特許異議申立
2023-700401
定量噴射型エアゾール製品および定量噴射型エアゾール製品の噴射方法
- 審判番号
- 2023-700401
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-549302
- 登録番号
- 7166269
- 請求日
- 2023年04月19日
- 審決日
- 2023年07月24日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】アース製薬株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人朝日奈特許事務所
- 【異議申立人】川▲崎▼ 義孝
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 典之
- 審判官 野田 定文
- 審判官 宮崎 大輔
- 分類
- P1651.113-Y (A01N) / P1651.121-Y (A01N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7166269号発明「定量噴射型エアゾール製品および定量噴射型エアゾール製品の噴射方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7166269号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7166269号の請求項1~4に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、2018年(平成30年)10月16日(優先権主張 2017年(平成29年)10月20日、日本国)を国際出願日とする出願であって、令和4年10月27日にその特許権の設定登録がされ、同年11月7日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許の請求項1~4に係る特許に対し、令和5年4月19日に特許異議申立人 川▲崎▼ 義孝(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~4に係る発明は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
原液と、噴射剤とを含むエアゾール組成物を含み、
前記原液と前記噴射剤との配合割合(体積比)は、1/99~10/90であり、
1回あたりの噴射量が1.0~3.0mLであり、
前記エアゾール組成物が充填されたエアゾール容器と、前記エアゾール容器に取り付けられるエアゾール定量バルブとを有し、
前記エアゾール定量バルブは、前記エアゾール容器から取り出される前記エアゾール組成物を一時的に貯留するための定量室が形成されており、
前記定量室の容積は、1.0~3.0mLである、定量噴射型エアゾール製品。
【請求項2】
前記原液は、蒸気圧が1.0×10-5mmHg(25℃)以上の揮散性化合物を含む、請求項1記載の定量噴射型エアゾール製品。
【請求項3】
前記揮散性化合物は、ピレスロイド系化合物、香料化合物、抗菌化合物からなる群から選択される少なくともいずれか1種である、請求項2記載の定量噴射型エアゾール製品。
【請求項4】
原液と、噴射剤とを、前記原液と前記噴射剤との配合割合(体積比)が1/99~10/90となるよう含むエアゾール組成物を、1回あたりの噴射量が1.0~3.0mLとなるよう噴射する、定量噴射型エアゾール製品の噴射方法であり、
前記定量噴射型エアゾール製品は、前記エアゾール組成物が充填されたエアゾール容器と、前記エアゾール容器に取り付けられるエアゾール定量バルブとを有し、
前記エアゾール定量バルブは、前記エアゾール容器から取り出される前記エアゾール組成物を一時的に貯留するための定量室が形成されており、
前記定量室の容積は、1.0~3.0mLである、定量噴射型エアゾール製品の噴射方法。」
(以下、各請求項に係る発明を請求項の番号順に「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」ともいう。)
第3 申立理由の概要
特許異議申立書(以下「申立書」という。)の記載からみて、申立人の特許異議の申立ての理由(以下「申立理由」という。)の概要は、以下のとおりである。
(1) 申立理由1(特許法第29条第1項第3号:新規性)
(1A) 申立理由1A:(申立書12及び13頁)
本件発明1~4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~4に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(1B) 申立理由1B:(申立書13頁)
本件発明1~4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~4に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(1C) 申立理由1C:(申立書13頁)
本件発明1及び4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1及び4に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(2) 申立理由2(特許法第29条第2項:進歩性)
(2A) 理由2A:(申立書27~32頁)
本件発明1~4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明及び甲第4~11号証に記載された周知の技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項1~4に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(2B) 申立理由2B:(申立書32~36頁)
本件発明1~4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明及び甲第7~11号証に記載された周知の技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項1~4に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(2C) 申立理由2C:(申立書36~39頁)
本件発明1~4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証に記載された発明並びに甲第1、2及び7~11号証に記載された周知の技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項1~4に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
<甲号証一覧>
甲第1号証:特開2006-325489号公報
甲第2号証:特開2011-162244号公報
甲第3号証:特開2016-150760号公報
甲第4号証:特開2014-19674号公報
甲第5号証:特開2014-88327号公報
甲第6号証:特開2014-28631号公報
甲第7号証:特開2005-306459号公報
甲第8号証:特開2010-208675号公報
甲第9号証:特開2004-113993号公報
甲第10号証:特開2011-219132号公報
甲第11号証:特開2009-35569号公報
(以下、各甲号証を、それぞれ番号順に「甲1」等という。)
第4 甲号証の記載事項
申立人が証拠方法として提出した甲号証の記載事項について、申立理由の判断に必要な箇所を摘記する(以下、「・・・」は記載の省略を表し、下線は当審合議体が付した。)。
1 甲1の記載事項
(1a)
「【請求項1】
予め設定された定量を勢いよく噴霧できる機能を有するエアゾール製品の内容物の噴霧状態下で、害虫を防除することを特徴とする害虫防除方法。
【請求項2】
前記エアゾール製品は、1回の噴霧操作で定量の前記内容物を勢いよく噴霧することを特徴とする請求項1記載の害虫防除方法。」
(1b)
「【0008】
本発明の害虫防除方法によれば、予め設定された定量を勢いよく噴霧できる機能を有する内容物(以下、エアゾール薬剤という。)の噴霧状態下で、害虫を防除するため、エアゾール薬剤の無駄を減らすことができると共に、害虫防除効率を向上することができる。
・・・
【0012】
エアゾール剤容器は、予め設定された一定量のエアゾール薬剤を所望の空域に勢いよく噴霧するための定量噴霧機能(バルブ、操作ボタン等)を有している。この定量噴霧機能としては、本実施形態では、バルブ内に定量室を設け、ステムを押し下げると定量室と内容液とが遮断され、さらにステムを押し下げると定量室とステム孔とが開通する定量バルブを採用する。また、定量噴霧機能には、アチュエータ内に定量室を設けたアクチュエータ付きバルブ等を採用してもよい。なお、定量噴霧機能は、一回の操作で定量のエアゾール薬剤を勢いよく噴霧できる機能であれば、その方式は特に限定されない。また、定量噴霧機能の操作は、従来の上から押し込むタイプの操作ボタンでもよいが、操作性の観点から、トリガータイプの方が好ましい。
