示したのと同様に、甲1発明ではない。 イ 甲2発明又は甲3発明を主引用発明とする場合 (ア)本件発明1について 本件発明1と甲2発明又は甲3発明とを対比すると、本件発明1と甲2発明、及び、本件発明1と甲3発明とには、それぞれ相違点1-3と実質的に同じ相違点があると認められ、それら相違点は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲2発明でも甲3発明でもない。 (イ)本件発明2~4、9について 本件発明2~4、9は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、更なる限定を付加するものであるから、上記(ア)で説示したのと同様に、甲2発明でも甲3発明でもない。 ウ 小括 以上によれば、特許異議申立理由4も成り立たない。 (5)特許異議申立理由5(進歩性)について ア 本件発明1について 本件発明1と甲2発明又は甲3発明とを対比すると、本件発明1と甲2発明、及び、本件発明1と甲3発明とには、それぞれ相違点1-3と実質的に同じ相違点があると認められるから、上記「第5 2(1)イ」で説示したのと同様の理由により、本件発明1は、甲2発明又は甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 本件発明2~4、9について 本件発明2~4、9は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、更なる限定を付加するものであるから、上記「第5 2(1)イ」及び上記アで説示したのと同様の理由により、甲2発明又は甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 小括 以上によれば、特許異議申立理由5も成り立たない。 (6)特許異議申立理由6(拡大先願)について ア 本件発明1について 本件発明1と甲4発明とを対比すると、本件発明1では、前記第2の艶調整層は、前記柄インキ層の直上以外の部分と重なる部分に形成されて、前記柄インキ層の柄模様と前記第1の艶調整層の艶とが同調しているのに対し、甲4発明では、そのような構成を有しない点で相違し、また、当該相違点が課題解決のための具体化手段における微差ともいえず、両者は実質同一でもない。したがって、本件発明1は甲4発明と同一ではない。 イ 本件発明2~4、9について 本件発明2~4、9は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、更なる限定を付加するものであるから、上記アで説示したのと同様に、甲4発明と実質的に同一ではない。 ウ 小括 以上によれば、特許異議申立理由6も成り立たない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては、本件請求項1~4、9に係る特許を取り消すことはできない。 そして、他に本件請求項1~4、9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、本件請求項5~8に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、本件請求項5~8に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700957

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