【0013】
定量を勢いよく噴霧する時の一回の噴霧量、即ち、定量バルブの定量室の容積は、1.0~15.0mlが好ましく、3.0~10.0mlがより好ましい。また、噴霧距離100cmにおける平均粒子径(D50)は、用途が空間用・塗布用により違いがあるが、50~100μmが好ましい。なお、上記数値範囲は、本発明を達成できるものであれば任意であり、特に限定されない。
・・・
【0016】
エアゾール薬剤は、主に殺虫剤と溶剤とからなる原液と、原液を噴射する噴射剤と、を含有する。そして、原液と噴射剤との容量比は、5:95~70:30が好ましく、5:95~50:50がより好ましい。また、エアゾール薬剤を充填した後のエアゾール剤容器の内圧は、20°Cにおいて、0.20~0.80MPaが好ましく、0.25~0.55MPaがより好ましい。なお、上記数値範囲は、本発明を達成できるものであれば任意であり、特に限定されない。また、上記にステム孔、アンダータップ径、噴口径、容積比、内圧の数値範囲を挙げたが、本発明を達成できるものであれば、その組み合わせは任意であり、特に限定されない。」
(1c)
「【実施例】
【0045】
以下に、本発明の害虫防除方法の作用効果を確認するために行った試験について説明する。
【0046】
各試験で使用するエアゾール製品(試験検体)には、予め設定された一定量のエアゾール薬剤を勢いよく噴霧するための定量噴霧機能を有するエアゾール剤容器にエアゾール薬剤を充填した本発明例1及び本発明例2と、市販のエアゾール剤容器にエアゾール薬剤を充填した比較例1及び比較例2と、を使用する。
【0047】
本発明例に使用するエアゾール剤容器には、定量室の容積5ml、ステム孔は口径3.5mm×2、アンダータップ径6.5mm、噴口径2.5mmの定量噴霧機能を達成する定量バルブが備えられている。
【0048】
以下に、各試験に使用する本発明例1、本発明例2、比較例1及び比較例2を説明する。
本発明例1:イミプロトリン0.48w/v%を含む原液70mlと、噴射剤230mlと、からなるエアゾール薬剤を、上記した定量噴霧機能を備えるエアゾール剤容器に充填したエアゾール製品。
本発明例2:フタルスリン0.465w/v%、レスメトリン0.062w/v%を含む原液60mlと、噴射剤240mlと、からなるエアゾール薬剤を、上記した定量噴霧機能を備えるエアゾール剤容器に充填したエアゾール製品。」
2 甲2の記載事項
(2a)
「【請求項1】
エアゾール容器と、そのエアゾール容器内に充填されるエアゾール組成物とからなり、前記エアゾール容器が所定量のエアゾール組成物を噴射させる定量噴射機構を有するエアゾールバルブを備えた定量噴射型のエアゾール製品であって、
前記エアゾール組成物が原液、液化ガスおよび低溶解性圧縮ガスを含み、
前記エアゾール容器内の圧力が、液化ガスの飽和蒸気圧よりも0.05~0.3MPa高く、
前記エアゾールバルブを開く操作をしたとき、エアゾール組成物が噴射される一回当たりの所定量が0.2~1.0mlである、
定量噴射型のエアゾール製品。」
(2b)
「【0012】
エアゾール容器11は、耐圧性の容器本体13と、その開口部に取付けられる定量噴射型のエアゾールバルブ14とからなり、容器本体13とエアゾールバルブ14とは、エアゾールバルブ14に設けられた1本の導入通路15のみで連通するように構成されている。
容器本体13は、金属製のものであり、底部13a、胴部13b、肩部13c、およびビード部13dを備えた一般的なものである。
・・・
【0016】
導入通路15は、ハウジング21、ブッシュ29、定量ハウジング26、ディップチューブ28とから構成されている。エアゾール製品10の噴射操作(ステムに取り付けられている噴射部材(図示せず)を下方に押す操作)を行うことにより、エアゾールバルブ14が開かれ、ハウジング21内から定量ハウジングのボール収容部26bのエアゾール組成物がステムの開口部より噴射される。それと同時にボール27がブッシュ29の下端開口部29bと当接し、導入通路15は閉鎖される(図3参照)。これにより、ハウジング21内から定量ハウジングのボール収容部26bまでに貯蓄された定量のエアゾール組成物が噴射される。その体積は、0.2~1.0ml、特に、0.3~0.7mlである。一方、エアゾールバルブ14が閉鎖されると、ボール27はボール収容部26bの下方に移動し、それと同時に導入通路15(下端開口部29b)の閉鎖も解除される。これにより、ハウジング21内および定量ハウジングのボール収容部26bにエアゾール容器内の液体(原液および液化ガスの液体)が再度貯蓄される。
なお、噴射後にボールを元の位置に戻りやすくするために、ブッシュの下端開口部に切り口を入れてボールとの間に通路を設けても良く、ハウジングの下筒部とブッシュとの間に通路を設けても良い。この場合、ボール27が下端開口部29を閉鎖しても、導入通路15は完全には塞がれない。しかし、上記切り口または通路の断面積を導入通路15の他の部位の断面積より小さくすることにより、貯蓄されたエアゾール組成物が噴射されるときの噴射(定量噴射)と、その後の噴射との間で噴射量に差が生じる。操作者はこの変化を確認することにより、定量噴射されたことを認識することができる。本発明に用いられる定量噴射機構には、このように定量のエアゾール組成物が噴射されたことを認識できる機構も含まれる。
【0017】
エアゾール組成物12は、原液と、液化ガスと、低溶解性圧縮ガスとから構成されている。
原液は、有効成分を溶媒に溶解したものであり、大気中に噴射されると微細な霧状になり、対象物に付着して有効成分の効力を発揮するものである。また、用途や目的に応じて界面活性剤などが適宜配合される。
・・・
【0020】
液化ガスとしては、エアゾール容器内では蒸気圧を有する液体であり、大気中に噴射されると気体に変化して原液を微細な霧状にする。
液化ガスとしては、たとえば、液化石油ガス、ジメチルエーテル、液化石油ガスとジメチルエーテルの混合ガスなどがあげられる。液化ガスの25℃における飽和蒸気圧は0.2~0.6MPaであることが好ましく、さらには0.3~0.5MPaであることが好ましい。飽和蒸気圧が0.2MPa未満である場合はスプレー粒子の到達距離が短くなりやすく、0.6MPaを超えると温度上昇によりエアゾール容器内の圧力が高くなり安全性が低下する。
前記液化ガスは、エアゾール組成物中50~90容量%含有することが好ましく、さらには60~80容量%含有することが好ましい。50容量%未満であると霧が粗くなり、空間に噴射したときに落下しやすく効力が持続しにくくなる。一方、90容量%を超えるとスプレー粒子が少なくなり、効力が弱くなりやすい。
【0021】
低溶解性圧縮ガスは、原液や液化ガスに対する溶解度が低い圧縮ガスであり、エアゾール容器内の圧力を液化ガスの飽和蒸気圧より0.05~0.3MPa、特に0.07~0.2MPa高くする。このように、エアゾール容器の気相部の圧力を液化ガスの飽和蒸気圧よりも高くすることにより、ハウジング内に導入されているエアゾール組成物の液量を維持することができる。
前記低溶解性圧縮ガスとしては、たとえば、窒素ガス、酸素ガス、圧縮空気など、使用する溶剤に対するオストワルド吸収係数が0.3以下であるものがあげられる。たとえば、溶剤としてエタノールを用いる場合は、窒素ガスが0.143、酸素ガスが0.220、空気が0.158である(空気は実測値)。前記オストワルド吸収係数が0.3を超えると溶解量が多くなり、高温時に容器内の圧力が高くなり安全性が低下するおそれがある。しかし、原液の溶剤および液化ガスに対して前述の低溶解性を示す気体であれば特に限定されるものではない。
前記低溶解性圧縮ガスは、容器に原液と液化ガスを充填し、バルブをクリンプした後でバルブのステムから所定の圧力になるよう充填することも可能であるが、原液充填後に容器内の空気をバキュームせずに液化ガスを充填し、バルブをクリンプして容器内の空気を圧縮しても良い。」
(2c)
「【実施例】
【0025】
「実施例1」
図1のエアゾール容器11を用意した。またトランスフルトリン5重量%をエタノール95重量%に配合して原液を調製した。次に、内部を大気圧としたエアゾール容器内に前記原液および液化石油ガス(25℃での飽和蒸気圧が0.4MPa)を液体体積比が3:7となるように充填した。このエアゾール容器内の25℃での圧力は、0.5MPaであった。
【0026】
「実施例2」
図1のエアゾール容器11を用意し、内部を大気圧としたエアゾール容器内に実施例1と同じ原液および液化石油ガス(25℃での飽和蒸気圧が0.4MPa)を液体体積比が3:7となるように充填し、かつ、窒素ガスを充填した。このエアゾール容器内の25℃での圧力は、0.55MPaであった。
【0027】
「実施例3」
図1のエアゾール容器11を用意し、実施例1と同じ原液を充填した後に空間をバキュームして減圧し、液化石油ガス(25℃での飽和蒸気圧が0.4MPa)を充填し、さらに窒素ガスを充填した。なお、原液と液化石油ガスの液体体積比は3:7である。このエアゾール容器内の25℃での圧力は、0.7MPaであった。
【0028】
「比較例1」
図1のエアゾール容器11を用意し、実施例1と同じ原液を充填した後に空間をバキュームして減圧し、液化石油ガス(25℃での飽和蒸気圧が0.4MPa)を充填した。なお、原液と液化石油ガスの液体体積比は3:7である。このエアゾール容器内の25℃での圧力は、0.4MPaであった。
「比較例2」
図1のエアゾール容器11を用意し、実施例1と同じ原液を充填した後に空間をバキュームして減圧し、液化石油ガス(25℃での飽和蒸気圧が0.2MPa)を充填した。なお、原液と液化石油ガスの液体体積比は3:7である。このエアゾール容器内の25℃での圧力は、0.22MPaであった。
「比較例3」
図1のエアゾール容器11を用意し、実施例1と同じ原液を充填した後に空間をバキュームして減圧し、液化石油ガス(25℃での飽和蒸気圧が0.6MPa)を充填した。なお、原液と液化石油ガスの液体体積比は3:7である。このエアゾール容器内の25℃での圧力は、0.58MPaであった。
【0029】
実施例1~3および比較例1~3のエアゾール製品を25℃の恒温水槽中に保存し、1時間後の噴射量、7日後の噴射量、18日後の噴射量を測定した。その測定結果を次の表1に示す。なお、表1におけるガス圧は、液化ガスの25℃における飽和蒸気圧(MPa)を示し、製品圧力は、エアゾール容器内の圧力(MPa)を示す。
【0030】
【表1】
[図:0001400511000001.jpg]
【0031】
表1でも明らかなように、実施例1~3の噴射量は、安定した数値を示した。それに対して、比較例1~3は、保存期間が7日で噴射量の減少が見られた。」
(2d)
「【図1】
[図:0001400511000002.jpg]
」
(2e)
「【図3】
[図:0001400511000003.jpg]
」
3 甲3の記載事項
(3a)
「【請求項1】
耐圧性を有する容器と、
前記容器の開口部に取り付けられるバルブアッセンブリと、
前記容器に収容される液化ガスを含む内容物とを備えたエアゾール製品であって、
前記バルブアッセンブリは、エアゾールバルブと、前記エアゾールバルブのステムを下降操作することにより前記エアゾールバルブのハウジング内と容器内との間の通路を遮断する弁ユニットと、前記ハウジングに連結される拡張ユニットとを有し、
前記拡張ユニットは、前記内容物を貯留する拡張室と、前記ハウジングと前記拡張室とを連通する連結部と、前記連結部から前記拡張室の底部に延びる筒状の細管とを有している、
エアゾール製品。」
(3b)
「【0016】
ハウジング22は、底部22aを有する筒体である。上端開口部にステムラバー24を支持するラバー保持部22bが形成されている。底部22aの中央には、中心孔22cが形成されている。ハウジング22の側面の下部には、拡張ユニット18を連結するための連通孔22dが1つ形成されている。ハウジング22の下面には、弁取り付け部22eが設けられている。この実施形態では、弁取り付け部22eは、底部22aの下面縁部から下方に延びる筒体である。
ハウジング22内の容積としては、0.5ml以下、特に0.3ml以下とするのが好ましい。0.5mlより大きい場合、噴射時においてハウジング22内の内容物が全部外部に排出される前に液化ガスが気化しやすくなり、噴射中に噴射状態が変化するおそれがある。そして、気化ガスが原液より優先的に排出されて、液化ガスの気化が終わるまで噴射が続き、結局は原液がハウジング内に残留するおそれが大きくなる。
ハウジング22の形状として、図1では円筒状としているが、拡張ユニット18を連結しやすく連通孔22dの出口を平面とするべく、矩形筒としたり、断面が円の一部を切り欠いた筒体としてもよい。
・・・
【0020】
拡張室31は、底部31aを備えた筒体であり、下部側面に貫通孔31bが形成されている。そして、拡張室31の側面には、貫通孔31bを覆うように筒状の弾性体31cが設けられている。この弾性体31cは、拡張室31から容器11内への流体の流れを許し、容器11から拡張室31への流体の流れを阻止する逆止弁を構成している。なお、逆止弁の構造は特に限定されるものではなく、例えば、ボール弁からなる逆止弁を用いてもよい。拡張室31は、その逆止弁の貫通孔31bが容器11内の内容物Cの気相と連通するように構成されている。しかし、図5のように内容物Cの液相と連通させてもよい。
拡張室31の容積としては、用途に応じた所望の効果が得られる程度としている。詳しくは、充填される内容物の種類によって異なるが、人体に直接噴射する用途のエアゾール製品の場合、0.3~3ml、特に0.5~2mlとするのが好ましい。また空間に噴射する用途のエアゾール製品の場合、0.3~5ml、特に0.5~3mlとするのが好ましい。そして、拡張室31はハウジングの容積に対して2倍~20倍とするのが好ましい。このとき、安定した噴射状態を維持することができ、定量室の容積が内容物Cの使いすぎとならず、安全性が確保される程度としている。
また、定量室(ハウジング22と拡張室31)による噴射時間は、内容物の濃度や噴射する空間の容積等によっても異なるが、内容物が人体に直接噴射する用途である場合、0.5~5秒、特に1~3秒、また、内容物が空間に噴射する用途である場合、1~10秒、特に、2~5秒噴射できれば、使用者による使用しているとの満足を得られることができる。
連結部32は、ハウジング22の連通孔22dに挿入される筒状の挿入部32aを備えたものであり、ハウジング22内と拡張室31内とを連通する連結部内通路32bが形成されている。
細管33は、連結部内通路32bから拡張室31の底部31aに延びている。この実施形態では、細管33は連結部32に一体に成形されている。ハウジング22から拡張室31への通路(連結部内通路32b、細管33の通路)の断面積は、ハウジング22から外部への通路(ステム孔)の断面積より大きくするのが好ましい。詳しくは、1.5~20倍、特に2~15倍とするのが好ましい。これにより噴射時、拡張室31からハウジング22内に供給される内容物中の液化ガスの気化を抑制し、安定した噴射を維持することができる。
【0021】
内容物Cは、原液と液化ガスとからなる。
原液としては、有効成分をエタノールなどのアルコールや灯油などの油性溶剤に配合した原液、有効成分を精製水などの水やアルコール水溶液などの水性溶剤に配合した原液等が挙げられる。
液化ガスは、原液を微細な霧にする、冷却効果を付与するなど、優れた効果が得られ、液化ガスとしては、液化石油ガス、ジメチルエーテル、ハイドロフルオロオレフィンおよびこれらの混合ガスなどが挙げられる。
前記内容物は、液化ガスを30~95質量%と多く含有する製品、たとえば、殺虫剤、芳香剤、消臭剤、花粉除去剤などの空間用品、制汗剤、冷却剤、日焼け止め、ほてり止め、ボディスプレー、消炎鎮痛剤、水虫薬などの人体用品などに用いられる。・・・
【符号の説明】
【0041】
・・・
12 バルブアッセンブリ
・・・
16 エアゾールバルブ
17 弁ユニット
・・・
23 ステム」
(3c)
「【図1】
[図:0001400511000004.jpg]
」
(3d)
「【図2】
[図:0001400511000005.jpg]
」
4 甲4の記載事項
(4a)
「【請求項1】
ピレスロイド系殺虫成分を含有するエアゾール原液と液化ガスとからなるエアゾール組成物を、定量噴霧機能を備えたエアゾールバルブを通して0.2~1.0mLの範囲にある一定量を室内空間に噴霧処理する飛翔害虫防除方法であって、噴射距離20cmにおける噴射力を3~15gf/25℃とし、かつ、1回当たりの噴霧粒子個数を5×106~5×109個となして、殺虫薬剤粒子の飛翔害虫に対する接触機会を改善したことを特徴とする飛翔害虫防除方法。」
(4b)
「【実施例1】
【0026】
メトフルトリン4.0w/v%をエタノールに溶解してエアゾール原液を調製した。このエアゾール原液22.5mLと液化石油ガス52.5mL[エアゾール原液/液化ガス比率:30/70(容量比)]を定量噴霧用エアゾールバルブ付きエアゾール容器に加圧充填して、本発明で用いる飛翔害虫防除用エアゾール剤を得た。
このエアゾール剤を一定量(0.4mL)噴霧した時、噴射距離20cmにおける噴射力は6.5gfで、平均噴霧粒子径は24μmであった。また、噴霧粒子数は6×107個であった。
【0027】
ほぼ密閉した6畳の部屋にショウジョバエ類が侵入してきたため、やや斜め上方に向けて前記エアゾール剤を噴霧した。このエアゾール剤は、殺虫薬剤粒子の飛翔害虫に対する接触効率が改善され、3時間以上にわたりショウジョバエ類はもちろん蚊類に対しても優れた防除効果を示し、非常に実用性の高いものであった。
【実施例2】
【0028】
実施例1に準じて表1に示す各種エアゾール剤を調製し、下記に示す試験を行った。その試験結果を纏めて表2に示す。
(1)25m3の部屋での飛翔害虫に対する防除効果
閉めきった25m3の部屋の中央で供試エアゾールを斜め上方に向けて0.6mL噴霧した。直ちに、アカイエカ雌成虫50匹を放ち2時間暴露させた後、全ての供試蚊を回収した。その間、時間経過に伴い落下仰転したアカイエカ雌成虫を数え、KT50値を求めた。同じ部屋で引き続き、噴霧3時間後、及び噴霧7時間後についても同様な操作を行った。また、同じような別の部屋でキイロショウジョウバエに対しても同様に試験を行った。
【0029】
【表1】
[図:0001400511000006.jpg]
」
5 甲5の記載事項
(5a)
「【請求項1】
ピレスロイド系防虫成分及び沸点が200℃以上の芳香成分を含有するエアゾール原液と液化ガスとからなるエアゾール組成物を、定量噴霧機能を備えたエアゾールバルブを通して0.2~1.0mLの範囲にある一定量を衣類の収納空間に噴霧処理する衣類害虫防除方法であって、噴射距離20cmにおける噴射力を3~15gf/25℃とし、かつ、噴霧粒子の平均粒子径が5~30μmであることを特徴とする衣類害虫防除方法。」
(5b)
「【0022】
本発明で用いるエアゾール組成物は、エアゾール原液と液化ガスとから構成されるが、エアゾール原液/液化ガス比率は10~50/50~90(容量比)が好適である。
エアゾール原液/液化ガス比率が10/90より小さく液化ガスが多すぎると、噴霧粒子が必要以上に微細となるし、一方、50/50を超えると、逆に噴霧粒子が速やかに沈降する傾向があるので好ましくない。」
(5c)
「【実施例1】
【0027】
メトフルトリン4.0w/v%、p-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート1.1w/v%、テルピネオール2.0w/v%、ガラクソリド0.8w/v%、及び防黴剤A(2.4w/v%)をエタノールに溶解してエアゾール原液を調製した。このエアゾール原液22.5mLと液化石油ガス52.5mL[エアゾール原液/液化ガス比率:30/70(容量比)]を定量噴霧用エアゾールバルブ付きエアゾール容器に加圧充填して、本発明で用いる衣類害虫防除用エアゾール剤を得た。
このエアゾール剤を一定量(0.4mL)噴霧した時、噴射距離20cmにおける噴射力は6.5gfで、平均噴霧粒子径は14μmであった。
【0028】
空間体積が約3m3のクローゼット(上方にハンガーパイプを有し10着の衣類を吊下げ収納、その1着にイガによる虫食いを観察)内で、天井に向けて前記エアゾール剤を2回噴霧した。クローゼット内の芳香は1ケ月後に消失したが、この間イガによる新たな虫食いは発生せず、またクローゼット内が黴臭くなることもなかった。このように、芳香の消失をもって、本エアゾール剤の有効期限を明瞭に認識できたので、本発明の衣類害虫防除方法は、非常に実用性の高いものであった。
【実施例2】
【0029】
実施例1に準じて表1に示す各種エアゾール剤(有効期間:1ケ月)を調製し、下記に示す試験を行った。その試験結果を纏めて表2に示す。
(1)3m3のクローゼットでのコイガに対する防虫効果
実施例1と同様、10着の衣類を吊下げ収納した約3m3のクローゼット内で、天井に向けて各エアゾール剤を2回噴霧した。供試虫としては、直径5cmの球型網カゴの中にウール布とコイガ30日令幼虫10匹、又は卵20匹を入れたものを用い、噴霧から所定期間経過後、これら供試虫を衣類の間に置いた。コイガ幼虫は7日間放置し、その間に仰転もしくは致死した虫数を数え、ノックダウン率(KD率)を求めた。一方、卵については、10日間放置後の孵化虫数を数え、孵化抑制率を算出した。
【0030】
【表1】
[図:0001400511000007.jpg]
」
6 甲6の記載事項
(6a)
「【請求項1】
エアゾール式製品の噴射操作と連動するステムを収容したハウジングの内部の下流側定量室、および当該下流側定量室と連通し、当該ステムの移動により容器本体内容物の流入弁作用部がそれまでの開状態から閉状態へと移行する構造の上流側定量室を備えた定量噴射機構において、
前記上流側定量室は、
その中に内部容量調整用の環状部材が一個単位または複数個積み重ねた単位で配設されたときにそれぞれの単位全体を受けて保持するための環状部材受け部を、定量室内底面から離間した所定高さ部分に有している、
ことを特徴とする定量噴射機構。」
(6b)
「【0032】
上流側定量室Aおよび下流側定量室Bは、ハウジング4の内外方向の切欠状部4bを介する形で連通している。
【0033】
図示の定量噴射機構の基本的特徴は、当該定量噴射機構の組立て段階において、その定量室(ハウジング外側の上流側定量室A+ハウジング内部の下流側定量室B)の実質的全体容量を環状部材8の配設個数に応じる形で減らせることである。
【0034】
図示の場合、定量室流入弁の弁座3から定量室流出弁のステムガスケット10までの定量室容量は例えば「1.5cc~1.8cc」である。」
(6c)
「【図1】
[図:0001400511000008.jpg]
」
7 甲7の記載事項
(7a)
「【0001】
本発明は、定量室タイプのエアゾール内部の残留ガスを積極的に抜くための機構、特に通常の作動モード設定操作よりも長いストロークのガス抜きモード設定操作に基づいて動作状態となるガス抜き機構や、この機構を備えたエアゾール式製品に関する。
・・・
【0006】
一方、定量室タイプのエアゾール式製品の場合、ステムが押圧されると定量室形成用の弁が閉じる、すなわち当該定量室とその上流側の容器本体内部とが遮断されてしまうので、従来の上記ガス抜き機構を転用することはできない。」
(7b)
「【0026】
図2の、操作釦(図示省略)を押下げた作動モードでは、
(11)ステム2は、その突状部2eがハウジング底部1aの上面端部分1bに係止される位置までスプリング5の付勢力に抗して下動し、
(12)この係止状態でステム2のモード設定部2cと弁部材6の弁作用部6aとが密接して定量室Cを形成する。すなわち、弁作用部6aの上流側(定量室)と下流側(吸上管7の側)とが遮断され、容器本体9の内容物が定量室Cに新たに流入することはない。」
(7c)
「【図2】
[図:0001400511000009.jpg]
」
8 甲8の記載事項
(8a)
「【請求項1】
エアゾール容器内の内容物を噴射させるエアゾール定量バルブであって、
バルブハウジングと、
前記バルブハウジング内に収容されたバルブステムと、
前記バルブハウジング内の底部に収容されて前記バルブステムとの間に戻しばねを組み付けており、前記バルブステムとの間に流体流路を形成するシールド部材を備えており、該シールド部材を交換することができることを特徴とするエアゾール定量バルブ。」
(8b)
「【0034】
図4に示すように、バルブステム16が位置A3から位置A4までさらに押下される。これにより、閉塞用軸部35により流体流路形成部30が閉塞されている状態が維持されたままで、定量室19から切換孔32を通じて連通孔31に内容物が供給され、定量室19に供給された一定量だけの内容物がノズルから噴射されることになる。」
(8c)
「【図4】
[図:0001400511000010.jpg]
」
9 甲9の記載事項
(9a)
「【請求項1】
原液および/または噴射剤を封入した容器本体と、
その容器本体に取り付けられる、操作量が増大するにつれて噴射量が増大するバルブと、
そのバルブのステムに取り付けられ、少なくとも多量噴射時に一方向に扁平に拡がる噴射パターンを呈する噴射部材
とを備えているエアゾール製品。」
(9b)
「【0019】
前記原液と噴射剤の配合比は、原液/噴射剤=5/95~40/60、さらには10/90~35/65(容量%)であることが好ましい。前記原液の配合比が5(容量%)より小さい場合は噴霧粒子が細かくなりすぎ、噴射パターンの変化が確認しにくくなる。一方、噴射剤の配合比が60容量%より少ない場合は、噴霧粒子径が大きくなりすぎ、空間での拡散性が悪くなる。なお、前記原液と噴射剤とからなる内容物を噴射したときの噴霧粒子径(平均粒子径)は、5~50μm、さらには8~30μmであることが好ましい。噴霧粒子径が5μmより小さい場合は噴射パターンの変化を目視で確認し難くなり、50μmを超えると空間での拡散性が悪くなり、空間用製品とした場合の性能が悪くなる。」
(9c)
「【0023】
なお、少量噴射時と多量噴射時における各噴射量には特に限定はないが、少量噴射時と多量噴射時とで噴射パターンの変化を目視しやすい点から、少量噴射時の噴射量は5g/10秒以下、さらには4.8g/10秒以下であることが好ましく、多量噴射時は6g/10秒以上、さらには7g/10秒以上であることが好ましい。特に、少量噴射時と多量噴射時との噴射量比(重量比)が1:1.5以上、さらには1:1.7以上、特に1:2以上であることが好ましい。」
10 甲10の記載事項
(10a)
「【請求項1】
エアゾール容器と、そのエアゾール容器のバルブに取り付けられる噴射部材と、エアゾール容器に充填されるエアゾール組成物とからなるエアゾール製品であって、
前記エアゾール容器が、所定量のエアゾール組成物を噴射させる定量噴射機構を備えており、
前記噴射部材から10cm離れた位置におけるスプレーパターンの外円の直径が10cm以上である、エアゾール製品。」
(10b)
「【0014】
図1のエアゾール製品10は、定量噴射機構を有するエアゾール容器11と、そのエアゾール容器に取り付けられる噴射部材12と、エアゾール容器11に充填されるエアゾール組成物Aとを備えている。エアゾール組成物Aは、有効成分等を含む内容物(原液)と、噴射剤とからなる。
【0015】
エアゾール容器11は、アルミニウムやブリキなどの金属製の耐圧容器14と、その耐圧容器の開口部に取り付けられるバルブ15とを備えている。このエアゾール容器11は、バルブ15に定量噴射機構が設けられている。
耐圧容器14は、底部14a、円筒状の胴部14b、目金部14cおよびビード部14dを備えたものであり、それぞれ胴部14bの上下端(巻締部14e、14f)に二重巻き締めにより目金部14c、底部14aを連結した公知のスリーピース缶である。しかし、他のエアゾール用の耐圧容器を用いてもよい。」
(10c)
「【0025】
このようにエアゾール製品10は構成されているため、定量(少量)しか噴射されなくても効率良く、少なくとも一方向に広く噴射されるため、使用者はその噴射音だけでなく、その噴射物を視認または確実に認識できる。また、本実施形態のように楕円状または長方形状を呈して噴射される場合、家具同士の隙間等に効率よくエアゾール組成物Aを噴射することができる。つまり、エアゾール製品の使用回数を減らすことができる。」
11 甲11の記載事項
(11a)
「【請求項1】
殺虫剤および/または忌避剤を含有する処理薬剤を用いて害虫を駆除する方法であって、処理空間における処理薬剤量の気中残存率を、処理開始から1時間経過時に15%以上とするか、または処理開始から2時間経過時に5%以上とすることを特徴とする害虫の駆除方法。」
(11b)
「【0068】
また、1回あたりの処理薬剤の処理空間における放出時間は、薬剤放出方式の種類によって異なる。例えば、加熱蒸散方式や送風蒸散装置を用いた場合には、初期段階における確実な駆除と、その後の長期間の蚊の忌避という観点および放出される処理薬剤の濃度の低下を抑制するという観点から、0.1秒~3時間であることが好ましい。」
(11c)
「【0072】
実施例1~31および比較例1~2〔エアゾール方式による害虫の駆除〕
300mlの耐圧容器内に、表1および表2に示す条件で、薬剤(殺虫剤または忌避剤)が耐圧容器内に占める割合が0.5~60容量%となるように調整した。薬液の調製には、表1および表2に示す溶媒を用い、さらに噴射剤には表1-1および表1-2に示すものを使用して耐圧容器内の圧力が約4~5kg/cm2 Gとなるように設定した。
【0073】
薬液の微粒子の直径は、使用するバルブやボタンの種類によって調整することができるが、この実施例においては、耐圧容器の容量と、薬剤および溶媒の合計容量との割合を変えることで調整した。例えば、放出した薬液粒子の体積積算分布における90%粒子径を約5μmとする場合には、耐圧容器に対する初期の薬液の占める容量比率を2.5容量%とし、約10μmとする場合には、その容量比率を0.5容量%とし、これと同様に90%粒子径を約20μmとする場合には、その容量比率を10容量%とし、90%粒子径を約40μmとする場合には、その容量比率を20容量%とし、さらに90%粒子径を約80μmとする場合には、その容量比率を40%とした。
【0074】
評価は、8畳の居室試験室内(約30m3 )に、供試虫としてアカエイカ雌成虫約100匹を放し、蚊を放ってから、各供試剤を所定量噴霧処理し、噴霧からの経時的なノックダウン虫数を調査した。
【0075】
また、噴霧開始から1時間経過後および2時間経過後〔実施例3、18、23、29及び31の場合は、1、2、3、12、24時間後〕にも、アカエイカ雌成虫約100匹を放ち、蚊を放ってからの経時的なノックダウン虫数を調査した。
【0076】
これらの結果から、ブリス(Bliss )のプロビット(Probit)法によってKT50値を求めた。
【0077】
KT50値は、供試虫の50%をノックダウンさせるのに要する時間を示し、この数値が小さいほどノックダウン効果、つまり対象とする有害生物の防除効果が高いことを意味する。
・・・
【0085】
【表1】
[図:0001400511000011.jpg]
【0086】
【表2】
[図:0001400511000012.jpg]
」
第5 申立理由についての当審合議体の判断
1 申立理由1Aについて
(1) 甲1に記載された発明
摘記(1a)によれば、甲1には、「予め設定された定量を勢いよく噴霧」できる「エアゾール製品」及び当該「エアゾール製品」の内容物の噴霧状態下での「害虫防除方法」が記載され、摘記(1b)によれば、定量噴霧機構を有するエアゾール製品の構造及びその内容物(エアゾール薬剤)の組成が記載され、定量噴霧機能を「アチュエータ内に定量室を設けたアクチュエータ付きバルブ」とすることができ、「一回の噴霧量」は「定量バルブの定量室の容積」であり、「1.0~15.0ml」が好ましく、原液と噴射剤との容量比は「5:95~70:30」が好ましいとされているから、甲1には以下の甲1A発明が記載されていると認められる。また、「害虫防除方法」における当該「エアゾール製品」を用いた噴霧状態の形成にあたり、甲1には「エアゾール製品」による噴霧の実行である噴霧方法も記載されているといえるから、甲1には、以下の甲1B発明も記載されていると認められる。
<甲1A発明>
「原液と、噴射剤とを含むエアゾール薬剤を含み、
前記原液と前記噴射剤との配合割合(容量比)は、5/95~70/30であり、
1回あたりの噴霧量が1.0~15.0mlであり、
前記エアゾール薬剤が充填されたエアゾール剤容器は定量噴霧機能を有し、当該定量噴霧機能がアチュエータ内に定量室を設けたアクチュエータ付きバルブであって、
前記定量室の容積は、1.0~15.0mlである、
定量を勢いよく噴霧できるエアゾール製品。」
<甲1B発明>
「原液と、噴射剤とを、前記原液と前記噴射剤との配合割合(容積比)が、5/95~70/30となるよう含むエアゾール薬剤を、1回あたりの噴霧量が1.0~15.0mlとなるよう噴霧する、定量を勢いよく噴霧できるエアゾール製品の噴霧方法であり、
前記定量を勢いよく噴霧できるエアゾール製品は、前記エアゾール薬剤が充填されたエアゾール剤容器は定量噴霧機能を有し、当該定量噴霧機能がアチュエータ内に定量室を設けたアクチュエータ付きバルブであって、
前記定量室の容積は、1.0~15.0mlである、
定量を勢いよく噴霧できるエアゾール製品の噴霧方法。」
(2) 対比・判断
ア 本件発明1について
(ア) 本件発明1と甲1A発明との対比
本件発明1と甲1A発明とを対比すると、甲1A発明の「エアゾール薬剤」、「容量比」、「噴霧」、「ml」、「アチュエータ内に定量室を設けたアクチュエータ付きバルブ」及び「定量を勢いよく噴霧できるエアゾール製品」は、それぞれ、本件発明1の「エアゾール組成物」、「体積比」、「噴射」、「mL」、「エアゾール定量バルブ」及び「定量噴射型エアゾール製品」に相当し、甲1A発明の「エアゾール剤容器」の「アチュエータ内に定量室を設けたアクチュエータ付きバルブ」以外の部分は、本件発明1の「エアゾール容器」といえ、「アチュエータ内に定量室を設けたアクチュエータ付きバルブ」が当該部分に取り付けられ、「エアゾール薬剤」が充填されているといえる。
また、甲1A発明の「定量室」が、「エアゾール容器から取り出される前記エアゾール組成物を一時的に貯留するための」ものであることは、「一回の噴霧量」が「定量バルブの定量室の容積」であることから明らかである。
そうすると、本件発明1と甲1A発明とは、
「原液と、噴射剤とを含むエアゾール組成物を含み、
前記エアゾール組成物が充填されたエアゾール容器と、前記エアゾール容器に取り付けられるエアゾール定量バルブとを有し、
前記エアゾール定量バルブは、前記エアゾール容器から取り出される前記エアゾール組成物を一時的に貯留するための定量室が形成されている、
定量噴射型エアゾール製品。」
である点で一致し、以下の相違点1~3で相違する。
<相違点1>
本件発明1は、原液と噴射剤との配合割合(体積比)が1/99~10/90であるのに対して、甲1A発明は、原液と噴射剤との配合割合(体積比)が5/95~70/30である点
<相違点2>
本件発明1は、1回あたりの噴射量が1.0~3.0mLであるのに対して、甲1A発明は、1回あたりの噴射量が1.0~15.0mLである点
<相違点3>
本件発明1は、定量室の容積が1.0~3.0mLであるのに対して、甲1A発明は、定量室の容積が1.0~15.0mLである点
(イ) 相違点についての検討
まず、相違点1について検討する。
原液と噴射剤との配合割合(体積比)(以下「配合割合A」という。)に関し、甲1A発明の配合割合A(5/95~70/30)は、本件発明1の配合割合A(1/99~10/90)と一部重複する範囲(5/95~10/90)があるものの、甲1A発明の配合割合Aは、原液が噴射剤よりも多い、本件発明1の配合割合Aに該当しない範囲も広く含むものであって、本件発明1の配合割合Aは、原液が多くとも噴射剤の1/9以下で存在する範囲であるから、本件発明1の配合割合A(1/99~10/90)は、甲1A発明の配合割合A(5/95~70/30)からは導き出せず、甲1A発明の配合割合Aと同一視できる範囲とはいえないから、相違点1は実質的な相違点である。
したがって、本件発明1は、相違点2及び3について検討するまでもなく、甲1に記載された発明とはいえない。
イ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用した発明特定事項を有し、本件発明1を更に限定するものであるから、本件発明2及び3は、少なくとも上記相違点1と同じ点で相違し、上記ア(イ)で説示したとおり、相違点1は実質的な相違点であるから、甲1に記載された発明とはいえない。
ウ 本件発明4について
本件発明4と甲1B発明とを対比すると、上記ア(ア)で述べた事項と同様の発明特定事項の対応関係が認められ、本件発明4と甲1B発明とは、
「原液と、噴射剤とを含むエアゾール組成物を噴射する、定量噴射型エアゾール製品の噴射方法であり、
前記定量噴射型エアゾール製品は、前記エアゾール組成物が充填されたエアゾール容器と、前記エアゾール容器に取り付けられるエアゾール定量バルブとを有し、
前記エアゾール定量バルブは、前記エアゾール容器から取り出される前記エアゾール組成物を一時的に貯留するための定量室が形成されている、
定量噴射型エアゾール製品の噴射方法。」
である点で一致し、上記相違点1~3で相違する。
そうすると、上記ア(イ)で述べたのと同様の理由により、相違点1は実質的な相違点であるから、本件発明4は、甲1に記載された発明とはいえない。
2 申立理由2Aについて
(1) 甲1A発明及び甲1B発明並びにそれらの本件発明に対する相違点について
上記1で示したとおり、甲1には甲1A発明及び甲1B発明が記載され、本件発明1と甲1A発明は相違点1~3で相違し、本件発明4と甲1B発明も相違点1~3で相違する。
(2) 本件発明の容易想到性について
ア 本件発明1について
事案に鑑み、相違点1と相違点2を併せて検討する。
(ア) 本件特許明細書【0033】には、「噴射剤の配合割合(体積比)が、99体積%を超える場合、エアゾール組成物は、有効成分が少なくて効果が発現し難い可能性がある。一方、噴射剤の配合割合(体積比)が、90体積%未満である場合、エアゾール組成物は、噴射後に拡散性が低下する可能性がある。」と記載され、同【0042】には、「1回あたりの噴射量が1.0mL未満である場合、噴射されたエアゾール組成物は、視認されにくい。一方、1回あたりの噴射量が3.0mLを超える場合、噴射されたエアゾール組成物は、粒子径が大きくなり、広範囲に拡散せず落下しやすい。」と記載されており、配合割合Aを本件発明1で規定する範囲とすることで、有効成分による効果の発現及び拡散性の保持を達成し、かつ、噴射量を本件発明1で規定する範囲とすることで、視認性の向上と拡散性の保持を達成していることが理解でき、拡散性の保持には、本件発明1の配合割合Aと噴射量の要件を満たすことが必須といえ、実際、これらの要件を満たさない本件特許明細書に記載の比較例1~4は、拡散率や視認性に劣る結果となっている。
(イ) 甲1A発明は、配合割合A及び噴射量の範囲として、本件発明1の範囲外の部分を広く含むものであって、甲1に記載の具体例である実施例では、配合割合Aは70/230(=23.3/76.7)又は60/240(=20/80)であり、噴射量は5mLであって、ともに本件発明1の範囲外の例である(摘記(1c))。そして、甲1には、当該二つの要件を本件発明1の範囲に変更することを動機付けるような記載も示唆もない(摘記(1b)によれば、甲1には、噴射量について、「3.0~10.0」mLという本件発明1の範囲が3.0mLの点以外含まれない範囲が「より好ましい」とされ、阻害要因となる示唆があるともいえる。)。
そうすると、甲1A発明において、その配合割合Aと噴射量を変更し、本件発明1の配合割合Aと噴射量の範囲とする動機付けがあるとはいえない。
(ウ) 甲4及び甲5には、定量噴射機能に関する一般的な記載として、「0.2~1.0mL」の範囲を噴射量とすることが記載されているが(摘記(4a)及び(5a))、本件発明1の噴射量とは1.0mLのみで重複するにすぎないものであって、かつ、全ての具体的な実施例は、本件発明1の範囲に含まれるものではなく(摘記(4b)及び(5c))、その配合割合Aも本件発明1の範囲外である例がほとんどであり(摘記(4b)及び(5c))、特段の示唆もない(摘記(4b)、(5b)及び(5c))。また、甲6には、定量噴射機構において、噴射量に対応するといえる「定量室容量」の一般的な記載として、「1.5~1.8cc」(=1.5~1.8mL)とすることが記載されているにすぎず(摘記(6b))、配合割合Aに関する記載はない。
そうすると、甲4~6には、エアゾール組成物の定量噴射において、本件発明1の配合割合A及び噴射量を同時に満たす技術事項が記載されているとはいえない。
(エ) 甲7及び甲8には、定量室を有するエアゾール製品について、噴射時の内容物の流入状態に関する記載はあるが(摘記(7a)~(7c)及び(8a)~(8c))、配合割合Aや噴射量に関する記載はなく、甲9及び甲10には、視認性に関する記載はあるが(摘記(9a)~(9c)及び(10a)~(10c))、その達成手段として、本件発明1の配合割合A及び噴射量とすることの記載はない。
(オ) 甲11には、定量室を用いた定量噴射のエアゾール方式に関する記載はなく、また、配合割合A及び噴射量に関する一般的な記載もなく、定量噴射型ではないエアゾール方式の実施例において、配合割合Aが記載され、噴射量が逆算できる程度の記載はあるものの、これらの具体例は、本件発明1の配合割合A及び噴射量の範囲外である広範な範囲の例を含んだものである。
そうすると、甲11の記載から、定量噴射のエアゾール方式において、本件発明1の配合割合Aと噴射量の範囲を同時に満たすことが特に優れていることを把握することはできない。
(カ) 以上のとおり、甲1A発明において、その配合割合Aと噴射量を変更し、本件発明1の配合割合Aと噴射量の範囲とする動機付けがあるとはいえず、甲4~11の記載から、本件発明1の配合割合Aと噴射量の範囲とすることが周知の技術事項とはいえないから、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲4~11に記載された周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。そして、本件発明1の有効成分による効果の発現、拡散性の保持及び視認性の向上という効果は、甲1A発明の効果及び周知の技術事項から予測できるものでもない。
イ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用した発明特定事項を有し、本件発明1を更に限定するものであるから、本件発明2及び3は、少なくとも上記相違点1及び2と同じ点で相違し、上記アで説示したのと同様の理由により、甲1に記載された発明及び甲4~11に記載された周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 本件発明4について
本件発明4は、上記(1)で述べたとおり、甲1B発明と相違点1~3で相違するから、上記アで述べたのと同様の理由により、甲1に記載された発明及び甲4~11に記載された周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
3 申立理由1Bについて
(1) 甲2に記載された発明
摘記(2a)によれば、甲2には、「エアゾール容器と、そのエアゾール容器内に充填されるエアゾール組成物」とからなり、エアゾール容器が所定量である「0.2~1.0ml」のエアゾール組成物を噴射させる「定量噴射機構を有するエアゾールバルブ」を備えた「定量噴射型のエアゾール製品」が記載され、摘記(2b)、(2d)及び(2e)によれば、「ハウジング21内から定量ハウジングのボール収容部26bまでに貯蓄された定量のエアゾール組成物が噴射される」構造、及び「エアゾール組成物」が「原液と、液化ガスと、低溶解性圧縮ガスとから構成」され、「液化ガス」は、「エアゾール組成物中50~90容量%含有」することが好ましいとされているから、甲2には以下の甲2A発明が記載されていると認められる。また、甲2には、当該「エアゾール製品」の噴射操作を行うことにより、定量の「エアゾール組成物」が噴射される方法が記載されているといえるから、甲2には、以下の甲2B発明も記載されていると認められる。
<甲2A発明>
「原液と、液化ガスと、低溶解性圧縮ガスとから構成されたエアゾール組成物を含み、
エアゾール組成物中に前記液化ガスを50~90容量%含有し、
前記エアゾール組成物が充填されたエアゾール容器11と、前記エアゾール容器に取り付けられるエアゾールバルブ14とを有し、
前記エアゾールバルブ14は、ハウジング21内から定量ハウジングのボール収容部26bまでに貯蓄された定量のエアゾール組成物が、噴射操作により噴射され、
前記貯蓄された定量の容積は、0.2~1.0mlである、
定量噴射型のエアゾール製品。」
<甲2B発明>
「原液と、液化ガスと、低溶解性圧縮ガスとを、前記液化ガスを50~90容量%含有するよう含むエアゾール組成物を噴射する、定量噴射型のエアゾール製品の噴射方法であり、
前記定量噴射型のエアゾール製品は、前記エアゾール組成物が充填されたエアゾール容器11と、前記エアゾール容器11に取り付けられるエアゾールバルブ14とを有し、
前記エアゾールバルブ14は、ハウジング21内から定量ハウジングのボール収容部26bまでに貯蓄された定量のエアゾール組成物が、噴射操作により噴射され、
前記貯蓄された定量の容積は、0.2~1.0mlである、
定量噴射型のエアゾール製品の噴射方法。」
(2) 対比・判断
ア 本件発明1について
(ア) 本件発明1と甲2A発明との対比
本件発明1と甲2A発明とを対比すると、甲2A発明の「エアゾール容器11」、「ml」及び「定量噴射型のエアゾール製品」は、それぞれ、本件発明1の「エアゾール容器」、「mL」及び「定量噴射型エアゾール製品」に相当し、甲2A発明の「液化ガス」及び「低溶解性圧縮ガス」は、いずれも本件発明1の「噴射剤」に相当する。
また、甲2A発明は、噴射操作により、「ハウジング21内から定量ハウジングのボール収容部26bまで」に貯蓄された定量のエアゾール組成物が、噴射されるのであるから、当該「ハウジング21内から定量ハウジングのボール収容部26bまで」の流路を含む部位が、本件発明1の「定量室」に相当し、かつ、当該部位の体積が、定量噴射されるエアゾール組成物の量に対応するものである。そして、甲2A発明の「エアゾールバルブ14」には「エアゾール組成物を一時的に貯留するための定量室」が形成されているといえる。
そうすると、本件発明1と甲2A発明とは、
「原液と、噴射剤とを含むエアゾール組成物を含み、
前記エアゾール組成物が充填されたエアゾール容器と、前記エアゾール容器に取り付けられるエアゾール定量バルブとを有し、
前記エアゾール定量バルブは、前記エアゾール容器から取り出される前記エアゾール組成物を一時的に貯留するための定量室が形成されている、
定量噴射型エアゾール製品。」
である点で一致し、以下の相違点4~6で相違する。
<相違点4>
本件発明1は、原液と噴射剤との配合割合(体積比)が1/99~10/90であるのに対して、甲2A発明は、噴射剤の一つである液化ガスをエアゾール組成物中に50~90容量%含有しているものの、もう一つの噴射剤である低溶解性圧縮ガスの含有量が不明であって、原液と噴射剤との配合割合(体積比)が不明である点
<相違点5>
本件発明1は、1回あたりの噴射量が1.0~3.0mLであるのに対して、甲2A発明は、1回あたりの噴射量が0.2~1.0mLである点
<相違点6>
本件発明1は、定量室の容積が1.0~3.0mLであるのに対して、甲2A発明は、定量室の容積が0.2~1.0mLである点
(イ) 相違点についての検討
まず、相違点4について検討すると、甲2A発明の配合割合Aは不明であって、相違点4は実質的な相違点である。
したがって、本件発明1は、相違点5及び6について検討するまでもなく、甲2に記載された発明とはいえない。
イ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用した発明特定事項を有し、本件発明1を更に限定するものであるから、本件発明2及び3は、少なくとも上記相違点4と同じ点で相違し、上記ア(イ)で説示したとおり、相違点4は実質的な相違点であるから、甲2に記載された発明とはいえない。
ウ 本件発明4について
本件発明4と甲2B発明とを対比すると、上記ア(ア)で述べた事項と同様の発明特定事項の対応関係が認められ、本件発明4と甲2B発明とは、
「原液と、噴射剤とを含むエアゾール組成物を噴射する、定量噴射型エアゾール製品の噴射方法であり、
前記定量噴射型エアゾール製品は、前記エアゾール組成物が充填されたエアゾール容器と、前記エアゾール容器に取り付けられるエアゾール定量バルブとを有し、
前記エアゾール定量バルブは、前記エアゾール容器から取り出される前記エアゾール組成物を一時的に貯留するための定量室が形成されている、
定量噴射型エアゾール製品の噴射方法。」
である点で一致し、上記相違点4~6で相違する。
そうすると、上記ア(イ)で述べたのと同様の理由により、相違点4は実質的な相違点であるから、本件発明4は、甲2に記載された発明とはいえない。
4 申立理由2Bについて
(1) 甲2A発明及び甲2B発明並びにそれらの本件発明に対する相違点について
上記3で示したとおり、甲2には甲2A発明及び甲2B発明が記載され、本件発明1と甲2A発明は相違点4~6で相違し、本件発明4と甲2B発明も相違点4~6で相違する。
(2) 本件発明の容易想到性について
ア 本件発明1について
事案に鑑み、相違点4と相違点5を併せて検討する。
(ア) 上記2(2)ア(ア)で説示したとおり、本件発明1は、本件発明1で規定する配合割合Aと噴射量の要件を同時に満たすことが必須であり、上記2(2)ア(エ)及び(オ)で説示したとおり、甲7~11の記載から、本件発明1の配合割合Aと噴射量の要件を同時に満たすことが周知の技術事項とはいえない。
(イ) 甲2A発明は、配合割合Aが不明であって、噴射量の範囲として、「1.0mL」の点のみで重複し、本件発明1の範囲外の部分を広く含むものである。また、甲2に記載の具体例である実施例では、配合割合A及び噴射量ともに不明である。そして、甲2には、当該二つの要件を特に本件発明1の範囲に変更することを動機付けるような記載も示唆もない(摘記(2b)によれば、甲2には、「0.3~0.7」mLという本件発明1の範囲に含まれない噴射量の範囲が「特に」として記載され、阻害要因となる示唆があるともいえる。)。
そうすると、甲2A発明において、その配合割合Aと噴射量を変更し、本件発明1の配合割合Aと噴射量の範囲とする動機付けがあるとはいえない。
(ウ) 以上のとおり、甲2A発明において、その配合割合Aと噴射量を変更し、本件発明1の配合割合Aと噴射量の範囲とする動機付けがあるとはいえず、甲7~11の記載から、本件発明1の配合割合Aと噴射量の範囲とすることが周知の技術事項とはいえないから、本件発明1は、甲2に記載された発明及び甲7~11に記載された周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。そして、本件発明1の有効成分による効果の発現、拡散性の保持及び視認性の向上という効果は、甲2A発明の効果及び周知の技術事項から予測できるものでもない。
イ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用した発明特定事項を有し、本件発明1を更に限定するものであるから、本件発明2及び3は、少なくとも上記相違点4及び5と同じ点で相違し、上記アで説示したのと同様の理由により、甲2に記載された発明及び甲7~11に記載された周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 本件発明4について
本件発明4は、上記(1)で述べたとおり、甲2B発明と相違点4~6で相違するから、上記アで述べたのと同様の理由により、甲2に記載された発明及び甲7~11に記載された周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
5 申立理由1Cについて
(1) 甲3に記載された発明
摘記(3a)によれば、甲3には、「耐圧性を有する容器と、前記容器の開口部に取り付けられるバルブアッセンブリと、前記容器に収容される液化ガスを含む内容物とを備えたエアゾール製品」について、「前記バルブアッセンブリは、エアゾールバルブと、前記エアゾールバルブのステムを下降操作することにより前記エアゾールバルブのハウジング内と容器内との間の通路を遮断する弁ユニットと、前記ハウジングに連結される拡張ユニット」とを有し、「前記拡張ユニットは、前記内容物を貯留する拡張室と、前記ハウジングと前記拡張室とを連通する連結部」とを有していることが記載され、摘記(3b)~(3d)によれば、「定量室」が「ハウジング22」と「拡張室31」であって、ハウジング22内の容積が「0.5ml以下」であり、拡張室31の容積が「0.3~5ml」であるという構造、及び「内容物C」が「原液」と「液化ガス」からなることが記載されているから、甲3には以下の甲3A発明が記載されていると認められる。また、甲3には、当該「エアゾール製品」について、「内容物が人体に直接噴射する用途」や「内容物が空間に噴射する用途」(摘記(3b))とする噴射の方法が記載されているといえるから、甲3には、以下の甲3B発明も記載されていると認められる。
<甲3A発明>
「原液と、液化ガスとからなる内容物Cを含み、
内容物Cは、液化ガスを30~95質量%含有し、
内容物Cが収容された耐圧性を有する容器11と、耐圧性を有する容器11に取り付けられるバルブアッセンブリ12とを有し、
バルブアッセンブリ12は、エアゾールバルブ16と、エアゾールバルブ16のステム23を下降操作することによりエアゾールバルブ16のハウジング22内と容器11内との間の通路を遮断する弁ユニット17と、ハウジング22に連結される拡張ユニット18とを有し、
拡張ユニット18は、内容物Cを貯留する拡張室31と、ハウジング22と拡張室31とを連通する連結部32とを有し、ハウジング22と拡張室31が定量室であり、
ハウジング22の容積は0.5ml以下、拡張室31の容積は0.3~5mlである、
エアゾール製品。」
<甲3B発明>
「原液と、液化ガスとを、前記液化ガスを30~95質量%含有するよう含む内容物Cを、定量室を有するバルブアッセンブリ12を設けたエアゾール製品の噴射方法であり、
前記エアゾール製品は、内容物Cが収容された耐圧性を有する容器11と、耐圧性を有する容器11に取り付けられるバルブアッセンブリ12とを有し、
バルブアッセンブリ12は、エアゾールバルブ16と、エアゾールバルブ16のステム23を下降操作することによりエアゾールバルブ16のハウジング22内と容器11内との間の通路を遮断する弁ユニット17と、ハウジング22に連結される拡張ユニット18とを有し、
拡張ユニット18は、内容物Cを貯留する拡張室31と、ハウジング22と拡張室31とを連通する連結部32とを有し、ハウジング22と拡張室31が定量室であり、
ハウジング22の容積は0.5ml以下、拡張室31の容積は0.3~5mlである、
エアゾール製品の噴射方法。」
(2) 対比・判断
ア 本件発明1について
(ア) 本件発明1と甲3A発明との対比
本件発明1と甲3A発明とを対比すると、甲3発明の「液化ガス」、「内容物C」、「収容」、「容器11」及び「ml」は、それぞれ、本件発明1の「噴射剤」、「エアゾール組成物」、「充填」、「エアゾール容器」及び「mL」に相当する。
また、甲3A発明の「内容物C」は、「原液と、液化ガス」からなり、液化ガスの含有量を考慮すると、原液と前記噴射剤との配合割合(質量比)は、5/95~30/70である。
さらに、甲3A発明は、噴射時間が、「定量室」によるものとされているから(摘記(3b)の【0020】)、1回の操作あたり、「定量室」における「内容物C」の量が噴射されるといえ、甲3A発明の「バルブアッセンブリ12」は、「内容物C」を一時的に貯留するための「定量室」が形成されており、本件発明1の「エアゾール定量バルブ」に相当する。そして、甲3A発明の「エアゾール製品」は、「定量噴射型エアゾール製品」といえる。
そうすると、本件発明1と甲3A発明とは、
「原液と、噴射剤とを含むエアゾール組成物を含み、
前記エアゾール組成物が充填されたエアゾール容器と、前記エアゾール容器に取り付けられるエアゾール定量バルブとを有し、
前記エアゾール定量バルブは、前記エアゾール容器から取り出される前記エアゾール組成物を一時的に貯留するための定量室が形成されている、
定量噴射型エアゾール製品。」
である点で一致し、以下の相違点7~9で相違する。
<相違点7>
本件発明1は、原液と噴射剤との配合割合(体積比)が1/99~10/90であるのに対して、甲3A発明は、原液と噴射剤との配合割合(質量比)が5/95~30/70であるものの、その体積比は不明である点
<相違点8>
本件発明1は、1回あたりの噴射量が1.0~3.0mLであるのに対して、甲3A発明は、1回あたりの噴射量が定量室の容積であって、ハウジング22と拡張室31が定量室であり、ハウジング22の容積は0.5ml以下、拡張室31の容積は0.3~5mlである点
<相違点9>
本件発明1は、定量室の容積が1.0~3.0mLであるのに対して、甲3A発明は、ハウジング22と拡張室31が定量室であり、ハウジング22の容積は0.5ml以下、拡張室31の容積は0.3~5mlである点
(イ) 相違点についての検討
まず、相違点7について検討すると、甲3A発明は、体積比である配合割合Aは不明であって、質量比が同じでも組成物の各組成の密度によって体積比は変化するものであって、甲3A発明の原液と噴射剤との配合割合(質量比)も広範囲であるから、相違点7は実質的な相違点である。
したがって、本件発明1は、相違点8及び9について検討するまでもなく、甲3に記載された発明とはいえない。
イ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用した発明特定事項を有し、本件発明1を更に限定するものであるから、本件発明2及び3は、少なくとも上記相違点7と同じ点で相違し、上記ア(イ)で説示したとおり、相違点7は実質的な相違点であるから、甲3に記載された発明とはいえない。
ウ 本件発明4について
本件発明4と甲3B発明とを対比すると、上記ア(ア)で述べた事項と同様の発明特定事項の対応関係が認められ、本件発明4と甲3B発明とは、
「原液と、噴射剤とを含むエアゾール組成物を噴射する、定量噴射型エアゾール製品の噴射方法であり、
前記定量噴射型エアゾール製品は、前記エアゾール組成物が充填されたエアゾール容器と、前記エアゾール容器に取り付けられるエアゾール定量バルブとを有し、
前記エアゾール定量バルブは、前記エアゾール容器から取り出される前記エアゾール組成物を一時的に貯留するための定量室が形成されている、
定量噴射型エアゾール製品の噴射方法。」
である点で一致し、上記相違点7~9で相違する。
そうすると、上記ア(イ)で述べたのと同様の理由により、相違点7は実質的な相違点であるから、本件発明4は、甲3に記載された発明とはいえない。
6 申立理由2Cについて
(1) 甲3A発明及び甲3B発明並びにそれらの本件発明に対する相違点について
上記5で示したとおり、甲3には甲3A発明及び甲3B発明が記載され、本件発明1と甲3A発明は相違点7~9で相違し、本件発明4と甲3B発明も相違点7~9で相違する。
(2) 本件発明の容易想到性について
ア 本件発明1について
事案に鑑み、相違点7と相違点8を併せて検討する。
(ア) 上記2(2)ア(ア)で説示したとおり、本件発明1は、本件発明1で規定する配合割合Aと噴射量の要件を同時に満たすことが必須であり、上記2(2)ア(イ)、(エ)及び(オ)並びに上記4(2)ア(イ)で説示したとおり、甲1、2及び7~11の記載から、本件発明1の配合割合Aと噴射量の要件を同時に満たすことが周知の技術事項とはいえない。
(イ) 甲3A発明は、配合割合Aが不明であり、噴射量に対応する定量室の容積の範囲も、本件発明1の範囲外の部分を広く含むものである。また、甲3は、実施例の記載がなく、具体的な配合割合や噴射量の参考となる記載もない。
そうすると、甲3A発明において、その配合割合Aと噴射量について、本件発明1の配合割合Aと噴射量の範囲とする動機付けがあるとはいえない。
(ウ) 以上のとおり、甲3A発明において、その配合割合Aと噴射量を変更し、本件発明1の配合割合Aと噴射量の範囲とする動機付けがあるとはいえず、甲1、2及び7~11の記載から、本件発明1の配合割合Aと噴射量の範囲とすることが周知の技術事項とはいえないから、本件発明1は、甲3に記載された発明並びに甲1、2及び7~11に記載された周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。そして、本件発明1の有効成分による効果の発現、拡散性の保持及び視認性の向上という効果は、甲3A発明の効果及び周知の技術事項から予測できるものでもない。
イ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用した発明特定事項を有し、本件発明1を更に限定するものであるから、本件発明2及び3は、少なくとも上記相違点7及び8と同じ点で相違し、上記アで説示したのと同様の理由により、甲3に記載された発明並びに甲1、2及び7~11に記載された周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 本件発明4について
本件発明4は、上記(1)で述べたとおり、甲3B発明と相違点7~9で相違するから、上記アで述べたのと同様の理由により、甲3に記載された発明並びに甲1、2及び7~11に記載された周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
7 申立人の主張について
申立人は、甲1~3に記載の発明は、配合割合Aと噴射量において、本件発明1~4と重複する部分があるから、本件発明1~4は新規性を有しておらず、また、甲1~3に記載された発明において、甲4~11、甲7~11又は甲1、2及び7~11に記載の周知の技術事項を参照すれば、本件発明1~4は当業者が容易に想到するものである旨の主張をしている(申立書27~39頁)。
しかしながら、甲1に記載の発明については、上記1(2)ア(イ)で説示したとおり、数値範囲の一部が重複するからといって、本件発明の新規性が欠如するものではないし、甲2及び3に記載の発明については、上記3(2)ア(イ)及び5(2)ア(イ)で説示したとおり、配合割合Aが不明であるから、配合割合Aの範囲が重複しているとはいえない。
また、甲1~3には、本件発明が規定する配合割合A及び噴射量を同時に満たすことを動機付けるような記載も示唆もなく、甲1、2及び4~11を参照しても、本件発明の配合割合A及び噴射量を同時に満たすことは周知ではないから、甲1~3に記載の発明において、甲1、2及び4~11の記載の技術事項を参照したとしても、当業者が本件発明1~4に想到することができるとはいえない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700401